1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 20:46:53.34 ID:gAY6tPnbo
光の勇者(以下、勇者)「馬鹿な! 何を言っている!」

地の四天王(以下、地王)「頼む! お願いだ!」

勇者「やめろ! それでも魔王軍の幹部か!」

地王「お前しか! お前しか居ないのだ!」


地王「酔って、朝起きたら闇の魔王様がベッドに居たのだ!」

地王「薄らぼんやりと、ヤっちゃった記憶があるのだ!」


勇者「だから俺に言うのはやめろってえええええ!!」

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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 20:50:06.71 ID:gAY6tPnbo
地王「ええい、お前はそれでも勇者か!?」

勇者「それでもって、どれでもだ!」

地王「救いを求める手を振り払うつもりか!?」

勇者「俺に助けを求めるな!」


地王「ああ……俺は、おしまいだ!」

地王「魔王様は……初めてだった……!」


勇者「そういう事言うなってえええええ!!」

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 20:54:57.30 ID:gAY6tPnbo
勇者「というか、何故お前がここに居る!?」

地王「今日は非番なのだ!」

勇者「そうじゃなくて! 俺に助けを求めるな!」

地王「ええい、わからんやつだ!」


地王「勇者よ、敵ながらお前は天晴なやつ!」

地王「その力を見込んで、助けを求めているのだ!」


勇者「こういう助けの求められ方ははじめてだよ!」

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 20:58:54.93 ID:gAY6tPnbo
勇者「そもそも! どうしてそうなった!?」

地王「よくぞ聞いてくれた!」

勇者「聞きたくて聞いてるんじゃねえ!」

地王「勇者よ! 心して聞くが良い!」


地王「実は、酔ってあまり記憶が無いのだ」

地王「何となく、一緒に飲んでたなぁ、程度にしか覚えていない」


勇者「最悪だな! お前、ほんと最悪だな!」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:02:24.83 ID:gAY6tPnbo
勇者「しかし、その……なんだ……」

地王「ん? 何か、気になることでもあったか?」

勇者「……魔王が初めてだったとかは、覚えてるんだな」

地王「ああ」


地王「シーツに、血の痕が残っていてだな」

地王「歩き方に違和感があり、これはもう、となったわけだ」


勇者「これはもう、じゃねえよ!!」

6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:08:00.67 ID:gAY6tPnbo
地王「加えて、会議の時の魔王様の行いだ」

勇者「……様子でも違ったのか」

地王「いや、そこはいつもとは変わらなかった」

勇者「じゃあ、行いって何だよ」


地王「こう、闇の魔力で影を操ってだな?」

地王「それを伸ばし、コッソリ俺の指に絡めてきたのだ」


勇者「なんだそれ、可愛いな!?」

7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:12:14.17 ID:gAY6tPnbo
地王「魔王様は美しい!」

勇者「……まあ、そうだな」

地王「そして、可愛らしい面もあると知った!」

勇者「……まあ、そうだな」


地王「だが……このままでは、まずい!」

地王「水の四天王の怒りを買ってしまう!」


勇者「……ん?」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:16:11.04 ID:gAY6tPnbo
勇者「水の四天王は、女だったはずだが?」

地王「ああ、水の大精霊で、ボン・キュッ・ボンだ」

勇者「……そういう言い方やめろ?」

地王「……穏やかで、いつも微笑みを絶やさぬ美しい女だ」


地王「だが! 私以外に手を出したら許さない、と!」

地王「そう言った時の目は、笑っていなかったのだ!」


勇者「待て待て待て待て!!」

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:21:10.00 ID:gAY6tPnbo
勇者「お前! 今のって……お前!?」

地王「護岸工事等で、奴とは行動を共にする機会が多くてな」

勇者「やめろ! それ以上聞かせるんじゃない!」

地王「まあ、時に酒宴もあるのだ」


地王「酒宴の翌朝、いつも隣で寝ているのだ」

地王「こう……幸せそうな寝顔でな?」


勇者「だから言うなってえええええ!!」

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:27:42.56 ID:gAY6tPnbo
勇者「お前! 水の四天王と良い仲だったのか!?」

地王「悪い仲ならば、そうはならんだろう」

勇者「なのに、魔王に手を出したと!?」

地王「その通りだ!」


地王「右の指に影、左の指に水が絡んできた!」

地王「もし、その二つが重なったらどうなるか……わかるな?」


勇者「やめろ! 他人事だが怖い!」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:32:07.27 ID:gAY6tPnbo
地王「しかし、考えてもみろ勇者よ!」

勇者「何をだ!?」

地王「どちらも、酔った勢いなのだ!」

勇者「かも知れんが、お前最低だな!?」


地王「だから、な?」

地王「こう……何とかならないか?」


勇者「俺に、その状況をどうしろと!?」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:37:50.25 ID:gAY6tPnbo
地王「無論、決まっているだろう!」

勇者「……一応だが、聞いてやる」

地王「俺が死なず!」

勇者「まあ、そう言うだろうな」


地王「何事も無かったように!」

地王「二人との関係が、自然消滅する様にだ!」


勇者「難易度高すぎるだろうが!!」

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:42:41.22 ID:gAY6tPnbo
地王「水の四天王だけならば、まだ何とかなったのだ!」

勇者「闇の魔王も加わり、複雑化した……と」

地王「光の勇者よ、助けてくれ!」

勇者「いや……そう言われてもだな」


地王「早急に、何とかしなくてはならんのだ!」

地王「婚約者――火の四天王にバレる前に!」


勇者「待て! 待て待て待て待て! 待て!」

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:47:49.78 ID:gAY6tPnbo
勇者「婚約者!? 火の四天王が!?」

地王「幼き頃に決められたものだがな?」

勇者「お前、婚約者が居たのに……何だお前!?」

地王「バレたら、魔王領は終わり……」


地王「……いや、案外平気かも知れん」

地王「奴は、こういう時は怒らずにションボリする性格だ」


勇者「やめろ! 心が痛い!」

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:53:21.26 ID:gAY6tPnbo
地王「奴の怒りの炎が魔王領を包むと思っていたが……」

勇者「……それこそ、炎のような性格をしているしな」

地王「うむ、火龍王の娘にして、最高の武人だ」

勇者「それが婚約者だとは……」


地王「あ、やはり駄目だな」

地王「父である火龍王が全てを焼き尽くす程怒り狂うだろう」


勇者「そりゃそうだろうな!!」

17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 21:57:56.75 ID:gAY6tPnbo
勇者「しかし、火の四天王にはまだ手を出してないんだな!?」

地王「無論! そうであれば、既にバレているだろう!」

勇者「! 婚約の解消をすれば良いんじゃないか!?」

地王「! その手があったか!」


地王「では、今度口づけを求められた時」

地王「その時に、婚約の解消を申し出ることにする」


勇者「お前それ最悪のタイミングだろう!?」

18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 22:02:33.34 ID:gAY6tPnbo
勇者「っていうか、キスしてるじゃねえか!」

地王「こう、軽くな? チュッとな?」

勇者「度合いは聞いてねえよ!」

地王「照れているのか、これ以上は結婚してから、と言ってな」


地王「……そんな女との婚約の解消を提案するとは!」

地王「勇者よ! お前は、やはり俺が見込んだ奴だ!」


勇者「やめろ! お前に見込まれたくない!」

20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 22:11:05.38 ID:gAY6tPnbo
地王「迷いは晴れた! なんと清々しい気分よ!」

勇者「お前、本当に婚約解消する気か!?」

地王「何と言えば、納得して貰えるだろうか?」

勇者「俺に聞くな! 頼むから!」


地王「……ふっ、まあ良い」

地王「お前には、勇気を授けられたからな」


勇者「俺のせいみたいな言い方をするな!」

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 22:18:11.12 ID:gAY6tPnbo
地王「まず、火の四天王との婚約を解消!」

勇者「待て待て! まとめに入るな!」

地王「そして、うまく誤魔化しつつ!」

勇者「……闇の魔王、水の四天王との関係の自然消滅を狙うと?」

地王「その通りだ!」


地王「……光の勇者よ」

地王「その時は……敵であるが、頼りにしているぞ」


勇者「……地の四天王」

勇者「お前のことは、忘れな……いや、早く忘れるよ」

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/30(火) 22:28:18.70 ID:gAY6tPnbo
  ・  ・  ・

地王「――久しぶりだな、勇者よ!」

勇者「昨日会ったばかりだろうが!……何か進展したのか?」

地王「いいや、まだだ! だが、助けてもらいたい!」

勇者「!? やめろ、言うな! 俺に助けを求めるな!」


地王「酔って、朝起きたら風の四天王がベッドに居たのだ!」

地王「薄らぼんやりと、  ちゃった記憶があるのだ!」


勇者「だから俺に言うのはやめろってえええええ!!」



おわり

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 20:33:47.97 ID:Ynza/GXfo
書きます


闇の魔王「祝福の聖女よ、其方に尋ねたい」

27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 20:38:52.54 ID:Ynza/GXfo
祝福の聖女(以下、聖女)「闇の魔王!? 何故、ここに!?」

闇の魔王(以下、魔王)「先程申したばかりだろう」

聖女「貴女と話す事など、何もありません!」

魔王「……ほう」


魔王「ならば、他を当たろう」

魔王「コイバナと言うのは、女ならば誰でも好むと聞いたからな」


聖女「詳しいいいいいいいっく!!」

28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 20:43:09.26 ID:Ynza/GXfo
聖女「コイバナ!? それは、恋バナですか!?」

魔王「うむ、そうだ」

聖女「闇の魔王である貴女が、恋をしたと!?」

魔王「それは、余にもわからぬ」


魔王「ただ、奴を想うと胸に痛みが走るのだ」

魔王「だが……それが不快ではなく、何とも心地良い」


聖女「ガチの恋バナじゃないですか!!」

29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 20:50:01.83 ID:Ynza/GXfo
聖女「だ、だけど! どうしてそれを私に!?」

魔王「其方達しか、余は知らぬ」

聖女「えっ?」

魔王「配下の者達には、見せられぬからな」


魔王「闇の魔王ともあろう者が、迷う様を」

魔王「恋など……余には無縁だと思っていた」


聖女「初恋ってことですか!!」

30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 20:55:44.31 ID:Ynza/GXfo
魔王「ふふ……其方からすれば、滑稽に見えるだろう」

聖女「いいえ! そんな事は、決してありません!」

魔王「……要らぬ気遣いは無用だ」

聖女「素敵じゃないですか! 初恋なんて!」


魔王「……祝福の聖女よ」

魔王「其方に、尋ねたい事があるのだ」


聖女「何でも聞いてください! ええ、何でもです!」

31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 21:01:21.90 ID:Ynza/GXfo
聖女「祝福の聖女の名に恥じぬよう、答えましょう!」

魔王「ふふっ……敵である其方を頼もしいと思う時が来ようとはな」

聖女「それは違います! 恋に、敵も味方もありません!」

魔王「……ならば、尋ねよう」


魔王「男とは、一度  たら興味が無くなるとは真か?」


聖女「……」

聖女「すみません、もう少しホーリーな感じの質問だと思ってました」

32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 21:06:00.21 ID:Ynza/GXfo
聖女「……ええ、と……ですね」

魔王「もし、これが真ならば……」

聖女「……ならば?」

魔王「……わからんな」


魔王「奴と、世界」

魔王「どちらを先に滅ぼすか、わからん」


聖女「世界としては良い迷惑ですよ!!」

33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 21:12:45.24 ID:Ynza/GXfo
聖女「魔王が、世界を滅ぼす理由が男で良いんですか!?」

魔王「構わぬ」

聖女「構いますよ! どうしてそこまで!?」

魔王「奴が、奪ったからだ」


魔王「余の心……そして、純潔を」

魔王「故に、滅ぼすしかあるまい?」


聖女「無いですよ! 何言ってるんですか!?」

34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 21:19:39.99 ID:Ynza/GXfo
聖女「それに、興味を失ったって決まった訳じゃないでしょう!?」

魔王「……」

聖女「貴女の勘違いかも知れないじゃないですか!」

魔王「……ならば、何故」


魔王「何故! 奴は、余に何も言って来ない!」

魔王「それが気にかかり、何も手に付かん!」


聖女「……あの、急に可愛いのやめてくれません?」

35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 21:26:10.39 ID:Ynza/GXfo
聖女「ええっと……お相手は、配下の人ですよね?」

魔王「……うむ」

聖女「相手が貴女――闇の魔王だから、恐れ多いとか……」

魔王「……あの夜、奴は言った」


魔王「――魔王様、お忘れですか?」

魔王「――俺は男で、貴女は女だ」

魔王「――そして、貴女の配下に臆病者は居ない」


魔王「……とな」


聖女「くっ……! 他人事なのに、キュンときた!」

36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 21:34:38.14 ID:Ynza/GXfo
魔王「奴は、余の金色の魔眼を真っ直ぐに見て言った」

聖女「そっ、それから!? それから!?」

魔王「力強くだが、優しく抱き寄せられ……」

聖女「からの!?」


魔王「……呪文を唱えるのをお互い封じ合った」

魔王「気づけば……余は、自ら魔眼を封じていた」


聖女「キャ――ッ!/// キャ――ッ!///」

37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 21:47:15.85 ID:Ynza/GXfo
聖女「何ですかそれ!/// っはー!/// 何なんですか!///」

魔王「あの夜の、ほんの一部だが」

聖女「これ以上は!/// これ以上は、もう!///」

魔王「……ふむ、そうか」


魔王「……祝福の聖女よ」

魔王「もう少しだけ、続きを話しても良いか?」


聖女「惚気ないでくださいよ!/// もう!///」

38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 21:52:20.37 ID:Ynza/GXfo
聖女「んー、んー、あー……ゴホンッ!」

魔王「どうした」

聖女「……大丈夫です!」

魔王「何?」


聖女「その方の、貴女に対する愛は本物です!」

聖女「この私――祝福の聖女が保証します!」


魔王「……」

39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 21:57:26.63 ID:Ynza/GXfo
魔王「……何故、奴は何も言ってこない?」

聖女「魔王、貴女は……その方には、何か?」

魔王「いや……」

聖女「……それが答えですよ」


聖女「その方も不安に……いえ、もしかしたら……」

聖女「ふふっ! 照れているのかも、知れませんよ?」


魔王「……何?」

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 22:03:55.24 ID:Ynza/GXfo
魔王「奴が……照れている、だと?」

聖女「はい、とても情熱的な口説き文句でしたし」

魔王「馬鹿な、有り得ん」

聖女「有り得ない事が起きるのが、恋というものです」


聖女「闇の魔王よ、貴女に尋ねます」

聖女「貴女の配下に――」


聖女「主である貴女に手を出し、それを何とも思わない」


聖女「……そんな、恥知らずは居ますか?」


魔王「……!」

41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 22:10:46.60 ID:Ynza/GXfo
魔王「……ふふっ、奴め……そういう事だったか」

聖女「けれど、女性を不安にさせるものではないですけどね!」

魔王「構わん」

聖女「えっ? 良いんですか?」


魔王「奴が、余を想い悩んでいるとわかったのだ」

魔王「その悩み苦しむ姿を見るも、また一興というもの」


聖女「……うふふっ! 意地悪ですね!」

42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 22:18:17.20 ID:Ynza/GXfo
魔王「だが、徒に苦しみを与える訳にもいくまい」

聖女「それじゃあ……どうするんですか?」

魔王「闇の魔力で影を操り、奴の指を捕らえるとしよう」

聖女「えっと……それが、何か?」


魔王「余の右の小指と、奴の右の小指を繋ぎ、教えるのだ」

魔王「逃げられない運命だ、とな」


聖女「……不意打ちはやめてくださいよぉ!///」

43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 22:23:15.49 ID:Ynza/GXfo
魔王「しかし……其方には、世話になったな」

聖女「愛の女神の祝福を受けた身として、当然の事をしたまでです」

魔王「いや、それでは余の気がすまぬ」

聖女「……そうですね、でしたら――」


聖女「進展があったら、教えてくださいね?」


魔王「……ふっ、良かろう」

魔王「闇の魔王の名に於いて、約束しよう!」


聖女「……それでは」

聖女「祝福の聖女より、貴女の恋に祝福を!」

44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/10/31(水) 22:34:39.19 ID:Ynza/GXfo
  ・  ・  ・

聖女「あぁ……良い事をした後は、本当に清々しい気分です!」

聖女「……ん?」

聖女「この、魔力は――」


水の四天王「――久しぶりですわね、祝福の聖女」


聖女「あっ、やっぱり!」

聖女「あれから、どうなったんですか?」


聖女「以前から相談されてる、同僚の方との恋の行方は!」



おわり

51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 19:53:41.37 ID:slMWXJpBo
書きます


火の四天王「剣の乙女よ、お前と話がしたい」

52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 19:57:28.65 ID:slMWXJpBo
剣の乙女(以下、乙女)「火の四天王が、話し合い?」

火の四天王(以下、火王)「お前と私は……少し、似ているからな」

乙女「そうかしら? それで、話って?」

火王「……ああ」


火王「キスしようとした時、相手が何か言いたげだったら……」

火王「……お前なら、どうする?」


乙女「……」

乙女「うん」

53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 19:59:38.61 ID:slMWXJpBo
乙女「うん、何が? 何て?」

火王「何だ、聞こえなかったか?」

乙女「ううん? 聞こえてたわよ?」

火王「……もう一度、聞く」


火王「キスする時、相手が何か考え事をしていたら……」

火王「……お前ならば、どうする?」


乙女「……」

乙女「はい」

54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:03:14.69 ID:slMWXJpBo
乙女「キスって……切り捨てる、略してキス?」

火王「何だ? まさか、キスを知らないか?」

乙女「いや、そうじゃないけど……」

火王「……ならば、三度聞く」


火王「キスする時、婚約者の様子が普段と違ったら……」

火王「……剣の乙女のお前ならば、どうする?」


乙女「……」

乙女「はあ、婚約者」

55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:08:31.99 ID:slMWXJpBo
火王「何分、剣と将の道以外には疎くてな」

乙女「なるほどね」

火王「こういった時、どうすれば良いものか、な」

乙女「はー……はー、はー、はー」


乙女「貴女は、聞こうと言うのね?」

乙女「ファーストキスもまだの私に、それを聞くのね?」


火王「……」

火王「えっ?」

56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:12:08.48 ID:slMWXJpBo
火王「そう……なのか?」

乙女「そうだけど?」

火王「その……す、すまん」

乙女「あらあら、まあまあ」


乙女「剣と将の道以外に疎い!?」

乙女「馬鹿にしてるの!? 婚約者が居るのに!?」


火王「す、すまん! な、何だかすまん!」

57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:16:04.51 ID:slMWXJpBo
乙女「ねえ、どうして私に聞いたのかしら?」

火王「お、お前は、その……女の私から見ても美しいからだ」

乙女「うん、それで?」

火王「それに……人間は、お前位の年齢ならば」


乙女「ならば、何だって言うの!? ねえ、何!?」

乙女「静の剣と、動の剣の道しか歩いて来なかったけど!?」


火王「……」

火王「せ、静の剣だけでなく……動の剣も使えるのだな!」

58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:18:50.79 ID:slMWXJpBo
乙女「急に来て、何? えっ、婚約者とキスしてるって自慢?」

火王「きっ、キスだけ! それも、チュッとだけだ!」

乙女「……」

火王「……」


乙女「……もし、今の言葉に偽りがあれば」

乙女「私は、私の全てを以て貴女を斬るわ」


火王「……」

59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:23:50.77 ID:slMWXJpBo
乙女「チュッとなら、セーフ……まだ、私達は対等……!」

火王「それ以上は、結婚してからと……な」

乙女「未婚だから、セーフ……まだ、私達は対等……!」

火王「で、では、私は帰――」


乙女「待ちなさい」

乙女「まだ、話は終わってないでしょう?」


火王「……」

60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:27:25.96 ID:slMWXJpBo
乙女「それで、何て言ったかしら?」

火王「こ、婚約者が……キスする時、何か言いたげでな」

乙女「今まで、チュッとしかしてこなかったのよね?」

火王「それは……結婚前ならば、当然だろう」


乙女「そんな訳ないでしょ!?」

乙女「ねえ、何!? 貴女はんんんああああああ!?」


火王「頼む! せめて! せめて、人の言葉で!」

61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:32:18.34 ID:slMWXJpBo
乙女「貴女は! チュッとしかさせてこなかったのよね!?」

火王「あ、ああ……そうだが」

乙女「馬鹿じゃないの!? ねえ、馬鹿じゃないの!?」

火王「なっ!? この私を愚弄するか!」


乙女「ディープなキッスをしたがってるのよ!」

乙女「貴女、そんな事もわからないの!?」


火王「でぃっ、ディープな……キッス!?///」

62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:37:14.33 ID:slMWXJpBo
火王「それは、お前……し、舌を……///」

乙女「絡めてくんずほぐれつさせるアレよ!」

火王「あ……ぁぅぁ///」

乙女「何照れてるの!? ぶった斬るわよ!」


火王「……そ、そうだとしても!」

火王「私には、ディープなキッスの仕方がわからん!」


乙女「私だって知らないわよ! 知りたいわよ!」

64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:43:47.84 ID:slMWXJpBo
乙女「むしろ、キスする時って呼吸はどうしてるの!?」

火王「えっ? チュッとだから、こう……止めている」

乙女「ディープの時は!? ねえ、どうするつもり!?」

火王「……わ、わからん!/// 私には、わからん!///」


火王「想像しただけで、全身から炎が溢れそうだ!///」

火王「……出る!(ボワッ)/// 絶対、火のブレスが出てしまう!(ボワッ)///」


乙女「想像だけで火のブレス出てるじゃないの!」

65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:48:35.17 ID:slMWXJpBo
火王「! だから……父上は、チュッとする以上を禁じたのか!」

乙女「貴女の父上って……火龍王よね?」

火王「ああ、そうだ……それ以上は、結婚してから、とな」

乙女「……これは、私の推測だけれど」


乙女「結婚したら――貴女と相手に加護が与えられて……」

乙女「……火のブレスが出ない、もしくは平気になるんじゃない?」


火王「!」

火王「それだ……そうに違いない!」

66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 20:54:47.63 ID:slMWXJpBo
火王「そうでなければ……ディープなキッスなど夢のまた夢!」

乙女「……ねえ」

火王「む、何だ?」

乙女「貴女の婚約者は……それを知ったんじゃないかしら」


乙女「……そうだとしたら、全てに説明がつくわ」

乙女「今までチュッで良かったのに、急に何か言いたげになったのは――」


火王「――……プロポーズ……?」


乙女・火王「……」

67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 21:05:19.15 ID:slMWXJpBo
火王「いや、そんな……まさか」

