1: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:06:29.64 ID:jAli/NeT.net
「…なぜ、あの子たちの味方をするの?」
そう言われたのは、3年生になってすぐやったかな?
音ノ木坂学院が、廃校になるって聞いて
いてもたってもいられなくなった、あの3人がここに来た時
…なぜか、ピンときたんよ
きっと---うまくいく、って
どうして、自分でもそう思ったのかはわからないけど
それでも、信じてみたいと思ったから
…少しだけ、イジワルに
…少しだけ、茶化して
ウチの、ちょっとした、ワガママ
そう言われたのは、3年生になってすぐやったかな?
音ノ木坂学院が、廃校になるって聞いて
いてもたってもいられなくなった、あの3人がここに来た時
…なぜか、ピンときたんよ
きっと---うまくいく、って
どうして、自分でもそう思ったのかはわからないけど
それでも、信じてみたいと思ったから
…少しだけ、イジワルに
…少しだけ、茶化して
ウチの、ちょっとした、ワガママ
2: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:07:29.33 ID:jAli/NeT.net
「なんとなく…何かが、変わる気がするんよ。」
風に舞った、カードを拾い上げながら
ウチは、そう答えた
きっと…気づいてないと思うけど
それは、誰もが感じる、当たり前の思いで
廃校を阻止する為に動いて、うまくいかなかったウチらを
叱咤してくれている気が、したんよ
「…たまに、貴女の事がわからなくなるわ。」
「ウチは、スピリチュアルガールやからね♪」
「…それはいいから、手を動かして頂戴。」
「まだ、仕事は終わってないのよ?」
「…はーい。」
それが、夢の始まりやった---よね?
風に舞った、カードを拾い上げながら
ウチは、そう答えた
きっと…気づいてないと思うけど
それは、誰もが感じる、当たり前の思いで
廃校を阻止する為に動いて、うまくいかなかったウチらを
叱咤してくれている気が、したんよ
「…たまに、貴女の事がわからなくなるわ。」
「ウチは、スピリチュアルガールやからね♪」
「…それはいいから、手を動かして頂戴。」
「まだ、仕事は終わってないのよ?」
「…はーい。」
それが、夢の始まりやった---よね?
3: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:07:51.52 ID:jAli/NeT.net
「いざやってみて、できませんでした---じゃ、意味がないでしょう。」
そうやっていつもの顔で、手元の仕事を進める
それはもちろん、その通りやと思うよ?
でも---
ウチらが今までやってきた事も
ぶつかってきた壁も
そんなありふれた事じゃ、なかった?
だから、ちょっとしたいたずらをした
こう---あって欲しいと、ちょっとした、ウチだけの、願い
「…ふふっ。」
廊下に貼り出してあるポスターに、自然と笑みがこぼれる
ウチの気持ちは、あの日からずっと---変わらないから
そうやっていつもの顔で、手元の仕事を進める
それはもちろん、その通りやと思うよ?
でも---
ウチらが今までやってきた事も
ぶつかってきた壁も
そんなありふれた事じゃ、なかった?
だから、ちょっとしたいたずらをした
こう---あって欲しいと、ちょっとした、ウチだけの、願い
「…ふふっ。」
廊下に貼り出してあるポスターに、自然と笑みがこぼれる
ウチの気持ちは、あの日からずっと---変わらないから
4: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:08:36.49 ID:jAli/NeT.net
「…気になる?」
あえて聞いた、イジワルな問いに
どこか虚を突かれたような、困った顔をみせる
「…ウチは、帰ろうかな。」
もちろん、そんなつもりは毛頭なくて
でも、勇気を出せない誰かさんの為に
ひと肌脱いであげる、ウチっていい子やん?
…なんて
そんな事を考えなくても
足は---向かってたん
それぞれの夢が、集まった、あの場所に
あえて聞いた、イジワルな問いに
どこか虚を突かれたような、困った顔をみせる
「…ウチは、帰ろうかな。」
もちろん、そんなつもりは毛頭なくて
でも、勇気を出せない誰かさんの為に
ひと肌脱いであげる、ウチっていい子やん?
