1: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:00:00 ID:???00
小鈴(徒町は昔から、いわゆる“視える”子でした)

小鈴(そして徒町には……それとは別にもう一つ、ある能力も備わっています! それは……)

コォォン‼︎

さやか「! 小鈴さん、霊の様子が……!」

小鈴「身体の中から出てきたみたいです! 徒町、これなら──“除霊”できます!」

小鈴(そう、徒町には……“霊を祓う力”があるんです!)

さやか「除霊…………今さらですけど、本当に、なぜ小鈴さんがそんな技能を持っているんでしょうか……」

小鈴「それはもちろん、徒町が福井生まれだからです!!」グッ

さやか「なるほど……っていや、あの! 以前も言いましたが、福井生まれと除霊に、一体なんの因果関係があるんですか!?」

2: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:01:00 ID:???00
コォォォォォォン‼︎‼︎

小鈴「!! 相手も本気を出してきましたね! それなら、徒町も……!」サッ

さやか「……! 小鈴さんの手に、青白い光が……!」

小鈴「破ぁ……! ちぇすとーーーーー!!!!」

バァァン…‼︎

さやか「!? も、ものすごい爆発が……」

小鈴「これが……除霊です! 徒町、チャレンジ成功しましたー!」ニコッ

さやか「え……福井生まれすごすぎませんか……!? 改めてそう思いました……」


小鈴(……さて、なぜ今、徒町は除霊チャレンジをしていたのか? そのきっかけは、数日前にまで遡ります…………)

3: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:02:01 ID:???00
────

──数日前、部室

梢「…………まったく、花帆は一体何をしているのかしら……」ハァ

梢「……」ピリピリ


小鈴「な、なんだか空気が重い、ですね……」

綴理「こずの後ろ、鬼が出てるからかな?」

さやか「あぁ……梢先輩、かれこれ三十分は花帆さんを待っていますもんね……鬼の雷が落ちても、おかしくはありません」

ガチャ

バタン‼︎

梢「! 花帆、やっと来たのね、今まで一体何を──」


花帆「──た、大変です、梢センパイ!!」ハァハァ

4: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:03:01 ID:???00
梢「!? ど、どうしたの、花帆? そんなに息を切らして……」

花帆「あの……ぎ、吟子ちゃんが……」ハァハァ

花帆「吟子ちゃんが、部屋で倒れていたんです!!」

梢「ぎ、吟子さんが……!?」

小鈴「……え、それ本当ですか、花帆先輩!?」ガタッ

花帆「うん、あたしが何度呼びかけても返事がなくて、鍵を借りてきて部屋を開けたら、吟子ちゃんが……」

5: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:04:01 ID:???00
梢「そんな……これは一大事ね、すぐに向かわないと……」スタッ

さやか「花帆さん、わたし達も同行させてください! 大事なクラブの仲間のことですから!」

花帆「さやかちゃん……! うん、ありがと!」

梢「……まだ慈達が来ていないし、部室から人がいなくなるのも良くないわね」コホン

梢「綴理、部室に残って、慈達が来たときに説明しておいてもらえるかしら?」

綴理「ん、わかった」グッ

花帆「あたし、吟子ちゃんの部屋まで案内しますね! こっちです!」タタッ

6: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:05:01 ID:???00
────

花帆「──ここが、吟子ちゃんのお部屋です。開けますね……」

ガチャ

梢「……失礼するわね。……さて、吟子さんの容態は……」チラッ

吟子「……はぁ、はぁ…………っ」

さやか「! これは……かなり酷い具合のようですね。ずいぶんと、息が苦しそうに見えますが……」

花帆「あたし、昨日吟子ちゃんと二人で、練習後に裏山のあたりにいたんだけど……その時から、少し様子がおかしくて……」

小鈴「……」ジー

7: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:06:01 ID:???00
梢「大丈夫かしら、吟子さん……とりあえず、熱を測って……」スタスタ

吟子「……!?!? ごほっ、ごほっ……!?」

花帆「吟子ちゃん!?」

梢「え……ど、どうして、急に具合が──」


小鈴「──梢先輩、吟子ちゃんから離れてください!!」バッ

8: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:07:01 ID:???00
梢「!? こ、小鈴さん……え、ええ、わかったわ」ササッ

花帆「小鈴ちゃん、何か気づいたの? 大きな声でびっくりしちゃった……」

小鈴「! あ、あぁ……えぇと、その、梢先輩が吟子ちゃんに近づくのは……あまり良くない、と言いますか……」ワタワタ

さやか「……?」

9: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:08:00 ID:???00
梢「?? よくわからないのだけど……とりあえず、吟子さんはお医者様に診てもらったほうが良いわね。すぐに連絡を……」

