更新します。17話。

for the family. City battle of the sun!

663: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:01:08 ID:y8c
※時間を遡り、未央と研究員との戦いから数時間前。
さらわれた未央を助けるべく、マリータ峠の抜け道から何とかメーヴェシティに到着した一行。
時刻は昼過ぎ、日差しが異様な程に激しい街の中。
ネネはひとまず、妹の様子を見に病院へと来ていたのだった…。

664: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:01:32 ID:y8c
~メーヴェ病院・しおんの個室~


ネネ「しーちゃん……調子はどう……?」

しおん「お姉ちゃん……? 帰ってきたの……? バッジ集めの旅、するって…」

ネネ「うん、バッジもちゃんと集めてるわよ。ほら、ここにちゃんと4つ……」

しおん「もう4つも……!? ……うっ…」クラッ

ネネ「あ、ダメよ、無理しないで、ほら、特製のきのみドリンクあるから……」

しおん「ありがと……何か急にね、こんな風に暑い日が続くようになっちゃって……そんな季節でもないし、やっぱりおかしいよ…」

ネネ「大丈夫。このお天気が元に戻りさえすれば、体の方もまた元通りよくなっていくと思うから……今、私の旅の仲間が情報を集めてるの。きっとどこかに何か原因が……」

しおん「……やっぱりお姉ちゃんは旅に出てもお姉ちゃんだね」

ネネ「ふふ、何? 私が旅に出る前とあまり変わってないって事?」

しおん「んーん。強くて優しくてかっこいい、大好きなお姉ちゃんのまんまなんだなって…」

ネネ「しーちゃん……」

ネネ「……必ずこのお天気は私達が何とかしてみせるから。辛いと思うけど、もう少しだけ、頑張るのよ。絶対、すぐによくなるから……」

665: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:01:50 ID:y8c
~~~~~


唯「いや~……見事に騙されたよね、ラボの場所」

千夏「まさか蜃気楼を使ったデコイとはね…。これだけの湿度と熱気じゃ、そういう現象が起きても仕方ないのだろうけれど……」

唯「やっぱさ、雨の砂漠の方に先に行ってみた方がいいんじゃないかなー…そっちにも絶対ラボはあるだろうし…向こうは雨なんだから、冷たくて多分気持ちいいよ?」

千夏「見通しの利かない雨の、広い広い砂漠の中からどうやってラボを探し出すのかが問題になるわよね、そうすると」

唯「そっかぁ……あ、そしたらさ、メーヴェの街にあるラボから通信モニターとかジャックして、砂漠のラボの場所を見つけて…」

千夏「そのラボが見つからないって話だったじゃないの。……ダメね、暑さで頭が回りそうにないわ…」

唯「またバチュルに探して貰っても、蜃気楼じゃなー…」ウーン

~~~~~

666: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:03:47 ID:y8c
加蓮「未央……それにネネの妹さんも……マジカ団……絶対許せない…」グッ

肇「逸る気持ちはわかります。ですが、こんな時だからこそ平常心で事にあたらなければ…まずは、情報を探るべきでしょうね」

忍「おーい!」タタタッ

加蓮「忍、ごめん、一人で行かせちゃって…何かわかった?」

忍「それが……病院の方だけじゃ受け入れが間に合わなくなったって、今民間の人、大きな建物に避難誘導してるって!」

肇「私達も、あまり長い時間無理はできませんね……ラボを探し出して、早期決着に賭けるしかないでしょう」

加蓮「肝心のラボの場所……確か、未央をさらったヤツは砂漠に雨がどうこうって……」

ネネ「ドルチェ砂漠の事ですね…」スタスタ

加蓮「ネネ、妹さんは…」

ネネ「大丈夫です、強い子ですから……早く事件を解決して、街に平穏を取り戻さないと…」

667: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:04:12 ID:y8c
唯「あれ? 加蓮ちゃん達?」

加蓮「唯!?」

唯「わぁ、やっぱ加蓮ちゃん達だ!また蜃気楼で見間違えたのかと思って焦ったよ~」

肇「この方は確か……以前トーナメントで…」

加蓮「うん。私がボロ負けした相手」

唯「やほやほ~。ゆいでーす!あと、こっちは親友のちなったんね」

千夏「それはニックネームでしょう、唯ちゃん。…ボンジュール。千夏よ、よろしくね」

ネネ「よろしくお願いします。確か私、街で何度かお顔を見たことが…」

千夏「私もこの子もメーヴェ住まいだもの。…と言うことは、貴女も?」

ネネ「はい、メーヴェ出身で、今は旅の途中です……けど…」

加蓮「あいにく、のんびり話してる時間、ないんだよね……仲間がマジカ団ってのにさらわれてさ…」

唯「マジカ団に!?」

千夏「……不思議な縁もあるものね、私達もマジカ団に用があるの」

肇「それは……やはり、この日照りと関係が……?」

唯「そこまでわかってるなら話早いよね。実はさ、ゆい達、マジカ団のラボを壊して回る旅をしてるんだ~」

忍「壊して回る旅って……何かとんでもない話だね、それ…」

加蓮(ラボを壊して回る……? それに、前に戦った時のあの強さ……この子、何者…?)

668: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:04:31 ID:y8c
千夏「とりあえず、落ち着ける場所で話がしたいけど……生憎どこもかしこも定員オーバーなのよね、病人と、避難した民間人で…」

唯「せめてラボの場所が特定できたらなー…」

肇「先程仰っていたと思うのですが……蜃気楼がどうとかって……」

千夏「ええ。ポケモンを使ってラボを探していたのだけど、蜃気楼で作られた偽物だったのよ。探していたポケモンの方も、流石に暑さに耐えられなくて、無理に働かせるわけにもいかず、立ち往生…」

忍「蜃気楼って、つまりマボロシみたいなものだよね…」

肇「この暑さと湿度……それに、そのマジカラボが天候の研究をしている施設なら……充分、ありえる事態ではないかと…」

669: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:04:58 ID:y8c
加蓮「なら、動き回って闇雲に探すより、何か方法を見つけたほうがいいかもしれない……でも、仲間が攫われたのは砂漠の方みたいなんだよね……」

千夏「ドルチェ砂漠のラボなら、それこそ広い砂漠を雨の中闇雲に探すことになるわね。寒暖差も激しくなるし、雨で体力も奪われる……焦る気持ちは理解できるけど、正確な場所を特定してからの方が効率は良くなるはずよ」

唯「メーヴェにある日照り起こしてるラボからなら、通信用の機械で多分場所とか特定できるはずなんだよね」

ネネ「…つまり、纏めると…」

忍「この街のラボを早めに見つけて、そこから日照りを止めたり砂漠のラボの場所を特定して動くのが一番近道、って事だね」

加蓮「けど、そうは言っても探すのに時間はかけられないし……」

670: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:05:15 ID:y8c
早苗「あら、あなた達ー、こんなところで話し込んでたら熱中症になっちゃうわよー?」タタタッ

加蓮「え、早苗さん?」

早苗「ありゃ、キミ、確かマギアシティの…」

肇「お知り合いの方ですか、加蓮さん」

加蓮「マギアシティでマジカ団のラボを潰した時、色々お世話になったおまわりさんだよ。…でも、何でメーヴェに」

早苗「事件あるところにおまわりさんアリってね。この街はホラ、マギアシティから直通で列車も走ってるから。事件と聞いて、居ても立っても、ってね」

ネネ「なら、私達のラボ探しに協力して貰えませんか? この街のおかしな天気も、マジカ団の仕業らしくて……」

早苗「それ、本当に?詳しく話を聞かせて貰えるかしら」

ネネ「はい、ええと…実は…」

~~~~~

671: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:05:32 ID:y8c
早苗「ナルホドね。せっかく見つけ出したラボがまさかのマボロシだった、と…」

唯「これ以上探すにも、バチュルに無理させられないしなぁ……」

早苗「そういうことなら、ますます早苗さんにお任せ案件ね。出てきなさい、ガーディ!」ボウン

ガーディ「ワウッ!」

早苗「この子のハナなら、少なくとも幻に惑わされる事はないと思うわ。ほのおタイプだから暑さにも強いしね。…後は…」ガサゴソ

肇「それは…?」

672: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:06:09 ID:y8c
早苗「以前押収した…というより、不審な団員にガーディが噛み付いて引きちぎったローブの切れ端よ。特殊な匂い…薬品だか、毒物だかの匂いが染み込んでるから、仮に同じ組織のものなら、この匂いのする方を辿れば多分だけど……」

千夏「可能性が見えてきたわね……ラボが見つかれば、この状況も打開できるはず」

早苗「なら、早速だけどガーディ!『かぎわける』で匂いを追跡して!」

ガーディ「ワウッ!」クンクンクン…

ガーディ「ワンッ」タタタッ

早苗「さ、行くわよ皆!事件があたし達を呼んでるわっ!」タタタッ

ネネ「追いかけましょう!」

忍「オッケー!マジカ団だか何だか知らないけど、さっさとやっつけて手がかりゲットだよ!」

加蓮「まろ!」ボウン

まろ「チル!」

加蓮「…ごめん、峠で雨に打たれて、流石に体力的に走るとヤバそうだから……」

肇「大丈夫ですよ、まろちゃんの背中で少し休んでください。きっと加蓮さんの力も必要になりますから」

加蓮「うん。私も流石に、黙って寝てるわけにはいかないしね…まろ、乗せてくれる?」

まろ「チルル!」

加蓮「よし……じゃ、空から!」

まろ「チル!」バサァッ…

肇「私も、後を追わないと…!皆さん先に行ってしまったみたいですけど…まろちゃんの飛んだ方に行けば大丈夫ですね…!」タタタッ…

~~~~~

673: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:06:32 ID:y8c
~街外れの森・ラボ付近~

スリープ「リープゥ!」

ムンナ「ムワワン…」

マーイーカ「マイッカ!」

千夏「アタンデ(待って)!催眠術を使うポケモンの群れ……おそらく、この先にラボがあるはず……」

ネネ「なら、一気に突破します!ハナちゃん!」ボウン!

ハナちゃん「ソウソーウ!」ワサッ

ネネ「この日差しなら……!お願い!『ソーラービーム』っ!」

ハナちゃん「フッシー!」ビイイイイイイム!

……チュドーン!!

ムンナ「ムワワ…!」

スリープ「プヒィィ!」

マーイーカ「イッカ!イッカ!」

※ポケモンの群れは逃げ出した……。

忍「す、すごい威力……皆逃げてっちゃった」

千夏「天候が日照りの時のソーラービームは、本来必要なチャージの時間がゼロになる……威嚇射撃にはもってこいの技ね」

ネネ「流石にお日様が隠れる室内だと撃つのに時間がかかっちゃいますけど……露払いくらいなら!」

ハナちゃん「ソウソウ!」

674: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:07:04 ID:y8c
早苗「頼もしいわね!ガーディ、ポケモンがいたって事はこの辺りのはずよ!」

ガーディ「ワウッ!」クンクンクン……

ガーディ「……バウ!」チョイチョイ

早苗「…バウ、って……これはただの木じゃない、探してるのはラボよ、ラボ」

肇「いえ……この木、ただの木じゃありません……周りの木と明らかに色味が違います」

肇「……これは、木の幹にここだけ押せそうな膨らみが……」

唯「わかった!ヒミツのスイッチ的なヤツだ!」

加蓮「よっ…と!」スタッ

ネネ「加蓮さん!まろちゃんも!」

まろ「チルル!」

加蓮「空から私達でゴッドバードを使っても良かったんだけど、手柄はネネに横取りされちゃったかな、今回は」フフッ

ネネ「はい、今回は私も、欲張らせて貰います。負けられない理由なら、ありますから」

早苗「これで全員よね?じゃあ、行くわよ…ポチッとな!」ポチッ

ガゴゴゴゴゴ…

675: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:07:18 ID:y8c
加蓮「木の周りの地面が揺れて……?」

肇「地震……いいえ、この地面自体がエレベーターになってるんです!」

千夏「つまり、ラボは地下にあったのね……探しても見つからないわけだわ…」

ネネ「…あ…この木、上の方よく見たら……」

忍「アンテナ、付いてるね……かなりわかりにくく偽装されてるけど」

加蓮「色々と、ここで間違いなさそうだね…後は、この先のラボを調べれば…!」

ネネ「…待っていてね、しーちゃん…!」

~~~~~

676: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:07:47 ID:y8c
~マジカラボダンジョン・メーヴェ支部~

唯「わー、広いし涼しいーっ!地上はあんなにあっついのにー…」

千夏「まぁ、地下も同じように暑かったら彼等も研究どころではないでしょ」

ネネ「ひとまず皆さん、これ、特製のきのみドリンクです、良かったら…」

加蓮「助かるよ、まだヘバッてなんていられないしね」

早苗「でも、流石にちょっとぬるいわね……キンキンに冷えたルービーが飲みたいところだけど……そのためにもまずはここの制圧よね、腕が鳴るわ!」

肇「…そう言えば、ここに外国語で書いてあるのは施設名でしょうか……ええと…」

千夏「マジカラボダンジョン……つまり『研究所兼地下牢』と言ったところね」

早苗「地下牢…ね、上等だわ、全員お縄にしてホンモノの地下牢に叩き込んでやるわよ」

ネネ「通路がこんなに広々としてるのは…天井も高いですし…」

千夏「天候を変動させる、にしても…街の中は生半可な暑さではなかった…きっとエネルギーを一度に多く吸収できるよう、大型のポケモンも運搬できるようにしているのね」

忍「完全に利用する道具としてしか見てないってわけだね……マジカ団……!」

677: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:08:11 ID:y8c
千夏「……さて、これは私からの提案なのだけど」

唯「どしたん、急にかしこまっちゃって」

千夏「これだけ本格的に作られたラボは私達も初めてよ。どんな罠や敵がいるかわからない」

千夏「私達のここでの目的は2つ。まず1つは日照りの解除。どこかにポケモンのエネルギーをドレインする機械があるはずよ」

加蓮「マギアで見た、あれか……じゃあもしかしたら、途中にポケモンが捕まってる部屋も……」

早苗「あるはずだけど、こう広いんじゃ、いちいち叩くのは効率悪いわね……」

千夏「だから、まずは吸収している大元のスイッチを止めて、ポケモンのエネルギードレインを解除する。これで外の日照りに関しては解決するはず」

肇「そして、2つ目は…モニタールームの制圧、ですよね」

千夏「ブラボー、正解よ。そこから砂漠のラボを探し出して、捕まった貴女達の仲間を救出に行く…どちらも迅速さが求められるわ」

千夏「提案というのは、1度メンバーを二手に分けて探索、どちらかが解決したらもう片方を援護、どちらかが罠にかかったらもう片方が救援に向かう……非効率に聞こえるかもしれないけれど、逆に1番確実だと思うわ」

678: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:08:44 ID:y8c
忍「確かに…ここまで来といて罠にハマったらはいオシマイ、ってのも笑えないよね」

千夏「ひとまず、どちらのチームにも感知能力の高いポケモンがいるとスムーズにいけるはずね…となれば」ボウン

ニャオニクス♂「ニャーオ!」

ニャオニクス♀「ンナー!」

千夏「危険が迫ると10トントラックすら軽々持ち上げるサイコパワー…このニャオニクスを互いのチームに一匹ずつ、でどうかしら」

早苗「私のガーディも、鼻はきくわよ。人やポケモンの気配があれば、逃さないと思うわ」

唯「ゆいのバチュルも、偵察ならお任せってカンジだし、じゃあゆいと早苗さんは別々に別れたほうがよくない?」

千夏「となると……この人数なら3:4に別れるから……なるべくなら、チームワークが乱れないパーティーにした方がいいわね」

唯「なら、ゆいはちなったんについてく!あと一人は……」

ネネ「私が一緒に行きます。人数が少ないのなら、回復の手段があったほうがいいと思うので」

加蓮「となると、残りはこっちか。早苗さん、よろしくね」

早苗「任せてちょうだい!こう見えてポケモンバトルの方もそれなりなんだから!」

忍「じゃ、やる事は決まったね!慎重かつ大胆に、ガンガン制圧していこう!」

~~~~~~

679: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:09:04 ID:y8c
Side 加蓮チーム

ニャオニクス♂「ニャーオ…」ミョワワワ……

加蓮「扉だらけ……無闇に入ったら罠だった、とかだと面倒だよね…」

肇「こちらは人数的には多いですけど、回復力には乏しいですからね……」

早苗「一気に敵の頭を見つけてガツンと叩く!これが1番なんだけど……」

ニャオニクス♂「ニャーオ」チョイチョイ

忍「あの扉が怪しいみたいだけど……それとは別の、一番奥に見える大きな扉は何なのかな」

肇「いかにも奥に何かありそうですけど……」

加蓮「罠もあったりして…ね」

早苗「じゃあまずはこの子の言う通り、あの部屋から調べてみましょ!」サササッ

早苗「………鍵、かかってるわね」ガチャガチャ

忍「み、皆で体当たりするとか!」

加蓮「流石にそれは……」

早苗「ま、そこはお姉さんにお任せあれ、ってね。出てきなさい、ゴーリキー!」ボウン

ゴーリキー「リッキ!」ガッツポ!

680: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:09:27 ID:y8c
早苗「じゃ、ちょちょいっとやっちゃいなさい♪『爆裂パンチ』!!」

ゴーリキー「ゴーリキッ!」バゴオン!

中にいた研究員「ひ、ひぃっ!?」

早苗「さぁーて、どんな風にとっちめてあげようかしら?」パキポキ…

研究員「く、卑怯だぞ!鍵もないのに無理やり扉を破るなんて!人の風上にも置けないな!!」

忍「それ色んな意味でこっちの台詞!!!」

研究員「く…ならば仕方ない……ここは一旦逃げ……」

早苗「アリアドス!」ボウン

アリアドス「リアー!」シュルルルル

研究員「ぐうっ、身動きが!?」

早苗「粘性の捕縛用『クモのす』よ。大人しくお縄を頂戴しなさい!」

加蓮「つ、強い……」

肇「お見事です!流石おまわりさんですね…!」

早苗「ま、これくらいは基本だものね…さぁーて、正直に吐くこと吐かないと、アリアドスの糸とゴーリキーの怪力で…キュッ!とシメちゃうわよ~…」ギロ…

研究員「ひ、ひいっ、吐きます言います、だから痛くしないでぇっ!」

~~~~~

681: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:09:42 ID:y8c
早苗「ナルホド、あそこの扉に真っ直ぐ向かってたら今頃はセンサーにひっかかってポケモンに囲まれてた、と」

忍「あった、解除用の機械ってこの壁のパネルだよね!」

肇「パスワードは確か先程の研究員さんから…ええと、『飛んで火にいるウルガモス』……でしたね」

ピコーン! ガガガガガ……

『解除コードを確認しました。センサー解除、扉が開きます』

早苗「まずは第1関門突破ね……この先にも罠があるはず。頼んだわよ、ニャオニクス君!」

ニャオニクス♂「ニャーオ!」

~~~~~~

682: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:10:05 ID:y8c
~Side ネネチーム~

唯「デンリュウ、かみなりパンチ!」

デンリュウ「パルパルウ!」バキィッ

ドククラゲ「ギギギギギ!」バリバリバリ!

ネネ「アマちゃん!トロピカルキック!」

アマちゃん「マージョッ!」ゲシッ!

ヒトデマン「ヘアッ!?」バコォン!

千夏「このポケモン達……操られているわね、さしずめマジカ団の尖兵といったところかしら」

ネネ「それに……油断すると『ちょうおんぱ』や『あやしいひかり』で混乱状態にさせられてしまいますし……」

唯「混乱したらポケモンを交代させればいいんだよ、ゆい達3人いるんだし、フォローしあって行けば怖くないって♪」

ネネ「…………あと、敵に水ポケモンが多いのは……やっぱり…」

千夏「メーヴェ港のポケモンをそのまま操って使っているのね………卑怯なやり口……」

ネネ「急ぎましょう、もしかしたら操られたポケモンもこの施設の機械で解放できるかもしれませんし!」

683: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:10:34 ID:y8c
千夏「ええ、そうね……ただ、1つ気がかりなのは…団員の姿が見えないところ」

唯「…やっぱアレかな、志希ちゃんが帰ってきた時に言ってたヤツ…ゆいにはちょい難しかったから、ちなったんにチョクで通話繋いで聞いてもらったんだけど」

千夏「マジカ団の構成人数が未だにハッキリしないのも、きっとそれが原因よね…」

ネネ「ええと、それは、どういう……?」

唯「何かね、マジカ団のしたっぱの人達って、実際にはマボロシかもしれないんだって」

ネネ「ま、幻……ですか?」

千夏「あくまで仮定ではあったけど、ここで自律して戦うポケモン達、野生のポケモンにしては統率がとれすぎてる。まるで…そう、隣にトレーナーでもいるみたいにね」

ネネ「でも、何のために幻なんか……」

千夏「組織の規模を大きく見せるためのカムフラージュ……おそらくはね」

千夏「裏から軍団を統率する幹部や研究員は本物の人間でしょうけど、少なくとも……人材戦力そのものはまだ充実してはいないはず」

千夏「要するに、裏で大まかな方針を命令する幹部はいても、直接個別に命令を下す現場の部隊長が空席の状態………つけこむなら、そこね」

唯「つ、つまりどういうこと……?…うう、アタマこんがらがってきちゃったよ~」

ネネ「…つまり、操られたポケモンの数は多くても、実質的には大元の幹部さんを叩けば何とかできるって事ですよね」

千夏「そうね。初めからもう少しわかり易く説明すべきだったのだけど……ゆいちゃんには動きながらこうして実体験させた方が手っ取り早い気がして…」

684: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:11:03 ID:y8c
唯「ナルホド☆早い話、ここのボスっぽい人倒しちゃえばそれでポケモンも日照りも全部何とかなっちゃうわけだ!やっぱしちなったんアタマいいなぁ~…」

千夏「そうして自然と核心だけを考えられるのはゆいちゃんの長所ね…。逆に言えばそこに辿り着くまでは…!」

シェルダー「シェッダ!」カタカタ

ゴルダック「ゴダッ!」タタタタ

ネネ「相手がみずタイプなら、任せてください!ハナちゃん!」ボウン

ハナちゃん「ソウソウ!」

ネネ「いきます!ハナちゃん、やどりぎのタネ!」

ハナちゃん「ソウフッシ!」シュポポポン!

シェルダー「シェダ!?」シュルル!

ゴルダック「ゴヴァ!」シュルル!

ネネ「ごめんなさい、通してもらいます!アマちゃん、トドメのトロピカルキック!」

アマちゃん「ジョーマッ!」ピョン……ドコォ!ゲシッ!

シェルダー「シェッダ!」バシィ!

