0001以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:04:21.78ID:StUybbB20
ガバッ
男「…………」
女「起きた…か」
男「…………ここは?」
女「ここは……ある所」
男「え?」
女「ある所だと言った」
男「……その回答に誰が満足するんだ?」
女「……さぁ?」
男「じゃあ質問を変えよう……俺は……何故ここにいる?」
女「……」
男「答えろ!」
0003以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:04:52.34ID:StUybbB20
女「…………」
男「答えろと言っている!」
女「お前は…………死んだんだよ」
男「え?」
女「よく思い出してみろ……お前は……死んだ」
男「……ここにいるじゃないか」
女「ああ……いるな」
男「おかしな事を言う……俺はここにいるのに俺は死んだだと?」
女「そうだ……お前のいた世界では」
男「え?」
0004以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:05:22.86ID:StUybbB20
男「もっと分かりやすい説明が必要だ、そうだろう?」
女「…………お前は知っているはずだ」
男「……」
女「思い出せばいい……自分の記憶に語りかけてみろ」
男「……生憎ど忘れしているのか知らんが……ここで起きる前の記憶が飛んじまってるな」
女「それは……どこまで?」
男「……え?」
女「どこまで……記憶が飛んでいる?」
男「…………どこまでって……」
女「どこまでだ?……どこまで……飛んでいる?」
男「………………あ……れ…………」
バタンッ
女「………………お前もか」
0005以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:06:09.01ID:StUybbB20
ガバッ
男「…………」
女「起きたか……」
男「…………」
女「ここは……ある所だ」
男「さっき聞いた」
女「……そうだな」
男「……………………どうして俺は……記憶がない?」
女「……さぁ」
男「じゃあさっきの質問をもう一度しよう……俺は……何故ここにいる?」
女「……」
男「答えろ!」
0007以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:06:39.88ID:StUybbB20
女「…………」
男「答えろと言っている!」
女「お前は…………死んだ」
男「それもさっき聞いた……同じ事を何回言うつもりだ!?」
女「そう怒るな」
男「俺の立場に立ってみて怒らない人間が、この世にいると思うか?」
女「ああ……なぜならお前は……この世に一人しかいない」
男「そういう屁理屈はいい!」
女「屁理屈ではない……お前は今、何に激昂している?」
男「なに?」
0012以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:12:20.22ID:StUybbB20
女「恐らく、『一人』という言葉に反応したんだろうが……勘違いするな」
男「?」
女「私は……お前は『この世』に一人しかいない。そう言ったんだ」
男「……何を言ってるんだ?」
女「しょうがない……説明してやる」
男「なんなんだよ…………」
女「まず……この説明を聞く前にひとつ言っておく」
男「…………」
女「私が説明をしている最中……一切質問をするな」
男「…………」
女「同意したと見なそう……ああそれと、私の話す内容は当然私の知っている範囲のみだ」
男「……さっさと説明しろ
0013以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:13:07.97ID:StUybbB20
女「いいか……ここは……「ある場所」だ」
男「……ああ、お前がさっき言ってたな」
女「そうだな……そしてここは……お前のいた『世』ではない」
男「
世……」
女「あの世とか……この世とか……お前の世では言っているはずだ」
男「こ、ここは……あの世なのか!?」
女「質問をするな。それに……そんな事はお前が感じる概念によって解釈は歪曲されるので言わない、お前を混乱させない為だ」
男「言ってくれたほうが……助かるんだがな」
女「………………少なくとも、お前の解釈の中の……「この世」ではないという事だ」
男「でも……お前はさっき俺が死んだって……」
0014以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:16:03.55ID:StUybbB20
女「言った……お前がどうやってここに来たのかは知らない。
気がついたら私はお前をこの場所で見つけていた」
男「……で、でもそれじゃあこの場所に来る=死んだという事なのか?」
女「だから質問をするなと……」
男「どうなんだ!」
女「はぁ……ここはお前の知っている世ではない。お前が……お前の世からここへ来る為には、
お前の世を抜け出さなければならないわけだ。……お前は自分でどう思う?」
男「俺……俺は……」
女「人間……つまりお前がお前の世を抜け出す……その為の唯一の方法は
……お前が死ぬこと以外……私は思いつかない」
0015以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:16:37.43ID:StUybbB20
男「俺は……俺……は……」
女「ゆっくり整理して考えればいいさ……時間……時間という概念もここにはないが……時間はたっぷりある」
男「…………」
女「とりあえず……眠れ」
男「…………」スースー
女「…………」
0016以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:20:24.16ID:StUybbB20
ガバッ
男「…………」
女「……起きたか」
男「…………」ボーッ
女「…………」
男「…………俺は死んだらしい」
女「そう言った」
男「どうして死んだ?……どうして俺は……」
女「私はお前がどうして死んだのか知らない……だがお前は……知っているはずだ」
男「……思い出せないんだ」
女「……いつか必ず思い出す…………」
男「……どうしてそう言い切れる?」
0017以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:24:01.31ID:StUybbB20
女「…………」
男「根拠を……言えよ」
女「私も……最初ここ来た時、記憶がなかった。というより………今もない」
男「!…………ははっ、そうだな……聞いていなかった」
女「…………」
男「お前は……なんなんだ?」
女「……なんなんだろうな」
男「人間なのか?」
女「…………さっき言ったな……お前はこの世に一人しかいないと」
男「ああ……」
0019以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:28:54.54ID:StUybbB20
女「それの解釈はこうだ。お前……つまり「人間」はこの世……つまりお前のいた世ではないこの「世」には……一人しかいない」
男「じゃあ…………俺がお前を人間と捉えれば……二人って事になるな」
女「私は私だ……お前の世の中ではお前の事を人間と呼んでいたんだろう?