…なんて
そんな事を考えなくても
足は---向かってたん
それぞれの夢が、集まった、あの場所に
5: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:09:27.72 ID:jAli/NeT.net
「これは…」
流石のウチも、あの時は多少…ううん、結構驚いてしまった
学校でも、外でも…彼女たちの努力を見てきたから
昔---と言えるほど、遠くはなくて
でも、あの時の光景がどこか重なる
かつて、同じ場所を目指した、彼女と
そんな悲壮感を打ち破った、メロディ
あの場にいた、何人の胸を打ったのか
飛び込んできた、彼女たち
椅子の陰に隠れる、かつての彼女
恥ずかしくて、こっそり隠れる彼女
そして---あの時の、貴女にも
流石のウチも、あの時は多少…ううん、結構驚いてしまった
学校でも、外でも…彼女たちの努力を見てきたから
昔---と言えるほど、遠くはなくて
でも、あの時の光景がどこか重なる
かつて、同じ場所を目指した、彼女と
そんな悲壮感を打ち破った、メロディ
あの場にいた、何人の胸を打ったのか
飛び込んできた、彼女たち
椅子の陰に隠れる、かつての彼女
恥ずかしくて、こっそり隠れる彼女
そして---あの時の、貴女にも
6: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:10:06.31 ID:jAli/NeT.net
「…どうするつもり?」
きっと、諦めると思って聞いた、その言葉
予想外の答えが返ってきて、あとで渋面を作ってたね
でも---だからこそ、なんよ
「このまま誰も、見向きもしてもらえないかもしれない。」
「応援なんて、全然もらえないかもしれない。」
「でも、一生懸命頑張って。」
「私たちがとにかく頑張って、届けたい…!」
「今、私たちがここにいる…この想いを!」
だからこそ、あの言葉を聞いた時に
あんなに、食ってかかったんと違う?
ウチらが願って、叶えられなかった夢を
目の前にいる彼女たちが
---叶えてしまいそうに思えたから
きっと、諦めると思って聞いた、その言葉
予想外の答えが返ってきて、あとで渋面を作ってたね
でも---だからこそ、なんよ
「このまま誰も、見向きもしてもらえないかもしれない。」
「応援なんて、全然もらえないかもしれない。」
「でも、一生懸命頑張って。」
「私たちがとにかく頑張って、届けたい…!」
「今、私たちがここにいる…この想いを!」
だからこそ、あの言葉を聞いた時に
あんなに、食ってかかったんと違う?
ウチらが願って、叶えられなかった夢を
目の前にいる彼女たちが
---叶えてしまいそうに思えたから
7: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:10:48.98 ID:jAli/NeT.net
「学園存続の為に生徒会も独自に活動させてください!」
そう言って啖呵を切った、あの時の事
認められないのが、歯がゆくて
なのに、引き下がれなくって
理事長室を後にした時の背中は---今でも、覚えてるんよ?
なんで、あの時断られたのか
どうして、ウチらじゃだめなのか
それを悩むだけのキャパが、あの時にはなくって
ただ---ただ、その背中の小ささだけが
ウチの頭には残ってて
でも…そんな背中を、ずっと支えていくって
そう決めて…ずっと、隣を歩いてた
その瞳には、写ってなかったとしても
そう言って啖呵を切った、あの時の事
認められないのが、歯がゆくて
なのに、引き下がれなくって
理事長室を後にした時の背中は---今でも、覚えてるんよ?