ゴルダック「ゴヴァ……!」バタン

ネネ「よし……よくやったわ、二人とも!」

ハナちゃん「フッシ!」

アマちゃん「マージョ」フフン

唯「スゴイスゴーイ!ネネちゃんもケッコーやるじゃんっ♪」

685: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:11:20 ID:y8c
千夏「確かに見事な手際ね…けれど、勝利の余韻に浸るにはまだ早いわよ。早く大元を叩かないと、これをいつまでも繰り返す事になる」

ネネ「はい、急ぎましょう!前衛は私達が!皆さんは力を温存していて下さい!」

ハナちゃん「フッシ!」

アマちゃん「ジョーマッ!」

千夏「頼もしいわね…なら、お言葉に甘えさせて貰うわ」

唯「その分、敵のボスが出てきたらゆい達のコンビネーションでこてんぱんにしちゃうもんね!」

ネネ「…じゃあ、一気に突破します!……しーちゃん、すぐに終わらせるから…!」

~~~~~~

686: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:11:50 ID:y8c
~Side 加蓮チーム~

肇「ガマかみさん!『とびはねる』攻撃です!」

ガマかみさん「ゲロォ!」ピョーン!

※ガマかみさんは空高く飛び跳ねた!

加蓮「さっさと通してもらうよ…!ぱん、『つるぎのまい』!」

ぱん「サンサン…サンッ!」クルクル……シャキーン!

※ぱんの攻撃力がぐーんとあがった!

ハスブレロ「ブレロロォ!」タタタタッ…

サニーゴ「サニニ!」ピョコピョコ

早苗「ゴーリキー、『怖い顔』!」

ゴーリキー「リキッ……」ギロォ……

ハスブレロ「ブロッ……!」ビクウッ

サニーゴ「サニィ!」ビクウッ

※ゴーリキーの怖い顔で相手の素早さが下がった!

早苗「さぁ、ぶちかましちゃいなさい、二人とも!」

肇「はい!『とびはねる』…急降下!!」

ガマかみさん「ゲーロッ!」ヒュウウウ……ゲシィッ!

ハスブレロ「ブロォッ!」バタン……

忍「ひこうタイプの技…水、草タイプのハスブレロには効果抜群だね!」

サニーゴ「サーニニニニ!」ドシュシュシュ

早苗「とげキャノンが来るわよ!」

加蓮「大丈夫、私達が!ぱん!『まるくなる』!」

ぱん「サンッ!」ピョーン カキキキキン!

サニーゴ「サニィ!?」

687: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:12:24 ID:y8c
加蓮「ぱんの防御力、小さいからって甘く見ないでよね!今度はこっちの番!ぱん、『アイアンヘッド』!」

ぱん「サーン…サンドーッ!」ゴチーン!

サニーゴ「サニィ……!」パタリ

肇「攻防一体……お見事です、加蓮さん!」

加蓮「肇もね!流石ガマかみさん、頼りになる!」

胸を叩くガマかみさん「ゲロォ♪」ドンッ

肇「早苗さんも、サポート、ありがとうございます。おかげで作戦通りの連携でいけました」

早苗「何の何の。攻めるばかりが戦いじゃないものね! さ、あと少しよ!」

加蓮「ニャオニクス、この辺り、どうなってる?」

ニャオニクス♂「ニャァ……」ミョワワワワ

ニャオニクス♂「……ニャァ?…ニャニャ!」

肇「ふむふむ……どうやら、ここに並んでいる扉の中は、全て同じ反応があるみたいです…分身…幻影でしょうか……」

早苗「罠のニオイがプンプンするわね……なら、ガーディ!」ボウン!

ガーディ「ワオッ!」

早苗「さぁ、本物はどの部屋か『かぎわける』のよ!お願い!」

ガーディ「ワフ…」クンクンクン……

ガーディ「……ワンッ!」チョイチョイ

忍「あそこ、扉じゃなくて壁じゃない……?」

早苗「ははぁ……ピンと来たわ!ゴーリキー、『かいりき』で動かしてみて!」

ゴーリキー「リキッ!」ケイレイッ

ゴーリキー「リキッ……」ガシッ……ググググ……ガコン!

※ゴーリキーは壁面の下から壁を持ち上げた…!

688: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:13:22 ID:y8c
忍「隠し階段!」

早苗「どうやら、お目当ての部屋はこの先みたいね…みんな、準備はいいかしら?」

バタァン!

ドククラゲ「ギギィ!」

ケイコウオ「ケィケィ」

ヨワシ「ヨワワ…」

バスラオ「バスバッス!」

加蓮「げ……扉無視されたからって自分達から出てきたよ……」

忍「なら、ここは私が!ツガル!」ボウン!

ツガル「マケンカ!」フンス

忍「特訓の成果、今こそ見せる時っ!『かみなりパンチ』っ!」

ツガル「ケーンカッ!」バチィッ!

バスラオ「バスゥッ!」バリバリバリ!

689: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:13:38 ID:y8c
忍「ここから先は…」

拓海『常に前に立って、仲間のピンチは自分が何とかする。何が何でも根性で喰らいつく。そういうヤツのための技だ』

忍「…誰も通さない!」

ツガル「ケンカッ!」

加蓮「忍……」

忍「殿(しんがり)はアタシが引き受けた!皆は先に!」

ツガル「ケンケン」コクン

早苗「行きましょう、忍ちゃんの覚悟、確かに受け取ったわ!」タタタッ

肇「お頼みします!」タタタッ

加蓮「……信じてるから!」タタタッ

忍「…へへ。さぁーて……それじゃあその信頼に、しっかり応えてみせますか!」

ツガル「ケンカッ!」

~~~~~

690: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:14:04 ID:y8c
Side ネネチーム

ネネ「はぁ……はぁ……ここで、行き止まりみたいですね……」

唯「ネネちゃん、ちょいバテ気味なんじゃない…?だいじょぶ?」

ネネ「はい、だいじょぶです!こんな時の為の特製ドリンクですから……」ゴクゴク……

ネネ「倒れるなら…全部終わらせて、その後です!」

唯「ネネちゃん……」

千夏「無駄よゆいちゃん。彼女、覚悟を決めてここに来ているのだから……妹さんと、仲間を必ず救い出す……そのための覚悟をね」

ネネ「……ふぅっ……さぁ、どこかに入り口があるはずです!千夏さん、お願いします!」

千夏「ニャオニクス、わかる?」

ニャオニクス♀「ニャーオ…」ミョワワワワ

ニャオニクス♀「ンナオウ」テクテク

ニャオニクス♀「ニャーオッ」ポチッ

ネネ「壁に…見えないスイッチが……」

ガゴゴゴゴ………ガコン!

千夏「どこまで行っても幻覚幻影蜃気楼……いい加減終わらせたいものね」

唯「でも、スイッチ隠してるって事は、こっちでアタリっぽいよね!ニャオニクス、お手柄だぞ~♪」ナデナデ

ニャオニクス♀「ニャオウ♪」

ネネ「……陽の光がさしてます、階段の上の方からでしょうか……」

691: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:14:25 ID:y8c
千夏「天候実験のために、天候に干渉しやすくしているのかもね。私達は地下から潜入したわけだけれど……ここを登ればメーヴェの入り口、山道近くに出るはず……おそらく、海に面した崖をくり抜いてサンルームにでもしてるんでしょう」

ネネ「ついにここまで……!あの……お二人とも、これを…!」

千夏「これは……きのみね」

唯「え、いいの? 唯達、ネネちゃんががんばってくれたから全然疲れてなんかないのに…」

ネネ「だからこそです。お二人をここまで無傷で連れてこられた……この先の戦いで、回復はきっと役に立つはずですから…頼りにしています…!」ペコリ

千夏(かなり無理をしてるわね……この子、そうまでして……)

692: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:14:40 ID:y8c
千夏「メルシー(有難う)。これは大切に使わせて貰うわ。唯ちゃん、ここまでして貰ったからには……」

唯「うん、ゆい達でバッチシ終わらせよ!ネネちゃんも、ホントさんきゅーね!」

ネネ「はい…! 行きましょう!」

>>3人は階段を登っていった……


~~~~~~

693: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:15:04 ID:y8c
~メーヴェ・マジカラボダンジョン・実験室~

幹部研究員1「何者だ!」ボウン!

バオッキー「バオッキ!」ボウッ…

幹部研究員2「よくもこんなところまで3人でノコノコと……」ボウン!

コータス「クォオオオ!」プシュー!

千夏「敵は貴方達2人だけ?…拍子抜けね」

唯「なら、唯達だけで一気にキメちゃえそうだね!ちなったん、いつものコンビネーションで!」ボウン!

サンダース「ダースッ!」バチバチ

千夏「了解よ。ニャオニクス、戻って」シュウウウ

千夏「ニンフィア!」ボウン!

ニンフィア「フィア♪」

幹部研究員1「ふん…イーブイの進化系2匹か。ブースターであれば少しはマシな戦いができたかもな」

幹部研究員2「ここの天候は日照り……炎タイプの技の威力が上がっている!そう簡単に施設を好きにさせると思うな!」

唯「それはこっちのセリフー!先にゆい達のメーヴェシティをめちゃくちゃにしといて何様ってカンジ!サンダース『電磁波』!」

サンダース「ダースッ!」

幹部研究員2「『まもる』です、コータス!」

バリバリバリ……パキィン!

694: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:15:36 ID:y8c
唯「あちゃー……防がれちゃった…!」

幹部研究員1「バオッキー、『弾ける炎』!」

千夏「ニンフィア『光の壁』!」

ニンフィア「ニンフィ!」ピカァアアン…

幹部研究員1「何っ……だが、それでも威力は上がっているのだ!」

ニンフィア「ニンフィ…!」ボウッ…!

サンダース「ダスッ…」ボウッ…!

ネネ(炎が弾けて、2体同時に攻撃を……!唯さん、千夏さん…!)

千夏「技の威力を高める方法は…何も天候だけに限った話じゃないはずよ。例えばそう……ポケモンの特性。……こういうのはいかがかしら?」

ニンフィア「フィィ……フィアアアアア!!!」グワンッ!

バオッキー「バオッキ!?」

コータス「コタッ!」

幹部研究員1「な……今のはノーマル技の『ハイパーボイス』……タイプ一致でもないのに何故これ程の威力を……!」

千夏「ニンフィアの特性、『フェアリースキン』。ノーマル技に限り、ニンフィアと同じフェアリータイプの技にタイプが変更される。タイプ一致の全体攻撃よ、ボナペティ(召し上がれ)」

幹部研究員1「く……だが、この施設を奪わせはしないぞ!バオッキー、サンダースに『かみくだく』攻撃だ!」

唯「いいのかな~、ウカツに電気タイプのサンダースに近付いたりして…」ニヤリ

幹部研究員1「何っ…」

695: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:16:04 ID:y8c
唯「サンダース、至近距離から『10万ボルト』!」

サンダース「サーンダーッ!!」バリバリバリ!

バオッキー「バキャアアア!!」バリバリバリ!

幹部研究員1「しまった!バオッキー!」

バオッキー「バキャア…」バタン

唯「だから教えてあげたのに~。やーいやーい♪」

幹部研究員1「ぐぬぬ……!」

ネネ「凄い……!」

幹部研究員2「ふ、だがこちらにはまだコータスがいる!光の壁で炎が通らないなら……コータス、『のしかかり』だ!」

コータス「クォオオオ……!」ピョーン……

千夏「レ・スタール……遅いわ」

ニンフィア「フィィィ……!」シュウウウ……

千夏「迎え撃ちなさい!『シャドーボール』!」

ニンフィア「フィアッ!」シュン!

コータス「クォ……」

幹部研究員2「しまっ……かわして……」

千夏「……そちらのコータスは空中にいるのよ。身動きなんて取れないでしょう?」

ボシュウウウウウ!!

696: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:16:24 ID:y8c
コータス「クォオ……」バタン……

幹部研究員2「ぐ……おのれ……おのれええ!」

ネネ「ハナちゃん!」ボウン!

ハナちゃん「フシッ!」

ネネ「お願い……『ねむりごな』!」

ハナちゃん「フシャアッ」ワササッ!

幹部研究員1「ぐっ……これは……」バタン

幹部研究員2「しまっ……油断した……」バタン

ネネ「…そう、私もいますから…!」

千夏「…天候操作のスイッチは……これね」ガコン

シュウウウ………

※日差しがみるみる弱くなっていく……。

697: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:16:46 ID:y8c
唯「よっしゃー!ボス戦クリアー!やったね、ちなったん、ネネちゃん!」

千夏「結局、きのみは貰い損になってしまったけれどね…。二人とも、ありがとう」

ネネ「いえ、こちらこそ…お二人や仲間の皆がいなかったら、私だけじゃとても……」

「キリキザン、『不意討ち』しなさい」

サンダース「ダスッ!」ゲシッ!

唯「え、サンダース!」

サンダース「ダスッ…」バタン

千夏「ゆいちゃんのサンダースを一撃で……? 一体、どこから……」

藍色ローブの幹部「ごきげんよう、皆さん。メーヴェのラボにようこそ」ツカツカ…

千夏「そう、裏から様子を見ていたのね……あなたは?」

インディゴ「ああ、名乗るのを忘れていましたね。私の名はインディゴ……コードネームで失礼ですが…マジカ団、幹部のインディゴと申します」

千夏「インディゴ……『藍色』のローブに仮面…随分と暑そうな格好をしているのね」

698: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:17:09 ID:y8c
インディゴ「そうですね。なので困っていたのですよ……日差しが強過ぎると流石に、この服装では戦いづらいでしょう?」

唯「で、その幹部さんが今さら出てきてどーいうつもり? 勝負ならもうついてるでしょ!」

インディゴ「確かに、そこでだらしなく転がっている研究員達には後でお仕置きが必要そうですが……この私がまだ残っているのをお忘れなきよう」

キリキザン「キリキリ…!」

千夏「敵は鋼タイプ……フェアリータイプのニンフィアでは不利ね……」

唯「なら、ゆいのデンリュウで…!」

インディゴ「マニューラ、『どろぼう』」パチン

マニューラ「ニュラッ」ササッ

唯「あっ!ゆいのモンスターボールがっ!人のものを盗ったらどろぼうなんだよーっ!」

千夏「卑怯な真似を……!それなら、ここはニャオニクスで……」

インディゴ「おっと、下手に動くとこのボールの開閉スイッチを破壊しますよ」

千夏「……っ!」

ネネ「ハナちゃん、ねむりごなで……」コソコソ

インディゴ「そこの貴女、聴こえていますよ」

ネネ「ひっ…」ビクッ

699: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:17:32 ID:y8c
インディゴ「まぁ、この仮面は防塵の役割も果たしていますから、私に直接ねむりごなを振りまこうがまるで効果はないんですけどね…」フフフ…

ネネ「目的は……あなた達の目的は何なんですか!どうしてこんな……大勢の人やポケモンさん達が苦しむようなこと……」

インディゴ「どうしてそれをわざわざ語る必要がありますか?……仮にも。私はマジカ団の幹部ですよ」

ネネ「く……質問に答えて下さい!私は……私達はこの街の住民です! 苦しんでいる人達の中には……大切な家族が……! かけがえのない大事な人達がいるんです!!」

インディゴ「…話になりませんね。どうしても口を割らせたいと言うのなら……ゲームをしましょうか」パチン

キリキザン「キザッ」

マニューラ「ニュラッ」

インディゴ「そこのお二方、あなた方は手出し無用です。お嬢さんが私に一人で勝つことができたのならば…多少の秘密くらいはお教えしても良いでしょう。勿論、盗んだモンスターボールもお返しいたしますよ」

千夏「なっ……」

唯「この人……この戦いを…ゲームか何かみたいに…!」

700: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:18:01 ID:y8c
ネネ「…わかりました、その勝負、お受けします」スッ……

唯「ネネちゃん、これどう考えてもワナだって!」

ネネ「……わかっています。わかっているんです、頭では」

唯「ネネちゃん……」

千夏「く……私には何もできないの…?」

ネネ「アマちゃん!」

アマちゃん「マージョッ!」スタッ

インディゴ「キリキザン、行きなさい」パチン

キリキザン「キ…ザン!」シャキン

ネネ「……この戦いは……絶対に負けられない!」

インディゴ「フフ……良い覚悟ですね。ですが……その覚悟ごと、微塵に切り裂いて差し上げますよ。キリキザン『ハサミギロチン』!」

キリキザン「キザァアアン」シュオオッ

千夏「あの技は一撃必殺……当たれば終わりよ!」

ネネ「…落ち着いて……アマちゃん、ターン&ステップ!」

アマちゃん「アマジョ!」クルッ ストッ!

キリキザン「キザッ!」ジャキッ スカッ

唯「今の動き…!」

千夏「紙一重で攻撃をかわした……!」

ネネ「そのまま『フラフラダンス』!」

アマちゃん「マージョッ マジョマジョーッ!」フラフラ フラフラ

キリキザン「キザッ」フラフラ フラフラ

キリキザン「キザァ……」フラフラフラフラ……

701: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:18:29 ID:y8c
インディゴ「混乱させられましたか……ですが、守りの硬い鋼タイプのキリキザンに有効打はあるのですか?」

キリキザン「キザッ!キザッ!」ベシッベシッ!

※キリキザンはわけもわからず自分を攻撃した!

インディゴ「この程度のダメージで、よもや勝った気になられてもね…フフフフッ……」

ネネ「笑っていられるのも、今のうちですよ……アマちゃん、飛んで!」

アマちゃん「マージョッ!」

インディゴ「アマージョお得意のトロピカルキックですか?…そんな技じゃ致命打には…」

ネネ「私達……そう甘くはありませんよ!」

アマちゃん「マージョッ!」ヒュウウウ……

ネネ「アマちゃん!『飛び膝蹴り』!!」

インディゴ「なっ……!」

アマちゃん「マージョッ!!」ドッゴオオ!

キリキザン「キザァア……!」

千夏「あく・はがねタイプのキリキザンには4倍弱点……必殺の格闘技ね」

キリキザン「キキ……キザァ……」グググ…

インディゴ「フフ、ですが…持ちこたえましたよ。私とて同じ手はもう喰らいません…さて、どうするのです?」

ネネ「こうするんです! ハナちゃん!」

ハナちゃん「フシャアッ!」パラパラパラ……

インディゴ「な……いつの間にキリキザンの背後を……」

702: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:18:52 ID:y8c
ネネ「私がアマちゃんを出した時、ハナちゃんはまだボールに戻っていなかったんです。…そもそも、一対一で正々堂々戦おう、なんて条件、出されていませんよね」

キリキザン「キザッ……」スカー……

インディゴ「成程……これは迂闊でしたね……」

ネネ「その迂闊さが、あなたの敗因です!アマちゃん、『ローキック』!」

アマちゃん「マージョッ!」タンッ……クルクルクル……ドコォッ!

キリキザン「キザァアアン!」ドカアアアン!

キリキザン「キザッ……ザン…」バタン

インディゴ「……成程、確かに…」シュウウウ……

インディゴ「ただ、甘いだけの方ではないようですね。戦場を広く見ている…」

ネネ「きのみだってそうでしょう?甘くて美味しいモモンのみもあれば、渋くて固くて食べづらい、カゴのみだってあります。草ポケモンの力を……私達の力を侮らないでください!」

唯「ネネちゃん……すご……」

703: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:19:13 ID:y8c
千夏(怒りで冷静な判断力を見失う人はたくさんいるけれど…彼女は怒らせるとかえって冷静になるタイプみたいね……それとも…この状況が彼女を成長させている…?)

インディゴ「ですが、このマニューラも同じように凌げますか?出来なければ……結局は同じことですよ!」

マニューラ「ニュラッ!」シャッシャッ

ネネ「ハナちゃん!『ねむりごな』……」

インディゴ「『こおりのつぶて』!」

マニューラ「ニュララララア!」カキキキキン……シュババババ!

ハナちゃん「フシッ! フシャアアア!」バシバシバシバシ!

ネネ「ハナちゃん!」

ハナちゃん「フシッ……フシャア…」バタン…

インディゴ「周囲の空気中の水分を急速冷凍させ、礫として素早く放つ先制技……状態異常にばかり頼ろうとするからそうなるのですよ」

704: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:19:42 ID:y8c
ネネ「ハナちゃん…ゴメンね……ゆっくり休んで…」シュウウウ

ネネ「後で、ご褒美にたくさんあまいミツをあげなくちゃ…ね、アマちゃん」

アマちゃん「マジョ」コクン

インディゴ「お喋りしてる余裕があるのですか?時間は待ってはくれませんよ!マニューラ『シザークロス』!」

千夏「危ない!あれはむしタイプの技…!」

ネネ「もう一度、ターン&……」

マニューラ「ニュラッ…」サササササッ

アマちゃん「ジョマッ!?」

ネネ「速い…!?」

インディゴ「チェック・メイト」パチン

ズバァン!

アマちゃん「マジョ………」クルッ

※アマちゃんは申し訳無さそうにネネの方を振り向いた…

ネネ「安心して、アマちゃん……絶対に負けないから……!」

アマちゃん「マジョ…♪」バタン……

ネネ「……お休みなさい、アマちゃん……ありがとう…!」シュウウウ

705: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:20:02 ID:y8c
唯「ネネちゃん……」

インディゴ「さぁ、これで後一匹、と言ったところですか?……返り討ちにして差し上げますよ」

ネネ「いいえ……勝つのは……」ボウン!

トロちゃん「ピーウス!!!」ズシン……!

ネネ「私達!! トロちゃん、背中に!」

トロちゃん「ピウス!」

※ネネはトロちゃんの背中に飛び乗った!

ネネ「飛んで!」

トロちゃん「ピウス!」バサァッ!

インディゴ「フ……空中戦のつもりですか…? 確かにこの研究所は大型のポケモンも運搬できるよう、広く高く部屋を作ってはいますが……トレーナーの貴女まで背中に乗って戦うとは、理解できませんね…無駄に怪我人を増やすだけなのでは?」

706: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:21:05 ID:y8c
ネネ「あなたこそ、私達の力を侮らないでください……さっき私はそう言ったはずですよね」スッ……

マニューラ「ニュラッ?」

千夏「あの手に持っているのは……きのみ?」

インディゴ「戦いもしないうちから回復の心配ですか?成程、背中にあなたがついていれば逐一きのみを与えて回復には困らないと……」

707: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:21:31 ID:y8c
インディゴ「空へ逃れたのも防戦の準備をしたかったという理屈ですね……強気に振る舞っていても、結局はもう後がないと、ご自分でよく理解しているというわけですか、フフフ!」

唯「ちなったん……このままじゃ……!」

千夏「アタンデ(待って)。…どうやら、そう心配する必要もなさそうよ」

ネネ「ふふっ……!」

トロちゃん「ピスピウス…♪」バサァッ

708: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:21:54 ID:y8c
唯「笑ってる……? 何で……」

千夏(インディゴはおそらく勘違いをしている……ネネちゃんは回復のためにきのみを持ち出したり背中に乗ったわけじゃない……)

ネネ「いくわよ、トロちゃん!まずは……これっ!」

トロちゃん「ピウス!」パクン……コオオオオ……

インディゴ「!? トロピウスの体が光り輝いて……」

ネネ「いきます!私達の新しい力……『自然の恵み』!!」

トロちゃん「ピスピーウス!」ゴオッ

インディゴ「何をする気かはわかりませんが……遅すぎる!ありったけの『こおりのつぶて』をぶつけてやりなさい!」

マニューラ「ニュララララア!」カキキキキン シュババババ!

トロちゃん「ピーウス!!」ゴオッ……ガキキキン!バキイン!

インディゴ「氷が弾かれた!?」

ネネ「『自然の恵み』はきのみからエネルギーを貰って技に転換する攻撃……今のトロちゃんの突撃は…『ヒメリのみ』で格闘タイプ!」

インディゴ「なっ……!」

709: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:22:26 ID:y8c
ネネ「きのみの知識なら……私達の独壇場です!ええええええいっ!!!」ギュン

トロちゃん「ピーウス!」ギュン!

マニューラ「ニュラッ…」メキッ……

マニューラ「ニュララア……!」ドゴオッ……!

インディゴ「く……マニューラ!」

マニューラ「ニュラッ……ニュラ……」フラフラ……

ネネ「そこまでです」スッ

※ネネは空を飛ぶトロちゃんの背中からきのみを掲げて見せた……

710: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:22:48 ID:y8c
ネネ「クラボ、フィラ、ウイ、ズリ、ブリー、ネコブ…それぞれどのきのみを使っても、あなたのマニューラの弱点をつく事ができます。それに……」

トロちゃん「ピウス」プチッ

※トロちゃんは首元の果物に混じって生えてきたヒメリのみを『収穫』した…

ネネ「私のトロちゃんの特性は『収穫』…1度使ったきのみを再利用することもできるんです」

インディゴ「成程……どうやら、私達の敗北に間違いない様ですね……」シュウウウ……

唯「す、すご……ホントに一人で、倒しちゃった……」

千夏「ええ……大したものね……本当に」

インディゴ「約束通り、まずはモンスターボールをお返し致しましょう」コロコロコロ……

※インディゴは奪ったボールを唯の方に転がした…

唯「…うん、ちゃんと皆のボール…!変なこととかしてないよね?」

インディゴ「はい、何も。それに……私達の目的についても話して聞かせる約束でしたね」

ネネ「……教えて下さい。マジカ団は…ジムリーダーを洗脳したり、天気のエネルギーを集めたり……一体、何が目的なのかを……」

711: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:23:07 ID:y8c
インディゴ「全てを語るには、おそらく時間はあまり残されていないでしょう。すぐに我々の同胞が増援に来るはずです。立場上、そんな中でペラペラ喋るわけにはいかないものでしてね」

千夏「なら、今話せる要点だけでも、手短にお聞かせ願えるかしら。元々実験を止めに来たのだから、情報は願ってもない副産物だもの。少なくても文句は言わないわ」

唯「ちなったん、この人捕まえた方が話速いんじゃ…」

千夏「ダメよ、あの余裕……おそらく一人でも逃げ果せるための何かを仕込んでいるわ」

インディゴ「中々の読みですね。マトモに相手をしていれば、私もタダでは済まなかったでしょう…」

712: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:23:29 ID:y8c
インディゴ「我々の目的はひとつ。あるポケモンを復活させる事です」

ネネ「ある……ポケモンを…?」

インディゴ「はい。そして、目的は…それ以上でもそれ以下でもない。私は幹部として、街や捕獲したポケモンへの被害が大きくなり過ぎないようにここに来たのです」

ネネ「え……?それは、どういう……」

インディゴ「我らが総帥は心の優しい人物です。本来ならポケモンの力でこのような被害を出す手段など、絶対に選ばなかったでしょう…ですが、選ばなければならない状況に陥ってしまった」

千夏「待って。それなら、他の地域でポケモンから無理やりエネルギーを絞り尽くしたり、息も絶え絶えになっているポケモンがいるのは何故?あなたの話と矛盾するのでは?」

インディゴ「末端の研究員までは統制仕切れていない現状がありましてね……我々の組織の構成員の実情は、あなた方にも大方、割れてしまっているのでしょう?」

713: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:23:57 ID:y8c
ネネ「幻影の団員と、洗脳した人やポケモンさん達……」

インディゴ「そして研究員と我々幹部、総帥。これが全てです。我々としては実験が行きすぎないように統制、監督する人員がどうしても必要でね……でないと、無為に犠牲を出すことになってしまう。それは、総帥の願いとは反するものなのですよ」

ネネ「…………その、総帥さんの願いって……あるポケモンを復活させるって言うのは…」

「インディゴ様ー!!」「インディゴさまー!!いずこにおられますかー!!」

714: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:24:18 ID:y8c
インディゴ「時間切れの様です。仲間の研究員が来てしまいました。…ですが、ここでの実験は終わりにしましょう。ここでこれ以上実験を続けていても、またあなた方に阻まれるのは見えていますしね……」ポイッ

※インディゴはカードキーを放り投げた…

千夏「このカードキーは?」

インディゴ「奥に、怪電波で洗脳した海のポケモンの洗脳解除装置と…日照りの実験にとらえていたポケモンのケージがあります。そのマスターキーですよ」

インディゴ「ここは……貴女を……ええと」

ネネ「ネネです」

インディゴ「ええ、ネネさん。貴女の健闘を讃えて、敗北を認め、差し上げます。…ですが、いずれまた、互いに相まみえる日も来るでしょう」

インディゴ「その時こそは……今回のリベンジもさせてもらいますよ…」シュウウウ……

※インディゴはそう言い残すと消えてしまった……。

※倒れていた研究員や増援に来た団員の姿もない…。おそらく、インディゴが連れて行ったのだろう……。

715: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:24:40 ID:y8c
ネネ「う……」フラッ

唯「ネネちゃん!」ダキッ

千夏「緊張の糸が切れた事で気を失ってしまったみたいね……それに、微熱も…」

トロちゃん「ピスピウス」

※トロちゃんは千夏達に背中を向けた…。

千夏「ネネちゃんの事は彼に任せるとしましょう。メルシー、トロちゃん」

トロちゃん「ピーウス」バサァッ

※トロちゃんは背中にネネを乗せるとラボの出口へと向かっていった……

唯「多分、もう片方の皆もモニタールーム抑えちゃってるよね。けど、流石にゆい達もポケモン達もヘトヘト…」

千夏「こちらも誰か手伝ってくれる人を動かした方がいいわね。ゆいちゃん、悠貴ちゃんにお願いできないかしら」

唯「そっか、そだね、悠貴ちゃんなら…!あ~……ここ圏外っぽいから、外出てから連絡してみる!」タタタッ

716: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:25:10 ID:y8c
千夏「……となると、私はここのポケモン達の解放ね……こっちも人手が必要だろうし…どうしたものかしら」

肇「千夏さん!」タタタッ

忍「よかった、無事だった!…さっきネネちゃん背負ったトロちゃんとすれ違ったから…」

千夏「詳しい話は後でするけど、制圧任務は成功よ。ネネちゃんがかなりがんばってくれたから」

肇「そうですか……それで……さっき、すれ違いざまに見たネネちゃんの顔が……」

忍「熱っぽかったけど、眠りながら笑ってたんだよね…」

千夏「そう…」

千夏「実は、ここのポケモンの解放に人手がいるの。それと、おそらくあなた達の友達を助けに行くのにも……ラボの場所はわかったのよね?」

肇「バッチリです。皆それぞれ頑張ってくれましたから…」

千夏「なら、皆も疲れてるでしょうし、まずは早苗さんに連絡して、ポケモンポリスの応援要請を」

肇「あ、それは大丈夫です。そうなるだろうから、って早苗さんも連絡しに外に向かいました」

忍「何で圏外なのよ~!ってぶつぶつ言ってたけどね……じゃあ、アタシ、ネネちゃんの様子見に行った方がいいかな……病院も埋まってたし…休める場所、探さなきゃ…」

千夏「多分、それは大丈夫のはずよ。だって……」