まぁ私がそう見えるなら……人間と捉えてくれて問題はない」
男「何を言っているのか理解できない」
女「ま、恐らくは世は違うと思うが……人間だろうよ……ふふっ」
男「何故そう言い切れる? 人間の姿をした化け物という事だって」
女「ふふっ、ありえるな……だが私は……元は……お前と同じ境遇だったという事だ
0020以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:31:15.13ID:StUybbB20
男「死んだのか!?」
女「ああそうだ……ただ」
男「ただ?」
女「これはお前の世の理でお前に分かりやすく説明するために言っているのであって、
お前の世でいう……死というものを経て、私はここへ来たのかどうかは……定かではない。
そこの所の記憶は曖昧だから、はっきり「死んでここへ来ました」とは言えないな。
やはりお前の言う通り化け物かもしれない……ふふっ……まぁとって喰いはしないさ」
男「…………お前は……俺の世界で死んで来たんじゃない?」
女「ああ……私はお前とは違う世から来た……と思う」
男「思うって……まぁいい……それにしては俺のいた世での死についての概念等を
よく理解していると思うが?」
女「…………そうだな」
0021以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:35:06.94ID:StUybbB20
男「そこについて説明してもらおうか。お前がもし仮に俺とは違う世界のにんg……お前だったとしてだ。
なぜそんなに俺の混乱を分かっている風な事を言っていられるんだ?」
女「くくっ、人間って言ってくれていいのに……」
男「……確信は持てない」
女「まぁそうだな…………その質問の答えについては……この『ある場所』について、説明しなければな」
男「……やっとかよ」
女「一番最初に今から言う内容を説明して……お前がすぐに理解するとは思えなかった」
男「まぁ……確かに」
女「だろ?……ふふっ」
男「さっさと説明してくれ」
女「いいだろう……ここは…………『ある場所だ』」
男「ああ……それで?」
女「私は……ここを……待機場所だと思っている」
男「待機?」
0024以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:38:28.12ID:StUybbB20
女「そうだ……分かりやすく言ってやる。
お前がここへ来る前にいた「世」……これをAとしよう。同様に、私が前にいた「世」をBとする」
男「……ああ」
女「お前はAからここへ来た。私はBからここへ来た。そして……今二人でここに居る。そうだな?」
男「……おう」
女「そして……私たちは待つんだ……ここで」
男「何を?」
女「……別の世へ渡る時が……来るまで」
男「なに!?」
女「そうだ。ただ私は、私とお前が共に同じ世へ行けるとは思っていない……違う世から……来たのだから」
男「俺はAからここへ来て、お前はBからここへ来て……俺はいつかCへ行き、お前はいつかDへ行く……こういう感じか」
女「そうだ……理解が早く助かるよ。
その「いつか」……まで……私たちはここにいるんだと思う」
0027以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:44:12.22ID:StUybbB20
男「それで待機場所か」
女「分かったか?……まぁこれは、ある人達の言ってた説明のマネだけどな」
男「!? ちょ、ちょっと待て! お前はいつからここにいる!?」
女「さぁ?……時間という概念はここには存在しない……さっきかもしれないし……
すこし前かもしれない……ただお前よりは前からいた」
男「ある人達って言ったじゃないか! どういう事だ? 他にも誰かいるのか!?」
女「さっきお前は聞いただろ?『何故自分の世の事をお前が分かった様に言う?』と……」
男「あ、ああ……そういう感じで言った…かな?」
女「ああ……私はお前よりも前にここに来た。
……そしてその時ここには……先客がいたんだ」
男「…………俺からするとお前がいたって事と同じだろ?」
女「そうだ。しかも二人いた……そしてその人達のどちかは……お前のいたであろう世から来た人だった」
男「!」
0031以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:54:13.26ID:StUybbB20
女「だからお前の言ってる死の概念等が……分かるんだ。その人も言っていたから。
彼らは私がここに来て……私に今お前に説明した、この場所についての推測について話してくれた……お前の世の事も含めてな」
男「……その二人は今どこに?」
女「……もう別の世に行った」
男「どうやって!?」
女「…………」
男「どうやってだよ!」
女「少し落ち着け……一気に喋って…………少し疲れた」
男「…………」
女「そう急かすな……と言わせてもらおうかな。どうせ話した所で何か変わるわけでもない」
男「…………わかった」
女「ふふっ」
0034以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:58:56.34ID:StUybbB20
男「もういいか?」
女「ああ……大丈夫。
……さっきはどこまで話した?」
男「お前が俺みたいにここに来た際、すでに二人の……人間……だよな?」
女「そうだ、お前の世の中では人間と呼ばれていたものだ。
……一人はどうか知らないが多分人間でいいと思う」
男「その人間達がいて、すでに次の世……とでも言えばいいのか……に行ったって所まで聞いた」
女「……そうだったな」
男「続きを頼む」
女「ああ……」
男「どうやって次の世へ行ったんだよ!」
女「……記憶を戻して」
男「…………は?」
女「どうやらこの場所に来る者達は……皆死ぬ瞬間の記憶がない」
男「あ……」
0035以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 16:59:47.38ID:StUybbB20
女「そうだ。お前は今死んだ記憶がない……そして私も……死んだ記憶がないんだ」
男「!!」
女「私が来た当初、私に色々説明してくれたその二人も……最初は私たちと同じ状態だったらしい」
男「…………そして死んだ記憶を取り戻した時に、ここから別の世へ旅立って行った……ってとこか?」
女「ああそうだ……お前は頭がいいな」
男「じゃあ俺とお前も……自分が何故死んだかの記憶が戻れば次の世へ行けるって事か?」
女「そういう事だ……」
男「しかしよくわかったな……そんな仕組みというか……構造というか……なんというか……」
0036以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 17:02:23.14ID:StUybbB20
