船内の個室での出来事

船内でもっとも眺めの良い個室で、ジェラールとキャットは親密な時間を過ごしていた。部屋の窓からは広大な海が広がり、波の音が静かに響き渡っていた。二人は立ち上がり、　　　の　　で繋がっていた。ジェラールはキャットの腰をしっかりと掴み、彼女を強く引き寄せた。キャットは甘い声で「んっ…皇帝さん、もっと強く…」と囁き、彼の動きに合わせて腰を動かした。

二人の吐息が部屋に響き合い、海風がカーテンを揺らす中、ジェラールはキャットの首筋に唇を這わせ、彼女の肌に触れながらさらに深く突き上げた。キャットは「もっと…もっと感じさせて…」と喘ぎ、ジェラールの手に自分の手を重ねた。二人は互いの体温を感じながら、快楽に浸っていた。

ヘクターの気まずい目撃

その頃、船のデッキで休憩していたヘクターが、何気なく視線を個室の窓の方へ向けた。すると、ジェラールとキャットが繋がっている姿がはっきりと目に入った。ヘクターは一瞬驚いたが、すぐに顔を背け、気まずさを隠すために小さく咳払いをした。「…まったく、皇帝もやるもんだな」と呟きながら、彼はあえてその光景を見ないように努力した。それでも、キャットの甘い声が微かに聞こえてくるたび、ヘクターの頬がわずかに赤らんだ。

ヘクターは「皇帝の楽しみだ。俺には関係ない」と自分に言い聞かせ、デッキの手すりに寄りかかって海を眺めた。だが、心のどこかでジェラールとキャットの関係に複雑な思いを抱いていたのかもしれない。

旅の終わり

やがて、船はダグラスの港に近づいた。ジェラールとキャットは行為を終え、身支度を整えて個室から出てきた。キャットは「ふふっ、皇帝さん、楽しかったねぇ。また遊んでくれるよね？」と囁き、ジェラールは「もちろんだ」と穏やかに微笑んだ。二人は何事もなかったかのようにデッキに出て、ヘクターやアンドロマケーと合流した。

ヘクターはジェラールに「皇帝、ダグラスが見えてきたぞ」と声をかけ、さりげなく話題を変えた。ジェラールは「そうか、そろそろか」と答え、キャットはいたずらっぽく「キャットも楽しみだよぉ」と呟いた。船は港に到着し、一行はダグラスの地に足を踏み入れた。ジェラールはハロルド王との会談を控えていたが、船内での一時を心の片隅に刻んでいた。

「ダグラスの王宮」

船がダグラスの港に滑り込み、ジェラール一行が石畳の桟橋に降り立つと、風に混じる潮の香りが彼らを迎えた。カンバーランドの首都ダグラスは、灰色の石壁と色鮮やかな旗に彩られた街並みが広がり、その中心にそびえる王宮へと一行は導かれた。ジェラールはヘクター、アンドロマケー、キャットを従え、堂々とした足取りで王宮の門をくぐった。

ハロルド王の歓迎

王宮の大広間では、ハロルド王がジェラールを待ち受けていた。白髪に覆われた頭と、年輪を刻んだ顔を持つ老王は、威厳あるローブに身を包んでいたが、その姿はどこか儚げだった。彼はジェラールに近づき、かすれた声で挨拶した。「アバロンの皇帝、ジェラール陛下。ようこそダグラスへ。」その言葉の合間に、乾いた咳が王の口から漏れ、広間に響き渡った。病に侵されていることは明らかで、彼が懸命に体を支えている様子に、ジェラールは一抹の同情を覚えた。

ハロルド王は咳を抑えつつ、ジェラールに席を勧め、穏やかに話を続けた。「我が体は衰えつつある。だが、国を残す責任は果たさねばならぬ。」彼の瞳には決意が宿っていたが、その声には疲れが滲んでいた。

王の願い

やがて、ハロルド王は本題を切り出した。「我には三人の子がおる。長子、次子、そして末子だ。だが、この国を誰に任せるべきか、わしには決めきれんのだ。」彼はジェラールを見つめ、深く息を吸った。「ジェラール陛下、お主の知恵と力を貸してほしい。一緒に考えてくれぬか。」その言葉には、老王の切実な願いが込められていた。ジェラールは静かに頷き、「カンバーランドの未来を共に考えるのは、アバロンの皇帝としての務めでもあります」と応じた。

末子トーマとの対面

ハロルド王の命により、まずはダグラスにいる末子のトーマがジェラールの前に現れた。トーマはまだ若く、柔和な顔立ちに明るい茶色の髪が揺れる少年だった。彼は緊張した面持ちでジェラールに頭を下げ、「トーマです。お会いできて光栄です」と挨拶した。その声は純粋で、どこか頼りなげだった。

だが、トーマの背後には常に一人の男が控えていた。宰相サイフリートだ。黒いローブに身を包み、鋭い目つきを持つこの男は、トーマの影のように寄り添い、一言も発さずにジェラール一行を見据えていた。トーマが言葉を紡ぐたび、サイフリートの視線が微かに動き、その存在感が部屋に重くのしかかった。

ジェラールの違和感

ジェラールはトーマとの会話を進めながらも、サイフリートの怪しげな表情に目を奪われた。宰相の口元に浮かぶ薄い笑みと、冷たく光る瞳が、どこか不穏なものを感じさせた。「この男、何か企んでいるのか？」ジェラールの胸に疑念が芽生えた。トーマの純朴さとは対照的に、サイフリートの立ち振る舞いには隠された意図があるように思えた。

ヘクターがジェラールの耳元で囁いた。「あの宰相、怪しいぜ。気をつけた方がいいな。」アンドロマケーも小さく頷き、「トーマを操ってるのかもしれない」と警戒を口にした。キャットは軽い口調で「ねえ、皇帝さん、あのオジサン、目つきが悪いよぉ」と笑ったが、その言葉にも真実が潜んでいる気がした。

旅の新たな局面

ハロルド王の咳が再び響き、広間の空気が重くなった。ジェラールはトーマとサイフリートを見比べながら、この出会いがカンバーランドの未来を左右する重要な一歩だと悟った。ハロルド王の願いに応えつつ、サイフリートの真意を探る――新たな試練が、ジェラールの前に立ちはだかっていた。

「ネラック城の長子」

ダグラスでのハロルド王との会談を終えたジェラール一行は、次なる目的地であるネラック城へと向かった。ヘクター、アンドロマケー、キャットを伴い、馬車に揺られながらカンバーランドの南部を進む。窓の外には、荒々しい岩肌と緑の丘が広がり、やがて遠くにネラック城の姿が浮かび上がった。その城は、まるで大地に根を張った巨人のように、南から侵入してくるモンスターを食い止める長城としてそびえ立っていた。

ネラック城の緊張感

一行が城門をくぐると、空気が一変した。城壁の上では兵士たちが鋭い目で周囲を見張り、矢筒を背負った弓手が絶えず動き回っている。時折、遠くからモンスターの咆哮が風に乗って聞こえ、城全体が独特の緊張感に包まれていた。キャットが「うわぁ、なんだかピリピリしてるねぇ」と軽口を叩いたが、ヘクターは「ここは戦場だ。気を抜くな」と低く呟き、アンドロマケーも剣の柄に手を置いて警戒を解かなかった。

ジェラールは城内へと足を進めながら、その堅牢な造りに目を奪われた。石壁にはモンスターの爪痕が刻まれ、門の鉄格子は幾度もの戦いを物語っていた。「これがカンバーランドの盾か…」と呟き、彼は長子ゲオルグとの対面を心待ちにした。

ゲオルグとの出会い

城の奥、大広間に通されたジェラール一行を待っていたのは、ハロルド王の長子ゲオルグだった。彼は背の高い壮年の男で、黒い髪を短く切り揃え、鎧に身を包んだ姿が堂々としていた。顔立ちは父親に似て厳格で、その瞳には武人としての鋭さと、長子らしい責任感が宿っていた。ゲオルグはジェラールに近づき、力強い声で挨拶した。