小鈴「いえ、あの! ……病院に連絡するのは、少し待ってはいただけませんか?」

花帆「え、でも……」

小鈴「……詳しくは説明できないのですが、吟子ちゃんのその容態は、病院に行っても治せるものではない、はずなんです」

梢「治せるものではない……?」

10: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:09:01 ID:???00
小鈴「幸いにも命に別状はなく、解決さえできれば、すぐにでも吟子ちゃんは良くなります。……なので、徒町が……」グッ

花帆「? 小鈴ちゃん、それ、どういうこと──」

小鈴「──ではあの、徒町はお暇します!! 吟子ちゃんのことは、徒町に任せていただけると!!」

ガチャ

バタン

梢「小鈴さん!? ……ど、どうすればいいのかしら、一体……」

さやか「……」

11: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:10:01 ID:???00
────

小鈴「……」スタスタ

小鈴「…………これを解決できるのは、徒町だけ。徒町が、徒町だけの力で、何とかしなくちゃ……」ブツブツ


「──待ってください、小鈴さん!」

小鈴「! さ、さやか先輩……!? どうして、徒町なんかを追いかけて……」

さやか「はぁ、や、やっと追いつきました。……理由なんて、小鈴さんのことが、心配だったからに決まっています」フゥ

12: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:11:01 ID:???00
小鈴「あ……か、徒町、さやか先輩に無用な心配を……!」

さやか「……あの、小鈴さん。先ほどの、小鈴さんの言動は……」

小鈴「! いや、あの、えっと……な、何でもないです! 徒町、大変失礼な態度を先輩方にとってしまい、申し訳ありません!」ペコリ

さやか「いえ、態度を責めているわけではなくてですね……」コホン

さやか「……何か、知っているんですよね? 吟子さんの、具合のこと」

小鈴「え、えぇと……徒町は、何も知らなくて……」アワアワ

さやか「……そんなふうに否定したって、何か隠していることくらいバレバレですよ。……小鈴さん。お話、聞かせてもらえませんか?」

小鈴「……! で、でも……」

13: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:12:01 ID:???00
さやか「わたしは、あなたの先輩です。小鈴さんが一人で困っているのなら、手を差し伸べたい。それが、先輩としての矜持ですから」

小鈴「さ、さやか先輩…………ですがおそらく、さやか先輩にだって信じてはいただけないかと……」

さやか「大切な後輩の、ましてや小鈴さんのような純粋な方の言うことを、信じないわけありませんよ」クスッ

さやか「ですから、教えてください。小鈴さんが抱えているものを。そして……吟子さんに、何が起きているのかを」

小鈴「……」

小鈴「…………わかり、ました。さやか先輩がそう仰るなら……徒町がわかること、全て、お話ししましょう」グッ




小鈴「吟子ちゃんは──“狐の霊”に取り憑かれています」

14: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:13:01 ID:???00
さやか「…………え??? 霊……?」

小鈴「はい、霊です…………あれ、やはり信じてはいただけない感じですか……!?」

さやか「い、いえ、小鈴さんが嘘を吐くわけありません。信じるに決まっていますとも」コホン

さやか「……ですが、予想以上に内容が奇想天外だったので……霊って、死んだ後の魂というか、オカルトの……?」

小鈴「オカルトというか、現実なんです、さやか先輩! ……実は徒町、子どもの頃から、その、霊が視えていまして」

15: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:14:01 ID:???00
さやか「霊が視える…………ということは、先ほどの吟子さんに、その……“狐の霊”? が憑いていたのが視えていた、と?」

小鈴「そうです! あれはきっと……前から、蓮ノ空の裏山にいた霊魂だと、徒町は思います」

さやか「…………え、待ってください、蓮ノ空の裏山には霊がいるんですか!?」

小鈴「? はい、もちろんたくさんいますよ! 亡くなった動物の霊が楽しそうに裏山で遊んでいるの、よく見かけませんか?」

さやか「いえ、すみません、わたしにはさっぱり……どうやら霊感が無いようで。今度歩くとき、思い出してしまいそうです……」

16: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:15:03 ID:???00
小鈴「えっと、話を戻すと……吟子ちゃんが、その狐の霊に苦しめられているのが、徒町はありありと視えてしまい、先ほどはつい……」