女「私はその二人がいる間は、何も思い出せ無かったんだが………
二人が来たばかりの私に色々説明してくれている時に……なんとなく」
男「感づいたってわけか……すごいなお前」
女「ああ……そしてそこで三人とも死ぬ瞬間の記憶がないという事に気づき……今言った事を推測……そして……確信したんだ」
男「二人が思い出した瞬間に立会った時に……確信したわけか」
女「ああ……二人は私に説明をし終わった後、しばらく私に寝てろと言って……私は眠りに落ちた。
……次に起きた時にはすでに二人はいなかった」
男「……なるほど」
女「も、もういいか……わ、私は……少し……つかれ…た」バタンッ
男「あ!おい!」
女「ふふっ……久しぶりに長々と話したからな……疲れた」
男「……わかった……休めよ」
女「…………」スースー
男「……どうなってんだか…………ここは」
0045以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 17:34:28.89ID:StUybbB20
女「…………ん……」パチッ
男「………………」
ムクッ
男「お……起きたか」
女「ああ……これは……一体?」
男「この場所についての説明はお前に聞いて……大分考えて……理解度をお前と同じレベルにしたつもりだ」
女「私の質問の答えになっているのか?それは」
男「そして……俺は、お前も気づいてないこの場所の活用術を見出した」
女「!……それは?」
男「自分の記憶にあるものならば……なんとなくだが……思えば具現化できそうだ」
女「……それがこれか」
0047以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 17:39:36.21ID:StUybbB20
男「ああ……この…世界と言えばいいのか……場所は……何もしなくても生きいける。
何も食べなくてもいいし何も飲まなくてもいい。
どこに何があろうが温度は常に一定っぽいし病気もしないんだろうよ、ここは……
だからお前は何も望まなかった……満足していた……そうだろ?」
女「ああ……暑かったり寒かったりすると服を選ぶし、何かが食べたくなったら食べ物が欲しいし飲み物も……
そういう感情が湧かない場所と言う事だな?」
男「そうそう……で、さっきまでは俺もそうだった……何も感情は湧かなかった」
女「だろうな」
男「でもな……とりあえずお前が横になってるのを見てて、まぁベッド位ねぇとなぁと……ふと思ったわけだ」
女「ベッドとは……これの事か?」ポフポフ
男「ああ……気が付いたらお前が今乗ってるそれが、いつの間にかお前を包んでたってわけ」
女「なるほど。何かを具現化したいと思ったら具現化できるのかここは……便利なものだ」
男「というわけでベッドが出てきたからさ……色々考えてみたわけだ。
……んで出来たのがこの空間」
女「……理解した」
0048以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 17:43:02.42ID:StUybbB20
男「ただ人間……とか生き物は…呼べないみたいだな」
女「それは……そうだろうな」
男「……俺……ちょっとお前の寝顔見てたけどさ」
女「ん?」
男「さっき言った、お前は化け物かもっての取り消す……お前は人間だよ」
女「?……根拠でも見つかったのか?」
男「……あんなにスヤスヤ気持ちよさそうに眠ってる奴が化け物なわけねぇって……思ったんだよ。
……それだけだ。ははっ」
女「……ふふっ……そうか」
男「おう。さっきは悪かった」
0050以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 17:50:55.66ID:StUybbB20
女「いいんだ……確かに私は人間だ。
確信を持って言える……お前に感謝しないといけないな」
男「え?」
女「寝ている間に……少し記憶が戻った……私は…人間だ」
男「!?」
女「ああ、今まで何故か思い出せなかった。しかし……少しだが思い出して来ている……おそらく寝ている間に」
男「そういえば俺もさっきお前に寝ろと言われて寝ている時に……少し」
女「本当か?」
男「まぁ……多分。
……だからベッドとか出せたんだろうし」
女「それは……そうか」
男「それじゃ……」
女「…………」
男「聞かせてもらおうか? ヒマつぶしに」
0052以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 17:55:41.40ID:StUybbB20
女「……いいだろう」
男「その前にだ」
女「え?」
男「いつまでもお互いお前お前じゃ、嫌だろ?」
女「二人しかいないのだから別に困りはしないだろう?」
男「それでもだ……俺は……男という名前だ……多分」
女「男…………」
男「おう……だから呼ぶ時は男って呼んでくれないか?」
女「わかった」
男「それで……お前は自分の名前を思い出したか?」
0055以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 18:01:48.94ID:StUybbB20
女「私は……確か…………女」
男「変な名前だな」
女「私の世では結構一般的に使われていた名前だった気がする」
男「そうなのか?」
女「そうだ……そ、それで……あの……嫌なら別に呼ばなくてm」
男「それじゃあ女」
女「!……な、なんだ?」
男「話してくれよ……お前のいた世について」
女「…………ふふっ」
2009/01/12(月) 18:08:18.17ID:StUybbB20
女「私は……私のいた世界では……豊かな水、食べ物が多くあり、
基本的に何不自由ない生活が送れる世だった……様に思う」
男「マジかよ……いいね」
女「………しかし……確か……」
男「確か?………」
女「確か……戦争をしていた」
男「!?……なんで?」
女「私の生まれた国は、とても領土が小さい。
しかしその小さな領土の中にとても豊かな土地が沢山あった……そういう土地目的で……他国が攻めてきた」
男「……区画争いみたいなもんか?」
女「え?」
男「いや、いい……それで?」
0060以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 18:10:02.49ID:Mo/IKToJ0
男「そんなことよりお前の放尿し~んがみたいんだが」
女「・・・・・・・・」
男「いいか?」
女「あなたはどうやら今、こ
あ、完
0061以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 18:10:56.53ID:StUybbB20
女「私は、その小さな国で生まれ……育った……そこまでだ」
男「そこまで?」
女「私が思い出したのは……ここまでだ」
男「ふむ……じゃあ何か飲むか?」
女「え?」
男「ここは何でも具現化出来ると言っただろ?
