エリカ「入れ替わってる……!?」 みほ「貴女の名は」 前編 

エリカ「入れ替わってる……!?」 みほ「貴女の名は」 中編

770: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/24(金) 04:28:41.99 ID:luLWBCA8o






 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

771: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/24(金) 04:31:11.51 ID:luLWBCA8o

エリカ「ん……」

エリカ「ここは……」

エリカ(保健室?)

エリカ(そっか、お腹切ったから、一応寝かせられたのね……)

ガラ

まほ「む、起きていたか」

エリカ「あ、お早うございます隊長」

エリカ「今丁度起きたところです」

まほ「ふむ……」

まほ「いいニュースと悪いニュースとめざましテレビのニュースがある」

まほ「どれから聞きたい?」

エリカ「最後のやつ選択肢にいります?」

772: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/24(金) 04:35:37.74 ID:luLWBCA8o

まほ「希望がないなら適当にこちらで順番を決めるが」

エリカ「あ、ちょっと待って下さい」

エリカ「まあ、こういう時、相手に決めさせるとどっちも碌でもないニュースってオチ見えてますから……」

まほ「あー、悪いニュースかと思っていいニュースを聞いたら『今のがいいニュースだ』と言われるやつか」

まほ「安心しろ、ちゃんと片方は朗報だ」

エリカ「それでも悪いニュースからお願いします」

エリカ「いいニュースを覆すような嫌な話かもしれませんし、嫌なことは最初に処理しておきたいので」

まほ「そうか」

まほ「じゃあまず悪いニュースだが、お母様がエリカの病気の姿を見た」

エリカ「まあ、でしょうね」

まほ「ドン引きしていた」

エリカ「あまりにも簡潔でただただ恐怖を掻き立てられる表現恐ろしすぎるんですけど」

まほ「  ッションいじりすぎて色々暴走したのか、こう、排水までしはじめたからな……」

エリカ「はァ!?」

エリカ「うわっ、今気付いたけどノーパ……ええええええええ!?」

まほ「新機能の判明だな、おめでとう……」

エリカ「隊長じゃなくて赤星だったら何が目出度いって言いながら掴みかかったような内容ですけどありがとうございます」

773: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/24(金) 04:37:48.79 ID:luLWBCA8o

まほ「まあだが、その新機能も使う機会はないだろうがな」

エリカ「まあ、条件がわかったなら二度としないでもらえればいいですしね」

まほ「それもあるが……」

まほ「いいニュースを発表しよう」

まほ「お母様が、色々なコネを使い医師に聞いてくれたんだ」

まほ「やはり、その症状そのままの病気というのはないそうだ」

エリカ「でしょうね……」

まほ「だから――こう言われた」

まほ「何か精神的なものじゃないか、と」

エリカ「……」

エリカ「何だか分からないやつ全部にそう言ってそうなコメントでなんですけど……」

エリカ「でも――ひょっとすると、そうかもしれないですね」

774: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/24(金) 04:40:46.88 ID:luLWBCA8o

エリカ(戦車の気持ちが分かりたいと、たしかに願った)

エリカ(戦車道を知りたいと、誰よりずっと思っていた)

エリカ(……あの子の本音が聞きたいと、再起してほしいと、ぶつかり合いたいと思ったことだってある)

まほ「……何か心当たりでもあるのか?」

エリカ「いえ……ただ……」

エリカ(もしも私の願いが原因ならば)

エリカ(その願いは、もう、十分叶ったから)

エリカ(もう――満足)

エリカ(だから)

エリカ「それならきっと、もう、あの病気になることはないと思います」

782: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 03:07:47.73 ID:VlNmxB3qo

まほ「それは頼もしいな」

まほ「……信頼しているぞ」

エリカ(隊長の期待に、どれだけ応えられているのか分からないけど)

エリカ(でも……)

エリカ(隊長と一緒に戦える最後の夏)

エリカ(受けた恩を隊長に、そして黒森峰に返すためにも、負けられない)

エリカ(ましてや戦車になってましたで意識のないまま参戦するなんて真似は出来ないわっ!) ギリッ

まほ「ああ、それと、もう一つ」

まほ「うちのワンコが、めざましテレビに出たんだ」

まほ「すごいだろう?」

エリカ「は、はあ……」

エリカ(めっっっちゃ嬉しそうな顔……ツッコミづらい……)

まほ「こう、電波に乗って全国に広まるというのは、なんというか、気恥ずかしさやら何やらがあるな」

エリカ「隊長本人はさんざん電波に乗ってるじゃないですか」

まほ「まあそうだが……」

まほ「こう、な?」

まほ「自分と愛犬は違うじゃないか」

小梅「確かに、隊長がニュースに出てインタビュー受けてるのと、逸見さんが喋るわけでもないのに隊長の守護霊いたいな顔してテレビに出てるのとじゃ違いますもんね」

エリカ「……」 チッ

小梅「顔見ただけで舌打ちされた!」 ガーン

エリカ「ここ最近の行いのせいでしょうが」

783: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 03:41:46.01 ID:VlNmxB3qo

小梅「でも実際、何で自分のインタビューでもないのに、あんな格好つけて画面には映ってたの?」

エリカ「なっ、いいでしょ別に!」

小梅「いや、気になるなーって」

エリカ「どうだっていいでしょう!」

エリカ「そ、それより隊長の犬の話でしたよね!?」

まほ「む、そうやって話を変えられると、乗ってしまいそうになるな……」

小梅「隊長、わんちゃん飼ってるんですね」

エリカ「わんちゃんて」

まほ「ああ」

まほ「今度見に来るか」

エリカ「!?」

小梅「ええ、いいんですか?」

まほ「ああ」

まほ「可愛らしいし是非見てほしいというのもあるが……」

まほ「私としては、もう少し、我が家に対する敷居を下げてもいいと思っているしな」

エリカ「で、でも、西住流といえば……」

まほ「勿論、“西住流”の厳格さを軽んじるつもりはないさ」

まほ「だが――」

まほ「“ただの西住まほ”として、我が家に友人を呼びたいし、“黒森峰の隊長”としてもっと気軽に西住流に触れてほしいとも思うんだ」

小梅「そういうことなら今度暇なときにでも」

エリカ「ちょ、赤星!」

エリカ「西住流の総本山をそんな近所付き合い感覚で……!」

まほ「……エリカは、来たくないのか」 ショボーン

エリカ「そ、そんなことは!」 アワアワ

エリカ「西住流の、というか隊長のお宅に伺いたいとかそういうことはなくてですね!」 アタフタ

まほ「……」

エリカ「む、むしろ住みたいくらいです!!!」

まほ「それはどうかと思う」

小梅(めっちゃテンパってる……)

784: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 04:48:09.01 ID:VlNmxB3qo

エリカ「う、で、でも、そりゃあ、私だって呼んでいただけるなら、その……」 モヂモヂ

小梅「大型犬を学校でも飼ってるだなんて、さすが西住流」

エリカ「おい」

まほ「そうだな」

まほ「たまに他所様に噛み付くが、実は素直でカワイイ犬だ」

エリカ「ちょっ、隊長まで!」

エリカ「……」

エリカ「ちなみにご自宅の犬と学校の犬はどっちの方が……」

まほ「え?」

エリカ「あ、いや、なんでもありません……」

小梅「え、逸見さん、もしかして犬に嫉妬……」

エリカ「だあああああああ! そんなわけないでしょうが!」

エリカ「ほら! 保健室で騒ぐと迷惑だから帰りなさいアンタは!」

小梅「ええー、一番騒がしいのは逸見さんだよ?」

まほ「……ふふ」

エリカ「た、隊長~」

エリカ「笑ってないでコイツになんとか言ってあげてくださいよお」

まほ「……変わったな、二人共」

エリカ「へ?」

まほ「互いに、踏み込めるようになったじゃないか」

785: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 05:53:08.91 ID:VlNmxB3qo

まほ「……プライドだったり、自信がなかったり……」

まほ「理由は様々だろうが、どうしても、うちは連携部分が弱いからな」

エリカ「……馴れ合いでは、勝てません」

まほ「当然だ」

まほ「だが――連携なくして、勝てるようなものでもない」

まほ「戦車道は、単なるスポーツでもなければ野蛮な戦争ゲームでもない」

まほ「“人”を作る、華道や茶道に並ぶ“道”だ」

まほ「人を蔑ろにしていいわけがない」

小梅「……」

まほ「……言いたいことは分かるさ」

まほ「許せとも言わない」

まほ「勝たなければ意味がない、という理念を掲げているのは事実だ」

まほ「黒森峰のレギュラーは、レギュラーやレギュラーになれなかった多くの“人”で形成されている」

まほ「勝利という形で応えねばならないし、勝利を蔑ろにするのもまた人を蔑ろにすることに繋がる」

まほ「昨年のことは、何が正しかったのか、明確な答えなんてないだろうし、私だって思うがままに答えられるかはわからない」

まほ「……勝利よりも人を優先する、なんてことに急に方針転換するのも現実的じゃないだろう」

まほ「それでも少しずつでも、変わっていけたらと思う」

まほ「だから――二人が少しでも歩み寄ってくれるのは、とてもうれしい」

エリカ「隊長……」

まほ「それに、黒森峰の生徒とはいえ普通の女子高生だからな」

まほ「気持ちよく戦車道をするには、楽しく日常を送ってもらわねばいけないだろう」

エリカ「私は戦車道があれば毎日気持ちよく過ごせますけど」

小梅「え、でもネットサーフィンとかもしてるし、戦車道だけじゃないよね」

エリカ「まあ、そりゃそうだけど」

小梅「逸見さんのパソコン借りた時ブックマークや履歴見ちゃったけど、結構すごいアレなサイトに入り浸ってるみたいだし」

エリカ「待って」

まほ「ふっ……どうやら私が思っていた以上に仲良くやってくれてるようだな」

エリカ「待って下さい」

小梅「はい。今では逸見さんの夜のオカズが何かも把握してる程です」

エリカ「待てっつってんでしょ黙れバカ星!!!!」

まほ「駄目な馴れ合いにならなければ、心の距離が近いのはいいことだ。これからも、二人で仲良くやってくれ」

エリカ「今の会話で心の距離が過去最長記録を更新してるんですが」

786: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 06:08:12.65 ID:VlNmxB3qo

小梅「でも、こう、軽口が叩けるようになると、ちょっとうれしくなるかなーって」

エリカ「何言ってんだか……」

エリカ「私は別にどーでもいーし、これでも一応病み上がりなんだから、用事がないなら帰りなさいよ」

小梅「あ、そうそう、用事あるんだ」

小梅「ええっと、逸見さんに関するいいニュースと、逸見さんに関する悪いニュースと、逸見さんに関するはちまのニュースがあるんだけど……」

まほ「ああ、それを選ばせる流れならさっきもうやってしまったな……」

小梅「あ、そうなんですか?」

小梅「じゃあ良いニュースから順番でいいかな……」

まほ「いや、エリカは悪いニュースから聞きたい派らしい」

エリカ「恐らくそのニュースよりヤバそうなやつが選択肢に入ってそうなんですけどそれは」

787: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 06:16:29.71 ID:VlNmxB3qo

小梅「まず悪いニュースだけど……」

小梅「逸見さん、思ったより人望がなかったよ……」

小梅「副隊長としては信用してるけど、自分のところの小隊長だと色々しんどい、みたいな声が……」

まほ「む、そうなのか」

小梅「ええ、まあ……」

小梅「一応フォローもしてるんですけど、どうしても萎縮しちゃうみたいで……」

小梅「その、ちょっと言葉が乱暴なのもあるし……」

まほ「聖グロ戦で、果たしてどこに編入できるのかだな……」

エリカ「マジトーンで言われると結構傷つくわね……」

まほ「それでも、導き方は人によるし、どんな風に導かれるのがいいのかも千差万別」

まほ「エリカの厳しく接するスタンスも、全否定するつもりはない」

小梅「私も、逸見さんのことは大好きだよ?」

エリカ「マジのフォローやめてください心が痛いから!!」

まほ「しかし、それは信頼できる情報なのか?」

小梅「ええ」

小梅「逸見の森の匿名アンケートを元にしていますし、逸見さんに比較的有効的な人物のみで集計してアレだったので……」

小梅「下手したら予想の数倍ヤバいかもしれません」

エリカ「だーっ、もう!」

エリカ「逸見の森とかいう巫山戯たワードが出てきて悪ふざけ感出てきたことに安堵してる場合じゃないんだっての!」

エリカ「さっさといいニュースを教えなさい!」

788: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 06:37:06.75 ID:VlNmxB3qo

小梅「いいニュースだけど……」

小梅「聖グロ戦で、逸見さんがどこの小隊に入るのか決まったよ」

エリカ「!」

小梅「私が小隊長を務める、赤組が引き取ることになったんだ」

エリカ「引き取るって言い方」

まほ「よかったな、エリカ」

エリカ「ありがとうございます」

エリカ「……去年の敗戦の原因が指揮してるってのが不安ですけどね」

小梅「あ、ひどい!」

小梅「でも――酷い敗戦を知ってるからこそ、私達赤組は強いんだよ!」

エリカ「あーはいはい」

エリカ「……っていうか、赤組って……」

小梅「チーム名というか、小隊名だよ」

小梅「ほら、1年生の時に相性いい相手と組んでいいって、自由に小隊組まされたけど……」

小梅「私みたいな“ちょっと人より戦車道が上手い”ってレベルの人間じゃ、どんな人材が必要かまで全然わからなかったから……」

小梅「偶然で赤が名字に入る人間が手を取り合った後、面倒になって名字が赤の人を探し倒してさ」

エリカ「名門のイメージが! 私の黒森峰のイメージが!!」

小梅「所詮ただの女子高生だから……」

789: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 06:45:30.99 ID:VlNmxB3qo

エリカ「大体赤組って何よカッコ悪い」

まほ「例のアレだ」

小梅「ほら、去年の敗戦以降、何が黒森峰に足りないのか他の名門と比べたこと、あったじゃない」

エリカ「あったわね、そんなこと……」

まほ「他校が小隊に名前をつけているのを見て、我が校に足りないのはそれかもしれないと思ってな」

まほ「その時“赤組”と名付けられて以来、そこそこ安定して成績を出してるのもあって、存続し続けているんだ」

エリカ「はあ……」

小梅「っていうか、ネーミングセンスなら、逸見さんも人のことは言えないんじゃあ……」

エリカ「なっ!」

まほ「確かに、割りと不評でエリカの小隊は速攻で名前無しに戻ったな……」

エリカ「そ、そんなに駄目でしたか!?」

エリカ「でも、ほら、あれですよ!」

エリカ「シュヴァルツ・フォレストって名前、黒森峰だからなんですよ!」

エリカ「まさに象徴って感じの名前だし、こう、ほら!」

小梅「小学生みたい……」

まほ「更に言うと、『シュヴァルツ』はドイツ語で、『フォレスト』は英語だ」

790: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/07(金) 06:49:27.51 ID:VlNmxB3qo

エリカ「そんな……」

エリカ「私のネーミングセンスがそんなになかっただなんて……」

エリカ「だから私の立てるスレはあんなにも……?」 ブツブツ

まほ「まあなんにせよ、エリカも快方したようだし、明日からまた練習に合流してくれ」

小梅「今のやりとりでメンタルの方は病んだっぽいんですけど」

まほ「……可哀想だが、あまりゆっくりさせてもやれないスケジュールだからな」

エリカ「承知してます」

エリカ「それに――聖グロとの準決勝、絶対に勝ちたいんです」

エリカ「一刻も早く、戦車に乗って感覚を取り戻したい……」

まほ「そうか」

まほ「しかし今日は大事を取っておいた方がいいだろう」

まほ「今日は帰ってゆっくり休め」

まほ「明日からは甘く出来ないからな」

エリカ「はいっ……!」

小梅「それじゃあ、また明日」 スタスタスタ

まほ「休むのも仕事の内だ、今日はしっかり休むんだぞ」 スタスタスタ

エリカ「……」

エリカ「……」

エリカ「しまった、一番気になるはずのハチマのやつ聞きそびれた……」

795: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/15(土) 01:44:45.23 ID:owEJaMFZo

エリカ「……」

エリカ(あれから数日)

エリカ(準決勝に備えて練習に打ち込んだけど……)

エリカ「……」

ピトッ

エリカ「ほわぁーーーーーっ!?」

小梅「浮かない顔だね」

エリカ「何!? 何今の!?」

小梅「え?」

エリカ「何か今、首にぴとって!」

小梅「ほら、差し入れのジュースとかでカップルとかがやるイタズラ的なの、やってみたいなーって」

小梅「逸見さん、そういうタイプじゃなかったかな……ごめんね?」

エリカ「ジュースの感触じゃあなかったわよ!? なんかこう、ねばって! ネチャって!」

小梅「まあそれは置いておいて……」

エリカ「大丈夫なのよね? 置いておいて大丈夫なものをくっつけてきたのよね!?」

小梅「うん。ほんのり臭うだけだから大丈夫だよ」

エリカ「どの面下げて大丈夫と」

796: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/15(土) 02:32:53.39 ID:owEJaMFZo

小梅「それより……どうかした?」

エリカ「いや……」

エリカ「……」

小梅「何かあったなら、その、話してくれたら嬉しいかなって」

小梅「これでも、ちょっと仲良く慣れたかなーって思うし」

小梅「ほら、逸見の森の管理人として知っておきたいし……」

エリカ「若干近づきかけた心が一瞬で離れたんだけど」

小梅「まあまあ」

エリカ「はあ……」

エリカ「……」

小梅「本当にどうしたの?」

エリカ「ん……」

エリカ「練習をしてて、なんかこう、しっくりこなかったというか……」

エリカ「決して悪くないし、全員の技量は高いはずなのに、ピンとこないというか……」

エリカ(……)

エリカ(間違いなく技量は高いはずなのに、“あの子達”みたいに、一点特化の強みみたいなものを感じづらい……)

エリカ(勿論安定した強さで王者の戦いをする黒森峰としてはそれでいいかもしれないけど……)

エリカ(あの大洗を見たあとだと、不安が残る……)

797: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/15(土) 03:22:36.14 ID:owEJaMFZo

小梅「……なるほど」

小梅「逸見さん、次の試合が不安なんだね」

エリカ「は?」

エリカ「何で……」

小梅「エスパーですから」 フンス

エリカ「……」

小梅「わぁ冷たい目」

小梅「……まあ、エスパーじゃなくても、逸見さんの悩みなんて大体分かるんだけどね」

エリカ「何よ、人をシンプルな単細胞みたいに言って……」

小梅「いや、ほら、逸見さんって、戦車道バカって感じだから」

エリカ「はァ?」

小梅「私や他の皆も勿論戦車道は大好きだし、きっと他の学校より戦車に乗ってる時間も長いんだけど……」

小梅「そんなの比較じゃないくらい、逸見さんって戦車で頭がいっぱいって感じだしさ」

小梅「逸見さんの悩みといえば、戦車道のことしかないなーって」

エリカ「……」

エリカ「まあ、否定はしないけど」

小梅「もうちょっとしたら恋の悩みとかハンバーグの悩みとか持ち出すかもしれないけど、まだ逸見さんの自我はそこまで育ってないもんね」

エリカ「あのねェ、私だって……」

小梅「えっ、恋の悩みとかあるの!?」

エリカ「……」

エリカ「に、人間関係の悩みくらいなら、なくはないわよ」

798: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/15(土) 04:29:56.79 ID:owEJaMFZo

