1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:31:38 ID:xvxEIjv.
数ヶ月前の、とある昼休み
男と、彼の上司である先輩、そして部長の3人で、昼食をとっていた
場所は社員食堂
備え付けのテレビでは、いつもみたく公共放送局のニュース番組が流れている
どこにでもある、見慣れた光景
そこで部長は、こう言っていた
2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:33:09 ID:xvxEIjv.
部長「野党は不正の追及よりも、他にすることあるだろ」
男「?」
部長「なぁ、君もそう思うだろぅ?」
男「す、すみません。聞いてませんでした。どういうことですか?」
先輩「おいおい、しっかりしろよな」
男「ほんと、ごめんなさい。ラーメンに夢中でして」
男「……で、何の話です?」
部長「ったく。ほら、ニュースでやってるだろ!」
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:34:04 ID:xvxEIjv.
キャスター『それでは、次は政治の話題です』
キャスター『先日、大臣が省庁による統計データ不正を公表しましたが、』
キャスター『議会では、与野党共に更なる調査を求めています』
大臣『いわば~、まさに~、おいて~』
議員『国民の為、しっかりと事実解明を~!』
男「あー、最近多いですよね。こういうニュース」
部長「まったく、けしからんよ!」
4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:35:39 ID:xvxEIjv.
男「はい。僕も技術者なので、やっぱりデータ収集は適切に……」
先輩「ちがうちがう、そうじゃ、そうじゃない!」
男「え?」
部長「どうでもいいことを、グチグチぐちぐち掘り返しやがって、」
部長「ほんと野党はムカつくわ。やっぱり野党って反政府存在は、即刻消滅して欲しいもんだ!」
男「」
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:36:10 ID:xvxEIjv.
先輩「まったく、部長の仰る通りですよ」
部長「そうだよな。仕事せず、文句だけは一人前に言える奴らなんて、社会人として失格だろ?」
先輩「ええ。いやはや、困ったものです」
部長「何でもかんでも、政府に反対ハンタイ反対! 足引っ張るしかできない無能集団だわ、アレ」
先輩「ええ。ああいう奴らを支持してる人間も、仕事できない人種ばっかりでしょうよ!」
部長「そうかそうか、やっぱりそうか。あはははw」
先輩「はい、きっとヤバい人間ばっかりですよ!!!」
男「……」
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:36:44 ID:xvxEIjv.
部長「高々、数%の違いでウダウダと!」
先輩「はい。概ね合ってればいいですよね。統計なんて」
男「……」
部長「そう。帳簿上の数字なんてどうでもいいの。国防とか経済とか、実際の税金がどうなるかこそ、大事!」
先輩「あー、なるほど。消費税とかも、2%でも増加は中止にして欲しいですよね~」
部長「何言ってんの。増税しないと税収が足りなくなるだろう!」
先輩「ですよねー。流石は部長。私もそう思ってました!」
男「……」
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:37:17 ID:xvxEIjv.
アーデーコーデー!
ハイハイ!
ツマリ、ヤトウガー!!
ハイハイ、ハイハイ!!
男「……」
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:37:56 ID:xvxEIjv.
男(……)
男(どうしよう)
男(政治社会に詳しくないから、ぜんぜん話に参加できない)
男(そういえば、部長は度々、『野党はだらしない』とかって批判してるよな~)
男(ああいう話は、ほんと難しくて分からん)
男(上司が言ってるから、まぁ、正しいんだろうけど…………)
男(あ、ラーメン伸びるから早く食べよ)
ズズズズ
9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:38:56 ID:xvxEIjv.
部長「さてと、ごちそうさま」
男「ごちそうさまでーす」
部長「じゃぁ、昼イチの役員会に出る準備あるから、俺はここで」
先輩「はい。明日の接待ゴルフの準備は、私の方で抜かりなく!」
部長「おぅ、頼むよ」
部長「……ここ1年。弊社、主力製品の品質レベルは落ちてるからな」
部長「何とか他、特に接待で取引先のご機嫌を良くしないと!」
男「………………っ!」
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:39:50 ID:xvxEIjv.