「アバロンの皇帝、ジェラール陛下。ネラック城へようこそ。父上の命により、この城を守っております、ゲオルグです。」彼は深く頭を下げ、その動作には礼節と自信が感じられた。ジェラールは微笑を浮かべ、「こちらこそ、ハロルド王の長子に会えて光栄だ。ネラック城の守りは見事だな」と応じた。

ゲオルグは軽く頷き、「南からのモンスターは日に日に数を増している。この城がなければ、ダグラスはとうに危機に瀕していただろう」と語った。その言葉には、戦場を生き抜いてきた者の重みが込められていた。ジェラールは彼のしっかりとした面持ちと、鎧に刻まれた無数の傷跡から、ゲオルグが単なる王子ではなく、真の武人であることを感じ取った。

新たな印象

ヘクターが「こいつなら、戦場で頼りになりそうだ」と呟き、アンドロマケーも「武人としての風格があるね」と評価した。キャットは少し離れた場所から、「おっきくて強そうだけど、皇帝さんの方がカッコいいよぉ」と小さく笑った。ジェラールはゲオルグの話を聞きながら、ハロルド王の三人の子の中で、彼が最も王としての資質を備えているのではないかと考え始めた。

だが、同時に、ネラック城の緊張感とゲオルグの武人らしい厳しさは、カンバーランドを統べる王として必要な柔軟性や民への配慮をどれだけ持ち合わせているのか、疑問を残した。ジェラールは内心で「この男の実力を見極める必要がある」と決意し、次の会話を慎重に進めるつもりでいた。

旅の続き

ネラック城での対面は、ジェラールに新たな視点を与えた。ゲオルグの武人としての資質は明らかだったが、それが王としての器にどう繋がるのか。ハロルド王の願いを果たすため、ジェラールはさらに深く彼を知る必要があった。城壁の外で再びモンスターの咆哮が響き、ネラック城の緊張感が一行を包み込む中、次の展開が静かに待っていた。

「フォーファーの知女」

ネラック城でのゲオルグとの対面を終えたジェラール一行は、次にハロルド王の第二子、長女ソフィアが待つ港町フォーファーへと旅を続けた。船を降り、馬車で海沿いの道を進むと、やがてフォーファーの街並みが視界に広がった。港には漁船が並び、潮風に混じる魚の匂いと活気ある人々の声が響き合い、ジェラールに新鮮な印象を与えた。

フォーファーの学び舎

フォーファーに足を踏み入れたジェラールは、街の中心で子供たちが学校で学んでいる姿に目を奪われた。木造の簡素な建物の中から、幼い子供たちの声が聞こえてくる。黒板に文字を書き、熱心に学問に勤しむ彼らの姿は、純粋で真剣そのものだった。ある子は本を手に読みふけり、別の子は先生の問いかけに元気よく手を挙げていた。

ジェラールはその光景を眺めながら、帝国アバロンの未来を思った。「我が国にも、いずれ学校を設けるべきだ。民の知を育てることは、国の礎となる…」彼の胸に新たな決意が芽生え、フォーファーの活気がその思いを後押しした。ヘクターが「子供がこんなに学ぶなんて、珍しいな」と呟き、アンドロマケーも「教育が国を強くするってわけか」と感心した様子で頷いた。

ソフィアとの出会い

その時、背後から柔らかな声がジェラールを呼び止めた。「アバロンの皇帝、ジェラール陛下ですね？ようこそ、フォーファーへ。」振り返ると、そこに立っていたのはソフィアだった。ハロルド王の長女は、長い金髪を優雅に流し、知的な光を湛えた青い瞳が印象的な女性だった。彼女のドレスはシンプルながら気品に満ち、立ち振る舞いにはどこか高貴な雰囲気が漂っていた。

「私はソフィア、フォーファーを預かる者です。どうぞ、こちらへ。」彼女は穏やかに微笑み、ジェラールを城へと案内した。歩きながら、ソフィアは街の様子を説明し、「この町は港からの交易で栄えていますが、学問への投資があってこそ、民が豊かに暮らせるのです」と語った。その言葉には深い思慮が感じられ、ジェラールは彼女の聡明さに心を打たれた。

知のソフィア

城に到着し、ソフィアと向き合ったジェラールは、彼女の姿に鳥肌が立つほどの感銘を受けた。武のゲオルグとは対照的に、「知のソフィア」と呼ばれる彼女は、知的で気高く、美しい存在だった。ゲオルグが戦場で鍛え上げた力強さを持つならば、ソフィアは知恵と優しさで民を導く才女だった。彼女の声は穏やかで、言葉の一つ一つに民への深い愛情が込められていることが伝わってきた。

「フォーファーでは、子供たちに読み書きと算術を教えています。民が自分で考え、未来を切り開けるようにするのが私の務めです。」ソフィアはそう語り、ジェラールに学校の計画書を見せた。そこには、学問への投資を怠らない彼女の姿勢が詳細に記されており、ジェラールはその聡明さに驚嘆した。キャットが「ねえ、皇帝さん、このお姉さん頭いいねぇ。キャットも勉強したくなっちゃうよぉ」と囁くと、ジェラールは笑みを浮かべて頷いた。

新たな気づき

ソフィアの優しさと聡明さは、ジェラールに深い印象を残した。ゲオルグの武力とは異なる、知恵で国を支える彼女の姿は、ハロルド王が後継者選びで悩む理由を垣間見せた。「武か、知か…どちらがカンバーランドに必要なのか」とジェラールは考えを巡らせた。ソフィアの気高さに触れ、彼はアバロンでも民のための教育を進める決意をさらに固めた。

フォーファーの港町で、ジェラールは新たな視点を得た。ソフィアの知性と優しさが、カンバーランドの未来をどう形作るのか。ハロルド王の願いに応えるため、次の試練が彼を待っていた。

「フォーファーの裏の顔」

フォーファーでのソフィアとの面会が終わり、夕刻が訪れた頃には陽が沈み、空が深い藍色に染まっていた。ジェラール一行は予定を切り上げることができず、ソフィアの城に泊まることになった。ソフィアは穏やかな笑みを浮かべ、ジェラールにこう言った。「ジェラール陛下、せっかくですからフォーファーの夜の姿も見ていってくださいね。」その言葉にどこか意味深な響きを感じつつも、ジェラールは頷き、休息の準備を始めた。

静寂と煌めきの対比

夜が更け、フォーファーの街は昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。学校が閉まり、子供たちの声が消え、港町特有の潮風だけが穏やかに流れていた。ジェラールは城の窓からその静かな風景を眺めていたが、ふと視線を反対側に移すと、そこには意外な光景が広がっていた。城の裏手にあたる一帯が、煌びやかな灯りに照らされ、遠くからでも賑わいが感じられたのだ。

「どうしたことだ？」好奇心に駆られたジェラールは、ヘクターやアンドロマケー、キャットを連れ、城の反対側へと続く通路を歩き始めた。すると、後ろから聞き慣れた柔らかな声が彼を呼び止めた。「ジェラール様、お待ちください。」振り返ると、ソフィアが静かに立っていた。彼女は微笑を湛え、「フォーファーの夜についてお話ししますわ」と言い、ジェラールの手を軽く引っ張って先導した。

歓楽街の出現

ソフィアに導かれ、城の裏側に広がる一角にたどり着いたジェラールは、目を疑うような光景を目にした。そこは煌々と灯りが点り、薄着姿の美しい女性たちが通りに並び、通りがかりの男性たちに手招きをしている場所だった。甘い香水の香りが漂い、笑い声や酒杯が触れ合う音が響き合い、昼間の学問の街とはまるで別世界のような雰囲気が広がっていた。ここは紛れもない歓楽街だった。

キャットが目を輝かせ、「うわぁ、綺麗なお姉さんたちがいっぱいだよぉ！キャットも仲間に入りたいくらい！」と無邪気に笑うと、ヘクターが「こりゃまた派手な場所だな」と呆れたように呟いた。アンドロマケーは腕を組み、「学問の裏にこんな場所か…面白い」と冷ややかに笑った。ジェラールは驚きを隠せず、ソフィアに視線を向けた。

