0007以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
2019/06/19(水) 09:08:36.225ID:gdyKX+p7p
妖狐「よう来なすった」

男「はい、油揚げ。みんなで食べてくれ」

妖狐「ほほほ、ありがたい手土産だのう。して、今宵はどの子と遊ぶのかえ?」

男「入りたての赤毛の……」

妖狐「ああ、鬼灯。まだ男慣れしとりゃせん、お手柔らかにの」

男「じゃ、よろしく」

妖狐「滝の間へ……」

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2019/06/19(水) 09:14:37.183ID:gdyKX+p7p
男「あの子は噛み癖があるな」

妖狐「初々しかったろ?」

男「初々しいというより、まだ獣だ」

妖狐「竿を折られたかえ?」

男「だったらもう狐釣りは出来んな、はは」

妖狐「ほほほ。たまにはよかろ?」

男「ま、変わり種も悪くない。また来る」

妖狐「ご贔屓に……」

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2019/06/19(水) 09:25:58.287ID:gdyKX+p7p
妖狐「よう来なすった」

男「ほれ、寿司だ。奥の小狐に」

妖狐「ほほほ、今から餌まきとは手が早いの」

男「苦界の楽しみなんて飲み食いくらいだ、気まぐれの仏心よ」

妖狐「お心遣い痛み入りまして。して、今宵はどの子と?」

男「鈴蘭は空いてるか」

妖狐「寝とるのう」

男「病か?」

妖狐「いいえ。根っからの寝坊助での……今も火鉢の前で丸くなっとる」

男「まだ月も上り始めたばかりだぞ?」

妖狐「じきに遣るで、おまいさんは岩の間へ……」

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2019/06/19(水) 09:31:07.870ID:gdyKX+p7p
男「鈴蘭は、あれは名を挙げるな」

妖狐「それはそれは、お楽しみだったかのう?」

男「ああ。あれはいい、男を惑わす香りがする」

妖狐「ほほほ。うちの子は皆々、狐故に」

男「化かし慣れてるか」

妖狐「ほほ」

男「また来る」

妖狐「またいらしゃんせ……」

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2019/06/19(水) 09:40:21.611ID:gdyKX+p7p
妖狐「悪いが今宵は早仕舞いでの」

男「間が悪いな。棚卸しか?」

妖狐「そんな所よ。む、それは?」

男「ああ、手土産をと思ってな」

妖狐「ほう」

男「水饅頭だが……置いて帰る、銀杏に食わせてやってくれ」

妖狐「ほほほ、あの子も喜ぶでな」

男「そうだ、一目挨拶くらいは良いだろう。呼んでくれ」

妖狐「……ほほほ、荒れた中を客人に見せる訳には行かぬ。お帰りを」

男「上げろとは言わん、この場で一言二言だ。構わんだろう?」

妖狐「お客人」

男「……」

妖狐「お帰りを」

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2019/06/19(水) 09:48:33.128ID:gdyKX+p7p
妖狐「よう来なすった」

男「銀杏だ」

妖狐「ほほほ、気が早いのう」

男「この前は空振りだったからな。で、銀杏は?」

妖狐「クニヘ」

男「なっ」

妖狐「故、今宵は他の子を……」

男「一言もなしにか? 手紙か何か、預かってないのか?」

妖狐「あたしらにもペコリお辞儀一つでの。今朝方、発ったばかりよ」

男「……そうか」

妖狐「ええ。して、今宵はどの子を?」

男「菖蒲だ。アイツは銀杏と親しかったな?」

妖狐「川の間へ……」

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2019/06/19(水) 09:54:18.158ID:gdyKX+p7p
男「聞いたぞ」

妖狐「はてな、京の鳥居の数をかえ?」

男「銀杏のことだ」

妖狐「……菖蒲だのう、あねさんあねさんと慕っておった」

男「本当に抜けたのか」

妖狐「抜けられやせん」

男「打ったのか」

妖狐「抜けようとしたでの」

男「今、何処にいる」

妖狐「河原かのう」

男「何処の河原だ!?」

妖狐「賽の、よ」

男「……」

妖狐「義理とは言えど、母を置いて行くなんぞ……抜けようなんぞ、阿呆なことを……!」

男「また、来る」

妖狐「く、うう……!」

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2019/06/19(水) 10:00:21.195ID:gdyKX+p7p
妖狐「菖蒲、喋ったのう」

菖蒲「あねさん……あねさん、ううっ」

妖狐「そんな顔でお客の前に出たのかえ?」

菖蒲「い、痛っ」

妖狐「しっかりおしよ、あたしらが見せていいのは一夜の夢だけ。涙なんぞ、朝露と消しな」

菖蒲「ご、ごめんなさいかか様……でも」

妖狐「でもは無しだ、いいね菖蒲」

菖蒲「……はい」

妖狐「……」

菖蒲「ねえかか様、これを」

妖狐「おまい、そんな櫛持ってたかえ?」

菖蒲「ううん。これはあの人が……あの人が、銀杏あねさんにって」

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2019/06/19(水) 10:07:57.380ID:gdyKX+p7p
妖狐「銀杏、恨んでおるかえ?」