別に喉は渇かないが、欲しいと思えば飲み物も出てくるんだ……あの冷蔵庫に入ってる」
女「冷蔵庫……名前からして……ものを冷やしているのか?」
男「そっちには冷蔵庫、なかったのか?」
女「保冷所という所があって……そこにある程度の人数ごとに冷やすべきものを置いていた」
男「天然冷蔵庫だな……ははっ、そっちの方が健康そうだ」ガチャッ
女「…………」
0062以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 18:16:15.01ID:StUybbB20
男「飲めよ、コーラ」
女「なんだこの飲み物は」
男「毒じゃねぇから飲んでみろって」
女「…………っ!」
男「やっぱ味は変わらないな」
女「あ、甘いし……何か口の中が……シ、シュワシュワとするぞ!?」
男「そりゃ炭酸だからな……そういう飲み物なんだよ」
0064以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 18:25:14.06ID:StUybbB20
女「……私は……お前の事を聞きたい」
男「え?」
女「お前のいた世は、どうやら私のいた世とはかなり……異なるらしい。
前にいた二人の説明である程度は違うと分かっていたが……」
男「だろうな……俺が思い出した部分だけでもかなり違うからな」
女「ヒマつぶしに……いいだろ?……ふふっ」
男「…………いいよ」
女「…………どうした?」
男「…………」
女「…………」
0067以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 18:33:56.72ID:StUybbB20
女「そんな……哀しそうな顔をさせるつもりはなかったんだが……すまない」
男「い、いや……これは違う」
女「…………」
男「……違うんだ」
女「無理に喋らなくても……いいんだが」
男「……話す………話すが……少し……眠りたい」
女「……わかった。ではこのベッドとやらを貸そう」
男「おう……悪い…………………あったかいな」
女「そうか……」
男「そう……だ……」スースー
女「…………」
0068以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 18:42:10.90ID:StUybbB20
男「…………」ムクッ
女「起きたか?」
男「……どれぐらい眠っていた?」
女「さぁ?ここには時間の概念がないからな」
男「……そうだったな、愚問だった」
女「ただ私には、長く眠っている様に感じたよ」
男「そうか……」
女「…………起き抜けに……哀しそうな顔をするな」
男「そうか?
」
女「ああ」
0069以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 18:49:08.40ID:StUybbB20
男「……結構思い出したぞ……どうやらこの場所は寝れば寝るほど思い出すみたいだ」
女「寝る子は大成する……」
男「寝る子は育つ……だろ?」
女「?」
男「多分意味は一緒だ……ははっ」
女「そっちの方が響きがいいな……ふふっ」
男「と、いうわけで」
女「………………」
男「……お前の事は少し聞いた。今度は俺だな」
女「そうだな」
0071以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:09:49.25ID:StUybbB20
男「俺のいた世は、多分お前のいた世よりもずっと……悪い」
女「悪い?」
男「そうだ。お前は……水をどうやって飲んでた?」
女「え?……おかしな事を聞くんだな。川から汲んで飲むに決まっているだろう」
男「ふふっ……川か……だろうな」
女「私は何かおかしな事を言ったか?」
男「うんにゃ……俺の所では……それは駄目なんだ」
女「え?」
男「川の水を直接飲んだら……死ぬ」
女「な!?」
男「本当なんだ」
女「ど、どうして!?」
男「すべて……すべての川は、汚染されているんだ……薬によって」
0072以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:11:48.39ID:StUybbB20
女「く、薬って……病気等を治す」
男「ああ、その薬もあるが……人を殺す薬も……あるだろ?」
女「……毒か」
男「そうだ……それを俺のいた世ではすべての川に流されていた。
飲めば一瞬で死ぬような……猛毒だった」
女「…………」
男「信じられないか?」
女「!……そ、そんな事は」
男「……顔に出てる」
女「あ…………」
0073以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:15:15.89ID:StUybbB20
男「あははっ……無理はない。お前のいた世の事を聞いていた時、俺はそういう気持ちだった」
女「……ど、どうやって飲み水を確保していたんだ?」
男「…………俺の区画は……定期的に供給されていたな……ある時間が経てば家に送られてくる」
女「さっきも言っていたが……区画とは?」
男「お前のいう国みたいなものだと思う。俺のいた世では……広大な土地にとても多くの川があってな……
その川で土地が仕切られて、その土地ごとに人々が居住……上層部に管理されていた」
女「そ、そんな……」
男「本当だ。区画ごとの交流はない……だから区画から区画へ移ろうと川へ船を出す奴がいる。
そして……そいつらを殺す為に薬品が流されている。すべての川にだ」
女「…………」
男「…………俺はそこのある一区画で生まれたんだ」
0074以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:20:47.63ID:StUybbB20
女「お前は……本当に私の予想の上を行く事を、言っている」
男「ああ……だろうな。お前の世の話を聞くまで……なんとも思わなかったが……
俺の所は……あまりよくはなかったのかも」
女「人はみな! 自由に自分の行きたい所へ行けるべきだ! せめて国の中だけでも!」
男「あ、一応区画内は自由に歩けるぞ?」
女「え? そ、そうなのか?」
男「おう……まぁお前のいう国というものがどれ程の大きさかは知らんが、ある程度の広さはある」
女「そ、そうか……」
男「ははっ……だが…………それも確か……グッ!!」
女「どうした!?」
男「くそ……まだここまでだな…………思い出せるのは」
女「……そうか」
0075以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:24:12.85ID:StUybbB20
男「お前は俺が寝ている間……何か思い出したか?」
女「寝ている時程の量ではないが……少しな」
男「ふーん……」
女「……聞かないのか?」
男「そんな顔をしていたら聞く気も失せるさ」
女「……私はどんな顔をしている?」
男「とても……寂しそうな顔だ」
女「そうか……そうだな」
男「…………」
女「…………」
男「……ここに座るか?」
女「え?」
0076以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:29:23.95ID:StUybbB20
男「こいよ……ベッドに座った方がリラックス出来るぞ」
女「……ふっ」ポスンッ
男「んで?……俺は別に無理に話してくれなくてもいいと思ってるが
……話すか? やめとくか?」
女「お前と話をしていると……何かが思い出せる気がするんだ。
……だから……話すよ」
男「…………」
0077以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:36:34.89ID:StUybbB20
