1: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/27(水) 20:43:36.98 ID:hSKAoPwo
1





番外個体が耳元で俺の名を囁く。






2: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/27(水) 20:45:14.63 ID:hSKAoPwo
2

「何もない部屋だねぇ。多少ミサカが暴れても被害少なそうだよ」

俺が使わずにいた部屋。
書類上は俺が住んでることになっていた。
番外個体は今日からここに住む。

ある程度の金の援助はしてやる。能力の制御法も教えてやる。それ以上は何もしねェ。勝手にすればいい。

「あなたにそれ以上の事は期待してないよ」

俺はオマエに期待してることなンざ何もねェよ。

「嫌なやつ」

3: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/27(水) 20:45:49.87 ID:hSKAoPwo
3

「生活必需品ってこんなに必要なんだ」

これでも必要最低限だ。

「生きるって面倒なんだね」

なら死ねよ。

「まさか」

「用済みになったあなたを殺す日を楽しみに待つとするよ」

4: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/27(水) 20:47:02.23 ID:hSKAoPwo
4

「新しい携帯端末が欲しい」

勝手にしろ。

「身分証明書がないよ」

前の携帯端末あるだろ。

「誰が使用料払うの?」

仕方なく俺名義で新しい携帯端末を買い与えた。

「ミサカのは登録しないの?まぁ、ミサカはあなたの電話番号とメールアドレスを登録する気はないけど」

俺がオマエと仲良くメールやら電話やらするわけねェだろ。

「ミサカもあなたと仲良しごっこするなんて死んでもごめんだよ」


そんな感じで言い合った末に結局、互いの電話番号を登録し合うことにした。

5: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/27(水) 20:47:46.22 ID:hSKAoPwo
5

「寝る」

帰る。

「帰る場所あるんだ」

オマエには関係ねェよ。

「愛くるしい司令塔の飼い主のとこにでも転がりこんでるのかな?」

答えるとでも思ってンのか。

「いいや。どこだっていいけど寝込みを襲われて簡単に死なれるのは困るね」

「あなた人から恨み買うの得意でしょ?」

下らねェこと考えてる暇があったらそのふざけた口のきき方でも直したらどォだ。

「わぉ。さすが学園都市第一位。首輪が付いていても野良犬さながらだ」

ぶん殴ってやろうかと思った。

6: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/27(水) 20:48:22.97 ID:hSKAoPwo
6

「学習装置の知識も馬鹿にできないね。こんなとこで役に立つ時がこようとは」

あらかたの家事道具の使い方は分かるらしい。
料理も知識だけならある程度は持ち合わせているようだ。

オマエが家事とかクソも似合わねェけどなァ。

「エプロン装備の家庭的番外個体をなにとぞよろしく」

興味ねェな。

「不能」

黙れ変態。


学習装置を作った奴は何を考えてこれらの知識を妹達に与えたのだろうか。

7: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/27(水) 20:49:11.98 ID:hSKAoPwo
7

映画や漫画、ドラマを見て思ったらしい。

「人間ってやたら死ぬのを怖がるようだけど、そんなに怖がるものなの?」

オマエらが異常なだけだ。死ぬの怖がってたら実験になンねェだろ。

「人間なら本来は持ち合わせてるってことでいいのかな」

俺はその手の学問についてはあまり詳しくねェが、まァそォだろォよ。

「ふーん。とりあえずミサカにはあまり関係なさそうだね」

8: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/27(水) 20:49:50.68 ID:hSKAoPwo
8

「女の子と会うのに血と硝煙の臭いがするのはどうかと思うよ」

オマエがそンなこと気にしてどォすンだよ。

「おいおい。ミサカも女の子扱いしてほしいねぇ」

だったらその女だってことを生かして娼婦なり何なりして金稼いでこいよ。

「じゃああなた専属ってことでオーケー?ぎゃはははははは!!」

てめェみたいな性悪お断りだクソったれがァ。

9: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/27(水) 20:50:49.58 ID:hSKAoPwo
9

番外個体も成長を無理やり速めた軍用クローンだ。
他の妹達と同じく調整が必要なはずだ。
今日はいつものあの医者の所に連れて行った。

「世間話でもしていけば?」

オマエがどのくらいめンどくせェ奴なのかなら語ってやるがなァ?

「ミサカの調整の度に高級菓子を用意しておくよう言っておいてよ」

人格矯正の訓練もお願いしますとは言っておいてやる。

「一方通行好みの性格にしてくださいってか!なんじゃそりゃ、なんじゃそりゃあああ!!」

げらげら笑い始めた。
うるさいので眉間に拳銃を突きつけて黙らせた。

10: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/27(水) 20:52:01.78 ID:hSKAoPwo
10

「金とか銀の装飾品の意味が分かんない」

などと言い出した。
ファッション雑誌かなんかを見て思ったのだろう。

「メッキで良くない?装飾品に使うぐらいなら精密機械に使ってあげればいいのに」

スプーンとかフォークだって高いのには銀が使われてたりするけどなァ?

「それもダメ。銀である必要性を感じない」

「まったく。装飾以外に使うこといっぱいあるでしょうに」

金や銀を好むような成金趣味じゃないのは結構なことだ。
しかしながら理由がまったく可愛らしくない。

11: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/27(水) 20:54:23.31 ID:hSKAoPwo
今日はここまでです。
こんな感じで淡々と番外通行書いていくので。
よろしかったら最後までお付き合いください。
そんなに長くもないんで。
ではまた。

24: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/28(木) 21:17:00.82 ID:GZRmHvgo
11

とある歌番組。
そこではちょうどウィークリーチャートの発表をしていた。
番外個体はそれを物珍しそうに見ている。

「ポピュラーミュージックの歌手ってのは恋愛モノしか歌えないの?」

さァな。売れよォとしてそこに行き着いてンじゃねェの?

「なんていうか、買う方も売る方も頭悪そうだね」

オマエが見た目相応の年齢ならこの手のモノは好きなはずだがな。

「こんな安い歌で感動してあげるなんて日本の若者は優しい人ばかりなのかな?」

知るか。

「恋愛ってさぁ、そんなに大切なもの?」

歌の歌詞になるぐらいなンだからそォなンじゃねェの?

「へぇ」

25: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/28(木) 21:17:54.29 ID:GZRmHvgo
12

番外個体に月経が来た。
生理用品使っといてよかったよ、とか。
それらを何の臆面もなく俺に話すのはどうなんだ。

「軍用クローンなのに。子供産めるんだね」

学園都市の暗部の連中は変態のクソ野郎ばかりかァ?
軍用クローンに生殖機能つむなンざイカれてるとしか思えねェぞ。

「これからはミサカを女の子扱いでよろしく」

ジェンダーフリーって知ってるか?

