歩「魔人と呪いの少女」 前編

383: 矢橋P 24/11/17(日) 18:20:12 ID:D5BZ

イーエス   顔の無い女

約半年前から突如として現れた都市伝説のような存在
彼女を調べようとした人間は不気味なサッちゃんの歌と共に“喰われる”
ゆえにおぼろげに顔の無い女と噂される存在だった
しかしあまりにも犠牲者が増えたことで警察が動き出したところで本編が始まる

その正体は中谷育の負の感情そのものであり
普段は電脳の世界にいる
たくさんの人間を喰らい知識を吸収した結果、歩達と出会った頃には大幅に成長しており感情のようなものまで発現していた
電脳の世界に溶け込む力は大神の技術と環境があってこそだが
本来オカルト的な分野は大神の苦手とする部分であり彼女の出生にはまだ謎が多い
 

384: 矢橋P 24/11/17(日) 18:22:32 ID:D5BZ

中谷育   少女

とある事故で寝たきりになってしまった少女
親友の桃子とは同い年である
彼女の精神はイーエスに吸収されイーエスと融合し
肉体は市立病院で大神の監視下にある

385: 矢橋P 24/11/17(日) 18:24:52 ID:D5BZ

周防桃子  育の親友

11歳のごく普通の小学生だったが親友の育が自分を庇って交通事故に遭ってしまい寝たきりに
悲嘆に暮れる彼女のスマホから現れたのは中谷育の代わりを名乗る幽霊みたいな少女だった…………

386: 矢橋P 24/11/17(日) 18:27:25 ID:D5BZ

上守甲斐   第三世代最強のサイボーグ

クールな印象を受ける美人な大人の女性だが
大神グループの中でも最上位の幹部にして灰原の再来とも言われたサイボーグ
元々大神グループの役員だったがサイボーグ化に自ら志願し適合率の高さも相まって
最上位の幹部にまで登り詰めた
表の役員の顔とは別に裏の大神サイボーグ部隊を指揮する立場でもあるため彼女は実際とても忙しい
それに加えてイーエスの世話までしなければならず
感情が芽生え自由翻弄になったイーエスに彼女は頭を悩ませている

387: 矢橋P 24/11/17(日) 18:30:33 ID:D5BZ

真壁瑞希   サイボーグのエージェント

パライソタウンで改造されたサイボーグ。ハタ侵略に抗った少女達の導き役にもなった
パライソタウンの研究所が封鎖されて今はとある人物のエージェントを続けている
情報処理&内部工作兼戦闘用サイボーグにバージョンアップしており戦闘用サイボーグにも張り合えるようになっている
ただ具体的には筋力の増加であるため特殊な能力とかはなく
色んな装備を手品のように用いて戦うスタイルは変わっていない

388: 矢橋P 24/11/17(日) 18:34:14 ID:D5BZ

福田のり子   現役プロレスラー

ハタ侵略で瑞希と一緒に少女達を見守り続けたお姉さん
あれから武者修行も終わりプロデビューを果たて新人ながら確実に実績を積んでいる
本業が忙しい彼女だが瑞希とはよく連絡を取り合いあの時の子供達のその後を
今も案じている

同じ大人組の麗花とも付き合いもありたまに二人で登山に行っていたりする

389: 矢橋P 24/11/17(日) 18:36:50 ID:D5BZ

篠宮可憐   亜利沙の親友の大学生

ハタ侵略に抗った子供達の一人
ハタ侵略の後大学に進学した
人見知りが標準装備だった彼女もハタ侵略で成長し克服しつつある
その時に知り合えた仲間の中でも特に同年代の亜利沙や紗代子とは進路が違えど交流は続いていて
今回瑞希やのり子と一緒に助太刀しに来た
彼女の五感の鋭さはもはや超能力並みである

390: 矢橋P 24/11/18(月) 11:52:52 ID:JKzw


第八幕 交差

 

391: 矢橋P 24/11/18(月) 11:54:03 ID:JKzw

イーエスに宣戦布告をしてからから数日経った
あれから今のところ大神側からの何かアクションは無い
アタシ達の居場所が掴めていないのか泳がされているのか……
いずれにせよ予断を許さない状況ではあるんだけど
たまに瑞希が様子を見てくれるしね

亜利沙と可憐はアタシの隣の部屋を借りて生活している(アタシの逆の隣が環とひなたの部屋)
渦木さんが手を回してくれたらしく
警察の捜査で使いたいと説明したら大家さんはあっさり承諾してくれて面倒な手続きを一切免除にしてくれた
おかげでたまに 「捜査状況はどうなったい?進んだら教えてね」
って大家さんが聞いてくるけどね
とにかく宣戦布告をした以上イーエスと勝負して勝つ方法を考えないと
 

392: 矢橋P 24/11/18(月) 11:55:26 ID:JKzw

5月28日  AM8:00 アパート前




ガチャ

歩「グッドモーニング!」

典子「あ、おはようございます歩さん」

歩「典子ちゃん一人?」

典子「環ちゃんがこぶんを追っかけて、それにひなたさんと朱里さんも慌てて追いかけて行きました」

歩「もう~、環は朝から元気だね」

典子「ふふ、そうですね」
 

393: 矢橋P 24/11/18(月) 19:55:17 ID:jfor

歩「あ、ヒマワリだいぶ大きくなっているね!」

典子「こないだまで芽だったんですけど、ひなたさんが一緒に世話してくれてからこんなに大きくなりました」

典子「ひなたさんがいうにはあと1ヶ月もすれば花が咲くかもって」

歩「7月頭には咲くかもしれないんだね。そうなったらこの花壇も夏らしくなるよ」
 

394: 矢橋P 24/11/18(月) 19:57:32 ID:jfor

典子「…………」

典子「なんだか歩さんと二人っきりになるの久しぶりですね」

歩「ここもだいぶ賑やかになったからね」

典子「今だから言いますけど歩さんと初めて会った時はチャラそうなお姉さんだな……って思っていました」

歩「えー!?アタシの初対面ってそんなんなの」

典子「あの時は開田さんも傍にいましたから」

歩(ああ……確かに見知らぬ仲いい男女(しかも片方はオタク)がいきなり引っ越して来たらそりゃ警戒するよね)
 1

395: 矢橋P 24/11/18(月) 20:01:47 ID:jfor



歩「……典子ちゃんはさ、何でヒマワリを育てようと思ったの?」

典子「…………」

歩「あ、喋りたくないならいいんだよ」

典子「いえ、今なら環ちゃん達もいない……から」
 

396: 矢橋P 24/11/18(月) 20:07:28 ID:jfor


典子「お父さんがね、ヒマワリ大好きだったの」

典子「だから……ヒマワリが咲いたらヒマワリを見に戻ってくるんじゃないか……って」

歩「……うん」

典子「まったくおかしいですよね。……そんなわけないのに」

歩「だけどその気持ちお父さんに伝わってると思うよ」

典子「歩さんはお父さんを知ってるんですか」
 

397: 矢橋P 24/11/18(月) 20:11:32 ID:jfor
アタシがこのアパートに引っ越してきた頃には典子ちゃんのお父さんは亡くなっていた
けど幽霊として何度も会話はしていたんだ
でもそう話すわけにはいかないよね

歩「このアパートに来る前に会ったことがあってさ」

歩「軽くて愚痴っぽい人だったね」

典子「……酷い評価。でも合ってる。まさにそんな感じ」

398: 矢橋P 24/11/18(月) 20:26:39 ID:jfor

歩「でも典子のことはずっと心配していたよ」

歩「……実はお父さんから何かあったら君をよろしく頼むって言われたんだ」

典子「……そんなこと言って」

典子「お仕事クビになっても心配するな……って笑ってて」

典子「ようやく面接に通ったぞ。って言ったその日に車で跳ねられて……」

典子「まったく……バカだよ」グスッ

歩「……典子ちゃん」
 

399: 矢橋P 24/11/18(月) 20:29:49 ID:jfor


典子「でもいいんです。歩さんが来てから環ちゃんやひなたさん達と出会って寂しくないですから」

典子「私も前に進めるよ」

典子(ありがとう、お父さん歩さん)

 

400: 矢橋P 24/11/18(月) 20:34:25 ID:jfor

AM 14:00   公園




歩「よーし。今日はここまでにしよう」


あの宣戦布告以降、ダンスの自主練の時間が増えた
イーエスとの勝負、あれから考えたけどやっぱりアタシにはダンスしかない
そう思うと練習に一層熱がこもった

401: 矢橋P 24/11/18(月) 20:55:28 ID:jfor

美保「まあなかなかいいんじゃない?」

この娘も相変わらずだけど

歩「また見に来たんだ」

美保「別にいいじゃない減るもんじゃないし。会社事業って疲れるのよ。いい目の保養だわ~」

歩(アタシのダンスは美保の保養じゃないんだけどなぁ……)
 

402: 矢橋P 24/11/18(月) 20:57:13 ID:jfor

美保「それよりデビューはいつなの?」

歩「へ?」

美保「あら違ったかしら」

美保「ここ最近の歩のダンス気合い入ってるじゃない。これはデビュー決まったんだわって思ってたけど」

歩「色々とね……デビューはまだだよ」

歩(意外とアタシのことしっかり見てるんだな)

403: 矢橋P 24/11/18(月) 20:58:23 ID:jfor

美保「デビュー決まったらすぐ私に教えてねっ!必ずよ!」

歩「そんなにすぐ知りたいの?」

美保「何言ってるの。あたしがあんたの1番最初のファンなのよ。当然じゃない」

歩「ええ…。美保が一番最初のファン?」

歩「でもそうなるのか…………あ」

歩(まてよ、これって……)

404: 矢橋P 24/11/18(月) 20:59:43 ID:jfor

美保「あんたが有名になったら1番最初のファンの私の鼻も高い……」

歩「サンキュー美保!」ガシッ

美保「え?ええ、どうも……」カアア


イーエスの攻略のヒントを一つ貰えたよ




 

405: 矢橋P 24/11/18(月) 21:18:10 ID:jfor


PM15:00  歩の部屋




歩「ただいまー」

歩「茜は……ランプが無いから環達のところかな」
 

406: 矢橋P 24/11/18(月) 21:20:09 ID:jfor

悪魔「おや、それは都合がいいですね」ババーン

歩「うわっ、あんたは!」

悪魔「どうも。今日はあなたに忠告をしに来たんですよ」

歩「悪魔が忠告?」

悪魔「そう警戒しないで下さい。彼……いや今は彼女でしたか。のことですよ」

歩「茜のことか」

407: 矢橋P 24/11/18(月) 21:21:44 ID:jfor

悪魔「彼女ねぇ……実は結構危険なんですよ。性格はともかくやり方がね」

歩「そうかな?」

悪魔「願いを聞いてそれを期間内に実行しないと死んでしまう魔法。彼女のやり方は何十年も前から続いているわけですが度々問題を起こしていましてね」

悪魔「彼女のそのやり方、悪を助長させるんですよ」

歩「悪を助長って……それは言い過ぎじゃないか」
 

408: 矢橋P 24/11/18(月) 21:23:18 ID:jfor

悪魔「おや、まだ気づいておられない?」

悪魔「あなたの願いは人に迷惑をかけない願いだからいいんですけどね。人の願いってそんな綺麗なものばかりじゃないんですよ」

悪魔「嫌な奴が居なくなってほしい。とか、あんな連中この国から居なくなってほしい。などの願いだったらどうなります?」

歩「あ……」

悪魔「例えば一億円欲しいと願った者は最終的に銀行強盗を起こして捕まったケースもありました」

悪魔「なんせ自分の命のために仕方がなかったって言い訳が出来ますからね」

悪魔「ほら、あなた達の歴史の中でも何故この人が突然こんなことしたんだろう?ってケースが無いですか?」

歩「確かにあるけど……まさか!」

悪魔「ええ、いくつかは彼女の仕業です」
 
悪魔「今まで傍観していましたが私も流石にそろそろ止めた方がいいと思いまして」

悪魔「彼女の契約というなの呪縛。あなたがよければ解除するのをご協力しますよ」

409: 矢橋P 24/11/18(月) 21:24:44 ID:jfor

歩「…………」

歩「いいよ。このままで」

悪魔「おや、もしかしたらその魔法で死んでしまうかもしれないのに?」

悪魔「彼女あなたを手助けしてくれてますか?散々事件に深入りさせておいて肝心な部分をあなたに丸投げしているでしょう?」

歩「確かにそういうところはあるよ。でも茜はアタシに大事なことを教えてくれたんだ」

歩「“願いは自分で叶えるもの“」

歩「茜がいなかったらアタシは自分で事件を追おうとはしなかった。ダンスだって……諦めてた」

歩「アタシにとってそれで十分だよ」

410: 矢橋P 24/11/18(月) 21:26:29 ID:jfor

悪魔「やれやれ。あなたは人間の中でも呆れるほどお人好しなんですねぇ。後で必ず後悔しますよ」

歩「どんな甘いこと言われても悪魔の囁きに耳を傾けるほどアタシは間抜けじゃ無いよ」

悪魔「酷い風評被害ですねぇ。まあ否定しませんけど」フフッ

歩「あんたも人々の心から生まれたんだろ。なら……」
 

411: 矢橋P 24/11/18(月) 21:27:57 ID:jfor
悪魔「そのあなた方人間のせいですよ」

歩「え」

悪魔「昔はね。人間の願いってささやかなものだったんですよ」

悪魔「腹いっぱいご飯を食べたいとか遠く居る大好きな人に会いたいとか川に橋を架けてほしいとか」

悪魔「だから私も……彼も。最初はちょっぴり意地悪しても最後にはちゃんと願いを叶えてあげたんですよ」

悪魔「それが今はどうです?願いの数を100に増やせだの王様にしてくれだの億万長者だの不老不死だのチートだのハーレムだの」

悪魔「馬鹿馬鹿しくてまじめに叶えてあげる気も起きませんよ」
 

412: 矢橋P 24/11/18(月) 21:29:10 ID:jfor

歩「で、でも。どんな願いでも叶えてあげるって言われたら、なかなかささやかな願いになんて出来ないよ」

悪魔「私に言わせればね、私達のような存在が酷く邪悪な存在になったのはあなた達人間の心が汚れて醜くなったからですよ」

悪魔「じゃあね人間。私はあなた達が不幸になることを心から望んでますよ」


 

413: 矢橋P 24/11/18(月) 21:30:51 ID:jfor

歩「待って!」

悪魔「まだ何か?」

歩「その……茜の前の契約者ってどんな人だったの?」

悪魔「ああ……。彼の前の契約者はね余命が幾ばくも無い少女でしたね」

悪魔「彼は哀れみ半分ちょっかい半分で契約したんだと思いますよ」

悪魔「私も余命が幾ばくも無い少女が最後に何を願うのか興味があって見てました」

悪魔「そしたら可笑しいことにね。その少女は“アイドルになりたい“って言ったんですよ」フフッ

414: 矢橋P 24/11/18(月) 21:32:23 ID:jfor

歩「!!」

悪魔「流石の彼も驚いたようでした。叶うのが不可能の類いの願いでしたしね」

悪魔「やめればいいのに彼はそれを受けてしまって」

悪魔「次第に少女は自分の体でアイドルになるのが無理と理解した時」

悪魔「代わりに彼にアイドルになってほしいって願ったようですよ」

歩「…………」

悪魔「最終的にそれが少女の彼に対する遺言になりました」

悪魔「でもそれも不可能な願いなんですよ。どんなに外見を変えようと彼は魔人でアイドルにはなれないんですから」

悪魔「だからせめてあなた達に託そうとしているんじゃないですか」
 

415: 矢橋P 24/11/18(月) 21:34:02 ID:jfor

歩「…………そう」

悪魔「いいですね、その表情。お喋りをした甲斐がありました」

歩「……ならアタシを救ってくれたのもその少女の願いだよ」

歩「あんたは知らないだろうけど茜はあの姿が気に入っているんだ。大事にしているんだよ」

歩「確かにあんた達が歪んだのはアタシ達人間のせいだ。でも茜を変えたのもその少女の願いおかげなんだよ」

歩「人が願うことは……悪いことだけじゃないよ!」


悪魔「はぁ、そうですか。まあせいぜい頑張ってください」スゥゥ




 

416: 矢橋P 24/11/18(月) 21:36:30 ID:jfor


PM17:00


茜「ただいま~。いやー環ちゃんがこぶんを追っかけてどんどん外に行っちゃうもんだからさー」

歩「大変だったね」

歩「……ねえ、茜は歌を歌うの好き?」

茜「もちろん!……って言ってなかったよね?茜ちゃんの好みよく気づいたね~」

茜「これもマイハマンが契約者として茜ちゃんとの絆が深まった結果かな!」

歩「じゃあちょっと一緒に歌おうよ」

茜「デュエットのお誘い!いいよいいよ~。茜ちゃんが得意な歌はね~キャピキャピのアイドルソング!」


 

417: 矢橋P 24/11/18(月) 21:38:42 ID:jfor


次の日





歩「あれ、アタシに手紙が来てる。今どきはがきの手紙なんて誰からだろ……」ペラッ

歩「!!!」

418: 矢橋P 24/11/18(月) 21:40:37 ID:jfor

亜利沙・可憐の部屋




亜利沙「桃子ちゃんから手紙が来たんですか!?」

歩「そう、内容は……」


 『6月1日の13時ちょうどにアミューズメントパークに来て。絶対だよ!』


歩「だってさ」

419: 矢橋P 24/11/18(月) 21:42:19 ID:jfor

亜利沙「危険な香りがぷんぷんしますね……」

可憐「あの……何でその桃子ちゃんは歩さんの住所がわかったんでしょうか」

歩「それははっきりわからないけど……」

歩(おそらく環達に果たし状を送って来たやつと同じ系統かな)
 

420: 矢橋P 24/11/18(月) 21:44:42 ID:jfor

歩「それで、アタシはこの誘いに乗ろうと思う」

可憐「それって……」

亜利沙「かなり危険じゃないですか」

歩「住所知られているならどの道同じ」

歩「アタシ達を始末する気ならもう直接ここに乗り込んで来てるよ」

歩「それに何で桃子が今この時代に手紙で連絡してきたと思う?」

亜利沙「それは……スマホだと…………あ」

歩「多分そういうことだと思うよ」

421: 矢橋P 24/11/18(月) 21:46:04 ID:jfor

歩「それにアタシもイーエスと対決するには桃子の協力が必要だって思ってたんだ」

歩「いずれにせよ会って説得しなきゃいけなかったんだ。本人の方から持ちかけてくれるんだったら願ったりだよ」

亜利沙「わかりました。そこまで言うでしたら桃子ちゃんに会いに行きましょう」

亜利沙「でも、それなりの準備をしてからですよ!」

歩「ごめん。みんなには協力して貰いっぱなしだけど今回もお願い」

可憐「私も亜利沙ちゃんも危険を察知するのは得意です。任せて下さい」
 

422: 矢橋P 24/11/18(月) 21:50:54 ID:JKzw

歩「それと……この話しは環や朱里にはないしょにしてほしいんだ」

歩「巻き込みたくないから」

亜利沙「当然です。これは亜利沙達の問題ですからね」

亜利沙「瑞希さんにも連絡しておきます、6月1日まで時間もありますからじっくり準備しましょう」










朱里「……」コソコソ

朱里「タイミングが悪かったかしら」

423: 矢橋P 24/11/18(月) 21:51:59 ID:JKzw


環「あかり~。あゆむとありさと可憐お姉ちゃん呼んできてくれた?」

朱里「あの三人は今忙しいから後にしましょ」

ひなた「ありゃ、せっかくホットケーキ焼けたのに残念だねぇ」


朱里「…………」

朱里「二人とも3日後に3人でアミューズメントパークに行くわよ」

424: 矢橋P 24/11/18(月) 21:53:32 ID:JKzw

環「え、外に出ていいの?行く行く!!」

ひなた「外に出て大丈夫なんだろうか?」

朱里「私達も閉じこもってないでたまには外に出た方がいいわ」

朱里「……念のためよ」ボソッ

環「それじゃあゆむもさそって……」

朱里「駄目よ。この事は歩達にはないしょ、言ったら止められるわ」

環「うーー。ざんねんだぞ」


 

425: 矢橋P 24/11/19(火) 03:37:40 ID:rjTS


  裏と表がついに交差する


 

426: 矢橋P 24/11/19(火) 03:39:43 ID:rjTS
第八幕終わり

今回は閑話といった感じですが大事な回だったと思います
このSSで書きたかったことが詰まっているので

427: 矢橋P 24/11/19(火) 07:39:20 ID:dsZa

茜ちゃん   願いを叶える魔人

かつては髭を生やしいかにもランプの魔人といった風貌だったが、とある少女の願いによって今の姿になった
美少女を自称し明るさを絶えず振りまく姿もその少女の影響によるものである
歩には特に目的があって近づいたわけではなかったが本人の気付かぬうちに歩の何かに惹かれていたようである

428: 矢橋P 24/11/19(火) 09:38:35 ID:dsZa


第九幕 Sランク

 

429: 矢橋P 24/11/19(火) 09:40:17 ID:dsZa


PM12:30 アミューズメントパーク前



<歩さん聞こえますか 
          
歩「こちら歩、聞こえるよ」

<感度良好みたいですね。このまま続けます
 

430: 矢橋P 24/11/19(火) 09:43:18 ID:dsZa

桃子に会うことになるまでアタシ達は出来る限りの下準備を行った

まず桃子と直接会うのはアタシ一人にした
手紙に人数までは指定されて無かったけど桃子一人に多人数で押しかけるのもどうかと思ったし
もし罠があったとしてアタシ達が固まっていたら一網打尽になってしまう
だからアタシ一人が桃子と話しをする
亜利沙と可憐は遠くで待機していて危険を察知したら無線で知らせる係だ
今回はのり子や渦木さんは仕事で来られなかったけど瑞希は来てくれていて
やや遠くで様子を伺っていてアタシに何かあったら真っ先に護衛に来てくれるんだ

アミューズメントパークの構造も事前にだいたい調査して、非常口や危険な時に隠れそうな場所も頭に叩き込んだ……と思う
 
ちなみに茜のランプは亜利沙達に預けてる
茜もいざってなったら連絡係になってくれるって!
 

