1 :名無し:18/12/03(月) 19:11:35 ID:sLr主
彡(゚)(゚)「寒くなってきたなあ、空気も乾燥してきたし」
彡(゚)(゚)「風邪には気をつけんとな、ほっとレモンでも飲むか」
男「あのー、そこの方、ちょっとええですか」
彡(゚)(゚)「ん? なんや?」
彡(゚)(゚)「なんやこのおっさん、手にラッパ持ってるで……」
男「えーとですね、私、お薬を届けに来たんですけど」
男「これが、塗り薬なのか飲み薬なのか分からへんで」
彡(゚)(゚)「はあ、どんな薬なんや?」
男「まず量が一兆リットルほどあって」
彡(゚)(゚)「少なくとも飲み薬ちゃうな」
3: ↓名無し:18/12/03(月) 19:13:09 ID:sLr主
男「おっと、自己紹介せなあきまへんな、私、セロガンといいます」
彡(゚)(゚)「ラッパ持ってるしな」
セロガン「? ええとですね、実は私、宇宙人ですねん、地球にお薬を届けに来ましたんや」
彡(゚)(゚)「……そ、そうなんや、へー……」
セロガン「……信じてまへんな?」
彡(゚)(゚)「いや信じるほうがおかしいやろ」
セロガン「ではラッパを」
セロガン「(ドの音)」
彡(゚)(゚)「えっ何や景色が歪んで」
ビュオン
彡(゚)(゚)「ほげ!? なんやここは!? 砂漠や!」 ギンギンギラギラ
4: 名無し:18/12/03(月) 19:15:15 ID:sLr主
セロガン「サハラ砂漠ですな、このラッパの機能ですわ」
彡()()「うぐぐ、な、なんちゅう暑さや」 ギラギラ
彡(゚)(゚)「も、もう分かったから戻してくれ」
セロガン「(ドの音)」
ビュオン
彡(゚)(゚)「うお、も、元の道端や」
セロガン「太陽系の範囲ぐらいやったら、このラッパですぐに移動できますんや」
セロガン「ドは「どこにでも行ける」のドですな」
彡(゚)(゚)「さ、さすが宇宙人……なんかな?」
5: ↓名無し:18/12/03(月) 19:18:03 ID:sLr主
彡(゚)(゚)「まあ宇宙人なことは分かったけど、何やったっけ、薬がどうとか」
セロガン「順を追って説明しますわ」
セロガン「だいぶ前にですな、あるお爺さんが旅行中に、地球のそばを通ったらしくて」
セロガン「そのとき「あっ、これはアカンわ、この星には薬がいるわ」と思ったらしいですわ」
彡(゚)(゚)「はあ、そのお爺さんも宇宙人なんやな」
セロガン「それ以来、そのお爺さんは100年に一度、地球に薬を送るように手配したそうです」
彡(゚)(゚)「めでたしめでたし」
セロガン「終わらんでくれますか」
6: 名無し:18/12/03(月) 19:19:10 ID:drz
見てるで
7: 名無し:18/12/03(月) 19:20:28 ID:Ivg
見とるで
支援
8: ↓名無し:18/12/03(月) 19:20:32 ID:sLr主
セロガン「ところが前回のお薬が、どうも手違いで、あまり効かへんかったそうなんです」
彡(゚)(゚)「そもそも薬が来てたとか聞いたことないけど……」
セロガン「まあ効かんかったってことで、その場合はこの薬を臨時で届けるようにと、そういう契約になってます」
彡(゚)(゚)「ふむふむ……」
彡(゚)(゚)「それで? 何が問題なんや?」
セロガン「いや、実はですな、いつも薬を届けてた業者が倒産しはりまして」
セロガン「ウチの会社が仕事を引き継いだんですが、元の担当者が雲隠れしてましてな」
セロガン「この薬、塗ったもんか飲ませたもんか分からんのですわ」
13: ↓名無し:18/12/03(月) 19:22:22 ID:sLr主
彡(゚)(゚)「……そのお爺さんに連絡したらええんちゃう?」
セロガン「その人も少し前に死んでますんや」
セロガン「料金だけはずっと先までもらってます、それは引き継ぎましてん」