男「すみません、僕が総担当者になってから、明らかに品質が悪化してしまって……」
部長「おっと、しまった……
先輩「なぁに、そんな気にするなよ」
部長「あぁ。君に責任はないさ。むしろ良くやってくれていると思う」
男「……」
部長「確かに、担当者の変更直後はイマイチなレベルだったが、それでも暫時的に改善してきた。いや、してきてる!」
先輩「取引先からのフィードバック見たろ。毎月ごとに1%くらいだけど、要求レベルには近づいてる!実際、すごいぞ。自信持て!」
男「……はい」
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:40:25 ID:xvxEIjv.
部長「野党みたいにギャーギャー騒がず、黙々と仕事に取り組む姿勢!」
部長「俺は素晴らしいと思うよ。お手本みたいな、我が国の若者像だよ!」
男「しかし、改善でもこのペースでは……」
先輩「いーのいーの。どーせ、これはお前じゃなく、会社の責任なんだから!」
先輩「お前は難しいこと考えず、目の前に集中しとけ! 責任持つのは、ワイら上司の役目だ!」
男「……そういう、ものでしょうか」
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:41:17 ID:xvxEIjv.
部長「うむ。いわゆる自己責任ってやつさ」
先輩「まさしく! 自分の仕事だけキチンとこなす。そうすりゃ自然と、何とかなるもんだから」
部長「己の役目を愚直に果たす、脇目もふらず。この道しかない!」
先輩「ですです!」
男「……」
男「ありがとうございます。もっと、頑張っていきます」
先輩「おう。やったれや!」
部長「君ならできる。期待しているよ!」
男「……はいっ!」
男(この人たちの為に、もっともっと……!)
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:42:00 ID:xvxEIjv.
男「それでは僕は今一度、現状の生産工程について分析し直してみますので」
部長「あぁ。頼んだよ」
先輩「今月こそは目標達成の、まぁ目処は付けたい所だが……」
男「はい。手応えとしては、きっと些細な要因だと思うんですよ。単純な、見落としみたいな」
男「それさえ出来れば、以前みたいな品質に戻るはずです。理屈としては!」
部長「君を信頼しているよ」
先輩「やれるだけやってみろ」
男「はい、やってみます!」
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:45:17 ID:xvxEIjv.
【男の机】
男「よし、じゃぁ状況のおさらいしてみるか!」
男「えっと、まず僕が着任する以前の、品質結果の平均が……」
A級品 ー 75%
B級品 ー 24%
不適合品 ー 1%以下
男「だったんだよな。で、僕が担当になってからの、納品データまとめると……」
A ー 31%
B ー 64%
不適合品 ー 5%
男「……アカンよな。これはまずい。比率が完全に変わっとる」
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:46:03 ID:xvxEIjv.
男「う~ん、どうしてこうなった?」
男「取引先の要求では、『A級品は70%以上、不適合品は5%以下の割合で』なんだけど……」
男「……今までは上手くやれてたんだ。どこかに原因があるはず! 突き止めなきゃ!」
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:46:57 ID:xvxEIjv.
男「僕の設定、工作機の動かし方がマズイんだろうか?」
男「でも意図して変更した点はないはずだし??」
男「もしくは、メンテナンスの不備とか?」ブツブツ
男「経年劣化だとすると、厄介なんだけど……」
男「治具類やノズルが変形してたり……は、調べたけどしてないし」
男「原料も……以前より硫黄とベンゼンの比率が高いけど、そこまで変わってる訳でもない」ブツブツ
17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:48:07 ID:xvxEIjv.