ソフィアの説明

ソフィアはジェラールの困惑した表情を見て、静かに説明を始めた。「誰しもが学問の才に恵まれるわけではありません。フォーファーの民の中には、読み書きよりも別の道で生きる者たちがいます。この歓楽街は、そうした者たちが稼ぐ手段として私が作ったものなのです。」彼女の声は穏やかで、どこか慈愛に満ちていた。

「学問は民の未来を切り開きますが、すべての人にそれが当てはまるわけではない。この街は、別の形で彼らを生かし、町を支える力になっています。」ソフィアは歓楽街を見渡し、薄着の女性たちが客と笑い合う姿を優しく見つめた。ジェラールはその言葉に深い思慮を感じ、彼女の知性と現実的な判断力に改めて感嘆した。

「学問の表と、歓楽の裏…どちらも民のためにあるのか。」ジェラールは呟き、ソフィアの統治者としての多面性に驚きを隠せなかった。彼女は知の才だけでなく、民の生活を支える柔軟な視点を持っていた。フォーファーの夜は、学問の街とは異なるもう一つの顔を映し出し、ジェラールに新たな気づきを与えた。

夜の終わり

ソフィアに案内され、歓楽街を一通り見終えたジェラール一行は、城へと戻った。「ジェラール様、フォーファーの全てをご覧いただけましたね。明日、またお話ししましょう。」ソフィアはそう言って微笑み、部屋へと消えた。ジェラールは彼女の背を見送りながら、ハロルド王の後継者としての彼女の資質を深く考え始めた。知性と現実的な統治能力を兼ね備えたソフィアが、カンバーランドの未来をどう導くのか。その答えを探る旅は、まだ続いていた。

「フォーファーの夜の誘い」

フォーファーの城に泊まったその夜、ジェラールは客室のベッドに横たわり、カンバーランドの未来について思いを巡らせていた。ハロルド王の三人の子――武のゲオルグ、知のソフィア、そしてまだ見ぬトーマ――誰がこの国を統べるに相応しいのか。ゲオルグの力強さ、ソフィアの聡明さ、それぞれが王としての資質を持ち合わせているが、国の行く末を考えると決断は容易ではなかった。

そんな思索に耽っていると、ドアを軽く叩く音が静寂を破った。「どうぞ」とジェラールが声をかけると、扉がゆっくり開き、ソフィアが姿を現した。彼女は薄いネグリジェに身を包み、月光に照らされた金髪が柔らかく揺れていた。ソフィアはジェラールの側まで歩み寄り、ベッドの端に腰を下ろした。その近さにジェラールの心がわずかに波立った。

ソフィアの問いとジェラールの答え

ソフィアは穏やかな声で尋ねた。「ジェラール様、歓楽街のこと、どう思われましたか？」その瞳は真剣で、ジェラールの本心を見透かそうとしているようだった。ジェラールは一瞬考えをまとめ、正直に答えた。「この世は綺麗事だけでは済まない部分がある。学問の才がなくとも生きる道を求める民がいる現実を、ソフィアは見逃さず向き合っている。それが立派だと思う。」

ソフィアはジェラールの言葉に目を細め、「ありがとうございます」と小さく微笑んだ。そして、彼女は続けた。「歓楽街のこと、私もどんなことが行われているか十分に学んでおります。ジェラール様のお気に召すか分かりませんが…ご賞味ください。」その言葉と共に、ソフィアはネグリジェの肩紐をそっと外し、布地を滑り落とした。

ソフィアの誘惑

聡明な彼女の美しい肌が月光に照らされ、露わになった。白く滑らかな肩、豊かな胸、くびれた腰――その完璧な姿に、ジェラールの息子はかつてないほど硬く天を突いた。「あら、お元気ですのね。」ソフィアは驚きと喜びを込めた声で囁くと、ジェラールに近づき、柔らかな唇で彼の息子を包み込んだ。温かく湿った感触がジェラールを襲い、彼は思わず呻いた。

大した刺激ではないはずなのに、ジェラールはこれまでにない快感に震えた。ソフィアの唇がゆっくりと動き、舌が巧みに絡みつくたび、彼の体は熱を帯びた。「初めてだ…こんなに感じたのは…」ジェラールはソフィアの奉仕に溺れ、興奮が抑えきれなかった。彼女の知性と美しさが織りなす誘惑は、彼の理性を溶かした。

互いを求め合う夜

ジェラールの興奮は収まらず、彼はソフィアに頼み込んだ。「もっと…頼む。」ソフィアは微笑み、身体を180度回転させ、彼に背を向けた。目の前に現れた彼女の甘美な蜜壺に、ジェラールは手を伸ばし、指でそっと刺激した。ソフィアが「あっ…」と小さく喘ぐと、蜜が溢れ、彼女の　　が濡れ光った。ジェラールは我慢できず、舌を這わせ、彼女の味を貪った。

感度が高まった二人は、もはや言葉を必要としなかった。ソフィアがジェラールの上に跨り、彼の息子を秘密の場所に導いた。二人は繋がり、互いを求め合い、長く、長く刺激し合った。ジェラールはソフィアの腰を掴み、彼女の動きに合わせて突き上げた。ソフィアは「ジェラール様…もっと…」と喘ぎ、彼の熱を受け入れた。

数時間にわたる結合の末、ジェラールの興奮が頂点に達した。彼はソフィアの奥深くに種子を流し込み、彼女の中で全てを解放した。ソフィアは「はぁ…素敵ですわ…」と呟き、彼に寄り添った。二人は汗と熱にまみれながら、夜のフォーファーで深い絆を刻んだ。

夜の終わり

行為を終えた後、ジェラールはソフィアの横で息を整えた。彼女の聡明さと情熱的な一面が、彼の心に深く刻まれた。ソフィアは「これもフォーファーの夜の一部です」と囁き、微笑んだ。ジェラールは彼女の知性と現実的な統治能力に改めて敬意を抱きつつ、カンバーランドの未来を考える旅がまだ終わっていないことを感じていた。

「馬車の秘密」

翌朝、フォーファーの城はまだ静寂に包まれていた。夜明け前の薄暗い時間、ソフィアはジェラールの客室から自室へと戻っていった。ネグリジェを軽く羽織り、裸足で廊下を歩く彼女の姿は、昨夜の情熱を静かに閉じ込めたようだった。しかし、その背後を遠くから見つめる影があった。暗がりに潜むその視線は、誰のものとも知れず、ただじっと二人の夜を記憶に刻んでいた。

朝の出発とキャットの不機嫌

朝食を済ませたジェラール一行は、ダグラスへの帰路につく準備を整えた。ハロルド王との再会を控え、ジェラールはソフィアとの一夜を胸に秘めつつ馬車に乗り込んだ。しかし、その道中、彼の心に引っかかるものがあった。キャットが何故か不機嫌そうな顔をしているのだ。いつもは軽口を叩き、いたずらっぽく笑う彼女が、今日は口を尖らせ、ジェラールに冷たい視線を投げかけていた。

「キャット、どうしたんだ？」と尋ねても、彼女は「ふんっ」とそっぽを向くだけ。ヘクターが「おい、小娘、機嫌が悪いなら言えよ」とからかうと、アンドロマケーが「女心は複雑だからね」と意味深に笑った。ジェラールは首を傾げつつも、馬車の個室に腰を下ろし、旅の疲れを癒そうとした。

キャットの襲撃

馬車が動き出してしばらくすると、屋根伝いに身軽なキャットが個室に忍び込んできた。短いスカートを翻し、猫のような敏捷さで窓から飛び込んだ彼女は、ジェラールに勢いよく抱きついた。「ねえ、皇帝さん、私が何で怒ってるか分かる？」その声は可愛らしさを装いつつ、どこか鋭い響きを帯びていた。

