1: 警備員[Lv.12][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:14:46.89 ID:meHaW6Ax
ありあ、冬毬、マルガレーテ三人組の話です。
直接的な繋がりはありませんが、先に以前書いた話も合わせて見ていただけるとテンション感がわかりやすいと思います。

ありあ「本の虫、鮫と海月に絡まれる」 


(昨晩の鯖落ちでスレが落ちたので立て直させてください)

2: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:19:57.61 ID:meHaW6Ax
本の虫、鮫と海月と梅雨事情


マルガレーテ「暑い…ムシムシする…!」

ありあ「すごい剣幕…怒ってる?」

マルガレーテ「当たり前でしょ!? 私からすればこの中で普通に生活できる方が異常よ!」

ありあ「そりゃ私たちだって嫌だけど…文句言って過ごしやすくなるわけでもないしなぁ」

冬毬「オーストリアの夏は湿度も低く比較的過ごしやすいと聞きました。日本の高温多湿な環境はマルガレーテにとって耐え難いものでしょうね」

3: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:21:49.38 ID:meHaW6Ax
マルガレーテ「そもそも梅雨ってなによ、こんなに一気に降らなくてもいいじゃない…」

ありあ「オーストリアにはないんだっけ。むしろここで降ってくれないと困るんだよ、水不足で節水ーとか、天候不順で作物がーとか…」

冬毬「しかし降りすぎても、今度は氾濫や冠水が起きたり水分過多で作物の育ちが悪くなってしまったり…ままなりませんね」

マルガレーテ「なんなのよこの国…」

ありあ「まぁでも、ずーっと雨降ってるのは確かに嫌だよね。バッグに入れた本とか濡れてしわしわになるし…」

冬毬「私たちで言えば練習もできなくなってしまいますから、少なくとも愉快な季節ではありませんね」

マルガレーテ「ホントよ、靴は浸水するし靴下はびちょびちょになるし…!」

ありあ「怒ってる理由絶対それじゃん…」

4: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:24:01.15 ID:meHaW6Ax
ありあ「梅雨といえば、うちではお姉ちゃんの髪が毎年の風物詩になってるんだよね」

冬毬「かのん先輩はくせ毛ですからね、この時期は大変そうです」

ありあ「そうそう、前髪とかすごい方に向いてたりして」

マルガレーテ「たしかあなたのお母さんもくせ毛だったわよね、どうしてそこからこんなストレートが生まれるのかしら」ツンツン

冬毬「私も姉者も似たような髪質ですから、姉妹でここまで違うのは興味深いですね。お父様の影響でしょうか?」ツンツン

ありあ「は、ハネっ毛つんつんしながら言うのやめてよ…ここだけくせあるのちょっと気にしてるんだから…」ピョコピョコ

5: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:25:56.84 ID:meHaW6Ax
冬毬「しかしこうなってくると気になるのは…マルガレーテの寝起き姿ですね」

マルガレーテ「なんで急に私の名前が出てくるのよ…」

ありあ「いやわかるよ冬毬、すっごくわかる。私も見たい」

マルガレーテ「嫌よ、絶対バカにする気でしょあなたたち…というか別に普通だし…」

ありあ「どうだろ、三倍くらいに広がるのかもよ?」

冬毬「この三倍…もはや円ですね」

マルガレーテ「ならないから! ダメ、このままだとあることないこと言われる…!」

冬毬「では証明として、明日の朝に起き抜けの姿の写真を送り合うというのはどうでしょう?」

ありあ「いいね~!」

マルガレーテ「ありあはともかく、なんで冬毬まで乗り気なのよ…」

6: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:27:53.47 ID:meHaW6Ax
~翌朝、ありあの部屋~

 ブーッ ブーッ

[鬼塚 冬毬が写真を送信しました]

ありあ「ん…ん~…? とまり……? んぁ、写真…」

 シトシト シトシト

ありあ「ふわ…そろそろ起きるかぁ…雨も降ってるし、今日はお客さんどんなもんかな?」

7: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:30:15.77 ID:meHaW6Ax
[澁谷ありあが写真を送信しました]

