1: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 20:13:18.181 ID:0xId/Ltd0.net
【ラインハット城】
ラインハット王「おぉ、来たかパパス殿!」

パパス「お久しゅうございますな、ラインハット王」

ラインハット王「実際に会うのは結婚式典以来だったか」

パパス「あれももう7年前、懐かしいですな」

ラインハット王「むっ、ということは連れている幼子は」

パパス「えぇ、息子、トンヌラです」

トンヌラ「……こんにちは」

ラインハット王「おぉ、こんなに大きくなって。ヘンリーと同じぐらいか」

トンヌラ「へんりー?」

ラインハット王「ワシの可愛い……息子だ。キミと同じの年だ」

パパス「トンヌラ、これからお父さん達は大事なお話をするからヘンリーくんと遊んできなさい」

トンヌラ「はーい、行こっ、ゲレゲレ」

ゲレゲレ「みゃうみゃう」

パパス「それで……天空の鎧についてですが……」

ラインハット王「うむ、それについてはデズモンが……」

2: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 20:13:57.742 ID:0xId/Ltd0.net
トンヌラ「ヘンリーくん居ますかー」ガチャッ

ヘンリー「わぁっ! なんだおまえ!」

トンヌラ「えっ、ぼくトンヌラ……あっ、こっちはゲレゲレね」

ゲレゲレ「みゃー」

ヘンリー「とんぬら? 変な名前だな……お前さてはオヤジに呼ばれてきたパパスって奴の子供だな」

トンヌラ「うん、ヘンリーくんと遊んでこいだって」

ヘンリー「ふーん……でもな、オレはこの国の王子だ。父さんの次にえらいんだぞ!」

トンヌラ「そうなんだ! すごいなぁ」

ヘンリー「へへっ、そうだろ! なんならオレの子分にしてやってもいいぜ!」

トンヌラ「ほんとう? 王子様の家来になれるって、やったねゲレゲレ」

ゲレゲレ「みゃぁ……(呆れ)」

ヘンリー「でも、ただで子分にしてやるほどオレは優しくないからなぁ。なにかシレン? を与えてやろう」

トンヌラ「しれん?」

ヘンリー「うーん……そうだ、トンヌラ、お前オトコだよな?」

トンヌラ「えっ! そうだけど、ぼく女の子に見える?」

3: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 20:14:29.323 ID:0xId/Ltd0.net
ヘンリー「……いや、その……アレだ、オトコならいいんだ、だから」

トンヌラ「うーん?」

ヘンリー「あれだよ……オトコの……     ……? 見せてくれればいいんだ」

トンヌラ「えっ!」

ヘンリー「となりの部屋の箱にさ、今着てる服をしまって、その、見せてくれたら……オレの子分にしてやってもいいぜ」

トンヌラ「い、いいのかなぁ……パパに怒られちゃうよ」

ヘンリー「オトコならやってみせろ! 見せてくれなきゃ子分になんかしてやらないからな!」

トンヌラ「わかったよ……着替えようゲレゲレ」

ゲレゲレ「みゃー」

ヘンリー「ふんっ」

トンヌラ「ヘンリーくんってこわいねー」ヌギヌギ

ゲレゲレ「みゃ~」

トンヌラ「ぬいだよー」スッパダカ

ヘンリー「おっ、どれどれ……」じろじろ

トンヌラ「は、はずかしいよぉ。ヘンリーくんにだってついてるでしょー?」」

8: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 20:24:01.679 ID:0xId/Ltd0.net
ヘンリー「えっ、あっ……うん、もちろん付いてるぞ! おかしなこと言うな!」

トンヌラ「そ、そうだよね……」

ヘンリー「……さわってみていいか」

トンヌラ「えっ、や、それは――」

パパス『ヘンリー王子? いらっしゃいますか?』ノックノック

トンヌラ「わっ、パパだ!」

ヘンリー「げっ! は、早く服着てこい」

トンヌラ「わー!」

ゲレゲレ「みゃぁ……」

ヘンリー『こ、こらパパス! 入ってくるなって言ったろ! トンヌラはとなりの部屋にいるよ!』

パパス『おぉっ、これはご無礼を。外で待ってると伝えてください』

トンヌラ「あぶなかったね……」

ゲレゲレ「みゃみゃみゃ」

トンヌラ「ヘンリーくん着替えたよー」

トンヌラ「子分にして……あれ?」

9: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 20:32:52.048 ID:0xId/Ltd0.net
パパス「では、天空の鎧はその古代の遺跡にあると?」