「この人でなし」

オマエが言うな。

そういえば初めて会ったときに比べて目の下の隈が若干薄くなったような気がする。

26: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/28(木) 21:18:56.39 ID:GZRmHvgo
13

雪が降った。

「ロシアにいた時はあんなに鬱陶しいと思っていたのに」

「こう見るとなかなか風情があるね」

そォかァ?寒ィだけだろォがよ。

「あら?あなたの頭はもうそんなに雪が積もったの?」

はァ?

「どれどれ、ミサカがはらってあげよう」

おィ、やめ……。

「なんだ、髪の毛か。白すぎて分からなかったよ」

そう言って俺の髪を思いっきり引っ張った。
勢いで転んでしまった。

27: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/28(木) 21:19:26.98 ID:GZRmHvgo
14

「こういうのを写真に収めればいいんだ」

はァ?

「使い道がなかった携帯端末のカメラ機能を使うときがきたようだね」

なにを撮るつもりだよ?

「雪以上の白さを持つあなたの醜態?」

却下だ。

「よーし撮るよ」

俺の話を聞け。

「はい、撮ったから。傑作だねぇ」

写真は俺の願いとは裏腹に綺麗に撮れている。


番外個体の目の下の隈がまた薄くなった。

28: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/28(木) 21:20:16.55 ID:GZRmHvgo
15

クリスマス。
他の連中のためのプレゼントの話をしたときに、番外個体が

「あなたが選ぶことに意味があるんじゃないのかな?」

などと珍しくそれっぽいことを言うので他の連中のためのプレゼントのついでに買っておいた。

クリスマスだからと言って手渡す。
番外個体は一瞬で怪訝な表情になった。
中身を見て一層怪訝な表情になった。

「ラピスラズリのブレスレット……?」

一応、天然のラピスラズリのものにしておいた。

「あなた、パワーストーンの御利益とか信じてるタイプ?」

ンなわけねェだろォが。

「そうだろうね。まぁいいや。ありがとう。ある程度は大事にするね」

ラピスラズリはその手の筋の人曰く「邪気を退ける」「強い浄化」などの効果があるらしい。
そうと知って半分あいつ宛ての皮肉のつもりで選んだのだが、まぁ喜んでもらえたようでなによりだ。

29: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/28(木) 21:21:36.80 ID:GZRmHvgo
16

「あの医者が次のミサカの調整の時にはあなたにも来てほしいだってよ」

今年最後の調整を終えた番外個体が俺に言った。
番外個体の態度の悪さに頭にきたのか。
はたまた、世間話でもしろというのか。

オマエ、なンかしでかしたンじゃねェだろォな?

「悪態付くのはなるべくあなただけにしようと努力はしているけどね」

その情熱は高く買ってやる。

30: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/28(木) 21:22:19.46 ID:GZRmHvgo
17

年が明ける。
色々なことがあった。
実験でのこと。
暗部でのこと。
ロシアでのこと。
あのクソガキのこと。

そして。

番外個体のこと。

31: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/28(木) 21:23:13.90 ID:GZRmHvgo
18


一体どう扱ったのかは知らないが例のブレスレットはあっけなく壊れた。
紐の部分が切れてしまったようで、残されたラピスラズリが所在なさげに置いてある。

壊すの早ェよ。

「ごめん?」

仕方ねェ。石の方貰っていくぞ。

「……?いいけど」

そう言ってラピスラズリを砂状になるまで砕いた。

「何それ。ミサカへのあて付け?相変わらず良い趣味してるね」

ちげェよ。まァ、待ってな。

いい使い道を知ってる。
俺らしくはないが、ラピスラズリをそのままにしておくよりずっといい。

32: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/28(木) 21:24:10.99 ID:GZRmHvgo
19

結局こういうことだ。
砂時計。
砂状にしたラピスラズリを砂時計の砂に使う。

「ぎゃはははっ!砂時計って。学園都市で砂時計って!」

うるせェよ。オマエの頭も砕いてやろォか。

「そっちの方がずっとあなたらしいね」

この反省のなさは番外個体らしい。

「どうやって作ったの?」

材料用意して、後は俺の能力使えばすぐだろォが。

「うわ。全国の砂時計職人にあやまったほうがいいよ、それ」

33: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/28(木) 21:25:09.74 ID:GZRmHvgo
20

「じゃあ早速」

砂が落ちていく。
しかし、途中で止まった。

「おうおうおう。あなたも相当間抜けだね」

おかしい。
作るときに何度も確認したはずなのだが。

34: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/28(木) 21:26:23.51 ID:GZRmHvgo
21

「まぁ、あなたとミサカの間抜けさの象徴としてこのままにしておくのも悪くない」

確かに使い物にならねェって点では教訓染みたモノがあるな。

「最終的に一番ダメなのはあなただけどね」

石をオマエに見立てて能力使って粉々にしてやったンだが、まァ甘かったようだ。

「あなたの詰めが甘いの?ミサカへのお仕置きが甘いの?」

両方に決まってンだろ。

50: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/29(金) 21:48:35.35 ID:6D6mMego
22

番外個体の調整の日。
言いつけ通り俺も病院に向かった。
医者から話があるらしい。
ただし番外個体には席を外してもらうとの事だった。

「ミサカ何かしたかな?」

胸に手を当ててよォく考えるンだな。

「色々思い当たるよ。困ったね」


そんな呑気なことを考えれるのはあの医者の腕が立つからに他ならない。
しかし。

51: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/29(金) 21:49:18.57 ID:6D6mMego
23

医者から伝えられた内容はこうだ。

他の妹達よりも成長している分、負荷が大きくなっていた。
そのため調整でも芳しい値が出ていない。
負荷が調整でどうにか出来るレベルを超えている。

…………。

つまり長くは持たないかもしれないということだった。
この事実を、俺は番外個体に伝えるべきか?

52: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/29(金) 21:50:05.70 ID:6D6mMego
24

あの医者が打つ手がないと言っている以上、まだ健全な状態でいる今は病院に預ける意味もない。
番外個体はいつも通りに部屋に帰っていく。
調整が始まる前と何も変わらない日常に戻る。

俺の日常は病院に来る前と後では姿を変えていた。
今日の夜は随分暗い。

53: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/29(金) 21:51:07.22 ID:6D6mMego
25

番外個体が住んでいる部屋に俺も住むことにした。
一人で倒れられたら困る。
そもそもは俺の部屋だ。

「あの医者と話した結果がこれ?女の子とは仲良くしろとでも言われたわけ?」

そォ思いたきゃそォ思っとけよ。

「ミサカは退屈しないから全然いいけどね」

通い慣れ過ぎて全く新鮮味がねェな。

「冷蔵庫にはブラックコーヒー入ってるし。むしろなんで今まで住んでなかったのかが不思議だよ」

オマエと一つ屋根の下で暮らそォなンざ思ってもいなかったからなァ。

「ぎゃはははっ!やっぱりあの医者に女の子の扱い方でも吹き込まれたのかなぁ!!??」


あの医者の話は嘘のような気がしてきた。
そうであって欲しかった。

54: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/29(金) 21:52:26.67 ID:6D6mMego
26