ありあ(うん、やっぱ私のはそんな面白くない…)シャコシャコ

冬毬『普段とあまり変わりませんね 羨ましいです』ピコン

ありあ『冬毬は下ろしてる新鮮さもあるけど、ちょっと広がってるのもいいじゃん トマリクラゲだ』ピコン

冬毬『そんなにいいものでもありませんよ』ピコン

かのん「おはよ~…」

ありあ「おはよお姉ちゃん。珍しいね、こんな時間まで」シャコシャコ

かのん「うん…雨降ってて朝練もできないしね~…」

8: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:32:43.47 ID:meHaW6Ax
マルガレーテ『あなたたち』ピコン

ありあ(お、マルガレーテだ。まぁ実際はそんななんだろうな…)シャコシャコ

マルガレーテ『私が本当のくせ毛を見せてあげる』ピコン

ありあ(え?)シャコシャコ

[Wien Margareteが写真を送信しました]

ありあ「ブフッ!!!」

かのん「うわ汚っ!!」

9: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:34:44.75 ID:meHaW6Ax
冬毬『これはすごいですね…』ピコン

マルガレーテ『日本は湿気大国だと聞いてたけど、くせ毛のレベルは大したことないわね』ピコン

冬毬『マルガレーテ、寝ぼけていませんか?』ピコン

ありあ『マルガレーテのせいで歯磨き粉吹いちゃったじゃん!』ピコン

マルガレーテ『歯磨きしながらスマホ見てる方が悪いでしょ』ピコン

冬毬『この写真、Liella!のグループにシェアします』ピコン

マルガレーテ『絶対ダメ!!』ピコン

マルガレーテ『なんでこのアプリメッセージ消せないのよ!』ピコン

つづく。

10: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:36:43.20 ID:meHaW6Ax
幕間・デジタルタトゥー

かのん「お母さん、今日は店の方手伝うよ」

かのん母「本当? 助かるわ」

 ブーッ ブーッ

冬毬『今朝のマルガレーテだそうです』ピコン

かのん(あれ、冬毬ちゃんだ。珍しい…)

[鬼塚 冬毬が写真を送信しました]

かのん「ぶーッ!!」

かのん母「えっ!? ちょっと大丈夫!?」

マルガレーテ『約束と違うじゃない!!』ピコン

ありあ(行ったんだろうな…あの写真…)

11: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:40:17.15 ID:meHaW6Ax
本の虫、鮫と海月と怖い話


~ありあの部屋~

ありあ「──祠から帰ってきた旅人は半狂乱になっていて、そのまま行方不明になってしまったんだって…」

マルガレーテ「ふーん」

冬毬「全く合理的ではありませんね。行くなと釘を刺された上でその結果ならば自業自得ではないですか」

マルガレーテ「あとなんでほこら?に行っただけでおかしくなるのよ、意味がわからないわ」

ありあ「だから言ったじゃん、そういうお約束みたいなのがあるんだよ…」

冬毬「もはや話の怖さよりも主人公の浅慮へのフラストレーションが勝ります」

マルガレーテ「みんな怖いって言うけど、日本のホラーも大したことないわね」

ありあ「あのねぇ…」

12: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:42:43.94 ID:meHaW6Ax
ありあ「やめやめ! 怖がってくれないんじゃ読み聞かせの甲斐がないよ」パタン

マルガレーテ「ちょっと! もっといい話聞かせなさいよ!」ワーワー

冬毬「そうです、これでは姉者の動画のネタになりません!」ヤンヤヤンヤ

ありあ「だったらもうちょっと話したくなるような態度で聞いてよ!」

冬毬「むぅ……仕方ありませんマルガレーテ、我々もポジションをわきまえましょう」

ありあ「というかなんでわざわざ読み聞かせないといけないのさ、自分で読めばいいじゃん」

マルガレーテ「一人で読んでてもよくわからないのよ、民俗学みたいな話も多いし」

冬毬「動画にする以上声に出すのはマストです」

ありあ「な~んだかなぁ~…もういっちばん怖い話聞かせてやろっと…」ブツブツ

13: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:44:57.84 ID:meHaW6Ax
ありあ「じゃあこれで最後だからね? 『404号室』」