デズモン「えぇ、その可能性があります。ですが……」

ラインハット王「少し前から各地で多発している誘拐については知っているな?」

パパス「えぇ、各地の子供を攫っているとか……」

ラインハット王「最近その誘拐団がその遺跡を根城にしているとの噂があってな」

パパス「むぅ……」


トンヌラ「どこ行っちゃったんだろうねヘンリーくん」

ゲレゲレ「みゃうみゃう」ガリガリ

トンヌラ「こらゲレゲレ! 床ガリガリしちゃダメだっていつもサンチョさんに言われてるでしょ!」

ゲレゲレ「みゃぅ……」しょんぼり

トンヌラ「あーこんなにボロボロにしちゃって……なんだろこのボタン」ガコッ

トンヌラ「わっ、階段だ! えらいぞゲレゲレ」

ゲレゲレ「みゃぁ~」

トンヌラ「ヘンリーくん見つけた!」

ヘンリー「なんだ! もう見つかったのか!」

10: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 20:40:08.195 ID:0xId/Ltd0.net
トンヌラ「ねー、子分にしてくれるんでしょー」

ヘンリー「あー、うん……でも、触らせてもらってないからなぁ」

トンヌラ「もー、ヘンリーくんの   ――」

誘拐犯A「見つけたぞ!」

ヘンリー「なんだお前ら!」

誘拐犯B「おら! 子供はおねんねの時間だ!」ボコッ

ヘンリー「うぐっ!」

トンヌラ「ヘンリーくん!」

誘拐犯C「おい、子供に見られたぞ!」

誘拐犯A「そいつも攫っちまえ!」

トンヌラ「やれゲレゲレっ!」

ゲレゲレ「ぎゃうっ!!!」ザシュッ

誘拐犯C「ぎゃぁっ!」

誘拐犯A「おっ、おい何子供に手こずってんだ!」

誘拐犯B「もういい行くぞ!」

トンヌラ「あっ、待て!」

11: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 20:49:18.730 ID:0xId/Ltd0.net
誘拐犯A「さっさとのりこめ! オレらは王子だけ攫えばいいんだ!」

誘拐犯B「あれ、キラーパンサーの子供じゃねえか?」

誘拐犯C「くそぉ、あのガキなんであんなに強いんだっ!」

トンヌラ「どうしよう、ヘンリーくんが連れてかれちゃった!」

ゲレゲレ「ぐるるる……ぎゃうぎゃう」ダッシュ

トンヌラ「ゲレゲレ? どこに……パパに伝えるの? そうだね!」


パパス「なに、ヘンリー王子が攫われた!?」

トンヌラ「うん……!」

パパス「よし、トンヌラはここで待っているんだ。よいか、絶対外に出るんじゃないぞ」

トンヌラ「あっ! ……行っちゃった……」

ゲレゲレ「……みゃーんみゃーん」

トンヌラ「……そうだね、ボクたちも妖精の世界で強くなったもん。きっとパパと一緒に戦えるよ」

ゲレゲレ「みゃぁー」

トンヌラ「行こ! パパに早く追いつかないと!」

ゲレゲレ「……みゃあっ!」

12: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 21:02:22.459 ID:0xId/Ltd0.net
【古代の遺跡】
ヘンリー「おまえたち! オレをさらってどうするつもりだ!」