なんで、あの時断られたのか
どうして、ウチらじゃだめなのか
それを悩むだけのキャパが、あの時にはなくって
ただ---ただ、その背中の小ささだけが
ウチの頭には残ってて
でも…そんな背中を、ずっと支えていくって
そう決めて…ずっと、隣を歩いてた
その瞳には、写ってなかったとしても
8: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:11:23.46 ID:jAli/NeT.net
「μ’sのメンバーにしてください!」
背中を押された彼女と
その背中を押す、二人の親友が
とても---とても、羨ましく思えたんよ
それは、もしかしたら、ウチらにもできた事で
もしかしたら、一度諦めた、彼女にだって…
手を取る、その二人を見て
やっぱり、よかったって思えた
確信---なんて、大それたものじゃないけど
でも、そこにはあったんよ
見てるこっちまであたたかくなるような
大事な、おもいが
背中を押された彼女と
その背中を押す、二人の親友が
とても---とても、羨ましく思えたんよ
それは、もしかしたら、ウチらにもできた事で
もしかしたら、一度諦めた、彼女にだって…
手を取る、その二人を見て
やっぱり、よかったって思えた
確信---なんて、大それたものじゃないけど
でも、そこにはあったんよ
見てるこっちまであたたかくなるような
大事な、おもいが
9: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:12:00.48 ID:jAli/NeT.net
「アンタ達…とっとと解散しなさい!」
不審者みたいな格好をした
その、小さいアイドル志望の女の子は
ウチの予想をはるかに超えた行動を、起こしたんよ
でも---それだって彼女の、ちっぽけな自尊心と
ちっぽけな---願いだったから
叶ってほしいな、って思った、ただのおせっかい
だから、おせっかいついでに
ちょっとだけ、声をかけてみた
うまくいけばいいな---なんて
うまくいってほしい---なんて
彼女が一人でたどり着けなかった夢に
彼女が一人で、ずっと燻らせてた夢に
仄かな、明かりを灯してほしくって
不審者みたいな格好をした
その、小さいアイドル志望の女の子は
ウチの予想をはるかに超えた行動を、起こしたんよ
でも---それだって彼女の、ちっぽけな自尊心と
ちっぽけな---願いだったから
叶ってほしいな、って思った、ただのおせっかい
だから、おせっかいついでに
ちょっとだけ、声をかけてみた
うまくいけばいいな---なんて
うまくいってほしい---なんて
彼女が一人でたどり着けなかった夢に
彼女が一人で、ずっと燻らせてた夢に
仄かな、明かりを灯してほしくって
12: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:22:32.02 ID:jAli/NeT.net
「…雨、止んでる。」
生徒会室で、7人になった部活の申請受理に
印を捺して、外を仰ぐ
あんなに続いてた雨が、降り止んで
暗く染まってた空に、光が差して
あの時の横顔は、今でも覚えてる
あの、ほんの一瞬の事だったけど
生徒会室で、7人になった部活の申請受理に
印を捺して、外を仰ぐ
あんなに続いてた雨が、降り止んで
暗く染まってた空に、光が差して
あの時の横顔は、今でも覚えてる
あの、ほんの一瞬の事だったけど
13: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:22:51.13 ID:jAli/NeT.net
だからこそ、ウチは決めたんよ
潰えたら、ダメだって
ここじゃないと、ダメだって
その隣に、並んでほしくって
その隣で、輝いてほしくって
その---笑顔が、見たくって
潰えたら、ダメだって
ここじゃないと、ダメだって
その隣に、並んでほしくって
その隣で、輝いてほしくって
その---笑顔が、見たくって
14: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:23:20.49 ID:jAli/NeT.net
「…どうするつもり?」
理事長室から出たところで、問いかける
「決まってるでしょう?」
いつもと同じ顔で、そう言い切る
それは---どこか、本心を隠したように
「さ、戻って会議よ。」
そう言って前を歩くその姿は
やっぱり、ウチの目には小さい背中のままで
だから、また、ウチのおせっかい
あの、かつての姿を
かつての意思を、知ってほしくて
同じ気持ちなんだって、理解してほしくて
理事長室から出たところで、問いかける
「決まってるでしょう?」
いつもと同じ顔で、そう言い切る
それは---どこか、本心を隠したように
「さ、戻って会議よ。」
そう言って前を歩くその姿は
やっぱり、ウチの目には小さい背中のままで
だから、また、ウチのおせっかい
あの、かつての姿を
かつての意思を、知ってほしくて
同じ気持ちなんだって、理解してほしくて
15: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:23:56.95 ID:jAli/NeT.net