~~~~~~

717: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:25:39 ID:y8c
トロちゃん「ピーウス」バサァッ…ズシン…

アマちゃん「ジョーマッ」ボウン

※アマちゃんはネネのボールから飛び出してきた…。

アマちゃん「ジョマ」ガチャリ ギィ……

ハナちゃん「フシャ」ボウン シュルル

※ハナちゃんも飛び出すと、ネネをツルのムチで持ち上げて部屋の中に運び込んだ……。

ネネ「……ここは……」パチッ

タオルを絞るアマちゃん「ジョマ…」ギュー

ネネ「あ……ふふっ、そっか……私……」

アマちゃん「ママー」ピトッ ナデナデ

ネネ「……帰って来たのね。メーヴェシティの……私の家に……」

※外側の窓からトロちゃんが顔を覗かせている…

トロちゃん「ピーウス」ハイッ

ネネ「トロちゃんのフルーツね。ありがと……あら?」

ハナちゃん「フシャ」ハイッ

※あまいミツの入ったお皿を持ってきたようだ…。

ネネ「みんな……」ジワッ

718: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:25:54 ID:y8c
忍(……場所を聞いて来てみたけど……おじゃま虫かもね、アタシ達)

肇(ですね。あれならきっと……すぐに良くなるでしょう)

>>2人はそーっと玄関の扉を閉めると、体を休めるため、ポケモンセンターへと向かっていった……



~~~~~~

719: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:26:12 ID:y8c
※時を現在に戻し、ドルチェ砂漠を走る護送車の荷台。解放されたポケモン達に混ざって怪我をした未央が、加蓮の手当てを受けていた…。

未央「いや~、まさか護送車の荷台に紛れ込んでたなんてビックリしたよ…」

加蓮「私もその怪我見てびっくりした。早苗さんには休んでなさいって言われちゃったから、こうでもしないと来られなかったし」

720: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:26:35 ID:y8c
未央「にしても……今回はなかなかにハードな戦いだったねえ……この怪我、どうしよっかな、流石にごまかせないよね…?」

加蓮「前にちひろさんが言ってたよね、ジム挑戦の旅で怪我をした場合、途中での療養に際しては全快を待つしかないって。あの時いつか置いてきぼりにされるって思ってた私が、まさか未央の心配する事になるなんてね」

未央「かれんは…迷惑?」

加蓮「迷惑なのはリーグのルールの方。マジカ団倒すのに力を貸してくれ、とか言ったの、あの拓海さんでしょ」

未央「ああ、言われてみれば……あれ、それで怪我しちゃった場合って……どうなるんだろ」

721: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:26:56 ID:y8c
加蓮「どうもこうも、矛盾してるってば。私、リーグ協会だかジムリーダーだかちひろさんだか誰か捕まえて、納得行くまで直談判するつもり。今からポケモンリーグの病院に行くんでしょ?ついていくから」

未央「かれんさんは頼もしいねぇ…けど、そっちも疲れてるんだし、無理は駄目だからね、絶対」

加蓮「それはお互い様。このまま未央を置き去りに旅を続けるとかさせられるくらいなら、私、真っ先に抜けるから」

未央「かれん……」

加蓮「どんな理由があっても未央を怪我させたマジカ団は許せないし…」ギロッ

研究員「!?」ビクッ

※縛り付けられた砂漠ラボの研究員をにらみつける加蓮。

722: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:27:16 ID:y8c
加蓮「とにかく、何もかもキッパリハッキリさせとかないと、ね…」

未央「だね。…私も、そろそろ覚悟を決めなきゃ、かな…」

未央(周りに気を遣って半歩下がる臆病者の私じゃなくて…皆の事、守って戦える、そんな私に……)

ジラーチ【気負い過ぎると怪我増やすよ。仲間って、そういう時に助けてくれるもんでしょ】

未央「…ジラちん」

ジラーチ【ん?】

未央「ありがと」

ジラーチ【…いきなりそう素直にお礼を言われると……反応に困るなあ】

未央「あはは、ジラちんが照れてる♪…あいたたた…」

加蓮「ほら、何話したか知らないけど大人しくしてる!もう…またキズぐすり吹きかけられたい?」

未央「うひゃあ、しみるのは勘弁だよ~!」

~~~~~~

723: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:27:37 ID:y8c
※一方、砂漠を走る護送車の運転席。

悠貴「すう……すう……」

早苗「早寝早起きちゃんなのよね~、悠貴ちゃんって。いけどもいけども砂ばかりだし、寝顔癒やされるわ……」

ザザッ……ザーッ

早苗「あら、警察無線……はいはーい、こちら早苗さんでーす」

千夏「千夏よ。こちらは大体のポケモンを回復できたところ。そっちはどう?」

早苗「あぁ、千夏刑事、今日はお疲れ様」

千夏「ちょっと早苗さん、その呼び方は……」

早苗「ああ、私服刑事だものね、バレちゃマズイか。…とは言え、唯ちゃん達四天王の皆は知ってるんだし、助手席にいるのも眠ってる悠貴ちゃんだけよ?大丈夫でしょ」

千夏「まあそれなら問題ない…か。今回の一件、組織の構成員の内容把握や、ボスの目的が一部明らかになったのよ」

724: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:27:57 ID:y8c
早苗「…千夏ちゃん、どんな恐ろしい拷問にかけたの……?」

千夏「あのね……私はもっとスマートよ、早苗さん。情報を聴き出せたのはあくまでも偶然が重なった結果みたいなものだし……とりあえず、ポケモンリーグの警察詰所にいるから、後で四天王の皆さんとも情報共有するつもりよ。そっちも来るんでしょ?」

早苗「怪我人がいるからねぇ…っていうか、これはおまわりさんの勘なんだけど……普通の会議じゃ済まなそうなニオイがするのよね……」

千夏「というと…?」

早苗「……護送車の荷台の方から物凄い殺気がね……」アハハ

千夏「…穏やかじゃないわね…何の恨みを買ったのかしら」

早苗「いやー、多分買ったのはあたしじゃないけどね、それは…」

~~~~~~

725: ◆6RLd267PvQ 19/08/04(日)02:28:09 ID:y8c
加蓮「この怪我人の面倒見てくれないとか言い出したら……ポケモンリーグ、アタシが潰すから……」ゴゴゴゴゴ……

未央「かれんさん、昔の「キレたナイフかれん」に戻ってるよ~……おーい……」


※続く。

727: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:19:36 ID:7To
第18話。

Old stories about the clock tower.

728: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:19:56 ID:7To
~ポケモンリーグ本部・医務室~

ちひろ「温泉に行きましょう!」

加蓮「え?」 未央「んん?」

ちひろ「ですから、その怪我をきちんと治すために、温泉に行くべきだと思うんです!」

加蓮「あのね、ちひろさん、私達真剣に…」

清良「その温泉って…もしかしなくても『クロノ温泉』ですよね? 湯治に訪れる方が多いという…」

加蓮「湯治って……つまり、温泉入って傷治すって事?」

清良「一応はハピナスの『癒やしの波導』で傷口を塞ぐまでは出来ましたが……まだ完治とは言えなくて。未央ちゃん、どんな感じ?」

未央「うん、傷は確かに塞がってるけど……まだ動かすとジンジンするかな……ちょっとだけど」

729: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:20:59 ID:7To
清良「そのちょっとが問題なのよね。トレーナーはモンスターボールを投げたり、手元に跳ね返って来たボールをキャッチしたり……無意識的にも、よく腕や手を使うからね」

ちひろ「リーグ協会ではボールをキャッチしたりする時の為に専用のグローブなんかも販売してますけど……流石にその怪我だと、根本からしっかり治した方が良いですね」

加蓮「ちひろさん、前に言ってなかった?怪我人や病人が出た場合は途中離脱を認めていないから、ジム挑戦は一旦止めて仲間の回復を待たなきゃならないって」

730: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:21:44 ID:7To
加蓮「けど、これはマジカ団のせいで作った傷みたいなものだよ?マジカ団に気を付けろって忠告は確かに拓海さんから貰ってたけどさ……こんなの、理不尽過ぎるってば…」

※加蓮はキーストーンのついたペンダントを掲げてみせた…。

加蓮「このキーストーンだって、この旅で世界の危機に立ち向かうために、なんて大層な目的で託されたものだけどさ。仲間が怪我で離脱したら旅は終わりになっちゃうってルール…他にもだけど……色々矛盾してない?」

731: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:22:10 ID:7To
ちひろ「……実は、私もそのルールには違和感を覚えていたんですよ」

清良「ちひろさん」

ちひろ「ですが、生半可な絆では真の意味でユニットとは呼べないでしょう?私達が本来試すべきなのは、想い合う事のできる絆の強さ……でなければ、キーストーンも、巨悪と戦うという使命も、誰にも託せませんでしたから」

ちひろ「だから、最初にルールを説明した時から今まで、誰一人脱落者を出していないあなた達が、それも私達よりマジカ団の中枢に近付けているあなた達が、怪我で休む間のジム挑戦はいけません、なんて言われて良いはずないんですよ」

未央「じゃあ、リーグやジム挑戦のルールそのものを変えるって事…?」

ちひろ「いいえ。ルールそのものは変えません。トレーナー間の絆を測る上で『必要な嘘』だと思いますから。私達リーグ側にちゃんと報告に来た時点で、あなた達には特赦を与える必要が……」

732: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:22:50 ID:7To
清良「つまり、怪我を治している間の未央ちゃんの休養と、次のジム挑戦、どちらも特赦として許可する、と」

ちひろ「…むしろ、恩赦かもしれませんね。私達協会が不甲斐ないばかりに……それに、キーストーンを手に入れているのなら、早くその力を引き出せるように特訓を重ねる必要も出てきます」

未央「特訓……メガシンカの…そう言えば、前によしのんに貰ったこのメガストーン……」

※未央はメガストーンを取り出して意識を集中させてみた…。

未央「……よしのんに言われた通りだ。これ、ガブリんのメガシンカに必要なメガストーンだよ」

清良「話を聞く限り、ガブリアスの『逆鱗』を体を張って食い止めたあなただものね…確かに、その力を使いこなすなら、特訓は必要不可欠かも」

733: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:23:12 ID:7To
ちひろ「それに、この専用グローブ(手袋)、未央ちゃんにお譲りします。掌全体をカバーするものですし、丈夫なのでガブリアスを撫でても手が傷ついたりはしないはずですよ。これで、ボールを捕った時の衝撃も、いくらかはカバーされるはずです」

未央「あ、ありがとうございます!やった~、これでガブリん撫で放題だよ、えへへ」

加蓮「とりあえず、話を戻したいんだけど……温泉だっけ、えっと」

清良「【クロノシティ】と言う街をご存知ですか?」

加蓮「クロノシティ……ううん、聞いたことないかも…そこに、温泉が?」

未央「あ、タウンマップあるよ、前にさなっちが印付けてくれたヤツだけど」ガサゴソ

734: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:23:33 ID:7To
ちひろ「…ああ、グリモ地方の東側に印が付けられてますね、これは…ジムのある街でしょうか」

未央「うん。…そう言えばまだ西側には印貰ってないなぁ…ねえちひろさん、休養してる間にジム戦もって事は…クロノシティにもジムがあるのかな」

ちひろ「ご明察です。クロノシティは8時方向のこの場所になります」キュッ

※ちひろがマーカーで印をつけた…。

ちひろ「こちら側からだと、ドルチェ砂漠の先の7時の街【シデロスシティ】を経由して、さらに険しい火山道を越える必要があります」

清良「火山……【クロノ霊峰】ですね。あそこは確か、強い野生ポケモンが多くて危険だとか…」

加蓮「流石に怪我人抱えて砂漠と火山のルートを進みなさいとか言い出さないよね」

ちひろ「ええ、ですから、メーヴェから出ている列車で1度マギアシティに帰っていただきます。マギアシティから4方向に列車が出ているのは知っていますよね?」

加蓮「…って事は……つまり、まず列車でマギアから9時の街を目指すわけね」

735: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:23:51 ID:7To
ちひろ「はい、そうなります。街に到着したら、私達が迎えの車を手配しますので、それに乗って8時の街、クロノシティを目指して貰います。丁度あの街のジムリーダーはクルマ好きで有名ですから、迎えに来て貰っちゃいましょう」

未央「ジムリーダー直々に!?」

加蓮「温泉……火山……って事は…炎タイプ……?……もしかしてジムリーダーって…マギアシティの街頭ビジョンに映ってた、エキシビジョンマッチのあの人じゃない?」

未央「おお、ゴウカザル使いのお姉さん!」

ちひろ「はい、炎タイプのジムリーダー、美世ちゃんですね。彼女なら喜んで協力してくれると思いますから♪」

~~~~~

736: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:24:11 ID:7To
~翌日昼・メーヴェ駅~

未央「ってワケで、列車の定期券と温泉の優待券まで貰っちゃってさ」

ネネ「なるほど…。じゃあもう一度マギアシティへ向かわなくちゃ、なんですね。…何だかもうちょっとだけ懐かしいような…」

加蓮「私達、出逢ったのは3人ともマギアシティでだもんね。確か、あの時は未央が迷子になってて……」

未央「そ、その話は時効にしといてよかれん~!何か恥ずかしいし……」

肇「ネネちゃんはこの街出身ですよね、マギアシティには何をしに…?」

ネネ「あ、はい……ええと、妹を勇気付けるため……なんですけど。今は他にも、皆さんの期待や頑張りに応えたいなって。特に加蓮さんや未央ちゃんは、目を離すと何を始めるか……」

加蓮「う……それは…」

未央「面目ないです…」

737: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:24:27 ID:7To
ネネ「ふふ、大丈夫です、そんな負担に思ってるとかじゃありませんから。むしろお役に立てているなら嬉しいんです」

ネネ「この中の何人かにはもう話している事ですけど……私も昔は体が弱くって。そんな私が頑張っている姿を見せられたら…そう思って始めた旅でしたけど…」

ネネ「今朝、病室に行って事情を話したら……妹に凄く怒られちゃいました」

~~~~~~

738: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:24:42 ID:7To
しおん『お姉ちゃん、いくら何でも無理しすぎだよっ!』

ネネ『ご、ごめんなさい…でもほら、お天気は元通り良くなったんだし……ね?』

窓からトロちゃん『ピスピウス』

ネネ『ほら、トロちゃんのフルーツ食べて機嫌なおして……ね?』

しおん『………』ジワッ

ネネ『し、しーちゃん!?』

しおん『……お姉ちゃんが熱出したって……だから…もしお姉ちゃんにもう会えなくなったらって…心配して…怖くて……』グスッ

ネネ『…しーちゃん……』

~~~~~

739: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:25:01 ID:7To
ネネ「だから、妹のため、人のためだけじゃなくて……もっと、自分の事も労ってあげなくちゃなぁって…それこそ、心配して病気が酷くなったら大変ですから…」

加蓮「色々焦る気持ちもわかるけどね、そこはお互い様だし」

肇「でも、今回はネネちゃんが頑張ってくれたから得られた勝利でもありますからね…」

忍「うん、そこは胸を張っていいと思う。これから皆で強くなろうよ。ちょっとやそっとじゃへこたれないくらいにさ」

ネネ「皆さん……ありがとうございます!そう言っていただけて……本当に、気持ちが楽になりました…」

加蓮「けど、今回は色んな意味で仕方なかった部分もあったよね。二手に分かれるって作戦の時に、回復役で人数が少ない方に付くって言うのは多分間違ってないだろうし」

未央「その時私も側にいられてたらなぁ……回復役はできないけど、戦力にはなれたと思うし……本当、皆ありがとね、助けてくれて」

740: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:25:21 ID:7To
肇「…もしまた部隊を分けて事に当たる時が来るなら、回復の心得がある人はもう一人くらいいるといいんですけどね……私、ヤド先生にご相談してみます。何か、閃いて下さるかもしれませんし」

忍「そ、相談って……そんなので技を覚えさせたりできるもんなの?」

未央「はじはじは特別だからねぇ。ポケモンの気持ちとか、そう言うのが自然とわかるみたいだし」

肇「皆さんも、覚え直したい技や忘れたい技があったら相談してください。私とヤド先生なら、お力になれると思いますので…」

※肇は【技忘れ】【技教え】の能力を習得した!