誘拐犯A「なにって、そりゃぁこれが仕事なもんで」

誘拐犯B「子供一人売り飛ばせば光の教団が金くれるってんだからよ」

ヘンリー「いまにラインハットの兵士たちが乗り込んでくるぞ!」

誘拐犯C「それはどうだか。王妃さまは兵を出さないように説得するって言ってくれたぜ」

ヘンリー「義母様が……!? なんで!」

誘拐犯A「可哀想になぁ、血のつながってない息子より実子のほうが可愛いもんなぁ」

誘拐犯B「ヘンリー王子が消息不明、王位を継ぐのは二番目のデール王子! だってさ」

ヘンリー「そんな……」


トンヌラ「遠かったね……パパも来てるのかな……」

ゲレゲレ「みゃー」

トンヌラ「えっ、なに? あっ……すごい、魔物の死体だらけ……」

どぐうせんしの残骸「……ゲマサマ……ゲマサマ……ゲマサマ……」


ゲマ「……おや、これは……」

14: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 21:12:44.823 ID:0xId/Ltd0.net
パパス「そりゃっ! うりゃっ!」

がいこつへい「ぐげーっ!」

パパス「むぅ……聞いていたよりずっと複雑そうだ……」

パパス「むっ、何奴……!?」

トンヌラ「えいっ!」ボカッ

わらいぶくろ「アヒャーッ」

パパス「トンヌラ!? どうしてここに……」

トンヌラ「ごめんなさい……パパの手伝いがしたくて……」

ゲレゲレ「みゃうっ……」

パパス「そうか……そうだな、もうお前も立派な戦士なのだな。よし、ヘンリー王子を一緒に探すぞ!」

トンヌラ「わーい!」

ゲレゲレ「みんみー!」

トンヌラ「そういえばあっちに開かない扉があったよ!」

パパス「本当か!」

トンヌラ「でも、なんだろう……ロウヤ? っぽくなかったかも……」

15: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 21:21:09.678 ID:0xId/Ltd0.net
パパス「おぉっ……これは……!!」

トンヌラ「ねっ?」

パパス(天空の紋章……! この中に伝説の勇者が身にまとっていた天空の鎧が……!)

トンヌラ「……パパ?」

パパス「……いや、ここにはヘンリー王子はいない。他を探すぞ!」

トンヌラ「そうなの? 残念だったねゲレゲレ」

ゲレゲレ「みゃうみゃう」

パパス(いかん……パパスよ、今はヘンリー王子救出が先だ!)


ヘンリー「……オレなんて」

パパス「! ヘンリー王子!」

トンヌラ「ヘンリーくん!」

ヘンリー「トンヌラとパパスか……ふん……」

パパス「ウオオオオオオ!」バキバキバキ

ゲレゲレ(すげえ……)

パパス「大丈夫ですか王子!」

16: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 21:36:24.359 ID:0xId/Ltd0.net
ヘンリー「おそかったじゃないか。でもいいや、オレはもう城に戻る気はないし」

パパス「何を!」

ヘンリー「王位はデールが継ぐ、というかもともとそうだったんだけど。義母様はオレのことが嫌いらしいからな」

ヘンリー「オレなんか、いないほうがいいんだ。きっと……母様が死んだ時からそうだったんだ」

パパス「ヘンリー王子!」バシッ

ヘンリー「――痛っ……なぐった……なぐったな……オレを」

パパス「あなたはラインハット王の、お父上の気持ちを考えたことがあるのか!」

ヘンリー「……」

パパス「ラインハット王は母を失ったあなたが強く生きられるように育てようとした! それは不器用だったかもしれない! だが、お父上はあなたに『王子』でいてほしいのです!」

ヘンリー「……お父様……」ぐすん

トンヌラ「……魔物!」

パパス「なにっ?!」

カパーラナーガ「ケタケタケタケタ」

パパス「ここは私が引き受ける! トンヌラよ! ヘンリー王子を連れてゆけ!」

17: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 21:43:44.323 ID:0xId/Ltd0.net
トンヌラ「ヘンリーくん……! こっちだ!」