さやか「あぁ、だから不自然な言動を……それなら、梢先輩が吟子さんに近づいたときに止めたのも……」

小鈴「はい。梢先輩が近づくと、余計に、霊が吟子ちゃんのところに潜り込んでしまうんです。多分、怖がってるんだと思います」

小鈴「今のままだと……霊が吟子ちゃんから離れない限り、ずっとあのままの状態で、変わりません。病院でも……治せないと思います」

17: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:16:01 ID:???00
さやか「そんな……解決策はあるんですか?」

小鈴「それは、はい! 徒町なら、吟子ちゃんを助けられると思います!なにせ徒町は──“除霊”ができるので!」グッ

さやか「…………!? こ、小鈴さん、視えるだけじゃなくて、霊を祓うことまでできるんですか!?」

小鈴「もちろんです! 徒町、福井生まれですから!」ドンッ

さやか「あぁ、なるほど……って、いえいえ! 寺生まれならまだしも、福井生まれと除霊に何も関係はありませんよね!?」

18: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:17:01 ID:???00
さやか「……えぇと、では、小鈴さんが吟子さんに取り憑いているその霊を祓ってしまえば、万事解決ということでしょうか?」

小鈴「そう言いたいのですが…………すみません、さやか先輩。除霊には……一つだけ、条件があるんです」

さやか「? 条件、ですか……?」

小鈴「……はい。徒町、霊がどうしてこんなことをしたのか──その“理由”を知らなければ、霊を祓う力が、湧いてこないんです」

19: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:18:01 ID:???00
さやか「理由……」

小鈴「その……徒町、今回のことで少し気にかかる点があるんです。吟子ちゃんのこと……」

小鈴「……霊というのは、人間よりもはるかに強い力を持っています。それこそ、人など簡単に呪い殺せてしまうくらい……」

小鈴「それなのに、今、吟子ちゃんに取り憑いているあの霊は……決して殺さず、ただ呼吸をしにくくさせているだけ、なんです」

さやか「呼吸を……? なるほど、それで……何か理由があるのではないか、と小鈴さんは考えたわけですか」

小鈴「はい。……本当は、人に仇なす霊など、すぐに祓ってしまえばいいのですが…………徒町は……」グッ

20: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:19:00 ID:???00
小鈴「…………徒町は、漁師家系で育ったこともあり、生き物の命をいただくということに対して、人一倍厳しく指導されてきました」

小鈴「そのためか……霊を祓う、ということについても、命を無闇に奪っているような気がして……いえ、所詮、徒町の心が弱いだけなんですけど……」

さやか「……」

小鈴「……これはひとえに、徒町が未熟者であるからであって、除霊に私情を挟むなんて、愚の骨頂でしかないことも重々理解してはいるのですが」

小鈴「これが、徒町なりの……霊に対する考え方なんです。ちゃんと理由を知って、向き合いたい。“納得”がしたいんです」

21: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:20:01 ID:???00
小鈴「…………ごめんなさい、さやか先輩。除霊ができるというのに、徒町……」

さやか「ふふっ、いいえ。……小鈴さんは、優しいんですね」クスッ

小鈴「さやか先輩……でも徒町は、なんとかする力があるにもかかわらず、面倒なわがままばかり言って……」

さやか「そんなわがままくらい、いいじゃないですか。誰だって、それで小鈴さんを責めたりしません」

さやか「それに……」コホン

小鈴「……さやか先輩?」

さやか「わたしも、お手伝いしますよ。大切な後輩が困っているのに、助けないわけ、ないじゃないですか」フフッ

小鈴「!! い、いいんですか?」

さやか「もちろんですよ、小鈴さん。一緒に除霊チャレンジ、頑張りましょう!」ニコッ

小鈴「……! はい!」グッ

22: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:21:01 ID:???00
────

さやか「さて、小鈴さん。“理由”を解明する、となれば……何はともあれ、まずは情報を集めなければなりません」

小鈴「情報…………吟子ちゃんが霊に襲われた時の状況を、詳しく知ることができれば……!」

さやか「はい、その通りです。どんな些細なことでも詳しく聞き出す……探偵としては基本のスキルですね」フフッ

小鈴「? 探偵……?」

さやか「あ、あぁ、すみません。最近そういった本を読んでいるのでつい……」コホン

23: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:21:59 ID:???00
コンコンコン

「? はーい」

ガチャ

花帆「──あれ、さやかちゃんと小鈴ちゃん? どうしたの、さっきぶりだけど……」

吟子「……はぁ、はぁ……」

小鈴「あ、花帆先輩……吟子ちゃんのこと、看病しているんですね」

花帆「……うん。やっぱり、心配だから」

花帆「……吟子ちゃん、息がしづらそうなのもそうなんだけど……ずっと、胸を手で押さえてるんだよね。なんだか苦しそうで……」

さやか「? 胸を手で……?」フム

24: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:23:01 ID:???00
花帆「えっと……二人は、どうしてここに?」