乙女「違うと言い切れるかしら?」

火王「だ、だがっ!」


火王「私の顔の左側は、龍の鱗に覆われている!」

火王「幼き頃より、陰で醜いと言われているのだぞ!?」


乙女「私は、女の貴女から見ても美しいみたいね」

乙女「けれど、ファーストキスもまだよ」


火王「……」


乙女「何か言って頂戴」

68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 21:12:33.10 ID:slMWXJpBo
乙女「そもそも、貴女の婚約者はその顔について?」

火王「か……顔というか、だな?」

乙女「うん」

火王「幼き頃より、奴は……奴だけは……」


火王「か……可愛い、と///」

火王「この私をだぞ?/// か、可愛いと言うのだ……!///」


乙女「……」

乙女「うん」

69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 21:19:16.03 ID:slMWXJpBo
火王「そう言う時の笑みは、偽りなく真っ直ぐで……///」

乙女「はい」

火王「や、奴が……?(ボワッ)/// プロポーズ……?(ボワッ)///」

乙女「……っふ」


乙女「魔王軍幹部! 火の四天王ぉぉぉおおおああ!!」

乙女「剣の乙女の、この剣はぁ! んんあああああ!!」

乙女「うううううううう!! ほあああああああ!!」


火王「!? どっ、どうした!?」

70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 21:29:42.62 ID:slMWXJpBo
乙女「これ以上、好きにはさせないわ!」

火王「剣の乙女!?」

乙女「そもそも、私達は相容れぬ運命!」

火王「いや、式には招待す――」


乙女「全て、断ち切ってあげるわ!」

乙女「剣の乙女の、秘奥を以て!」


火王「……そうは行かんぞ!」

火王「火の四天王の、燃え盛る炎を消せると思うな!」

71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 21:36:44.76 ID:slMWXJpBo
  ・  ・  ・

乙女「……ちいっ! 逃したか……!」


風の四天王(以下、風王)「――おやおや、穏やかじゃないね」


乙女「あっ、貴方は……風の四天王!?」

風王「美しい顔に、そんな表情は似合わないよ」

乙女「っ!?///……な、何をしに来た!?///」


風王「僕は、君に会いに来たのさ」


乙女「……」

乙女「えっ?」

74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/01(木) 21:50:04.43 ID:slMWXJpBo
乙女「わ……私に何の用かしら?///」

風王「君は、僕から見て魅力的な女性だからね」

乙女「みりょっ!?///」

風王「そんな君に、色々と教えて貰いたいんだ」

乙女「な……何を……?///」


風王「長らく、男のフリをしてきたからね」


乙女「はい///」

乙女「…………はい?」


風王「彼の……男の心を射止める秘訣を教えて欲しい」


乙女「……」

乙女「とりあえず、奥義を使うわ」



おわり

78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 20:53:48.06 ID:nIYSmejao
書きます


地の四天王「光の勇者よ! 雌雄を決する時が来た!」

79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 20:59:00.52 ID:nIYSmejao
地の四天王(以下、地王)「ふはは、覚悟は良いか!」

光の勇者(以下、勇者)「地の四天王!? くっ、本気なのか!?」

地王「言うまでも無い! 俺には時間がないのだ!」

勇者「待て! 一体、何があった!?」


地王「闇の魔王様、水の四天王、風の四天王……」

地王「酔って  ちゃった事がバレている気がする!」


勇者「それは時間が無いな!?」

80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:02:54.41 ID:nIYSmejao
勇者「だが、それならどうしてお前は生きてるんだ!?」

地王「皆が、力を高めているからだ!」

勇者「!? お前を殺すためにか!?」

地王「いや……そうではなくな?」


地王「今晩、俺を除く四天王の三人と魔王様でな」

地王「……女子会をやるそうなのだ」


勇者「高めてるのは女子力じゃねえか!!」

81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:06:53.97 ID:nIYSmejao
地王「風の四天王と酔って  ちゃったのは話しただろう」

勇者「……ああ、サラッと言う事じゃないけどな」

地王「それでな……奴め……!」

勇者「風の四天王が……バラしたのか」


地王「男装をやめ! なんと、スカートを履いてきたのだ!」

地王「スラリと伸びた足が、まだ目に焼き付いているわ!」


勇者「だから、どうした!?」

82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:11:45.48 ID:nIYSmejao
地王「どうした、だと? 無論、褒めた!」

勇者「魔王に、火と水の四天王も居た時にか!?」

地王「会議の場だ、居るに決まっているだろう」

勇者「お前、なんっ……!? 何だ!?」


地王「良いものは、キチンと良いと褒める!」

地王「それが出来ぬ程、俺は狭量では無いわ!」


勇者「時と場合ってもんがあるだろうが!!」

83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:17:14.21 ID:nIYSmejao
地王「まあ……ポロッと言った所は、ある」

勇者「だろうな!」

地王「だが、問題はその後なのだ」

勇者「……やめろ、聞きたくない」


地王「見ろ、右手の小指と、左手の薬指の痣を」

地王「それと、後ろ髪が少し焦げている」


勇者「だからって見せるなよなあああああ!!」

85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:20:59.01 ID:nIYSmejao
地王「それから、あれよあれよと盛り上がり……」

勇者「まあ……風の四天王は、今まで男の格好をしてたしな」

地王「ああ……女だけで集まって、となっても……」

勇者「……おかしくないな」


地王「その時! チラリと!」

地王「チラリと、全員が俺の事を見たのだ!」


勇者「……」

86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:25:15.73 ID:nIYSmejao
勇者「全員、お前との事を話すだろうな……」

地王「……バレている気がすると言っただろう?」

勇者「!……そう言えば」

地王「……最近、な」


地王「――本当の気持ちはわかっている」

地王「そんな言葉を全員に言われたのだ」


勇者「……!」

87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:31:45.82 ID:nIYSmejao
勇者「……待て、他人事なのに恐怖で吐きそうだ」

地王「光の勇者よ、俺の本当の気持ちとは何だ!?」

勇者「頼むから! ここで自分探しをするな!」

地王「わからん……何が、わかられているのだ!」


地王「俺は……俺は、恐ろしい!」

地王「何故! 何故、俺は酔ったら  ちゃうのだ!」


勇者「俺はお前が酒をやめないのが恐ろしいよ!」

88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:36:26.89 ID:nIYSmejao
地王「……女子会で話されるのは、俺の事だろう」

勇者「バレてるにせよ、バレてないにせよ……」

地王「……俺には、地獄が待っているだろう」

勇者「まあ……当然と言えば、当然の報いだな」


地王「――時に、光の勇者よ」

地王「お前は、祝福の聖女と剣の乙女とは、どうなのだ?」


勇者「……」

勇者「はっ!?」

89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:39:21.08 ID:nIYSmejao
勇者「どう、って……何だよ、急に」

地王「どちらか、もしくは両方と  ちゃってるのか?」

勇者「そんな訳があるか!」

地王「何!? それは本当か!?」


勇者「当たり前だろう!」

勇者「あの二人は、大切な旅の仲間だ!」


地王「……ふむ」

90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:43:06.64 ID:nIYSmejao
地王「祝福の聖女に、不満でもあるのか?」

勇者「いや……可愛いし性格も良い、守ってあげたくなる子だ」

地王「俺の見た所では、お前を慕っているぞ?」

勇者「まあ……それは、俺もわかっているが……」


勇者「……その、何だ」

勇者「宗教関係の子は……な? わかるだろ?」


地王「……ふっ、それでこそ俺の見込んだ男よ」

91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:49:14.86 ID:nIYSmejao
勇者「まあ、俺も男だからな……」

地王「ああ、我慢出来ぬ時もあっただろう」

勇者「でもな……あの子は、女神に最も愛されてるんだ」

地王「そうでなければ、祝福の聖女ではないしな」


勇者「良い雰囲気になった時は特に、な」

勇者「こう……俺も、視線を感じるんだ」


地王「見守っているのだなぁ」

93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 21:54:40.44 ID:nIYSmejao
地王「ならば、剣の乙女は? どこが不満だ」

勇者「まあ……綺麗だし優しいし、尊敬出来る人だ」

地王「うむ、それに強い」

勇者「……本人には、絶対に言うなよ?」


勇者「あれだけ好条件が揃ってて……キスもまだらしい」

勇者「これは、何か恐ろしい闇が潜んでいるんじゃないか、とな」


地王「……ふっ、勇気と蛮勇を履き違えぬ思慮深さだ」

94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 22:03:24.39 ID:nIYSmejao
地王「しかし、闇を払うのが光の勇者だろう」

勇者「考えてもみろ? 闇を……はい、払いました!」

地王「うむ! 天晴!」

勇者「そこで目に入るのは、俺とあの人の年齢差だ!」


勇者「今は! 10年、20年は良い!……だが! 40年、50年後!」

勇者「闇を払った未来に、希望が待ち受けているとは思えないんだ!」


地王「勇者らしからぬ言葉よなぁ」

95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 22:11:47.40 ID:nIYSmejao
地王「しかし……ならば、遠慮は要らんようだな」

勇者「……本気、みたいだな」

地王「ああ、その通りだ」


勇者「俺の命を手土産に有耶無耶にしよう……って所か」


地王「? 何を言っているのだ?」

地王「お前の首を持って行っても、俺の首が隣に並ぶだけだろう」


勇者「……」

勇者「はっ?」

96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 22:17:19.54 ID:nIYSmejao
勇者「ま……待て待て!」

地王「む? どうした?」

勇者「地の四天王、お前の目的は何だ!?」

地王「考えも見ろ、光の勇者よ」


地王「光の勇者という、リーダー」

地王「祝福の聖女という、回復後衛」

地王「剣の乙女という、物理前衛」


勇者「……おい」


地王「あと一人居たら、もっとバランスが良くなるな?」


勇者「おぉい!?」

99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 22:23:59.07 ID:nIYSmejao
勇者「お前、何言ってんの!?」

地王「安心しろ、俺の配下の者は優秀だ」

勇者「お前の領地の心配なんか微塵もしてねえよ!」

地王「ほとぼりが冷めるまでだ! な? なっ?」


地王「それに、書き置きは残してきた」

地王「俺より強いやつに会いに行く……とな」

地王「これで、俺がどこへ行ったかわかるまい!」


勇者「滅茶苦茶相手が限られてるじゃねえか!!」

100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 22:29:51.31 ID:nIYSmejao
地王「お前達三人の近くなら、聖なる力でバレにくいのだ!」

勇者「駄目だ! 絶対に駄目だ!」

地王「俺を倒した事にしても良いぞ? おっ、それが良いな!?」

勇者「魔王と四天王三人が本気で俺を殺しに来るわ!」


地王「情けないぞ、光の勇者よ!」

地王「目の前の命を救えずして、世界が救えると思っているのか!」


勇者「救われる側が言う台詞じゃねえよ!!」

101: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 22:37:51.16 ID:nIYSmejao
勇者「そもそも、お前の体格なら一発でバレるわ!」

地王「確かに、この俺の肉体は鋼の様に鍛え抜かれているな!」

勇者「バレなかったとしても、二人が嫌がる!」

地王「確かに、この俺のセクシーさは色々と混乱を招くだろうな!」


地王「だからこそ! 光の勇者よ!」

地王「――雌雄を決しに来たのだ!」


勇者「……」

勇者「は?」

103: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/02(金) 22:49:23.26 ID:nIYSmejao
地王「この俺は、大地を――鉱物すら自在に操る!」

地王「戦いの時には、己が肉体をも鉱物と化すのだ!」

地王「――つまり!」

パァァ……


勇者「……おい……おい!!」


……ァァッ

地の四天王な美少女「――性別も、この通りなのだ!」

地の四天王な美少女「壁でも魔法後衛でも、任せて貰おう!」


勇者「……雌雄って……うん」

勇者「……」


勇者「誰でも良いから、助けてくれ!!」



おわり

109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 11:23:45.83 ID:NMxzUlwWo
書きます


水の四天王「祝福の聖女よ、お願いがありますわ」

110: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 11:28:00.66 ID:NMxzUlwWo
祝福の聖女(以下、聖女)「水の四天王の貴女が……お願いですか?」

水の四天王(以下、水王)「ええ、貴女にしか頼めないのです」

聖女「……お断りします」

水王「何ですって?」


聖女「貴女のお願い事は、私の信仰が許しません!」

聖女「今の貴女は――状態異常(儚)にかかっています!」


水王(儚)「……」

111: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 11:31:44.55 ID:NMxzUlwWo
水王(儚)「……あまり、私の心を覗かないでくださいまし」

聖女「落ち込んでるのが丸わかりなだけです!」

水王(儚)「ふふっ……貴女は、何でもわかってしまうのね」

聖女「誰だって、今の貴女を見ればわかります!」


水王「――ふっ!」

水王(儚)「……これで、どうかしら?」


聖女「あの……すぐ、儚い感じに戻りましたよ」

112: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 11:35:40.88 ID:NMxzUlwWo
聖女「一体、何があったんですか?」

水王(儚)「……どこかへ、行ってしまわれたのです」

聖女「それって……もしかして」

水王(儚)「ええ……貴女にお話していた、彼が」


水王(儚)「――俺より強いやつに会いに行く」

水王(儚)「……そんな、書き置きを残して」


聖女「何ですか!? その、馬鹿みたいな理由は!?」

113: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 11:38:58.04 ID:NMxzUlwWo
水王(儚)「……私にも、よくわかりませんわ」

聖女「私だって、全然わかりませんよ!」

水王(儚)「ただ……彼は、私の前から消えてしまった」

聖女「無責任にも程がありますよ!」


水王(儚)「だから、祝福の聖女よ……」

水王(儚)「貴女の力で……彼に関する記憶を封じて欲しいのです」


聖女「!?」

114: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 11:42:44.57 ID:NMxzUlwWo
聖女「き……記憶を封じる!?」

水王(儚)「ええ、お願いしますわ」

聖女「貴女が望んでいるなら、出来ると思いますけど……」

水王(儚)「……私は、魔王軍幹部、水の四天王」


水王(儚)「果たさねばならぬ役目があります」

水王(儚)「思い悩み、立ち止まっている暇は……ありませんの」


聖女「……」

115: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 11:46:50.38 ID:NMxzUlwWo
聖女「記憶を封じたら、好きだって気持ちも忘れちゃうんですよ」

水王(儚)「ええ、そうでしょうね」

聖女「貴女は、本当にそれで良いんですか?」

水王(儚)「……ほんの少しだけ、昔話をしましょうか」


水王(儚)「私は……彼をとても嫌っていたのです」

水王(儚)「それこそ、視界に入れるのも嫌でしたのよ?」


聖女「……えっ?」

116: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 11:54:14.76 ID:NMxzUlwWo
聖女「そう……だったんですか?」

水王(儚)「……野蛮で粗野、優雅さの欠片も無い愚か者」

聖女「……散々な評価だったんですね」

水王(儚)「私は水の大精霊、当然でしょう?」


水王(儚)「けれど、轡を並べて事に臨んでいく内に……」

水王(儚)「ゆっくりと、ゆっくりと……それが変わっていったのです」


聖女「……」

117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 12:00:47.76 ID:NMxzUlwWo
水王(儚)「当然、何度も衝突はしましたわ」

聖女「けれど……二人は、それを乗り越えてきた」


水王(儚)「……私の案と、彼の案」

水王(儚)「その二つを合わせて、大きな成功を収めた時」


聖女「……」


水王「……――ふふっ」

水王「あの笑い合った時、私は完全に恋に落ちたのでしょうね」


聖女「――!」

118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 12:07:21.61 ID:NMxzUlwWo
水王「情緒など、露程も感じない始まりでしょう?」

聖女「……はい、そう思います」

水王「憧れていたロマンスとは、程遠いものですわ」

聖女「……」


水王(儚)「……だから」

水王(儚)「彼が姿を消した今、その記憶が消えたとしても――」


聖女「――だからこそ!」

聖女「絶対に、忘れるなんて駄目です!」


水王(儚)「……祝福の聖女?」

119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 12:13:19.89 ID:NMxzUlwWo
聖女「何なんですか!? ふざけないでください!」

水王(儚)「……何故、貴女は怒っているの?」


聖女「私は、愛の女神の加護を受けた、祝福の聖女です!」

聖女「その私に……!」


聖女「――幸せな日々の記憶を封じろなど!」

聖女「――愛する人への想いを封じろなど!」


聖女「……出来るわけがないじゃないですか!」


水王(儚)「……」

120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 12:16:47.51 ID:NMxzUlwWo
聖女「むしろ、その逆!」

水王(儚)「……逆?」

聖女「貴女の、愛を踏みにじる行為を止めます!」

水王(儚)「……」


聖女「貴女自身を敵に回そうとも!」

聖女「私は、想い人の事を語る貴女の微笑みの味方です!」


水王(儚)「っ……!」

121: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 12:21:26.83 ID:NMxzUlwWo
水王(儚)「けれど……辛いのです! 苦しいのです!」

聖女「言い訳をして、考えることをやめないでください!」

水王(儚)「私に! 何を考えろと言うのですか!?」

聖女「そんなの、決まってるじゃないですか!」


聖女「――俺より強いやつに会いに行く」

聖女「……その書き置きの、意味をですよ!」


水王(儚)「あの書き置きの……意味……?」

122: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 12:27:32.34 ID:NMxzUlwWo
水王(儚)「……私は――」

水王(儚)「去る時に、ただ何となくそれらしい理由を書いた」

水王(儚)「――そう、考えていたのですが……」


聖女「……自分より、強い相手に会いに行く」

聖女「そんなの……そんな理由なんて、一つだけじゃないですか」


水王(儚)「……お、教えてくださいまし!」

水王(儚)「その理由とは、何なのでしょうか!?」


聖女「……強くなるためですよ」


水王(儚)「っ――!」

124: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 12:34:28.96 ID:NMxzUlwWo
水王(儚)「つ……強くなるため……?」

聖女「己の殻を破るには、それが一番ですから」

水王(儚)「そんなっ! 何故!?」

聖女「……貴女です」


聖女「水の四天王である貴女を――」

聖女「――守れる程の力を得るためです!」


水王「っ――!!」

125: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 12:43:21.61 ID:NMxzUlwWo
水王「ま、まさか……そんな……」

聖女「そうでなければ、何も残さずに去るでしょう」

水王「け、けれど! 私はそれを望んではいませんわ!」

聖女「……水の四天王」


聖女「想い人が、強くなるという理由で貴女の元を去った」

聖女「……それは、確かに貴女の望みではないでしょう」

聖女「でも、貴女の今の表情は――」


聖女「それこそが、真実だと疑っていないと、私に告げています」


水王「……ふふっ」

水王「……ええ、その通りですわ」

126: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 12:53:23.99 ID:NMxzUlwWo
水王「私は……彼をいつの間にか侮っていたのかも知れません」

聖女「侮っていた……ですか?」

水王「恋という名の濃霧が、見失わせてしまっていた……」


水王「彼は馬鹿……本当に、大馬鹿者ですわ」

水王「その大馬鹿者が、思い描く未来」

水王「後ろでも、隣でも無く……前に立とうとする、決意」

水王「……うふふっ、本当に……馬鹿ですわね」


聖女「――水の四天王」

聖女「私にお願いって、何ですか?」


水王「――祝福の聖女」

水王「そんなものは、忘れてしまいましたわ」

127: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 13:04:57.94 ID:NMxzUlwWo
  ・  ・  ・

聖女「……本当に、男の人って馬鹿なんですから」

聖女「でも……勇者様も、そういう所があるし……」

聖女「……///」

聖女「愛の女神様、私の恋も見守っててください……!///」


闇の魔王(儚)「……ゅ……ぃ……ょ……願ぃ……」


聖女「……闇の魔王!?」

聖女「一体、何が……っていうか、声小さい!!」


聖女「あああ! 泣いてないで、私に話してみてください!!」



おわり

132: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 20:27:59.04 ID:NMxzUlwWo
書きます


風の四天王「剣の乙女、君に何があった?」

133: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 20:31:38.14 ID:NMxzUlwWo
剣の乙女(以下、乙女)「急に現れておいて、いきなり質問?」

風の四天王(以下、風王)「いや、そんなつもりは無かったんだが……」

乙女「あら、そんなに私が変わったように見える?」

風王「……そうだね、まるで別人だ」


乙女「……愛する人が――彼女が出来た」

乙女「私が変わったのは、それが理由よ」


風王「成る程、そういう事……」

風王「…………えっ?」

135: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 20:35:47.56 ID:NMxzUlwWo
風王「今、何て言ったんだい?」

乙女「聞こえなかったのかしら」

風王「ええ、と……勇者に、彼女が出来たのかな?」

乙女「違うわ」


乙女「この私、剣の乙女に――彼女が出来たのよ」

乙女「……全く、勘違いしないで頂戴」


風王「……いや、待ってくれ」

風王「えっ? 君は女で……えっ、彼女?」

136: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 20:40:29.39 ID:NMxzUlwWo
乙女「それで? 私に、何の用かしら?」

風王「いや、ちょっと……その前に」

乙女「どうしたの、不思議な顔をして」

風王「君は……恋愛対象が、女性だったのかい?」


乙女「運命の相手が、たまたま女だっただけ」

乙女「……私は、彼女に会うために生まれてきたのよ」


風王「……」

風王「そ、そう……なんだね」

138: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 20:45:10.94 ID:NMxzUlwWo
乙女「彼女の事が知りたい? 良いわ、教えてあげる」

風王「口を挟む暇すら与えてくれないのかい」

乙女「私が、恋の相手に望んでいたものは、唯一つ」

風王「……」


乙女「この私よりも、強い事よ」

乙女「彼女は……新しい仲間の彼女は、本当に強いわ」


風王「……一つだけど、非常に厳しい条件だったんだね」

139: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 20:50:07.08 ID:NMxzUlwWo
乙女「私の剣戟の隙間を縫うように、攻撃魔法を飛ばし……」

風王「それは……本当に、優れた使い手だね」

乙女「時に前に出て盾となり、敵に大きな隙を作り出す……」

風王「それは……敵としては、非常に厄介だね」


乙女「ええ、本当に頼もしい仲間よ」

乙女「彼女と出会えた運命に……感謝しないとね」


風王「……敵の僕としては、素直に祝福出来ないな」

141: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 20:56:06.11 ID:NMxzUlwWo
乙女「けれど、突然現れても……信用出来ないでしょう?」

風王「まあ、そうだろうね」

乙女「だから、年長者としてお酒の席を設けたの」

風王「お酒が入れば、本音も出るだろうしね」


乙女「そうして、飲んでいたらね?」

乙女「――お前は、相手に恵まれていなかっただけだ」

乙女「――出会って来た男は、見る目が無かったらしい」

乙女「……ですって! ふふっ! ねえ、聞いてる?」


風王「……うん、まあ、聞いてるよ」

143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 21:04:41.93 ID:NMxzUlwWo
乙女「それでね? 彼女ったら、もうっ!」