冬毬「シンプルな題ですね」

マルガレーテ「さっきのよりは期待できそうだわ」

ありあ「──舞台はとあるマンションの一室、名前は404号室。そこは本来なんの変哲もない普通の部屋だったんだ」

ありあ「しかし突然404号室は……『見つからなくなってしまった』」

冬毬「見つからなくなった、ですか」

マルガレーテ「なによそれ、なくなったとかじゃないの?」

ありあ「そう、間違いなく存在はするんだよ。確実に。でもその部屋には誰も辿り着けないんだ」

14: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:46:31.89 ID:meHaW6Ax
ありあ「さっきも言ったように、部屋自体に異常はない。しかし異変が起きる前から、そこは住む人に不幸を与える部屋として有名だったんだ」ポローン♪

ありあ「最初に住んでいたのは父と母と娘の三人家族。家族仲は良好で誰から見ても幸せな家族だった」ジャーン♪

ありあ「住み始めは新しい部屋へのワクワク感に心踊らせるものだけど、次第にその心は収まってくる。するとそんな時期に、突然娘が怯え始め、かと思えば虚空に向かって話しかけるようになった。まるでそこになにかがいるみたいに」ジャッジャッ♪

ありあ「異様さを感じ取った両親は、すぐにその部屋から引っ越していった。ほどなくして二人目の入居者は決まり、今度は芸術家の男が部屋の主になる。しかし彼もまた過ごすうちに心を蝕まれたのか、殺人未遂の事件を起こして逮捕されてしまったの」ジャーンジャカジャーン♪

15: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:48:05.69 ID:meHaW6Ax
ありあ「三人目の入居者は若い女性。明るく朗らかで、にわかに立ち始めた404号室の噂も気にしないような人だった。しかし突然…彼女はその部屋で自殺をした。この一件で、部屋は正式に事故物件となってしまったんだ」ジャーンジャッ ジャーンジャッ♪

ありあ「そして404号室最後の住人、四人目の入居者が現れる。その人が404号室に来たのは生活をするためではなくて……」ジャーンジャーカ ジャジャーン♪

マルガレーテ「……」トゥットゥッ♪

冬毬「……」ラーリルレー♪

16: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:50:40.72 ID:meHaW6Ax
 ダッダッダッ ガチャッ!

マルガレーテ「ちょっとかのん先輩! 陽気な歌で邪魔しないで!!」

かのん「だ、だって~!」

17: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:53:39.71 ID:meHaW6Ax
マルガレーテ「はぁ…なんか冷めちゃった。帰るわ」

かのん「ご、ごめんなさい…」

冬毬「む、私もそろそろ門限の時間ですね…お暇させていただきます」

ありあ「えーちょっと、こっからが面白いのに!」

マルガレーテ「今度聞くわよ、まだ核心には触れてないでしょ?」

冬毬「今度は撮影用の機材も持ってきます。新しい話も期待していますよ」

18: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:55:36.16 ID:meHaW6Ax
かのん母「またいらっしゃいね!」

 カランコロン

ありあ「……う~っ、なんかムカつくっていうか、悔しい~っ!! もう怒った、次はあんな口聞けなくなるくらい怖がらせてやる…!」

 コンコン ガチャ

かのん父「────」チョイチョイ

ありあ「ん、どしたのお父さん。なにその本?」

かのん父「────」スッ

ありあ「えっ、これ…! お父さんの本の中で唯一読ませてくれなかった…!」

19: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:57:19.78 ID:meHaW6Ax
~数日後、ありあの部屋~

