19: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:50:03.592 ID:Ka4UiLGo0.net
男「……」
女「ねえ……」
男「歩くしかないよ」
女「え?」
男「歩くしかない」
女「ねえ……」
男「歩くしかないよ」
女「え?」
男「歩くしかない」
21: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:51:27.117 ID:Ka4UiLGo0.net
女「歩くって、どこへ?」
男「決まってる」
女「どこ?」
男「線路の続く先」
女「……どこ?」
男「さあ?」
女「うふふ」
男「あはは」
女「バカにしないで」
男「決まってる」
女「どこ?」
男「線路の続く先」
女「……どこ?」
男「さあ?」
女「うふふ」
男「あはは」
女「バカにしないで」
26: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:54:26.206 ID:Ka4UiLGo0.net
女「歩くって、どこへ?」
男「……」
女「こんな何もない、何も見えない、砂ばっかりの場所からどこへ行けるって言うの?」
男「線路の続く先」
女「だからそれはどこなのよ!」
男「さあ?」
男「……」
女「こんな何もない、何も見えない、砂ばっかりの場所からどこへ行けるって言うの?」
男「線路の続く先」
女「だからそれはどこなのよ!」
男「さあ?」
27: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:56:10.737 ID:Ka4UiLGo0.net
女「もう終わりよ、何もかも終わり」
男「歩かないの?」
女「どこへも行けず、私はこのまま砂になってしまうのよ」
男「……」
女「慰めてくれたっていいじゃない」
男「電車、なくなっちゃったんだよ」
男「歩かないの?」
女「どこへも行けず、私はこのまま砂になってしまうのよ」
男「……」
女「慰めてくれたっていいじゃない」
男「電車、なくなっちゃったんだよ」
29: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/05(月) 23:59:43.064 ID:Ka4UiLGo0.net
女「勝手に、どこにでも行けばあるいいじゃない! 勝手に一人で歩いて、どこにでも!」
男「そう」
女「そうよ!」
男「君はそこで生きていくの?」
女「線路の上を歩いてたって何もないわ……燃えカスでも日陰くらいにはなるもの」
男「そう」
女「そうよ!」
男「そう」
女「そうよ!」
男「君はそこで生きていくの?」
女「線路の上を歩いてたって何もないわ……燃えカスでも日陰くらいにはなるもの」
男「そう」
女「そうよ!」
30: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/06(火) 00:02:36.332 ID:r3VnKN1B0.net
女「……ねえ」
男「?」
女「水」
男「……?」
女「水よ。私、喉が渇いたの」
男「僕はこれから線路の続く先へ歩いて行くから」
女「そう」
男「そうだよ」
女「私は?」
男「……そこで生きていくんだろう、電車だったものの影で」
女「そう」
男「そうだよ」
男「?」
女「水」
男「……?」
女「水よ。私、喉が渇いたの」
男「僕はこれから線路の続く先へ歩いて行くから」
女「そう」
男「そうだよ」
女「私は?」
男「……そこで生きていくんだろう、電車だったものの影で」
女「そう」
男「そうだよ」
31: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/06(火) 00:04:45.858 ID:r3VnKN1B0.net
女「可哀想だと思わないの?」
男「可哀想だ」
女「っ、だったら」
男「君も来るかい? 線路の続く先へ、いつ終わるか分からない旅へ」
女「イヤよ」
男「そう」
女「そうよ」
男「……そう」
女「そうよ!」
男「可哀想だ」
女「っ、だったら」
男「君も来るかい? 線路の続く先へ、いつ終わるか分からない旅へ」
女「イヤよ」
男「そう」
女「そうよ」
男「……そう」
女「そうよ!」