431: 矢橋P 24/11/19(火) 09:45:17 ID:dsZa



桃子「ちゃんと30分前に来たんだね。まあ初印象は合格かな」


おっと桃子が来たみたいだ
桃子も来るのが早いね
アタシ達も準備のことも踏まえて早く来て正解だったよ

 

432: 矢橋P 24/11/19(火) 09:47:06 ID:dsZa

桃子「遅れなかったこともそうだけど、あの手紙の内容で怪しまずによく来たね。お姉ちゃんを褒めてあげる」

歩「アタシは今の時代に手紙で連絡してきたことに驚いたけど」

桃子「お姉ちゃん馬鹿なの?スマホみたいな電波を使ったものだとイーエスにばれちゃうでしょ!」

歩(やっぱり……)

433: 矢橋P 24/11/19(火) 09:49:07 ID:dsZa

歩「つまりこれから桃子が話したいことは“イーエスに聞かれちゃマズいこと“なんだね」

桃子「あ……」

桃子「お姉ちゃん、今桃子にかまをかけたでしょ!!」

歩「大人は案外ずる賢いんだよ」

桃子「んーーっ」カァァ

桃子「お姉ちゃんはそんなことより桃子に問い詰めなきゃいけないことあるんじゃないの?」

歩「なぜアタシの住所を桃子が知っているってこと?」

434: 矢橋P 24/11/19(火) 09:59:52 ID:dsZa

桃子「わかってるじゃない。お姉ちゃんは桃子の言うことを聞かなきゃいけない立場にあるってことだよ」

桃子「桃子の言うこと聞かないようだったらお姉ちゃんの住所、大神の人に教えちゃうから」

歩(桃子にアタシの住所を教えた元は大神とは違う別の筋からってことか)

歩「それは困るなー」

桃子「本当にそう思ってるの?桃子を馬鹿にしてないよね」

歩「こんなことないよ」

桃子「怪しい……。とりあえず入り口にうろうろしてたら怪しまれちゃうし中に入るよ」


 

435: 矢橋P 24/11/19(火) 10:02:13 ID:dsZa

ここアミューズメントパークは一般的な遊園地ほどの規模はない
ジェットコースターがあるわけでもないし
まあまあ広い公園みたいなところだ
一応小規模の遊具みたいなのはあるんだけどね
平日なせいか中にいる人もまばらだった




桃子「桃子、ここがいい。ここに座って!」


アミューズメントパークに入るなり桃子が指定したのは施設の外れにあるベンチだった
 

436: 矢橋P 24/11/19(火) 10:04:28 ID:dsZa

歩「遊具とかには乗らないの?」

桃子「桃子達は遊びに来たわけじゃないでしょ!」

歩「そりゃそうだね」

桃子「それに、ここは監視カメラがない場所だから」

歩「!!」

歩(この子はこの子なりにイーエスの対策を考えていたんだ)
 

437: 矢橋P 24/11/19(火) 10:07:26 ID:dsZa

桃子は子供だね。……という態度は失礼だったね
アタシも気を引き締めて桃子に本気で向き合おう


桃子「ふふーん。ちょっとは素直になったね」

桃子「この場所を待ち合わせに選んだのもここはデンノーシティの中でも数少ない大神系列じゃない施設だからだよ」

桃子「何度も来たことがあるから隅々まで知ってるし」

桃子(……育と何度も来たから)

438: 矢橋P 24/11/19(火) 10:09:42 ID:dsZa

歩「そうだったんだね」

歩「それで……桃子の考えを聞かせてほしいな」

桃子「いいよ」

桃子「お姉ちゃんはね。桃子がイーエスを倒すのを手伝うの!」ビシッ

歩「う、うん」

桃子「なんか反応が薄いね。もっと驚いてもいいんじゃない?」

歩(予想はしてたけど、ここまでど真ん中だと逆に……)
 

439: 矢橋P 24/11/19(火) 10:11:52 ID:dsZa
<ガーガー


歩(あれ無線機から発信だ……)


<ガーガー

歩(でもノイズばっかで声が聞こえないな)

 

440: 矢橋P 24/11/19(火) 10:13:55 ID:dsZa

桃子「お姉ちゃん、ちゃんと聞いてるの?」

歩「あ、ごめん」

歩「それはいいんだけど……どうやってイーエスを倒すの?」

桃子「それを今からいっしょに考えるの!」

桃子「いちおう桃子も考えたよ。除霊師に頼んでみたらどうかな」

歩「ああ……それは辞めた方がいいよ。多分除霊する前に除霊師の方が先にイーエスに喰われちゃうから」

歩(そもそもイーエスは具現化によって生まれた存在だから除霊なんて出来ないだろうし)

桃子「う……。お、お姉ちゃんは何か良い案でもあるの?」

歩「まだ完全には形になってないんだけどアタシなりに考えていることが……」

 

441: 矢橋P 24/11/19(火) 10:16:31 ID:dsZa

ピンーポンーパーンポーンー


歩(あれ、管内放送だ)


<園内のお越しの皆様~

<これからスペシャルなイベントが起きますので~

<どうか『園内に留まっちゃって下さい~』


ピンーポンーパーンポーンー
 

442: 矢橋P 24/11/19(火) 10:19:35 ID:dsZa

歩(これは……)

桃子「どうしたの、何かイベントがあるみたいだけど桃子達には関係ないでしょ」

歩「いや……様子が変だよ」


歩(まばらに居た一般の人達が放送を聞いた瞬間命令されたように一斉に動きだした)

歩(これは何かある。亜利沙達に1回連絡しないと)


歩「こちら歩!変な管内放送があったけど何か気づいたことある?」


<ガーガー


歩(駄目だ、ノイズばかりで亜利沙達から返事が来ない!)
 

443: 矢橋P 24/11/19(火) 10:22:31 ID:dsZa


???「ボンジュール。ミスモモコ」


動揺するアタシの前に現れたのは……
鼻がやや高く金髪の髪、あれは欧米人の男性だ
髪型は少々奇抜で何というか……バナナっぽい
 

444: 矢橋P 24/11/19(火) 10:23:58 ID:dsZa

???「駄目じゃないですかミスモモコ。彼は“我々“と敵対している者ですよ?」

桃子「あなた誰!」

???「別に自己紹介する必要はありませんね」

???「気づいておられないようでしたけどあなた大神から監視されてたんですよ」

桃子「え……」

???「ミス上守からミスモモコが“我々“に不都合な存在になった時は好きにしてよいことになってます」

???「なーに。あなたの始末は禁じられていますから殺しはしませんよ」

???「“我々“は生かさず殺さずが得意でしてね」
 

445: 矢橋P 24/11/19(火) 18:02:33 ID:rjTS

桃子「……っ!」バッ

歩「何をするつもりだ」

桃子は青い顔をして隠れるようにアタシの後ろに回る
大神によって実質上監禁状態にある育ちゃんを思いだしたみたいだ
 

446: 矢橋P 24/11/19(火) 18:04:25 ID:rjTS

???「そしてあなたは抹殺リストの一人ですね。ふふ、手間が省けましたよ」

歩「桃子!ここは一旦逃げるよ」

桃子「う、うん」


???「ウフフ、怖ーい大人から『逃げちゃってください』」


ピキーン


歩「な、なんだ足が動かない」

桃子「桃子も……」
 

447: 矢橋P 24/11/19(火) 18:06:48 ID:rjTS

???「おや、逃げないのですか。それなら好きにしていいってことですね」

歩(くそ……いったいどうなってるんだ!)


ヒュン

???「おっと」ヒョイ


瑞希「お二人から離れてください」

歩(よかった。瑞希が来てくれた)
 

448: 矢橋P 24/11/19(火) 18:15:52 ID:rjTS

???「おや、こんにちは。第二世代サイボーグの真壁瑞希ですね」

???「もちろんあなたがいることも気づいていましたよ。一度お会いしたいと思っていました」

瑞希(私のことも把握済みですか……)

瑞希「舞浜さん。私が時間を稼いでいる間に周防さんを連れて逃げてください」

歩「それが……出来ないんだよ。足が金縛りにあったように動かないんだ」


???「その服の下にはさぞかし色んな武器があるんでしょうねぇ。それで『私を攻撃しちゃってください』」


ピキーン


瑞希「……確かに動けません」

瑞希「これは……超能力ですね」

449: 矢橋P 24/11/19(火) 18:18:07 ID:rjTS

???「そうです。みんな忠告してあげているのに“私の意見に従えない“んです」

???「複雑な命令などは出来ないですし抵抗出来ないわけではないですが反対ってところがミソでね」

???「人間というのは〇〇をしろーって命令形で命令するより反対の方を言って暗示をかけた方がよく効くんです」

???「まあコツを掴めばかなり便利でオ・ト・クです」


歩(暗示だって!?そんな簡単に出来るもんなの!)

桃子(超能力のことは桃子も知ってる。でもこんなの……聞いたこともない)
 

450: 矢橋P 24/11/19(火) 18:22:34 ID:rjTS

???「それではミス真壁。今からあなたを思いっきり殴るので『避けちゃってください』」

瑞希「ぐ……」ググ……

ボガッ


バタン


桃子「お姉さん!」

歩「なんてひねくれた能力なんだ……」

???「さて、次はお二人ですよ」
 


451: 矢橋P 24/11/19(火) 18:24:51 ID:rjTS

バギッ

???「ほう……」


逃げられないアタシ達に迫る謎の超能力者に誰かが跳び蹴りをくらわせた……って朱里!?

朱里「あんたよっぽどのことをしたのね。コイツに狙われるなんて」

歩「何で朱里がここに!?それにその顔……」

突然現れたことにも驚いたけど朱里の顔にはくっきりと殴られた跡が残っていた


 

452: 矢橋P 24/11/19(火) 18:26:28 ID:rjTS


数刻前 アミューズメントパーク内





環「わー、こんな広いところで遊べるなんて楽しいぞ~」

ひなた「何だか楽しそうなところだべさ」

朱里「こら、あまりはしゃがないの」

朱里(歩達に気付かれたらまずいのに……)

453: 矢橋P 24/11/19(火) 18:28:28 ID:rjTS

ピンーポンーパーンポーンー


ひなた「おや誰か迷子かねぇ」

環「あれ、たまきなんだか帰りたくなっちゃった」

ひなた「そうだねぇ。あたしも……」

朱里「確かに……でも、これって……」ハッ
 

454: 矢橋P 24/11/19(火) 18:30:13 ID:rjTS

朱里「環!!」ガシッ

環「どうしたのあかり?」ビクッ

朱里「今すぐヒーローに変身してあたしを思いっきり殴りなさい!」

環「えっ、何で……」

朱里「いいから早く!」

環「わ、わかったぞ」


\ピカーッ/


環「全く、痛いじゃ済まないからな!」

 

455: 矢橋P 24/11/19(火) 18:32:16 ID:rjTS

現在




朱里(まだ頭がクラクラする。けどコイツの暗示を解くためには一度気を失う必要があったから仕方ないけど……)

朱里「そんなことどうでもいいでしょ。コイツは世界でも4人しかいないSランクの超能力者デス・マスよ」

※デスマスの名前はデス・マスが正式みたいですがゲームの中でもデスマス表記の部分もありますしデスマス表記で行きます


デスマス「おや、ミス浜野。約1年間半ぶりぐらいですか」

デスマス「戦争であなた方ヒーロー達をボコボコにした時以来ですねぇ」

朱里「ええ、あの時はたっぷりお世話になったわ」
 

456: 矢橋P 24/11/19(火) 18:35:23 ID:rjTS

桃子「ねえ突然現れたお姉さん。超能力者はわかるけど……Sランクってなんなの?」

朱里「世界で1番超能力者を抱えるジャジメントは独自で超能力者にランク付けしたの」

朱里「数多い超能力者の中でもSランクは一握りしかいないわ」

朱里「最凶のテレパスで南米の魔女と恐れられたルチア、ロシアの生ける伝説ウルフェン、テロで数百人を虐殺したバジリスク、念動力で最高出力を出せる双海姉妹」

朱里「彼らでさえAランク止まりなのよ」

デスマス「Sランクの称号は戦闘能力や能力の派手さによって決められるわけではないですからねぇ」

デスマス「SランクのSはSpecial(特別)のSじゃなくてStrategy(戦略)のSなんです。ジャジメントの作戦にも影響を及ぼせるからSランクなのですよ」
 

457: 矢橋P 24/11/19(火) 18:38:41 ID:rjTS

デスマス「ですがミス浜野。あなたの解説に一つだけ間違いがあります」

デスマス「今世界にいるSランクは6人です。あれから2人増えたんですよ」

朱里「!!」

デスマス「コードネーム“パイプ・ドリーム“と“ピース・メーカー“。フフ……お二人ともとんでもない能力者ですよ」

デスマス「ですが安心してください。パイプ・ドリームはその名のごとく煙みたいに掴み所のない方でしてね。まああなた方の前に現れることはないでしょう」

デスマス「ピース・メーカーに至っては、かなーり問題児でしてね。これも気にするだけムダです」
 

458: 矢橋P 24/11/19(火) 18:41:09 ID:rjTS

デスマス「ついでに教えてあげましょうか、とても悪いニュースを。今日はもう一人、Sランクが来ているんですよ」

朱里「なっ!?」

朱里「天海春香はまず無い。デイライトだったらあたし達はとっくに全滅してる」

朱里「だとすると……ババヤガンね」

デスマス「大正解です。もう私達は彼女の能力の影響下にあります」

459: 矢橋P 24/11/19(火) 18:43:45 ID:rjTS

瑞希「浜野さん、ババヤガンとはいったい……」

朱里「自身及び周囲のものを“機械から非探知にする“能力者よ」

歩「え……Sランクとかって言ってる割には地味だね」

デスマス「はぁ……、彼女の能力の恐ろしさがわからないなんて。彼女の能力は私の能力よりももっと凶悪ですよ」

朱里「一切の機械から探知されないってどういうことかわかる?センサーに引っかからないしカメラにも映らないからどこでも侵入し放題なのよ」

朱里「しかも他にも付与出来るから彼女の能力を受けた戦闘機やミサイルはレーダーにも映らなくなるし潜水艦に乗って潜れば彼女を見つけ出すことは不可能ね」

歩「た、確かに」
 

460: 矢橋P 24/11/19(火) 18:45:42 ID:rjTS

桃子「でも今桃子達に関係あるの?」

デスマス「言ったでしょう。すでに私達もその影響を受けていると」

瑞希「まさか松田さん達と連絡取れなくなったのは……」

デスマス「そう、すでに能力を受けたあなた方がスマホを触ってもタッチパネルは反応しないですしマイクに喋ってもあなた方の音声を機械は認識出来ません」

デスマス「まあ流石に力学的なものまでは及びませんからスイッチやレバーみたいなものは反応しますが」

歩(そうか、無線機が鳴っていた時、亜利沙達は何か伝えようとはしてたけど無線機が音声を拾えなかったんだ)

デスマス「つまり……これから起こることはあらゆる機械に一切記録は残らないですし私の能力で人払いも済ませました」

デスマス「後は後片付けさえしっかりすればどんなことをしてもいいってことですよ。誘拐だろうが殺しだろうがね」ゴゴゴ
 

461: 矢橋P 24/11/19(火) 18:47:12 ID:rjTS

朱里「黙ってやられると思う?」グッ

デスマス「おや勇ましいことで。その硬く握りしめた拳で『私を殴っちゃってください』」


バキッ


朱里「あなたに言われなくてもそうするわ」


歩「すごい。殴るのが封じられているはずなのにアイツを殴ったぞ」

桃子「そのままやっちゃえ!」
 

462: 矢橋P 24/11/19(火) 22:00:06 ID:rjTS

デスマス「うーん、おかしいですねぇ」イテテ

瑞希「浜野さん。あなたには超能力避けの装備があるのでしょうか?」

朱里「あるわけないでしょそんなの」

朱里「なんてことはないわ。あたしはアイツを殴ったんじゃない、アイツの“服“を殴ったのよ」

瑞希「!」

瑞希「なるほど。その手がありましたか」
 

463: 矢橋P 24/11/19(火) 22:02:50 ID:rjTS
朱里(でもその方法も行動そのものを制限されたら終わりね。次の暗示がくる前にたたみかける!)ブン

パシィ


朱里「な……」ギリギリ

デスマス「まあまあのアイデアでしたよミス朱里」

デスマス「ですが残念。超能力を抜きにしても私はあなたより強い」

ボガッ


歩「朱里!」

464: 矢橋P 24/11/19(火) 22:07:40 ID:rjTS

朱里「……サイボーグあたしを軽々投げ飛ばすなんて大した腕力ね。いったいどれ程のドーピングをしたのかしら?それとも別の超能力……」ググ…

瑞希「違います浜野さん。私も彼に殴られて確信しました」

瑞希「彼もまた“サイボーグ“なんです」


朱里「  は?  」

朱里「いやいやいや。流石にそれはないはずよ」

デスマス「おー、流石ミス真壁。鋭い観察力です」


デスマス「そ の と お りですよ」

465: 矢橋P 24/11/19(火) 22:11:16 ID:rjTS

朱里「デスマス。あなたも冗談も大概にしなさい!」

朱里「あなたはジャジメントのSクラス超能力なのよ。その立場がわかって言ってるの!」


歩「どうしたんだ朱里、何をそんなに焦っているんだよ」

デスマス「そうですよねぇ。一般人ならまだしもあなたもサイボーグですし傍にいるミス瑞希もサイボーグです」

デスマス「今さら一人ぐらいサイボーグが増えたところで何もおかしい話しじゃないじゃありませんか」

デスマス「ああ、もしかして受け入れられないのですか」


デスマス「“大神とジャジメントが手を組んでいた“って事実がね」

466: 矢橋P 24/11/19(火) 22:17:24 ID:rjTS

朱里「………」ガクガク

朱里「嘘よ」ボソッ

朱里「あんなに大神とジャジメントは争っていがみ合っていたじゃない!」

デスマス「確かに2年前大神とジャジメントは戦争をしていました。あなたも途中で参戦してましたよね」

デスマス「ですが1年前にですね。強者同士が潰し合うのがばかばかしくなったんですよ。それで休戦と同時に裏ではこっそり手を組む事にしたんです」

デスマス「大神とジャジメントが潰しあったところで他が喜ぶばかりで我々に利益はないですから」

朱里「そんなこと……大神とジャジメントの上部が許すはずがないわ」

デスマス「ええ。戦争となったきっかけは、お互いのトップ同士の思惑とプライドの問題でした」

デスマス「ですから荒事を現場人間に押し付け、口だけうるさい無能な上部には消えてもらいましてね」

瑞希「!!」

デスマス「今の大神とジャジメントは生まれ変わったんですよ。表向きはライバル企業ってことになってますが、裏では協力関係です」
 

467: 矢橋P 24/11/19(火) 22:19:49 ID:rjTS
回想


莉緒「今、大神は内部でゴタゴタしているみたいね」


回想終了


歩(そういうことか!)

468: 矢橋P 24/11/19(火) 22:24:00 ID:rjTS
デスマス「そもそもあなた方の追ってるイーエス。あれこそ大神の技術力とジャジメントのオカルトテクノロジーの双方の結晶みたいなものです。片方の陣営だけではなし得なかった」

歩(オカルトテクノロジー……美也が言っていたのはそこの部分か)

デスマス「まあ認めたがらない気持ちも分かりますがね」

デスマス「ミス浜野。あなたが前に所属していたヒーロー連合は大神とジャジメントどちらか一方にも敵わなかったのにさらに強力になってしまったのですからね」

デスマス「大神の技術力とジャジメントの資本と超能力者。これが合わさった以上我々に敵う組織は地球上どこにも存在しません。一国にだって喧嘩を売ることも出来ます」

デスマス「元に日本は大神、アメリカはジャジメントの言いなりです。あなた方が敵に回しているのはそういう存在なんですよ」
 

469: 矢橋P 24/11/19(火) 22:26:02 ID:rjTS

歩(は、話のスケールが大きすぎる)

瑞希「浜野さん、今は彼を倒すことに集中しましょう」

朱里「あなたよくこのような状況で冷静になれるわね……」

朱里「けど……その通りか」
 

470: 矢橋P 24/11/19(火) 22:28:48 ID:rjTS

デスマス「さてこれからはちょーっと刺激が強いです」

デスマス「ですからミスモモコ。あなたは『起きていてください』」

桃子「あ、あれ急にねむ……く……」バタン

デスマス「そしてあなたは『立っていてください』」

バタン


瑞希「舞浜さん、周防さん!」

歩(た、立ち上がることも出来ない。なんだよこれ、むちゃくちゃじゃないか。こんな超能力者があと5人もいるのか)ググッ

471: 矢橋P 24/11/19(火) 22:33:06 ID:rjTS
デスマス「奇しくも第一世代から第三世代までのサイボーグが揃い踏みですねぇ。どうぞ『武器や装備を使ってください』」


ピキーン


朱里(ぐっ……。攻撃だけじゃなく武器の使用そのものを封じられた)

デスマス「攻撃に対する暗示は解除しました。まだ抵抗出来るはずです。さあ、お二人とも足掻いてくださいよ」

朱里(手加減……いや、暗示で縛らずとも勝ちきれる自信があるのね)

瑞希(……私も戦闘用になったとはいえ、男性と女性では差があります。まして相手は最新サイボーグ。武器が使えぬまま、まともに肉弾戦で挑んでも勝ち目はありませんね)

瑞希「浜野さん私に考えがあります。必ず隙を作りますのでお願いします」ボソボソ

朱里「わかった、死ぬ気でやるわ。どの道やらなきゃ殺られる」ボソボソ
 

472: 矢橋P 24/11/19(火) 22:36:38 ID:rjTS


瑞希「勝負です、デスマスさん!」

歩(瑞希がデスマスに向かって飛び出した!)

歩(あれは組み手?それとも合気?よくわからないけどあの動きはデスマスの攻撃をいなすためのような感じだ)

パシッ パシィ


デスマス(フム、迂闊に仕掛けずこちらの出方を窺っているようですね)

瑞希(……やはり反応速度は僅かに相手が上。筋力に至っては比べるまでもないですか)

デスマス「私のサイボーグの性能を図っているようですが同じ第三世代でも私をそこら辺の雑兵サイボーグと一緒にされては困りますよ」

デスマス「サイボーグというものは改造者や施設が同じでも掛けた時間や投資によって性能に差が出るんです」

デスマス「私は他とは違うSランクの超能力者ですからねぇ。それはもう、潤沢に改造してもらいましたとも」

デスマス「同じサイボーグでも性能ではあなた方に勝ち目なんてないのですよ」

473: 矢橋P 24/11/19(火) 22:40:07 ID:rjTS

瑞希「そろそろですね」

デスマス「?」


プシューッ


デスマス「な、これは……」

瑞希「……おや、たまたまポケットの中にあったコーラが噴き出したようです」

瑞希「これは”武器”ではないですから」

デスマス「!?」

474: 矢橋P 24/11/19(火) 22:42:18 ID:rjTS
朱里「今よ!」

歩(噴き出したコーラに怯んだ隙に朱里がデスマスの背後に回って首を絞めながら拘束した!)

歩(瑞希も察したのか瑞希も加わって二人でデスマスをホールドしている)


デスマス「ぐ……」

朱里「あなたの能力、声が出せなきゃ使えないでしょう!」

デスマス「が…………」バンバン

475: 矢橋P 24/11/19(火) 22:45:22 ID:rjTS

朱里(流石に格上相手を押さえるのはに二人がかりでもつらいわね。でもあと少し……)


ドクン


朱里「がっ……はっ……」


朱里(そんな……こんなところで……)グラリ

476: 矢橋P 24/11/19(火) 22:48:24 ID:rjTS

デスマス「……!」

バキッ


歩(どうしたんだ。朱里が急に拘束を解いた)

瑞希「く……」スッ

デスマス「……ふぅ。今のは危なかったですねぇ」

朱里「ま、まだ…………ガッ」


バタン

477: 矢橋P 24/11/19(火) 22:52:04 ID:rjTS

瑞希「浜野さん!どうしたんですか」

デスマス「……こんな結末になってしまうとは」

デスマス「おそらく彼女、寿命が近いんですよ」

歩「じゅ、寿命」

デスマス「第一世代サイボーグは元々長生き出来るように作られていないんですよ」

デスマス「さっきの戦闘で激しく動いたのがトドメになったってところでしょうか」

デスマス「せめて定期的にメンテナンスしていれば違うのでしょうが……彼女それも出来ていなかったのでは?」

歩(そうだ、忘れていたけど朱里は元々体がボロボロで……)
 

478: 矢橋P 24/11/19(火) 22:59:25 ID:rjTS

ドン!