あの医者が助からないと言ったからって何もせずに番外個体の死を待ってるほどお利口じゃない。
既存の法則、つまり科学では助からないのなら、未知の法則に頼ればいい。
その未知の法則に俺は心当たりがある。

魔術。

オカルトを信じる気は毛頭ないが実際にその手の類のものを目にしている。
必要があれば超音速旅客機をジャックして地球上のどこにだって行く。
暗部の連中をどつきまわすなど造作もないことだ。
あの時のように血を吐くなり血管が破けるぐらいで助けられるなら安いものである。
妹達を、番外個体を簡単に死なせはしない。

家に帰ると砂時計の砂がいくらか下に落ちていた。
そしてまた止まっていた。

55: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/29(金) 21:53:35.22 ID:6D6mMego
27

「あなたたまに夜遅くまで家にいないけど何してるの?」

……仕事だ。

「へぇ。まぁミサカの分も稼いでくれてるんだから文句は言えないけど」

何か言いたいことでもあるのかよ?

「強いて言うなら帰ってくる時間ぐらいは前もって伝えて欲しいな」

そォか。そりゃ悪かった。

「……意外とあっさり食い下がるんだね」

家事全般はオマエにまかせっきりなとこあるしな。

「ぎゃはははっ!らしくないじゃないの!そんなこと気にするなんてさぁ!!」

魔術について調べて回ってる時点で随分らしくないことをしている。
誰かと同棲するなんて昔の俺じゃ考えられなかったことだ。

もうすでに色々俺らしくない。

56: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/29(金) 21:54:23.13 ID:6D6mMego
28

「出かけるならついでにゴミ出しお願い」

りょォかい。


『帰ってくるときに買ってきて欲しいものがあるんだけど』

しかたねェな。


「洗濯物たたんどいたから」

おォ。


「掃除機かけるからそこどいて」

めンどくせェな。


「お風呂開いたよ」

風呂入ってとっとと寝るか……。


「夫婦ってこんな感じ?」

知らねェな。


目の下の隈がさらに薄くなっている。

57: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/29(金) 21:55:36.71 ID:6D6mMego
29

「あなたの本名ってなんなの?」

忘れたな。

「バンクを調べれば分かることだろうけど」

今の名前で十分じゃねェか。

「あなたのことだから『一方通行』という名前を付けた時にでも捨てたんでしょ」

……さァな。

「まぁ、化け物に人間の名前は必要ないからねぇ」


身分証明書まで『一方通行』で通している俺の名前。

化け物になる前の俺。
人間だった時の俺。

いつからか使わなくなった俺の本当の名前。

58: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/29(金) 21:56:31.40 ID:6D6mMego
30

番外個体が体調不良を訴えた。
すぐに病院に連れて行った。

医者の話によると体の機能が低下し始めているということだ。
死が近い。
俺はまだ助け出す方法を手にしていない。

番外個体は入院することになった。

家に帰ると砂時計の上の部分の砂がまた幾分か落ちていた。
だけれどもまた止まっていた。
使えない砂時計だと思った。

俺と同じく。

71: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/30(土) 23:11:26.83 ID:tvG8jZMo
31

「この消毒液臭いのはどうにかならないのかねぇ」

オマエのそのドス黒い心も消毒して貰えよ。

「あなたが従順な娘が好みだとは知らなったよ」

オマエは従順か否かを語る以前の問題だろォが。

「悪意と不幸が大好物♪」


この調子がずっと続けばいいなと思った。

72: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/30(土) 23:12:27.52 ID:tvG8jZMo
32

「それにしても入院って大げさすぎない?ミサカに何が起きてるの?」

このまま黙っているのも優しさだ。
真実を伝えてやるのもまた誠実な姿勢だ。
この手の話は医者の方が扱いが上手いはずだが……。
どうやら、なぜ入院したのかを全く伝えてないようだ。
これは暗にあの医者が真実を伝えるか否かを完全に俺に任せたということを示している。
あの医者らしいと言えばあの医者らしい。

俺の決断はこうだ。

73: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/30(土) 23:13:17.18 ID:tvG8jZMo
33

俺はありのままを伝えた。
体が弱ってること。
長くは持たないということ。

「へぇ。そんなことが」

驚かねェンだな。

「まぁ元々がどう転んでも処分される予定だった存在だからね」

…………。

「家に戻っても満足に生活出来なさそうだし?ミサカは最初で最後の入院生活をエンジョイするよ」


昔の番外個体ならすぐに死ぬことを選んだはずだ。

74: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/30(土) 23:13:46.10 ID:tvG8jZMo
34

静かな部屋。
元からそんなにうるさかったわけではないが。
また帰ってきた。

今度はあいつを連れて帰ってくる。

75: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/30(土) 23:14:28.05 ID:tvG8jZMo
5

「あの部屋どうしてるの?」

今だって俺はあそこに帰ってる。

「ミサカの体調を気遣ってあそこに住み始めたんでしょ?あなたってやっぱりお人好しだ」

一人で倒れられるなンざ胸糞悪ィよ。

「まさかミサカがそんなか弱い系ヒロインになるとはね」

言葉はアグレッシブだけどな。

「けけけ。ミサカらしさと言って欲しいなぁ、そこは」

感情表現豊かで何よりだ。

「そうだね。この感情もどうにかしたいものだけど」



「やっぱりなんでもない」

76: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/30(土) 23:15:28.38 ID:tvG8jZMo
36

番外個体を救うためのすべを模索する日々だ。
しかし、今日もここにやってきた。
番外個体は寝ている。
いつか買い与えてやった携帯端末を片手に握りしめて。
病院ではこの手の機械は電源を切らなければならないはずなのだが。
そう思って無理やり番外個体の手から携帯端末を奪い取り電源ボタンを押す。
その際に、待ち受け画面が表示された。
その待ち受け画面の画像。

それはあのときとった写真だった。

黙ってても憎たらしい女だ。
思わず番外個体の顔を見た。
普段の憎たらしさからは想像もできない良い寝顔だ。

目の下の隈が消えかかっている。

77: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/30(土) 23:16:09.52 ID:tvG8jZMo
37

「毎日ご苦労さんだねぇ」

衰弱しきったその顔ではその言葉は皮肉ではなく悲壮感を帯びている。

あァ。ここに通うのが日課みてェなもンだ。

「暇人」

うるせェ。それよりケーキ買って来たンだけどよォ。食えるか?

「あなたのプレゼントっていつも唐突だよね」

女はそォいうサプライズが好きらしいって良く聞くンだがなァ?

