2: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:49:51 ID:9GJ
第1話 『Girl who can not make it.』

3: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:50:08 ID:9GJ
これから始まる物語は、いつかの時代、もしもの世界。

アイドルと呼ばれ、一世を風靡した少女達が、もしアイドルにならず、ポケモントレーナーとして旅に出たらという、全く未知の物語である。

主人公が暮らすのは、あらゆる地方のポケモンが集うと言う、夢の地方【グリモ地方】。

今、この地方の首都であるマギアシティでは、メインストリートの街頭ビジョンで、大々的にポケモンリーグのエキシビジョンマッチが映し出されていた……。

4: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:50:21 ID:9GJ
美波『みなみ、いきますっ! パルシェン、つららばり!』

パルシェン『パルルッ!』ドシュンドシュンドシュン!

司会『あーっと美波選手守りから一転激しい攻勢に打って出たァ!』

美波『まだまだ……終わりませんッ!』

司会『パルシェンのとくせい、スキルリンクの効果で連射数が上がっている!これは果たして凌ぎきれるのかぁ~!』

ポツリ ポツリ ザアアアアア……

5: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:50:34 ID:9GJ
加蓮「…ん………雨、か。……空、晴れてるのに、変なの……」

司会『ここで試合終了~!! 美波選手、惜しくも勝利に一歩及ばず……!』

加蓮「あ、終わってる……ついてないな……」

加蓮(いつも、そうなんだ)テクテク

加蓮(肝心な時に、間に合わない。肝心な時に限って、何かが邪魔をして。)

加蓮(いつだって、必死に頑張っても。周りから見られるのは、同情と、憐れみと……)

加蓮(だから、これから先もきっとアタシは……ずっと一人なんだと、思ってた。)

6: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:50:58 ID:9GJ
Side 加蓮

~マギアシティ・加蓮私室~

加蓮「多い……」

加蓮母「それ、ちゃんと食べないとダメよ。お薬もあるんだから」

加蓮「わかってるけどさ……やっぱりちょっと多い……」

加蓮母「少しずつでも体力を付けなさいって、先生にも言われたでしょ。よく食べ、よく寝てよく動く。どう、今日はお散歩、行ってきた?」

加蓮「…アイス買いにね」

加蓮母「ま、それじゃ入らないわけだわ…」

加蓮「いいでしょ、病院じゃなかなか食べられなかったんだし……しかもヒウンアイスだよ、イッシュ地方からの限定販売カーが来てたの、それで…」

加蓮母「ご飯が食べられなくなっちゃった、と……仕方ないわね。せめてお薬はちゃんと飲んで……加蓮?」

コンコン コンコン

加蓮母「あらやだ、窓から音が」

加蓮「…アンタ、また来ちゃったの?」

チルット「チルッ」プルプルプル

加蓮「わぷ、水が……」

加蓮母「あらぁ、病院にいた時からずっとこっそり餌付けしてた子じゃない。名前はえーと」

加蓮「チルットだよ。この地方じゃ珍しいみたい」

チルット「チルル」モグモグモグ

加蓮「あ……もう、勝手に……」

7: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:51:24 ID:9GJ
加蓮母「どうせ残すつもりだったんでしょ。素直になりなさいな」

加蓮「この季節までここにいるって事は、渡りを失敗したか…食べ物に目がくらんだか、方向音痴なのか………もしかして全部だったりして」

チルット「チルゥー」ケフー

加蓮「アンタはいいね、悩みとかなさそうで、お気楽でさ…」モフモフ

チルット「チル? チル!」パタパタパタ

加蓮「……お腹パンパンで飛べてないし」

チルット「チルゥ」

加蓮母「まぁまぁ、良いじゃないの、今晩くらい泊めてあげなさいな、外は雨なんだし」

加蓮「はぁ……ま、ご飯残した分無駄にならないからアタシは楽だけどね」

チルット「チルル♪」

加蓮母「加蓮のご飯はちゃんと作ります、その子とは別にちゃーんと。だから残さず食べるのよ」

加蓮「ええ……ダメぇ…?」

チルット「チルル♪」トテトテトテ ピョン

加蓮「あ、ベッド汚さないでよ。えとタオルタオル……」

加蓮母「ふふ……」

加蓮「何笑ってんの?」

加蓮母「いえね、まるでそうしてると、ポケモン連れて旅に出てって…普通の女の子みたいだなって」

加蓮「……普通、ね。」

チルット「チル?」

加蓮「出てって、電気、消すから」

加蓮母「ちゃんと歯磨きしなさいね」

加蓮「もう、わかったから」グイグイ パタン

加蓮「……はぁ」

8: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:51:40 ID:9GJ
チルット「チルル…? チル チルル」

加蓮「間に合わなかったんだよね、結局。ヒウンアイス……売り切れてて」

チルット「チル…」

加蓮「何やってもそう。努力すれば夢は叶うとか、願い続ければ何とかなるとかさ、バカみたいって思うじゃん」

加蓮「……なのに何でか……身体、いきなり良くなっちゃうんだもん」ボフッ

※加蓮は枕を抱きしめた……。

加蓮「諦めるにはまだ早いって事なのかな……神様ってのはワガママだね…」

チルット「チル……」スリスリ

加蓮「…アンタも、アタシが可哀想な子だって思う?」

チルット「チル?」

加蓮「……何て、わかんないか、そゆの」ヒョイッ

チルット「チール!」ニパッ

加蓮「……アタシも、飛べたらいいのに」


窓の外は、雨。
まるでいつまでも出られない、鳥籠の格子の目みたいに、ずうっと。

ずうっと降り続いてたんだ。

9: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:51:53 ID:9GJ
Side 未央



小さい頃から、兄ちゃんのお下がりでって、男の子の服ばっかり着せられてた。

別に嫌じゃなかったけど、たまには女の子女の子した格好もしてみたかったなって。

でも、毎日泥だらけの擦り傷だらけで遊ぶような子だったから、もしかしたらそんな格好させても1日でダメにしちゃってたかもしんない。

ハッ、まさかそれを見越してお母さんは…?
やるな、マイマザー…!

10: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:52:06 ID:9GJ
幼未央「はっはっは!しっぽ巻いて帰るかい、おとうとよー!」

未央弟「ねーちゃんずりー!マントは交代で付けるって言っただろー!」

幼未央「そう、わたしはポケモンリーグのチャンピオンなのだー!!!」

未央弟「ねーちゃん!!」


懐かしいなぁ……って、流石に今はやり過ぎだったってわかってるし、弟にも優しくしてるよ?……たぶん。きっと。おそらく……。

11: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:52:19 ID:9GJ
話は変わるけど、私が育った町……ステラタウンは、中央のマギアシティから少し外れにあって、ビミョーに田舎なんだ。

私が生まれる頃にはもう廃れちゃってたみたいだけど、昔は土地神様をたたえるお祭りみたいな事もやってたりして。

若い人、皆マギアシティみたいなおっきな街に旅に出ちゃうから、それも仕方ないのかなあ……なんて。

でも私は、一人で儀式の祭壇がある広場に、よく来てたんだ。

理由は………えっと、笑わないでくれると、嬉しいんだけど……絶対笑うよね、うん……。

ええい、ままよ!
そう、この場所なら誰にも見られずに堂々とマントをはためかせて、あのカントー・ジョウト地方のチャンピオン、ドラゴンつかいのワタル師匠(せんせー)の真似ができるからなのだよ!!

12: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:52:37 ID:9GJ
未央「いっくよー!りゅーすけ、はかいこうせんっ!」ボンッ

でんじはを繰り出すミニリュウ「ウリュー!」バリバリバリ

未央「続けて……必殺、ドラゴンダーイブ!」

小ジャンプしてのしかかるミニリュウ「リュー!」ピョンコ

未央「おわぁ、こっちじゃないよりゅーすけ、うひゃあ!」ドサッ

ミニリュウ「リュー♪」

未央「んもー……服汚して、またお母さんに怒られるよー」

未央「……ぷっ、りゅーすけ、顔に土はねてるっ」

ミニリュウ「リュー? リュー」フキフキ

未央「あ、こら、私の服で拭くんじゃなーい!」

【うるさいなぁ……せっかくいい気持ちで寝てたのに……】

未央「へっ?……何、この声」

ミニリュウ「リュ?」

13: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:52:57 ID:9GJ
【ふぁ………千年ぶり……くらいになるのかな……最近はお祭りもしなくなってたし……静かに眠れると思ったんだけどなー……】

未央「千年の眠り……お祭り……?」

未央「もっ、ももももも、もしかして星神様!?ご、ごめんなさい、ここなら誰にも見られないからつい調子に乗って……!!」

【んー……べつにそれはいいよ……お祭りの方がよっぽどやかましいし、いまさらだしね…】

未央「星神様、お祭り嫌いなんですか……?」

ミニリュウ「リュー?」

【嫌いじゃないけど……皆で願いを書いてお祈りしたりするでしょ? それ、叶わなかったらボクのせいなんだよ…?】

【やってらんないよ、ニンゲンは勝手なんだから……】

未央「ありゃあ………星神様、結構な人間不信っぽいなぁ……」

ミニリュウ「リュー…」

未央「ねえ星神様、ここで遊んでたのは許してもらえたけど……人間にはいい人もいっぱいいるんだよ!」

【そうかなあ、ワガママで自分勝手なのがニンゲンだと思うんだけど】

未央「……じゃ、じゃあさ……!」

未央「星神様、私と……一緒に旅をしてみませんかっ!?」

ミニリュウ「リュー!?」

14: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:53:24 ID:9GJ
【旅?】

未央「そう、この世界を……グリモ地方を一回りするの! 私、いつか旅に出て、有名なポケモンチャンピオンみたいな、凄いトレーナーになるのが夢なんだ!」

未央「きっと色んな人と出逢うだろうし……どうかな、一緒に行かないかな?」

【行かない】

未央「うわ即答……行きましょうよー」

ミニリュウ「リュー」

【自分で行かなくても、ボク、念力でここから全部見えるから、わざわざ行く必要がないんだよね】

未央「うわあ、便利だけど横着だ……」

【そんなに言うならさ、キミの冒険、ボクが見ててあげるよ】

未央「……ホントに?」

【うん。今の時代のニンゲンがどんな感じなのかとか、キョーミ湧いてきちゃったし、何だか眠気も覚めてきたし】

未央「な、なら!是非見守っていていただけると……!!」

ミニリュウ「リュー!」

【いいけど、堅苦しいなぁ……肩がこるよ…】

未央「えと……?」

【キミは…トモダチにあだ名を付けるニンゲンみたいだね、ならボクにもあだ名で、軽く接してほしいなぁ】

未央「うおっ、そんな事までご存知とは……もしかして心を読まれたのかっ!?」

ミニリュウ「リュー……」

【カミサマだからこれくらいはねー】

未央「カミサマ……星神様……ね、ねえ!」

【んー?】

未央「星神様の、ホントの名前って……聞いてもいい?」

【んー、そっか、あだ名だもんね】

【ボクの名前は………】

15: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:53:47 ID:9GJ
~~~~~


未央「よ~っし、旅の準備、よしっ!」グググ……

未央弟「ねーちゃん、そのバカでかいリュック……何」

未央「何って、トレーナー修行の必需品だよ……まずポスターでしょ、ヌイグルミ、ゲーム機一式にソフトたくさんと、それからバットにボールと漫画の本と……」

未央弟「勝手に弟のゲーム機持っていくなよ!ってか、詰めすぎだろっ!」

ミニリュウ「リュー…」

【幸先悪いなぁ……大丈夫なの、ミオ】

未央「へーきへーきっ! りゅーすけもジラちんも心配しないで大丈夫だから!」

未央「よし、これでどうだっ。ウェストポーチに飲み物とお財布とガイドブック、あと超圧縮の携帯寝袋!」

未央弟「いいんじゃない?ポケモン、捕まえないつもりならだけど」

未央「うわ、モンスターボール入れてなかった!!」バタバタバタ

【ミオって、一人でお祭り並みにやかましいね】

ミニリュウ「リュー」

未央「よーし、今度こそ!!冒険に、出発だー!」

ミニリュウ「リュー!」

未央弟「風邪ひいたりすんなよ~」

未央「大丈夫ー!!」フリフリ スベッ ドテッ

未央「大丈夫ー!」フリフリ ムクリ タタタタッ

未央弟「はぁ、ホント大丈夫かな……何か、声が聴こえるとかも言ってたし……」

未央弟「無事で帰ってこいよ、ねーちゃん」

16: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:53:58 ID:9GJ
かくして、一人の少女、未央は旅に出た。

相棒のミニリュウ、そして姿なき神様の声とともに、今、グリモ地方をめぐる彼女の冒険が幕を開けるのであった!!

……なんてね? 

17: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:54:11 ID:9GJ
~それから数日後・マギアシティ~

未央「ついた~!! いやぁ、思えば長い道のりでした……よよよ……」

ジラーチ【隣町でしょ、ここ】

未央「ジラちんつめたーい。こういうのはね、すべからく雰囲気が大事なんだよ、ノリだよノリ!」

ジラーチ【ふーん…? それにしても、広そうなところだね、適当に歩くと迷子になりそうだ】

未央「大丈夫だよ、同じ人が住む街なんだし、わかんなければ聞いてみればいいんだって♪ それゆけゴーゴー♪」

ジラーチ【……ま、いいけどさ】

18: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:54:31 ID:9GJ
~2時間後~

未央「迷子じゃ~……」

ジラーチ【ほらみたことか】

未央「うう、だってガイドブックもあるし、人に聞いたりもしたんだよ、見てたでしょ?」

ジラーチ【赤い屋根の建物だっけ、あちこちにあるけど】

未央「そう!ポケモンセンターなんて1つの街に1つが普通でしょ? ポケモンセンターを右に行けばジム、って言われたけどさ……この街ポケモンセンターだけで6、7軒くらいあるんだよ!!」

ジラーチ【だから迷うって言ったのに】

未央「うー……今もどこ歩いてるのかよくわかんないし……建物多過ぎて地図がわかんない……」ムムム

未央「よし、もう一回!もう一回チャレンジしよう!」

ジラーチ【ま、好きにすればいいんじゃない? 休む建物は6、7軒あるんでしょ】

未央「うう……確かにポケモンセンターだけは困りそうもないね……」

未央「よし、あそこにいる女の子に聞いてくるよ。あのー!」

加蓮「……ん、アタシ?」

チルット「チル?」

19: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:54:51 ID:9GJ
未央(わ、なんか都会って感じの娘……)

加蓮「……なんか用? そこに立たれると邪魔なんだけど」

ジラーチ【ほら、道】

未央「あ、そうだそうだ……あのですね、マギアシティのポケモンジムって言うのはどちらに……」

ジラーチ【何で敬語……】

未央「うるさいな、何か大人っぽいし雰囲気あるんだもんこの子」

加蓮「………? 誰かと話してる?」

未央「あ、ううん、別にこっちの話、こっちの…」

加蓮「ふーん……ジムだっけ。 あの真ん中の一番大きな建物、見える?」

未央「ほうほう、あのいわゆる高層ビルみたいな……?」

加蓮「正確には時計塔なんだけど、改築してビルにしちゃったんだよね。まぁいいや、散歩のついでだし、来て」

未央「え」

加蓮「アタシ、あそこの街頭ビジョンで試合観に行くの。ついでだから」

未央「街頭ビジョン………と、都会だ………」

20: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:55:04 ID:9GJ
ジラーチ【とりあえず、何とかなりそうみたいだね。あの子、顔付きちょっと怖そうだけどけっこう優しいじゃん】

未央「しっ、聞かれたら怒られちゃうよジラちん!」

ジラーチ【ミオにしか聞こえないんだってば】

未央「あ。そうだった」ポンッ

加蓮「……来るの、来ないの?」

未央「わわ、はいはい、今行きますー!」

未央(って言うか、建物があんな目立つなら迷う必要なかったのに……うう、都会の洗礼だぁ……)

21: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:55:26 ID:9GJ
~ジム前~

※街頭ビジョンは今日も試合の様子を映し出している……。

美世『エンジン全開!いっけええ!フレアドラーイブ!!』

司会『美世選手のゴウカザル渾身の一撃だぁ!これは立っていられないーっ!』

未央「すご……この美世って人がジムリーダーなのかな…」

加蓮「この映像は、ここ何年かのポケモンリーグのエキシビジョンマッチ。公式戦の映像だけど、ここのじゃないよ」

未央「そ、そうなんだ……よかった…あんな強そうな人といきなりは無理だって……」

加蓮「とりあえず、ジムの場所はわかったでしょ? じゃあアタシ行くから」

未央「え、うん、ありがと………って、えっ」

加蓮「何?」

未央「試合、見ていくんじゃないのー?」

加蓮「いいよ、この試合の映像なら、何回も見たし、結果も何もわかってるから」スタスタ

未央「そ、そうなんだ……えと、ありがとー!」

加蓮「………」フリフリ

チルット「チル」パタパタ

ジラーチ【……見かけによらず、親切なんだね】

未央「都会の子って感じだなあ……何か、凄いなあ……」

ジラーチ【…それはそうと、試合だか何だかに出るんじゃないの?】

未央「わ、そうだったそうだった! 受付は……あっちか! もー迷わないぞー!」

ジラーチ【前に見えてればそれはね】

未央「たのもーっ!!」

22: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:57:06 ID:9GJ
Side 加蓮


加蓮「……ガラにもないおせっかい、焼いちゃったかな」

チルット「チル?」パタパタ

加蓮「まぁでも、そんな簡単にジムリーダーに勝てたら何の苦労もないんだけどさ…」ハァ

チルット「チール」ポスポス

加蓮「もー、頭、叩かないでよ。髪乱れるから…」

ポツリ

加蓮「げ………やばっ」

ポツリ ポツリ…… 

ザアアアアア

加蓮「また雨ぇ……!? 何で最近こんなに降るの~!」スタタタ

チルット「チルル チルル」パタパタ パタパタ

加蓮「もう、アンタ羽根濡れると乾かすの大変なんだからボールに入りなってば!」

チルット「チルル!」プイッ

加蓮「ちゃんとアタシの手持ちになったわけでもないのに毎日毎日ご飯だけは食べるんだから……もー……」

チルット「チル……!」ペシャ

加蓮「ほら、羽根が水吸って飛べなくなってんじゃん、ポケモンセンターポケモンセンター……」

加蓮「一番近いのさっき行ったジムの向こうだし!」スタタタ


23: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:57:32 ID:9GJ
チルット「チルー……」ムー

加蓮「あーもう、すぐにドライヤーしてあげるから!もー、ビミョーに重いのよアンタは……」スタタタ ……ピタッ

チルット「チル?」

加蓮「……あの子、大丈夫かな……」

チルット「チル……」

加蓮「……確か、こっちの路地裏だった…でも流石に避難してるよ……ね」

加蓮「……まだ小さかったし……無理……?」

チルット「チル……」

加蓮「………っ!」ダッ!

チルット「チルル!」

24: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:58:10 ID:9GJ
Side 未央

~ジム前~

未央「ええーっ!? ゆ、ユニット制……?」

受付「はい、グリモ地方ではジムに挑む際、トレーナー2人もしくは3人と、ポケモン3体でユニットを組んでいただいてるのですが…ご存じなかったですか?」

未央「う……それは……私、ジム戦ってばカントーとかジョウト地方のルールしかしらなくて……」アハハ

受付「当地方の8つのジムは、いずれもこのユニット制を採用しています。メンバーが足りないのであれば、参加は……」

未央「う~、そっかあ………そうなんだ……」

ジラーチ【今は引き下がったほうがいいよ、受付の人、困ってるし】

未央「はーい……うう……何ならさっきの綺麗な子にユニットのお願いしておくんだったなあ」

ジラーチ【前もって調べなかったミオが悪いね】

未央「調べてたよ~、カントーとジョウトのは……」

ジラーチ【…はぁ、まぁいいけど……それより、帰るにしても雨みたいだよ】

未央「わー、傘持ってない……」

ジラーチ【あれだけ荷物纏めてたのに!?】

未央「傘も一緒に、置いてきちゃった、かな?」テヘッ

ジラーチ【呆れを通り越して笑いに変わるね】フッ

未央「すげー冷めた笑いが聞こえたぞジラちん」

加蓮「ハァ、ハァ………」スタタタ

未央「あれ、あの子はさっきの……」

ジラーチ【お仲間だね、傘持ってないじゃん】

未央「……ううん、傘なら手に持ってるよ、させないんだ、あの子…」

加蓮「もう少しでポケモンセンターだからね……頑張れ……!」

びしょ濡れのヒノアラシ「ヒノ……ヒノ…」フー…フー…

25: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:58:32 ID:9GJ
チルット「チル……」ベショッ

加蓮「まろ!ちょっと、しっかりして!」

まろと呼ばれたチルット「チルー……」グッタリ

加蓮「……っ……行かなきゃ……あっ」フラッ

加蓮「やば……アタシまで……」クラッ……

未央「わわ、お姉さん!」ダキッ

加蓮「……アンタは……」

未央「ポケモンセンター、だよね、あっち!あ、傘とこの子、私が」

まろ「チルー……」

加蓮「……ゴメン、ありがと……肩、借りていい……?」ハァ…ハァ…

未央(顔色が……?)

未央「う、うん! よし、ポケモンセンター、急がなくちゃ!」

ザアアアアア………

26: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:58:48 ID:9GJ
Side 加蓮

~数日前、マギアシティ・昼~

加蓮「ん……美味し」サクサク

チルット「チルー」パタパタ

加蓮「ダメダメ、これはアタシが少ないお小遣いでやっと買ったんだもん。アンタは朝ご飯のデザートまで食べちゃったでしょ」

チルット「チルー」ムー

加蓮「……一本だけだよ、ほら」

チルット「チル!」サクサク

加蓮「……フライドポテトってこんな美味しかったんだね。TVで見た感じ、ただの揚げた芋なのにさ」

チルット「チル」クイクイ

加蓮「なに、もう残り少ないんだから……」

チルット「チルー チルル!」

加蓮「向こう? こんな路地裏に、何かあるの…?」

27: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:59:07 ID:9GJ
~路地裏~

ヒノアラシ「ヒノ……」キュルル

加蓮「捨てポケモン……か…ダンボールも何もないけど…」

ヒノアラシ「ヒノ……?」

加蓮「この街大きいから、わりとよくある光景だけど……流石に…」

加蓮「ほら、『おいしいみず』とポテト」

ヒノアラシ「ヒノ!」ハグハグゴキュゴキュ

チルット「チルー」シュン

加蓮「…ポテト食べたいんだろけど、アタシのもなくなったんだからワガママ言わないの」

ヒノアラシ「ヒノー」ケフー

加蓮「冷たい様だけど……アタシ達、行くね」

ヒノアラシ「ヒノ」

加蓮「アタシ、正式なポケモントレーナーとかじゃないし、このチルットもボールに入ってない、ただの知り合いみたいなものだから」 

加蓮「……いい人に拾われなよ、アンタ、見るからに強そうだしさ」ヨシヨシ

28: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:59:25 ID:9GJ
加蓮「……いくよ、まろ」

まろと呼ばれたチルット「チル…」

加蓮「……早く」

まろ「チル」パタパタ

加蓮(キリ、ないもん……迷子や捨て子を拾ったって、アタシの取り分が減るだけ、損するだけ……)ギリッ…

加蓮(……これで良かったのかなんて……迷う必要、ないでしょ)スタタタ……

まろ「チルー」パタパタパタパタ

~~~~~

29: ◆6RLd267PvQ 19/07/03(水)23:59:40 ID:9GJ
~そして、雨の日の今日~

びしょ濡れヒノアラシ「ヒノ……ヒノ…」ゼー ゼー

加蓮「……っ!」ダキッ

ヒノアラシ「ヒノ?」

加蓮「アタシさ……いつも間に合わないんだよね…」

加蓮「ずっと燻ってた。どうしたら良かったか、悩んで……」

加蓮「こないだアンタ見た日からわかってたのにね、バカみたい」ギュッ

ヒノアラシ「ヒノォ」ニコッ

加蓮「まろ、少し詰めて」

まろ「チルー」

加蓮「これは濡れて行くしかないよね……アタシの身体、もってよ……」

タタタタタ……

30: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)00:00:02 ID:gU7
Side 未央

~現在・ポケモンセンター~

まろ「チルル♪」フワフワ

未央「あはは、すっかり羽根も元通りだね。」

胸を叩くまろ「チール♪」ポフ

未央「でも……あのお姉さんと、ヒノアラシ……大丈夫なのかな」

※『治療中』のライトが赤々と点灯している…。

楓「物凄い雨ですね……そのままだと、かぜを引いていかんぜい、ですよ」ハイッ

未央「え、わわっ、タオル?」

楓「私も雨宿りに来たんですけど、タクシーで帰宅しようにも、どうやら予約がいっぱいみたいで……」

未央「あ、そうなんですか……私はいいけど、あのお姉さん、どうしよかな……」

31: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)00:00:30 ID:gU7
楓「あの子……加蓮ちゃんの事ですか?」

未央「え、お姉さん、あの子のこと…?」

楓「ええ、小さい頃からよく知っています。同じ街に住む……幼馴染、と言うのかはわかりませんが」

楓「私はしばらく旅に出ていた時期もありますし。でも……」

楓「彼女、本当ならこうやって街を歩けるような身体じゃなかったんです」

未央「え……」

楓「私からあまり多くは話せませんけれど……仲良くしてあげてください、お願いします」ペコリ

未央「あ、お姉さん、名前は……」

楓「楓と言います。名乗るほどの者ではありませんけれど、ふふっ」

未央「楓さん……えと、あの、私、未央って言います!タオル、ありがとうございます」

楓「未央ちゃん、ですか。未央ちゃん、もしかして旅の途中……なのかしら」

未央「え、あ、はい、始めたばかりですけど……」

楓「旅……そうですね、折角ですし」

楓「……未央ちゃんが、加蓮ちゃんを連れ出してくれませんか? この街から」

未央「連れ出してって………ええっ!?」

32: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)00:00:52 ID:gU7
加蓮「…楓さん、何勝手言ってんの」

まろ「チル!」パタパタ

未央「あ、身体…大丈夫?」

加蓮「うん、平気。軽い貧血だから……ってか、楓さん…話したでしょ、アタシの事」

楓「すみません、心配そうにしてる未央ちゃんを放っておけなかったので」

未央「あ、聞いちゃまずかったかな……」

加蓮「いいよ、別に。さっきので身体弱いのバレてるだろうし……この街じゃアタシ、わりと有名人だし」

未央「有名人…?」

加蓮「不治の病からある日突然治っちゃって原因もよくわかんない、奇跡の子とかってニュース報道までされたんだよね、大袈裟に」

未央「……ジラちん何かしたんじゃないの?」

ジラーチ【叶えた願いまでいちいち覚えてないから知らないよ。したかもだし、してないかもだし】

未央「……まぁ、それはいいか。って言うか、じゃあ…話聞いてた?」

加蓮「旅に出ろって話でしょ? ……で、言った本人はもう消えてるし」

未央「え、あれ、ホントだ」

加蓮「昔から、神出鬼没と言うか、ふらふらっとどこかに行っては何かしでかして帰ってくる……あの人のほうがよっぽど有名人だよ、このマギアシティじゃね」

未央「そ、そうなんだ……凄い綺麗なひとって感じだったけど」

加蓮「見た目はね。真面目な顔して、今日の洗濯物の事とかで頭の中いっぱいだったりするよ、あの人。……さっきも買い物袋提げてたし」

未央「せ、洗濯物……」

33: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)00:01:14 ID:gU7
加蓮「この雨じゃ、ポケモンセンターに泊まるにも部屋はいっぱいだし……助けてくれたお礼もしなきゃだし……それと」

受付「はい、こちらお預かりしたポケモンのモンスターボールになります。」

加蓮「……何か、間に合っちゃったみたいだし、さ」

未央「それ、さっきのヒノアラシの…?」

加蓮「うん、今日からは、アタシのうちの子。決めたの」

加蓮「……助けて貰えてさ、おかげで、色々踏ん切り付けられた。ありがと」

未央「え……あ、ううん、こっちも、どういたしましてだよ、道案内とか、他にも色々…」

加蓮「じゃ、いこっか」

未央「え、行くって…?」

加蓮「タクシー、止まってる。たぶん楓さんがタクシー屋さんに無理言ったんだろけど」

未央「か、かえ姉様、強いんだね……」

加蓮「ぷっ、何その呼び方。……ほら、まろも行くよ」ヒョイッ

未央「あ、でも、て言うか私ホテルとか泊まるお金は……」

加蓮「アタシのうちに帰るの。お礼くらいさせてよ、未央」

未央「……!」

未央「う、うんっ!じゃあお言葉に甘えちゃう!よろしくね、かれん!」

まろ「チルルー」

ジラーチ【運が良いのか、悪いのか。……多分天然で良いんだろうね。まぁ、何よりだけど】

34: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)00:01:45 ID:gU7
※こうして、加蓮の家に厄介になることになった、旅人・未央。

彼女達の行く末が、果たしてどうなるのか。

まだ見ぬ旅の仲間達、まだ見ぬポケモン達を夢見て。



彼女達の旅は、次回へ続く!



第1話 了

35: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)00:03:12 ID:gU7
と、こんな感じでプロローグ、お届けしました。

雨降る時計の大都会、マギアシティ。
果たしてどんな出逢いが待っているのやら。

では、今回はこの辺で。

お目汚し、失礼をば。

36: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:22:59 ID:gU7
更新します。
第2話目です。タイトルは

Why does it rain so much?