環「あかりに何をしたんだ!」

歩「た、環!」

歩(そうか、朱里が居るなら環もいるよね)


朱里「あなた何で……ひなたの傍にいなさいと言ったでしょ」フラッ

瑞希「浜野さん、無理に喋ってはいけません」
 

479: 矢橋P 24/11/19(火) 23:05:10 ID:rjTS

デスマス「今度はヒーローですか。以前戦ったヒーロー連合では見てない顔ですが」

環「お前が……あかりをこんな風にしたのか!」

デスマス「そうだと言ったらどうします?」


環「ゆるさない!」ダッ
 

480: 矢橋P 24/11/19(火) 23:08:08 ID:rjTS

デスマス「やれやれ、どうもヒーローって人種は……」

バキッ

デスマス「……ほう」

歩「互角だ」

瑞希「いえ……」

バシーン


デスマス「ぐえっ」

瑞希「環さんの方が僅かに上です」

※瑞希が環に対する呼び方は大神さんですがこのSSでは大神さんだと問題があるので環さんにします

481: 矢橋P 24/11/19(火) 23:11:40 ID:rjTS

環「よし、決める。必殺……」

デスマス「『動いちゃってください』」

ピキーン


環「!!!」

瑞希(まずい、動きそのものを封じられた)

瑞希(…………しかも環さんだけじゃなく私も、いやこの場にいる全員です)
 

482: 矢橋P 24/11/19(火) 23:15:00 ID:rjTS

環「あゆむ……これはいったい……」

デスマス「体は動かなくとも口は動かせますか。どうぞ『喋ってください』」


ピキーン


環「!!」パクパク

歩(そうだった、環はデスマスの超能力のこと知らないんだ)

歩(でも喋ることも封じられて……環に伝えることも出来ないのかアタシは)ググッ

歩(……!)

483: 矢橋P 24/11/19(火) 23:18:12 ID:rjTS
デスマス「卑怯だと思ってもらっても結構ですよ。これは試合じゃなく殺し合い、フェアである必要はどこにもないんです」

デスマス「先ほどの攻撃は見事でした。サイボーグである私にあざを作るとは」

デスマス「これからたっぷりお返ししないと……」


ボカーン


デスマス「おっと危ない。爆薬でしょうか」

瑞希(デスマスさんの近くで爆竹ぐらいの軽い爆発が起こりました。)

瑞希(ですが変です、火薬の匂いがしません。これは……)

484: 矢橋P 24/11/19(火) 23:19:55 ID:rjTS
デスマス「ん~?姿が見えないですね。誰の仕業でしょうか」

デスマス(目の前にいる5人は私の能力の影響を受けています。となると何者かが隠れている……)

デスマス「ですがムダですよ。私の左目は高性能なレーダーになっていますからね」ピピッ

※目の前の5人 歩、桃子、瑞希、朱里、環はババヤガンの能力の影響を受けているのでレーダーに映りませんが、逆にデスマス&ババヤガンが認知出来ていない人間はレーダーに映るということです



デスマス「…………」ピ-ッ

デスマス(……この周辺の反応が無い?)


ボカーン


デスマス「何!」

485: 矢橋P 24/11/19(火) 23:24:48 ID:rjTS

瑞希(私にもわかりません。これはいったいどういうことでしょうか)


デスマス「『そのまま姿を隠してください』」


シーン


デスマス(やはり効果がない。私の能力は私が認識している者しか効果が無い……)


ボカーン


デスマス「また!」

486: 矢橋P 24/11/19(火) 23:29:23 ID:rjTS

デスマス(ということはレーダー範囲外からの遠距離攻撃。爆発が微妙に私から外れているのは狙いを付けづらい程の遠距離からの攻撃ということか)

デスマス(それともババヤガンみたいな姿を隠す超能力者がいるのかもしれませんね)

デスマス(目の前の5人は囮か私を釣る餌ってわけですか。Sランクを潰すためとはいえ、そちらもなかなかえげつないですねぇ……ん?)ピーッ


デスマス(このタイミングでレーダーに二人組の反応?)



ダン


莉緒「あ~ら。こんな可愛い子達をいじめるなんてSランクの超能力者様はずいぶん野蛮なのね」


貴音「まこと、同じ超能力者として申しますが……恥じるべきです!」

487: 矢橋P 24/11/19(火) 23:31:58 ID:rjTS

環(りお!)パクパク

歩(莉緒!……ともう一人の大人の女性は誰だろう?)

歩(とにかく二人はアタシ達を庇うようにデスマスの前に現れたんだ)


デスマス(この者は……元凄腕スパイの莉緒にASの四条貴音。こいつらの仕業か!)

デスマス(四条貴音の超能力は……わからない。ASでもこの者だけは情報が無かった)

デスマス(裏で糸を引いていたこいつらが堂々と姿を現した。つまり敵の仕込みは完了したと判断すべきですね)

デスマス「どうやら旗色が悪いようですね。ここは一旦退きますか」


莉緒「待ちなさい!」

デスマス「『私を見逃さないでください』ではまた今度」ササッ



 

488: 矢橋P 24/11/19(火) 23:38:52 ID:rjTS


莉緒「……逃しちゃったけど正直助かったわね」

貴音「ええ、彼が相手ではわたくし達でも手に余ったでしょう」


歩「……」パクパク

莉緒「デスマスの超能力で喋ることが出来ないのね。ちょっと待って……」ゴソゴソ

莉緒「これは催眠スプレーよ。デスマスの暗示から逃れるためには一度気を失うしかないの。だから一瞬眠ってちょうだい」

歩(そんないきなり!?)

プシュー

489: 矢橋P 24/11/19(火) 23:41:45 ID:rjTS
歩(……)バタン

莉緒「後は瑞希ちゃんに環ちゃんに朱里……」


\ピカーッ/


環「りお!会いたかったぞ」ギュー

莉緒「あらあら、ごめんなさい。帰るのが遅くなっちゃって」ナデナデ

貴音「他の者を眠らせるのはわたくしがやっておきます。莉緒はその者の相手をしてあげてください」




 

490: 矢橋P 24/11/20(水) 04:54:29 ID:s3I4









あれからみんなデスマスの暗示を解いた後
亜利沙、可憐、ひなたと合流しひとまずアパートに戻ってきた
……桃子を連れて
 

491: 矢橋P 24/11/20(水) 05:01:58 ID:s3I4


PM17:00 アパート 亜利沙と可憐の部屋



いくらデスマスが退却したといってもあの場に留まるのは危険。
ということで慌ててみんなでここに集結したのだけど、アタシ達には課題が山積みだ


桃子「……」


まず桃子の今後をどうしたらいいのか
奴らの言葉通りなら桃子もそのまま放っておけない。
けど桃子だってあんなことがあってこんな知らない人達に囲まれて戸惑ってる
さっきからずっと黙ったまま……


朱里「……ぅぅ」

ひなた「朱里さん……大丈夫かい?」


朱里の容態も無視出来ないことだ
朱里は無理に動かなきゃひとまず大丈夫よ。って言ってたけど……

492: 矢橋P 24/11/20(水) 05:05:57 ID:s3I4

可憐「歩さんすみません。力になれなくて……」

亜利沙「敵の存在に途中で気付いてはいたんですが歩さんに伝える既が無かったんです」

歩「仕方ないよ。あんなの誰も予想出来ないって」

でも今回幸いだったのは怪我等はあれど
みんな命は無事だったことだ
亜利沙や可憐も連絡取れなくて不安だったけどデスマスの暗示のままに外に出てしまっていたらしい
ちなみに莉緒と貴音があの場に駆けつけれたのは亜利沙と可憐の誘導あってのことだ
途中でひなたを保護した莉緒と出会ったところで二人が必死に懇願してくれたんだ

493: 矢橋P 24/11/20(水) 05:08:27 ID:s3I4

亜利沙「Sランクの超能力者が出てくるなんて……」

環「でも、あいつ途中でそわそわしてたぞ。さいごには逃げちゃった」

朱里「あいつの能力はあいつが意図した人しか効かない。つまりデスマスにとって最も恐れることは認識外からの不意打ちよ。警戒もするでしょうよ」

莉緒「あらゆる事態を想定しすぎると案外小さな単純なことを見落とすのよね。彼は“言霊使い“だから尚更思慮深かったようね」

朱里「……逆に言えば正体不明の爆発や莉緒やASの乱入はデスマスにかなりの動揺を与えたはず。それでも退却させるのが精一杯だった……」

494: 矢橋P 24/11/20(水) 05:11:54 ID:s3I4

瑞希「ですがあの爆発は一体何だったのでしょうか」

歩「それは……」


もわわ~ん


茜「天才美少女茜ちゃんの仕業だよ~……ってみんな暗いよ。笑顔笑顔」

環「あっ、そうか。あかねは普段他の人には見えないんだっけ」

歩「あの時茜がアタシの傍に来てくれてさ。あいつに何か出来ないかって頼んだんだ」

茜「でも茜ちゃんじゃあんなこけおどししか出来ないにゃー。次は通用しないだろうね」
 

495: 矢橋P 24/11/20(水) 05:14:09 ID:s3I4

桃子「!!」

瑞希「…………」ポカーン

莉緒「…………」ポカーン

貴音「面妖な……」

朱里「……幻覚を見るようになったらあたしもいよいよかしらね」

歩(そうだ。まだ全員に茜のことを話してなかった!)


カクカクカクカクシカジカシカジカメンヨウナ
 

496: 矢橋P 24/11/20(水) 05:16:05 ID:s3I4




莉緒「……つまり具現化によって生まれた魔人なのね」

瑞希「具現化については聞かされていましたが……実際見てみると……びっくり」

歩「アタシが追ってるイーエスも同じ感じなんだけどね」

桃子「イーエス……」

桃子「どういうこと?茜さんはイーエスの仲間なの?」

茜「むーっ。生まれ方がいっしょなだけで茜ちゃんはイーエスとはぜんぜん違うよ!」

歩「デス・マスはイーエスこそは大神の技術力とジャジメントのオカルトテクノロジーの結晶だって言ってた」

瑞希「サイボーグ化したデスマスさんといい、大神とジャジメントが既に深い関係になっていることは明らかです。敵は想像以上に強大なようです」
 

497: 矢橋P 24/11/20(水) 05:18:37 ID:s3I4

莉緒「その上で言わなきゃいけないことがあるわ」

貴音「まずはわたくしの自己紹介を。わたくし、しゃどうれでぃの四条貴音と申します」

朱里「あなたASでしょう。ASは政府の許可なしに勝手動いちゃ駄目なんじゃなかったの?」

貴音「いえ、今のわたくしはしゃどうれでぃです」

朱里「……なるほど。単独行動するためにあえてASから抜けたのね」

貴音「一時的なものです。今回の件は見過ごすわけにいかぬゆえ」

環「ねー、お姉さん!ひびきやいおり、まみは元気?」

貴音「ええ、それはもう。真美もあなたに会いたがっていましたよ」

環「そっかー」ウキウキ
 

498: 矢橋P 24/11/20(水) 05:21:15 ID:s3I4

莉緒「それで私は彼女と一緒に大神グループのことを調べていた。そしたら色々わかってきたわ」

莉緒「まずイーエスのこと。正体はあなた達の知ってる通りだけど問題はその後よ。7月7日に大神ネットは関東の一部から一気に全世界に展開する」

亜利沙「それじゃ……」

莉緒「それまでがタイムリミット。その日に大神とジャジメントの合同配信がある」

莉緒「おそらく大神とジャジメントの合併が発表されるわ。その混乱と勢いに乗じてイーエスを全世界に発信」

莉緒「そうなればその日を境に大神とジャジメントに逆らう者はイーエスに始末される。つまり世界は二大企業の思うがままになるのよ」

 

499: 矢橋P 24/11/20(水) 05:23:30 ID:s3I4
重たい空気が一層肩にのしかかる
アタシはただ二人の友人を取り戻すために怪奇現象を追っていただけだった
それが具現化?サイボーグ?超能力者?大神?ジャジメント?Sランク?世界問題?
いったいどこまで話が広がればいいんだよ!


貴音「ひとまず休憩にしましょう。わたくしもお腹が空きましたゆえ」

莉緒「ええそうね。出前でも取りましょ」








 

500: 矢橋P 24/11/20(水) 05:25:41 ID:s3I4




日本ジャジメント支部




デスマス「見事に取り逃してしまいましたねぇ。こんなこと初めてです」

ババヤガン「遊び癖があるのがお前の悪いところだデスマス。まったくSランクが二人もいて取り逃したなど、どう報告すればいいんだ」

デスマス「まあまあ。報告と言えばヨーロッパ支部から連絡がありましてね」

デスマス「あっちもトラブルがあったようでデイライトの到着がかなり遅れるとかで。“あの日”には間に合わないみたいですよ」

ババヤガン「それは残念だな。お前と私の能力にデイライトの能力まで加われば盤石になったものを」

デスマス「私は嬉しいですけどね。彼がいるとあっさり終わってしまって面白くないんですもの」
 

501: 矢橋P 24/11/20(水) 05:27:11 ID:s3I4

ババヤガン「……それとピース・メーカーはどうした。あんな問題児でも我々と同じSランクだろう」

デスマス「さあ?何でもパイプ・ドリームに任せているって話でしたがそのパイプ・ドリームも煙隠れしてますからね」

ババヤガン「それを言うなら雲隠れだ。ったく、奴らにSランクの自覚はないのか」

デスマス「あの二人がSランクに認定されるまでにひと悶着ありましたからねぇ。Aランクの能力者なら多数いますし、問題ないですよ」




 

502: 矢橋P 24/11/20(水) 05:29:32 ID:s3I4




PM 19:50



食事を終えても話しの続きを切り出そうと誰もしない

亜利沙は桃子に話しかけているがそっぽを向くし
朱里は横たわったまま
このままじゃいけない。何かきっかけが……
 

503: 矢橋P 24/11/20(水) 05:31:21 ID:s3I4


瑞希「皆さんそろそろ20時です。ですから……」

ひなた「環ちゃん!そろそろ時間だべさ」

環「あっ、そうだ。今日はアイドルグランプリの日だっけ!」

亜利沙「亜利沙もすっかり忘れてました!お二人とも好きなんですか?」

歩「あんな人気番組、嫌いな人の方がいないよ」

可憐「それじゃテレビ付けます」ピッ

茜「それじゃ最前列は茜ちゃんが貰ったよ!」

歩「茜、邪魔!こんな時は実体化しなくていいんだよ!」
 

504: 矢橋P 24/11/20(水) 05:33:25 ID:s3I4
テレビ前に群がるアタシ達
それを見守る莉緒や瑞希や貴音も微笑ましく思っているようだ
やっぱりアイドルっていいよね。みんなを明るくする力があるんだもの


<さーて、今週も始まりましたアイドルグランプリ!今回登場するアイドルを紹介します


亜利沙「ふぉーっ!キマシタキマシタよーっ!今週はどんなアイドルちゃんが出るんでしょうか」

歩(亜利沙ってアイドル好きだって聞いてたけどこんな反応するんだ……)

亜利沙「亜利沙ノート準備よし、これでどんなアイドルちゃんが来ても……」
 

505: 矢橋P 24/11/20(水) 05:36:18 ID:s3I4

<今回初出場!その名前の通り超新星になることが出来るのか!

<永吉昴!

<みんなーよろしくなー!



亜利沙「昴ちゃん!?」ガタッ

可憐「昴ちゃん……」

環「あ、すばるだー!」

歩「え、どういうこと、知ってるの?」

瑞希(永吉さん……ついに、アイドルになれたんですね)

506: 矢橋P 24/11/20(水) 05:38:24 ID:s3I4

桃子「…………」

桃子「育も大好きだったんだ、この番組」

歩「本当に!」

桃子「う、うん」

茜「どうしたのマイハマン?」

歩(よし、それなら……)





番組が終わった後アタシはみんなに語りかける

歩「みんな、聞いて。イーエスに対抗する策なんだけどアタシなりの答えがあるんだ」







 

507: 矢橋P 24/11/20(水) 05:44:01 ID:wOle






桃子「……お姉ちゃん本気?」

歩「本気だよ」

環「あゆむ、面白いぞそれ!」

桃子「面白がってる場合じゃないでしょ!」

茜「茜ちゃんも大賛成だよ!」

莉緒「でもそんな大胆な作戦よく考えたわね」

亜利沙「その作戦なら亜利沙も力になれますよ」
 

508: 矢橋P 24/11/20(水) 05:46:12 ID:wOle

桃子「ちょっと、みんな……」

ひなた「あたしもそれでいいって思うよぉ」

朱里「どの道イーエスに唯一対抗出来るのは歩だけなのよ。歩がそうしたいのならそうすべきだわ」


桃子「もーーっ!」

桃子「わかった、桃子も協力する。それしかイーエスを倒す方法はなさそうだしね」

瑞希「皆さん。進むべき方向が決まったところで提案があるのですが……」






 

509: 矢橋P 24/11/20(水) 05:48:26 ID:wOle

6月2日 AM 7:50 アパート前




典子「……よし、今日も一日頑張ろう」


ガチャ


歩「典子ちゃん、おはよう」

典子「ふふっ。歩さん今日はグッドモーニングじゃないんですね」

歩「そうだね」

典子「?」
 

510: 矢橋P 24/11/20(水) 05:50:19 ID:wOle

歩「典子ちゃん。話しがあるんだ」

典子「環ちゃんのことですか?」

歩「違うよ。まあ関係ないわけじゃないけどさ」

歩「しばらく……ここを離れようと思うんだ」

典子「え」
 

511: 矢橋P 24/11/20(水) 05:52:27 ID:wOle

歩「でも、ずっとじゃないよ!」

典子「……1週間ぐらいですか」

歩「……1ヶ月くらい」

典子「長い……です」

歩「……それとアタシだけじゃないんだ。環やひなた、朱里や亜利沙や可憐。みんななんだ」






 

512: 矢橋P 24/11/20(水) 05:54:22 ID:wOle

回想


瑞希「百瀬さんが7月7日がリミットと言いましたが……逆に考えましょう。まだ1ヶ月もあると」

瑞希「正直今回で痛感しました。今の私達ではとても大神とジャジメントの連合に対抗するには力不足です」

瑞希「舞浜さんの作戦を成功させるためにも私達がもっと力を付ける必要があります」

瑞希「そこで皆さんでパライソタウンに行きませんか?」
 

513: 矢橋P 24/11/20(水) 05:56:32 ID:wOle

亜利沙「あそこですかー」

環「うぇ……。たまき、あそこにいい思い出ないぞ……」

歩「パライソタウンって……あのハタ侵略の舞台になったところでしょ?」

瑞希「そうです。一時期は壊滅状態でしたがですが実は再建しつつあるんです」

莉緒「その話は私も聞いていたけど……私達が行く理由は何?」

瑞希「最大の理由は浜野さんです」
 

514: 矢橋P 24/11/20(水) 05:58:39 ID:wOle

朱里「あたし?」

瑞希「パライソタウンの研究所なら浜野さんの体の症状を何とか出来ると思います。大神以外の日本でサイボーグをメンテナンス出来る施設はあそこだけです」

瑞希「それ以外にも訓練する環境は整っています。私達が訓練する場としては申し分ない場所かと」

朱里「……あたしに拒否する余裕はないわね。わかったわ」

環「あかりが行くならたまきもいくぞ」

莉緒「一応確認するけどその場所の危険性は大丈夫なのよね?」

貴音「それはわたくしからも大丈夫だと言っておきます」

貴音「かつてのパライソタウンの研究所は非合法かつ闇の中の闇でしたが今では生まれ変わり政府公認の施設になったのです」

貴音(大神に対抗するためでしょうが)
 

515: 矢橋P 24/11/20(水) 06:00:40 ID:wOle

桃子「それって桃子もだよね?」

瑞希「はい、そうです」

桃子「もう、仕方ないね。家には連絡しておくから。その1ヶ月間歩お姉ちゃんも特訓しなきゃいけないでしょ?桃子も手伝うよ」

歩「うん、ありがとう。てしばらくここを空けなきゃいけないのか」

亜利沙「渦木さんにも連絡しなきゃですね」

歩「大家さんは伝えておけば大丈夫だと思うけど……典子ちゃんが……」

環「あ……のりこ、一人じゃさみしいよね」

ひなた「したっけあたしだけでも残ろうかい?」

516: 矢橋P 24/11/20(水) 06:02:34 ID:wOle

莉緒「駄目よ。ひなたちゃんも避難しないと」

朱里「……別にひなたに無理させなくてもいいんじゃない」

莉緒「それがね、そうもいかないのよ」チラ

莉緒「ひなたちゃん。本当のこと話していいかしら」

ひなた「……いいよぉ」


莉緒「私も命懸けで調査して最近になって知ったことだけど……」

莉緒「ひなたちゃんはね。ピース・メーカーなのよ」
 

517: 矢橋P 24/11/20(水) 06:04:27 ID:wOle

瑞希「!!」

朱里「それって!」

歩「なんかデスマスが言ってたね」

莉緒「そう、コードネーム ピース・メーカー。大神がパライソタウンでハピネスPを開発していた時に偶然発現してしまった“人類史上最強の超能力者”よ」

歩「ええっ!?」

環「ひなたは超能力者だったんだ」

ひなた「…………」
 

518: 矢橋P 24/11/20(水) 06:06:22 ID:wOle

莉緒「その能力は反エントロピーよ」

歩「えんとろぴー?」

可憐「あまり聞いたことない単語ですね」

莉緒「私もそこまで詳しいわけじゃないけど……物理学や熱力学や統計学で使われる単語なの」

瑞希「一言で言えば乱雑さを示す単語ですね」

桃子「乱雑さ?」
 

519: 矢橋P 24/11/20(水) 06:08:51 ID:wOle

瑞希「例えば熱力学で考えてみましょう。鍋の中に熱湯が入っていたとします」

瑞希「熱というのは本来分子の移動の激しさです。が熱を持った分子がどこか一カ所に固まることはあり得ません」

瑞希「鍋の中でここは熱を持った分子が固まっているから80℃ぐらい、でもこっちは熱を持った分子が少ないから20℃くらい……ってことはありえません」

瑞希「熱の対流があって上と下で温度が違う……ってことはありますがそれも収まって鍋の中をかき混ぜれば鍋の中の温度は均一になるはずです。それは分子が各自バラバラに動くからなんです」
 

520: 矢橋P 24/11/20(水) 06:11:31 ID:wOle

莉緒「そう、熱の分子が人間みたいにグループ作って固まったりすることはない。熱が冷める時もみんな常に一定の速度で下がっていくでしょう?」

瑞希「そうして分子の状態がバラバラであればバラバラであるほどエントロピーが多いってことになります。基本的にエントロピーは増えることはあっても減ることはありません」

莉緒「部屋の中だって意図的に掃除しなかったらだんだん汚れてごちゃごちゃになるでしょ?」

環「うーん、よくわかんないや」

莉緒「まあ本題はエントロピーじゃないからこの話はここまでにするけど……」

莉緒「ひなたちゃんの能力はね。その流れをある程度いじることが出来るのよ」
 

521: 矢橋P 24/11/20(水) 06:14:33 ID:wOle
歩「つまり……分子を整理整頓する能力?」

莉緒「反エントロピーを使えば50℃のお湯から100℃の熱湯と0℃の水を作ることも出来るわ」

莉緒「1000℃の蒸気と-20℃の氷でもいいわね」

歩「なんだか錬金術みたいだね」

莉緒「その気になれば町を半分焼きつくして残り半分を氷付けにすることも出来る」

亜利沙「うぇっ!」
 

522: 矢橋P 24/11/20(水) 06:17:59 ID:wOle

莉緒「この能力の一番の問題はコントロールが非常に難しいことなの。熱だとか分子の動きなんて人間の目で追えないものだしね。くわえてどうやら能力が一回でも発動したらしばらく持続してしまうみたいなの」

莉緒「漫画であるような 100℃のお湯がほしいからやかんの中の水に能力使って、水が沸騰したら能力解除!……なんてことは出来ないの。水が蒸発してやかんがドロドロに溶けても能力は止まることはない」

莉緒「事実、大神はひなたちゃんの能力を持て余し、興味を持ったジャジメントが自分たちの研究所に連れて行ったけど……そこでひなたちゃんは二つの研究所をマグマの海に沈めた。熱を一カ所に集中させてしまったみたいで研究所をドロドロに溶かしつくしても能力は止まらなかった」

歩(ひなたがアメリカに行った理由って……)
 

523: 矢橋P 24/11/20(水) 06:20:36 ID:wOle

莉緒「それであのジャジメントすら能力を制御するのを断念。戒めと畏怖を込めてSランクにした。地球だって滅ぼしかねない能力なのよ」

貴音「彼女の身につけているぶれすれっとは強力なESPじゃまーです。それを身につけている限り能力が暴発することはないでしょう」

ひなた「!」

ひなた「ブレスレットが無くたって……あんなの、二度と使わないべさ!」


どうやら研究所を二つ崩壊させたことはひなたにとって心に傷を負わせたようだった
思えばひなたはあのブレスレットをいつも肌身離さずいつも着けていたよね

524: 矢橋P 24/11/20(水) 13:10:45 ID:s3I4
どうやら研究所を二つ崩壊させたことはひなたにとって心に傷を負わせたようだった
思えばひなたはあのブレスレットをいつも肌身離さずいつも着けていたよね


莉緒「……だからひなたちゃんを置いていくことは出来ないわ」

環「じゃあ、のりこも連れていこうよ!」

莉緒「それも駄目。彼女には学校もあるし、不用意に私達のやることに巻き込むわけにもいかないのよ」




 

525: 矢橋P 24/11/20(水) 13:19:14 ID:s3I4
回想終了



典子「な、なんで……」

典子「せっかくみんなと出会えたのに……」

歩「本当にごめん!」

歩「でも1ヶ月後には絶対戻ってくるから!」

526: 矢橋P 24/11/20(水) 13:26:26 ID:s3I4
典子「1ヶ月……」ハッ

典子「その頃には花壇のヒマワリが咲いてます。みんな居ない間、私がヒマワリを咲かせてみせます」

典子「だから……。みんなで満開に咲いたヒマワリを見に絶対ここに帰ってきてください。約束です」

歩「うん、約束する」







環「うえ~ん、のりこー」グスグス

莉緒(別れのあいさつに環ちゃんを同行させなかったの正解ね)

527: 矢橋P 24/11/20(水) 13:28:41 ID:s3I4





こうしてアタシ達はデンノーシティを離れた

あれ、アタシは3月にここに引っ越して来たから半年も経ってないはずなのに
なんだか何年もここにいた気がするよ

でもまたここに帰ってくる
その時まで待ってろイーエス!