「あなたが誰かに何かをあげるという時点で相当なサプライズだよ」

「もしかしてその辺の自覚があってやってる?」

食わねェなら持って帰るぞ。

「へいへい。美味しく頂きますよー」

78: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/30(土) 23:18:22.28 ID:tvG8jZMo
38

「それにしてもさ」

ケーキ半分ほどでフォークを止めた番外個体が喋り始めた。

「まさか、こんなに悪くないと思える日々が続くとは思ってなかったよ」

そォか。そりゃ良かったな。

「死んで手放すのがおしいくらいだね」

「一軍用クローンにしか過ぎないミサカにこんな日々が用意されてるとは思ってなかった」

…………。

「死にたくないなぁ。死んでやることはできないなんて言い方じゃなくてさ。本当に。死にたくないよ」

オマエがそンなこと言うのは意外だな。

「ミサカらしくないかな……?」

軍用クローンにしておくにはもったいねェ。

「ミサカ女の子だもん」

そォだな。俺もオマエには死ンで欲しくねェよ。

そう言って手を握ってやった。
目の前の、少女の手を。

「やめてほしいなぁ。あと少しで死ぬって時にそういう新しい一面を見せるのは」

目の下の隈がいつの間にか消えていた。
そんな番外個体がしばらく黙った後にこう言った。
「元」軍用クローンのこの少女が言った。

79: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/30(土) 23:19:16.15 ID:tvG8jZMo
39







「死ぬのが怖いってこういうことなんだね」








80: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/30(土) 23:20:04.06 ID:tvG8jZMo
40

妹達を調整している医者や研究者が見たら羨ましがるだろう。
学習装置の力を借りずに番外個体はここまで辿り着いた。
今はこんなに女の子の顔をしている。
こんなに人間味に溢れている。

死なせやしない。

96: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/31(日) 21:47:03.81 ID:0mOVRHQo
41

番外個体の限界も近い。

埃被って。
誇りを捨てて。
そこらじゅう駆け回って。
泥水に足突っ込んで。
誰だって敵に回す覚悟で。
見つからなくて。
でも諦めきれなくて。
どうしても死なせたくなくて。
なぜこんなに頑張ってるのかと考えもして。
でもやはり諦めきれなくて。
絶対に死なせたくなくて。

どうして番外個体のために自分がこんなに労力を支払っているのか気づいた頃に。

答えを見つけた。

98: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/31(日) 21:48:27.71 ID:0mOVRHQo
42

魔道図書館。
あるキーワードで呼ばれている銀髪の少女。
いつかファーストフードを奢ってやった。
あのクソガキを助けるのにも一役買った。
こいつの名を頼りにロシアまで行かされた。
そこでもこのガキの歌が助けとなった。

世間ってのは案外狭いのかもしれない。
人は持ちつ持たれつ、なんていうけれどこうも同じ人間に助けられるとは。
人は一人じゃ生きていけないなんていう綺麗事を恥ずかしげもなく言えるようになれそうだ。

99: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/31(日) 21:49:52.43 ID:0mOVRHQo
43

事の次第を説明した。
超能力者の術の行使は危険だと言い出した。
時間がない。
時間がないんだ。
するとしぶしぶ了解し、魔術行使の手順を教えてくれた。
そして必要なもの。
その中の1つ。
学園都市じゃまず手に入らないのではないかと言われた。
確かに学園都市じゃなかなか手に入らないかもしれない。
しかし手に入らないなんてことはなかった。

何の偶然だろう。
それは使えないオブジェと化して家で埃を被っている。

100: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/31(日) 21:50:39.02 ID:0mOVRHQo
44

勢いよく番外個体のいる病室のドアを開ける。
番外個体は酷く衰弱していた。
このままいけば死がすぐそこだ。
しかし、助け出す方法をやっと見つけた。

魔術の行使。
超能力者が使うと反動があるらしい。
しかし知ったことではない。

二人の拙さを象徴する砂時計。
今じゃすっかり砂が落ち切っている。
そこで思った。
この砂時計は別の物を測っていたんじゃないか。

そうだろ?

砂時計の砂も恋も落ちるものだ。

102: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/31(日) 21:51:17.07 ID:0mOVRHQo
45

「…………?」

大丈夫だ。何も心配いらねェ。

「そのセリ……フ……全……然……似合ってない……」

そォかよ。悪かったな。

「ミ、サカに……も、そ、んな……顔するん、だね……」


俺がどんな顔をしていたかは自分では分からない。

103: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/31(日) 21:52:16.15 ID:0mOVRHQo
46

魔術が発動した。

血を吐いた。

血管が破裂した。

立っていられなかった。

群青色の光があたりを包んだ。

散々な扱いを受けた砂時計からのあて付けかと思った。

104: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/31(日) 21:53:34.34 ID:0mOVRHQo
47

終わった。

あいつは……どォ……なった……?

すると聞こえてきた。
いつものふざけた口調で。



「ひどく弱ってる人を見て、死んだ方が楽なんじゃないかなーなんて思うときってない?」



1つや2つのため息じゃ到底足りない。
開口一番がそれである。

悪ィな……俺、は……少しでも、可能、性がある……なら、すがるタイプ、だ……。

「あなたって意外と熱血?」

オマエ……だっ、て、死ぬ……の、怖がっ、てた……じゃねェかよ……。

「実は死んだ方が楽かとも思ってたけど。それはミサカなりの黒歴史ってことにしておくよ」

そりゃァ……苦労したかいが……あった……。


何か他にも色々と皮肉なり文句なり色々言われた気がするが面倒なのでスルーした。
俺が弱っているのをいいことに散々な言い様だ。
そしてこのどや顔である。
目の下の隈がなくなっても人をイラつかせるには十分だった。

105: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/31(日) 21:54:25.32 ID:0mOVRHQo
48

「けどまぁ……」

そうやって俺の体を抱き寄せた。

「生きててよかったよ。ミサカも。あなたも」

そォだな。

「それよりさ」

なンだよ?

「早く口すすいできて」

あァ?