741: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:25:43 ID:7To
加蓮「今後、いざって時に回復の必要がありそうなら、あらかじめ肇に相談して回復技と攻撃技を入れ替えてもいいかもね。必要ならその後でまた攻撃技を覚え直せばいいんだし」

未央「私達、ユニットの仲間だもんね。これからも、お互い助け合って進んでいこう!」

ジラーチ【キミは助けてもらったばかりだけどね】

未央「ジラちんはだまってて…自覚はあるよ、一応…」

ジラーチ【はいはい。ま、しばらくは大人しく怪我を治すのに専念するんだね】

未央「ぶーぶー…」

忍(本当に何を話してるんだろう……気になる……)

『間もなくぅ、列車が到着致します あ列車がぁ、到着ぅ、致します』

加蓮「ともあれ…久々のマギアシティだね」

まろ「チルル」モグモグ

ネネ「あ、メーヴェ名物のキャモメまんじゅう…いつの間に?」

742: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:25:58 ID:7To
加蓮「流石にまた前みたいに駅弁のガラスケースに貼り付いても困るでしょ。良さそうなの見つけて先に買っといた」

まろ「チルー」モグモグ

※まろは幸せそうにまんじゅうを頬張っている…。

※列車に乗って、一行はマギアシティへと向かった……。


~~~~~

743: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:26:16 ID:7To
Side 楓

~マギアシティ~

楓「十年前……私が子供だった頃とは、街並みもすっかり変わってしまったわね…」

楓「ある日、突然時計塔が改築される事が決まって……気付いたら今のジムがあるマギアタワーになっていたけれど…時代は移ろうものだし、それは理解もできるの。……少し、寂しい気持ちもあるけどね」

セレビィ「レビィ…?」

744: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:26:32 ID:7To
楓「でも、あの子は…もう帰って来ない…少なくとも、今ここにはもう、いない」

楓「セレビィ、『ときわたり』」

セレビィ「レビィイー!」ピカアアアアア

楓(そう、十年前…十年前なら、まだあの子は……)

745: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:26:50 ID:7To
~十年前・マギアシティ時計塔~

楓「タワーを登るのも久々だわー……これはイマイチね…」

セレビィ「レビィ」パタパタ

楓「この時代なら、まだあの子は……」ガチャリ……

~時計塔・上階……秘密の部屋~

マギアナ「?」キョトン

楓「この時代では初めまして、ね…。私は楓。あなたと、少しお話がしたくてここまで来ました」

マギアナ「………?」キョトン

746: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:27:13 ID:7To
楓「お隣、座ってもいいかしら」

マギアナ「……」コクン

楓「ありがとう。……何だか、懐かしいわね……」

マギアナ「………」

楓「この時代には、マジカ団が蔓延る事もなく、誰かが悪天候に喘ぐのを見る心配もないけれど……」

楓「一人だけ、ずっと泣いている子がいるの。……私は、それが凄く悲しくて……」

マギアナ「………」

楓「きっとあなたは、何度でも同じ選択をするんでしょうね……マギアナちゃん」

楓「あの子を……友達を守る、選択を……」

マギアナ「…………」

セレビィ「レビィ……」

楓「私ね、ずっと迷っているんです。私がいた未来で、マジカ団がやっている事は凄く凄く悪いこと……それはわかってる…」

楓「本当なら、一番前に立って、あの子を止めに行かなきゃいけない立場なのに……まごついて、揺らいで……情けないですよね」

マギアナ「………」フルフル

747: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:27:37 ID:7To
楓「……未来は不確定なもの。だから、セレビィに頼んで、何度かあなたを連れ出してしまおうかとも思った……けれど」

楓「……私達の大切な思い出を、なかったことにすることも……私は、選べなかった…」

マギアナ「………」スクッ

楓「マギアナちゃん?」

マギアナ「………♪」ルンタッタ ルンタッタ

楓「…相変わらず、ダンスが上手なのね。……もしかして、私を慰めようとして…?」

マギアナ「………♪」クイクイ

楓「あら、お誘いかしら……ふふ、上手に踊れると良いのだけど…」

※楓とマギアナは、しばらく楽しそうに踊っていた……。

楓(本当に……ずっと、何も変わらなければ、こんな事には……)

~~~~~

748: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:27:53 ID:7To
~マギアシティ・現代~

楓「ありがとう、セレビィ。おかげでまた、懐かしいお友達に会うことができたわ」

セレビィ「レビィ♪」

楓「ごめんなさいね、いつも私なんかのためにつき合わせてしまって…私の手持ちポケモンというわけでもないのに、もう、ずっと側にいてくれる…」

楓「だから、つい……過去の想い出に、甘えてしまうのよね…」スタスタ

※楓は、ふと、路地裏へ歩き出した……。

749: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:28:11 ID:7To
~マジカ・ラボ(マギアの雨の元凶だったラボ)~

楓「……この研究所も、ここにある限りまた誰かが悪用して、きっと加蓮ちゃんみたいな子が悲しむ原因になってしまう……」ボウン

ランクルス「クルル」フワフワ

楓「あまり大事にはしたくないけれど……やっぱり、壊すしか……」

総帥「やめておいたほうが身のためですよ」

楓「……!」

総帥「誰かと思えば、まさかあなたとはね。…裏切り者のあなたが、今更この施設に何の用ですか」

楓「裏切り者……確かに、そうかもしれないわね」

750: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:28:30 ID:7To
総帥「…そのポケモン……」

セレビィ「レビィ♪」パタパタ

総帥「また、くだらない昔話をしに、わざわざ『ときわたり』の力を使ったのですか」

楓「くだらなくなんかない……それは、あなたが一番わかって……」

総帥「……黙りなさい。それ以上言うのなら……あなたも私の手駒になってもらいますよ…」シュウウウ……

楓「あ、待って……!」

セレビィ「レビィ…」

ランクルス「クルルス…」

楓「もう、戦うしか、道はないのかしら…」

楓「私には……」ギリッ……

※楓は、強く歯を噛み締めた……。

~~~~~

751: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:28:57 ID:7To
Side 加蓮

~マギアシティ~

加蓮「着いた着いた……っていうか、何の騒ぎ、これ」

※ポケモンポリス達が路地裏への道をテープで通行止めにしている…。

未央「ね、ねえかれん、あの路地裏って前に……」

加蓮「りゅーすけが嗅ぎ付けた場所、だよね。マジカ団の…雨のラボがあったトコ」

肇「マジカ団が…?」

ネネ「じゃあ、また何か事件でしょうか……」

忍「気になるなら、とりあえず聞いてみればいいんじゃない?ほら、警備員さんいるし。すみませーん」タタタッ

ネネ「あ、そんないきなり…」

未央「いや……案外適任はしのむーかも…」

ネネ「えっ?…どうしてそう思うんですか?」

未央「いやぁ、あの帽子とコート、いかにも刑事っぽいじゃん」

加蓮「ああ……確かに……」

ネネ「えっ……絶対違う……」

752: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:29:42 ID:7To
新人警備員「おお、もしや貴方は刑事殿!お疲れ様です!」

忍「う、うむ!報告を!」←本当に間違えられた

ネネ「だから待ってちがもごご」

加蓮「ちょっとゴメンね口塞いじゃう」

ネネ「むー、むー」ナミダメ

肇「少しかわいそうな気もしますけど…」

ネネ「ぷはっ……後でにっが~いドリのみジュースですからね、加蓮さん!」

加蓮「ご、ごめんってば!ほら、忍帰って来たし、ね?」

拗ねるネネ「むー……」クスン

加蓮(こういうトコ妹キャラっぽいんだよね~…)

753: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:30:30 ID:7To
未央「で、何て?」

忍「それがさ、この先にあった小さな施設が、まるで握りつぶすみたいな壊され方されてたとかって…」

未央「に、握りつぶす??」

忍「うん、人は誰もいなかったみたいだけど…ガレキとか壊れた機械がいかにもそんな感じなんだって」

未央「ほえー……都会は物騒だねえ…」

加蓮「いや…マジカ団に関しては都会も田舎も関係なくない…?」

ネネ「あの、ところで向こう側から誰か手を振っていますけど……」

加蓮「え?……あの人!」

美世「おーい!」フリフリ

未央「街頭ビジョンのお姉さん!!」

加蓮「迎えが来るとは聞いてたけど、早くない……?」

肇「私、てっきり9時の街で合流するのかと……」

美世「いやぁ、良かった見つかって…話を聞いて、居ても立ってもいられなくてさ。あ、早速だけど、もう動ける?マギアシティに用事ない?」

加蓮「まぁ、特別用があるってわけでもないけど……」

加蓮(お母さんに顔見せておきたかったけど、皆で行くとあの人、私の事で何言い出すかわかったもんじゃないし…いっか、全部終わってからで…)

美世「良かった!じゃあとりあえずこっちの方から列車乗って、街に着いたらクルマ出すから♪」ウッキウキ

未央「な、何だか凄くウキウキしていらっしゃる…?」

754: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:31:04 ID:7To
美世「えへ、ジムのお仕事や何やかんや忙しくて、クルマ飛ばせるの久しぶりだからさ~♪ あ、もちろん安全運転第一だから!」

ネネ「あの、すみません、そう言えばお名前をまだ……」

美世「ん、アタシ? アタシはクロノシティジムリーダーの美世!四天王の拓海ちゃんと同じ出身なんだ」

忍「師匠と…!?」

美世「聞いてるよ~、何でも愛弟子が出来たとかって!その辺りの話も行きながら聞かせてね♪」

忍「は、はい!こちらこそ、よろしくお願いしますっ!」

ジラーチ【何か、一気に暑苦しくなった気がするね】

未央「あ、あはは……確かに、思った以上にアツいお人みたいだけど…でも、悪い人じゃなさそうじゃない?」

加蓮「うん、悪巧みできなさそうではあるね」

肇「お二人とも……流石に失礼では……」

加蓮「だって、まだ手放しで信用できる程の仲でもないでしょ」

未央「相変わらずかれんさんはドライだなぁ……」

加蓮「……まぁ、好きでドライな人間やってるわけでもないけど、さ」

ジラーチ【損な役回りだね、彼女も】

未央「そだね。……案外何となく、私と近いのかも」

ジラーチ【それは…まぁ…違うとも言い切れない、か】

755: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:31:31 ID:7To
未央「あり、珍しく素直に…」

ジラーチ【色々見てきたからね、キミ達の事は】

未央「…かれんが無理してたら、支えてあげたいな、私」

ジラーチ【いらぬお節介にならないよう、気を付けなよ。彼女もそこまで弱くないんだから】

未央「うん。わかってる」

未央(そして、そこまでお互い強くないのも…わかってるから)

『ん間もなくゥ、列車が到着致します あ列車がぁ、到着ぅ、致します』

忍「あ、列車来るよ皆、急がないと!」

加蓮「忍、路線間違えてる、そっちメーヴェ行きだから戻っちゃうよ」

忍「えっ」

ネネ「都会って路線複雑ですよね……私、初めてマギアシティに来たときはトロちゃんに乗ってだったので…色々びっくりしたのを覚えてます」

肇「いずれじっくり観光して回りたいものですね、皆さんと」

美世「みんな~、乗り口こっちだよ~!そろそろ列車来ちゃうからね!」

忍「え、あ、ホントだ、あっちが今から乗る方の乗り口だ……よく見たら普通に書いてあるし……」

756: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:32:02 ID:7To
未央「色々ごちゃごちゃしてるからわかんなくなるよねぇ」

加蓮「ティリオタウン行き……か。あまり長く留まりたくない街だなぁ……」

未央「およ、どうして?」

加蓮「マギアシティの裏の街って言われてる場所でね。産業廃棄物や汚水処理施設、工場地帯だったり……まぁ早い話、あまり空気がよくないんだよね」

ネネ「最近は技術が進歩したおかげで、多少改善したと聴いていますけど……やっぱりどうしてもやむを得ない部分はありますよね」

美世「あ、でもね、毒タイプのポケモンとか、可愛い子達がうようよしてるんだよ。ドガースとか、モルフォンとか。まぁでも全然悪い子達じゃないから安心していいよ!」

ネネ「大丈夫です、万が一毒状態になったら私、治せますから。ほら、毒消しのモモンのみもこんなに!」

忍「工場地帯かぁ。アタシは3匹目のポケモンが見つかれば嬉しいんだけどなぁ…」

肇「そうですね、後3匹目が揃っていないのは忍ちゃんだけですもんね」

忍「今更毒タイプってのもちょっと迷うけどね。ここまで来たら格闘タイプで!」

未央「何にしても、新しい街だもんね。色んな子と出逢いがあるといいなあ…」

757: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:32:18 ID:7To
加蓮「未央はその前にちゃんと身体治すこと。中途半端に治して無理すると一番長引くんだから、焦らずゆっくりね」

未央「……おお……かれんさんの優しさが心に沁みるぜぃ…」

加蓮「あのね……」

※かくして一行はマギアシティから9時方向の街、ティリオタウンへと進路を取る。

目的地は更にその先の温泉街、クロノタウンだ!

758: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:32:39 ID:7To
~以下おまけ・一コマ劇場~

~ある日のポケモンセンターにて~

TV『きのみから作られるお酒を実際に作ってみようという……ズリのみやブリーのみを踏んでいくんですね』

アマちゃん「マジョマ…」ゴクリ

ネネ「…お酒、もしかして興味あるの?」

アマちゃん「マジョ」

ネネ「…将来、私が大人になったら、この体験コースで一緒に作って飲みに行こっか」

アマちゃん「ママー♪」スリスリ

ネネ「あ、こら……誰も見てないわよね…?」

※アマージョになっても実は甘えんぼ。
普段皆でいる時には見られない姿ですが。

759: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:33:00 ID:7To
~別な日のポケモンセンターにて~

まろ「チシュッ」クシュン

加蓮「まろ……アンタね……」

未央「うおっ、まろの羽根が絞った雑巾のように…」

加蓮「さっき好物のきのみくわえて池の中覗いたんだって」

まろ「チシュッ」クシュン

加蓮「…で、水面に映った自分のくわえたきのみをとろうとして、じゃぼん……どこまでくいしんぼなんだか…」ハァ…

未央「な、何か童話みたいな話だね…」

まろ「チシュッ!」クシュン

760: ◆6RLd267PvQ 19/08/08(木)15:33:13 ID:7To
※こんな1幕もありつつ、旅はまだまだ続きます。次回もお楽しみに。

続く!

762: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:54:28 ID:CX0
更新します。19話。

Aiming for a hot spring town. Arrival, industrial city.

763: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:54:57 ID:CX0
※マギアシティから列車に乗る事しばらく。
次の目的地であるクロノシティへ向けて、廃煙と工場の街、ティリオタウンへとたどり着いたのだった…。

肇「夕日にたなびく工場の煙……これはこれで何となく風情を感じますね…」

忍「わかるなぁ……ちょっと癒やされるよね、こういう人工的な景色ってのも」

未央「そういえば、あんなに煙吹いてる割に…思ったほど、空気も悪くない感じするね?」

ネネ「はい、流石に空気が美味しいとまでは言いませんけど……てっきりもっと…」

加蓮「うん、ちょっと調子崩れるかと思ったけど、案外大丈夫みたい。何でだろ?」

美世「ふふふ、どくポケモンの中にも働き者の子達がいてね…ほら、あそこでふわふわしてるマタドガスとか」

未央「お、おお!?あれ、マタドガスなの!? 私の知らないやつだ……」

764: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:55:21 ID:CX0
加蓮「確か、カントーのポケモンでしょ、マタドガスって。未央ペディア、意外と抜けが多いね」

未央「いやいや、だってあんなヒゲ生やして煙突ついたマタドガス初めて見たよ!?」

美世「ガラル地方のマタドガスだから無理もないんじゃないかな。汚れた空気を食べて浄化する作用があるから、街の中をああして巡回してくれてるんだ!」

未央「ほほーう……ガラル地方のマタドガス……かれんのぱんもそうだけど、地方によってポケモンの姿が違うのって面白いよねぇ」

ネネ「そう言えば、メーヴェシティにもアローラ地方のナッシーさんがいたりするんですよ。アローラに負けず、メーヴェの街も気候的には南国そのものですから」

未央「アローラのナッシー?どんなの?」

ネネ「あ、写真ありますよ。たまに街まで出てくるんですけど人懐っこくて。…これです」ピラッ

未央「……長っ!?」

765: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:55:52 ID:CX0
忍「長いっていうか……写真から上の方見切れてるね……」

加蓮「えーと、アローラ、ナッシー…と」ピピポパ

加蓮「あ、出た。ふーん……大体11メートルくらいあるみたいだね」

未央「11メートル!そんな子が街中に出てきたら大迫力だねえ…」

ネネ「因みに、のびのび育ったのでサイコパワーが要らなくなって、代わりにドラゴンタイプになったみたいです」

未央「この子ドラゴンタイプなの!?」

肇「ポケモンも見かけによらないですね……」

未央「っていうか、知ってるはずのカントーのポケモンがこんなに姿違うなんて、ちょっとしたカルチャーショックだよ私」

ベトベター「ベタァ」モグモグ

美世「あ、ベトベターだ、やっほー♪」

未央「えっ、あれも知ってるのと違う…!」

加蓮「例によって海外産なのかな」

美世「うん、ゴミを拾って食べてくれるんだ。おかげで街の中はいつも清潔ってわけ。意外でしょ?」

未央「どくポケモンってもっと危ないイメージがあったけど……」

肇「まさに共生関係ですね。ちょっと故郷の村を思い出してしまいます、ふふっ」

加蓮「……今端末で出てきたんだけど、アローラのベトベトン、凄い色してるね…」

未央「うおっ、なんじゃこりゃあ!?」

766: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:56:17 ID:CX0
ネネ「カラフル…というか、ちょっと既視感が……」

未央「言われてみれば何かちょっと見覚えあるような無いような……?」

肇「……何となく、マジカ団のローブの色みたいですね…」

未央「あ、それだ!」

忍「あー…言われてみれば、色は違うけどこんな感じでごちゃごちゃしてたよね」

ネネ「サイケデリック……とでも言うんでしょうか、こういうのって…あ、でも以前戦った幹部の人は普通に1色のローブでした」

忍「確か、インディゴとかいう……?」

ネネ「はい、名前の通り、藍色1色でした」

加蓮「何なんだろ、偉くなると色が選べるのかなマジカ団…」

未央「それって、好きな色を着たけりゃのし上がれ!みたいな……?」

ジラーチ【いくら何でも他に理由くらいあるでしょ、未央じゃないんだから】

未央「ジラちんはだまってて」

ジラーチ【はいはい】

767: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:56:43 ID:CX0
美世「ふふ、皆賑やかで楽しそうだね♪」 

肇「あっ、すみません、つい私達ばかり盛り上がって…」

美世「いいっていいって。新しい街に来た時って、色々珍しくて夢中になっちゃうもんだし!…あたしもジムのお仕事ともう1つがなければもうちょっとあちこち見て回るんだけどな~」

未央「もう1つ…?」

美世「あ、そうそう。ちょっとあたしから提案なんだけどさ」

加蓮「提案?」

美世「うん、もうすぐ夜だしここで一泊してもいいけど、どうせならあたしのクルマで一気にクロノシティまで向かってさ、そこで休んだ方が色々スムーズなんじゃないかな?」

肇「良いのですか?お疲れなのでは…」

美世「全然大丈夫♪ むしろ、クルマの運転できるなら喜んでって感じだもん!」

ネネ「ふふ、美世さんはクルマがお好きなんですね」

美世「そりゃもう、運転から整備まで、クルマいじりはあたしの趣味だから♪」

忍「あ、そう言えば師匠……拓海さんが乗ってたバイクも確か、空気を汚さないとかって…」

美世「うん、あたしが作った子だね、そのバイク。試し乗りを頼んでたんだけど、結構気に入ってくれたみたいで。この間それでご飯奢られちゃった」アハハ

768: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:57:08 ID:CX0
忍「ご飯……工場の煙を見てると…何故だか焼肉が食べたくなるなぁ……」

美世「お、焼肉? だったらクロノシティに炭火焼肉の美味しいお店があるんだけど…」

忍「行きます!!!」

肇「そ、即答でしたね…」

忍「だってもうお腹ペコペコなんだもん…焼肉、焼肉を食べる…!」

未央「こりゃ止めても聞かないだろね、しのむーは」

加蓮「ま、たまにはいいんじゃない?私も味の濃いものが食べたかったところだし」

美世「なら、きまりでいいかな? この先まっすぐ行けば駐車場が……」

肇「あっ!」タタタッ

未央「うおおい、はじはじどうした!?」

肇「見てください、露店でモンスターボールが売られています!見た事のないデザインです……」

ネネ「あ、ヒールボール…。他にも色々ありますね」

769: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:57:35 ID:CX0
美世「街の工場から作られた製品は、一部はこの街でもこうして売られたりするんだけど、大半は隣町で観光地のクロノかマギアシティに出荷されてるんだよね」

店員「そういう事。ボールやアクセサリーなら場所を取らないからこうして日銭稼ぎにね。どうだい、どれか1つ記念にってのは」

肇「工場の生産品、それも光沢の感じから見て作りたてですよね…無駄のない丸み……やはり、手製のものは廃れる運命なのでしょうか…」

未央「はじはじの作るボールにも違った良さはあるんだし、何を選ぶかは人それぞれなんじゃないかな?」

肇「未央ちゃん……そう、なのでしょうか」

店員「ボール職人っていうと、ヒュドールの村の?遠いとこから来たんだなぁ……よし、1個だけタダにしてあげるから好きなの選んで持ってくといいよ」

肇「良いのですか? じゃあ…ええと……」

肇「……この、波模様の意匠……これは…?」

店員「ダイブボールだな。釣り上げたポケモンが捕まえやすくなる他にも、海底深くに住むポケモンにも効果絶大だ。これにするかい?」

肇「……私が作るルアーボールと違って、釣り上げる以外にも使いみちがあるのですね…」ムー……

770: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:58:00 ID:CX0
肇「何か、新しい着想を得られるかもしれません。ダイブボールを1ついただく事にして、他のボールも1個ずつ買わせていただけませんでしょうか…!」

店員「おお、ホントにいいのかい?そこらの街でも売られるようなものがほとんどだよ?」

肇「構いません。せっかくの機会ですし、これも何かの縁かと思いますので」

店員「…その熱意、同じボール作りに携わる者として気に入った!こっちも商売だから全部タダにするわけにはいかないけど…全部3割引……いや、半額にしてあげよう!」

肇「良いのですか!?」キラキラキラ

店員「ああ、二言はないよ!持ってけドロボーってな、ははは」

肇「ええと、では……このボールはどういった効果が…」

店員「それはただの記念品で普通のモンスターボールの色違いだよ、プレミアボールって名前で、街のお店とかでボールを買うとたまにおまけで貰えたりするんだ」

肇「成程……では、こちらの網模様のボールは……」

771: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:58:15 ID:CX0
忍「……お腹ペコペコ~……」

未央「ああなったらはじはじは……なかなか離れないからねぇ……」

美世「わかるなぁ……あたしもクルマの事になるとあんな感じになっちゃうし…うんうん…」

加蓮「火がついちゃったってわけか。まぁ、焼肉は逃げないし、まろの食べ残したキャモメまんじゅうがまだ何個か残ってるけど、食べる?」

忍「いや…我慢する……焼肉…久々に豪華なご飯だもん……お腹すかせてたっぷり食べてやる……!」メラメラメラ

加蓮「あ、こっちも別な意味で燃えてた……」

~~~~~

772: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:58:31 ID:CX0
※ティリオタウンからクロノシティへと至る道はクルマが走れるように舗装がなされており……

ティリオの労働者達の行き帰りや、作られた産業物資の一部は観光名所、クロノの街にも送られるため、大きなトラックやバイクなどの行き来が盛んであるため、多くの車が一度に走れるように、広々とした道が続いている…。

その道路の名を、人々はいつからか「ダイヤモンド道」……通称【アルマスハイウェイ】と言った……。

773: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:58:52 ID:CX0
~アルマスハイウェイ・車中~

美世「少しだけ時間かかるけど、待ってる間は寝てても大丈夫だからね。あ、シートベルトはキチンと着用お願いします♪」

未央「はーい。…にしても、出発前の点検とか、ホントにプロみたいでビックリしちゃったよ」

ネネ「ですね、何だか手慣れてましたし…」

美世「あはは、プロみたいっていうか、あたしの家、クルマ屋さんなんだよね。だから小さい頃から工具とミニカーが友達だったって言うか…」

加蓮「それ、ジムリーダーと兼業って事?大変なんじゃない?」

美世「クルマいじりはもう半分あたしの趣味っていうか、人生みたいなものだから。むしろ乗ったり弄ったりしないと落ち着かないくらいでさ」

忍「まさに筋金入りって感じだね…やりたい事をやって、自分の趣味の時間もきちんと大切にできるって、憧れるけど凄く大変そうだよね」

774: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:59:13 ID:CX0
美世「でも、好きでやってる事だしね。それに拓海ちゃん……本当ならクロノのジムリーダーはあの子がやるべきだと思ってたんだけど、リーグ協会から四天王に是非、ってお達しが来ちゃってね……。それで、代わりにクロノの街を守れるのは美世しかいねぇ、なんて言って鍛えられちゃって」

未央「まさしく友情って感じですなぁ……」

忍「あれ、じゃあ師匠の一番弟子ってアタシじゃなくて美世さんなんじゃ…?」

美世「弟子入りってほど教わってないよ、ある程度は自己流でだったし。もともと拓海ちゃんの練習相手でよくポケモンバトルはしてたんだけどね」

775: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)18:59:44 ID:CX0
忍「なるほど……でも残念だなぁ、アタシ、今回はまだジムの挑戦権持ってないし……そんな話なら師匠の弟子としては是非バトルのお相手をしてほしかったんだけど……」

美世「ん、バトル?あたしと?」

忍「はい、師匠の親友っていうことは、アタシにとって美世さんは敬うべき人ですから…きっと美世さんがいなかったら、拓海師匠も今みたいにアタシを弟子に持つまでになってなかったかもしれませんし…」