「嫌でしょう?」
「自分の学校が廃校になったら…」
「あんなに頑張ってきたのに…!」
それは、もちろんそうやけど
「廃校をなんとか阻止しなきゃ、って…」
「無理しすぎてるんやない?」
なんで、廃校を阻止したいのか
あの時の言葉に、意志が、見えなくて
「私は…ただ、学校を存続させたいだけ。」
その言葉に、どうして?って答えてしまう
言葉に詰まる、その顔に
口にできない答えが、見え隠れする
「自分の学校が廃校になったら…」
「あんなに頑張ってきたのに…!」
それは、もちろんそうやけど
「廃校をなんとか阻止しなきゃ、って…」
「無理しすぎてるんやない?」
なんで、廃校を阻止したいのか
あの時の言葉に、意志が、見えなくて
「私は…ただ、学校を存続させたいだけ。」
その言葉に、どうして?って答えてしまう
言葉に詰まる、その顔に
口にできない答えが、見え隠れする
16: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:24:29.57 ID:jAli/NeT.net
「…私にダンスを?」
突然の来訪者からの、指導の申し出に
意外とあっさりとOKを出す
ただ…認められない理由は
もっと、別のところにある気がして---
「…どうやった?」
思った以上に早く、練習から帰ってくる
「…駄目ね。」
目も合わせずに、そう告げる
「…じゃあ、もう終わり?」
その問いには、応えてくれなくて
突然の来訪者からの、指導の申し出に
意外とあっさりとOKを出す
ただ…認められない理由は
もっと、別のところにある気がして---
「…どうやった?」
思った以上に早く、練習から帰ってくる
「…駄目ね。」
目も合わせずに、そう告げる
「…じゃあ、もう終わり?」
その問いには、応えてくれなくて
17: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:25:02.84 ID:jAli/NeT.net
「…辛くないの?」
屋上につながる、ドアの外
淡々と、そう告げる声が聞こえる
「昨日あんなにやって、今日また同じ事をするのよ?」
「…第一、うまくなるかどうかも分からないのに。」
「やりたいからです!」
あくまで、即答する
それは、思った以上に予想外やったみたいで
「廃校をなんとか阻止したいと思う気持ちは!」
「生徒会長にも負けません!」
「だから今日も!」
「よろしくお願いします!」
「「お願いします!!」」
屋上につながる、ドアの外
淡々と、そう告げる声が聞こえる
「昨日あんなにやって、今日また同じ事をするのよ?」
「…第一、うまくなるかどうかも分からないのに。」
「やりたいからです!」
あくまで、即答する
それは、思った以上に予想外やったみたいで
「廃校をなんとか阻止したいと思う気持ちは!」
「生徒会長にも負けません!」
「だから今日も!」
「よろしくお願いします!」
「「お願いします!!」」
18: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:25:35.71 ID:jAli/NeT.net
「…!」
こっちに向かってくるのに気づいて、すぐに階段を駆け下りる
物陰に隠れて、やりすごして
そっと、ゆっくり、後ろからついていく
その背中は、やっぱり、ちいさくて
だからこそ、伝えきれずにはいれなくて
逡巡して、口を開いて---でも、閉じて
どういう伝え方をすれば
―-貴女に、届きますか?
こっちに向かってくるのに気づいて、すぐに階段を駆け下りる
物陰に隠れて、やりすごして
そっと、ゆっくり、後ろからついていく
その背中は、やっぱり、ちいさくて
だからこそ、伝えきれずにはいれなくて
逡巡して、口を開いて---でも、閉じて
どういう伝え方をすれば
―-貴女に、届きますか?
19: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:26:10.62 ID:jAli/NeT.net
「…ウチな。」
「えりちと友達になって。」
「生徒会やってきて。」
「ずぅーっと思ってた事があるんや。」
ウチらしく、ウチとして
言葉を繋いで、紡いで
「…えりちは、本当は何がしたいんやろう、って。」
「…!」
「…一緒にいると、わかるんよ?」
だからこそ、辛くって
だからこそ、知ってほしくって
「えりちと友達になって。」
「生徒会やってきて。」
「ずぅーっと思ってた事があるんや。」
ウチらしく、ウチとして
言葉を繋いで、紡いで
「…えりちは、本当は何がしたいんやろう、って。」
「…!」
「…一緒にいると、わかるんよ?」
だからこそ、辛くって
だからこそ、知ってほしくって
20: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:27:04.11 ID:jAli/NeT.net
「えりちが頑張るのは、いつも誰かのためばっかりで。」
「…だから、いつも何かを我慢してるようで。」
「全然自分の事を考えてなくて…!」
「…ッ。」
逃げるように、その場から足を動かす貴女に
ウチの声は---届いていますか?