「ファーストキスが血の味ってのは勘弁してほしいからね」

106: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/31(日) 21:55:07.42 ID:0mOVRHQo
49

医者も驚いていた。
当然だ。
何が起きたのかとしつこく聞いてきたので番外個体と口をそろえて

『魔術』

と言っておいた。
半分は全く信じなかったようだがもう半分は信じたようだ。
そりゃ、かつて殺し合いをした二人だ。
こんな仲になればオカルト的な何かを信じたくもなる。
残念ながら魔術が作用したのは信じなかったもう半分の方なのだが。

107: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/10/31(日) 21:56:39.76 ID:0mOVRHQo
50

番外個体は無事退院した。
俺たちはいつものあの家に帰ってきた。
俺もここに帰ってくる。
いつからか、俺の帰る場所はここになっていた。
もう立派な夫婦かもね、なんて言って番外個体が笑った。
やることやってねェけどなァ、とジャブをかます。
そしたら、今日の夜は期待していいのかなぁ?と言って番外個体が抱きつく。
何なら今すぐかァ?と言って返す。
意外と大胆ね、と言って俺を押し倒した。

そして。

番外個体が耳元で俺の名を囁く。


「     」


いつからか使わなくなった俺の本当の名前。



―終わり―

171: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/06(土) 22:32:04.13 ID:faaLZIco
1





あの人が私の名前を呼ぶ。







172: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/06(土) 22:32:49.45 ID:faaLZIco
2

「さすがにオマエをクソガキと一緒に預けるわけにはいかねェな」

そう言われて連れてこられた部屋。
ミサカは今日からここに住むことになった。
書類上は一方通行が暮らしていることになっている。

「書類にしか用はねェ」

だから何もない。
まるで今のミサカの状態と同じだ。

173: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/06(土) 22:34:05.76 ID:faaLZIco
3

生活必需品の多さに驚いた。
これで必要最低限らしい。

生きるって面倒なんだね。

「なら死ねよ」

相変わらず嫌な奴だ。
好意を向けられるよりはずっと良いが。
用済みになったあなたを殺す日を楽しみに待つ、と言っておいた。

174: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/06(土) 22:34:46.40 ID:faaLZIco
4

新しい携帯端末を手に入れた。
そして一方通行の電話番号も。

あの司令塔の電話番号があれば事足りる生活を送っていたあなたにとっては未知の領域じゃない?

「下らねェことすンなら資金の援助を断つからな。路上で勝手にくたばれ」


それが出来たならすでにミサカは殺されているはずだ。
それにしてもこの人は身分証明書まで『一方通行』になっている。

175: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/06(土) 22:35:49.66 ID:faaLZIco
5

あの人が帰っていく。
帰る場所があるのかどうかは知らないが。

「オマエには関係ねェよ」

愛くるしい司令塔の飼い主のとこにでも転がりこんでるのかな?

「答えるとでも思ってンのか」

いいや。どこだっていいけど寝込みを襲われて簡単に死なれるのは困るね。
あなた人から恨み買うの得意でしょ?

「下らねェこと考えてる暇があったらそのふざけた口のきき方でも直したらどォだ」

わぉ。さすが学園都市第一位。首輪が付いていても野良犬さながらだ。


首のチョーカー。妹達と一方通行を繋ぐもの。
さながら首輪のようだ。

176: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/06(土) 22:36:30.05 ID:faaLZIco
6

学習装置の知識も馬鹿にできないね。こんなとこで役に立つ時がこようとは。

「オマエが家事とかクソも似合わねェけどなァ」

エプロン装備の家庭的番外個体をなにとぞよろしく。

「興味ねェな」

不能。

「黙れ変態」

こうしてミサカの生活が始まった。
学習装置で家事についての知識はインストールしてある。
だからあらかたの家事はこなすことが出来る。

177: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/06(土) 22:37:15.57 ID:faaLZIco
7

映画や漫画、ドラマでは沢山人が死んでいくことがある。
それ自体に思うことは特にない。
人々がやたら死に恐怖する様に同意を示すこともできないが。

とりあえずミサカにはあまり関係なさそうだね。

「勇敢と無謀を勘違いしている小物みてェなセリフだな」


妹達のためならば命を投げ捨てる勢いのこの人が言うのか。

178: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/06(土) 22:38:09.85 ID:faaLZIco
8

女の子と会うのに血と硝煙の臭いがするのはどうかと思うよ。

「オマエがそンなこと気にしてどォすンだよ」

おいおい。ミサカも女の子扱いしてほしいねぇ。

「だったらその女だってことを生かして娼婦なり何なりして金稼いでこいよ」

じゃああなた専属ってことでオーケー?ぎゃはははははは!!

「てめェみたいな性悪お断りだクソったれがァ」

そうそう、こんな性悪他じゃ養ってくれないだろうからさ。あなたに簡単に死なれるのは困るね。

「誰にモノ言ってやがる」

179: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/06(土) 22:38:53.75 ID:faaLZIco
9

一方通行にとある病院に連れてこられた。
他の妹達と同様、ミサカにも調整が必要だからだ。

世間話でもしていけば?

「オマエがどのくらいめンどくせェ奴なのかなら語ってやるがなァ?」

ミサカの調整の度に高級菓子を用意しておくよう言っておいてよ。

「人格矯正の訓練もお願いしますとは言っておいてやる」

一方通行好みの性格にしてくださいってか!なんじゃそりゃ、なんじゃそりゃあああ!!

げらげら笑ったら眉間に拳銃を突きつけられた。
この人の好みってのは拳銃突きつけられても同様しない女の子のことをいうのだろうか。

180: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/06(土) 22:39:58.33 ID:faaLZIco
10

とある雑誌のアクセサリー紹介のページ。
金と銀のアクセサリーとは何なのか。
人間なりの精密機械へのあこがれを表しているのだろうか。

「オマエが成金趣味じゃねェのは結構なことだ」

まぁ、飾り付ける以外に用途のないものならいいと思うんだけどね。
宝石とか基本そういう用途しかないし。

「いらなく高ェ指輪なンぞ買いやがったら指ごとへし折るからな」

安心して良いよ。そんなお金があったらミサカはあなたを殺す武器を買うから。

190: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/07(日) 19:58:38.77 ID:ff9v1Boo
11

テレビでは歌番組が流れている。
ウィークリーチャートの発表中だ。
なぜかほとんどの曲の解説に恋や愛といった単語が含まれている。

恋愛ってさぁ
、そんなに大切なもの?

「歌の歌詞になるぐらいなンだからそォなンじゃねェの?」

へぇ。あなたってその手のことに関しては縁なさそうだよね。

「出会った女の大半は死ンでった。暗部ってのはそンなもンだ」

191: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/07(日) 19:59:33.36 ID:ff9v1Boo
12

最近の体の調子から来るとは思っていた。
生まれて初めての月経。

生理用品付けといて良かったよ。
ああ、あなたは血があった方が欲情できるんだっけ?

「オマエの薄汚ェ血なンざ考えただけで吐き気がする」

女の子なのだからそれなりの扱いをしろというアピールは通用しないらしい。

「軍用クローンに生殖機能つむなンざイカれてるとしか思えねェぞ」

いつか自分の産んだ子供をこの手で抱く日が来るんだろうか。
もっとも、軍用クローンにそんな未来があるとは思えないが。

鏡を見て思ったが目の下の隈が薄くなった気がする。

192: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/07(日) 20:00:15.39 ID:ff9v1Boo
13

雪が降った。
あの時はただただ鬱陶しいと思っていたのに。
今は風情すら感じる。

「寒ィだけだろォがよ」

そう言った男と一悶着あって、結局この人はこけた。
それを撮影する。
携帯端末のカメラ機能が初めて役に立った瞬間だ。

傑作だねぇ。

「こっちは杖突いてンだぞ」

そんな一歩通行を労われというオーダーはインプットされていない。

193: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/07(日) 20:01:02.31 ID:ff9v1Boo
14

「オマエって一応女だよなァ?」

それは何の嫌味?