37: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:23:36 ID:gU7
~マギアシティ・加蓮宅リビング~

加蓮「……流石におかしくない?」

未央「うん…? おかしいって?」

加蓮「この天気。ここんとこ、ずっと雨。晴れてる日にもいきなり降るんだから」

未央「晴れてる日にまで!? それはちょっとおかしいかもねぇ……って言うか、マギアシティは雨が多いのかと思ってたよ」

加蓮「そんなわけないでしょ……とりあえず、これ…今週の天気予報なんだけど」

未央「わ、これ、かれんの携帯端末? 色々デコっててかわいいなぁ~」

加蓮「そ……そう? …そこじゃなくて、天気予報」

未央「ああ、はいはい天気予報ね。マギアシティ今週の天気は……」

未央「むむ?」

加蓮「ね?」

未央「雨の日が、ない……?」


~~~~~

38: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:23:58 ID:gU7
加蓮母「あら、出かけるの?ご飯は?」

加蓮「まろにでもあげといて、残ったの食べるから」

加蓮母「まぁ、この子ったら」

未央「おばさん、傘お借りしてすみません」

加蓮母「いいのよ、加蓮にお友達なんて本当に久しぶりで…」

加蓮「もうお母さん! 未央も、もう行くよ!」

未央「あはは……じゃあちょっと、行ってきますね」

加蓮母「無理はしないでね、あの子、ちょっと我が強いから」

未央「いやいや、そんなこと……」

加蓮「おーいーてーくーよー」

未央「わっはーい!」バシャバシャバシャ

加蓮母「…いいお友達、になるといいわね、加蓮」

まろ「チルー」パタパタ

加蓮母「まろちゃん、加蓮が部屋のご飯、全部食べちゃっていいって」クスッ

部屋にすっ飛ぶまろ「チル!? チルー♪」パタパタパタパタ

加蓮母「あら、冗談のつもりだったのだけど」

39: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:24:20 ID:gU7
~マギアシティ・昼~

※天気 雨。

未央「気になってたんだけどさ、かれんのチルット、えと…まろちゃんだっけ。何でまろちゃんなの?」

加蓮「マシュマロ食べたから」

未央「へ?」

加蓮「アタシ味の濃いものが好きなんだよね、入院生活長かったから」

加蓮「ある日、ココアにマシュマロが入ったとっても甘そうな夢の飲み物を手に入れたアタシは、背後から近付いてくるもう一つの気配に気付かなかった」

未央「ま、まさかそれは黒ずくめの男で毒薬を飲まされて……」

加蓮「身体が縮んで……って何言わせんの」

未央「かれんがフッたんでしょ! っていうか、じゃあそのマシュマロをチルットが食べちゃって」

加蓮「そ、それであんまりムカついたからアタシ言ったの。『今日からアンタの事はまろって呼ぶから』って」

加蓮「食べ物の恨みは怖いんだから……忘れないようにね……」フフフ

未央「あはは……かれん、すごいワルそうな顔してる……」

40: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:24:50 ID:gU7
加蓮「って言うか未央、アンタのポケモン、アタシまだ見てないんだけど」

未央「あ。そっか、昨日はあのままかれん、寝ちゃったもんね。私とりゅーすけはご飯貰ったけど」

加蓮「りゅーすけ、か。ね、折角だし、外に出してあげなよ」

未央「それもそだね!昨日は道に迷ってそれどころじゃなかったけど、今日は迷うはずないし……でてこーい!」ヒョイッ ボウン!

りゅーすけ「ミニリュー」

加蓮「わ、結構おっきい……この子、ヘビ?」

りゅーすけ「リュー!」プンスカポン

未央「いや竜だよっ! りゅーすけって名前、ついてんじゃんっ」

加蓮「へえ、この子が……よいしょ……」ヒョイッ

加蓮「あ、わりと重い……」

りゅーすけ「リューリュ」

未央「まだこれでもちっちゃいんだよ、進化したらすっごいんだから!」

加蓮「詳しいね?」

未央「ふふふ、カントー地方とジョウト地方のポケモンに関してなら、お任せあれ!」

加蓮「グリモ出身なのに?」

未央「う……だってさー、うち、田舎だからカントー地方の少し前のリーグ映像とかしか手に入らなくて…でもでも、向こうのポケモンバトルも大迫力なんだよ!」

加蓮「ふーん……ちょっと興味あるかも」

未央「ホントに!? なら、映像のメモリーディスクあるからさ、後で一緒に見ようよ!」

ジラーチ【傘は家に忘れたのにそんなもの持ってきてたの……?】

41: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:25:13 ID:gU7
未央「ジラちんは黙ってて!」

加蓮「ジラちん……?」

未央「あ。そっか…かれんには聞こえないんだっけ」

加蓮「そのジラちんって何? オバケ?」

未央「オバケじゃないよ、神様だよ、ステラタウンの星神様!」

加蓮「じゃあ未央はその、へんな名前の神様の声が聞こえるんだ」

未央「へんな名前って言うか…」

ジラーチ【まぁ、変なあだ名だよね】

未央「ありゃ……本人からも変なあだ名って言われた…」

加蓮「未央ってあだ名のセンス独特だよね。誰にでもあだ名つけてんの?」

未央「うるさいな、いいでしょー。あだ名あった方が、仲良しって感じするじゃん?」

加蓮「ふーん。仲良し……ねえ」

42: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:25:27 ID:gU7
りゅーすけ「リュー?」クンクン

未央「りゅーすけ?」

りゅーすけ「ウリュー」ニョロロロ

加蓮「何か見つけたのかな」

未央「あっ、もしかしたら……!」

未央「待ってよりゅーすけ~!」

りゅーすけ「リューリュリュー」ニョロロロ


~~~~~

43: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:25:45 ID:gU7
未央「結構入り組んだとこに入ったね……かれん、こっちって何かあるの?」

加蓮「アタシも街中知り尽くしてるわけじゃないし……多分こっちは工場とかだと思うけど」

未央「工場……りゅーすけ、こっちに何か見つけたのかなあ」

りゅーすけ「リューリュ」クイクイ

未央「あは、来てってさ」

加蓮「見ればわかるってば」

44: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:26:02 ID:gU7
~路地裏先の広場~

未央「何か、広いとこに出たけど……工場とかは見当たらないね」

加蓮「そっちとは別な道に入ったって事でしょ。……っていうかさ」

ミニリュウ「リュ」クイッ

未央「うわあ……趣味の悪い色の建物……」

加蓮「マジカ・ラボって言うんだ……ラボ……研究所か」

りゅーすけ「リューリュ」ガーッ

未央「わ、入っていっちゃった…」

加蓮「追わなくていいの?」

未央「い、行くけどさ……ここって……何なんだろ…」

加蓮「……この雨の原因、とか?」

未央「………ごくり」

加蓮「ほら、行くよ。危なかったらりゅーすけ連れて帰ればいいんだから」

未央「う、うん!行こう……おじゃましまーす……」ウィーン

45: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:26:19 ID:gU7
~マジカ・ラボ1F~

未央「誰もいないのかな……? 電気もついてないや…」

加蓮「色んな機械が点滅してるから、ギリギリ見えなくもない感じだけど。で、りゅーすけは?」

りゅーすけ「リュー」

未央「向こうの廊下の方みたい!りゅーすけ~っ」タタッ

加蓮「あ、走ると転ぶよ~」ヒラリ

加蓮「……? これは……?」ピラッ

46: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:26:44 ID:gU7
~1F廊下~

りゅーすけ「リューリュ…」

未央「りゅーすけぇ……もう、心配させないでよ…」ギュー

りゅーすけ「リュー? リューリュリュ」クイクイ

未央「ここは……『保管庫』って書いてあるけど」

未央「こんなとこに、何かあるって……」

保管庫からの声『メリャー メリャー』

未央「ポケモンの鳴き声だ!」

りゅーすけ「リュ!」

未央「カギ、かかってる……」ガチャガチャ

ポケモンの声『メリャアア……メリャアア……』ウェーン

未央「……うん。りゅーすけは離れてて!」

りゅーすけ「リュ!」バッ

未央「こういう時は!あたって砕ーくっ!!」ダダダダダッ

ドゴシャア!

47: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:27:07 ID:gU7
加蓮「何、何の音……けほっ、埃っぽい…」

未央「スイッチは……これか!」ポチッ

ヌメラ「メリャー」ヌメヌメ

加蓮「……ポケモン?」

未央「オリに閉じ込められてたんだよ…しかも部屋に鍵までかけてさ」

加蓮「そんな悪いことするような子に見えないけど……」

ヌメラ「メリャメ……」グデッ

りゅーすけ「リュ…!」ユサユサ

ヌメラ「メリャー…」キュルル

加蓮「ご飯食べてないんだ、この子」

未央「えと、待ってよ、確かこの中に……」

未央「はいっ、街で売ってたポケマメ!」

ヌメラ「メリャ? メーリャ?」キラキラキラ

未央「食べていーよ♪」ニコッ

ヌメラ「メリャア♪」モキュモキュモキュ

加蓮「未央、あのさ……」

未央「むむむむむ…………!」

加蓮「未央?おーい」フリフリ

48: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:27:32 ID:gU7
未央「こんなひどい事したのはどこのだれだーっ!!」ウガーッ

りゅーすけ「ウリュー!!」ウガーッ

加蓮「ひゃあっ!」ビクッ

ヌメラ「メリャ?」キョトン

未央「りゅーすけ、それにめりゃめりゃも」

りゅーすけ「リュ」フンス

めりゃめりゃ「メリャ」ポケー

加蓮「やっぱり凄いセンス……」

未央「こんなの見ちゃったら、黙ってられないよ!1言文句くらい言ってやんなきゃ!!」ヒョイッ

めりゃめりゃ「メリャー」

未央「わとと。ぬめぬめしてるねキミ…んしょと」

加蓮「多分だけど、なめくじポケモンとかじゃないの、その子…」

未央「なめくじでも何でもいいよ、こんな小さな子をオリに閉じ込めて泣かせるなんて、許せないし」

加蓮「……ま、アタシもそれは同感だけど」ボンッ

ヒノアラシ「ヒーノヒノ!」

加蓮「ぽて、危なくなったら例のやつ、よろしく」

ぽて「ヒノ!」

未央「よし……皆で最上階まで行ってみよう!」

加蓮(さっき見た資料っぽいの……アレがホントだとしたら、アタシもここは素通りできないしね)クシャッ

49: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:27:55 ID:gU7
~最上階・研究室~

未央「たのもーっ!」バァン

おかしなローブの男「な、何だ!?」

おかしなローブの女「侵入者か!?」

部屋の向こう側の扉『ペリー メルメラー ルンパルンパァ!』

未央「この声……あなた達、この子以外にもまだポケモンをいじめてるの!?」

めりゃめりゃ「メリャー…」シュン

ドスのきいた声の加蓮「ちょっとお尋ねしたいんですけど…こちらの資料に描かれている計画とやらは……本物かしら?」

ローブ男「なっ、極秘計画の資料!マジか!?」

ローブ女「雨を降らせるポケモンを利用して天候のエネルギーを集める計画……バレたっていうの!?」

未央「今まさに自分からバラしたよね!?」

ローブ「「マジか!?」」

50: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:28:19 ID:gU7
加蓮「最近のおかしな天気……黒幕はアンタ達だったってわけね」ビリッ ビリッ

ローブ男「ああ、資料に何をする!」

未央「そっちこそ、ポケモンを何だと思ってんのさ!!」

りゅーすけ「リュー!」

ローブ男「うるさい侵入者共め……!やっちまえ、マーイーカ!」

マーイーカ「マイッカ!」

ローブ女「いきなさい、スリープ!」

スリープ「プヒャァ……」

加蓮「ぽて、お願い!」

ぽて「ヒッノ!」

未央「行くよりゅーすけ!」

りゅーすけ「リューーー!」

ローブ女「スリープ、はたく攻撃!」

スリープ「プヒャァ!」ベチッ

ぽて「ヒノッ!」ドテッ

ローブ男「つつくだ、マーイーカ!」

マーイーカ「マイカッ!」ツンツン!

りゅーすけ「リュ!」ツンツン!

未央「やったね……!だったら……りゅーすけ、まきつく!」

りゅーすけ「リューーー……!」ギュー

マーイーカ「マイカッ!?」

ローブ男「な、身動きが……卑怯だぞ!」

未央「どっちがさ!」

51: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:28:48 ID:gU7
加蓮「ぽて、お返しだよ!たいあたり!」

ぽて「ヒノー!」ドカッ

スリープ「プヒャァァ…!」バキッ

未央「今!離れてりゅーすけ!」

りゅーすけ「リュ!」ピュウッ

マーイーカ「マイカッ?」

飛んできたスリープ「プヒャァ!」

下敷きマーイーカ「マギャ!」

ローブ「「マジかぁ!?」」

未央「今だよりゅーすけ! ビリビリにしちゃえっ! でんじは!!」

りゅーすけ「リューーー……リューーー!」バリバリバリバリバリ

麻痺したローブ「「しびびびびびびび!!」」

麻痺スリープ「プヒ プヒヒヒ」

麻痺マーイーカ「マギャギャギャ」

未央「……よしっ!」

加蓮「やるじゃん、未央!」

52: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:29:13 ID:gU7

未央「かれんもね!後は……」ダッ

加蓮「ぽて、未央と同時に扉にたいあたりして!!」

ぽて「ヒノッ」ビシッ

未央「行くよぽて!せーの!」

ぽて「ヒノッ!」

ドゴシャア……

53: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:29:42 ID:gU7
オリ『ルンパルンパァ クリュー メラメル…… ペル ペルルリィ』

加蓮「……ひどい」

未央「スイッチは……これだ!!」ポチッ

ガコン!ギイイイイ

オリが開き、逃げ出すポケモン達。
そして外には……

早苗「容疑者諸君!おとなしくお縄を頂戴しなさいっ!!」

加蓮「良かった、ポケモンポリス!」

未央「いつの間に……? もしかしてかれんが?」

加蓮「真っ向から突っ込んで、アタシ達が負けたらそれで終わりとか、悔しすぎるでしょ」ヒラヒラ

加蓮「アタシ、負けず嫌いだから」ニヤリ

捕まっていたヌメルゴン「メルメ……」スリスリ

めりゃめりゃ「メリャー♪」スリスリ

未央「あれがお母さんかな。よかったね、めりゃめりゃ…」グスッ

加蓮「……いいの?」

未央「うん。きっとその方が幸せだもん」

54: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:30:14 ID:gU7
捕まっていたハクリュー「クリュー」ヒュウウウ

加蓮「雨雲が、晴れていく……」

りゅーすけ「リューー…」

未央「りゅーすけはいつか、あんな風に天気を操るようになるんだよ。その時まで、頑張ろうね」

りゅーすけ「リュ!」

加蓮「そっか……それでりゅーすけはこの場所がおかしいって……」

飛び去るハクリュー「クリュー」ヒューン

未央「ありがとねー!!」ブンブンブン

「クリュー♪」

未央「さ、ウチらもここ出よっか。……ん?」

めりゃめりゃ「メリャー」スリスリ

未央「めりゃめりゃ、お母さん、あっちだよ?」

ヌメルゴン「メル…メーラメ」フリフリ

ジラーチ【ミオと一緒に行きたいんだってさ。お母さん、説得したみたいだよ】

未央「え………めりゃめりゃ、いいの?」

めりゃめりゃ「メリャメ!」

未央「~~~~っ!」グッ

ヌメルゴン「メラメル」ペコ

未央「うん、うん。大事にします、お母さんみたいな立派なポケモンにしてみせるから!」

去り行くヌメルゴン「メラ♪」ノッシノッシ

55: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:30:33 ID:gU7
加蓮「ん、この資料……めりゃめりゃの事描いてあるみたいだよ」

未央「え、どれどれ……?」

資料『ヌメラ 進化前の幼体ではドラゴンタイプ最弱と言われる。育てるのには愛が必要。あらゆる打撃攻撃をその粘膜でいなしてしまう。』

未央「ドラゴンタイプ………!?」

りゅーすけ「リュー!」

加蓮「最弱かぁ。ふふ、これは将来に期待かもね。」

未央「うんうん、コイキングだってあんなかっこいいギャラドスになるんだもん!よーし!ヌメラのめりゃめりゃ、ゲットだー!」

めりゃめりゃ「メリャ-!」

※こうして、ポケモンポリスにより施設は取り壊しが決まり、街には元通り、青空が広がるのだった……。

56: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:30:49 ID:gU7
~夜・加蓮宅~

まろ「ケプ」マンマル

加蓮「アタシ達の晩ご飯はどこ」

加蓮母「そこの青空みたいな子のお腹の中ね。」

未央「うへえ~!お腹減ったあ……」

加蓮「まろ……アンタね……」

まろ「チルー?」

※さあ、いよいよ次回はジム戦だ!

57: ◆6RLd267PvQ 19/07/04(木)15:31:06 ID:gU7
~少しして、晩ご飯食べながら~

未央「そう言えばかれん、危なくなったら使う例のやつって、何?」

加蓮「ああ、危なくならなかったから使わなかったね」

ぽて「ヒノッ」ポヒュー

未央「わぷ、煙っ?」

加蓮「ま、いざという時は未央を囮にこれで目くらまししてアタシ達だけでオリ開けようかなって」

未央「し……したたかだね、かれんって……」

加蓮「賢いって言ってよね、ふふん」





続く!

61: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:06:43 ID:mvj
3話目です、ジム戦。

Cats are not as sweet as they look.

62: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:07:14 ID:mvj
~夕方・マギアシティ ジム前受付~

受付「……はい。確かにユニットとして受理致しました。参加OKですよ。」

未央「やっっ………たぁ~!!!」ダキッ

加蓮「ちょ、ちょっと未央、人が見てるから!」

未央「かれんがユニットの仲間になってくれたから、私もジム戦に参加できるんだよ!ありがと~!」

加蓮「……まぁ、未央には借りもあるし、アタシも……ジム戦には興味あったし、ね」

受付「こほん! 詳しい説明に移りたいのですが、よろしいですか?」

未央「わわ、はいはい!はい!」

ジラーチ【慌ただしいったらないなぁ】

加蓮「ったく……」

63: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:07:37 ID:mvj

受付「では。当グリモリーグ協会の受付、アシスタント業を務めています、私ちひろから、グリモリーグ挑戦への大まかな流れと、ユニット制の細かなルールについてお話させていただきます。どうぞ、椅子におかけください。」

未央「おお……何か…何かわくわくしてきた!」

加蓮「気が早いよ、どんな不利な条件かもわかんないでしょ」

ちひろ「いえ、基本的にはユニット制と言うのは、ジム戦を勝ち抜く上で、メリットの方が大きいんですよ」

加蓮(ってことはデメリットもある、と)

未央「おお~…!」

加蓮(わかってんのかなあ……)

ジラーチ【あの顔はわかってないね】

加蓮(………? 今、声がした……?)キョロ

ジラーチ【おっと、つい心の声にツッコんでしまった】

ちひろ「よろしいですか。グリモ地方でジムリーダーに挑戦するには、2人もしくは3人のトレーナーと、そのトレーナーそれぞれの手持ちポケモン、計3体で挑んで頂きます。これは必須事項です」

ちひろ「勿論、その手持ちポケモンの持ち主であるトレーナーが出場しなければ挑戦は無効になります。ここまではよろしいですか?」

未央「えと、って事は今だと……私のりゅーすけと、めりゃめりゃと…」

加蓮「私とぽてが参加すれば事は大丈夫って事ね、ひとまずは」

未央「うわ、ギリギリだ……よかったぁ、数がちゃんと揃ってて」

64: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:08:16 ID:mvj
ちひろ「そして、ユニットには早い段階で、スカウトの権利が与えられます」

未央「スカウト?」

ちひろ「はい。同じように当地方を旅するトレーナーは数あれど、組む相手が見つからず、また、戦力不足等でお困りのトレーナーのために作られた制度でして」

ちひろ「特定数のジムバッジをお持ちですと、最大で5名まで、ユニットを組むことが可能になります。まずはマギアジムを勝ち抜いて1つバッジを手に入れてからになりますが、3人目のトレーナーとユニットを組めるようになりますよ」

加蓮「…待って、それじゃ最大で5人になったら、ジム戦に参加しないトレーナーもでてくるよね、必然的に」

ちひろ「はい、ですがユニットメンバー追加の時点で、ユニット参加者全員に現時点でのジムバッジ獲得最大数を入手したのと同等の権利が与えられます。」

未央「おお、何かよくわかんないけど、お得っぽいじゃん、追加メンバーの人!」

加蓮「……アタシはむしろ嫌な予感しかしないんだけど」

ちひろ「その代わり、ユニットを途中で解散する事や、メンバーの途中離脱は認められておりません」

未央「……つまり、一度組んだ相手とは最後までそのままって事かぁ」

加蓮「もし仮に、何らかの……事故や病気や、まぁケンカ別れとかでユニットが分裂したりしたら?」

ちひろ「そのシーズンのジム挑戦は無効となり、バッジも全て剥奪され、1からやり直しになります。」

加蓮「ナルホドね……!」

未央「あ、あの、病気とかは仕方ないんじゃ……」

ちひろ「はい、ですから、病気が治るまで仲間達がお世話して、早く治せるのであれば全く問題はありません」

未央「なら、大丈夫だよ、かれん」ホッ

加蓮「……最初は皆そう言うのよ」

未央「かれん?」

65: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:08:43 ID:mvj
加蓮「病気して、優しい言葉をかけてくれるのは最初だけ…皆、だんだん重荷になって、ケンカしたり、諦めたりしていなくなる…」

加蓮「アタシは、そんな中で生きてきた」

未央「かれん……」

加蓮「なんてね。やる前から弱音なんて、バカみたいだよね。アタシ、やるよ」

未央「うん。私、絶対にかれんの事、最後まで見捨てたり、置いてったりなんかしないって約束するよ」

加蓮「アンタがよくても他の人はわかんないでしょ……ま、それこそ先の話だけど」

加蓮(必然的に、仲間に身体の事情は隠せない事になっちゃうか。…それもまぁ、仕方ないよね)

ちひろ「ひとまずの説明としましては、大体終わりましたね。後は、手持ちポケモンの制限ですが……」

未央「制限、ですか」

ちひろ「はい。参加登録可能なのは、一人のトレーナーにつき3体まで。最終的には5名と15体の中から有利な組み合わせを選出する事になります」

未央「3体まで、か。 私はあと1匹だなぁ」

加蓮「……流石にいい加減、あのふてぶてしいのもボールに入れないと、か」

未央「あはは、まろちゃんの事だね?」

加蓮「今回はともかく、旅をするならぽて1匹じゃ流石にアレでしょ」

ちひろ「因みに、ジムリーダーはユニットを組んでおりません。1人で挑戦者のお相手をする事になります。そして、ジムリーダーが使うポケモンのタイプも、各ジムで決まっています。」

未央「あ、そこは他の地方と同じなんだ」

加蓮「弱点の対策がしやすいって事……? ……そんな単純じゃないか、ジムリーダーなら」

ちひろ「はい、ジムリーダー側もそれは承知ですから、あらゆる局面に対応できるパーティーで、皆さんをお待ちしていると思いますよ」

未央「流石ジムリーダーだね……!」

66: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:09:00 ID:mvj
ちひろ「なお、試合に敗退してもバッジが剥奪されたり、挑戦権が無効にはなりませんので、同じジムに勝利するまで何回も挑戦することも可能です」

加蓮「できれば一発で行きたいよね」

未央「う、うん……流石に何回もだと、何かちょっと恥ずかしいかも………」

ちひろ「大体の説明は以上になります。簡潔にもう一度、以下に纏めましたのでご確認ください。」

・ユニットバトルは2人または3人のトレーナーと、そのトレーナーの手持ちポケモンでジムに挑戦するルール。敗北によるペナルティは一切ない。

・ユニットはバッジの数ごとにスカウト上限が5名まで増えていく。戦力増強を図れるが、一度組んだユニットは解散不可能になり、万が一何らかの理由で解散した場合すべてのジムバッジは剥奪される。

・一人につき登録可能なポケモンは3体まで。つまり最終的には5名15体から3体選出でジムに挑む。ジムバッジはユニットで共有されるが、あらゆる局面に対応するため、ユニットメンバーは常にポケモンを鍛えておく必要が想定される。

67: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:09:24 ID:mvj
ちひろ「…と、以上になります。どうです?」

未央「面白そう!」

加蓮「面倒」

ちひろ「見事に割れましたね……。ですがきっと、旅をする上で、トレーナーを続ける上で糧になるはずだと、協会本部は考えています。頑張って勝ち抜いてくださいね。」

未央「はい!」

加蓮「…うん…やるからには、負けない」

ちひろ「いいお返事です。すみません、個別に説明しないといけなくて、夕方までおまたせしてしまいましたけど」

未央「その分ゆっくり話聞けましたし、大丈夫です!」

加蓮「うん、少なくとも後でルール知らなくて泣きを見る、なんてことはなさそう。」

ちひろ「ユニットの仲間ができそうになったら、まずはルールをちゃんと伝えてあげてくださいね。情報共有は大事ですから。報連相、基本ですよ」

未央「おお……できる人っぽい発言…!」

ちひろ「これでもポケモンリーグ協会のアシスタントですから。では、今日はもう遅いですし、ジム戦は明日以降にして、充分身体を休めてくださいね。」

~~~~~

68: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:09:47 ID:mvj

Side 未央

~深夜・加蓮宅の庭~

未央「りゅーすけ、ちょっと」ボンッ

りゅーすけ「リュ?」

未央「明日から、いよいよジム戦だよ、りゅーすけ。バッチリ行けそう?」

りゅーすけ「リューリュ」コクン

未央「うん、私も大丈夫。それでさ…」ガサゴソ

未央「これ、覚えてる?」

※未央はベルトの様な装置を取り出した…

りゅーすけ「リュー」

未央「子供の頃、うちの兄ちゃんがカントー地方を旅した時に手に入れた、使い捨ての古い技マシン。今はもう、何回使ってもなくならない、ディスク型のが普通だけど……」

未央「私、いつか旅に出るときは、この技マシンを使う時にもなるってずっと考えてた」

りゅーすけ「リュ」スリスリ

未央「……りゅーすけ、明日は頑張ろうね」ガチャリ

りゅーすけ「リュ……リューーー……!」フオオオン………

※りゅーすけは、新しい技を覚えた。

※未央の宝物の技マシンは、役目を果たすと音もなく壊れてしまった………。

69: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:10:16 ID:mvj

~翌朝・公園~

未央「めりゃめりゃ、あの的に向かって、攻撃!」

めりゃめりゃ「メリャプー!」プクプクプク

未央「今のは……検索検索と」ピポパ

未央「出た。あわ攻撃かぁ。威力は低いけど、泡を絡ませて相手の動きを封じる……ほほー」

加蓮「あ、こんなとこにいたんだ」

未央「かれん、おはよう! 早起きだね?」

加蓮「病院ぐらしの癖で、こう見えて早寝早起きなの、アタシ。今は散歩。」

めりゃめりゃ「メーリャ」

加蓮「技の特訓? その子、何使えるの?」

未央「えへへ、ナイショ…って言いたいけど、連携しなきゃだもんね。報連相は大事だし!」

加蓮「ちひろさんの受け売り?どれどれ」

加蓮「ふうん……威力は出ないけど相手のスピードは抑えられる技か」

未央「早い相手がいても、これなら何とか!」

加蓮「当たればね、当たれば。」

めりゃめりゃ「メリャ!」ニパッ

加蓮「自信満々だね、ふふ」ツンツン

めりゃめりゃ「メーリャァ」ヌメヌメ

加蓮「わ、そうだった……この子、ぬめぬめするんだった…」ペトォ

未央「技の確認もできたし、それじゃそろそろかれんの家に戻ろっか」

加蓮「それはいいけど……りゅーすけの方は大丈夫なの? 確か、あんまり強い技とかなかったし」

未央「だーいじょうぶ。とっておき、準備してるって!」

加蓮「へえ……とっておきか。……ま、ほどほどに期待しておくね」

70: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:10:32 ID:mvj
未央「全力で期待してくれてもいいのだよ?」

加蓮「それはやめとく、期待裏切られた時が怖いし」

未央「ありゃ……リアリストだなあかれんってば」

加蓮「ま、走りがちなアンタとでバランスはいいでしょ?」

未央「あはは、言えてる♪……よろしくね、かれん」スッ

加蓮「……勝つよ、絶対」ギュッ

※固い握手を交わす2人だった……。

~~~~~

71: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:10:54 ID:mvj
~そして、昼前・マギアシティジム試合会場~

紗南『さぁ~!今年もやって参りました、ポケモンジム挑戦の季節!マギアシティを中心に、グリモ地方を一周、各街で8つのバッジを手にし、ポケモンリーグへの挑戦権を獲得するのは果たしてっ!どのユニットなのかぁーっ!あたしも今からわくわくしてきたよーっ!』

ワアアアア

紗南『各街のジム戦、今シーズンの実況はあたし、紗南がお届けしますっ!実況は初めてなんで、ドキドキしてるけど、持ち前の知識でバッチリ盛り上げてくから皆、ちゃんとついてきてよー!』

ワアアアア

紗南『では、挑戦者の2人、前へ!! まずは自己紹介からどうぞっ!』

未央『えと、ステラタウンから来ました、未央です!ジム戦は初めてですけど、一生懸命頑張って……楽しみたいと思います!よろしくお願いします!』

ワアアアア…

加蓮『この街の人なら知ってる人、多いと思うけど。一応ね。加蓮だよ。人生一度きりだもん、少しだけ、無茶してみることにしたから、まぁ、応援よろしくね』

ワアアアア…!!

未央「おお……流石にマギアの有名人、盛り上がりがすごい」

72: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:11:17 ID:mvj
加蓮「半分は野次馬みたいなもんだろうけどね……さて、まずは未央からだよ、なるべく弱らせといてよね」

未央「がってんでぃ!任せておきなさいって!」

紗南『では、挑戦者の紹介も終わったところで……!ミュージック、スタート!』

※会場にジャズの賑やかなメロディが響き渡る!

未央「おお、かっこよくて楽しげな曲だぁ!」

みく『にゃんにゃーん!皆元気にしてたかにゃ~!マギアの猫チャンアイドルジムリーダー、みくにゃんのお出ましにゃん♪』キャピッ

加蓮「ネコミミ、ネコしっぽ……噂には聞いてたけど…」

みく「そんなに見つめちゃ照れるにゃあ、見とれちゃう気持ちはよくわかるけど♪」

未央「ジムリーダーのみくにゃん……色んな意味で油断できない相手かも……同じ女の子の私でもクラっときちゃいそうだよ…!」

みく「にゃふふ、そのままクラクラしてくれたら、すーぐラクにしてあげるんにゃけど」

みく「本気の目をした挑戦者には、みくもちゃんと本気でいくよ!油断してたら駄目なんだからね!」

未央「お、おっす!よろしくッス!みくにゃん先輩!!」

加蓮(ふーん……なかなかどうして)

ジラーチ【ナルホド。見かけ程甘くはなさそう、かな】

紗南『では、試合会場の皆、準備はできてる!?この瞬間を見逃すな~っ!』

紗南『試合、開始~っ!!』

73: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:11:40 ID:mvj
未央『りゅーすけ、お願いっ!』ボウン

りゅーすけ『リューーー!』 

紗南『未央選手の一匹目は、カントー地方のドラゴンタイプ代表格!ミニリュウの登場だぁー!』

ワアアアア…

みく「ふっふーん、ドラゴンタイプかぁ……これは倒しがいがありそうにゃ!」ボウン

ニャース「タニャア!」クシクシクシ

紗南『対するみくさんの一番手は、これまたカントー地方のペット代表、ノーマルタイプのニャース登場!』

未央「ニャース…!カントーのポケモンだぁ……」キラキラキラ

加蓮「こほん、未央、集中」

未央「おっとそうだったぃ……じゃ、早速いくよ!」

みく「お先にどうぞにゃ!何が来たってそう簡単には」

未央「バリバリにしちゃえっ!りゅーすけ!でんじはっ!」

りゅーすけ「ウリュー!」バリバリバリ

ニャース「ヒニャア!」

みく「にゃ"っ!?」

紗南『あーっと、これは!初手から麻痺状態を許してしまう痛恨のミスだ~!みくさんいきなりこれは大丈夫か~っ!』

74: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:12:05 ID:mvj

みく「な、何の、麻痺したくらいじゃ猫チャンの本領は……ニャース、ひっかく攻撃!」

ニャース「タニャア……」バリビリ

紗南『やはり痺れて動けず~っ!』

みく「え……ひどくない?」

加蓮(素が出てるよみくにゃん…)

未央「フィーバーターイム!りゅーすけ、まきついて締め上げちゃえ!!」

りゅーすけ「リュリュリュ!」ニョロロロ

ニャース「ニャ!?」

りゅーすけ「フンリュー!」ギュムー!