男「中間品の導電性に関しては問題ない。陰極の電圧がやや高めなのが気掛かり」
男「応答性が落ちてるから、油圧ユニットに異常があるのかな?」
男「プレス機のセンサー系統も、一回業者を呼んで調べてもらった方がいいかも」ブツブツ
男「生産速度を落とせば、もっとバラツキがなくなりそうだけど」
男「それやると、生産個数が減るからできないんだよな……」ブツブツ
男「自社で抜き取り検査を強化しても、対費用効果は薄いしなぁ」
男「結局は組み込み時の稼働性能で結果が決まるから、自社内におけるデータ収集の意味しかないし……」
男「側面を鍍金か、もしくはアルミ溶接すれば強度は保つけど、変形するから………」ブツブツ
アーデモナイ、コーデモナイ……
アーデモナイ、コーデモナイ……
ブツブツ……
ブツブツ……
18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:48:50 ID:xvxEIjv.
男「だめだ、原因がどうしても分からない……」
キンコンカンコン♪
キンコンカンコ~ン♪
男「あ、やべ。もうこんな時間か」
男「やっぱり量が多いけど、一度全数検査をするか。明日、また休日出勤して」
男「デートも中止だけど、もう次の納品まで時間ないし、会社の為だから仕方ない!」
男「……僕のせいで、むっちゃ怒るだろうなぁ、アイツ」
男「こんな無能で、スマヌ……スマヌ…………(´;ω;`)」
19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:49:48 ID:xvxEIjv.
プルルルルルル♪
男「あ、もしもし?」
女『はいはい? どしたん?』
男「あのさー、明日のデートだけど、中止できない???」
女『え? 何だって??』
男「デ、デートの中止を……」
女『は? シバくぞ!? (ドス声)』
男「ふぇぇぇ……(´;ω;`)」
20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:50:29 ID:xvxEIjv.
女『えー、何でナンデ!? またかよ!???』
男「申し訳ございません……」
女『また仕事か、休日出勤するんか!』
男「その通りでございます……」
女『クソブラック企業め、ブラック企業はマジでクソ!』
男「私の不徳と致すところです……」
女『はぁぁぁぁ……(クソでか溜息)』
男「う、ぅぅぅ……(咽び泣き)」
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:52:50 ID:xvxEIjv.
男「今度も、ちゃんと埋め合わせするからさ」
女『おうよ。パフェ奢って貰おやないかい! ええ?!』
男「おけおけ。おけまる水産」
女『もーアンタ、最近は残業とか休日出勤ばっかじゃん……』
男「そうしないと、仕事が片付かなくて……」
女『仕方ないかもしれんけど、自分の体とか壊しちゃ駄目だよ?』
女『元も子もないからさ、そんなん……』
男「うん。気遣ってくれて、ありがと」
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:53:37 ID:xvxEIjv.
女『じゃ、また何かあったら連絡してよな~』
男「うん。なるべく早くするよ」
女『ほんじゃ、おつかれ~』
男「はいはい。また~」
ピッ♪
男「……」
23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:55:33 ID:xvxEIjv.
男「……」
男「……最近、ぜんぜん会えてないし」
男「こんな仕事中心生活が続くなら、もう別れた方が、彼女の為にいいのかも?」
24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:56:17 ID:xvxEIjv.
男「まぁ、今は切り替えていこう」
男「工場内の温度設定と、測定装置の用意だけして、今日は帰ろうか」
男「明日は5時起きで、一日中測定になるな。めんどくさいけど……」
男「いいや、部長たちが接待で頑張ってくれてるんだ! 僕も僕のやれる事をやらないと」
男「部長! 先輩! あなたたちの期待に応えてみせます。見ててください!!」
男「ウオオオオ\( 'ω')/オオオオオアアアーーーーッ」
社長「この叫び声は!」
社長「あ、いた!」
25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:57:01 ID:xvxEIjv.
社長「よかった。キミ、まだ社内に居てくれたんだ」
男「あぁ、社長。ちょっと明日の準備してまして……」
社長「それはいいから、ちょっと玄関まで来てくれないか!」
社長「えらい事になってしまったッ!」
男「? どうかしたんですか??」
社長「警察と消防の方がいらしてる。キミにも事情を聞かせて欲しいと」
男「????」
26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:57:52 ID:xvxEIjv.