「いや、最近あのクソガキとかがクリスマスがどォのとうるせェからよ」

ミサカにプレゼントの相談と。ひゃはははは!!笑っちゃうねぇ!!

「クリスマスと聞いてハイになるのはあのクソガキだけにして欲しいンだがな」

ふぅん。まぁ、あなたが選ぶことに意味があるんじゃないのかな?
あなたに懐いてるあの司令塔のことだしね。

「オマエがそンなまともな答えを寄越すとは思ってなかったぜ」


テレビでそう言ってたのを見た。

194: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/07(日) 20:02:15.31 ID:ff9v1Boo
15

クリスマスプレゼントを渡された。
何の冗談かと思った。
包装を解く。
やはり何かの冗談なのではないかと思った。

ラピスラズリのブレスレット。

ラピスラズリはかつて金と同等かそれ以上の価格で取引をされていた。
ラピスラズリを原料とする顔料は「最上の青」として聖母マリアに捧げられたという歴史がある。
絵画における彼女の青いローブはその最上の青が使われているのだ。

もっとも、この人がそこまで気を回すことが出来るとは思っていない。
ただし、前にミサカが金銀の装飾品に対して文句を言っていたことを忘れてはいなかったらしい。

ある程度は大事にしよう。


目の下の隈がまた少し薄くなった。

195: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/07(日) 20:03:04.92 ID:ff9v1Boo
16

年明け前最後の調整。
次来るときは一方通行にも来てほしいと医者に言われた。

あの医者が次のミサカの調整の時にはあなたにも来てほしいだってよ。

「オマエなンかしでかしたンじゃねェだろォな?」

悪態付くのはなるべくあなただけにしようと努力はしているけどね。


そういえば最近、前ほど負の感情を簡単に拾うことが出来なくなっている。

196: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/07(日) 20:03:33.02 ID:ff9v1Boo
17

年が明ける。
色々なことがあった。
初めて外に出た。
初めて手を差し伸べられた。
初めて生理が来た。

何より。

初めてあの人にあった。

197: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/07(日) 20:04:13.79 ID:ff9v1Boo
18

何の前触れもなく突然ブレスレットが壊れた。
糸が切れてしまったようで落ちたラピスラズリが転がっていく。

「壊すの早ェよ」

ごめん?

「仕方ねェ。石の方貰っていくぞ」

そう言うとラピスラズリを砂状になるまで砕いた。
どうやら良い使い道を知っているらしい。

198: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/07(日) 20:04:39.44 ID:ff9v1Boo
19

一方通行のいうその「良い使い道」とは砂時計だった。
科学の最先端を行く学園都市の頂点に立つ男が出した答えがこれだ。

ぎゃはははっ!砂時計って。学園都市で砂時計って!

「うるせェよ。オマエの頭も砕いてやろォか」

こっちの方がこの人らしい。
能力を使ってすぐに作ってしまったというところもだ。

全国の砂時計職人にあやまったほうがいいよ、それ。

199: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/07(日) 20:06:41.43 ID:ff9v1Boo
20

早速砂時計をひっくり返す。
サラサラと砂が落ちていく。
けれども。
それは途中で止まってしまった。

大見え切っていたのに、何とも間抜けな話である。
このままにしておくのも悪くない。
心のダメージは一方通行の方が大きいはずだ。
醜態をさらし続けるがいい。
二人の拙さの象徴だ。

224: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/08(月) 20:25:21.27 ID:/65/xv6o
21

調整の日。
言いつけ通り一方通行を連れてきた。
どうやら医者と一方通行で話があるらしい。
ミサカは仲間はずれだ。
男同士で内緒話に花を咲かせようというのか。

どうだった?お医者様との楽しい楽しいお喋りは?

「あァ。俺は年寄りになるまでは医者と仲良くお喋り出来なさそォだ」

冗談なのかそうでないのか分からない口調だった。

225: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/08(月) 20:25:48.75 ID:/65/xv6o
22

そして一方通行がミサカの部屋に住み始める。
確かに元々結構な頻度で出入りをしていたけれど。

ミサカは退屈しないから全然いいけどね。

「通い慣れ過ぎて全く新鮮味がねェな」

冷蔵庫にはブラックコーヒー入ってるし。むしろなんで今まで住んでなかったのかが不思議だよ。

「オマエと仲良く一つ屋根の下で暮らそォなンざ思ってもいなかったからなァ」


一体どういった内容の話をすればこうなるのだろうか。
砂時計の砂が幾分か落ちていた。

226: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/08(月) 20:26:22.63 ID:/65/xv6o
23

思いの他ギスギスした感じはない。
でもおかしい。
前はこの感じを居心地悪いと言っていたはずなのに。
負の感情を拾う力が弱まっている。

目の下の隈がまた薄くなってる。

227: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/08(月) 20:27:12.39 ID:/65/xv6o
24

「オマエが実際に家事をしているところは初めて見たけどよ」

一方通行がキッチンに立つミサカを物珍しそうに眺めている。

「似合ってねェな」

そこは褒めるところじゃないのかにゃー?

「すげェのは学習装置だろ。オマエらは軍用以外にも家政婦として使えるンじゃねェの?」

兵士、娼婦に次ぐ第3の選択肢が存在するとはね。けけけ……。

「家庭に入るって言う選択肢はオマエらにはなさそォだな」

あなただって家庭を持つっていう選択肢は似合わないよ。

229: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/08(月) 20:27:48.85 ID:/65/xv6o
25

あなた家空けるときは夜遅くまで家にいないけど何してるの?

「……仕事だ」

へぇ。まぁミサカの分も稼いでくれてるんだから文句は言えないけど。

「何か言いたいことでもあるのかよ?」

強いて言うなら帰ってくる時間ぐらいは前もって伝えて欲しいな。

「そォか。そりゃ悪かった」

……意外とあっさり引き下がるんだね。

「家事全般はオマエにまかせっきりなとこあるしな」

ぎゃはははっ!らしくないじゃないの!そんなこと気にするなんてさぁ!!