小梅「逸見さんも人間関係で悩んだりするんだね」

エリカ「……まあ、そういうこともあるわよ」

小梅「まあ、得意じゃなさそうだもんね」

エリカ「うぐっ」

エリカ「言ってくれるじゃない……」

小梅「うん、じゃあ、皆でファミレスでもいこう!」

小梅「明後日の準決勝で一緒に小隊組む人達に声かけておくからさ!」

エリカ「はぁ?」

エリカ「いや、今は人間関係じゃなくて、戦車道の方を……」

小梅「一朝一夕で伸ばせるものなんて、限られてる」

小梅「ましてや、うちの戦車道チームって、それなりに技量は高いだけに、素人さんほど伸び率が高くないし」

小梅「……そんな私達が一朝一夕で伸ばせるとしたら、これはもうチームワークなんじゃないかな」

エリカ「急造のチームワークぅ?」

小梅「一応1年以上一緒にやってきてる子も多いし、全くの0からってわけじゃないし……」

小梅「それに、相手のことを少しでも理解していた方が、連携だって取れるんじゃないかな?」

エリカ「ふん」

エリカ「相手がどんな人間か分からなくとも、それぞれがきちんと己の役目をこなして適切な行動を取れば自ずと連携は取れるわよ」

小梅「……うん、そうだね」

小梅「全盛期の黒森峰も、そうだったみたいだし」

小梅「でもさ」

小梅「史上最強と名高かった隊長とみほさんのコンビは、どうだったと思う?」

エリカ「……」

799: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/15(土) 05:11:59.15 ID:owEJaMFZo

小梅「私のせいで、伝統に泥を塗っちゃってさ」

小梅「今、黒森峰って、大変な時期なんだと思う」

小梅「伝統を重んじながらも、何かテコ入れ求められてるんだろうし」

小梅「ちょっと今、大変だし、浮足立っちゃってるしさ」

小梅「だからこそ、こう、結束のパワーみたいなやつをさ!」

エリカ「……はぁ」

エリカ「わかったわよ」

エリカ「私は、そんなの、認めない派だけど……」

エリカ「モチベーション管理も副隊長の仕事といえば仕事だし」

エリカ「どうせ直前の整備で遅くまで乗り回せないんだから、今日くらいは良しとしてあげる」

小梅「わあ、やった!」

小梅「じゃあ皆に連絡回して、寮の方にもちょっと帰りが遅くなるって連絡入れておくね!」

エリカ「はいはい……」

エリカ「……」

エリカ(あの子は……大洗で、こういうこと、してたらしいけど……)

エリカ(別に、そういうのじゃあ、ないわよ)

エリカ(私はあの子のやり方じゃなく、隊長と共に西住流のやりかたを貫くんだからっ)

800: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/15(土) 05:46:15.20 ID:owEJaMFZo

小梅「思ったより皆集まってくれたよ」

エリカ「アンタんとこの小隊のメンバーだっけ」

小梅「うん」

小梅「……去年の事件以来冷や飯を食べてたし、私達のせいだから、私達の小隊って言い辛いんだけどね」

黒星「落ちたの自体は事故だし、リカバリー出来なかった負い目とかもあるってことで、まだ小隊のリーダー格ヅラさせてもらってますけどね」

エリカ「まあ、技量でいえばそれが妥当でしょ」

エリカ「なんだかんだでトラウマにもならずまだ戦車に乗れてるメンタルの強さもあるし」

小梅「そういう話はテーブルで、ドリンクバーでも飲みながらゆっくりやろ?」

黒星「じゃあ店員さん呼ぶね」

小梅「とりあえず全員ドリンクバーとして……」

白星「デザート何か食べようかな」

小梅「うん。パフェとか食べたいよね」

エリカ「寮で夕飯は食べたっていうのに……太るわよ?」

小梅「う、運動はしてるし……」

エリカ「まったく……」

店員「ご注文をお伺いいたします!」

エリカ「チーズインハンバーグとドリンクバーです」

小梅「晩御飯もりもり食べたあとだよね?」

エリカ「ハンバーグは別腹だし、肉は筋肉になるからいいのよ」

801: 寝てました、申し訳ない 2017/04/15(土) 23:52:16.63 ID:owEJaMFZo

エリカ「……しかしまあ……」

エリカ「こうしてみると、普段の厳格な黒森峰戦車道チームの面影はないわね……」

小梅「普通の女子高生だもんね」

小梅「戦車道以外の遊びだってするし、こうしてお喋りに興じたりもするんだよ」

小梅「名門だって、マリオカートに夢中でミーティングをサボっちゃったりするんだよ」

エリカ「するんだよ、じゃあないわよそれは」

エリカ「……何か調子狂うわねえ」

小梅「逸見さんは、戦車を降りても“黒森峰戦車道チーム”って感じだもんねえ」

エリカ「当然よ」

エリカ「私にとっては――それが全てなんだから」

小梅「……そっか」

エリカ「なによ?」

小梅「ううん」

小梅「やっぱり逸見さんは凄いよな~って」

エリカ「何よソレ」

802: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/16(日) 01:35:16.11 ID:CZZ9xYVho

小梅「私も、戦車道は、相当好きな自信があったんだよ」

小梅「……あんなことになっても、辞められなかったくらいだしね」

小梅「私にとって、戦車道は人生のほとんどだったけど……」

小梅「逸見さんにとっては、きっと全てなんだね」

エリカ「……当然でしょ」

小梅「それを当然と言えちゃうのが、逸見さんの凄さなんだよ」

逸見車装填手「うん。おかげでちょっと近寄りがたいと思ってたけど」

エリカ「はあ?」

どどめ色星「常にピリピリしてたしー」

逸見車通信手「こうして一緒にファミレス来る日が来るなんて、夢にも思わなかったもん」

エリカ「そんな大げさな」

黒星「正直一生友達になれないと思ってた……」

直下「関わると面倒くさそうだなーって」

白星「意識の高い隊長の腰巾着で、友達も当時の隊長と副隊長だけな印象だったし……」

小梅「絶対友達できず孤立すると思ってた時期があったなあ」

エリカ「あんたら」

804: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/16(日) 03:05:48.73 ID:CZZ9xYVho

小梅「まあ、これを機に、いろんな人と仲良くなったらいいんじゃないかな」

黒星「人数多いから、どうしても一緒の小隊メンバーかルームメイトとつるみがちだし……」

直下「下手したら、今日名前覚えてない人もいるんじゃあ」

エリカ「うぐぐっ・・」

小梅「まあ、今回はある程度覚えやすいはずだし、頑張って覚えよう?」

小梅「私達も覚えやすいしってことで、なんとなーく赤色の集団を作ったわけだし」

エリカ「またそういうわけのわからないことを……」

小梅「ただのジェーケーだから、そういうノリみたいなのもあるんだよ」

小梅「私たちにとって、戦車道は人生のほとんどだったけど、でも全部には、できなかったから」

エリカ「……」

小梅「まあ、それでも戦車道大好きで黒森峰のレギュラーらしく、皆ちゃんと強いんだけどね!」

小梅「例えばあそこのドリンクバーで輸血してるアカギさんとか何が起きても冷静沈着な切れ者って感じだし、赤土さんもデータの使い方が上手い」

小梅「赤井さんは真面目にやってきてるし、ジェイドさんはビーフケークハマーが強い」

エリカ「緑混じってるぞオイ」

805: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/16(日) 03:10:37.51 ID:CZZ9xYVho

小梅「ジェイドさんはブロッケンさんの妹分で、ベルリンが真っ赤に染まるかのようなフェイバリットを持ってるんだよ!」

エリカ「わざわざ特殊カーボンしてるんだからそんな色で染めようとするんじゃないわよ」

小梅「通称緑の矢って呼ばれてて、かなりの腕前なんだから」

エリカ「緑なんじゃない!」

エリカ「はーーー……叫びすぎて喉が痛いわ……」

エリカ「頭も痛いし」

エリカ「……ちょっと前じゃ考えられないくらい、ウチの戦車道チームへの印象が変わったわね」

小梅「あはは」

小梅「人間って、多角的だからね」

小梅「私達にも、こういう側面はあるよ」

小梅「……ううん。隊長や逸見さんと比べれば、こういう側面の方が多いかもしれない」

小梅「でも――」

小梅「隊長や逸見さんみたいに、真剣な黒森峰戦車道チームとしての面だって、私も皆もちゃんと持ってるんだからね!」 フフ

エリカ「……はん」

エリカ「そんな当たり前のこと、わざわざ言われなくてもわかってるわよ」

小梅「ふふ……」

小梅「……」

小梅「明日、絶対勝って、去年のリベンジ、果たそうね」

エリカ「……当然よ」

エリカ「絶対に――私達が、優勝するのよ」

806: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/16(日) 03:32:19.01 ID:CZZ9xYVho






 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

807: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/16(日) 03:34:07.62 ID:CZZ9xYVho

エリカ「……」

エリカ「ん……」

エリカ「とうとう、聖グロ戦の日ね……」

エリカ「……」

エリカ「見慣れた天井……」

エリカ「背中にあたる、ふかふかのベッドの感触……」

エリカ「ちょっと泣きそうになってぼやける視界っ……!」 グスッ

エリカ「ああっ、手を伸ばせば、視界に手が映り込んでくるっ!」

エリカ「ああ、ああ……」 グッパーグッパー

エリカ「動く……ちゃんと動く……」 グッパーグッパー



エリカ「入れ替わって……ないっ……!」




811: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/26(水) 03:31:42.33 ID:iZIUb7H7o

小梅「おはよー」

エリカ「」 ジーン

小梅「……」

小梅「せいっ」 モニュッ

エリカ「わひゃあ!?」

エリカ「な、なにすンのよ!」

小梅「あ、おはよう」

小梅「いやほら、最近試合の時おかしくなること多かったから……」

小梅「イグニッション入ったりしないかの確認を……」 コリコリ

エリカ「いつもこんなことして確かめてたの……」 ドンビキ

小梅「これが一番確実かなーって」

エリカ「……そこは百歩譲るとして、そろそろ離してくれないかしら」

小梅「意外と癖になる触感で……」

エリカ「グーで殴るわよ」

小梅(ハンバーグ吐き出されるより全然マシだよねえ……) モニュモニュ

812: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/26(水) 04:18:26.50 ID:iZIUb7H7o

まほ「……」

小梅「おはようございます」

まほ「その頭のコブは……」

小梅「まあ、色々ありまして……」

小梅「それより、朗報です隊長!」

小梅「正直、前のタンカが前フリに終わると思われていた逸見さんですが――」

エリカ「え、何それ」

小梅「ご覧の通り、ちゃんと普通の状態で今日を迎えられました!」

エリカ「ていうか、え、アンタ私を何だと」

まほ「そうか……よかった……本当に……」

まほ(私も正直病気の状態で来られて頭を抱える可能性が高いと思っていたしな……)

813: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/26(水) 04:43:12.08 ID:iZIUb7H7o

小梅「ごめん、ちょっとそっちもうちょっと詰めて」

エリカ「……」

小梅「ごめんねー、狭くて」

エリカ「それは別にいいわよ」

エリカ「こっちは乗せてもらってる身だもの」

エリカ「……」

小梅「……」

小梅「さっき挨拶で何かあった?」

エリカ「え?」

小梅「いや、なんか様子が変かなーって」

小梅「これでも、最近はちょっと分かるようになったんだよ」

小梅「……昔は分かっても聞けなかっただけだけどね」

エリカ「そういう謙虚な姿勢は貫いてくれてもよかったのに」

小梅「逸見の森のおかげで、大分逸見さんへのアレコレも薄れたから」

エリカ「ったく……」

エリカ「……」

エリカ「さっきの挨拶……」

エリカ「ダージリンは、うちの隊長を意識しているようだった」

小梅「……」

エリカ「それに……」

エリカ「あの子――大洗の、隊長のことも」

エリカ「……」 ギリッ

814: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/26(水) 05:00:54.01 ID:iZIUb7H7o

小梅「……」

小梅「よし、勝とう!」

エリカ「……はあ?」

小梅「だって――悔しいもんね」

小梅「隊長だけが凄いって風に思われるのも」

小梅「私達をすっ飛ばして、先ばっかり見られるのも」

エリカ「……」

ブロッケンJr「そうだーーーっ、その意見に賛成だーーーーっ!」

ブロッケンJr「この世に生をうけて、あいつのようなやつらになめられっぱなしじゃ、生きてる甲斐がねえんだよーっ!!」

黒星「まるでサンダース大みたいなセリフだけど、確かにそのとおりですよね」

白星「まあ、副隊長自身そういうことするトコあるし、因果応報?的なやつかもしれないけど」

白星「でもだからこそ、やられっぱなしではいられないよね」

ドドメ色星「王者として、相手を舐める不遜な存在であり続けるなら、ナメてきた相手はボコボコにしてやらないと立場がないでガンス」

エリカ「……ふん」

エリカ「勝手に心中察した気分になられても腹が立つけど、まあ、いいわ」

エリカ「なんだっていい」

エリカ「今はただ――目の前の紅茶軍団を、叩き潰すのみッ」

赤星「Yah!」

赤星「私は車長だけど――この小隊の長は逸見さんだよ」

赤星「号令を!」

エリカ「――戦車、前進ッ」

815: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/26(水) 05:43:34.18 ID:iZIUb7H7o

アッサム「……」

ダージリン「何か言いたそうね、アッサム」

アッサム「……」

アッサム「あの娘の投入は、まだ早いんじゃ……」

オレンジペコ「ローズヒップさんですか……」

ダージリン「あら、貴女は特別彼女を可愛がっていたように思うけど?」

アッサム「……でも、あの娘は」

ダージリン「こんな格言を知っている?」

ダージリン「恐れを抱いた心では、小さいことしか出来ないでしょう」

オレンジペコ「フローレンス・ナイチンゲールですね」

ダージリン「ローズヒップには、聖グロリアーナの淑女として欠けているものが確かに多い」

ダージリン「ここに来るまで、試合に出されない程に」

ダージリン「でも――」

ダージリン「”あの”黒森峰や西住まほを恐れずに、誰より果敢に突っ込んでいけるのは、マナー以上に恐れを知らないあの娘だわ」

アッサム「それは、まあ……」

816: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/26(水) 05:46:50.18 ID:iZIUb7H7o

ダージリン「……」

ダージリン「私はね、勝ちたいのよ」

ダージリン「気品あふれる立ち振舞で尊敬を集めてはいるし、世間に実力を認めてももらっているわ」

オレンジペコ「自分で言っちゃうんですね……」

ダージリン「だけど――」

ダージリン「この3年間、”西住まほ”には勝てていないわ」

ダージリン「たとえ万の評論家が私を評価することがあっても、その事実だけは覆せない」

ダージリン「だから――これは、私の我儘」

ダージリン「一度くらい、どんな手を使ってでも、あの人に勝ちたいのよ」

ダージリン「……みほさんが私達に見せてくれたように」

ダージリン「泥臭い高貴さというのも、あるんじゃなくって?」

オレンジペコ「……」

ダージリン「呆れたかしら?」

オレンジペコ「いいえ」

オレンジペコ「突然理解できないことをするのも、我儘なのも、慣れっこですし、とうに分かってましたから」

817: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/26(水) 05:51:31.07 ID:iZIUb7H7o

シュポッ

ブロッケンJr「ジェイドーーーーーーーっ!」

白星「どーすンの、副隊長!?」

黒星「あのスピード……装填が追いつかない!」

白星「全然当たらねーし、何とか立て直さないとヤバイよこれ!」

エリカ「ええい、何とかするわよ!」

エリカ「ここで私達から綻んでやられました、なんて日には、今後二度と戦車に乗れなくなるわ!」

小梅「それは同感!」

小梅「皆、二年連続で戦犯扱いされないよう、頑張るよ!」

白星「おう!」

黒星「うん!」

ドドメ色星「いくでガンス!」

ローズヒップ「んっふっふ」

ローズヒップ「こんな格言を知っている?」

ローズヒップ「巧遅は拙速に如かず!」

ローズヒップ「まーダージリン様が仰ってただけですし、あんまり意味は分かってないんですけどねー!」 バシュンバシュン

エリカ「ええい、鬱陶しいちょこまかと!」

818: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/26(水) 06:30:29.21 ID:iZIUb7H7o

ローズヒップ「この世の理はすなわち速さでしてよ!」

ローズヒップ「物事を速くなしとげればそのぶん時間が有効に使えましてよ!」

エリカ「おわっ」

エリカ「っつ~~~!!」

小梅「本来予定してない搭乗数なのに無理に詰め込んでるから、小刻みに車体揺らされると危ないねこれ……」

ドドメ色「でも、あんだけちょこまかされたら、こっちも嫌でも――」

ローズヒップ「遅いことなら誰でも出来る……」

ローズヒップ「20年かければバカでも傑作小説が書けるとアッサム様も言ってましたわ!」

ローズヒップ「アッサム様のポエムノートは速攻で書きなぐったのにあのクオリティだからこそ凄いんですのよ!」






アッサム「……」 ゾクッ

オレンジペコ「どうかしたんですか?」

アッサム「いや……何か、こう、うーん……」

ダージリン「こんな格言を知ってる?」

ダージリン「速さこそが文化である」

アッサム「……?」

ダージリン「あの娘は、貴女が思っているより軽いフットワークで何にでも触れているし、その速さで何でも吸収している」

ダージリン「スタート地点こそ聖グロリアーナの生徒の理想から遠かったけど――」

ダージリン「その理想に近付く速度なら、誰よりも上」

ダージリン「最初こそ近かったけど、それでもずっと足踏みをしているようでは、あの娘に勝つことは出来ない」

ダージリン「……来年のキーマン同士の対決の結果にも、期待しておきましょう」

ダージリン「こちらはこちらで、隊長首を取りにいくわよ」 フフフ

823: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 03:45:43.53 ID:KrR5eLL/o

エリカ「こんの……!」

黒星「あっ、外れた……!」

白星「うわあ、うわあ……!」

ドドメ色星「ひーっ、このままじゃ壊滅でガンス!」

ブロッケンJr「うっおー! くっあー! ざけんなーっ!」

エリカ「ええい落ち着きなさいアンタら!」

小梅「……はいドーン!」 ズリッ

エリカ「ほあーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

エリカ「ちょ、おまっ、何すンのよ!」

小梅「うーん、意外と抵抗なくぱんつって引きずり下ろせるものなんだ……」

小梅「もっと摩擦抵抗とかあるかと思ったけど、まあ、大事なのはぱんつが引きずり下ろせるかどうかだもんね、うん」

エリカ「うんじゃないわよ!」

エリカ「このヤバイ時に何やってんのよ!」

小梅「ヤバイ時だからだよ」

小梅「……これで少しは皆頭冷えた?」

エリカ「……っ」

小梅「完全に大混乱してたよ、逸見さん」

小梅「トップが混乱すると、一気に広まっちゃうんだよ」

小梅「……去年、水に落ちたときに学んだことだし、偉そうには言えないんだけどさ」

824: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 04:13:38.22 ID:KrR5eLL/o

小梅「黒森峰は強いよ」

小梅「普通にやったら完勝できる」

小梅「でもだからこそ、普通じゃない方法で一発入れられたら、崩れちゃうんだよ」

小梅「……あの日、溺れた私達は勿論、誰もあの混乱の中まともに動けなかったよね」

小梅「それでも隊長と、みほさんだけは、結果に結びつかなかったけど動いたんだよ」

エリカ「……」

小梅「私達は凡人っていうか」

小梅「高校生の中じゃ戦車道が上手いけど、どこにでもいる普通の女の子なんだよ」

小梅「プロでもなければ、戦車道に全てを捧げた西住流マシーンでもない」

小梅「たった一年じゃ、激しい基礎能力の向上と、土壇場の対応力を並行して鍛えるなんて、無茶なんだよ」

小梅「基礎能力や戦車スペックが底上げされたらそんなに対応力使う場面なんて訪れないから、皆無意識に手を抜いちゃってただろうしね」

小梅「……逸見さんは、どう?」

小梅「私達凡人と同じで、去年から何も変わってない?」

小梅「それとも――」

エリカ「……ふん」

エリカ「バカにするのも大概にしなさいよ」

ドドメ色星「お、おしゃべりはそのへんにしてほしいでガンス~!」

白星「なんとか同士討ちにならないようしてるけど、これ以上は持たないって!」

ブロッケンJr「あのスバシッコイのを何とかしないとなーーーーっ!」

825: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 04:41:27.58 ID:KrR5eLL/o

エリカ(とはいえ……)

エリカ(どうする……)

エリカ(奇策を打つ? あの子みたいに?)