528: 矢橋P 24/11/20(水) 13:34:06 ID:s3I4
第九幕終わり

エントロピーの説明はいい加減です。一応勉強してみたんだけどさっぱりわからんかった
原作もそうでしたがひなたの反エントロピーの生み出せるエネルギーは無限大です。ゆえに人類で制御出来る範疇を超えています
改めて原作ストーリーを追ったけどデスマスも大概インチキですね、本人の性格がああじゃなければ
だけど決して無敵なんかじゃないってところが面白いところだと思います

529: 矢橋P 24/11/20(水) 13:37:05 ID:s3I4

デス・マス   言霊使い

ジャジメントに所属するSランクの超能力者
デス・マスとはコードネームで本名はフランシス・ミネイリ
言葉による暗示を用いた精神干渉を行う能力を持ち
また体は最新の第三世代サイボーグであるため戦闘能力も極めて高い
ジャジメントから残忍かつ過酷な任務を与えられ続けた結果
組織にやや反抗的であり任務より自分の感情を優先するなどひねくれている部分がある
今回の大神側から要請を受けたイーエスを知る者の排除という任務も
自分が好きに暴れ回れるという理由で承諾しており、組織のためという気持ちは一切ない

530: 矢橋P 24/11/20(水) 13:39:26 ID:s3I4

ババヤガン   魔女

ジャジメントに所属するSランクの超能力者
彼女の能力 機械隠密(マシーン・ステルス)は技術が発達したこの世界にあって凶悪な能力であり
2年前の大神とジャジメントの戦争の際、地の利はある大神がジャジメントに勝ちきれなかったのは彼女の存在が大きい
デス・マスとは違い組織に忠実で重要されている

531: 矢橋P 24/11/20(水) 13:42:56 ID:s3I4

四条貴音   ミステリアスなAS隊員

日本の超能力者部隊ASの隊員であるが一時的に除隊し現在はシャドウレディを名乗っている
とある日本政府関係者が百瀬莉緒に大神の裏側の調査を依頼してその過程で環とひなたを救出
その後百瀬莉緒は調査の途中でとある人物に拘束されてしまう
それを聞きつけたASは貴音を派遣し彼女を救出させた

彼女の超能力は血液支配(ブラッド・コントロール)
これは分類は超能力であるが体質に近いものであり、代々四条家に生まれる者は特殊な体質であるとのこと
貴音自身もこの能力を把握仕切れていない部分もある
主に自分の血液を操作出来ることを得意とするが
特に有能なところは彼女が他の超能力者の血を飲むと一時的にその血の持ち主の超能力を使用出来るところ
ゆえに彼女は他のAS隊員の血を所有しており(ちゃんと本人の許可を取っている)事実上全てのASの能力を扱えるといってよい
彼女だけが単独行動を許された理由である

能力を使うと非常にお腹が空くらしく、任務後は必ずらぁめんを食べるらしい
……そこは血じゃないんだ

532: 矢橋P 24/11/20(水) 13:47:29 ID:s3I4

木下ひなた   人類最強の超能力者

実は超能力者であり、観測史上人類最強の超能力者であるピース・メーカー(平和を生み出す者)である
彼女の能力 反エントロピーはゼロから際限なくエネルギーを生み出せる凄まじい能力だが
実態は制御不能の破壊能力とされており“歩く核兵器”とも比喩されることも

ピース・メーカーというコードネームは能力が発動したら最後
人間が居なくなり戦争の起こりようがなくなるからこの世界は平和になる。という最大限の皮肉が込められている

533: 矢橋P 24/11/21(木) 06:18:05 ID:WTNz


第十幕 突入

 

534: 矢橋P 24/11/21(木) 06:21:27 ID:WTNz


「歩お姉ちゃん。瑞希さんが帰って来たみたいだよ」

「皆さんただいま帰りました」

「もー。瑞希はアタシ達をここに届けてから直ぐ出かけちゃって。今までどこ行ってたの?」

「すみません。少し南国の方にいる知り合いに会いに行ってました」

「浜野さんの体調は大丈夫ですか?手術は無事成功したとは聞きましたが」

「成功もなにも調子が良すぎて自分の体じゃないみたいよ。リハビリも必要ないくらいね」

「環も特訓がんばったんだぞ」

「一旦大学の方に戻った可憐ちゃんもまたこっちに来てくれるみたいですし、のり子さんも忙しい中あの日には予定を空けてくれました」

「準備万端だね。それじゃカムバックしようか!」




 

535: 矢橋P 24/11/21(木) 06:23:07 ID:WTNz


7月5日 デンノーシティ アパート前





典子「こぶんちゃん寂しいの?」ナデナデ

こぶん「にゃ~」ゴロゴロ

典子「そうだね。みんな勝手なんだから……」

こぶん「!」ピクッ

典子「あれどうしたの」

 

536: 矢橋P 24/11/21(木) 06:25:05 ID:WTNz






環「のりこ、こぶん!ただいまだぞ」

歩「約束通り帰ってきたよ」

ひなた「はやー。ヒマワリが満開だねぇ見事だよぉ」


典子「……」

典子「みんな、お帰り」

 

537: 矢橋P 24/11/21(木) 06:27:28 ID:WTNz


デンノーシティ とある公園





美保「はぁ~」

美保(どこに行ったのよあいつ!)



歩「やあ美保。まだここに居てくれたんだね」

美保「!」

538: 矢橋P 24/11/21(木) 06:29:00 ID:WTNz

美保「今までどこに行ってたのよ!」

歩「色々あってさ。ちょっと離れてた」

美保「あれから全く姿を見せなかったじゃない!せめて一言なかったの!」

歩「もしかして心配してくれたの?」

美保「ち、ちょっと気になってただけよ」
 

539: 矢橋P 24/11/21(木) 06:31:08 ID:WTNz

歩「デビューが決まって離れることになったわけじゃないんだ。もしそうなったら美保には真っ先に伝えるからさ」

美保「そ、そう。まああんたを信用してなかったわけじゃないし」

歩(なんだかんだ待っていてくれたみたいだね。悪いことしちゃったな)

歩「ねえ美保。実は頼みがあるんだ」






 

540: 矢橋P 24/11/21(木) 06:32:51 ID:WTNz



デンノーシティ某所




デスマス「退屈ですねぇ。あれからあの方々も音沙汰なし。この国に来たのは失敗でしたかね」

ババヤガン「良い傾向だろう。まあ私もたかが一つの施設に大神サイボーグ部隊とジャジメントの一師団の両方が常住は過剰戦力だと思ってはいるが」



甲斐「失礼、ジャジメントの精鋭のお二人方にはご迷惑をおかけしていますね」

デスマス「おやミス上守。フフ、やはりあなただけは他のサイボーグと全く違う。あなたが大神側のトップになってはどうです?」

甲斐「ご冗談を」

デスマス「ちっとも冗談なんかじゃないんですがねぇ」
 

541: 矢橋P 24/11/21(木) 06:34:41 ID:WTNz

甲斐「明日ジャジメント側のトップ、ジオット会長が来日されます。私はジオット会長の護衛で離れられないのでお二人には引き続きここの警備をお願いします」

ババヤガン「不快に思ったら申し訳ないがここまで警戒する必要があるのか」

甲斐「この電波塔はいよいよ明後日から始まる選別計画の要です」

甲斐「この前ここの情報を探る不正アクセスがありました。我々を快く思わない連中が襲撃してくる可能性は十分あり得ます」

デスマス「ほう、そうですか。少しやる気が出てきましたよ」
 

542: 矢橋P 24/11/21(木) 06:36:19 ID:WTNz

甲斐「私の予想では7月7日の当日に動きがあると思っています」

ババヤガン「ミス上守、その根拠は?」

甲斐「…ただの私の勘です」

デスマス「あなたの勘ですか。スーパーコンピュータのシミュレーションより当たりそうで怖いですよ」

ババヤガン「あなたの勘が外れる方に賭けなければならないとはな」

デスマス「分の悪い賭けですねぇ。…いや私としては当たってくれた方が嬉しいんでした。それと塔の上のお姫様のご機嫌はどうです?」

甲斐「今のところ上機嫌ですね。選別の日まで大人しくしてほしいのですが……」






 

543: 矢橋P 24/11/21(木) 06:38:34 ID:WTNz


7月6日 PM19:00 歩の部屋




今このアタシの部屋はかつてないほどぎゅうぎゅうだ

アタシに茜に亜利沙に渦木さんに桃子

朱里に環にひなたに莉緒

瑞希に可憐にのり子さんに貴音さん

それと……




渦木「歩さん、その子は?」

典子「…………」ギュー

歩「それが離れてくれなくてさ……」

544: 矢橋P 24/11/21(木) 06:40:54 ID:WTNz

莉緒「あらあら、お姉さん羨ましいわ」

環「あゆむ、もてもて~」

茜「マイハマンも罪深い女だねっ」

歩「典子ちゃんは自分の部屋に戻った方がいいよ。ほら知らない大人ばっかで嫌でしょ?」

典子「嫌です」

朱里「歩が 『実はアタシ達やらなきゃいけないことがあってさ、もしアタシ達に何かあったらその時はよろしく』なんて言うからよ」

ひなた「久しぶり帰ってきて早々でそれを言ったらまずかったねぇ」
 

545: 矢橋P 24/11/21(木) 06:43:38 ID:WTNz

典子「みなさん私の知らないところで何かするつもりですよね」

典子「もう独りだけ除け者は嫌です。私も参加します」

渦木「ですが典子さん危険なのですよ。我々はいじわるをしているつもりはないんです」

典子「私は親も居ませんし何かあっても大丈夫です。突然居なくなっても何も問題にならないと思います」

桃子「そういう問題じゃ……」

典子「寂しかったです」

亜利沙「え……」

典子「本当に!1ヶ月以上の間私独りで寂しかったんですから!」


歩「…………」

典子「……」グスッ

546: 矢橋P 24/11/21(木) 06:45:56 ID:WTNz

のり子「もうこれは責任取るしかないんじゃないの?」

可憐「危ないって条件なら私達も同じです。典子ちゃんの意思を尊重してもいいと思います」

莉緒「可愛い子が増えるのは大歓迎よ」

瑞希「危なくなったらお姉さん方を頼ってください。ここのお姉さん達はみんな頼もしいぞ」

桃子「しょうがないよね。典子さんは桃子やひなたと一緒に歩お姉ちゃんのサポートだよ」

ひなた「あたしもちょうど手が足りないって思ってたんだわ」

歩「わかったよ。典子ちゃんよろしく」

典子「はい!」

 

547: 矢橋P 24/11/21(木) 06:48:21 ID:WTNz
典子ちゃんも加えて13人(茜除く)、パーティーにしたら大人数だけど相手が相手だ
これでも多過ぎるってことはない
そしていよいよ明日に向かって作戦会議だ


瑞希「まず朗報があります。“サイボーグ同盟“が参戦してくれることになりました」

莉緒「交渉がうまくいったのね。瑞希ちゃんやったじゃない」

瑞希(交換条件として色々要求されましたが……)

朱里「サイボーグ同盟……」

亜利沙「あの方々ですか。心強いですね」

歩「サイボーグ同盟?」
 

548: 矢橋P 24/11/21(木) 06:50:26 ID:WTNz

瑞希「パライソタウンのサイボーグ達が主体になって作った組織です」

渦木「始めは少数集団でしたが単独で行動していた強者をスカウトしたり武闘派組織を吸収したりして今ではとても大きな組織になりました」

莉緒「まあ国際テロ組織に指定されているんだけどね」

瑞希「ですがその戦力は随一です。戦力で大神やジャジメントと張り合えるの組織はもはや彼らしか居ません」

貴音「わたくしにとっても朗報です。これでわたくしの方も動けます」
 

549: 矢橋P 24/11/21(木) 06:52:33 ID:WTNz

莉緒「それを踏まえた今回の作戦を説明するわね」

莉緒「私達の目指す場所はこのデンノーシティの大神電波塔」

莉緒「最近完成したばかりの建物だけど瑞希ちゃんがハッキングして見取り図は入手出来てるわ」

瑞希「その時調べた情報によりますと中には大神のサイボーグ部隊にジャジメントの超能力者チームが護衛に居るみたいです」

亜利沙「うえ……」

莉緒「まず敵の部隊はサイボーグ同盟に引きつけてもらう」

莉緒「サイボーグ同盟と大神とジャジメントの部隊が交戦して中が手薄になったところで私達は突入よ」

貴音「入り口まではわたくしの超能力で誘導しますゆえ心配なさらずに」

莉緒「見取り図から推測するにイーエスが居るのは電波塔最上階の特別室。そこが最終目的地点よ」
 

550: 矢橋P 24/11/21(木) 06:58:37 ID:Y8QM
瑞希「電波塔の内部はそこまで複雑な造りじゃありませんし敵の大部分はサイボーグ同盟に相手にしてもらうよう頼んでいます。けど何があるかわかりません」

莉緒「いいみんな。今回の私達の目的はあくまで打倒イーエス。大神やジャジメントを倒すことじゃない」

莉緒「イーエスを倒す最大の要は歩ちゃんの作戦よ。だから歩ちゃんとそれをサポートする桃子ちゃんひなたちゃん典子ちゃんを無事にイーエスの元まで届けること」

朱里「あたし達はそれの露払いね」

渦木「道中まで護衛すればいいんですか。やれないことではないですね」

環「あゆむ、ひなた、ももこ、のりこ、頼んだぞ!」

渦木「ですがみなさんが4人の捨て駒になれってことではないです」

歩「そうだね。みんな、全員無事に帰るよ!」
 

551: 矢橋P 24/11/21(木) 07:00:01 ID:Y8QM
莉緒「大神とジャジメントの共同配信は7日の23時ちょうどに行われるわ」

桃子「ずいぶん遅い時間だね」

可憐「アメリカの時差に合わせてるんじゃないのかな」

莉緒「それに合わせて私達の作戦開始は19時にしましょう。歩ちゃんの作戦的に配信の時間が近い方がいいのよね?」

歩「うん、そうだよ。…………典子ちゃん大丈夫?」


典子「うう……覚えることが多過ぎてパンクしそうです」

ひなた「無理して全部覚える必要ないよぉ。典子ちゃんはあたし達をちょっぴし手伝ってくれればいいべさ」


莉緒「それで何か質問あるかしら?聞くなら今のうちよ」


 

552: 矢橋P 24/11/21(木) 17:54:07 ID:WTNz
ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ーー

553: 矢橋P 24/11/21(木) 17:56:25 ID:WTNz

会議が終わったあとは明日に備えて休息となった
総勢13人+魔人の大所帯だから賑やかすぎてちょっとしたパーティーみたいだった
可憐や典子ちゃんが料理を振る舞ったり、茜と環とひなたでゲームしたり、瑞希が手品を披露してくれたりのり子さんがプロレス談義をしてくれたりね
あっという間に時間は過ぎて……



 


554: 矢橋P 24/11/21(木) 17:58:30 ID:WTNz

PM 23:00





可憐「小さい子達の様子はどうですか?」

のり子「みんな寝ちゃったよ。環もひなたも典子も桃子も今日だけは一緒に寝るってさ」

亜利沙「みんないつもよりはしゃいでいませんでした?」

のり子「修学旅行みたいだもん、仕方ないよ」

可憐「ふふ……そうですね」
 

555: 矢橋P 24/11/21(木) 18:01:09 ID:WTNz

可憐「……なんだか思い出しますよね。杏奈ちゃんの家にみんなで泊まった時のことを」

のり子「そうだね。あの時も大変だったけど……何か良かったんだよね」

亜利沙「そういえば昴ちゃんのことですけど」

のり子「アタシも聞いたよ。……そっか昴はアイドルになれたんだ。今度応援しに行かないとね」

亜利沙「今度みんなで行きましょう!」





 

556: 矢橋P 24/11/21(木) 18:04:10 ID:WTNz

7月7日 AM 6:00




典子「……」ザッザッ

ひなた「……」ザッザッ


歩「グッドモーニング!」

ひなた「おはようだべさ」

典子「歩さんのグッドモーニングも久しぶりです」フフッ

557: 矢橋P 24/11/21(木) 18:07:50 ID:WTNz
歩「二人とも早いね。環はまだ寝てるよ」

典子「ヒマワリの世話だけは欠かせませんから」


アタシがこのアパートに来た時は雑草も生えていなかった花壇が今はヒマワリが真っ直ぐ爛漫に咲き誇っている


ひなた「これだけ立派に育ったんだからすごいべさ。きっと典子ちゃんの愛情が伝わったんだねぇ」

典子「ひなたさんのおかげです」

歩(多分天国のお父さんも見てくれてると思うよ)




 

558: 矢橋P 24/11/21(木) 18:12:22 ID:WTNz


7月7日 PM 18:50 デンノーシティ開発地区




莉緒「みんな揃ったかしら」

亜利沙「全員揃いました!」

のり子「景気づけに点呼でも取ってみる?」

朱里「……緊張感が無くなるからやめましょ」
 

559: 矢橋P 24/11/21(木) 18:14:12 ID:WTNz

デンノーシティの裏側、開発地区
前に来た時はただ危ない場所って印象しかなかったけど
今にして思えばここは大神とジャジメントの秘密基地みたいなところなのだろう
アタシ達の目的地電波塔も開発地区のど真ん中に建てられいる
まるで大神とジャジメント双方に寄り添うように



貴音「電波塔がここの中心部にあって助かります」

桃子「どうして?」

貴音「今にわかりますよ」

 

560: 矢橋P 24/11/21(木) 18:18:10 ID:WTNz


\ドカーン/



歩「うわっ!」

朱里「始まったようね」

瑞希「サイボーグ同盟の先制攻撃です。……直ぐに大神のサイボーグも反撃に移りましたね」
 

561: 矢橋P 24/11/21(木) 18:20:42 ID:WTNz

<ズダダダン!

<ドドドッ!




歩「確かにこれは市街地じゃ出来ないなぁ……」

莉緒「私達は参加しちゃ駄目よ。私達の目的はあくまでイーエスだけだから」

朱里「あたしちょっと様子を見てくるわ」スッ

環「あかり気をつけるんだぞ」


 

562: 矢橋P 24/11/21(木) 18:22:37 ID:WTNz

そして



朱里「戻ったわ」シュタッ

瑞希「どうですか戦況は」

朱里「一進一退ね。始めはサイボーグ同盟が押してたんだけど大神側も戦車を繰り出したわ。あとジャジメント側からも面倒な超能力者も出てきてね」

朱里「触れた物を爆弾に変えるやつ、体をエネルギーに変えるやつ、ダメージを跳ね返すやつ……」

可憐「ひぇぇ……」

亜利沙「本当に漫画の世界みたいです……」

歩「現実世界と思えなくなってくるよね」

典子「そのサイボーグ同盟って人達大丈夫なんでしょうか」

貴音「……いえ、こちらも到着です」


 

563: 矢橋P 24/11/21(木) 18:24:55 ID:WTNz

<あー、あー、こちらAS



ジャジメント超能力者「何だ何だ?」

大神サイボーグ「日本政府の犬。ASか」



<あー、ここで暴れているのは国際指名手配テロ組織、サイボーグ同盟だな

<我が国で君達が暴れるのは看板出来ない

<よって直ちに交戦を辞めないならば我々は君達を攻撃する




超能力者「よく分からんが潰し合ってくれるならありがたい」

サイボーグ「......いや待て。いくら国際テロ組織相手とはいえ何故ASがこんなに早く出動するんだ?」

 

564: 矢橋P 24/11/21(木) 18:27:36 ID:WTNz
<では攻撃開始!



<ゴロゴロピッシャーーン



サイボーグ「ギャーー」

超能力者「これは天海春香の気象操作による雷か!しかし、どうしてこちらを攻撃するんだ」



<んー、おかしい。レーダーに映らない。これは敵の策略か

<これでは敵の位置が掴めない




超能力者「あ……我々はババヤガン様の超能力を受けているから……」

565: 矢橋P 24/11/21(木) 18:29:26 ID:WTNz

ヒュューーン


サイボーグ「この音は……」


ドシーーン!