ニャース「ヒニャアアア」ジタバタ

紗南『動けないニャースにまきつくミニリュウ!これは逃げられない、たまらないっ!』

みく「ふん、油断したね!それだけ距離が近ければこっちだって……ニャース、かみつくにゃ!」

ニャース「ニャブ!」ガブリ

りゅーすけ「リュ!?」

りゅーすけ「リューーー!」フムムムム

未央「いっけえりゅーすけーっ!」

みく「ひっかくのにゃ!」

75: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:12:27 ID:mvj

ニャース「ニャ……ニャア」ベシッ

りゅーすけ「リュ!」ベシッ

りゅーすけ「ウリュー!」ギュムー!!

ジラーチ【接戦なんだろうけど……スケールの小さい戦いだなあ……】

未央「ジラちんは黙ってて」

ジラーチ【はいはい】

ニャース「タニャア……」クラクラ バタン!

みく「ニャース!」

紗南『何と未央選手、じわりじわりとまきついてニャースを倒してしまった~!しかし、巻き付かれながらも文字通り食い付いたニャースの健闘も讃えられるべきっ!』

ウオオオオ……!

みく「お疲れ様にゃ、ニャース、ゆっくり休んでね」シュウウウ

紗南『さあ、ニャースをボールに戻し、注目の2匹目は!』

みく「今度はさっきみたいに甘くないからね!油断してるとひっくり返しちゃうのにゃ!」

未央「油断なんてしないよ!相手はジムリーダー…最初から最後まで、全力だよ!!」

りゅーすけ「リュリュ!」

76: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:12:51 ID:mvj
みく「いい度胸にゃ……いくよ、ニャルマー!!」

ニャルマー「ニャアアン…♪」

未央「おお、セクシーなお猫様…!この子は初めて見るなぁ……」

紗南『主にシンオウ地方で大人気の猫ポケモン、華麗な動きに惑わされないよう要注意!ニャルマーの登場だー!』

オオオオオ…!

未央「動きを封じる手なら、やっぱアレでしょ!」

みく「にゃっ、ま、まさか…」

未央「もいっちょやったれ!りゅーすけ!でんじはーっ!」

りゅーすけ「リュリュー!」バリバリバリ

ニャルマー「ニャアッ!」バリバリバリ

みく「あー"もー!何でにゃあ!!」ジダンダ

未央「よっし!今なら……もう一度まきついて締め上げちゃえ!」

りゅーすけ「リュリュリュ!」ニョロロロ

みく「落ち着かないと…このままじゃ…このままじゃ……」

みく「……なんてにゃ」ニヤリ

加蓮「! 未央!」

未央「ほえっ?」

77: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:13:15 ID:mvj
みく「ひっかくのにゃ、ニャルマー!」

ニャルマー「ニャルッ!」ベシッ

りゅーすけ「ウリュー!」ドサアッ

紗南『あーっと、でんじはは確かに当たったはずなのに、ニャルマーにはまるで効いていないっ!これはひょっとして!』

みく「同じ手を何度も食うと思ったら大間違いにゃ!ニャルマーは特性じゅうなん! 麻痺状態なんかには絶対にならないにゃ!」

未央「あちゃー……まんまとひっかけられた……やるなみくにゃん先輩……!」

りゅーすけ「リュリュー…」

加蓮(ナルホドね。一戦目で敢えてニャースがでんじはを受けておいて……油断したところで削りに来たってわけか。)

加蓮「未央、あのみくってジムリーダー、見た目より割と性格悪いかもよ」フフッ

みく「にゃ、いきなり何てコトを言うにゃ!こんなにキュートな猫チャンアイドルを捕まえて性格悪いは酷いにゃあ!」

加蓮「そう?アタシ的には褒め言葉なんだけど」

みく「むむう……未央チャンを倒したら、次は加蓮チャンの番なんだからね!」ビシッ

未央「おーっと、もう勝った気でいらっしゃるかい、みくにゃんさんや」チッチッチ

みく「何、まだまきつくでじわじわ締め上げるつもりなの? 時間がかかる威力の低い攻撃じゃ、みくのニャルマーは落とせないよ!」

みく「素早く動いて撹乱するにゃ、ニャルマー!かげぶんしん!!」

ニャルマー「ニャルッ」シュシュシュシュ

未央「なっ……!?」

りゅーすけ「リュ!?」

78: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:13:46 ID:mvj
紗南『ニャルマーお得意の高機動戦術!影分身の本体を見切らない限り攻撃は当たらないぞーっ!』

ワアアアア!

未央「………これは……ピンチかなあ」

加蓮「未央…」

未央「……ホントは最後までとっとくつもりでいたんだけど……仕方ないよね!」

りゅーすけ「リュリュー!」フンス

みく「……? まだあの目、諦めてない…?」

みく「でも、今更何をしたって当たらなければ意味ないのにゃ!接近してひっかく攻撃!」

ニャルマー「ニャルーッ!」タタタタッ

未央「……すう……」

加蓮「未央……!」

未央(使うね、兄ちゃん、あの技)

みく「とどめにゃあああ!!」

未央「りゅーすけ、光を集めて!」

りゅーすけ「リュリュ!」シュイン

みく「にゃ!?」

紗南『おおっ、こ、この技は!?』

79: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:14:10 ID:mvj

未央「撃ち抜け、スピードスターッ!!」

りゅーすけ「リューッッ!!」シュパパパパパパ

みく「…あの技はまずいにゃ、ニャルマー、回避を……」

ニャルマー「ニャルッ!」ドサアッ

みく「……い、一発で、本体を……!?」

紗南『ニャルマー、戦闘不能!! スピードスターは絶対命中の技…これは影分身じゃかわせないーっ!』

みく「ぬぐぐぐぐ……新人トレーナーの1匹目にここまでコテンパンにされちゃうなんて……悔しいにゃあ!みくのアイデンティティがクライシスにゃあ!」プンスカ

加蓮「な、何かよくわかんない怒り方してるけど……」

ジラーチ【スピードスターか、悪くない技選びだね】

未央「へっへー、こっちだって、何の準備もなしには挑んだりしないもんね!」

りゅーすけ「リュー…リュー…」

みく「……あのミニリュウ……疲れてるね」

みく「そして多分未央チャンはそれに気付いてない……か。ふふ、やっぱり初心者さんだにゃあ…」

紗南『さあ、みくさんの3体目、いよいよ最後のポケモンです!』

未央「これに勝てばいよいよ……!燃えてきたぁ……っ!」

加蓮「未央、調子に乗らない…ジムリーダーの3体目、確実に切り札が出てくるんだから」

未央「そっか…こっちの手の内はもうバレちゃったし……! 頑張らないとね!」

りゅーすけ「リュリュ!」フンス

80: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:14:39 ID:mvj

みく「さて……お楽しみはここからにゃ♪ いくよ、エネコロロ!」ボウン

エネコロロ「ニャアアーン♪」シャナリシャナリ

加蓮「わ、綺麗…」

紗南『3体目はエネコロロ!ホウエン地方のエネコに月の石を使うことで進化するポケモン!ここに来て進化系の登場、難易度はググッと跳ね上がるよ!』

オオーッ!

未央「見た目からして簡単には勝てなさそうだもんね……ここはまず……りゅーすけ、でんじ……」

みく「ねこだましにゃ!」

未央「え」

パァン!

りゅーすけ「リュ……」クラッ……

バタン……

紗南『ミニリュウ、戦闘不能~っ!圧倒的素早さで完封してしまったー!』

未央「そんな…一撃で……?」フルフル

加蓮「そんなに強い攻撃には見えなかったけど……?」

ジラーチ【未央、ミニリュウは連戦で疲れが出ていたのに、気付いていなかったでしょ】

未央「え……あっ」

ジラーチ【トレーナーなら、ポケモンの技だけじゃない、他の状態にも常に気を配らないと……ミニリュウは、悟らせまいと必死に立っていたから、気づきにくいのはわかるけどさ】

未央「りゅーすけ…ごめん……!」グスッ

りゅーすけ「リュリュー」フリフリ シュウウウ

81: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:15:01 ID:mvj

加蓮「…優しいね、りゅーすけ」

未央「倒れたりゅーすけの分まで……私、まだ諦めないから!」

みく「や~っと本気が見られるのかにゃ?楽しみにゃ…ふふっ」

未央「いくよ、めりゃめりゃっ!」ボウン

めりゃめりゃ「ヌメリャー♪」

紗南『未央選手2体目、カロス地方のドラゴンタイプ、ヌメラの登場~! 生半可な打撃技は軟体でいなしてしまう守りの達人だぞ~!』

オオーッ!

みく「けど、見るからに捕まえたてっぽいにゃ…数合わせで勝てるほど、ジムリーダーは甘くないよ! おうふくビンタにゃ!」

エネコロロ「ニャアッ」ビシッ ベシッ

紗南『2回当たったぁ~!!これは……』

ヌメラ『メリャ』

紗南『耐えたぁ~! 流石の守り、意地を見せましたっ!』

みく「にゃ……3回以上なら落ちてたのに……」

加蓮「おうふくビンタって、確か最高5回連続攻撃だよね……2回は最低数。運が良かったわけだ」

82: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:15:25 ID:mvj

未央「このチャンス……無駄にしないっ!めりゃめりゃ、あわあわ攻撃っ!」

めりゃめりゃ「メリャプー♪」プププププ

エネコロロ「ニャアッ」プププププ

紗南『あーっと、泡がエネコロロの全身に絡みついていくーっ!地味に嫌な攻撃だーっ!』

みく「でも、だからってもう勝ちは決まりなのにゃ!おうふくビンタ!!」

ベシッ ベシッ ベシッ バシッ!!

めりゃめりゃ「メ……メリャメェ…」グニャン

紗南『力なく崩折れるヌメラ!戦闘不能です!』

みく「言ったはずにゃ、数合わせで勝てるほど、甘くないって」

未央「…めりゃめりゃ、戻って。帰ったらポケマメだからね」

めりゃめりゃ「メリャア…♪」シュウウウ

未央「……かれん」

加蓮「後はアタシが勝つだけって? たく……責任重いよ」スッ

未央「ごめん、頼りにしてるから!」パァン

紗南『ハイタッチをかわす2人!友情を感じる光景っ! 最後の1匹、加蓮さんのポケモンとは!』

83: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:15:52 ID:mvj
みく「ちょっとは期待してもいいのかにゃ?」

加蓮「ご期待に添えるよう、頑張ってみるつもりだけど? …そんなキャラじゃないんだけどさ」

みく「キャラを捨ててまで、か……。なら、相応の敬意でお相手するにゃ!」

エネコロロ「ニャアアアン!」

加蓮「ぽて、いくよっ!」ボウン

ぽて「ヒーノヒノ!」

紗南『加蓮さん、使用ポケモンはジョウト御三家で有名なヒノアラシだっ!驚くと背中から吹き出す炎、そしてちょっぴり臆病なことで知られるひねずみポケモンだよー!』

ワアアアア

加蓮「うちの子はどっちかというとひかえめな性格なんだけど…ま、やってみますか。」

ぽて「ヒノォ!」グッ

エネコロロ「ニャアッ」

みく「先攻はこっちのはず……おうふくビンタで一気に決めるのにゃ!」

エネコロロ「ニャアッ」ダッ

ぽて「ヒノッ」グッ

加蓮「あれを耐えなきゃ何にもならない……もってよ……!」

84: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:16:21 ID:mvj

エネコロロ「ニャアン!」ステーン!

みく「はい?」

紗南『こけたーっ!!これは一体どうしたことでしょう!』

未央「…言ったでしょ。私、まだ諦めないからって!」

あわに滑るエネコロロ「ニャアッ……ニャアッ」ジタバタ

紗南『あわの効果で素早さが下がっている~っ!これは大チャーンス!』

未央「さあ、かれん!」

加蓮「煙幕っ!!」

ぽて「ヒノオオオ!」ボフーッ!

エネコロロ「ニャア…?」キョロキョロ

加蓮「見えないでしょ、アタシ達の姿が!」

みく「これは……ちょっと油断しちゃってたかもにゃぁ……未央チャン……やるにゃ……」

加蓮「たいあたりだよ、ぽて!」

ぽて「ヒーノッ!」ドゴッ

エネコロロ「ニャアッ」ズザッ……

未央「……どうだ…?」

ジラーチ【煙が晴れないとどうなったかわからないけど……多分、悪くない】

加蓮「………ぽて?」

ぽて「ヒノォ……」ポーッ

エネコロロ「ニャフッ」パチン

ぽて「ヒノォ………♪」

みく「…かかったにゃ!」

加蓮「ちょ、ちょっとぽて!?」

85: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:16:45 ID:mvj

ぽて「ヒノヒノォ」スリスリ

エネコロロ「ニャフン♪」

紗南『これは何と!エネコロロのとくせい、メロメロボディが決まってしまったぁ!!メロメロになったポケモンはほとんど何にもできなくなっちゃうよ~!』

みく「迂闊に触れるから、魅了されちゃうのにゃ♪ そろそろ勝負を決めるとするにゃ!」

加蓮「く…そんなのってアリ……?」

みく「おうふくビンタ!」

ビシッ ビシッ バシッ!

紗南「3回当たったあ!ギリギリだ、ギリギリで耐えているっ!」

ぽて「ヒノォ…」ポーッ

未央「かれん、メロメロになっても、何もできなくなるわけじゃないよ!」

加蓮「知ってる……確率はかなり低いけど、たまに言うこと聞いてくれるよね」

加蓮「アタシだって、伊達に毎日街頭ビジョンでバトルを眺めてたわけじゃない……ここから、巻き返すなら……」

~~~~~

86: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:17:02 ID:mvj
~ある日の夜~

加蓮『まだまだ!炎がまだ出せないからって、ただ甘えてたら勝てないんだから!』

ぽて『ヒノ……ヒノ……』ゼー ゼー…

ぽて『ヒノオオオ……ヒノォ!』ドゴオオン!

加蓮『きゃっ……!』

ぽて『ヒノ……ヒノ…』フーッ…

加蓮『……い、今の技……ただのたいあたり、じゃないよね……?』

ぽて『ヒノォ』クテン

加蓮『ぽ、ぽて!!』

~~~~~

87: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:17:22 ID:mvj
加蓮「……そうか、あれが使えれば…!」

未央「かれん?」

みく「おうふくビンタにゃ!」

ビシッ ビシッ

紗南『2回ヒット!これは次耐えるのは厳しいぞ~っ!このまま勝負が決まってしまうのか!!』

加蓮「うん、決まる」

未央「かれん……?」

みく「諦めた……わけじゃなさそうにゃ」フフッ

加蓮(きっと、あの技は捨てポケモンだったぽてが、何らかの形で遺伝した技……)

加蓮「捨てる神あれば拾う神あり、なんて……ホント、嫌になるよね、神様ってのもさ」

ジラーチ【言うよねえ加蓮は】

88: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:17:45 ID:mvj
未央「でも、何をするにしてもメロメロのままじゃ……」

加蓮「信じる」

未央「え……」

加蓮「信じて」

未央「……うん!」

ぽて「ヒノォ……」クラクラ

みく「何にせよ、次で終わりにゃ!おうふくビンタにゃあ!」

加蓮「……負けない! ぽて!」

ぽて「ヒノ!」ハッ

エネコロロ「ニャアアアッ」ヒュッ…

89: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:18:09 ID:mvj
加蓮「起死回生!!!」

ぽて「ヒノオオオオオオオオ!!」カッ

エネコロロ「ニャ!?」

みく「なっ!?」

紗南『き、起死回生!? 体力が減るほどに威力が上がる一か八かの大技を……!?』

未央「……いける……いっけえええ!!!」

ドオオオオン……

エネコロロ「ニャ……ニャ……ニャフン」パタリ

みく「あ、あああ……」

90: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:18:24 ID:mvj

紗南『効果は抜群だぁーっ!!!エネコロロ、戦闘不能ーっ!!!』

加蓮「ぽてーっ!」ダッ

ぽて「ヒノォ!」ピョンコ

加蓮「もう!心配かけちゃってこいつぅ」ワシャワシャワシャ

ぽて「ヒノ ヒノノオ♪」

未央「な、何か加蓮のテンションがいつもと違うような……」

ジラーチ【アレが本来の彼女なのかもね。色々あって斜に構えるしかなかったのかも】

加蓮「……何見てんのよ」ギロッ

未央「うええ、そんな睨まなくても!」

加蓮「なーんて、ウソウソ。…ほら、手」

未央「……うん!」

パシィッ!

91: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:18:48 ID:mvj
みく「まんまとやられたにゃ……あんな戦い方もあるなんて、まだまだみくもお勉強が足りないにゃ……」シュウウウ

未央「みくにゃん」

みく「荒削りだけど、いい戦いだったと思うにゃ。でも、次からはあんな無茶させたりしたら、ポケモンがかわいそうだから」

未央「うん。肝に銘じます」

加蓮「アタシも。今回は…奇跡みたいなものだったし。無理をさせた点では同罪だし、ね」

みく「それがわかってれば、もうみくから言うことはないにゃ。……二人とも、手を出して」

加蓮「ん…?」

未央「おお?」

みく「はい、マギアジムクリアの証、テールバッジにゃ。ネコしっぽのカタチで可愛いでしょ?」

未央「おお……これが、ジムバッジ!」

加蓮「一歩前進、かな…。うん。」

紗南『ジムバッジが授与されたところで、本日の試合は終了となります!みんな、挑戦者とジムリーダーに、盛大な拍手を!!』

ワアアアア………


~~~~~

92: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:19:08 ID:mvj
~夕方・マギアシティ住宅街~

未央「えへへ、帰ったらジムバッジ、ピカピカになるまで磨くんだ~」スタスタ

加蓮「未央は元気だね……アタシはもう、一月分くらい体力使った感あるよ」スタスタ

未央「なにさ、かれんは嬉しくないの、バッジだよバッジ」

加蓮「嬉しいのと、気が重いのと、半々」

未央「あ、そっか……」

ちひろ『次のジム戦からは、参加登録の際に戦闘に参加する、しないに関わらず1人トレーナーをスカウトしてきてください!これもマギアでの実力査定に必要な事ですから!』

未央「次のジムはどっちにしろこの街にはないんだし、長い目で見てスカウトするしかないかなあ…」

加蓮「あまり長い目で見てると、シーズン終わってまたバッジ集め直しだけどね」

未央「さ、流石にそこまでの時間は……」

「すみませーん、ドリンクいかがですか~!」

未央「ん?」

93: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:19:34 ID:mvj
「アマちゃん、果汁をちょっとお願い」

アマカジ「アママ」

「トロちゃんは首の果物、1つちょうだいね」

トロピウス「トロ」

未央「へー、今日はここジューススタンドなんだ!こないだは確かいかりまんじゅうだったんだけど」

加蓮「毎日色んな所から来るからね、お店」

「あの、そちらのお姉さん、お疲れじゃないですか?」

加蓮「アタシ? 何で知ってるの?」

「えっと、さっき街頭ビジョンで偶然……」

未央「ジム戦、流れてたんだ!見ててくれてたの?」

「あ。はいっ。私感動しちゃって……けど、画面越しにちょっとお疲れかなって見えたので…」

加蓮「画面越しにって、アタシそこまでわかりやすいかな…」

「あの、こんなドリンクで良ければ、どうかお飲みになって下さい。お代は結構なので」

未央「おー、冷たくて甘くて美味しいよかれん、飲んでみなよ!」

加蓮「どれどれ……あ……」

「お口に、合いました…?」

94: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:19:53 ID:mvj
加蓮「何か、元気になれる味……って言うか元気出た。」

「ふふっ、アマカジとトロピウスの滋養効果です、有名なんですよ、あのポケモン図鑑に載るほどらしいですから」

未央「おお、ポケモン図鑑!選ばれたトレーナーのみ手に出来るって言うハイテク図鑑だよね!」

加蓮「…ごちそうさま。…アンタ、名前は?」

ネネ「あ、ネネって言います。事情があって、トレーナーを目指して旅をしてるんですけど、まだ一人きりで…」

未央「かれん?」

加蓮「ドリンク、凄く美味しかったよ。アタシ、これならもしかして多少の無理はできそうかもしれない」

ネネ「えーと?」

未央「あ、ナルホド! そっかそっか、私達、早速運が向いてきてるみたい♪」

ネネ「あの、お話がよく……」

未央「ネネちん!我々は貴殿を我がユニットの3人目に迎えたい!どうだろうか!」

ネネ「えっ、ええっ!?いいんですか!?」

未央「こちらが尋ねているのだ!どうだろうか!!」

ジラーチ【勢いで行く気だねアレは】

95: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:20:10 ID:mvj
加蓮「ね、アタシ、ちょっと身体に事情持ちでさ…この街じゃそれでちょっと有名なんだけど…不本意ながら」

加蓮「そのドリンクがあれば、アタシ、心強いなあって思うんだけど……ダメ、かな」

ネネ「……お体が……」

ネネ「わかりました!あの、うまくできるかわかりませんけど、旅のお手伝い、させて下さい!お願いします!」ペコリ

ジラーチ【加蓮も加蓮でわりとしたたかだよね、普段はこういうの話したがらないのにさ】

未央「よーっし、バッジも仲間も手に入ったし、今夜は我が家で宴じゃー!!」

ネネ「いきなりお邪魔して大丈夫なんでしょうか…」

加蓮「あのね未央、我が家じゃなくてアタシの家だからね?」


※かくして、3人目のユニットメンバーにくさタイプ使いのネネを加え、彼女達の冒険は、次のステージへ!


続く!

96: ◆6RLd267PvQ 19/07/05(金)06:21:32 ID:mvj
以上3話目でした。

戦闘に関しては色んな方から助言頂きつつ形にしました。感謝しています。

では、今回もお目汚し、失礼をば。

97: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:23:14 ID:Uc0
4話目更新します。
3人目の主人公の単独回です。
色々掘り下げていますので、必見ですよ。

タイトルは

Find My Way Because I'm Not Alone.



98: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:23:42 ID:Uc0
~時は、少しだけ前に遡る~

Side ネネ

楽しい時間って、どうしてあっという間に過ぎていくんだろう。

看護師「ネネちゃん、もう面会時間、そろそろだから」

ネネ「あっ、はい……わかりました」

しおん「お姉ちゃん……いっちゃうの?」

ネネ「しーちゃん……ゴメンね、でも、決まりだから…」

しおん「……あーあ、病院ってつまんないよね。自由に遊んだりできないし、ご飯も…お姉ちゃんの作るのの方が絶対美味しいんだもん」

ネネ「ダメよ、ちゃんとバランス考えて作られているんだから、ちゃんと残さず食べなさい」

しおん「ん…わかってまーす。でもね、お姉ちゃん、こっそりまた差し入れに作ってきてよ、サンドイッチとかでいいから……」

ネネ「もう、しーちゃんったら……」クスッ

看護師「ネネちゃん?」

ネネ「はーい! じゃ、行くね。」

しおん「うん。…あのね、お姉ちゃん」

ネネ「?」

しおん「……ムリ、しないでね」

ネネ「……しーちゃん?」

99: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:23:55 ID:Uc0
その時の妹の、寂しそうな、辛そうな顔を見て……でも私は、それが一体何を思っての表情なのか、察することができなかった。

ただ、1日に必ず訪れる、別れが寂しくて。

『時間が止まっちゃえばいいのに』なんて。
そんな事を考えていた。

100: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:24:14 ID:Uc0
・メーヴェシティ(マギアシティ南の港町)

~ネネの部屋~

ネネ「……退屈だな…」ボーッ

ネネ「考えてみたら、私は…しーちゃんの事で頭が一杯で、自分では何もできていないんだわ」

ネネ「しーちゃん……もしかして、それが心配で……?」ハッ

ネネ「私にできる……私がしたい事……か」

アマカジ「マカジ」チョコチョコ

ネネ「あ、ダメよアマちゃん、勝手にうろうろしてちゃ……今はもうこんなに暗いんだから……」

アマちゃん「カジマ マジ アママ!」ピョン

ネネ「どうしたって言うの…?」

101: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:24:37 ID:Uc0
~ネネの家の外~

怪我をしたトロピウス「ピウウス……」

ネネ「わ……大きなポケモン……!」

傷に果汁を付けるアマちゃん「アママ!」ピトピト

トロピウス「ピス……トロピス…」

ネネ「確かにアマちゃんの果汁は傷にも効くけど……ちょっと待って、包帯も持ってくるから」パタタ

アマちゃん「マカジ!」

~ネネの家の庭~

ネネ「本当はポケモンセンターに連れていけたら良いんだけど……この怪我だし、身体も大きいし……」

トロピウス「ピス…」フリフリ

ネネ「大丈夫って言ってるの? ダメよ、ちょっとした怪我も病気も、油断してると大変なことになるんだから…ほら、熱もある」

トロピウス「ピス……」

ネネ「一体どうしてこんな……あら?」

ドデカバシ「グァー」バサバサ

アマちゃん「マジ!?」ワタワタ

トロピウス「ピッス……!」ウーー

去りゆくドデカバシ「カバシッ」バサバサ……

アマちゃん「マカジ…」ホッ

トロピウス「ピスピウス」ニコッ

ネネ「ドデカバシ……確か、アマカジ族の天敵で…そうだ、丸呑みにして食べることがあるって…」

102: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:25:40 ID:Uc0
トロピウス「トーロピ」

ネネ「じゃああなたは、アマちゃんを助けてこんな怪我をしたの……? 同じくさタイプで、鳥ポケモンには弱いはずなのに……」

トロピウス「ピスッピ」ニッ

アマちゃん「アーママー」スリスリ

ネネ「……ありがとう、大きなポケモンさん。でもね、貴方が大怪我をして、もしかして死んじゃったりしたら……」

トロピウス「ピス?」

ネネ「アマちゃんだって悲しむし……貴方みたいに大きなポケモンなら、声をあげて助けを呼ぶことだって、できたはず。…特にこんな街の中なら…」

トロピウス「ピス ピースウ」フリフリ

ネネ「…他の人を巻き込みたくなかったの? 自分が凄く危ない目にあったのに…?」

トロピウス「ピス」コクン

ネネ「……わぁ……」

ネネ(この子、本当に優しいポケモンなんだわ……見ず知らずのポケモンのためにさえ、自分が盾になって、助けようとして……見返りも何も求めようとしていない)

ネネ「勇気、って……こういう事なのかな……でも、やっぱり自己犠牲なんて……」

103: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:26:04 ID:Uc0
アマちゃん「マジ」ピトピト

トロピウス「ピス♪」

ネネ「自己犠牲………もしかしたら、私も……」

ネネ「……………うん」タタッ

トロピウス「ピス?」

アマちゃん「マジ?」

ネネ「大きなポケモンさん、お願いがあるの。このヒールボールに……中に入れば、傷が少しずつ癒えていくはず」

ネネ「貴方が中にいる間に、私がポケモンセンターに連れて行くわ。だから……」

ネネ「貴方を、ゲットする事を、許してくれますか?」

アマちゃん「マジマジ! アーママー♪」

トロピウス「ピス ピスピウス ピスッピ」

トロピウス「ピス♪」コクン

ネネ「……ありがとう!」ギュッ

トロピウス「ピスピースウ♪」スリスリ

ネネ「じゃあ……お願い、癒やして、ヒールボール!!」ヒュンッ

ボウン……! ……ユラッ ユラッ ユラッ

……カチッ……!

104: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:26:17 ID:Uc0
ボールを拾うネネ「……本当にありがとう、アマちゃんは貴方のおかげで助かりました」ペコリ

ネネ「だから、私は貴方を助けます。絶対、見捨てたりしないんだから…」タタッ

アマちゃん「アママー」ピョンコ

105: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:26:38 ID:Uc0
~1週間後・ネネの妹、しおんの病室~

しおん「これ、ジュース? あ、アマちゃんの搾りたてジュース!」

ネネ「ふふっ、半分は正解ね。」

しおん「半分は……?……んっ」ゴクン

しおん「……あれ、いつものより、甘さがまろやか……美味しいっ」

ネネ「窓の外を見て、しーちゃん」

しおん「ん?」

飛ぶトロピウス「トーロピ♪」

背中に乗るアマちゃん「マママー♪」

しおん「新しいポケモンさん? おっきい!」

ネネ「私も最初はびっくりしたの。それでね、この子、色々調べたら……ふふっ、おかしいの」

しおん「えー、何が何が?」

ネネ「昔むかし、あるフルーツがとっても大好きな、食いしん坊のポケモンがいました」

しおん「うんうん」

ネネ「ポケモンは毎日のように同じフルーツを食べ続けるうち……なんと、自分の首元にとっても美味しいフルーツが実るようになってしまったの!」

しおん「それってもしかして……」ジーッ

しおん「あっ、首にフルーツついてる!」

106: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:27:00 ID:Uc0
ネネ「大好きなフルーツの味を皆にも知ってほしくて、ポケモンや人間の子供達に自分から首のフルーツを分け与えるポケモンなんですって。名前は、トロピウス。」

ネネ「で、トロピウスだから…トロちゃん!」

しおん「そっかー。じゃ、さっきのジュースは、アマちゃんとトロちゃんのミックスジュースなんだ」

ネネ「そうなの♪ 私も飲んでみたんだけどね、何だか身体の中から元気が湧いてきて……」ニコニコ

ネネ「………しーちゃん?」

しおん「お姉ちゃんのそんな嬉しそうな顔、久しぶりだなーって」

ネネ「しーちゃん……」

しおん「お姉ちゃん、そうやって笑ってると、凄くいい、かわいい!」

ネネ「か、かわいいって、いきなり……照れちゃうでしょ、もう」

しおん「ねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃんはさ、やりたい事って…ある?」

ネネ「…あ…」

突然あの時と、少し前に病室で見たあの目と同じ目で見てくる妹の表情を見て…私は。

ネネ(やっぱり、そういう事…だったんだ)

ネネ(……妹に、いつまでも心配ばかりかけてたら、ダメよね、私も)

107: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:27:16 ID:Uc0
トロちゃん「トローピ!」

アマちゃん「アーママー!」

ネネ「この声……あっ」

ドデカバシ「カバシッ!」バサバサ

ネネ「あの時のドデカバシ!」ダッ

しおん「お姉ちゃん?」

ネネ「前にトロちゃんを怪我させたポケモンなの!すぐに行かなきゃ!」

しおん「お姉ちゃん……うん!」

しおん「がんばれ、お姉ちゃん!」

ネネ「うん!」タタタッ

108: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:27:31 ID:Uc0
~病院の外~

ネネ「トロちゃん、背中に!」タタタッ

トロちゃん「ピウス!」バサッ

アマちゃんを抱くネネ「飛んで!」

トロちゃん「ピーウス!」バサッバサッ

ドデカバシ「カバシカバシッ!」バサッバサッ

ネネ「とにかく、人がいる所からは距離をとりましょう! 海の方に逃げるの!」

トロちゃん「ピス!」コクン

バサッバサッバサッ……

109: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:27:49 ID:Uc0
~海上~

ネネ「ここなら……誰も巻き込まない……!でも、どうやって戦えば…」

ドデカバシ「カバシッ」ヒュウッ!

ネネ「きゃっ!」

トロちゃん「ピスッ!」ゲシッ

ドデカバシ「バシ……」バサバサ

ネネ「今の技は……『つつく』かしら……くさタイプが苦手とするひこうタイプの技……」

ドデカバシ「カー……」スウウウウ

ネネ「くちばしを開いた……? ……何かが来る!トロちゃん!」

トロちゃん「ピウス!」バサッ

ドデカバシ「カババババババ!」ババババババ

アマちゃん「アママー!?」

ネネ「タネマシンガン! くさタイプの技まで……!?」

110: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:28:13 ID:Uc0
ネネ「えっと……確かバッグに……」ガサガサ

ネネ「あった、メーヴェ生息ポケモンのリーフレット! 観光案内所でこの前貰ってきたのよね…!」

ネネ「ドデカバシ……ドデカバシ……あった!」

ネネ「…体内でガス爆発を起こして、食べた種を吐き出し攻撃……そうか」

ネネ「じゃあ、あの種には弾数制限があるはず、それまで耐えきれば………?」

ドデカバシ「グアアアア……」ゴオオオッ

ネネ「くちばしが、赤く……!?」

ドデカバシ「カーバシッ!」ドヒュウウウ

トロちゃん「ピウス!」バサッ

ネネ「……っ!」ギュッ

ドパアアアン!

ネネ「……けほっ、けほ……? 何、この焦げた匂い……」

ドデカバシ「カバシッ……」チッ

ネネ「『くちばしキャノン』……くちばしを100度以上に加熱させ、一気に突撃するドデカバシの大技……」

アマちゃん「アマァ……」フルフル

ネネ「さっき、突撃した時の衝撃で空気が音を出した……つまり……アレをまともに受けたら、私達は……!」

トロちゃん「ピス……!」

111: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:28:39 ID:Uc0
ネネ「……うん。こんな危ない事をしでかす子を、のさばらせておくわけにはいかないわよね」

ネネ「街の皆のためにも……トロちゃんやアマちゃん、しーちゃんのためにも…そしてきっと」

ネネ「私の為にも!……今、ここで戦って、変わらなきゃ!」

ドデカバシ「グアアアア……」ゴオオオッ

ネネ「また来る……! トロちゃん、下の海面スレスレに飛んで!」

トロちゃん「ピーウス!」バサッ!

ドデカバシ「グアアアア!」ゴオッ

ネネ「………引きつけて……まだ…もっと……」

アマちゃん「アママ……」フルフル

ネネ「今よ、トロちゃん、飛んで!」

トロちゃん「ピーウス!」バサァッ!

ドデカバシ「グァ!?」ギュウン

ネネ「その勢いなら……急な方向転換は絶対にムリ!」

ネネ「海面に、叩きつけられて!!」

ドッパアアアアア………

112: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:29:02 ID:Uc0
びしょ濡れのネネ「はっ……はっ……はっ……」ドクン…ドクン……

ネネ(……参ったな……私の、身体も……)ドクン ドクン

アマちゃん「アママ! マジ ママジ!」

トロちゃん「ピス!?」

ネネ「…妹だけじゃ、ないの……私も、昔入院してて……けほっ」

ネネ「身体、あまり……もたないかも……っ」ハァ ハァ ハァ

アマちゃん「アママー!」ワタワタ

トロちゃん「ピス……!」バサッ

ネネ「待ってトロちゃん……けほ……街に向かうのは、まだ早い、みたい……」ギュッ

怒ったドデカバシ「バッシ…」バサバサ

アマちゃん「アマママママ」フルフル

トロちゃん「ピースウ……!」

ネネ「でも、向こうも弱ってる……加熱したくちばしに、いきなり水なんて被ったから……」

ネネ「もう一度、水をぶつけられれば、倒せはしなくても追い返せる……はず……」グッ…

トロちゃん「ピス?」

113: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:29:32 ID:Uc0
ネネ「……ゴメンね……トロちゃん、アマちゃん……ちょっと私……ダメ、みたい……」バタリ

街へ向かおうとするトロちゃん「ピス!」バサッ

通せんぼドデカバシ「カバシ?」ニヤリ

アマちゃん「アママー! アママー!」プンプン

ドデカバシ「グアアアア…」ゴオオオッ……

トロちゃん「ピス……ピス?」コオオオオオ

ネネ「……トロちゃん……? 青い光……これは、トロちゃんの……?」

ドデカバシ「グアアアア!」ギュルッ

トロちゃん「トーロー………ピースウ!」ジャバア!

アマちゃん「アマ!?」

ネネ「……水の……技……?」

くちばしにハイドロポンプを受けたドデカバシ「バシ…バシ……」クスン

逃げたバシ「バシー」ウエーン

トロちゃん「ピースウ」ニッ

アマちゃん「マジカマジカァ!」ピョンコピョンコ

ネネ「そう……しぜんのちからって、技なのね…トロちゃん…」

トロちゃん「ピス」コクン

※しぜんのちから。出す場所の影響で技のタイプが変動する。海上で発動すると水タイプの上級技、ハイドロポンプが出る。

114: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:30:04 ID:Uc0
ネネ「……よかった……」フラッ

トロちゃん「ピス!?」

アマちゃん「マママー!?」

落ちるネネ「…………」ヒュウウウ……

トロちゃん「ピースウ!」バサバサッ

アマちゃん「マママー! マママー!」ワタワタ

ネネ「………」フワリ

トロちゃん「ピス?」

楓「……必死の戦い、黙って見ていたのは謝ります、ごめんなさい」フワリ……

セレビィ「ビィ」ムムム…

楓「そうですね、ひとまずは……セレビィ、癒やしの鈴を、お願いします」

セレビィ「ビィ--」リイイイイン

ネネ「……この、音色は……?」パチッ

ネネ(あったかい……それに、身体のだるさが、消えて……)

楓「さぁ、後は貴方達の出番ですよ」

ネネ「あ…」スウ……ストン

トロちゃん「ピス」コクン

アマちゃん「ママー」クスン

115: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:30:27 ID:Uc0
ネネ「……あの、あなたは一体……」

楓「名乗るほどの者ではありません。ですが、名乗ると「楓」です。なので、「帰って」寝ます、なんて」フフッ

ネネ「ほえ?」キョトン

楓「んー、流石に今のは伝わりにくかったですよね、要改良です……とりあえず、マギアシティに帰ります。では」ペコリ

セレビィ「ビィ」シュン

ネネ「……消えちゃった……マギアシティの、楓さん……」ウト……

ネネ「……トロちゃん、アマちゃん、二人ともよく頑張ったわね…」ウト…

トロちゃん「ピス」コクン

アマちゃん「マママー」ギュッ

ネネ「…病院まで、お願いして、いい…?」

トロちゃん「ピス」バサッ

アマちゃん「アママー」ビシッ

116: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:30:40 ID:Uc0
微睡みの中で、私はぼんやり考えていたんだ。

踏み出すことは怖いけど、でも、踏み出したら何か、変わるかもしれないって。

しーちゃんは……許してくれるかな……?

117: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:30:54 ID:Uc0
~それからしばらくして、マギアシティ~

ネネ「ユニット制……困ったな……」ウーン

ネネ(しーちゃんを元気付ける方法は1つじゃない。昔身体が弱かった私でも、戦えるんだって事を見せてあげられれば……そう思ってここまで来たんだけど……)

ネネ「仲間の人を見つけるところから、よね。……うん、めげてなんていられ……」

118: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:31:11 ID:Uc0
加蓮『信じる』

未央『え……』

加蓮『信じて』

未央『……うん!』

ネネ「あれは……もしかして、ちょうど今やってる試合……?」

ぽて『ヒノォ……』クラクラ

みく『何にせよ、次で終わりにゃ!おうふくビンタにゃあ!』

ネネ「あっ、危ないっ!」

加蓮『…負けない! ぽて!』

ぽて『ヒノ!』ハッ

エネコロロ『ニャアアアッ』ヒュッ…

ネネ「きゃっ……」ギュッ……

119: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:31:27 ID:Uc0
加蓮『起死回生!!!』

ネネ「え……?」

ぽて『ヒノオオオオオオオオ!!』カッ

エネコロロ『ニャ!?』

みく『なっ!?』

紗南『き、起死回生!? 体力が減るほどに威力が上がる一か八かの大技を……!?』

未央『……いける……いっけえええ!!!』

ドオオオオン……

エネコロロ『ニャ……ニャ……ニャフン』パタリ

みく『あ、あああ……』

ネネ「……わあ……わぁっ!」

120: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:31:43 ID:Uc0
紗南『効果は抜群だぁーっ!!!エネコロロ、戦闘不能ーっ!!!』

加蓮『ぽてーっ!』ダッ

ぽて『ヒノォ!』ピョンコ

加蓮『もう!心配かけちゃってこいつぅ』ワシャワシャワシャ

ぽて『ヒノ ヒノノオ♪』

未央『な、何か加蓮のテンションがいつもと違うような……』

加蓮『……何見てんのよ』ギロッ

未央『うええ、そんな睨まなくても!』

加蓮『なーんて、ウソウソ。…ほら、手』

未央『……うん!』

パシィッ!