妖狐「……」

妖狐「畜生の念仏なんぞ、誰が聞くものか」

妖狐「……」

妖狐「銀杏、何故抜けようとした?」

妖狐「こうなることは分かっておったろ」

妖狐「なぁ、銀杏よ」

妖狐「銀杏……」

妖狐「櫛は、おまいの物だ」

妖狐「おまいの毛並は美しかったからのう、映えるよな黄金色で」

妖狐「銀杏、成仏しとくれ……」

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2019/06/19(水) 10:10:23.446ID:gdyKX+p7p
妖狐「よう来なすった」

男「ああ」

妖狐「あの子も、もう居らぬに、よう遊びに」

男「線香を」

妖狐「?」

男「線香を上げさせてくれ、今日は遊びじゃない」

妖狐「……」

男「……駄目か?」

妖狐「奥の間に……」

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2019/06/19(水) 10:16:01.997ID:gdyKX+p7p
妖狐「それは?」

男「ドブロクだ、銀杏とよくやった。ほれ」

妖狐「……あたしにもくれるのかえ?」

男「かかさんが代わりに飲んでやってくれ」

妖狐「では有難く頂くかの……んっ」

男「いけるだろう?」

妖狐「粗野な味だのう」

男「ははは」

妖狐「土臭くて、泥臭くて、その癖、矢鱈に甘くてっ」

男「……」

妖狐「銀杏みたいな酒だのう……」

0025以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
2019/06/19(水) 10:26:54.836ID:gdyKX+p7p
男「他の子と遊んでも小言一つ言わなかった」

妖狐「あの子らしい」

男「俺はてっきり、割り切ってるんだと思ってたよ」

妖狐「初めて来た時に襖の隙間から見られてたんだよ、おまいさん」

男「ああ、聞いた時は驚いた」

妖狐「己の褥に来てくれるか心配で泣き腫らしておったのう、ほほほ」

男「純な女だったな……」

妖狐「本当に……故に、抜けようとしたんだろうがのう」

男「そこだ。その理由が、抜けようとした理由が俺には分からない」

妖狐「……ほ、ほほほ! 」

男「? な、なんだ?」

妖狐「おまいさん、おまいさんも相当に純というか、野暮というか!」

男「一体、どういう」

妖狐「逢いたかったのさ。一目だけでも、ね」

0026以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
2019/06/19(水) 10:32:20.723ID:gdyKX+p7p
妖狐「おまいさん、まあるい月の上る晩にしか来なかったろう? 焦がれちまったのよ」

男「……」

妖狐「何処の誰とも言えぬ掟、抜け出た所でどうしようとしてたのか」

男「俺に」

妖狐「そ、おまいさんに逢いたい一心でのう」

男「俺は……俺も」

妖狐「この櫛、銀杏にくれたとか。娘に代わって礼を言わせとくれ」

男「……」

妖狐「本当に、有難う御座います」

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2019/06/19(水) 10:35:14.431ID:gdyKX+p7p
妖狐「娘をここまで慕って下さったおまいさんを、店に上げておいてそのまま返したのではあの子に申し開きも出来ん」

男「なっ」

妖狐「あの子の代わりとは行くまいが、今宵、一夜の夢を……のう?」

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2019/06/19(水) 10:40:47.362ID:gdyKX+p7p
妖狐「ん、んむ、んぅ」

男「ちゅ、はむ、ん」

妖狐「ん、はぁ……」

男「甘いな」

妖狐「ほほ、油揚げかのう」

男「ん、ちゅ、んっ」

妖狐「ぁむ……ん、んんっん!?」

男「ぷはぁ……ああ、油揚げだ」

妖狐「はぁ、はぁ……悪戯好きだの」

0030以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
2019/06/19(水) 10:45:57.994ID:gdyKX+p7p
妖狐「のう、おまいさん。本当に……」

男「?」

妖狐「こんなおばさんでいいのかえ…?」どたぷん

男「……」

妖狐「……きゃあ!?」

男「く、ぅう」

妖狐「ア、おぉ…! ん、んぁ、ああ!」

男「一夜の、夢だ、かかさんも、夢と思って」

妖狐「んっ、んひ、ひゃ……あ、あっ、ん!」

男「楽しめば、いい……!」

妖狐「はぁー……はぁー……は、ぁあっ!」

0031以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
2019/06/19(水) 10:52:24.097ID:gdyKX+p7p
男「はぁ、はぁ、はっ、はっ、はっ」