セロガン「それで、薬については地球の方に聞いたら分かるかなと」
彡(゚)(゚)「だから、そもそも薬とか知らんのや」
セロガン「でも100年おきに届いてたはずなんですが」
14: ↓名無し:18/12/03(月) 19:23:42 ID:sLr主
彡(゚)(゚)「うーん、映画とかやと、アメリカの大統領がこっそり宇宙人と会ってたりするけど……」
彡(゚)(゚)「今やったらトランプやな。もしかして薬のこと知ってるかも」
セロガン「大統領ですな。ちょっとラッパの機能でネットにアクセスして……」
セロガン「ホワイトハウスにいるようですな」
セロガン「(ドの音)」
彡(゚)(゚)「えっ景色が」
ビュオン
15: 名無し:18/12/03(月) 19:25:28 ID:sLr主
セロガン「知らんやったようですなあ」
彡(゚)(゚)「いきなりワープするのやめろや!! 撃たれたらどうすんねん!!」
セロガン「まあまあ、大統領に会えてトクしましたやろ」
セロガン「しかし困りましたわ、早いとこ配達を終えて帰りたいのに」
彡(゚)(゚)「ところで、薬はどこにあるんや?」
セロガン「一兆リットルありますからな、天王星のあたりに置いてますわ」
彡(゚)(゚)「わ、ワケわからん……」
セロガン「よかったら見に行ってみますか?」
彡(゚)(゚)「えっ」
彡(゚)(゚)「うーん、じゃあ一人じゃ不安やから、知り合いも呼んでええかな」
セロガン「どうぞどうぞ」
18: ↓名無し:18/12/03(月) 19:28:06 ID:sLr主
(´・ω・`)「急に呼び出してどうしたの、いまホワイトハウスにテロリストが出たってニュース見てたのに」
彡(゚)(゚)「あ、それワイらや」
(´・ω・`)「?」
彡(゚)(゚)「こいつはワイの友人や」
彡(゚)(゚)「頭のいいやつで、フワっとした質問でもサクサク答えてくれる」
彡(゚)(゚)「どのぐらい頭がいいのかと言うと、ポケモンのタイプ相性を一日で覚えたほどで」
(´・ω・`)「誰に言ってるの?」
20: ↓名無し:18/12/03(月) 19:29:26 ID:sLr主
セロガン「かくかくしかじか」
(´・ω・`)「……いや、あのですね、そんな大量の薬を運べるわけないし、宇宙人とか……」
彡(゚)(゚)「セロガン、ワープや」
セロガン「(ドの音)」
ビュオン
(´・ω・`)「うわ!? 何ここ」
彡(゚)(゚)「な、何やここ!? 宇宙や」
(´・ω・`)「なんでやきう君まで驚いてるの」
23: ↓名無し:18/12/03(月) 19:31:55 ID:sLr主
セロガン「ここは地球から30億キロほどの場所ですな」
セロガン「天王星がすぐそこに見えますやろ、あの細いリングのある星です」
彡(゚)(゚)「おお、青白くて綺麗やな」
(´・ω・`)「でも宇宙空間なのに、普通に息ができるね」
彡(゚)(゚)「それもそうやな」
セロガン「このラッパでバリヤー張ってますからな」
セロガン「ファの音です、ファは「バリヤーのファ」ですな」
彡(゚)(゚)「2つめからすでに苦しい……」
24: ↓名無し:18/12/03(月) 19:33:13 ID:sLr主
彡(゚)(゚)「それにしても、ちょっと薄暗いんやけど」
セロガン「ライトつけましょ」
セロガン「(ラの音)」
彡(゚)(゚)「お、光の玉が何個も飛び出して……」
彡(゚)(゚)「おお、なんやここ、足元が霜みたいに白いで」
(´・ω・`)「球体の氷みたいだね、小惑星かな」
セロガン「この氷の塊が薬です」
彡(゚)(゚)「えっ」
26: ↓名無し:18/12/03(月) 19:35:15 ID:sLr主
セロガン「成分表によるとですな、この薬の成分はほぼすべて水です」
セロガン「量は一兆リットル、今は凍ってまして、表面は白く濁ってますな」
彡(゚)(゚)「でかいなあ、界王さまの星の何倍もあるで」