美世「……どうかな。たまたま相手があたしだっただけで、拓海ちゃんならあたしがいなくてもきっと……」

忍「美世さん?」

美世「あ、ううん、何でもないよ。…そう言えば後ろの方、静かだけど…」

肇「すぅ……すぅ……」

未央「実は、はじはじが寝ちゃっててさ…」

加蓮「さっきはしゃいだ分、疲れが出たのかもね。隣で騒いで起こすのもよくないでしょ?」

肇「むにゃ……ごはん…」

加蓮「ってのは建前で寝言が可愛かったりするんだけど」クスクス

ネネ「もう、加蓮さんってば、また悪そうな顔して…」クスッ

美世「仲良きことは美しきことかな、か…何だか懐かしいな」

776: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)19:00:13 ID:CX0
忍「懐かしいって、拓海師匠の事ですか?」

美世「うん。最近は特に忙しいみたいで…ほら、例の事件で四天王の皆はあちこち飛び回ってるから。リーグ開催前で、あの人達は自由に動けるからね」

忍「そっか、流石にジムリーダーとなると、そこまで自由には動けないんだ」

加蓮「…あれ、クシナイのトーナメントにはジムリーダーがかなりの数参加してたけど…」

美世「ああ、あの時はリーグ本部から通達があってね。囮役としてトーナメントで戦う人をある程度身内で固める必要が……っとと」キキーッ

忍「うわっと!」ガクン

美世「あ、ゴメンね皆、急ブレーキしちゃって」

加蓮「大丈夫だよ。けど、一体何が…?」

美世「…もう街の入口なんだけど……はぁ、あの子達ったらも~……」ガチャ

未央「お、おお? 何か目の前にいかにもなバイクの集団が……」

ネネ「こ、怖い人達ですか…?」

美世「大丈夫大丈夫、あれ、拓海ちゃんとこの走り屋チームだから」

777: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)19:00:40 ID:CX0
暴走族「整列!!」

「「「「「ウス!」」」」」

暴走族「美世の姐(あね)さん、長旅お疲れ様でした!」ペコリ

「「「「「お疲れ様でした!」」」」」ペコリ

美世「あー…あのね、お出迎えは嬉しいんだけど、道を塞いじゃうと街に入れない人が出ちゃうから……」

暴走族「いえ、姐さん、それがちょっとした緊急事態でして」

美世「…緊急事態?」

暴走族「クロノの火山から、炎ポケモン達が山を降りて来たんすよ…オジキが言うには、最近のおかしな天気でパニクってるとかで…」

美世「ボルさんが…?」

未央「おかしな天気って……」

加蓮「ここでも、か……まぁ、これだけ鉢合わせてると多分、いないトコ探す方が難しいのかもしれないけど」

美世「で…街のみんなは?」

暴走族「ウス、俺らで姐さんの代わりに避難誘導しておきました」

美世「なら良かった……けど、被害が出ちゃう前に何とかなだめないとね…で、ボルさんも街に?」

暴走族「はい、オジキなら多分そろそろ…」

ボルケニオン『おう、原田の嬢ちゃんじゃねえか、遅かったな』ノッシノッシ

778: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)19:01:11 ID:CX0
未央「うわ、おっきなポケモン……」

ジラーチ【ボルケニオン……クロノシティで火山の神様って呼ばれたりして祀られてる幻のポケモンだよ】

ボルケニオン『ん、声が聞こえたな……おいジラーチの小僧、姿が見えねえって事はその中の誰かに取り憑いてんのか?』

ジラーチ【取り憑いてるとは失礼だね、ゴーストタイプじゃあるまいし。寝起きでヒマだったから旅するトレーナーを眺めてただけだよ】

未央「お?本当にそれだけかな?」

ジラーチ【未央はだまってて】

未央「はいはい」

美世「で、ボルさん、天気がどうのって話……」

ボルケニオン『ああ、火山灰が風で煽られて、砂嵐みてぇになっててな…パニック起こしたブーバーやマグマッグ達が街に降りてっちまってよ』

未央「ブーバーにマグマッグって……一歩間違えたら火事になっちゃうじゃん!」

ボルケニオン『それよ、そんでとりあえず追っかけて来て奴らを落ち着かせはしたんだが……』

暴走族「これ以上状況を知らない人間が入る前に、入口固めといた方が良いかと……独断で動いてすいやせん、姐さん」

779: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)19:01:41 ID:CX0
美世「ううん、そういう事なら大丈夫。むしろ、皆あたしがいない間に頑張ってくれたんだよね、ありがと!」

暴走族「滅相もないっす!お役に立てたなら光栄っす!」

「「「「「光栄っす!」」」」」

ボルケニオン『…で、砂嵐の原因だけどよ』

未央「えっと、ボルケニオンさん、この近くに、見慣れないおかしな建物とか見たりしてない?」

ボルケニオン『前に美世から聞いてたヤツだな?妙な研究所ができてたら注意しろ、だったか』

美世「うん、ちょっと今この地方全体で騒ぎになってるんだけど……」

加蓮「今までのパターンからして、近くにラボがあるのは間違いないけど……そうなると火山の中の可能性もあるよね…」

未央「うーん……流石に何の対策もしないまま火山の中って言うのも……ねえ」

暴走族子分「大変です!砂嵐が収まりやした!!」タタタタッ

ボルケニオン『何?本当か』

暴走族子分「はい、火山の方からデカイ爆発みたいな音がして……それからはピタリと……」

加蓮「…誰かがラボを破壊した…?」

780: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)19:02:14 ID:CX0
ネネ「で、でも火山の砂嵐の中を、ですか…?」

忍「それ、只者じゃないね……一体誰が…」

~~~~~~

~クロノ霊峰中腹・ラボ破壊跡~

亜季「ブロスター、戻るであります!」シュウウウ

亜季「ふう、これで任務完了でありますな……なかなかに厳しい行軍ではありましたが…」

清良「これは…また随分派手に壊してしまったのね」

亜季「清良殿。いえ、中を調べてみたら団員らしき者は一人もおらず、どこかからワープで移送された砂漠のポケモン達が天候をおかしくしていたようで…」

清良「なるほど。ラボを潰してしまえば転送先が消えるから、もうここに被害が出ることはないし…確かに一番早い方法だったかもしれないわね」

亜季「ええ、私もそう思い、実行に…」

清良「……でも、もし見つかったりでもしたら」

亜季「この私がそんなへまをするとお思いなのですか、清良殿は」

清良「杞憂なら、それに越したことはないけれど……心配なのよ、あなたが…」

亜季「相変わらず、清良殿はお優しいのでありますな。では、そうなる前に急いでこの地を離れると致しましょう」

清良「そうね。さっきまでの砂嵐と夜の闇にうまく紛れられていればまず見つからないはず…急ぎましょう」

亜季「了解であります!」ビシッ

~~~~~~

781: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)19:02:40 ID:CX0
~クロノシティ~

ボルケニオン『ったく、終わってみれば人騒がせな話だったな、結局避難も何も無駄足になっちまったしよ』

美世「でも、いざって時に皆が頼れるってわかったのは、あたしにはちょっと嬉しい収穫だったかも」

ボルケニオン『お前はそうかもしれねえけどな…こっちはとっくに歳だってのに、またあの山を登らなきゃなんだぜ…飛んで帰れたらラクなんだが、ここに来る時に水を切らしちまってな…』

未央「水?」

ジラーチ【ボルケニオンは両腕が給水ポンプの役割を果たしてるからね。その水を使って水蒸気の噴射で空を飛べるんだよ】

ボルケニオン『おう、そうだ、クロノの温泉もどうせ風呂掃除しねえと灰だらけだろ。なら、捨てる前に露天の湯を分けて貰えねえか』

美世「うん、聞いてみる。ボルさんの頼みなら断られはしないだろうし。けど……そっか、じゃあすぐには温泉には入れないね…」

未央「私なら大丈夫だよはらみー、確かにちょっと痛みはするけど、しばらくは我慢できるからさ」

ボルケニオン『何だ、そっちの嬢ちゃんは湯治か何かか』

782: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)19:03:10 ID:CX0
ジラーチ【今日みたいに天気がおかしくなった場所でポケモンがパニックを起こしてね。体を張ってそれを止めたから、思いっきり深手を負ってるんだよ】

未央「ジラちん、大袈裟だって…ほら、普通に動くし、何ともないない」プラプラ

未央「……っ」ズキッ

ボルケニオン『こりゃ、本人の自覚がないのが一番厄介だな』

加蓮「ちょっと、よく見たら腕腫れて来てるじゃん…!」

ネネ「えっ……!?」

ジラーチ【ガブリアスのツメで引き裂かれてるんだ、もしかしたら骨にヒビでも入ってるかもね】

未央「げ……骨やっちゃってる…? 切れ味抜群だなぁガブりんは…」アハハ

ネネ「未央ちゃん…」

ボルケニオン『おう、ジラーチに取り憑かれてるそこの小僧、名前、何つったか』

未央「こ、小僧って…これでも一応女の子だぞー!」

ボルケニオン『へっ、お前みてえなお転婆は小娘ってより小僧の方がお似合いだぜ』

未央「むー……かれん~、ボルじいが意地悪する~…」

加蓮「未央もドサクサにおかしなあだ名付けてるからイーブンじゃない…?」

783: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)19:03:45 ID:CX0
ボルケニオン『まぁ、何でもいいや。そんな話なら街の温泉より山の中の源泉に浸かるほうが治りが早ええ。飛んで帰るついでだから乗っけてってやってもいいぜ』

未央「え……それ本当、ボルじい!」

ボルケニオン『そのおかしなあだ名で呼ぶのはやめろ、爺さんなんて呼ばれるほど歳食ってねえよ』

ジラーチ【どうだかね、実際もう何千年生きてるやら】

ボルケニオン『小僧は黙ってろ』

ジラーチ【はいはい】

ボルケニオン『幸いあの源泉は砂嵐を免れてた筈だ。ここに飛んできた時にそこの湯を吸って来たからな』

未央「そういう事なら……少しの間、また皆とは別行動だね」

加蓮「マジカ団の連中の動き、明らかに活発になってきてる……時間もないし、先にジム戦は始めとくから」

未央「了解。ネネちん、はじはじ、かれんのこと、よろしくね」

ネネ「任せてください。未央ちゃんこそ、山道で足を滑らせないように気をつけて」

肇「すう……すう……」

忍「……………もしかしてだけど…」

未央「はじはじ……これだけ色々あったのに…………ずーっと寝てたのかい…?」

肇「ふにゅ……すう……」

加蓮「……爆睡してる」ツンツン

ジラーチ【まるでヤドンだね、これじゃ】

784: ◆6RLd267PvQ 19/08/12(月)19:04:05 ID:CX0
未央「トレーナーはポケモンに似てくるってヤツなのかねえ……はじはじー、行ってくるからねー」

肇「ふぁい……………すう……」

未央「……」パシャリ

加蓮「未央…」

未央「てへ、目の保養目の保養♪そんじゃ、とりあえずクロノの温泉でお湯を借りて、ボルじいと私は火山にレッツゴーだね!」

ボルじい『ケッ、せいぜい振り落とされないように気をつけろよ、小僧』ノッシノッシ

※かくして、ボルケニオンの誘いで火山の源泉へと向かった未央。

一方、加蓮、ネネ、肇の3人は5番目のジムリーダー、美世との戦いを控えている。

そんな中、一人悩む少女がいた。

忍「…アタシが今……やるべきことは……」

忍「……もっと強く、ならなきゃ……!」グッ

※次回へ続く!

786: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:10:22 ID:h8C
おまたせしました、20話です。

Burning spirit! Go wild.

787: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:11:09 ID:h8C
>>5つ目のジムバッジを手に入れるべく、ジムリーダー美世の導きで、火山と温泉の観光地、クロノシティに辿り着いた加蓮達。

怪我を治すため、幻のポケモンと言われるボルケニオンと火山の源泉に湯治へと向かった未央と別れ、ひとまず加蓮達一行もポケモンセンターで一泊するのだった……。

※そして、朝、ポケモンセンター内の温泉にて。

788: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:11:37 ID:h8C
肇「先生、しっかりしてくださいヤド先生!!」

ヤド先生「やぁん……」グッタリ

清良「何の騒ぎかと思って駆けつけてみれば……これは、お湯にのぼせていますね…」

ヤド先生「やぁん…」グッタリ

肇「ボールの中にいなかったから、お散歩かと思って探していたのですが……まさか温泉でのぼせてしまうなんて…」

※お湯が気持ち良かったので浸かっていたら、お湯から上がるのを忘れていたようです。

加蓮「ヤド先生もやっぱりヤドランなんだね……」

ネネ「と言うより、熱さを感じるのが普通の人やポケモンより遅いんですよ、ヤドランさんって」パタパタ

ヤド先生「やぁん…」

ネネ「冷たいきのみ牛乳もありますから、ひとまずこれで回復すると思います」パタパタ

清良「次からはトレーナーさんと一緒に入らなきゃダメよ。ひとまず処置はこれで大丈夫だから、後はゆっくり寝かせておくといいわ」

肇「ありがとうございます……先生、しばらく安静にしてくださいね…」パタパタ

ヤド先生「やぁん…」グッタリ

789: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:11:55 ID:h8C
加蓮「何か朝風呂どころじゃなくなっちゃったね。ポケモンセンターに温泉があるの、かなりレアだと思うんだけど」

ネネ「ガイドブックによると…ポケモンセンターや各宿に温泉がひいてあるらしいですね、地下のパイプを伝って…そのパイプを開発したのもジムリーダーの美世さんだとか」

加蓮「ふうん……それじゃあ美世さんって、この街のエンジニアみたいな感じなのかな」

ネネ「クルマやバイクや……他にもこんな工事にまで携わっているんですもんね……」

加蓮「おまけに暴走族さん達にも顔がきくみたいだし……って、アレ、そう言えば忍は?」

肇「忍さんなら明け方…随分張り詰めた表情をしていたのを覚えています」

加蓮「肇がジョギングする時間帯に?」

肇「はい、日課ですから、今朝も5時頃にこの辺りを…その時にお見かけして……あまりに真剣な表情で歩いてらしたので、声をかけづらく…」

加蓮「忍……どこ行ったんだろ…」

790: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:12:14 ID:h8C
~~~~~

Side 忍

※早朝、忍はポケモンセンターで配布している街のパンフレットを片手に、とある場所へと向かっていた…。

忍「……ここだね」

ツガル「ケンケン」

オウリン「リオッ」

忍「クロノ格闘道場……格闘タイプのポケモンを鍛えるには絶好の修行場……皆には悪いけど、この街のジムを制覇したら、次からはアタシもジム戦参加資格を得るわけだし…いつまでも戦力がこのままってわけにはいかないしね」

忍「皆はきっと美世さんとの戦いを越えて、また強くなる……なら、アタシだけ傍観してるわけにはいかないもん!」

忍「たのもーっ!」バァン

791: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:12:35 ID:h8C
奥に鎮座する女の子「……弟子入り志望者……ではなさそう、ですね」

忍「そんな悠長にしてる時間もないからね……悪いけどこの道場の看板……今からアタシが頂戴するよ!」

女の子「道場破り、と言うわけですね……。我がクロノ神誠道場、この街のジムリーダーにも引けはとりませんよ」スクッ……

女の子「あたしはここの師範……名を有香といいます。この道場は、己を鍛えるべく集まった武の魂を持つ野生ポケモンの修練場…」

ダゲキ「ダゲッ!」

ナゲキ「ナゲッ!」

エビワラー「シュシュッ」

サワムラー「シャラッ!」

カポエラー「ポエラッ!」

ルチャブル「ルチャブー!」

ハリテヤマ「ハリーテ…」

忍「…相手にとって不足なし、だね…!アタシはアリーゾタウンのトレーナー、忍!仲間の皆のために、もっと強くならなきゃいけないの!」

ツガル「ケンカッ」

オウリン「リオッ!」

有香「その瞳に宿る強い意志……わかりました、挑戦をお受けします!」

忍(待っててよ、皆……!絶対強くなって役に立てるようになるんだから…!)

~~~~~~

792: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:13:03 ID:h8C
~クロノジム~

紗南『さぁ今回も始まりました、ジムリーダーとの熱いバトル!実況は毎度お馴染みのあたし紗南がお送りするよ!』

ワアアアア……!

紗南『挑戦者は現在バッジを4個保持、怒涛の快進撃を見せる加蓮さん達のユニットだぁ!』

加蓮「どうも、今日は人数少ないけどお手柔らかにね」

肇「よろしくお願いします!」

紗南『おやおや、二人だけ?他のメンバーは……』

加蓮「未央は病欠、ネネは客席。リーグ協会から未央不在でのジム戦に関しては許可おりてるはずだよ」

客席のネネ「あの、炎タイプのジムと聞いたので……ここはお二人にお任せしようかなと」アハハ…

紗南『おーっと、ネネ選手戦わずして相性の不利から撤退を決め込んでいたー! ですが、これも立派な戦略と言えるよね!』

亜季『うむ、敵を知り己を知れば百戦殆うからず。戦とは戦う前に勝敗を決して行うものでありますからな』ウンウン

紗南「亜季ちゃんマイク返して…」

亜季「おっと失敬、つい戦略と聞いて体が反応を…」

ネネ「一応、相手がほのおタイプでも戦えない事もなくはないんだけど…」

ネネ(ジム戦ではトレーナーがポケモンに乗っての戦闘は禁止されてるみたいだし、自然の恵み連打のきのみ作戦は使えないものね…)

ネネ「とにかく、ここは二人に頑張って貰わないと……ここから応援してまーす!」

アマちゃん「マジョマー!」

加蓮「…ってわけだから、今回は私達2人が挑戦するよ」

紗南『了解です! それではいよいよジムリーダーに登場していただきましょう!どうぞっ!』

793: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:13:33 ID:h8C
ブロロン…ブロロン…

加蓮「…ん?」

肇「この音は…?」

ブオオオン……キキーッ!

※突如赤いスポーツカーがフィールドに現れた…。

美世「ふふ、この子はあたしの相棒でね、ジムのフィールドが広めなのもクルマが走れるようにするためなんだ」ガチャ バタン!

肇「広め、と言いますか…」

加蓮「どう見てもバトルフィールドの外周、サーキットだよね」

美世「一応レース大会も開いてたりするからね♪どうせジムリーダーやるなら自分の好きなようにやらなくちゃ、でしょ?」

紗南『因みにそのレース大会、美世さん自らも参加してなかなかの高成績を維持してたりします!』

美世「毎回惜しいとこまでは行くんだけどねぇ…やっぱりやるなら中途半端はダメなんだよね……でも、あたしはこの街のジムリーダーだもん!まずはその責任をしっかり果たします!」

加蓮「炎タイプのジム……ここはやっぱり……先鋒は任せていいよね、肇」

肇「承りました!今日ここに来られなかった皆さんの分まで……精一杯!」ボウン!

ヤド先生「…やぁん」

紗南『挑戦者肇選手、一番手はヤドランです!特殊攻撃に対する守りが高いこの牙城、それも苦手なみずタイプのポケモンをジムリーダーの美世さんはどう攻略するのかーっ!』

ワアアアア…!

美世「うん、みずタイプ…いい判断、だけど!」ボウン!

バクーダ「バクウウウ!」ズシン!

794: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:14:06 ID:h8C
紗南『あーっと、いきなりほのお、じめんタイプの重戦車、バクーダ登場~!みずタイプの技には圧倒的に不利なはず!果たして美世さんの作戦とはーっ!』

ワアアアア…!

美世「重戦車、とはいえ速さではヤドランより上回る……だからこそ、ノーリスクでこの技が撃てる!」

バクーダ「クウウウウウ………!」ゴゴゴゴゴ!

肇「あれは……背中のコブが震えて……!?」

美世「ターボ全開ッ!バクーダ!『噴火』だよっ!!」

バクーダ「クウダアアアア!」ドゴゴゴオオ……!

肇「なっ……!?」

ヤド先生「やぁん……」

ヒュウウウウ……ドゴゴゴオオ……!

モクモクモク……

紗南『残存体力が最大に近いほど威力を増す炎タイプの上位技、噴火……!いきなりの大技に、流石のヤドランもなすすべなく倒れてしまうのかー!』

肇「……いいえ、そう簡単には…!」

ヤド先生「やぁん…!」ムクリ

美世「あの火力でまだ立ち上がるの…? 流石の耐久力だね!」

肇「お褒めいただき、光栄です!そして……耐え抜いたからには、この技で!」

ヤド先生「やぁん…!」ポーーーッ!

美世「な、何?ヤカンの音みたいな……」

795: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:14:36 ID:h8C
肇「ふふ、今朝温泉でのぼせたのも、無駄にはならなかったみたい……。この技でトドメです!先生、『熱湯』攻撃を!」

ヤド先生「やぁああん!」ブバーーッ!

バクーダ「バクッ!?」

美世「ね、熱湯!?」

バクーダ「バクウウウ!」バババアアア……!

紗南『効果は抜群だーっ! みずタイプの技でありながら、一定確率で相手を火傷状態にしてしまう厄介な攻撃、熱湯!これはバクーダ、立っていられるのかー!?』

バクーダ「バクウ……ダッ…」バタン…

紗南『あーっ、ここで倒れてしまいましたー!バクーダ、戦闘不能です! しかし噴火攻撃でかなりのダメージを与えることには成功している!勝負はまだまだわからないよー!』

オオオオオ…!

美世「ありがと、バクーダ…エンスト前提での攻撃だったけど……頑張ったね」シュウウウ……

肇「先生、体力は……」

ヤド先生「……やぁん…」

肇「少しお辛そうではありますが……まだ、2撃程度なら受けられる…ここは持久戦に持ち込んで後続を少しでも有利にしていきましょう」

ヤド先生「やぁん」コクン

美世「覚悟はいいみたいだね……じゃあいくよ!この子相手なら、どうかな!」ボウン

バクガメス「ガーメ!」ズシン!

796: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:15:08 ID:h8C
紗南『ほのお、ドラゴンタイプの装甲車バクガメス!!背中の甲羅はうかつに突っ込むと爆発してカウンターを仕掛けてくるよ!』

オオオオオ…!

加蓮「それ、解説が言っちゃっていい情報なわけ…?わざわざそういう風に言われてみすみす突っ込むわけないじゃんね」

ネネ「…いえ、違うかもしれません……わざわざ甲羅の情報をこちらに漏らしたと言うことは……」

加蓮「まさか、甲羅自体がブラフ…?敢えて別な戦法で来るって事…?」

肇「何をしてくるかわかりませんね……よかった、耐久力のある先生なら、相手の攻めをいなしつつ、その間隙(かんげき)を見極めることが出来るはずです!」

美世「どこまでそう悠長に構えてられるかな?バクガメスはドラゴンタイプ……ちょっとやそっとのみずタイプの技じゃ倒せないよ!…そして、覚える技のレパートリーも…広い!」

バクガメス「ガーメーガーメー……」キュイイイイ……

紗南『おっと、バクガメスの口元に閃光のエネルギーが集まっていくー!』

ネネ「あれは……肇さん!」ハッ!

肇「……まさか、電気技…!?」

美世「そういう事!バクガメス、『チャージビーム』ッ!」

バクガメス「バーーー!」ビイイイイム!

ヤド先生「やぁああん………!」ビリビリビリ!

紗南『効果は抜群だーっ!』

ヤド先生「……やぁん…!」

肇「先生!」

797: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:16:33 ID:h8C
紗南『しかし踏みとどまったー!流石の耐久力です!噴火に続いて電気技を受けてなお、ギリギリのラインで持ちこたえているー!』

ワアアアア…!

美世「なかなか…!この連携でも突破できないなんてね……!」

加蓮「確かに、守りの戦いに関しては、肇とヤド先生の十八番だからね……」

ネネ「でも、次を受けたら……流石にヤド先生でも……」

ヤド先生「…やぁん」

肇「…はい、ここは心身を癒やし、落ち着いて事に当たるのが上策かと……!では先生、『なまける』で回復を」

ヤド先生「やぁん」ヨッコイショ

ヤド先生「………やぁん……」ボーッ…

紗南『あーっと、その場に座り込んでぼーっとしはじめたー!ヤドランのなまけるは体力の半分を自己回復してしまう技!これでますます勝負がわからないぞー!』

ワアアアア…!