33: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/06(火) 00:06:50.750 ID:r3VnKN1B0.net
男「それじゃあ、さよなら」
女「待ちなさいったら! いつまで?」
男「いつ、まで?」
女「いつまで待てば助けに来てくれるの?」
男「助けに来るの?」
女「可哀想なんでしょう?」
男「可哀想だ」
女「助けに来なさいよ」
男「う、うん」
女「待ちなさいったら! いつまで?」
男「いつ、まで?」
女「いつまで待てば助けに来てくれるの?」
男「助けに来るの?」
女「可哀想なんでしょう?」
男「可哀想だ」
女「助けに来なさいよ」
男「う、うん」
34: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/06(火) 00:10:02.490 ID:r3VnKN1B0.net
女「で、いつ?」
男「10年、とか」
女「骨もなくなってるわ」
男「5年」
女「骨だけね」
男「1年」
女「干からびてるでしょう」
男「半年」
女「息はしてないでしょうね」
男「1ヶ月」
女「もう一声」
男「……半月」
女「いいわ、私待ってるから」
男「そう」
女「そうよ!」
男「10年、とか」
女「骨もなくなってるわ」
男「5年」
女「骨だけね」
男「1年」
女「干からびてるでしょう」
男「半年」
女「息はしてないでしょうね」
男「1ヶ月」
女「もう一声」
男「……半月」
女「いいわ、私待ってるから」
男「そう」
女「そうよ!」
38: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/06(火) 00:19:03.157 ID:r3VnKN1B0.net
男「一緒に歩けば戻ってくる時間分、待たなくて済むのに」
女「こんな砂ばっかりの場所で、男と何日も二人きりなんて! コップロボもいなきゃ、倫理制御回路だってどこのが適用されるんだか!」
男「そんなことしないよ」
女「どうだか!」
男「……それじゃあ、さよなら」
女「だから」
男「……」
女「だから、水。私、喉が渇いてるって言ったでしょう」
男「ないよ」
女「ないのに線路の続く先へ? 馬鹿じゃないの、万が一にも辿り着けないわ」
男「奇跡が起こるかも。ダイヤの遅れを知ったマザーが鉄道調査団を動かして、その途中で僕を見て助けてくれたり」
女「仕事の邪魔だと思って見捨てたり?」
男「……」
女「うふふ」
女「こんな砂ばっかりの場所で、男と何日も二人きりなんて! コップロボもいなきゃ、倫理制御回路だってどこのが適用されるんだか!」
男「そんなことしないよ」
女「どうだか!」
男「……それじゃあ、さよなら」
女「だから」
男「……」
女「だから、水。私、喉が渇いてるって言ったでしょう」
男「ないよ」
女「ないのに線路の続く先へ? 馬鹿じゃないの、万が一にも辿り着けないわ」
男「奇跡が起こるかも。ダイヤの遅れを知ったマザーが鉄道調査団を動かして、その途中で僕を見て助けてくれたり」
女「仕事の邪魔だと思って見捨てたり?」
男「……」
女「うふふ」
39: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/06(火) 00:25:46.969 ID:r3VnKN1B0.net
男「でも、歩かなきゃ。もしかしたら誰も何も飛んでこないかも知れないんだ」
女「……」
男「だから、さよなら」
女「だったら、いいじゃない」
男「?」
女「だったら、もういいじゃない。助けなんて来ないって諦めてしまえば」
男「……」
女「ねえ、私とここで暮らしましょうよ。二人で日陰に寄り添って、夜露朝露で喉を潤して、貨物車に残ったご馳走で乾杯して、少しでも幸せなまま」
男「僕は」
女「私、乗務員が話してるのを聞いたの。500年物のワインや、1000年物のウイスキーも積んでいるって」
男「僕は」
女「カビ臭いのはイヤ? それじゃあ24年物の私は? ここで一緒に暮らしてくれるなら、私の一生を幸せにしてくれるなら、貴方の一生も幸せにしてあげるわ」
女「……」
男「だから、さよなら」
女「だったら、いいじゃない」
男「?」
女「だったら、もういいじゃない。助けなんて来ないって諦めてしまえば」
男「……」
女「ねえ、私とここで暮らしましょうよ。二人で日陰に寄り添って、夜露朝露で喉を潤して、貨物車に残ったご馳走で乾杯して、少しでも幸せなまま」
男「僕は」