エリカ「……」

エリカ(それだけはダメっ……!)

エリカ(そんなことをしたら、西住流や今までの私を否定することになるっ)

エリカ(そんなことをして勝っても、何の意味もないっ……!)

エリカ(あくまでも王道、黒森峰が尊ぶ西住流の基本のやり方で勝たなきゃ意味がないッ)

エリカ(それなら……)

エリカ(西住流の戦車道で挑んで、私の技量不足で負ける方が……)

エリカ「……」

826: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 04:50:15.75 ID:KrR5eLL/o

ローズヒップ「相手さん大混乱してますわ!」

ローズヒップ「逃げ惑っても逃しませんことよー!」

ローズヒップ「……っと、深追いしすぎもダメだとアッサム様に言われてましたわね!」

ローズヒップ「とりあえずクランベリーやマテ茶が到着するまでに削れるだけ削ってさしあげますことよ!」 フフン

ブロッケンJr「くそーっ、このままじゃマジで全滅だぜ!」

ブロッケンJr「どうするよ、毒霧でも吐くか!?」

エリカ「吐かないわよ! 何特上の変化球投げようとしてるのよ!」

白星「ていうか、吐けるんだ……」

小梅「まあ世の中ハンバーグを吐いて勝利する人もいるくらいだから……」

エリカ「何か言った?」

小梅「ん? 別に?」

827: 戦車の云々は全部ふわっとした適当なロジックで展開されてます、ご了承下さい 2017/04/29(土) 05:30:14.78 ID:KrR5eLL/o

エリカ「……」

エリカ「私の指揮じゃ、悔しいけど、混乱から立ち直らせることは出来そうにない」

エリカ「出来るのは被害を減らすことだけ」

ローズヒップ「このまま押し切ってやりますわよ!」

ローズヒップ「そーすれば、圧倒的に有利に――」

エリカ「ここの攻防じゃ勝てそうにないうえに、本丸の壊滅だって早々容易くはないでしょうね」

エリカ「やりあえば負ける気はしないけど、でも瞬殺が出来るような相手じゃあない」

エリカ「だけど」

ローズヒップ「……え?」

ローズヒップ「そ、それマジですの!?」

エリカ「外殻部分に一撃を入れるくらい、隊長ならしてくださる」

エリカ「本当は、忌々しいダージリンとの戦いに専念させるのが私の仕事だったけど……」

エリカ「事情を話せば、私の願いを聞き入れてくださる度量が、あの人にはある」

ローズヒップ「やっばいんじゃないですの!?」

ローズヒップ「相手のエースが本陣に雪崩込んでくる前に援護を――」

エリカ「そうよねえ、そうなるわよねえ」 ニタァ

エリカ「どこかが切り崩されて隊長が危険となったら、忠実なシモベなら助けに行かざるを得ないわよねえ」

エリカ「単身突っ込んでくるくらい実力に自信があって、駆けつけられる技量があるなら尚更」

エリカ「……所詮外殻一枚削った程度で、ここから隊長は長々やりあう羽目になる」

エリカ「でも――たった一言、襲われた部隊が壊滅しそうな胸を全体に通信してくれればいい」

エリカ「そこそこの脳みそと行動力と忠誠心があるなら、隊長の指示が来る前に、そこを目指そうとする――」

ズドム

ローズヒップ「うぎゃあ!?」 シュポ

エリカ「……自力じゃどーにもできなくても、隊長が道を切り開いてくれる」

エリカ「隊長なら、奇策に出ずとも、真っ向から切り崩してくれる」

エリカ「私は隊長の勝利を、揺るがぬ心で信じていればいい」

小梅「奇策に片足突っ込んでるような気もするけど……でも、うん、いいんじゃないかな」

エリカ「アンタに言われたくないわよ」

エリカ「……自力で倒すのを諦めるなんて逃げみたいな真似、したくはなかったのだけど」

小梅「現実から目を背けるより、自分に出来ることを受け入れた今の方が、”逃げてない”って感じがするけど」

エリカ「……何言ってんだか」

小梅「溺れて死にかけて以降、ちょっとポエミーなのです」 フフ

エリカ「いいから行くわよ」

エリカ「こっちも犠牲が出たけど、相手の小隊長格は潰したし」

エリカ「コイツの速度にやや遅れているであろう連中から順繰り叩き潰して、隊長の援護に行くわよ!」

831: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 02:21:37.79 ID:U/Ypoxyco










エリカ「……」 ギリッ

エリカ「クソッ!」 ガン

白星「戦車に当たるのよくないよー?」

小梅「いやー……さっくりやられたねぇ」

ドドメ色星「不甲斐なくて申し訳ないでがんす……」

小梅「まあでも、役に立てたし、チームとしてはプラスに終われたんじゃないかな」

エリカ「……わかってるわよ」

エリカ「でも……悔しいの」 ギリッ

エリカ「チームが勝つことが大事。そんなの当然わかってる」

エリカ「ダージリンは隊長に食らいつける数少ない人間だし、客観的に見て私より格上なのだってわかってるわよ」

エリカ「でも……」

エリカ「直接対決して負けるだなんて思ったことはなかったし、隊長のお役に立ってダージリンを仕留めるのは私でありたかったっ……!」

832: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 03:23:04.85 ID:U/Ypoxyco

小梅「……」

小梅「やっぱりすごいな、逸見さんは……」

白星「私達も……戦車道には入れ込んでるつもりだったけど」

小梅「それだけ悔しがれるなら、きっと次はもっと役に立てるよ」

エリカ「……」

エリカ「アンタに慰められると、なんかムカつくわね」

小梅「ええ~、なにそれー」

ボシュッ

黒星「わあ……!」

小梅「勝った! 勝ったよ逸見さん!」

エリカ「当然よ」

エリカ「隊長が負けるはずなんてないわ」

エリカ「……」

エリカ(そう、負けるわけがない)

エリカ(私がいなくても……)

エリカ「……」

エリカ(何弱気になってるのよ) ブンブン

エリカ(例え負けなくても大変に決まってる)

エリカ(隊長の負担を少しでも減らすべく、私が役に立たずにどうする!)

833: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 04:42:04.38 ID:U/Ypoxyco

小梅「これで今年も決勝戦には進出、かあ」

エリカ「ふん、当然でしょ」

エリカ「むしろここからよ」

エリカ「王座を脱して捲土重来」

エリカ「それが当然とされるんだもの」

エリカ「……足元をすくわれるわけにはいかないわ」

エリカ「……」

エリカ「例え、相手が――」

エリカ「隊長のことを誰よりよく知り、私達の手の内を知る、あの子でも……!」

834: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 04:46:04.34 ID:U/Ypoxyco

小梅「……」

小梅「やっぱり逸見さんは、みほさんのこと――」

エリカ「……は?」 ギロリ

小梅「ま、まだ何も言ってないよ?」

エリカ「……つい」

小梅「まあ言おうとしたんだけど」

エリカ「おい」

小梅「……」

小梅「いやでも、ホント、すごいよね」

小梅「誰よりみほさんの実力を信じているっていうか……」

小梅「大会が始まってから、ずっと注目して意識してたの、バレバレだったよ」

エリカ「うぐっ……!」

エリカ(まあ、そりゃ、嫌でも傍で快進撃を見てたから仕方ないのよ……)

835: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 05:28:13.35 ID:U/Ypoxyco

小梅「それに、なんかずーっと、決勝戦では大洗と当たるって信じてたみたいだし」

エリカ「うっ……」

エリカ「別にそんなことはないわよ」

エリカ「……さすがに、プラウダが来るって、ずっと思ってたわよ」

エリカ「……」

エリカ(それなのに……)

エリカ(あの子はそんな常識的な予想を覆してきた)

エリカ(私も助力したけど、でも、それだけじゃない)

エリカ「とにかく!」

エリカ「今回は、役には立てたかもしれないけど、最後まで援護することは出来なかった」

エリカ「次は……次こそは!」

エリカ「絶対に、最後までお傍にいてみせるわ!」

小梅「おお燃えてる~」

836: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/05(金) 05:33:07.95 ID:U/Ypoxyco

エリカ(それからは、あっという間だった)

エリカ(決勝戦は元々のチームで戦車に乗れることが決まって……)

エリカ(それからはずっと真摯に戦車にばかり乗り続けた)

エリカ(いつしか校内は、あの子が決勝にあがってきたことの話題で持ちきりになって……)

エリカ(今更、なんて思いながらも、何とか周囲にも気合を入れ直させた)

エリカ(……あと、なんか、いつしか逸見の森でバンバンオリジナルスタンプが飛んでると思ったら)

エリカ(クリエイターズスタンプで5段くらい勝手にリリースされていたからぶん殴っておいた)

エリカ(……この大会が終わったら、何とか停止させないといけない)

エリカ(それでもあのクソのようなチャットを放置する程度には、戦車のことだけを考えた)

エリカ(朝から晩まで……あの子の何倍、何十倍、いや何千倍努力をした)

エリカ(そして――――)

エリカ(運命の、決勝戦の日を迎える)

842: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/27(土) 02:26:12.57 ID:JeNBqky0o

エリカ「……ん……」

エリカ「……」 モゾ

エリカ(見知った天井……)

エリカ(見知った部屋……)

エリカ(手を伸ばせば、ちゃんと自分の手が視界に入る……)

エリカ「……よし」

エリカ(どういう理屈なのか本当にわからないけど、やっぱりもう入れ替わらないみたいね)

エリカ(……これで心置きなく、黒森峰の選手として、あの子とやり合えるっ……!)

843: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/27(土) 02:30:46.64 ID:JeNBqky0o

小梅「あれ、逸見さん早いね」

エリカ「まあね」

エリカ「……いやまあアンタに言われたくはないけど」

エリカ「少し昂ぶってるし、散歩でもしてこようかと思っただけよ」

小梅「……あ、じゃあ、私も行っていい?」

エリカ「……」

小梅「露骨に嫌そうな顔してるけど、返事がないってことは行ってもいいってことだとみなすね」

エリカ「……図太くなったわよね、あんた」

小梅「おかげさまで」

844: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/27(土) 03:10:22.43 ID:JeNBqky0o

小梅「まあ、でも逸見さんの丸くなりように比べたら、ね」

エリカ「……あのねえ」

エリカ「何度か言ってくるけど、私は別に丸くなんてなってないわよ」

エリカ「……黒森峰の生徒ともあろう連中が、思ったよりアホ揃いだったことにも舌打ちが止まらないしね」

小梅「えー……私達が普通なんだけどなあ」

エリカ「アンタみたいなのが標準的戦車道履修者だったら舌打ちのしすぎて上顎弾け飛んでるわ」

小梅「アンツィオ」

エリカ「……あそこは例外」

小梅「サンダースも大概」

エリカ「……まあ、あそこは下品な所も含めての強さというかなんというか……」

小梅「ある意味聖グロ」

エリカ「……アホと言えばアホね」

小梅「プラウダは……」

エリカ「……アホもいるわ。よく知ってる」

エリカ(スパイの天パにペラペラ情報漏らすヤツもいたみたいだし)

小梅「やっぱり強豪校でも大体アレだよ」

エリカ「否定しづらい箇条書きマジック使ってきたわね」

845: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/27(土) 04:08:53.65 ID:JeNBqky0o

小梅「逸見さんは戦車道履修者に夢を見てるんだもんね」

エリカ「別にそんなつもりじゃないわよ」

エリカ「ただ名門黒森峰のメンバーとして、名誉ある西住流の門下生として、恥ずかしくない行いを――」

小梅「ちゃんと授業中はしてるよ」

エリカ「……最低限は、でしょ」

エリカ「戦車道っていうのは、健全な乙女の精神を作る武芸なのよ」

エリカ「戦車に乗ってるときのみならず、普段からその心構えを持って健全な精神を宿さなくてどうするのよ」

小梅「あー。だから西住流に染まった健全な精神じゃない生徒には風当たりが厳しいんだ」

エリカ「……まあ、そうね。正直に言うと、そういう連中はムカついたし嫌いだったわ」

小梅「……“だった”?」

エリカ「……」

エリカ「こんな私でも、来年になれば指導者だもの」

エリカ「出来てない人間に苛ついて、その指導を放棄するようじゃ、上に立つ者として失格だわ」

エリカ「……だから別に丸くなったとかじゃなくて、なんていうか、西住流の門下生として、上に立つ自覚を持ったというかなんというか」

エリカ「あんた達の駄目な所を認めて、全否定せずに受け入れて、そのうえで黒森峰に相応しい戦車乗りになるよう指導してやるってだけよ」

小梅「……」 ポカーン

エリカ「……なによ」

小梅「いやあ、なんていうか……」

小梅「逸見さんがそういう風に思っていたのも驚いたし……」

エリカ「なによそれ、私を何だと思ってたのよ」

小梅「自分を健全な精神だと想い込めてるのも相当だなって……」

エリカ「なによそれ、私を何だと思ってたのよコラ赤星おい赤星」

846: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/27(土) 04:30:23.99 ID:JeNBqky0o

エリカ「……まあでも、認めるわ」

エリカ「昔の私は、たしかに健全ではなかったかもね」

小梅「安心して、間違いなく不健全だったから断言しても大丈夫だよ」

エリカ「……」

エリカ「まあ、不健全というか、自分が見えてなかったわ」

エリカ「ただ意地を張るのに必死で、自分すらまともに理解できてなかったわ」

エリカ「……今なら分かる」

エリカ「あの子に対して苛ついてた理由も、抱いている感情も」

エリカ「……なんで負けたくないのかも、私がどうありたかったのかも」

エリカ「だから、少しでも憧れた隊長に近付けるように、ちょっとだけ他の仲間のことを考えることにしたのよ」

エリカ「それだけだから、別に甘やかすようになったとか、そんなわけじゃないんだからね」

エリカ「特に赤星、アンタはライン云々のことを除いても、去年のあれこれがあるんだから」

小梅「うう、わかってるよ……」

小梅「去年あれこれ言われて軽く引きこもってた時に、散々悩んで、自己分析して……」

小梅「私に足りなかったことも、駄目だったとこも、全部、分かってはいるの」

小梅「……前に進むために、必要なこともね」

エリカ「……それは一緒よ」

エリカ「私やアンタだけじゃない」

エリカ「黒森峰が前に進むには、絶対に、また優勝旗を持ち帰らないといけない」

エリカ「そうしないと――私達の誇りや自信は、永遠にあの雨の中に置き去りのままだわ」

847: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/27(土) 04:45:22.80 ID:JeNBqky0o

まほ「そのとおりだ」

エリカ「た、隊長!」

まほ「最初はプラウダ相手に雪辱を果たす展開を想定していたが――しかし、結果として決勝の相手はみほ率いる大洗だ」

小梅「逸見さんだけは、大洗が来るって信じてたみたいですけどね」

エリカ「……まあ、あの子の強さは、誰より分かっているつもりだったから……」

まほ「何にせよ、みほが相手でよかったのかもしれないな」

小梅「え?」

まほ「……みほは、昨年の敗戦の代名詞になっている」

まほ「だが、私は、みほが最も黒森峰を将来率いるに相応しい人物だと思っていた」

エリカ「……」

まほ「だからこそ、乗り越えねばならない」

まほ「そうすることで、泥を塗った過去を越えるだけではなく、“みほが副隊長として率いていた黒森峰”をも越えられる」

まほ「あの日の自分たちより成長していたことを実感できるようになるだろうし、“みほが残っていたら”などという甘えた幻想を打ち消せる」

まほ「……エリカ」

エリカ「はい」

まほ「今では、来年の黒森峰を率いるのは、エリカしかいないと思っている」

まほ「だから――みほと比較されても堂々と自分の方が上だと言えるような成績を叩き出そう」

エリカ「はいっ、勿論です!」

まほ「それに――西住流として、勝って終わらせねばならない」

小梅「ええ! 勝ちましょう、絶対!」

まほ「ああ」

まほ「……下船の準備をしろ。早めに到着しそうだ」

まほ「コンディションを高め、しっかりと緻密な作戦会議を行い、王者の戦いぶりを見せ付け――」

まほ「そして、また、あの優勝旗を持ち帰るぞ」

エリカ「はいっ!」

848: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/27(土) 04:52:11.21 ID:JeNBqky0o

エリカ「そういえば、少し散歩をしていたらお腹減りましたね」

エリカ「その、ご飯をどうするか決めてないのでしたら、よければこのあと一緒にご飯でも行きませんか?」

エリカ「おしゃれなお店を調べてあるんです!」

小梅「わあ、楽しそう」

エリカ「……」

小梅「逸見さん顔こわい顔殺意があまりにも漏れてる」

まほ「いや――すまない」

まほ「予定というわけではないのだが、食事はもう決めているんだ」

エリカ「え、そうなんですか?」 ショボーン

まほ「……誘ってもらえたことは素直に嬉しいし、またの機会に行こう」

エリカ「……!」

エリカ「はい!」

849: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/05/27(土) 05:03:45.24 ID:JeNBqky0o

小梅「ところで何を食べる予定なんですか?」

まほ「ああ……アンツィオのところのナポリタンをな」

エリカ「アンツィオ?」

まほ「決勝戦を見に来るらしい」

まほ「……判官贔屓なのか、自分たちと重なるからか、はたまた直接自分たちを破った相手だからか分からないが――」

まほ「どうやら、大洗の応援に来る予定らしい」

エリカ「はあ!?」

エリカ「この前あんだけ世話になっておいて!?」

まほ「……まあ、無理もあるまい」

まほ「突然決勝に出た大洗では、地元からの応援団もさほど数に期待は出来まい」

まほ「応援部隊が十分用意できるうちではなく大洗につくことを選んでも、責めることなど出来ない」

まほ「……それに、律儀にもメールで連絡を貰ったしな」

まほ「私達へのエールはメールにびっしり書かれている」

まほ「お詫びに、格安で好きなものを食べさせてくれるそうだ」

まほ「……折角だから、少しでも売上に貢献してやりたいしな」

エリカ「……そういうことなら、私もお付き合いさせていただきます!」

エリカ「お腹も減ってるし、更にお腹をグーグーにした状態で店に行って、泣いて謝るくらいバカスカ格安で食べてやるんだから!」

まほ「ふふ……そうか」

小梅(私も行きたいけど普通に睨まれそうだし、ウインナーでも食べていこ)

855: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 02:30:47.20 ID:XlHFkyjWo

ケイ「またエキサイティングでクレイジーな戦いを期待してるからね」

みほ「ありがとうございます」

カチューシャ「このカチューシャ様が見に来てあげたわよ」

みほ「あ、はい……」

ダージリン「……貴女は不思議な人ね」

ダージリン「戦った相手みんなと仲良くなるなんて」

みほ「それは……皆さんが素敵な人達だから」

ダージリン「……貴女にイギリスの言葉を送るわ」

みほ(でも……アンチョビさん達は来てないみたい……)

みほ(仕方がないけど、少しさみしい、かな……)

みほ(色々お世話になったし……)

みほ(……お世話になったって言えば……)

みほ(アンチョビさんのおかげでちょっとだけお喋りできたⅣ号と、またお話がしたいな……)

ダージリン「――永遠じゃないわ」

みほ(……はっ!)