超能力者「ブロックが降ってきただと!そうだ、奴らには双海姉妹がいるんだ」


 

566: 矢橋P 24/11/21(木) 18:31:05 ID:WTNz





伊織「ねえ、こんな茶番いつまで続けなきゃいけないのかしら」

響「自分達は自分の能力でだいたいの敵の位置がわかるからね」

オウ助「クワー」

響「オウ助もありがと。」

律子「仕方ないでしょ。政府公認の私達が大神に表立って攻撃出来ないんだから」

真「政府は大神に逆らえないからね」
 

567: 矢橋P 24/11/21(木) 18:34:25 ID:WTNz
春香「そこにサイボーグ同盟が……」っスピーカー


ゴロゴロピッシャーン


春香「あっごめーん。間違えちゃったー」っスピーカー


美希「あふぅ。春香はノリノリなの」

律子「鬱憤でも溜まってたのかしら……」

響「でもこれで1年半前の借りはたっぷり返すさー」

美希「それとでこちゃん、あそこを攻撃した方がいいって思うな。美希の能力が告げてるの」

伊織「でこちゃん言うな」ピカーッ


サイボーグ「ぐわっ!」バタン


律子「相変わらず美希の絶対勘(アブソリュート・インテューション)に間違いはないわね……」


 

568: 矢橋P 24/11/21(木) 18:36:54 ID:WTNz





歩「ええっ!あのAS全員来てるの」

貴音「裏で密かにすり合わせたゆえ可能になりました」

渦木「確かにサイボーグ同盟の存在はASが出動する大義名分になりますね」

瑞希「サイボーグ同盟にASが加わってくれれば敵の部隊を何とか押さえれるはずです」

環(ひびき、いおり、まみ。ありがとう)

569: 矢橋P 24/11/21(木) 18:49:53 ID:Y8QM


朱里「……ちょっといいかしら」

環「ん、どうしたのあかり」

朱里「多分デスマスと対峙することになった場合、相手にするのは環とあたしになるだろうからこれを渡しておくわ」

環「これってボタン?押したら何があるの?」

朱里「それは内緒。あたしが危なくなったら押してちょうだい」




 

570: 矢橋P 24/11/21(木) 18:52:05 ID:Y8QM

ややしばらくして……



貴音「……今、千早から連絡がきました。塔に残っていた部隊も全部出てきたみたいです」

莉緒「よし、みんな突入よ!」

歩「えっ、いきなり!?。まだ心の準備が……」

桃子「歩お姉ちゃん。急にかっこ悪くならないで」プルプル

歩「そういう桃子だって震えているよ」

桃子「これは武者震いなの」プルプル

典子「わ、私も……」プルプル

571: 矢橋P 24/11/21(木) 18:54:55 ID:Y8QM

莉緒「……みんな。今日でおそらく大神とジャジメントは合併する。後世の歴史に刻まれる日になるでしょうね」

莉緒「どうせ歴史が変わるなら私達で良い方に変えましょ」

渦木「そうしましょう」

のり子「歴史にアタシ達の名前が残らないのが不満かなー」

亜利沙「みなさんの活躍は亜利沙が記事にしますからね~」

ひなた「さすがにそれはかんべんしてほしいべさ」

可憐「そんなことで目立ちたくないです……」

亜利沙「もーっ、冗談ですよ」

572: 矢橋P 24/11/21(木) 18:57:10 ID:Y8QM

貴音「ふふっ。では皆様方わたくしの傍に来てください」

歩「うん」



みんなが円陣を組むように貴音を中心としてぐるりと並んだ

貴音「あずさ、貴方の能力をお借りします」グイッ


ピュン
 

573: 矢橋P 24/11/21(木) 18:59:28 ID:Y8QM

大神電波塔 玄関



ピュン


歩「うげっ。気持ち悪っ……」

貴音「結構な距離をてれぽてぃしょんしましたゆえ酔いが来たのでしょう」

桃子「でもそんなことで立ち止まってるひまはないよ!」

貴音「てれぽてぃしょんで移動できるのはここまでです早く中に入りましょう」


 

574: 矢橋P 24/11/21(木) 19:01:10 ID:Y8QM


電波塔玄関付近





渦木「いやにあっさり入れましたね」

瑞希「確かに。防衛のための施設でないといってもオートロックぐらいはあるかと思いましたが……」


見取り図によると電波塔の1階は玄関を抜けると広大なホールが広がっている
他の部屋は無視してアタシ達はホールの端にある階段で3階まで上がらなきゃいけないんだけど……
 

575: 矢橋P 24/11/21(木) 19:03:16 ID:Y8QM

歩「うわっ、中が真っ暗だね」

莉緒「!」

ひなた「懐中電灯はあったかねぇ……」ゴソゴソ

莉緒「いえ駄目よ。懐中電灯なんて点けちゃったらみすみす自分の位置を相手に教えるようなものだもの」

歩「でもこの真っ暗の中は灯りがないと進めないよ」

朱里「確かにおかしい。天井の照明はおろか非常灯の灯りすら点いてないのは異常だわ」

莉緒「この状況は意図的に作り出されたもの。居るわねインビジブル・フォースが」
 

576: 矢橋P 24/11/21(木) 19:05:12 ID:Y8QM

歩「インビジブル・フォースって?」

莉緒「ババヤガンが率いるジャジメントの特殊部隊。真夜中の行軍や建物内の暗闇での戦闘を専門とする部隊よ」

莉緒「彼らは高性能の暗視スコープを装備している。暗闇での戦闘はお手の物」

朱里「逆に自分達はババヤガンの能力で暗視スコープやレーダーに感知されることは無く、一方的に有利になれるってわけね」

朱里「ほんっと、やっかいな能力ね。Sランクなだけはあるわ」

貴音「そのお陰で敗北知らずの常勝部隊だと聞きます」

渦木「入り口の警備の緩さは彼らの実力による自信の表れだったようですね」
 

577: 矢橋P 24/11/21(木) 19:07:36 ID:Y8QM

瑞希「確かに建物内で進軍を阻む守りとしてはこれ以上はないかもしれません」

莉緒「弱ったわね。こんなところで足止めくらうわけにはいかないんだけど……」

可憐「それなら……私、だいたいの敵の位置わかります」

莉緒「え…」





 

578: 矢橋P 24/11/21(木) 19:09:42 ID:Y8QM









インビジブル・フォースA「…………」


インビA(全く気が滅入る。あと半日はこうしていなければならないとは)

インビA(ん、足音が聞こえる、誰か来たな。まず味方かどうか確認して侵入者なら即始末……)


バシュ

579: 矢橋P 24/11/21(木) 19:11:24 ID:Y8QM
インビB「ババヤガン様、非常事態です!」

ババヤガン「何、どうした」

インビB「見張りをし交代しようとしたところ見張り配置されていた隊員全員がやられてます!」

ババヤガン「そんな馬鹿な!」




バチッ!

インビB「…………」バタン


ババヤガン「なっ、貴様ら……」

瑞希「ババヤガンさん。あなたの能力にも欠点がありますね。機械から非探知になっているせいでお互い連絡のやり取りが出来ないのですから」

580: 矢橋P 24/11/21(木) 19:13:05 ID:Y8QM

ババヤガン(そんなことはわかっている!だから我が部隊は先手必勝、相手に何かされる前に殺るがスタンスだった)

莉緒「だからいざ問題が起きると対処が遅れる……部隊としては致命的ね」


ババヤガン(こうなったらデスマスと合流して……)

のり子「おっと!逃さないよ」バッ

ババヤガン「ぐっ、貴様ら。私はジャジメントのSランク超能力者、ババヤガンだぞ!」

のり子「Sランクとかアタシよくわかんないんだよね。大人しくしてもらうよ!」

ギューッ

ババヤガン「ぐわーーっ」




 

581: 矢橋P 24/11/21(木) 19:15:06 ID:Y8QM




莉緒「これでこのフロアは制圧出来たわ」

渦木「可憐さんと亜利沙さんあなた方のおかげです」

朱里「サイボーグの匂いならわかります……って聞いた時は驚いたけど、……凄い嗅覚ね」

可憐「いえ、お役に立てたなら何よりです」

亜利沙「亜利沙レーダーも久々に活躍出来ました。それに亜利沙達もだいたいの位置しか伝えてないのに遠くから狙撃した渦木さんも凄いですよ」
 

582: 矢橋P 24/11/21(木) 19:17:17 ID:Y8QM

典子「終わったんですか」オソルオソル

のり子「うん。どうだ!アタシ達も強いでしょ?だから心配しないでね」

瑞希「全員殺してはいません。私達は戦争するつもりでここに来たわけではないのですから」

莉緒「可憐ちゃんと亜利沙ちゃんがいるならこのフロアの暗闇は私達にはプラスに働くわね」

莉緒「よし、ここで三手に分かれるわよ」

莉緒「可憐ちゃんと亜利沙ちゃんに渦木さんはここに残って大神やジャジメントの人間が電波塔に戻ってくるのを阻止して」

朱里「挟み撃ちにされても困るしその方がいいわね」

のり子「アタシも残るよ。ふんじばったババヤガン達を見張らないといけないしね」
 

583: 矢橋P 24/11/21(木) 19:19:47 ID:Y8QM
莉緒「私と瑞希ちゃんは1階の奥にある制御室を制圧してくるわ」

貴音「ではこれからの先導はわたくしが務めましょう」

貴音「わたくしに歩、桃子、ひなた、典子、環、朱里は着いてきてください」

貴音「階段で3階まで上がります。制御室が制圧出来てないうちはえれべぇたぁは避けた方が無難です」

ひなた「わかったよぉ」

亜利沙「みんな、お願いしますよ!」



 

584: 矢橋P 24/11/21(木) 19:21:31 ID:Y8QM

2階 階段室



貴音「2階には用はありません。そのまま3階に……」ピタッ

朱里「どうしたのよ、急に止まって」

貴音「朱里、この見取り図はあなたに託します。ですから先に行ってください」

朱里「!!。わかったわ」

朱里「みんな、これからあたしが先導する。着いてきて」

環「でもたかねが……」

朱里「ASの貴音なら一人にしても大丈夫。先を急ぐわよ」

歩「そうだね。いこう」




 

585: 矢橋P 24/11/21(木) 19:23:36 ID:Y8QM

貴音「……」


ズズズ……


???「あの者達を逃がしたのはよい判断です。私の狙いはあなただけですから」

貴音「白石紬、元はとある名家に祀られていた“日本人形”。それが具現化により人の姿を得た…でしたね」

紬「違いますね。今の私は主様を護る影、それ以外の事は無意味です」

貴音「あなたの単独行動はその主様の意思ですか?」

紬「いえ私の意思です」

紬「主様の命令で百瀬莉緒を捕らえていたのにあなたのせいで逃してしまった」

紬「あなたは私の顔に泥を塗ったということです。この失態、あなたの首を持って挽回するとしましょう」





 

586: 矢橋P 24/11/21(木) 19:25:56 ID:Y8QM


3階 廊下



朱里「見取り図によると3階の中心に最上階の特別室に行くエレベーターがある。そこまで行くわよ」

典子「はい」ハァハァ


ザザザッ


サイボーグ「「止まれ侵入者め」」チャキ

朱里(まだ護衛が残ってたか。こうなったら……)

587: 矢橋P 24/11/21(木) 19:28:19 ID:Y8QM

デスマス「そこのあなた『息を吸って吐いちゃってください』」

サイボーグ「え、うわぁ息が……」ガクッ

サイボーグ「出来ない……」ガクッ


桃子「……っ」

朱里「あんた。いつからあたし達の味方になったわけ?」

デスマス「別に助けたわけじゃないですよ?あなた方を始末するのはこの私。あとは邪魔なだけじゃないですか」

朱里「……ふーん、そう」

デスマス「そこの二人も気にしなくてもいいですよ。私の能力は意識を失った瞬間に解けるので気絶した瞬間から呼吸は出来てるはずです」
 

588: 矢橋P 24/11/21(木) 19:30:29 ID:Y8QM

朱里「歩、見取り図はあなたに託すわ。あとはあんたが先導しなさい」

環「コイツはたまきとあかりでやっつけるぞ」


桃子「Sランク相手に二人だけで大丈夫なの?」

歩「……行こう。アタシ達じゃ足手まといだ」


デスマス「おや、行かせませんよ『私から逃げちゃってください』」
 

589: 矢橋P 24/11/21(木) 19:33:16 ID:Y8QM

歩「みんな打ち合わせ通りにやるよ!」

桃子「うん!」

歩(アタシはあいつから逃げるんじゃない。“ただ目の前の扉に向かって真っ直ぐ走るだけ”だ)


ダダダダダッ


デスマス「おや、ちゃーんと私の対策しているじゃないですか」


ブン

朱里「余所見している余裕あるのかしら」

デスマス「そうでした。まずはあなた方からいきましょうかねぇ」


デスマス(可哀想に、“アレ”はあの女子供達でどうにかなるものではない)

デスマス(フフ……果たして彼女らの向かったその先は天国への階段か地獄の化け物の口の中か……)





 
 

590: 矢橋P 24/11/21(木) 19:36:45 ID:Y8QM

3階 エレベーター前



歩「よし、このエレベーターだよ!」ハァハァ

桃子「歩お姉ちゃん、今、何時」ハァハァ

歩「もうすぐで22時になるくらい。ちょうどいいくらいだね」ハァハァ

ひなた「歩さん、今瑞希さんから連絡来たべさ。制御室を制圧完了したみたいだよぉ」ハァハァ

歩「ひなたグッジョブ。典子ちゃんは大丈夫?無理してないかな」

典子「大丈夫です」ハァハァ

歩「よし、じゃあ行くよ。ここを上がればアタシ達の最終目的地。そこにイーエスは居る!」
 

591: 矢橋P 24/11/21(木) 19:39:26 ID:Y8QM
アタシ達が突入した時は茜を除いて13人。だけどここまで来れたのは4人だ
その4人だってみんなの協力が無かったらここまではこれなかった
みんなアタシ達を無事にここまでたどり着かせてくれたんだもの
あとはアタシがやれることをやるだけだ

そう考えている間にエレベーターはアタシ達を最上階に連れて行った




イーエス「おや、お久しぶりですね。わざわざ会いに来てくれたのですか」

592: 矢橋P 24/11/21(木) 19:41:44 ID:Y8QM
第十幕終わり

次は第十一幕……ではなく最終幕
いよいよクライマックスです

593: 矢橋P 24/11/22(金) 19:46:33 ID:UtWn


最終幕 アイドル

 

594: 矢橋P 24/11/22(金) 19:57:31 ID:UtWn
時刻はすっかり深夜の22時を回ろうとしていた

電波塔前ではまだ戦闘が行われている
サイボーグ同盟とASの奮闘により大神サイボーグ部隊とジャジメントの超能力者部隊は釘付けとなっている

塔の内部では最終防衛ラインの一つババヤガン率いるインビジブル・フォースは可憐、亜利沙、渦木の活躍により鎮圧に成功


2階では突如現れた謎の刺客 白石紬と四条貴音が相対し
3階では前回からの再戦、Sランク超能力者デスマスと浜野朱里と大神環が対峙した


 

595: 矢橋P 24/11/22(金) 19:59:24 ID:UtWn

2階 階段室



貴音(この者に接近するのは危険。まずはこの狭い階段室から出ましょう)ダッ

紬「……」ニヤリ



 

596: 矢橋P 24/11/22(金) 20:01:54 ID:UtWn

2階 廊下



貴音(少し開けた所に出ました。ここなら戦いやすいでしょう)

貴音(白石紬の持つ具現化による力、それは影に関する能力。おそらく主の影となり支えるという本人の意思が具現化した結果でしょう)

貴音(わたくしが把握している限りでは影の中に潜むことが出来ることに加え彼女に影を踏まれた者は身動きが取れなくなる“影踏み”)

貴音(彼女に影を踏まれれば終わり……ゆえに接近を許してはいけません)

貴音(ですがわたくしが遠くに離れた場合、業を煮やして他の皆の元に行ってしまうかもしれません。それはなんとしてでも避けなければ)

貴音(ならば付かれず離れずが最善のはず)
 

597: 矢橋P 24/11/22(金) 20:05:46 ID:UtWn
紬「おや、奥に逃げないのですか」スゥゥ

貴音「あなたはわたくしがここで食い止めます」


貴音「伊織、あなたの能力をお借り……」


ザシュッ 

ガッシャーン

598: 矢橋P 24/11/22(金) 21:07:32 ID:xnGQ
貴音「な……」ポタポタ

紬「私が影踏みしか出来ないとでも思いましたか?」

貴音(彼女の影が刃に……)ハッ

紬「日本政府の切り札と聞いていましたが拍子抜けですね。今さら気付いても遅すぎです」

貴音(この部屋、照明がおかしい)

紬「手術室の照明を御存知ですか?あれは一つの照明器具にライトがたくさん付いてます」

紬「それは明るくするのみならず、あらゆる角度から細かく光を当てることで影をできるだけ無くすようになっているのです」

紬「この部屋は逆です、強烈な照明が一つだけ。それが長く深い影を作るのに適しているのです」

貴音「……わたくしは貴方の罠にはまってしまったようですね」

599: 矢橋P 24/11/22(金) 21:10:31 ID:xnGQ

紬「そして貴方が他人の血を吸うことで他の超能力を使えることも予習済みです」


ザシュッ ザシュッ

貴音「く……」


ガッシャーン


紬「これでストックしていた血を全部吐き出してしまいましたね。覆水盆に返らず、いや血液瓶に返らずでしょうか」

貴音(これは……非常にまずい……)

紬「吸血鬼がごとく相手を血を吸って失神させる。ということもあなたの得意技だったはず」

紬「ですが私には通用しません、私は“人形”であって血などないのですから」

紬「四条貴音。貴方が出来ることはもうありません」



 

600: 矢橋P 24/11/22(金) 21:17:58 ID:xnGQ


3階 廊下




ブン

パシィ

デスマス「いいですね。こないだとは動きが全く違うじゃありませんか。ミス浜野」

朱里「もうあたしを第一世代の旧式サイボーグだと思わないことね」

デスマス「確かにこの前みたいに身体能力だけで勝つのは骨が折れそうです。ですが……」

デスマス「『キュルリ!』」

601: 矢橋P 24/11/22(金) 21:20:11 ID:xnGQ

バタン


朱里「な、何をしたの……」

デスマス「戦闘用高速言語で『立っていろ』って言ったんですよ」

朱里「戦闘用高速言語ですって……」

デスマス「大神とジャジメントの間で開発した暗号信号みたいなものです」

デスマス「私の能力は相手が意味を理解する必要はないんですよ」

602: 矢橋P 24/11/22(金) 21:23:57 ID:xnGQ

デスマス「よく私と対峙した者は”声さえ聞こえなければいい”とか浅ましい事を考えて耳を塞いだり耳栓をしていたりしますが全て無駄です」

デスマス「『ピコビガゴ!』」

朱里「……」

朱里(声が出ない、それに体が痺れる!)

デスマス「暗示の内容がわからないのでは対処が出来ないでしょう?Sランクを舐めてもらっては困ります」

環「あかり!」


\ピカーッ/


環「もう我慢できない」ダッ
 

603: 矢橋P 24/11/22(金) 21:34:36 ID:xnGQ

デスマス「あの時のヒーローの正体があんな子供だったとは」

環「あかりを解放しろ!」ブン

デスマス「『キュルリ!』」

環「……ぐ」ピタ

デスマス「無駄無駄。高速言語なら攻撃されてからでも命令が間に合うのですよ」

朱里(向こう見ずに突っ込むから……)
 

604: 矢橋P 24/11/22(金) 21:37:23 ID:xnGQ
デスマス「あなたの身体能力だけは驚異ですからね。きっちり動きを封じてから料理してあげますよ」

朱里(……)ガチャガチャ

デスマス「む、何をしている」

環「今だ!」


\ピカーッ/


デスマス「はぁ?変身を解いていったい何を……」

環「変身!」


\ピカーッ/



ボカッ!


デスマス「うごっ」

環「たまきの拳、今度こそ届いたな!」

605: 矢橋P 24/11/22(金) 21:40:18 ID:xnGQ

朱里(よし、やっぱり思った通り)

朱里(環はリストバンドで変身する際、一瞬だけ意識を失う。だから変身及び変身解除時はやつの暗示が解ける!)


環「もう容赦はしないぞ」

デスマス(しまっ……接近し過ぎた)

デスマス「『キュル……』」

環「言わせない!」


ドン! バキッ! ボカッ!

デスマス「うげぇ」

朱里(たっぷり味わうがいいわ。1ヶ月の特訓の成果、能力を使わせる暇もないほどの連続攻撃を!)

606: 矢橋P 24/11/22(金) 21:44:04 ID:xnGQ
パシィ!

環(止められた……)ハァハァ

デスマス「けほっ、先ほどの連続攻撃は見事でしたよ」

デスマス「『キュルリ!』」

環「!」ピキーン

デスマス「ですがいくら変身しても元が子供では限界がありますねぇ」

朱里(……変身による身体能力の向上に環の体力が付いて行かなかったのね)


デスマス「『ピラピロッ!』」

デスマス「今度は変身そのものを封じました。私に同じ戦法は通じませんよ」

607: 矢橋P 24/11/22(金) 21:46:07 ID:xnGQ

環(くっそ……。何が制限されてるかわからない)

朱里(環、アレよ!)バンバン


デスマス「何か伝えたいみたいですが無駄です」

デスマス(彼には私に対する行動を全て封じていますからねぇ)
 

608: 矢橋P 24/11/22(金) 21:48:28 ID:xnGQ

環(そうか!)ゴソゴソ

環(朱里からもらったこのボタンだ)バッ

環(たまきにはこのボタンが何のボタンだかわからない。だからボタンを押すこと自体を禁じられていない限りは押せるはず)


カチッ

環(よし。押せた)

609: 矢橋P 24/11/22(金) 21:50:18 ID:xnGQ


バシュュューッ


デスマス「何の音です!?」


朱里(あたしの装備の一つ超音波振動。この前は使えなかった装備)


バシュュューッ


デスマス「ぐわぁぁ…『キュルリ!』」


朱里(無駄よ。この装備の主導権は環の持ってるスイッチ、止めろって命令されてもあたしからは止めることは出来ない)

610: 矢橋P 24/11/22(金) 21:53:00 ID:xnGQ
環(…………く)


バシュュューッ


デスマス「うきゃーーっ」

朱里(このまま押し切る!)





環(……ぐぐ)

朱里(!!)

611: 矢橋P 24/11/22(金) 21:55:56 ID:xnGQ


ボカン!



朱里「うぐっ……」ガクッ

デスマス「ハ、ハハ。もう少しであなたの勝ちでしたのに……何故無理やり自分で壊してまで止めたんです?」


環「あかり……」ボロボロ

デスマス「そういうことですか」

デスマス「近くにいたこの者まで巻き添えにしてしまうから無理やり中断したのですか……甘いことで」


デスマス「ミス浜野。あなたはドライな人だと思っていましたがね」チャキ

朱里「……自分でも驚いてるわ。正義感なんてとっくに捨ててきたと思ってたんだけど」

612: 矢橋P 24/11/22(金) 21:58:12 ID:xnGQ

環(このままじゃあかりが!)


デスマス「流石に万策尽きましたね。あなたは放っておいたら危険だ。先に消えてもらいましょう!」




ズン!