女「私、乗務員が話してるのを聞いたの。500年物のワインや、1000年物のウイスキーも積んでいるって」
男「僕は」
女「カビ臭いのはイヤ? それじゃあ24年物の私は? ここで一緒に暮らしてくれるなら、私の一生を幸せにしてくれるなら、貴方の一生も幸せにしてあげるわ」
40: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/06(火) 00:35:59.840 ID:r3VnKN1B0.net
男「っ、あまり熱くならないで」
女「どうして!? 私ほど良い女は他にいないわ! 貴方が一生掛けたって触れることも、言葉を交わすことだってなかった筈なのに!」
男「落ち着いて」
女「私は喉が渇いているの! 誰のせい? こんなに喚き散らすなんて、今まで生きてきて初めてだわ! この恥知らず!」
男「どうか、落ち着いて」
女「落ち着いているわ! 感情制御プログラムも身体制御プログラムも何のエラーも吐いてない! まさか言語制御? まさかよ! 見ての通り、いいえ聞いての通り流暢なものよ!」
男「……事故の時、君はどこかぶつけた? それとも、電気ショックを」
女「何を言っているの!? 何とか言ったらどうなの!? 私は落ち着いて、冷静で、クールで、地に足をつけているわ!」
男「……だったら」
女「何よ!」
男「だったら、その地につけた足はどこだい?」
女「ふざけないで! バカにしないで下らない質問をしないで! そんなものはここにこの通り、ここに、ここ、この通り……」
女「どうして!? 私ほど良い女は他にいないわ! 貴方が一生掛けたって触れることも、言葉を交わすことだってなかった筈なのに!」
男「落ち着いて」
女「私は喉が渇いているの! 誰のせい? こんなに喚き散らすなんて、今まで生きてきて初めてだわ! この恥知らず!」
男「どうか、落ち着いて」
女「落ち着いているわ! 感情制御プログラムも身体制御プログラムも何のエラーも吐いてない! まさか言語制御? まさかよ! 見ての通り、いいえ聞いての通り流暢なものよ!」
男「……事故の時、君はどこかぶつけた? それとも、電気ショックを」
女「何を言っているの!? 何とか言ったらどうなの!? 私は落ち着いて、冷静で、クールで、地に足をつけているわ!」
男「……だったら」
女「何よ!」
男「だったら、その地につけた足はどこだい?」
女「ふざけないで! バカにしないで下らない質問をしないで! そんなものはここにこの通り、ここに、ここ、この通り……」
41: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/06(火) 00:44:19.549 ID:r3VnKN1B0.net
女「何をしたの」
男「何もしてない」
女「私に何をしたの!?」
男「何もしてない」
女「私は、亡命したとはいえ一国の王女よ! それをこんな、こんな、許されないわ! 私の玉のような白い肌を、太陽のように輝く髪を!」
男「王国なんてどこにも残ってなんかない!」
女「ウソよ! 私には1000人の家臣と数えきれない程の財宝と暖かなお父様お母様の思い出と身を焦がすような恋と……!」
男「自己診断機能は、自己修復機能は走る? バックアップは取ってある?」
女「ウソよ、こんな……こんな鉄クズが私の、私を……」
男「何もしてない」
女「私に何をしたの!?」
男「何もしてない」
女「私は、亡命したとはいえ一国の王女よ! それをこんな、こんな、許されないわ! 私の玉のような白い肌を、太陽のように輝く髪を!」
男「王国なんてどこにも残ってなんかない!」
女「ウソよ! 私には1000人の家臣と数えきれない程の財宝と暖かなお父様お母様の思い出と身を焦がすような恋と……!」
男「自己診断機能は、自己修復機能は走る? バックアップは取ってある?」
女「ウソよ、こんな……こんな鉄クズが私の、私を……」
42: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/06(火) 00:49:32.816 ID:r3VnKN1B0.net
女「電車……なくなっちゃったね……」
男「昼夜の寒暖差で、線路が傷んでたんだろうね。脱線事故なんて、データでしか読んだことがなかった」
女「どうしよっか…?」
男「……」
女「ねえ……」
男「歩くしかないよ」
女「ええ、歩くしかないわね」
男「あはは」