【女の部屋】
女「くそ~」
女「ま~たデート、スッポかされちゃったョ……」
女「仕事シゴトって、大変なんだろうけど……」
女「あんなお人好しがブラック企業に勤めてるとか、世の中理不尽だわ」
女「まぁ、お人好しだからこそ、ブラックでも頑張れるのかもしれないけれど……」
27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:58:30 ID:xvxEIjv.
女「あー。なんかムカついてきたな~」
女「忙しいなか、僅かな時間を見つけて、豆にメールとかしてくれんのは良いけれど」
女「実際に会うとかできんから、ストレスで頭がパーンてなりそう!」
女「よーし、こういう時はゲームで遊んで発散したろ!」
女「ポチー!」スイッチオン♪
28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 19:59:58 ID:xvxEIjv.
2時間後
ピコピコ♪
女「よっしゃ、30年目突破!」
女「タバコやラム酒産業も、観光も軌道に乗ってるし、支持率も高水準!」
女「ここまでくれば安泰だから、あとはスイス銀行の秘密口座に蓄財してくだけ!!」
ピコピコ♪
女「ふははは! 私にひれ伏せ愚民どもぉ!」
女「独裁者である私の隠し資産(スコア)の為、労働に勤しむがいい~!!!」
女「わはははは~♪」
ピコピコ♪
29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:00:39 ID:xvxEIjv.
リリリリリリリ♪
女「あ、ダーリンから電話だ!」
ピッ♪
女「もしもし? ビバ、プレシデンテ!」
男『えぇ……?』
女「あぁ、ごめん。こっちの話」
女「どしたん急に、なんかあったん?」
男『あー、まぁ一応、それなりに……』
女「???」
30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:01:25 ID:xvxEIjv.
男『とりあえず、明日だけれど、』
男『やっぱり、遊びにいくとか、できないかな?』
女「えっ! マジで!? いいよ!!!」
男『あっ、じゃぁそうしようか』
女「やったー! えへへへ///」
男『……///』
31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:02:24 ID:xvxEIjv.
男『ごめんね。急にコロコロ予定変えちゃって』
女「いんや、こういうのは構わんよ。面白くなってきたぜィ……」
女「んでも、仕事の方はダイジョブなん?」
男『それはまぁ、ボチボチでよくなったから……』
女「そいじゃ当初の予定通り、駅前集合で」
男『あぁ、うん。また明日~』
32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:03:11 ID:xvxEIjv.
【翌日 駅前】
女「ごめーん、待った?」
男「ううん。僕も今来たところ」
女「そいじゃ、行きますか。まずはゲーセンから!」
男「おっけー」
33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:03:49 ID:xvxEIjv.
女「Ураааааааааааааааа!」ガチャガチャ♪
女「見さらせ! ワシが1番ザン◯エフを上手く使えるんやぁぁぁ!!」ガチャガチャ♪
男「はぇ~、いつ見ても、すっごいコンボ!」
女「面白かった♪」
女「じゃ、次は映画行こー」
男「そうしよっか」
34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:04:37 ID:xvxEIjv.
女「うあああああああ……(泣)」
男「うわああああああ……(泣)」
女「ヒロインが病気とかで死ぬ展開は、すごいベタやけど、鉄板のエモさ(´;ω;`)」グスッ
男「わかる」グスッ
女「愛しあう2人が離ればなれにならなくちゃいけないとか、セツな過ぎる(T-T)」
男「……」
女「はぁぁ……感動して、お腹減ってきたわ」
女「よしッ! スイーツ屋行こ、奢ってねv」
男「ん、いいよ~」
35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:05:26 ID:xvxEIjv.
女「えっと……」
女「この、ウルトラストロングロングアームストロングゼロいちごジャムパフェください!」
店員「かしこまりました」
男「……写真見たけど、だいぶ多かったよ、量。食べきれる?」
女「いいのいいの。アンタにも一緒に食べてもらうから~」
男「あー、やっぱりそうなるのか~」
女「お願いね、えへへ~///」
36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:06:18 ID:xvxEIjv.
