1: 2019/03/25(月) 20:08:38.631 ID:GlTpwgJF0.net
男「朝食にはトーストを一枚、トーストの上には薄いハムが乗っている」

男「チーズの時もあるが、どちらかというと俺はハムのほうが好きだ」

男「それを牛乳でもってして慌ただしく胃袋に流し込む」

男「そうしたら自分でアイロンをかけたワイシャツを着て、社会人の証であるネクタイを締める」

男「ジャケットを羽織れば、もうどこに出しても恥ずかしくないサラリーマンの出来上がり」

2: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/03/25(月) 20:09:50.711 ID:GlTpwgJF0.net
男「そうして10分で作り上げた真っ当な大人を身にまとい、汗水流して時には涙をこらえ仕事に励む」

男「仕事が終われば、まっすぐ家に帰る」

男「そんなローテーションを毎日だ。毎日毎日毎日毎日」

男「そうしていると、俺は社会の歯車なんだなって……。俺の人生って一体なんなんだろうって思えてくるんだ」

男「なあ、君はどう思う?」

3: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/03/25(月) 20:10:09.441 ID:GlTpwgJF0.net
女「ダウト」

男「……?」

女「『仕事が終わればまっすぐ帰る……』?まっすぐ帰ってないじゃん。私と飲みに出てるじゃん」

男「人は誰でも幸せ探す旅人のようなものだからな……幸せそれすなわち仕事終わりの生中」

女「劇場版かよ」

4: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/03/25(月) 20:10:33.903 ID:GlTpwgJF0.net
男「うむ」

女「それに自分を社会の歯車だなんて、ちょっと思い上がりもいいところじゃないかな」

男「では僕は一体……」

女「月並みな言葉だけど、君や私の代わりはいくらでもいるんだ。君がいなくなったところで社会はまわるのさ」

女「そうだな、せいぜいが歯車を構成する凹凸の一つぐらいじゃないの?」

6: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/03/25(月) 20:10:56.757 ID:GlTpwgJF0.net
男「私が死んでも代わりはいるもの……ってやつだね。僕が死んでも、三人目の僕がその穴を埋めるわけだ」

女「なに?君はクローン培養でもされてるの?」

女「というか既に二人目なのかよ。一人目何処行った」

男「優しさと夢の源へ……」

女「相変わらずアニメ映画が好きなんだな」

7: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/03/25(月) 20:11:12.927 ID:GlTpwgJF0.net
男「実写も好きだよ」

女「さいですか」

男「話をまとめると、僕は社会の歯車ではないと?」

女「そうだね」

男「じゃあ、最期は社会の歯車に巻き込まれて死ぬってことか!」

9: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/03/25(月) 20:11:41.482 ID:GlTpwgJF0.net
女「また随分古い映画をもってきたね」

男「さて、そんなこんなですが終電の時間が差し迫って参りました」

女「ああ、もうそんな時間か~」

男「……」

女「なによ?」

10: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/03/25(月) 20:12:00.374 ID:GlTpwgJF0.net
男「僕を連れてってくれませんか?」

女「なに?口説いてるの?にしては随分、女々しいわね」

男「いえ、貴方が乗る電車に一緒に乗せていってほしいのです」

女「……おいおい、なんだかプロポーズじみた台詞になってきたぞ」

男「違うんだ、僕はただ社会の歯車になりたいだけなんです」

11: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/03/25(月) 20:12:14.351 ID:GlTpwgJF0.net
女「いったいこの会話は何処に行きつくんだ……?」

男「僕を、タダで機械の体にしてくれる星へ連れてってください!」

女「物理的に歯車になる気かよ!?というか、それだと歯車じゃなくてネジになっちまうぞ!」

男「メーテル!」

女「哲郎!」

14: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/03/25(月) 20:14:32.501 ID:GlTpwgJF0.net
男「……」

女「劇場版かよ」



おわり

引用元: 男「僕は社会の歯車だ」 女「おこがましいぞ」