「学校を存続させようっていうのも。」
「生徒会長としての義務感やろ!?」
「…だから理事長は!」
「えりちの事を、認めなかったんと違う!?」
もう、せき止められなくて
もう、抱え込んでほしくなくて
ただ…ただ、届いてほしくて
「…だから、いつも何かを我慢してるようで。」
「全然自分の事を考えてなくて…!」
「…ッ。」
逃げるように、その場から足を動かす貴女に
ウチの声は---届いていますか?
「学校を存続させようっていうのも。」
「生徒会長としての義務感やろ!?」
「…だから理事長は!」
「えりちの事を、認めなかったんと違う!?」
もう、せき止められなくて
もう、抱え込んでほしくなくて
ただ…ただ、届いてほしくて
21: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:27:41.92 ID:jAli/NeT.net
「えりちの…」
「えりちの本当にやりたい事は…!?」
その隣に、立つと決めた
その隣で、支えると決めたから
努力を続ける、彼女達の声が聞こえる
やりたいと、胸を張って
やりたい事に、一直線で
そんな彼女達が---羨ましくて
「…なによ。」
「…なんとかしなくちゃいけないんだからしょうがないじゃない!!」
「私だって、好きな事だけやって…」
「それだけでなんとかなるんだったらそうしたいわよっ!!」
器用ゆえに、不器用で
自分を差し置いて、誰かのためにあり続けてきたから
「えりちの本当にやりたい事は…!?」
その隣に、立つと決めた
その隣で、支えると決めたから
努力を続ける、彼女達の声が聞こえる
やりたいと、胸を張って
やりたい事に、一直線で
そんな彼女達が---羨ましくて
「…なによ。」
「…なんとかしなくちゃいけないんだからしょうがないじゃない!!」
「私だって、好きな事だけやって…」
「それだけでなんとかなるんだったらそうしたいわよっ!!」
器用ゆえに、不器用で
自分を差し置いて、誰かのためにあり続けてきたから
22: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:28:17.19 ID:jAli/NeT.net
「…!」
堰を切ったように、それが溢れだす
目の前に、心がさらけ出されていく
「自分が不器用なのはわかってる…!」
「でも…っ!」
「今更アイドルを始めようなんて…っ」
「私が言えると思う…?」
「あっ…」
駆けていく、あれが---きっと、彼女の本心で
今まで見てきた、彼女そのものだったから
「…よしっ。」
今度こそ、叶えて欲しいから
だから今…ここにいる
堰を切ったように、それが溢れだす
目の前に、心がさらけ出されていく
「自分が不器用なのはわかってる…!」
「でも…っ!」
「今更アイドルを始めようなんて…っ」
「私が言えると思う…?」
「あっ…」
駆けていく、あれが---きっと、彼女の本心で
今まで見てきた、彼女そのものだったから
「…よしっ。」
今度こそ、叶えて欲しいから
だから今…ここにいる
23: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:32:07.04 ID:jAli/NeT.net
「…きっと、えりちはみんなとやりたいんよ。」
「でも、今までの自分のやってきたことが、足かせみたいになってる。」
「えりち自身が、自分を縛ってる…」
屋上で彼女達に、ウチの想いを---託す
「今も…今だって、えりちはいつも誰かのために動いてる。」
「だからこそ…悔しくて。」
「認めたくなくて。」
「頑張っても届かなかった自分が、歯がゆくて。」
「頑張って努力して、実を結ぼうとしてる、みんなが羨ましくて…」
「だから…!」
それ以上は、言葉にならなくて
でも、伝えたい思いは
知って欲しい想いは
彼女達に---届いて
「…わかってます。」
「だからこそ、私たちには絵里先輩が必要なんです!」
「でも、今までの自分のやってきたことが、足かせみたいになってる。」
「えりち自身が、自分を縛ってる…」
屋上で彼女達に、ウチの想いを---託す
「今も…今だって、えりちはいつも誰かのために動いてる。」
「だからこそ…悔しくて。」
「認めたくなくて。」
「頑張っても届かなかった自分が、歯がゆくて。」
