1: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:00:02 ID:???00
「──最後に、本コンサート主催の乙宗家より、乙宗家ご令嬢の梢様によるバイオリン演奏です」

パチパチパチ

梢「……」ペコリ

観客「あの乙宗家の娘さんだって、これは期待だな」ヒソヒソ

観客「なんと言っても、有名な音楽一家のお嬢さんだもんな」ヒソヒソ

梢「……」スゥ

~♪

「……! これが、乙宗梢……」

ミア「──いいじゃないか、気に入った」ニヤッ

3: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:01:01 ID:???00
────

ガヤガヤガヤ

ミア「Great! 最高の演奏だったよ!」パチパチ

梢「お褒めにあずかり光栄です。本日は、乙宗家の主催する音楽コンサートにお越しいただき誠に──」

ミア「Wait.そんなに堅苦しくなくていいさ」

梢「ですが……乙宗家として、本コンサートにいらしていただいたお礼を……」

ミア「お礼なんかいい。ボクは、乙宗家のご令嬢じゃなくて、キミ自身……“乙宗梢”に言ってるんだ」

4: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:02:01 ID:???00
梢「私に……?」

ミア「ああ。……この後、時間いいかい? キミと話がしたくてね」

梢「話、ですか? 時間はありますが……」

ミア「そっか、そいつはいい。ボクはキミと……一人の高校生performerとして、話したいんだ」

梢「高校生……」

ミア「ああ、それも学校でidolなんてことをやってるもの同士、だからね」クスッ

梢「! もしかして、あなたもスクールアイドル……!」

ミア「ははっ! やっと気づいたかい?」ニヤッ

ミア「──ボクはミア・テイラー。キミと同じ、スクールアイドルさ」

5: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:03:01 ID:???00
────

梢「ここは……ハンバーガーのお店ですか?」

ミア「ああ。おっと、敬語は外してもらって構わないさ。これでもボクは、キミと同じ高校三年生なんだから」ドヤッ

梢「そう……かしら? まだ少し、慣れないというか……」

ミア「慣れない? Why?」

梢「だ、だってあなたは、あのテイラー家のお方でしょう? 先ほど気づいて、どうしようかと……!」

ミア「あははっ! それを言ったら、キミだってそうだろ? 乙宗家のご令嬢さん?」

梢「! それは……確かにそう、なのだけれど……」

ミア「キミは、このボクが認めたスクールアイドルだ。自信を持ってもらわなくちゃ困るね」フフン

6: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:04:02 ID:???00
「ご注文のハンバーガーになります」コトッ

ミア「お、来た来た……こいつがdeliciousなんだよ!」

ミア「Mmm……It's yummy!」モグモグ

梢「……」ジー

ミア「? どうしたのさ、固まって……?」

梢「あまり……こういったものは、普段食べたことがなくて……」

ミア「!?」

8: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:05:02 ID:???00
ミア「キミも栞子みたいなことを言うんだな……まぁ、食べてみなよ、ボクのイチオシだから」ニヤッ

梢「そ、そう……? では、いただきます……」パクッ

梢「! 美味しい……!」

ミア「そうだろう? 日本のハンバーガーの中でも、NYCのものに引けを取らない代物さ!」モグモグ

ミア「美味しいものはみんなとシェアするものだ、ってボクも仲間に教えてもらったから。キミにこのhamburgerを伝えられてよかったよ」ニッ

9: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:06:01 ID:???00
梢「……私に話というのは、このハンバーガーのことかしら……?」

ミア「ははっ! No,no……! 流石にそれだけで呼び出すなんてしないさ」クスクス

梢「それなら、一体話って……?」

ミア「そうだね、where do I start ……」ウーン

ミア「……実は、前から、キミのことは気になっていたんだ」

梢「? 私のことを?」

10: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:07:01 ID:???00
ミア「ああ。キミは乙宗家。ボクはテイラー家。同じ、音楽一家のもとに生まれたもの同士だ」

ミア「それでいてボク達は、どちらもスクールアイドルでもある……What a coincidence!」

梢「確かに……そうね。私達、少し境遇が似ているところがあるみたい」クスッ

ミア「そうだろう? だからボクは、キミのことをもっと知りたかった。今日のコンサートなんて、best chanceだと思ってね」

11: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:08:01 ID:???00
ミア「そうして興味を惹かれていた末に、今日のキミの演奏さ。ボクは確信したよ! キミは最高のperformerだ」