みほ(いけない、折角ダージリンさんが有難そうなお話してくれてたのに、聞いてなかった……)

みほ「……はいっ」

みほ「……」

みほ(き、聞いてなかったって言えず、曖昧な笑みと微妙な応えを返しちゃった……) ズーン

856: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 02:34:18.65 ID:XlHFkyjWo

グキュルルルルルルルル

小梅「うわあ、すごい音……」

直下「え、どうしたの……?」

エリカ「……アンツィオのバカども、どこ探してもいないじゃないの」 ギリリ

エリカ「こんなことならサンダースハンバーグでも食べたらよかった……っ!」

小梅「えっ、アンチョビさん達来てないの?」

ブロッケンJr「おかしい……確かにこちらに向かっていると、連絡があったんだが……」

まほ「……まあ、寝坊か何かだろうか」

まほ「そういう連中だ」

エリカ「ううう……」 ギュルルルルルルル

小梅「大丈夫、逸見さん」

小梅「何か食べる?」 スッ

エリカ「パンの一つでも差し出したかと思ったら何ボイレコ差し出してンのよ」

小梅「あまりにいい音出してるから、つい」

857: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 03:19:48.63 ID:XlHFkyjWo

小梅「冗談はおいておいて……」

小梅「はい」

エリカ「……」

小梅「あ、あれ?」

小梅「今度は本当に何も冗談とかじゃない、そこで売ってたハンバーガーだけど……」

小梅「あ、ハンバーガーは嫌いだった?」

エリカ「……いや、そうじゃないけど……」

小梅「じゃあ――食べて。よかったら」

小梅「お腹空いてイライラしたままだと、みほさんに会った時、掴みかかったりしそうだし」 フフ

エリカ「……馬鹿ね」 クスッ

エリカ「そんなことしないわよ」

直下「まあでも暴れん坊副隊長サマなら有りえないことじゃないもんねー」

直下「しょうがない、食べ残しみたいで悪いけど、たこ焼きがまだ3つくらい残ってたし、あげるよ」

白星「温め直しておこうか?」

ブロッケンJr「ドイツ人ならソーセージだろ? ほら、分けてやるよ」

どどめ色星「魚肉のソーセージもドイツでゴンスか……?」

黒星「あ、この焼きそばも……」

ジェイド「パンでよければありますよ」

エリカ「あーもうっ、わかったからそんな一気によこさないでよ!」

エリカ「地蔵の備えものみたいになってるじゃないの!」

まほ「……ふっ」

エリカ「……何笑ってるんですか隊長?」

まほ「いや……」

まほ(あれほど周囲と距離があったのに、いつの間にか、周りに人が出来るようになったんだな……)

858: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 03:57:42.10 ID:XlHFkyjWo

蝶野「両チーム、隊長、副隊長、前へ!」

みほ「……」 ザッ

桃「……」 ザッ

エリカ「……」 ザッ

まほ「……」 ザッ

エリカ(そういえば誰が副隊長なのかと思っていたけれど……)

エリカ(よりにもよってこのビッグマウスのカスが副隊長……?)

エリカ(こんな奴を副隊長に据えるなんて、おしまいね) ハン

エリカ「……お久しぶり」

エリカ「弱小チームだと、貴女でも隊長になれるのね」 ハン

エリカ(そんでもって、このカスでも副隊長になれるのね)

エリカ(まあ、Ⅳ号のときしか見てないせいで、こっちは口に出せないけど)

桃「……」 ビキビキビキ

エリカ(んで口に出してないのになんかめっちゃマガジンのヤンキー漫画みたいな顔してるし……)

杏「煽り耐性低いからなー河嶋」 ケラケラ

柚「やっぱり副隊長にしたのは失敗だったんじゃあ……」

まほ「……」

まほ(一応強豪校では副隊長張っていたし、エリカよりも上の地位だったんだけど、言わない方がいいよな……)

まほ(とりあえず黙っておこう……)

859: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 04:56:33.01 ID:XlHFkyjWo

蝶野「本日の審判長、蝶野亜美です。よろしくお願いします」

蝶野「両校、挨拶!」

エリカ「……」 ハン

桃「……」 ガルルルルルル

まほ「……」

まほ(なんだこのギスギスしすぎな空気……)

みほ「え、ええと……」

みほ「よろしくお願いします!」

一同「よろしくお願いします!!」

蝶野「では、試合開始位置に移動!」

蝶野「お互いの健闘を祈るわ」

まほ「……」

まほ(みほには悪いが――西住流のため、勝たなくちゃいけない)

まほ(私が“西住流後継者”としての勝利を捧げることが、ひいてはみほの自由にも繋がるんだ……)

まほ「行くぞ」

エリカ「……はい」

エリカ「……」

エリカ(あの子が西住流を捨てて、なお強いのは分かっている)

エリカ(でもだからこそ、負けられないし、負けたくない)

エリカ「……たまたまここまで来れたからって、いい気にならないで」

エリカ(Ⅳ号じゃない“私”は、アンタらを見くびってもおかしくないでしょうね)

エリカ(……まあ、いずれにせよ)

エリカ「見ていなさい」

エリカ「邪道は叩き潰してやるわ」

みほ「……」

860: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 05:00:26.73 ID:XlHFkyjWo

エリカ「……」 ザッザッ

まほ「……」 ザッザッ

小梅「……」

小梅(さすが、西住流後継者と、心酔して全てを捧げてる逸見さん……)

小梅(試合モードのスイッチが入ったら、声をかけるのも憚られる迫力……) ゴクリ

エリカ「……何呆けてんのよ、らしくない」

小梅「え、あ、その……」

まほ「……」

まほ「エリカ。作戦の最終確認をする。ついてこい」 ザッザッ 

エリカ「はい」

エリカ「……」

小梅「……」

エリカ「……私と隊長は、これから作戦の最終確認でテントに戻るわ」

小梅「え、あ、うん……」

エリカ「……十分くらい、二人共出て来られないから」

エリカ「……もし私達が居たらやりづらいことがあるのなら、さっさと済ませておきなさい」

小梅「……!」

エリカ「……ふん」 ザッザッ

861: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 05:05:15.86 ID:XlHFkyjWo

みほ「……」

小梅「待ってくださいみほさん!」

みほ「あ……」

小梅「あの時はありがとう……!」

小梅「あのあと、みほさんが居なくなって、ずっと気になってたんです……」

小梅「私達が、迷惑かけちゃってたから……」

小梅「……」

小梅(それなのに……)

小梅(みほさんに、救いの手を差し伸べられなかったから……)

小梅「でも、みほさんが戦車道辞めないでよかった……」

みほ「……」

みほ「私は、やめないよ」

優花里「……」 フッ

みほ(本当は、とっくに辞めそうになったけど、でも――)

沙織「みぽりーん!」

華「行きましょう」

みほ「うん!」

小梅「……そっか……」

小梅(私達ではなれなかった存在になってくれる人が、見つかったんだ……)

みほ「それじゃあ」

小梅「……うん」

小梅(振り返らない、かあ)

小梅(逸見さんが変わったように、みほさんも変わっているんだ……)

小梅(私も、変われてるのかなぁ……)

862: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/27(火) 05:11:20.58 ID:XlHFkyjWo

まほ『これより決勝戦だ』

まほ『相手は初めて対するチームだが、決して油断はするな』

エリカ「……」

エリカ(そう、油断のならない一芸集団)

エリカ(でも隊長に油断はない)

エリカ(まさに兎を狩るのに核ミサイルを持ち込むライオンのような絶対無敵の王者)

エリカ(みほの甘さという弱点がなくなった今、負けるわけがない)

エリカ(……みほを弱点と見なした西住流が、そしてその西住流で在ろうとする私が、負けるわけがない)

エリカ(負けるわけにはいかないッ)

まほ『まずは迅速に行動せよ』

まほ『グデーリアンは言った』

まほ『厚い皮膚より早い足、と……』

エリカ「……」

エリカ(いいこと言ってるはずなのに、どこぞの紅茶馬鹿が頭をよぎってくる……)

まほ『……行くぞッ!』

エリカ(……Ⅳ号と戦うなんて変な気持ちだわ)

エリカ(でも、なんだろうと関係ないッ)

エリカ「隊長のお言葉どおり、迅速に終わらせるわよ!」

エリカ「パンツァー・フォーッ!」

868: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/19(水) 03:04:58.51 ID:C9zJ0eaNo

エリカ(赤星が、あの子の重荷を軽くしたはず)

エリカ(多分あの子に、もう迷いはない)

エリカ(本気で首を取りにいかないと、プラウダのチビやサンダースの馬鹿みたいに返り討ちにあうッ)

エリカ(一撃で仕留めるッ)

小梅「撃てー!」

ズドーンズドーン

逸見車装填手「おー、敵さんうろたえてる」

エリカ「当たり前でしょ」

エリカ「この電撃戦が出来るのは、黒森峰の練度があってのものよ」

エリカ(……私の理想や隊長ほど、他のみんなは戦車道だけに全てを賭けられるわけじゃない)

エリカ(それでも確かに、名門に恥じない努力を積み重ねてきた)

エリカ(一人一人は目立たぬかもしれないが、完璧なまでの基礎技術を駆使した陣形全体はまさに無類ッ)

エリカ「全車輌、一斉攻撃ッ!」

エリカ(奴らは無駄な一芸持ちが多い)

エリカ(さすがにもう逃げ出すような愚図は残ってないようだけど、追われるとひたすら逃げるので手一杯のはず)

エリカ(例えみほの指示で逃げ切れても、反撃に転じられる程の技量はない)

エリカ(……私が見たことのないチームもいる)

エリカ(大洗で得た情報から察するに、新しく入った未経験者ッ)

エリカ(ならば、初陣の時の連中みたく、テンパって落ちる可能性が高いッ)

エリカ(勢いをつけるためにも、まずはここで雑魚を狩るッ)

逸見車装填手「なんか露骨に動きが怪しいのいるけど、私達は――」

エリカ「無視よ無視」

エリカ「あんなのは、赤星にでもくれてやればいいわ」

エリカ「私達が狙うのは、あの子の――大将の首のみッ」

869: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/19(水) 03:08:48.95 ID:C9zJ0eaNo

逸見車砲手「前方2時方向にフラッグ車を確認」

エリカ「よし、照準を合わせろ」

エリカ(アンタのことはⅣ号で見ててよーく分かってる)

エリカ(ここで下手を打つと、逃げ延びたアンタは油断した私達にカウンターを食らわせてくる)

エリカ(猫を噛み殺す窮鼠――そんなシーンを何度もⅣ号として経験してきた)

逸見車砲手「照準よし、フラッグ車に合わせました……!」

エリカ(だからこそ、対処法は分かる)

エリカ(あの子は毎回スロースターター)

エリカ(結果してやられたプラウダ戦も入れると、立ち上がりは毎回今ひとつ)

エリカ(そこで悠長にするせいで、あの子に奇策を思いつかせてしまうッ)

エリカ(だから――)

エリカ「一発で終わらせてあげるわ」 ニタァ

逸見車装填手「装填完了ッ」

エリカ「よし……」

エリカ「撃てぇぇぇぇぇ!」 クワッ

ズドォォォォォォン

870: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/19(水) 03:16:11.79 ID:C9zJ0eaNo

シュポッ

蝶野『大洗女子学園三式、走行不能!』

エリカ「~~~~~~~っ!?」

エリカ「三式ぃ!?」

エリカ「あんな放っておいても赤星とか直下が潰しそうな三式とかいう三下ァ!?」

逸見車砲手「いや、そんなこと言われましても……」

逸見車装填手「向こうが急速に割り込んできたし、その勘を褒めるしかないんじゃあ」

エリカ「えーい五月蝿い!」

エリカ「とにかくフラグ車を逃がすな!」

エリカ「この場で息の根を止めるのよ!」

逸見車砲手「殺すって……」

逸見車装填手(やっぱり戦車に乗ってる時の逸見さんこわーい……)

逸見車通信手(ハンバーグバズーカ逸見とか言われてる時とはまた異なる怖さ……)

871: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/19(水) 03:40:43.11 ID:C9zJ0eaNo

エリカ「撃て! 撃ってなんとしてもここで仕留め――」

モクモクモク

エリカ「煙ぃ?」

エリカ「ニンジャじゃあるまいし、小賢しい真似を!」

赤星『ニンジャ……島田流を思い出すね……』

ブロッケンJr『へっ、カラスまでは騙せない程度の忍術じゃあ虎を騙すことなんて出来ないって教えてやるぜ!』

エリカ「島田流……」

エリカ(いくら西住流を捨てたあの子とはいえ、島田流に身を染めるとは思えないけど……)

エリカ(でも、あの子の戦法が島田流のような搦手が多いのは事実)

エリカ(このまま調子に乗らせるのは不味いッ)

エリカ「全車撃ち方用意!」

まほ『……全車撃ち方やめ!』

エリカ「!?」

エリカ「一気に叩き潰さなくていいんですか!?」

まほ『下手に向こうの作戦に乗るな』

ブロッケンJr『へっ……ロビンもそんなことを言っていたっけな……!』

まほ『無駄弾を使わせるつもりだろう』

まほ『弾には限りがある、次の手を見極めてからでも遅くない』

エリカ「……」

エリカ(隊長の言うことは、正しい)

エリカ(下手に策に乗るのは危険だし、無駄弾をあまり使えないのも事実)

エリカ(でも……)

エリカ(今までの経験からすると、おそらく向こうの策の真の狙いは無駄弾消費じゃあない……)

エリカ(あの子の搦手は、搦手はのくせに一発一発は甚大なダメージをもたらしてくる)

エリカ(世間一般の搦手が手足を攻撃し動きを封じてからとどめを刺す、といったものだとすれば――)

エリカ(あの子の搦手は、手足を一撃で切り落とす、しかも猛毒が塗られたような一撃)

エリカ(無駄弾を撃たせるためなんてアバウトかつローリターンな搦手を安売りするヤツじゃあないっ……)

エリカ(ここで見極めようとしたら、手遅れになる可能性が……)

エリカ「……クソッ!」

エリカ(でも言えないッ……)

エリカ(一般的に考えれば隊長が正しい。そうでなくとも隊長はいつも正しい)

エリカ(私が嫌な予感を覚えるのも、全部Ⅳ号と入れ替わった記憶ゆえのもの)

エリカ(それを上手く説明も出来ない以上、従う以外の選択肢はないッ……!)

エリカ「バルカン砲撃てェ!」

逸見車砲手「ええ!?」

エリカ「こっちなら問題はないはずだし、撃ち方やめにも反しない!」

エリカ「何にせよぶち当てて、ダメージと共にすぐそこに迫っているという威圧を与えるッ」

エリカ「絶対……逃がすもんですかっ……ッ!」 ギリィ

872: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/19(水) 03:45:59.20 ID:C9zJ0eaNo

エリカ「敵、11時方向に確認ッ」

まほ『あの先は坂道だ』

まほ『向こうにはポルシェティーガーがいる』

まほ『足が遅いからそう簡単には登れまい』

まほ『十分に時間はあるはずだ』

ダージリン「恋と戦争はあらゆるものが正当化されるのよ」 キリッ

オレンジペコ「通信傍受もですか?」

ダージリン「……」

ダージリン「……うーん……?」

オレンジペコ(あ、マジトーンで悩みだした……どうしよう……)

オレンジペコ「あっ、え、煙幕晴れてきましたッ!」

エリカ「んなっ……」

エリカ「もうあんなところに!?」

エリカ(そうか、全員がポルシェティーガーを引っ張って……ッ)

エリカ(クソッ、何故気付かなかった……!)

エリカ(大洗女子で、奴らがワンフォーオールの仲良しこよしごっこをよくすると学んでいたはずじゃないかっ……!)

873: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/19(水) 03:50:30.79 ID:C9zJ0eaNo

エリカ「くそっ……!」

エリカ「広範囲に煙幕を張られてるせいでまだ追撃が――」

ボシュンッ

ボシュンッ

エリカ「!?」

エリカ「今度は何!?」

逸見車通信手「奇襲です!」

エリカ「やられたの!?」

逸見車通信手「ええと……」

逸見車通信手「誰も旗は上がってないけど、2輌履帯がやられました!」

エリカ「くっ……!」

エリカ(自分が追い込まれたときをチャンスに変える……)

エリカ(平気で自分を囮にして、追う者を背後から刺すスタイル……!)

エリカ(誰よりそれを見てきた私が気付かなくてどうするんだ、くそっ……!)

まほ『深追いはするな』

エリカ(不味い不味い不味い……!)

エリカ(これ以上好き勝手されると、私の印象云々以前に、普通に不味いッ!)

エリカ(勝つのは黒森峰、そして伝統ある西住流じゃなくなちゃならないのよっ!)

エリカ(何とかして……なんとかして主導権を握らないと……!)

874: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/19(水) 03:54:58.82 ID:C9zJ0eaNo

まほ「……想定より早く陣地を構築したな」

エリカ(……さすが隊長は落ち着いていらっしゃる)

エリカ(そうだ……私がきちんとどうにかできずとも、隊長がいる……)

エリカ(万が一私がダメでも、隊長ならば――)

まほ「囲め」

エリカ「はい!」

ズドォォォォォォン

ズドムズドムズドム

エリカ「ちぃぃぃぃっ!」

エリカ「クソッ、なまじしっかり陣地を作ってるせいで犠牲が……!」

エリカ「私のパーフェクトゲーム構想が……!」

エリカ「優勝の瞬間がニュースになる度、史上最悪の負け方をした大洗の恥ずかしいシーンが流されるという私の野望があ!」

逸見車操縦手(人間が小さいなあ……)

880: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 02:56:17.40 ID:cKBMiYpfo

まほ(……囲まれても冷静に捌いてくるか)

まほ(伊達にここまで残ってはいないな)

まほ(みほのみならず、他の者も一定の技量を持っている前提で指揮を取るべきか)

まほ「……ヤークトティーガー、正面へ」

まほ(あの戦力では易易とヤークトティーガーを貫けまい)

エリカ「これが王者の戦いよ」 フッフーン

エリカ「策を弄し奇策に頼るのは凡夫の証!」

エリカ「真の王者とは優雅に美しく、どんと構えて真っ向から相手を踏み潰すものなのよ!」

エリカ(勝てる!)