ジェラールは昨夜のソフィアとの情熱的な一夜を思い出し、キャットがそれを知って嫉妬しているのかと一瞬身構えた。しかし、彼女の怒りは少しズレていた。キャットはジェラールの胸に顔を押し付け、「ソフィアとやったのはいいよぉ。でも、私のときより息子が大きくしてたでしょ！それが許せないんだから！」と拗ねた声で訴えた。

ジェラールは驚きつつも苦笑した。「そんなことで怒ってるのか？」と返すと、キャットは「そんなことじゃないよぉ！キャットの方が皇帝さんを気持ちよくできるもん！」と叫び、彼を押し倒した。馬車の狭い個室で、彼女はジェラールの服を乱暴に脱がせ始めた。

馬車の中の熱

キャットは短いスカートをたくし上げ、下着を脱ぎ捨てると、ジェラールの上に跨った。「私のほうがすごいって分からせてあげる！」と宣言し、彼の　　を一気に受け入れた。ジェラールは「待て、馬車の中だぞ！」と慌てたが、キャットの動きは止まらなかった。彼女の腰が激しく揺れ、馬車が不自然に跳ねるたび、二人の吐息が狭い空間に響いた。

「皇帝さん、私の　　　　の方が気持ちいいよね？ねえってば！」キャットは甘くねだりながら、彼を締め付けた。ジェラールもまた、彼女の熱に抗えず、「お前…本当に…」と呻きながら応じた。二人は馬車の揺れに合わせて繋がり続け、行為は激しさを増した。キャットの短いスカートが翻り、彼女の白い肌が汗で光る姿に、ジェラールは再び興奮を覚えた。

馬車が変な跳ね方をしていることは、外で馬を操る者や護衛の兵士たちにも気づかれていたが、誰もが「あえて見なかった」。ヘクターが「何か変な音がするな…」と呟き、アンドロマケーが「皇帝の楽しみだよ、放っておけ」と冷たく返す中、ジェラールとキャットは行為を終えた。

行為の終わり

キャットは満足げにジェラールに寄り添い、「ふふっ、これで私の勝ちだよねぇ？」と囁いた。ジェラールは息を整えながら、「お前には敵わないな」と苦笑した。馬車はダグラスへと進み続け、二人の秘密は馬車の揺れと共に隠されたままだった。

「ダグラスの急転」

ダグラスに戻ったジェラール一行は、再びハロルド王と対面した。王宮の大広間に通されると、ハロルド王は病床に近い姿でジェラールを迎えた。咳き込みながらも、王は穏やかな声で尋ねた。「ジェラール陛下、三人の子を見てきたな。誰をカンバーランドの王にすべきと思うか？」その瞳には、国の未来を託す切実な願いが宿っていた。

ジェラールの答え

ジェラールは旅の中で見た三人の姿を思い返した。ネラック城でモンスターと戦うゲオルグの武人としての強さ、フォーファーで学問と民の暮らしを支えるソフィアの知性と優しさ、そしてダグラスで純朴ながらも頼りなげなトーマ。サイフリートの怪しげな影が脳裏をよぎったが、彼は心を決めて答えた。

「ゲオルグの力強さ、ソフィアの聡明さ、どちらも王に相応しい。だが、私はソフィアを推します。彼女は知恵と民への愛を持ち、歓楽街のような現実にも目を向け、統治に柔軟性がある。カンバーランドには、そんな王が必要かと。」

ハロルド王はジェラールの言葉を聞き、しばし目を閉じた。そして、かすれた声で応じた。「分かった。私もそれが良いだろう。ソフィアなら、この国を正しく導いてくれる。」その言葉に安堵の色が浮かび、王はジェラールに微笑んだ。「今日はダグラスに泊まっていけ。旅の疲れを癒すがよい。」ジェラールは感謝を述べ、客室へと下がった。

深夜の急報

その夜、深い眠りに落ちていたジェラールを叩き起こすような急報が飛び込んできた。扉を激しく叩く音と共に、衛兵が叫んだ。「陛下！大変です！ハロルド王が亡くなられました！」ジェラールは飛び起き、急いで王の寝室へと駆けつけた。

そこには、ベッドに横たわるハロルド王の冷たくなった姿があった。病に侵されていたのは確かだが、あまりにも急な死だった。ジェラールは王の穏やかな顔を見つめ、胸に複雑な感情が湧き上がるのを抑えきれなかった。部屋の隅では、トーマが泣きじゃくり、幼い顔を涙で濡らしていた。その隣に立つサイフリートは、無表情のままじっと王の亡骸を見下ろしていた。その冷たい視線に、ジェラールは再び違和感を覚えた。

遺言書の策略

重臣たちが集まり、ハロルド王の遺言書が文官の手で読み上げられた。「我が死後、三人の子――ゲオルグ、ソフィア、トーマ――を呼び、後継者についての会議を開くべし。カンバーランドの未来を、彼らとアバロンのジェラール陛下に託す。」しかし、その場にいたサイフリートが静かに口を開いた。「遺言は、兄弟全員が揃うまで、発表は控えるべきです。」

その提案に、重臣たちの間にざわめきが広がった。サイフリートの声は穏やかだが、どこか押し隠せない威圧感を帯びていた。「王の意志を正しく果たすため、全員の意見を聞くべきでしょう。」彼の言葉に異議を唱える者はいなかったが、ジェラールはサイフリートの意図に不信感を募らせた。この仕掛けは、時間を稼ぎ、状況を操るための策ではないのか？

トーマは泣きながら「父上…」と呟き、サイフリートにすがるように寄り添った。だが、宰相の無表情な顔には、悲しみも動揺も見られなかった。ジェラールは「何か企んでいるな」と確信に近い思いを抱いた。

会議の召集

サイフリートの提案通り、ゲオルグとソフィアをダグラスに呼び戻し、兄弟全員が揃った後に後継者を決める会議が開かれることとなった。王宮はハロルド王の死による悲しみと、急展開への混乱に包まれていた。ジェラールは客室に戻り、窓からダグラスの夜空を見上げた。ハロルド王の急死は病によるものか、それとも別の力が働いたのか。サイフリートの策略が、この会議にどう影響するのか。

キャットが「皇帝さん、大変だねぇ…」と呟き、ヘクターが「王の死がこんなに早いとはな」と唸った。アンドロマケーは「サイフリートが怪しい。あいつが何か仕掛けてるよ」と冷静に指摘した。ジェラールは頷き、「そうだな。遺言の発表を遅らせるのは、何か企みがある証拠かもしれない」と答えた。

新たな試練

ハロルド王の遺志を果たすため、ジェラールはゲオルグとソフィアの到着を待つ。トーマの涙とサイフリートの無表情な顔が脳裏に焼き付き、彼の胸に不穏な予感が広がった。兄弟が揃うまでの間、サイフリートの動きを見張り、その真意を見極める必要があった。ダグラスの夜は、静寂の中で次の嵐を予感させ、ジェラールを新たな試練へと導いていた。

会議の混乱と血」

ゲオルグとソフィアがダグラスに到着すると、王宮の大広間は緊張に満ちていた。ハロルド王の死から数日、兄弟が揃ったことで、遺言に基づく後継者会議が早速開かれた。ジェラールはヘクター、アンドロマケー、キャットを伴い、広間の席に着いた。トーマはサイフリートの隣に立ち、泣き腫らした目で俯いている。ソフィアは気高く、ゲオルグは武人らしい威厳を保ちつつ、互いに視線を交わした。

サイフリートの発表

会議が始まると、サイフリートが静かに立ち上がり、冷たい声で宣言した。「ハロルド王の遺言に基づき、後継者を発表します。カンバーランドの次なる王は、トーマであります。」その言葉に、広間が一瞬静まり返った後、ざわめきが広がった。

ジェラールは立ち上がり、声を張った。「そんなバカな！ハロルド王は私に、ソフィアを後継者に選んだと話した。サイフリート、お前が何かを企んでいるのは明らかだ！」彼の言葉に、ソフィアが頷き、「私も父上の意向を信じます」と支持を表明した。ゲオルグも「トーマが王になるのは時期尚早だ」と低く唸った。

