とあるアニメ制作会社の会議室
アニメグリッドマンの制作スタッフたちが机を囲んであれやこれやと話し合っている

制作P「じゃあ後半は新たなロリ系の美少女怪獣を出すということで」

制作P「いいねえ。またオタク共がたっぷり話題にしてくれそうだなこりゃ。よしお開きだ」

繰奴「あ…あの！！！」

テロップ「繰奴 愛 （29）アニメ制作会社スタッフ」

会議室がシンと静まり返る。繰奴はロングヘアをさっと括って特撮版グリッドマンの資料を机に広げる

繰奴「私からの提案なんですが、グリッドマンの原作を活かしたエピソードはどうでしょう？」

繰奴「設定こそ昔のものですがテーマは今の時代にも通じるものがあるんです。例えば…」

制作P「で？それどこで美少女出すの？系統は？ロリ？どう　　展開に持ってくの？」

繰奴「えっ？…そ、そういうのは出てこないですけど」

制作Pはわざとらしく深くため息をつき、繰奴を睨みつけて吐き捨てる

制作P「じゃ話にならねえわ。視聴者は萌え　　が見たくてうちのグリッドマン見てんだからさ」

繰奴「グ、グリッドマンの魅力はそもそもそういう部分じゃないと思うんです！人間社会における…」

制作P「知るかよそんなもん。萌えでキモヲタ釣らないと金になんねえだろ」

制作P「こじつけでいいから　　ロリ怪獣娘とかぶち込めよ。それから企画書書いて来い」

繰奴「わ、私はグリッドマンの持ってる本来の良さをもっと出したいんです！」

制作P「それ望んでる奴一人でもいるか？掲示板見て見ろよ。萌えたとか　　かったとかそんなのばっかだろ」

制作P「連中はさ。可愛いキャラがキャッキャしてんのが見たいの。人間社会だのテーマだのどうでもいいんだよ」

繰奴「でも…特撮版グリッドマンを好きで見始めた人たちにも楽しんでもらいたくて…！」

制作P「本当にそれ見たい奴がいるならもっと作品に文句いう奴が出てくるはずだろ？違うか？」

制作P「ドラえもんなんか声変わっただけで未だにネチネチ文句言ってるオッサン共がいるんだぜ」

制作P「こっちはどうだ？原作弄り回してもあっさり受け入れて可愛い～　　い～ってブヒブヒ喜んでるだろうよ」

制作P「つまりグリッドマン自体その程度のファンしかいない、その程度の作品なんだよ」

怒涛の口撃に対し押し黙ってしまう繰奴。それをニヤニヤと見ている周りの男性スタッフ達

制作P「豚にフルコース料理食わせたって味わかんねえだろ？豚には豚用の餌食わしとくのが一番いいんだよ」

制作P「わかったらしっかりキモヲタがブヒれる萌え　　企画用意しとけよ。じゃあお疲れーっす」

ゾロゾロと会議室を出ていくスタッフ。誰も居なくなった部屋で肩を震わせ必死で涙をこらえる

繰奴「違う…グリッドマンの本当の面白さは…そんな下品でくだらないものじゃないのに…」



夜、ゴミ捨て場の前で逡巡している繰奴。抱えた段ボールには原作グリッドマンのソフビや資料集が入っている

繰奴（…グリッドマンに嵌って、漫画やアニメに興味を持つようになったんだっけ）

繰奴（グリッドマンアニメ化に携われるのが嬉しかった。でも蓋を開けたらあんなキモヲタの性処理アニメにされて…）

繰奴（こんなの持ってるからいつまでも未練が消えないのよ！全部捨てちゃえば…！）

繰奴は勢いよくゴミ捨て場に段ボールを投げ捨てると未練を断ち切るよう一目散にそこから離れようとする

？「ホーッホッホッホ。こりゃあすごい！！」

奇妙な声に振り返るとサラリーマン風の男が今しがた自分が捨てた段ボールを漁っている

喪黒「おやおやカッコいい人形たちですなあ。こんなに綺麗なのに捨ててしまうとは」

喪黒「あまりに勿体ない。ちょっとお行儀が悪いですが…頂いちゃいましょうかねぇ」

慌てて走り寄り喪黒から段ボールを取り返す繰奴

繰奴「す、すみません！これ私ので…間違って捨ててしまったんです！！悪いけどあげられません！！」