梢「そ、そこまで褒められるのは……私も流石に、そこまでの実力ではないと思うのだけれど……」

ミア「そう謙遜するなよ、ボクはキミを尊敬してるんだ」フフッ

ミア「今日のキミの演奏……キミは乙宗家の娘として向けられていた期待に、完璧に応えてみせた。これはすごいことさ!」

ミア「周りの期待を一心に受け、その重圧に押しつぶされずにやり切る……これが難しいことを、ボクはよく知ってるからね」

12: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:09:01 ID:???00
梢「……でも、期待に応えてみせた、といっても、私はただ与えられたものをこなしているだけ」

梢「それに期待に応える、ということにかけては……私の仲間に得意な子もいるの。その子の影響も、あるかもしれないわ」クスッ

ミア「へぇ……キミの学校……蓮ノ空、だっけ? そこのスクールアイドルにもそういう子がいるんだ」

梢「ええ。私の自慢の仲間なの」フフッ

ミア「ははっ、そりゃあいい。いつか、ボクも会ってみたいね」クスッ

13: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:10:02 ID:???00
ミア「そうだ、実はキミに少し……訊きたいことがあるんだ」

梢「訊きたいこと?」

ミア「ああ、そうさ。キミだからこそ、訊きたいことがあってね」

ミア「──キミは……高校を卒業した後、どうするんだい?」

14: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:11:02 ID:???00
梢「! 卒業した後……」

ミア「キミは、ボクと同じ音楽一家の娘さ。きっと高校を卒業すると同時に、いろんな道が示されるだろう」

ミア「同じ境遇同士、キミがどうするつもりなのか、ボクは知りたいんだ」

梢「それ、は……」

梢「……」

15: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:12:01 ID:???00
ミア「……もし迷ってるんだったら一つ、提案があるんだ」

梢「提案……?」

ミア「ボクは、キミを高く評価している。キミの音楽を、もっといろんな人が聴くべきだとまで思ってるんだ」

ミア「なぁ、キミにその気さえあれば……世界中に、キミの音楽を響かせてみないか?」

梢「!」

ミア「あぁ、それこそ、ボクがキミを専属でプロデュースしても良い! キミの類稀な才能を、全世界に見せてやるんだ!」

16: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:13:02 ID:???00
ミア「どうだい? キミの考えを聞かせてほしい」

梢「……そう、ね」

梢「とても素敵なご提案なのだけれど……ごめんなさい」

ミア「はは、フラれちゃったか……もしかして、卒業後、何かやりたいことでもあるのかい?」

梢「いえ、卒業した後のことについては……まだあまり、考えられていないの」

ミア「? そうなのかい?」

梢「ええ。だって、今の私は──夢を追っている途中、だから」クスッ

17: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:14:02 ID:???00
ミア「! 夢、か……」

梢「私は、今はまだ……ラブライブ!優勝という夢だけを追いかけていたい」

梢「私の夢を、決意を聞いて……一緒に夢を叶える、そう言ってくれた子がいるの」

梢「今年こそは、全員で夢を叶えたい……だから、その先のことは……」

ミア「……なるほどね。そういうことなら、仕方ないさ」

梢「ごめんなさい、あなたのような方からのお誘いなんて、滅多にないことだとは思うのだけれど……」

18: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:15:02 ID:???00
ミア「いいや、気にしなくて良い。夢を追いかけられるのは、最高のことさ」

ミア「大切な夢に、ずっと手を伸ばせずにいたボクが言うんだから……間違いない」ニッ

梢「……そうかしら。夢を追いかけること、そう言っていただけると、私も嬉しいわ」クスッ

ミア「あぁ。キミ達のステージ、楽しみにしてるよ」

梢「! ええ、期待していてちょうだい」フフッ

19: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:16:02 ID:???00
────

ミア「It's getting late……そろそろ、お別れの時間かな」

梢「そのようね。今日はお食事にも誘ってくれて……本当に感謝しているわ」クスッ

ミア「No problem! ボクも、キミといろいろ話ができて楽しかったさ」

梢「こちらこそ。……ええと、最後に一つだけ、いいかしら?」

ミア「?」

梢「その……お願いがあるのだけれど……」

20: 名無しで叶える物語◆tFLfI1DC★ 2024/11/29(金) 19:17:01 ID:???00
梢「次に会うときは、ぜひあなたの……スクールアイドルとしての、歌を聴いてみたいの。……どう、かしら?」

ミア「……! もちろんOKさ! そのときはボクの、最高のsongを聴いてもらおうじゃないか!」

梢「ふふっ、それは楽しみだわ。では、名残惜しいのだけれど……またいつか、会いましょう」ニコッ

ミア「ああ。See you!」


おしまい

引用元: 【SS】梢「ハンバーガーは普段食べないのだけれど……」ミア「!?」