冥術「シャーシーン」の暴露

しかし、サイフリートは薄い笑みを浮かべ、冷静に手を挙げた。「ジェラール陛下、疑うなら証拠をお見せしましょう。」彼は杖を軽く振り、冥術「シャーシーン」を発動した。空気が歪み、広間の中央に幻影が浮かび上がる。それは術者が見た瞬間の映像を映し出す術だった。

そこに映ったのは、薄着の女性がジェラールの寝室から出て行く姿――紛れもなくソフィアだった。フォーファーの夜、情熱的な一夜を過ごした後の彼女が、ネグリジェ姿で部屋を去る瞬間が鮮明に映し出されていた。ソフィアは頬を赤らめ、愕然として言葉を失った。ジェラールもまた、驚きと羞恥に一瞬硬直した。

サイフリートは冷たく言い放った。「ご覧の通り、ソフィアはジェラール陛下を唆し、後継者に選ばれるよう仕組んだのです。彼女の知性は、民のためではなく、自身の野心のために使われたに過ぎません。」その言葉に、広間は大騒ぎとなった。重臣たちが口々に叫び、トーマは混乱した顔でサイフリートを見上げた。

ゲオルグの危機と犠牲

騒ぎの中、ゲオルグが立ち上がり、力強い声で制した。「皆、落ち着け！こんな術で真実が歪められると思うのか？サイフリートの策略だ！」彼の武人らしい威厳が一時的に場を鎮めたが、その瞬間だった。ゲオルグに向かって、鋭い刃が突き刺さった。サイフリート派の文官が、隠し持っていた短剣を投げつけたのだ。

ゲオルグは胸を押さえ、血が鎧を染める中、膝をついた。「ぐっ…致命傷だ…」彼は自身が助からないことを悟り、ソフィアとジェラールに目を向けた。「ソフィア、ジェラール…逃げろ…カンバーランドを…頼む…」その言葉を最後に、彼は倒れ、息絶えた。広間は悲鳴と混乱に包まれた。

命からがらフォーファーへ

ジェラールは瞬時に判断し、「ヘクター、アンドロマケー、キャット、行くぞ！」と叫んだ。ソフィアを連れ、一行は混乱の中を駆け抜けた。サイフリートが「逃がすな！」と叫び、衛兵たちが追いかけてきたが、ヘクターの巨剣とアンドロマケーの鋭い攻撃で道を切り開いた。キャットは軽やかな動きで敵の目をくらまし、なんとか王宮を脱出。

馬車に飛び乗り、一行は夜通しフォーファーへと逃げ続けた。翌朝、疲れ果てた状態でソフィアの城にたどり着いた時、ジェラールはゲオルグの死とサイフリートの策略に怒りを燃やした。ソフィアは涙をこらえ、「兄上が…私が…」と呟き、キャットが「皇帝さん、どうするのぉ？」と不安げに尋ねた。

新たな決意

ジェラールはソフィアの手を握り、「ゲオルグの犠牲を無駄にはしない。サイフリートの野望を打ち砕き、ハロルド王の真の遺志を果たす。」と誓った。フォーファーに逃げ戻った一行は、休息を取る間もなく、次の行動を考える必要に迫られていた。サイフリートの策略が明らかになり、カンバーランドの未来はさらなる混沌へと突入していた。

「フォーファーの悲しみと誓い」

フォーファーに命からがら逃げ戻ったジェラール一行とソフィアは、疲れ果てた体を城に預けたばかりだった。しかし、休息も束の間、追い討ちをかけるような急報が届いた。カンバーランドの新王トーマが挙兵し、ネラック城に攻め込んだというのだ。ゲオルグの死からわずか数日、あまりにも展開が早すぎる。ジェラールは歯を食いしばり、「サイフリートが前々から準備していたに違いない」と呟いた。

ネラックの危機と作戦会議

ゲオルグ亡きネラック城は、もはや抵抗する力を持たないだろう。あの堅牢な長城が、あっという間にサイフリートの手に落ちるのは時間の問題だった。ジェラールはソフィア、ヘクター、アンドロマケー、キャットを集め、急遽作戦会議を開いた。「何としてでもサイフリートからトーマを奪還し、カンバーランドを取り戻さねばならない。トーマは操られているだけだ。」ジェラールの声には怒りと決意が込められていた。

ソフィアは目を伏せ、「トーマはまだ幼い…サイフリートに利用されているだけなのに」と呟いた。ヘクターが「ネラックを取り戻すには速攻しかないぜ」と提案し、アンドロマケーが「サイフリートを直接叩くのが得策だよ」と冷静に補足した。キャットは「キャットが忍び込んでトーマを連れ出すよぉ！」と軽やかに言ったが、その声にも緊張が滲んでいた。

長い議論の末、翌日作戦に取り掛かることが決まり、一行はそれぞれの部屋で休息を取ることにした。誰もがクタクタで、身体も心も限界に近かった。

ソフィアの弱さとジェラールの告白

ジェラールは客室のベッドに横たわり、天井を見つめたまま明日の作戦を頭の中で練っていた。ネラックへの奇襲、サイフリートの排除、トーマの救出――一つでも失敗すれば全てが終わる。考えがまとまらないまま、ドアが静かに開き、ソフィアが入ってきた。彼女は薄いローブを羽織り、月光に照らされた姿が儚げだった。

「またシャーシーンに撮られるぞ」とジェラールが心配そうに言うと、ソフィアはか細く震える声で呟いた。「もうバレてしまいましたから…構いません。」その声は弱々しく、彼女の真っ赤に充血した目からは、一日で起きたあまりにも多くの出来事が耐えきれなくなった様子が伝わってきた。ハロルド王の死、ゲオルグの犠牲、トーマの挙兵――気持ちの整理がつかないまま、彼女は限界を迎えていた。

ソフィアはこれまでずっと強がっていたが、ジェラールの前で初めて弱さを見せた。彼女の肩が震え、唇が小さく動くのを見て、ジェラールは彼女を抱き寄せた。温かい腕の中で、ソフィアの体がわずかに弛緩した。そして、ジェラールは抑えきれなくなった気持ちを、衝動的に言葉にした。

「貴方を愛しています。」
ソフィアの目が見開かれた。ジェラールは続ける。「出会ったばかりでこんな事を言うのはおかしいでしょう。こんな状況でこんな事を言うのもおかしいでしょう。でも、気持ちが溢れて言葉に出てしまった。」

ソフィアの真っ赤な目から、堰を切ったように大量の涙が溢れた。ジェラールは慌てて「ごめん」と呟いたが、ソフィアは首を振って応えた。「いいえ…とても嬉しい。でも、気持ちの整理がつかないの…」その声は涙に濡れ、彼女の心の混乱が痛いほど伝わってきた。

新たな誓い

ジェラールはソフィアの手を握り、静かに、だが力強く誓った。「何としてでもカンバーランドを取り戻す。そして、その後に再びこの言葉を伝える。貴方を愛していると、ちゃんと気持ちを整理した状態で聞かせたい。」ソフィアは涙を拭い、かすかに頷いた。「ありがとう…ジェラール様。私も…頑張ります。」

二人はしばらく抱き合ったまま、互いの温もりに慰めを見出した。ソフィアの涙が止まり、彼女が自室に戻った後、ジェラールはベッドに横たわり、改めて決意を固めた。サイフリートの野望を打ち砕き、トーマを救い、カンバーランドをソフィアに返す。そして、彼女に愛を告げる――そのために、明日の作戦は必ず成功させねばならない。

夜の終わり

フォーファーの夜は静かに過ぎ、ジェラールとソフィアの心に新たな絆が生まれた。だが、ネラック城の危機とサイフリートの策略が迫る中、彼らの戦いはまだ始まったばかりだった。翌朝、一行は作戦を実行に移すため、再び立ち上がる準備を整えた。