613: 矢橋P 24/11/22(金) 22:00:21 ID:xnGQ

デスマス「ば、バカな……」フラフラ

デスマス「あ、暗示は解けてなかったはず……」ヨロッ

環「わからない。ただあかりを助けなきゃ……って思ったら体が動いた」

デスマス(この者の正義感が私の能力を上回ったのか……)


バタン

614: 矢橋P 24/11/22(金) 22:03:57 ID:xnGQ

朱里「ゴホッ……」

朱里(体が動く。どうやら本当にデスマスを倒せたようね)

朱里(……本当に倒せた。あのSランクのデスマスを)

朱里(いや……)



\ピカーッ/


環「あかりーっ」ギュー

朱里(この子がいたから……ね)

朱里「大げさね。ボロボロだけどこの前ほどじゃないわ」

朱里「デスマスを気絶しているうちにそこの二人のサイボーグ共々拘束するわよ」

環「わかった!」

朱里「……後は歩達を信じるしかないか」





 

615: 矢橋P 24/11/22(金) 22:08:04 ID:xnGQ


2階 廊下



ザシュッ ザシュッ ザシュッ



貴音「……っ」

紬「しぶといですね。先ほどから何とか致命傷は避けているようですがその深手では……おや、血が止まっています」

紬「なるほど血液支配(ブラッド・コントロール)で自分の血液を操作してそんなことも出来るのですか」

紬「だが傷が治ったわけではないはず。ただの時間稼ぎが関の山です」


パァンパァン

616: 矢橋P 24/11/22(金) 22:11:24 ID:xnGQ


紬「……百瀬莉緒」キッ

莉緒「私も混ぜてくれないかしら。あなたには個人的にすごい借りがあるのよね」

貴音「なぜここに?」

莉緒「制御室の制圧は終わったからね瑞希ちゃんに任せて私は他のみんなを援護しに来たの」

紬「今さら出てきて何をするつもりですか。やはりあなた方は馬鹿なのですね」

莉緒(急所を外してあるとはいえ銃弾二発をまともに受けてもあの様子……か)

貴音「彼女は具現化で生まれた存在です。我々人間と同じとは思わない方がいいでしょう」
 

617: 矢橋P 24/11/22(金) 22:13:16 ID:xnGQ

紬「私はあなた方人間とは違うのです。銃で撃たれようがナイフで切られようが痛くも痒くもありません」

莉緒「……」

紬「何人来ようと同じ。影の刃で切り刻んであげましょう」


ザシュ……


ピカーーーーーッ


紬「これは……閃光弾!」

莉緒「影って不思議よね。光から生まれるのにより強力な光を浴びると消えちゃうんだもの」

莉緒「あなたには散々痛い目にあったもの。これくらいの準備はしているわ」

618: 矢橋P 24/11/22(金) 22:16:06 ID:xnGQ

紬「それがどうだというのですか。お二人揃ってそこまで時間稼ぎがお好きだと……は?」


貴音「莉緒、それは……」

莉緒「臭いでわかるでしょ。オイルよ」ドボドボ

莉緒「煙草はとっくに辞めたんだけどジッポは取っておいてよかったわ」ボッ


ボボボッ!


紬(信じられません。自分のジャケットにオイルを塗り火を着けた)

紬「そんなジャケットを着るなんて……あなた本当に馬鹿なのですか!」

莉緒「女は時に派手な方がいいものなのよ。あなたも人形みたいにかしこまらないで羽目を外したらいいんじゃないかしら!」
 

619: 矢橋P 24/11/22(金) 22:20:16 ID:xnGQ
紬(そんな状態で突っ込んで来るなんて皆目理解出来ません!早くこの異常者を撃退しなければ)

ザシュ……

紬(刃が小さい、これでは奴に届きません!)

紬(そうか、今この部屋で一番大きな光源は天井の照明じゃなく燃えてる彼女の体自身。だから影の向きが逆に……)

莉緒「上品にとまっているあなたにプレゼントをあげるわ」

紬(い、一旦影の中に逃げ……)


シュルル!


貴音(あれはワイヤーガン)

莉緒「せっかくプレゼントをあげようとしてのに逃げちゃ嫌よ?」

紬(ワイヤーが絡まって、う、動け……)

ポイッ ぼすっ

莉緒「そのジャケット、あげるわ」

620: 矢橋P 24/11/22(金) 22:24:00 ID:xnGQ

ボボボッ

紬「ひぃっ!」


ボ-ーーッ!


紬「燃える、私の体が燃えています!」

紬「このだらーーーーっ!」シュュュウ


シュュュュウ    \ポン/

 

621: 矢橋P 24/11/22(金) 22:27:07 ID:xnGQ


貴音「……消えましたね」

莉緒「倒せたと思う?」

貴音「本体である人形が焼滅したことで実体化出来なくなっただけでしょうね」

貴音「ですが暫くは大人しくなるでしょう」

ガクッ

莉緒「はーー、ギリギリね。あのジャケットが耐熱仕様といっても軽い火傷だわ。この年齢になるとお肌の手入れも大変なのに」

貴音「急いで治療します。……助かりました莉緒が来てくれなければどうなっていたか」

莉緒「お互い様でしょ。私もあなたに助けてもらわなかったらこの場に居ないわ」

貴音「具現化による存在。まこと……敵に回ったら恐ろしきことです」

莉緒「もう二度相手にしたくないわ。……でも、歩ちゃんが相手にしているのもそうなのよね?」

貴音「ええ。おそらく白石紬より強力で凶悪です」

莉緒(歩ちゃん……)






 

622: 矢橋P 24/11/22(金) 22:35:01 ID:xnGQ



最上階 特別室





電波塔の最上階、そこはたくさんのコンピューターが並んでいた
これが大神ネットのメインサーバーなのだろうか
その中心には……育ちゃんがベッドに寝かされていた
その姿は市立病院で見た時と同じまま……

623: 矢橋P 24/11/22(金) 22:38:16 ID:xnGQ

桃子「育!」

イーエス「歩桃子ちゃんも来たんですか。甲斐からは行方不明だと聞いていたのですが」

歩(なんだ?)

イーエス「実は私もあなた方がここまで来る気がしてました。また会えて嬉しいですね」

歩(イーエスが前と違う)


歩「ずいぶん雰囲気が変わったねイーエス」

イーエス「そのイーエスという呼び方をやめてほしいですね」

歩「え?」
 

624: 矢橋P 24/11/22(金) 22:40:03 ID:xnGQ
イーエス「あれからかなりの人を喰いました。大学教授。とある分野の第一人者。知識人と言った方々です」

歩「そんな!」

イーエス「まああまり有名な方々を喰うと騒ぎになりますので裏でひっそりしている方を狙いましたがね。それでも騒ぎになってないでしょう?小さな摘発なら大神が全部もみ消しましたから」

イーエス「そして私を生み出した科学者達も喰ってやった」

イーエス「もう私は神にも等しい存在!その気になれば世界中の国の中枢のコンピュータに潜り込んで世界を巻き込んだ核戦争を起こすことだって出来る。大神もジャジメントすらも私を止めることは出来ない」


デウエス「ですから私のことはイーエスではなく“デウエス(神の自我)“と呼んでいただきたい」

 

625: 矢橋P 24/11/22(金) 22:41:52 ID:xnGQ

アタシ達が修行で1ヶ月空けている間にイーエス……いやデウエスはかなりの成長を遂げていたようだった
少女のような幼い言動は消え、落ち着いた大人の女性のような喋り方に
そして……生みの親を何とも思わず世界中を自分の意思一つでどうにか出来るという傲慢な性格に
そこにはかつて大神を、甲斐をパートナーだと紹介していた姿は見られなかった


でも、そんなことでアタシ達は気圧されるわけにはいかない!

626: 矢橋P 24/11/22(金) 22:44:07 ID:xnGQ
歩「ちょっと会わない間に立派になったみたいだね。だけどまだアタシを喰うことは出来ないんだ。神の自我なのに」

もわわ~ん


茜「そうだね。そんな神の自我に対抗出来るマイハマンは反神の使徒でも名乗ればいいんじゃないかなっ!」

デウエス「いやに引っかかる言い方ばかりのたうっていますが無駄ですよ。あなたは排除されないだけで私に対しては何も出来ないただの一人間でしかない」


茜「そんな一人間も排除出来ないなんて神の自我も穴があるんだねぇ~」

桃子「神の自我って案外大したことないのかもね!」

典子「……こんな小さな子をこんな所に連れ込んだりして、ちっとも神様らしくないです!」

ひなた「自分を生んだ親ぐらいは敬った方がいいと思うよぉ」

デウエス「……」

627: 矢橋P 24/11/22(金) 22:46:10 ID:xnGQ

歩「デウエス。勝負しない?」

デウエス「勝負ですって?」

歩「そう。いい加減アタシ達を鬱陶しいって思って来たんじゃない?」

歩「だからお互い条件を賭けて勝負するんだ」

デウエス「その条件とは?」

歩「アタシが負けたらアタシのことは焼くなり煮るなり好きにしてよ。だけどアタシが勝ったら“あんたの中にある育ちゃんを解放してもらう“」

デウエス「そうですか。なら私はあなたが契約している魔人を契約解除してもらいましょうか」

デウエス「焼くなり煮るなりなんてしません、それで結構です。優しいでしょう?」

628: 矢橋P 24/11/22(金) 22:48:17 ID:xnGQ

歩「よく言うよ。茜との契約が解除した瞬間アタシを喰う気でしょ?」

デウエス「おや騙されませんか。あなただけではないです、あなたのお仲間や親族まで全て喰らってあげますよ。食べ残しは気持ち悪いですからね」

デウエス「つまりあなたの勝負というのはあなただけではなくあなたのお仲間達も全てを賭けているんです。その自覚あります?」

歩「……そんなのとっくにわかってるさ!アタシがここまで来れたのはみんなのおかげだ。この勝負アタシ一人だけだなんて思っちゃいない!」

茜「イーエスちゃん。流石にそれはご主人の覚悟を舐め過ぎじゃないかな」ゴゴゴ

典子「私達はみんな歩さんだからついて来たんです」

桃子「今さらそんなこと言って脅しても無駄だよ!」
 

629: 矢橋P 24/11/22(金) 22:53:01 ID:xnGQ

デウエス「野暮な発言でしたか。ですが勝負の方法は?それによっては承諾しかねます」

デウエス「お互い大事なものを賭ける真剣勝負。ゆえにお互い納得出来る勝負の内容でないと意味が無いですよ?」

歩「アイドルだ、“アイドル勝負”にしよう」

デウエス「ア……イドル?」

歩「アイドルグランプリは知ってるよね?この時代で視聴率15%超えている超人気番組だよ」

歩「基本それと同じ方式。一人ずつ1曲歌ってダンスも踊る、それを審査員が見てどっちがいいか採決してもらうんだ」

歩「難しいルールなんて一切無いよ」
 

630: 矢橋P 24/11/22(金) 22:55:33 ID:xnGQ

デウエス「審査員はどうするです?まさかあなたの後ろの3人が審査員だと言うのでは無いでしょうね」

歩「だからそれもアイドルグランプリと同じだよ」

歩「今の時代は凄いよね。テレビを見ながらリモコンで投票出来る時代だもの」

デウエス「まさか……」

歩「そう!アタシ達の勝負の内容をネットで生配信する。そして配信を視てもらった人達が審査員さ」

歩「アイドルグランプリは知らない人はほとんどいない人気番組だ、突然の配信でもすぐその仕様を理解してくれると思うよ」

歩「元々この後23時に配信があるんでしょ?それの前座さ。デウエス、あんたなら出来るはずだ」
 

631: 矢橋P 24/11/22(金) 22:58:08 ID:xnGQ
デウエス「確かに……それなら可能ですが……」

デウエス(あまりにも準備が良すぎる。この者達、どこまで私のために策を練って来たのか)

デウエス(この勝負……受けるべきではない)


歩「で、どうするデウエス」

デウエス「ええ……その勝負……」


「受けるよ!」


デウエス「!!!」

桃子「!!」

632: 矢橋P 24/11/22(金) 23:00:33 ID:xnGQ

茜「よし!言質取ったよ」

茜「大魔人茜の名において両者の勝負の契約を成立するものなり。いかなる現象もそれを阻むことが出来ないものとする」


ジュッ!


茜「契約成立だよ」

633: 矢橋P 24/11/22(金) 23:03:11 ID:xnGQ

デウエス(今のは……)

桃子(今の……育の声だよね?)

デウエス(何故だ!今まで大人しくしていたのに……おのれ!)


デウエス「……いいでしょう。ですがフィールドは私が決めさせてもらいます。ここまであなた方の要求を全て飲んでいる。それくらいいいですよね?」

歩「勝負に不公平が無ければどこでもいいよ」

デウエス「では案内します。私の世界に」カッ



桃子「えっ、ちょっと!」

典子「吸い込まれます!」

歩「うわぁぁぁっ!」


デウエスの目が妖しく光るとアタシ達はパソコンのディスプレイの中に吸い込まれてしまった……




 

634: 矢橋P 24/11/22(金) 23:06:36 ID:xnGQ


電脳世界




歩「ここは……」


デウエス「ここが私が普段居る電脳世界です」

真っ黒の空間にプログラミング文字と思われる記号がびっしり羅列する
電脳世界に飛び込んで……って表現は聞いたあったけど実際はこんな世界なのか……

茜(一般人をこんな世界に引き込めるぐらい成長しているのか……)
 

635: 矢橋P 24/11/22(金) 23:08:16 ID:xnGQ
典子「うう……ずっと見ていると頭が痛くなりそう」

ひなた「あたしもだねぇ」


デウエス「まあアイドルの舞台には相応しくありませんね」キッ


パァーーーーーーッ


典子「わぁ……」

デウエスが人睨みしただけで世界が広く綺麗なステージに変貌した

636: 矢橋P 24/11/22(金) 23:11:14 ID:xnGQ

デウエス「さて、私も姿を変えますか」


そう言ってデウエスは姿を変えていく
すらっとした長身に
肌はシルクのように美しく
手足も無駄がなく洗練され
真っ黒だった顔はぱっちりした目、滑らかな鼻
頬まで裂けてた口は慎ましく
綺麗な黒い髪は育ちゃんの名残だろうか
理想像……といっても過言じゃないくらい美しい美女が誕生した


桃子「う……」

ひなた「こりゃ、べっぴんさんだねぇ」


デウエス「声は……ア″、ア、あ、あーー。こんなところでしょうか」

典子「すごい綺麗な声……」


声もオペラ歌手が何年も調整したような声をあんなあっさり……

637: 矢橋P 24/11/22(金) 23:13:14 ID:xnGQ

デウエス「まさか顔の無い女の姿じゃアイドルは無理だろうって思ってましたか?」

もちろんそんなことは思ってなかった。デウエスならこれくらい出来て当然だと思っていたから

デウエス「この世界の中で私が出来ないことはありません」

デウエス「アイドル勝負だろうがスポーツだろうがチェスだろうが将棋だろうが私が人間と勝負して負けることなどあり得ないことです」
 

638: 矢橋P 24/11/22(金) 23:16:30 ID:xnGQ

歩「……それより配信の方の準備は?もうすぐ22時半になるけど」

デウエス「それの準備も終わりました。もう配信準備中の画面まで出してますよ」

デウエス「ですが勝負内容はともかく採決の内容の方がまだ納得していませんね」

桃子「どういうこと?」

デウエス「外部にあなた方の仲間が待機して勝負の内容関係なくあなただけに票を入れる可能性があるじゃないですか。それこそサクラでも雇ってね」

歩「アタシにそんなこと出来る財力や影響力があるって思う?」

デウエス「ですから同接1万人以上になれば納得しましょう。流石に1万人のサクラは無理でしょうし、1万人も集まれば数百人ぐらいのサクラはなんとでもなります」
 

639: 矢橋P 24/11/22(金) 23:18:11 ID:xnGQ

歩「……同接1万人になれば文句無いんだな」

デウエス「ええ。同接1万人になった場合はもう文句は無いです。ですが同接が少なかった場合私が用意した審査員に審査してもらいましょうか」

デウエス(ふふ、いくら大神とジャジメントの配信を控えていると言ってもこの深夜に事前告知も無しに同接1万人など……超大物YouTuberでも難しい)

デウエス(そして審査員の主導権さえ得てしまえばこちらのものです。表面上は公平を装ってその実は私好みの審査員に変えてしまいましょう)

デウエス「さて今の同接数は……!」

デウエス(どういうことだ、回覧数が急激に伸びている!)






 

640: 矢橋P 24/11/22(金) 23:28:24 ID:xnGQ



矢橋「よーし、始まったわね」

矢橋「あんたに 明日の22時頃配信があるから見てくれ って言われた時は驚いたけど」

矢橋「盛り上げるためにスレッドも立てたし声かけれるところには全部かけたんだから!」

矢橋「だから……絶対勝ちなさいよ!」




「……瑞希さん。杏奈も百合子さんもネット仲間も……みんな見ています」

「これは人類の運命を賭けた戦い!」

「……百合子さん大袈裟です」




「スバル、始まりましたよ」

「ちょっと待って!今シャワー浴び終わるから」

「すばるん、ロコロコ。楽しみだねっ!」




「コトハ~メグミ~始まるよ」

「本当だ。環は映ってないかな?」

「もう二人とも。夜更かしにならないようにね」




「ね~ね~未来。なんだか面白そうな配信やってるよ」

「翼、もう眠いよぉ」

「でもアイドル勝負だって!一緒に見ようよ」


 

641: 矢橋P 24/11/22(金) 23:31:14 ID:xnGQ




デウエス「こんなことが!」

歩「どうやら同接1万人いったみたいだね。あんたが言い出したんだ、もう文句は言わせない」

歩(みんなありがとう)

デウエス「こいつら……」
 

642: 矢橋P 24/11/22(金) 23:35:50 ID:xnGQ

桃子「せっかく作った綺麗な顔が歪んでいるよ。お姉さんはやっぱりプロじゃないね」

デウエス「……まだ配信が始まっていない」

デウエス「いいか。今アイドルグランプリの番組の冒頭で流している解説を流している」

デウエス「その解説が終わったらすぐスタート。カメラ視点はあそこ、まずはここまで啖呵を切ったお前のアピールタイムだ」

デウエス「急ごしらえの配信ですのでお互いの自己紹介は解説に含まれていない。アピールタイムでのパフォーマンスが全てになる。アピールタイムはアイドルグランプリに習って長くても5分、どうですここまでで不満な点は?」

歩「流石にこういうことやらせたら完璧だね。何も無いよ」

デウエス「解説があと約2分で終わる。せいぜい準備しなさい」




 

643: 矢橋P 24/11/22(金) 23:38:58 ID:xnGQ

大神グループ日本本社




甲斐「ジオット会長。こんな夜遅くに配信をご視察なさるとは恐縮です」

ジオット「別に。それよりジャジメント側の会長の僕がこの大神本社の会長室で大神側の最上位の役員の君と配信を見るなんてね。なんだかそのことの方がそわそわするなぁ」

甲斐「私風情と一緒では退屈でしょうか」

ジオット「そんなことはないよ。僕もどうせなら美人と一緒にいたいからね」
 

644: 矢橋P 24/11/22(金) 23:42:00 ID:xnGQ
甲斐「もったいないお言葉です」

ジオット「そうかしこまらないでよ。それがこの国の美学かもしれないけど僕はヨーロッパ側の人間だしさ。僕はどんな人間でも気に入ったら認める主義でね」

ジオット「君は良いよ。容姿もそうだけどなんて言うか……君からは漂うオーラがさ、普通じゃない。僕好みだ」

ジオット「大神側のトップがまだ不在だったよね。君がなったらどうだい?」

甲斐「デスマスからもそう言われました。が、なるつもりはありません」

ジオット「そりゃ残念。大神博之の従兄弟をトップに祭り上げる計画は失敗に終わったんだろう?」

甲斐「はい。あれは幼すぎました」

ジオット「僕だったらそれでも構わなかったんだけどね、史上初の十代の会長なんて面白いじゃないか」

ジオット「まあ本当の傀儡にするためにその従兄弟には”壊れてもらう”必要があるけど」
 

645: 矢橋P 24/11/22(金) 23:44:06 ID:xnGQ

甲斐「…………」

ジオット「おや、配信がもう始まるみたいだね」

甲斐「配信までまだ時間があるはずですが……」

甲斐「…………何ですかこれは!」


 

646: 矢橋P 24/11/23(土) 06:13:54 ID:RPWE




歩「桃子。ひなた。典子ちゃん準備するよ!」

桃子「うん!」

ひなた「任せてほしいべさ」

典子「歩さんはパフォーマンスに集中してください」


パフォーマンスをするのはアタシ一人
だけど音響とか照明とかは一人じゃ出来ない
だから桃子、ひなた、典子ちゃんにはここまで来てもらったんだ
桃子が照明を動かしてひなたは持参のラジカセで曲を流す、典子ちゃんは二人のサポートだ
この1ヶ月間そのことだけ練習してきたんだからバッチリさ
 

647: 矢橋P 24/11/23(土) 06:16:15 ID:RPWE
デウエス「では始まりますよ」


3、2、1 スタート!




アタシはカメラの前で今出来る最大限のダンスをして歌った
始めはダンスを踊るだけだったんだけど桃子にアイドルはダンサーじゃないんだよ!ってこっぴどく叱られてさ
苦手だった歌もこの1ヶ月間みっちり練習して……何とか様になったと思う
ダンスに比重をおき過ぎるのもどうなのって桃子に苦言を言われたけどアタシの一番の長所だから
散々みんなと協議してダンスを生かしつつ歌も手を抜かないような感じになった


小さいオーディションなら何回かやったけどこれがアタシの初ステージ!
不思議と緊張はない。アタシにしては珍しくて不思議なんだけど
みんなの思いを背負っているからかな
緊張や不安よりやらなきゃ……って気持ちのが強いんだ


やっぱりダンスを踊っている時がアタシは一番楽しい!
それも同接1万人以上の人が視ているのが初舞台なんて贅沢だよね
やっぱりアタシの人生はダンスしか無いんだ!

 

648: 矢橋P 24/11/23(土) 06:18:08 ID:RPWE

茜(……君をご主人に選んで正解だったよ。こんな舞台を見せてくれて……)

茜(一人のアイドルの誕生に立ち会わせてくれて……本当にありがとう)




 

649: 矢橋P 24/11/23(土) 06:20:13 ID:RPWE


ビシッ!


デウエス「はい終わりです。1分のインターバルを置いて今度は私の番ですね」

ひなた「歩さんお疲れさまだべさ。お水飲むかい」

典子「とってもいいパフォーマンスでした!」

桃子「失敗は無かったね、褒めてあげる」
 

650: 矢橋P 24/11/23(土) 06:22:24 ID:RPWE

デウエス「なかなかいいパフォーマンスでしたよ。ここまですることはありますね」

歩「……ずいぶん余裕だね」ハァハァ

デウエス「そう見えます?実際楽しみなんですよ。あのパフォーマンスを私のパフォーマンスで塗り潰すのがね!」





そうしてデウエスのパフォーマンスが始まった
そのパフォーマンスは……一言で言えば 完璧
歌もダンスも容姿も照明の演出に至るまで
人間のパフォーマンスを突き詰めてゆけばこんなことになるのか
アタシも一瞬言葉を失った




 

651: 矢橋P 24/11/23(土) 06:24:43 ID:RPWE
バーーン!!!