エリカ(大洗で見てきた戦力では、やはり黒森峰を倒すなんて不可能ッ)

エリカ「邪道に付け入るスキを与えたサンダースやプラウダのように、満身も舐めプも我々黒森峰には無いッ」

エリカ「このまま叩き潰してやるわ!!」

逸見車通信手(割りと普段から慢心の塊のような……)

881: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 03:03:28.38 ID:cKBMiYpfo

ズドーン

直下「あああああああああああああ!!」

直下「直したばっかりなのにィ!」

直下「うちの履帯は重いんだぞ!」

キュラキュラキュラ

小梅「……あれ?」

ブロッケンJr「どうした?」

小梅「いや、なんか向こうで上半身出した直下さんが発狂したみたいに踊ってるんだけど……」

白星「踊ってる……?」

小梅「あ、いや、違う」

小梅「あれ、なんか腹立てて暴れてるんだ!」

小梅「ヘッツァーがこっちに向かって――!?」

黒星「え!?」

ドドメ色「何も通信は入ってきてないでガンスよ!?」

小梅「直下さん、腹を立てると業務連絡とかそういうのスコーンと忘れて当たり散らすところあるからなあ……」

ブロッケンJr「今からでも隊長に報告するか?」

小梅「いや、多分……その前にこの感じだと――」

ズドーンズドーン

小梅「やっぱりヘッツァーを見つけて撃ち合いになった!」

ジェイド『うっおー! くっあー! ざけんなーーーー!!』 ドーンドーン

小梅「あーっ、同士討ちになる!」

小梅「みほさん、これを狙ってたの!?」

小梅「み、みんな落ち着いてえ!」

882: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 03:12:58.87 ID:cKBMiYpfo

エリカ「ちょ、あんたら何やってんのよ!」

エリカ「無様に混乱なんてしてないでさっさと立て直しなさい!」

小梅『逸見さん、パニックガールの代名詞みたいに浮足立ってるよ!』

エリカ「わざわざンな通信寄越すんじゃないわよ!」

逸見車砲手「あ、大洗、撤退はじめました」

エリカ「ええい撃て、ここを奴らの墓場にするのよ!」

ワーキャー

小梅『ごめん逸見さん、こっちダメそう!!』

小梅『ああっ、混乱してブンブン振り回してたジェイドが落とされた!』

エリカ「はあ!?」

小梅『ああダメ、何とかしようにも他の味方の車体が――』

脇にヘッツァーがいるぞ子「すみません逃げられました!!」

エリカ「何やってるの!」

まほ「体勢を立て直して追え。こちらもすぐ向かう」

エリカ「私が行きます!」

エリカ(他の連中は宛に出来ない……)

エリカ(隊列を組み、決められた動きをすることに関しては同世代最強の集団だけど……)

エリカ(あの子は“それ”をさせないことに長けすぎているッ……)

エリカ(こっちの手の内も全部わかってるわけだし……ここは私が決めるしかないッ)

エリカ(アンタがこっちの手の内を知ってるように、私だってアンタの手の内は知ってるってこと、思い知らせてやるわ!)

883: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 03:18:30.40 ID:cKBMiYpfo

逸見車装填手「それにしても……」

逸見車装填手「そろそろポルシェティーガーがだめになって向こうも戦力分散されて良い頃だと思うんですけどねえ」

エリカ「……それはあまり期待しない方がいいと思うわよ」

逸見車通信手「?」

逸見車車砲手「ふぁっ!?」

逸見車装填手「どうしたの?」

逸見車砲手「向こうのポルシェティーガー、走りながらなんか直してる……」

逸見車装填手「ええええええええ!?」

エリカ「……」

エリカ(まあ、そうでしょうね)

エリカ(私が知ってる範囲では、大洗に戦車に乗れる人材はほとんど残ってなかったはずだし)

エリカ(乗せるとしたら自動車部は有力候補)

エリカ(……一晩であれだけの無茶な修理が出来る連中よ)

エリカ(応急処置くらいなら、走りながらやってきても驚かないわ)

エリカ「……驚きはしないけど、是非とも黒森峰に欲しい人材ね」

逸見車砲手「驚かないんだ……」

逸見車装填手「すご……」

エリカ「一々相手に合わせて驚いてペースを乱してやる必要なんて無いわ」

エリカ「冷静にここで決めるわよ!」

逸見車装填手「はいっ!」

逸見車砲手「おまかせあれっ!」

884: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 03:36:43.31 ID:cKBMiYpfo

エリカ「逃さないわ……」

エリカ「目標、1時フラッグ車!」

エリカ(ここで決めて、私は完全にアンタを超えるっ……!)

エリカ(奇策に翻弄されず冷静に仕留められる人間が黒森峰にもいるってことを、思い知るがいいわ!)

ガガガガ

エリカ「ちょっと、どこ行く気なのよ!?」

ガッコン

エリカ「何やってんの!!!」

逸見車操縦手「左動力系に異常!」

逸見車操縦手「すみません、操縦不能です!!」

エリカ「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」

エリカ「あーもう、早く直しなさい!!」

エリカ「隊長に大見得切ってるのよ、走りながら直しなさい!!」

逸見車装填手「ひい~っ」

逸見車操縦手(やっぱり逸見さん怖い~っ)

エリカ「ああもう、はやくしなさいよ!!」 ムッキー

逸見車砲手(リズミカルに踊ってないで手伝ってほしい……)

逸見車通信手(逸見ステップ……)

885: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 03:46:48.34 ID:cKBMiYpfo

エリカ「……」

小梅「不機嫌だね、逸見さん」

エリカ「うっさいわね」

小梅「直すの手伝ってあげたのに」

エリカ「ふん」

エリカ「自信満々に追撃に出て交戦すらせず逃げられるなんて醜態晒した直後なのよ」

エリカ「上機嫌でいられるわけないじゃない」

小梅「あんまりすぎたことを引きずってもしょうがないよ」

小梅「すぎたことを引きずりすぎると、混ぜる勇気がなくて封を切れない塩素系洗剤をずっと引き出しに入れ続けることになっちゃうよ」

エリカ「洒落にならないことをネタにできようになったメンタル面の成長は認めてあげるけど、別にまだ去年のこと風化したわけじゃないからね?」

886: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 03:56:18.11 ID:cKBMiYpfo

直下『あっ、大洗の車輌を発見!』

エリカ「どれどれ……」

エリカ「……」

エリカ「何やってンのよ、あれ」

小梅「……」

小梅「川で立ち往生したのを助けてる、のかな……」

エリカ「……」

ズドーン

ズドーン

エリカ「……撃ってきたわね」

小梅「でも全然当たってないというか、今までに比べて狙いが粗いね」

直下「焦ってるせいで精度が落ちてるとか?」

エリカ「……あの子の救出作戦を援護してるつもりなんでしょ」

エリカ「正確に狙えないなら砲弾を節約しておけばいいものを」

小梅「……そうだね」

エリカ「……」

小梅「……」

エリカ「何よ」

小梅「あ、ううん、ごめん……なんでもない」

エリカ「……」

エリカ(残弾数も気にせず、当たるかどうかでなくて、守りたいから撃っている――)

エリカ(去年の私達にできなかった、ある種敗因の一つ)

エリカ(それをチーム一丸となりやっている、か……)

エリカ「……ふん」

エリカ「相変わらず甘いわね」

エリカ「その甘さが命取りなのよ」

エリカ「戦車前進用意!」

エリカ「丘を越えたら川に沈めてやるわ!」

887: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 04:00:23.64 ID:cKBMiYpfo

まほ「……後方7時敵」

まほ「11号車、やれ」

ズドムズドム

杏「さすがに三度目はないかあ~!」 スタコラサッサー

エリカ「ちっ、何外してンのよ!」

まほ「深追いはするな」

エリカ「は、はい……」

エリカ(くっ、あのヘッツァーの運転手はあのクソいけ好かない生徒会長)

エリカ(さっさと沈めておきたいのに――!)

小梅「逸見さん」

エリカ「――っと、砲撃用意!」

エリカ「撃てーっ!」

ズドムズドム

エリカ「ぐっ……!」

小梅「ギリギリで逃げられちゃったね……」

エリカ「何処に向かう気……?」

まほ「……」

まほ「恐らく、市街地」

888: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 04:03:36.25 ID:cKBMiYpfo

エリカ「橋ぃ?」

エリカ「戦ってるより逃げてる方が多いじゃないの」

エリカ(まあ、この戦力差ならそれも已む無しといったところかしら)

エリカ(でも放っておくと打開策を見つけてくるのが西住みほという女)

エリカ(無策で無様に逃げ回ってるスキに叩くッ)

エリカ「……落ちた?」

エリカ「橋がァ!?」

エリカ「……分かった」

エリカ「橋は迂回して追う、お前は先回りしろ!」

エリカ「……」

エリカ(まさかこんな策を用意してるなんて……!) ギリッ

エリカ「……」

エリカ(無策で逃げてる今の内に、とか口に出してなくてよかった……)

889: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 04:08:30.87 ID:cKBMiYpfo

逸見車通信手「あ、逸見さん、マウスから通信!」

逸見車通信手「二輌撃破したそうです!!」

エリカ「……ッシ!」 ガッツポ

エリカ「……」

エリカ「こほん」

エリカ「迂回してる間に終わってしまうかもしれないわね」

エリカ「所詮弱小チームなんてこんなものよ」

逸見車通信手(今ガッツポーズしてたよね……)

逸見車砲手(めっちゃ嬉しいんじゃん……)

逸見車装填手(ごまかせてるつもりなのかな……)

逸見車操縦手(普段怖いのにたまに可愛いよね、逸見さん……)

890: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 04:24:16.01 ID:cKBMiYpfo

エリカ「隊長、2輌撃破しました」 フフン

まほ「あと5輌」

エリカ「こちらはまだ16輌残っています」

まほ「フラッグ車を潰さねば意味はない」

エリカ「……」

エリカ(確かに、これまでサンダースもプラウダも、車両数では圧倒しながらも最後にはフラッグ車を潰されて敗北した……)

エリカ(でも、今回に関してはそんなこと起こり得ないッ)

エリカ(向こうのポイントゲッターである三突は潰した)

エリカ(ポルシェティーガーのチートメカニックどもが未知とはいえ、戦車に乗ること自体は未知のはず)

エリカ(ヘッツァーは鬱陶しいことこの上ないが、二度に渡りやられたのもあり、すでに十分に警戒出来ている)

エリカ(練度の高い八九式はそもそもこちらの装甲を抜けるとも思えないので放置でオーケイ)

エリカ(ただでさえ低火力のM3に乗ってるのは例の頼りない一年どもだからこれも論外)

エリカ(そうなると残る強敵はあの子のⅣ号のみ)

エリカ(……そのⅣ号はフラッグ車だし、マウスだって最優先で狙うはず)

エリカ(万が一マウスをどうにかできるとすればⅣ号だけど、そう易易とやられるはずがないわ)

エリカ(直々に手を下す前に負けられることだけが心残りだけど……)

エリカ「もうここから負けようがないわね」

891: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 04:44:26.96 ID:cKBMiYpfo

マウス車長『すみません撃破されました!』

エリカ「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」

エリカ「何をどうしたらそんなことになるのよ!」

マウス車長『そ、それが――』

エリカ「はあ!?」

エリカ「ヘッツァーが潜り込んで来て動けなくなったうえに、乗り込んできた八九式に砲塔を抑え込まれたァ!?」

エリカ「そんなアホみたいな手で……!」

逸見車砲手「あ、でも、意外とそういう奇策って防げないし……」

逸見車通信手「私達、圧倒的なことが多いせいで、そこ崩されると結構浮足立っちゃうって言われてるもんね……」

エリカ「だからって、天下の黒森峰があのヘッツァーに三度も撹乱されて足元をすくわれたなんて許せるわけないじゃない!」

逸見車操縦手「そうかもしれませんけど……」

逸見車砲手「でも何事にも動じないと噂される継続の隊長ですら、逸見さんが生身で乗り込んでハンバーグ吐いたら動揺したんですよ」

逸見車通信手「生身でハンバーグ砲撃する人間と比べたら、ヘッツァーはまだ常識的……なのかな……」

逸見車装填手「どっちにしても動揺するよね、それ……」

エリカ「ああああああ、終わった話は終了! おしまい!」

エリカ「そんなことより我々も間もなく市街地、直接奴らに手を下せることに歓喜しながら戦闘に意識を切り替えなさいっっ!」

逸見車操縦手(やっぱり軽い黒歴史になってるんだ……)

892: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/07/28(金) 04:45:16.48 ID:cKBMiYpfo
眠気で意識がトビかけてきたので寝ます

897: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 05:14:58.64 ID:xrJXyN0Po

逸見車通信手「敵発見とのことです!」

エリカ「よし、このまま私達の手で落とすわよ!」

キュラキュラキュラキュラ

逸見車砲手「うーん」

逸見車装填手「小回り活かされてるねえ」

逸見車砲手「これだけ頻繁に曲がられると気安く撃てませんけどどーしましょ」

逸見車通信手「フレンドリーファイア怖いもんねえ」

エリカ「くっ……」

エリカ(互いの戦車の強み・弱みを的確に把握したうえでの立ち回り……)

エリカ(本来総合力で圧倒的に劣るにも関わらず撃墜されぬよう策を弄してくる……)

エリカ(何回見ても気にいらないけど、でも――)

エリカ「鮮やかすぎてムカつくわね……」

エリカ「絶ッッ対! 叩き潰すわよ!」 ゲシゲシ

逸見車操縦手「痛い痛い、蹴りすぎですって!」

エリカ「ええい邪魔よ!」

逸見車砲手「隊列を乱さないよう言われてたし、柔軟に道をあけたり、なんてのは出来ないですって」

逸見車装填手「順番は守らないと……」

エリカ「むっきー!」 ジタバタ

エレファント車長『こちらエレファント、M3にやられました!』

エリカ「何やってんのよ!!」

逸見車砲手(本当にどうやったんだろう……?)

エリカ「黒森峰が……西住流は最強なのよ!」

エリカ「こんな……こんなところで、こんなことで負けていいはずがないのよっ……!」

898: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 05:26:02.65 ID:xrJXyN0Po

逸見車通信手「あっ」

エリカ「今度は何!?」

逸見車通信手「ヤークトティーガーやられたみたいです……」

エリカ「はあ!?」

エリカ「何やってんのよ!」

エリカ「相手にはもうまともな火力は残ってないのよ!」

エリカ「いやまあ最初からまともな戦車なんてなかったようなものだけれども!」

逸見車通信手「よりにもよってM3と刺し違えたみたいです!」

エリカ「だから! 何をどうすれば! そんなことになるのよ!」

エリカ「ああもう!」

エリカ(分かっていてもイライラするし、わけがわからずモヤッとくるわね……)

エリカ(今のあの子を知らなかったら、多分もっとやばかったわ……)

エリカ「もういいわ、考えたってわけがわからないものは無視!」

エリカ「このまま隊長とフラッグを落とせば問題ないわ!」

エリカ(普通にやれば隊長が負けるわけがない)

エリカ(だけどあの子は……普通にやらせないことにかけては天才的ッ)

エリカ(最悪自分を盾にしてでも、あの子の作戦は叩き潰すッ)

899: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 05:43:43.58 ID:xrJXyN0Po

エリカ(無駄弾もバンバン使えるわけじゃないし、あのボケ娘の運転技術は腹立たしいけど一流)

エリカ(下手に打って隊長車に当てるわけにもいかないし……)

エリカ(何とか包囲して援護したいけど、そう簡単にさせてはくれない……)

エリカ「……このまま進めば、開けたところに出る……?」

逸見車砲手「あー、そこまで追い込めたらあとは包囲できるんじゃないですか?」

エリカ(いや……)

エリカ(それに気付いていないはずがない……)

エリカ(地形や有利不利を把握し、それを使って策を弄するのがあの子のやり方……)

エリカ(絶対に何かが……)

エリカ「他の2輌はどこ!?」

逸見車装填手「他の2輌……?」

エリカ「大洗のよ!」

逸見車通信手「ええと、ちょっと待って下さい確認しますっ」

小梅『あ、もしもし逸見さん?』

エリカ「何よ、こっちは今忙しいんだけど!」

小梅『奇遇だね、こっちも今忙しいよ』

エリカ「はあ?」

小梅『こちらロート小隊、現在八九式を発見し追撃中』

小梅『……逸見さん、すごく大洗の戦略を気にしてたしさ』

小梅『一応、向こうの行動報告しておこうかと思って』

小梅『座標と向こうの行動、そっちの通信手さんに細かく連絡させとくね』

エリカ「……」

エリカ「やるじゃない、感謝してあげるわ」

小梅『あはは』

小梅『そういうときはもっとシンプルに「ありがとう」でいいのに』

小梅『もしくは「愛しているよ」で』

エリカ「忙しいから切るわよ」

900: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 05:52:15.25 ID:xrJXyN0Po

エリカ「ポルシェティーガーは誰か目撃してないか確認して」

エリカ「もし誰も目撃していないようなら、待ち伏せの可能性が――」

逸見車操縦手「あっ」

エリカ「どうしたの」

逸見車操縦手「……目撃しました」

エリカ「は?」

逸見車操縦手「ポルシェティーガー」

逸見車砲手「……っていうか、また上半身出して前見たらすぐ見ること出来る位置に」

エリカ「ッ!」 ガコン

エリカ「しまったっ……!」

エリカ(ただの待ち伏せによる砲撃なら、隊長だって警戒しないはずがない……)

エリカ(射程や潜伏出来る場所は頭に入っているだろうし、遮蔽物などのチェックも怠っていない)

エリカ(撃って一撃で仕留めるなんて芸当、あのブリザードのノンナかサンダースのナオミでもなければ不可能)

エリカ(なのにこいつらっ……)

エリカ(撃っても仕留められないからって、敢えて砲撃を度外視することで、隊長の警戒を潜り抜けるなんてっ……!)

逸見車操縦手「ど、どうしましょう! 道を塞がれたんですけど!」

エリカ(分断されたッ……!)

エリカ(あの子の狙いは最初から、タイマンっ……!)

901: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 05:58:10.74 ID:xrJXyN0Po

ズドムッ

逸見車操縦手「撃ってきたぁ!」

逸見車装填手「ってそりゃそうだ!」

エリカ「ええい撃ち返して!」

エリカ「あんな失敗兵器、さっさとスクラップにしなさい!」

逸見車砲手「え?」

エリカ「何よ!」

逸見車砲手「あ、いや……」

逸見車砲手(最近親しみやすくなったとはいえ、やっぱまだ怖いっていうか何ていうか……)

逸見車砲手(まあ、うちは上下関係厳しくて、車長の言うことだもんね……)

逸見車砲手「了解でーす」

ズドムッ ズドムッ

エリカ「何やってるの、失敗兵器相手に!」

逸見車操縦手「あっっぶ!」

逸見車通信手「失敗兵器のわりにめちゃくちゃしっかりしてないあれ!?」

エリカ「あんのクソチートメカニックどもめ……!」 ギリッ

エリカ(砲手や戦車乗りの技量は凡骨そのものでよかったけど……)

エリカ(あのメカニック能力は脅威だし、不気味)

エリカ(さっさと落として駆けつけないと……)

エリカ(あの子のこと、まだ何か策を弄してくるかもしれないっ……!)

エリカ「隊長、我々が行くまで待っていて下さい!」

エリカ(隊長が不覚を取るはずなんてない……ないけど……)

エリカ(でも……二人で戦わせるなんてことはできないっ!)

902: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 06:02:00.27 ID:xrJXyN0Po

エリカ「撃て!」

エリカ「総攻撃であの失敗兵器をただの鉄屑に変えてやるのよ!」

ズドンズドン

シュポッ

『大洗女子学園、ポルシェティーガー、八九式中戦車、走行不能!』

エリカ「!」

エリカ(よし、赤星も上手くやってる!)

エリカ(これで仲間を使った戦術はもう使えない)

エリカ(フラッグ車を囮にして策にはめる常套手段は封じたわよ!)

エリカ(あとは策を弄す暇がないよう、物量で押し切るッ!)