「ネラック城の亡霊」

フォーファーで休息を取ったジェラール一行とソフィアは、ネラック城の奪還を第一の作戦とし、早朝に出発した。奪われる前に占拠できれば、サイフリートとの戦いで大きく有利に立てる。ジェラール、ヘクター、アンドロマケー、キャット、そしてソフィア率いるフォーファーの精鋭兵たちは、馬を駆り、ネラック城へと急いだ。しかし、新王トーマ軍の動きは予想以上に早く、斥候からの報告で、ネラック城はすでに8割がた占拠されていることが判明した。

少数精鋭の潜入

「このままでは間に合わない…だが、少数精鋭で天守閣から忍び込めば、まだ攻略は可能だ。」ジェラールは冷静に状況を見極め、作戦を立てた。ソフィアが「王族のみが知る裏ルートがあります。そこから侵入しましょう」と提案し、一行は彼女の案に従った。ネラック城の近くまで迫ると、城壁の裏手に隠された狭い通路が現れた。苔むした石段を慎重に進み、城内に潜入した。

裏ルートを抜けると、ネラック兵とトーマ兵が激しくぶつかり合う戦場が見えてきた。剣と剣が火花を散らし、叫び声と血が飛び交う中、ジェラールたちは息を潜めて観察した。だが、様子がおかしい。ネラック兵は極端に少なく、わずか数人しか見えないのに、トーマ兵が次々と倒れていく。キャットが「ねえ、皇帝さん、なんか変だよぉ」と囁き、ヘクターも「敵が多すぎるのに、負けてる…？」と首を傾げた。

亡霊ゲオルグの出現

一行は裏ルートをさらに進み、天守閣のすぐそばにたどり着いた。そこで目にした光景は、恐ろしくも壮絶なものだった。亡霊となったゲオルグが、トーマ兵を薙ぎ倒し、死屍累々の惨状を築いていたのだ。彼の鎧は血に染まり、瞳は虚ろに光りながらも、剣を振るう姿は生前と変わらぬ武人の威厳を放っていた。死してなお、ネラック城を守る使命を果たしている――その執念に、ジェラールは背筋が凍る思いだった。

ゲオルグの亡霊は敵を容赦なく斬り続け、驚くべきことに一人で全てのトーマ兵を殲滅してしまった。戦場が静まり返り、彼は天守閣の玉座にどっかと腰を下ろした。血と死に覆われた空間に、亡霊の重い存在感だけが残った。

亡霊との対峙

ジェラールたちは静かになった天守閣に足を踏み入れ、恐る恐るゲオルグに近づいた。ソフィアが震える声で「兄上…」と呟いたが、反応はない。ジェラールは意を決し、「ゴキゲンイカガカナ？」と声をかけた。ヘクターが「おい、皇帝！何だその声かけは！」と突っ込み、アンドロマケーが「場違いすぎるよ」と呆れたその瞬間、ゲオルグの亡霊が突然立ち上がり、ジェラールに斬りかかってきた。

鋭い斬撃が空気を切り裂き、ジェラールは剣を構えて何とかパリイした。「くそっ、何だこれは！」亡霊の力は異常に強く、一撃ごとに腕がしびれた。ソフィアが「兄上、止めて！」と叫んだが、ゲオルグの虚ろな瞳は敵味方の区別なくジェラールを狙い続けた。一行は天守閣から逃れ、階段を駆け下りた。少し離れると、ゲオルグは再び玉座に戻り、動かなくなった。

作戦の変更

息を整えたジェラールは、「近づくのは危険だ。ゲオルグは死してもネラックを守っているが、俺たちまで敵と見なすらしい」と分析した。ソフィアは涙をこらえ、「兄上がこんな姿に…」と呟き、キャットが「怖かったよぉ…でもカッコよかったねぇ」と震えながら言った。ヘクターが「亡霊相手じゃ勝てねえよ」と唸り、アンドロマケーが「ネラックは彼に任せて、本命のダグラスに行くべきだ」と提案した。

ジェラールは頷いた。「そうだ。ネラックはゲオルグが守ってくれる。俺たちはダグラスへ向かい、サイフリートを倒し、トーマを救う。」一行はネラック城を後にし、次の戦場であるダグラスを目指すことにした。ゲオルグの亡霊が残した壮絶な光景は、彼らの心に深い衝撃を刻みつつも、サイフリートへの怒りをさらに燃え上がらせた。

新たな道へ

フォーファーからネラックへの作戦は、予想外の展開で終わった。ゲオルグの亡霊がネラックを守り続ける中、ジェラールたちは本命であるダグラスでの決戦に全てを賭ける決意を固めた。サイフリートの策略を打ち砕き、カンバーランドを取り戻すため、彼らの戦いは新たな局面へと突入していた。

「ダグラスの決戦」

ネラック城でのゲオルグの亡霊との遭遇を経て、ジェラール一行はダグラスでの決戦に全てを賭ける覚悟を固めた。作戦は二つ――「トーマ軍の制圧または無力化」と「トーマの救出」――を同時進行で進める必要があった。ネラック攻略でダグラス兵が減ったとはいえ、フォーファーの戦力と比べれば3倍以上の差がある。正面からの戦いは自殺行為に等しい。

作戦の立案

ジェラールはソフィア、ヘクター、アンドロマケー、キャットと作戦会議を開いた。「真正面からぶつかるわけにはいかない。フォーファー兵を分散させ、フラッシュファイアで爆発を起こして敵を分断する。その隙に俺たちメイン戦力で兵を減らし、トーマ軍を無力化する。」ジェラールが地図を指しながら説明すると、アンドロマケーが「分断された敵を各個撃破するわけだね」と頷いた。

続けて、ジェラールはキャットに目を向けた。「キャット、お前は単独でダグラス城に侵入し、トーマを探し出してくれ。可能なら救出まで頼む。」キャットはニコッと笑い、「任せてよぉ、皇帝さん！キャットならすぐに見つけちゃうから！」と軽やかに請け負った。

ジェラールはソフィアの目を見つめ、静かに言った。「この作戦で必ずカンバーランドを取り戻す。」ソフィアは真剣な表情で頷き、「信じています、ジェラール様。行きましょう。」その言葉に全員が気合いを入れ、「作戦開始だ！」とジェラールが号令をかけた。

作戦の実行

フォーファー兵は2人1組で散らばり、ダグラス周辺の決められた地点で作戦の時間を待った。ジェラール、ヘクター、アンドロマケー、ソフィアは敵の位置が確認しやすい丘に陣取り、息を潜めて待機した。キャットは単身、常人には分からないような裏道や屋根伝いを駆使し、ダグラス城へと消えていった。彼女の身軽さと盗賊の勘が、ここで最大限に活かされる。

定刻になると、各地でフラッシュファイアが一斉に炎を上げた。オレンジ色の火柱が夜空を切り裂き、爆音がダグラス周辺に響き渡った。ダグラス兵は慌てて炎の対処に走り、指揮系統が乱れる中、索敵を始めた。ジェラールたちは丘からその混乱を見下ろし、「今だ！」と一気に動き出した。

トーマ軍との戦闘

ダグラスの1師団が丘に近づき、ジェラールたちと遭遇した。ヘクターが巨剣を振り回し、「かかってこい！」と叫んで突進すると、敵兵数人が吹き飛んだ。アンドロマケーは素早い動きで横から切り込み、「隙だらけだよ！」と次々に敵を倒した。ジェラールは「二段斬り」を繰り出し、ソフィアは術で援護しながら、「民を傷つけないで！」と声を張った。分断されたトーマ軍は数を減らし、無力化されていった。

一方、各地でフォーファー兵がフラッシュファイアを仕掛け続け、ダグラス軍はさらに混乱に陥った。ジェラールたちの作戦は順調に進み、敵の戦力を削ぐことに成功していた。

ダグラス港の異変

その頃、ダグラス港では誰も予想していなかった事態が起きていた。港の倉庫街から黒煙が上がり、突然現れた一団がトーマ軍の補給線を襲撃していたのだ。それは、フォーファーの歓楽街で働く者たち――ソフィアが支えてきた民の一部だった。彼らは学問の才はないものの、街を守るために立ち上がり、火薬や投石で補給物資を破壊していた。誰かが「ソフィア様のために！」と叫び、港は混乱に包まれた。