ヘンリー「うん……」

トンヌラ「……ねぇ、ヘンリーくん……」

ヘンリー「……なんだ」

トンヌラ「……なんでもない。ここから抜け出したら」

ヘンリー「……いいよ」

トンヌラ「えっ……」

ヘンリー「子分にしてやる……だから、ずっと友達でいろ」

トンヌラ「……約束だよ! えへへ」

ゲレゲレ「っ!!? ぎゃぅぎゃっ!」

トンヌラ「どうしたのゲレゲレ――」

ゲマ「ほっほっほっほ、かわいい少年少女にペット、どこに行くつもりですか?」

トンヌラ「……ヘンリーくんは下がってて!」

ヘンリー「う、うん」

ゲマ「勇ましいですね……ですが、私の部下達を一掃したにしては……弱すぎる。もうひとりいますね……? まぁいいでしょう」

18: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 21:56:35.380 ID:0xId/Ltd0.net
トンヌラ「こい魔物! ぼくが倒してやる!」

ゲマ「ほほほほ、いい覚悟です。この私がおしおきしてさしあげましょう!」

トンヌラ「せいやっ!」樫の杖

ゲレゲレ「ぎゃうあっ!」爪

ゲマ「!」回避

トンヌラ「はやい!?」

ゲレゲレ「ぎゃるぐぐーっ!」

ゲマ「ほほほ、油断していました。いやはや子供だと思ってばかり。流石はキラーパンサー……しかし、あなたどこかで……いやその眼……エルヘブンの民か?」

トンヌラ「せりゃぁっ!」

ゲマ「いけない子ですね……お仕置きも少々キツイものにしてあげましょう!」かえんのいき

トンヌラ「ぐわぁっ! ベホイミ!」

ゲマ「ほう! やはりおつよい! ですが!」ズガッ

つうこんのいちげき!

ゲレゲレ「ぎゃんっ!」

トンヌラ「ぐぁーっ!!!」

19: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 22:10:40.653 ID:0xId/Ltd0.net
ヘンリー「あっ……トンヌラ……」

ゲマ「ほう……この子はトンヌラと言うのですか……道理で――」

パパス「うおおおおおおお!」魔神斬り

ゲマ「ほお!」しかし当たらなかった!

パパス「はずした……だと!」

ヘンリー「パパス、さん……」

パパス「ヘンリー王子、大丈夫か!? トンヌラは……!」

トンヌラ「ぅ……」

ゲレゲレ「ぐみぅぅ……」

パパス「……貴様! その姿どこかで!」

ゲマ「私のことについて知っているようですね。ならばあなたとやり合うのは得策ではありませんね……ジャミ! ゴンズ!」

ジャミ「およびですかゲマ様」

ゴンズ「ゲマ様のためならなんでもしますぜ」

ゲマ「その者をいたぶってやりなさい」

パパス「……いざ!」

20: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 22:23:46.031 ID:0xId/Ltd0.net
パパス「ふんっ!!!」

ジャミ「ぐぉおっ!」

ゴンズ「ぐふぅっ!」

ゲマ「驚きました……鬼神のごとき強さ。これは教団の脅威になりかねませんね」

パパス「光の教団……イブールはどこにいる!」

ゲマ「イブール様は忙しいのですよ。大神殿は未だ未完成ですからね……私もこういった卑怯な真似はしたくないのですがね!」

トンヌラ「うぎっ……」

パパス「トンヌラ!」

ゲマ「動いてはいけませんよ。さもなくばあなたの息子は地獄を彷徨うことになります。さぁ、続きをやりなさい」

ジャミ「おらぁっ!」

ゴンズ「がははっ!」

パパス「ぐぉっ……ぐっ……ぐぉおおおお」

ゲマ「そこまでにしておきなさい。トドメは私がやりましょう」

ジャミ「えぇ、ゲマ様そりゃあないっすよぉ」

ゴンズ「ゲマ様はいつもいいとこ持ってくんだよなぁ」

21: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 22:34:53.893 ID:0xId/Ltd0.net
ゲマ「メラゾーマ……!」

パパス「ぐぅっ……」

ヘンリー「……うわあああ!!」どかっ

ゲマ「!? この……ガキっ!」

ヘンリー「ぎゃっ!」

パパス「!!! うおああああああああ」パパスは一心不乱に駆け出した!

ゲマ「そんなボロボロの身体で何をっ!」しかし当たらなかった!