さやか「あぁ、えぇと……実は、花帆さんにいくつか質問がしたくて来たんです。……ですよね、小鈴さん?」

小鈴「は、はい! 吟子ちゃんを助けるために、どうしても必要で……すみません、花帆先輩。先ほど同様、詳しい理由をお話しすることはできないのですが……」

花帆「あ、ううん、全然気にしなくていいよ! 吟子ちゃんをこうやって近くで見ても……この感じ、ただの病気じゃないってわかるし」

花帆「……多分、小鈴ちゃんにも何かあるんだろう、ってこともわかるから! 吟子ちゃんのことは、任せたよ!」

小鈴「花帆先輩……! はい! 大船どころか豪華客船に乗ったつもりでお待ちください!」グッ

25: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:24:01 ID:???00
花帆「それで……質問、だっけ? 何を聞きたいの?」

さやか「そうですね……まずは、吟子さんと最後に会った時の状況について、教えていただけますか?」

小鈴「は、そうでした! 花帆先輩、吟子ちゃんと一緒に裏山にいたって……」

花帆「うん、そうだよ。昨日の……練習が終わった後くらいかな。吟子ちゃんを、少しお散歩に誘ったんだ」

さやか「お散歩に……そこで、世間話をしていた、と?」

花帆「あ、ううん。ただ歩きながら喋ってただけじゃなくて、あたし達──歌を、歌ってたんだ」

小鈴「歌、ですか……?」

26: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:25:01 ID:???00
花帆「うん。裏山みたいな、ああいう静かな場所で歌うの、あたし好きで……せっかくだから、吟子ちゃんと一緒に歌いたかったんだ」

花帆「だからあたし、吟子ちゃんに頼んだの。どうしても歌いたくて、何度も何度もお願いして……」

花帆「そうしたら! しぶしぶ『踏み出すのはまだ少し怖いよ』って、吟子ちゃんから歌い始めてくれたんだ!」ニコッ

さやか「その歌詞は……『アオクハルカ』のラスサビ前のパート、ですね」

27: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:26:02 ID:???00
花帆「でも……そのまま、最後まで歌い終わった時かな。吟子ちゃん、突然、呼吸が乱れて……」

花帆「体調がおかしいから部屋で休む、って言われてあたし、吟子ちゃんのことを部屋まで送ったんだけど、もう今日には……」

小鈴「……きっとその時には、もう霊が取り憑いていた……」ボソッ

さやか「花帆さん。吟子さんと二人で歌った、ということでしたが……梢先輩のパートはどうされたんですか?」

花帆「梢先輩の? 結構細かいところまで聞くんだね……んー……なんとなく、吟子ちゃんとかわりばんこで歌ってたかなぁ……」ウーン

花帆「……あっ、でも! ラストは、一番で吟子ちゃんが歌った歌詞があったし、続けて吟子ちゃんがその部分を歌ってたかな」

28: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:27:01 ID:???00
さやか「なるほど……情報提供ありがとうございます」メモメモ

花帆「ふふ、なんだかさやかちゃん……探偵さんみたいだね! あたしが貸したミステリ小説に影響されちゃった?」クスッ

小鈴「? ミステリ小説……?」

さやか「あ……か、花帆さん! 今それは言わなくてもいいじゃないですか! 確かにこう……影響されている節もありますが……」

花帆「あははっ! うん、色々落ち着いたら、またさやかちゃんに、花帆とっておきの小説貸すから! 楽しみにしてて!」グッ

さやか「も、もう……こほん。情報は十分得られました。行きますよ、小鈴さん!」プイッ

小鈴「え、あ、はい! 花帆先輩、いろいろお話、ありがとうございました!」ペコリ

29: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:28:01 ID:???00
────

さやか「さて、このあたりでいいでしょう。小鈴さん、聞き込みの結果得られた情報を、整理しましょうか」

小鈴「はい! ……あ、そういえば!」

小鈴「さやか先輩が最近読んでいる本というのは、ミステリ小説のことだったんですね! 花帆先輩が貸したとか……」

さやか「あぁ……そう、なんです。その…………今の状況、さながらミステリ小説の探偵のようで、少し投影してしまい……」

30: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:29:00 ID:???00
小鈴「! なるほど、だからさやか先輩、花帆先輩への聞き込み、張り切ってあんなに細かいところまで聞いていたんですね!」