~~~~~

121: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:32:02 ID:Uc0
ネネ(素敵なもの、見ちゃった。そうだよね、私も、あんな風に……)

ネネ(でも、さっきのヒノアラシのトレーナーさん……顔色が少し……気のせいだと良いのだけど…)

子供「あー、ポケモンのジュース屋さんだー!」ワーイ

ネネ「あ、いらっしゃいませ。どのジュースにする?」

母親「こらこら、ダメよ、今からご飯なんだから…ごめんなさいね、ほら行くわよ」

子供「うえージュースのみたーい」ズリズリ……

ネネ「あ、あはは……またねー」フリフリ

トロちゃん「ピスウ」

アマちゃん「マーマー」

122: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:32:22 ID:Uc0
ネネ「それに、マギアシティの楓さん……あの人にも、いつかお礼を言わなくちゃだし……よし!」

ネネ「すみませーん、ドリンクいかがですか~!」

未央「……ん?」

123: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:32:35 ID:Uc0
※そして、3話ラストへ。

これは新たな旅の仲間、ネネの、旅立ちの物語。

そして、加蓮、未央、ネネの3人の旅が、もう間もなく、始まろうとしている!


続く!

124: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)04:35:09 ID:Uc0
というわけで、今回は第3の主人公、ネネの単独回でした。

彼女の旅の目的、そして秘められた想い……
垣間見ていただければ嬉しいです。

あと、妹の名前は原作ではしーちゃんとしかわかっておらず、「しおん」は有識者の見解を拝借した本作オリジナルネームになりますので了承くださいませ。


では、今回もお目汚し、失礼をば。

125: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)18:57:21 ID:Uc0
5話目更新です。

Flame flower roll storm.

126: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)18:57:57 ID:Uc0
~マギアシティ・マギアステーション~

『間もなく、列車が到着致します。危ないですので、白線の内側まで……』

警備レアコイル「ビビビ」ウイーン

子供「わ~!ポケモンさんだー!あははっ」

母親「こら、ダメでしょ。ちゃんと線の内側に行きなさいってレアコイルさんも言ってるんだから」

警備レアコイル「ビビー」ニコニコ

加蓮「はぁ、はぁ、はぁ……」タッタッタ

ネネ「だ、だいじょうぶ、ですか…?」タッタッタ

加蓮「何とかね……それもこれも……っ、この子がいつまでも食べてるから……っ」

ケチャップまみれのまろ「チル?」

未央「でもさ、まだモンスターボールにも入ってないのに、無理やり連れてきてよかったの、まろの事」タッタッタ

加蓮「仕方ないでしょ、もう!……意地でも旅しながらボールに入れてやるんだから」

まろ「チフ」ケプ

未央「あ、あはは……何ていうか…それ…大丈夫かな…」

ジラーチ【随分行きあたりばったりだなぁ】

未央「あ、でもほら、列車が来るのには間に合ったみたい、まだ来てないよ!」

127: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)18:58:26 ID:Uc0
ネネ「あ、本当です……ね……」ハァハァ…

加蓮「未央、アンタあれだけ階段走ったのによくそんな……口……きけるよね……」ゼェゼェ

未央「ん? うん、これぐらいならよく走ってるから……って言うか、二人は大丈夫なの!?」

ネネ「だい……だいじょうぶ……です……」ハァハァ

加蓮「見たら……わかるでしょ……!」ゼェゼェ

未央「まあ、わかるけど……」

ジラーチ【別な意味で、だね…】

未央「むぅ、これは私がしっかりしなくちゃだね……なるべく無理をさせないようにしなくっちゃ」

ジラーチ【それがいつまでもできればいいけどね。旅はそんなに甘くないよ】

未央「む……」

加蓮「ふう……よし、もう平気。ネネは?」

ネネ「バッチリです!ほらほら、急がないと列車が来ちゃいますよ未央ちゃん!」

未央「……もしかして、心配し過ぎかな」

ジラーチ【未央が思うほど、彼女達も弱くないって事でしょ。ま、気にかけるのは自由だと思うけどさ】

駅員クラブ「ブブク」パチン

未央「あ、クラブに切符見せないと。ハサミでパチンってしてもらわなくちゃ」

ネネ「面白いですよね、マギアシティ……あちこちでポケモン達が人間と同じように働いてて」

128: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)18:58:43 ID:Uc0
加蓮「本当ね。まぁ、ネネもポケモンとジューススタンド出してたんだし、似たようなものでしょ」

ネネ「あれは、トレーナーの私が付いていましたから。普通、トレーナーも側にいないのにあんな風に指示通りには動けませんよ。賢い子達、なんでしょうね…」

未央「…あり?」キョロリ

加蓮「ん、どうしたの未央、忘れ物?」

未央「いや、私じゃなくってさ。まろの姿が見えないなーと」

ネネ「そう言えば、いませんね?」

加蓮「………まさか……」

129: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)18:59:07 ID:Uc0
~駅弁売り場~

まろ「チルル……」ジュル……

店員「あの……そんなガラスにへばりつかれると商売の邪魔でなあ」

加蓮「わああごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」タタタタッ

まろ「チルル チルチール!」ジタバタ

加蓮「さっき朝ご飯食べてきたでしょ!」グイグイ

『列車が到着致します あ列車がぁ、到着ぅ、致します』

未央「かれん、来ちゃうよ列車!!」

加蓮「ああ、もうっ!どうしたら……」

ネネ「まろちゃーん、これなーんだ?」フリフリ

まろ「チル?」

ネネ「ふふっ、私特製きのみクッキーですよ~」フリフリ

まろ「チルウ………!」キラキラキラ

ネネ「おいで~。いい子ですね~、よしよーし」タタタッ

まろ「チルー」パタパタ

加蓮「………………」

未央「おお………プロの技だ……」

店員「あの嬢ちゃん、将来大物だな…」

加蓮「まろぉ……」ゴゴゴゴゴ

未央「おわっ、かれんの背中から、バクフーンみたいな炎が見えるっ!?」

ジラーチ【何でもいいけど、もう列車来てるからね?】

130: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)18:59:33 ID:Uc0
~無事乗れました~

ガタゴト ガタゴト……


未央「いやー、やっぱり列車は快適ですなあ……私、マギアシティには歩きだったからさ」

ネネ「私は空を飛んで来ました」

加蓮「そっか、マギアに住んでるとしょっちゅう列車来てるけど、他だとそうでもないんだっけ」

まろ「チル?」ムシャムシャ

未央「うちは、一本列車逃すと2時間はかかるしねぇ……」

加蓮「え、直通便があるのに、おかしいんじゃない、それ」

ネネ「直通があるのはマギアシティからの下り列車だけなんですよ。上りはそうでもなくて……」

未央「下り列車は引き返すときサッサと帰っちゃうしさ、都会と田舎じゃやっぱ違うよねえ」

加蓮「ふーん……そんなもんなんだ……」

ジラーチ【何か恣意的なものを感じなくもないなぁ、それ】

未央「シイテキ? って、何だ?」

ネネ「自分勝手で気ままなさま、ですかね?」

加蓮「急に何、またカミサマとやらの声?」

未央「あ、うん。何かね、列車が上りと下りで格差があるのも、きっと何かの陰謀でさ……」

ジラーチ【言ってないからね】

131: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)18:59:59 ID:Uc0
加蓮「何それ。まるでマギアシティからサッサと出ていけって言われてるみたいだね」

ネネ「何か、良くないことでもあるんですかね……?」

ジラーチ【話膨らませてるとこ悪いけど、言ってないからね】

未央「あー、ごめんてジラちん、後で何か奢るから……」

ジラーチ【それ、ステラタウンまで届けに来るつもり?】

未央「あ……そっか……」

まろ「チルウ…チルウ…」スカー……スカー……

加蓮「ネネ、まろ貸して」

ネネ「あ。はい、どうぞ加蓮さん」

加蓮「口の周り、カスだらけだし、もう」フキフキ

ネネ「………」フフッ

ネネ「今から向かう街って、どんな街なんでしたっけ。私、メーヴェシティからはほとんど出たことなくて……」

未央「えっと、ちょっと待ってね……確か、タウンマップが……あった」ガサリ

未央「んーと、マギアから真東にある街……花の街、ブルーメタウンだね」

加蓮「花の街かぁ……花粉とか多いのかな……」

ネネ「むしさんもたくさんいそうですね、私のポケモン達はむしさんが苦手だから……」ウーン

未央「ま、心配ないない、そういうトラブルも旅の醍醐味って言うし、滅多に出会えるもんじゃないんだから、むしろトラブル起きたら旅の思い出だよ、ラッキーじゃん!」

132: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:00:14 ID:Uc0
加蓮「未央……」

ネネ「未央ちゃん……」

未央「お、感動して言葉も出ないかね?」

ジラーチ【何だっけ、こういうの確か…フラグ? とか言うんじゃなかったっけ】

未央「え、フラグ!?」

加蓮「あ、カミサマが先にツッコんだみたい」

ネネ「ですね。意外にものしりな神様です」フムフム

未央「あのねえキミらねえ………」

~~~~~

133: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:00:34 ID:Uc0
~そして夕方・花の街・ブルーメタウン~

アブリー「リィィィィィィ」ブブブ

アブリーB「リィィィィィィ」ブブブ

アブリボン「ブリブリィ」ブブブ

バタフリー「フリーフリー」パタパタ

ミツハニー「ハッニィ♪」ブブブ

ビークイン「ブーン」バタバタ


ネネ「ここ、花の街……なんですよね……?」

加蓮「どう見ても虫の街じゃない」

未央「あれぇ、おかしいなぁ……」

ネネ「……というか、その……外に人がいないような……」

134: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:00:55 ID:Uc0
加蓮「何でもいいけど、フラグ建てた未央はデザート奢りね」

未央「うえぇ!? そういうルールだっけ!?」

ネネ「……ミルクプリン食べたいな」ボソッ

未央「ネネちん?」

ネネ「あ、聞こえちゃいました?」エヘヘ

加蓮「とりあえず、ポケモンセンターは明かり付いてるし。今日はあそこで一泊して、情報収集して……そんな感じでいい?」

未央「うん、賛成!あー疲れたー、ご飯は何かなー」

まろ「チル?」パチクリ

加蓮「あ、起きた……現金なの……」

ネネ「ミツハニーかぁ……確か、ソノオタウンのあまいミツで有名ですよね……シンオウ地方の」

ネネ「私のドリンクに入れたら…元気になれそう………」

加蓮「ねーね。行くよ」

ネネ「あ、はい。すみません。今行きますっ」タタタッ

135: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:01:12 ID:Uc0
~食事を終えて、ポケモンセンター内談話室~

未央「ふぃー、いいお湯でした」フキフキ

加蓮「あ、来た。ねえ、さっきテレビでやってたんだけどさ」

未央「え、何?」

加蓮「マギアシティで前に降り続いてた雨。あれの影響で花粉が飛ばなくて、虫ポケモンはそれを集めに来たんじゃないかって」

未央「って事は……あのマジカ団のせい!?」

加蓮「多分そうなるんだろうね、間接的にだけど……アイツら、何がしたかったのかな」

ネネ「マジカ団さん……雨を降らせてって、どういう事なんですか?」

未央「あ。そっか、ネネちん来た時には事件はもう解決してたから……」

加蓮「思い出すのも憂鬱なんだけど、まぁ……順番に話しておきますか」

~~~~~

136: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:01:36 ID:Uc0
ネネ「そんな事が……でも、じゃあ街に人がいないのは…」

加蓮「虫ポケモンの中には、花粉を媒介したりしてるトコを刺激すると、暴れだす奴もいるんだって」

未央「確か、この街って花の街だよね? だったらその対策も……」

「あの、敢えて対策とかはして、いないんですよ」

未央「ん?」

加蓮「この街の人?」

智絵里「はい、ジムリーダーをしています、智絵里って言います」ペコリ

未央「なんと、第一村人がいきなりのジムリーダーだよかれん!」

加蓮「いや、ポケモンセンターの人がいたでしょ」

智絵里「ふふっ………隣、失礼しますね。よいしょ……」

ネネ「あ、いい香り……アロマミストでしょうか」

智絵里「はい、この街の特産品なんですよ。ポケモンさんに頼んで、1番いい香りのお花を分けてもらうんです。」

加蓮「ふうん……」ジーッ

智絵里「あの、何か…?」

加蓮「着せ替えがいがありそう」

137: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:01:57 ID:Uc0
未央「おお、確かに」

智絵里「ふぇっ、な、何ですか着せ替えって、私、お人形さんじゃありませんよっ」

加蓮「ふむ………髪型とか、ネイルとか……素材良さ気だし、色々デコりたくなってくるよね」

未央「ほほー、かれんさんはそう言うのがお得意でいらっしゃる?」

加蓮「まあ、そこそこ自慢できるくらいには」

ネネ「ふ、二人とも、智絵里さんが困ってますから」

智絵里「はい、あの……困ります…いきなり…」

未央「ガードが固いかぁ…」

加蓮「んー、じゃあこうしよう、ジム戦で勝ったら好きなようにしていいと」

智絵里「よくありませんよぅ…」

ネネ「ま、まあまあ…まだ初対面じゃないですか、私達……私だってそんな、いきなり言われたら驚いちゃいますし」

智絵里「で、ですよねっ」

ネネ「はい。」

未央「あ、確かに初対面だ、ウチら」

加蓮「ごめーん、つい何か、いい素材だなって思っちゃって」

まろ「チル?」トテテテ

138: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:02:14 ID:Uc0
加蓮「あ、まろ。アンタまた口の周り……」

未央「……くんくん……ん? 何かこれ、さっき食べたご飯と違くない?」

ネネ「ちょっといい?」ツン ペロッ

加蓮「あ、ちょっとネネ、汚いって…どこの何食べたかもわかんないのに」

ネネ「いえ……わかります」

未央「えっ……まさか……青酸カ……」

ネネ「これは……あまいミツです!」

智絵里「え………ええっ」

加蓮「まろ、アンタまさか外に行ったんじゃ!?」

まろ「チール♪」ペロリ

139: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:02:36 ID:Uc0
コンコン

未央「後ろの窓から音がするね」

加蓮「後ろの窓だね、そうだねその通りだね」

ネネ「……あ、スピアーさんの群れですね……こんなにたくさん……」

未央「何で言うかなあネネちん!」

加蓮「ちょっとまろ、アンタ行って謝ってきなさいよ!」

まろ「チルウ?」キョトン

まろ「チルルー」パタパタ

ネネ「……わかったんですかね」

智絵里「あまり考えたくないですけど……またミツを貰いに行ったんじゃないかと……」

未央「かれん!!」

加蓮「あーもう、ぽて!」ボウン

未央「りゅーすけっ!」ボウン

智絵里「た、戦うんですか? た、たくさんいますよ……!?」

加蓮「智絵里とネネは中を護ってて。人は他にもいるんだから」

ネネ「は、はいっ、わかりました!」

智絵里「が、頑張ってくださいっ」

未央「よーし、行くぞーっ」

りゅーすけ「リュリュー!」ニョロロ

ぽて「ヒノヒノー」スタタッ

140: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:02:57 ID:Uc0
ジラーチ【それにしても、あの子がジムリーダーか……頼りなさそうだけど、本当にそうなのかなあ】