エリカ「突撃ッ!」

エリカ「中央広場へ急げ!」

903: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 06:04:45.18 ID:xrJXyN0Po

逸見車操縦手「ポルシェティーガーが邪魔で通れません!」

エリカ「ッ!」

逸見車砲手「……」

エリカ(この顔……この娘、まさか気付いて……)

エリカ(じゃあ何で言わな――)

エリカ(いや……仕方がない……車長の言うことは本来は絶対)

エリカ(車内であんなに意見がバンバン出されて採用される大洗こそ異常なのよ)

エリカ(これは気付けなかった私の失態ッ……!) ギリッ

エリカ(あんな馬鹿でかい鉄屑、邪魔になるって分かっていたはずなのにっ……!)

エリカ「回収車急いで!」

レオポンさんチーム「「ゆっくりでいいよ~」」

904: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 06:11:21.53 ID:xrJXyN0Po

エリカ「……ッ」 ギリィ

エリカ(不味い不味い不味い)

エリカ(こうしている間にも、あの子と隊長が一騎打ちをしてしまっているっ……!)

エリカ(何とかしないと……何とか……)

小梅『逸見さん』

エリカ「切るわよ」

小梅『わーっ、待って待って』

小梅『状況を聞いてて、大丈夫かなって心配してるんだから』

エリカ「るっさいわね!」

エリカ「ちっとも大丈夫なんかじゃないわよ!」

エリカ「回収車まだなの!?」

逸見車通信手「わ、わかりません~」

逸見車砲手(うー、めちゃくちゃカリカリしてる……)

逸見車操縦手(何でそんなに追い込まれてるんだろ、隊長なら大丈夫だろうに……)

逸見車通信手(赤星さんに助け求めてよかったかもしれない……矛先こっち来なくなるし……)

小梅『何だかすごく焦ってるみたいだけど……』

小梅『そんなに隊長が心配?』

エリカ「当たり前でしょ!」

エリカ「アンタとあの子のせいで10連覇が途絶えて、隊長や私達の肩にどれほどのものが乗っかってると思ってるのよ!」

小梅『……』

エリカ「あっ……」

エリカ「その……」

エリカ「……」

エリカ「でも事実じゃない」

エリカ「万が一でも負けるわけにはいかないの!」

エリカ「隊長のため、黒森峰のため!」

エリカ「それに、私自身のためにも!」

905: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 06:32:48.37 ID:xrJXyN0Po

小梅『……素直に謝るのも大事だと思うけど』 ポソ

エリカ「……何よ」

小梅『まあいっか、これからまた怒られるかもしれないこと言うし』

エリカ「は?」

小梅『……そんなに想ってるならさ』

小梅『そんなに焦っているなら――手段、選んでる場合じゃないんじゃないかな』

エリカ「……そりゃあ、わかってるわよ」

エリカ「でも、回収車を待つ以外に手段が――」

小梅『私達はそっちに行けないから何も手助けできないけど、そっちはポルシェティーガーに落とされず全車輌無事なんだよね』

エリカ「当然よ」

小梅『じゃあさ、出来るんじゃないかな』

エリカ「?」

小梅『ほら、マウスがやられたっていう』

小梅『味方の戦車を足場にして、相手の戦車に乗り上げるやつ』

エリカ「……!」

906: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 06:42:12.54 ID:xrJXyN0Po

エリカ「……」

エリカ(確かに……大分キツイけど、できなくはない)

エリカ(アイツを乗り越えて先に進めば、回収車を待たずとも……)

小梅『どうするかは、逸見さん次第だよ』

小梅『……何を重んじたいのか、自分の心に従ったほうがいいとは思うけどね』

小梅『……私はそれが出来ず、学校の方針だとか、常識だとか世間の目だとか、そういう物差しで色々考えちゃったから』

小梅『だからさ』

小梅『どうせどっちを選んでも引きずる可能性があるなら』

小梅『自分がいちばん信じたい道を、一番やりたいことをやるのがいいんじゃないかな』

エリカ「……」

エリカ「ふん、そんなこと、言われるまでもないわよ」

小梅『もう、素直じゃないなあ』

エリカ「……」

エリカ「ありがと……」 ポソ…

907: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 06:45:47.74 ID:xrJXyN0Po

小梅『え、なに? 聞こえなかったけど』

エリカ「なんでもないわ」

小梅『待ってもう一回言って! 録音するから』

エリカ「聞こえてンじゃないの!」

エリカ「ったく、切るわよ!」

エリカ「……」

エリカ(私は西住流が大事)

エリカ(でも……それ以上に隊長が大事)

エリカ(私にとっての西住流は、あの人そのものだ)

エリカ(例え私が何をしてしまおうと、あの人さえ無事で勝利を飾れたなら、それでいい)

エリカ(それで西住流の名は守れるし、この学校だって復権できる)

エリカ「戦車前進!」

逸見車操縦手「え!?」

エリカ「味方を踏み台に奴を踏み越える!」

エリカ「隊長の元に馳せ参じるわよ!」

908: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 06:53:32.46 ID:xrJXyN0Po

ギャリギャリギャリ

逸見車通信手「アンタ達強引だって、ってクレーム来てますけど」

エリカ「無視!」

エリカ「学園艦単位で鏡でも送ってあげなさい!」

逸見車操縦手「やった、乗り越えた!」

逸見車通信手「あ、逸見さん、狭いから中に入らないと危な――」

エリカ「かまわないわ!」

エリカ「戦車内は特殊カーボンで守られてるのよ、気にせず全力疾走よ!!」

逸見車通信手「戦車内だけなんだけどな……」

逸見車操縦手「ああもう、どうなっても知りませんよ!」 ブロロロロロロロ

エリカ(急げ急げ急げ急げ急げ!)

エリカ(あの子が奇策で万に一つの奇跡を呼び寄せる前にっ……!)

逸見車装填手(どうして逸見さん、あんなに必死な顔なんだろう……隊長なら私達抜きでも負けないだろうに……)

エリカ「今行きます、待って下さい隊長ッ!」

逸見車通信手(天井ギリギリすぎて下手に盛り上がりとかあったら逸見さんの頭がすりりんごみたいになりそう……)

909: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/08/23(水) 06:57:10.14 ID:xrJXyN0Po

エリカ「……っ!」

出来るだけ飛ばしてきた。

もっと早く、赤星に言われる前に気付けたら、或いは間に合えたのかもしれなかったけど。

エリカ「隊……長……」

でも――そんな仮定は、無意味である。

分かっていても、思わずにはいられない。

きっと赤星も、あの滑落について何度も何日も無意味な仮定を思い描いたのだろう。

『黒森峰フラッグ車、走行不能』

着いたときには、全てが終わっていた。

文字通り、終わっていたのだ。

試合も、黒森峰の栄華も。

土煙が晴れ白旗が見えると同時に、耳障りなアナウンスが聞こえてきた。

『よって、大洗女子学園の勝利!』

918: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 00:39:11.86 ID:3RH/mxXEo

エリカ「……」

まほ「……」 カツカツカツ

エリカ(何を、言えば……)

エリカ(謝罪? あの子とタイマンにさせたことへの?)

エリカ(それを隊長は受け入れるか?)

エリカ(いや、でも、実際に私が不甲斐ないせいで、黄金時代になるはずが、二年連続のV逸……)

まほ「……」 スッ

エリカ「あ……」

エリカ(何も……言えなかった……)

エリカ(涙も流さず、しっかりと前を見ているその姿……)

エリカ(きっと、私には想像もつかないレベルで反省と次を見据えた思考をしているんだろう……)

エリカ(あの人達に追いつくには、それが必要……)

エリカ(泣いてる場合じゃない……)

エリカ(他の子達みたいに無様に下を向いて、泣いてる場合じゃ……) ジワッ

919: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 01:10:42.73 ID:3RH/mxXEo

小梅「残念だったね」 チーーーーーン

エリカ「おわーーーーーっ!」 ドゴッ

小梅「ふ、振り向きザマにナイスエルボぅ……」 ハナヂダバー

エリカ「うっ、わ、悪かったわよ……つい……」

エリカ「つーか何よさっきの」

小梅「えーっと、万が一負けたときのためにと思って」

小梅「仏具店で、チーンって鳴らすやつと、ポクポク叩くやつを」

エリカ「何でそんな飛び切り不吉かつ不要なモンを準備してんのよ」

小梅「負けた時しんみりした空気が和むかなーって」 チーンチーンチーン

エリカ「やかましいわ!」

小梅「でもトライアングルの音色とか、こういう音色ってちょっと心が穏やかになるらしいよ」 チーンチーンチーンポクポクチーンポクチーンポチーンポク

エリカ「木魚を混ぜてリズミカルに叩くんじゃないわよ」

小梅「でもこう、買ったあと皆で遊んでたら、難しいレベルの太鼓の達人『夏祭り』なら木魚で叩けるようになったんだよ」 ポクポクポクポクポクポクチチチン

エリカ「何バカみたいな努力に時間費やしてンのよ!」

逸見車装填手「……」 プルプル

エリカ「ほら! さっきまで泣いてたアホがちょっと笑いこらえ始めてるじゃない!!」

920: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 02:01:06.03 ID:3RH/mxXEo

エリカ「ったく……アンタまじここ最近で急に変なことになってきてるわね……」

エリカ「こういう時、真っ先に泣いてトイレに篭りそうな子だったのに」

小梅「あはは……」

小梅「まあ、最近急に変になった度合いなら逸見さんの方が上だし……」

エリカ「ぐっ」

小梅「それに、今年は負けて悲しいのも、きっと逸見さんの方が上だと思うから」

エリカ「……」

小梅「なんだかんだで私は逃げ回っちゃった時期も長いけど、逸見さんは去年負けてからすぐ未来を見据えてたでしょ」

小梅「それに、私達の中で誰よりも優勝旗奪還への情熱を持っていたから」

小梅「……だから、放っておくと、まともに悲しんだり怒ったり出来ないんかもって」

エリカ「……何よソレ」

小梅「去年さ」

小梅「……いつまでも私とみほさんの失態に拘って、終わったことに縛られ続けて皆が前に進めなくなっていた時期、あったじゃない」

小梅「でも逸見さんは、隊長の背中を追いかけて、未来を見ていて」

小梅「……ものすごーく厳しいし、誤解されそうな形だったけど、私やみほさんのお尻を叩いてくれたよね」

エリカ「……別に。リベンジのためにも、いつまでもウジウジされてたら目障りだっただけよ」

小梅「誤解されてもしょうがないどころか恨んだとしても逆恨みじゃなく正当な恨みだよなってくらい厳しかったけど」

小梅「その結果みほさんは黒森峰を辞めちゃったみたいなところもあるけど」

エリカ「な、なによ、それはあの子が弱かったからでしょ!!」

小梅「まあ、でも、逸見さんなりに励ましてくれてたわけだし」

小梅「おかげで皆同じ所にウジウジとどまらずに済んだのは事実だもん」

小梅「私は逃げてたところからちょっとだけ前に踏み出せたし」

エリカ「今思うと一生閉じこもってもらうべきだったわ」 ハァ

小梅「みほさんも、逃げ出しちゃったけど」

小梅「……でも、閉じこもって足踏みせずに逃げたからこそ、今のみほさんが居るんだもんね」

小梅「やっぱり、逸見さんのおかげっていうのも、ちょっとくらいあると思うよ」

小梅「ポカリスエットの果汁くらいは」

エリカ「分かりにくいけど少なそうってことは理解したわ」

921: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 02:39:36.64 ID:3RH/mxXEo

小梅「まあ、そんなわけで、間違ってるかもしれないけど、私は私なりに今年は逸見さんに恩を返そうかなって」

エリカ「受取拒否で返品したいわ」

小梅「それにほら、今年は私戦犯じゃないっていうか、私自身は良かったし」 フンス

エリカ「アンタそれを私の前で言うか」

小梅「うん。去年はそれを言われるサイドを一身に背負ってたから」 フフ

エリカ「ったく……」

小梅「……泣くでも腹立つでも呆れるでもさ」

小梅「なんでもいいから、その、想った気持ちを受け入れて、発散するって、大事なことだと思うよ」

小梅「隊長みたいにすぐ切り替えて前を向きたいのは分かるけどさ」

小梅「逸見さんは隊長じゃないんだし……」

エリカ「……そんなこと、わかってるわよ」

小梅「憧れの背中を追い続ける所、私は好きだよ」

小梅「でも――」

小梅「無理をして気持ちを押し込めて、整理も出来てないのに出来てる顔して追いかけてたら、いつか躓いちゃうよ」

エリカ「……そうね」

エリカ「それは、そうかもしれないわ」

エリカ(まだ……やっぱり、色々思うことはあるものね……)

小梅「だから、泣いてもいいし、怒ってもいいんだよ」

小梅「ハンバーグを吐いてもいいし」

エリカ「2・3発殴ってもいい?」

小梅「それはだめ」

エリカ「ふん、じゃあいいわ」

小梅「……泣きたくなったら言ってくれたら、直下さん達とどこか出かけるくらいするからね」

エリカ「……はいはい」

エリカ「……」

エリカ「ま、一応感謝はするし、頭の片隅にくらい置いておいてあげるわ」

922: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 02:52:13.61 ID:3RH/mxXEo

エリカ「さ、皆顔を上げて」 パンパン

エリカ「泣くなら黒森峰に帰る途中か、帰ってから泣きなさい」

エリカ「……会場には、今年の黒森峰を支援してくれた人達もいる」

エリカ「せめて最後まで格好つけて、強豪らしくここを去るわよ」

逸見車砲撃手「……うん」 グスッ

ドドメ色星「記念に土を持って帰ろう」 グスッ

黒星「うう……この土を見る度に、これからこの大会を思い出すんですね……」 グスッ

小梅「あ、記念に地面スレスレのローアングルから土集めてる写真撮ろうか?」

エリカ「やめなさい」




923: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 03:09:08.79 ID:3RH/mxXEo

エリカ「ほらさっさと乗り込んだ乗り込んだ」

小梅「もうすっかり復活しちゃって」

エリカ「……泣くのは自室でって決めてンのよ」

小梅「へー」 ニヤニヤ

エリカ「……大体運転するのは私の役目なんだから、涙で視界をぼやかせるわけにもいかないでしょ」

小梅「確かに」

小梅「ぼやけた視界で川に落ちて事故か自殺かなんて言われたら最悪だもんね」

白星「そして助けに来る元副隊長」

直下「しかしそれは現隊長・逸見エリカの狡猾な罠だった」

エリカ「置いてくわよアンタら」

ブロッケンJr「まあそうカリカリするなよ」

ブロッケンJr「一本吸うか?」

エリカ「ちょ、何問題になりかねないモンを――」

ブロッケンjr「毒ガス」

エリカ「吸わないわよ! 想定より数倍ヤバいもんだし何歳になっても吸ったらダメなヤツよそれ!」

ブロッケンjr「はっはっは、ちょっとしたジャーマニージョークさ」

エリカ「アンタまじ鉤十字のアイコンといい、いつか退学させられるわよ」

924: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 03:18:44.93 ID:3RH/mxXEo

まほ「待たせたな」

エリカ「いえ!」

エリカ「隊長でしたら何年でもお待ちできます!」

まほ「はは」

まほ「私もエリカならどのくらいでも待っていられるよ」

エリカ「えっ……」 トゥンク

まほ「まあ、さっきは待てずにみほと戦り合って、無様に負けてしまったんだけどな」 ハハ

エリカ「え、あ、はは……」 ズーン

まほ(……しまった、失言だったか)

まほ(引退した後じゃ何もしてやれないし、何とかこの敗戦を引きずりすぎないよう小粋なジョークで和ませようと想ったのだが……)

まほ「あー」

まほ「こうして荷台に人が敷き詰められていると、まるで捕虜か人身売買のようだな」

まほ「これが戦車道でなく戦争だったら、このまま奴隷市場に運ばれていたのかもな」 ハハ

エリカ「は、はあ……」

まほ「……」

まほ(あまり笑いに詳しくない私にでも分かる。これはドン引きの空気というやつだ)

まほ(助けてくれ安斎。お前どうやって毎回毎回もりあげてたんだ。お前すごかったんだな安斎……)

まほ(誰か助けて……)

エリカ(ど、どうしよう、空気が完全に凍りついた……)

925: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 03:20:55.90 ID:3RH/mxXEo

みほ「お姉ちゃん」

まほ「!」

エリカ「!」

みほ「……」 トテトテ

まほ(救世主だ……)

エリカ(助かった……)

まほ「優勝おめでとう」

まほ「……」

まほ「完敗だな」

エリカ「……」

エリカ(そう、完敗)

エリカ(あれだけ戦力差があったのに、あと1輌まで追い詰めたのに)

エリカ(まんまと策にハマって分断されて、フラッグ車とタイマンに持ち込まれて)

エリカ(そして――誰より強い隊長が負けて、試合が終わった)

エリカ(言い訳不能なくらいの完敗)

926: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 03:24:40.15 ID:3RH/mxXEo

まほ「……」 スッ

みほ「……!」 パァァァァ

エリカ(握手、か……)

エリカ(不思議な気持ちだわ……)

エリカ(かつて夢見た光景のはずなのに、どうしてこう、胸がざわつくのかしら)

エリカ(……あの場に、私は混ざれないからかな)

エリカ(まだ、実力面でも、人間としても、あそこに混ざるに相応しい存在になれてない)

小梅(……)

小梅(地上最強の姉妹喧嘩、ここに終結ッ!!)

小梅(とか言う空気じゃないよね、これ……黙って見ておこ……)

まほ「……」

まほ(掌にメッセージでも書こうと思ってやったんだが、なるほど握手か……)

まほ「……」 ニギニギ

まほ(大きくなったな……)

まほ(私の見ぬ、ほんの数ヶ月で……)

927: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 03:37:58.73 ID:3RH/mxXEo

まほ「みほらしい戦いだったな」

まほ「……西住流とはまるで違うが」

エリカ(……そう、西住流とはまるで違う)

エリカ(でも――強かった。隊長が、認めるくらい)

みほ「そうかな?」

まほ「そうだよ」

エリカ「……」

エリカ(本来は色々思うべき所があるはずなのに、余計なものが頭をよぎるし、ネットサーフィンのしすぎも考えものね……)

エリカ(日常会話にしれっと潜むネットスラングやAAネタみたいなので笑いそうになるし、そりゃ口数も少なくムスッとするしかなくなるわよ……)

みほ「……あ」

優花里「……」

エリカ「……」

エリカ(最初はただのオタクだったのに、気付いたらあの子の信頼を誰より得ていた……)

エリカ(黒森峰とは毛色が違うけど、確かに戦車の知識は豊富だった)

エリカ(……もっと、あの天パにも警戒すべきだったわ)

華「……」

エリカ(……あのそこそこ突っかかってきたバカ食いロング)

エリカ(意味の分からない発言も多いくせに、射撃能力だけは高かった)

エリカ(アイツさえいなければ、隊長だって落とされなかったかもしれないのに)

エリカ(……射撃の腕ならウチの平均も相当高いけど、無茶な状況で撃たされ慣れてるから、動じないしどんな場面でも安定してるのよね)

エリカ(ムカつくけど……学ぶことはあるわ)

麻子「……」

エリカ(眠そうなカチューシャ女……)

エリカ(あの子のドライビングテクニックは天性のものだし、変な勘は鋭いし、ムカつくけど天才だわ)

エリカ(……うちにだって、あそこまでの者はいない)

エリカ(でもそれだけに、あれだけ突出してたら足並みは揃えにくいはず)

エリカ(……動転せず、高いレベルで統率された隊列を維持できていれば、あるいは……)

沙織「……」

エリカ(ゆるふわスイーツ脳   ……)

エリカ(私個人としては大嫌いだけど、でも、あんなヤツがあの子の心を解きほぐしたのよね……)

エリカ(……)

エリカ(私も、ああなれていたら、何かが変わっていたのかもしれない)

エリカ(でも……)

エリカ「私は、ああはなれないし、なりたいとも、思えなかったものね……」 ボソ

928: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 03:41:53.32 ID:3RH/mxXEo

みほ「……じゃあ、行くね」

まほ「……ああ」

小梅「……」 チラ

エリカ「……」

エリカ(そんな目されなくても、わかってるわよ……)

みほ「……お姉ちゃん」

まほ「ん?」

みほ「やっと見つけたよ」

みほ「……私の戦車道!」

エリカ「……!」

エリカ(戦車道、か……)

エリカ(あの子の戦車道は、黒森峰にはなかった……)

エリカ(……分かってたけど、あの子は大洗で、見つけたのよね……)

エリカ(……Ⅳ号として傍にいたから、そんなこと分かっていたはずなのに)

エリカ「……」

エリカ(何にどうして、こんなにチクリと胸が痛むのかしら)

エリカ(傍にいれなかったから? 道を違えたから?)

