1: 名無しで叶える物語◆sfb9YSS5★ 2025/03/28(金) 04:02:21 ID:???00
メイ「メェ~」

きな子「どうするんすか、どうするんすか! メイちゃんがヤギさんになっちゃったっす!」

四季「落ち着いて。この子はただのヤギじゃない。シベリアアイベックスという大型の――」

夏美「マニーの匂いが致しますの~。早速動画撮影の準備を……痛っ! なーにするんですの!」

四季「メイは見世物じゃない」

きな子「最初に部室にいたのは四季ちゃんっすよね? 一体、何があったんすか?」

四季「メイが私のことを好きになる薬を作った……はずだった。でも、飲ませたら突然煙に包まれて、気がついたら変身していた……何かを間違えたらしい。私、いつもと少し違う感じだから、調子が狂ったのかも……」

きな子「あ、四季ちゃん、それ可愛いヘアピンっすね……いやいや、でもだからって……」

夏美「ツッコミどころしかないですの……元に戻す薬は作れないんですの?」

四季「無理。このまま飼うことにした。メイはヤギになっても可愛い」

夏美「四季…落ち着いてる場合じゃないですの……」

きな子「あっ……! うっかりしてたっすけど、きな子、動物さんと話せるんすよね……」

夏美「そういえば…それで、なんて言ってるんですの?」

2: 名無しで叶える物語◆sfb9YSS5★ 2025/03/28(金) 04:04:40 ID:???00
きな子「メイちゃん、メイちゃん、大丈夫っすか?どうしてこんなことに!」

メイ「メェ~」

きな子「ふんふん。なるほど……とりあえずお腹が減ったから紙を食べたいって言ってるっす。ふんふん。サイン色紙じゃないとダメ…? 恋先輩のが良い……?」

四季「メイ……私ので我慢して」

きな子「いやいや、紙なんて食べてる場合じゃないっすよ。こんなところ誰かに見られたら……!」

夏美「でもー、ヤギになったメイの動画を全世界に公開すれば、たくさんのマニ……じゃなくて情報が集まるはずですの。元に戻す方法だってきっと!」

メイ「メェ~」

きな子「早く色紙を食わせろ、って言ってるっす……恋先輩のサイン、部室に置いてあったりしないっすかね。勝手にあげるのは悪いっすけど……今は緊急事態っす」

夏美「……たしか、ファンの人へのプレゼント用に用意したものが、その引き出しの中にしまっておいたはず……ほら、ありましたの! えーっと、でも本当にあげるんですの……? ドンびきですの……」

四季「これからは私が世話をするんだから、私のを食べて」

夏美「この人、言ってるそばからサイン書いてるんですの……」

四季「ほら、メイ。私を食べて」

メイ「メェ~」

きな子「えーっと……四季ちゃんのはいらないって言ってるっす……あと、お腹減って限界みたいっす」

四季「メイ……どうして」

3: 名無しで叶える物語◆sfb9YSS5★ 2025/03/28(金) 04:06:37 ID:???00
夏美「とりあえず、恋先輩のサインをあげておくしかないんですの。もう暴れないで……ほら、これ渡してくださいですの」

きな子「きな子があげるんすか……? 良いっすけど…恋先輩、申し訳ないっす……ほらメイちゃん」

メイ「メェ~!」

夏美「わー……めちゃくちゃ喜んでますの……」

四季「ショック……」

メイ「メェ~!」

きな子「もっと寄越せって言ってるっす。でも恋先輩のサインは一枚しか……ふんふん。かのん先輩のも欲しい? らしいっす……」

四季「まったく……ほら、メイ、よく噛んで食べるんですの」

メイ「メェ~」

きな子「他のサイン色紙も食わせろって言ってるっす……あ……四季ちゃん、ショックでいじけちゃったっす……」

夏美「でもいつまでもこんなことしてるわけにもいかないですの。もうすぐ先輩たちも来ちゃう! 四季、本当に元に戻す薬はないんですの?」

四季「無理。メイは私が責任を持って世話する」

夏美「そればっかりですの……」

4: 名無しで叶える物語◆sfb9YSS5★ 2025/03/28(金) 04:07:42 ID:???00
四季「一応、この薬の開発の元になった論文がそこにある。でも元に戻す方法は分からない」

きな子「えーっと、難しくてよく分からないっすけど……ん? 注意事項……薬の副作用は……過剰摂取により、ヤギ(シベリアアイベックス種)に変身することあり?」

夏美「まさか副作用ってはっきり書いてあるとは……あ、もうみんなのサインがなくなっちゃう……メイ、自分のサインまで食べて、あとは四季の分だけですの」

四季「メイ、食べて」

メイ「メェ~」

きな子「やっぱりいらないみたいっすね……でも、どうして四季ちゃんのサインだけ食べないんすかね」

四季「うーん、美味しくなさそう……とか? それはそうと……過剰摂取の副作用、って書いてあるなら、これって薬の量を間違えたってことですの? 四季に限ってそんなことがありますの?」