妖狐「や、ぁあ! んぁ、あっ、んあ!」

男「う、ぉお!?」

妖狐「ふう、んっ……ほほほ、やられっぱなしは、性に合わんで、のうっ?」

男「くっ、う! あっ、くぅ……」

妖狐「ん、んん……粘っこいのう、ほほ。っ、あん」

男「はぁ、はぁー、はぁー、くそ」

妖狐「ひゃん!?」

男「はぁ、はぁ……よっ」

妖狐「んひぃ、ひゃ、ひゃめ、ああ!」

男「狐はみんな、ここが弱い……」

妖狐「あっあっあっあっ、あ、うぅ~……っ♡」

男「ぐうぅ、ぅ!」

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2019/06/19(水) 10:55:12.162ID:gdyKX+p7p
男「ぅ、あ……くっ」

妖狐「ひっ、んん……まだ……あっ」

男「はぁ、はぁ、はぁ……」

妖狐「はぁ、はぁ、ふぅー……満足かえ、おまいさん?」

男「……」

妖狐「ほほっ」

男「……まだまだっ」

妖狐「やん♡」

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2019/06/19(水) 10:59:00.014ID:gdyKX+p7p
男「もう、出涸らしだ」

妖狐「ほほほ、楽しめたかの?」

男「ああ、良い夢だった」

妖狐「そうか。それは……良かったのう」

男「ああ、良かった」

妖狐「……」

男「……」

妖狐「また、来てくれるかえ?」

男「さてな」

妖狐「そうかえ」

男「ああ」

妖狐「また、ご贔屓に……」

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2019/06/19(水) 11:06:01.010ID:gdyKX+p7p
菖蒲「あ、かか様」

妖狐「美味そうな匂いだの」

鬼灯「うまいぞ! かかさまも食うか!? 鬼灯が取ってあげる!」

妖狐「おおそうかそうか、ありがとうのう。では一つ頂くか」

菖蒲「美味しいでしょう、かか様? 菖蒲が味つけをしました!」

妖狐「おお、甘くてとろけて、これは美味いのう。何処でこんな?」

菖蒲「鈴蘭、ねえ鈴蘭」

鈴蘭「んー、美味……はむ」

菖蒲「じゃなくて、どこで見つけたのってかか様が」

鈴蘭「んー……? あー、かか様、おはよーございます」

妖狐「ああ、おはよう。鈴蘭が見つけたのかえ?」

鈴蘭「んー? うんー、山の滝口でー」

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2019/06/19(水) 11:10:50.625ID:gdyKX+p7p
鬼灯「鬼灯がはこんだ! おもかった!」

菖蒲「菖蒲が、味つけは菖蒲が!」

妖狐「おうおう、みな偉いのう。えらいえらい、いいこいいこ」

鬼灯「えへへへ!」

菖蒲「うふふふ」

鈴蘭「かか様ー、ここも煮えてるー」

妖狐「おお、鈴蘭が取り分けてくれるのか? ありが」

鈴蘭「入れてー」

妖狐「……はい、こんなもんかのう?」

鈴蘭「ありがとー」

0038以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします
2019/06/19(水) 11:16:18.579ID:gdyKX+p7p
妖狐「それにしても美味いのう」

菖蒲「ね、ヤニ臭くないしとっても美味しいです!」

鬼灯「鬼灯、カネくさくないの久しぶり!」

妖狐「本当に、今時珍しいくらい純な味じゃ」

鈴蘭「なんかねー、おちてたー」

妖狐「何だ、狩った訳ではないのか」

鈴蘭「んー……見つけた時はー、もー死んでたー」

鬼灯「鬼灯がはこんだ! おもかった!」

菖蒲「菖蒲が捌きました! 菖蒲が味つけをしました!」

妖狐「はい分かった分かった、いいこいいこ」

鬼灯「えへへへ!」

菖蒲「うふふふ」

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2019/06/19(水) 11:25:35.856ID:gdyKX+p7p
妖狐「あたしはこの位にしておくかの。刺草や水仙たちにも残しておくんだよ」

鬼灯「えー……」

菖蒲「こら鬼灯。分かりました、かか様」

妖狐「ん、どうかしたかえ鈴蘭」

鈴蘭「取った服、かか様の部屋ー」

妖狐「ああ、運んで置いてくれたのかえ。それじゃあお休み」

鬼灯「お休みなさーい!」

菖蒲「お休みなさい」

鈴蘭「おやすみー」

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2019/06/19(水) 11:38:01.219ID:gdyKX+p7p
妖狐「実に美味であったのう」

妖狐「ふぅ」

妖狐「この服……矢張り、か」

妖狐「甘くって、とろけて、純な味で」

妖狐「狐を嫁になんて、本当に今時……」

妖狐「美味かった。馳走であった」

妖狐「……」

妖狐「畜生の念仏なんぞ、誰が聞くもんか」

妖狐「ん? お客人かね……ずっと銀杏の隣に居てやっておくれよ、おまいさん」



妖狐「よう来なすった。して、今宵はどの子と?」