ネネ「でも、パッと見ではあれ、何ていうか……その…」

加蓮「まさに『まぬけポケモン』だよね」

ネネ「加蓮さん、そんな直球で」

肇「心を無にして……清らかな水の如く……穏やかに……」

美世「確かに回復は厄介だけど、その状態じゃ文字通り耐久勝負になっただけ!……勝ちへの道筋、もう見えてるよ!」

バクガメス「ガメ!」

798: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:17:04 ID:h8C
肇「先程と同程度の威力であれば、いくら攻撃を加えてもすぐさま回復します。体力で優位に立った時点で、こちら側からも反撃を…」

美世「…そんな隙、あたしが与えると思うのかな?」フフフ…

紗南『不敵に笑う美世選手!次なる一手は果たして!』

美世「チャージビーム!」

バクガメス「ガーメーガーメー…バーーー!」ビイイイイム!

ヤド先生「やぁああん…!」バリバリ!

肇「まだです…!なまける!」

ヤド先生「やぁん…」ヨッコイショ 

ヤド先生「……やぁん」ボーッ…

美世「チャージビーム!!」

バクガメス「バーーー!!」ビイイイイム!

ヤド先生「やぁん……!やぁああん………!」ビリビリビリ

肇「なまけるです!」

ヤド先生「…やぁん」ヨッコイショ

美世「ビーム!!!」

バクガメス「バアアアアアア!!!」ビイイイイム!!!

ヤド先生「やぁああああああああああん………!!」ビリビリビリバリバリビリビリビリ

肇「く……なまけ……」

ネネ「待ってください!さっきから明らかにビームの威力が……」

肇「はい……わかっています…!だんだん回復が追いつかなくなって……」

799: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:17:32 ID:h8C
美世「気付いたね。チャージビームは撃つ度に特殊攻撃の威力が上がる技……」

肇「……!」

美世「確かにその子の耐久力は凄かったけど……、これから繰り出す次の技はもう耐えられない!」

肇「であれば……最後まで見極めに専念するのみです!」

ヤド先生「やぁん」コクン

加蓮「うん、流石ブレないね。……任せて肇、私が何とかしてみせる…!」

美世「いくよ、バクガメス!火力最大!!!『オーバーヒート』!!」

バクガメス「ガッメース!!!」ゴオオッ!

ジュワアアアアアア!!!

加蓮「暑っ!?」

ネネ「何て威力……!高めた特殊攻撃の力がここまでだなんて……!」

バクガメス「ガメ……」フシュウウウ…

紗南『バクガメス、オーバーヒートで特殊攻撃の能力値ががくっと下がってしまいました!しかし、それでもなお微量の能力強化が残っています!!』

美世「チャージビームを何度も撃ったからね……重ねがけした能力強化、そうそうマイナスにはメーター振り切ったりしないんだから!」

肇「先生、大丈夫ですか、先生!」

ヤド先生「やぁん……」ヘタッ

紗南『ヤドラン、その場にへたり込んでしまったー!これは続行不可、戦闘不能です!』

清良「冷却シートと経口補水液!それから火傷治しも!」タタタッ

亜季「イエス・マム!!」タタタッ!

800: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:18:09 ID:h8C
肇「……加蓮さん」

加蓮「ん。大丈夫、肇が相手の奥の手を暴き出してくれたおかげで、こっちも落ち着いて戦えそう」

加蓮「それに……今回は、アレもあるし……ね」

ネネ「ファイトです、加蓮さん」グッ

加蓮「肇」スッ

肇「お願いします、加蓮さん」

パァン!

紗南『友情のハイタッチで選手交代、次なるトレーナーは加蓮選手!そして繰り出すポケモンはー!?』

加蓮「そろそろジム戦でもいいとこ見せてよね、まろ!」ボウン

まろ「チルルー!」バサァ!

紗南『ここでチルタリスの登場だー!ドラゴンタイプ同士の対面となりました!』

美世「ドラゴンタイプの弱点はドラゴンタイプ……なるほど、今回はあたし達、随分な悪路みたいだね」

バクガメス「ガメ…」

加蓮「弱点を的確に付くのはポケモンバトルのセオリーだからね。悪いけど、確実に勝たせて貰うよ!まろ、飛んで!」

まろ「チルルウ!」バサァッ

美世「空に逃れた……?」

加蓮「この高さで飛び回れば……そっちのビームの狙いもつけられないでしょ!まろ、行くよ!『龍の波動』!!」

まろ「チールウウウウ!!」ギュオオッ……!

美世「そう来たか……!バクガメス、こっちも龍の波動!!」

加蓮「な!?」

バクガメス「ガーメー!!」ギュオオッ…!

ドゴオオオン……!

801: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:18:37 ID:h8C
紗南『互いに繰り出した技がぶつかり合って相殺したーっ!!物凄い爆発……多分どっちも、あれをマトモに一発でも食らったらひとたまりもないね……』

オオオオオ……

加蓮「同じ技って……そういうのアリ…?」

美世「流石に飛び回りながら龍の波動を撃つことはできない……撃つときは必ず空中で止まるはず……それなら、バクガメスの龍の波動で相殺できる!」

バクガメス「ガメ!」

加蓮「く……どうしよ……相殺されない威力の技ってなると…もう、アレしか……でも……」

加蓮(さっき紗南が言ってた……迂闊に突っ込むと爆発する甲羅でこっちがやられるって……)

加蓮「まろ……!」

まろ「チル」コクン

加蓮「……ゴメンね、無駄にはさせないから……!」

まろ「チールウウウウ……!」ピカアアアア……

紗南『チルタリスがまばゆい光に包まれていくー!ゴッドバードで一気に決めるつもりなのかー!?』

美世「ゴッドバードは撃つ時に必ずタメが必要な大技……なら、そのタメの間に龍の波動で撃ち落として…!」

まろ「チルルルウウ!」ギュオッ…!

美世「は、速いっ!?」

バクガメス「ガメ!?」

802: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:18:58 ID:h8C
ネネ「……戦う前に、渡しておいたんです。タメが必要な技をタメ時間無しで一度だけ発動できる『パワフルハーブ』……今回、私は参加できませんから」

ネネ「だからこの一撃は……!」

加蓮「私とネネと、まろの全力!!」

まろ「チルルルウウ……!」ギュウウウ……!

美世「『トラップシェル』で受け止めて!」

バクガメス「ガメ!」クルリ

紗南『背中の甲羅で迎撃体制のバクガメス!チルタリスの勢いはもう止まらない!果たして、これはどうなるー!?』

ワアアアア…!

カッ……ドゴゴゴオオ………!!

モクモクモク……

肇「何て…爆発……!」

803: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:19:28 ID:h8C
ネネ「煙が晴れないと……どうなったのか……」

加蓮「……まろ…!」

まろ「…………」

バクガメス「………ガメ」

まろ「チル……」バタン……

加蓮「まろっ!」

紗南『これは…チルタリス、戦闘不の……』

まろ「……チルル…」ムクリ

バクガメス「ガメ」ニヤリ

バクガメス「……ガメ…」ズシン……

紗南『と思いきやー!バクガメス戦闘不能!!チルタリス、ギリギリで踏み止まったー!』

ワアアアア……!!

美世「ふふ、バクガメス、加蓮ちゃんとチルタリスの事、気に入ったみたい。いいライバルに出逢えたね、バクガメス」シュウウウ…

加蓮「こちらこそ、だよ。…認めて貰えるって、嬉しいよね、まろ」

まろ「チル♪」

ネネ「良かった……でも、もうチャージ無しのゴッドバードは……」

加蓮「うん。ほんとは最後までとっておきたかったんだけどね……だって、多分最後のポケモンは……」

美世「いくよ、ゴウカザル!!」ボウン!

ゴウカザル「キキャアーッ!!」

紗南『ジムリーダー美世さんの3匹目、突撃砲の異名をもつゴウカザルの登場だーっ!』

ワアアアア…!

804: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:19:56 ID:h8C
加蓮「…ほのお、かくとうタイプのゴウカザル……マギアシティの街頭ビジョンで、何度も見た……その強さも弱点も、理解してるつもり……」

まろ「チル…」

加蓮「……でも、私は……もう諦めない!不利な局面でだって、やれる事はある……でしょ、肇」

肇「加蓮さん…まさか」ハッ

加蓮「まろ、ゴッドバード準備!!」

まろ「チールー……」カアアアアア……

美世「隙だらけだよ!ゴウカザル、『ストーンエッジ』!!」

ゴウカザル「キッキャアア!!」ドゴン……ガガガガガガ!

紗南『地面に突き立てた拳で岩塊が空に打ち上がったー!!空中でチャージ中のチルタリスにこれを避ける手はないぞーっ!』

加蓮「そう、その大技を出させたかったの…小技の撃ち合いになったら絶対に出てこない、一撃必殺クラスの大技を…!」

まろ「チルルー!」ガガガガガガ…!

紗南『効果は抜群だー!!さらに急所に直撃ー!!』

肇「加蓮さん…まろちゃん……!」

まろ「チル……」ヒューン……

紗南『力尽きて地面に落下するチルタリス!満身創痍での急所弱点で完全に戦闘不能です!』

加蓮「大丈夫、地面には落とさせないから」スッ

加蓮「…お疲れ様、まろ…頑張ったね」シュウウウ……

紗南『加蓮選手、地面に激突する前にチルタリスをボールに戻しました!大健闘のチルタリスに拍手!』

ワアアアア……!

805: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:21:09 ID:h8C
加蓮「肇!」

肇「はい、相手の奥の手、しかと見届けました。これなら……」

加蓮「勝つよね?」

肇「勝ちます!」

パァン!

紗南『ここで再びバトンタッチ!肇選手が前に出ます!』

肇「ガマかみさん、お願いします!」ボウン!

ガマかみさん「ガーママ!」ドンッ

紗南『みず、じめんタイプのガマゲロゲ登場ー!パワーファイター同士の真っ向勝負となりそうですっ!』

美世「水も地面も、ゴウカザルの苦手なタイプ……一撃でも食らったら、リタイア確実……かな」

ゴウカザル「キキャッ!」

美世「なら、技を受けずに速さで翻弄するしかないよね!ゴウカザル、『フレアドライブ』!!」

ゴウカザル「キキャアーッ!」シュン

肇「消えた…!?」

ゴウカザル「キキャッ!」ボゴオッ!

ガマかみさん「ゲーロッ!」ドゴシャア!

806: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:21:29 ID:h8C
紗南『圧倒的スピード、圧倒的パワー!フレアドライブ、炎を纏っての全力の突撃です!!』

ゴウカザル「キキッ…!」ピキッ……

肇「ダメージがゴウカザルさんにも…?」

美世「限界を超えた速さでの突撃だからね。その分受ける反動もかなり痛いんだけど……!」

肇「あの速さ……ガマかみさんの技で捉えきれるかが鍵ですね……!」

胸を叩くガマかみさん「ゲーロッ」ドンッ

肇「『任せな』、ですか? ふふ、頼もしいです」

肇「であれば……不肖の身ではありますが、私に策があります。どうか、お力添えを!」

ガマかみさん「ゲロッ!」

美世「何もしてこないなら続けて行くよ!ゴウカザル、『フレア…』」

肇「『ハイドロポンプ』です!」

ガマかみさん「ゲーロゲー!!」ブバァアア!

美世「かわして!」

ゴウカザル「キキッ!」シュン!

ネネ「また消えた…!どこへ……!?」

加蓮「肇、前!!」

ゴウカザル「キキッ!」シュン

ガマかみさん「ゲロッ!?」

807: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:21:56 ID:h8C
紗南『なんと、ハイドロポンプをかわしたその脚でガマゲロゲの眼前まで移動しましたー!とんでもない瞬足です!』

オオオオオ……!

美世「この距離でなら……!ゴウカザル、『インファイト』!!」

ゴウカザル「キキャキキキキャアアア!!」ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

ガマかみさん「ゲロロロロロオ!」ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

紗南『ラッシュラッシュラッシュ!格闘タイプの上級技、インファイト!防御を捨てて全力で攻撃を行う必殺技です!』

ガマかみさん「ゲロ……ゲゲ……」ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

肇「そう、ハイドロポンプで遠距離からのフレアドライブを封じられ、接近戦に持ち込まざるを得なくなった……」

ガマかみさん「ゲロッ」ガシッ

ゴウカザル「キキャッ!?」

美世「えっ、掴まれた!?あの攻撃の最中に…!?」

紗南『何と!必殺のインファイトが止められてしまったー!?』

808: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:22:22 ID:h8C
肇「これで自慢の瞬足を活かしたフレアドライブも、大地を叩き割るストーンエッジも、何もできませんね…!そして……」

ガマかみさん「ゲーロオオ……!」キュオオオ……

美世「そんな、この距離じゃ……!」

肇「いきます!零距離ハイドロポンプです!!」

ガマかみさん「ゲロロオオオ!」ブバァアア!

ゴウカザル「キギャアアアアアア!!」ブバァアア……!

美世「ゴウカザルーっ!!」

紗南『至近距離からのハイドロポンプ、なすすべなくクリーンヒットー!!効果は抜群だーっ!!』

ゴウカザル「キギャッ!」ドゴンッ! バタン!

紗南『ゴウカザル、バトルフィールド外周にあるサーキットの、さらにその壁面にまで叩きつけられてしまいましたー!これは戦闘不能と見て間違いないでしょう!』

清良「アイシングの準備、それと元気のかたまりと湿布薬ね!」タタタッ

亜季「イエス・マム!!…しかし見事な砲撃でしたなあ……私のブロスターにも見習わせたいであります……」ホレボレ

清良「亜季ちゃん?」

亜季「し、失礼しました、つい反応を!急ぎ救護活動に取り掛かるであります!」タタタッ

809: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:22:48 ID:h8C
美世「負けちゃった…かぁ……うーん、完全燃焼……だね…!」

肇「美世さん、対戦、ありがとうございました」ペコリ

加蓮「あ、私も。ありがとうございました」ペコリ

肇「学ぶべきことの多い戦いでした…タイプの相性だけでは、勝負はまだわからないのですね」

美世「うん、っていうか、ジムリーダーなんてやってると、必然的にそのタイプの弱点をどう克服するかが課題になっちゃうんだよね……どうにもあたしは、まだまだみたいだけどさ……じゃあ、はい、これ」

肇「ジムバッジ……赤と黒の……これは、火山ですね」

美世「うん、『ボルカノバッジ』…クロノ霊峰はこの街のシンボルだからね」

肇「ありがたく頂戴します……そして…加蓮さん」

加蓮「そうだね……これで、いよいよ……」

バァン!

忍「はぁ……はぁ……! み、みんなーっ!」

810: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:23:10 ID:h8C
オウリン(ルカリオ)「クワンヌ!」

エビワラー「シャイッ!」

ツガル「マケンカ!」

有香「勝負はついていましたか…。ですが、こちらも稽古の成果、アリですよ、皆さん!」

加蓮「そう、忍……あなたとも一緒に挑めるんだよね、ジム戦に」

ネネ「わあ、オウリンちゃん、進化したんですね……!かっこいいです…!…それに、そちらのポケモンさんは…」

未央「ほほーう、パンチの鬼、プロボクサーの魂を秘めるエビワラーかぁ……しのむー流石、お目が高いですなあ♪」スタスタ

りゅーすけ「バウリュ」

ガブりん「フーン…」

ボルケニオン『ほお、美世を倒したか……なかなかやるじゃねえか、小僧の仲間達もよ』

加蓮「未央、腕は?」

エビワラーの真似する未央「もち、全快っ!」シュシュッ!パーンチ!

エビワラー「シャイッ?」

811: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:23:35 ID:h8C
ボルケニオン『へっ、クロノの温泉の回復効果舐めてんなよな。何せ、一番効果がありそうな秘湯中の秘湯まで案内してやったんだ、バッチリよ』

加蓮「……そっか。じゃあ、これでやっと全員揃ったってわけだ」

忍「ゴメンね、皆……アタシ、どうしても皆の足手まといにだけはなりたくなかったから……」

加蓮「うん、何となくそんな事じゃないかと思ってたけどね。一応心配したんだから」

忍「ごめんっ!けど、これからは絶対に役に立ってみせるから!」

ツガル「マケン!マケン!」

肇「あ、そう言えば忍ちゃん、昨日から上の空でまだご飯……」

忍「あ……あはは……ほら、空腹は最高の調味料って言うし……これからみんなで焼き肉でもさ」

オウリン「クワンッ!」

オウリンをつねる忍「食べるよー!」ムニーッ

オウリン「クワーヌ」ジタバタ

未央「さて。私達がそれぞれジム戦の間に何をしていたのかは、待て次回!って感じだね」

ジラーチ【誰に話してるのさ】

未央「えへへ、お約束ってやつなのですよ♪一応ね!」

812: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:23:58 ID:h8C
※かくして、クロノジムでのバトルを制し、仲間達もそれぞれの問題を解決し、無事に集まることができた。

※次回は未央と忍、2人の1日にも注目だぞ!

続く!

813: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:25:45 ID:h8C
はい、以上になります。
夏場に炎ジム戦描くの難産してた(味方側が炎に有利すぎて)のもあり遅くなりましたね…

しかし毎日暑くてちょっと夏バテ気味な私。
皆さんも、夏は大詰めですが、ご油断なきように。

ではお目汚し、失礼をば。

814: ◆6RLd267PvQ 19/08/22(木)16:29:06 ID:h8C
因みに補足。

忍の3匹目がエビワラーなのは劇場ネタです。

パンチなら通用するしっ

815: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:03:12 ID:Kqf
更新します。21話。

Aiming for heights! Of the arena.

816: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:04:01 ID:Kqf
※加蓮達がクロノジムに挑戦した日の朝、忍はクロノ格闘道場で厳しい修行に励んでいた…。

Side 忍

忍「発勁!」

オウリン「リオッ!」ブオン!

ワンリキー「リキッ!」バシッ ビリビリ…

有香「一本!この試合、それまで!」

忍「はぁ……はぁ……」

オウリン「リオッ…」

有香(連戦で随分消耗している…かなり善戦しているけど、流石にそろそろ限界かもしれない…ならば)

有香「次、前へ!」

エビワラー「シャッシュッ」シュシュ!

忍「…強そうなポケモン…けど、負けられない!」

オウリン「リオッ!」

有香「始めっ!」

エビワラー「シュッ!」シュン…

忍「は、早いっ……」

オウリン「リオーッ!」ペシン! バタン…

有香「勝負アリ、ですね。低威力先制技のバレットパンチすら、マトモに受けきれない…おそらく、体力の限界です」

忍「うっ……」バタン

有香「あ、あの!?大丈夫ですか!」

忍「………」キュルルル…

有香「あ……これは……」

忍「お腹がすきました……」キュルルル…

~~~~~

817: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:04:22 ID:Kqf
有香「すみません、急だったので、ありあわせで卵焼きとお味噌汁くらいしか…」

忍「ん~ん、美味しい、空きっ腹にしみる……」ガツガツガツ

有香「あの、あまり急いで食べると胃がびっくりしてしまいますよ?」

忍「大丈夫大丈……うっ」

有香「ほら……」

忍「ちょっとゆっくり食べます……軽く吐きそうになった……」モグモグ

有香「……それにしても、ご飯も食べずにいきなり道場破りだなんて尋常じゃないですよね……良ければ理由を聞かせて貰えないでしょうか」

忍「…ん。実はさ…」

~~~~~

818: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:04:45 ID:Kqf
有香「成程、クロノジムでバッジを手に入れたら、忍ちゃんもジム戦への参加資格を得る事に…」

忍「そ。皆凄く強いからさ、アタシも選んで貰えるように頑張らなくちゃなって」

有香「それで、焦っていたんですね……ですが、勝負の道は1日にして成らず、です」

忍「ん…? …何かそのコトワザ微妙に違うような…」

有香「と、とにかく!付け焼き刃で身に付けた力だけでは、実戦には通用しませんから…でも、そう言う意味では忍ちゃんもリオルも中々の筋の良さ…もしや、誰かに師事したりしていたのですか?」

忍「あー、うん。四天王の拓海さんに色々と…」

有香「拓海さんに!? 拓海さんって、あの拓海さんですよね!?」

忍「あ、そう言えばクロノ出身なんだっけ、拓海さんって…」

有香「いえ、それ以前に四天王直々に稽古を付けて貰えるなんてそうある事では…特に今は色々とたてこんでいると聞きましたし……」ハッ

有香(そんな中で時間を割いて特訓する程の何かがこの忍ちゃんにはある、と……?)