女「私はな……さっき説明した国に生まれた……」
男「ああ……」
女「そして、とりあえず食べ物に困る事のない生活を送れていたんだ」
男「………ああ」
女「そして私は、まぁ普通に育ち……あれは16だったかな……恋をしたんだ」
男「…………」
女「ふふっ……まだ若かったからな……結構情熱的な部分もあったんだと思う。
私は……その相手と毎日会っていた」
男「体は重ねた?」
女「!……ふふっ……いや、私の国では婚約をする前に体の関係を持つ事は御法度だった。
……ただ…………キスはした」
男「まぁそれ位はな」
0079以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:39:03.38ID:StUybbB20
女「それでも私にとってはすごい事だった。今まで誰かに隠れて……いけない事をするという行
為を、私はした事がなかった」
男「じゃあ相手がお前にけしかけたんだろ?」
女「!……どうしてそう思うんだ?」
男「なんとなく…………勘だよ。……続けてくれ」
女「……ふふっ、やっぱり男は女より性欲が強いんだろうな……どの世でも」
男「くくっ」
女「私は最初一瞬……彼に迫られた際、これはしてはならない…と思った」
男「…………」
女「しかし……同時に気づいた。駄目と分かっていても……私の体は彼を欲していた。
……それほどまでに……私は彼を愛していたんだ」
男「ひゅー♪」
女「だまれ//」
0081以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:45:43.01ID:StUybbB20
男「バレなきゃ大丈夫だってそんなの……」
女「ふふっ…………そうだな……大丈夫だった……はずだった」
男「え?」
女「……ここまでだな。今思い出せるのは」
男「どういう事だ? はずだったって……その先に何かあって、それを思い出したから言える言葉なんじゃないのか?」
女「いや……それが分からないんだ………そこまで思い出していて
……何かすごく……悲しくなった所で、お前が起きた」
男「…………そっか」
女「まぁこの調子ならすぐに思い出せるさ」
男「……悪い事なのか?」
女「まぁ……そうだろうな」
男「そうか……」
0082以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:48:34.99ID:StUybbB20
女「……………」
男「お前は今……寂しそうな顔をしてる」
女「……そんなに寂しそうか? 私は」
男「ああ」
女「…………少し……疲れた……横になっていいか?」
男「ああ、俺はどくから」
女「別にどかなくてもいいぞ? ふふっ」
男「まぁそこはな……」
0084以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:49:06.31ID:StUybbB20
女「なぜ寂しそうか……本当は分かっているんだ」
男「さっきは悲しくなった所でと言ったな……ホントは寂しくなった所で……って事か?」
女「いいや、それと今のこの感情は別だ……さっきは本当に悲しかった」
男「?」
女「今私は言っただろう? 恋をしたと」
男「あ、ああ」
女「キスの事までは思い出した……その前までの彼との日々も思い出した」
男「それでなぜ寂しそう……」
女「相手の顔が……思い出せないんだ」
男「!!」
女「…………なんでなんだろう」
男「…………」
0085以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:50:41.12ID:StUybbB20
女「そこの机の上に……食べ物を置いてある……食べればいいさ」
男「え?」
女「腹は減らない。喉も渇かない。確かにそうだが……もうコーラを飲んでしまったからな……ついでだ。
思ったら出てきた、ふふっ」
男「そ、そうか……わかった」
女「男よ」
男「な、なんだ?」
女「お前がそんな顔をするのは私は望んでないぞ?」
男「俺は今……どんな顔をしてる?」
女「どう励ませばいいのか? 何を言ってやればいいのか?……俺は何もできない……そういう顔だ」
男「……心の中を読まれてるな」
女「顔に書いてあるだけだ」
0086以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:52:10.83ID:StUybbB20
男「そうか」
女「いいんだ……思い出したら……この場所から出るという目標に一歩近付く」
男「お前がいいなら……俺は何も言わないさ」
女「そうしてくれ……あ、食べるならばスプーンは机の上にあるかごの中だからな」
男「…………お前は寝るのか?」
女「横になるとは言ったが……どうだろうな……この状態でいればいづれは眠るだろうな」
男「寝ちまう前に聞きたいんだが」
女「なんだ?」
男「これは……なんだ? 食べるのか?」
女「ふふっ お前の世には料理が無いのか? 冗談はよせ」
男「……ないんだが」
女「…………」ムクッ
男「……これでこれを掬って食べればいいんだよな?」
女「……本当にないのか?」
男「そんなにビックリしなくてもいいだろ」
0087以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:53:48.54ID:StUybbB20
女「こうして食べればいいんだよ」パクッ
男「……なーるほど」パクッ
女「まったく……お前の世の人間達はどうやって生活してきたんだ?」
男「なんだったかな……確か……思い出した!」
女「料理はあるんだな?」
男「いや、ない」
女「…………じゃあ」
男「パックだ」
女「パッ……ク?」
男「そう……いろんな栄養素を上層部が管理して調合し、それを各家庭に配る。それを飲んで生活していた」
女「…………信じられない」
男「本当だ。色々な味があってだな……1パック飲めば一日は生きられる」
女「コーラというものはその1つなのか?」
0088以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:54:46.79ID:StUybbB20
男「コーラはパックとは別の、唯の飲料だ。いくらパックを飲んでも喉が渇く時は渇くからな……そういう時に飲むんだ」
女「……味気のない生活だ」
男「そう言われてもな……これは……旨いな」
女「材料を出して…私が作ったんだが……そうか、よかった」
男「お前が作ったのか!?」
女「そうだが?」
男「……すごいな」
女「ありがとう……ふふっ」
男「へー……」バクバクバク
女「そんなに一気に食べなくても」
男「いやぁ!これは……うん。やっぱお前のいた世の方が……よかったな」
女「ふふっ」
0089以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:55:37.18ID:StUybbB20
男「食べたぞ」
女「ご馳走様と言うんだ」
男「え?」
女「いいから」
男「……ご馳走様」
女「お粗末様……ふふっ」
男「? まぁいいさ……ふわぁぁぁ」
女「…………眠そうだな」
男「……そうか?」
女「今あくびをしていたじゃないか」
男「ふむ…………寝るかな……また……さっき起きたばっかりだが」
女「……一緒に寝るか?」
0090以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:56:26.53ID:StUybbB20
男「……おいおい、さっきの話じゃお前はあんまり俺と一緒に寝ない方がいいんじゃないのか?」
女「今はまだ顔も思い出せないし……いいんじゃないか?