パパス「っ!!!」

ゲマ「この私に楯突くなど!」焼け付く息

パパス「ぐぁぁぁっ!!!」

ゲマ「さぁ、燃え尽きなさい!」

パパス「うぁっ……トンヌラよ……! お前の母は! マーサは生きている! 私に代わってかあさんを――」

パパス「ぬわーーーーーーっ!」

ヘンリー「……パパス……さん……」

ゲマ「まったく手こずらせました……ジャミ、ゴンズ、ここの誘拐犯たちを口封じしてきなさい」

22: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 22:44:24.347 ID:0xId/Ltd0.net
工事中の神殿

トンヌラ「……父さん……ゲレゲレ」

ヘンリー「……トンヌラ」

トンヌラ「ヘンリー……」

ヘンリー「ほら、パン食べろよ。教団員のパクってきたから」

トンヌラ「ありがと……」

ヘンリー「……ここに来て、何年経ったんだろうな」

トンヌラ「……五年かな」

ヘンリー「……ごめんな」

トンヌラ「えっ」

ヘンリー「オレのせい、だからさ。お前がここにいるの」

トンヌラ「ヘンリー、ちがうよ」

ヘンリー「いや、そうだ。だから、いつでもここから逃げ出したくなったら言ってくれ。オレが注意を引くから」

トンヌラ「……でも、僕は、ヘンリーの子分だから……親分は子分と一緒にいてよ」

ヘンリー「……そうだな……ふふ、じゃあ……    触るか?」

トンヌラ「えっ」

23: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 22:44:40.012 ID:0xId/Ltd0.net
幼年期の終わり

28: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 23:09:26.728 ID:0xId/Ltd0.net
工事中の神殿

ヘンリー「……ほら」ぽよん

トンヌラ「わっ、わっ」ゴクリ

ヘンリー「なに赤くなってんだよ」

トンヌラ「だ、だってぇ」

ヘンリー「……やっぱり王子じゃなかったわ。こんなに膨らんじゃって」

トンヌラ「ヘンリー」

ヘンリー「まぁ、でも、新人奴隷が言ってたぜ。ちょっと前にラインハットの王が代わったって」

トンヌラ「……」

ヘンリー「だからちょっとすっきりした。これでもう縛るものがないから、だから」

トンヌラ「だから?」

ヘンリー「トンヌラと一緒にいられる」

トンヌラ「えっ……」

ヘンリー「……親分として!」

トンヌラ「あっ、あはは」

ガラの悪い奴隷「おうおう、なんでぇ奴隷の身分でいちゃついてぇ」

29: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 23:20:33.022 ID:0xId/Ltd0.net
ヘンリー「ん、なんだよおっさん」

トンヌラ「……ヘンリー」

奴隷「なんならおじさんにも触らせてくれよなぁ。優しくしてやるからよぉ」

ヘンリー「やるかジジイ。できるなら   でもなんでもされてやらぁ」

トンヌラ「やめろヘンリー」

奴隷「ちっ、やめたよ。こんなガサツな  ガキとなんかやりたくもねえ。騒ぎなんか起こして鞭打ちなんかされたくねえからな」

ヘンリー「ふん」

奴隷「まぁ、言うほどここに奴ら手先はいねえんだけどな」

トンヌラ「それって?」

奴隷「あぁ? お前らここがどこだか知らないのか? 世界地図とか見たことあるか?」

トンヌラ「うーん……ない。ヘンリーはどう? お城で見たんじゃない?」

奴隷「ここはセントベレス山っつーんだよ。知らないか? ゴットサイド噴火伝説だのストロス王国壊滅だの」

ヘンリー「……ここ、あの高山の頂上なのか」

トンヌラ「む、難しい……」

30: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/04(火) 23:42:01.126 ID:0xId/Ltd0.net
奴隷「あーん、だからよ、世界地図がこうあってよ、この真中の島の険しい山脈の中の更に一番高い山のてっぺんがここなんだよ」