喪黒「ホーッホッホ、冗談ですよお嬢さん。何十分もここで迷ってらしたでしょう」

繰奴「み、見てたんですか！？」

喪黒「すみません。つい気になってしまいまして…あ、私こういう者です」

繰奴「…ココロのスキマ、お埋めします？」

喪黒「こんなに大切になさってた物をあんな表情で捨てるなんてよっぽどの事があったのでしょう？」

喪黒「よろしければ何があったかお聞かせくださいな。お力になれるかもしれません」

BAR魔の巣に案内される繰奴。いきさつを話し始める

繰奴「私は今、グリッドマンというロボットアニメの制作に携わっていて…これがその画像なんですけど」

スマホにアニメ版グリッドマンの画像を表示し喪黒に渡す　

喪黒「おやあ？ロボットアニメという割に女の子の絵ばかりですねえ」

繰奴「オタクを喜ばせるだけの作品に改悪されてますから」

繰奴「皆可愛い女の子が見れればそれでいいんです」

喪黒「うーむ、原作の良さは求められていないと」

繰奴「アニメの女の子に興奮するのは自由です。それを咎めるつもりはありません」

繰奴「でもそんな目的で名作を汚されるのは特撮版のファンからすれば本当に…苦しいんです」

喪黒「ホーッホッホ、わざわざ過去の作品を使うのなら元々のファンに対する配慮は欲しいですねえ」

繰奴「最近なら鬼太郎やボンバーマンも…私が幼い頃大好きだった名作が同じ目に逢ってます」

喪黒「まあいわゆるオタクの方々を相手にする以上、そうならざるを得ない。のかも知れませんがね」

繰奴「それって大多数のオタクはアニメを性欲目的でしか見てないと思われてるってことでしょう？」

繰奴「要は馬鹿にされてるんです。なのにブヒブヒ喜んで抱き枕に飛びついて…理解できません」

喪黒「繰奴さんは本当にそのグリッドマンという作品を愛しているのですねえ。想いが伝わってきます」

喪黒「ではせめて…その苦しみを少しでもマシにできるようなものを」

喪黒は繰奴のスマホを勝手に操作し始める。なにかアプリをダウンロードしたようだ。慌てて取り返す

繰奴「も、喪黒さん？何したんですか！？」

喪黒「ホーッホッホ、ちょっと特別なアプリを。お金などはかからないのでご安心を」

繰奴「いやそういう問題じゃなくて…えっ！？」

スマホに表示されるグリッドマンアプリの文字。この題字は特撮版、つまり本物のグリッドマンの方だ
もう二十年以上も前の番組のアプリが存在するのか？

喪黒「繰奴さん。もしあなたが無神経な方々に苦しめられることがあればこれを使ってみて下さい」

喪黒「きっとご満足いただけると思いますよお」

翌日、仕事場にはあの暴言制作Pがふんぞり返って電話をしている

制作P「で、抱き枕の方どうなの？オタク君ブヒらせる出来になってんの？」

制作P「おーいいね。本編は太ももやら尻やら描いときゃ満足すんだから。展開なんか適当でいいんだよ」

繰奴（あの態度、原作のグリッドマンに対する敬意なんて一ミリも感じられない…）

繰奴（あんたみたいな過去の名作を平気で汚しオタクしか相手にできない製作者が業界を腐らせるのよ…！）

怒りのあまりこっそりアプリを起動する繰奴。すると制作Pの名前がなぜが登録されていた
不思議に思いながらタップするとポリゴン調の怪獣が現れた。どことなく太った体型が似ている

（嫌な奴を敵に見立てて倒す。みたいなアプリかな…子供だましね）

呆れつつも進めると「必殺技を使って攻撃だ！」のメッセージの後
グリッドビーム、超電動キックなどグリッドマンの必殺技名がずらりと並ぶ
一番大好きな必殺技、グリッドビームを選択し怪獣をタップする。ビームが怪獣に命中する

制作P「…いっ！？いだだだだ！！！痛い！！　　　　　痛いぃぃ！！！いだあああああ！！！」

突然椅子から転げ落ち股間を抑えのたうち回る制作P。まるで殺虫剤をかけられたゴキブリのようだ
周りの社員が驚き集まるが、痛い痛いと床を転がり喚く制作Pを前になすすべもない