四季「しっかりと量も測ったつもりだった。でもミスがなかったとは言い切れ――」

きな子「あー! 四季ちゃん!」

四季「……なに?」

きな子「きな子、思いついたっすけど、四季ちゃんが作ったのは、四季ちゃんを好きになる薬っす。でももともと四季ちゃんを好きだったとしたら!」

四季「……?」

夏美「もしかして……過剰摂取ですの!?」

四季「え……?」

5: 名無しで叶える物語◆sfb9YSS5★ 2025/03/28(金) 04:09:24 ID:???00
きな子「メイちゃんには薬なんていらないのに、さらに四季ちゃんを好きになる薬をあげちゃったんすよ。だから過剰摂取になってヤギさんになっちゃったんすよ!」

夏美「それに薬の副作用なら、そのうち効果も切れて元通りになるはずですの!」

四季「二人とも待って。そんなのおかしい。今日はメイから貰ったヘアピンを付けてきたのに、気付いてもくれなかった」

きな子「そういえば、さっき言ってたっす。メイちゃんからのプレゼントだったんすね……」

四季「私はそれが悲しくて、薬を使ってメイを振り向かせようとして……だからきっとメイは私のことなんて嫌いなはず――え?」

夏美「なにごとですの……! ヤギさん光ってますの!」

きな子「煙まで出てきたっす! なんすかこれっ! いや、四季ちゃん、メイちゃんがヤギさんになったときも煙がどうって……これはもしかして……」

四季「下がって――」

夏美「うわぁ! 爆発ですの?」

メイ「痛っ……私はいったい何を……?」

きな子「メイちゃん!」
夏美「メイ!」

メイ「きな子、それに夏美……」

6: 名無しで叶える物語◆sfb9YSS5★ 2025/03/28(金) 04:11:12 ID:???00
きな子「良かったっす……元通りになったんすね。メイちゃん、このまま一生紙を食べて暮らすことになるのかと……」

夏美「大丈夫ですの? ツノとか残っていたり……」

メイ「何言ってんだよ二人とも……私、なんでこんなところで寝転がってんだ? たしか部室に来たら四季が先にいて――四季!」

四季「メイ……良かった。私のせいでメイがヤギになって……」

メイ「なに言ってんだよ。ヤギ? ったくみんなしてどうしたんだ」

きな子「メイちゃん、色紙を10枚も食べてたっすけどお腹大丈夫っすか…?」

メイ「そういえば何かお腹の調子が……じゃなくて、さっきから何の話をしてるんだよ……いや、だんだん思い出してきたぞ。たしか四季が急に何かを企んでそうな顔で私にお茶を飲めって勧めてきて……仕方なく飲んで……そこまでは覚えてるんだけど」

四季「メイ、ごめん。一時はどうなるかと思った。やっぱりメイは人の方が可愛い」

メイ「もう、可愛いとか言うな! 恥ずかしいだろ。何言ってるのかも分からないし」

きな子「今なら分かるっす。四季ちゃんのサインだけは、大切すぎて食べられなかったんすね」

夏美「そういうことだったんですの……まぁ、一件落着して良かったですの」

7: 名無しで叶える物語◆sfb9YSS5★ 2025/03/28(金) 04:12:56 ID:???00
メイ「四季のサイン? 何の話だよ。サイン、確かに家に大事に飾ってるけど……それが一体……」

きな子「語るに落ちたっすね。まあまあ、終わったことだからいいんすよ。先輩たちが来る前に解決できて良かったっす」

夏美「本当ですの。部室で四季がヤギを撫でていたときには一体何事かと……でももう少しうまくやればマニーも手に入ったかも……」

メイ「私には相変わらず何を言ってるのかさっぱり分からないんだけど……まあ、もういいのか? そうだ……でも二人もいるのか……ちょっと恥ずかしいな」

きな子「あ、きな子たち、お邪魔だったら席外すっすよ」

夏美「また後で来ますのー。ちょうど教室に忘れ物が……」

メイ「あ、ごめんな。二人とも――えっと、行ったみたいだな……」

四季「メイ、どうしたの。改めて」

メイ「大したことじゃないんだ。恥ずかしいけど、私、今日ずっと四季に言おうと思ってることがあったんだよ。ほら、髪」

四季「え?」

メイ「四季」

四季「……」

メイ「そのヘアピン、似合ってるぞ」





おしまい

引用元: 【SS】米女メイ「メェ~」