風王「……うん」

乙女「あれよあれよと、酒場の上の宿を取ってね?」

風王「……うん」


乙女「……まあ、そんな感じで……ね?」

乙女「私は……女の喜びを知ったの」

乙女「やっ、やだもうっ!/// 何を言わせるのよ!///」


風王「君が言い出したんだけどね?」

風王「それに、言いにくいんだけど……」

風王「……君のそれは、知ったかぶりだと思うよ」

144: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 21:08:22.83 ID:NMxzUlwWo
乙女「いいえ、私はそこで己の弱さを知ったわ」

風王「己の弱さ?」

乙女「ええ、そうよ……私自身ですら、知らなかったの」

風王「剣の乙女である、君が?」


乙女「この……右の鎖骨の、このライン」

乙女「ここを舌でツウッとされると、なんだか凄いのよ」


風王「ねえ、赤裸々すぎやしないかい?」

145: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 21:12:01.68 ID:NMxzUlwWo
風王「けれど……それが、君が変わった理由か」

乙女「そう、愛が私を変えたのよ」

風王「……愛、か」

乙女「私は、愛を知って――強くなった」


乙女「……けれど、風の四天王」

乙女「貴女は、弱くなったわね」


風王「……はは、これは手厳しいね」

146: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 21:17:54.45 ID:NMxzUlwWo
乙女「今日の貴女は、どうしてまた男装をしてるのかしら?」

風王「……女の格好をする理由が無くなっただけさ」

乙女「ふぅん? そうなの」

風王「それに、僕にはこっちの格好の方が似合うだろう?」


乙女「いいえ、むしろ滑稽だわ」

乙女「今の貴女は、女としての自分に自信が持てず……」

乙女「踏み出した一歩を引っ込めただけだもの」


風王「……君は、本当に厳しいな」

147: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 21:28:35.33 ID:NMxzUlwWo
乙女「今の貴女なら、目をつぶっても勝てるわ」

風王「……へえ、試してみるかい?」

乙女「死にたければ、かかって来なさい」

風王「っ……! 言うじゃないか!」


乙女「ええ、見るに堪えないもの」

乙女「敵とは言え、何かから逃げている貴女を見るのは」

乙女「……ああ、臆病風でスカートがめくれるから、ズボンをはいてるのね?」


風王「……!」

148: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 21:34:24.43 ID:NMxzUlwWo
風王「随分と……舌が回るようになったじゃないか」

乙女「彼女の 技に比べれば、大したことは無いわ」

風王「……急に惚気ないでくれるかい?」

乙女「貴女が戦う気が無いってわかったから……つい、ね」


風王「……確かに、君の言う通りだ」

風王「今の僕は……本当に、弱い」


乙女「やっぱり、自覚はあったのね」

149: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 21:41:06.80 ID:NMxzUlwWo
風王「男など……そんな風に見下していた僕がだ」

乙女「……」

風王「一人の男が居なくなってしまっただけで、ね」

乙女「違うわ」


乙女「性別なんて……関係の無いわ」

乙女「男だから? 女だから?……そんなのは、些細な事よ」

乙女「愛する、求めている人が消えてしまって、悲しい」

乙女「……それだけでしょう?」


風王「……」

150: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 21:46:52.82 ID:NMxzUlwWo
風王「君は……何か、知っているのかい?」

乙女「いいえ、何も。けれど、推測は出来る」

風王「……」

乙女「フラれたの? それとも、死んだのかしら?」


風王「……忽然と、姿を消してしまったんだ」

風王「僕が、スカートをはいて行った……その夜にね」


乙女「……馬鹿馬鹿しい」

151: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 21:51:13.38 ID:NMxzUlwWo
乙女「それで、また男装をするようになったの?」

風王「……言いたくないな」

乙女「じゃあ、言わせて貰うわ」

風王「……」


乙女「貴女が女の格好をして、男装をやめた事」

乙女「それが、何かのきっかけになったと思ってるでしょう?」

乙女「……そんな筈、有るわけ無いでしょう!」


風王「……」

152: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 21:56:15.00 ID:NMxzUlwWo
風王「……けれど、変わった事と言えば」

乙女「それ以外に無い、とでも?」

風王「……その通りだよ」

乙女「……あのねぇ!」


乙女「自信があるのか無いのか、ハッキリしなさいよ!」

乙女「貴女が、男の格好をしたら、その男は戻ってくるの?」

乙女「……ああもう! イライラさせないで頂戴!」


風王「……」

153: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 22:01:56.78 ID:NMxzUlwWo
風王「……だったら、僕はどうすれば良いんだ!」

乙女「そんなの、私が知るわけないでしょう」

風王「ああ、そうだろうね! 君は、僕の敵だから!」

乙女「ええ、だからこそ……私は知っているわ」


乙女「風の四天王」

乙女「――貴女は、探しものをするのが得意だ、って」

乙女「それこそ……私の知らない方法も知ってるわよね」


風王「っ――!!」

154: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 22:11:26.52 ID:NMxzUlwWo
風王「彼を……探す……?」

乙女「何? そんな事も思いつかなかったの?」

風王「……考えもしなかった」

乙女「呆れた……貴女、それでも四天王の一人なの?」


風王「……ああ、僕は風の四天王だ」

風王「狙った獲物は――絶対に逃さないのさ」


乙女「……どうやら、調子を取り戻したみたいね」

乙女「風は、留まり続けるべきじゃないもの」


風王「感謝するよ、剣の乙女」

風王「君は、僕の女々しさを見事に断ち切ってくれた!」

155: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/03(土) 22:19:54.98 ID:NMxzUlwWo
  ・  ・  ・

乙女「……恋は盲目と言うけれど」

乙女「時に……己をすら、見失わせてしまうのね」

乙女「……」

乙女「私は……彼女を見失わないよう、気を付けないと」


火の四天王「剣の乙女よ! 婚約が……!」

火の四天王「パパが、婚約を解消しろと言ってきた!」


乙女「……貴女、火龍王をパパって呼んでるの?」

乙女「それより、婚約を解消って……もう、わかったから!!」


乙女「一緒に良い方法を考えるから、ブレスを吐かないで頂戴!!」



おわり

160: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 20:24:37.12 ID:pzPuf0d4o
書きます


地の四天王な美少女「光の勇者よ、話とは何だ?」

161: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 20:28:15.82 ID:pzPuf0d4o
光の勇者(以下、勇者)「地の四天王、心当たりは無いか?」

地の四天王な美少女(以下、地女)「おっと、その呼び方はやめて貰おうか」

勇者「良いから座れ」

地女「今は、地の四天王――改め!」


大地の魔女(以下、地女)「大地の魔女!」

地女「ふはは! ちゃん付けでも構わんぞ!」


勇者「座れって言ってんだろ!?」

162: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 20:32:12.18 ID:pzPuf0d4o
地女「宿屋であまり大声を出すな……よいしょっと」

勇者「……ベッドの上でぺたんこ座りすんな」

地女「むう、何故だ?」

勇者「……唇を尖らせるのはやめろ」


地女「あれも駄目、これも駄目……」

地女「勇者よ! お前はリーダーではあるが、母親では無いぞ!」


勇者「だったら、一々言わせるんじゃねえってんだ!」

163: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 20:36:01.31 ID:pzPuf0d4o
地女「まあ、お前の話とやらの心当たりはある」

勇者「まあ、そうだろうな!」

地女「いずれは話し合わねばならんと思っていたぞ」

勇者「……むしろ、遅い位だっての」


地女「確かに……もっと早く話すべきだったな」

地女「――攻撃魔法で先制してからの戦術と連携を」


勇者「そんな感じでお前が馴染みすぎだって話だよ!!」

165: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 20:41:33.97 ID:pzPuf0d4o
地女「何を言っている? 旅の仲間ならば、当然だろう?」

勇者「違うだろ!? お前は、四天王の一人だろ!?」

地女「何!? まだ、仲間と認めていないのか!?」

勇者「当たり前だろうが!」


地女「ならば、どうしたら認めてくれるのだ!?」

地女「……まあ、お前に認められなくても居座るがな~」

ぽふんっ、ごろごろ~っ


勇者「ベッドの上で転がるんじゃねえええええ!!」

166: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 20:45:09.09 ID:pzPuf0d4o
地女「まあ、落ち着け勇者よ」

勇者「お前のその落ち着きが腹立つんだよ」

地女「せっかく良い宿を取ったのだ、しっかり休息をとるべきだろう」

勇者「……っていうか、なんでお前と同じ部屋なんだよ」


地女「今の財布事情を考えたら、二部屋が限度」

地女「部屋割りに不満があるのなら、今から代わるか?」


勇者「……いや、良い」

167: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 20:50:17.09 ID:pzPuf0d4o
勇者「本来は男のお前と……」

地女「祝福の聖女、剣の乙女を同室にするのはまずいだろうな」

勇者「……おかげで、俺があの二人に変な目で見られた」

地女「うむ、それはそうだろう」


地女「光の勇者とは言え、お前は男だ」

地女「……ふっ、まさかあの二人に心配される日が来るとは」


勇者「満更でもなさそうに微笑んでんじゃねえよ」

168: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 20:55:20.65 ID:pzPuf0d4o
勇者「……っていうか、いつの間にあの二人と仲良くなったんだ」

地女「祝福の聖女は、恐らく相談に乗ったからだろうな」

勇者「相談?」

地女「うむ!」


地女「お前の――光の勇者の倒し方の相談だ!」

地女「まあ、倒し方というか……倒され方というかな?」


勇者「……待て待て待て待て!!」

169: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 21:00:10.11 ID:pzPuf0d4o
勇者「お前、あの子に何を教えた!?」

地女「祝福の聖女が信仰する女神教には、『十の戒律』というものがある」

勇者「……いきなり何だよ」

地女「悲しいかな……愛を司るとは言え、所詮は女神」


地女「女神教の、『十の戒律』なぞ、大して役に立たん!」

地女「俺の、『男をオトす10のテクニック』の方が男のツボを抑えているのだ!」


勇者「そりゃあ、お前は男だからな!」

170: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 21:05:10.59 ID:pzPuf0d4o
勇者「変なこと吹き込んでたら、ぶっとばすぞ!?」

地女「何を言う! 俺は、女の味方だ!」

勇者「お前程の女の敵は見たことねえよ!」

地女「ええい、ならば見せてやろう!」


地女「この、左の頬にかかった髪をかきあげる時にな――」

…スッ

地女「――こう、左手でなく……右手で、クロスさせるように」

地女「……どうだ! 色っぽさ、二割増だろう!」


勇者「滅茶苦茶小技じゃねえか!!」

171: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 21:11:19.27 ID:pzPuf0d4o
地女「確かに、大技や大魔法も局面を決める上で重要だな」

勇者「そういうのは教えてないだろうな!?」

地女「馬鹿者が! 何を言っている、光の勇者よ!」

勇者「っ!?」


地女「ここぞと言う時こそ、勇者であるお前の役目だろう!」

地女「その腰に下げた聖剣は、ただの飾りか!?」


勇者「……くそっ! 一瞬でも気圧された自分に腹が立つ!」

172: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 21:16:03.39 ID:pzPuf0d4o
地女「まあ、そんな訳で聖女の味方になったのだ」

勇者「……道理で、最近」

地女「おっ? グッと来たか? ん? んんっ?」

勇者「……うるせえよ」


地女「はっはっは! 光の勇者よ!」

地女「足掻いても無駄だと言っておこうか! はっはっは!」

ぺちん、ぺちん、ぺちん、ぺちん!


勇者「足の裏で拍子とってんじゃねえ!!」

173: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 21:20:13.27 ID:pzPuf0d4o
地女「それで、剣の乙女とはだな」

勇者「……何があったんだよ」

地女「うむ」

勇者「……」


地女「それが、まるでわからんのだ」

地女「一緒に飲みに行ったような……行ってないような?」


勇者「……おい……おい、お前!?」

174: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 21:27:02.66 ID:pzPuf0d4o
勇者「お前、おい……まさか!?」

地女「女の体だと、酒に弱くてなぁ」

勇者「男の方でも弱いじゃねえか!」

地女「……あまり言ってくれるな、光の勇者よ」


地女「地の四天王は――四天王の中でも最弱」

地女「……分かっていても、言われる方は複雑なのだ」


勇者「お前、酒向いてねえぞ!?」

175: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 21:31:14.17 ID:pzPuf0d4o
地女「では……光の勇者――いや、リーダー!」

勇者「……絶対に断る」

地女「お前は敵だが、頼りにしているぞ!」

勇者「ダブルスタンダードも大概にしろよ!?」


地女「酔って、剣の乙女と  ちゃったかどうか」

地女「こう……さりげな~く聞いといてくれ、な?」


勇者「どういう聞き方だ!?」

勇者「どう転んだって、さりげなくならねえぞ!?」

176: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 21:37:22.21 ID:pzPuf0d4o
地女「……まあ! そんな感じで交流を深めたのだ!」

勇者「かつてない程の危機がパーティーを襲っている……!」

地女「案ずるな、光の勇者よ」

勇者「……あん?」


地女「もし、剣の乙女と  ちゃっていたら……」

地女「お前も、聖女と  ちゃえばバランスが良くなる」


勇者「お前、本当いい加減にしろよ!?」

177: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 21:48:28.58 ID:pzPuf0d4o
勇者「……だが、悔しいことにお前が居ると楽だ」

地女「うむ、こちらも戦い方に幅が出来、強くなった」

勇者「……危ない場面も、助けられたな」

地女「仲間を助けるのは、当然だろう」


地女「――だが、忘れるなよ……光の勇者」

地女「大地の魔女の正体は――地の四天王」

地女「決して、頼れるだけの偉大な魔法使いでは無い」

地女「男同士の様に気楽で、いやらしい話も出来る美少女では無いのだ」

…ポリポリ


勇者「とりあえず、ベッドの上で菓子を食うのをやめろ」

178: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 21:59:37.20 ID:pzPuf0d4o
  ・  ・  ・

地女「――お、お願いだっ! お願いだ、勇者!」

勇者「ええい、うるさい!」

地女「頼む! 乱暴にしないでくれ!」

勇者「だったら、大人しくしてろ!」


地女「!? こっ、拘束魔法!?」

地女「くっ……! か、解除出来ん!」


勇者「当たり前だろう!」

勇者「お前をどこへも行かせるかよ!」

179: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/04(日) 22:06:19.07 ID:pzPuf0d4o
地女「そんな……何故だ!?」

勇者「お前が誘ってきたからだ――」


祝福の聖女(以下、聖女)「……ゆ、勇者様……!?」

剣の乙女(以下、乙女)「なっ……何をして……!?」


勇者「……」

勇者「待ってくれ!! 二人は誤解してる!!」

勇者「コイツが、酒を飲みに行こうと――」


地女「せっ……聖剣なんぞには、決して負けぬ……!」


聖女・乙女「さ――最低!!」


勇者「俺の話を聞いてくれえええええ!!」




おわり

182: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 21:52:14.51 ID:JcT9AcbUo
書きます


闇の魔王「祝福の聖女よ、何かあったのか?」

183: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 21:55:46.67 ID:JcT9AcbUo
祝福の聖女(以下、聖女)「……闇の魔王さん」

闇の魔王(以下、魔王)「ひどく憔悴しているようだが……」

聖女「……聞いて、貰えますか?」

魔王「敵とは言え、其方には世話になっているからな」


聖女「勇者様が……勇者様が!」

聖女「無理矢理、女性を  ちゃおうとしてたんです!」


魔王「……」

魔王「……すまぬ、あまり力になれそうにない」

184: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 22:00:47.55 ID:JcT9AcbUo
魔王「しかし、何かの間違いではないのか?」

聖女「人は、誰しも間違いを犯すものです!」

魔王「聖女よ、落ち着くのだ」

聖女「私は冷静です! ええ、冷静ですとも!」


聖女「今も、冷静に神に祈りを捧げていたんです」

聖女「貴女の与える試練は、あまりにも過酷すぎます、って」


魔王「……」

185: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 22:04:21.37 ID:JcT9AcbUo
魔王「だが……英雄色を好むという言葉もある」

聖女「……魔王さん」

魔王「許すのもまた愛……そう言っていたではないか」

聖女「……」


聖女「……闇の魔王」

聖女「貴女の想い人がそうしているのを見たら、どう思いますか?」


魔王「許せ、軽はずみな発言だった」

186: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 22:09:38.73 ID:JcT9AcbUo
魔王「して……勇者は、何処に居る?」

聖女「……逃げたんです」

魔王「逃げただと?」

聖女「……はい」


聖女「剣の乙女さんが、無表情で……」

聖女「その……斬り落とすと言って襲いかかったので」


魔王「……成る程な」

187: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 22:15:10.42 ID:JcT9AcbUo
聖女「勇者様には光の加護があるので……」

魔王「まあ、生きては居るだろうな」

聖女「聖剣と魔法も駆使し、秘めた力も覚醒していましたからね」

魔王「余の関わらぬ所で、決戦が行われていたか」


聖女「……もし、斬り落とされて帰ってきたら」

聖女「私……ちゃんと回復させる自信がありません」


魔王「案ずるな、祝福の聖女よ」

魔王「そうだとしても、剣は振るえる」

188: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 22:20:54.52 ID:JcT9AcbUo
魔王「しかし、光の勇者め……我が軍だけでなく……」

聖女「……」

魔王「…………ゅ……ゅぅ、う~……じ……んっ、んんっ!」

聖女「……魔王さん?」


魔王「……其方まで苦しめるとは!」

魔王「ふふっ……罰として、奴の故郷を滅ぼしてくれよう」


聖女「あの……同郷なので、私の故郷でもあるんです」

聖女「なので、はい……お気持ちだけ、ありがたく」

189: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 22:29:39.34 ID:JcT9AcbUo
魔王「しかし……光の勇者と、剣の乙女め」

聖女「えっ? 勇者様はともかく……」

魔王「今の其方を捨て置くなど、看過出来るものではない」

聖女「あっ、いえ……私だけじゃなく――」


ガチャッ!

大地の魔女(以下、地女)「祝福の聖女よ、お菓子を持って来たぞ!」


聖女「新しい仲間の、大地の魔女さんも居ますから!」

魔王「ふむ……成る程」


地女「……」

バタンッ!


聖女「へっ?」

魔王「む?」

190: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 22:39:09.45 ID:JcT9AcbUo
聖女「あっ、あの……大地の魔女さん?」

魔王「どうした……闇の魔王の、余が恐ろしいか?」

聖女「大丈夫ですよ! その……可愛い所もありますから!」

魔王「……祝福の聖女よ、それは他言無用だと言っただろう」


……しんっ


聖女・魔王「……」

聖女「あれ……?」

魔王「……ふむ」

191: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 22:43:39.93 ID:JcT9AcbUo
  ・  ・  ・

地女「……!」

地女(祝福の聖女と……魔王様が、裏で繋がっていただと!?)

地女(ぬうう! いかん! これは……いかん!)

地女(どこまで……どこまでバレちゃっているのだ!?)


地女「今は……今は、此処を離れねば!」


…ズブッ!


地女「しまっ!? 影に呑まれ――」


…とぷんっ!

192: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 22:49:17.88 ID:JcT9AcbUo
  ・  ・  ・

聖女「――わあっ! このお菓子、美味しいですね!」

魔王「人の作った嗜好品なれど、中々のものだ」


地女「うむ!」

地女「では……歯を磨いて寝ることにするのだ」


魔王「――待て」


地女「!? な、何か……?」


魔王「……其方とは、ゆっくり話がしたい」


地女「し、しかし……その、もうねむねむなのだ、すまぬな……!」

地女(バレているのか!? ええい、どっちなのだ!?)

193: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 22:58:23.55 ID:JcT9AcbUo
聖女「でも……眠いのなら、寝た方が良いですよ」

聖女「……あんな事があった後ですし」


地女「!」

地女(祝福の聖女よ、素晴らしい支援だ!)

地女(やはり、頼れるものは仲間というものよ!)


魔王「ならば、此処で眠れば良いだろう?」

魔王「剣の乙女は、勇者を追って居ないのだから」


地女「!?」

地女(……それすらも上回るか!)

地女(ぬうう! 希望を砕き、絶望を与えるとは……!)

194: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:10:48.85 ID:JcT9AcbUo
聖女「ええ、と……どう、しますか?」

地女「いや、遠慮しておこう!」

魔王「何? 余の命に逆らうと?」

地女「っ……!?」


地女「……こればかりは、聞けぬ!」

地女「例え……誰に命じられようとも!」


聖女「えっ、は……はい……」

魔王「……」

195: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:16:44.71 ID:JcT9AcbUo
  ・  ・  ・

地女「……」

地女(せえええええふ! 離脱に成功した!)

地女(後は、魔王様が帰ったら……姿を消すだけだな!)

地女(どこか遠く……俺の魔力を隠してくれる、聖なる……)


地女「……安息の地へ!」


「――行かさぬ」


地女「へっ――?」


…とぷんっ!

196: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:19:46.48 ID:JcT9AcbUo
地女「――ぬうっ、おお……!?」


魔王「ようこそ、大地の魔女……」

魔王「……いや」


地女「……!」


魔王「魔王軍、四天王が一人――」

魔王「――地の四天王よ」


地女「……」


魔王「……」

197: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:23:45.61 ID:JcT9AcbUo
魔王「……余の魔眼を欺けると思ったか?」

地女「……」

パァァ…


…ァァァ

地の四天王(以下、地王)「……」

地王「……お久しぶりです、魔王様」


魔王「……」


地王「……」

198: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:26:00.07 ID:JcT9AcbUo
魔王「……地の四天王よ」

地王「……はっ」

魔王「……」

地王「……」


魔王「――俺より強いやつに会いに行く」

魔王「それは……光の勇者の事だったのだな」


地王「……」

地王「…………」


地王「その通りでございます!!」

199: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:33:18.62 ID:JcT9AcbUo
魔王「確かに……前よりも、力をつけている」

地王「お褒めに預かり、恐悦至極!!」

魔王「だが……其方の勝手な振る舞いは、不快極まりない」

地王「そ、それは……!」


魔王「許してほしくば……」

魔王「……」


魔王「……――強く、抱きしめよ」


地王「っ……!」

200: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:41:23.79 ID:JcT9AcbUo
  ・  ・  ・

地王『――というわけでな!?』

地王『引き続き、お前のパーティーに居続ける事になったぞ!』

地王『力を付け、必ず戻って来いとのご命令だ!』

地王『俺は……俺は、命の危機を乗り越えたのだ!』


地王『……だが、問題は全て解決した訳ではない』

地王『素面の状態で……影の中で、三回  ちゃったのだ!』


光の勇者(以下、勇者)「ゴミみてえな思念波飛ばしてくんじゃねえよ!!」

201: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:50:13.45 ID:JcT9AcbUo
地王『仕方あるまい! 俺も……男なのだ!』

勇者「お前のせいで、俺は追われてるんだぞ!?」

地王『魔王様は、ちょこちょこ会いに来ると言っていた』

勇者「だったらお前もう帰れよおおおおお!!」


―ヒュッ!