ジェラールたちは丘からその光景を見て驚いた。ソフィアが「私の民が…！」と呟くと、ヘクターが「やるじゃねえか、あいつら！」と笑った。この予想外の援軍が、トーマ軍の動きをさらに鈍らせた。

キャットの潜入

同時刻、キャットはダグラス城に侵入していた。屋根を飛び移り、衛兵の目を盗みながら、彼女はトーマの居場所を探るため城内の通路を進んでいた。まだトーマを見つける前だったが、彼女の鋭い勘がサイフリートの気配を感じ取っていた。どこかで彼の冷たい声が聞こえ、キャットは慎重にその方向へと近づいていった。

作戦の進展

ジェラールたちは丘での戦闘を終え、「次はダグラス城だ」と息を整えた。フォーファー兵の爆発作戦と港の援軍により、トーマ軍は大きく弱体化しつつあった。キャットがトーマを見つけ、救出できれば、サイフリートの計画は崩れ、カンバーランドを取り戻す道が開ける。ジェラールはソフィアの手を握り、「もう少しだ」と励ました。ソフィアは頷き、「皆のおかげです」と応じた。

ダグラスでの決戦は、作戦の同時進行により佳境を迎えていた。キャットの潜入と予想外の援軍が、次の展開を左右する鍵となっていた。

「ダグラスの悲劇とサイフリートの逃走」

ダグラス城に潜入したキャットは、軽やかな足取りで衛兵の目をかわしながら玉座の間へとたどり着いた。しかし、そこにトーマの姿はなく、代わりにサイフリートが玉座に座り、冷たい視線で城内を見渡していた。キャットは「トーマがいない…？」と小さく呟き、気配を消してその場を離れ、トーマを探すために移動を始めた。

トーマとの対面

キャットは城内の通路を進み、トーマの部屋へと急いだ。だが、そこにも彼の姿はなかった。部屋の隅に目をやると、外へと続く隠し通路が目に入った。彼女は短剣を手に慎重に通路を進み、途中で少し広い部屋に差し掛かった。その片隅に、小さな影がうずくまっているのが見えた。近づいた瞬間、キャットの心臓が締め付けられるような痛みに襲われた。

それはかつてトーマと呼ばれていたハロルド王の末子の亡骸だった。幼い体は冷たく、血に染まった服が彼の最期を物語っていた。サイフリートの策略の中で、トーマはすでに命を落としていたのだ。キャットは歯を食いしばり、目に涙を浮かべながら、「ごめんね…」と震える声で呟いた。彼女はトーマの小さな亡骸を抱き抱え、冷たい感触に耐えながら、ジェラールたちの元へと急いだ。

ジェラールたちとの合流

その頃、ダグラス港での予想外の援軍とフォーファー兵の各個撃破作戦が功を奏し、ジェラールたちはトーマ軍を削ぎながらダグラス城の玉座の間へと進軍していた。サイフリートは玉座に座したまま、イラついた表情を見せたが、すぐにニヤリと笑うと杖を振った。アンドロマケーの投げ剣が後一歩で届かず、サイフリートは術で姿を消し、逃げられてしまった。「くそっ、逃げられた！」ヘクターが唸り、ジェラールが「追うぞ！」と叫んだが、その気配はすでに消えていた。

戦闘が一段落し、ジェラールたちが玉座の間で息を整えていると、キャットがトーマの亡骸を抱えて戻ってきた。彼女の目は涙で濡れ、足取りは重く、普段の軽やかさは影を潜めていた。ジェラールに近づくと、キャットは消え入りそうな声で、「トーマ…」とだけ呟いた。その腕に抱かれた小さな亡骸を見て、ジェラールは一瞬言葉を失った。

ソフィアが「トーマ！？」と叫び、駆け寄って亡骸に触れた瞬間、嗚咽が漏れた。「弟が…こんな目に…」ジェラールはキャットからトーマの亡骸を受け取り、冷たい体を抱きながら、「サイフリート…何故だ」と低く呟いた。ヘクターが「畜生、あの野郎が！」と怒りを爆発させ、アンドロマケーが「トーマまで…奴の仕業だね」と冷静に言った。

悲しみと決意

キャットは涙を拭い、「隠し通路で…見つけたときはもう…ごめんね、皇帝さん、間に合わなかった…」と声を詰まらせた。ジェラールは彼女の肩に手を置き、「お前が悪いんじゃない。サイフリートが全てを仕組んだんだ」と励ました。ソフィアはトーマの亡骸を抱きしめ、「父上、兄上、そしてトーマまで…私が守れなかった」と泣き崩れた。

ジェラールはソフィアの手を握り、「トーマの分まで戦う。サイフリートを必ず仕留めて、カンバーランドを取り戻す」と誓った。トーマの死が新たな悲劇として一行に重くのしかかったが、その悲しみが彼らの怒りと決意をさらに燃え上がらせた。サイフリートが逃げた先で何を企むのか分からない中、ジェラールたちは次の行動を模索し始めた。

新たな局面

ダグラス城は静寂に包まれ、ジェラールたちはトーマの亡骸を丁重に扱う準備を始めた。トーマを救うという作戦が叶わず、彼がすでに亡骸と化していた今、サイフリートを追いつめ、その野望を打ち砕くことが最優先となった。カンバーランドの未来を巡る戦いは、さらなる悲しみを背負いながら、次の段階へと進んでいった。

「灯台の決着」

トーマの亡骸を抱えて戻ったキャットの報告に、ジェラールたちは深い悲しみと怒りを胸に刻んだ。サイフリートがダグラス城から逃げ出した後、彼が向かった先はダグラスの北に位置する古びた灯台だった。そこを新たな拠点とし、少ない部下と共に潜伏していたのだ。

サイフリートの苛立ち

灯台の薄暗い部屋で、サイフリートは苛立ちを抑えきれずにいた。準備は万端だったはずだ。ハロルド王を毒で葬り、一番厄介なゲオルグを早々に排除し、トーマも簡単に始末できた。ネラック城への侵攻も驚くほど迅速に進めた。それなのに、なぜこうなったのか。「クソッ！」と吐き捨て、彼は近くにいた文官を無意味に殴りつけた。文官は呻きながら倒れ、サイフリートの怒りは収まらない。

「全てはあの皇帝だ…ジェラールさえいなければ…アイツだけは俺自ら葬ってやる！」サイフリートは歯を軋ませ、復讐の炎を燃やした。しかし、その時、彼は異変に気づいた。やけに静かだ。さっき殴った文官は倒れたまま動かない。外の見張りは？急いで窓に目をやると、全員が地面に倒れているのが見えた。「何！？」サイフリートの背筋に冷たいものが走った。

復讐の刃

突然、耳元に低く野太い声が響いた。「よぉ、サイフリートさんよ。」それはヘクターだった。驚愕したサイフリートは足を滑らせ、すっ転んで杖を手放してしまった。「あぁ、あの杖がないと私は…！」彼の声が震えたその刹那、アンドロマケーが鋭い剣をサイフリートの右手に突き刺した。「これはハロルド王の分よ」と冷たく言い放つ。

続けて、ヘクターが左足に槍を突き刺した。「これはゲオルグの分だ。」重い一撃にサイフリートが呻き声を上げると、キャットが彼の頭を力強く踏みつけた。「これはトーマの分よ。」目に涙を溜め込み、震える声で呟いた。そして、ジェラールが最後に立ち上がり、剣をサイフリートの心臓に深く貫いた。「これはソフィアの、カンバーランドの人々の分だ！」

サイフリートは一瞬、目を大きく見開いたが、やがて血を吐きながら倒れ、動かなくなった。巨悪はついに討たれ、カンバーランドは救われたのだ。だが、その勝利はハロルド王、ゲオルグ、トーマという大きな犠牲を払った上でのものだった。