さやか「ええ…………いや、あの、すみません、こんな状況だというのに一人で勝手に盛り上がって……お見苦しいところを見せてしまったかと」

小鈴「いえ! そうやってさやか先輩がはしゃぐのは珍しく……徒町はむしろ、見れて嬉しいし、そんな先輩も可愛いと思います!」

さやか「か、かわ……!? ……んん、は、話を戻しましょうか!」

小鈴「? はい、そうですね!」

31: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:30:01 ID:???00
さやか「吟子さんは、蓮ノ空の裏山で歌い終わると同時に、霊に取り憑かれた……と、先ほどの話からは推察できますね」

小鈴「えっと、さやか先輩! ここまでの情報で、霊が吟子ちゃんに取り憑いた“理由”を推理? することってできるんでしょうか?」

さやか「ふむ……まだわかりませんが、情報を整理するためにも、ここはやはり、ミステリ的に考えた方がいいかもしれませんね」

小鈴「ミステリ…………すみません、徒町、その手の分野にはとんと疎くて……」

32: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:31:01 ID:???00
さやか「あぁ、いえ。ミステリは長い歴史があり、作品数も多いですから、仕方ありません。読むのにも時間が要りますから」

さやか「ですがその分、面白く学びもありますよ。今度、小鈴さんも読んでみるといいかもしれませんね」クスッ

小鈴「徒町、気になります……! ちなみに、さやか先輩が今読んでいるのって、どんなミステリ小説なんですか?」

さやか「最近ですか……以前、花帆さんがおすすめしてくださった小説が面白かったので、その作家さんの本を借りて読んでいますね」クスッ

さやか「今読んでいるものだと……ミステリの様々なジャンルをもとにした、短編ミステリが載っている小説です。とても面白いんですよ」

小鈴「ミステリの……ジャンル? ミステリにも、幾つかジャンル、というものがあるんですか?」

さやか「はい。殺人のギミックなどで分けられて……密室殺人や、アリバイ崩し……あぁ、あと童謡殺人、なんてものもありましたね」

小鈴「?? どうようさつじん……?」

33: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:32:01 ID:???00
さやか「ふふ、知らないとそういった反応になってしまいますよね。童謡殺人は、その名の通り童謡などになぞらえて殺人が起きる、といったもので」

さやか「探偵は、その地に伝わる歌の歌詞や言い伝えを手がかりに、事件を解決していく……といったジャンルですね」

小鈴「へぇ、そういうのもあるんですね! 徒町、勉強になります! ………………あれ?」ピタッ

さやか「? 小鈴さん?」

小鈴「歌…………手がかり……」フム

34: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:33:01 ID:???00
小鈴(吟子ちゃんは、『アオクハルカ』を歌い終わると同時に取り憑かれた……つまり、霊は吟子ちゃんの歌を聴いていた)

小鈴(もしかして、本当に重要な手がかりは、その歌のメロディではなく、“歌詞”……? ということは、吟子ちゃんが歌った部分の歌詞を考えると……)

小鈴「──!! も、もしかして……!」ガタッ

35: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:34:01 ID:???00
さやか「……! 小鈴さん、その様子、何かわかったんですか?」

小鈴「はい! 徒町……全て謎が解けました! あの霊が、なぜ吟子ちゃんを苦しめているのか、その理由が、全部!」

さやか「! 本当ですか、小鈴さん!?」

小鈴「さやか先輩のおかげです! あんなに細かく、花帆先輩に聞き込みをしてくれたおかげで、重要な手がかりになりましたから!」グッ

小鈴「さぁ……行きましょう、さやか先輩! 吟子ちゃんのところに!」

さやか「では、いよいよ……!」

小鈴「はい、そのとおりです! 絶対成功させてみせますよ、徒町の──除霊チャレンジ!!」グッ

36: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:35:01 ID:???00
────

ガチャ

さやか「──花帆さんには席を外してもらいました。これで、この場にはわたしと、小鈴さんと、吟子さん。それに……」

小鈴「……吟子ちゃんに取り憑いている“狐の霊”だけですね」

さやか「……さて、どうするんですか、小鈴さん? いきなり、霊を祓ってしまうのでしょうか?」

小鈴「いえ。……まずは、徒町がたどり着いた、答えを聞いてもらいます。さやか先輩に、そして……“狐の霊”自身にも」

吟子「っ!? ごほ、ごほっ……」

さやか「! 吟子さんの様子が……」

小鈴「……霊が、力を強めているみたいです。ここから離れるわけにはいかない、そう伝えているようで……」

37: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:36:00 ID:???00
さやか「離れるわけにはいかない……? 何故、そんな……」