トンヌラ「ほえー」

奴隷「こんな立地だから実は最低限の見張りしかいねーの。反乱したところで逃げられんからな」

ヘンリー「じゃあ、ここから逃げ出した奴はいないのか?」

奴隷「海までの距離もなげえし滑落して死ぬか、野垂れ死ぬのが関の山だな」

トンヌラ「そっかぁ……」

奴隷「まぁ気を落とすなや坊主、おっさんがここまで生きてんだからよ、生きていればいいこともあるだろ」

トンヌラ「……だよね!」

奴隷「あとそっちの嬢ちゃん、お前のパンの盗み方だとすぐにバレちまうぜ。もっといい盗み方がだな」

ヘンリー「おっ、おっさんやっぱいいやつじゃねえか」


トンヌラ「その人は数ヶ月後に崩落してきた岩に潰されて死んだ。だけど僕らはその人のおかげで苦しかった五年を生き延びられた」

そしてトンヌラたちが神殿に来て十年が経った……

36: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/05(水) 01:52:41.990 ID:iKO5pLiG0.net
むち男「こらー! 何をしている! さっさと岩を運ばんか!」ピシィッ

トンヌラ「うっ、ぐぅ、はぁ、はぁ、こ、これです」

むち男「よし、お前は上の作業場に行け!」

トンヌラ(少し前に居住区が完成してから急に教団の監視が増えてきた……このペースだともう持たないかもしれない……)

水くみ女「大丈夫ですか? 給水してください、身体が持ちませんよ」

トンヌラ「あぁ、ありがとう……」

水くみ女「いつまでこんなこと続くんでしょうね……」

トンヌラ「……わからない」

トンヌラ(いつまでこんなことすれば……)

ヘンリー「なぁ、トンヌラっ」

トンヌラ「ヘンリー」

ヘンリー「ふふ、暗い顔してるな。そろそろ脱走したくなってきたか?」

トンヌラ「できるわけないだろ。それにその話はここでしないほうがいい」

ヘンリー「まぁ……な。だけど、ココ最近の奴隷の扱い、輪をかけてひどくなってる。教団の一員を奴隷に落ちるなんて話も聞いたし」

むち男「よし! 今日の作業はここで終わりだ! 貴様らは部屋に戻って明日の作業に備えろ!」

37: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/05(水) 02:05:57.179 ID:iKO5pLiG0.net
ヘンリー「夜はいいよな。あいつら騒ぎさえしなければ監視つけないし」

トンヌラ「しっかり休まないと身体壊れるよヘンリー。昼間の作業中にしっかり室内のチェックしてるから脱走できないと思ってるんでしょ」

ヘンリー「そうそう、オレさ、聞いたんだよ、何年か前に大きめの排水路作っただろ?」

トンヌラ「あの、懲罰牢の横の?」

ヘンリー「そう、あそこ、海に直接流れてるらしい」

トンヌラ「海、でも……」

ヘンリー「……まぁ、無理だよな。筏なんか作ってたら確実にバレるし、第一あの部屋は鍵がかかってるし」

トンヌラ「うん……」

ヘンリー「……うぐぅっ」

トンヌラ「どうしたのヘンリー、大丈夫?」

ヘンリー「……いや、ちょっと……鞭で打たれたところが痛いだけ……でも、寒いし……傍に行っていいよな……」

トンヌラ「わわっ……」

ヘンリー「……離れるなよ。子分だろ……」

トンヌラ「うっ、うん……」ドキドキ

38: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/05(水) 02:26:35.676 ID:iKO5pLiG0.net
トンヌラ「うにゅぐぐ……」

ヘンリー「起きろトンヌラ、朝だぞ」

トンヌラ「うぐ……ふぁ……」

ヘンリー「寝坊で鞭打ちにされたらたまらないしな、ほら、朝飯」

トンヌラ「……うん……」モグモグ

ヘンリー「……昨日はありがと」

トンヌラ「えっ、あっ、うん」

人の良さそうな奴隷「いつこの神殿は完成するんでしょう……はやく楽になりたい……」

奴隷の班長「おめえはよぉ! 考えが甘いんだよ! 完成したら解放されるなんて噂は俺たちを頑張らせる口実にすぎないのさ!」

奴隷おばさん「マリアちゃん、気を落としちゃダメよ」

マリア「はい……」

奴隷おばさん「しっかしひどいわよね。不注意で教祖様のお皿を割っただけで奴隷の身分にされるだなんて……教団にはお兄さんもいるんでしょう?」

マリア「えぇ……でも、最近教祖さまの考えについていけなくなっていたんです……まさか奴隷がこんなに酷使されているなんて……」

ヘンリー「なにか困ったらお姉さんのオレを頼ってくれよな」

39: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/05(水) 02:40:46.056 ID:iKO5pLiG0.net
トンヌラ「僕ら、もう十年もいるからね、いつでも力になるよ」