忍「……ふう、大変美味しゅうございました……ごちそう様でした」

有香「………」フーム…

忍「……って、有香ちゃん?おーい…」フリフリ

有香「はっ、あたしとした事が思想に没入して我を忘れて……!」

ごちそう様するオウリン「リオッ」パンッ

真似するツガル「ケンカニ?」ポコン

819: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:05:03 ID:Kqf
忍「よし、みんな食べ終わったみたいだね。じゃあ後片付けしたら、早速特訓を…」

有香「待ってください、あの、食後いきなり身体を動かすのは非効率ですし、体にも毒ですから…。適度な休息あってこそ、丈夫な筋肉は作られるものなんです」

忍「休息……かぁ…でも、ジッとしてるだけって言うのも……何だかなあ…」

有香「でしたら、腹ごなしの散歩も兼ねて、温泉になど入られて来てはどうでしょうか?」

忍「温泉……あっ、そう言えば色々あってまだマトモに温泉に入れてなかった気が……」

有香「それは勿体ないです!この街の温泉は傷や疲れにも効果がありますし、体力回復にはうってつけなんですよ」

忍「へえ……そっか、温泉でなら短時間でも身体を休めることができるんだ……」

有香「それと、お勧めはお風呂上がりにポケモンのマッサージや毛繕いをしてくれるサービスですね。これがあるのとないのとじゃ、ポケモンの戦いでのコンディションもまるで違いますから…特に、肉弾戦主体の格闘ポケモンであるなら、必須と言っても過言ではないかと!」

820: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:05:17 ID:Kqf
忍「有香ちゃんがそこまでお勧めしてくれるなら……うん、ちょっとみんなで行ってみようかな、温泉!」

オウリン「リオリオッ!」

ツガル「ケンカ!」

有香「あたしは道場を空けるわけには行かないので一緒には行けませんが…是非、ゆっくりして来てください。道場はこの通り、逃げたりしませんので!」

忍「うん、色々ありがとう。よっし、温泉だ温泉だ~!」

~~~~~

821: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:05:39 ID:Kqf
Side 未央

※ボルケニオンに連れられ、険しい山道をひとっ飛びした未央は、山奥の秘湯で身体を癒やしていた…。

未央「いやぁ……心がぽかぽかしますなぁ……」チャプン…

顔を洗うりゅーすけ「バウリュッ」バシャバシャ

砂に潜るガブりん「ガブルル…」フー…

お湯を雨にするめりゃめりゃ「メルー」シャワーー

未央「お風呂の入り方ひとつとっても、みんな違ってて面白いなぁ…っていうか、考えてみたらこれ、混浴露天風呂だね」アハハ

ジラーチ【呑気だなぁ、怪我を負わされたガブリアスとも一緒にお風呂だなんて】

未央「いいの、ジラちんは黙ってて」

ジラーチ【はいはい】

未央「私が怖がってたら、ガブりんも心を開いたりしてくれないでしょ? それにあの逆鱗だって、私達を傷付けるつもりで使った技じゃないんだもん。ホントは誰かのために怒ることができる、優しい子なんだよ、ガブりん」

りゅーすけ「バウリュ」コクン

めりゃめりゃ「メルメラ♪」

ガブりん「フ…フーン」テレリ

822: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:06:11 ID:Kqf
未央「あは、ガブりんが照れてる♪ あー……極楽極楽……」

ボルケニオン『オイ小僧、随分長湯じゃねえか』ノッシノッシ

未央「ボルじい、女の子のお風呂中に覗きはよくないぞー」

ボルじい『ケッ、誰が好き好んでニンゲンの裸なんか見たがるかよ。そうじゃなくて、浸かり過ぎって言ってんだ』

未央「ほえ?」

ボルじい『回復効果が高い特別な湯だからな。あんまし浸かりすぎると過回復で肌がグズグズになっちまうんだよ』

未央「うええっ、は、早く言ってよねボルじい!?」ザバァッ

ボルじい『普通ならとっくにあがって来る時間だからよ、つい言いそびれちまったんだ。こうして言いに来ただけ有難いと思うんだな』ハハハ

未央「むー、ボルじいってば、性格悪いなぁ」プクー

ボルじい『老獪結構だ、伊達に長生きしちゃいねえよ』

未央「いやぁ、どっちかと言うとちょっと物忘れのケがあるのでは…?」

ボルじい『誰が年寄りだ誰が!』ブシュー!

お湯かけられた未央「ぶぱばばば!」

ジラーチ【言わぬが花だよ、未央】

ボルじい『ジラーチのボウズの言う通りだ、口は災いのモトって言うだろ』

ジラーチ【……誰がボウズだって?】

ボルじい『あん、やるか?言っとくがこっちはこの手で山ひとつぶっ壊した事もあるんだぜ』

ジラーチ【それくらい何さ、こっちだって隕石のひとつふたつ落とせばそれくらい…】

ボルじい『ならその隕石をお前のいる場所まで弾き返してやるよ』

ジラーチ【それじゃあこっちは弾く水が切れるまで隕石を】

未央「子供のケンカかっ!!」

ジラーチ【未央は黙ってて!】

ボルじい『小僧はだぁってろい!』

りゅーすけ「バウリュ…」ヤレヤレ

823: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:06:35 ID:Kqf
ガブりん「ガブブブ」クスクス

めりゃめりゃ「メラメル?」

ガブりん「ガブ」ハッ

未央「あ、ガブりんが笑った!」

ボルじい『へえ、いい顔できるじゃねえか、ガブリアスの嬢ちゃんよ』

ジラーチ【笑われたのは気に入らないけど、ずっと険しい顔してるより千倍素敵だよ】

未央「うんうん♪ねぇガブりん、私、ガブりんの特訓も一緒にしたいなぁ」

ガブりん「ガブル?」

ジラーチ【いいんじゃないかな。特に、逆鱗を使うならトレーナーがうまくフォローする必要もあるからね】

未央「逆鱗かぁ……あの技を使わなきゃいけない場面って、そうそう来るとも思えないけど……でも、確かに、使いこなせたら強力な武器だよね!それに…メガシンカの事もあるしさ」

ボルじい『ジムを巡っての旅だと聞いて、そうだろうとは思ったが…ケッ、お前みたいな小僧がドラゴンのメガシンカをねぇ…そんなんで逆鱗なんか使わせたら、トレーナーの小僧諸共に周り全てを灼き尽くしちまうだろうよ』

ガブりん「ガブ…?」ビクッ

824: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:06:59 ID:Kqf
未央「大丈夫。そうならないための特訓だもん。いきなりメガシンカなんか使わないし、まだまだ旅は長いんだからさ♪ ゆっくり少しずつ慣らしていこうよ、ガブりん♪」ナデナデ

ガブりん「ガブル♪」

ジラーチ【また手袋もしないで鮫肌を直接……】

未央「こうしてゆっくり撫でる分には大した傷にはならないよ、ざらざらしてちょっと気持ちいいくらいだし、へへ」ナデナデ

ボルじい『ほお……心根だけはいっちょ前に小娘ってとこか』

未央「ボルじい、男だの女だのって…イマドキ流行らないんだよ、そういうの」

ボルじい『こちとら何万年と生きてんだ、今更そう簡単に考え方を改められるかよ。それにな、女だろうが男だろうが、やるヤツはやるし、やらねえヤツはやらねえもんだ。大事なのは呼び名じゃねえ、中身だろ』

未央「むう、そうは言うけどさあ……へくちっ!」

ボルじい『少なくともそうやって平気で素っ裸で突っ立ってるヤツを手放しで女呼ばわりしたかねえやな、風邪引かないうちにサッサと服を着るんだな』

未央「へーい……うう、つい夢中になってしまった…けど、覗く人なんて誰もいないしさ」

ジラーチ【それ以前の問題だと思うんだけどね……】


~~~~~

825: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:07:21 ID:Kqf
Side 忍

~クロノ温泉~

忍「はぁ………! 久々に人心地って感じするよ……」

オウリン「リオー…」

ツガル「カニー…」

忍「思えば本当に今まで色んな事があったからなぁ……プロセウタウンに流れ着いて、芳乃ちゃんや拓海師匠、スイクン様に鍛えて貰って……」

忍「マリータ峠の特訓……加蓮ちゃん達が来るまでは、ひたすらあそこで毎日……」

忍「……そう言えば、オウリンに出逢ったのも……」

~~~~~

826: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:08:40 ID:Kqf
※加蓮達のプロセウ到達より数日前………。

~マリータ峠~

拓海「いいぞ、もっと打って来い!コイツを倒すまで昼メシは食えねえと思え!」

忍「く……それは辛い……! よし、ツガル、ドレインパンチ!」

ツガル「マケーン カーッ!」

受け止めるバンギラス「バンギラッ!」ガシッ

ツガル「マケッ!?」

忍「止められた…!?」

拓海「へっ……技の選択は間違ってねえよ。確かに、アタシの蛮鬼羅衆(バンギラス)に格闘技は効果抜群だ」

蛮鬼羅衆「ギーラッ!」ベシィッ

ツガル「カニィイ!」バキッ

忍「ツガル!」タタッ

827: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:09:00 ID:Kqf
拓海「ただ、体格差ってモンを考えねえとな。いいパンチだったが、そんなんじゃコイツは倒せねえぜ」

蛮鬼羅衆「バンギラァ!」ウオオォ!

忍「体格差ったって……一体、どうすれば…」

ツガル「ケンケン!」ポコポコ

忍「泡……クラブハンマーで…? けど、ただ弱点を突いてもそれだけじゃ倒せな……」ハッ

拓海「どした、敵は待っちゃぁくれねえぞ!蛮鬼羅衆、『馬鹿力』だ!」

蛮鬼羅衆「バァンギラァア!」ダダダダッ

忍「ツッコんでくる……!よし、ツガル、バンギラスの足元にクラブハンマー!!」

ツガル「ケンカニ……マッケーン!」ポコポコ……ボコォッ!

蛮鬼羅衆「バギラッ!?」ツルツルツル!

拓海「なっ……クラブハンマーの泡で足場を!?」

蛮鬼羅衆「バギャッ!」スベッ ドシン!

忍「……やった、倒したーっ!!」

ツガル「マケンマケン!」

拓海「かぁ~っ……一本取られちまったか……確かに『倒され』ちまったな、蛮鬼羅衆」

蛮鬼羅衆「バンギラァ…」ムクリ

828: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:09:23 ID:Kqf
忍「体格差とパワーがあるなら、それを利用して思いっきり転ばせてやればいい……いきあたりばったりな作戦だったけど、うまくいったね、ツガル!」

ツガル「ケンケン!」

拓海「確かに、直接攻撃するだけが喧嘩じゃねえ……っても、ハハ、ったくよ……コイツは悔しいな、蛮鬼羅衆」

蛮鬼羅衆「ギラッ」コクン

忍「師匠、お昼!食べていいですか!」キラキラ

ツガル「ケンケン!」キラキラ

拓海「…へっ、わぁーったよ。今日はオゴリにしてやる。街に降りンぞ!」スタスタ

忍「やたっ……! 何食べよっかなあ……」

ツガル「カニー!」

忍「ええ、カニはちょっと…共食いになっちゃわない…?」

ドゴオオオン!

忍「な、何っ!?」

ツガル「ケン!?」

829: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:09:41 ID:Kqf
拓海「おー、始まったか。そういやもうそんな時期なんだな…」

忍「そんな時期、って…?」

拓海「説明より見た方が早え。飯は後だ、行くぞ忍!」タタッ

忍「ま、待ってくださいよ師匠~っ!アタシもうお腹ペコペコで…師匠~っ!」タタッ

~~~~~

~マリータ峠・闘技のくぼみ~

拓海「おお、やってんな……」

忍「師匠、やってるって何が……?」ソーッ

ボカアアアン!

忍「うひゃっ……!」ビクッ

拓海「……勝負、あったか…?」

忍「なに、勝負……?」

830: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:10:06 ID:Kqf
※岩陰から奥の広場を見ると、土煙の向こうにポケモンがいる様だ……。

リオル「リオッ……」ググ……

ドテッコツ「テッコ!」

拓海「ドテッコツとリオルか……もうほとんど勝負は付いてるみたいだな、ありゃ」

忍「あの、これって……」

拓海「ここはこの山の野生ポケモン達の闘技場なんだよ。月に1回、この山のポケモンのテッペンの座を賭けて、ああやってタイマン張って勝負するんだ」

忍「山のポケモンの…闘技場………」

ドテッコツ「テッコー」ズンズン

※ドテッコツは勝負に満足して去っていった…。

忍「あ、あれ、帰っちゃうの…?」

拓海「高みを目指すヤツもいれば、やり場のないエネルギーを発散させに来るやつもいるってこった。それよか……あのリオル、まだやる気みてぇだな」

リオル「リオッ!」ピョンコ

アサナン「ナンナンナン!」

忍「あの子が次の相手…になるのかな…見たとこ、体格差もあまりないし互角に戦えそうだけど…」

拓海「確かに、さっきのドテッコツみたいなデカさはねえけどな。アイツはアサナン…格闘タイプの他にエスパータイプも持ってやがる…タイプの相性だけで言えばあのリオルは完全に不利だ」

忍「そんな!さっきの戦いの疲れだってあるのに…」

831: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:10:42 ID:Kqf
拓海「だからだろうよ、弱ったトコを叩き潰しに来やがったんだ。……強ぇえ奴が生き残る、野生の掟ってのは非情なモンだ」

忍「……野生の、掟……」


リオル「リオーッ!」ダッ

アサナン「……ナンッ」クイッ…

忍「あのポーズは……?」

拓海「『ヨガのポーズ』か………ありゃ攻撃力を高める技だ…突っ込むのはいいが、強烈なのを貰っちまうかもしんねえな」

リオル「リオッ……」ブオン ブオン

アサナン「ナンッ?」

忍「リオルの手が青白く光って……」

拓海「『発勁』っつー技だ。打撃で相手の体内に衝撃を与えて攻撃する……とか何とかって、知り合いの道場やってる奴に聞いた事があるな…」

リオル「リオッ リオーッ!」バシッ!バシィッ!

アサナン「ナンッ……! ナナナンッ!」ブオン…

忍「相手のアサナンも同じ技を!」

拓海「やべえな…アレが入ってマヒにでもなったら…」

アサナン「ナーンッ!」ギュオッ

リオル「リオ……」フォン……

忍「リオルの手の光が消えた…? そんな、諦めちゃダメだよ…!」

拓海「いや! …よく見ろ…!」

忍「え?」

832: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:11:12 ID:Kqf
拓海「アイツのあの瞳はそうじゃねえ…勝負を捨てた奴はあんな強えぇ瞳をしたりしねえよ」

リオル「リオ……」ザッ

アサナン「ナンナーンッ!」

バシッ………! ドスッ!

……ヒュウウウ……コロコロコロ………

アサナン「……ナンナン……」ドサッ

リオル「……リオッ…」ガクン……ピリピリ……

忍「凄い……あの状態で敢えてアサナンの技をまともに受けて……逆にカウンターで倍返しにするなんて……」

拓海「肉を切らせて骨を断つ……か。けど、マヒっちまってんな……」

忍「流石にこれ以上は無理なんじゃ…どこかで体を休ませないと……」

「チャブー!」バサァッ!

忍「えっ、何!?」

拓海「アイツは…ルチャブルか! マズいな、飛行タイプ付きの格闘ポケモンだ…今攻撃されたらひとたまりもねえぞ!」

忍「……もう、黙って見てらんないっ!」ダッ

拓海「あ、オイ忍!!」

忍「戦いには水をさしちゃうかもだけど…これじゃただのリンチみたいなものでしょ!……ツガル!」ボウン!

ツガル「ケンケンッ!」

リオル「リオッ…?」

ルチャブル「チャブ……チャーブ!」ピョイーン!

忍「なっ、逃げた!?」

833: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:11:36 ID:Kqf
拓海「バカ野郎、上から来るぞ!」

忍「っ!?」

ルチャブル「チャーブッ!」バサッ バサッ……ギュンッ

拓海「ありゃ『フライングプレス』か!あんなワザマトモに食らっちまったら…クソ、アタシらも加勢に…」グッ

忍「……一歩も引かない、守り通す…」スウーッ…

ツガル「カニ…!」

拓海「忍…」

リオル「リオ……」ピリピリ

忍「師匠が教えてくれたんじゃないですか…!だからアタシ達は……!」

ツガル「ケン……カニ……」バチチチチチ

拓海「……へっ、アタシとした事が取り乱しちまったか」ドサッ

拓海「キメろ、忍、ツガル!!」

忍「はい!! ツガル、カウンターの『かみなりパンチ』っ!!」

ツガル「マケーンッ!!」ギュオッ…

バチイッ!

ルチャブル「チャブブブブッ!」バリリリリリ!

リオル「リオッ……!」

忍「……これで……終わり! 『グロウパンチ』!」

ツガル「ケーンッ!」ヒュッ!

ドゴシャアアア………

~~~~~~

834: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:12:00 ID:Kqf
リオル「リオ…?」ムクリ キョロキョロ

芳乃「ややー、お目覚めのようですねー。」

リオル「リオッ?…リオリオ?」キョロキョロ クイクイ

※包帯まみれの自分の体が気になるようだ…。

忍「リオル!良かった……元気そう…!」

リオル「リオー」

拓海「ああ、流石にあの後急にぶっ倒れちまった時はビビったけどな…大した根性だぜ、ったくよ」ヘヘッ

リオル「リオッ」ペコリ

※リオルは体全体で大きく頭を下げてきた…。

忍「でも、一体何で急に倒れたりなんか……」キュルルルル……

リオル「リオッ?」キュルルルル……

忍「……あー……もしかして…」

拓海「はははッ、そうか、そういやアタシらもメシ食ってなかったもんな!お前ェも腹が減ってたのか、リオル」ヨシヨシ

リオル「リオッ」

忍「うう、勝負に見入って空腹なんて頭から飛んじゃってた……恥ずかしい…」

芳乃「夕餉の支度ならできておりますよ~。今日は良い貝のお出汁がとれまして~。」

拓海「お、いいな!そんじゃメシ奢んのはまた次にして、今日は芳乃んちで飯にすっか」

忍「うん、もうお腹すいて動けないです師匠…」キュルルルル

リオル「リオッ…」キュルルルル

835: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:12:14 ID:Kqf
芳乃「ではでは~。皆で夕餉をいただきましょー。海の恵みに感謝いたしますー。」パンッ

拓海「おう、そんじゃ早速」パンッ

まねっこリオル「リオッ」パンッ

皆「「「いただきます!」」」「リオッ!」

~~~~~

836: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:12:30 ID:Kqf
※時は戻り、現在。ここは、クロノ温泉…。

忍(あの後…師匠がリオルの事すっかり気に入っちゃって、『王に臨む者…』『王臨(オウリン)』の名前をリオルに付けたんだっけ)

オウリン「リオッ…」ポカポカ

忍「……ふふっ。ありがとね、オウリン。アタシと一緒に旅してくれて…さ」

オウリン「リオリオッ!」

忍「さてと、すっかり長湯しちゃったけど、マッサージと毛繕い…だっけ」ザバッ

忍「今度こそ、有香ちゃんとこのエビワラーをぎゃふんと言わせちゃうんだから!」

オウリン「リーオッ!」

~~~~~~

837: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:12:57 ID:Kqf
※そして、クロノ道場。

有香「来ましたね…うん、良い気の流れを感じます。これなら、そろそろじゃないでしょうか」

忍「そろそろ…って?」

有香「まぁまぁお気になさらず! ひとまず、忍ちゃんにはこれを進呈します!どうぞ!」

忍「これは…?」

有香「三節棍です。折りたたんでありますが、繋げれば一本の棍として使えるはずです」

忍「えと、それはありがたいんだけど……何で棍棒?」

有香「それは……説明よりきっと、戦いの中で掴める筈です、さあさあ!」

エビワラー「シャイッ」シュシュッ

オウリン「リーオッ」ペコリ

忍「よし……それじゃ行くよ…!オウリン、まずは発勁で……」

オウリン「リオリオッ リーオ!」カッ……!

忍「えっ…?」

有香「やはり、温泉で懐き度が上がった様ですね…!先に棍を渡しておいて正解でした!」

ルカリオ「クワンヌ!」

忍「懐き進化……!えっ、じゃあそのために温泉に……?」

有香「拓海さんが認めたお相手なら、あたしも礼を尽くして鍛え上げなければと思い……半ば騙すようにして温泉に行かせちゃいましたけど」

オウリン「クワヌ…?」キョロキョロ

オウリン「クワンヌ!」ブオン……!

838: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:13:20 ID:Kqf
有香「出ましたね、波導の骨剣、『ボーンラッシュ』…本来ならガラガラなど、骨を用いるポケモンが使う技ですが、ルカリオは自分の波導でそれを作り上げてしまうと聞きます」

忍「新しい力……じゃあ、この棍は、もしかして……」

有香「さあ、集中して下さい!意識が途切れると連続技が途中で途切れてしまいますよ!」

忍「……何となくわかった…!この棍で、アタシも同じ動きをすれば……!」ガチャッ

エビワラー「シャアッ!」シュン

棍を前に出す忍「骨で受けて!オウリン!」サッ!

オウリン「クワンヌ!」ガキンッ

忍「よし……行くよ、『ボーンラッシュ』!」

オウリン「クワンヌ!」ダッ

忍「突いて!」シュッ

オウリン「ワヌッ!」ガッ

エビワラー「シャイッ」ガキンッ

忍「払って!」

オウリン「クー!」ブォン

エビワラー「シャイッ!」ベシッ

有香「体制を崩した……今です!」

839: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:13:44 ID:Kqf
忍「上下2連突き!!」シュッ シュッ!

オウリン「ワン ヌッ!」ドッドッ!

エビワラー「シャアッ!」フラッ…

忍「トドメ……振り下ろしからの『波導弾』っ!!」

オウリン「クワンヌ!!」ゴウッ!

エビワラー「シャイッ」ガキンッ!

オウリン「ワヌヌヌ……!」シュオオオオ…

有香「うまい……振り下ろして連撃を終わらせた直後に、波導で作った剣をそのまま波導弾に転換させた……!」

忍「これなら防ぎきれないでしょ…!撃って、オウリン!」

オウリン「クワーヌッ!!」バシュウッ

振り返るエビワラー「…シャイッ?」

有香「はい、全力で砕いてください!」

エビワラー「シャアア……」メラメラ…!

※エビワラーのほのおのパンチ!

エビワラー「シャラアッ!」シュッ……

ドシュウウウ……!

840: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:15:06 ID:Kqf
>>838
有香「体制を崩した」→「体勢を崩した」に修正お願いします

841: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:15:41 ID:Kqf
エビワラー「シャイッ……シャイッ……」フーッ…フーッ…

忍「ほとんど防がれた……何て守備力……!」

有香「……よくやってくれました、エビワラー。怒涛の6連撃さえも凌ぎ切るその手腕……お見事です」スッ

エビワラー「シャイッ」コツン

※有香とエビワラーは拳を交わした…

有香「……そうですか。あなたがそう思うのなら…それが一番だとあたしも思います」

エビワラー「シャイッ」コクン

忍「……?」

有香「忍ちゃん、どうかこのエビワラーを、旅の仲間に連れて行って貰えませんか?」

忍「えっ、い、いいの…?」

エビワラー「シャイッ」

有香「たった今、拳を交わして気持ちを知ることができたんです。この子はあなた達が気に入った様で…」

エビワラー「シャイッ」スッ

オウリン「クワンヌ!」コツン!

忍「……そっか…。なら、アタシも!ツガル!」ボウン

ツガル「ケンケンッ」

忍「よいしょ!」ヒョイッ

ツガル「ケン」コツン

※忍はツガルの拳が届くように抱えてあげた…。

842: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:16:09 ID:Kqf
有香「どうか頑張ってください。ジム巡りの旅の武運を、祈ってます!」

忍「うん…アタシ、しっかり仲間達と戦い抜いてみせるよ…!ありがとう、有香ちゃん」

有香「はい! ふふっ、何だか、弟子というか、妹ができたみたいで、ちょっと嬉しいですね、こういうの」

忍「へっ、妹?」

有香「拓海さんからさっき連絡がありまして。話を聞く限り、あたしの方が2つ歳上だとか…」

忍「へえ……歳上………歳上!?!?」

有香「そ、そこまでびっくりしなくても……確かにあたし、ちっちゃいからそうは見えないかもですけど…」←149センチ

忍「いやいやいや、それなのに何だか馴れ馴れしくしちゃって有香ちゃんだなんてアタシってばもーっ、ホントうっかりしてるんだからっ!」

オウリン「クワンヌ…」ヤレヤレ

有香「どうぞお気になさらず。慣れていますので、一応…」

843: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:16:33 ID:Kqf
エビワラー「シャイッ」

有香「……あ……そう言えば、エビワラーにも何か呼び名があった方が良いかもしれませんね」

忍「え…、ニックネームって事?……そっか……えと、それじゃあ…うーん……」

有香「『ムツ』と言うのはどうでしょうか。あのルカリオの6連撃すらも凌ぎ切る守りの力、その数を冠してムツと…」

忍「ムツ……ムツ……うん、何だか不思議としっくり来るかも!よろしくね、ムツ!」

ムツ「シャイッ」

忍「よーし……この先も頑張って、一歩ずつ努力を重ねていかなくちゃ…!教えてもらったこと、絶対に役立てて見せるからね!有香ちゃん!」

有香「はい!」

忍「あ……アタシまた有香ちゃんだなんて…あはは…」

有香「ふふ、無理に変えないで大丈夫ですから。親しみやすさが伝わってきますし、歳上と言っても2つしか離れてないわけですし」

忍「ゴメンね、フォローまでさせちゃって…あ、そうだ……ジム戦、どうなったかな……」

有香「もう道場も閉める時間ですし、ジムまで送って行きますよ。色々と、旅のお話も聞きたいですし……」

忍「ホント?助かるよ、来たばかりの街だから迷子になっても大変だしさ……えと、それじゃあ何から話そうかな~、えーと……」

844: ◆6RLd267PvQ 19/08/30(金)12:16:46 ID:Kqf
※かくして、二人目の師匠、有香から新たな力を会得した忍達。この時、未央もボルケニオンと仲間達のもとへ向かっており、前回の話のラストへと繋がるのであった。

ついに忍も3体目の仲間を手持ちに加え、これにて旅のメンバーは出揃った事に。

果たしてこれから先、どんな戦いが待ち受けているのだろうか!

続く!

846: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:06:11 ID:UTP
更新します。22話。

The brake of the heart and the one and only friend.

847: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:07:00 ID:UTP
~クロノシティジム・夜~

美世「よいしょ……と」ガチャガチャ キュイイン

美世「うん、今日のメンテナンスはこんなところかな…あとはフレームを……」

ピピピピピ ピピピピピ

美世「あ、ポケギア鳴ってる……もしもし?」ピッ

拓海『よう、元気か美世』

美世「拓海ちゃん。あぁ、ごめんね、急にあたしからかけたりして…忙しかったよね」

拓海『いや、着信気付くの遅くなっちまってこっちこそ悪かった。…何かあったか?』

美世「何か…っていうか……ホラ、拓海ちゃん前に言ってたでしょ、例のあの子達」

拓海『あの子達……ああ、忍達の事か?』

美世「無事クロノジムも勝ち抜いたよ、ふふ、負けちゃった」

848: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:07:24 ID:UTP
拓海『おお!そんじゃあ忍のヤツもやっとジム戦に挑めるって事だよな!いやぁ~、やっぱアタシの見込んだ通りの奴らだったぜ!加蓮達もやんじゃねえか…!』

美世「……うん、そうだね」

拓海『美世?』

美世「拓海ちゃん、あたしさ……やっぱり、この街のジムリーダーは……」

拓海『自分のせいで負けたポケモンに申し訳ない、ってか? …気にすんなってのは、違うか…』

美世「ううん、そうじゃない……あたし、やっぱり5年前のあの事故のこと……」

拓海『美世』

美世「ジムリーダーって、この街の代表選手って事じゃない。なのにあたしは大した実力もないし…未だにクルマの…レースの事も諦めきれずにいるんだ」

拓海『いいじゃねえか、兼業ジムリーダーなんて、どの地方にもゴロゴロいるだろ。元はクロノジムだって兼業ジムだったじゃねえか』

美世「あたしには器じゃないよ……もし、どっちか片方をやめれば、もう片方に全力で挑めるんじゃないかな、なんて……思っちゃう時が、あってさ」

849: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:07:46 ID:UTP
美世「わかってるよ、ジムリーダーの役目は勝つことじゃない、トレーナーの実力と心を試す、試練のための場所なんだって」

美世「けどあたしは…元々、そんな資格…」

拓海『美世、資格云々なんてのはアタシにはわかんねぇけどよ…これだけは言えるぜ』

美世「なに…?」

拓海『お前は自分が思ってるほど、弱いオンナじゃねえってこった…だってよ、お前は』

美世「買いかぶり過ぎだって……それならどうして、これくらいで拓海ちゃんに愚痴なんか…」

拓海『そりゃ、強いヤツだろうが同じだろ。やり場のねえ拳のもどかしさは、アタシにだってよくわかんぜ』

美世「拓海ちゃん…」

850: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:08:04 ID:UTP
拓海『お前は優し過ぎんだよ。ボル爺さん見てみろよ、山一つ吹っ飛ばす、なんて事やらかしてんのに、むしろそれが自慢ってくらいじゃねえか』

美世「けど、それは……あたしのせいでボルさんは…」

拓海『……気にし過ぎんなよ、爺さんだって全然…』

美世「…………」

拓海『あー……悪リぃ…今のはやっぱ…』

美世「ううん。大丈夫だよ、拓海ちゃん…大丈夫だから、あたしは…」

拓海(…かなり無理してんな……ったく、ボルケニオンの爺さんも何つーか…)

拓海(そう……5年前、か。もう5年……いや、まだ5年なんだよな、あれから)