(´・ω・`)「ええと、一兆リットルの水の体積は10億立方メートル」
(´・ω・`)「ちょうど1立方キロメートルだね、半径はおよそ620メートルだよ」
(´・ω・`)「水量で言うと、日本最大級のダムの貯水量の1.5倍ぐらいかな」
彡(゚)(゚)「ビックリするぐらいピンとけえへん」
28: ↓名無し:18/12/03(月) 19:37:19 ID:sLr主
セロガン「で、この薬ですが、どう使ったらええんですやろ」
彡(゚)(゚)「成分が水なんやろ? じゃあ水分補給ってことなんちゃう?」
彡(゚)(゚)「どうなんや? 地球って水が足らへんのか?」
(´・ω・`)「うーん、地球上にある水の総量は14億立方キロメートル」
(´・ω・`)「この氷の塊もすごい量だけど、地球をどうこうできる量じゃないよ」
彡(゚)(゚)「じゃあ塗り薬やろか、砂漠とかにぬりぬりと」
(´・ω・`)「砂漠にたまに洪水が起きるけど、それが薬のせい……ありそうな話だね」
(´・ω・`)「でも一過性すぎるよ、別に洪水で砂漠が緑化されるわけでもないし……」
セロガン「そうですなあ、このラッパでも、この量を砂漠に直接は運べませんし」
(´・ω・`)「運んだら被害が出るからやめてね」
32: ↓名無し:18/12/03(月) 19:40:20 ID:sLr主
セロガン「困りましたわ、誰か薬のこと知ってる人おりませんかな」
彡(゚)(゚)「うーん、トランプも知らへんかったし……」
(´・ω・`)「意外と経済界で知られてたりしてね」
(´・ω・`)「トランプさんもお金持ちだけど、世界一じゃないし」
セロガン「じゃあ世界一のお金持ちって誰ですやろ?」
(´・ω・`)「えーと、たしか2018年はAmazonのジェフ・ベゾフ氏」
(´・ω・`)「でも実質的には、ロスチャイルド家のジェイコブ氏……」
彡(゚)(゚)「あ、そういうこと言うと」
(´・ω・`)「え?」
セロガン「(ドの音)」
34: ↓名無し:18/12/03(月) 19:42:19 ID:sLr主
彡(゚)(゚)「だから急にワープするなや!! SPに撃たれたやんけ!!」
セロガン「まあまあ、ちゃんとバリヤーが間に合いましたやろ」
(´・ω・`)「び、びっくりした」
彡(゚)(゚)「せやけどジェイコブさんも知らへんかったなあ」
セロガン「困りましたなあ、もう落とすだけ落として帰ってええですか?」
彡(゚)(゚)「そんなことしたら隕石落下みたいになって、すごい被害出るやろ」
彡(゚)(゚)「…………」
彡(゚)(゚)「いや、それなんやろか」
(´・ω・`)「うん?」
35: 名無し:18/12/03(月) 19:44:34 ID:sLr主
彡(゚)(゚)「定期的に隕石を落として、地球の生物を減らすのが目的……」
彡(゚)(゚)「そうや、人間こそが地球のガンやってことで、隕石と洪水でそれを滅ぼす……」
(´・ω・`)「それはないよ」
彡(゚)(゚)「なんでや?」
(´・ω・`)「だって水だもの、大気圏突入したら大半が蒸発しちゃうし」
(´・ω・`)「燃え残るとしても、水じゃ威力が足りない、本気でやるなら自動車ぐらいの鋼鉄で十分なのに」
彡(゚)(゚)「それもそうやな」
39: 名無し:18/12/03(月) 19:46:43 ID:sLr主
セロガン「しゃあないですなあ、一度、会社に戻って前任者を探しましょか」
(´・ω・`)「それしかないかなあ」
セロガン「往復で一年と400日ぐらいかかりますんで、待っといてください」
(´・ω・`)「……ん?」
42: 名無し:18/12/03(月) 19:47:55 ID:sLr主
(´・ω・`)「あの、そちらの一年は400日以上あるの?」
セロガン「はい、715日あります」
(´・ω・`)「一日の長さは……」