マリア「えぇ、ありがとう、ヘンリーさん、トンヌラさん……」

ヘンリー「へへー、お前、脈ありだな、このこの」

トンヌラ「えっ、えっ」

むち男「おらおら! 今日も仕事が始まるぞ! さっさと行け! 懲罰牢で打たれたいのか!」

奴隷の班長「行くぞお前ら」

トンヌラ「あぁ、はい……」ゾロゾロ


トンヌラ(……懲罰牢からなら排水路に近いか……いやでも……? 騒がしいな)

マリア「――お許しを!」

むち男「このアマ、俺の足に岩を落としやがったなぁ!? その根性を叩き直してやる!」

マリア「ど、どうかおゆるしください……!」

むち男「いーやダメだね! お前は最近奴隷になったばかりだったな! 奴隷がどう扱われるのかその身体に覚えさせてやる!」ピシィッ

マリア「ひぅっ……!」

ヘンリー「来たかトンヌラ……あのさ、オレ、もう待てないよ」バッ

トンヌラ「ヘンリー!」

40: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/05(水) 02:54:23.631 ID:iKO5pLiG0.net
むち男「なんだ貴様ら! 我々に歯向かうのか! 思い知らせてやろう!」

ヘンリー「うるさい! マリアを放せ!」メラ!

むち男「ぬわっ!」

トンヌラ「もう許さないぞ!」バギ!

マリア「ヘンリーさん、トンヌラさん……」

奴隷「おぉー! やっちまえー!」

むち男「こいつらぁ!」

ラマダ「何をやっている! きさまら!」

むち男「ラマダさま! 奴隷たちの反乱です!」

ラマダ「ここは偉大なるイブール様の神聖な場所にする予定だ! 汚すのならゆるさんぞ!」

トンヌラ「なにを……!」

ラマダ「所詮人間! 魂を抜いてやればいいわ……!」呪い

ヘンリー「! 身体が……!」

トンヌラ「ぐぅっ……!」

ラマダ「ヨシュア! こいつらを懲罰牢に閉じ込めておけ!」

ヨシュア「はっ!」

42: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/05(水) 03:09:50.475 ID:iKO5pLiG0.net
トンヌラ「……うぅぅ」

ヘンリー「……身体が重い……でも……ムチよりマシか……」

???「――大丈夫か? マリア、呪いを解いてやってくれ」

マリア「はい、お兄様……」シャナク!

ヘンリー「うっ……軽くなった」

トンヌラ「アナタは……」

ヨシュア「妹を助けてくれてありがとう。兄のヨシュアだ……お前たちに頼みがある。マリアを連れてここから脱出してほしい」

トンヌラ「脱出……? どうやって」

ヨシュア「お前たちの眼はまだどこかで生きることを諦めていない……教団は神殿が完成次第、口封じのために奴隷を皆殺しにするかもしれない」

トンヌラ「そんな!」

ヨシュア「お願いだ、マリアを連れて逃げて欲しい。こっちで手配はしてある。その排水路は本来ドレイの死体を処理するためのものだ」

ヘンリー「じゃあ、やっぱり海に通じてるのか?」

ヨシュア「あぁ……本当は死体を流すための樽だが、お前たちがさらわれてきた時の荷物も入れておいた。あまり良い手段とは言えないが……それ以上の逃走経路はない」

トンヌラ「お兄さんはこないんですか?!」

43: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/05(水) 03:21:35.018 ID:iKO5pLiG0.net
頭痛すぎてザメハとかシャナクとか欲しいんですけど!
てか思ったよりずっと長編になりそうなので寝ます!ラリホー!

引用元: トンヌラ「ヘンリーが女だった」