男「ウプッ」
女「あー、食った食った!」
女「いや~、今日は久しぶりにメッチャ楽しいわ!」
男「そっか、それはよかった」
女「アンタはどう?」
男「ん、僕も楽しいよ……」
男「最近さ……、あんまり構えなくて、ゴメンね」
女「あ、それは別に…………」
女「いんや。ゴメンて言われても、あたしゃ絶対に許せないよっ!」
男「アチャー……だめか~」
女「そ。だからさ、また近いうちに遊びに行こうよ、ねっ♪」
男「……ん、そうしよっか」
37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:06:58 ID:xvxEIjv.
女「……元気ないね、疲れちゃった?」
男「んん。ちょっと、会社で色々あってね」
女「へぇ、どんなコト? 教えてよ!」
男「……つまらない話だよ?」
女「いいじゃん、アンタの事は何だって知っときたいからさ、話せや!」ドスッ
男「……愚痴っぽくなるケド、いい?」
女「おおともよ。受けとめたらぁ!」
男「……あり、がとう」
38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:07:48 ID:xvxEIjv.
男「昨日、会社に警察と消防。それから税務署が来てさ」
女「お、事件?」
男「上司である部長と先輩が、逮捕されちゃった……」
女「…………なんと!」
39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:09:46 ID:xvxEIjv.
女「やべぇじゃん。一体、どうして?!」
男「逮捕容疑は、横領と脱税。製品の品質データを誤魔化して、納品してたんだ」
女「うわぁ。ニュースでは最近よく聞くけれど、こんな身近で起きるとは……」
男「僕も、今でも信じられないよ」
女「じゃ、アレ? 悪い品質なのに、データを捏造して出荷したとか、そんなん?」
男「ううん。むしろ逆、かな?」
40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:10:32 ID:xvxEIjv.
男「本当は高品質な製品を、低品質や廃棄品と偽って取引先と安く取引してた」
女「???」
女「なんで、なんでそげな動きを???」
女「会社にとっちゃ、損だよね?」
男「あぁ。僕の会社にとっては大損だ」
41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:11:29 ID:xvxEIjv.
男「でも、ウチの商品を買う側にとっては?」
女「……お値段以上の品質を、入手できる?」
男「正解。ウチには製品に等級があって」
男「A級品なら品質保証ついて定価販売……」
男「B級品なら性能に不安があるから、半値の取引」
男「不良品は使えないから、スクラップとして廃棄して貰う……」
男「厳密には違うけど、そんな風な取り決めがあったんだ」
42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:12:27 ID:xvxEIjv.
女「じゃぁ、嘘や誤魔化しで大儲けじゃん!」
女「A級品をB級として卸せば、半額でA級品が買えるってこと?」
男「うん」
女「不良品扱いなら、無料で入手ってことになんの?」
男「それも、してたみたい」
男「本来は僕の会社に入るはずのお金を、」
男「取引先と結託してデータ改竄で値切り、見返りに謝礼をもらったって」
女「ひどーーーーーーーっ!」
43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:13:53 ID:xvxEIjv.
女「非道!正に非道!!」
男「部長や先輩、取引先の資材担当者で密約交わして、横領を働いてたって。刑事さんが説明してた」
女「かーっ! そいつらの血は何色だ!」
男「製造担当の僕としては、不良品が世の中に出回ることはないみたいだから、一安心なんだけど」
女「むぅ。それはそうだが……」
44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:16:32 ID:xvxEIjv.
女「あっ。ちょい待ち!」
男「……」
女「その誤魔化された品質のヤツって、もしかして!」
男「……」
女「アンタが、アンタが作ってた製品ちゃうのん?」
男「うん。僕が作ってた製品だ」
女「ファーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー↑」
45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:17:41 ID:xvxEIjv.