女「うふふ」
男「線路の続く先へ」
女「ええ、線路の続く先へ」
男「昼夜の寒暖差で、線路が傷んでたんだろうね。脱線事故なんて、データでしか読んだことがなかった」
女「どうしよっか…?」
男「……」
女「ねえ……」
男「歩くしかないよ」
女「ええ、歩くしかないわね」
男「あはは」
女「うふふ」
男「線路の続く先へ」
女「ええ、線路の続く先へ」
43: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/06(火) 01:07:51.920 ID:r3VnKN1B0.net
男「あとどのくらい掛かるかな?」
女「さあ? 500年物のワインと1000年物のウイスキーを、貧乏臭くチビチビやっても終わらないくらい?」
男「お酒か……お酒は飲めばなくなってしまう。他に何か、気を紛らわせられる物があればいいんだけど」
女「それじゃあお喋りな鉄クズなんてどう? 自分を王女と思い込んでる上に、地に足のつかない情緒不安定っぷりはきっと貴方を飽きさせないわ! 浮いてるから荷物にもならないしね!」
男「ああ、それに僕が骨すらなくなった後も、よっぽど長生きしそうだ」
女「それじゃあお喋りな鉄クズなんてどう? 自分を王女と思い込んでる上に、地に足のつかない情緒不安定っぷりはきっと貴方を飽きさせないわ! 浮いてるから荷物にもならないしね!」
男「……」
女「それじじびゃあお喋りな鉄クズなんってど? 自分を王女と思い込んでるるら上に、地に足のつかなぎぎ情緒不安定っぷりわはきっと貴方を秋刺せないわ! 浮いてるから荷物にもならないしししね!」
男「なんだ、君も相当ガタが来てるな」
女「それじゃあお喋りなななななななななな鉄クズを王女と思い込んでる上に、地に足のつかなぷりはきっと貴方ををわををををんんんぎ浮いてるから荷物にもならなななななな……」
男「はは、君と逢った日を思い出すなあ。排熱もロクに出来なかった君、熱暴走して喚いてたっけ」
女「それれれれれれれれじゃあああああああお喋り鉄クズ王女上に、足のつかない情緒不安定情緒不安定情緒不安定情緒不安定飽きさせなかったら! 浮い浮い浮い浮い浮いて荷物にもねねねねねねねね……」
男「もしあの日……脱線事故なんて起きなければ、どんな未来が……」
女「電車……なくなっちゃったね……」
男「!……はは、なくなっちゃったんだもんな。そうだ、そうだとも」
女「ええ、線路の続く先へ」
男「ああ、歩くしかない」
おわり
女「さあ? 500年物のワインと1000年物のウイスキーを、貧乏臭くチビチビやっても終わらないくらい?」
男「お酒か……お酒は飲めばなくなってしまう。他に何か、気を紛らわせられる物があればいいんだけど」
女「それじゃあお喋りな鉄クズなんてどう? 自分を王女と思い込んでる上に、地に足のつかない情緒不安定っぷりはきっと貴方を飽きさせないわ! 浮いてるから荷物にもならないしね!」
男「ああ、それに僕が骨すらなくなった後も、よっぽど長生きしそうだ」
女「それじゃあお喋りな鉄クズなんてどう? 自分を王女と思い込んでる上に、地に足のつかない情緒不安定っぷりはきっと貴方を飽きさせないわ! 浮いてるから荷物にもならないしね!」
男「……」
女「それじじびゃあお喋りな鉄クズなんってど? 自分を王女と思い込んでるるら上に、地に足のつかなぎぎ情緒不安定っぷりわはきっと貴方を秋刺せないわ! 浮いてるから荷物にもならないしししね!」
男「なんだ、君も相当ガタが来てるな」
女「それじゃあお喋りなななななななななな鉄クズを王女と思い込んでる上に、地に足のつかなぷりはきっと貴方ををわををををんんんぎ浮いてるから荷物にもならなななななな……」
男「はは、君と逢った日を思い出すなあ。排熱もロクに出来なかった君、熱暴走して喚いてたっけ」
女「それれれれれれれれじゃあああああああお喋り鉄クズ王女上に、足のつかない情緒不安定情緒不安定情緒不安定情緒不安定飽きさせなかったら! 浮い浮い浮い浮い浮いて荷物にもねねねねねねねね……」
男「もしあの日……脱線事故なんて起きなければ、どんな未来が……」
女「電車……なくなっちゃったね……」
男「!……はは、なくなっちゃったんだもんな。そうだ、そうだとも」
女「ええ、線路の続く先へ」
男「ああ、歩くしかない」
おわり
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