デウエス「……今カメラを止めました。これから判決の時間です」

デウエス「どうでしたか私のパフォーマンスは?完璧でしたでしょう」

歩「…………」

デウエス「人間が出来るパフォーマンスの限界を表現したつもりです。ふふ、人間の出来ることで私に出来ないことはありませんから」

歩「結果は視てくれた人が決めることだよ」

デウエス「負け惜しみを呟くのみですか。投票結果が出るまで楽しみに待ちましょう」





 

652: 矢橋P 24/11/23(土) 06:27:31 ID:RPWE

開発地区 電波塔前 戦場




ブラッド「ひとまず落ち着いたか」

真美「ブラブラ久しぶりだね~」

ブラッド「お前の酷いあだ名もな……」ハァ

ブラッド「お前達ASがかき乱してくれたおかげでこっちは大変だったぜ。こんなしんどい任務は久しぶりだよ」

ブラッド「それとお前こんなところに居ていいのかよ」

真美「まあまあ、今お互い攻撃がやんだっしょー。休憩タイムだからあいさつにきたのだよ」

真美「千早お姉ちゃんもブラブラのボスに話しに行ったよ」

ブラッド「ヘルガ団長な。……ん?」
 

653: 矢橋P 24/11/23(土) 06:29:27 ID:RPWE


甲斐「…………」ザッザッ

ブラッド「おおっ、すっごい美人!」

ブラッド「……がこんなところに何の用だ」チャキ


バキッ


ブラッド「ぐはぁ」バタン

真美(え……ブラブラが一撃で……)

甲斐「雑魚に用は無い!」

 

654: 矢橋P 24/11/23(土) 06:31:24 ID:RPWE

甲斐(デウエスはおろかサイボーグ部隊やババヤガンやデスマスとも連絡が取れない)ザッザッ

甲斐(あんなふざけた配信、デウエスは何をやっているのです!)ザッザッ

甲斐(とにかく配信を辞めさせなければ!)ザッザッ
 

655: 矢橋P 24/11/23(土) 06:33:46 ID:RPWE
灰原「邪魔してやるな」ザッ


甲斐「!」

甲斐「灰原!あなたが何故ここに」

灰原「……久しぶりだな甲斐。パライソタウンの研究所でのサイボーグお披露目の時以来か」

灰原「風の噂でお前もサイボーグになったと聞いた」

甲斐「あなたほどの者があの者達の肩を持つ気ですか!」

灰原「俺は借りを返しに来ただけだ」

灰原「塔の中を俺達のような者が荒らすのは無粋だ。黙って見守れ、この事件の結末を」





 

656: 矢橋P 24/11/23(土) 06:36:57 ID:RPWE


電波塔最上階




デウエス「投票結果がもうすぐ出ます。大神とジャジメントの配信も始まりましたがね」

歩「……そう」

デウエス「どれ、暇ですし世間が今どうなっているか見てみますか?」



<とんでもないニュースです!今大神とジャジメントの共同配信で大神とジャジメントの合併の発表がありました!

<日本最高企業とアメリカ最高の企業が一つになります!

<あ、今新しい世界最強の企業グループの名前が発表されました!

<ツナミです!ツナミグループ!新たな時代の幕開けです!


ブッ!

657: 矢橋P 24/11/23(土) 06:40:13 ID:RPWE
莉緒の言ってた歴史が変わるとはこの瞬間だったのだろう
一瞬見せられた映像は日本中、いや世界中が混乱する姿だった


デウエス「さて私はこれから忙しいんですよ。あなた方に構ってる暇なんてないんです」

デウエス「……やっと集計結果が出ました。すぐ確認して……」

デウエス「…………………………」

デウエス「……な」ワナワナ

歩「どうしたデウエス」

デウエス「ふ、ふざけるな」

デウエス「何故あなたの方が票が多い!」

デウエス「さては仕組んだな!ネット投票に……」

658: 矢橋P 24/11/23(土) 06:42:25 ID:RPWE
歩「デウエス、あんたはアイドルというのを全くわかっちゃいない」

デウエス「何を……」

桃子「何で負けたのか分かってないようだから教えてあげる」

典子「デウエスさんのパフォーマンスは完璧過ぎです。歌もダンスも一つ一つが突き抜けているせいで不自然です」

ひなた「その全てが調和していなかったねぇ。料理で例えるならステーキとラーメンとカレーとお寿司を全部一つに詰め込んだみたいだったよぉ」

桃子「そう、だからまるで各分野を切り取って貼り付けているみたいだったよ。映像越しだったから余計だね。桃子達みたいに直で見たなら別だったかもしれないけど」
 

659: 矢橋P 24/11/23(土) 06:44:10 ID:RPWE

デウエス「だが!そんな不自然など吹き飛ばすパフォーマンスだったはずだ!」

歩「確かにこれがダンスや歌の大会やコンクールならそれでもあんたの勝ちだったさ」

歩「だけどこれはアイドルグランプリだよ?」

デウエス「!!」

茜「アイドルグランプリはね、まだデビューしたばかりのアイドルが自分の全てをぶつけ合う場所なんだよイーエスちゃん」

茜「君のパフォーマンスのようにコピペみたいな完璧なアイドルを眺める舞台じゃないってこと。完璧、完璧、完璧ってパフォーマンスをすること自体ずれてるにゃ」

デウエス「な、な……」

歩「結局あんたはアイドルとはなんたるかなんてこれっぽっちも分かっていない。あんだけ人を喰っても人の心は理解出来てないあんたそのものさ」
 

660: 矢橋P 24/11/23(土) 06:46:25 ID:RPWE

デウエス「さ、最初からそれが狙いか……」

歩「さあ約束だ。アタシが勝ったんだから育ちゃんを解放してもらう!」


デウエス「……いいでしょう。元と言えば中谷育があの時承諾しなければこんな勝負にはならなかった。もう……イラナイ」


シュュュウ

ドン!

桃子「育!」


デウエス「代ワリにオマエ達ヲ貰ウ!」

661: 矢橋P 24/11/23(土) 06:48:22 ID:RPWE
デウエスはアイドルの姿を脱ぎ捨てると元の顔がない女の姿に戻り
育ちゃんを口から吐き出すように投げ捨てた
そして体をぐちゃぐちゃと変形させてアタシ達に向かって無数の手を伸ばして来た


茜「全く、ラスボスってのはどうしてこんな悪あがきが好きなんだろうね」

茜「ご主人、イーエスちゃんにトドメを刺すよ!」

歩「うん!」

 

662: 矢橋P 24/11/23(土) 06:51:00 ID:RPWE

茜がアタシに合わさってデウエスを迎え撃つ!

デウエスは無数の腕をアタシにぶつけるけど触れた途端消えてしまう



デウエス「ナゼダ、神ニモヒトシイ存在デアルワタシガナゼ勝テナイ」

歩「あんたも茜も人の心から具現化された存在、だけど決定的に違うものがある!」

歩「茜は願いであんたは呪いだ!願いが呪いに負けるもんか!」

茜「イーエスちゃん、アイドル勝負を受けた時点でキミの負けは決まってたんだよ。だって……」

茜「アイドルという土俵においては絶望が希望に勝てるわけがないんだからさ!」



\バシュュュュュウ/

 

 

663: 矢橋P 24/11/23(土) 06:59:06 ID:HC1X

デウエス「グアァァァァ……」



ひなた「デウエスが……」

典子「ついにやったんですね」

育「…………」

桃子「育、しっかり!」ユサユサ
 

664: 矢橋P 24/11/23(土) 07:00:44 ID:HC1X


歩「デウエスが消えていく……」

茜「もともとイーエスはサッちゃんの歌や自らを怪談化して実体化してたでしょ?」

茜「それが無くても実体化出来るようになったのは育ちゃんあってこそ。それを手放しちゃったらもう実体化出来ない」

歩「実体化出来ないだけで存在は残るの?」

茜「いや、イーエスの願いの元は育ちゃんだった。それを手放した以上イーエスはもう……」

665: 矢橋P 24/11/23(土) 07:02:27 ID:HC1X


グニャャャァ



茜「マズい。イーエスが力を失ったことでマイハマン達が電脳世界に居られなくなった」

歩「ええっ!?」

典子「どうしたらいいんですか」

茜「茜ちゃんが何とかするよ、みんな茜ちゃんに捕まって!」




 

666: 矢橋P 24/11/23(土) 07:04:25 ID:HC1X



電波塔 最上階 特別室


ポワワ~~~ン


歩「何とか戻って来れた……」

典子「茜さんありがとうございます」

茜「なんの!天才茜ちゃんならこれくらい当然だよ!」

ひなた「あんな世界よりこっちの世界の方が落ち着くねぇ」


育「……ん」パチクリ

桃子「育、目が覚めたんだね」

667: 矢橋P 24/11/23(土) 07:06:13 ID:HC1X

デウエス「ウガァァ……」


歩「デウエス」

茜「もう消える寸前……だね」


デウエス「中谷……育……」


育「……」ボーッ

桃子「育、危ないよ!」

668: 矢橋P 24/11/23(土) 07:08:16 ID:HC1X
デウエス「あなたは……それでいいの?」

デウエス「事故で魂が肉体と分離して、元に戻れなくて……泣いてたじゃない」

デウエス「そんなあなたを実体化出来るように……してあげたのに……何でじゃまし……たの」


歩(それが……デウエスが生まれる元になった一番最初の思いか……)

669: 矢橋P 24/11/23(土) 07:10:40 ID:HC1X

育「……」フラ…

桃子「あんな奴の言うことに耳を傾けちゃ駄目!」

トン

桃子「……育?」

育「桃子ちゃん大丈夫だよ」

670: 矢橋P 24/11/23(土) 07:13:43 ID:HC1X

育「……イーエス、あなたのことはあなたの中でずっと見てたよ」

デウエス「私はデウエスだ!イーエスじゃない!」

育「あなたは最初みんなからイーエスって呼ばれてた。それって“わたしのじが“って意味だったよね」

育「あなたは怖かった。もしわたしが消えたら自分の存在も消えちゃうんじゃないかってずっと不安に思ってたよね」

育「だからわたしのじがじゃない。別の何かになろうとしてたんだよね」
 

671: 矢橋P 24/11/23(土) 07:15:40 ID:HC1X

育「だけどイーエス。あなたはわたしでわたしはあなた。それは変えられないんだよ」

イーエス「そんなことない!わたしはデウエスに、神の自我になったんだ!そのために人をいっぱい食べてちしきも得て……」



ひなた「これは……デウエスが幼くなっちゃったんかい?」

歩「いや……デウエスから元のイーエスに戻っているんだ」

歩(アタシが市立病院で出会った時の、育ちゃんの面影がある時に)

672: 矢橋P 24/11/23(土) 07:18:43 ID:HC1X

育「つらかったよね、みんなにわたしのじが、わたしのじがって呼ばれ続けるのは」

育「でもイーエス。わたしはあなたを否定しないよ。だってあなたもわたしだもん」

イーエス「うう……」

育「来てイーエス。わたしと一緒になろ?」

イーエス「……あなたはわたしを受け入れるの?」

イーエス「わたしはあなたにひどいことをしたんだよ!人だってたくさん食べちゃった化け物なんだよ」

育「受け入れるもなにもあなたはわたし。もともと一つなんだよ」

育「あなたがしたことはわたしも背負うから」

イーエス「……わかった」


シュュュウ
 

673: 矢橋P 24/11/23(土) 07:21:16 ID:HC1X

歩(デウエス……いやイーエスが育ちゃんの体の中に入っていった)

歩(育ちゃんって、もしかしてすごい?)


桃子「育、大丈夫なの?」

育「この子はわたしが責任もって見張る。この子が食べちゃった人間も解放したみたい」

育「みんなには言えなかったみたいだけど……今までごめんなさいだって」

歩「そっかそれじゃ……」

674: 矢橋P 24/11/23(土) 07:23:13 ID:HC1X


育「うん、それじゃ……お別れだね」シュュゥ……

歩「え」

桃子「嘘っ、冗談だよね!」

茜「……」
 

675: 矢橋P 24/11/23(土) 07:25:11 ID:HC1X
育「イーエスも言ってたよね?わたしがこの世界に実体化出来てたのはイーエスのおかげだったの」シュュゥ

桃子「また幽霊になっちゃうの?」

育「ううん、もうこの世界に居られないの。タイムリミットなんだ……」シュュゥ

歩「何で、何でなんだよ!」

茜「……人間が幽霊になること自体は他の具現化に比べればそんなに珍しいことじゃないんだ」

茜「ただ幽霊の場合そんなに長くは留まれない。だいたい半年から1年間だね。じゃないとこの世界は幽霊だらけになっちゃうでしょ?」

茜「育ちゃんが事故に遭ったのは半年以上も前。だからそろそろ……」

676: 矢橋P 24/11/23(土) 07:27:09 ID:HC1X

桃子「そんな、嫌だ、嫌だよ!せっかくイーエスから解放したのに。歩お姉ちゃん!茜さん!何とかしてよ!」

歩「……」

典子「……」

育「仕方ないよ桃子ちゃん。わたしはもう……」シュュゥ

育「だから最後に桃子ちゃんと話せてうれしか……っ……た……」シュュゥ


育ちゃんの体がだんだん薄くなっていく……
アタシ達は黙ってそれを見守ることしか……

677: 矢橋P 24/11/23(土) 07:29:21 ID:HC1X
カラン


グワーーーーン


歩(え、何だこの感覚)



シュュュウ


育「あ、あれ?」

歩(薄くなっていた育ちゃんの姿が戻った!?)

茜「何が起きてるの!?」

歩(あの茜ですら驚いてるなんて、いったい……)

678: 矢橋P 24/11/23(土) 07:32:07 ID:HC1X


ひなた「こんな結末……絶対に認めない」

典子「ひなたさん……そのブレスレット……」

歩「ひなた……そのブレスレット外しちゃマズいんじゃ……」ハッ

歩「そうだ!反エントロピーだ」


典子「反エントロピー?」

桃子「よくわかんないあれ?」

歩「ひなたの能力だよ。おそらく霊体は時間と共に消滅するっていう法則を逆転させているんだ!」

ひなた「この力、あたしにしか出来ないことがあるなら……」

ひなた「エントロピーだか何だか知らないけども……こんな時ぐらいみんなの役に立って見せるべさ!」


茜「いやいや、反エントロピーって科学の分野じゃなかったの!?そんなことがまかり通ったら……」

679: 矢橋P 24/11/23(土) 07:34:16 ID:HC1X

パチパチパチ


「「「「!!!!」」」」




美也「期待通りです、いや期待以上でしょうか~」

桃子「誰!?」

歩「あんたは……」

680: 矢橋P 24/11/23(土) 13:50:53 ID:RPWE

美也「どうも~。歩さんとひなたちゃん以外は初めてまして」

美也「あ……育ちゃんもイーエスを生み出す時に立ち会ってますな~」

美也「私の名前は宮尾美也。他の人からは“パイプ・ドリーム(絵空事)“と呼ばれていますな~」

桃子「それってひなたさんやあの外国人と同じSランクの!」

ひなた「…………」
 

681: 矢橋P 24/11/23(土) 13:54:23 ID:RPWE

美也「そんなに警戒しないでください~。私の能力はそんな大したことじゃないんですよ?」

美也「スキル・ブーストって超能力知ってますか~?」

歩「聞いたことぐらいはあるけど……」

美也「能力を強化する能力なんです。色々種類があって身体能力を強化したり超能力をだけを専門に強化したりと様々です~。まあそんなに珍しい能力じゃありません」

典子「それが美也さんの超能力なんですか」

美也「はい~。ただ私の場合はですね~。一族の秘伝と組み合わせることによって……」

美也「ただ強化するのではなく、対象の心を“具現化“させることが出来るんです」
 

682: 矢橋P 24/11/23(土) 13:56:10 ID:RPWE

歩「!!」

歩「ってことは!」

美也「そう、イーエスも、紬ちゃんも、環ちゃんのリストバンドもひなたちゃんのその力も」


美也「全部私が生み出したものです」

 

683: 矢橋P 24/11/23(土) 14:00:17 ID:RPWE

歩「……美也は何がしたかったんだ?」


美也「私の目的はですね~最初からひなたちゃんだったんですよ~」

美也「ある人物にですね頼まれたんです」

美也「ピース・メーカーはこのままでは使い物にならない。君の能力で何とかならないか……と」

美也「それで私の能力をひなたちゃんに使用してみることになりました~」

美也「ひなたちゃんの具現化には成功しました。ですがひなたちゃんはトラウマがあったのか能力を使いたがらない」

美也「これは困りましたな~って思ってた時に莉緒さんがひなたちゃんを連れ出してしまったんです~」

美也「それで敢えてひなたちゃんを放っておいて、周り人達を危険にさらしたりして揺さぶりながら見守ってました~」

美也「周りの大切な人達が危険な目にあってくれればひなたちゃんがまた超能力を使ってくれるかもって思ったので。結果的に成功して良かったです~」

 

684: 矢橋P 24/11/23(土) 14:08:53 ID:RPWE
ひなた「…………」キッ

歩「……そんなことのために、ひなただけじゃなくアタシも莉緒も環も朱里も渦木さんや亜利沙、イーエスも大神やジャジメントすらも巻き込んで!」

美也「今回の事件、あんたの手のひらの上だったってことなのか!」


美也「歩さん、それは違いますよ~」

美也「私のために物語があるんじゃないんです、物語のために私があるんです~」

美也「バタフライエフェクトって知ってますか?」

典子「蝶々の羽ばたきが巡り巡って竜巻だって起こすこともある……って言葉ですよね」

美也「正解です~。物語も同じ、あらゆる現象の小さな小さな積み重ねがやがて尊大なストーリーになっていくんです」

美也「それをたった一人の人間の意志が物語支配するなんて……おこがましいと思いませんか~」ゴゴゴゴ

歩「……っ」タジタジ

685: 矢橋P 24/11/23(土) 14:11:35 ID:RPWE

美也「我らの存在は常に物語のために。それが私達一族の理念です」

美也「皆さんが仰った通り反エントロピーは分子や重力など科学的の物にしか適応されないはずです~」

美也「それが具現化によって霊魂すらも対象になった……つまりありとあらゆる現象にも対応するようになった」

美也「まさにひなたちゃんの能力はどんな不可能だって可能する能力となったわけです。むふふ~考えただけでもゾクゾクしますな~」


ひなた「……あたしをどうするつもりだい?」
 

686: 矢橋P 24/11/23(土) 14:14:12 ID:RPWE

美也「何もしませんよ~。私が頼まれたのはひなたちゃんの覚醒だけです。のでそれ以上のことは管轄外ですな~」

美也「あなた達のおかげで素晴らしい物語を紡ぐことが出来ました。これでも感謝しているんです」

美也「それでは皆さんまたいつか会いましょう~。お元気で~」





そう言って美也はゆっくりと離れていった
何だったんだ……

687: 矢橋P 24/11/23(土) 14:16:22 ID:RPWE




育「行っちゃった。不思議な人だったね」

歩「ひとまずは大丈夫……かな」

ひなた「でもどうしたらええんだろうか」


そうだ美也の乱入で忘れそうになったけどまだ事態は解決してないんだ

688: 矢橋P 24/11/23(土) 14:20:09 ID:RPWE

ひなた「あたしの能力は発動したらしばらくは続くみたいだけども……永遠じゃないみたいだからねぇ」

桃子「それじゃひなたさんの能力が切れた瞬間に育はまた消えちゃうの!?」

茜「ひなたちゃんの能力が続いている間に何とかしないといけないにゃー」

育「みんなごめんね。わたしが戻れないばっかりに……」
 

689: 矢橋P 24/11/23(土) 14:22:11 ID:RPWE


典子父「やあ、こんばんは」

歩「うわっ!お父さん、なぜここに!」

典子父「実はけっこう前から居たんだけどね、出るタイミングがなくてさ」

典子父「ほら、こんなかわいい子ばっかりなところでおじさんの幽霊なんて場違いだろ」
 

690: 矢橋P 24/11/23(土) 14:24:16 ID:RPWE

桃子「誰?」

育「あ、幽霊のおじさんだ」

典子「お父さん!」

歩「あれ、アタシ以外にもお父さんが見えてるの?」


典子父「いやー、今日は七夕だからじゃないかな。え、違う?ひなたちゃんの能力のおかげだろって?あはは……」

歩(相変わらずこの人は軽いなぁ……)
 

691: 矢橋P 24/11/23(土) 14:26:51 ID:RPWE

典子「お父さん、ずっと会いたかったんだよ」

典子父「典子……ヒマワリ見たよ。立派に咲いていてすごい綺麗だった」

典子父「お父さんがここに来れたのはおそらくヒマワリのおかげだよ。頑張ったな」

典子「うん。みんなと一緒に一生懸命世話したから」

典子父「典子を一人にさせてしまってごめんな。寂しくてつらかっただろう」

典子「ううん、そんなことどうでもいいよ。……これから一緒に居られるんだよね?」

典子父「……典子、つらいけどお父さんは死んじゃったんだ。生きてる人間と死んだ人間は同じ時間を歩めないんだよ」

典子「……」

典子父「お前の成長を傍で見れないけど……遠いところから見守っているからね」

典子「お父さん……」グス
 

692: 矢橋P 24/11/23(土) 14:29:23 ID:RPWE

典子父「そして育ちゃん久しぶりだね」

育「おじさんもね。もーっ、だから娘さんを泣かせちゃ駄目だって言ったでしょ」

典子父「あはは……二十歳以上も歳離れている子供に説教されるなんてね……せめて娘の前はやめてくれないかい」


育ちゃんが幽霊になっている時に典子ちゃんのお父さんが会っていたって聞いてけど……こんなに仲良かったんだね

693: 矢橋P 24/11/23(土) 14:32:06 ID:RPWE

典子父「お父さんはもう駄目だけど……育ちゃん、君はまだ間に合う。だって君の肉体はあるじゃないか」

育「だけど何度も試したけど元に戻れなくて……」

茜「今度は大丈夫かもしれないよ。前と違って今はひなたちゃんの能力が発動中だからねっ!」

歩「幸い育ちゃんの体はそこにあるし、チャレンジしてみようよ」

典子父「お父さんも付き合うよ。最後くらい娘に良いところ見せたいからね」

育「そうだね、またチャレンジしてみる。みんなありがとう」
 

694: 矢橋P 24/11/23(土) 14:34:50 ID:RPWE

典子父「私に残された霊魂の力も全部君に託すよ。だから……どうか娘と友達になってやってくなれいか」

育「絶対やくそくする!……典子ちゃんごめんなさい。わたしだけ……」

典子「いいんですよ。私も最後にお父さんと話し出来たし……これで踏ん切りがつくから」

典子「お父さん、最後くらい決めてよ。じゃないと成仏させてあげないから」

典子父「うん。……じゃあね典子」

 

695: 矢橋P 24/11/23(土) 14:37:08 ID:RPWE

そうしてみんなベッドに寝かされた育ちゃんの肉体の前に集まる
みんな見守る中、典子ちゃんのお父さんが育ちゃんの手を引きながら育ちゃんの体と合わさると……



育「…………」

育「…………」

育「………ぅ」モゾモゾ

桃子「育……」

育「……おはよう、みんな」

桃子「おはよう。育」

696: 矢橋P 24/11/23(土) 14:39:11 ID:RPWE
最終幕終わり

後はエピローグです

697: 矢橋P 24/11/23(土) 15:00:45 ID:HC1X

宮尾美也   語り部

彼女の正体はジャジメントのSランク能力者パイプ・ドリーム(絵空事)であり
“語り部”と呼ばれる一族の末裔である
彼女ら語り部は先祖代々具現化のことを信仰しており、具現化された現象を語り継ぐことで護ってきた
しかし科学が幅を利かせ人々が迷信やおとぎ話を信じなくなり必然的に具現化も起こりづらくなった
それを憂いた彼女は自ら超能力となり自らがその一部となってでも物語を紡ごうとしている
彼女は善悪もなく純粋に物語のためだけに動いている

698: 矢橋P 24/11/23(土) 15:04:11 ID:HC1X

白石紬   美也の守護者

その正体は美也の一族に祀られていた人形
かつては何かの物語の一部だったらしいがその物語も忘れ去られて久しいところを美也に拾われ
美也の能力によって姿と人格を得た。美也には一生の忠誠を誓っている
影を操る能力は彼女の影から支えるという意志が具現化した結果であり
具現化した存在の能力は元となった意志に依るところが大きい

699: 矢橋P 24/11/24(日) 06:22:49 ID:uRz8


エピローグ

 

700: 矢橋P 24/11/24(日) 06:25:12 ID:uRz8
あの後はちょっぴり大変で
育ちゃんがずっと寝たきりだったから一人で歩けなくて
アタシ達だけじゃなくサイボーグ同盟の力も借りてみんなで電波塔を脱出した
ASもエスコートしてくれて、育ちゃんはまるでお姫様みたいだと喜んで典子ちゃんはそれを言ったら眠り姫ですねって笑ってた
電波塔前の戦いは三者痛み分けという形で決着が着いていたみたいで
大神やジャジメントとしてもイーエスが居なくなった以上無理に争うことはしなかったみたい