繰奴（えっ！？ま、まさかこのアプリが現実と連動してるの？）

驚きつつも涙を流しのたうち周る制作Pを見ていると段々笑いが込み上げてくる

繰奴（精巣でしか物を考えられない　　脳め、グリッドマンを汚した報いよ！！）

すっとタップを止めるとようやく金切り声が止まる。ぜひぜひと顔を真っ赤にして動けない制作P
股間を抑えうずくまったまま震えるその姿のなんと情けない事か。男のみっともなさを煮詰めたような姿だ

繰奴（なんてすごいアプリなの…そうだ！！これを使えば！！）

トイレで入念に自分の　　を確認する制作P。しかし異様に小さく皮を被っている以外に異常はない
何故激痛が…と恐怖におののいていると突然携帯が鳴る

制作P「誰だ！今忙しいんだよ！！」

繰奴「どうだ。股間が死ぬほど痛かっただろう？これ以上痛い目に見たくないなら俺の命令に従え」

ボイスチェンジャーアプリで声を変え制作Pに呼びかける繰奴

繰奴「アニメグリッドマンの世界と特撮版の世界が繋がっている演出を入れろ。そして低俗な　　を減らせ」

繰奴「元々の作品のテーマをもっと色濃く出しまともなアニメに作り替えるんだ。でないとまた激痛が走るぞ」

制作P「だ、誰だお前！何のイタズラだ！！！」

いちいち反論してくるとは馬鹿な　　脳だ。スマホをタップし制作Pを攻撃する

制作P「っっ！！いっっぎゃあああーーっ！！！！イダイ！！わ、わかりました！！言うとおりにじまずぅ！！」

男という生き物は何とも哀れだ。　　を人質に取られれば完全降伏せざるを得ない
制作Pの裂くような奇声を隣の女子トイレで聞いていた繰奴は肩を震わせ笑いをこらえる

制作Pは急遽スタッフを集め緊急会議を開いた

制作P「えー…アニメグリッドマンの世界と特撮版の世界は繋がっている。という設定を新たに加えます」

スタッフ達「ええ！？ど、どうして今更そんな設定ぶち込むんですか？話数も限られてるのに…」

制作P「うるさい！！異論は認めん！！これは決定事項だ！！！」

よほどあの股間の激痛が怖いのだろう。ざわめくスタッフを一喝し強引に会議を進める制作P

スタッフ達「困るなあ…予定してた　　シーン減らすしかねぇよ…」ｻﾞﾜｻﾞﾜ

繰奴（ふふ、この調子でキモヲタ媚び演出なんてどんどん排除してやるわ）

繰奴（特撮版への愛情をきちんと表現したあるべき姿のグリッドマンを私が取り戻すのよ！）



繰奴「え？水着フィギュアが出るんですか！？」

スタッフ「ああ、今どんなデザインにするか考えてるんだってさ」

繰奴（気持ち悪い…どうせまた性処理目的の露骨なデザインにするに決まってる）

繰奴（今これに立ち向かえるのは私しかいない）

とある作業室、原型師が粘土をこね六花という女性キャラの型を作っている

原型師「おっほほ、我ながら　　い太ももできてるわぁ…ああもう駄目一回　　しよ…」

ニヤつきながらもぞもぞと　　を取り出そうとするとスマホに着信が。知らない番号だ

原型師「んもぅ誰だよ至福の時間に…もしもし。どなたですか」

繰奴「突然お電話申し訳ありません。グリッドマンのフィギュアの原型師の方ですよね」

関係者を通じて電話番号は入手していた。あとは話の通じる相手がどうかだ

繰奴「私は一介のグリッドマンファンです。どうかフィギュアのデザインを下品なものにしないで下さい」

原型師「はぁ？」

繰奴「原作グリッドマンは子供らに夢と未来を感じさせる名作でした。一方アニメはどうでしょうか」

繰奴「夢も未来もないキモオタに性的興奮を与えるだけの汚物と化してしまいました。だから…」

原型師「無理っしょ！　　　な女の子目当てのアニメで　　フィギュア作るなとかさぁ」

原型師「原作ファンか知らねえけどつまんねぇ電話してくんな！」

ニヤつきながら話しているのが声色だけでもわかる。予想通りの答えだ
繰奴は予め手に入れた原型師のデータをスマホに表示し、力いっぱい必殺技を発射する

原型師「…ヒッ！？ヴッアア！！！あああいやあああああ！！！痛ぁあぁぁぁ！！！！！！」