ソフィアとの再会

灯台の外で待機していたソフィアが駆け寄り、ジェラールに抱きついた。「ありがとう…貴方のおかげよ。」彼女の声は涙に濡れ、感謝と安堵が混じり合っていた。ジェラールもまた、ソフィアを強く抱きしめた。「俺たちの戦いが終わった…ソフィア、カンバーランドはこれからだ。」二人は互いの温もりを感じながら、長く苦しい戦いの終わりを噛みしめた。

ヘクターが「やっと終わったぜ」と息をつき、アンドロマケーが「これで少しは休めるね」と静かに微笑んだ。キャットは涙を拭い、「トーマ…もう安心してね」と空を見上げた。灯台の周囲には静寂が戻り、ダグラスの夜空に星が輝き始めた。

「カンバーランドの未来と新たな絆」

サイフリートの最期を迎え、カンバーランドは一時的な平穏を取り戻した。しかし、ジェラールとソフィアにはまだやらなければならないことが残っていた。トーマの亡骸を抱え、灯台での戦いを終えた一行は、再びネラック城へと向かった。カンバーランドの未来を完全に守るため、そして過去の亡魂に別れを告げるために。

ネラック城の亡霊との別れ

ジェラールたちはネラック城の天守閣、玉座の間を訪れた。そこには相変わらずゲオルグの亡霊が座ったまま、虚ろな瞳で前を見つめていた。血に染まった鎧と剣が、彼の使命を静かに物語っている。ジェラールは再び意を決し、軽い口調で声をかけた。「ご機嫌いかがですか？」ヘクターが「おい、皇帝！またその声かけかよ！」と突っ込み、アンドロマケーが呆れたように笑った。

ゲオルグの亡霊は剣を抜こうと手を動かしたが、その瞬間、玉座の横に小さな影が現れた。それはトーマの亡霊だった。幼い姿のトーマがゲオルグの腕に触れ、彼を抑えるように静かに佇んだ。そして、二人はこちらを向いた。ゲオルグの厳格な顔とトーマの純朴な瞳が、ジェラールたちを見つめた。

「カンバーランドを救ってくれてありがとう。」ゲオルグの低い声とトーマの小さな声が重なり合い、二人は静かに微笑んだ。そして、光の粒子となって消えていった。ソフィアが「兄上…トーマ…」と呟き、涙をこらえた。ジェラールは彼女の肩に手を置き、「彼らの魂は安らかな場所へ行ったよ」と慰めた。キャットが「やっと…ね」と空を見上げ、ヘクターが「これで本当に終わりだな」と息をついた。

ダグラスでの話し合い

数日後、ダグラスに戻ったジェラールとソフィアは、王宮で二人きりの話し合いを持った。ソフィアは疲れ果てた表情で呟いた。「ジェラール様、私はこれからどうしたら…」国はボロボロで、ハロルド王、ゲオルグ、トーマを失った今、彼女一人ではどこから手をつけていいのか分からない状態だった。目の前には荒れ果てたカンバーランドが広がり、彼女の肩に重くのしかかっていた。

ジェラールは静かにソフィアを見つめ、提案した。「カンバーランドはバレンヌ帝国の傘下に入らないか？俺と一緒にこの国を再建しよう。」ソフィアは驚き、目を丸くした。「それって…？」彼女の声が震えた瞬間、ジェラールは約束の言葉を伝えた。

「貴方を愛しています。私の妻に、バレンヌ帝国の皇后になってくれませんか。」
ソフィアの目に涙が溢れ、彼女は震える声で応えた。「はい…！」ジェラールは立ち上がり、ソフィアを抱きしめた。二人の想いが重なり合い、カンバーランドの新たな未来がそこから始まった。

カンバーランドの新生

その後、カンバーランドはバレンヌ帝国に吸収され、ジェラールとソフィアの手によって再建が進められた。帝国の支援を受け、荒廃した土地は徐々に息を吹き返し、フォーファーの学問とダグラスの港が再び活気を取り戻した。ジェラールとソフィアは共に国を治め、民のために尽くした。

250年もの長い間、カンバーランドは平和を保ち、今まで以上の発展を遂げた。それはジェラールとソフィアの愛と決意が、民の心に根付いたからかもしれない。二人の想いは、歴史の中で語り継がれ、カンバーランドに永遠の光をもたらした。

エピローグ

ヘクター、アンドロマケー、キャットはそれぞれの道を歩み始めたが、時折ダグラスを訪れ、ジェラールとソフィアの功績を懐かしんだ。ネラック城の玉座は静かに眠り、ゲオルグとトーマの魂が見守る中、カンバーランドは新たな時代を迎えたのだった。

「船旅の後日談」

サイフリートの野望を打ち砕き、カンバーランドを救ったジェラールは、ソフィアとの婚約を果たした。しかし、バレンヌ帝国の皇帝としての責任は重く、国を再建し、ソフィアと共に未来を築くためには、まず帝国に戻って多くの仕事を片付ける必要があった。ソフィアと一緒にいたい気持ちを抑えつつ、ジェラールは彼女に「すぐに戻ってくる」と約束し、一行と共にダグラスから帝国への帰路についた。

キャットの怒りと涙

帰りの船旅は穏やかな海の上を進んでいたが、船内の雰囲気は少し違った。キャットがプンプンと怒りながら、ジェラールの個室に乗り込んできたのだ。「ねえ、皇帝さん！何で私と結婚してくれないの！？」彼女は短いスカートを翻し、腕を組んでジェラールを睨んだ。

ジェラールが「キャット、落ち着け」と宥めようとした瞬間、彼女の目から大粒の涙が溢れ出した。「もう遊んでもらえないんだ！やっぱり皇帝も、あんな清純な子がいいんでしょ！」怒ったかと思えば急に泣き出し、再び怒り出すという感情の波に、ジェラールは戸惑うばかりだった。

そして、キャットは涙を拭いもせず、最後に小さく呟いた。「…最後にもう一度だけ、抱いてよ。」その切なげな声に、ジェラールは仕方なく彼女に近づき、目の涙をそっと拭き取った。そして、キャットの服を脱がせた。相変わらずしなやかな体つきが露わになり、ジェラールの息子はすぐに反応して大きく膨らんでしまった。

キャットの笑顔と情熱

それを見たキャットは、急に目を輝かせて笑い出した。「やっぱり私のことが好きなのね！正直さん♪」そう言うと、彼女はジェラールの息子をツンっと指でつつき、いたずらっぽく微笑んだ。ジェラールは苦笑しながら、「お前には敵わないな」と呟き、キャットを抱き寄せた。

二人はその後、船旅の間ずっと抱き合って繋がっていた。キャットの柔らかな肌と軽やかな笑い声が、狭い個室に響き合い、ジェラールは彼女の熱に抗えなかった。キャットは「皇帝さん、私のこと忘れないでよねぇ」と甘えながら、彼をさらに強く抱きしめた。

ヘクターの目撃

船のデッキで待機していたヘクターは、個室の窓からその光景をまたしても目にしてしまった。「…まったく、皇帝も懲りねえな」と呟きながら、顔を背けたが、特に気にする様子もないようだった。以前の船旅でも似たような場面を見ていた彼にとって、これはもはや日常の一コマに過ぎなかったのかもしれない。アンドロマケーが遠くから「またか」と呆れ顔で笑い、船は帝国へと進み続けた。

旅の終わりと新たな始まり

帝国に到着したジェラールは、キャットとの情熱的な一時を胸に秘めつつ、皇帝としての務めに戻った。ソフィアとの結婚を控え、カンバーランドと帝国の再建に奔走する日々が待っている。キャットは「次に会うときはもっと遊んでよねぇ！」と笑顔で別れを告げ、ジェラールは彼女に「約束だ」と応じた。

ソフィアとの愛と、キャットとの絆――ジェラールの心には二つの想いが共存していた。カンバーランドと帝国の未来を築くため、彼の旅はまだ終わりを迎えていなかった。