あの日から変わったのか。
それとも元からこんな人だったのか。

230: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/08(月) 20:29:06.51 ID:/65/xv6o
26

「俺の銃をこの家に置いといても良いか?」

弾は抜いといてよ。



「ほらよ。コーヒーのついでにオマエの分のカフェオレ買ってきたからよォ」

へぇ、気が利くようになったね。



「今日は出かけっから帰りに何か買ってきて欲しいもンがあるなら先に言っとけよ」

りょーかい。



「あァ!?」

まだミサカ着替えてる最中なんだけどなぁ。



『めンどくせェことになった。今日は遅くなりそォだ』

晩御飯は冷蔵庫に入れておくよ。



「生活ちゃンと成り立ってンなァ」

悪くないよね。


砂時計の砂が幾分が下に落ちていた。

231: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/08(月) 20:29:35.82 ID:/65/xv6o
27

一方通行の本当の名前は何と言うのだろうか。

「忘れたな」

このお人好しのことだ。
忘れたというより使わなくなったのだろう。
化け物になったときにでも捨てたはずだ。
化け物に人間の名前は必要ない。

232: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/08(月) 20:30:19.34 ID:/65/xv6o
28

「オマエは番外個体って名前で満足なのかよ?」

妹達の中の1体だし。それで問題ないね。

「まァ、番号で呼ばれてる他の妹達に比べればましなのかもな」


番外個体もまたクローンとしての名前だ。
お姉様の名前はお姉様のものだ。
ミサカのものではない。

必要なときは来るのだろうか。
ミサカの人間としての名前。

233: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/08(月) 20:30:56.51 ID:/65/xv6o
29

どうしてだろう。
最近、体調が悪い。
体が重いというかだるいというか。

そんな話を一方通行にした。

そしたらすぐに病院に連れて行かれた。
色々な検査の末、入院することになった。

なぜ?

234: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/08(月) 20:31:41.51 ID:/65/xv6o
30

一方通行が重い口を空ける。

調整じゃどうにもならないレベルの負荷がかかっていた。
だから長くは持たない。

…………。

元々がどう転んでも処分される予定だった存在だ。
こんなシナリオが用意されていたとしても驚くことはない。

ただ、すぐに死のうとも思えなかった。

253: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/09(火) 20:40:13.05 ID:CVkiUFYo
31

暇になった。
二人分の家事をこなすようになってた分、余計にギャップを感じる。
一日の大半をベッドの上。
死ぬまでこのまま。
あの人は毎日会いに来る。

妹達が死ぬことを良しとしないあの人はミサカのことをどう思って見ているのだろう?

このまま死ぬのか……。

254: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/09(火) 20:42:36.27 ID:CVkiUFYo
32

携帯端末でバンクにハッキングを試みた。
一方通行の本当の名前を知るため。
風紀委員や警備員の権限でアクセスできる範囲では分からない。
もっと深く。
もっと奥へ。
まるで学園都市の暗部の中心へと向かって進んでいってるような気分だ。
そこで見つけたあの人の本当の名前。

…………。

255: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/09(火) 20:43:40.04 ID:CVkiUFYo
33

あの部屋どうしてるの?

「今だって俺はあそこに帰ってる」

ミサカの体調を気遣ってあそこに住み始めたんでしょ?あなたってやっぱりお人好しだ。

「一人で倒れられるなンざ胸糞悪ィよ」

まさかミサカがそんなか弱い系ヒロインになるとはね。

「言葉はアグレッシブだけどな」

けけけ。ミサカらしさと言って欲しいなぁ、そこは。

「感情表現豊かで何よりだ」

そうだね。この感情もどうにかしたいものだけど。

「?」

やっぱりなんでもない。

ミサカがこんなことを思うなんて。

256: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/09(火) 20:44:08.20 ID:CVkiUFYo
34

毎日ご苦労さんだねぇ。

「あァ。ここに通うのが日課みてェなもンだ」

暇人。

「うるせェ。それよりケーキ買って来たンだけどよォ。食えるか?」

あなたのプレゼントっていつも唐突だよね。

「女はそォいうサプライズが好きらしいって良く聞くンだがなァ?」

あなたが誰かに何かをあげるという時点で相当なサプライズだよ。

もしかしてその辺の自覚があってやってる?

「食わねェなら持って帰るぞ」

へいへい。美味しく頂きますよー。


一方通行なりの女の子に対する接し方。
死ぬ間際だけれど、軍用クローンから人間に近づけた気がした。

257: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/09(火) 20:44:40.54 ID:CVkiUFYo
35

まさか、こんなに悪くないと思える日々が続くとは思ってなかったよ。

「そォか。そりゃ良かったな」

死んで手放すがおしいくらいだね。
一軍用クローンにしか過ぎないミサカにこんな日々が用意されてるとは思ってなかった。

「…………」

死にたくないなぁ。死んでやることはできないなんて言い方じゃなくてさ。本当に。死にたくないよ。

「オマエがそンなこと言うのは意外だな」

ミサカらしくないかな……?

「軍用クローンにしておくにはもったいねェ」

ミサカ女の子だもん。

「そォだな。俺もオマエには死ンで欲しくねェよ」

やめてほしいなぁ。あと少しで死ぬって時にそういう新しい一面を見せるのは。


一方通行がミサカの手を握った。
これから死ぬって時に。
そんな優しくしないで。

259: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/09(火) 20:45:12.07 ID:CVkiUFYo
36

初めて会ったのはロシアだった。
殺し合いをした。
命を助けられた。
手を差し伸べられた。
学園都市に戻ってきた。
クリスマスの時には驚かされた。
あの人の作った砂時計はオブジェと化した。
いつからか一緒に暮らし始めた。
悪くない暮らしだった。
ミサカが入院した。
毎日会いに来てくれた。
手を握ってくれた。

気が付けば回想出来るくらい日々を供に過ごしてきてた。

260: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/09(火) 20:45:40.85 ID:CVkiUFYo
37

死ぬのが怖いってこういうことなんだね。

これまでのこと。
これからのこと。
考えていたら自然と声に出てしまった。

一方通行に教えられた。
これが泣くということらしい。

261: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/09(火) 20:46:06.55 ID:CVkiUFYo
38

苦しい。
死んだ方が楽なのではないか。
だがあの人は毎日やってくる。

嫌な奴だ。

262: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/09(火) 20:47:15.93 ID:CVkiUFYo
39

虚ろな目で鏡を見た。
いつのまにか目の下の隈がなくなってしまったミサカの顔。
せめて死ぬ時は良い顔しろということなのだろうか。
かつて、ミサカネットワークの負の感情のアウトプットを担った存在。

今ではもう、前のように負の感情を拾うことはできなくなってしまった。

263: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/09(火) 20:48:06.32 ID:CVkiUFYo
40

死ぬときはせめてあの人に傍にいて欲しい。
あの人を殺すために生まれた。
あの人の心を折るための調整をされた。
そんなミサカらしい最後を演出できる。
どんな顔をするだろうか。
あのときみたいなキレた笑い?
学園都市に対する怒りを露わにした表情?