マルガレーテ「あれだけ文句を言ってたのに、そんなに話したかったの?」

冬毬「今日はカメラも持ってきました。部屋を撮影してもよろしいでしょうか?」

ありあ「いいけど、カメラのことなんて気にしてられなくなるかもよ?」

マルガレーテ「ずいぶん自信ありげね」

ありあ「もちろん。今日の話のタネは澁谷家に伝わる秘蔵の書だからね…」

冬毬「それは…期待ができそうです」

ありあ「じゃあ行くよ。この話は──」

20: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 12:59:26.68 ID:meHaW6Ax
 ~~~

ありあ「──言ったでしょ、この話を聞いたら戻れないって。まぁ、後悔したって遅いけどね」

マルガレーテ/冬毬「……」

 ガタガタガタッ!!

マルガレーテ/冬毬「ひっ!?」ビクッ

ありあ「だ、大丈夫…今のは風で窓が揺れた音だから…」

冬毬「非論理的、非現実的…し、しかし…」プルプル

マルガレーテ「バカありあ、私ひとり暮らしなのよ…!?」プルプル

ありあ「知ってるよ…言っとくけど、本気にさせたのは二人だからね?」

マルガレーテ/冬毬「う…」

21: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:01:33.02 ID:meHaW6Ax
マルガレーテ/冬毬「お、お邪魔しました…」

 カランコロン

マルガレーテ『冬毬、今夜あなたの家に泊まらせてちょうだい…』

冬毬『か、構いません…では私は姉者と一緒に寝ますので、私の部屋は自由に…』

マルガレーテ『わ、私を一人で寝かせる気!?』

ありあ「……ちょっと怖がらせすぎちゃったかな?」

 コンコン

かのん「ありあ、ちょっといい…?」

ありあ「ん、どしたのお姉ちゃん?」

かのん「い、いや~! 今夜さ、たまには姉妹仲良く二人で寝たいな~って! ほら昔はよく一緒に寝てたでしょ? 最近はLiella!の活動もあったりでそこまでしっかり話せてないし、ありあも寂しいかな~って思ってさ~!?」

ありあ「……」

22: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:03:30.24 ID:meHaW6Ax
 ドンドンドン!

かのん「ありあ~っ!! 開けてぇ~っ!!」

ありあ「いーや! 素直に怖いから一緒に寝てって言うまで開けてあげない!」

かのん「わかった、わかったからぁ~っ! 怖くて眠れなくなりそうなのっ、お願いだから一緒に寝てぇ~っ!!」

かのん母「なにかあったのかしら…あなた知ってる?」

かのん父「……」

つづく。

23: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:05:34.67 ID:meHaW6Ax
幕間・止まない雨はない!

 ザァァァァ…

ありあ「ありゃ、にわか雨だ…なにも帰る時間に降らなくたっていいのになぁ」ガサゴソ

冬毬「この時期は折りたたみ傘が手放せませんね」ガサゴソ

マルガレーテ「……あれ」ガサゴソ

冬毬「マルガレーテ?」

マルガレーテ「か、傘がない…!」

ありあ「あらら…」

24: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:07:33.49 ID:meHaW6Ax
冬毬「いつも持ち歩いている傘はどうしたのですか?」

マルガレーテ「思い出した、今日は降らないと思って干しっぱなしにしてたのよ…」

冬毬「なるほど…仕方ありません、弱まるまで待ちましょうか」

ありあ「そだね、図書室で課題でもしてる?」

マルガレーテ「……いいえ、このまま行くわ!」

ありあ「え? いやどうすんのさ傘持ってないのに…ちっちゃいけど一緒に入る?」

マルガレーテ「施しは受けないッ!」クワッ

ありあ「はー!?」

冬毬「どうしたのですか突然…」

25: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:09:28.72 ID:meHaW6Ax
マルガレーテ「この程度のにわか雨で私が止まるとでも思ってるの? どんな逆境にも耐え抜いて、立ち向かって、自分自身の手で未来をビルドする…それがウィーン・マルガレーテよッ!!」ダッ!

ありあ/冬毬「ま、マルガレーテーっ!!!」

 ザァァァァァァ……

26: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:12:11.80 ID:meHaW6Ax