未央「ちっちっち……ジラちんはわかってないなぁ、見なよ、ちえりんのあの目」

ジラーチ【…………へえ。確かに、さっきまでと別人みたいだね】

智絵里「小さな子達をなるべく優先して避難させてください、はい、窓のない部屋があれば、そこに……あとは、大人の人は私とバリケードを作るの、手伝ってくれますか」

「おうさ、ガッテンだ」「まかせときな!」

ネネ「す、すごい……一瞬で今いる皆に指示を……たまたま居合わせただけで集まった人達なのに……」

智絵里「さぁ、こっちです!」

ネネ「…負けてられないわね、アマちゃん!」ボウン

アマちゃん「ママカジー!」ピョンコ

ネネ「流石に室内でトロちゃんは場所を取るものね………疲れた人達を見付けたら、すぐ私に教えて?」

アマちゃん「ママ!」ビシッ

ネネ「よし……でも、できるなら……」

~~~~~

141: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:03:18 ID:Uc0
~センター、外~

ネネ(何とか外だけで食い止めて……二人とも…!)

未央「これは……ひぃ、ふぅ、みぃ……」

加蓮「流石に……ホネが折れそうかな……」

ジラーチ【相手は凶暴なスピアーの群れだ、油断すると、比喩じゃなく本当に骨を折ることになるよ】

未央「油断するとホントに折れるってさ」

加蓮「油断しなきゃいいわけね、了解」

142: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:03:37 ID:Uc0
加蓮「来るよ、未央!」

スピアー「ブブブーン」ヒュッ

未央「りゅーすけ、でんじは!」

りゅーすけ「ウリュー!」バリバリバリ

スピアー「ピ……ピピ……」バタン

未央「よし!見た感じ、1匹1匹のレベルはそんなに高くないよ!」

加蓮「高いのがいるかもしれないでしょ!ぽて、煙幕はって!」

ぽて「ヒノー!」ボフッフ

スピアーB「スピッ!」モクモク……

加蓮「よし……うまく煙に巻いて、1度に来る数を減らそう」

ぽて「ヒノ!」

スピアーCD「「ブブーン!」」

未央「撃ち抜け!スピードスター!」

りゅーすけ「リューーー……リューーーッ」スパパパパパ

スピアーC「ピアッ」バシュッ

スピアーD「スピッ」バシュッ

加蓮「ひゅう、やるじゃん♪」

未央「うん、狙いは絶対外さないよ!」

143: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:04:01 ID:Uc0
スピアーE「ブブーン!」

加蓮「! 未央、横からも!」

未央「えっ!?」

スピアーE「ブブンブーン!」ベシッ ベシッ!

りゅーすけ「リューーー!」ベキッ グサッ!

未央「りゅーすけ!」

りゅーすけ「リュ…リューーー」ドクドク…

未央「体から紫の泡が……これ、毒状態!?」

加蓮「……スピアーの技、スピアーの技……」ピポッ

加蓮「ダブルニードル!2連撃で毒針を撃ち込んでくるって!」

未央「一撃一撃がヤバい感じだね……りゅーすけ、大丈夫?」

りゅーすけ「リュ……」ドクドク…

未央「ポケモンセンターは後ろにあるのに回復できないなんて……むう、皮肉だよぉ!」

ジラーチ【へえ、皮肉なんて言葉よく知ってたねー】

未央「ジラちんは黙ってて!」

ジラーチ【はいはい】

144: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:04:27 ID:Uc0
スピアーE「ブーン!」シュシュシュシュ

加蓮「まずい、一気に削りに……!ぽて!」

未央「かれんはまだ煙張ってて!支えきれなくなる!」

加蓮「く…! 煙幕!」

ぽて「ヒノー!」ボフッフ!

未央「とにかく短期決戦で……またダメージ受けたらヤバいって……! りゅーすけ、でんじは!」

りゅーすけ「ウリュー!」バリバリバリ

スピアーE「スピピ!」バリッ

未央「はぁ、はぁ……」

スピアーF「ブーン!」バッ

加蓮「やば、煙突破された! ぽて、たいあたりで吹っ飛ばして!」

ぽて「ヒノッ!」ダッ ドゴッ

スピアーF「スピピ?」ピンピン

加蓮「効いてない…! 流石にたいあたりでどうにかなる相手じゃない…?」

りゅーすけ「リューーー」バキッ

未央「りゅーすけ!」

りゅーすけ「リュリュー!」ムクリ ドクドク……

未央「りゅーすけ、結構ダメージ蓄積してるはずなのに……めりゃめりゃに交代する……? でも、飛んでる相手に泡を撃っても滑らないし……」

145: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:04:53 ID:Uc0
りゅーすけ「リュリューリューリューリュー」クルクルクル

未央「りゅーすけ?」

加蓮「りゅーすけ、回ったりして……何を始めるつもり…?」

りゅーすけ「リューリューリューリューリューリューリューリューリュー……」クルクルクルクルクルクルクルクルクルキュイイイイイ………

りゅーすけ「リュリュー リューーー!」ゴオウ!

ビュゴオオオオオオ!

スピアーの群れ「ピアッ」「スピッ」「ブーン!」ギュオオオ……

未央「これ……『たつまき』……?」

りゅーすけ「リュ……リュー……」グルグル バタン

未央「りゅーすけ!……流石に限界か……戻って休んでね」シュウウウ

加蓮「すごい……あれがドラゴンタイプ……天候を操るハクリューの片鱗ってわけね…」

加蓮「けど、問題は今のたつまきで……煙幕、晴れたって事か……」

スピアーX「ブブブ」

スピアーY「ブーン…」

スピアーZ「スピッスピッ」

加蓮「流石にこの3体で打ち止めでしょ……!けど……」

未央「めりゃめりゃ、すいとる!」

めりゃめりゃ「メリャー!」シュウウウ

スピアーX「スピ?」

めりゃめりゃ「メリャア……」

146: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:05:20 ID:Uc0
未央「いまひとつ……やっぱ泡しかないか……!けど……」

めりゃめりゃ「メリャプー!」ププププ

かわすスピアー達「ピッ」「スピッ」「ピアッ」

未央「弾速が遅すぎて……届かない…!」

まろ「チルルー」パタパタパタ

加蓮「まろ、アンタ今までどこに……ん?」

蜜まみれのまろ「チール」フンス

加蓮「アンタ、その蜜集めに行ったんじゃ……」

まろ「チルル」フンス

加蓮「それで許してもらうって?ムリムリ」

まろ「チルウ?」キョトン

加蓮「ってか、下手したらアンタが食べられちゃうでしょうが」

まろ「チルー!?」

加蓮「はぁ……まあ、アンタらしいって言うか……変に力入れてたのがバカみたいじゃんね」

ぽて「ヒーノ」ニコッ

加蓮「まろ、責任は取ってよね。アンタ、今日からアタシのポケモンだから、いい?」

147: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:05:42 ID:Uc0
まろ「チルー」ウーン

まろ「チル」コクン

加蓮「ちょっと悩んだねアンタ……普通ここは有無を言わさずでしょ……」

加蓮「ま、とりあえず……モンスターボール!」ポンッ

まろ「チル」ポコッ パシュウウ

ユラッ ユラッ ユラッ……カチッ

未央「……あは、まろゲットだね、かれん」

加蓮「……よし」グッ

未央(なんだかんだ言っても、私には嬉しそうなのわかるよ、かれん)

加蓮「さぁて、働いてもらうからね!まろ!」ボウン

まろ「チルー」ペロペロ

加蓮「呑気に蜜舐めてないで!何か技使えない?」

148: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:06:05 ID:Uc0
まろ「チルー」エート

まろ「チルー!」ピカーン!

ぽて「ヒノッ?」ピカーン!

未央「おお、何かぽてとまろが光った!」

加蓮「………」

まろ「チル」ペロペロ

加蓮「いや、今の何!?それだけなの!?」

まろ「チルウ?」

スピアーX「スピッ!!」ギュウン

スピアーY「スピアーッ!」ギュウン

未央「やば、ダブルニードルがくるよ!」

加蓮「はやっ……!」

ぽて「ヒノッ!」ベシッグサッ

まろ「チル!」ベシッグサッ

加蓮「ああ、これじゃまた毒に…」

まろ「チール」ムクリ

ぽて「ヒノ?」ムクリ

未央「おろ、毒になってないぞ…?」

胸を叩くまろ「チルチール♪」ポンッ

149: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:06:35 ID:Uc0
加蓮「さっきの光は………じゃあ、あれが『しんぴのまもり』なんだ」

未央「しんぴの……まもり?」

加蓮「自分と味方の状態異常を防止する守りの技。だいぶ前に端末で調べといたの、この子の技」

加蓮(いつか……こんな日が来るって思ってたんだろうな。アタシも)

加蓮「なら……まろ、あれやれるよね!」

まろ「チル」スーッ

加蓮「うたう!!」

まろ「チール♪チルルルー♪ チルルー♪チールー♪」

スピアー達「「スピッ……」」ウト……バタリ

未央「おお!眠らせちゃった!すごーい!」

スピアーZ「ブブブ……」

未央「あと一匹……!」

めりゃめりゃ「メリャア…」

ジラーチ【………あれが多分リーダーだよ。あれを追い返せば、この場は収まる】

未央「かれん、ジラちんが」ヒソヒソ

加蓮「……ナルホドね、了解」

スピアーZ「スピピピピ ピアーッ!」

加蓮「もうこれしかない……ぽて、何度もたいあたりで追い払って……」

ぽて「ヒノッ………ヒノオオオ!」ボウッ

スピアーZ「ピスッ」ピタッ

加蓮「背中から炎が……?」

150: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:06:55 ID:Uc0
未央「本来臆病な性格のヒノアラシは、襲われたとき体を丸めて、背中から炎を出して敵を撃退する……んだけどさ」

未央「この炎はそれとは違う………ヒノアラシは怒った時、本気の全力で物凄い炎を出せるようになるんだよ!」

加蓮「……流石未央ペディア、ジョウトのポケモンには詳しいってわけね」

未央「おうとも!……って、人を辞書みたいに言わないでよ」ベシッ

ぽて「ヒノオオオ………」ゴウッ

未央「多分、特性の『もうか』だよ。怒った上に追い込まれて…炎がさらにさらに強くなってるんだ!」

加蓮「キメるなら、今しかないってわけね!…いくよ、ぽて」

ぽて「ヒノオオオ!」

スピアーZ「ピ……ピアッ……」

151: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:07:19 ID:Uc0
加蓮「迸れ!ひのこッ!!」

ぽて「ヒノオオオ!!」ババババババッ

スピアーZ「ピッ……ピスッ……ピッ……」ババババババッ……

スピアーZ「ピアアアアアア!」ボウン……!

スピアーZ「……ピアッ…」パタリ

沈火したぽて「ヒノ…」ヘタリ

加蓮「……お疲れ様、ぽて」

まろ「チル…チルー…」スヤスヤ

未央「…もしかして、自分の歌で寝ちゃったのかな……」

加蓮「…はぁ、蜜まみれでベットベトだし、また洗わないとダメだね、この子は」ヒョイッ

未央「ああ、かれん、服汚しちゃうよ」

加蓮「いーの。また勝手に何かやらかしたら大変なんだから」ギュッ スタスタ

未央(ツンデレさんだなあ……)フフッ

めりゃめりゃ「メリャア…」シュン

未央「あ……めりゃめりゃ、ホントはもっと頑張りたかったよね」

めりゃめりゃ「メーリャ」

152: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:07:41 ID:Uc0
未央「うん………よし」ヒョイッ

未央「特訓だ、めりゃめりゃ。明日から!」

めりゃめりゃ「メリャア?」

未央「ジム戦も気になるけど、今回はネネちんもいてくれるからさ、私の代わりに出てくれないか、頼んでみるよ」

未央「その間に頑張ってさ。新しい技を覚えて、皆をあっと言わせちゃお、めりゃめりゃ!」

めりゃめりゃ「メリャア……」キラキラキラ

めりゃめりゃ「メリャメーリャ」スリスリピトピト

未央「あ、こら、ぬめぬめがくすぐったいぞめりゃめりゃ、あははははっ」

めりゃめりゃ「メリャメーリャ♪」

※かくして、加蓮と未央は怒れるスピアーの大群を退け、ブルーメタウンの虫ポケモン騒動も天候が安定した事もあり、数日のうちに収まる事になる。


そして、その数日後。

~~~~~

153: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:08:09 ID:Uc0
~ブルーメジム~

紗南『さあて今回も始まりました!挑戦者、加蓮、ネネ選手対、ジムリーダー智絵里選手!!』

紗南『既にジムバッジを1つ獲得し、今回は前回に引き続きの加蓮選手と、ニューフェイス、ネネちゃんの登場でありますっ!』

ネネ『メーヴェシティから来ました、ネネと言います。この戦いを見てくれている、故郷の…妹のために、頑張りたいと思います。皆さん、よろしくお願いします!』

ワアアアアア……

加蓮「偶然にも、元病人が揃ってジム戦ってわけだ。アタシが倒れたら看病頼むよ、ネネ」

ネネ「加蓮さんなら大丈夫ですよ。私こそ、倒れちゃったらお願いしますね」フフッ

加蓮「……言うね、この」ウリウリ

ネネ「ひゃわっ、そこは、くすぐった……ふふっ、お返しですっ」

紗南『あーっと、何やらイチャ付き始めだしたぞ!?これはジムリーダー智絵里選手、あらゆる意味で苦戦必至なのではないでしょうか!』

154: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:08:25 ID:Uc0
智絵里「いいえ。相手がどんな人でも……私、全力を尽くして戦いますから!」グッ

ネネ「……また、あの目……覚悟を決めているような……でも、何かが違うような」

加蓮「アタシ知ってるよ。あの目は……もう後がないって思ってる子の目付き」

ネネ「え……」

加蓮「何がそうさせてるのかは知らないけど……事情があるのはお互い様、でしょ」

ネネ「……はい、負けられませんね!」

加蓮「そういう事!」

紗南『会場のボルテージも一気にクライマックス!両選手ともに戦いの構えは万全だ!みんなもいい?それじゃ、一気にいっちゃおう!』

紗南『試合、開始ーっ!』

155: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:08:40 ID:Uc0

※かくして、2番目のジムに挑む、加蓮とネネ。

ジムリーダーの智絵里の覚悟とは。

そして、未央とめりゃめりゃは、新しい技を獲得できるのか。

続く!

156: ◆6RLd267PvQ 19/07/06(土)19:10:13 ID:Uc0
2番目のジム戦……前の、ちょっとした事件でした。
これで加蓮の手持ちも正式に2匹となり、ユニットのパーティー全体では6体。

戦術にも幅が出てくる頃ですね。


では今回もお目汚し、失礼をば。

157: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:02:26 ID:ufJ
6話目になりますかね。
2番目のジム戦です。

Melody played by the wind.

158: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:02:58 ID:ufJ
※マギアシティから列車に乗りたどり着いた、花咲き乱れる街、ブルーメタウン。

今、ここで2つ目のバッジを賭けたジムバトルの火蓋が、切って落とされた!


加蓮「まろ、つつく攻撃!」

まろ「チルー」パタパタパタ

モンメン「メンメン♪」フワリ

まろ「チル?」キョロリンコ

紗南『あーっと智絵里さんの一番手モンメン、チルットの突撃の風に乗って攻撃をかわした~っ!』

加蓮「な、何て軽さなの……!?」

智絵里「よし……モンメン、『妖精の風』ですっ!」

モンメン「メメン モー!」フワアアアア

まろ「チル?」フワアアアア……

まろ「チルウッ」ヒュウッ ドサッ!

ネネ「えっ、ただの穏やかな風に見えましたけど……あんなに飛ばされて……?」

紗南『妖精の力を込めた、ひと目見ると優しげで穏やかな風の攻撃!ゆるやかに纏わりついて相手を吹き飛ばすよ!』

加蓮「ただの『かぜおこし』じゃないってわけか…。フェアリータイプ……なかなか手強いね」

159: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:03:20 ID:ufJ
埃を払うまろ「チルー」ポスポス

加蓮「まだやれる?まろ!」

まろ「チル♪」

加蓮(うん、案外見た目通り大した威力じゃないのかもしれない……。なら、一点突破、つつくの応酬でも……)

智絵里「モンメン、成長してください!」

モンメン「モモン!」プクー

モンメン「モンモモン♪」モフッフ

紗南『あーっとモンメン、綿の身体が膨れ上がったー!この状態で出す技の威力、さっきまでとは段違いだよっ!』

加蓮「げ……そんなのって、アリ……?」

ネネ「加蓮さん、ふぁいとですっ!」

加蓮「やるだけやってみるか……!まろ、連続でつついて!」

まろ「チルー!」パタパタパタ

モンメン「モーンメ!」ヒュウッ!

まろ「チル!?」フワアアアア…ビュウッ!

まろ「チールー!」ビュウウウ……ドカァァン!

加蓮「まろ!!」

ぐるぐる目のまろ「チールー」クルクルクルクル

紗南『チルット、戦闘不能!ジムリーダー智絵里選手、初手から大きくリードしたー!』

ワアアア……

160: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:03:40 ID:ufJ
モンメン「モメモンメン♪」ピョンコピョンコ

智絵里「ふふっ、よしよし……♪」

加蓮「あの風が厄介だね……ぽてで行っても近づけるか……」

ネネ「…私の出番みたいですね!」グッ

加蓮「頼める?」

ネネ「はいっ。」

パシィン!

紗南『熱いハイタッチをかわした2人!一時選手交代、ネネ選手、前に出ました!』

ネネ「相手が風を使うなら……トロちゃん、ゴー!」ボウン!

トロちゃん「トローピス!」ズズーン……

モンメン「モメ!?」

智絵里「お、おっきなポケモンさん…!」

161: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:03:59 ID:ufJ
紗南『ネネ選手のポケモンはトロピウス!南国メーヴェシティ出身のトレーナー、どんな戦いを見せてくれるのか!』

智絵里「『妖精の風』ですっ!」

モンメン「モメモンメン!」ビュウッ

トロちゃん「ピス」ソヨソヨ

智絵里「えっ、そんな、効かない……」

ネネ「トロちゃんはくいしんぼさんですから、身体も大きいし丈夫なんです!」

紗南『トロピウス族の体重は平均100kg!この巨体には文字通りただの風にしか感じないのかーっ!』

トロちゃん「ピス ピース」ノッシノッシ

モンメン「メメ…モメメ」ビクビク

紗南『悠然と風の中を進むトロピウス!モンメンはすっかり怯えて……あーっと、トロピウスが前脚を振り上げたー!』

162: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:04:19 ID:ufJ
ネネ「ふみつけ攻撃です!」

トロちゃん「ピス!」ヒュッ

モンメン「モメメ-!」ギュッ フルフル

智絵里「モンメン!」

寸止めトロちゃん「………ピス」ピタッ

ネネ「うん!それでいいのよトロちゃん!」

トロちゃん「ピース♪」コクン

モンメン「モメ……?」グスン

首の果物を取るトロちゃん「ピーウス」パキッ

トロちゃん「ピス」ハイッ

モンメン「モメメ……!」キラキラキラ

モンメン「モメモンメン♪」パクパクモグモグ

紗南『これは……智絵里さん!』

智絵里「はい、モンメン、戦闘不能です!」

オオオオ……!

紗南『智絵里さんの了承も頂いたので、モンメン、戦闘不能ってことで!いやー、戦いで芽生える友情!いいなあ…皆もグッときちゃうよね!』

ワアアア……

163: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:04:40 ID:ufJ
トロちゃん「ピウス!」ノッシノッシ

ネネ「ふふ、おりこうさん♪」ヨシヨシ

加蓮「あんな戦い方、アリ?」クスッ

ネネ「はい、アリなんです。」ニコッ

トロちゃん「ピウス!」ニコッ

加蓮「ま、いいけど。……次が来るよ!」

ネネ「わかってます!トロちゃん、油断しないで!」

トロちゃん「ピウッス」フシュー

164: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:05:02 ID:ufJ
智絵里「じゃあ、行きますね……お願い、マリル!」ボウン

マリル「リルリール」フンス

ネネ「みずポケモン?」

紗南『智絵里選手の2体目!近年の学会でフェアリータイプでもあると発表されました、みずフェアリータイプのマリル!愛くるしい見た目と裏腹に、とんでもないパワーファイターだぞー!』

ワアアア…!

ネネ「けど………こちらはくさタイプ、相性で有利には違いないはず……うん、このまま行きましょう、トロちゃん!」

トロちゃん「ピーウス!」ウオオオ…

ネネ「行きます!トロちゃん、はっぱカッター!」

トロちゃん「ピス ピウス!」ブン シュシュシュ……

マリル「リル…!」

智絵里「落ち着いて……落ち着いて……よし」

智絵里「マリル、こごえるかぜですっ!」

マリル「リールー!」ヒュウウウウ……

トロちゃん「ピス?」

加蓮「っ、寒っ!」フルッ

ネネ「あ、ああっ、はっぱカッターが……!」

ポトッ ポトッ ポトッ……

165: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:05:27 ID:ufJ
紗南『冷気で勢いを削がれてしまったか!はっぱカッター、惜しくも不発に終わりましたっ!狙いは悪くなかったよー!』

マリル「リルル…」ホッ

智絵里「もし1つでも当たっていたら、絶対危なかったです…でも!」

智絵里「マリル、れいとうパンチですっ!」

マリル「リルル!」ダッ

ネネ「えっ、えっと、ふ、ふみつけ!」

トロちゃん「ピス!?」

ネネ「まって違う!踏むんじゃなくて、飛んで……」

マリル「リールー」スッ

加蓮「ネネ!前、前!!」

ネネ「トロちゃんっ!」

マリル「マーッ!」バキイン!

トロちゃん「ピーーウス!!」パキィ……バリィィン!

紗南『クリーンヒットー!!効果は抜群だー!!』

ワアアア……!

加蓮(まずい……すっかりペース乱されてるよ、ネネ……)

ネネ「あ、ああ……大丈夫、トロちゃん……!」

トロちゃん「ピス……」ググ……ムクリ

紗南『おっと凌いだー!くさひこうタイプの4倍弱点を突かれてなお、トロピウス、意地を見せました!』

166: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:05:49 ID:ufJ
トロちゃん「ピス……」モグモグ

ネネ「うん、よく噛んで……はい、ごっくん。うん、よし♪」ナデナデ

紗南『ネネ選手、どうやらトロピウスにオレンのみを持たせていたようです!体力が少しだけ回復します!』

地を踏みしめるトロちゃん「ピーウス!」ズシン!

加蓮「きのみ……! 流石にネネ、用意周到だね」

ネネ「オレンのみの回復量は微量ですけど……私達の闘志は、まだ!」

トロちゃん「ピスピウス!」

智絵里「なかなか……やりますね……!マリルも…その、油断、しないでね!」

お腹を叩くマリル「リルル」ポンッ

ネネ(とは言うものの……はっぱカッターは落とされた……踏みつけで懐に入ればやられちゃう……後はもう、アレに賭けるしか……)

ネネ「……わかってるわね、トロちゃん。もうあの技しかないの!」

トロちゃん「ピーウス」コクン

紗南『おっと、ここへ来て『あの技』発言!ネネ選手、まだ奥の手があると言うのかー!』

ワアアア……

167: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:06:15 ID:ufJ
加蓮「え、一体、何の技を……」

ネネ「一か八かです! このジムの中の自然よ……力を貸して!」

ネネ「……『しぜんのちから!』」

トロちゃん「ピスピス ピースウ!」バッ!

マリル「リル!?」

加蓮「火!?」

マリル「リルル!」ボウッ

智絵里「あっ、マリル!」

加蓮「でも、何で火が……あっ」

ゴウンゴウン ゴウンゴウン……

加蓮「空調設備システム……確かに熱を出すけど……まさかそれで?」

ネネ「まだ終わりません!今わかりました!この技は………」

トロちゃん「ピースウ!」バリバリバリバリ

マリル「リルル!」ビリビリビリビリ

智絵里「電撃!?」

ネネ「三位一体!!『トライアタック』です!」

トロちゃん「ピース!」ヒュウウウウ……

マリル「リル!」パキン!

168: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:06:40 ID:ufJ
智絵里「そんな、マリルの足が、凍って……!」

紗南『これは凄いものを見てしまったぁー!威力は低いが炎雷氷の異常状態を確率で引き起こす技、トライアタックが引き出されてしまいました!!』

加蓮「氷漬け……ある意味さっきの意趣返しってわけだ。…エゲツないなあ」

ネネ「そ、そんなつもりじゃ…でも、身動きがとれないなら……今しかないです!」

マリル「リルル……」ググッ

智絵里「あ、だめ、無理に動かしちゃ、足がは、外れちゃうからっ!」

マリル「リル!?」

ネネ「トロちゃん、ふみつけ!…の寸止め!」

トロちゃん「ピス」コクン バサッバサッ……

マリルを抱きしめる智絵里「えっ……」

マリル「リル……」ウルウル

何もしないトロちゃん「………ピス」フリフリ

ネネ「……うん、それでいいの……!」グッ

加蓮「甘いなぁ……でも、優しいんだよね、きっと」

紗南『マリル、戦闘不能です!医療チーム、ボサッとしないで氷溶かして!!』

169: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:06:57 ID:ufJ
智絵里「あの、お願いします…!」

清良「はい、ちゃんと手当しますね。治療を始めます!凍り直しの注射器を!」

亜季「イエス、マム!であります!」ビシッ

トロちゃん「……ピス」ハイッ

果物を貰うマリル「リル…」

智絵里「治ったら、後でたべてねって。お礼、言わないと」

マリル「マリル」ペコリ

トロちゃん「ピス」ニコニコ

~~~~~

170: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:07:15 ID:ufJ
紗南『試合を一時中断していましたが、たった今、マリルの氷が溶けたとの情報が入りました!』

オオオオ……!

紗南『改めて!両者の健闘と友情に拍手っ!』

ワアアア……!

トロちゃん「……ピス……」グター

ネネ「加蓮さん、トロちゃんはもう……」

加蓮「…わかってる。トロ、頑張ったね」ナデナデ

トロちゃん「ピス♪」

加蓮「さーて…。やっぱトリはこの加蓮さんだよね、知ってたけど。」

手を合わせるネネ「お願いします…!」ギュッ

加蓮「ん。まぁリラックスして、そこで見ててよ」フリフリ

171: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:07:38 ID:ufJ
紗南『さあ、再びの選手交代!戦線離脱したトロピウスとネネ選手に代わって、加蓮選手の2匹目です!』

加蓮「……色々、背負う物が増えたよね、アタシも」スチャッ

加蓮「ぽて、燃やすよ!!」ボウン!

ぽて「ヒノオーッ!」メラメラメラ!

紗南『背中の炎が燃えているー!最初から全力全開、ヒノアラシの登場だー!』

ワアアア……!

紗南『前回のジム攻略でもその強さを遺憾なく発揮したこのヒノアラシですが、果たして、今度のジム戦も突破できるのか、期待が高まります!』

智絵里「そう簡単には…負けてあげられないですよ!私……ジムリーダーなんです!」ボウン

フラエッテ「ラエッテー♪」ユラユラ

紗南『ブルーメジムラスト、智絵里さんのエースポケモンはフラエッテ!枯れかけた花を癒やして回り、手に持った花を武器に戦うフェアリーポケモンだー!』

加蓮「成程。花の街に相応しいポケモンじゃない。相手に不足はないね、ぽて!」

ぽて「ヒノヒノ!」フンス

172: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:08:00 ID:ufJ
紗南『泣いても笑っても両者後がない!互いに体力満タンの最終戦!これは見逃せないぞー!』

智絵里「じゃあ、行きますね……フラエッテ、『妖精の風』!」

フラエッテ「ラーエッテー!」ヒュルウウ

加蓮「あの技なら威力はわかってる!ぽて、踏ん張って!」

ぽて「ヒノ……」ヒュルウウ……ビュウッ!

ぽて「ヒノ-!」バキッ!

加蓮「ウソ……モンメンのと同じ技でしょ…?」

智絵里「フラエッテはフラベベってポケモンの進化系のポケモンなんです……。1度進化しているので、パワーならこのチームで1番です!」

加蓮「それは…油断しちゃったかな……!見た目可愛いからてっきり……」

ぽて「ヒノヒノ!」フンス メラメラメラ

加蓮「うん、これくらいじゃ怖気づかないよ。私達、あのスピアーの大群にも勝ったんだから!」

173: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:08:21 ID:ufJ

智絵里「あの時、押し付ける形になってしまったのは謝ります。…その、フェアリータイプは毒が苦手なんですよ」

加蓮「…それ、言っちゃっていいの? まぁ毒技とか使えないんだけど」

智絵里「せめてものお詫びです。もし私が勝ったら……対策をして、また来てくださいね」

加蓮「…舐めてる?」

智絵里「い、いえ、その、これは私なりの……」

加蓮「わかってる。けど……なら、余計に今勝たないと勝ったことにならないじゃん」

ぽて「ヒノ!」メラメラメラ

智絵里「……本気なんですね。」

加蓮「もちろん、はじめからね!」

智絵里「なら……私も更に全力でお相手します!『妖精の風』です!」

フラエッテ「ラーエッテー」ビュウッ

加蓮「煙幕張って!」

ぽて「ヒノヒノ!」ボフー!

ヒュウウウウ………モクモクモク

174: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:08:45 ID:ufJ
智絵里「これは……風で煙幕が……!」

加蓮「閉じた室内で煙幕を広く張るなら……ちょうどいい風だったよ、智絵里」

紗南『なんとなんとなんと!妖精の風を利用した煙幕フィールドを展開!これでは互いにまるで身動きがとれないのではー!』

加蓮「そんなヘマ、アタシがすると思う?」

ネネ「…いえ、きっと、作戦があるんですよね」

トロちゃん「ピス……!」

加蓮「そゆこと。……いつでも花を持ってるのが仇になったね! ぽて、匂いのする方に火の粉!」

ぽて「ヒノノノノノ!」ドバババババ

フラエッテ「ラエテ エテッ エテッ!」バチバチッ

智絵里「フラエッテ!そんな……花の香りを追って来るなんて……!」

紗南『怒涛の攻めが続いているー!フラエッテは花から力を引き出して戦うポケモン、逆に言えば花がないと戦う力が引き出せません!』

加蓮「やっぱりね……!だと思った!」

智絵里「く……まだ勝負は終わりじゃないです! もう一度『妖精の……』」

175: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:09:04 ID:ufJ
加蓮「遅い! 新技行くよぽて!」

ぽて「ヒノ!」ダッ

紗南『ここに来て更に新技だとーっ!?加蓮選手の進化が止まらないー!』

ぽて「ヒノノノノノノノノノノ」ダダダダダ ダッ

加蓮「突っ込んで!『でんこうせっか』!!」

ぽて「ヒノオーッ!」ドゴシャッ!

フラエッテ「エテーーー」ヒュウウウウ………バコーン!

智絵里「フラエッテ!!」

フラエッテ「エテッ……エテ……」バタン

紗南『戦闘不能ー!!!試合終了です!!うわああ凄いすご~い!!』ピョンピョン

176: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:09:22 ID:ufJ
加蓮「やったね、ぽて!」タタタッ

ぽて「ヒノオーッ!」カッ

加蓮「ぽて!?」

ネネ「これは……!」

智絵里「……進化の光です…!」

加蓮「ぽて……アンタ……」

パァアアアア………

177: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:09:37 ID:ufJ
ぽて(マグマラシ)「グマラッシ!」ボウッ

ネネ「わあ……たくましくなりましたね、ぽてちゃん!」

ぽて「グママ!」ボウッ

加蓮「……ふーん。アンタ、そんな綺麗な眼してたんだね。」

火を収めたぽて「グマラッシ?」

加蓮「よっ……よっ………重っ。抱っこできないじゃん」

紗南『えー、マグマラシ、19kgだね!』

加蓮「太り過ぎ」ツン

ぽて「グマァ?」

178: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:09:59 ID:ufJ
ネネ「加蓮さん、進化は別に太ったとかじゃ……たまに太る子もいますけど……」

加蓮「未央に見せるのが楽しみだね、これは。あの騒がしいのがどんな反応するか今から……」

未央「おわーーっ! 進化してんじゃんぽてー!」ウワハー!

加蓮「来たんかい……」

ネネ「トレーニング、終わったんですかね」クスッ

未央「やー、遅れてごめんごめん! わー、重くなったねぽてー」ヒョイッ

ぽて「グマラ?」ノビーン

加蓮(ばか力……?)

ジラーチ【馬鹿力だね】

未央「誰が馬鹿力じゃい」

加蓮「えっ、人の心読まないでよ!」

未央「えっ」

加蓮「はい?」

179: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:10:20 ID:ufJ
ネネ「ふふっ、あははっ」

トロちゃん「ピスピス♪」

紗南『えー、まさしく大団円と言ったところに水をさすようですが……智絵里さん、ジムバッジを!』

智絵里「はいっ、大丈夫、ちゃんと3つ持ってます」

未央「あ、そうか、ユニットだからバッジは人数分貰えるんだっけ、忘れてたよ~」

ネネ「え、じゃあ私、マギアシティのバッジ貰ってません!」

紗南『そっちはポケセンのPCから連絡すれば、ちゃんと転送してもらえるから大丈夫だよ!ってわけで智絵里さん、ジムバッジの授与を!』

智絵里「はい。これがブルーメジムのバッジ……ハピネスバッジです」

加蓮「これは……四つ葉のクローバーだね」

未央「しかも色がカラフル!あ、見る角度で色が変わるんだー♪」

ネネ「綺麗なバッジ……ありがとうございます、大事にします!」

紗南『というわけで、今回のジム戦はここまで!進行は私紗南がお送りしたよ!皆、気をつけて帰ってねー!』

ワアアア……

~~~~~

180: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:10:41 ID:ufJ
~少しして、ジムの裏手~

智絵里「ふう……」

『もう少し……強い技もあったのではありませんか?』

智絵里「うっ、頭が……」ガクン

『貴女は優しすぎる。それ故知らず知らずのうちに手加減をしてしまう癖がある、無意識にね』

智絵里「そんな……つもりじゃ…」

マジカ団員「総帥、ここにおられたのですか」バッ

総帥と呼ばれた男『……そうですか、わかりました。下がりなさい』

マジカ団員「はっ」バッ

智絵里「う、うう……ああっ……」

総帥『近いうちに…我々には戦力が必要になります。まだそれまでは、貴女をどうこうするつもりはありませんが』

総帥『一戦一戦、大事に戦うことです。貴女のジムリーダーとしての日々はもう『後がない』と思いながら……ね』

総帥『それでは、時至りし日に、また』シュウウウウウ………

智絵里「うっ……」バタッ

智絵里「あれ………?」キョロキョロ

智絵里「私……今まで何を……?」


~~~~~~

181: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:10:58 ID:ufJ
~ブルーメタウンポケモンセンター・夜~

未央「バッジはよーく磨かないとね……」キュッキュッ

加蓮「にしても、今回も運が良かったよね」

ネネ「はい……たまたまで勝てた部分の方が大きかったですね」

未央「運も実力のうち!…って言うけど、前回も今回も、毎回運で勝ってたら……ねえ」

未央「そう言えば今回はスカウトはしないでいいんだよね。次はバッジ何個いるんだろ」

加蓮「まあ、3~4くらいじゃないの、全部で8あるんだし」

ネネ「私も、もっとお役に立てるようにしないと、ですね」

加蓮「充分過ぎるほど役に立ったってば。向上心はありがたいけど、肩の力は抜いてこ」

182: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:11:19 ID:ufJ
未央「かれんがそれ言うかあ?」

加蓮「な……いいでしょ、悪い?」

未央「んーや。全然」

ネネ「で、次の街なんですけど」

未央「シーズン(1年)中に各地を回らなきゃ失効だし、ノンビリするわけにもいかないか」

ネネ「まず、グリモ地方のタウンマップがこれです」パサリ

ネネ「マギアシティは文字通りの中央都市ですね。そこから、東西南北に直通で列車が走ってます」

ネネ「地方の形は丁度時計のような円形で、外周に点在する街の数も12。今は3時の方角にいることになります。私の故郷メーヴェシティは6時、未央ちゃんのステラタウンは0時ですね」

未央「ステラタウン、なーんもないよ、いいとこだけど。ジムもないし、特別用事でもないと行かないかなあ」

加蓮「ここからだと、近いジムは?」

ネネ「ええと、タウンマップにその情報までは……」

紗南「お困りじゃないですかな?」ニュッ

ネネ「ひゃっ、びっくりした」

ポリゴン「ポリーポリ」ブーン

加蓮「紗南…それに、このポケモンは」

紗南「あたしのポリゴンだよー。レアなんだ、凄く!」ヘヘッ

183: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:11:43 ID:ufJ
紗南「あたしはリーグ協会の仕事があるから一緒には行けないけど、ジムのある街に印つけといてあげる!えっとね、ここと、ここと……よし!」

加蓮「……この近くだと…」

ネネ「時計に例えて『1時』か『5時』の方角にあるんですね…」

未央「つまり、徒歩で1つ街を越えて行くのか、列車でマギアシティに戻ってからステラかメーヴェ直通に乗ってお隣に行くか、どっちかでいいんだ」

加蓮「じゃあ列車で……とか言いたいけど」

ネネ「それじゃ、強くなれませんよね」

未央「うん、私達、徒歩でどっちかに挑戦してみるよ!少しだけ考えてみよ!」

紗南「お、そう?ジムバッジ3つ集めたらスカウトもしなきゃだから、道中めぼしい子を見つけとくのもいいかもしれないね!」

加蓮「あ、3つか。」

ネネ「揃うのがあまり遅いとそれはそれで実力を納得させられませんしね。」

紗南「そゆこと。じゃ、あたしはこの辺で。また次のジム戦はあたしが実況だから!ポリゴン、テレポートお願い!」

ポリゴン「ポリー」シュン

未央「あのポリゴン……テレポートが使えるならカントーのポリゴンだね…」フム

加蓮「ホントそう言うのはすぐ出てくるね未央って」ファァ

184: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:12:00 ID:ufJ
ネネ「とりあえず、向かう方角選びは明日にして、今日はもう寝てしまいましょう」

加蓮「だね。色々旅の準備もあるし。おやふみ……」ファァ

未央「……って事は、やっぱステラタウンにも寄ったりとか…いやいや」

未央「一度旅に出たからにゃあ、故郷に錦を飾らんと帰られへんのや~…的な、うん」

ジラーチ【ちょっと帰るのが照れくさいんでしょ】

未央「そんなことないやい!うるせーやい!やいやい!」

~~~~~

185: ◆6RLd267PvQ 19/07/07(日)16:12:21 ID:ufJ
~とある村~

Side 肇

肇「夜釣りは心が研ぎ澄まされますね……水面に月が浮かんで……幻想的です」

釣り中のヤドン「………やぁ……ん」ファァ

肇「ヤド先生はお眠の時間ですか? 私、お昼寝をたくさんしましたから、眠れなくて」

肇「あ……今、水面に流れ星が」

ヤドン「…やぁん?」

肇「私……いつまでこんな日々を過ごすんでしょうか……悶々と、創りたいものも創り出せず……」

肇「……変わりたいな……」ポツリ

ヤドン「……やぁん」


※次回へ続く。

187: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:12:11 ID:Mzi
お待たせしました。7話目更新します。
Princess of temptation to dance.