エリカ(……置いて行かれたような気がするから?)

エリカ「……」

エリカ(黒森峰の、西住流の戦車道こそが、最強だって思っているのに)

エリカ(なのに、なんで、遅れを取っているかのように思えるんだろう)

エリカ「……ああ」

エリカ(そうか――)

エリカ(私はただ、黒森峰と西住流に憧れているだけだからだ)

エリカ(私は、まだ――あの子と違って、自分の戦車道というものを、見つけられていないんだ……)

929: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 03:45:09.33 ID:3RH/mxXEo

まほ「……うん」

エリカ(ああ、クソ……)

エリカ(どんどん思い知らされる)

エリカ(自分が、決して特別な強者じゃないことを)

エリカ(まったく、穴があったら入るどころか、世界中の人間を穴に埋めてやりたい気分だわ……)

エリカ「……次は、負けないわよ」

エリカ(でも――)

エリカ(こんなところで、くじけてなんてやるもんか)

エリカ(私だって……ちっぽけな意地はある)

エリカ(あの人に、アンタに、並び立ちたいんだ)

エリカ(まだ、ふわっとしたものしかないけど)

エリカ(でも――)

みほ「……はいっ!」 ニコッ

エリカ(いつの日か、その背中に追いつきたい)

エリカ(あの日、Ⅳ号として共に歩いたときのように)

エリカ(今度は――“逸見エリカ”として、並び立ちたいっ……!)

930: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/01(金) 03:51:38.52 ID:3RH/mxXEo

しほ「……」

しほ「……」

しほ「……ふっ」

しほ「……」 パチパチパチ

しほ「……」 パチパチパチ

しほ(今なら、素直にみほに拍手を送れる)

しほ(誰も見ていないから、というのもあるけれど)

しほ(……そういう意味じゃ、今は一人でよかったのかもしれない)

しほ(でも、それはそれとして……)

しほ「……完全に置いて行かれたわね、私……」

937: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/07(木) 05:42:02.07 ID:2icaoLAOo

ブロロロロロ

エリカ「隊長」

エリカ「……よかったんですか、置いてきてしまって」

まほ「ああ」

まほ「お母様は、まだ当分戻ってこられないだろうしな」

エリカ「そうなんですか?」

まほ「……あれだけの期待がかかっていたのに、2年連続で優勝を逃した」

まほ「鳴り物入りで早期に隊長職についた、実の娘が、だ」

まほ「……様々な批判も出ている頃だろうし、頭を下げ、またしっかりと弁明するのに追われるだろう」

小梅「……2位だって、十分凄いのになあ」 ポソ

エリカ「あんたね、聞こえたわよ」

小梅「え、あ、ごめんなさい……」

まほ「いや、いいさ」

まほ「……実際、二位になれただけ、胸を張ってもいい」

まほ「それだけ、周りのレベルも上がってきている」

エリカ「……」

まほ「だが……それでも……」

まほ「私達は、王者であることを、求められていたんだよ」

938: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/07(木) 05:49:16.24 ID:2icaoLAOo

エリカ「……」

エリカ「隊長、その……」

エリカ「本当にすみませんでした……」

エリカ「誰より黒森峰が強くなくちゃいけないって思っていたはずなのに、ちっともお役に立てず……」

まほ「そんなことはない……」

まほ「が、もし、本当にそう思っているなら」

まほ「……来年は、こうならないように頑張ってくれ」

まほ「来年はみほ達のチームも健在なようだから、難しいだろうが」

エリカ「いえ……」

エリカ「絶対に……来年こそはっ……!」

939: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/07(木) 06:04:54.55 ID:2icaoLAOo

キキーッ

ボフン

エリカ「……」

小梅「わあ、見事に顔面から……」

直下「エアバッグってすごい……」

逸見車装填手「折角格好つけて決意表明してたのに……」

小梅「でも、まあ、締まりきらないのが、また逸見さんらしいというか……」

エリカ「どーいうことよ……ってて……」

小梅「なんかこう、丸に囲まれた画面で『もう戦車道なんて懲り懲りよ~』なんて言って、そのまま円が小さくなって画面が真っ黒になって終わり、みたいな」

エリカ「あんたねえ」

直下「ところでどうしたんですか、急に止まったりして」

まほ「いや……お母様から連絡があって……」

まほ「弁明あいさつ回りしなきゃいけないところが多すぎて無理だから一旦一緒に戻るそうだ」

エリカ「あまり知りたくなかった裏の事情ですね……」

小梅「大丈夫? やめたくなっちゃったりしてない? もう戦車道なんて懲り懲りだよ~みたいな」

エリカ「ならないわよ!」

エリカ「っていうか、そんな意味不明なフレーズにハマるのやめなさいよ……ったく……」

小梅「ダメかな」

エリカ「ダメよ」

小梅「しょうがないかあ……」

小梅「じゃあ右隣に置いておいて」

直下「右隣の私がそれを拾い上げて再利用すると」

エリカ「こういうときだけ謎の連携プレーするのやめなさい」

940: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/07(木) 06:11:19.68 ID:2icaoLAOo

直下「怒られたから更に右隣に置いて、と」

逸見車装填手「わあ、私の番だ」

逸見車装填手「さっさと次に回しちゃおう」

エリカ「何でちょっと爆弾ゲームみたいになってるのよ!」

まほ「ははは……」

エリカ「た、隊長……?」

まほ「まあ……たまにはいいんじゃないか?」

まほ「毎日このノリをされると正直困るが……」

まほ「たまにはいいだろう」

まほ「……私は、そういうノリを呼び寄せる隊長じゃなかったし、その結果がコレだからな」

まほ「違うやり方だって、色々試していけばいい」

エリカ「……」

エリカ(そりゃあ、隊長が隊長になってから、2年連続でアレだったけど……)

エリカ(それでも、私が目指したい背中は――)

941: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/07(木) 06:15:10.39 ID:2icaoLAOo

小梅「こうして、逸見さんの戦いは幕を閉じるのでした――完」

エリカ「何勝手に終わらせてンのよ」

小梅「えー、でもこう、エンディングって感じの空気だったし」

エリカ「……全国が終わったって、終わりじゃないのよ」

エリカ「あくまでこれは小休止」

エリカ「学校に戻ったら、隊長に残り少ない指導をみっちりつけてもらわなくちゃいけないんだからね」

小梅「はーい」

小梅「……」

小梅「今の笑顔で、こう、映画とかならイントロが流れて主題歌ドーンみたいなやつだよね」

エリカ「知らないわよそんなの」

942: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/07(木) 06:22:46.00 ID:2icaoLAOo

ブロロロロロ

キキーーーーッ

小梅「あれ、あのジープって……」

アンチョビ「お、おおっ、お前たち!」

やっとー目をー覚まーしたかいー

エリカ「あんたら……屋台もせずに今まで何を……」

アンチョビ「えーっと、その……」 ゴニョゴニョ

エリカ「……」

エリカ「は?」

エリカ「宴会したせいで寝過ごしたあ!?」

こーれーでも出来るだけ飛ばしてきたんだよおー

小梅「過去の友好相手との遭遇、なんていうかエンディングって感じがしてしんみりするよねえ」

エリカ「この馬鹿と馬鹿が集まった結果生まれてしまった馬鹿のお子様ランチみたいな連中を前にどうすればしんみりできるのよアンタは」

943: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/07(木) 06:28:50.71 ID:2icaoLAOo

小梅「……まあ、でもあれだよ」

小梅「しんみりするかとか、エンディングとかそういうのはともかく……」

小梅「実際全国大会は終わっちゃったんだし、何かコメントとかってないの?」

エリカ「無いわ」 キッパリ

エリカ「……今は何を言おうとしても恨み節か後悔だけだろうし」

小梅「んー……」

小梅「せめて、こう、『這い上がろう。負けたことがあるということが、いつか大きな財産になる』みたいなさ」

エリカ「……そんなわけないでしょ」

エリカ「そういうセリフは所詮は詭弁」

エリカ「負けなんて、財産になるわけないでしょ」

エリカ「そんなのは、負ける余地がある弱者だからこそ、弱点が分かって成長できてよかったねってだけの話」

エリカ「私達レベルにもなると、負けなんて負債でしかないわ」

小梅「……」

小梅「隊長はともかく、逸見さんは改善の余地がいっぱいあるんじゃ」

エリカ「そこの馬鹿が沸かしてるお湯にパスタの代わりにぶちこむわよ」

944: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/07(木) 06:32:38.00 ID:2icaoLAOo

小梅「でも実際、去年の負けから、逸見さん、だいぶ変わったかなあって思うし……」

エリカ「……」

エリカ「ま、まあ、あのときは、確かにまだ未熟だったから……」

小梅「あ、そこは認めるんだ」

小梅「実際あのときの影響か、ここ数ヶ月の逸見さん、すごく変わったなあって思うしさ」

小梅「今回の負けでも、だいぶ柔らかくなったと思うけど……」

エリカ「……ないない」

エリカ「別に負けたら柔らかくなるなんてことないわよ」

小梅「そうかなあ」

小梅「意識無い時に揉みしだいてみた逸見さんの    ばりに柔らかくなってると思ったけど……」

エリカ「今固くなったわ主に握った拳が」

945: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/07(木) 06:40:36.44 ID:2icaoLAOo

小梅「うーん、柔らかくはなったと思うんだけどなあ」

アンチョビ「ああ、それは私も思ったな」

エリカ「はあ?」

エリカ「……ったく、変なとこで会話に入ってこないでさっさとパスタ茹でなさいよ」

エリカ「大洗激励に使う予定だった麺とかいうフザケたシロモノだけど、お腹は減ってきてるし食べてあげるわ」

アンチョビ「これでもうちょっと素直になってくれたらなー」

小梅「でもそうなると逸見さんの魅力が……」

直下「確かに半減だよね」

エリカ「全員パスタの代わりにゆでダコにするわよ」

アンチョビ「しかしまあ、敗北を知ったからじゃないなら、何でそこまで丸くなれたんだ?」

アンチョビ「うちは結構気性荒い子もいるし、ドぎつい跳ねっ返りも多いからさ」

アンチョビ「自分のためにも、来年を任すペパロニやカルパッチョのためにも、そういう情報は聞いておきたいなあって」

エリカ「恥も外聞もなく情報ねだってくるなんて……」

アンチョビ「まあまあ、こっちは明日さえ知らない身」

アンチョビ「腐っても9連覇の偉業をなしとげた超名門の絶対王者」

アンチョビ「まさか相手を強化したくないから、なんてみみっちいことは言わないだろー?」

アンチョビ「頼む、このとーり!」

アンチョビ「ペパロニとカルパッチョじゃお前みたいな跳ねっ返りを扱えなさそうだし、割りとマジで聞いておきたいんだって!」

小梅「こんなに頭下げてるし、教えてあげた方がいいんじゃないかな。全裸」

エリカ「はいはい分か――らないわよ! 服は着るわ!!」

小梅「残念……」

エリカ「ったく……ドア・イン・ザ・フェイスにしてももうちょっと上手くやりなさいよ……」

946: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/07(木) 06:43:40.57 ID:2icaoLAOo

まほ「……良ければ教えてやってくれ」

まほ「安斎には世話になっているし、ライバルは強い方がいいだろう、エリカも」

エリカ「わかりました」

エリカ「っていっても、丸くなんてなったつもりないですし、どうして丸くなったのかみたいに言われても――」

エリカ「……」

エリカ「あ」

アンチョビ「お、どうした? 何か心当りでもあったのか?」

エリカ「……」

エリカ「まあ、そうですね」

アンチョビ「へえ、それで、それで?」

エリカ「……」

エリカ「自分自身が戦車になる」

エリカ「そうすれば、丸くもなるし、色々なことが分かるようになりますよ」

947: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/07(木) 06:46:04.47 ID:2icaoLAOo

アンチョビ「……」 ポカーン

小梅「……」 ポカーン

まほ「自分自身が……? それは何かの比喩か……?」 キョトン

エリカ「……」

エリカ「ふふ……」

エリカ「冗談ですよ」

アンチョビ「な、なんだよー! 一瞬マジかと思っただろ!」

小梅「目がマジっぽかったですもん」

エリカ「狙いを悟らせない、なんてのは戦車戦の基本だもの」

キャイキャイキャイ

まほ「……」

まほ(自覚はないのかもしれないけど……やっぱり丸くなったよ、エリカ……)

まほ(そんな風に笑うようになってくれて、とてもうれしい)

956: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 03:52:29.13 ID:8CcPxjX+o

エリカ(あれから時は流れて……)

エリカ(練習の中心は、徐々に徐々に1・2年生へと移ってきていた……)

エリカ(残された時間を使って、3年性が培ったものを後輩達に伝えるためかのように……)

エリカ(私はとしては、まだまだ第一線で活躍する隊長の傍にいたかったのだけれど)

エリカ(隊長が後輩の育成より勝利を優先する試合など、もう早々訪れないのは分かっていた)

エリカ(……あれから入れ替わりも起こっていない)

エリカ(今はただ、残り少ない時間を、隊長に自分を魅せるのに使うだけだ)

エリカ(少しでも、後継者に相応しい姿を――)

小梅「それでは続きまして逸見さんによる大爆笑一発ギャグです」

エリカ「……」

エリカ(隊長の道は間違っていないという証明を……)

直下「上下関係の厳しさはすぐには変えられない……しかし宴会によって距離を詰めることはできる……」

直下「なるほどこれが大洗から学んだ、新たな黒森峰の形……!」

小梅「ほら逸見さん、最上級生様のグラスが空だよ!」

小梅「いつもみたいにアツアツの鉄板ジョークを言いながらお酌して!」

エリカ「……」

直下「ああもう、笑顔でやらなきゃ! これだって一応カリキュラムの一つなんだし、ちゃんとしないと成績に響くよ!」

まほ「……」

まほ(なんだろう、思っていたのと全然違う光景が繰り広げられている気がする……)

957: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 04:10:00.49 ID:8CcPxjX+o

まほ「あー……」

まほ「今日は久々にアンツィオの面々が来てくれた」

アンチョビ「やあやあやあ、ノリと勢いとパスタの国からドゥーチェ参上だあ!」

ペパロニ「黒森峰のポテトやウインナーを使ったピザに加えて、今回は新作ピッツァもあるっすよ!」

カルパッチョ「お安くなってるし、お昼ごはんに是非♪」

エリカ「第一声でいきなり商魂逞しいわね」

まほ「まあ、そう言うな」

まほ「今回はこちらが無理して来てもらっているんだ」

まほ「少しくらい貢献してやろう」

エリカ「はあ……」

エリカ「まあ確かに、そろそろ紅白戦もマンネリしてきてますし、決勝じゃ小兵相手にしてやられましたから、交通費払ってこいつら呼ぶのは分かるんですけど……」

エリカ(……勝てるようになるまで、大洗とはやりたくないし)

ペパロニ「いやーマジ助かるっすわ」

カルパッチョ「どんな戦車より優先して屋台の整備をしてきてよかったですね」

アンチョビ「だな! 勿論戦車も手入れしなくちゃだめだけどな!」

エリカ「……こいつらかあ……」 ボソ

まほ「エリカ」

エリカ「……すみません」

エリカ「でも、その、継続高校とかの方がよかったのではないかと」

まほ「……そう言うな」

まほ「色々と事情があるんだ」

まほ(……アンツィオの楽しそうな雰囲気のコツとかこっそり聞きたいし……)

まほ(継続はエリカのアレがあるせいで何か招待しづらいしな……)

958: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 04:15:58.31 ID:8CcPxjX+o

アンチョビ「まあまあ、そう冷たくしないでくれ」

アンチョビ「うちも財政難でな……」

アンチョビ「引退前に、せめてP40の修理費くらい稼いでおいてやりたいんだ」

エリカ「は?」

エリカ「……修理費も確保してないのに大会に導入したと?」

アンチョビ「ああ、いや、一応最低限の修理費は勿論速攻確保したんだ」

ペパロニ「なんだかんだで一番の戦力っすもんね」

アンチョビ「でもなー、最低限直した所で、ダージリンに壊されちゃって……」

エリカ「?」

アンチョビ「いや、何か乗ってみたいっていうから乗せてやったら、こう、ボカーンって」 シクシク

エリカ「???」

959: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 04:28:20.12 ID:8CcPxjX+o

まほ「……それなら、聖グロリアーナに賠償請求でも出来るんじゃないのか?」

アンチョビ「そ、それが……」

ペパロニ「全員揃って、なーんか言いくるめられちゃったんすよねー」

カルパッチョ「確かに非はこちらにあるかも、って思わされちゃったんですよね」

エリカ「本ッ当に何やってンのよアンタ達は……」

エリカ「大体P40って秘密兵器みたいなもんだったんじゃないわけ?」

エリカ「どうしてソレにホイホイ他校の隊長を乗せちゃったのよ」

アンチョビ「そ、それが私にもわからないんだ……ダージリンのやつにそそのかされて……」

エリカ「ったく……あんな紅茶馬鹿を信用するからそんなことになるのよ」

アンチョビ「うう……」

アンチョビ「でもほら、疑うよりは、信用する方がいいかなーって」

エリカ「はあ?」

アンチョビ「ほら、戦車道もだけどさ、何事も一人でやれることって限界があるだろ?」

アンチョビ「だけど、誰かと手を取り合えば、一人じゃ出来ないことだって出来る」

アンチョビ「だから、誰かのお願いとかは、突っぱねるより、出来るだけ受け入れた方が、後々自分のためにもなるかなって」

エリカ「……ふん」

エリカ(私は……誰かと馴れ合った力なんかに頼らず、自分だけの力で……)

960: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 04:41:33.10 ID:8CcPxjX+o

エリカ(……そう、私は自分の力をこれからも伸ばしていく)

エリカ(もう以前ほどのわだかまりはないけど、それでもあの子に負けっぱなしじゃいられないから)

エリカ(あの子が甘っちょろい馴れ合いのチームで勝とうとするなら、私は西住流の築き上げた厳しく統率されたチームで勝ってみせる)

小梅「どうしたの逸見さん、眉間に皺をよせて」

直下「いつものことじゃない?」

小梅「確かにそうだけど」

直下「どうせまた何か一人であれこれ考えてるんだよ」

エリカ(……アホの赤星達のおかげで、天下の黒森峰とて異常に戦車道に賭けているのは一部だけだと分かった)

エリカ(それでも厳しくしていかないと、捲土重来は夢のまた夢)

エリカ(下級生が楽しめているかはともかく、厳しい訓練のガス抜きで宴会を導入したのは隊長のファインプレー)

エリカ(これからもガス抜きはさせつつ、ビシビシ鍛え上げていくッ)

エリカ(次こそは、絶対に優勝旗を取り戻すッ)

エリカ(あの子のせいで暗黒期になるだなんて、絶対に御免だわッ)

961: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 04:53:49.66 ID:8CcPxjX+o

エリカ(あの子が変わったように、私も変わった)

エリカ(……変われなかったところだって沢山あるけど)

エリカ(あの子とは、とうとうしっかり仲直りもできなかったけど)

エリカ(でも、今は満足している)

エリカ(あの日Ⅳ号戦車と入れ替わったことも、今ではいい思い出)

エリカ(きっともう、二度とあんなことはないけど)

エリカ(あの経験を活かして、絶対に来年こそはあの子を追い抜いてみせる――!!)