「頑張って努力して、実を結ぼうとしてる、みんなが羨ましくて…」
「だから…!」
それ以上は、言葉にならなくて
でも、伝えたい思いは
知って欲しい想いは
彼女達に---届いて
「…わかってます。」
「だからこそ、私たちには絵里先輩が必要なんです!」
24: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:32:51.40 ID:jAli/NeT.net
そう言って駆けだしていく、みんなの背中を目で追って
彼女達に届いてよかったと、そっと息を吐く
えりちの隣には、もうーーー
「…ほら、アンタもさっさと行くわよ?」
「…え?」
「アンタがいなくてどうすんのよ?」
「ずっと…絵里のそばにいたのはアンタでしょ?」
「その責任を、私たちに押し付ける気?」
「…」
「…最後まで、面倒みなさいよね?」
「でも…」
「でもじゃない!」
「絵里の隣には、アンタだけじゃない…」
「全員で立つの。」
「そうでしょ?…希。」
「…」
彼女達に届いてよかったと、そっと息を吐く
えりちの隣には、もうーーー
「…ほら、アンタもさっさと行くわよ?」
「…え?」
「アンタがいなくてどうすんのよ?」
「ずっと…絵里のそばにいたのはアンタでしょ?」
「その責任を、私たちに押し付ける気?」
「…」
「…最後まで、面倒みなさいよね?」
「でも…」
「でもじゃない!」
「絵里の隣には、アンタだけじゃない…」
「全員で立つの。」
「そうでしょ?…希。」
「…」
25: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:33:36.92 ID:jAli/NeT.net
「ここにいるみんなは…」
「それぞれの想いを抱えて、ここにいるの。」
「廃校を阻止したいって想いも、そう。」
「アイドルになりたいって想いも、そう。」
「諦めかけた夢を叶えたい想いも…そう。」
「…そして、誰かを支えたいって想いも。」
「どれも、みんなの叶えたい願いで。」
「みんなの、夢だから。」
「…うん、そうやね。」
「わかったなら行くわよ?」
「誰かさんが待ってるんでしょ?」
「うんっ!」
「それぞれの想いを抱えて、ここにいるの。」
「廃校を阻止したいって想いも、そう。」
「アイドルになりたいって想いも、そう。」
「諦めかけた夢を叶えたい想いも…そう。」
「…そして、誰かを支えたいって想いも。」
「どれも、みんなの叶えたい願いで。」
「みんなの、夢だから。」
「…うん、そうやね。」
「わかったなら行くわよ?」
「誰かさんが待ってるんでしょ?」
「うんっ!」
26: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:34:52.78 ID:jAli/NeT.net
「私の、やりたいこと…」
「そんなもの…」
そこに差し出される、右手
「…!」
それは、太陽みたいに、まっすぐで
みんなの思いは、気持ちは、ひとつで
「貴女達…」
「そんなもの…」
そこに差し出される、右手
「…!」
それは、太陽みたいに、まっすぐで
みんなの思いは、気持ちは、ひとつで
「貴女達…」
27: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:35:37.78 ID:jAli/NeT.net
「生徒会長。」
「いや…絵里先輩。」
「お願いがあります!」
それは、偽りのない、彼女自身の言葉で
「…練習?」
「なら、昨日言った課題をまず全部こなして…」
「絵里先輩!」
「μ’sに入ってください!!」
「いや…絵里先輩。」
「お願いがあります!」
それは、偽りのない、彼女自身の言葉で
「…練習?」
「なら、昨日言った課題をまず全部こなして…」
「絵里先輩!」
「μ’sに入ってください!!」
28: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:36:18.34 ID:jAli/NeT.net
「え…」
大きく開く瞳が、目の前のことを認識できていなくて
「一緒にμ’sで歌って欲しいです!」
「スクールアイドルとして!」
晴れやかな、朗らかな笑顔
「…何言ってるの?」