188: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:12:33 ID:Mzi
Side 忍

~メーヴェシティ近く、とある丘~

忍「う……お腹減った…」グゥゥ…

忍「トレーナーになるから!って家出みたいに飛び出しちゃって……今日が3日目かな……」

忍「って言うか、マギアシティ行きに乗ってたはずが…そこからうっかり乗り換えて別な街に来ちゃうなんて……つくづくアタシって………」トボトボ

忍「お腹減ったぁ……その辺にヒメリのみとかないかなぁ……」トボトボ

忍「…む?」

189: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:12:54 ID:Mzi
※道端にきのみが山のように置いてある……。

忍「おお………これはお恵みに違いない……!ありがたや……!」バッ

忍「いただきま……」

マケンカニ「ケンケン」ツンツン

忍「わっ、ビックリした!」

シャドウボクシングするマケンカニ「ケンケン!」シュシュッ

忍「あのー、もしかしてなんだけどこのきのみ……アナタのだったり……する?」

マケンカニ「ケンカニ」ウッス

忍「はぁ……ひとのものをとったらどろぼう!って言うしなあ……ポケモンだけど」スクッ

忍「お腹……すいたなあ……」ギュルルル…

マケンカニ「カニカニカニカニ」ヨコアルキ

忍「…ん?」

190: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:13:14 ID:Mzi
マケンカニ「ケンカニ」ハイッ

忍「……いいの!?」

マケンカニ「マケン マケンカ」

忍「う、うっす! アタシ、負けないよ!」

忍「いただきまーす!」アーン

マケンカニ「ケンカーニ」アーン

忍「……美味しい……!」グスッ

マケンカニ「ケン?」

忍「負けるもんか……負けてたまるかー!」ウワーッ

※おたけびをあげる忍であった…。

191: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:13:35 ID:Mzi
マケンカニ「ケケン」クイクイ

忍「え、何?」

※マケンカニは勝負を挑もうとしている様だ…。

忍「勝負って、確かにお腹ふくれたけど……アタシ、ポケモンもまだ……」

マケンカニ「ケケンカ!」プーッ

忍「うわぷ、あわ……!?」

忍「やったなコイツー!えーい!」

マケンカニ「ケンカーニ!」

ボコスカボコスカシッチャカメッチャカ!

~~~~~

192: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:13:59 ID:Mzi
※夕日をバックに仰向けに倒れる一人と一匹…。

忍「はぁ……はぁ……何で、手加減してくれたの…?」

マケンカニ「ケンカ」フー

忍「一方的に殴るとケンカにならないから……? ……ナルホドね…」ムクリ

忍「…ん、握手」スッ

マケンカニ「ケン」チョキン

忍「あたたた、ハサミはやめてハサミは!」

マケンカニ「ケンカ…」

ボールを出す忍「ねえ、カニくん。もし良かったら…なんだけどさ…」

マケンカニ「ケンケンカ」フリフリ

193: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:14:17 ID:Mzi
マケンカニ「ケン」ポチッ シュウウウウ……カチッ

※マケンカニは自分からモンスターボールに入っていった…。

忍「……カニくん、ゲットだぜ、なんて」ボソッ

忍「この集めたきのみ……これ、リュックに詰めればしばらくはもつよね、うん」ガサガサ

忍「頑張る……頑張るよ、うん!」グシグシ

※努力のトレーナー、忍。
旅立ちの1ページが、ここにあった。


~~~~~

194: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:14:46 ID:Mzi
Side 加蓮 未央 ネネ

未央「ふんふふ~ん……ナガレボシを~さがそうよ~……」フキフキ

※ブルーメタウンから、北上ルートを辿る事にした一向は、森と丘からなる、険しい道の最中、テントを張り、野営の準備をしていた。

加蓮「ネネ、味見てくれる?」

ネネ「ん……少し濃い気が……」

加蓮「そう? アタシはこれくらいが好きなんだけど」

ネネ「うーん、あ、隠し味にチーゴのみとかあると味が締まるかも…」

加蓮「え…それ本気? ピリ辛マトマのミネストローネに苦いチーゴのみって……」

ネネ「辛い以前に味が濃いですもん、これで中和すれば食べやすく……」

未央「あー!こらー!」

195: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:15:04 ID:Mzi
ネネ「ひゃっ!?」ビクッ

加蓮「……また何かトラブルー? 未央がいると退屈しないんだから」

ネネ「私、見てきます!加蓮さん、お鍋のばん、お願いします」タタタッ

加蓮「はーい」

まっかなまろ「チー チー!」カライヨー

加蓮「何でも盗み食いするとそうなんのよ」

まろ「チルー!」パタパタパタ

加蓮「アンタのは別に作っとくから早く帰ってきなよー」

まろ「チルー」パタパタパタ

加蓮「どこかで体洗いに行ったのかな。流石に身体中ヒリヒリはイヤか。ふふっ」マゼマゼ

加蓮「……って事はやっぱ辛すぎるのかな……アタシには丁度いいんだけど……」ズズッ……

加蓮「……辛いってか、熱い」


~~~~~

196: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:15:25 ID:Mzi
未央「こらーっ!バッジ返せーっ!」

マンキー「キッキー」「ウキッキー」「キーキキッ」

ネネ「ど、どうしたんです……?」タタタッ

未央「ネネちんゴメン、磨くの頼まれてたジムバッジ、あのマンキー軍団が取り上げちゃってさ…」

ネネ「ええっ、バッジをですか!?」

ネネ「……あ、だから加蓮さんは未央ちゃんにバッジを預けたがらなかったのかな」ポンッ

ジラーチ【だろうね】

未央「そこで納得しないでいいから!!とりあえず、アイツら追っかけてバッジを取り返さなくちゃ……!」

ネネ「私もご一緒します! 元はと言えば私がお願いしたのが発端ですし」

未央「聖母じゃ……聖母がおられる……」ギュッ

ネネ「わ、1番歳下ですよ、私!」

197: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:15:39 ID:Mzi
アマちゃん「アママ!」ピョンコ

ネネ「うん、急ぎましょ!どっち行ったか、わかる?」

アマちゃん「アーマ」ピョン!

未央「よーし、急いで追いかけよう!待ってろー…バッジどろぼう!」


~~~~~

198: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:16:03 ID:Mzi
~森の奥~

未央「……あれ、さっきも……ここ通った様な気が……」ゼェゼェ

ネネ「アマちゃん、ホントにこっちであってるの?」

アマちゃん「アママ……?」

「キッキー」「キキー」「ウッキー」

アマちゃん「マカジ!」

ネネ「いた!」

「キキー」「キーキキッ」「ウッキー」

ネネ「……逃げてっちゃった…」

アマちゃん「マジカ…?」

未央「も、もしかしてアイツら、追われてるの知ってて私達を引っ張り回してるんじゃ……」

ネネ「それって、私達を疲れさせるためって事ですか?」

未央「おのれ猿知恵の働くやつらめ……」グヌヌ

ジラーチ【まあ、サルだしね】

未央「ジラちんは黙ってて!」

ジラーチ【はいはい】

199: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:16:29 ID:Mzi
ネネ「困りましたね……何とかして、誘き寄せるとかできないものでしょうか…」

未央「せめて…木の上からでも突き落とせないもんかなあ……」

「チルー」パタパタパタ

未央「ん、何だ?」

ネネ「あれは、まろちゃん…?」

未央「えっ、真っ赤だよ!?色違い!?」

真っ赤なまろ「チルチルチルー」パタパタパタ

「ウキッキー」「ウキキッ」「キー!」ドサドサドサ

マンキーで拭いたまろ「チル…」フー

未央「うわあ……嫌な予感しかしないね」

ネネ「私もです」

用が済んだので戻るまろ「チルー」パタパタパタ

未央「ちょっとぉ!せめてどうにかしていこうよ!?」

ネネ「まろちゃーん……ああ、空の彼方へ…」

アマちゃん「マジカァ…」

200: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:16:55 ID:Mzi
真っ赤なマンキーの群れ「「「キキー…」」」

未央「キキーだって…」

ネネ「確かに危機ですね…」

アマちゃん「アママママ」ケラケラケラ

ネネ「ダジャレじゃないのよアマちゃん」

アマちゃん「アママ」

「ウッキー!」「キキー!」「ウキウッキー!」ババッ

未央「わわあ、野生のマンキーが飛び出して来たっ!!」

ネネ「アマちゃん、甘い香りです!」

アマちゃん「アマー」ホワァン

「キキー!」「ウッキー」「キキキキー!」

未央「効いてない……ねぇ」

ネネ「と言うよりは、身体中辛くて癒せないのかも……」

未央「と、とにかく! 何とかして落ち着かせないとバッジどころじゃないよね! 行くよめりゃめりゃ!」ボンッ

めりゃめりゃ「メリャ」ノタノタ

201: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:17:17 ID:Mzi
未央「ここが正念場だよ、覚えた新技で頑張っちゃお!」

めりゃめりゃ「メリャア♪」ノタノタ

マンキーA「ウキキー!」シュシュシュシュ

未央「みだれひっかきが来るよ!めりゃめりゃ、『まもる』!」

めりゃめりゃ「メーリャッ」パキィン

マンキーA「ウキャッ」

ネネ「バリアで攻撃をはじいた!」

未央「ネネちん、続いて!」

ネネ「はい! アマちゃん、『高速スピン』!」

ヘタを回転させるアマちゃん「アママママ」クルクルクル

飛んだアマちゃん「アマー」ブーン

マンキーA「ウキャッ!?」

アマちゃん「アーマママママママママ!」ペシシシシシシシ

マンキーA「ウキャー!」ビシシシシシ

未央「おお、ちっこいわりに、なかなかやるねぇ♪」

202: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:17:45 ID:Mzi
ネネ「はい、まだまだ行きますよ!アマちゃん、『なかよくする』です!」

マンキーB「キキー?」

アマちゃん「アマアーマ」スリスリ

ネネ「『なかよくする』は攻撃力を下げる技…物理攻撃主体のポケモンなら、この技で……」

マンキーB「キッキー」ベシッ!

アマちゃん「アマァ!」

未央「空手チョップ!?」

ネネ「アマちゃん!……通じない…?」

未央「もしかしてあのマンキー……特性は『負けん気』だったりして……」

ネネ「負けん気…です?」

ジラーチ【相変わらずカントーのポケモンには詳しいよね】

未央「うん……結構レアな特性でさ……攻撃力とか防御力とか、何かしら下げようとすると……」

マンキーB「ムキー!」プンプン

203: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:18:09 ID:Mzi
未央「逆にパワーアップしちゃうんだよねぇ……」

ネネ「え、ええっ、もしかして私、大変な事……ど、どうすれば……」

未央「まあまあ落ち着きたまえ、ネネちん!」

ネネ「未央ちゃん…?」

未央「めりゃめりゃの新技が1つきりだとは言ってないでしょ?めりゃめりゃ!」

めりゃめりゃ「メーリャッ」ムムム

マンキーB「ウキー!」ゲシッゲシッベシッ

ネネ「や、やられちゃってますよ!」

未央「まだまだ……耐えて耐えて…今だよめりゃめりゃ!『がまん』解放!!」

めりゃめりゃ「メリャア!」カッ……

マンキーB「ウキ?」

ドゴオオオ………

204: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:18:35 ID:Mzi
マンキーB「キキ……キー…」バタン

ネネ「すごい…」

アマちゃん「アマァ……」

未央「めりゃめりゃの得意なのは守りの戦い、がまんは攻撃を受けたぶん、倍返しで衝撃を跳ね返す技!」

未央「っていっても、めりゃめりゃみたいに打撃に強くないとなかなか技を出すまで防ぎきれないんだけどね。いやー、成功してよかったよ!」

めりゃめりゃ「メリャア…」ニコッ

マンキーC「キキー」ユサユサ

マンキーA「ウキキ……」フルフル ムクリ

ネネ「一匹目のマンキーが……ごめんなさい、倒しきれてませんでした」

未央「何の、勝負はここから!それに……」

ネネ「はい、ここはこのままアマちゃんで行かせてください!」

未央「だよね!私も!めりゃめりゃはまだまだやれるんだから!」

アマちゃん「アマァ!」

めりゃめりゃ「メーリャッ」

205: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:19:04 ID:Mzi
マンキーA「ウキキー!」バッ

ネネ「『蹴手繰り(けたぐり)』が来ます!」

未央「お相撲さんの技だよね…! 転ばされる前に!『まもる』!」

めりゃめりゃ「メリャ」カッ

マンキーA「ウキャア!」パキィン

ジラーチ【あのマンキー…また弾かれて…バカの一つ覚えだね】

未央「酷いこと言わないのジラちんは」

ジラーチ【はいはい】

ネネ「『高速スピン』、行きます!」

アマちゃん「アママママ!」ペシシシシシシシ

マンキーA「ウキャアアア!」ビシシシシシ

未央「続いて『すいとる』攻撃!」

めりゃめりゃ「メーリャー」シュウウウウ……ゴクン

マンキーA「キキー……」バタン

めりゃめりゃ「メリャア…!」ワハー

206: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:19:23 ID:Mzi
未央「やったぞめりゃめりゃ、2匹目も倒しちゃった!」

感動するめりゃめりゃ「メリャア…」

未央「ネネちんも、ありがとね!」

ネネ「いえ…でも、まだあと一匹!」

マンキーC「キキー……キー!」ガサガサガサ!

未央「あ、こらちょっと!逃げるならバッジ返してよー!」

ネネ「いえ、未央ちゃん、バッジを持ってるのはこっちのマンキーさんみたいです、ほら」キラン

未央「ありゃ…じゃあ、無駄にあっちと戦う必要もないのかぁ」

めりゃめりゃ「メリャ…」ホッ

207: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:19:44 ID:Mzi
ガサッ!ガサガサガサ!

めりゃめりゃ「メリャ?」

未央「なーんだ、やっぱり戻ってきて……」

オコリザル「ブルフー……」フシュー

マンキーC「キッキー!」ピョンピョン

未央「あ……どうもー……お父さん……かな?」

208: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:20:12 ID:Mzi
ネネ「見るからに……強そうです…!」

アマちゃん「アママママ……」

未央「く、バッジは取り返したし、逃げるしか!」

ネネ「トロちゃん!」ボウン

トロちゃん「ピスピウス!」

ネネ「乗ってください!」タタッ

未央「うん!めりゃめりゃ、戻って!」シュウウウウ…

オコリザル「ブー キーッキキー!」

マンキー達「「「「「ウキー!」」」」」

トロちゃん「ピス!?」

マンキー達「「「「「キキー」」」」」モグモグモグ

トロちゃん「ピスピウス……ピスピス…!」

ネネ「首の果物にかぶりついて…!あんなにいたらいくらなんでも…!」

アマちゃん「アママ…」

未央「く……りゅーすけ!」ボウン!

りゅーすけ「リュリュー!」

209: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:20:38 ID:Mzi
未央「って言っても……でんじはで動きを封じようとすれば、多分負けん気でパワーアップしちゃうんだよね……うう……ここはやっぱり……」

未央「たつまきだよ、りゅーすけ!」

りゅーすけ「リュリューリューリューリューリューリュー」クルクルクル

りゅーすけ「リュリュー!」ビュオウ!

オコリザル「ウキー!」ベシィッ!

りゅーすけ「リュリュー!」ギュオウ!

未央「跳ね返された!? りゅーすけ!」

りゅーすけ「リュリュー……」バタン

未央「ドラゴンタイプの技…ドラゴンタイプには効果抜群だもんね……ごめんね、戻って…」シュウウウウ

ネネ「あのオコリザルさん……強さが今までと桁違いです…!」

未央「きっとここはマンキー達の縄張りだったんだよ、あのオコリザルは多分ボスなんだ!」

オコリザル「ブフ…」フシュー

未央「勝ち目……ないかも…!」

210: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:20:58 ID:Mzi
ネネ「せめて、トロちゃんの周りのマンキーだけでも……アマちゃん、『はっぱカッター』!」

アマちゃん「アーマッ マッ!」ヒュヒュッ

マンキー達「「「「「キー」」」」」ピョーン

未央「一斉に逃げた!?」

ネネ「いけない、トロちゃん!」ダッ

未央「ネネちん!?」

トロちゃん「ピス……ピス…」ハァ…ハァ…

ネネ「……っ!トロちゃん!」バッ!

ドシュシュシュシュ!

211: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:21:18 ID:Mzi
ネネ「……あああっ!!」スパパパパ……!

未央「ネネちん!!」

アマちゃん「アマ……アママ……」

アマちゃん「ママー!」タタタタ

ネネ「トロ…ちゃん……ケガ、ないわよね……」

トロちゃん「ピスピス!」

ネネ「よかった……今度は私が……あなたのこと……まもれ……」カクン

トロちゃん「ピス!ピスーウ!」

212: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:21:38 ID:Mzi
未央「……大丈夫、気絶しただけ……!けど、血が出てる、何とかしなくちゃ……!」

アマちゃん「ママ…アママ…」

未央「アマちゃん? 待って、今のは事故で、アマちゃんは……!」

突撃するアマちゃん「アマー!」タタタタ

オコリザル「ブフ」フン…

未央「アマちゃーん!!!」

213: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:21:54 ID:Mzi
アマちゃん「アマ……ママ……」

ネネ『わぁ、あなた、きのみのポケモンなのね!』

アマちゃん『アマ?』

214: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:22:09 ID:Mzi
ネネ『私、ネネって言うの。あなたのお名前は何かな……えっと、確かこの本に……あった』

ネネ『アマカジ……うーん。アマちゃん!』

アマちゃん『アマァ!』

ネネ『ふふっ、気に入ってくれたの?じゃあ、あなたは今日からアマちゃんね。おいで、一緒に行きましょ。とっても美味しいマドレーヌがあるの!』

アマちゃん『アマー』ピョンコピョンコ

215: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:22:32 ID:Mzi
ネネ『ごめんなさいアマちゃん……私、風邪ひいちゃったみたいで……うつるとよくないから、離れていてね』

アマちゃん『アマ…』

アマちゃん『アママ』シボリ

ネネ『…これは……?』

アマちゃん『アママ!』

ネネ『確か…アマカジの汗は薄めると元気が出るドリンクになるって……じゃあ、あなた、私にこれを?』

アマちゃん『アーマッ』

ネネ『確かそこに、ミネラルウォーターが置いてあったわよね……よいしょ……』

ネネ『……美味しい!』

アマちゃん『アマァ』

ネネ『何だか優しい味…これなら、私だけじゃなく皆にも……そうだわ、しーちゃんに……』フラッ

アマちゃん『アママ』ワタワタ

ネネ『そうよね、まずは私が治さないとね……危ない危ない……ふふ』

216: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:22:51 ID:Mzi
ネネ『見て、すっかり治ったみたい!ほらほら、元気元気!』クルクル

アマちゃん『アママ?』

アマちゃん『アマー』クルクルクルブーン

ネネ『アマちゃーん!どこまで飛んでいくのー!』

飛んでいくアマちゃん『ママー!』ワーン

217: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:23:14 ID:Mzi
アマちゃん「アマ……ママ…ママー!」カッ!

オコリザル「ブフッ?」

ネネを抱える未央「あれは……!」

ネネ「アマ……ちゃん……?」パチッ

アママイコ「アマ……マーマッ」ストッ

オコリザル「ブフ……」フン

未央「進化……しちゃった……」

トロちゃん「ピス…!」

218: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:23:34 ID:Mzi
ネネ「アマちゃん……あんなに小さかったアマちゃんが……」グスッ

ネネ(あんなに、たくましく……っ!)

マンキー達「「「「「キキキキー!」」」」」バッ

アママイコ「マイ……マイッ!」シュパパパパ

※アマちゃんは後ろを振り返ることもせずにマンキーへ葉っぱを打ち出した…!

未央「またはっぱカッター!?こっちに来るよ!」

トロちゃん「……ピス」フルフル

ネネ「違う……この技は……きっと……私達を傷付けるものじゃない……」

マンキー達「「「「「キキー…!」」」」」バッ

未央「やっぱりかわして……!えっ?」

219: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:23:53 ID:Mzi
※逃げたマンキーの群れに…はっぱカッターが誘導されていく!

マンキー「「「「「キ……キキ……!」」」」」

「「「「「キキー!」」」」」スパパパパパ!

ドサッ ドサドサドサ………

ジラーチ【『マジカルリーフ』だね。未央のスピードスターと同じさ。あれをかわすことは、できない】

未央「かわせない技……マジカル……リーフ……!」

ネネ「……ふふっ…」

未央「ネネちん?」

220: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:24:13 ID:Mzi
戦いのリズムを取るアママイコ「マイッ……」シュッシュッ……タッ タタン…

オコリザル「フッ」シュシュッ シュッ

アママイコ「マイッ」キック!

オコリザル「フン!」ガード!

アママイコ「マイマイッ ママイ!」キックキックパンチ サマーソルトキック!

ガードが崩れたオコリザル「ブフッ……ブフォー…!」

ネネ「アマちゃん…何だか……楽しそう……」ニコッ

トロちゃん「ピス…」ニッ

221: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:24:35 ID:Mzi
未央「踊るように……連続技のラッシュコンボ…凄い!カッコいいよアマちゃん!」

アマちゃん「アーマー…マーイー……」クルクルクル…

オコリザル「ブフォ……ブオオオオ!」バッ

未央「危ない、アマちゃん!」

アマちゃん「マイッ」スイッ

オコリザル「ブルッ」スカッ

未央「ステップを踏んで…かわした!」

ネネ「その大きくなったヘタで……おしおきしちゃいなさい、アマちゃん!」

ネネ「『往復ビンタ』!!」

222: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:24:54 ID:Mzi
アマちゃん「マイッ」クルッ ベシッ

オコリザル「ブヒッ」ベシッ

アマちゃん「マイマイッ」クルクルクルベシベシッ

オコリザル「ブヒャ ブヒャア!」ベシベシッ

アマちゃん「マママ………ママイマーイッ」クルクルクルクルクルクル………

223: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:25:11 ID:Mzi
ベシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシシ!!

オコリザル「ブヒャアアアアアアアアアアア!!」ヒュッ……ドカァン…!

オコリザル「ブヒャ……」バタンキュー

マンキー達「「「「「キッ……キキー…」」」」」

アマちゃん「マイッ」ギロ

マンキー達「「「「「キキキキー」」」」」ニゲロー

224: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:25:45 ID:Mzi
未央「往復ビンタってさ……最高5発まで……とかじゃなかったっけ」

ジラーチ【たまにはいいんじゃない?何か見ててスカッとしたしさ】

未央「ま、今回だけのスペシャルバージョン、だね!毎回あんなに叩いたら相手がちょっとだけかわいそうだし…」アハハ

アマちゃん「マイマイ」

ネネ「アマちゃん……大きくなったね…」

アマちゃん「……アマ」プチッ

未央「おろ?その草……そこに生えてるやつだよね」

草をすり潰すアマちゃん「マイマイッ」グチャグチャ

アマちゃん「マイマイッ」ペト

ネネ「いたた……薬草なのね、きっと」ペト

225: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:26:05 ID:Mzi
アマちゃん「アママ」ペト ペト

アマちゃん「アママ…」グスン ペト ペト

ネネ「泣かなくていいのよ、アマちゃん………だって、助かったのはあなたが頑張ったからだもの……」ペトペト……

未央「……なーんか、私達、お邪魔だね?」

トロちゃん「ピス」ニコッ

ジラーチ【正直もうお腹いっぱいだけど、まぁ、今回はね】

未央「お、ジラちんももしかしてこういうの、案外イケるクチですかな?」

ジラーチ【からかうと隕石落とすよ】

未央「うわあ暴力反対」

アマちゃん「マイマ……ママ……」グスッ

ネネ「…………」ヨシヨシ

226: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:26:21 ID:Mzi
※かくして、ジムバッジを取り戻し、また、アマカジは、アママイコへと進化した。

彼女達の旅は、まだまだ続く………

おや?

227: ◆6RLd267PvQ 19/07/09(火)23:26:39 ID:Mzi
また真っ赤なまろ「チルー!」パタパタパタ

加蓮の声「こらー!夕飯全部食べといてどこ飛んでくの、戻ってきなさーい!」

未央「もしかして」

ネネ「もしかしなくても……」

トロちゃん「ピス」クイクイ

未央「乗れってさ」

ネネ「追いかけてお説教ですね、今回は。」クスッ

アマちゃん「マイマイッ」クスッ


辛いよ辛いよー、なまろ「チルー!」パタパタパタ


※続く!

238: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:27:28 ID:BOs
第8話になります。

Trial of the Fountain Lord.