そのままアパートに帰りたかったんだけど大神側の報復がある可能性があるからアタシ達は一旦デンノーシティを出てまたパライソタウンに留まることになった
育ちゃんのリハビリもあるしね
 

701: 矢橋P 24/11/24(日) 06:28:02 ID:uRz8



後日 


日本のとある場所




「デウエスは完全消滅」

「電波塔の設備及び機材等に被害はほぼ無し」

「ババヤガン並びにデスマス戦闘不能。要治療中」

「サイボーグ部隊及び超能力者部隊に多大な死傷者」

「それらの原因と思われるサイボーグ同盟及びASは特に電波塔には何もせず退却した模様」

「だが肝心の電波塔に侵入した数十名の行方は不明」

「以上が報告になります」

 

702: 矢橋P 24/11/24(日) 06:32:57 ID:uRz8

ここは旧ジャジメントの日本支部
それも旧ジャジメントの中でもごく一部の最上級の幹部の人間しか入れぬ秘密の部屋である
そこに旧ジャジメントの幹部数名と旧ジャジメントの会長で“現“ツナミグループ全会長であるジオットがいた
方や旧大神グループからは上守甲斐しか居ない
この構図には旧ジャジメントと旧大神グループの力関係が現れていた
 

703: 矢橋P 24/11/24(日) 06:35:12 ID:uRz8

ジオット「なるほどね」


ジオットがそう簡潔に呟くと旧ジャジメントの幹部達は一斉に甲斐を睨み付ける
先程までの現状報告、どれも悪い報告ばかり
今回の失態の責任を貴様が取れ!と甲斐に言いたげだ
組織内のパワーバランスのこともあるが旧大神グループから甲斐しか出席していないのも“巻き添え“を避けるためだろう
 

704: 矢橋P 24/11/24(日) 06:39:27 ID:uRz8

デウエスもといイーエスを懐柔し運用する計画は大神が主体としてやったことだ
事の発端は1年前、大神のトップ大神美智男が暗殺され混乱していた大神グループにジオット率いるジャジメントが一方的に合併を迫ってきた
体裁上は合併だったがその実態はジャジメントによる大神の吸収であった
その要求を呑んだ大神側は強みのサイボーグ技術も提供せざるを得なく、
このままだとずるずるとジャジメントに利用され続けるだけだと危機感を覚えた大神側の起死回生の一手がイーエスだったのである
イーエスの安定した運用には大神の技術力が必要不可欠でありイーエスの有能性を示せれば
ジャジメント側も大神に頭が上がらなくなる。そう睨んでいたのだ

実際イーエスの有能性が明るみになるとジャジメントの態度が急変した
あの虎の子であるSランクの能力者を一時的とはいえ貸し出してくれたほどだ
そうなると大神もイーエスの運用に最大限尽力した
イーエスのために通信会社の大手を買収し電波塔も新設した
口封じやもみ消しなども数え切れないほどやった

だが結果は……この有様だ
たった一晩、たった一晩で全てが台無しになった
 

705: 矢橋P 24/11/24(日) 06:41:27 ID:uRz8

甲斐「…………」


味方はおらず四面楚歌であったが甲斐は言い訳や言い逃れする気は微塵もなかった
イーエスの世話係は自分であったし、ジャジメント側の兵隊やSランクの力すら借りた防衛ラインを指揮する立場であったのも自分だ
如何なる処遇でも甘んじて受けるつもりだった
 

706: 矢橋P 24/11/24(日) 06:43:13 ID:uRz8

ジオット「例の配信を改めて見たけどね。とても面白い見世物だったよ」


甲斐「会長に不甲斐ない姿をお見せしました。申し訳ございません」

ジオット「甲斐くん、勘違いしないでくれ。皮肉や脅しで言ったわけじゃないからさ」

ジオット「実際わくわくしているんだよ。ま、そのことを話す前に」パンパン

ジオット「入っていいよ」
 

707: 矢橋P 24/11/24(日) 06:45:05 ID:uRz8

コンコン


美也「失礼します~」ガチャ

美也の入室にジャジメント側の幹部がざわめき出す
ジオット会長の手前、言葉にこそ出さないがいくらSランクとはいえ一介の超能力者がこの場に居ることなど本来はあり得ないことだ


ジオット「知っているとは思うけど彼女はパイプ・ドリーム。彼女を正式にツナミグループの最上級幹部にしようって思ってね」

美也「光栄ですな~。皆さん~、お見知りおきを」ペコリ
 

708: 矢橋P 24/11/24(日) 06:48:12 ID:uRz8

「「「…………」」」


ジオット「言葉に出さないけど納得出来ないって感じだね」

「いえそのようなことは……」

ジオット「今回、うちのデスマスがやられたってね」

甲斐「はい。私がもっとサポートすべきでした」

ジオット「だからそんな畏まる必要ないんだけどなぁ……」

ジオット「大神とジャジメントの合併が決まった時、嬉しくもあったんだけど正直つまらなくもあったんだ」

ジオット「せっかく強大な組織になったのに敵が居ないんじゃ寂しいじゃないか」

ジオット「だから今回の件は非常にわくわくしている。まだ僕達に逆らう気概がある奴らが居ると思うとね」

ジオット「でも反省はしなきゃね。超能力としてもサイボーグとしても一流のデスマスが敗れた」

ジオット「大神の技術力とジャジメントの資本と超能力者。この二つに敵は無いって思っていたけどそうじゃないみたいだ。」

ジオット「これよりツナミグループは彼女を中心にして具現化にも力を入れようと思う」
 

709: 矢橋P 24/11/24(日) 06:50:15 ID:uRz8

「「…………」」ザワザワ


ジオット「それでパイプ・ドリームくん。僕が頼んだピース・メーカーの件はどうなった?」

美也「はい~。ピース・メーカーの反エントロピーは私の能力で生まれ変わりました~」

美也「私が確認出来た中でも霊魂にも作用してました。もはやあらゆる現象にも対応出来るようです」

美也「もはやピース・メーカーの可能性は未知数……いや無限大です。その利用価値は計り知れないでしょう~」
 

710: 矢橋P 24/11/24(日) 06:52:09 ID:uRz8

「「…………」」ザワザワ


ジオット「素晴らしいよ。ピース・メーカーがいればエネルギー問題なんかすぐ解決しちゃうんじゃないかな?」

甲斐(裏でこそこそ動いているとは聞いていましたがまさかジオット会長と直接やり取りしていたとは……)

甲斐「では直ちにピース・メーカーを確保して……」

ジオット「甲斐くん駄目だよ、そんなことしたら」

甲斐「……何故でしょうか」
 

711: 矢橋P 24/11/24(日) 06:54:47 ID:uRz8

ジオット「甲斐くんってさ。今咄嗟に欲しい物ってある?」

甲斐「咄嗟にですか?…………特にありませんが」

ジオット「そうだよね。例えばさ、僕が突然 ハンバーガー食べたいなー って呟いたらさ、15分ぐらいしたらいつの間にか目の前にハンバーガーが置かれているんだよ。何も指示していないのにね」

ジオット「僕クラスになると欲しい物は相手から勝手にやってくるもんだから欲しい物ってなかなか無いんだよ」


甲斐「……ピース・メーカーがそれだと?」
 

712: 矢橋P 24/11/24(日) 06:56:45 ID:uRz8

ジオット「君は本当に物わかりが良いねぇ」

ジオット「何でもピース・メーカーを守っている連中が居るって話じゃないか」

ジオット「ピース・メーカーがあらゆる現象に利用出来る存在になった以上、彼らは僕達には絶対渡したくないはず」

ジオット「そんな健気な彼らから……じっくり時間かけて奪うのが楽しいんじゃないか」

甲斐「……」
 

713: 矢橋P 24/11/24(日) 06:58:50 ID:uRz8

ジオット「まあ僕としてはピース・メーカーは興味はあるけど……それより今はもっと欲しい物があるんだ」

ジオット「例の配信に映ってた彼女……名前なんだっけ?」

甲斐「舞浜歩ですか?」

ジオット「そうそう。彼女のダンスとても良かったよ。……“彼女が欲しいなぁ“」

甲斐「!!」ビクッ


「「「………………」」」ザワザワ

 

714: 矢橋P 24/11/24(日) 07:01:12 ID:uRz8

ジオット「まあそのことで僕なりに考えがあるんだ。準に追って説明するよ」

ジオット「それにしても新しい企業名だけどさ。色々な意見が出てくる中で君からの提案には驚いたよ」

甲斐「まさか採用していただけるとは思いませんでした」

ジオット「大神とジャジメント。二つの神の意志が合わさって出来るのが、全てを呑み込み押し流す“津波“だなんてね。最高に捻りが効いてるじゃないか」

ジオット「これより名を改めツナミグループは刃向かうものも、そうでないものも、容赦なく押し潰していくつもりだからそのつもりでいてね」

甲斐「……はい」





 

715: 矢橋P 24/11/24(日) 07:03:21 ID:uRz8





パライソタウン とある研究所


ヘルガ「懐かしいな、ここに来るのも久しぶりだ」

瑞希「ヘルガさんを含めたサイボーグ同盟の皆さん。このたびは参戦してもらいありがとうございました」

ヘルガ「それが仕事なら構わない。だが報酬はちゃんと貰うぞ」

歩「報酬?」

瑞希「……」


ヘルガ「ここの施設の使用許可。それと……」

ヘルガ「真壁瑞希のサイボーグ同盟への入団だ」

716: 矢橋P 24/11/24(日) 10:31:28 ID:uRz8

莉緒「ちょっと、それって!」

亜利沙「瑞希さんがサイボーグ同盟に入るってことですか!?」

瑞希「……皆さんすみません。そういう約束なんです」

ヘルガ「今回我々にも少なからず損害が出た。報酬が無いと割に合わない」

ヘルガ「正直のところ瑞希の入団でも物足りないくらいでね。そこで……」

ヘルガ「浜野朱里、ピース・メーカー。君達も入団してくれれば足りないどころか余るほどになるんだが。どうだ?」
 

717: 矢橋P 24/11/24(日) 10:34:14 ID:uRz8

朱里「!!」

莉緒「ひなたちゃんに国際テロ組織の一員になれっていうの?」キッ

莉緒「あなた方の噂良くないわよ。最近はアフリカの紛争に加担しているそうじゃない」

ヘルガ「そう睨むな。別に我々の活動に加担しろとは言ってない」

ヘルガ「ピース・メーカーは居るだけで抑止力になるからな」

ひなた「…………」

環「ひなたも嫌がってるぞ!」

莉緒「能力目当てなんて最低よ」
 

718: 矢橋P 24/11/24(日) 10:40:20 ID:uRz8

ヘルガ「ふっ、だがピース・メーカーは誰が守る?」

ヘルガ「ピース・メーカーはもはやいち人間の領域を超えた。ツナミグループだけじゃなく世界中のあらゆる組織が狙いに来るぞ。莉緒、君だけじゃ無理だろう」

莉緒「……そうね」

ヘルガ「現状ツナミグループに対抗出来る組織はサイボーグ同盟において他ない。我々が手元に置いて監視するのが最良だと思うが」

瑞希「……ヘルガさんの勧誘。強引になりましたね」

ヘルガ「これでも一組織を率いて食わせていかなきゃいけない身でね。強引にでもなる」

ヘルガ「どうする?ピース・メーカーの安全を考えれば我々の提案の方が……」
 

719: 矢橋P 24/11/24(日) 10:42:18 ID:uRz8
スッ

歩「朱里?」

朱里「ひなたは“私達“で守るわ。あなた達テロ組織には渡さない」

ヘルガ「朱里、君もそちら側か。だが君だけで……」

朱里「“私達“って言ったでしょ。あたしはこれからヒーロー連合を復活させる。ひなたはヒーロー連合が守るわ」

ひなた「朱里さん……」

環「あかり……」

朱里「何びっくりしてんのよ環。自分と一緒にヒーローやろうって先に言ったのあんたでしょ。あんたも加入確定よ」

環「うん!」
 

720: 矢橋P 24/11/24(日) 10:47:05 ID:uRz8

朱里「1年半前に大神やジャジメントに負けてあたしのようにくすぶっているヒーローの残党がまだいるわ」

朱里「そいつらに声を掛けてまとめたら、ちっとはまともな組織になる」

莉緒「いいじゃない。じゃ私も仲間に入れさせてもらえるかしら」

朱里「もちろんよ」

ヘルガ「……なるほどそれなら何とかなるかもしれない」

ヘルガ(青臭い理論だが……久しぶりだ。彼女達を思い出すな)
 

721: 矢橋P 24/11/24(日) 10:51:18 ID:uRz8

ヘルガ「だがそれでも戦力は足りないだろう」

ヘルガ「瑞希、我がサイボーグ同盟から最初の任務を言い渡す」

ヘルガ「彼らのヒーロー連合に潜り込んで彼らを手助けしてやってやれ」

瑞希「ヘルガさん……」

ヘルガ「おっと勘違いしてもらっては困る。もしヒーロー連合に何かあればピース・メーカーだけ連れてこちらに戻ってこい」

ヘルガ「まあスパイみたいなものだ。敵に内通している味方……ヒーローものには鉄板の設定だろう?」

朱里「始めから堂々と素性を明かすスパイは聞いたこと無いけどね。まあ助かるわ」

瑞希「浜野さんお願いします」

莉緒「瑞希ちゃんもよろしくね」

歩(何とかなりそうかな)






 

722: 矢橋P 24/11/24(日) 10:54:59 ID:uRz8

そして数日後

疲れも癒えたアタシ達はそれぞれの道に行くことになった

可憐とのり子は元の生活に
亜利沙は武内ミーナさんに報告をしに
渦木さんは中山先輩をケアしに
貴音さんはASに復帰
桃子はしばらく育ちゃんのリハビリに付き合って
朱里は環とひなたちゃんと莉緒と瑞希を率いて他のヒーロー達に声を掛けに言ったみたい

だから……アパートに残ったのはアタシと茜と典子ちゃんだけになっちゃった




 

723: 矢橋P 24/11/24(日) 10:57:34 ID:uRz8


更に数日後




開田「今日も就職活動大変でやんす」

歩「やあ、開田くん大変だね」

開田「キーッ!歩にそんな余裕で見下ろされるの悔しいでやんす。何でオイラには2ヶ月ぐらい記憶が無いのでやんす!」

歩(中山先輩や開田くんを始めイーエスに喰われてた人も問題なく帰ってきた)

歩(中には大騒ぎまで発展した人もいるけどツナミショックの影響のが大きく次第にみんなから忘れ去られていったみたい)
 

724: 矢橋P 24/11/24(日) 10:59:31 ID:uRz8

典子「開田さん、そんな愚痴言っても変わらないですよ」

開田「典子ちゃん天使でやんす~。君だけがオイラの癒しでやんす~」

典子「相変わらず気持ち悪いですね。あ、歩さんおかず作ったんですけど」

開田「典子ちゃん、歩にだけ優しくないでやんすか!おかしいでやんす!」
 

725: 矢橋P 24/11/24(日) 11:01:56 ID:uRz8

歩「開田くんの日頃の行いじゃないかな」

開田「だいたい何で歩くんはいつも間にか就職が決まっているのでやんすか」

歩「これも日頃の努力の結果だよ」フフン

開田「いったい何処に就職したのでやんす」

歩「ごめん。まだ言えないんだ」

開田「まあ歩くんが就職出来るところなんて知れてるでやんすけどね」

歩(アタシの就職先知ったらびっくりするだろうな……)







 

726: 矢橋P 24/11/24(日) 11:03:54 ID:uRz8

~回想~


歩「このアパートも寂しくなっちゃったなぁ……」

茜「マイハマン。ちょっと忘れていることない~?」

歩「願いのことでしょ。忘れてないよ」

茜「おや茜ちゃんはびっくりだよ。 忘れていたのに思い出させないでよ~マイガー! って言うと思っていたけど」

歩「あのイーエスを倒したことに比べたら就職活動なんて大したことないよ」

茜「ダンスを活かせる、だよ」

歩「そこだけネックだけどまあ何とかなるって」
 

727: 矢橋P 24/11/24(日) 11:06:29 ID:uRz8



甲斐「ちょっといいですか」スッ

歩「あなたは!」

茜「!」

甲斐「あまり騒ぎにしたくありません。大人しくしてください」

歩「……アタシを始末しにきたの?」

甲斐「そのつもりなら声なんてかけませんよ」ハァ
 

728: 矢橋P 24/11/24(日) 11:08:35 ID:uRz8

甲斐「とても重要な話があります。素直に聞いてくれれば危害は与えません」

歩「どうせアタシに拒否権はないんだろ」

甲斐「まあそうですが」

茜「……」

甲斐「ニュースは見たでしょう。我がツナミグループの会長はジオット会長になりました」

歩「ああ。知らない人はよっぽどの情報音痴か何かだね」

甲斐「そのジオット会長が……あなたを気に入りました」

729: 矢橋P 24/11/24(日) 11:11:18 ID:uRz8

歩「…………」

歩「はい?」

甲斐「ジオット会長はあの配信をいたく気に入ったようでしてね」

甲斐「あんな配信が世界中に流れたんです、あなたの周りでも騒がれていないですか?」

歩「あいにくアタシはデビューもしてないし両親はあの配信見てないみたいで昔の友人やダンス仲間から声をかけられたぐらいだよ」

甲斐「そうですか。それは都合がいい」
 

730: 矢橋P 24/11/24(日) 11:14:09 ID:uRz8

歩「どうして?」

甲斐「……これはまだ未公開情報ですがツナミグループが“アイドル部門“を設立することになりました」

歩「え、それってツナミグループが芸能事務所みたいなことをするってこと!?」

甲斐「そうです。あの後ジオット会長はアイドルにも興味を持たれました」

甲斐「それにあなた達が起こしたあの配信。あれはアイドル部門設立のPVだった……ということにすれば上手く処理出来るようになりますからね」

甲斐「ですが我々も一からアイドルを育成している暇もないですしスカウトも難航してます」

甲斐「それであなたにはツナミグループ専属のアイドルになってもらいます」
 

731: 矢橋P 24/11/24(日) 11:16:06 ID:uRz8

歩「アタシが……ツナミの……?」

甲斐「図らずもあの配信があなたの良い宣伝になってますからね。都合がいいんですよ」

甲斐「実力はこれから付けてもらいます。我がツナミグループのアイドルになる以上トップアイドルを目指してもらいますよ」

甲斐「……あなたが我が社のアイドルになってくれればイーエスの件はチャラにしましょう。あなたの身の回りの人間にも手を出さないと約束します」
 

732: 矢橋P 24/11/24(日) 11:19:00 ID:uRz8

歩「……望むところだよ」

歩「世界最強の企業からのスカウト。望むところじゃないか」

歩「だけどそのアタシの大事な人達に手を出さないって約束は絶対守ってよ!」

甲斐「その者達に何かあってあなたのモチベーションが下がって困るのはこちらです。約束しましょう」


甲斐「……いずれこの世界を大いなる津波が覆いつくす。それまでつかの間の平和を楽しみなさい」ボソ

歩「何か言った?」

甲斐「……いえ」

甲斐「詳しい契約はまた後日。くれぐれも公式で発表があるまでは他言無用で。では」スッ






 

733: 矢橋P 24/11/24(日) 11:23:19 ID:xUAO


歩「……」

茜「……願い叶っちゃったね」

歩「うん。これもイーエスのおかげなのかも」


パンパカパーーーン


茜「おめでとう!ご主人様は見事願いを三つ叶えましたっ!」パチパチパチ

茜「1年以内って条件だったけど半年もかからなかったにゃー」
 

734: 矢橋P 24/11/24(日) 11:25:35 ID:xUAO

歩「ねぇ……終わったから聞くけど1年以内に願いを叶えないと死ぬ……って本当なの?」

茜「あれはね~、実は嘘なんだ!まあ契約は契約だから何かしらペナルティは受けるけど死にはしないよ」

歩「やっぱりそんな気がしたんだよ。茜は願いを叶えたらどうするの」


茜「……別の人のところに行く。だからマイハマンとはお別れかな」

歩「……それもそんな気がしてた」
 

735: 矢橋P 24/11/24(日) 11:27:23 ID:xUAO

茜「もうちょっとご主人の傍に居たかったけど……茜ちゃんは願いを叶えるために存在しているからさ。願いを叶え終わった人に留まれないんだよ」

茜「あ、でもたまに遊びに来ることぐらいは出来るから」

歩「……茜のこと悪魔から聞いたよ。茜達、具現化された存在がいじわるになったのはアタシ達人間のせいだ。思えばイーエスがあんな風になったのだってそうだし」

歩「だから人間を代表して謝るよ」

茜「ご主人は優しすぎだよ。そんなことご主人が考えることじゃ無いのに」
 

736: 矢橋P 24/11/24(日) 11:29:40 ID:xUAO

歩「茜はこれからもアタシみたいにアイドルになりたい人間の願いを叶えてやってね」

茜「……も~。そんなこと言って。……別れたくなくなるじゃんか……」

歩「お互い消えるわけじゃないんだよ。また会えるって」

茜「そうだね。マイハマンにはぜひテレビを付けたらいつでも見れるアイドルになってよ!」

歩「うん、約束するさ!」

茜「じゃあ……バイバイ」スゥゥ





歩「……茜」

737: 矢橋P 24/11/24(日) 11:33:36 ID:xUAO



それから数ヶ月後 とあるステージ裏




甲斐「今日があなたのデビューライブです」

歩「評判は?」

甲斐「あのツナミグループの道楽で金と知名度にものを言わせただけだろって意見が大半でしょうか」

歩「まあ想像通りだね。今日ステージを見に来ている人も物珍しさ好きかツナミへの接待が大半だと思うし」
 

 

738: 矢橋P 24/11/24(日) 11:35:37 ID:xUAO
甲斐「961プロあたりもうるさかったですが……裏工作で我々に勝とうなど100年甘かったですね」

歩「そういうところは嫌という程知ってるよ」

甲斐「今日のあなたの任務はそいつらをあなたのパフォーマンスで黙らせなさい」

歩「オーケー」チラ

甲斐「私の顔に何か?」

歩「いや何だかさ。かつてイーエスのパートナーだった甲斐が今はアタシのパートナーだなんて変だなぁって思って」

甲斐「昔のことでしょう。それに私もあなたのことは気に入ってますよ」
 

739: 矢橋P 24/11/24(日) 11:37:42 ID:xUAO

甲斐「ただ……あなたの芸名MAIHAMAN(マイハマン)はどうにかならなかったのですか」

歩「この名前はね、アタシの大事な友人が付けてくれたものなんだよ」





 

740: 矢橋P 24/11/24(日) 11:40:30 ID:xUAO


客席



美保「まさかあんたがここまで大きくなるとはね」

美保「まあ、あんたの努力はあたしがずっと見てたし当然よ」


典子「歩さん。頑張れ!」

桃子「典子さん、はしゃぎ過ぎだよ」

育「でも楽しいね桃子ちゃん」

亜利沙「歩さんのデビューライブ!この亜利沙、今日はドルオタとして参加しますよーーっ」





 

741: 矢橋P 24/11/24(日) 11:43:54 ID:xUAO

願いを叶える魔人と少女の呪いの影が入り混じった奇妙でちょっぴり危なくて、でも刺激的で賑やかな物語はこれで幕が下りた


けど、アタシの物語はこれから始まるんだ!

742: 矢橋P 24/11/24(日) 11:46:10 ID:xUAO


  歩「魔人と呪いの少女」 -完-

 

引用元: 歩「魔人と呪いの少女」