別に体を重ねようと言ってるんじゃないし」
男「…………そんなもんか?」
女「ああ……それに……さっきから私は眠たくてたまらない」
男「…………寝るか。 俺は別にお前を襲わないから安心しろよ」
女「もうお互い死んでるんだから、大して関係ないとは思うんだけどな……ふふっ」
男「釈然としないな」
0091以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:57:00.03ID:StUybbB20
女「まぁとにかく寝てみよう……お前といると記憶が戻りやすいというのは……根拠はないがあると思う」
男「………そっか」
女「ああ。これで二人……一緒に寝れば沢山思い出せるんじゃないのか?……と期待もしている」
男「なるほどな……よいしょっと」
女「ふぅ……大きいな、このベッドは……二人は十分入る」
男「ああ……とりあえず……これでいい……眠ろう……………ぜ…………」スースー
女「…………」
ギュッ
女「……お前に触っていると……安心する……な…ぜ……かな…………」スースー
0092以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:59:04.53ID:StUybbB20
ムクッ
男「………………」
ムクッ
女「………………」
男「…………起きたか」
女「…………ああ」
男「…………どうだ?」
女「お前は…………どうなんだ?」
男「…………ふっ」
女「…………なぜ………」
男「…………ははっ」
女「………なぜお前は……泣いている?」
0093以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 19:59:58.29ID:StUybbB20
男「………」
スッ
女「………あ」
男「………お前も、だよ」
女「…………そうか」
男「ああ…………」
男・女「思い……出したんだな」
0094以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 20:00:41.42ID:StUybbB20
男「とりあえず……俺から話す……かな」
女「……ああ」
男「…………俺はどこまで話した?」
女「お前の区画と……食べ物についてだ」
男「そうか……まだそんな所か」
女「………」
男「……悪い。泣くつもりじゃなかったんだが」
女「気にするな……それはこっちも同じだ」
男「ははっ……そうか」
女「…………」
0095以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 20:01:20.72ID:StUybbB20
男「……俺は……区画で生まれた」
女「ああ……」
男「すべて上層部に管理された生活だ。……食糧も、飲み物も……何もかも管理されていた……生かされていた」
女「…………」
男「しかし俺達はその事になんの疑問も抱かなかった……当たり前だと。
これがこの世界だと……そう思って生活をしていたんだ」
女「…………」
男「生まれて……月日が経ち……俺は18の時に……彼女ができた」
女「……………………」
男「とても可愛かった……いつも俺の事を気に掛けてくれいて……こっちから告白したんだ。
……OKをもらって舞い上がったもんだ」
女「………そうか」
男「…………」ジッ
女「…………」
0097以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 20:02:12.28ID:StUybbB20
男「ははっ……それから俺達は毎日一緒に過ごした。
幸いお前のいた世界みたいに御法度なんかはなかったからな……愛し合った」
女「っ!」
男「と……言いたい所だったけど……」
女「え?」
男「俺は……ウブだった……周りには彼女とはもう体を重ねあったと言いふらしていた。
面子を保つ為に……でも実際はまだだった」
女「…………」
男「俺はさ、航空技術を習っていたんだ」
女「こう……くう?」
男「空を飛ぶ技術だ。乗物を作り……空を飛ぶ……夢の様な世界だ。
上層部の人間に取り入ってもらえれば……僅かな望みだが、区画外へも行ける事もあると聞いて……俺の夢はさらに膨らんだ。
だけど………誰も俺の夢についてガキの戯言としか捉えてくれなかった。
……でも……彼女だけは……彼女だけは違った……応援してくれると言ってくれた。
私もあなたの夢が叶う所を見たい…そう言ってくれた」
0098以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 20:04:16.25ID:StUybbB20
女「……………………」
男「……一緒にいるだけで幸せで……愛しく、それで満足していた。
色んな事……体を重ねるなんて事は……まだ先でいいと…そう思ってしまう程に」
女「…………」
男「俺は彼女を……」
女「男……」
男「彼女を愛していた」
女「…………」
0101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 20:08:20.71ID:StUybbB20
男「……しばらくして……区画での権力者が……嫁を探しに俺達の所へきた」
女「え!?」
男「俺の世界では上層部の人間……権力を持つものがすべてだった……逆らったら殺される」
女「そんな!」
男「……そしてその権力者の目に……彼女がとまった」
女「あっ!?」
男「……今、俺の顔を見るんじゃない」
女「…………」
男「俺の話は……これで区切りだ……」
0102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 20:09:43.21ID:StUybbB20
女「…………泣くな」
男「…………」
女「…………」
男「泣いてなど……いない」
女「……泣いている」ギュッ
男「…………」
女「泣いているじゃないか」ギュゥ
0103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 20:11:04.27ID:StUybbB20
男「……今度はお前の話を聞く」
女「え?」
男「もうわかってるはずだ……俺が何故ここで話をやめたのかも……すべて」
女「…………分からない」
男「嘘だな」
女「……言わなきゃ駄目……か?」
男「ああ……」
女「……そうか」
男「そうだ…………」
女「……お前に話したのは」
男「お前が……彼氏の顔を……思い出せなかった所までだ」
女「…………そうだったな」
0104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 20:11:59.29ID:StUybbB20
男「今は……もう……思い出したんだろ?」
女「……ああ」
男「…………」
女「…………」ジッ
男「…………」
0105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 20:13:15.42ID:StUybbB20
女「私は……彼とそれからも仲よくしていた……だが……ある日」
男「…………」
女「私は……私の国の王に……見初められた」
男「…………そうか」
女「私は……わ、わたし……は……嫌だった」
男「…………ああ」
女「でも……逆らう事は…出来無かった」
男「…………」
女「彼にもそれは分かっていた……私が王に逆らう等……出来るはずかない……殺されるだけだ」
男「…………」
0106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 20:15:48.47ID:StUybbB20