239: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:28:05 ID:BOs
~ヒュドールタウン~

加蓮「ついた……のかな、ここが次の街?」

未央「おお……街って言うか…」

ネネ「村……集落……そんな感じがしますね。」

老婆「ほう、旅人とは珍しい」

加蓮「あ、こんにちは。お婆ちゃん、この村の人?」

老婆改め村長「村長をしております。かれこれ、50年は村から出とりませんわい、ほほほ」

未央「第1村人、まさかの1番偉い人だったかー…! あの、私達マギアシティからジム巡りを始めてて……私はステラタウンの出身なんですけどね」

村長「ほう、マギアシティ……それにステラタウンとは、いやいやいや……遠いところから来なすったなあ…」

ネネ「私はメーヴェシティです。あの、村長さん、この村に…その、泊まるところとか…ポケモンセンターとかはないでしょうか」

村長「ふむ…見ればわかる通り、ここは閉じた村でしてな…外との交流と言えば、民芸品や野菜、魚や……まぁそういったものを月に何度か、村の者を行商に出して銭を稼いでおりますじゃ」

240: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:29:06 ID:BOs
村長「ポケモンセンターはおろか、テレビジョンも大きな店もな~んもありゃあせん」

未央「げ…もしかして、ステラタウンよりもかなり田舎かも……」

ネネ「あの、旅人が久しぶりと言っていましたよね?」

241: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:30:20 ID:BOs
村長「そこの、アンタらが抜けてきた森、我々はミクモの森と呼んどりますが……その森にはな、ヌシがおりますじゃ。ポケモンを持たぬ非力な村人は、行商の者達が持ち帰る様々な娯楽や食べ物を待つしか楽しみがない。森を抜けようなど考えもつかぬこと。」

242: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:30:52 ID:BOs
村長「都会の人にしろ、わざわざ森を抜けるより、マギアシティから列車で回り込んで、用事は隣の栄えた街で済ませてしまうのじゃよ。ほほ。」

加蓮「そのヌシって、もしかしなくても…」

ネネ「あのオコリザルさん…ですね」

村長「ほう、ヌシを知っていなさるとは……もしやヌシと戦って来られたと」



243: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:31:17 ID:BOs
未央「ふっふっふ……このネネちんこと、ネネちゃんのポケモンが、バッチリ退治したのですよ!」

ネネ「もう、それは未央ちゃんもでしょう?」

未央「てへ。そうなんだけどさ」ペロッ

村長「ほほう……それは……やはりジムを巡るトレーナーともなれば、相当な実力を持つという事ですな……うむ、良いでしょう」

加蓮「良いって……何が?」

村長「何分狭い村で、先程も申したように娯楽も何もほとんどない場所ですが……ついてきなされ、案内しますでな」ツカツカ

加蓮「とりあえず、行ってみよっか」

244: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:31:36 ID:BOs
ネネ「はい。……あ、ポケモンさんがいます!」

コダック「コヴァ」ノタノタ

ヌマクロー「マクロ!」ノシノシ

オニシズクモ「クモクモクモ」ワサワサ

加蓮「うわ、でっかいクモ……」

ネネ「あれは、オニシズクモですね。見た目は怖いですけど、小さなポケモンを守る事もある優しいクモさんなんです。前に絵本で読んだことがあります。」

245: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:32:00 ID:BOs
未央「へえ、たしかに見た目ちょっとだけ怖いけど、意外に雰囲気は優しそうかも」

村長「何せ田舎でしてなあ、ポケモンもボールに収める人間はおらず、放し飼いにしておるのですよ」

加蓮「昔のまろみたいな感じかな……ふーん。にしても、水タイプが多いみたいね」

村長「近くに泉の洞窟がありましてな。村の者は皆、そこで仕事を手伝ってくれる相方を授かるのですじゃ」

未央「授かるのですって、他にも偉い人がいたりするの?」

村長「泉のヌシポケモンがな…。ほほ。」

未央「へーえ……ヌシかあ、どんなポケモンなんだろ」

ネネ「確かに、もしできるなら、会ってみたいですね……」

村長「ならば。後で挨拶に向かうと良かろうですじゃ」ツカツカ

246: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:32:19 ID:BOs
未央「にしても……自然がいっぱいのところだねえ……」

肇「村長さん、こんにちは。」ペコリ

村長「おお、肇。釣りはどうじゃった」

肇「いえ、なかなか……あの、そちらの方々は…」

村長「紹介しますじゃ、旅の方。この村唯一の、モンスターボール職人…肇といいますじゃ」

肇「あ、はじめまして。モンスターボールを作っています、肇です」ペコリ

247: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:32:38 ID:BOs
未央「はじめまして!私、未央って言うんだ!」

ネネ「ネネと言いますっ」

加蓮「ん、アタシは加蓮。よろしく。」

肇「未央さんにネネさん、加蓮さん…ですね、よろしくおねがいします。」

村長「肇や。しばらく旅の方をお主の家に泊められぬか。何、布団や食べ物はこちらで何とかするでな」

肇「皆さんを、私の工房に……はい、構いませんよ。次の行商に出すボールはもう、出来上がっていますから」

村長「と、言うわけじゃ。歳も近いし話も弾むじゃろ。肇に旅の話を聞かせてやってくれませんかな」

248: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:33:04 ID:BOs
未央「もちろん!こちらこそ、お世話になるのにそれだけでいいのかな…」

加蓮「不安なら、村の仕事とか手伝えないか聞いてみたら?…かえって足手まといになるかもだけど」

未央「ああ、邪魔しちゃよくないかぁ」

ネネ「長居をするわけではないですし、準備ができ次第出発、という感じで…それで、大丈夫でしょうか」

肇「私は大丈夫です。村長さん、食べ物とお布団、お願いしますね」

村長「ああ、少し話でもして時間を潰すとよいじゃろう。その間に手配を急がせよう」

3人「「「よろしくおねがいします!」」」

~~~~~

249: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:33:24 ID:BOs

~肇の家兼モンスターボール工房~

加蓮「不思議に思ってたんだけど……肇、聞いてもいい?」

肇「はい。質問なら何でも。」

加蓮「この村、モンスターボール…必要ないよね。」

未央「あ。それそれ!皆放し飼いしてるって、村長さん言ってた!」

ネネ「そう言えば……それに、今はモンスターボールって工場で大量生産されますし、手作りって言うのも驚きです」

加蓮「だよね。…作れるものなの、アレ」

250: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:33:43 ID:BOs
肇「なるほど、もっともな疑問ですね。実のところ、手作りのモンスターボールの需要は、村では一切ないんです。外に行商に出る時に、商人の方にこれもお願いしますとお渡しするんです。」

未央「ははあ……つまり隣の街のために作ってるんだね」

加蓮「あ、写真がある。これ、肇の……」

肇「祖父です。有名なボール職人で……祖父がいた頃は、ボールの注文が他の街からも来る程だったんです。伝説と呼ばれたポケモンさえ、捕まえてしまうこともあったと言いますし」

未央「おお…つまりはじはじのお爺ちゃんは人間国宝ってやつなんだね!」

251: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:34:08 ID:BOs
加蓮「はじはじって…アンタまた勝手に人にあだ名を」

肇「いえ、呼びやすいように呼んでくれて構いませんよ。歳も皆さんとそう変わりませんし…村では私しか、子供はいませんから」

ネネ「えっ、それは……寂しくはないんですか…?」

肇「正直に言えば、街に出る行商の方が羨ましくなる時も、ありますね」

肇「ですが、祖父亡き今、村でボールを作れるのは私だけ……この技を一刻も早く極めて、村をもっと、立派にしていかなければと思っているので」

252: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:34:29 ID:BOs
未央「り、立派だ…」ジーン

ジラーチ【未央とは大違いだねえ】

未央「ジラちんは黙ってて」

ジラーチ【はいはい】

肇「………?」

加蓮「あ、気にしないでいいから。たまに独り言言うの、この子は」

未央「あのね、違うからね」

ネネ「ふふっ」


~~~~~

253: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:34:53 ID:BOs
肇「…あ、お野菜が届きましたね」

オニシズクモ「クモクモ」ハイッ

※水泡にいくつか野菜が封じ込められている…。

ネネ「かごの代わり、なんでしょうか。確か、大事なものを泡にしまう習性があるとか…」

肇「このオニシズクモさんは、村で1番の働き者さんなんです。村長さんのお手伝いもしているんですよ」

未央「って事は、もしかしたら村長さんのパートナーみたいな感じなのかもね。」

肇「パートナー…ですか。そう言えば皆さんはジムを巡るトレーナーさんなんでしたよね。」

ネネ「はい。私は途中から旅に加わったんですけど……」

未央「はい、じゃーん!テールバッジとハピネスバッジ!」キラン

肇「わあ、手にとって見せてもらっても…?」

未央「どうぞどうぞ♪」

254: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:35:19 ID:BOs
オニシズクモ「クモモ」カサカサ

肇「あ、オニシズクモさんも見てみます? 凄く綺麗ですよね……装飾も凝っていて……」

オニシズクモ「クモ…」

村長「これ、オニシズクモや。布団を運ぶのがまだ残っとるじゃろう」

オニシズクモ「クモ!」カサカサ

村長「お主が泡で運ぶと濡れてしまうでな、ゴルダックに念力を使うよう言ってくるのじゃぞ」

オニシズクモ「クモー」カサカサ

未央「ああして見ると、確かに可愛いね、あの子」

加蓮「でも夜道でいきなり遭ったら…」

255: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:35:38 ID:BOs
村長「ほほ、夜道では怖いのう。確か、昔肇は夜道であ奴にばったり出くわして、漏らし……」

肇「わーっ!わーっ!その話は子供の時の話でしょう!?今は流石に平気ですから!!」

加蓮「お年寄りの人ってさ……たまーに容赦ないよね」

ネネ「聞かなかったことにしましょうか…」

未央「いやー…私も多分……ちょっとやっちゃうだろうなあ…子供の時なら……」

※言いたい放題言われるオニシズクモ、哀れ。

256: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:36:05 ID:BOs
オニシズクモ「ヘクシッ」

オニシズクモ「クモ?」キョロキョロ

ゴルダック「グワグワ グワ」

スワンナ「スワ スワンワ♪」

ゴルダック「グワー」ツンツン

ゴルダック「グワ?」

オニシズクモ「クモモ」

ゴルダック「グワグワ?」

オニシズクモ「クモクモクモ!クモモクモ」

胸を叩くゴルダック「グワ!」ポンッ

スワンナ「ワンナー」バサバサ…

ゴルダック「グワワー」フリフリ

※この街のポケモンは、どうやら皆、とっても仲良しのようですね。



~~~~~

257: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:36:28 ID:BOs
※夜もふけて……。

未央「わー、また負けたあ!」バサッ

肇「ふふ、私が3番目…これであがり、ですね。」

加蓮「トランプとかあると結構時間潰れるよね。けど、肇は一人の時何やってんの?」

ネネ「あ、確かに。一人でトランプ……は流石に難しいですしね…」

未央「難しいって言うか、一人でできるトランプ遊びって何かあったっけ?」

ネネ「えーと……あ、神経衰弱とか!」

加蓮「それ、一人でやってて楽しいかな…」

ネネ「記憶力は鍛えられますよ、きっと!」

肇「ふふ、皆さんはとても仲良しなんですね……少し羨ましくなります」

258: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:36:49 ID:BOs
未央「あ、ならさ、はじはじも一緒に………は、ダメなんだっけ…」

加蓮「バッジのスカウト上限、確かまだ解放されてないしね」

肇「いいんですよ、無理に気を遣って頂かなくても……私は、まだ職人としては未熟者で……モンスターボールという、ポケモン達を収める器に何が必要なのか、未だにわからない…そんな人間なんです」

肇「このままで投げ出すのは、ボールにも、祖父や村長さんにも失礼ですから。…って、モンスターボールはちゃんと投げなきゃ駄目なんですけど…」

259: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:37:07 ID:BOs
加蓮「そっか。肇は最初から覚悟を決めてるってわけだ」

未央「それじゃあどっちにしろ無理には誘えないのかぁ…残念。」

ネネ「ですね。せっかくこうして出逢えたのに、これでお別れは…寂しいです」

肇「……皆さん、ちょっとだけ、待っていて貰えませんか」

3人「「「?」」」

肇「秘密の場所が、あるんです」


~~~~~

260: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:37:27 ID:BOs
~トノカミ洞窟~

未央「夜なのに、ちょっと明るいね」

ネネ「それに、そよ風も……不思議、ちっとも息苦しくありません」

加蓮「洞窟ってもっと埃っぽくてジメッと薄暗いイメージだったけど、何か空気が澄んでるし、歩きやすいんだね」

肇「人の手もほとんど入ってない、自然のままの洞窟なんですけど……ほら、こちらから横にそれる道と、このまままっすぐ進む道がありますよね」

肇「このまままっすぐ行く道は、行商に行く方が通る道で、次の街へはここを通らないと行けないんです。」

肇「そして、私の秘密の場所は………」

未央「わかった!この横道の先!」

261: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:37:51 ID:BOs
加蓮「秘密の、って割には、随分わかりやすい場所なんだね」

ネネ「いいじゃないですか、可愛いと思います、そういう秘密。」

肇「ふふ、そうですか?かわいいかはわかりませんが……少し滑りやすいので、ゆっくりついてきてくださいね。この道、下り坂になってますから気をつけないと…」

未央「あいよー、了解了か……わぁあー!」スベベッ

ジラーチ【フラグの回収が早いなあ、神業だね】

未央「神様はジラちんでしょ!!」

262: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:38:12 ID:BOs
加蓮「気をつけないとあんなふうになるんだって。気をつけないとね」

ネネ「あ、あはは……未央ちゃん、擦り傷とかしてたら治しますからねー」

未央「だいじょーぶー!」

肇「今、未央さんが滑り落ちたところを、もう少しだけ奥に行けば到着です。…あの、本当にお怪我とかは」

加蓮「大丈夫でしょ、未央だし」

ネネ「私もそう思います…」

肇「は、はぁ………頑丈な方なんですね…?」

加蓮「と言うよりは…」

ネネ「いつもあんな感じなんですよね」

未央「おーい、おいてくぞー!」ピョンコ

加蓮「ね♪」

ネネ「はい♪」

肇「何だか……信頼し合っているのですね。」

263: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:38:25 ID:BOs
加蓮「違うって。慣れよ慣れ、いーっつも付き合ってあげてるんだもん、こないだだって……」

ネネ「因みにこういう時の加蓮さんは照れ隠ししてますね」

肇「なるほど……」

加蓮「あのねぇ…」

~~~~~

264: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:38:43 ID:BOs
未央「星だ……」

加蓮「ここは……湖……っていうか、泉?」

肇「地下の水脈から湧き出した水の溜り場……つまり、泉ですね」カチャカチャ

ネネ「水面に星が映り込んで……でも、どこから……」

加蓮「あ。空が見える」

未央「うわ、ここ天井がないんだ!洞窟なのに不思議だなぁ……」

肇「どうしてこんなふうになったのかは、わかっていないんですけど……おかげで、この洞窟は空気が美味しいのと…それから」ヒュッ

ポチャン……

265: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:38:58 ID:BOs
未央「おお、釣り竿……」

加蓮「準備してきたのはそれかぁ。リュックに入るくらい折り畳めるんだね」

ネネ「餌は何を使っているんですか?虫さんとか…?」

肇「いえ、特殊なきのみで作られたモンスターボール……ルアーボールです」

未央「あ、そうだ、ボールの話!」

加蓮「すっかり忘れてたけど……きのみで……ボール?」

266: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:39:18 ID:BOs
肇「もともと、古来からポケモントレーナーはポケモンをボールに収めていたんです。今の大量生産できる素材ができるまでは、1個1個丁寧に、ボール職人がぼんぐりと呼ばれるきのみで手作りしていたんですよ」

ネネ「ぼんぐり!聞いたことがあります、確か、遠い地方ではぼんぐりをジュースにしてポケモンに飲ませたりもするって……」

未央「あっ、そうか、ジョウト地方のポケスロン大会!」

加蓮「ポケスロン……大会? 何それ」

267: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:39:36 ID:BOs
未央「ジョウト地方では、ポケモン同士を競わせるのにバトル以外の方法、すなわち運動会を開いて色んな種目で競い合ったりもするんだよ。あー、私としたことが、ポケモンバトルの事しか頭になかったから……」

肇「因みに、ジョウト地方にはまだ高名なボール職人さんがいて、今でも個人の注文を受けていたりするんですよ?」

未央「えっ、本当!?」

ネネ「意外ですね、未央ちゃん、カントーやジョウトの知識なら何でも知っているものとばかり…」

加蓮「未央ペディア、未だ完成ならず、ってわけか。まぁ、それなら未央はちゃんと肇の話を聞いとかなくちゃね」

268: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:40:00 ID:BOs
未央「う、うん!はじはじ先生、お願いします!」

肇「そんな。私は別に先生と呼ばれる程の人間では……」

加蓮「真面目にとらなくていいんだってば」

ネネ「あら……?」

ヤドン「ファーぁ…」ノタノタ

加蓮「何か来た……」

未央「あ、ヤドンだ!うわあ和むなぁ……」

肇「すみません、ヤド先生、起こしちゃいましたか?」

ヤド先生「……やぁん」ゴロン

269: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:40:29 ID:BOs
加蓮「えと、肇のポケモン……じゃないか、ボールとか使わないんだよね、この村」

肇「はい、疑似餌代わりに釣り竿につけるくらいです。それも、大抵はボウズか、キャッチアンドリリースで……思索に耽るには、丁度いい場所なんです」

ヤド先生「やぁん…」ピチョ

未央「あ、しっぽ垂らしてる! これね、釣りしてるんだよ、ヤドン」

ネネ「釣りをするポケモンさんなんですか?」

加蓮「見るからにのろまそうだけど……大丈夫なの?」

肇「ヤドン族のシッポからは、甘い汁が出ているので、それが餌代わりになってポケモンが集まるんです。ごくごく、たまにですけれど」

未央「そうそう。しっぽはちぎれてもすぐ生えてくるから、地方によってはしっぽ料理もあったり、冷凍で売られてたりもするらしいよ」

加蓮「このシッポがねえ」

ヤド先生「やぁん……」ボー

270: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:40:49 ID:BOs
未央「あと、反応が鈍いのが特徴!」

加蓮「見ればわかるよそれは」

ネネ「ぼーっとしてますもんね」

未央「いや、ホントに鈍いんだよ、戦いで受けたダメージもすぐに忘れちゃうくらいだし」

加蓮「それ、鈍いっていうか頭大丈夫なの」

肇「…ヤド先生は、この村に住み着いてだいぶ経つらしいんですけど、元々はトレーナーのポケモンだったんですよ」

加蓮「捨てられたの?」

肇「いいえ。旅のトレーナーが、育てているヤドンの子供ができたから良ければこの村で引き取ってくれないかと、村長さんに頼んだそうなんです」

271: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:41:21 ID:BOs

ネネ「と言うことは…このヤドンさんも、村で何かお仕事をしたりするんですか?」

肇「そうですね。そうらしいです。」

加蓮「らしいって……?」

未央「うりうりー、お前さん、可愛いのう」ツンツン

ヤド先生「………やぁん」

肇「……村長さんが言うんです。このヤドンの勤めはもう、立派に果たされておるのじゃよ、って。」

加蓮「……どういう意味…?」

肇「わかりません。何か、昔にあったのかもしれませんけど……」クイッ

肇「……え?」クイックイッ

272: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:41:39 ID:BOs
ネネ「わっ、釣り竿、ひいてます!」

肇「……重いです、これは……」

加蓮「何、底にでも引っかかったとか?」

肇「………ええいっ!」ザバァ

加蓮「……どう、釣れた!?」

未央「手応えは……多分……!」

ネネ「でも、ポケモンさん、近くにいませんけど……」

肇「ルアーボールが釣り糸に付いたまま……釣り上げられる途中で離れた……?」

ヤド先生「ふぁーあ……」ムクリ

肇「先生?」

273: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:42:04 ID:BOs
肇の前に出るヤド先生「……やぁん」ノッシ

未央「わ、何か凄そう」

加蓮「そう…?」

ネネ「……?」キィィィィン

ネネ「この音は……共振音…?」

ビュワアアアア……!

未央「水!?」

ネネ「飛んできます!」

ヤド先生「やぁん…!」ミョワワワワワ……

ビュワ………バシャン

肇「これは……みずのはどう……?」

未央「ヤド先生のねんりきで、何とか止められたみたいだね…」

274: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:42:23 ID:BOs
加蓮「待って、今のは距離もあったから、威力も下がってたはず……」

ネネ「水面見てください! 何かいます!」

ザバァ!

加蓮「あれは………」

ナマズン(大きめサイズ)「マーズゥン!」

肇「ヌシ様!!!」

未央「あれがヌシ……!」

ネネ「この村の…確か、相談役みたいなポケモンさんでしたね!」

ヤド先生「やぁん……」ヌボー…

275: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:42:39 ID:BOs

肇「はい、無駄な力は禁物ですね。焦らず行きましょう、先生!」

ヤド先生「やぁん」コクン…

加蓮「……アタシ達、ここは手を出さない方がいいかもしれない」

未央「うん……何となくわかるよ、これはきっと……ヌシがはじはじを見極めようとしてるんだ」

ネネ「…どうか、無理はしないで……!」

>>3人は後ろに下がった…。

276: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:43:00 ID:BOs
※ヌシのナマズンがしょうぶをしかけてきた!

ナマズン「マーズ!」ブビュバア…!

肇「どろ爆弾です、先生!」

ヤド先生「やぁん」ミョワワワワワ………

ベショ ベショ ベショ

肇「…この距離なら止められます……!遠距離からの攻撃は、通じませんよ!」

ナマズン「マズン……」ジャボン

肇「……潜った?」

ヤド先生「やぁん…」ゴロン

肇「…今は焦っても仕方がない、寝て待とう、ですか。なるほど」フム

277: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:43:22 ID:BOs
未央「な、なんか……はじはじ凄いね…」

加蓮「アタシらも何となくならポケモンの考えとか、わかるつもりだけど……」

ネネ「完璧に意思疎通がとれてます……あんな人がいるなんて…」

肇「心を……落ち着けて……呼吸を……意識して」スゥー……

ナマズン「マァズン!」ザバァ

未央「目の前に来たよ!?はじはじ!!」

肇「…………」

ヤド先生「……やぁん」ゴロン

肇「今はどの道打てる手はないと……はい。」

ナマズン「マズズズン……マァズン!」ウネウネウネ クルクルクル

未央「あれは……ドラゴンタイプが覚える技……『龍の舞』だよ!」

278: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:43:45 ID:BOs
ネネ「攻撃技ではなかった……フェイントを仕掛けてきたんですね……」

加蓮「で、ドラゴン使いさん。あの技の解説は?」

未央「……自分の力と速度を高める技……それも、同時にね……」

ジラーチ【何度も舞われると厄介だね……早めに決めるべきだよ】

未央「って言っても……あのナマズンに先生が打てる決定打は……」

ナマズン「マズン」ドポン

ヤド先生「やあん…」キョロ

ヤド先生「やぁん」キョロ

ヤド先生「………やぁん」ノシノシ

279: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:44:08 ID:BOs
肇「はい、誘導ですね」トコトコ……

肇「誘導だと気付かれぬよう……ゆっくり……焦らずに」トコトコ……

ヤド先生「やぁん…」ノシノシ

ナマズンの声「マァズン!マァズズズーン!」ゴゴッ

グラグラグラグラグラグラ……!!

ヤド先生「やぁん…」コテン

肇「やっ……」ヘタリ

ネネ「く……地震ですか……?」グラグラグラグラ

未央「ううん、多分この威力は……『マグニチュード』って技だと思う…!」グラグラグラグラ

加蓮「つまり何、地震攻撃の弱い版みたいなやつ?」グラグラグラ

280: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:44:30 ID:BOs

未央「ううん、この技は出す度に威力が変わるんだよ……しかも、さっきの龍の舞で力が…!」

ネネ「じゃ、じゃあもっと強く揺れたりもするんじゃ……」

加蓮「ら、落盤とか勘弁してよ……?」


肇「……まだ、大丈夫……」スクッ

ヤド先生「……やぁん」ムクッ… ……コテン

肇「先生? ダメージが後から……」

281: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:44:47 ID:BOs
加蓮「今の……後から痛がって倒れてなかった?」

未央「確か、ヤドンの感覚は鈍いんだよ…思い切り叩かれても少ししてから痛がるくらいだし…」

加蓮「それで……今の揺れのダメージが後から…」

ネネ「でも、一体二人はどうして泉の周りを歩いたりなんか……」

未央「多分、何かあるよ……」

ジラーチ【あのヤドン……意外に頭がキレるみたいだね。分類は確か『まぬけポケモン』なんて言うらしいけど……滑稽だな、これじゃ分類した人間の方がよほどまぬけじゃないか】

未央「どんなポケモンにも、色々な子がいる……そういう事、なんだよね、きっと…」

ジラーチ【キミ達ニンゲンも、ね】

加蓮「……あ、見て」

282: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:45:06 ID:BOs
ヤド先生「やぁん…」ムクッ……

肇「はい、引き続き誘導します。行きましょう」トコトコ……

ヤド先生「やぁん…」ノシノシ

加蓮「起き上がった……作戦再開ってヤツ?」

ビュビュビュ!

ネネ「またどろ爆弾が!」

ヤド先生「やぁん」ミョワワワワワ……

ベショ ベショ ベショ

肇「…大丈夫、怖くない…足は、止めません…」トコトコ…

ヤド先生「やぁん」

283: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:45:29 ID:BOs
ナマズンの声「マァズン!マァズン!マアアズン!」グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ

ヤド先生「やぁん……」コテン

肇「……く……!強い……!」ヘタリ

未央「確かに強いけど……これ、多分凌げれば……」グラグラグラグラグラグラ

ジラーチ【近づいてきて、直接攻撃か、さらに龍の舞で力を上げてくるだろうね】

加蓮「……これ、いつまで続くの……!」グラグラグラグラグラグラ 

ネネ「加蓮さん?」グラグラグラグラグラグラ

加蓮「ネネ、肩借りる……心臓にきつい……」ギュ

未央「そうか、いきなり揺らすから、かれんの心臓、ビックリしちゃうんだ……マズイよ……!早く決めないと……」

284: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:45:52 ID:BOs
肇「着きました……!ここだけ、長い草が茂っています……!」

ヤド先生「やぁん…!」

肇「はい、待機します………先生、後は……」

ヤド先生「…やんやんやん やぁん…」

肇「……え……合格……何が……?」

ヤド先生「やぁん」クイッ

肇「は、はい。今は集中を……!」

ナマズン「マズン!」ザバン

肇「………!」

未央「目の前に!」

加蓮「さぁ、どうすんの……っ」ハァハァ……

ネネ「肇さん…ヤドンさん…!」ギュ

285: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:46:13 ID:BOs
ナマズン「マァズン マァズン……」クルクルクル

ヤド先生「……やぁん」

肇「はい。念じてください!狙いは……目の前にある、長い草です!」

ヤド先生「……やぁん」ミョワワワワワ………

※草が念力を受けて揺らめいている…!

※舞うナマズンのもとへ念じた草が絡みつく!

ナマズン「マズン!?」ベシッ ギューッ

肇「捕まえました……先生、地面に!」

ヤド先生「やぁん!」ミョワン!

振り回されるナマズン「マズン!マズズン!」

肇「叩きつけます!『草結び』!!」

ヤド先生「……やぁん!」ヒュッ

ナマズン「マズーン!!」ドシャア!!!

286: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:46:34 ID:BOs
未央「決まった……!!」

加蓮「あれ、くさタイプの…?」

ネネ「はい、効果は抜群のはずです!」

未央「念力で……最初から全部計算ずくだったんだ……」

ジラーチ【大したヤドンだね……あんなの、何千年に一匹いるかどうかだよ】

ナマズン「マズン」パチッ

加蓮「………肇、そのナマズン、まだ!」

肇「…いえ、終わりです。」

加蓮「え……」

287: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:46:56 ID:BOs
村長「よう、なしてくれたのう……」ツカツカ

肇「村長さん……」

村長「合格だ、そうヤドンが言ったのを聞いたろう」

肇「はい」

ヤド先生「やぁん」

ナマズン「マズン」

村長「ヌシ様、よくぞ協力してくださった……感謝いたしますぞ」

ナマズン「マズン」ニッ

加蓮「……アタシにも何となく見えてきたんだけどさ、これってつまり…そゆこと?」

村長「旅の方、あなた方には迷惑を。特にそなたは病を抱えている様子、よく耐え抜きなさった…」

肇「え、加蓮さん…?」

288: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:47:14 ID:BOs
加蓮「違うの……病を抱えていたのは昔の話。不治の病って言われて……もしかしたらもう、この世界にはいなかったかもしれなかった……それも、昔の話」

加蓮「奇跡的に治ったんだけど、体は急に丈夫には……ならなくて」

村長「そなたは強い眼をしておるな……運命に玩ばれてなお、それは未来を生きんとする眼じゃ」

加蓮「そんなたいしたもんじゃない……でも、もう諦めるのはまっぴらなの」

加蓮「アタシは……アタシの生きる意味を探したい。もう、窓の外の雨をただ黙って眺め続けるのは絶対に嫌なの」

未央「かれん…」

289: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:47:37 ID:BOs
ジラーチ【……この子もまた、何千年に一人のニンゲンなのかもしれないな…】

肇「最初から、ヌシ様と先生、村長さんは私を試していた……今日、旅の人と出逢って、私の心がかすかに揺れたのを…見透かされていたんですね」

村長「それだけではないぞ。そのヤドンはな…お主をずっと待っていたのじゃ」

ヤド先生「やぁん」コクン

肇「え……?」

村長「小さかった頃故、覚えておらぬは無理なき事よの……。肇や、お前は幼い頃、この泉に足を滑らせ落ちた事があるのじゃ」

肇「私が……この泉に」

村長「このヤドンはその時にそなたを救った。それが、このヤドンがかつて果たした、かけがえのない村の子供を守るという、栄誉ある勤めなのじゃ」

290: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:47:58 ID:BOs

肇「……じゃあ、先生が私のそばにいたのは……ずっと私を見守られていたんですね……?」

ヤド先生「やぁん」

肇「先生……っ……くっ……ううっ……」ギュッ……

ネネ「……肇さん…」

加蓮「温かい村……」

未央「だね…ちょっと私こういうの…泣いちゃう…」グスッ

村長「肇や」ポン

ナマズン「マズン マズマズン」

肇「……私が……ヌシ様と…?」

ヤド先生「やぁん」ニコ

291: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:48:23 ID:BOs

村長「今日までよく勤め上げたのう、村のボール作りはひとまずしまいじゃ」

村長「肇や、作ったボールはちゃんと持っておるな?」

肇「はい、はい……」グスッ

肇「釣り上げたポケモンを捕まえやすくする『ルアーボール』……いいえ」グシグシ

肇「捕まえたポケモンと絆が深まりやすくなる願をかけた…『フレンドボール』」スッ

肇「ヌシ様、ヤド先生。どうか私と……共に旅を!」

ヌシ様「マズン」コクン

ヤド先生「やぁん」コクン

肇「いきます!フレンドボールっ!」ヒュヒュッ!

ボウン ボウン!

………カチッ カチッ!

292: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:48:47 ID:BOs
肇「村長さん……村の大切なヌシ様を……」

村長「うんにゃ、違うぞ、肇」

村長「この村に大事なのはヌシ様だけではない。わしらには、村の子1人1人、一匹一匹が、家族じゃ」

村長「旅の方、お主達はジムバッジを手に入れる旅をされておられると申されたな」

村長「どうかこの村の……わしの宝を……連れて行っては下さらぬか」

加蓮「連れていきたいのは山々なんだけど……私達、条件を出されてるんだ」

未央「この洞窟の向こうのジムでバッジを貰えれば、そしたら旅の仲間を1人加えるのを認められるんだ」

ネネ「ですから、その時まで……そしたら、私達、必ずこの村へ戻ってきますから」

村長「肇や。それで良いか」

肇「はい。お待ちしています、この村で。」

293: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:49:05 ID:BOs
村長「この洞窟はそう長くは続いておらぬ。まっすぐ、ただまっすぐに進めば目的地へと辿り着くじゃろう」

村長「ゴルダックや、おるかの」パンパン

ゴルダック「ゴダッ」スタッ

村長「戦いの様子は、このゴルダックが泉に念写するでな。肇、旅の仲間の戦いを、この泉でしかと見届けるのじゃぞ」

肇「はい!」

294: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:49:34 ID:BOs
加蓮「……じゃ、行こっか。」スクッ

未央「かれん、無理はよくないって……」

加蓮「アタシが今無理なのは……今ここで、この気分のまま休むことだよ」

加蓮「順番的に、次の街のジムは…未央、ネネ、アンタ達2人でしょ」

ネネ「加蓮さん」

未央「……いいの?ここでも試合は見れるんだよ?」

加蓮「水臭いこといいっこなし。アタシ達は仲間なんだから。一番近くでゆっくり観戦させて貰うからね。手を抜いたりしたら許さないんだから」

未央「…だってさ。どうする?」

ネネ「そのための私ですから。加蓮さんがムチャした分、道中少しずつ癒やしていきますね」

295: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:49:57 ID:BOs
加蓮「って事で。村長さん。アタシ、肇や、この村で……少しだけ、覚悟とかそういうの……わかった気がする」

村長「そうかい……。それは何よりじゃ」

肇「加蓮さん、未央ちゃん、ネネちゃん。」

加蓮「すぐにまた逢えるよ、肇」

未央「うん!私達だって、はじはじ達に負けない強くて頼もしい仲間達がいるんだからね!」

ネネ「行ってきます、肇さん、村長さん」


肇「どうかお気を付けて……ご武運を、お祈りしています!」

村長「わしもここで見届けさせてもらうぞ、お主達の心意気をのう」

296: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:50:10 ID:BOs
加蓮「……負けないよね?」

ネネ「負けられないですから」

未央「あたぼうよ!」

ジラーチ【…少しだけ、見物になってきた…かもしれないな。ふふ…。】

297: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:50:23 ID:BOs
※新たな仲間に一時の別れを告げ、目指す先は洞窟の先の次の街。

※果たして、3番目のジムリーダーは、どんな戦いを仕掛けてくるのか。

※その答えは次回、キミの目で確かめろ!

298: ◆6RLd267PvQ 19/07/11(木)01:50:34 ID:BOs

~次の街・グレモスシティ岩盤浴~

洋子「ふう…戦いの疲れが癒やされるよ……」

洋子「さて……明日はどんな挑戦者が来るのかな~……ふふ、待ちきれないかも♪」


※続く!

302: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:53:06 ID:GmH
更新します、第9話。

Endurance battle of the city of the cliff.

303: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:53:34 ID:GmH
※トノカミ洞窟を抜けて、3つ目のジムがあると言うグレモスシティに到着した加蓮、未央、ネネ。

※新しい街で、早速何やらトラブルかな……?


未央「せーのっ!んぎぎぎぎぎぎ……」

加蓮「いや……流石に無理があるって」

未央「だって!さっきのアレ見たでしょ!」

ネネ「確かにちょっとかわいそうでしたけど………」

304: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:53:52 ID:GmH
~少し前~

未央「おおー、ここが新しい街かあ…あっ、二人とも、後ろ後ろ!」

ネネ「うわぁ、出口は崖になっていたんですね、トノカミ洞窟……」

加蓮「『ようこそ、切り立つ崖の街、グレモスシティへ』……こんなわかりにくいとこに彫るかなあ、普通」

未央「あ、そっか。普通は洞窟から出て振り向いたとこに字が彫ってあるとか考えないね…」

ネネ「それにしても、崖の上からロープがたくさん……あれ、何のためなんでしょうか」

未央「よく見たら、あちこち掴めそうな石が刺さってるね。気になるなあ」

加蓮「そういう崖……って事はないか。明らかに人の手で石が差し込まれてるし。この石、色塗られてるもん」

305: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:54:14 ID:GmH
イシツブテ「ラッシャイ!」

未央「わ、イシツブテ!お出迎えかな?かなぁ?」

イシツブテ「ラッシャ…」ガシッ

未央「お?」

※石伝いに崖を手で器用に登っていくイシツブテ。

イシツブテ「ラッシャイ」ピョン ヒューン ドスン

イシツブテ「ラッシャイ!」

未央「ほえー、ああいうスポーツ、なのかなあ」

ネネ「えっと……確かガイドブックに……」ペラッ

ネネ「ありました。昔ある地方のイシツブテさんが崖をあんな風に両手で登るのを見た人が、ボルダリングという崖登りのスポーツを考えたらしいです。ここに載ってます、ほら」

加蓮「カロス地方のショウヨウシティジムにはボルダリングがジム内で出来る様にもなっており、ポケモンだけでなくトレーナーも心身を鍛えることができる…か。」

306: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:54:36 ID:GmH
加蓮「この崖をねえ、アタシには無理だな、体力ないし」

ネネ「私もちょっと……随分高いですよね、この崖」

未央「道理でロープがあんなにたくさん…でも、落っこちたりしたら大変な気も……あれ?」

ネネ「未央ちゃん?」

未央「あそこ、石でできたシーソーだよ、ネネちん」

ネネ「あ、本当……ポケモンさんが乗ってますね」

加蓮「もしかしたらここって、ポケモン専用の遊び場なんじゃない?身体が丈夫な岩ポケモンなら、落ちたくらいじゃピンピンしてるでしょ」

未央「……うん、それはいいんだけどさ」

加蓮「何、人が真面目に分析してるのに……ぷっ!」

307: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:54:56 ID:GmH
ネネ「わ、笑っちゃ失礼ですよ加蓮さん」

加蓮「だってあれ…シーソーのつもりなんだよね……?」

※片方に乗るツボツボ「ツボー」(大体20㎏)

※反対側に乗るゴローニャ「ゴロー!」(300㎏)

加蓮「何が楽しいんだろ……ふふ……」

未央「やばい、ツボツボがかれんのつぼに入ってるし」

ネネ「あの2匹、シーソーの遊び方、ちゃんとわかってないのかもしれませんね…」

未央「何ぃ!それは勿体ないよ!だってシーソー、めちゃくちゃ楽しいじゃん!」

ジラーチ【ただ乗って揺れるだけじゃないかあんなの】

未央「ジラちんは黙ってて!」

ジラーチ【はいはい】

308: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:55:23 ID:GmH
大股で歩く未央「よーっし……見てなさいよ……!」ノッシノッシ

加蓮「ちょ、未央アンタ何する気?」

未央「今の私はただの未央ちゃんじゃないよ、超ヘビー級未央ちゃんなのだよ」ノッシノッシ

ネネ「歩き方が変わっただけなんじゃ……」アハハ…

未央「シャラップネネちん!今行くからねツボツボ~!」

~そして現在~

ツボツボ抱えた未央「うーごーけー!」

ツボツボ「ツボー」

ゴローニャ「ゴロー!」ガッツポーズ!

309: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:55:50 ID:GmH
ネネ「ゴローニャさん、これ楽しんでますよね」

加蓮「新手のいじめなんじゃないの、これ」

男性の声「ゴローニャ、もう帰るぞー!」

降りたゴローニャ「ローニャ」ドシン

未央「うひゃあ!」ズデッ

殻にこもるツボツボ「ツボ!」スポッ

ネネ「大丈夫ですか未央ちゃん!」

未央「いやー、びっくりはしたけどね、あはは……ツボツボ、おーい」コンコン

首だけ出したツボツボ「ツボ?」キョロ

未央「よし、重たいのもいなくなったし、かれんとネネちんは向こう、私とこの子はこっちね!」

加蓮「…どうする?」

ネネ「遊んであげましょうよ、折角ですし」

加蓮「だね、乗りかかった船………いや、シーソーってやつか」