「私がそんなことするわけないでしょう!?」
でも、その声は---上擦っていて
「さっき、希先輩から聞きました。」
「やりたいなら素直に言いなさいよぉ。」
「…にこ先輩に言われたくないけど。」
そんな、冗談さえ交わせる、雰囲気に包まれて---
大きく開く瞳が、目の前のことを認識できていなくて
「一緒にμ’sで歌って欲しいです!」
「スクールアイドルとして!」
晴れやかな、朗らかな笑顔
「…何言ってるの?」
「私がそんなことするわけないでしょう!?」
でも、その声は---上擦っていて
「さっき、希先輩から聞きました。」
「やりたいなら素直に言いなさいよぉ。」
「…にこ先輩に言われたくないけど。」
そんな、冗談さえ交わせる、雰囲気に包まれて---
29: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:37:02.72 ID:jAli/NeT.net
「…ちょっとまって!」
「別に、やりたいなんて…」
「だいたい、私がアイドルなんて可笑しいでしょう…?」
この反応が、返答が、じれったくて
今まで見てきた、どんなえりちよりも---可愛くて
今まで見てきた、どんなえりちよりも---わかりやすくて
「…やってみればいいやん?」
今はきっと、悩む必要なんてないんだから
「…特に理由なんか必要ない。」
「やりたいからやってみる。」
「…本当にやりたいことって。」
「そんな感じで始まるんやない?」
だから、ウチも---決めたから
「別に、やりたいなんて…」
「だいたい、私がアイドルなんて可笑しいでしょう…?」
この反応が、返答が、じれったくて
今まで見てきた、どんなえりちよりも---可愛くて
今まで見てきた、どんなえりちよりも---わかりやすくて
「…やってみればいいやん?」
今はきっと、悩む必要なんてないんだから
「…特に理由なんか必要ない。」
「やりたいからやってみる。」
「…本当にやりたいことって。」
「そんな感じで始まるんやない?」
だから、ウチも---決めたから
30: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:38:02.45 ID:jAli/NeT.net
みんなの笑顔が、その顔を照らして
差し出された手がその目に映って
「…っ。」
おずおずと…でも、しっかりと
その手のひらを、固く、掴んで
「絵里さん…」
「これで、8人…!」
差し出された手がその目に映って
「…っ。」
おずおずと…でも、しっかりと
その手のひらを、固く、掴んで
「絵里さん…」
「これで、8人…!」
32: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:40:13.02 ID:jAli/NeT.net
そっと、肩に手を乗せられる
「…いや。」
「9人や。」
「ウチを入れて。」
「えっ…希先輩も?」
そう、ウチも…
やっぱり---その隣に、立ちたいから
「…いや。」
「9人や。」
「ウチを入れて。」
「えっ…希先輩も?」
そう、ウチも…
やっぱり---その隣に、立ちたいから
33: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:40:47.79 ID:jAli/NeT.net
「…占いで出てたんや。」
「このグループは9人になった時、未来が開ける…って。」
「だからつけたん。」
「9人の歌の女神。」
「…μ’sって。」
ウチの、ほんのちょっとしたいたずらと
ほんのちょっとの、ワガママ
「「えっ!?」」
「じゃっ…じゃあ、あの名前つけてくれたのって希先輩だったんですか!?」
「…ふふっ。」
やっぱり、ウチも
みんなの、ほんのちょっと近くには…いたいんよ
「希…」
貴女を、ずっと近くで見てきたから
「このグループは9人になった時、未来が開ける…って。」
「だからつけたん。」
「9人の歌の女神。」
「…μ’sって。」
ウチの、ほんのちょっとしたいたずらと
ほんのちょっとの、ワガママ
「「えっ!?」」
「じゃっ…じゃあ、あの名前つけてくれたのって希先輩だったんですか!?」
「…ふふっ。」
やっぱり、ウチも
みんなの、ほんのちょっと近くには…いたいんよ
「希…」