小鈴「それは……徒町が出す、何故こんなことを霊はしたのか、という“理由”の答えにも関連します。なので、今ここで、全てを明らかにしましょう」

小鈴「……」スゥ

小鈴「狐の霊は──“吟子ちゃんのためを思って”、胸を苦しくさせ、息をできなくさせた……これが、真実です」

38: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:37:01 ID:???00
さやか「え……? 小鈴さん、それは……霊が吟子さんのために、わざと苦しい目に遭わせた、ということですか? まるで倒錯しているような……」

小鈴「はい。霊は……吟子ちゃんの歌を、吟子ちゃんが歌うパートだけを、聴いていたのでは、と徒町は推測します」

さやか「吟子さんが歌うパート……確かその時、吟子さんが歌っていた曲は『アオクハルカ』でしたよね」

小鈴「そうです。花帆先輩から聞いたお話では、ラスサビに入る前あたりから、吟子ちゃんが歌い始めたということでした」

小鈴「二人が歌ったラスサビ……梢先輩抜きで歌うにあたって、吟子ちゃんが連続で歌っている箇所があったんです」

39: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:38:01 ID:???00
小鈴「『胸が苦しい 息もできない』……この部分を、吟子ちゃんは歌いました。そしてその歌を、言葉を、霊は聴いてしまった」

さやか「! それって、吟子さんの今の症状と同じ……!」

小鈴「はい。おそらく、吟子ちゃんのことを大事に思っていた霊は……吟子ちゃんを、喜ばせてあげたかった」

小鈴「そんななか、歌を聴いて……吟子ちゃんの歌っていた言葉を現実に叶えてあげれば、きっと喜ぶのではないか? そう、思ったのでしょう」

小鈴「そうして、霊は吟子ちゃんに取り憑いた。誰よりも、吟子ちゃんのためだけに。これが──全ての真相です」

40: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:39:00 ID:???00
吟子「!? ごほっ……はぁ、はぁ……」

さやか「! 吟子さんの様子が……これは、もしかして、霊が……」

小鈴「この反応……徒町の推理、決して的外れではなかったようですね……」

ズズズ…

さやか「っ、なにやら、禍々しい空気が……」

小鈴「あちらも、看破されて怒っているみたいです。…………でも! たとえ、人のために行った行為であろうと……」グッ

小鈴「こうして、吟子ちゃんのことを苦しめているのは……徒町、許せません!」

小鈴「“理由”もわかり、納得した今、徒町にも除霊の力が湧いてきました! だからっ……! ここで全部、終わらせます!!」サッ

コォォン‼︎

41: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:40:01 ID:???00
────

──

小鈴(かくして、冒頭に戻り……徒町は無事、除霊チャレンジを成功させることができたのでした!)

小鈴「これで、一件落着です! 吟子ちゃんも、すぐに良くなると思います!」ニコッ

さやか「やっと一安心、ですね。……それにしても、あの霊は、純粋に吟子さんのことが気に入っていた……好きだったんでしょうね」

小鈴「! ……そうですね、徒町もそう思います。人間を思って願いを叶えようとして……ただ、方向性だけがズレていた」

さやか「あくまでも“狐の霊”には……悪気があったわけではない、ということになるんでしょうか?」

小鈴「……そう、かもしれません。でも、実際被害を受けているのは、徒町達人間で……善悪を決めるのは、人間ですから」

42: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:41:01 ID:???00
さやか「確かに……そうですね。そう考えた方がいいかもしれません。まぁ、何はともあれ、無事に解決できてホッとしました」フフッ

小鈴「はい! さやか先輩も、こんな徒町のために手を貸してくださり、ありがとうございました!」ペコリ

さやか「いえいえ。実際に除霊をしたのは、小鈴さんですから。わたしは、何もしていませんよ」クスッ

さやか「ですが、これで……やっと、日常に帰れますね」

小鈴「そうですね! 全て終わり大団円──」




「──ううん。まだ、終わってないよ」

44: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:42:00 ID:???00
小鈴「!? この声は……」