勇者「っ、うおおおっ!?」


剣の乙女(以下、乙女)「避けるな……!」


勇者「まっ、ままっ、待て! 頼む、話し合おう!」


地王『あ、結局の所、俺は剣の乙女と  ちゃってたか?』


乙女「女の敵め!」



勇者「――どっちも、今話し中だ!!」



おわり

206: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 21:48:32.89 ID:c5E94vi1o
書きます


火の四天王「剣の乙女よ、礼を言わせてくれ」

207: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 21:52:40.57 ID:c5E94vi1o
剣の乙女(以下、乙女)「礼? 何のかしら?」

火の四天王(以下、火王)「婚約に関する話だ」

乙女「……ああ、あの話ね」

火王「おかげで、婚約を解消せずに済んだぞ」


火王「――やっぱり、嫁には行かせたくない」

火王「全く……パパは、子離れが出来なくて困る」


乙女「私は、貴女が『パパ』呼びなのにも未だ戸惑ってるわ」

208: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 21:57:39.89 ID:c5E94vi1o
火王「!? ち、父上! 父上だ!」

乙女「別にいいわよ、今更取り繕わなくたって」

火王「だが……私にも、体面というものがある」

乙女「ふぅん?」


乙女「――婚約を解消しろ」

乙女「そう言われて、半ベソかいてたのは誰かしら?」


火王「あわっ、わ、忘れてくれ!///」

209: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 22:02:37.79 ID:c5E94vi1o
乙女「それで? どう説得したの?」

火王「お前の助言通り、マ……母上に協力を仰いだ」

乙女「大喧嘩にでもなった?」

火王「いや、そんな事はない」


火王「――今の、私の様な幸せをこの子にも」

火王「そう母上が言ったら、娘の前だと言うのに……全く!」


乙女「……熱々じゃないの」

210: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 22:07:31.10 ID:c5E94vi1o
乙女「でも、貴女の婚約者は行方知れずなのよね」

火王「ああ、だが……奴なら必ず戻ってくる」

乙女「ねえ、どうしてそこまで信じられるの?」

火王「? 何を言っている」


火王「――信じる力の強さ」

火王「それをよく知っているのは、お前達だろう」


乙女「……呆れる位、真っ直ぐなのね」

211: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 22:13:39.33 ID:c5E94vi1o
火王「奴も、私を信じてくれている」

乙女「でなきゃ、書き置きだけ残して居なくならない、か」

火王「ああ、そうだとも!」

乙女「とっても素敵な人なのね」


火王「うん!!(ボワッ)」


乙女「熱い!」

乙女「盛り上がるのは良いけど、ブレスはやめて頂戴!」

212: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 22:18:11.05 ID:c5E94vi1o
乙女「でも……そんなに素敵な人なら、心配ね」

火王「? 何がだ?」

乙女「浮気しないか、よ」

火王「……」


火王「……!」プルプル

火王「……!」ジワァ…


乙女「じょっ、冗談よ!」

乙女「あああ、泣かないで頂戴! 冗談だから!」

213: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 22:25:33.94 ID:c5E94vi1o
火王「……すまない、想像したら悲しくなった」

乙女「その人の事、本当に好きなのね」

火王「……ああ! 勿論だ!」

乙女「他に、良い人が居るかも知れないのに?」


火王「……私の顔が、今よりも鱗に覆われていた幼き頃」

火王「火龍王の娘だからと、誰もが愛想笑いを向ける中……」

火王「……奴だけが、私に言った」


火王「――ブス」


火王「……とな」ニコッ


乙女「……笑える台詞じゃないと思うけれどね」

214: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 22:34:36.86 ID:c5E94vi1o
乙女「周囲の者達が、黙ってなかったでしょうに」

火王「当然、怒り狂ったぞ! 尤も、内心ではどうか知らんが!」

乙女「火龍王は?」

火王「なんと、あまりの怒りにひっくり返ってな! ははは!」


火王「それがおかしくて、思わず笑ってしまった私を見て……」

火王「……奴は――」


火王「――可愛い!」


火王「……と、言ったんだ!(ボワッ)///」


乙女「……物凄い手のひら返しよね」

215: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 22:41:50.22 ID:c5E94vi1o
火王「……本当に、単純な奴なんだ」

乙女「ねえ、この話もう何度も聞いてるんだけど」

火王「それでな!(ボワッ)/// それでな!(ボワッ)///」

乙女「……続けるのね」


火王「――この子の可愛さを引き出すとは、さすが火龍王!」

火王「――俺にも、そのひっくり返り方を教えて欲しいのだ!」

火王「……なんてな?(ボワッ)/// なんてな?(ボワッ)///」


乙女「……火龍王が親馬鹿で助かったのよね」

216: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 22:49:36.49 ID:c5E94vi1o
火王「……奴のこの馬鹿さは、年月を重ねても変わらなかった」

乙女「それを信じ続ける貴女も、馬鹿だと思うけどね」

火王「む」

乙女「でも、まあ……嫌いじゃないわよ、そういうの」


火王「おっと、私に手を出そうとするなよ?」

火王「確かに、お前は良き友人ではある」

火王「だが、私は浮気は絶対にしない」


乙女「……あのね、私の事を何だと思ってるわけ?」

217: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 22:55:41.26 ID:c5E94vi1o
乙女「私は、運命の相手が女性だっただけよ」

火王「運命か……なら、私と奴も運命で結ばれている」

乙女「随分と自信ありげじゃない」

火王「私は、案外ロマンチストなんだ」


ガチャッ!

大地の魔女(以下、地女)「剣の乙女よ、飲みに行くのだ!」


乙女・火王「ん」


地女「……」

バタンッ!


乙女・火王「……」

218: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 23:03:22.55 ID:c5E94vi1o
  ・  ・  ・

地女「……!」

地女(ぬうう! 何ということだ!)

地女(剣の乙女と、火の四天王が裏が繋がっていたとは!)

地女(勇者と聖女が二人で話すから……と)

地女(気を利かせて、飲みに出ようと思ったのが間違いであったか!)


地女「今は……今は、此処を離れねば!」


乙女「の……飲みに行くって……その///」モジモジ


地女「!? いつの間に背後に!?」


乙女「あ……あ、愛の力で///」

219: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 23:10:15.71 ID:c5E94vi1o
  ・  ・  ・

乙女「――紹介するわ、この子が……」

地女「……大地の魔女なのだ」

火王「私は、魔王軍幹部の一人、火の四天王」

乙女「……どう? 私の、運命の相手は///」


火王「そうだな……」

火王「見た所、かなりの使い手の様だ」

火王「私達、四天王にも勝るとも劣らない魔力を秘めている」


地女「そ……そんなでもないぞ」

地女(せええええふ! せふせふせええええふ!!)

地女(魔王様と違い、魔眼が無いのでバレてはいない!)

220: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 23:17:04.33 ID:c5E94vi1o
地女「……」

地女(だが、いずれはボロが出るかも知れん!)

地女(俺が、地の四天王だと知られる前に……離脱せねば!)

地女(ええい! これが、運命の悪戯というやつか!)


地女「……それじゃ、あとは二人で」


「「二人で?」」


地女「むう?」


乙女「二人になるのは……三人で飲んでからでも、ね?///」モジモジ

火王「……あまり、見せつけてくれるなよ?」


地女「……むおお!?」

221: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 23:24:34.31 ID:c5E94vi1o
  ・  ・  ・

ダダダダッ、ガチャッ!

地女「――光の勇者よ、まずい事になった!」

光の勇者(以下、勇者)「っ!? な、何だ!?」

地女「あ、ファーストキスおめでとうと言っておこう」

勇者「……お前、何で知ってんの!?」


地女「酔って、朝起きたら火の四天王と剣の乙女がベッドに居たのだ!」

地女「恐らくだが、二人まとめて  ちゃったのだ!」


勇者「お前、何やってんの!?」

222: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 23:32:10.14 ID:c5E94vi1o
地女「そりゃあお前、夜で人気が無いとは言え、なぁ」

勇者「お前、広場の噴水の前……通ってたのか!?」

地女「うむ! あそこがムードが良いと、助言したのは俺だ!」

勇者「お前……なんっ、どこまで見てたんだ!?」


地女「だが、光の勇者よ! 見損なったぞ!」

地女「祝福の聖女が、不意打ちとは言えチュッとしてきたのだ!」

地女「男ならば、ガバッと抱きしめブチュッとすべきだろうが!」


勇者「ほぼほぼ見てんじゃねえかあああああ!!」

223: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 23:43:09.18 ID:c5E94vi1o
地女「不意打ちに対処出来なければ、この先はもっと危険だぞ」

勇者「この野郎……!」

地女「ふはは、既に歯車は動き始めた!」

勇者「手を……手を出さないようにしてたのに!」


地女「ふはは! 無駄だが、気をつける事だな!」

地女「ふははははっ! はっははははは!」

地女「……だが、突然キスされたとはいえな?」

地女「呆けるだけというのは、さすがにいかんと思うぞ」


勇者「……頼む、言うな」

224: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 23:47:24.91 ID:c5E94vi1o
地女「……まあ、説教はこの位にするとしてだ!」

勇者「そ、そうだ! お前、二人まとめてって……」

地女「だが……不幸中の幸いだったぞ」

勇者「……何がだよ」


地女「二人は、まだ起きていなかったからな?」

地女「こう……俺が居た形跡を消し、コッソリ抜け出してきたのだ」



勇者「……」

勇者「……いや、お前それ――」

225: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/06(火) 23:51:31.01 ID:c5E94vi1o
  ・  ・  ・

火王「……ん……む……朝か」

火王「此処は、一体……それに……裸?」

火王「痛っ!? 飲みすぎて、何も覚えて――」


乙女「ん……う~ん」


火王「……」

火王「!?」


乙女「激し……むにゃむにゃ」


火王「!!!???」

226: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 00:01:56.81 ID:eXgVFMmJo
火王「つ……剣の乙女?」

乙女「……ん~?」

火王「お、起きろ! 起きてくれ!」

乙女「…………おはよう」


火王「ではなく! 昨晩、一体何があった!?」

火王「わ、わた……お前と!?」


乙女「……まあ、良いわよ」

乙女「運命って言うのは、どう転ぶかわからないものね」クスリ


火王「さすがに爛れすぎだろう!」



おわり

229: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 21:17:51.01 ID:eXgVFMmJo
書きます


大地の魔女「光の勇者よ、状況を整理しよう」

230: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 21:21:22.66 ID:eXgVFMmJo
光の勇者(以下、勇者)「……まあ、そうだな」

大地の魔女(以下、地女)「どうした、嫌そうな顔をして」

勇者「お前な……楽しい話じゃないだろ」

地女「では、早速だが!」


地女「大地の魔女という美少女は仮の姿!」

地女「この俺は、魔王軍四天王が一人――地の四天王なのだ!」


勇者「楽しそうに話すんじゃねえってんだよ!!」

231: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 21:26:26.05 ID:eXgVFMmJo
地女「本来の姿は、鍛え上げられた鋼の肉体を持つ男の中の男!」

勇者「女の敵の間違いだろうが」

地女「何を言う、光の勇者よ」

勇者「……あん?」


地女「俺は、ただ酔って  ちゃっただけなのだ」

地女「あまり人聞きの悪い表現はやめて貰おう」


勇者「どう聞いても人聞きが悪いわ!!」

232: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 21:29:48.11 ID:eXgVFMmJo
勇者「酔って色々と手を出して逃げて来た奴が、よくもまあ……」

地女「まあ、何とかなるだろう!」

勇者「お前、どうしてそんなに前向きなんだよ!?」

地女「知れたことよ」


地女「……光の勇者」

地女「敵とは言え、頼りにしているぞ」


勇者「お前の、その俺への信頼は何なの!?」

233: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 21:34:35.98 ID:eXgVFMmJo
勇者「姿を変えてるとは言え、魔王にはバレたんだろ?」

地女「ああ、魔王様の魔眼は欺けなかったのだ」

勇者「……お前、よく殺されなかったな」

地女「バレて影に引きずり込まれた時は、肝を冷やしたぞ!」


地女「だがまあ、今後はちょこちょこ会いに来るそうなのだ」

地女「――余とお前、二人だけの秘密だな」

地女「……と、嬉しそうに笑っていた」

地女「魔王様もお喜びのようで、俺も鼻が高いわ!」


勇者「勇者パーティーと魔王城で遠距離恋愛すんじゃねえよ!!」

234: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 21:40:23.38 ID:eXgVFMmJo
勇者「っていうか、剣の乙女と火の四天王はどうするんだ!」

地女「どう、とは?」

勇者「なんでキョトンとしてるんだよ!?」

地女「何を言っている」


地女「酔っていて、俺もほとんど覚えていないのだ」

地女「それに、どちらも  ちゃった時、俺は女の姿だった」

地女「加えて、俺が地の四天王だとは気付かれていない」

地女「まあ……女同士なら、セーフだろう! うむ、セーフ!」


勇者「放ったらかしにしとくつもりかよ!?」

235: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 21:45:38.21 ID:eXgVFMmJo
勇者「それに、他にもまだ居るだろう!」

地女「ああ、だが……水の四天王ならば心配ないぞ」

勇者「いや、お前……この状況を知ったら怒り狂いそうだって」

地女「まず、間違い無く俺の命を狙ってくるだろう」


地女「――だが、案ずるな! 光の勇者よ!」

地女「お前の聖剣と光の加護!」

地女「祝福の聖女の支援と回復!」

地女「剣の乙女の圧倒的な剣技!」

地女「そこに! この俺が加われば……恐るるに足りん!」


勇者「お前、その発言最悪すぎるぞ!!」

236: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 21:51:17.79 ID:eXgVFMmJo
地女「地は水に有利とは言え、万が一もあるからな!」

勇者「絶対に手は貸さないからな!?」

地女「何!? 仲間を見捨てるというのか!?」

勇者「そもそも、属性の有利不利なら風の四天王はどうするんだよ!」


地女「……あー……風の四天王か」

地女「奴はなぁ……うむむ、どうするか……」


勇者「……ん?」

237: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 22:01:53.07 ID:eXgVFMmJo
勇者「なんだ、妙に歯切れが悪いじゃないか」

地女「風の四天王は、男の格好をしていただろう?」

勇者「まあ……俺達は男だと思ってたんだけどな」

地女「それでな……少し、悪いと思っているのだ」


地女「風の四天王は……体は女、心は男だったのかも知れん」

地女「だが、酔った勢いで  ちゃってだな?」

地女「体は女、心は男……しかし、目覚めさせてしまったのだろう」

地女「この責任は……どう取るべきか……!」


勇者「お前、気遣う所おかしいぞ」

238: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 22:05:53.77 ID:eXgVFMmJo
地女「おかしくはないぞ、光の勇者よ!」

勇者「いや、おかしいっての!」

地女「ええい、わからんのか!?」

勇者「わかんねえっつってんだろうが!」


地女「酔った勢いで、お前が今の俺を  ちゃってだな」

地女「俺が、目覚めてしまったとしたら……どう思う?」


勇者「それは……なんか申し訳なくなるな」

勇者「……」

勇者「いやお前、変な想像させんじゃねえよ!!」

239: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 22:13:12.40 ID:eXgVFMmJo
地女「だが、俺の言いたい事はわかっただろう」

勇者「……まあ、何となく」

地女「勇者よ……もしそうなった時、お前ならばどうする?」

勇者「……一つ、無かったことに」


「――出来ると思うかい?」


勇者・地女「!?」


風の四天王(以下、風王)「やあ、御機嫌よう」


勇者・地女「!!?」

240: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 22:18:03.87 ID:eXgVFMmJo
勇者「か、風の四天王!?」

地女「ど、どうして此処に!?」


風王「僕は、捜し物が得意でね」

風王「君を見つけた方法は……教えられないな」

風王「だって……また、逃げた時に困るだろう?」

風王「そうは思わないかい?」

風王「――地の四天王」


地女「くっ……勇者よ、どうする!?」

勇者「ここで俺に振るんじゃねえよ!!」

241: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 22:25:13.72 ID:eXgVFMmJo
風王「それと、勘違いを訂正しておくよ」

風王「僕は、元々身も心も女さ」

風王「男の格好をしていたのは……ちょっとした趣味かな」

風王「だから……ふふっ、君が気に病む必要なないよ」


地女「おおっ、そうだったのか!」

地女「ならば、良し!」

地女「感謝するぞ、風の四天王よ! 心が軽くなった!」


風王「……」


勇者「空気が重くなってんだよおおおおお!!」

242: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 22:31:52.35 ID:eXgVFMmJo
風王「……地の四天王」

風王「このまま、僕と一緒に戻ろう」


地女「すまんが、それは出来ん」


風王「どっ、どうしてだい?」

風王「何か、理由でもあるのかい!?」


地女「それは……」チラッ

勇者「……」

地女「すまんが、それは言えん」


風王「っ……!」ギロッ!


勇者「……えっ?」

243: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 22:38:28.92 ID:eXgVFMmJo
風王「そうか……君が、地の四天王を……!」ギロッ!


勇者「いや! いやいや待て待て! はっ!?」

地女「違う! 光の勇者は、悪くないのだ!」


風王「っ!? ゆ、勇者を庇うのかい……!?」


地女「そうではないのだ、風の四天王よ!」

勇者「そっ、そうだ! 風の四天王、勘違いはよせ!」


風王「……ふ……ふふふ」

風王「君たち……随分と、仲が良いじゃないか!」


地女「うむ、仲は良いな」

勇者「お前ちょっと黙っててくんない!?」

244: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 22:45:40.31 ID:eXgVFMmJo
風王「……もう一度だけ聞くよ」

風王「地の四天王、僕と一緒に戻ろう」


地女「俺の答えは変わらん」

勇者「いやもう、帰れって! 頼むから!」


風王「ふふ……あははははっ!」

風王「こんな屈辱、生まれて初めてだよ!」

風王「……!」ギロッ!


勇者「ほらああああ!! 俺を睨んでるじゃねえかあああ!!」

245: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 22:52:11.31 ID:eXgVFMmJo
風王「そうか……地の四天王、君は……」

風王「……女の、僕よりも――」


勇者「おいコラ、テメエ! 早く誤解を解け! 早ーく!!」


風王「――そこの……男の、光の勇者を選ぶんだね」


地女「む? いやいや、何を言っているのだ?」

地女「そういう意味で選ぶなら、女のお前を選ぶぞ?」

地女「それに、お前は美人だしな!」


風王「……」

風王「えっ? はっ……えっ?」

246: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 23:03:02.26 ID:eXgVFMmJo
  ・  ・  ・

地女「――ふはは! 光の勇者よ、風の四天王を退けたな!」

勇者「呑気に笑ってんじゃねえよ!!」

地女「……ふっ、慌てるな」

勇者「あん?」


地女「奴は、引き際に言っていた」

地女「――君が此処に居る事は、僕の胸の中に閉まっておこう」

地女「……とな! ふっはははは!!」


勇者「お前がしでかした事がバレる心配はしてねえ!!」

247: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 23:11:57.50 ID:eXgVFMmJo
地女「やはり、お前を頼って正解だったぞ!」

勇者「……腹が立つ位、お前に都合良く行ってるな」

地女「お前のお陰だ、光の勇者よ」

勇者「ぶっとばすぞ?」


地女「光の加護は、仲間をも災いから守る」

地女「……言い伝えは、やはり真実だった」


勇者「……は?」


地女「でなければ、とっくに俺の首は飛んでいるだろうからな!」


勇者「……ま、待て待て! 待て!」

勇者「この状況は、マジで俺のせいでもあるのか!?」

248: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/07(水) 23:24:20.94 ID:eXgVFMmJo
地女「頼りにしているぞ、光の勇者!」

勇者「やめろ! 今、俺をそう呼ぶな!」

地女「リーダー!」

勇者「! お前をパーティーから外せば――」


地女「ふはは! そうはさせんぞ!」

地女「……状況が良い感じになるまで!」

地女「この、地の四天王!」

地女「お前を道連れにしてくれるわ!!」


勇者「お前を殺――したら……俺が恨まれるもんな!!」


地女「うむ! だから、これからも――」


パァァ……ァァァ


地の四天王「光の勇者よ、助けてくれ!」



おわり

254: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 20:48:44.18 ID:nWRwErPCo
書きます


水の四天王「祝福の聖女よ、何かありましたの?」

255: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 20:52:12.13 ID:nWRwErPCo
祝福の聖女(以下、聖女)「わ……わかりますか?」

水の四天王(以下、水王)「ええ、落ち着きがありませんもの」

聖女「じ、実は……勇者様に、キスしちゃいました///」

水王「まあ! とうとう、一歩踏み出したんですのね!」


聖女「はいっ!///」

聖女「なので……私達、結婚しますっ!///」


水王「大きな一歩すぎやしませんこと!?」

256: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 20:57:19.69 ID:nWRwErPCo
聖女「えっ? 何か、おかしな事言いましたか?」

水王「ええと……キスしただけ、ですのよね?」

聖女「えっ? ええっ?」

水王「……祝福の聖女?」


聖女「私の――祝福の聖女がキスしたんですよ?」

聖女「ええと、これはもう……結婚しか無いんですけど……」


水王「どっ、どういう事ですの!?」

257: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:01:23.89 ID:nWRwErPCo
聖女「正確には、結婚せざるを得ないと言うか……」

水王「キスしただけで!?」

聖女「愛の女神に使える私が、あ……愛を捧げたわけですから///」

水王「女神教の戒律……ではありませんのね」


聖女「結婚しなかった場合は……えへへ!///」

聖女「全身の、毛穴という毛穴から血が吹き出ちゃいますけどね!」


水王「笑い事じゃありませんわよ!!」

258: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:06:19.30 ID:nWRwErPCo
聖女「えっ? 結婚すれば、大丈夫ですよ?」

水王「結婚しなければ、死んでしまうのでしょう!?」

聖女「だっ、大丈夫ですよ! 死にはしません!」

水王「けれど……無事では済みませんわよ!?」


聖女「地獄の苦しみで、精神が崩壊するらしいです!」

聖女「だから、何の問題もありませんよ!」


水王「廃人になってしまうだけでしょうに!!」

259: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:10:12.75 ID:nWRwErPCo
水王「ひっ、光の勇者はこの事を知って!?」

聖女「あっ、ゆ……勇者様には言わないでください!」

水王「何故!?」

聖女「だ……だって……」


聖女「重い女だ……なんて、思われたくありませんし」

聖女「だから、勇者様には内緒にしてくださいね!」


水王「知らぬ間に、命を背負わせているのに!?」

260: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:17:20.35 ID:nWRwErPCo
聖女「でも、大丈夫ですよ! 絶対に結婚しますから!」