女「私は……彼を愛していた。 彼が無事ならそれでいいと思った……でも王に逆らえば彼もただではすまない」
男「……嫌だったんだな」
女「実は彼とキスをしていた所を人に見られていてな……御法度を犯したとして……世間は誰も助けてくれなかった」
男「!」
女「そして……私は」
男「…………」
女「そして私は……王の元へ……行ったんだ……その直後に……戦争が始まった」
男「…………」
女「私は……そして……王と一緒に敵に見つかり…………」
男「女………もういいよ……泣くな」
女「…………泣いて等いない」
男「分かったから……もう……いい…………泣くな」
女「…………勝手に……あふれて……」
ギュゥ
0115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 21:11:08.47ID:StUybbB20
女「……男……お前は……」
男「俺は……お前の彼氏だった男の気持ちが……痛いほど分かる。
……逆らいたかったんだろうよ」
女「…………」ギュッ
男「……でも無理だと悟った。そして……お前の気持ちも全部分かってたんだと思う」
女「…………お前は……逆らったんだな?」
男「そうだ……俺はやってみた……そして……川に落とされたんだ」
女「!………そうか」
0116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 21:11:49.67ID:StUybbB20
男「俺は……彼女の顔をはっきり思い出した……声も、性格も…すべて」
女「私もだ……彼を思い出した……そして……その彼は……」
男「やっぱり……そうだよな」
女「ああ……そうだな」
ギュゥゥゥ
男「…………お前だ」ツッ
女「………そう……ヒック……だな」ギュゥゥ
0117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 21:12:20.11ID:StUybbB20
男「俺とお前は違う世から来た」
女「……ああ」
男「でも……」
女「でもどこの世でも私たちは……」
男「そういう事だな」
女「私は……お前が愛しい」
男「…………」
女「私は……お前と一緒にいたい」
男「…………」
女「離れたくない……」
男「……でも俺達は……お互い違う俺達を……」
女「いいや」
男「え?」
女「一緒なんだ……多分」
男「どういう事だ?」
0118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 21:12:54.71ID:StUybbB20
女「…………最初に言ったよな……私が来る前に二人の人がいたと」
男「あ、ああ」
女「混乱するだろうから言わなかったんだが……いや、違うな。
私自身も分からなかったから、言わなかったんだ」
男「何を?」
女「二人は私が眠りに落ちる瞬間にこう言ったんだ」
男「…………」
女「……『中身は同じだからお前たちも一緒に行けばいい』と」
男「…………」
女「だから……それは多分」
男「そうか……」
女「ふふっ……だから……私たちは……泣いている場合じゃないんだぞ?」
男「……これは嬉し涙だ」
女「……そうか(ニコッ)」
0119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 21:13:27.18ID:StUybbB20
バタンッ
男・女「!?」
「…………」ムクッ
「…………あんたたち……誰だ?」
男・女「…………」
0120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 21:13:58.18ID:StUybbB20
男「今のが大体の説明だ」
「何かよくわかんなかったが……俺は……俺は……死んだのか!?」
女「そういう事になるかな?」
男「さあな……くくっ」
「笑いごとじゃねぇよ!!……俺はどうなっちまったんだよおおお!?」
男「……こいつはお前よりも頭が働かないみたいだ……」
女「みたいだな……ふふっ」
「???」
0121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 21:14:30.59ID:StUybbB20
男「とにかく寝ればわかる……一回寝てみろ」
女「そうだぞ……寝てみろ」
「お、お前らに寝ろと言われてもすぐには……寝れ……ない…ぞ」
女「ふふっ……目が閉じてきてるぞ?」
男「……最後に言っとく……」
女「…………」
「………ん…むにゃ?」
男「……同じだから……安心しろ」
「………ん?………」スースー
女「……分かるかな?」
男「後で……お前みたいなのが来るんじゃないのか?……それで分かるさ……」
女「……そうだな…………」
男「俺達は……これで」
女「ああ……」
0122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 21:15:04.92ID:StUybbB20
男「次に行くとしたら……お前のいた世と同じ様な所がいいな」
女「……航空技術も活発な所……だろ?」
男「……ふふっ」
女「…………私も……あなたの夢が叶う所を見たいんだ」
男「!……そっか//」
女「ああ//」
0123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 21:15:51.84ID:StUybbB20
ガバッ
女「…………」
男「起きたか?」
女「…………ここは?」
男「ここは……ある所だ」
女「え?」
男「ある所なんだよ……あーるーとーこーろー!」
女「……その回答に誰が満足するんだ?」
男「……知るかよ」
女「…じゃあ質問を変えよう……私は……何故ここにいる?」
男「……(話すと長いんだろうな)」
女「答えろ!」
おわり
0139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:00:35.39ID:StUybbB20
ガチャッ
女「おいすー!!ばかー!?いるー!?」
男「馬鹿に馬鹿と言われるとはこれいかに?」
女「だってあんたばかじゃん?」
男「お前よりは偉いわ!」
女「あ、そなの?」
男「イエス!」
女「そんな男に朗報っす!」
男「おお!なんだ!?」
女「私がきてやったぞおおお!!」
男「ばかだ…やっぱこいつばかだ……」
女「なんだとぉ!?」
0141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:02:33.97ID:StUybbB20
男「俺は勉強をしているのだ!お前に構っているヒマなどナッシング!」
女「う、うぬぬ……!……ううん!」
男「は?」
女「今日は私に構うべきなんだ!男は!」
男「意味分からん」
女「明日はテストだろ!?」
男「だから勉強してんだろうが!」
女「お・し・え・れ!」
0142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:08:13.28ID:StUybbB20
男「だめだ!」
女「なんだよそのキッパリ度は!?呆れかえるほど素晴しいキッパリ度ではないか!」
男「お前を一日教えてたら俺の勉強がはかどらんだろうが!」
女「ふふん?そんな事言っていいのかな?我がクラスの委員長くん!」
男「何の関係がある?」
女「知らないのかね?今度のテスト!クラスの平均点がもっとも低いクラスになったら一ヶ月ずっとトイレ掃除な件を!!」
男「知ってるわあほぅ!」
女「え?……知ってたの?私さっき知ったのに」