 ポタ…ポタ…

おひさま「パァ!」

マルガレーテ「フッ…アーッハッハ! 見なさい、止まない雨はないのよ! 虹も私を祝福してくれているわ!」

ありあ「びっちゃびちゃのまま言ったってなんもかっこよくないよ…」フキフキ

冬毬「マルガレーテ、すぐに帰宅してお風呂に入ってください! 風邪をひいてしまいます!」フキフキ

マルガレーテ「平気よ、少し濡れたくらいで風邪なんて──へくちっ!」

冬毬「マルガレーテっ!」

ありあ「もう風邪ってことにしといた方がよくない? なんもないのに急にこんなテンション高くなる人怖いって…」

27: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:14:53.03 ID:meHaW6Ax
幕間・論理超先行型人間、鬼塚冬毬

~昼休み~

冬毬「……」

マルガレーテ「どうしたのよ冬毬、腕組んで考え事なんて」

冬毬「今朝姉者が忘れ物をしていったのでそれを届けたいのですが、千砂都先輩に確認しなければならないこともあるのです。二つのタスクを効率よく消化できるルートをシミュレートしています」

マルガレーテ「ふーん、それくらいなら考えるより先に動いた方が早いんじゃないの?」

冬毬「いえ、どういったルートを通りどのような順序で回るか。効率を重視し常に最適解を選び続けることが最も優先されるべき事項です」

マルガレーテ「なんか…生きづらそうね…」

28: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:16:48.23 ID:meHaW6Ax
~数分後~

冬毬「ルート構築、シミュレート完了。イレギュラーが発生しなければ10分ほどで戻れる想定です。では行ってきま

 キーンコーンカーンコーン

マルガレーテ「……」

冬毬「……」

マルガレーテ「……」

冬毬「ど、どうしましょうマルガレーテ…昼休みが終わってしまいました…!」

マルガレーテ「…バカなんじゃないの?」

29: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:20:21.84 ID:meHaW6Ax
本の虫、鮫と海月と夏の余暇


~澁谷家~

マルガレーテ「…暇ね」

冬毬「…暇ですね」

ありあ「…暇つぶしに来るのはいいんだけどさ、わざわざここじゃなくてもいいんだよ? お金かかるんだし…」

マルガレーテ「なによ、嫌なの?」

ありあ「まぁ、嬉しいけど…私も暇だし」

30: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:23:00.78 ID:meHaW6Ax
ありあ「でもここにいていいの? 自主練とかは?」

冬毬「今日は休養日です。夏休みの間は普段の練習量も多いので、千砂都先輩によりスケジュール外の練習は禁じられています」

ありあ「へ~、暑さもあるから余計になのかな。でもマルガレーテがちゃんと従ってるのはちょっと意外かも」

マルガレーテ「…あれだけ本気で叱られたら、もう二度とできないわよ」

ありあ「ああ、もう経験済みなんだ…」

冬毬「私たちのことを思ってのサジェストですから、素直に従っておくべきです」

マルガレーテ「わかってるわよ、もうしないったら…」

31: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:25:25.73 ID:meHaW6Ax
ありあ「じゃあ体を動かなくてもさ、歌を覚えるーとか」

マルガレーテ「そりゃ覚えられるなら覚えたいわよ」

ありあ「どういうこと?」

冬毬「…ないのです、歌が」

ありあ「…お姉ちゃんが朝から部屋にこもりきりなのって、もしかして…」

マルガレーテ「ホント、大丈夫なのかしら?」

冬毬「先輩方はこの状態でも信じて待っているようですが…やはり心配ですね」

ありあ「まぁでも、お姉ちゃんなら大丈夫だよ。きっとね」

マルガレーテ「ありあがそう言うなら…」

冬毬「そうですね、ありあが言うのであればそうなのでしょう」

32: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:27:47.42 ID:meHaW6Ax
かのん母「よいしょっと。ありあ、店番ありがとうね。二人もなにか食べる?」

冬毬「いえ、そこまでお世話になるわけには…」

かのん母「いいのよ、娘がいつもお世話になってるんだから。遠慮しないで」

マルガレーテ「じゃあ、お言葉に甘えて…」

ありあ「私もホントに暇になっちゃった。お姉ちゃんもお父さんも集中してるだろうし、これ食べたらどっか行こうよ」