水王「……随分と、自信があるんですのね」

聖女「だ、だって……勇者様の事……好きですから///」

水王「私も……貴女程素直になれたら」


水王「――友人の結婚式はとても素敵だった」

水王「――花嫁衣装には、とても憧れる」

水王「……と、遠回しな言い方をせずに済みましたのに」


聖女「あの……かなり、直接的だと思うんですけど」

261: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:24:31.07 ID:nWRwErPCo
水王「あら、私達は何度も体を重ねましたのよ?」

聖女「……私達がまだキスだけって、からかってます?」

水王「ふふっ! さあ、それはどうでしょうね」

聖女「もーっ!……ふふふっ!」


水王「子供が出来やすい日を狙っていたのですけれど……」

水王「恋と言うのは、中々うまくいかないものですわね」


聖女「あ、あの! 私には……は、早すぎる話題です!」

262: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:33:47.54 ID:nWRwErPCo
水王「避妊魔法は知っているでしょう?」

聖女「愛の無い魔法ですが……はい、知ってます……」

水王「けれど、時に奇跡が起き、子供を授かる事がある……」

聖女「そうです!! それこそ、愛の奇跡です!!」


水王「――大丈夫だから」

水王「こう言うと、殿方は勘違いしてしまうんですのよ」

水王「……魔法を使ったなどと、一言も言っていないのに」

水王「そして……奇跡が起こるのですわ」


聖女「……うぁ……ぁ、愛のなせる業ですね!!」

263: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:42:26.91 ID:nWRwErPCo
水王「まあ……奇跡は、起きませんでしたけれどね」

聖女「まだ、戻って来てないんですか?」

水王「先日貴女に諭されましたし、気長に待ちますわ」

聖女「……早く、帰って来ると良いですね」


水王「ええ……耐えきれず、零れた涙が湖にならぬ内に」


聖女「……水の四天王さん」


水王「その湖の水が溢れ、津波となって街を飲み込まぬ内に」


聖女「水の四天王さん!?」

264: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:47:30.55 ID:nWRwErPCo
水王「ああ……早く、帰ってきてくださいまし……!」

聖女「私も、祝福の聖女として、平和のために祈ります」

水王「今頃、どこで何をしているの……!」

聖女「あ、あのー……水の四天王さん?」


水王「愛しの、地の四天王……!」


聖女「……」

聖女「えっ?」

265: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:49:58.70 ID:nWRwErPCo
聖女「みっ、水の四天王さん!?」

水王「……えっ?」

聖女「いっ、今の……今のって!?」

水王「す、すみません……自分の世界に入ってしまって……」


聖女「水の四天王さんの想い人って――地の四天王だったんですか!?」


水王「……」

水王「ちっ――違いましゅわにょ!?」

266: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 21:57:32.19 ID:nWRwErPCo
聖女「同僚って……あー! あー、そういう事ですか!」

水王「ちっ、違……違いましてよ!」

聖女「確かに……はー! 職場恋愛って、はいはい!」

水王「……くううっ!/// 迂闊でしたわ!///」


水王「ぜ、絶対!/// 誰にも言わないでくださいまし!///」

水王「祝福の聖女よ、お願いしますわ!///」


聖女「……」

聖女「えー?」ニマニマ

267: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:02:07.49 ID:nWRwErPCo
聖女「どうしてですか?」ニマニマ

水王「そ、それは……魔王様と、他の四天王の前では、ですね……」

聖女「はいはい?」ニマニマ

水王「……バレないように、振る舞っているのです」


水王「だって……ねえ?」

水王「水と、地の四天王がだなんて……うふふっ!///」


聖女「もーっ!/// も――っ!///」

268: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:10:51.98 ID:nWRwErPCo
水王「絶対……絶対、内緒ですわよ?///」

聖女「ふふっ、勿論ですよ!///」

水王「やだもう、どうして貴女まで顔を赤くしてるの///」

聖女「わかりません/// なんか、うつっちゃいました///」


水王「……あの人が、帰ってきたら」

水王「私と貴女……そして、地の四天王と光の勇者の四人で――」


聖女「っ!?」ゴクリ…


水王「精霊の湖の側にある、別荘に遊びに行きません?///」


聖女「行きます!/// ぜ~ったい行きます!///」

269: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:17:33.04 ID:nWRwErPCo
聖女「凄いです……なんか、世界が輝いて見えます!」

水王「うふふっ! 当然、貴女と勇者の部屋は一緒でしてよ!」

聖女「えっ……えー?/// ええ~っ?///」

水王「……ゴホンッ!」


水王「……祝福の聖女よ」

水王「私の想い人の事は、誰にも言わない」

水王「……誓って、頂けますか?」


聖女「……水の四天王」

聖女「私は、貴女の想い人の事は、決して口外しません」

聖女「愛の女神様と――」


聖女「――私達の、友情にかけて!!」

270: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:22:09.18 ID:nWRwErPCo
  ・  ・  ・

闇の魔王(以下、魔王)「祝福の聖女よ、今日は機嫌が良いな」

聖女「……えへへっ、わかっちゃいますか?」

魔王「ああ、余と其方の仲では無いか」

聖女「……魔王さん」


魔王「例え、人間を全て滅ぼしたとしても……」

魔王「そ……其方だけは、生かしておこう」


聖女「えっ、あの……」

聖女「はあ……あ、ありがとう……ございます……?」

272: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:30:51.89 ID:nWRwErPCo
魔王「ふむ……あまり、嬉しそうでは無いな」

聖女「いっ、いえ!」

魔王「何なりと申せ、其方は何が望みだ?」

聖女「えっ?」


魔王「其方の、今の上機嫌な様子」

魔王「それは……勇者と、誓いの口付けを交わしたから」

魔王「――だけはあるまい?」


聖女「それは……」

273: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:34:49.86 ID:nWRwErPCo
聖女「その……内緒なんです」

魔王「何?」

聖女「ええ、と……内緒の話を聞いて……」

魔王「……ふむ」


魔王「秘密の共有、か」

魔王「確かに、それは互いの絆を深めるものだ」


聖女「だから……言えないんです」

聖女「……ごめんなさい」


魔王「……」

魔王「構わん、許す」

274: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:40:11.17 ID:nWRwErPCo
魔王「だが、面白くは無いな」

聖女「えっ?」

魔王「どれ……余も、其方だけに秘密を明かそう」

聖女「ど、どうしてですか……?」


魔王「余が、闇の魔王だからだ」

魔王「そして、祝福の聖女……其方が――」


聖女「私が……?」


魔王「……いや、それは明かせぬ」

275: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:47:01.67 ID:nWRwErPCo
魔王「――余が、明かす秘密」

聖女「……」

魔王「それは――余が恋をし、愛を育んでいる者の事だ」

聖女「えっ!? それって……」


魔王「その者の名を……其方に教えよう」

魔王「どうだ? 知りたくはないか?」


聖女「それは……知りたいです!!」

聖女「だって、ずっと『内緒だ』って言ってたんですもん!!」

277: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/08(木) 22:51:25.85 ID:nWRwErPCo
魔王「その者の所在は明かせぬが……」

聖女「構いません! ええ、構いませんとも!」

魔王「ふふっ……其方は、コイバナには食いつきが良いな」

聖女「はいっ!」


聖女「だって私は――祝福の聖女ですから!」

聖女「それに……私達が、こうして話すきっかけ」

聖女「それも――恋の話でしたからね!」ニコッ!


魔王「……ならば、聞くが良い」ニコリ

魔王「余の、愛する者とは……」


聖女「とは!? わぁ~っ!/// ドキドキします!///」ニコニコ!


魔王「地の四天王だ」



おわり

285: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 21:54:08.91 ID:zozdBxOjo
書きます


火の四天王「剣の乙女よ、私はどうすれば良い?」

286: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 21:59:02.19 ID:zozdBxOjo
剣の乙女(以下、乙女)「急に現れて、何?」

火の四天王(以下、火王)「私には……もう、わからない」

乙女「だから、何が?」

火王「奴に……婚約者に、何と言えばいいのだ!」


乙女「酔って、朝起きたら剣の乙女がベットに居た」

乙女「どっちも裸で、覚えてないけど  ちゃったらしい」

乙女「……じゃない?」


火王「……うわあああ!!」

287: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:02:44.40 ID:zozdBxOjo
乙女「大きな声を出さないで、うるさいわよ」

火王「私は! 私は、裏切ってしまった!」

乙女「ねえ、聞いてるの?」

火王「浮気……しかも、事もあろうに敵とだ!」


乙女「あのね、声を抑えてくれない?」

乙女「そんなだから、あの時も声が大きいのよ」


火王「どの時――」

火王「――……言うな! 頼む、言わないでくれ!」

288: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:05:48.46 ID:zozdBxOjo
乙女「だったら、声を小さくして頂戴」

火王「……わかった」

乙女「そうそう、良い子ね」

火王「私は……どうすれば……!」


乙女「……あのね、火の四天王」

乙女「あまり、被害者ぶらないで貰えるかしら?」


火王「……」

火王「えっ?」

289: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:08:57.15 ID:zozdBxOjo
乙女「覚えてないみたいだけど、貴女……ノリノリだったわよ?」

火王「ばっ、馬鹿な! 有り得ん!」

乙女「……何? 本当に、覚えてないの?」

火王「覚えていたら、正気を保てているものか!」


乙女「――んー、ちゅ~っ! ちゅ~う~っ!」

乙女「って、貴女――」


火王「わ――っ!?/// わ――っ!?///」

290: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:11:56.08 ID:zozdBxOjo
火王「う……嘘だろう!?///」

乙女「良かったわね、火の四天王」

火王「! やはり嘘か! 驚かせる――」

乙女「いえ、そうじゃなくて」


乙女「結婚していなくても、ブレスは出なかったわよ」

乙女「もんのすごいディープなキッスをしても」


火王「ひああああ!?(ボワッ)/// ひああああ!?(ボワッ)///」

291: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:15:42.36 ID:zozdBxOjo
火王「有り得ない!/// そんな、ふしだらな!///」

乙女「まあ、最初のキスは恐る恐る……チュッって感じだったわね」

火王「だろう!? そこから、無理矢理――」

乙女「ええ」


乙女「チュッとしたら、目を見開いてね」

乙女「そこからはもう、スリスリベタベタ……」

乙女「言葉遣いも、なんだか幼くなっちゃって、もう」


火王「おぶっふ!?(ボワァッ)///」

292: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:19:25.00 ID:zozdBxOjo
乙女「それで、やっと会えただの……」

火王「そんな! そんなっ……!」

乙女「ずっと、探してただの……」

火王「探してなどいなかった……!」


乙女「――本当に、見せつけてくれたわ」

乙女「恋人の私が見てるっていうのに」


火王「……」

火王「えっ?」

293: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:24:32.30 ID:zozdBxOjo
火王「私は、お前と……その、しっ、しちゃった訳では無いのか?」

乙女「当たり前でしょう?」

火王「なっ、何だと!?」

乙女「……はあ、本当に何も覚えてないのね」


乙女「……貴女としたのは、私の恋人」

乙女「大地の魔女のお姉様よ」


火王「おっ……お姉様……?」

294: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:30:56.36 ID:zozdBxOjo
火王「だが、待て……待ってくれ……!」

乙女「一対一の決闘じゃなく、集団戦闘だったの」

火王「はっ……ほっ……!?」

乙女「まあ、結果は私達の惨敗だったけれど、ね」


乙女「交互でも、一対二でも……凄かったわ、お姉様///」

乙女「……ふふっ!」

乙女「今度は、二人がかりででも、一矢報いましょうね?」


火王「……すまない、少し時間をくれ」

火王「は、破廉恥すぎて……理解が追いつかない……!」

296: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:36:11.06 ID:zozdBxOjo
乙女「あの夜、一番破廉恥だったのは貴女だけれどね」

火王「ういっ!?(ボワッ)///」

乙女「あと……一つ、お願いがあるんだけど」

火王「おっ、お願い……!?///」


乙女「貴女、盛り上がると龍の翼が出るみたいなの」

乙女「ただ、あまりパタパタされると邪魔なのよね」


火王「つっ……つつつ、翼まで出ていたのか!?(ボワァァッ)///」

297: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:45:15.96 ID:zozdBxOjo
乙女「何? そんなに驚くこと?」

火王「わ……私の魔力の源は、喜びの感情なんだ……」

乙女「ふぅん、そうだったのね」

火王「強者と戦える喜びが溢れた時、龍の翼が出るんだが……」


乙女「性の喜びが溢れて、翼が出たのね」

乙女「戦闘狂かと思いきや、色情狂だったって事かしら」


火王「っ……!(ボワッ)/// っふぅっ……!(ボワァッ)///」

298: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:53:00.35 ID:zozdBxOjo
火王「私が、そんなっ……!」

乙女「残念だけど、事実は変えられないわ」

火王「う……うあぁっ……!」

乙女「……ふふっ」


乙女「――ようこそ、火の四天王」

乙女「貴女はもう……私と同じ」

乙女「――お姉様の、妹なのよ」


火王「やめろ……! やめてくれぇっ……!」

299: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 22:57:08.57 ID:zozdBxOjo
火王「私には――婚約者が居る!」

乙女「それは、運命の相手じゃなかったのよ」

火王「そんな……そんな事……!」

乙女「いいえ、貴女の体は知っていたわ」


乙女「貴女の運命の相手は――大地の魔女」

乙女「これは、何があろうと揺るがないわ」


火王「う……ううっ……!」

…ガクッ!

300: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 23:06:23.12 ID:zozdBxOjo
乙女「……火の四天王」

火王「……」

乙女「私は、貴女のあの時の喜び様が忘れられないわ」

火王「……」


乙女「大地の魔女のお姉様と、唇が触れ合った時」

乙女「あの時の貴女は、とても嬉しそうな顔をしていたわ」


乙女「――まるで、探し求めていたものを見つけたみたいに」


乙女「……ね」


火王「……剣の乙女」

301: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 23:11:23.37 ID:zozdBxOjo
乙女「認められないなら、お願いしてみなさいよ」

火王「お願い……?」

乙女「私も、貴女だから……許してあげるんだから」

火王「何をだ……?」


乙女「酔っていない状態で、大地の魔女のお姉様とキスをするの」

乙女「その時、貴女が感じた想いに……素直になれば良いわ」


火王「……少し」

火王「少しだけ……考えさせてくれ」

302: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 23:18:24.99 ID:zozdBxOjo
  ・  ・  ・

乙女「……はぁ、本当に世話が焼けるんだから」

乙女「……」

乙女「――そこに居るのは、わかってるわよ」

乙女「隠れてないで、出てきなさい」


風の四天王(以下、風王)「……」


乙女「御機嫌よう、とは言わないのかしら?」


風王「……ああ、まあね」

303: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 23:28:34.47 ID:zozdBxOjo
乙女「それで? 貴女の探しものは見つかったの?」

風王「……ああ、見つけるには見つけたよ」

乙女「あら、良かったじゃないの」

風王「だけど、まだ戻れないと……言われてしまったんだ」


風王「――女の僕を選ぶ、と」

風王「……そう、言ってくれはしたんだけどね」


乙女「……」

乙女「ん?」

304: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 23:41:44.24 ID:zozdBxOjo
乙女「貴女の想い人って、男性よね?」

風王「ああ、そうだよ」

乙女「……そうよね、私の勘違いよね」

風王「勘違い?」


乙女「貴女の想い人が――」

乙女「――私の恋人、大地の魔女のわけないものね」


風王「……」

305: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 23:49:24.22 ID:zozdBxOjo
風王「……少し、意地悪をしようかな」

乙女「何? 意地悪?」

風王「僕と君は、元々敵同士だからね」

乙女「……何を勿体ぶってるのかしら」


風王「――僕と、大地の魔女は……ある秘密を共有している」

風王「それも……とてもとても、重大な秘密を」


乙女「……何なの、それは」

306: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/09(金) 23:56:10.26 ID:zozdBxOjo
風王「ははっ、さあてね!」

フワッ…


乙女「っ、待ちなさい! 話は終わってないわ!」


風王「気になるなら、直接本人に聞いてみると良いさ」

風王「――私に、何か隠し事をしてませんか?」

風王「ってね! ははははっ!」


乙女「風の四天王! 待ちなさい!」

乙女「……」

乙女「……逃げ足の早い……!」

307: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 00:04:17.12 ID:Dg3S28BXo
  ・  ・  ・

大地の魔女(以下、地女)「光の勇者よ、気付いているか?」

光の勇者(以下、勇者)「……ああ、二人の様子がおかしい」


地女「剣の乙女は――最近、剣筋に迷いが見られる」


勇者「祝福の聖女は――近頃、何か思い悩んでるみたいだ」


地女「どうするのだ、リーダー」


勇者「……」

308: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 00:10:10.47 ID:Dg3S28BXo
地女「聖女の悩みとは、恐らく……」

勇者「……」


地女「光の勇者よ」

地女「お前との、恋の行方に関する事だろう」


勇者「……多分、そうなんだろうな」

勇者「そして、剣の乙女の迷いってのは……」


地女「……うむ」

地女「……サッパリわからんなぁ」


地女・勇者「……」

309: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 00:18:29.69 ID:Dg3S28BXo
地女「……よし! ここは任せて貰おう!」

勇者「何?」

地女「なぁに、お前には世話になっているからな!」

勇者「まあ……本当にそうだな」


地女「今の俺は、見た通り美少女だ!」

地女「つまり、ガールズトークすらお手の物よ!」


勇者「……今みたいな状況は、初めてなんだ」

勇者「だから……何だ、その……」


地女「ええい、皆まで言うな! 光の勇者よ!」

地女「大船に乗ったつもりで――」


地女「地の四天王に、全て任せておけ!」



おわり

318: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:06:14.05 ID:Dg3S28BXo
書きます


地の四天王「光の勇者よ、お前は留守番だ!」

320: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:11:24.42 ID:Dg3S28BXo
光の勇者(以下、勇者)「いやお前……その格好」


地の四天王「む? おお、そうだったそうだった!」

パァァ……ァァァ

大地の魔女(以下、地女)「――うむ! これで美少女だな!」


勇者「自分で言うんじゃねえ!」

勇者「っつーか、服くらい着ろ!」

321: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:16:00.83 ID:Dg3S28BXo
地女「良いではないか、減るものでもなし」クネッ

勇者「色っぽいポーズ決めんな!」

地女「やれやれ、朝から元気だな」

勇者「……っていうか、なんで元の姿に戻ってたんだよ?」


地女「む? おお、昨晩は闇の魔王様がお忍びで来ていてな?」

地女「それで、まあ……なっ? わかるだろう?」


勇者「ああもう、お前本当何なの!?」

322: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:19:22.32 ID:Dg3S28BXo
地女「今は、大地の魔女――お前達の仲間だ」

勇者「……本当に、頼むぞ」

地女「うむ、祝福の聖女と、剣の乙女の事は任せておけ」

勇者「……本当の、本当に頼むからな」


地女「光の勇者よ、お前には世話になっている」

地女「それに俺は、このパーティーが気に入っているのだ」

地女「俺に出来る事ならば、喜んでやろうではないか」


勇者「……四天王の言葉とは思えないよな、本当に」

323: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:22:32.62 ID:Dg3S28BXo
  ・  ・  ・

祝福の聖女(以下、聖女)「あの……お話って、何ですか?」

地女「まあまあ! まずは、ケーキを食べるぞ!」

聖女「……」

地女「この店のケーキは、街でも評判なのだ!」


地女「――ケーキは、悩みごとを解決してはくれん」

地女「だが、食べれば幸せな気分になるだろう?」


聖女「……大地の魔女さん」

324: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:26:52.43 ID:Dg3S28BXo
聖女「……私が悩んでるのに、気付いてたんですね」

地女「当たり前だろう?」

聖女「えっ?」

地女「加入して日が浅いが、もうパーティーの仲間なのだからな!」


地女「……ままっ、そんな事はどうでも良い!」

地女「ケーキはいくつ食べる? 二つか? 三つでも良いぞ!」


聖女「ひ、一つで十分です」

325: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:32:16.04 ID:Dg3S28BXo
聖女「……すみません、ご迷惑をおかけして」

地女「むう?」

聖女「私のために、こんな事まで……」

地女「何を言っているのだ」


地女「今日は、ケーキを食べて女子トークをしに来ただけ」

地女「迷惑だとは、微塵も考えてはいないぞ」

地女「……食べ終わって、美味しかった、との礼は受け取るがな!」


聖女「……ふふっ」

聖女「……ありがとう、ございます」

326: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:36:47.63 ID:Dg3S28BXo
地女「お前が話したいというなら、聞くのもやぶさかではない」

聖女「……」

地女「言えないというのなら、それもまた良し」

聖女「……大地の魔女さん」


地女「ただ、礼を言われる時は、笑っていて欲しいものだな!」

地女「最近の作り笑いでない……先程のような、自然な笑顔で」


聖女「……うふふっ」

聖女「美味しくてお礼を言うって、決まってるんですね!」

327: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:40:59.23 ID:Dg3S28BXo
聖女「……少しだけ、相談しても良いですか?」

地女「うむ! かかってくるが良い!」

聖女「これは……私の友達二人の話なんですが」

地女「二人?」


聖女「私の友達二人が……悪い、一人の男に弄ばれてるんです」

聖女「けれど……二人共、その男を信じているんです」

聖女「私は……その事を告げるべきなんでしょうか?」


地女「……とんだ悪人が居たものだな!!」

328: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:44:31.22 ID:Dg3S28BXo
地女「何処の痴れ者だ、その男は!」

聖女「それは……約束なので、言えないんです」

地女「ふむ……そうなのか」

聖女「二人共、私を信頼して……相手が誰か教えてくれたんです」


地女「……祝福の聖女」

地女「お前は、よっぽどその二人に信頼されているのだなぁ」


聖女「……はい」

329: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:46:30.98 ID:Dg3S28BXo
聖女「お互い、立場があるけれど……とっても仲良しなんです」

地女「どちらも、得難い友人という訳か」

聖女「……はい」

地女「……ならば、答えは決まっている」


地女「祝福の聖女よ」

地女「その事で悩むのは、もうやめるのだ」


聖女「……」

聖女「えっ?」

330: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:56:12.48 ID:Dg3S28BXo
地女「お前の悩みとは、そもそも他人の恋愛」

聖女「だ、だけどっ!」

地女「それにな? 祝福の聖女よ」

聖女「……何ですか」


地女「その二人が、男を信じ切っているのならば……」

地女「女同士の、壮絶な戦いが始まるかも知れんぞ?」


聖女「あり得……無いとも言い切れない!!」

331: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 21:59:24.16 ID:Dg3S28BXo
地女「だから、放っておくのが一番なのだ」

聖女「でも……私は、どうしたら……」

地女「何を言っているのだ? そんなものは決まっている」

聖女「えっ?」


地女「まず、食べるケーキを選ぶ!」

地女「甘い物無くして、女子トークとは言えないからな!」


聖女「……」

聖女「あ……あはははっ!」

332: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 22:03:09.85 ID:Dg3S28BXo
聖女「……何も解決してないけど、ちょっと気が楽になりました」

地女「うむ! それは良かった!」

聖女「でも……また、その事で悩むと思います」

地女「難儀な性格だな」


聖女「その時は……また、お話を聞いて貰えますか?」


地女「任せておけ!」ニコッ!