さやか「──綴理先輩!? どうしてこちらに……」

綴理「やっほー、すず、さや。そろそろかな、って思ってたんだ」

小鈴「そろそろ……?」

綴理「ん。二人が……ぎんに憑いてたあの子を、祓ってくれたんだよね?」

45: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:43:00 ID:???00
小鈴「……え!? つ、綴理先輩、そのことを……というより、霊が取り憑いてた、ということをどこで知ったんですか!?」

綴理「? ボク、霊感? が強いから。直接会わなくても、ぎんに霊が取り憑いていたのはわかってたんだ」

さやか「え…………霊感が強い、ということは……綴理先輩、もしかして霊が視えるんですか……!?」

綴理「うん。……あれ? さや、知らなかったの?」

さやか「は、初耳ですよ! …………つまり、DOLLCHESTRAで“視えない”のは、わたしだけ、ということですか……」

46: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:44:01 ID:???00
綴理「? でも、さや。前に霊の話をした時、さやもそのまま、話を続けてたよね?」

さやか「……? え、それいつのことでしょう……記憶にありませんが……」

綴理「ついこの間。こずの後ろに鬼が出てる、ってボクが言って……」

さやか「! あ……あれそういう意味だったんですか!?」ガタッ

47: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:45:01 ID:???00
さやか「いや、というか……梢先輩にも、鬼の霊的なものが憑いているんですか!?」

小鈴「あぁ! それは徒町にも、ずっと視えてますね! 今もずっと! 梢先輩の、守護霊の鬼のことです!」

さやか「えぇ……? 梢先輩の守護霊って、鬼なんですか……?」

綴理「うん。あの時、鬼の話をさやが続けたから……さやも視えてるのかと、ボク思ってた」

小鈴「なるほど、さやか先輩には、視えていないんですね……」チラッ

48: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:46:00 ID:???00
さやか「……わ、わたしに霊感がないことはこの際置いておきましょう。……先ほど仰った、まだ終わっていない、というのは……?」

綴理「あ、そうだね。説明しなきゃだ」

綴理「今──蓮ノ空が、大変なんだ。霊のみんなが、ものすごく元気になって、毎日パーティしてる」

小鈴「……?? パーティ?」

さやか「ふむ……つまり、蓮ノ空に巣食う霊が、以前よりも活動をずっと強めている……ということでしょうか?」

綴理「ん。ぎんが取り憑かれたのだって、その影響だ」

49: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:47:01 ID:???00
綴理「前まで、裏山のあの霊は、どんな理由があったって人に近づくような子じゃなかった。みんな、ただ幸せそうに過ごしてたんだ」

小鈴「! それは、徒町にもわかります! いつも楽しそうに霊が裏山を駆け回っている姿、徒町は以前、よく視ていましたから……」

綴理「うん。でも……少し前から、違う。今は、人間が裏山に近づけば、誰でもすぐに取り憑かれちゃうような状況なんだ」

小鈴「誰でも……霊の方も自制が効かなくなっているから、吟子ちゃんも狙われて……」

さやか「…………? あの、それでしたら──どうして花帆さんは、取り憑かれなかったのでしょうか?」

50: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:48:01 ID:???00
さやか「吟子さんも花帆さんも、一緒に裏山にいて歌を歌っていた。そして……裏山には他にもたくさん霊がいて、活動を強めている」

さやか「だというのなら……吟子さんが狙われたのにもかかわらず、花帆さんが取り憑かれていない理由はないのでは……?」

小鈴「は、確かに……! たまたま花帆先輩が、対霊体質に優れていた、とか……?」

綴理「ううん、すず。そもそも……かほは、霊に狙われやすい体質だよ」

綴理「かほは蓮ノ空に来るまで、ずっと身体が弱かった。だから、蓮ノ空にいる怪異にとって、かほは絶好の獲物のはずなんだ」

小鈴「え、でも……花帆先輩には今、何も取り憑いていませんよね?」

綴理「ん。それが──こずのおかげなんだ」

51: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:49:01 ID:???00
小鈴「? 梢先輩の……あ、もしかして、あの守護霊の……!」

綴理「さすが、すず。そのとおり」パチパチ

綴理「こずは、かほのことをよく触ってたり、スキンシップ? をとったりしてる。だから、かほにこずの“匂い”がついてるんだ」

さやか「……え? に、匂い……?」

綴理「ん。こずの匂いに、あの守護霊の鬼の力が含まれてるから、みんな怖がって、かほには近づかない」

綴理「つまり……こずの守護霊であるあの鬼が、かほのことも守ってくれてるんだ。マーキングしてる、とも言えるのかな」

小鈴「……梢先輩が、花帆先輩にマーキングを……!」

さやか「小鈴さん、その言い方だけだと誤解が生まれませんかね……!?」

52: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:50:02 ID:???00
綴理「えっと、ここからが本題。このままだと、蓮ノ空のみんなが、ぎんみたいに危険な目に遭い続けちゃうんだ」