それにしてもどいつもこいつも情けない声を出すものだ。どんなに重い生理痛でも私はこんな声は出さない

繰奴「痛いですよね？でも裏切られた特撮版ファンの心はもっと痛いんです。わかってくれますか？」

原型師「あ、あんたがやってるのか！？何をしたんだ！？パンツに毒でも塗ったのか！！」

繰奴「私の質問に答えてください。フィギュアのデザイン、まともなものにしてください」

一層激しくタップを繰り返す。割れんばかりの悲鳴がスマホから響き、たまらず耳を離す繰奴

原型師「イダアアッア！！！はい！承知しました！！！　　いの止めます！！だから止めてぇ！！」

繰奴はタップを止め、はぁはぁと息を切らし苦しむ原型師に念押しする

繰奴「完成品見て変更を感じられなかったら今度は本当に取れるまでやりますからね。本気ですから」

そう言って電話を切る。原型師はぐすぐすと泣きながらよろよろ立ち上がり内股のまま作業に入る
真っ青に怯えた表情で太ももを削り、水着の面積を出来うる限り大きく設計しなおしていく

繰奴「地道だけどひとつずつ…これもグリッドマンを守るため。頑張らないと」

仕事終わり、アニメショップにふと入る繰奴

グリッドマンコーナーに行くとロボットアニメにも関わらず女キャラが裸同然の格好で
性処理を促すような表情で妙なポースをとっている。まさにキモヲタ専用アニメの有様だ
思わす吐き気が込み上げる

繰奴「私はこんな性的欲求を満たすためだけのグリッドマンなんか認めない」

その下の小さなPOPに目をやると特撮版、いや、本物のグリッドマンの紹介がちまっと書かれていた
子供の頃TVで熱中して見ていた本物のグリッドマン。直人、ゆか、武史たちの写真もある

繰奴「待っててねグリッドマン。こんなアニメでも少しでも本物に近づけてみせるから」

微笑みながらPOPを眺めているとつん、と何かが腐ったような悪臭が鼻に付いた

オタク「ブッヒヒ、アカネちゃん可愛いなあ。ああ放送が待ち遠しい。4発は　　せるね俺ぁ」

オタクB「六花も　　　でたまらないんですよねぇ。ンハァ早く抱き枕届かないかなハァ～」

でっぷりと太った二人組の男がにちゃにちゃ唾音を鳴らしポスターを眺めている
こんな連中がこのアニメを見ているのだ。分かっていても実際に姿を見ると鳥肌が立つ
不快感に耐え切れずそこから離れようとする

オタクA「てかさぁ。ロボットとか戦闘とかいらねぇんだよなぁ。もっとアカネちゃんの　　増やせよ」

オタクB「女の子が　　　なだけが見所だもんねぇ～。グリッドマンマジ邪魔。　　れないし」

オタクA「ま～んがTwitterで発狂してたよな。グッズ止めろとか死ねよ。特撮版とかゴミだしぃ」

まただ。掲示板で嫌というほど見たその言葉
そもそもグリッドマンを持ち出したのは作り手の方だ
グリッドマンは被害者だ。どうして非難されなきゃいけないんだ？

繰奴はその二人から離れるとさっとアプリを立ち上げる。予想通り二人とそっくりな醜い造形の怪獣が現れた

オタクA「ブヒッ…？ぶひひぃぃぎゃああ！！！　　　痛ぁぁぁ！！ママー！！ママァアー！！！！」

二人組の一人が倒れ込み太った体をセイウチのようにばたつかせる。股間を抑え涙を流しながら

オタクB「ど、どったのゆうくん！？ヒッ！！イッギャアアアーー！！取れるゥー！！　　　　　取れるゥゥーー！！」

臭い肥満体の男二人がぎゃんぎゃん泣きながら床をはいずり回っている。まるで家畜小屋のようだ
大声を聞きつけ客や店員が集まるがどうしようもない

いつも原作　　　だなんだ製作者を叩いてるくせに
自分等が気持ちよくなれる原作　　　なら忖度する
そういう卑怯さが許せない。一層タップする指に力が入る

繰奴はタップの速度を速めた。グリッドビームが怪獣に目がけてどんどん飛んでいく

オタクA「アガガガガアアアーー！！！痛い痛いイダイイイイィ！！！ア“ッッ！！」ﾌﾞﾘｭﾘｭﾘｭﾘｭｰｰｯ

痛みのあまり一人が盛大に脱糞した。店中に広がる糞臭。それでも止まない叫び声。人々の侮蔑めいた視線
糞に塗れながら痛みに耐えきれずのたうち続けるキモヲタ二人組。きっとここは地獄だ