貴女を、ずっと近くで見てきたから
34: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:41:25.21 ID:jAli/NeT.net
「全く…呆れるわ。」
そう言って、歩き出すえりち
「どこへ…?」
えりちらしく、凛々しく、答える
「…決まってるでしょ?」
「練習よ!」
今まで、同じ返事しか返ってこなかった言葉が
違う音が色づいて、咲く笑顔
―--これが、見たかったから
「「やったぁーっ!!」」
駆けだしていく、みんな
そのあとを、追いかけようとして…
「…希。」
そう言って、歩き出すえりち
「どこへ…?」
えりちらしく、凛々しく、答える
「…決まってるでしょ?」
「練習よ!」
今まで、同じ返事しか返ってこなかった言葉が
違う音が色づいて、咲く笑顔
―--これが、見たかったから
「「やったぁーっ!!」」
駆けだしていく、みんな
そのあとを、追いかけようとして…
「…希。」
35: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:42:33.37 ID:jAli/NeT.net
「…えりち?」
「…ありがとう。」
「なんだか…悩んでたのが馬鹿みたい。」
「えりちは、難しく考えすぎなんよ。」
「ここにいるみんなも、色んな物を乗り越えて、隣に立ってるんよ?」
「そうね…」
「振り返ってみると、思っていた以上にちっぽけな悩みだったのかも。」
「それこそ、誰もが思い悩むような…」
「誰にでもある、もの。」
「それを乗り越えられるぐらい、強い想いを、みんなが持ってたからやん?」
「…ええ、そうね。」
「オープンキャンパスを成功させて。」
「廃校を阻止して。」
「そんな夢を、叶えたいと思えるもの。」
「…ありがとう。」
「なんだか…悩んでたのが馬鹿みたい。」
「えりちは、難しく考えすぎなんよ。」
「ここにいるみんなも、色んな物を乗り越えて、隣に立ってるんよ?」
「そうね…」
「振り返ってみると、思っていた以上にちっぽけな悩みだったのかも。」
「それこそ、誰もが思い悩むような…」
「誰にでもある、もの。」
「それを乗り越えられるぐらい、強い想いを、みんなが持ってたからやん?」
「…ええ、そうね。」
「オープンキャンパスを成功させて。」
「廃校を阻止して。」
「そんな夢を、叶えたいと思えるもの。」
36: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:43:48.97 ID:jAli/NeT.net
「その気持ち、穂乃果ちゃんに負けないようにせんとね♪」
「当然よ。」
「だって…それこそ、私がずっと思い描いていた夢だもの。」
「…でも、ひとりじゃまた、迷ってしまうかもしれないから。」
「そのために、みんながいるんよ?」
「あら?」
「希はいてくれないのかしら?」
「当然よ。」
「だって…それこそ、私がずっと思い描いていた夢だもの。」
「…でも、ひとりじゃまた、迷ってしまうかもしれないから。」
「そのために、みんながいるんよ?」
「あら?」
「希はいてくれないのかしら?」
37: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:44:39.16 ID:jAli/NeT.net
「…ずっと、そばにいるよ。」
「えりちの叶えたい夢が、ウチの夢でもあるから。」
「…これからもよろしくね?希。」
「ウチこそ、よろしくな?えりち♪」
穂乃果ちゃんと、繋いだように
そっと、ぎゅっとつなぐ左手
「行きましょう?」
「うんっ!」
ずっとずっと、見たかった
あの、笑顔とともに---
「えりちの叶えたい夢が、ウチの夢でもあるから。」
「…これからもよろしくね?希。」
「ウチこそ、よろしくな?えりち♪」
穂乃果ちゃんと、繋いだように
そっと、ぎゅっとつなぐ左手
「行きましょう?」
「うんっ!」
ずっとずっと、見たかった
あの、笑顔とともに---
38: 名無しで叶える物語 2018/08/23(木) 06:45:01.24 ID:jAli/NeT.net
おわり
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