もしくは。

泣いてくれるとか。

271: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/10(水) 20:55:13.40 ID:V0iRniMo
41

死が近いことを実感している。
絶え絶えの息。
言葉にならない言葉。

そろ……そろ……なの……かなぁ……?

「まだだろォが。オマエが諦めてどォすンだ」

あ……なた、は……諦め……てないっ……て、いうの……?

「そォ簡単に死なせる気はねェよ」

まだ苦しめというのか、この人でなし。

272: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/10(水) 20:55:50.41 ID:V0iRniMo
42

いよいよかな。
そう思っていた時だ。
勢いよくドアが開いた。
息を切らしてあの人がやってきた。
いくつかの持ち物を持って。
その中の一つが、あの砂時計。
いつのまにか砂が落ち切っていた。

…………?

「大丈夫だ。何も心配いらねェ」

そのセリ……フ……全……然……似合ってない……。

「そォかよ。悪かったな」

そう言ってこの人は笑った。
かつてあの司令塔に見せたような笑顔。

ミサカにもそんな顔するんだね。

273: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/10(水) 20:56:16.92 ID:V0iRniMo
43

この子供のような笑みが嘘でないなら。
何の躊躇もなく言える。

ありがとう。

大好きだよ。

274: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/10(水) 20:57:31.49 ID:V0iRniMo
44

『魔術』というものが発動した。

部屋が群青色の光に包まれた。

温かい光だった。

体が軽くなるのを感じた。

血まみれになって崩れていくあの人が見えた。

275: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/10(水) 20:58:16.69 ID:V0iRniMo
45

終わった。
驚くことに体調がすっかり回復している。

細い腕。
白い肌。
中性的な顔立ち。
おまけに血を流しながら床に手を突いている。
とても男らしいとは言えないこの出で立ちに。
激しく心を動かされている。

こんなドッキリを用意してるなんて随分人が悪いね。

「うる……せェ……よ……」

あなたも随分ボロボロだね。ミサカの苦しみを少しでも分かってくれたかなぁー?

「は……っ……こン、なの……大したこと……ねェ……なァ」


最後まで強気な男だ。
この後も色々言ってやったが反応されなかった。

276: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/10(水) 20:58:53.87 ID:V0iRniMo
6

けどまぁ……。

この人の体を抱き寄せる。

生きててよかったよ。ミサカも。あなたも。

「……そォだな」

それよりさ。

「なンだよ」

早く口すすいできて。

「あァ?」

ファーストキスが血の味ってのは勘弁してほしいからね。

277: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/10(水) 20:59:46.39 ID:V0iRniMo
47

キスをした。

何度も。何度も。何度も。

砂時計を作るに至ってしまったあの時の二人のような。

変わらない拙さで。

278: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/10(水) 21:00:15.59 ID:V0iRniMo
48

医者も驚いていた。
当然だ。
何が起きたのかとしつこく聞いてきたのであの人と口をそろえて

『魔術』

と言っておいた。
半分は全く信じなかったようだがもう半分は信じたようだ。
そりゃ、かつて殺し合いをした二人だ。
こんな仲になればオカルト的な何かを信じたくもなる。
残念ながら魔術が作用したのは信じなかったもう半分の方なのだが。

279: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/10(水) 21:00:53.50 ID:V0iRniMo
49

無事退院した。
そしていつものあの部屋に帰ってきた。
もちろん、この人と一緒に。

この人に抱きつく。
この人を押し倒す。

そして耳元でそっと囁く。
この人の本当の名前を。
人間として愛しているという証拠に。

280: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/11/10(水) 21:03:21.80 ID:V0iRniMo
50

12月某日。
あれから数年が経った。
私は青い着衣を身にまといベッドの上。
そう。私たちは今、とある病院の病室にいるのだ。

ゆっくりと病室のドアが開く。

あの人がやってきたのだ。
昔に比べて少しは表情がマイルドになったかもしれない。

あの人が私の名前を呼ぶ。


「     」


かつて番外個体と呼ばれていた私の今の名前。
そしてもうひとつ。


「     」




私は今、あの人との間に出来た子をこの手で抱きかかえている。



―終わり―

322: タクシー一方通行「どちらまで?」その0 1/2 2010/11/14(日) 19:24:31.36 ID:L.oTYwUo
冥土帰し「今日の調整はここまでだ」

番外個体「んで、ミサカはどうすればいいのかな?泊まり込みでリハビリとか?」

冥土帰し「君をこの病院で預かる予定はないんだがね?」

番外個体「医者が帰る場所のない『妹達』をほったらかし?」

冥土帰し「そうかね?僕は君に帰る場所があると思ってるんだがね?」

番外個体「路地裏なら誰でも受け入れてくれるかもね」

冥土帰し「帰る場所は君が一番良く分かっているはずだ」

番外個体「…………」

冥土帰し「迎えを呼んどいたからその車に乗って帰るといい。わかったね?」


――――――――――――

323: タクシー一方通行「どちらまで?」その0 2/2 2010/11/14(日) 19:25:56.61 ID:L.oTYwUo
番外個体「まったくどうしろってんだろうねぇ」

番外個体「迎え呼ばれたって行く場所なきゃどうしようも……ん?」

番外個体「あれは……」



一方通行「よォ」



番外個体「なるほど。あのカエル野郎にまんまとはめられたってわけ」

一方通行「乗らねェのか?」

番外個体「………………いいさ、乗ってやろうじゃないの」

一方通行「ならさっさと乗れ」

番外個体「あなたも呼ばれてのこのこやってくるなんてさ。殺してやりたいぐらい愛しいやつだよね」

一方通行「全く。なンたって俺がこンなタクシーの運ちゃンみてェな真似しなきゃなンねェんだ……」

番外個体「もうこのまま個人タクシーでも始めればいいよ。けけけ、お客さん第一号はミサカだねぇ!」

一方通行「そォかよ。じゃあそのお客さンとやら」


一方通行「どちらまで?」

325: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/14(日) 19:30:56.85 ID:L.oTYwUo
Extra

結婚……すっかァ?

「何を今さら?もう結婚してるようなもんでしょ」

そォかよ。じゃあ左手だせ。

「?」

差し出された手を取り、薬指に指輪を通す。
プラチナリングにダイヤモンドが1粒。
白く輝く婚約指輪だ。


「あなたのサプライズに振り回されることは何度かあったけど今回のは格別の破壊力だ」


そう言って笑った。
この指輪がここまで似合う奴はどこ探したってこいつしかいない。


「ふふ……これで私たちは死ぬまで一緒ね」

はン、笑わせンじゃねェよ。

「?」


俺たちは死ンでも一緒だ。

326: 以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします 2010/11/14(日) 19:33:16.16 ID:L.oTYwUo
以上です。エクストラとしてプロポーズっぽいもの書いてみました。

html化依頼出します。

またどこかで会いましょう。

引用元: 番外個体「     」