繰奴はタップを止めるとその場を去る。後ろから店員の
「糞で汚した商品は買い取ってもらいますから！！」という怒りの声が聞こえてきた
店を出た瞬間、耐え切れずアハハと笑い転げる操奴

操奴「私がグリッドマンをあるべき形に取り戻して見せるわ!!」

繰奴はそれからも度々アプリを使い日々を過ごしていた
そんな折、喪黒から話があるとのことで魔の巣に呼び出される

繰奴「喪黒さん本当にありがとうございます！あのアプリ大活躍ですよ！！」

喪黒「ホーッホッホ、すっかり表情が晴れましたなあ。お気に召したのなら何よりです」

繰奴「私がいる限り大切な名作をもうこれ以上好き勝手させません!!」

喪黒「ああ、言い忘れていましたがそのアプリ、今日で使用期限を迎えるのですよ」

繰奴「えっ！？」

慌ててスマホを取り出しタップする。が、まったくアプリが反応しない

繰奴「も、喪黒さん！困ります！また新しくアプリをインストールしてください！」

喪黒「それは一度きりしか落とせない仕様なのです。諦めてください」

喪黒「それに繰奴さん。あなたはそのアニメの制作の一端を担っているのでしょう？」

喪黒「十分心の回復はできたはずです。アニメの展開も多少なりともあなたの望むものになった…」

喪黒「心機一転、新たな気持ちでその作品と向き合ってみるべきではないですかねえ」

繰奴「は、はぁ…」

繰奴（でも喪黒さんの言う通りかもしれない。ただ不満を言うだけじゃダメだよね）

繰奴（私だけの力で頑張ってみよう。敵意ではなく誠意で変えていければ…）

しかしそれから数日、その決意はあっさり裏切られる事になる

繰奴「ど、どういう事ですか？特撮版の世界との繋がりをぶん投げするって！」

制作スタッフ「一応匂わせ描写はしたしこれでいいっしょって事らしいよ」

制作フタッフ「それより話数もないし　　ぶち込みたいんじゃない？　　グッズ展開もあるしさ」

一瞬でも頑張ろうと思った自分がバカだった。連中はどこまでいっても　　脳だったのだ

繰奴は耐え切れず会社を飛び出す。曇り空の中、行くあてもなく走っていると雨が降り出した

ふと気づくとあのゴミ捨て場の前にいた。始めて喪黒と出会った場所だ

繰奴「…だったら始めからオリジナルでキモヲタ専用アニメを作ればよかったじゃない」

繰奴「何でわざわざ過去の作品をほじくり返すの？そのくせどうして一切のリスペクトもしようとしないの？」

繰奴「まるで泥棒じゃない！そんなもの見てブヒブヒ喜んでる奴らの為に何を頑張れっていうの！？」

ずぶ濡れのまま思わず心情を吐露する繰奴

喪黒「ホーッホッホ、ひどい御姿ですなあ。繰奴さん」

声と共に闇の中からヌっと喪黒が現れる。その悪魔的な微笑みが彼女には一縷の救いに見えた

繰奴「喪黒さん…お願いします。あのアプリをもう一度…あいつらに分からせなきゃ…」

喪黒「本当に大切なものを汚される苦しみ。お察しいたします」

喪黒「ですが繰奴さん。もうあなたの苦しみはあんなものでは受け止めきれません」

繰奴「ならなんでもいいです。私の痛みをあいつらに少しでも与えることができるなら…！！」

喪黒「なんでも…？本当になんでも構わないとおっしゃいますか？」

繰奴「構いません！！！あいつら人間じゃない！！豚です！！　　に脳を支配された豚なんです！！」

繰奴「豚どもとまともに取り合おうとした私が愚かだったんです！！だから…だから！！」

喪黒は待ってましたとばかりに一層口角を上げると繰奴に向かって指を差す

喪黒「いいでしょう！！あなたに相応しい力を私が与えてさしあげましょう！！！」

禍々しいオーラを放つ喪黒に戸惑いながらも決して目を離そうとはしない繰奴。覚悟はできている

喪黒「繰奴さん！愚かな豚どもを！怪獣たちを！！！今度はあなたが裁いてやるのです！！！！」