~~~~~

310: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:56:15 ID:GmH
ギッタン バッタン

ギッタン バッタン

加蓮「あは、何か……あんま乗ったことないけど、結構楽しいじゃん、シーソー!」

ネネ「ですね、気持ちいいです、きゃあっ♪」

未央「どう、ツボツボ。これが本来のシーソーの遊び方なのだよ?」

ツボツボ「ツボツボー」ワー

未央「ねえ、ツボツボ喜んでるー!」

ネネ「ホントですか?良かったですね加蓮ちゃん!」

加蓮「まさかジム戦の前にこんな事するとは思わなかったけどね…ま、いっか、楽しいし」

ネネ「ですね!」

洋子「おーい、ツボツボー、どこー?」

ツボツボ「ツボ? ツボー!」

未央「ありゃ、トレーナーさんかな? ちょっと待って下さい、シーソー止めるんで~!」

~~~~~

311: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:56:41 ID:GmH
洋子「あはは、成程、作業員さんのゴローニャ君か。それにこの子じゃ確かに釣り合わないよねー」ヨシヨシ

ツボツボ「ツボツボー」ハイッ

未央「ん、何これ」

ネネ「きのみ……? 中に何か……よいしょ」ツン ペロッ

ネネ「わ、ジュースです、これ」

未央「待てよ……? ツボツボって確かジョウト地方にもいたような……物凄いレアなポケモンだけど」

洋子「うん、向こうじゃあまり見ないみたいだね。この子はね、殻の中にきのみをずっと入れておいて、発酵させてジュースに変えちゃうの」

加蓮「へえ……天然のジューススタンドってわけ」

洋子「滋養強壮、栄養満点でね。ツボツボが人にきのみジュースを振舞うなんて、実際滅多にない事なんだから」

ネネ「これ、ちょっと味が濃い目ですし、薄めても大丈夫ですかね。それなら皆の分すぐに飲めますし」

洋子「うん、全然大丈夫だよ、私もよくやるし♪ ツボツボ、皆喜んでくれて、よかったね♪」ヨシヨシ

ツボツボ「ツボツボー!」

312: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:57:12 ID:GmH
加蓮「ところでお姉さん、えっと」

洋子「あ、自己紹介まだだったね。私、洋子。キミ達は?」

未央「あ、未央です!」

ネネ「ネネって言います」

加蓮「加蓮だよ。あのさ………」

洋子「ん……? …ははぁ」

未央「わわ、何するの洋子さん!」グッグッ

※体をまさぐられる未央。

洋子「うん、よく鍛えられてる。パッと見わかんないけど、引き締まってて、凄くいい感じ!」

未央「は、はあ……」

洋子「って事は……やっぱりこれが目当てなんでしょ」キラン

ネネ「それは…」

未央「ジムバッジ!? えっ、えっと、つまり……」

加蓮「やっぱりそうだったんだ。道理でこんな男臭い街にお姉さんみたいな美人がね……」

313: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:57:31 ID:GmH
未央「男臭いは失礼じゃないかねかれんさんや」

洋子「あはは、よく言われる!けど、ちゃんと女の子の観光客も来るんだよ?ここは洞窟の出口に近いし、行商さんや鉱石掘りのお仕事をする作業員のたまり場みたいなところだから」

洋子「ここだけの話、この街ってパッと見で岩くらいしかないでしょ? 荒れ地って言うか、崖とか山の間に無理やり人が住んだようなトコだからさ」

洋子「だから隣りにあるヒュドールの行商さんが、花の種とかお野菜とか、色々持ってきてくれるんだよ。いつかはこの街も資源が尽きちゃうだろうし、その時はせめて、花でいっぱいの街になってたらいいなあって…私思うんだよね」

314: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:57:56 ID:GmH
ネネ「花でいっぱいの……素敵な夢ですね」

加蓮「案外、そう遠い夢でもないかもよ?アタシ達、ミクモの森で……あ、正確にはこの二人がだけど、道を塞いでたオコリザルをやっつけちゃったんだよね」

ネネ「あ。そっか……ミクモの森の向こう側は…」

未央「ブルーメタウン!花の街じゃん!」

加蓮「ね。そこからも花の苗や土を譲って貰ってさ。それなら死んだ土地もどうにか生き返るんじゃない?」

洋子「わぁ………それがホントなら私、夢に一歩近づいちゃったかも!」

未央「ホントならって、ホントなんだってば、信じてよー、ね、『よこちゃん』!」

ネネ「未央ちゃん、大人の方にまで…」

加蓮「もう今さら止めてもね」

洋子「よこちゃん…か。ふふ、あだ名で呼ばれるのなんてどれくらいぶりかなぁ…」

洋子「観光に来る人はいるけど、仲良い地元の子はやっぱりマギアシティとか、都会に出てっちゃうんだよね。何だか懐かしくなっちゃった」

ツボツボ「ツボ」

315: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:58:13 ID:GmH
洋子「うん。OK、ツボツボ。……さて、それじゃ、早速だけど……この街のジムリーダーは強いよ。毎日ちゃんと鍛えてるからね。……どう、勝負する?」ニヤッ

背中を押す加蓮「ネネ、未央」トンッ

ネネ「……っ」ゴクリ

未央「うん。私達、そのためにここに来たんだ!誰が相手だって、絶対かーつ!」

洋子「よしっ!それじゃ行こっか……」

洋子「グレモスシティジムリーダー、洋子。全力で挑戦者をお相手します!」


~~~~~

316: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:58:35 ID:GmH
~ヒュドールタウン~

オニシズクモ「クモ?」

スワンナ「スワー」バサバサバサ……

村長「おお、スワンナ、戻ったか。……と言う事はやはり、そろそろじゃな」

村長「皆の衆、仕事は一時切り上げじゃ!」パンパン

村人「おお、ではついに」

村人2「肇の仲間……彼女達の戦いが始まるのですね。」

肇「…………村長さん」

村長「信じる事じゃ、肇。仲間は、信じねばな。」

肇「……はい。皆さん、ヌシ様の泉へ参りましょう!」

村長「ゴルダックの念写で泉に戦いの様子を映し出す!皆急げ、遅れるでないぞ!」

~~~~~~

317: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:58:55 ID:GmH
~グレモスシティジム~

※ジムの造りは四方を岩壁に囲まれただけの簡素なフィールド。天井は無く、岩がフィールドの至るところに隆起している…。

~観客席~

加蓮「椅子も石造り、か。本当に何もかも石とか岩なんだね」

まろ「チル」モグモグ

加蓮「はぁ……お弁当もいいけど、アンタ今のとこあんまり戦績良くないんだからしっかり見て勉強しなよ、まろ」

まろ「チル♪」モグモグ

加蓮「ほんっとにわかってんのかな…」

~~~~~~

318: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:59:16 ID:GmH
紗南『さぁ、3番目のジム挑戦!いよいよジムリーダーも実力がワンランク上がる頃!対する挑戦者は未央選手とネネ選手、どんな戦いを見せてくれるのかー!』

ワアアアアア……

洋子「さぁて……いっちに、さんし……」グイグイッ

洋子「よし! じゃあ……今日の一戦も、ひとついい汗かくとしますか!出てきて、サニーゴ!」ボウン

サニーゴ「サニサニィ!」フリフリ

紗南『洋子さん、一匹目は南国の海に多く生息するさんごポケモンのサニーゴを選択!タイプはみずといわタイプ、対する挑戦者はー!』

319: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)13:59:43 ID:GmH
未央「ここはやっぱり、だよね」

ネネ「ええ、みずにもいわにも有利なタイプ………くさタイプの私達が!」ボウン

アマちゃん「アーママイ!」

紗南『アママイコの登場~!タイプは草タイプ、いきなりの対面不利、これはジムリーダー、分が悪いのではー!』

洋子「タイプの相性だって覆す!じゃなきゃ、ジムリーダーとは言えないってね!いくよサニーゴ!」

サニーゴ「サニィ!」

紗南『両者ともやる気満々、注目の一戦、今、ゴングです!!』

ネネ「まずは様子見……往復ビンタよ、アマちゃん!」

アマちゃん「ママママイ!」ダッ クルッ……

ベシシシシシッ!

サニーゴ「サニッ!」ベシシシシシッ!

アマちゃん「ママイ…!」ストッ

紗南『あっと、効果は今ひとつ!回転しながらの往復ビンタでしたが、見るからに効果は薄いようです!』

320: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:00:07 ID:GmH

ネネ「となると、やっぱりはっぱカッターよね……相手の動きは今の攻撃が避けられなかったし、遅めのはず……なら」

ネネ「アマちゃん、続けてはっぱカッター!」

アマちゃん「アーマイッ マイッ」シュパパパ

洋子「来たね。遠距離から仕掛けてくるのを待ってたよ」

ネネ「え…!?」

洋子「サニーゴ、『とげキャノン』!!」

サニーゴ「サニッ……サニニニニニニ!」ババババババババ

アマちゃん「アマッ!?」

紗南「凄まじい連射速度だー!はっぱカッターが撃ち落とされてしまった上、なおも攻撃が止まらないー!」

ネネ「かわすの、アマちゃん!」

アマちゃん「アマッ!」タタッ

ババババババババ!

321: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:00:27 ID:GmH
洋子「休まずいって、サニーゴ!とげキャノン!」

サニーゴ「サーニニニニニニニニニ!」ババババババババ!

アマちゃん「マッ マイッ」タタタタ…

ババババババババ!

未央「これじゃ狙いつけてはっぱカッターを撃つことなんて……!」

ネネ「なら、狙いを付けずに撃つまでです!アマちゃん、逃げながらマジカルリーフよ!」

アマちゃん「アーママイ!」バヒュン!

サニーゴ「サニッ!?」ババババババババ…

紗南『絶対命中、変幻自在に軌道を変えて飛び交うマジカルリーフ!これはとげキャノンでは撃ち落とせないー!』

サニーゴ「サニッ……サニィー!」バヒュヒュヒュヒュ!ドゴオオ……!

322: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:00:48 ID:GmH
サニーゴ「サニ…サニ……」キュウ

紗南『クリーンヒットー!!サニーゴ戦闘不能!ネネ選手、お見事な技選択でした!』

アマちゃん「マイマ…」ズキン

ネネ「アマちゃん?」

洋子「避けきったつもりかもだけど、私のサニーゴの特性は『はりきり』!命中精度と引き換えに威力が上がってるから、かすっただけでもかなりキツイはずだよ!」

ネネ「そんな……!」

紗南『特性はりきりでパワーアップしたとげキャノン、これは確かに相当きついぞー!』

ネネ「アマちゃん、戻ってきて! 紗南ちゃん、アマちゃんは戦闘不能です!」

紗南「了解!医療チーム、とげ抜き持ってきて!早く早く!」

清良「とげ抜きとガーゼ!」タタタタ

亜季「イエスマム!まずは負傷者を運び出すであります!」タタタタ

323: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:01:10 ID:GmH
紗南「さぁ、互いに一体ずつ戦力を失ってしまいました!続いての戦いはどうなるー!」

ネネ「トロちゃん、お願い!」ボウン!

トロちゃん「トローピス!」バサッバサッ

洋子「ツボツボ、ゴー!」ボウン!

ツボツボ「ツボー」コロン

未央「お、ツボツボだ!」

加蓮「あの子も戦えるの…? 見た感じ、凄く弱そうだけど…」

ネネ「油断は禁物……今度ははじめから!『はっぱカッター』!」

トロちゃん「ピスッ ピスッ!」ヒュヒュン!

ツボツボ「ツボ」カラコモリ

カキキキキン!

ネネ「え……?」

ツボツボ「ツボー」ピョコン

324: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:01:33 ID:GmH
紗南『殻にこもって完全にガードしたー!今のは技ではなくツボツボそのものの防御力だよ!』

洋子「ツボツボはこう見えて、ポケモンの中でもトップクラスの防御力を持ってるの!そう簡単には倒せると思わないでね!」

ツボツボ「ツボー!」

加蓮「うわぁ、見かけで判断できないなぁポケモンって……!」

未央「はっぱカッターがあれじゃ、ふみつけても弾かれちゃうんじゃ……!」

ネネ「でも、確かさっき、本体の防御力が高いだけで、守りの技ではないと言ってましたよね」

ネネ「もしかして……撃ち続ければ!」

トロちゃん「ピスッ」コクン

洋子「へえ……よく気付いたね、って言いたいけど……守りだけがツボツボじゃないんだよ!『いわおとし』!」

325: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:01:57 ID:GmH
ツボツボ「ツーボ!」ヒュッ……!

トロちゃん「ピウスッ」ゴチーン!

ネネ「トロちゃん、大丈夫!?」

トロちゃん「ピウスッ」

ネネ「……あんまり効いてない?」

トロちゃん「ピス?」

紗南『んー、ツボツボって、高いのは防御力だけなんだよねー…だから持久戦に持ち込まれると面倒っていうか…』アハハ

洋子「そう、持久戦に持ち込むから!長引くから覚悟してよね!『いわおとし』!」

ネネ「『はっぱカッター』!」

ツボツボ「ツボー!」

トロちゃん「ピスッピース!」

326: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:02:10 ID:GmH
ドゴン カキキキキン バキッ カキキキキン ズシン カキキキキン ゴス カキキキキン!

加蓮「うわあ不毛」

327: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:02:32 ID:GmH
まろ「チル…チル…」スカーッ……スカーッ……

紗南『両者とも激しい攻防が……激しい。激しいって何だっけ。とにかく攻防が続いています!!……長い!!!』

トロちゃん「ピスッ……ピスッ……」ハァハァ……

ツボツボ「ツボー」

未央「ま、まさかあのツボツボ、あんなに強いポケモンだったなんて……私もまだまだ勉強不足だなあ……」

ジラーチ【小さいからって油断してるからそんな目に遭うんだよ】

未央「な、なんかジラちん怒ってない…?」

ジラーチ【怒ってない】ムスッ

未央「……んん?」

328: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:02:55 ID:GmH
ネネ「とりあえず、渡したオレンのみで回復を……」

洋子「飛びついて!」

ツボツボ「ツボー」ヒューン

トロちゃん「ピスッ!?」

挨拶するツボツボ「ツボ」ヨッ

未央「よっ、じゃないよ!もう!」

紗南『機動力に欠けるツボツボですが、殻にこもって空中から飛びついてきました!一体何をする気なのかー!』

洋子「きのみを『はたきおとす』攻撃!」

ツボツボ「ツボ」エイッ

トロちゃん「ピスッ!」ガーン

ネネ「あああ…貴重なきのみが……大事な回復手段が……!」

紗南『あーっ、これで回復手段がなくなってしまったー!これはきつい、きつすぎるー!』

329: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:03:20 ID:GmH
洋子「そろそろキメるよ!『むしのていこう』!」

ツボツボ「ツボー!」ギュムー

トロちゃん「ピスウウウ」ギュムー!

未央「ネネちん、トロちゃんやばいよ!」

ネネ「……くっ、やっぱりこの技しか……!何が出るかはわかりませんけど、一か八かです!」

加蓮「ここ、空調もないし……まあ、トライアタックじゃないだろうね…」

ネネ「いきます、しぜんのちから!」

トロちゃん「ピスッ!」ブン

ツボツボ「ツボー」ヒューン

紗南『トロピウスの身体を締め上げて抵抗していたツボツボ、地面に振り落とされました!そしてそしてー!』

330: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:03:46 ID:GmH
トロちゃん「トーローピース!」ズシン!

バキバキバキバキ……

加蓮「地表に、ヒビ!」

未央「地割れ……じゃない、この技は!」

ツボツボ「ツボ?」

ツボツボ「ツボー」カラコモリ

ネネ「また殻に……!」

大地を踏み鳴らすトロちゃん「ピーウス!」ズシン!ズシンズシン!

バキッ……ゴゴゴゴゴ…………

ドカァアアアアアン!!

紗南『だ、大地が爆発した~!この技は、地下のエネルギーに刺激を与えて放出させるじめんタイプの『だいちのちから』です!!』

331: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:04:20 ID:GmH
ツボツボ「…………」カラコモリ

紗南『これは……殻から出てきません!戦闘不能でしょうか!』

ネネ「よし……これであと一体…!」

挨拶するツボツボ「ツボ」ヨッ

未央「えええええ」

加蓮「何でよ!!?」

まろ「チル!?」ビクッ

ツボツボ「ツボー」ハイッ

洋子「滋養強壮、栄養満点……ふふ、もう忘れてた?」

紗南『これはきのみジュース!殻の中にきのみを忍ばせていたツボツボ、体力を回復しました!………って事は?』

未央「またあの持久戦の繰り返し……かな……?」

加蓮「ちょっと……流石にそれは……」

ネネ「トロちゃん……」

トロちゃん「ピス……ピス……」ハァ…ハァ…

ネネ「未央ちゃん、ごめんなさい、これ以上は……!」

332: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:04:42 ID:GmH

未央「ううん、仕方ないよ、こればっかりは……でも!」

未央「私だって、強くなったんだから!いくよ、りゅーすけ!」ボウン

紗南『ここで選手交代、粘りに粘ったツボツボとトロピウス、決着はつかぬまま挑戦者、3体目です!』

未央「りゅーすけ………お願いがあるんだけど」

りゅーすけ「リュ」

333: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:05:03 ID:GmH


未央「むちゃくちゃなのは百も承知でお願いなんだけどさ……」

りゅーすけ「リュ…?」

未央「一発で倒して!!ツボツボ!!長い!!!」

紗南『同感!!!!』

洋子「ちょっと、審判!」

未央「ツボツボが強いのはよーくわかったけど、これ以上はあんまりにも長いんだもん、下手したら次回へ続く!とかになっちゃうよ!」

ジラーチ【まあ、ザッと千年も寝てれば終わるんじゃない?】

未央「人生がね!!!!」

334: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:05:24 ID:GmH
りゅーすけ「リュ」フンス

りゅーすけ「リュリュー」ウネネネ

ツボツボ「ツボ」カラコモリ

りゅーすけ「リュリュー……」スーッ

未央「りゅーすけ?」

ネネ「深呼吸ですかね…?」

トロちゃん「ピス…」

りゅーすけ「リュリュー!」ブワアアアアア!

洋子「なっ!これって……!」

ツボツボ「ツボ」コテン ヘニャン

335: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:05:45 ID:GmH
紗南『ああ……その手が……』

未央「そ、その手がって、今の技だよね? えっと、ドラゴンタイプの技で……防御の硬い相手には……あ」

洋子「『龍の怒り』……どんな装甲も無効化してダメージを与える龍の焔。威力は低いけどね」

紗南『ツボツボの弱点は防御と引き換えにした体力の少なさ!肝心の装甲を無効化してしまえばこの通りです!』

オー…………

紗南『皆、気持ちはわかるけどもう少し元気だしてこ……ひたすら喋ってるあたしの身にもなって……』

オオオオオ……!

336: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:06:08 ID:GmH
洋子「ま、仕方ないか……ゆっくり休んでね」シュウウウ

加蓮「つまり、初めから未央がりゅーすけにアレさせてれば試合が3時間長引いたりする事はなかったと」

ネネ「すみません……私の力不足で……」

加蓮「ネネは悪くないけど、未央は自分のポケモンの技くらい把握しなさいよ」

未央「ド、ドラゴンタイプはね、予想を超えてくるところに魅力があってだね!?」

紗南『はいはい、ともかく今は洋子さんの3体目のポケモンに備えて備えてー!』

加蓮「3体目、か…何が出てくるのやら…」

ネネ「考えてみたら、サンゴ礁って漢方薬の材料でしたっけ」

トロちゃん「ピス?」

337: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:06:30 ID:GmH
ネネ「それに、滋養強壮のきのみジュース……もしかして洋子さんって」ハッ

洋子「気付いたね? 私、健康美には拘りがあるんだよね!」

洋子「というわけだから3体目、この子のお出ましだよ!」ボウン

プテラ「ギャース!!」バサッバサッ……バサッバサッ…

未央「プ、プ、プテラだ!!私の憧れるワタル先生も使ってるポケモン…!!」

りゅーすけ「リュー……」

洋子「プテラはひみつのコハクから復活させた古代のポケモン。コハクは樹脂が固まってできた化石で、宝石としてなら癒やしのパワーがあるし、健康食品の材料としても使われてたりする……まぁ、私の場合、たまたま見つけたコハクがこの子だったってだけなんだけどね」

洋子「持久戦で疲れてるとこ悪いけど、削りに行かせてもらうよ!」

338: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:06:52 ID:GmH
洋子「プテラ、空を飛ぶ!」

プテラ「ギャース!」バサアアア

加蓮「高い!」

ネネ「あれじゃ攻撃が……」

未央「確かに、あそこまで高度があると必中のスピードスターでも射程圏外……けど、黙って見てたらいつ急降下で襲いに来るか……!」

りゅーすけ「リュ」クイクイ

未央「ん、何?」

りゅーすけ「リュー」クルクルリン

未央「お? 何でくるくるして……そっか!」

洋子「そろそろいいかな……油断してるとこ悪いけど、一気に……!」

未央「りゅーすけ、たつまき!」

りゅーすけ「リューリューリューリューリュー……」クルクルクルクル………

ブオッ! ゴオオオオ

洋子「なっ!」

339: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:07:11 ID:GmH
プテラ「ギャオオオオ……」ビュゴオオオ

紗南『確かに、空を飛んでいる相手には威力が倍増する技、たつまきは効果的!攻撃範囲も上空に対して申し分ありません!』

ワアアアアア……

プテラ「ギャウ」ドサッ!

未央「落ちてきた!チャンスだよ、りゅーすけ、さっきのやつ、龍の怒りで……」

プテラ「ギャス」ギロッ

りゅーすけ「リュ!?」ビクッ

洋子「突撃して低空からかみなりのキバ!」

プテラ「ギャウウウ!」ガアアアッ

ガブッ!!

340: ◆6RLd267PvQ 19/07/12(金)14:07:38 ID:GmH
りゅーすけ「リュー!!」ビリビリビリ!

未央「りゅーすけ!!」

加蓮「直撃……!」

距離を取るプテラ「ギャウ」バサッバサッ…バサッバサッ…

りゅーすけ「リュ……リュー」ビリビリ……

未央「く、りゅーすけが麻痺にさせられちゃうなんて……!」

ネネ「これじゃ次に飛ばれたりしてもたつまきは……!」

洋子「そういう事。悪いけど、終わりにするよ!プテラ、飛んで!」

プテラ「ギャウ!」

洋子「今度はスキも与えない……!高高度から一気に、急降下でかみなりのキバ!」

プテラ「ギャアウウウ!」バサッバサッ……ギュン!

ネネ「速いです!未央ちゃん!」

未央「りゅーすけーっ!!」

りゅーすけ「リュ…リュ……」

りゅーすけ「リュー!!」カッ!

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