冬毬「では私の買い物に付き合っていただけますか? 私服のレパートリーを増やしたいと思っていたのです」

33: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:29:48.28 ID:meHaW6Ax
~服屋~

冬毬「これは…透明感のあるフリルですね。ロングスカートですが夏に合うデザインです」シャッ

ありあ「フリル似合うなぁ、いいとこのお嬢様感…」


マルガレーテ「どう? ストリートファッションだって着こなせるわよ!」シャッ

冬毬「露出度が高いですね…日に焼けてしまいませんか?」

ありあ「そこ?」


ありあ「わ、私にはこんな可愛いの似合わないって…」シャッ

マルガレーテ「普段着ないからそう思うのよ。自信を持たなきゃ一生似合わないままよ」

冬毬「私とマルガレーテが選んだのです。客観的に見てもとても可愛らしいですよ、ありあ」

34: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:32:19.05 ID:meHaW6Ax
~本屋~

ありあ「ごめんごめん、お待たせ! いろいろ買っちゃった」ドサッ

マルガレーテ「…ちょっと待ちなさい、いくらなんでも一度に買いすぎじゃないの?」

冬毬「ありあ、前に積読が読み切れないと嘆いていませんでしたか? まさか全部読み切ったわけではありませんよね?」

ありあ「……だって、新刊とか面白そうな文庫とかいっぱいあるんだもん…これだってハードカバーは我慢したんだから…」

冬毬「…読むペースは申し分ないのですから、問題は購買意欲が過剰なことですね」

マルガレーテ「少なくとも老後には困らなさそうね…とりあえずそれは駅のロッカーにでも置いておきなさい」

35: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:34:24.74 ID:meHaW6Ax
~池袋、サンシャイン水族館~

ありあ「わぁ…水族館なんていつぶりだろ…」

冬毬「私とマルガレーテは以前にも来たことがあります。今日はありあを案内しましょう」

ありあ「あ、サメがこっち見てる。なんか可愛い顔…」

マルガレーテ「トラフザメね。目と口のバランスがちょうど笑ってるみたいに見えるのよ」

冬毬「今度はクラゲのエリアです。知っていますか? ミズクラゲの傘にある模様、実は胃袋なのですよ」

ありあ「へぇ~、あのクローバーみたいなやつだよね? あれ、よく見たら三つ葉とか五つ葉の子もいる…」

36: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:36:13.41 ID:meHaW6Ax
ありあ「お土産、いろいろあって悩むなぁ。冬毬はなに買ったの?」

冬毬「私はクラゲのクッションを…大きくてモチモチで、とても可愛らしいです」

マルガレーテ「見て二人とも! 口の中に腕が入るサメのぬいぐるみよ!」

冬毬「マルガレーテ、腕が…」

ありあ「うーん、じゃあ私は…これかな!」

冬毬「それは…ニシキアナゴ、ですか?」

ありあ「そう、ニシキアナゴのマドラー! 可愛くない?」

マルガレーテ「マドラーって、あのコーヒーとかかき混ぜるやつ?」

冬毬「コーヒーから顔を出すニシキアナゴ…なるほど、アイデア商品ですね」

37: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:38:43.79 ID:meHaW6Ax
 ガタンゴトン

ありあ(結局一日中遊んじゃったな…こんなに人と遊んだのなんて久しぶりかも)

マルガレーテ/冬毬「すぅ…すぅ…」

ありあ(りょ、両方から寄られるとちょっと圧迫感あるなぁ…)

ありあ(……少しでも、二人の息抜きになったかな。ステージではあんなにかっこいい二人も、そこから一歩離れれば普通の女の子なんだもんね)

ありあ(でも、そんなすごい人たちと対等な友達になれるのって…結構幸せなことなんだろうな──)

38: 警備員[Lv.13][N武][R防](もんじゃ) 2024/07/19(金) 13:40:49.37 ID:meHaW6Ax
「次は──。お出口は…」

冬毬「──はっ! お、起きてください二人とも! 降車駅をとっくに過ぎています!」

ありあ「んぁれ…寝てた…?」

マルガレーテ「ちょっ、誰か一人は起きてなさいよ!」

ありあ「いの一番に寝始めたマルガレーテに言われたくないんだけど…」

つづく。

引用元: ありあ「本の虫、鮫と海月と梅雨事情」