セロガン「19時間ですな」
彡(゚)(゚)「何の話や?」
(´・ω・`)「一年とか、一日の長さは住んでる星によって違うんだよ」
セロガン「いえ、私らの基準が宇宙標準です、そういえば地球はローカル暦でしたな」
(´・ω・`)「じゃあ100年おきっていうのも、実際は違うのかも」
彡(゚)(゚)「ほーん……よう分からへん」
46: 名無し:18/12/03(月) 19:50:07 ID:sLr主
(´・ω・`)「そちらの100年って、こちらでは何年になるんでしょうか?」
セロガン「えーと……すんまへん、地球の感覚が分からんのですが」
セロガン「たぶん一秒の長さも違いますよってな」
(´・ω・`)「ええと……」
(´・ω・`)「そちらの一年で、セシウム原子の出す電磁波の波は何回起こりますか?」
セロガン「それやったら分かります、ラッパに計算させましょ」
セロガン「出ました、およそ22京回ですな」
彡(゚)(゚)「な、何の話や」
(´・ω・`)「原子時計の原理だよ」
48: 名無し:18/12/03(月) 19:53:13 ID:sLr主
(´・ω・`)「なるほど、じゃあそちらの一年は、こちらの一年に対して4分の3と少し……」
(´・ω・`)「…………」
(´・ω・`)「4分の3と、少し……?」
(´・ω・`)「なるほど……。わかったよ、この薬の使い方が」
彡(゚)(゚)「おお、ほんまか」
セロガン「あれですな、謎はすべて…」
彡(゚)(゚)「なんでそんなん知ってんねん」
50: 名無し:18/12/03(月) 19:54:22 ID:sLr主
-数日後-
彡(゚)(゚)「おおー、綺麗やなあ、夜空の半分以上が彗星やで」
(´・ω・`)「彗星が太陽に近づくと、太陽風によってチリが吹き散らされて、彗星の尾になるんだ」
(´・ω・`)「今回は太陽の近くで燃え尽きるぐらいの軌道で、しかも地球の近くに来るように落としたんだ」
(´・ω・`)「チリを一気に放出して、巨大な彗星になるんだよ」
52: 名無し:18/12/03(月) 19:55:30 ID:sLr主
彡(゚)(゚)「それにしても、あの薬がハレー彗星の代わりやったとはなあ」
(´・ω・`)「ハレー彗星は76年に一度、太陽に近づくんだけど」
(´・ω・`)「前回、1986年に来た時は、地球から遠すぎて小さく見えたんだ」
(´・ω・`)「過去の記録によれば、全天の半分が彗星で埋まったとか」
(´・ω・`)「月よりも明るかったとか、いろいろな話が残ってるよ」
55: 名無し:18/12/03(月) 19:56:18 ID:sLr主
彡(゚)(゚)「せやけど、なんで彗星が薬なんやろう」
(´・ω・`)「巨大なハレー彗星が現れるたびに、人間は混乱を起こしてきたけど」
(´・ω・`)「そのことで、宇宙に対する畏怖や信仰を抱いたとも言えるからね」
(´・ω・`)「知的生物の心に対して、薬のような効果がある……と考えたんじゃないかな」
彡(゚)(゚)「ほーん」
(´・ω・`)「仮定の話だけど、薬を手配したお爺さんの星では、もっと色々な天体ショーが起きてて」
(´・ω・`)「天体ショーの少ない地球を見て、何か提供したくなったのかもね」
彡(゚)(゚)「なるほどなあ」
58: 名無し:18/12/03(月) 19:59:45 ID:sLr主
彡(゚)(゚)「せやけどあの薬、いくらぐらいするんやろ」
(´・ω・`)「想像もつかないねえ、あのラッパの人の人件費もかかるし……」
彡(゚)(゚)「せやなあ……」
彡(゚)(゚)「……」
彡(゚)(゚)「いやホンマ、アレやな……」
(´・ω・`)「……」
彡(゚)(゚)「食えるもんくれたらええのに……」
(´・ω・`)「……うん」
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