聖女「そ……それと、ですね……?」

聖女「あの……お姉ちゃん、って呼んでもいいですか……?」

333: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 22:06:28.00 ID:Dg3S28BXo
  ・  ・  ・

剣の乙女(以下、乙女)「――ふっ!」

ブンッ!

乙女「……くっ」


「――剣の乙女よ、此処に居たのか」


乙女「……お姉様」


地女「うむ! 大地の魔女のお姉様なのだ!」

334: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 22:10:00.04 ID:Dg3S28BXo
乙女「……どうして、此処に?」

地女「迷っていたら、辿り着いた……というのは、どうだ?」

乙女「……」

地女「まあ、それは冗談としてだ」


地女「剣を振るう時には、迷うな」

地女「お前の剣技には、迷いは似合わない」


乙女「……お姉様」

335: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 22:12:57.30 ID:Dg3S28BXo
乙女「あ……あのっ!」

地女「む? 何だ?」


乙女「大地の魔女のお姉様……!」

乙女「お姉さまは、私に何か隠していませんか!?」


地女「うむ!」

地女「お前には、沢山の事を隠しているぞ!」


乙女「えっ、あ……いえ、あのっ!?」

乙女「そんなに開き直られると……え、ええっ!?」

336: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 22:17:53.80 ID:Dg3S28BXo
地女「誰でも、隠し事の十や二十はあるものだろう?」

乙女「一つや二つ、ではなく!?」

地女「ふはは! 恐れ入ったか!」

乙女「多すぎます! 何を隠しているんですか!?」


地女「剣の乙女よ、とりあえず一つ教えよう!」

地女「隠し事のある女というのは、何故か魅力的なのだ!」


乙女「何か違います、お姉様!」

乙女「私の質問への答えとしては、何か違います!」

337: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 22:24:11.29 ID:Dg3S28BXo
地女「違ったか?」

乙女「違うわよ! 私が聞いたのは、秘密! 秘訣じゃないわ!」

地女「おおっ、やはりお前は敬語よりそっちの方がいいな!」

乙女「きゅ、急に何を……」


地女「それで? この大地の魔女の何が知りたい?」

地女「遠慮せずに、何でも聞くが良い!」


乙女「な、何が……って……」

338: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 22:30:35.60 ID:Dg3S28BXo
乙女「……」

地女「さあ、遠慮するな! 答えるとは限らんがな!」

乙女「……ふふっ、何よそれ?」

地女「年長者として、出来る限りは答えよう!」


乙女「……やめておくわ」

乙女「だって、隠し事が魅力なら……えっ!?」

乙女「まっ、待って!? 年長者って言った!?」


地女「む? 言っていなかったか?」

339: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 22:39:05.79 ID:Dg3S28BXo
乙女「だって、どう見ても私より年下じゃないの!」

地女「魔法で姿を変えているのだ」

乙女「ま……待って……! えっ、ちょっと……!」

地女「どうした? 頭が痛いのか?」


乙女「あ、貴女は……一体、何者なの?」

乙女「どうして、此処に居るの?」


地女「大地の魔女は、迷う少女を助けに来た」

地女「仲間を助けるのは、当然の事だからな!」


乙女「しょ……少女って……!///」

340: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 22:44:34.30 ID:Dg3S28BXo
地女「剣の乙女よ、お前に聞こう!」

乙女「……私に、何を?」

地女「そんなものは、決まっている!」

乙女「……」


地女「最近、お前の剣には迷いが見られる!」

地女「その理由、話して貰うぞ!」

地女「さあ……ガールズトークの始まりなのだ!」


乙女「……」

乙女「へっ?」

341: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 22:48:30.99 ID:Dg3S28BXo
乙女「ねえ……全然、何もわかってなかったの?」

地女「ああ、サッパリな!」

乙女「……」

地女「わからない事は聞く! ふはは、素直だろう!」


乙女「……ふふっ」

乙女「あっ、あはははっ! 何よ、それ!」

乙女「ふふふっ、あはっ、あははははっ!」


地女「むう……?」

地女「どうして笑っているのだ……?」

342: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 22:57:46.51 ID:Dg3S28BXo
  ・  ・  ・

地女「――と、言う訳だ! 二人共、元気になったぞ!」

勇者「……お前、凄いな」

地女「光の勇者よ、もっと褒め称えても構わんぞ!」

勇者「いや……素直に凄いと思った」


地女「――祝福の聖女の悩み」

地女「一瞬だけ、俺のことかとも思ったがな?」

地女「俺は、  ちゃった数は二人ではきかぬ!」

地女「それに、酔ってただけで、弄んだつもりはない!」

地女「――だから、どこかのクズの話なのだ!」


勇者「いや、お前の方がクズだろう!?」

343: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 23:05:44.52 ID:Dg3S28BXo
地女「光の勇者よ、俺の事よりも、聖女に笑顔が戻った事を喜べ」

勇者「……俺が聞いても、大丈夫としか言ってくれなかったからな」

地女「愛する者に心配をかけまいと……健気ではないか」

勇者「あ、愛するって……う、うるせえよ!///」


地女「――剣の乙女の迷い」

地女「あれは恐らく……まあ、何だ」

地女「……年齢に関する事だな」

地女「ほら……今の俺の見た目は美少女だろう?」

地女「だから、まあ、色々とな? 気を付けていこうな?」


勇者「……ああ、そうだな」

344: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 23:14:54.95 ID:Dg3S28BXo
地女「それに……安心ばかりもしてられん」

勇者「お前は、安心してる暇なんか全く無いと思うぞ」

地女「それを言うならば、お前もだぞ? 光の勇者よ」

勇者「……あん?」


地女「光の勇者よ!」

地女「祝福の聖女に、お前からキスをし――」

地女「――舌を入れるのだ!」


勇者「……」

勇者「…………」


勇者「はっ?」

345: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 23:21:33.31 ID:Dg3S28BXo
勇者「まっ、待て! 待て待て待て待て! 何だそれ!?」

地女「いやぁ! 女子トークをしてたら、つい……な?」

勇者「つい!? 何でだ!? どうしてそうなった!?」

地女「うむ!」


地女「なんか、楽しくなっちゃってな?」

地女「――次は、勇者からキスをしてくると予言しよう!」

地女「――それも、とても熱いキスだ!」

地女「そう言って、盛り上がっちゃったのだ」


勇者「何してくれてんだよお前はよおおおおお!?」

346: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/10(土) 23:32:01.48 ID:Dg3S28BXo
地女「光の勇者よ、お前も男だろう!」

勇者「だけど、お前……!」

地女「祝福の聖女は、待ち望んでいるのだぞ! 物凄く!」

勇者「お前のせいでな! ってか、物凄くとか言うんじゃねえ!」


地女「ふはは! 観念するが良い、光の勇者よ!」

地女「お前は、決して逃れられぬ!」

地女「この新たな力――お姉ちゃんパワーからはな!」


勇者「めんどくせえ力をつけてんじゃねえええええ!!」



おわり

350: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 19:16:29.34 ID:y970MzfQo
書きます


闇の魔王「地の四天王は、お前達の中でも最弱」

351: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 19:21:01.50 ID:y970MzfQo
闇の魔王(以下、魔王)「お前達が居れば、問題あるまい」


火の四天王(以下、火王)「……」

水の四天王(以下、水王)「……」

風の四天王(以下、風王)「……」


魔王「――捨て置け」


魔王(……と、命じておけば良いだろう)

魔王(奴が戻っては、二人の時間が取りにくくなってしまう)

352: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 19:26:33.70 ID:y970MzfQo
水王「――魔王様の仰る通りですわ」

水王「そもそも、私はあの男が四天王である事が疑問でしたの」

水王「あの男は……ねぇ?」


水王「――品位というものが、欠けていますでしょう?」


水王(いやあああああ!! いやあああああ!!)

水王(一刻も早く、彼を探したいのに!!)

水王(……ああっ、昔の私はなんて愚かだったのかしら!)

水王(職場では仲が悪いフリを続けよう、なんて……どうして!)

353: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 19:31:37.01 ID:y970MzfQo
火王「――確かに、水の四天王の言う通りだ」

火王「奴は、四天王を名乗るには力も足りていなかった」

火王「ふん! 居なくなって、清々した!」


火王「――真の強者しか、私は認めん」


火王(うわあああああ!! うわあああああ!!)

火王(浮気をしてしまって気まずいからと、何て事を!!)

火王(ででででも! 強くなったら帰って来ると!)

火王(……どんな顔して会えば良いんだあああああ!!)

354: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 19:38:43.80 ID:y970MzfQo
風王「――僕の意見も、似たようなものかな」

風王「彼は、美しくなかった」

風王「上に立つ者として、相応しい容貌とは言えなかったからね」


風王「――ブ男が居ては、気分が盛り下がるよ」


風王(――さあ、考えろ考えろ考えろ!!)

風王(如何に彼を――地の四天王を切り捨てさせるか!)

風王(戻るべき場所を失った彼は、僕の元へ来るしかなくなる!)

風王(いや、いっそ二人で何処か遠くへ……あっ、良い! それ良い!)

355: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 19:43:01.77 ID:y970MzfQo
魔王「……ふむ」

魔王「お前達の意見がここまで揃うとは、珍しいな」


火王・水王・風王「……」


魔王「奴が戻っても席が無いのならば……ふふっ!」

魔王「――いっそ、余の小間使いでもさせるかな」


火王・水王・風王「……」

火王・水王・風王「えっ!?」

356: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 19:49:35.45 ID:y970MzfQo
魔王「どうした? 何を驚く事がある」


魔王(……ふん、命拾いしたな)

魔王(余の前で、奴を侮辱するなど……到底許せるものではない)

魔王(――だが、今日の余は寛大だ)

魔王(昨晩、奴の所へ赴きイチャコラして来たばかり……)


魔王「奴でも、それ位は務まるであろう」


魔王(――そして!)

魔王(この案を通せば、二人の時間が増えると言うものよ!)

357: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 19:58:56.01 ID:y970MzfQo
水王「――まあ、そんな!」

水王「……魔王様、恐れながら申し上げます」

水王「あんな野蛮人に、小間使いが務まるはずがありませんわ」


水王「――ふふっ、お戯れも程々になさってくださいな」


水王(小間使いなんて出来るはずないわ!)

水王(彼は、全然気が利かないし、器用でも無いし!)

水王(だからこそ、誰かが支えてあげないと……!)

水王(……おはようから、おやすみなさいまで!)

358: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 20:05:22.30 ID:y970MzfQo
火王「――魔王様の側に仕えるなら、強くなくては」

火王「奴が、魔王様の戦いの邪魔になる事も有り得る」

火王「……例え、どこで何をしていようとも――」


火王「――奴が、その資格を持てるとは思えない」


火王(戻ってきたら、私と結婚するんだから!)

火王(強くなって帰ってきて、プロポーズを――)

火王(――された時……なんと言えば良い……?)

火王(お前以外の者に体を弄ばれ、喜んでしまっていたと!?)

359: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 20:14:22.67 ID:y970MzfQo
風王「――!」

風王(これは……好機!)


風王「――闇の魔王様」

風王「地の四天王が戻ったら、僕に預けて貰えませんか?」


魔王「えっ?」

魔王(ほう?)


水王・火王・風王「えっ?」


魔王「……」

魔王「……ほう?」

362: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 20:21:34.23 ID:y970MzfQo
魔王「風の四天王よ、其方は何を考えている?」

魔王「……申してみよ」


水王(今……魔王様、「えっ?」って素で仰ったわ)

火王(今……魔王様、「えっ?」と素で言われたぞ)

風王(今……魔王様、「えっ?」って素で言ったよね)


風王「……」

風王「僕が、彼を教育します」

風王「……魔王様の側に仕えるに相応しい者に」


風王(教育期間は……彼が、僕のものになるまで!)

363: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 20:28:13.87 ID:y970MzfQo
魔王「……ふむ、成る程」

魔王「其方ならば、属性の相性も良い」

魔王「……躾をするには、適任という訳か」


魔王(だが! それでは、余との時間が今よりも減ってしまう!)

魔王(風の四天王の目を欺くのは、余とて容易ではない!)

魔王(――いっそ、皆に余と奴の関係を告げるか!?)

魔王(嗚呼、そうだ! そうすれば――)


火王・水王「――お待ち下さい」


魔王「……む?」


風王「……!」

364: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 20:36:49.73 ID:y970MzfQo
水王「――教育係ならば、私にお任せを」

水王「主に仕えるとは、どういう事か……」

水王「この、水の四天王が教えて差し上げますわ」


水王(凄い……凄いわ、風の四天王!)

水王(教育係になれば、彼と二人っきりになり放題じゃない!)

水王(二人でお買い物に行って、ふ、夫婦と間違われたり……!)

水王(嗚呼、駄目よ! 「うむ!」だなんて……もう! もうっ!)


魔王「……ふむ」

365: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 20:43:14.35 ID:y970MzfQo
火王「――いや、私にお任せください」

火王「奴は、武人として私が鍛え直してくれる」

火王「魔王様、その任……この、火の四天王に」


火王(けっ、こっ、けこっ、結婚前に! 同棲期間が!)

火王(ぱ、パパ! 「孫の顔が見たい」なんて、そんな!)

火王(いや、しかし私は……ああっ、「うむ!」と、言われても!)

火王(だが……う、「生む!」なーんて……あ、出る! 翼出る!)


魔王「……ふむ」

366: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 20:49:43.05 ID:y970MzfQo
風王「――何を言ってるんだい、君達」


水王・風王「?」


風王「水の四天王」

風王「君は、属性的に彼を抑えられないだろう?」

水王「……確かに、そうですわね」

水王(相性は良いんですのよ! 何のとは言えませんけれど!)


風王「火の四天王」


火王「何だ?」

―バサァッ!


風王「……熱いから、翼をしまって貰えるかな?」

367: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 20:57:05.08 ID:y970MzfQo
火王「む……これはすまなかった」

火王「魔王様のお役に立てる喜びに、我が身の抑えがきかなんだ」

火王(あわっ! わ、わっわわっ!?)


風王「――君は、なんだかんだで情に厚いからね」

風王「訓練ならばともかく、躾は向いていないと思うよ」

火王「……確かに、お前の言う通りかも知れん」

火王(子供が出来たら……し、叱れない! 甘やかしてしまう!)


風王「闇の魔王様」


魔王「……」


風王「地の四天王の教育係は、僕にお任せください」

風王(ふふふ……ははははっ! やった! やったぞ!)

368: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 21:10:16.86 ID:y970MzfQo
風王「……」

風王(地の四天王……君は、僕の物になる!)

風王(当然だろう? 僕に、屈辱を味あわせたんだから!)

風王(ふふふ……! 楽しみでしょうがないよ……!)

風王(地の四天王、君が僕に直に与えてくれる――)


風王(――辱めの数々が!)


風王「……!」ゾクゾクッ!


水王・火王「くっ……!」

水王・火王(風の四天王め……!)


魔王「……」

369: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 21:19:00.29 ID:y970MzfQo
魔王「――其方達の申し出はわかった」


水王・火王「っ!」

風王「!」

風王「では――!」


魔王「が、決めるのは今ではない」

魔王「奴に――地の四天王に、選ばせようではないか」

魔王「……誰の元へ行くかをな」


水王・火王・風王「!」


魔王「……ふふっ、己の運命を選ばせてやると言うのだ」

魔王「これ程慈悲深い裁きはあるまい?」

371: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/11(日) 21:32:58.74 ID:y970MzfQo
水王「……成る程、さすがは魔王様」

水王(やりましたわ――っ! 私、とっても有利じゃないの!)


火王「……寛大なご処置を賜るとは、奴は幸せ者です」

火王(私も幸せです! 私達……幸せになります!)


風王「……それは、今から楽しみですね」

風王(彼は、僕を選んでくれる! ああっ、なんて待ち遠しいんだ!)


魔王「地の四天王が誰を選ぶのか……見物だな」

魔王(余を選ぶ事は、最早決まっているのだがな……うふふっ!)



魔王・水王・火王・風王「――ふふふふふっ!」




おわり

379: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 20:23:41.50 ID:bWcFzkNHo
書きます


地の四天王「光の勇者よ、いざ出陣の時!」

380: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 20:27:18.76 ID:bWcFzkNHo
光の勇者(以下、勇者)「いや……お前、出陣とか言うなって……」

地の四天王(以下、地王)「ええい、なんだその腑抜けた顔は!」

勇者「いや、だからな……」

地王「気合を入れろ! 歯を食いしばれ!」


地王「祝福の聖女と、熱い口付けをしに行くのだろう!」

地王「この俺自ら、歯の磨き残しが無いかチェックしてくれるわ!」


勇者「余計な気を回してんじゃねえええええ!」

381: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 20:30:09.44 ID:bWcFzkNHo
勇者「そもそも! なんでそう思うんだよ!?」

地王「ふん! わからぬと思ったか!」

勇者「だから、何でだっての!」

地王「知れたこと!」


地王「――今晩、大事な話があるんだ」

地王「……そう言われたと、祝福の聖女に相談されたからよ!」


勇者「筒抜けじゃねえか糞があああああ!」

382: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 20:34:27.21 ID:bWcFzkNHo
地王「ふはは! 普段の俺は、大地の魔女だからな!」

勇者「ああ、そうだな! お姉ちゃんとか呼ばれてるもんな!」

地王「うむ! 色々アドバイスしておいたぞ!」

勇者「お前、本当余計な事ばっかしてくれるよな!」


地王「光の勇者よ、お前はもう逃げられぬ!」

地王「祝福の聖女の愛と――」

地王「――この俺の! お姉ちゃんパワーからはな!」ムキムキッ!


勇者「姉ぶるのは、せめて女の姿の時にしてくれ!」

383: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 20:38:58.01 ID:bWcFzkNHo
勇者「そもそも! なんでその姿で居るんだよ!」

地王「何? わからんのか?」

勇者「……魔王が来てたんだな! ああ、そうだろうよ!」

地王「む? それは違うぞ、光の勇者よ」


地王「女の所へ行く男を見送るのに、女の姿では締まらんだろう」

地王「仲間として……男として、決戦に赴くお前を送り出すためだ」


勇者「……変な気遣いすんなよな」

384: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 20:43:48.41 ID:bWcFzkNHo
地王「そもそも、何が不満なのだ」

勇者「あん?」

地王「宗教関連? 女神に見られている気がする?」

勇者「……」


地王「そんなもの、女神教を滅ぼしてしまえば良いだろう」

地王「女神には、まあ……なんだ」

地王「見せつけてやれば良いのだ! 余す所なくな!」


勇者「大雑把過ぎるアドバイスをありがとうよ!!」

385: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 20:48:16.51 ID:bWcFzkNHo
地王「何か、他に気になることでもあるのか?」

勇者「……言いたくねえ」

地王「ふむ、ならば当ててやろう」

勇者「……」


地王「お前達――光の勇者、祝福の聖女、剣の乙女は三人」

地王「二人が付き合うと、残った一人が非常に気まずいから……だろう?」


勇者「……まあ、それはある」

386: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 20:51:40.80 ID:bWcFzkNHo
地王「今は、俺が居るではないか」

勇者「お前は地の四天王で敵だけどな!」

地王「ええい! いい加減、腹をくくれ!」

勇者「お前には言われたくねえ台詞だよ!」


地王「祝福の聖女は、今日は薄化粧をしてくる!」

地王「照れていないで、褒めるのを忘れるなよ!」


勇者「お前……お前本当さあああああ!?」

387: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 20:57:35.23 ID:bWcFzkNHo
勇者「なんでそこまで詳しいんだよ!?」

地王「無論! 俺が、聖女のお姉ちゃんだからだ!」

勇者「なんでそこまで親身になってんだよ!?」

地王「……ふっ」


地王「愛の女神の祝福とは……恐ろしいな」

地王「お姉ちゃん、と呼ばれるとな?」

地王「任せなさい! という気分になってしまうのだ」


勇者「祝福関係あんのかそれ!?」

388: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 21:03:20.44 ID:bWcFzkNHo
  ・  ・  ・

闇の魔王(以下、魔王)「祝福の聖女よ、其方に力を授けよう」

祝福の聖女(以下、聖女)「!? な、何を言って……!?」

魔王「この宝石には、余の闇の魔力が込められている……」

聖女「闇の魔力が!? う、受け取れません!」


魔王「この宝石に、影よ、と念じるのだ」

魔王「さすれば……三時間は女神の目すら欺けるだろう」


聖女「さ、三時間!? それに……どんな意味が!?」

389: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 21:09:17.89 ID:bWcFzkNHo
魔王「其方は、今宵……光の勇者と口付けを交わすのだろう?」

聖女「ふえっ!?/// ど、どうしてそれを!?///」

魔王「余の魔眼は、其方の考えなど全て見通している」

聖女「ま……まさか、心を!?」


魔王「普段は、男では気付かぬ……肌の色を整える程度」

魔王「だが、今日は――色付きのリップもしているのでな」


聖女「はいっ! 街で見かけた、唇がプルプルに見え――」

聖女「……心を読まれた方がマシな感じです!///」

390: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 21:15:22.68 ID:bWcFzkNHo
聖女「だけど……どうして、そんな物を?」

魔王「……先日、余の発言が其方を不快にさせてしまったからな」

聖女「あ、あれは……魔王さんが悪いんじゃありません!」

魔王「ならば、ただの贈り物として受け取るが良い」


魔王「……次の機会には十四時間のものも用意しよう」

魔王「今後、必要になってくるだろうからな」


聖女「ですから、どうして女神様の目を欺く必要が!?」

391: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 21:20:19.32 ID:bWcFzkNHo
聖女「私達は、女神様にやましい事はありません!」

魔王「……ふむ」

聖女「キスだって、その……神様の前で、誓いのキスもしますし!///」

魔王「……祝福の聖女よ」


魔王「其方は、甘いな」

魔王「光の勇者と言えども……奴は男なのだぞ?」


聖女「男だから何だって言う……」

聖女「……」

聖女「あっ」

392: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 21:32:07.83 ID:bWcFzkNHo
聖女「いや……いやいやいや!/// えっ、ええっ!?///」

魔王「祝福の聖女よ、其方は……深い口付けを侮っている」

聖女「いやっ、でも!/// そんな……えー!?/// ええーっ!?///」

魔王「余とて、あれには抗う術を知らぬ」


魔王「闇の魔王の言葉が信じられぬか?」

魔王「ふふっ……どうする?」

魔王「――祝福の聖女よ」


聖女「……」

聖女「…………」


聖女「……わあっ、とっても素敵な宝石ですね!」

聖女「ありがとうございます、魔王さん!」

393: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 21:42:12.31 ID:bWcFzkNHo
聖女「やましい事は……やましい事は、ありませんけど!」

魔王「見られながらと言うのも、な」

聖女「ほ、他に……何か、気をつける事ってありますか?」

魔王「……ふむ、そうだな」


魔王「祝福の聖女よ、流れに身を任せすぎるな」

魔王「――相手は、光の勇者」

魔王「――其方は、祝福の聖女」

魔王「今、愛の奇跡が起きては……困るであろう?」


聖女「きっ、気をつけます!」

聖女「その奇跡に関しては……二人で相談して……」

聖女「けっ、計画的に!/// 計画的にミラクルします!///」

394: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 21:53:18.72 ID:bWcFzkNHo
  ・  ・  ・

地王「――ふはは! 思い通りに事が進んだわ!」

地王「光の勇者……そして、祝福の聖女!」

地王「――なんと、御しやすい!」

地王「今日のこの状況が――」


地王「この、地の四天王と!」

地王「闇の魔王様の狙い通りだとも知らずに!」

地王「……ふはははっ! ふっはははははっ!」


地王「……この旅が終わったら、なーんぞ認められるものか!」

地王「その時は、奴らか俺たちのどちらかが倒れているではないか!」


地王「光の勇者と、祝福の聖女に――幸あれ!」


地王「はっはっは! はぁっはははははっ!」

396: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 22:02:20.85 ID:bWcFzkNHo
地王「……さて、今宵はもう何の予定も無い」

地王「魔王様も、城に戻り……静かに応援すると言っていたからな!」

地王「――むん!」


パァァ……ァァァ


大地の魔女(以下、地女)「――ならば、この大地の魔女は!」

地女「昼に買っておいた、菓子を食べるまでよ!」


地女「……いや、待つのだ」


地女「――今は、飲みに行くなという勇者が居ない」

地女「つまり……」


地女「……完全に自由だな?」

397: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 22:10:52.51 ID:bWcFzkNHo
地女「……」

地女「――ぬうう! リーダー不在とは!」

地女「ええい! 光の勇者め、面倒をかけさせてくれる!」

地女「こうなったら、各々が判断し行動する他あるまい!」

地女「……ならば!」


地女「――いざ、酒場♪」

ぴょいんっ♪


ガチャッ!