男「目標◯◯%って、毎月ノルマがあって」
男「僕はずっと達成できてないって言われて、必死になって働いてた」
女「アンタ、真面目だもんね」
男「がんばります!もっともっとがんばりますって、毎日の様に部長や先輩に謝ってた」
女「……」
男「色々と試行錯誤を繰り返し、これは絶対に上手くいったって確信あるのに、」
男「取引先や上司たちから、さっぱり目標値に達してないって、返された」
46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:19:13 ID:xvxEIjv.
男「本当は95%の成績を出せてたのにさ、」
男「上の方で数字誤魔化して、30%しかできてないって言われたんだ」
女「……」
男「僕が毎日残業とか休日出勤とか、」「
男「あれだけ悩んで、苦労して改善して実績出してても、」
男「たった5分」
男「自分達の都合優先で、Excelの数値データを嘘に書き換えて、僕の努力を全否定してくる」
女「つらい、な」
男「もう、誰も信じられなくなりそうだ」
47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:20:07 ID:xvxEIjv.
男「ごめんね」
男「君と過ごす筈だった時間も、部長たちの悪巧みに気付けずに、溶けて消えた……」
女「ア、アンタは謝らんでええよ。謝ることないよアンタは!」
男「でも、僕はもっと、出来ることがあったハズなんだ!」
男「他人任せにしたりせず、本当の本当はどうなのかを、知らなきゃいけなかったんだ!」
男「……僕は、悔しいよ」
48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:21:44 ID:xvxEIjv.
女「……今日は、一緒に飲み明かそうや」
女「ヤなこと忘れて、パーッとさ」
男「……」
男「うん」
49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:22:35 ID:xvxEIjv.
【駅前】
テクテクテク
女「あ、何かの人だかり」
男「……デモ隊みたいだね」
先頭の人「政府に反対する議員にハンターイ!」
デモメンバーズ『政府に反対する議員にハンターイ!!』
先頭の人「不正の追及するより、他にすることあるだろ~!」
デモメンバーズ『不正の追及するより、他にすることあるだろ~!!』
男「えぇ……」
女「これもぅわかんねぇな」
50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:23:44 ID:xvxEIjv.
男「部長と同じ様なこと言ってる人が、あんなに沢山……」
女「あ、横領してた部長さん?」
男「そう。前に言ってたんだ。似た台詞を」
女「……」
男「ねぇ」
51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:24:48 ID:xvxEIjv.
男「部長は横領って不正をしてたけど、」
男「不正がバレるって事に対して、罪悪感や恐怖を感じてたから、」
男「部長は『野党は不正を追及するな』とか、口走っちゃったのかな?」
女「どうだろう。あり得えると思う」
52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:25:22 ID:xvxEIjv.
男「逆に……『野党は不正を追及するな』って言ってる他の人たちも、」
男「部長みたいに、バレたら困る不正を抱えてたりするんだろうか?」
女「あー、そうかも。部長氏と同じく横領とか脱税とかw」
女「とりあえず普通の人なら、絶対に言わないよね。『不正を追及するな』なんてwww」
53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:26:23 ID:xvxEIjv.
男「でも……世の中が不正の取り締まり強化~、みたいになって」
男「それで困る人たちなら、つい言っちゃうだろうね……『不正を追及するな~』って」
女「うん。特にマスコミ関係者や、会社の重役なんかは。隠してる不祥事とか多そうだし!」
女「金銭関連だけじゃなく、パワハラやセクハラとかも、隠してるかもね~」
女「とりあえず実際のところ、どういう理由で言ったか知りたいわwwwww」
54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:28:34 ID:xvxEIjv.
男「……」
男「よく知らないけど、もうすぐ参院選ってのがあるんでしょ?」
男「あ、ダブル選挙らしいから、六院選になるのかな?」
女「参がダブルで六……その発想は無かった」
男「選挙ってのは多数決だから……部長みたく、不正で儲けてる人が多いと、」
男「不正で儲けてる人の為に働く……そういう候補が当選して」
男「不正を守るための、保身政治を始めたりするんだろうか……?」
女「あー。単純に言えばそうかもね~」
55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:29:24 ID:xvxEIjv.
