果林「はぁ、ねえ愛……愛？」

シーン

果林「居ないわ」

果林「……卒業したらこの学校に来ることはない、つまりあの子たちに会うこともない」

果林「要するに会う約束をしないといけないってことね」

果林「え？　どうやるの？」

果林「ねえ愛！　……居ないわ」

果林「愛だったらいきなり『今来れる？』とかこっちの事情もお構いなしで連絡してくるわね」

果林「私もそうすればいいのかしら。ちょっと練習しましょう」

果林『今来れる？』

ピコン

エマ『迷子？』

果林「ああ、私が急に連絡したらそう思われるのね……」

果林『ごめん愛を見つけたから大丈夫よ』

果林「……いやこれは私とエマの関係性が悪さしている可能性があるわね」

果林『今来れる？』

ピコン

彼方『迷子？』

果林「……」

果林『言ってみただけよ』

果林「……いや彼方はああ見えて意地悪なところがあるから」

果林『今来れる？』

ピコン

ミア『迷子なら迷子と言ってくれないか』

果林「……」

果林『ちょっと面白い話をしようと思ったけど、来られないならいいわ。“尺八様”で調べてみると良いわ』

果林「ふぅ、“今来れる？”作戦はダメね」

果林「……逆に道に迷ったフリをして連絡すれば」

果林「これは歩夢とか栞子ちゃんが心配しそうで申し訳ないからやめましょう」

果林「これが地方とか海外に行くならまだいいのよ！　久しぶりに東京に戻ったから会いましょうって言えるのに」

果林「私4月からも東京だから、何を理由に連絡すればいいの……？」

果林「何かを相談する、という体で連絡が自然かしら？」

果林「勉強がわからないは無理があるし……みんなの得意なこととか？」

果林「そう！　例えば最近仲良くなった人がアニメに詳しいからせつ菜に……？」

果林「アニメを教えて欲しいってなんか漠然としすぎ？　そもそもその流れでせつ菜に連絡は不自然ね」

果林「あ、ゲームなら特訓に付き合ってってことで璃奈ちゃんと遊べるわ！」

果林「と言ってもゲーム機はないしパソコンも今持ってるのじゃ大したものは出来ないから、まずは璃奈ちゃんのやってるゲームを調べ上げて……」ﾌﾞﾂﾌﾞﾂ

果林「……」

果林「私、キモ……」

果林「というかしずくちゃんに見たい演劇があるって誘うのが一番自然じゃない。そうしましょう」

果林「そこからこう、うまい具合に他のみんなも私を誘ってくれるはず、よね？」

果林「え、毎回私から連絡するもの？　卒業した先輩ってどういうスタンスでいればいいの？」

果林「そう、卒業して忙しい毎日を送る中慕ってくれる後輩から誘われて合間を縫って会いに行くみたいな」

果林「……私慕われてる？」

果林「ああっ！　比較対象がエマと彼方だから悪い風にしか思えないわ！　あの二人慕われ過ぎよ！」

果林「落ち着くのよ……私だってそれなりに慕われてるんだから」

果林「そうよね、今までだってあの子たちから……」

果林「……あんまり遊びに誘われてなくない？」

果林「思い返せば全員集まるとき以外で誘われてない気が……」

果林「エマと彼方に呼ばれたことはあったけど」

果林「大体服買いに行く時しか誘われてない気が……」

果林「……」

果林「じゃあシーズンごとに誘われるわね！」

果林「あの子たちが服で悩まなくなったら終わりだけど、せつ菜なら一生服で悩み続けるはずよ」

果林「ひとまず安心ね……」

果林「……別に虚しくないわ。頼られない先輩だって世の中にはいるんだから」

果林「今悩んでも仕方ないわ。今までの行いと性格のせいだから」

果林「？　何このチラシ？」ﾍﾟﾗ

果林「ああ、愛が置いて行ったのね。えっと、音楽フェスね」

果林「愛ったらずいぶん前に私が言ってた話を覚えてたのね」

果林「予定大丈夫かしら……って今月全然空いてないじゃない！」

果林「フェスの開催は！？　……5月3日ね。その日の予定は……」

果林「5月！？」ｶﾞﾀｯ

果林「……」

果林「もう、本当にもう……」（嬉しい）

果林「何なのあの子本当に」（嬉しい）

果林「すぅーーーーー」（嬉しい）

果林「はぁ……帰りましょう」

ガチャ

バタン

一方その頃

～寮～

ミア「……」ｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀ

エマ「ランジュちゃん……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

ランジュ「一体何があったの！？」


おわり