火の四天王(以下、火王)「――大地の魔女よ」


地女「ぬおおおおっ!?」

398: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 22:15:44.48 ID:bWcFzkNHo
火王「す……すまない、驚かせてしまったな」

地女「な、何なのだ!? 急に現れて……」

火王「それは……お前に、頼みがあって来た」

地女「頼み?」


火王「……理由は聞かず――」

火王「――私と、きっ、キスをして欲しい!」


地女「何故だ!?」


火王「いや、即座に聞き返さないでくれるか!?」

400: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 22:21:39.13 ID:bWcFzkNHo
地女「しかしだな……突然現れて、キスをねだるなど……」

火王「いっ、言いたいことはわかっている!///」

地女「あまり……そのな? 良くないぞ? わかるか?」

火王「わかっていると言っているだろう!?///」


地女「……火の四天王よ」

地女「ストレスが溜まっているのなら、飲みに行くか?」

地女「奢るぞ? どうだ? 遠慮はするな?」


火王「優しさで畳み掛けて来ないでくれ、頼むから!///」

401: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 22:29:19.12 ID:bWcFzkNHo
地女「悩みでもあるのか? ん?」

火王「そのっ! 飲んだあとの事が悩みだ!」

地女「飲んだ後?……あー……あーあーあー……」

火王「私は、未だに信じられん!」


火王「お前ときっ、キスしただけで翼が出たなど!」

火王「婚約者を差し置いて、体がお前を選んだなどと!」


地女「……まあ、なんだ」

地女「……体は正直だったと言うことで、一つ」

地女(何だ!? バレたのか!? バレているのか!?)

地女(キスして、俺が地の四天王だとバレるなど、あるのか!?)

402: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 22:33:45.78 ID:bWcFzkNHo
火王「私の心は、奴のものだ!」

火王「私の精神は……肉体なんぞには負けない!」

火王「むしろ――心の力で!」

火王「この体を御し切ってみせる!」


地女「うむ! その心意気、天晴!」

地女「……それでは、もう行くな?」


火王「待て待て待て待て!」

火王「話を聞いていなかったのか!? 行くな!」

403: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 22:44:01.14 ID:bWcFzkNHo
火王「行かせんぞ、大地の魔女!」

がしっ!

地女「ふん! そんな細腕で、止められると思ったか!」

火王「お前の方が腕は細いぞ!」

地女「ぬおお!? そうだったのだ!」


火王「暴れるな! 大人しくしろ!」

火王「チュッとするだけだ! それで済む!」


地女「それだけで済まぬかも知れんではないか!!」

404: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 22:48:53.82 ID:bWcFzkNHo
火王「……ぬぐぐううっ!」

地女「……ふんぎぎぎっ!」


火王「……!」

火王(私に……私に力を貸してくれ!)

火王(お前への愛が、本物であると証明させてくれ!)


火王「――出るな、龍の翼よ!」

チュッ!

地女「んむっ!?」


火王「!」

―バッサァッ!

405: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/12(月) 22:52:19.19 ID:bWcFzkNHo
火王「……」バサバサッ!

地女「で、出たな! もう離せ! なっ!」

火王「……」タシンッ! タシンッ!

地女「し、尻尾も出ているな! なっ!」


地女「――火の四天王よ!」

地女「もう、大地の魔女に用は無いな!?」


火王「……ああ、無い」

火王「私が、話があるのは――」


火王「――地の四天王だ」


…タシンッ!



おわり

408: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 10:46:04.60 ID:2zdbHm1Go
書きます


地の四天王「光の勇者よ、やり遂げたようだな!」

409: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 10:50:47.19 ID:2zdbHm1Go
地の四天王(以下、地王)「良い面構えになっているぞ!」

光の勇者(以下、勇者)「その……変に察するのやめろって」

地王「いやぁ、めでたいめでたい!」

勇者「……なんか、妙に嬉しそうじゃねえか」


地王「いやな? お前がブチュッとしてる間に、火の四天王が来てな?」

地王「正体がバレたと思いきや、バレずに済んでいたのだ!」


勇者「命が助かったんなら、そりゃ喜ぶよな!」

410: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 10:56:05.77 ID:2zdbHm1Go
地王「さすがの俺といえど、あの時は肝を冷やしたぞ!」

勇者「火の四天王に冷やされるなんて、皮肉っぽいな」

地王「奴め、唐突にあらわれてキスを迫ってきてだな……」

勇者「はぁ!? なんだ、火の四天王は女のお前に――」


地王「うむ! 大地の魔女に惚れているようなのだ!」

地王「チュッとしただけで翼と、さらに尻尾まで出てだな?」


地王「――地の四天王が戻ったら、婚約の解消を申し出る」


地王「……と、笑いながら言っていたぞ!」


勇者「それは……お前としては助かった、のか?」

411: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 11:03:34.70 ID:2zdbHm1Go
地王「うむ! 当初の計画通りだな、光の勇者よ!」

勇者「火の四天王と婚約を解消して、時間稼ぎ……ってあれか」

地王「そうだ! ふはは、光の加護の効果は凄いな!」

勇者「敵のお前を守ってる形なのが癪だよ!」


地王「しかし……あの様な危機が訪れるとは」

地王「まるで、三時間程……光の加護が消失したようだった」

地王「光の勇者よ、今後はこのような事の無いように頼むぞ」


勇者「痴情のもつれで光の加護を頼るんじゃねえええええ!!」

412: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 11:09:36.95 ID:2zdbHm1Go
地王「火の四天王に関しては、これでもう安心だな!」

勇者「婚約を解消したから、戻っても大丈夫だと?」

地王「うむ! いやー、助かった助かった!」

勇者「……」


地王「まさか、あちらから婚約を解消してくれるとは!」

地王「この俺の未来は、光で溢れているな!」

地王「はっはっはっはっは!」


勇者「……」

413: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 11:14:19.10 ID:2zdbHm1Go
勇者「おい」

地王「む? 何だ?」

勇者「良いのか?」

地王「光の勇者よ、何を言っている」


地王「俺は――酔って、他の女達と  ちゃってるのだぞ?」

地王「火の四天王も、そんな男が婚約者では……な?」


勇者「いや……そりゃまあ、本当にそうだけどよ」

414: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 11:21:44.88 ID:2zdbHm1Go
地王「火の四天王は、大地の魔女に想いを寄せた」

地王「つまり、奴にとって――」


地王「――この、地の四天王は用済みなのだ!」


地王「あとは、大地の魔女の姿でな?」

地王「こう……良い感じに、新しい相手を探すのだ、と」

地王「その様な事を言って、スッと消え去れば完璧だ!」


勇者「……」

415: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 11:27:52.87 ID:2zdbHm1Go
地王「水の四天王は、まあ、このまま放置で良いだろう」

勇者「……そうなのか?」

地王「うむ! 奴とは、しばらく会っていないのでな!」

勇者「……だから何だよ?」


地王「遠距離で、会えない期間が長ければ――」

地王「――なんとなく! 自然消滅するだろう!」


勇者「ああ……まあ、そうかも知れないな」

416: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 11:34:50.48 ID:2zdbHm1Go
地王「闇の魔王様は……素面で  ちゃっているのが、なぁ」

勇者「……」

地王「風の四天王も……何を考えているか、良くわからんからな!」

勇者「……」


勇者「――地の四天王、もう一度だけ聞く」

勇者「火の四天王に関して……本当に、これで良いんだな?」


地王「……うむ、これで良いのだ」


地王「俺の命が助かりつつ、火の四天王も前へ進める」


地王「……ふはは! これ以上の結末はあるまい!」

417: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 11:48:31.53 ID:2zdbHm1Go
勇者「……お前がそう言うんなら、良いさ」

地王「うむ!」

勇者「まぁ……たまには、二人でメシでも行くか」

地王「ほう!」


地王「それは――」

パァァ……ァァァ

大地の魔女「――大丈夫か? 浮気と誤解されんか?」


勇者「まあ、街に繰り出すならその姿になるよな!」

勇者「っつーか、お前に浮気の心配なんかされたくねえよ!!」

418: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 11:52:27.66 ID:2zdbHm1Go
  ・  ・  ・

火の四天王(以下、火王)「……ふぅ」

火王「……」

火王「もう……眠るか」

火王「……」


…ぼふっ!


火王「……」

火王(……起きていると、考えてしまうから)


火王(大地の魔女――地の四天王の事を)


火王「……」

419: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 11:59:01.87 ID:2zdbHm1Go
火王「……奴め、私が気付いた事に……気付かないとは」


火王(私に正体を明かさなかった)

火王(それは……理由あっての事)

火王(その理由とは、恐らく……)


火王「剣の乙女は……美しいからな」


火王(この、醜い顔の私とは違う)

火王(男ならば、美しい者を選ぶのは当然の事だろう)

火王(それに……剣の乙女は、精神的にも素晴らしい奴だ)


火王「……っふ……うっ……!」

420: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 12:09:44.60 ID:2zdbHm1Go
火王「うぅ……えっ……!」


火王(剣の乙女は、気付いているのだろうか?)

火王(大地の魔女の正体が、地の四天王という事に)

火王(……いや、私には関係無いか)

火王(もう、婚約者では無くなるのだから)


火王「っ、ふぅっう! ぐすっ! うっ、ううっ、えぇぇっ……!」


火王(奴らが、何処で何をしようと私には関係無い)

火王(むしろ……私は、邪魔者なんだ)

火王(あの二人の――地の四天王の、邪魔者)

火王(そう思われて居るなら……)


火王「……もう……会えないよぉっ……!」

421: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 12:18:20.66 ID:2zdbHm1Go
  ・  ・  ・

剣の乙女(以下、乙女)「――出てきなさい、火の四天王」

火王「……よく気付いたな」

乙女「ええ、当然でしょう」

火王「……」


乙女「もう、この私――剣の乙女に迷いは無いもの」

乙女「今なら、斬れない物は無いんじゃないかしら?」


火王「……ふふっ、頼もしいな」

422: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 12:23:31.57 ID:2zdbHm1Go
乙女「以前の私だったら、気付かなかったでしょうね」

火王「……」

乙女「……って、何かあったの!? その顔……」

火王「……」


火王「剣の乙女よ、最後に一つだけ聞かせて欲しい」

火王「関係無いと思いはしたが……」


火王「――私は、お前を友だと思っているから」


乙女「火の四天王……?」

423: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 12:28:00.20 ID:2zdbHm1Go
乙女「最後って……何よ、それ?」

火王「剣の乙女」

乙女「……何、聞きたいことって」

火王「……」


火王「……剣の乙女よ」

火王「お前は、大地の魔女のあの姿が――」


乙女「――知ってるわ」

乙女「けれど、姿形なんて……些細な問題でしょう?」


火王「……やはり、知っていたのか」

424: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 12:35:07.84 ID:2zdbHm1Go
乙女「聞きたいことって、それだけ?」

火王「ああ、それだけだ」

乙女「ねえ……貴女、様子が変よ?」

火王「……」


火王「……剣の乙女」

火王「奴と……幸せにな」


乙女「……火の四天王」

乙女「そんなの、言われるまでも無いわ」

425: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 12:46:54.44 ID:2zdbHm1Go
  ・  ・  ・

水の四天王(以下、水王)「祝福の聖女よ、光の勇者とは?」

祝福の聖女(以下、聖女)「えっ……えー?/// それはぁ……///」

水王「もーう! 勿体ぶらないで、教えてくださいな!」

聖女「えっと……えっとですね……///」


聖女「チュッとされてぇ……/// しっ、しっ、しし舌が……///」

聖女「それでそれで……/// あぅあ、思い出すと……///」…ツーッ

聖女「――びばばべばびぼびべびば!///」タパパッ!


水王「聖女、鼻血!! 物凄く鼻血が吹き出してますわ!!」

426: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 12:52:46.93 ID:2zdbHm1Go
水王「あああ服が! それに、顔が血だらけで!」

聖女「ぶうばばま゙……ぼべぼびょうべぶべびべ///」タパパッ!

水王「何を言っているか、全くわかりませんわ!」

聖女「あぶぁ?」タパパッ!


聖女「……」タパパパ…

聖女「」

…ドサッ!


水王「しゅ……祝福の聖女――っ!?」

427: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 12:58:33.18 ID:2zdbHm1Go
  ・  ・  ・

聖女「……す、すみません……ご迷惑をおかけしました」

水王「もう! 興奮して鼻血を出すだなんて、ウブすぎますわ!」

聖女「その……後から冷静になって思い出すと……ですね///」…ツーッ

水王「!? 水よ!」


水王「――そんな事では、先が思いやられますわ!」

水王「この先、もっと凄いことをするんですから!」


聖女「は……はの……」

聖女「みふへ、はなへんは……」


水王「水で鼻栓をしないと、また倒れてしまうでしょうに!」

428: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 13:02:49.75 ID:2zdbHm1Go
水王「結婚までに、何とかしないといけませんわね……」

聖女「……あい」

水王「けれど、私……しばらく来られそうにありませんの」

聖女「ほうはんへふは?」


水王「火の四天王が――」


聖女「?」


水王「――婚約を発表したんですのよ」


聖女「え――っ!?」

スポンッ!

429: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 13:09:15.40 ID:2zdbHm1Go
聖女「それ、本当なんですか!?」

水王「以前より、結婚を申し込まれていた――」


水王「――赤龍王と」


水王「まあ……所謂、政略結婚ですわね」

水王「けれど、これで火の領地は一枚岩になりますわ」

水王「その、正式な発表の場に招待されましたの」


聖女「へええ……でも、結婚ですか!」

聖女「それは、とても素晴らしいことですね!」

430: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 13:17:45.64 ID:2zdbHm1Go
水王「どうなんでしょうね?」

水王「噂によれば、火の四天王の魔力が急激に弱まり……」

水王「……その話を受けざるを得なかった、という事ですけれど」


聖女「えっ、どうしてですか?」


水王「龍族は、力を至上としていますもの」

水王「そのトップが弱いとなれば、抑えがきかなくなってしまうの」

水王「本当、野蛮で困りますわね!」

水王「私の水で、全て飲み込んでしまいたくなりますわ!」


聖女「あ……あはははは……」

431: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 13:22:37.95 ID:2zdbHm1Go
水王「けれど……結婚、良いですわよねぇ」

聖女「はい……羨ましいです」

水王「ああっ! 地の四天王が戻ってくるのが、待ち遠しいですわ!」

聖女「…………そう、ですね」


水王「……祝福の聖女よ」

水王「式には、来てくださいましね!」ニコッ!


聖女「……」

聖女「は……はい……」


聖女(一体……なんの式になるんでしょうか……)



おわり

435: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 19:34:13.82 ID:2zdbHm1Go
書きます


祝福の聖女「火の四天王が、婚約発表するそうです」

436: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 19:39:25.50 ID:2zdbHm1Go
剣の乙女(以下、乙女)「えっ? それは本当なの?」

祝福の聖女(以下、聖女)「はい、確かな情報です」

乙女「成る程……だから……」

聖女「あ、あの……大丈夫ですか?」


大地の魔女(以下、地女)「なんっ、ななななんっ、何がだ!?」

地女「これは……ちょっと床板の触り心地を確かめてな! うむ!」


光の勇者(以下、勇者)「……触り心地はどうだよ?」

437: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 19:42:51.86 ID:2zdbHm1Go
乙女「火の四天王の婚約者というのが、誰か知ってる?」

聖女「赤龍王……という方みたいです」

乙女「ふぅん? 聞いたこと無いわね」

聖女「あ、あの……大丈夫ですか?」


地女「うむ!! うむ!! 大丈夫だ!!」

地女「いやぁ! この床板は触り心地が最高だな!」


勇者「……そいつは良かったな」

438: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 19:46:50.91 ID:2zdbHm1Go
  ・  ・  ・

地女「――焦った! 本当に肝が潰れるかと思ったぞ!」

勇者「二人は不審がってたけどな」

地女「だが! これで完璧に、火の四天王に関しては解決だ!」

勇者「……」


地女「いやぁ、大地の魔女の姿の――俺に惚れてると思いきや!」

地女「赤龍王と婚約発表など、想像以上に良い結果だぞ!」


勇者「……」

439: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 19:49:27.07 ID:2zdbHm1Go
勇者「どうして、火の四天王の魔力は急激に弱まったんだろうな」

地女「恐らく……マリッジブルーというやつだな」

勇者「そうか?」

地女「うむ!」


地女「火の四天王の魔力の源は――喜びの感情」

地女「結婚を前に、不安になっているだけだろう」


勇者「……」

440: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 19:52:47.19 ID:2zdbHm1Go
勇者「赤龍王ってのは、どんな奴なんだ?」

地女「出来た男だぞ! 顔も、性格も良い素晴らしい奴だ!」

勇者「そうなのか?」

地女「うむ!」


地女「火の領地は、火の四天王の父――火龍王」

地女「そして、赤龍王の大きな二つの勢力が存在していた!」

地女「その二つが一つになれば――繁栄は約束されたようなものだ!」


勇者「……そうか」

441: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 19:58:38.08 ID:2zdbHm1Go
勇者「お前は、それに関してどう思う?」

地女「予想以上に、最高の結果だ!」

勇者「どうしてだ?」

地女「うむ!」


地女「まあ、火の四天王もな?」

地女「俺の様な男よりも、赤龍王と一緒になった方が幸せだと思うのだ」

地女「さらに、領地は栄える!」

地女「――これを最高と言わずして、何と言う!」


勇者「――‘らしく’無い事言ってんじゃねえええええ!!」


地女「ゆ……勇者?」

442: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 20:04:12.94 ID:2zdbHm1Go
地女「ど、どうしたのだ? 男の子の日か?」

勇者「なんだそれ!? そんなもんねえよ!」

地女「ええい! ならば、一体何だと言うのだ!」

勇者「わかんねえなら言ってやるよ!」


勇者「俺の知っている、地の四天王は!」

勇者「自分の都合で女を振り回す、どうしようも無いクズだ!」

勇者「それが、何だ!? 何だ、今のお前は!」

勇者「今のお前は、最高に気持ち悪いんだよ!」


地女「ぬうう……! どう反応して良いかわからん……!」

443: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 20:11:18.07 ID:2zdbHm1Go
地女「……しかしなぁ、今更どうも出来んぞ?」

勇者「糞が! 俺だって、こんな事言いたくねえんだよ!」

地女「では、この話は終わりということで……」

勇者「終わるな!」


勇者「――大地の魔女!」

勇者「お前の言葉が本当なら――」


勇者「――火の四天王と、赤龍王の結婚は認められない!」


勇者「俺達パーティーにとって、大きな障害になる可能性がある!」


地女「……光の勇者?」

444: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 20:17:30.39 ID:2zdbHm1Go
地女「お前……何を言っているのだ?」

勇者「一枚岩になった火の領地は勢いを増す……そうだな?」

地女「うむ……まあ、そうだろうな」

勇者「だったら、決まってるだろうが!」


勇者「光の勇者は!」

勇者「魔王軍の勢力の一つが、勢いを増すのを止める!」

勇者「婚約発表だぁ? させるかよ、そんなもん!」


地女「光の勇者よ、正気か!?」

地女「お前それは……人として、かなり最低だぞ!?」

446: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 20:25:30.65 ID:2zdbHm1Go
勇者「俺が、どうして気を遣わなきゃならねえんだ!」

地女「気遣いを覚える事が、大人への第一歩なのだ」

勇者「そういうこっちゃねえんだよ!」

地女「むう……?」


勇者「お前は……地の四天王はクズだ!」

勇者「そのくせ、変におせっかいを焼いてきやがって……!」

勇者「それで、大地の魔女はパーティーメンバーで……!」

勇者「ああもう! 俺にも、よくわかんねえんだよ!」

勇者「――わかれ!!」


地女「……」

447: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 20:35:02.14 ID:2zdbHm1Go
地女「……光の勇者よ、相わかった」

勇者「……」


地女「お前は、俺を心配してくれているのだな」

地女「婚約者――火の四天王が、俺から離れていく」

地女「その事を聞き、俺の様子が普段とは違ったので、だ」

地女「うむ……確かに、少し前から‘らしく’無かったかも知れんな」

地女「そんな俺を――敵である俺を気遣ってくれた」

地女「敵ではあるが、旅の仲間として過ごしてきたのだ……」

地女「だが……それを素直に言うのは、気恥ずかしかったのだろう?」


勇者「……そこまでわかれとは言ってねえんだよおおおお!!」

451: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 20:42:54.34 ID:2zdbHm1Go
勇者「何なんだよ! お前、本当さぁ!?」

地女「だがなぁ……それでもなぁ……」

勇者「……何だよ」

地女「うむ」


地女「せっかく、良い感じに出来たのにだな?」

地女「婚約発表を止めに行くとなると……な?」

地女「それに、光の加護があってもバレるかも知れん」

地女「そうなっては……俺の命が危ない!」


勇者「……」

452: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 20:47:37.55 ID:2zdbHm1Go
勇者「……成る程、わかった」

地女「おお、わかってくれたか!」

勇者「お前は、今の時点から――」


勇者「俺の、パーティーメンバーじゃねえ」


地女「? 光の勇者よ、何を言って――」

地女「――っ!?」

地女「ぬうう! この身を包んでいた、聖なる力を感じぬ!?」


勇者「えっ……いや、マジで?」

勇者「光の加護って、こんなんでオフになるのか!?」

454: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 20:54:33.55 ID:2zdbHm1Go
地女「光の勇者よ、助けてくれ!」

地女「光の加護が無いと、色々とバレてしまう!」

勇者「だったら、条件がある」

勇者「火の四天王に関して、お前の本音を聞かせろ」


地女「火の四天王は可愛い!」

地女「魔族の生は長いので、結婚なんぞ御免だが!」

地女「他にバレずに  るなら、  ちゃいたい所だ!」

地女「他の男にくれてやるなんぞ、勿体無い感が凄い!」

地女「――ほれ、パーティーに入れてくれ!」


勇者「予想以上にクズで入れたくねえええええ!!」

456: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 21:01:41.49 ID:2zdbHm1Go
地女「早く! 早く入れてくれ! 早ーく!」

勇者「……駄目だ!」

地女「ひっ、ひどいではないか!? 騙したのか!?」

勇者「……入れて欲しきゃ、さっさと行ってこい!」


勇者「クズは、クズらしく!」

勇者「火の四天王の婚約発表をぶっ潰して来い!」


地女「ぬうう……ぜ、絶対だぞ!?」

地女「戻ったら、絶対入れてくれ!」


勇者「……ははは!」

勇者「光の加護が欲しいなら、急ぐんだな!」


勇者「……ま、たまには俺が振り回すのも悪くねえだろ?」

457: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 21:07:28.19 ID:2zdbHm1Go
  ・  ・  ・

乙女「――逃げるなクズがあああああっ!」

聖女「――勇者様? どうして逃げるんですか?」


勇者「誤解だああああっ!!」


乙女「おっ、おおっ、お姉様に!」

乙女「入れてくれと……おっお、おねだりさせるるるるううるうるううう!?」

聖女「勇者様のあの時の誓いは嘘だったんですか?」

聖女「ねえ、答えてください……答えて、答エテ、こタエテ、コタエテ……?」


勇者「怖い怖い怖い怖い!!」

458: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 21:17:49.13 ID:2zdbHm1Go
  ・  ・  ・

地女「……ふっ、光の勇者め」

地女「婚約発表の場を壊しに行けなど……」

地女「はっはっは! 勇者らしからぬ言葉よな!」

地女「……」


地女「やはり、俺が見込んだ通り……天晴な奴だ」

地女「まさか、この俺に使いっ走りをさせるとはな!」


――キランッ!