962: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 04:59:16.82 ID:8CcPxjX+o
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

963: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 05:13:23.92 ID:8CcPxjX+o

エリカ「ん……」

エリカ「……」

エリカ「あれ……?」

エリカ「目をこすろうとしても、手が動かない……」

エリカ「……」

エリカ「金縛り……?」

エリカ「……」

エリカ「顔すら動かない……」

エリカ「……」

エリカ「……」

エリカ「待って……何この逆に慣れ親しんじゃったかのような感覚……」

エリカ「ま、まさか……」

エリカ「ひっ、“あのやり方”で視界が動く……」

エリカ「こ、これって……これってぇ……」

964: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 05:14:26.96 ID:8CcPxjX+o
 










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  (大)_、,_、_、,_、_、,_、,_、,_ (><)==),,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,/))==)
  ヽ'_i_,),i_,),i_,)i_,),i_,),i_,),i_,),i_,)>ノ==ノ ̄ ̄ ̄ ̄'ノ==ノ
    ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´










 

965: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 05:30:53.97 ID:8CcPxjX+o

エリカ「また入れ替わってる――――!?」 ズガビーン

エリカ「ど、どうして……」

エリカ「あれが精神的なものに起因していて、私の願いに呼応したものだとしたら……」

エリカ「もう、前ので終わったはずなのに……」

エリカ「……」

エリカ「と、とにかく、状況を整理しないと……」

エリカ「ええっと、またⅣ号よね私」

エリカ「視線移動の方法とか完全にあの時と同じだし……」

エリカ「……」

エリカ「でも……大洗の車庫、こんな見た目だったかしら……?」

エリカ「……」

エリカ「ああ、最近何もなかったから”私の身体“に対策施してないっ……!」

エリカ「いやああああああお願い私の身体、変なことしてないでえ~~~~!!」

966: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 05:44:48.97 ID:8CcPxjX+o

エリカ「……」

エリカ「……」

エリカ「……」

エリカ「うう……」

エリカ「誰も来ないせいで嫌な予想ばかり膨らんでいくわね……」

エリカ「何やってんのよ大洗の連中は! 戦車の様子を見もしないで!」

エリカ「優勝したからって気を抜きすぎでしょ……」 ブツブツ

エリカ「……」

エリカ「それにしても、何だか揺れるわね……」

エリカ「……」

ガッコン

エリカ「ひゃっ」

エリカ「な、なに!?」

エリカ「一体何が――」

バシュウッ

エリカ「何か開――」

エリカ「壁が開いた……」

エリカ「光のおかげであたりが見渡しやすくなったけど、もしかして、これって……」

ケイ「よっと……」

ケイ「うん、どうやら全車輌無事に運べたようね」

エリカ「サンダースのスーパーギャラクシーの中……!?」

967: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/09/27(水) 06:02:10.18 ID:8CcPxjX+o

ナオミ「大洗の車輌、どうします?」

ケイ「うーん、サンダースの車庫には入れない方がいいわよねえ」

アリサ「まあ、どこから情報が漏れるかわかりませんしね」

ケイ「オッドボール三等軍曹の件もあったものね」

ナオミ「じゃあこのままスーパーギャラクシーに格納しておく、ってことにしておきますか」

ケイ「そうね」

ケイ「念のため、この機体は故障中ってことにして人払いもしておこうかしら」

アリサ「まったく……こんなことバレたら大事ですよ」

ナオミ「そう言いながらも協力するんだ?」 クク

アリサ「……あのまま放っておくのも気分が悪かっただけよ」

ナオミ「まあ、グレーゾーンの行いは得意だもんね」

アリサ「もうっ」

ケイ「HAHA……まあでも、今回は100%政府の方が不義理だし、力も貸したくなるわよ」

ケイ「……あそこまで頑張った大洗が、まさか改めて廃校だなんて」

エリカ「…………」

エリカ「……………………は?」

973: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 02:32:02.61 ID:YB1tLH+jo

エリカ「廃校……?」

エリカ「大洗が……!?」

エリカ「ちょっと、どういうことなのよ!」

エリカ「あの子達はそれを撤回させるために戦ってたんじゃないの!?」

エリカ「っていうか、優勝校が廃校ってなによ!」

エリカ「勝ち逃げされちゃうじゃない!」

エリカ「あ、こら行くんじゃないわよ! 待って!」

エリカ「ああ~~聞こえてないんだ!」

エリカ「ちょっと待ちなさ、こら!」

バタン

エリカ「……」

エリカ「くっ……」

974: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 02:49:21.02 ID:YB1tLH+jo

エリカ「……」

エリカ「……」

エリカ「廃校になって、私――というかⅣ号がスーパーギャラクシーに居る……」

エリカ「……戦車の没収を避けるため?」

エリカ「……」

エリカ「あーもう、考えても埒が明かないわ」

エリカ「明日には元の身体に戻れるだろうし、少しそっちで調べてみようかしら……」

エリカ「まあ、その前に今日の私が何かやらかしてないかのチェックが最優先だけど……」

エリカ「……」

エリカ「それにしても……」

エリカ「この感じだと様子見に来てもくれなさそうだし、やることないのが難点ね……」

エリカ「……」

エリカ「72時間何もない所に閉じ込めると発狂するって聞いたけど、あと何時間あるのかしらこれ……」

975: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 03:13:16.96 ID:YB1tLH+jo

アンチョビ「はいよ、パスタお待ち」

まほ「すまない、ありがとう」

アンチョビ「いやいや、こっちこそ金を落としてくれることに有難うだ」

まほ「学食も悪くはないのだが、どうしても食べるものが定番化してしまうからな……」

アンチョビ「あー、好きなのばかり選んじゃったりするもんなー」

まほ「一応、バランスも考えて、様々なカレーを日替わりで頼んでいるのだが……」

アンチョビ「え、毎日カレー? まじで?」

まほ「お前たちだって毎日パスタなんだし似たようなものだろ?」

アンチョビ「いやいや、毎日ちゃんといろんなもの食べてるし」

アンチョビ「それに売り物こそイタリアンオンリーだけど、自炊じゃ色々作ってるからな?」

まほ「そうだったのか……」

アンチョビ「お前も戦車だけじゃなくて、料理とか色々趣味を持った方がいいぞー?」

アンチョビ「まあ名門跡取りだから忙しいのかもしれないけどさ」

アンチョビ「一つしか熱中しているものがないと、そこに行き詰まった時にしんどいぞー?」

まほ「……オペラなんかは好きだが……」

アンチョビ「おお、いいんじゃないかー?」

アンチョビ「まあ私はオペラはさっぱりだけどな」

アンチョビ「戦車道で行き詰まる度に息抜きで楽しめるものがあるっていいよなー」

まほ「私は行き詰まったことなどないが」

アンチョビ「うえー、マジかー」

バタン

小梅「大変です隊長、逸見さんが久々に全裸でブリッジ進行した挙句アンツィオの戦車とレースを始めてます!!」

まほ「すまん前言を撤回する進行形で色々行き詰ったかもしれない」

976: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 03:34:00.81 ID:YB1tLH+jo

エリカ「……」

エリカ「ふああ……」

エリカ「いつの間にか寝てたみたいね……」

エリカ「戦車になってると横になるってことができないからきっついわあ……」

エリカ「……」

エリカ「……」

エリカ「え、ちょ、待って……」

エリカ「身体が動かない……」

エリカ「私――元の身体に戻ってない……!?」

977: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 03:42:23.80 ID:YB1tLH+jo

エリカ「日付が変わっていない……?」

エリカ「いやそんなはずはない」

エリカ「身動きが取れなくて暇すぎて、ひたすら頭の中で音楽を流したりしてたけど……」

エリカ「寝落ちてなお日付が変わってないなんてことはないはず……」

エリカ「それどころかこの感覚、寝すぎた時のソレと同じだわ」

エリカ「一体どうなってるのかしら……」

エリカ「……」

エリカ「クソッ、外はどうなってるのよ」

エリカ「ここを開けて外を見せなさい外を!!」

978: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 03:44:46.65 ID:YB1tLH+jo

ガコン

エリカ「!」

エリカ「開いた……って……」

エリカ「ちょ、ま」

エリカ「誰も入ってこないどころか、この景色って……」

ビュオオオオオオオオオオ

エリカ「空!?」

エリカ「ちょ、待って、まさかスーパーギャラクシー飛行中なの!?」

エリカ「なのになんで扉を開け――」

ガコン

エリカ「え、ちょ、ま、ウソでしょ!?」

エリカ「ここから私達を落とす気!?」

エリカ「ま、待ちなさい馬鹿!」

エリカ「こんな高さから人間が落ちて助かるわけが……!」

エリカ「い、いや、今は戦車かもしれないけど!」

エリカ「無理無理、さすがにこれは無理だってば!」

エリカ「やめ――」

エリカ「ひぃえあああああああああああああああああああああ!!」

979: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 04:12:42.87 ID:YB1tLH+jo

エリカ「ひ、ひぬ……」 ガクガク

エリカ「ひぬかとほもっは……」 ガクガク

エリカ(な、なによあの高さから放り捨てるって……)

エリカ(そ、そりゃあれからグッと地面に近づいたとはいえ……)

エリカ(本当にそのままポーンと放り出すなんて!)

エリカ「せ、戦車じゃなきゃ死んでたわよほんと……」

エリカ「うう……あんなの人間の状態でやってたら間違いなく漏らしてたわ……」

エリカ「っていうか今も足がじんじんしてるし……」

ケイ「ちゃんと届けたわよ!」

エリカ「何がちゃんとよ!」

エリカ「ちゃんとって言うなら丁寧に下ろしなさいよね!」 ムッキー



980: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 04:16:19.23 ID:YB1tLH+jo

みほ「……!」

エリカ「……チッ」

エリカ「Ⅳ号に向けてるって分かってても、どうもこのキラキラした目には慣れないわね……」

エリカ「……」

エリカ(それにしてもこの状況……)

エリカ(本当に廃校になったみたいね……)

エリカ「……」

エリカ「……」

エリカ「じゃあ、何で私はⅣ号と入れ替わったのかしら……」

981: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 04:30:52.02 ID:YB1tLH+jo

エリカ「……」

エリカ「てっきり、この入れ替わりにも、意味があると思ってたのだけど……」

エリカ「……あの時の願い事が、結果的に叶った形になったし……」

エリカ「蓋を開けてみたら、私が戦車道をするうえで、必要な入れ替わりだったようにも思える……」

エリカ「……」

エリカ「いやまあ、失ったものを考えると、なくてよかった入れ替わりなのに違いはないけど……」

エリカ「でも……」

エリカ「結局あれ以降何もなかったことも含めて、そういうものだと思ってた……」

エリカ「呪いの類にしろ、精神疾患にしろ……」

エリカ「私の内面に、入れ替わりの原因やきっかけがあるのだとばかり……」

エリカ「……」

エリカ「確かに、あの決勝戦で吹っ切れたものもあれば、新たな道を探して迷ったりもしてるけど……」

エリカ「でも、廃校になった大洗にきて、何が得られるというのかしら」

エリカ「……あの子との確執に関することなら、それこそスーパーギャラクシーに詰め込まれた後でなく、詰め込まれる前よね」

エリカ「どうせ今生の別れみたいな顔で一夜を共にしたりしたんだろうし」

エリカ「……謎ね……」

982: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 04:48:40.32 ID:YB1tLH+jo

アンチョビ「……なあ、大丈夫か?」

まほ「……ああ……」

ペパロニ「見るからにゲッソリっすねえ」

カルパッチョ「まるで絶食してるみたいね」

アンチョビ「いやまあ、信頼してた副官がアレなことになってたらそりゃそうなるだろうけどさー」

ペパロニ「いやー、頼りない副官だと大変っすね」

アンチョビ「ちなみにお前もなかなかになかなかで来年を思うと私も胃はキリキリ痛み続けてるからなー?」

ペパロニ「へー、消化に優しいもの作りましょうか?」

アンチョビ「おまえなー」

まほ「……」

まほ(完治したと思ったのに、また再発とはな……)

まほ(ひとまず何とか収めたし、アンツィオの連中も丁重にもてなしていればエリカのことを忘れてくれるだろ……)

まほ(一日でひとまず治まってくれることだけが救いだな……)

バーン

小梅「た、大変です隊長!」

まほ「どうした赤星」

小梅「い、逸見さんが……」

まほ「どうした、昨日の痴態を苦に手首でも切ったか?」

小梅「そ、それが……」

小梅「壊れたコントローラーでやるゴールデンアイの如く、ひたすら壁に向かってゴツンゴツンと前進を続けていて……」

まほ「」

小梅「直前に  のイグニッションに触れたせいだとは思うんですけど……」

まほ「」

アンチョビ「ど、どうした西住、世界の終わりみたいな顔をして……」

ペパロニ「ホラゲナイトって感じっすね」

小梅「……考えにくいんですけど……」

小梅「多分、今日も“例のアレ”です……」

まほ「」

983: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 04:57:11.00 ID:YB1tLH+jo

エリカ「……」

エリカ「やっぱり、今日も元に戻ってない……」

エリカ「周囲の明るさから言っても、日付は絶対変わってるのに……」

エリカ「これにも何か意味が……?」

エリカ「いや、それとも、意味があると思ってたのが間違いだった……?」

エリカ「今までのはただの予兆で、これが本番……?」

エリカ「……」

エリカ「ダメね……考えてもさっぱり答えが出ないわ……」

沙織「まさかコンビニに戦車で行くことになるなんて……」

エリカ「私だってまさかコンビニに戦車で行くことになるなんて思わなかったわよ」

エリカ「……“戦車で”のニュアンスが大きく違うけども」 ハァ

984: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 05:00:17.77 ID:YB1tLH+jo

エリカ「……」

エリカ「それにしても、本当に廃校で、この子達もそれを受け入れたなんてね……」

エリカ「……」

エリカ「どこに転校してくるのかしら」

エリカ「ひょっとして……うち……?」

エリカ「転校手続きには保護者の印鑑がいるし、黒森峰以外の転校で判を押すわけが……」

華「……みほさんは?」

沙織「一緒に行こうか?」

エリカ「はあ? 小学生じゃないんだから……」

エリカ「……」

エリカ「アンタの親友の座、気付けばすっかりこのアホどもがしっくりくるようになったわね……」

986: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 05:26:06.24 ID:YB1tLH+jo

優花里「西住流家元も見てみたいですし……」

エリカ「はァ~~???」

エリカ「何言ってンのよアンタは!」

エリカ「あの人は黒森峰の指導や西住流の指導で多忙なのよ!?」

エリカ「娘の友人ってだけでアンタみたいな小汚いマルチーズみたいな奴に会うわけないでしょ!」

みほ「……ううん。大丈夫。一人で帰れる」

エリカ「よーしよく言ったわ!」

優花里「そうですか……」

エリカ「そうよそうよ、ほらもっと言ってやんなさい!」

みほ「また今度遊びに来てね」

優花里「……はいっ!」 パァァァ

エリカ「はぁぁぁぁ!?」

エリカ「何甘やかしてンのよ!」

エリカ「大体アンタ、まだ西住家に許されきったわけじゃないでしょうが!」

987: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 05:28:11.10 ID:YB1tLH+jo

華「私は明日、家に帰ります」

沙織「私もそうしようかなあ」

みほ「私も……」

エリカ「!?」

エリカ「ちょ、待ちなさい!」

エリカ「アンタ明日帰ってくるわけ!?」

エリカ「だ、ダメよそんなの!」

エリカ「それってつまり、その、暴走してる私の身体に会っちゃうってことでしょ!?」

エリカ「ダメダメ絶対、そんなのダメ!!!」

エリカ「ちょっとポンコツ戦車!」

エリカ「いい加減私の身体に戻しなさいよ!」

988: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 05:36:11.74 ID:YB1tLH+jo

みほ「!」

みほ「止まって下さいっ!」

キキーーーーッ

エリカ「どわっぷ!」

エリカ「な、何よいきなりっ!」

エリカ「急停止されるとこっちは結構苦しいんだからね!?」

みほ「そのままバックして!」

キュラキュラキュラ

優花里「どうしたんですか……?」

みほ「わあ~!」

エリカ「げっ……この看板に書かれたボコって……確か……」

989: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 05:38:45.60 ID:YB1tLH+jo

みほ「知らなかった!」

みほ「こんなとこがあるなんて!!!」

沙織「今までで一番テンション上がってるよ……」

エリカ「はん」

エリカ「ファンとか言ってる割に情報収集がおろそかなのね」

エリカ「私はネットサーフィンのついでに調べたことがあるから知ってたけど?」 ハン

エリカ「……あ、べ、別にアンタといつか行く気だったとかそういうんじゃ――」

ワイワイガヤガヤ

エリカ「……」 ポツーン

エリカ「……そりゃそうよね……」

エリカ「私は戦車で、声も聞こえてないんだから、そりゃ私は駐車場で留守番よね……」

エリカ「……」

エリカ「ふん、別にいいわよ、あんな子供だましみたいなキャラクターのミュージアムなんてハナっから興味ないし」

990: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 05:45:26.12 ID:YB1tLH+jo

エリカ「ほんっと、待ってる間は暇ねえ……」

エリカ「……」

エリカ「それにしても、あの子はマジで全然変わってないわね……」 ハァ

エリカ「……」

エリカ「やっぱり、こういう交流が目的なら、スーパーギャラクシーに幽閉されてるタイミングで入れ替わる理由がないのよねえ」

エリカ「ってことは、本当に意味も法則性もなく入れ替わってるのかしら」

エリカ「……」

エリカ「……入れ替わり……」

エリカ「向こうの私は  のイグニッションで動いている……」

エリカ「つまり、言うならば、Ⅳ号戦車の魂は、私の魂と入れ替わるようにして私の身体に入っている……」

エリカ「……」

エリカ「もし……」

エリカ「Ⅳ号戦車にも魂みたいなものがあるといたら……」

エリカ「いつか赤星が言っていたように、物にも魂が宿るとしたら……」

エリカ「廃校が決まって、スーパーギャラクシー収納前にあの子達と何かの交流をして……」

エリカ「それで、あの子達や大洗を救おうと考えるかもしれない……」

エリカ「……」

エリカ「考えづらいけど……元々考えづらい意味不明な事態だものね……」

エリカ「ありえるのかもしれない……」

エリカ「これまでが、私の方の我儘でホイホイ入れ替わっていたのだとしたら……」

エリカ「今回のコレは、Ⅳ号戦車の方の意思――」

991: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/09(月) 05:45:53.23 ID:YB1tLH+jo






エリカ「Ⅳ号戦車が私に、何かをさせようとしている――――?」






 

引用元: エリカ「入れ替わってる……!?」 みほ「貴女の名は」