綴理「だから、解決するために……こずの鬼の力を使おうかと、思ってて」

小鈴「梢先輩の鬼の力を……」フム

綴理「こずから離れてもらって、鬼に、蓮ノ空全体を守ってもらうんだ。そうすれば、蓮ノ空のみんなが、取り憑かれることはなくなる」

さやか「……え、守護霊を無理に引き離していいんでしょうか……? 梢先輩が、逆に怪異に狙われてしまうのでは……?」

53: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:51:01 ID:???00
綴理「ううん、こずは、守られるほど弱くないよ。むしろ、あの守護霊がこずを閉じ込めてるくらいだ」

小鈴「あ、今の言葉に、鬼がショックを受けてます!」チラッ

さやか「あぁ、そうでしょうね……自分の存在が誰かの足枷になっていることを知ったら、わたしだって……って」

さやか「………………え!? い、いるんですか!? そこに鬼が!?!?」ガタッ

54: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:52:01 ID:???00
綴理「うん。ボクがこずから借りてきたんだー。三人で鬼と話して、この状況をなんとかしよー、って思ってたから」

小鈴「なるほど……だから綴理先輩は今、徒町達のところに、鬼と一緒にいらしたんですね!」

さやか「鬼がここにいる…………先ほど、鬼の話があった時、小鈴さんが辺りをチラッと見ていたのはそういう……」

綴理「ん。あ、でも……鬼を借りる時、こずは困惑してたみたいだったね。なんでだろう?」

さやか「…………まず人の鬼を借りる、ということからツッコミどころでしかないんですが……梢先輩に、なんて言って借りたんですか?」

綴理「えっとね……『こず、鬼借りてくねー』って」

さやか「いや……そりゃ困惑しますよ、梢先輩も! いきなり鬼を、消しゴム借りるくらいの気軽さで借りられたらびっくりですって!!」

55: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:53:01 ID:???00
さやか「あぁ、もう、ツッコむのにも疲れてきました……」ハァ

小鈴「さやか先輩! ですが、鬼の方も納得してくれたようですよ!」

さやか「!? え、今の一瞬で交渉を……?」

小鈴「いえ、徒町達の会話を聞いて、『おもしれーやつ』と思ってくれたみたいで……協力してくれるそうです!」

綴理「おー、結果オーライだ。鬼を交えて三人で話すつもりが、三人でただ話してるだけで済んだ。DOLLCHESTRAで漫才した経験が活きたね」

さやか「いや、……今は漫才をしていたわけではなかったですよね……!?」

小鈴「ふむふむ……鬼は、基本的にはスクールアイドルクラブの部室にいて、そこから蓮ノ空全体を守ってくれるそうです!」

綴理「そっか。これからは、部室に入ったらすぐに鬼が目に入るんだー。よろしくね、鬼ー」ニコニコ

小鈴「よろしくお願いします!」ペコリ

さやか「…………もう話についていけません……!」ハァ

56: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:54:01 ID:???00
────

──数日後

ガチャ

小鈴「おはようございます! 徒町、今日も練習頑張ります! ……あっ!」タタッ

小鈴「鬼も、もういらっしゃるんですね!」

綴理「うん。今日も元気そうだね、鬼」ニコニコ

小鈴「ですね! いつにも増して、ツノが光り輝いてます!」

さやか「あの……二人とも、わたしが視えないのに、その話をするのはやめていただけませんか……!? 普通に怖いんですが……」

57: 名無しで叶える物語◆nV2siX45★ 2025/01/17(金) 19:55:01 ID:???00
小鈴「いえいえ、全然怖くなんてありませんよ、さやか先輩! 鬼も、にっこり笑顔で微笑んでくれています!」

綴理「うん。鬼、かわいいね。よしよし」ナデナデ

さやか「いや、ですから!? わたしから見ると、空中に向かって手を振っている様にしか思えないんですってば、綴理先輩!」

小鈴「ふふっ、徒町にも、撫でさせてください!」タタッ

小鈴(──色々ありましたが……今日も蓮ノ空は、梢先輩の守護霊である鬼が守ってくれています! これからも、ずっと!)


おしまい

引用元: 【SS】小鈴「福井生まれのKさんこと、徒町小鈴の除霊譚!」