地女「流れ星……か」


地女「……光の勇者よ」

地女「お前の出した条件――見事果たして見せよう!」



おわり

460: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 21:56:45.74 ID:2zdbHm1Go
書きます


火の四天王「……婚約発表は、三日後か」

461: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:00:08.81 ID:2zdbHm1Go
火の四天王(以下、火王)「こんなにも……簡単だとは」

火王「私と奴の婚約は……ずっと、秘密だったと言うのに」

火王「……」

火王「……うっ……ふぅっ……うぅっ……!」ポロポロッ…


地の四天王(以下、地王)「火の四天王よ」

地王「何を泣いているのだ?」


火王「……」

火王「はいっ!?」

462: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:03:18.63 ID:2zdbHm1Go
火王「ど、どうやって……私の部屋まで!?」

地王「石造りの建物など、俺の前では何も無いに等しい」

火王「ど、どうして……此処に来た!?」

地王「うむ!」


地王「まあ、大きな声では言いにくいんだがな?」

地王「ちょっと  いに来た」


火王「本当に大きな声では言えない理由だな!?」

463: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:07:12.88 ID:2zdbHm1Go
地王「俺だって、色々と考えたのだぞ?」

火王「なっ、何を考えたと言うんだ!」

地王「お前の、婚約発表の場を潰す方法だ」

火王「……えっ?」


地王「正式に発表されるパーティーに颯爽と登場、とも考えた!」

地王「だが、水の四天王と風の四天王が前入りしていたのだ!」

地王「いくら俺でも、その状況では無理だ!」


火王「待て! 待て待て待て待て!」

464: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:10:20.76 ID:2zdbHm1Go
火王「お前は、何を言ってるかわかっているのか!?」

地王「当たり前だろう」

火王「私は、婚約発表を三日後に控えているんだぞ!?」

地王「それならば、延期になるぞ」


地王「ちょっと赤龍王をボコボコにしてな」

地王「あれは恐らく、二ヶ月は静養が必要だろう」


火王「お前は何をやってるんだ!?」

465: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:17:28.67 ID:2zdbHm1Go
地王「いや、最初は話し合いに行ったのだ!」

火王「何を話すことがある!?」

地王「無論、婚約発表を取りやめる事だ!」

火王「断られて、赤龍王を闇討ちしたのか!?」


地王「いやぁ……」


地王「――火の四天王は、顔こそ美しいとは言えない」

地王「――だが……」


地王「……まで聞いて、カッとなって手が出てしまったのだ」

地王「俺の魔力の源は怒りなので、奴が生き残れたのは奇跡だった」


火王「お前は……お前は、本当に何をしている!?」

468: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:26:49.44 ID:2zdbHm1Go
地王「美しくない、なんて……なあ? 腹が立つではないか」

火王「だが! だが、と……内面を褒めようとしていただろう!」

地王「お前は、可愛い! 自信を持つのだ!」

火王「……うるさい!」


火王「お前は……私を捨てて、剣の乙女を選んだだろう!?」

火王「そんなお前が、どうして今更私の前に現れる!?」


地王「何を言う! 酔って、朝起きたらベッドに居ただけだ!」


火王「そんな訳があ――……」

火王「……」

火王「うん」

469: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:30:14.15 ID:2zdbHm1Go
地王「それでな? お姉様と呼ばれていてな?」

火王「……ああ、呼んでいたな」

地王「そんなのは、なあ? 男と言い出しにくいだろう」

火王「……まあ……確かにそうだな」


地王「覚えてはいないが、  ちゃった時は女の姿だった」

地王「女同士ならセーフ! という事にならんか?」


火王「……な、何とも言えん!」

471: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:39:07.35 ID:2zdbHm1Go
地王「まあ、とりあえず婚約発表の場は潰させて貰った」

火王「……そうみたいだな」

地王「うむ!」

火王「……剣の乙女は、どうする気だ?」


地王「……まあ、なんだ」

地王「火の四天王よ、お前に任せたい」

地王「ただならぬ関係ではあるわけだからな!」


火王「えっ!? わ、私が何とかしないといけないのか!?」

472: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:48:22.71 ID:2zdbHm1Go
地王「……まあ、他の事は後で考えるとしよう!」

火王「いや、待て!」

地王「待たぬ!」

火王「おい! 勝手にベッドに寝転がるな!」


地王「それは違うぞ、火の四天王よ!」

地王「俺は、ひっくり返っているのだ!」

地王「それが、お前の可愛さを引き出すと知っているからな!」


火王「……お前……覚えていたのか?」

火王「あの……初めて会った時の事を……」

474: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:55:01.55 ID:2zdbHm1Go
地王「? 何を言っている、当たり前だろう」

火王「……」

地王「あの後、火龍王に半殺しにされたのも良い思い出だ!」

火王「……」


地王「それに、翼と尻尾が出たらな? やりにくいと思うのだ」

地王「後ろからだと、可愛い顔が見えなくなってしまうだろう?」

地王「つまり――尻に敷かれに来たのだ!」


火王「そ……それって……」

475: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 23:02:18.62 ID:2zdbHm1Go
火王「本当に……良いのか……?」

地王「この、鍛え抜かれた肉体を……ぬう、袖が引っかかって……!」

火王「あ……うん、脱ぐの手伝うぞ」

地王「おおっ、すまぬな!」


地王「――この、鍛え抜かれた肉体を見るが良い!」

地王「例え、相手が何者であろうとも!」

地王「最後まで――支えきってみせるわ!」


火王「……!」

―バサァッ! タシンッ!


地王「むしろな? 下から突き上げて――」


火王「――嬉しいっ……!」

477: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 23:11:09.45 ID:2zdbHm1Go
  ・  ・  ・

大地の魔女(以下、地女)「……と、言うわけだ!」

光の勇者(以下、勇者)「お前、それ……」

地女「光の勇者よ、お前の出した条件は達成したぞ!」

勇者「いや、だが……」


勇者「お前……プロポーズした事になってないか?」


地女「なっていないだろう?」

地女「上に乗って、存分に腰を振れという意味でしかないぞ?」


勇者「そうか……いや、そうか!?」

478: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 23:16:29.92 ID:2zdbHm1Go
地女「とりあえず、ほれ! パーティーに入れてくれ!」

勇者「あ、ああ……お前はパーティーメンバーだ」

地女「……おおっ! 聖なる力で覆われていく!」

勇者「とりあえず……後で、二人の誤解を解いてくれ」


地女「全く……お前は、いつも誤解されているな」

地女「もう少し、言動には慎重になった方がいいぞ?」


勇者「あのな!? 全部お前が原因だからな!?」

479: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 23:26:44.50 ID:2zdbHm1Go
勇者「って言うか……お前、やっぱり強いんだな」

地女「赤龍王には……まあ、菓子折りでも贈っておこう」

勇者「それで良いのか!?」

地女「安心するのだ、正体はバレていないぞ!」


地女「ボコった時は、この美少女の姿だったからな!」

地女「だが、ボコった後……」

地女「――貴女のお名前は……?」

地女「と、妙に熱っぽい視線を送ってきていてな?」

地女「あれは……一体何だったのだろうか……?」


勇者「お前はどうしてそう……そう、ぬああああ!?」

481: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 23:31:42.01 ID:2zdbHm1Go
勇者「火の四天王は……どうしたんだ?」

地女「とても、幸せそうな寝顔をしていてな……」

勇者「……それで?」

地女「……うむ」


地女「長居して、水の四天王と風の四天王にバレるとも限らんしな」

地女「起こさないよう、コッソリ抜け出して戻ってきた」

地女「こう……ちゃんと、肩まで布団をかけてだぞ」


勇者「それ大丈夫なのか!?」

勇者「っつーか、最後のくだり要るか!?」

483: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 23:37:25.53 ID:2zdbHm1Go
地女「光の勇者よ、案ずるな!」

勇者「いや、だってお前!」

地女「ええい、俺を信じろ!」

勇者「お前の、どこを!?」


地女「火の四天王は、今回の事は誰にも言わん」

地女「火龍王の娘にして、誇り高き武人が、だ」

地女「  いされてお楽しんじゃいました……」

地女「……などと、言える筈が無いだろう?」


勇者「……本当クズだな、お前はよぉ!?」

484: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 23:43:37.59 ID:2zdbHm1Go
地女「だが、祝福の聖女と剣の乙女の誤解を解けるのは?」

勇者「ああ、そうだな! お前だけだよクソッタレ!」

地女「ふっ……パーティーには、役割というものがあるからな!」

勇者「お前のせいで生まれた役割だよ!」


地女「ふむ……つまり――」

地女「――母なる大地、という事だな?」


勇者「お前、本当に言葉を考えてくれない!?」

勇者「それは今後使うなよ!? 絶対、誤解を招く!」

485: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/13(火) 23:59:41.66 ID:2zdbHm1Go
地女「誤解など、恐るるに足らんぞ」

勇者「少しは恐れてくれ、頼むから!」

地女「……光の勇者」

勇者「……何だよ」


地女「誤解があってもな?」

地女「こう、割と何とかなったりするものなのだ!」


勇者「だけど……どんどん、状況が悪くなって無いか?」


地女「なぁに、何とかなる!」

地女「光の勇者よ、明日を信じられぬ者に未来は無いぞ!」


勇者「四天王らしくないなぐさめすんじゃねえよ!!」



おわり

490: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 20:56:27.23 ID:dDW5kg4Eo
書きます


大地の魔女「光の勇者よ、傍を離れるな!」

491: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 21:01:34.82 ID:dDW5kg4Eo
光の勇者(以下、勇者)「くそっ、離しやがれ!」

大地の魔女(以下、地女)「ええい、離すものか!」

勇者「離せっつってんのがわかんねえのか!」

地女「離れるなと言っているのがわからんのか!」


風の四天王(以下、風王)「……僕は、二人まとめででも構わないよ」

風王「さあ、始めようか……!」


地女「! 来るぞ、勇者!」

地女「……――説教だ!」

勇者「だから、なんで俺を巻き込むんだよおおおおお!?」

492: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 21:05:36.76 ID:dDW5kg4Eo
風王「僕が、どうして怒っているかわかるかい?」


地女「光の勇者よ、油断するな!」

地女「あれが、奴のいつもの手なのだ!」


勇者「お前、そんなに風の四天王に説教されてんのか!?」


地女「うむ! 領地が隣だからな!」

地女「……ああやって、ポロッと自白するのを誘っているのだ!」

地女「あの手に、何度してやられた事か!」


勇者「そりゃあ、心当たりが多ければしてやられるだろうよ!」


風王「……」

493: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 21:10:17.05 ID:dDW5kg4Eo
風王「それじゃあ、単刀直入に聞くよ」

風王「火の四天王の婚約発表の場をぶち壊したのは――」


地女「光の勇者が指示した事だ!」

勇者「オイコラてめえええええ!?」

地女「俺は、最初は反対していたのだ!」

勇者「いや、そりゃしてたけど……!」

地女「ぬうう、光の勇者め! 人の幸せを妬むなど!」

勇者「違うからな!? いや、そうだけど……違うぞ!?」


風王「……」

494: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 21:14:30.46 ID:dDW5kg4Eo
風王「方法は、勇者が決めたのかい?」


勇者「違う! コイツが決めた!」

地女「かぁっ! 一回、パス!」

勇者「……なんだよ、それ?」

地女「パスした事により、方法を決めたのはお前になったのだ」

勇者「ふっざけんなよ!? 一回って事は――」

地女「察しが良いな! 俺は、あと二回パスを残している!」

勇者「コイツだ! コイツが決めた!」


風王「……」

495: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 21:18:56.45 ID:dDW5kg4Eo
風王「……じゃあ、方法を決めたのも勇者で良いさ」


勇者「はあっ!? おい、なんだよそれ!」

地女「むっ!? 裁定に文句をつけるつもりか!?」

勇者「ったりめえだろ!? 俺じゃねえからな!」

地女「ええい! 光の勇者よ、見苦しいぞ!」

勇者「風の四天王! 裁きは公平に行え!」

地女「風の四天王! 人生は平等では無い!」


風王「……」

風王「…………そろそろ、良いかな?」


地女・勇者「……はい」

496: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 21:24:35.00 ID:dDW5kg4Eo
風王「君達、バレないとでも思ったのかい?」

風王「僕が――風の四天王が、見逃すとでも?」


勇者「いや、だけど……」

地女「その……なあ?」


風王「事が公にならず、今も呑気にしてられるのは……」

風王「……一体、どこの四天王のおかげだい?」


地女「……」スッ…

勇者「っふ!……っくく、おい……手ぇ上げるなよ……!」


風王「この僕が! 風の四天王が、隠蔽工作をしたからだよ!」

497: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 21:29:35.53 ID:dDW5kg4Eo
風王「方法は、他にいくらでもあっただろう!?」

風王「どうして、赤龍王を襲ったりしたんだ!」


地女「その、な?……つい、カッとなって」


風王「そもそも! 上手くいっていた筈だろう!」

風王「放っておけば、火の四天王は君から離れた!」

風王「――光の勇者、どうして彼を煽ったんだ!?」


勇者「いや、なんか……つい、と言うか」


風王「つい、じゃないんだよ! つい、じゃ!」

498: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 21:37:14.31 ID:dDW5kg4Eo
風王「僕の苦労がわかるか!?」

風王「……ああ、言ってもわからないだろうね!」

風王「本当に……これだから、男ってやつは!」


地女「……」

勇者「……」

地女「……なっ、恐ろしいだろう?」ボソボソ

勇者「ああ……何も言い返せない」ボソボソ


風王「っ!」キッ!


地女・勇者「……何でもありません」

499: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 21:42:27.25 ID:dDW5kg4Eo
風王「……僕が、どうしてそこまでしたかわかるかい?」


地女・勇者「……」


風王「……」


地女「……」

勇者「……おい」ボソッ

地女「……何だ」ボソッ

勇者「……何か言えって」ボソボソ


地女「――サッパリわからん!」


風王「君に、死んで欲しくないからだよ!」

風王「あのね、そのくらい分かって貰えるかな!?」

500: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 21:52:52.23 ID:dDW5kg4Eo
風王「だから……死なれちゃ、困るんだ」

風王「そのためなら――何だってするさ」


地女「あー……つかぬ事を聞くがな?」

地女「……アレも見ていたのか?」


風王「……見たくなんてなかったさ!」

風王「けど、火の四天王の魔力があんなに高まったら……」

風王「……意識を集中せざるを得なかったんだよ!」


勇者「お前……凄いな」


風王「……うるさい、黙れ」

501: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 21:58:52.35 ID:dDW5kg4Eo
風王「アレが露見――水の四天王にバレていたら」

風王「水の四天王の事だ……」

風王「……きっと、火の四天王を手にかけていただろうね」


地女・勇者「……」


風王「そして――怒り狂った君は、水の四天王を殺しただろう」

風王「その怒りを鎮める事は……きっと不可能だ」

風王「それこそ……殺してしまわない限り」

風王「白羽の矢が立つのは……まあ、僕で間違いないかな」


地女・勇者「……」

502: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 22:07:07.52 ID:dDW5kg4Eo
風王「僕に……君は、殺せない」

風王「かと言って、殺されるのも御免だ」

風王「だって――僕は、君を手に入れたいんだから」


勇者「なあ……コイツが、何人に手を出してるか知ってんのか?」

地王「うむ!」

地王「俺が言うのも何だが……他に、良い男は居るぞ?」


風王「……かも知れない」

風王「いや……きっと、そうなんだろうね」


風王「――けど、僕は君が欲しいんだ」


地女「……風の四天王」


勇者「な、なあ……すまん、物凄く居辛いんだが……!?」

503: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 22:14:18.43 ID:dDW5kg4Eo
風王「終わり良ければ全て良し、って言うだろう?」

風王「……魔族の生は長いんだ」

風王「意中の相手に、過去に別の相手が居たなんて当たり前の事」

風王「……今は、それが偶然近い時期なだけ」


風王「――最後に、僕を選んでくれればそれで良い」


地女「……むう」


勇者「……!」

勇者(なんで俺が居るのにこういう空気出すんだよおおおお!!)

505: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 22:22:11.04 ID:dDW5kg4Eo
風王「……こんなに心の内を晒したのは、初めてだよ」

地女「あー……まあ、何だ」


地女「お前が、そこまで俺にこだわるのは……」

地女「――‘あの時’の事が、きっかけか?」


風王「……そうだね、‘あの時’からだよ」

風王「でなければ……体を許したりはしなかったさ」


地女「……むうう」


勇者「……!?」

勇者(‘あの時’って何だよ!?……なんて聞ける空気じゃねえ!)

506: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 22:32:58.81 ID:dDW5kg4Eo
  ・  ・  ・

地女「……風の四天王め」

地女「……」

地女「まさか……‘あの時’の事をそこまで……」

地女「……むううっ!」


地女「――答えは、いつまででも待つ」

地女「……と言われても! 俺は、どうしたら良いのだ!」

地女「光の勇者よ、助けてくれ!」


勇者「‘あの時’って何なんだよおおおおお!?」

507: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 22:46:35.29 ID:dDW5kg4Eo
  ・  ・  ・

風王「……」


風王(風を自在に操り、地に縛られた者達を蔑んでいた……あの時)

風王(僕は――君に破れた)

風王(気付いた時には……僕は地に転がり、君に見下されていた)

風王(敗北の屈辱を――恥辱を受けた)


風王「風が……地に負ける」


風王(有り得ないと信じられず……死を覚悟した)

風王(……いや、みっともなく……怯えた姿を見せた)

風王(そんな僕に……君は、手を差し伸べたんだ)


風王(――四天王として、俺と共に魔王様に仕えんか?)


風王(……なんて、満身創痍の姿で……笑いながら)

508: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 22:54:11.85 ID:dDW5kg4Eo
  ・  ・  ・

地女「光の勇者よ、俺が教えたとは……絶対に言うなよ?」

勇者「良いから、さっさと教えろ!」

地女「良いか? 絶対に言うなよ!?」

勇者「良いから言え! 気になるだろうが!」


地女「四天王になっての最初の命令が、奴の討伐だったのだ」

地女「もう、本当に運良く勝ててな! あれは豪運だった!」

地女「そうしたら、奴め……殺されると思ったのか、な?」

地女「まあ、なんだ……オシッコちびっちゃってな?」


勇者「あっ! これ、聞かない方が良かったやつだな!?」

509: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 23:19:04.30 ID:dDW5kg4Eo
  ・  ・  ・

風王「……!」ゾクッ!


風王(……ああっ、思い出すだけでも体が震える!)

風王(僕に、この感覚を与えてくれるのは君しか居ない!)

風王(……だから、絶対に君は死なせない)

風王(……生きて、僕に――)

  ・  ・  ・

地王『あー……なんだ……これで拭け、遠慮するな?』

  ・  ・  ・

風王「……!」ゾクゾクッ!


風王(――恥辱と、生の実感を与え続けてくれ!)

510: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 23:31:36.05 ID:dDW5kg4Eo
  ・  ・  ・

地女「……変に真面目で、プライドが高かった分……な?」

勇者「……歪んだのか」

地女「趣味嗜好は自由だが、奴は特殊でなぁ」

勇者「……まともな奴だと思ったのに……!」


地女「だからな……いくら俺でも、ちょっと責任を感じるのだ」

地女「まあ……これ以上は、な?」

地女「プライバシーというものは、大切にしなければいかん」


勇者「……ああ、そうだな」

511: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/11/14(水) 23:47:18.28 ID:dDW5kg4Eo
地女「……だが、奴のお陰で助かったのだ!」

勇者「……まあ、今後は十分気をつけよう」

地女「うむ!」

勇者「風の四天王に関しては……まあ、頑張れ」


地女「……光の勇者よ」

地女「地属性の俺では……風属性の奴に、今はもう対抗出来ん」

地女「……いざという時は、頼むぞ」

地女「本当に責任は感じるが……ちょっと、本当に勘弁なのだ」


勇者「物凄くお似合いな気がしたが……」


勇者「……苦手属性は、しょうがねえよな」



おわり