喪黒「ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン！！！！！！！！！！」

繰奴「アアーーーーーーーーーーーーーーーーッッ！！！！！！！」




夜、んふんふと興奮気味に鼻を鳴らしながら抱き枕に縋りついている男がいる
パンツ一丁で何度も抱き枕に腰を擦り付け、剥げた頭にうっすら汗が滲む

ハゲオタク「うほほぉぉ…ついに六花ちゃんの抱き枕が届いたぞぉ…ああ…　　　だ…」

母親に「社会復帰のため資格を取りたい」と嘘をつき貰った金で即購入した甲斐があった

ハゲオタク「ババアも馬鹿だなあ。38歳で資格取得なんて誰がするかよ。お前が死ぬまでニートしてやる」

そうほくそ笑むと抱き枕にキスをし、愛の言葉を囁きながらごそりと　　を取り出す

ハゲオタク「イヒヒ…六花ちゃんの声聞きながらいっぱい愛したげるからね。精巣暴れちゃうなぁ…」

スマホでアニメグリッドマンの動画再生するハゲオタク、だが戦闘シーンから始まってしまう

ハゲオタク「チッめんどくせえ。だから　　シーンだけでいいってんだよ。バトルとか誰が求めてんだよカス」

早送りしようとした途端、スマホの画面が突然切り替わりドッド絵のグリッドマンが現れる
消そうとするがまったく画面が動かない

ハゲオタク「はぁ！？んだよウイルスか！？あーむかつくわ！後でババアに八つ当たりしてやる！！」

イライラしながら画面を弄くっていると
このドット絵のグリッドマンがピコピコ動き出し
腕に光の刃のようなものが現れる

ハゲオタク「つーかなんだよこの古くせえドット絵。くっさ。どうせなら六花ちゃん出せよ」

ドット絵のグリッドマンが「グリッドライトセイバー！」というメッセージと共に光の刃を振り下ろす

ハゲオタク「ごっ！！！？」

その瞬間、股間に激痛が走る。　　に耽るため握っていた　　がぱっくり縦に切断され
真っ赤な血で染まっている。愛読するロリ　　漫画で見た断面図そのままだ

ハゲオタク「！！！！！！！！！！！！！！！！！」

恐怖と痛みで思わず絶叫するハゲオタク。が、何故か声が出ない
視認できないが何かものすごい力がぎりぎりと首を絞めつけている

ハゲオタク「ぷきゅ…んごぎゅ…たちけて…おか…ぁたん…！！！」

スマホの中のドット絵グリッドマンがこちらを見つめている。頭の中に声が響く

≪脳に　　が詰まった怪獣め。これから何匹だって私が裁いてやる≫

その瞬間、凄い力でどこかに引きずり込まれて行くオタク。一瞬の喧騒のあと。部屋が静まり返る

ハゲオタク母「たかし…？なんか音がしたけど…今日届いた荷物、本当に資格のやつなのよね…？」

ハゲオタク母「…寝てるの？ちょっとだけ入るわよ？怒らないでね？」

おそるおそる扉を開ける母、しかしそこに息子の姿はなくただ異様に乱れたベッドと
気持ち悪いプリントがされた抱き枕、そして画面の割れたスマホが床に転がっているだけだった


喪黒「ホーッホッホ、人である事を捨て永遠の怪獣退治を選ぶとは」

喪黒「しかし彼女にとっては本当に大切な作品…むしろ幸せな事でしょう」

喪黒「わざわざ過去の作品を引っ張り出したのであれば常にリスペクトの心を持たねばなりません」

喪黒「子供に夢を与えていた作品を大人の性玩具にすれば反発が来るのも当然。真摯に受け止めるべきです」

喪黒「ましてその反発を集団で攻撃し、問題の本質から逃げるなど恥ずべき行為」

喪黒「作り手も視聴者も原作がなければそのアニメは生まれなかった。という事を忘れてはいませんかねぇ？」

喪黒「低俗な猥褻アニメをわいわい楽しむのも結構ですが人としての礼節はお忘れなきよう」

喪黒「あくまで過去の名作を使わせて“もらっている“という事を忘れてはいけません」

喪黒「オリジナルで良作を作れない無能な作り手ばかりの昨今

謙虚さを無くした先には荒廃した未来しか待ってはいませんよぉ…ホーッホッホッホッホ…」



完