男「それでもし、不正をする人が過半数いるなら、不正をする人が権力者になり続けて」
男「この先ずっと、不正が咎められない様な、公平じゃない社会が、続くんだろうか……?」
女「……単純に考えるなら、なるだろうね」
男「そうか。イヤだな……」
56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:30:11 ID:xvxEIjv.
女「ま、単純に考えればの話だから。心配ないよ」
女「現実はもっと複雑で、考え方違う派閥みたいなのも取りまとめなきゃだし」
女「不正とかズルするとか、反感持たれて不利になるから、悪が栄えることはなし!」
男「うーん……」
女「まぁ、正直もの勢が投票サボるとかすれば、どうなるか分からんけどね」
男「あぅ……だよね~」
57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:31:00 ID:xvxEIjv.
女「もー、クヨクヨ悩んでもしょうがないじゃん!」
女「アンタみたいな真面目に頑張れる人が、不正で損する様な国には、」
女「ならないし、なっちゃいけないし、ならない様に、色々できる筈だから!」
女「世の中は、公明正大で回っていくもんだよ~」
男「……うん!」
58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:31:58 ID:xvxEIjv.
女「とりあえず、元気にいこう!」
女「ほら、【元気があればなんでもできる!】って、諺もあることですし!」
男「……それは諺じゃないでしょ」
女「ありゃ、そうかな?」
女「でもまぁ、どっちでもいいジャン」
59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:32:46 ID:xvxEIjv.
男「僕はさ、部長も先輩も、尊敬してたんだ」
女「……うん。アンタお人好しだもんね」
男「気にかけて貰ってる、この人達の期待に応えたいって、強く思ってた」
男「部長たちの思惑は、ぜんぜん別にあったのにさ……」
男「僕は単純で、文句も言わず、金と労力を搾り取られる……都合のいい社畜でしかなかった」
女「……マジでつらい、よね」
男「信じてた人たちに裏切られたのは、悲しいし、今でも現実だと認めたくないけれど」
男「何時までも、へこんでいられない!」
女「うん」
男「前を向いて、明日から……今から生きていかなくちゃ!」
女「おうともよ! 」
男「ふふふふ」
60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:34:36 ID:xvxEIjv.
女「ねー。今年の夏さ、ガッツリ有休取って旅行行こ!お仕事とか、さっぽり忘れて、休憩!」
女「むしろ善は急げ! 来週から行こうよ!」
男「うーん。会社で事情聴取や状況の立て直しあるから、来週はすぐはムリかな?」
女「あちゃー」
男「まぁでも、落ち着いたら仕事を忘れてゆっくりしたい。夏とかは」
女「だよね。他人の嘘を守るために、毎日毎日ガマンしてきたんだもん」
女「ここで一端、リセットしなきゃ!」
61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:35:36 ID:xvxEIjv.
男「温泉旅行とか、行きたいな。二人してさ」
女「お、いいねー」
男「まだしばらくは、事件の後始末で大変になるだろうけど……」
男「それでも、ちっぽけでもいいから、楽しい未来があるのなら、頑張っていける!」
女「アタシも同感!」
男「ありがとう。大好きだよ///」
女「ふぇっ?! あ、アタシも、だよ///」
62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/06/22(土) 20:36:17 ID:xvxEIjv.
男「……///」
女「……///」
男「昨日は大変だったけど、今日は本当に、幸せだった」
女「えへへ///」
男「こんな普通の幸せが、ずっと続くといいのにな……」
女「だね~」
63: おわり 2019/06/22(土) 20:44:31 ID:xvxEIjv.
マリー・○ントワネット
「どうせ嘘松とか言われるのなら、初めからフィクションにしちゃえばいいじゃない」
はい……(´・ω・`)
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