男「しらねぇのはお前だけだったよ!俺とかほかの奴らは頑張って勉強してるんだよ!」
女「そ、そういうわけでだ……一ヶ月ずっとトイレ掃除の監督をせねばならない男の事を想像するとだな!不憫になっちゃって♪えへへっ♪」
男「だったら勉強しろやあああ!!!!えへっ♪じゃねえええ!!!」
女「だから勉強しにきたんでしょうが!」
0143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:10:50.95ID:StUybbB20
男「はぁ……なぜこんな事に……」
女「まぁまぁ!ジャガリコ買ってきたからそれでおっけー!?」
男「うぜぇ」
女「ぬなっ!?」
男「………」
女「………」
男「……数学からやるぞ!しょうがねぇ!」
女「うん!」
0145以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:15:27.59ID:StUybbB20
男「………試験範囲は流石に分かってるよな?」
女「う、うんもちろん!」
男「……吐け」
女「どこからですか?」
男「……ここからです」
女「どうも!」
男「まぁ……分かんない所あれば聞け」
女「うぃっす♪」
0147以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:20:03.83ID:StUybbB20
そうなのです。全然違いますw
男「………」カリカリ
女「……う、うーん……男ぉ」
男「……どこ?」
女「……ここぉ」
男「……ここはこうすればいいわけで」
女「おおー♪いいねいいね!順調だね!」
男「よくねぇよ!ここ最初の最初じゃねぇか!」
女「基本を疎かにしちゃだめだって先生言ってた!」
男「ここらへんは流石にやっとけ!!」
0148以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:23:25.18ID:StUybbB20
女「そ、そんなに怒鳴らなくてもぉ(ウルウル)」
男「ぐっ……可愛い」
女「本音出てますぜだーんな♪」
男「俺は正直者なんでな!お前は正直可愛いさ!でもこのレベルの問題が分からないとは……はぁ」
女「嬉しさと悲しさが同時に襲ってきた私はどうすれば!?」
男「知るか!お前が可愛くてバカなのが悪い!!」
女「やっぱ嬉しいよう……でも悲しいよう!」
男「……しょうがねぇ!一時間だけお前を教える事に費やしてやる!」
女「ほんとっ!?」
男「一一嘘いわねェよ!やるぞ!」
女「うん!」
0152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:28:17.19ID:StUybbB20
>>150
まったく知らないwマジかww
>>151
細かっ!w
男「まずは問1だ!」
女「おっけー!」
男「ってこれはさっき教えたから出来るよな?」
女「あ…う、うん!」
男「………」
女「………」
男「……この公式!」
女「おうけーい!!」
男「はぁ……」
女「え、えへへ」
0154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:31:19.91ID:StUybbB20
男「……あれから10分で……どこまで行ったか発表ー」
女「パチパチパチ」
男「……問4か」
女「なんかあれだね……すっごい進んでるー!てわけでもないし」
男「全然すすんでねぇ……って感じでもないな」
女「ごめんね?なんか中途半端で」
男「いや別にいいんだけどなどうでも……んで?今止まってるけど?手が」
女「うん……問5がさぁ」
男「おう……これは……」
女「顔近いね//」
男「そうしなきゃ見えねェ」
女「照れるのぅ//」
男「うるさい!///さっさとやれ!この公式の応用で解くんだよ!!」
0159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:42:29.45ID:StUybbB20
女「で、でけた……でけた!」
男「よかったね」
女「男すげー!私にここまで上手く教えられるって相当教え上手だよ!!」
男「褒めてもなにもでねぇぞ?」
女「へ?」キョトン
男「……わかった!そんな目で見るな!俺が悪かった!!///」
女「褒めてるのに謝られるとはこれいかに?」
男「……もう数学はいいだろ……次は?」
女「英語だぁ♪」
0162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:51:13.15ID:StUybbB20
男「英語っつってもなぁ……参考書見れば?」
女「そ、そんな!(ウルウル)」
男「だぁぁぁ!!いちいちその顔やめい!」
女「教えて……くれないの?」
男「……何を教えればいいんだ?」
女「えっと……英訳問題をやってみるからそれを男がみて添削する方式!で!どうよ!?」
男「OK。じゃあ開始!」
女「ほいさぁ!」
0164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 22:57:59.82ID:StUybbB20
女「できた!」
男「どれどれ……うーむ」
女「…………」
男「……ちょっと横で待ってろ。添削して返すから」
女「うん……」
男「……えっと……」
「セクシィ~♪」
「 ♪」
「バイオレンス♪」
女「くくく……」
男「電子辞書の音声で遊ぶな!!単語でも覚えとけ!!」
女「あっはっはっは」
男「はぁ……ったく……えっとこれは……ここが……」
女「…………かっこいい♪(ボソッ)///」
男「何か?」女「いいえ!」
0166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 23:08:06.69ID:StUybbB20
男「ん……これに色々書いといたから家に帰ってでも見ろ。多分明日のテストでも即実戦可能な事書いたから!」
女「男はなぜにそんなに優しいのですか?私はもう涙ちょちょ切れそうですよ」
男「何年ぶりに聞いただろそれ……まぁいい!明日は数学、英語、物理だからな」
女「あとは物理ですねぇ……あぅぅ」
男「お前マジでぜーんぜんだよな……物理」
女「ぜーんぜーんぜーんぜーん!……位全然だよ!」
男「変な所でいばるなよお前は!」
女「いばらなきゃやってらんねぇぜこんちくしょうっ!」
男「ああ……普段しない勉強のせいで女のキャラが変な方向に……ってこんぐらいはいつもの事か」
女「ちょっと男さん?地味に傷付くよそれ」
男「あ、すまん」
女「いやまぁ…いいけどさ……とにかくやろう!」
0168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/01/12(月) 23:21:03.80ID:StUybbB20
男「この振り子運動がだな……こうなって……んで公式がこれだろ?それに問題文の数値を入れて」
女「ふーらふら……ふーらふらー」
男「俺によりかかってなにやってんだお前は」
女「んー?振り子の気持ちになって考えてるんだよー。そしたらわかるかなーって」
男「わかんねぇよ!」
女「……ぶー……少し休憩しようよー」
男「……ゲッ……もうお前に教えて3時間も経ってるじゃねぇか……はぁ」
女「……ご、ごめんなさい」シュンッ
男「………」
女「……男?」
男「……ま、人に教えてる時の方が頭に入るっていうしな!……いいよ!休憩しようぜ(ニコッ)」
女「……っ~~!///」
男「……ま、すぐ再開だけどな」
女「ガクー」
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