~~~~~

851: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:08:28 ID:UTP
>>5年前・クロノ霊峰に連なる山…ノルニル山、その、ふもと。

美世「あなた達がこの山で悪さしてるウラノス団ね…!街の天気をおかしくしたりして…ずっと雨続きで皆困ってるんだよ!」

ウラノス団員「ああ、何だお嬢ちゃん、俺達に文句付けに来たってのか?」

団員2「どうやらオシオキが必要な様だな!いけ、アメタマ!」

団員「お前もだ、コラッタ!」

コラッタ「ヂュ!」

アメタマ「アッアッアッ!」

美世「…2匹くらい相手ならあたしでも…! 行って、モウカザル! ドンメル!」ボボン

モウカザル「キキーッ!」

ドンメル「ドメ…」ノタノタ

団員「へっ、いっちょ前にトレーナー気取りかよ? 俺達ウラノス団を!」

団員2「なめるなよーっ!」

~~~~~

852: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:08:56 ID:UTP
美世「はぁ……はぁ……よし!」

団員「馬鹿な……俺達ウラノス団のポケモンが……」

団員2「こんなガキ一人にやられるだと……!?」

美世「よくやったね、モウカザル、ドンメル!」シュウウウ……

美世「さぁ、勝負はついたんだから!今すぐ街の天気を元に……むぐぐっ!?」

団員3「へへ、隠れて隙を伺ってたのさ…勝ったと思ってポケモンをボールに戻すとは、流石おこちゃまだな」

団員「でかした!このまま捕まえてラボの部屋にでも閉じ込めてやれ!」

団員2「ついでにそのガキンチョのポケモンも奪ってやれ! へへ…ほのおタイプのポケモンが必要なラボがまだあったはずだ…」

美世「むーっ!むーっ!」ジタバタ

ボルケニオン『オメェら、誰のナワバリで勝手してやがる』ズシズシ…

853: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:09:25 ID:UTP
団員「な、喋るポケモンだと!?」

団員2「み、見るからにレアなポケモン…!これを捕まえない手はないだろう!」

団員3「よっしゃあ、ボスへの手土産に……」

ボルケニオン『ケッ、身の程知らずが……マトモに相手すんのも面倒くせえ…この技で消し飛ばしてやるぜ…』キュイイン

団員「おっと!それはどうかな!?」バッ

団員3「こちらには無関係の子供がいるのですよ…」グイッ

美世「むぐーっ、むーっ!」ジタバタ

ボルケニオン『何!?』キュイイン キュイイン キュイイン キュイイイン

ボルケニオン『チッ、油断してる間にタメ過ぎちまった……!止められねえ…!』キュイイン キュイイン キュイイン

美世「むーっ!」ジタバタ

ボルケニオン『く……おい、テメェらボサッとしてんじゃねえ!今すぐその小僧連れてこっから逃げねえか!』キュイイン キュイイン キュイイン

団員「はぁ?何ほざいてんだ爺さん」

団員2「今狙われてんのはお前の方だぜ、なあ」

団員3「まったくもってその通り!覚悟しやがれこの野郎!」

ボルケニオン『く……!』キュイイン キュイイン キュイイン

美世「んむーっ、んぐーっ!」

ボルケニオン(チッ……何だってこんな間の悪い時に出くわしちまったんだ……!)

854: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:09:49 ID:UTP
ボルケニオン『こうなったら……』ジャコン

※ボルケニオンは砲身を山に向けた……。

美世「………!」

ボルケニオン『許せよ、山のポケモン達…!』キイイイイイン……!

美世「んっ!」ガブッ

団員3「あ痛ァ! このガキ噛みやがった!」

美世「お爺ちゃん!ダメーっ!!」

ボルケニオン『ぬおおおおッ!!!』ドヒュウン………

カッ………

ドカアアアアアアア……!

……ポツ ポツ……ザアアアアア……!

855: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:10:12 ID:UTP
※その日、クロノ霊峰に連なるもう一つの山、ノルニル山は跡形もなく消し飛んだ。

結果として、山にあった研究所も団員ごと消し飛んでしまい、人為的な悪天候は収まったものの、ボルケニオンの水蒸気爆発砲・スチームバーストの威力から、連日、凄まじい豪雨に見舞われる事になる。

そして…。

団員「ひっ……ひいいい…!」ダダダダ

団員2「許して、許してーっ!」ダダダダ

団員3「たすけてくれーっ!」ダダダダ

ボルケニオン『……………これでもう、ここいらに近付く事ぁねえだろうな、アイツら』

美世「ひっく、ひっく……」

ボルケニオン『おう、小僧、大丈夫か………』

美世『あたしのせいで……』

ボルケニオン『あん?』

856: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:11:22 ID:UTP
修正。>>855

美世『あたしのせいで……』→美世「あたしのせいで……」でお願いします

857: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:13:59 ID:UTP
美世「ノルニル山が……あたしのせいでなくなっちゃったよぅ……」ヒック ヒック…

ボルケニオン『……オメェ…』

美世「山のポケモン達も、あの人達の仲間も……あたしのせいで……あたしが……」

ボルケニオン『……バカ言っちゃいけねえよ。アレは俺様が勝手にやっちまったこった、小僧にゃ何の責任もねえよ』

ボルケニオン『それに、遅かれ早かれ…このところの悪天候で山のポケモン達は死に体も同然だったんだ……助けようにも助けきれねえぐらいにな…だから、どのみち元を断つ必要があったんだよ』

ボルケニオン『俺様はチマチマした戦い方は得意じゃねえからな…どっちにしろこうなっちまってただろうぜ。だから小僧は何にも悪くねえんだ』

美世「……っ」ヒック ヒック

858: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:14:22 ID:UTP
街の人「おおーい!大丈夫かぁー!」

街の人2「これは……ノルニル山が…どうしてこんな事に……」

ボルケニオン『ヘッ、俺様が吹っ飛ばしてやったんだよ! どーにも山が2つもあると、邪魔くさくって仕方なかったんでな』

街の人「な、それだけの理由で…」

街の人2「こんな事をしたら、これまでより更に天候が悪くなってしまうんじゃ……」

街の人「いや、それよりクロノ霊峰は大丈夫なのか、この刺激で噴火したりしたら…」

ガヤガヤ……ガヤガヤ……

ボルケニオン『さて、ほとぼりが冷めるまでは山に引きこもるしかねえやな、これは』ズシズシ

美世「あ、あの……!皆、違うの……聞いて、あたしが……!」

ボルケニオン『小僧!!』

美世「ひうっ」

859: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:14:48 ID:UTP
ボルケニオン『いいか、余計な事は言うもんじゃねえぞ。言えばお前はタダじゃ済まなくなる…街のニンゲンから恨まれて、憎まれて……その役はお前みたいなニンゲンの小僧には重すぎらぁな』

美世「……でも、じゃあ、あなたは……あなたはどうなるの…?」

ボルケニオン『ケッ、ニンゲンからどう思われようが、知ったこっちゃねえよ。…じゃあな』ズシズシ……

美世「…………」

拓海「美世!!」タタタッ

美世「拓海ちゃん……?」

拓海「親父さんからお前が山に向かったって聞いてよ…何で一人で乗り込もうなんて無茶しやがった!」

美世「それは……だって、危ないかもしれないし……」

拓海「危ないから二人で行くんだろうがよ……お前、マジで優しすぎんぞ……」

美世「ごめん…なさい…」

拓海「…あー………にしても凄えな!ノルニル山がカッ飛んでやがる……火山に凄えのがいるってのは聞いてたが…コイツは……」

美世「拓海ちゃん…あのね、本当はね…」

860: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:15:23 ID:UTP
拓海「……美世……」ポリポリ

美世「え」

拓海「お前の顔見てりゃ、何となく何があったのか想像ついちまうぜ……幼馴染だしよ…」

美世「拓海ちゃん……」

拓海「わざわざ傷を突くのもなんだと思って誤魔化そうとしてみたが……ガラじゃねえな、アタシには…」

美世「ねえ、拓海ちゃん……あたし、どうしたらいいのかな……どうしたら……」

拓海「……美世、今回のこれは、アタシらだけの秘密だ。これから先、口が裂けてもこの一件は…誰にも言うんじゃねえ」

拓海「代わりに、アタシらがあの爺さんの話し相手に…いや、ダチになってやろうぜ、な」

美世「……う、うん」

美世「……それで……それだけで本当にいいのかな…」

拓海「美世…?」

美世「う、ううん、何でもない! あの、ありがとね、拓海ちゃん…」

拓海「おう」

美世「……あたし、この責任は必ず取るからさ……」ボソッ

拓海「ん? 何か言ったか?」

美世「何でもない! 帰ろう、今日は疲れちゃった…へへ」ニコッ

拓海「お、おう……その、無理すんなよ…?」

美世「わかってますって!安全第一、無事故が自慢の原田モータースだもん!」

拓海「おう、だな! じゃ帰ろうぜ、走ってきたから腹減っちまったしよ、へへ」

861: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:15:48 ID:UTP
美世「拓海ちゃんがもう少し大きくなったらうちの店のバイク使わせてあげるんだけどね~。まだ乗れる歳じゃないもんね」

拓海「な、そりゃオメーもだろ美世!からかうなよな!」

美世「あはは、ごめんなさい」

拓海「ったく、すぐこれだ…心配する事なかったかもな」

美世「……拓海ちゃん」

拓海「ん?」

美世「ありがとね、来てくれて」

拓海「…おう」

美世「ありがとね…ホントに……」ヒクッ……グスッ

拓海「……おいおい……まぁ……しゃーねえよな…」ギュ

美世「うっ……うああ……うあああん……!」

拓海「…………美世…」

~~~~~

862: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:16:03 ID:UTP
美世(無事故が自慢、なんて、嘘ばっかり。あたしは、取り返しのつかない大事故を起こさせてしまった)

美世(そう。この事故を引き起こしたのは……あたしの……あたしだけの罪) 

美世(だから……この責任は必ず……必ず…!)

~~~~~~

863: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:16:23 ID:UTP
※時は進み、2年前。

拓海「ふぅ……やっぱいいハシリだぜ、美世んとこのバイクはよ」

美世「えへへ、そう言ってくれると嬉しいな…けどね、もう少しで新しいバイクが完成しそうなの」

拓海「新しいバイクだぁ? もっと速えェやつか!?」

美世「ううん、速さは今のとそんなに変わらないんだけど……空気を汚さない、新しいエネルギーで走るバイクなの。このバイクなら、きっと野生のポケモンが汚染に苦しんだりしなくて済むんじゃないかなってさ」

拓海「お前、相変わらずポケモンを大事にするんだな…」

美世「これは、あたしのライフワークだからね。ポケモンや環境を傷付けず、便利で快適な暮らしが送れるように、人や街を豊かにする……あたしには、これくらいしかできないから…」

美世「偽善だって、思う?」

864: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:16:52 ID:UTP
拓海「難しい話はアタシにはわかんねえよ。知ってんだろ」

美世「…そうだよね、ごめん」

拓海「そのバイクよぉ、もし形になったら、アタシが試乗してやんよ」

美世「いいの? もしかしたら、そんなにスピード出ないかもしれないよ…?」

拓海「そこはおいおい良くしていきゃ良いじゃねえか。そのバイクでこの地方を回って、原田モータースの広告塔になってやんのも悪くねえ」

美世「……この地方を、か。……ホントに行っちゃうんだね、ポケモンリーグ」

拓海「四天王、なんてな、へへ。なんつーか、響きが良いよな、まさにテッペンって感じでよ」

美世「でもさ、あたしにジムリーダーなんて大役…できるのかな」

拓海「仕方ねえだろ、神誠道場の師範、身体痛めてジムリーダーできなくなっちまったんだからよ。有香は道場そのものの切り盛りで忙しそうだし」

美世「ジム兼野生ポケモンの道場だったもんね…無理して身体痛めても仕方ないかぁ……でもなぁ……あたしがジムリーダー……うーん」

拓海「何だよ、バカみたいにシゴイてやったろ、自信持てって。アタシのシゴキに耐えられるヤツ、ウチの連中の中にもそうはいねえんだぜ」

美世「ウチの連中……か。拓海ちゃん、バイクの免許取るなりこの辺りの暴走族を一纏めにしちゃうんだもん、あれはビックリしたなあ」

865: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:17:15 ID:UTP
拓海「好き勝手されちゃそれこそポケモンも困んだろ。アイツらには本物のツッパリ方ってのを叩き込んでやった。誰彼構わず傷付ける抜き身のナイフみてえな安っぽい野郎共じゃねえ。大事なモンを護り抜くために振りかざす…アタシ自慢の名刀だ、アイツらはよ」

美世「自慢…かぁ。何か凄いね、拓海ちゃんにそうまで言わせちゃうなんてさ、ふふ」

拓海「だろ? アイツら、美世の事も慕ってくれてるみてぇだしよ。アタシがいない間はアイツらの事、よろしく頼むな」

美世「それも、あたしなんかに務まるかなぁ…」

拓海「だーから自信持てっての」

美世「いや、これは自信とかって言うより……でも、そうだよね。いずれはそういう人達にもバイク周りのお世話してあげなくちゃなんだし、拓海ちゃんにそうまで言わせちゃうくらいなんだから悪い人じゃない……んだよね?大丈夫だよね?」

拓海「別にアイツらお前の事とって食いやしねぇよ落ち着けって」

866: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:17:29 ID:UTP
美世「…むぅ、それはそれで何か……あたしの身体ってそんなに魅力ないかなぁ…」

拓海「そういう意味で言ってもねえよ!!ってか、ソコ気にすんのかよ!」カァーッ///

美世「あはは、やっぱ拓海ちゃん、こういうからかい方すると反応可愛いよね♪」

拓海「お前……みーよ~っ!」

美世「厳しくしごかれた分のお返しだよーだ♪逃げろーっ!」タタタタッ

拓海「待てコラ、美世ォ!!」タタタタッ……

~~~~~~

867: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:17:52 ID:UTP
※時は戻り、現在……。



美世「うん……うん、ありがとね。何か、ちょっとスッキリしたみたい、話したら」

美世「拓海ちゃん、お仕事忙しいでしょ?マジカ団……だっけ、あちこちで悪さしてるのって」

美世「うん……天候で悪さって……あたし、どうしてもウラノス団の事を思い出しちゃってさ……けど、別の組織……なんだよね」

「そう、全く別の組織です。天候を支配してレックウザを呼び起こそうとしたウラノス団とは………目的が違う」

美世「えっ…!?」バッ

空に浮かぶマジカ団総帥「あなたの過去は…今しがた、ここで聞かせて貰いましたよ。後悔と自責の念、まさにあなたは己の心中にブレーキをかけ続けて生きていると言える……」

拓海『どうした? オイ美世、オイ!』

868: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:18:12 ID:UTP
美世「あたしが……心にブレーキを……?」

マジカ団総帥「苦しいでしょう、全力で走りたいはずなのに、どこかに引っかかりを覚えて、後ろ髪を引かれながら……街の人々を欺き、騙しながら、笑顔を貼り付けて生きるのは…私には、その苦しみがよくわかります」

美世「……何が言いたいの…!? あたしを揺さぶって、一体……っ!?」ガキン

美世(体が……動かな……)

マジカ団総帥「『かなしばり』という技ですよ。もっとも、それくらいは、ジムリーダーならご存知かとは思いますがね」

マジカ団総帥「そして……これであなたを苦しめるリミッターは、外れる……」グワン……

美世「………あ……あ………ァ……」グワン……

869: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:18:35 ID:UTP
マジカ団総帥「さぁ、生まれ変わりし我が尖兵よ。今こそ、私と共に走り抜こうではありませんか」

洗脳美世「ハイ……アタシハ……ハシル………ソウスイサマノ……オオセノママニ……」

マジカ団総帥「素晴らしい……私の催眠術の力もどうやら上がって来ているようだ……いや、心に付け入る隙を見つけたのが功奏したのか……」

拓海『オイ、美世、返事しろ!オイっ!』

マジカ団総帥「……耳障りな声が聞こえますね」パチン

バチィッ!!! ……ブツン

※美世のポケギアは音を立てて壊れてしまった……。

マジカ団総帥「……心の隙、か。…我ながら、惨い事を言うようになったものです」

マジカ団総帥「ですが…もう決めた事……例え何と謗られようと、私は私の願いを果たす……」

マジカ団総帥「そうでしょう……私の…無二の友よ……」

~~~~~~~

870: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:19:02 ID:UTP
~翌日~

加蓮「さて……皆、やり残しとかないよね?」

肇「はい、準備万端です」

未央「えと、ここからだとクロノ霊峰を越えなきゃなんだっけ…? あの山、パッと行ってきただけでも凄く高いし広いし険しいし…大変だよ、越えるの…」

ジラーチ【未央の無茶のせいで遠回りすることになっただけだからね】

未央「ジラちんや、それは言わないお約束って奴ですよ……私もそれはわかってるんだからさ…」アハハ…

ネネ「そう言えば、美世さんの姿が見当たりませんけど…見送りに来てくれるって、確か……」キョロキョロ

加蓮「いっそ空を飛んで山を越えたりできればねぇ……って言うか、一度ティリオまで戻ってさ、そこからマギア経由でまたメーヴェ側からのルートじゃ……」

ネネ「危険だと思います、それ……かなり雨が降りましたし、もしかしたらその影響で流砂に飲まれてしまうかも……」

未央「じゃあ結局山越えしかないのかぁ……街の人はこういう時どうしてるんだろ?」

忍「おーい!」タタタッ

肇「忍さん、何か山越えの方法はわかったのですか?」

忍「山越え……どころじゃないって……!」

871: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:19:26 ID:UTP
ネネ「ど、どうしたんですか、そんな息切れするくらい慌てて……」

加蓮「…未央」

未央「うん……ジムリーダーの姿が突然見えなくなるって、前にもあったよね…」

ネネ「………まさか」

忍「さっき、師匠から……拓海さんから連絡が入って………!」

忍「美世さんが…行方不明になったって……!」

加蓮「………!」

未央「……マジカ団、だよね……」

ジラーチ【十中八九、かな】

ネネ「そんな……」

肇「……私達、呑気にジム巡りなんかしていて…良いのでしょうか……もうジムリーダーが二人も……」

皆「「「「…………」」」」

872: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:19:48 ID:UTP
泰葉「だからこそ、挑戦できるうちに挑戦するべきだと、思いますよ」スタスタ……

加蓮「え?」

未央「えっと……誰、だっけ…? 誰かの知り合い…?」

泰葉「申し遅れました。私はグリモ四天王のリーダー、泰葉。ひこうタイプの使い手で、あなたと戦った悠貴さんの師匠にあたります」

未央「ゆうきちゃんの師匠……ああ、ああ!その泰葉さん!ゆうきちゃんが言ってた言ってた!」

加蓮「グリモ四天王のリーダーって事は……この地方で二番目に強いトレーナー……そんなあなたが出てきてまで私達に伝えたい要件って……」

泰葉「ジム挑戦を継続して下さい。お願いします」ペコリ

忍「な……そんな、頭まで下げなくても…」

873: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:20:12 ID:UTP
泰葉「私達リーグ協会は、こういう事態が起きるとわかっていながらも、それを阻止できなかった……何より、それであなた達一般のトレーナーにまで迷惑をかけざるを得ないことを……心から恥じているんです」

未央「そんな…それを言うなら、私達だってこの街にいたのに止められなかったんだし…」

加蓮「でも……どっちにしても、他人事じゃないよね。もう未央だって、前にあいつらに攫われたりしてるんだし」

ネネ「智絵里さんも……美世さんも……皆、強くて優しくて、立派なジムリーダーさんでした…私、二人を助けたいです…」

肇「…そのために、助けられる力を得るために、ジムへの挑戦を継続しなければならない……そういう事、ですよね、泰葉さん」

泰葉「はい。攻めを焦り、勝ちを急いでも…それこそ返り討ちにあえば、何もかも終わりなんです」

泰葉「鍛えられるうちに、今。どうかジムへの挑戦を続けて貰えませんか」ボウン!

トゲキッス「キスキッスー」

スワンナ「スウォー!」バサァ

874: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:20:31 ID:UTP
泰葉「山越えには、ひこうタイプのポケモンを使いましょう。私達が先導しますので、ひこうポケモンをお持ちでない方はこちらへ」

忍「肇ちゃん、アタシ達は…」

肇「はい。お願いします、泰葉さん」

ネネ「トロちゃん、お願い!」ボウン

加蓮「行くよ、まろ!」ボウン

未央「りゅーすけ、ゴー!」ボウン!

泰葉「成程……皆さん良いポケモンを持っていますね。ここまでジムを勝ち抜いてこられたのも納得です」

泰葉「さぁ、飛んで、スワンナ、トゲキッス! 霊峰を越えて、シデロスシティまで!」

スワンナ「スウォー!」

トゲキッス「キスキッスー!」

875: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:20:45 ID:UTP
※かくして、次の街、シデロスシティへと空路を急ぐ一行。

洗脳されてしまった美世はどうなるのか。
マジカ団総帥の目的は何なのか。

次回もまだまだ、目が離せないぞ!

続く!

877: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:36:38 ID:JVH
23話、更新します。

Crush the steel fortress!

878: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:37:07 ID:JVH
~シデロスシティ・近郊~

翠「正射必中……はぁっ!」シュッ!

翠「………僅かに中心を逸れてしまった……集中出来ていない証拠ね……」ハァ…

翠「こんな事では……千秋さんのお役に立てるようになるためにも、もっと腕を磨かなければ……」

翠「……あら?」

~上空~

泰葉「そろそろ市街地に入ります。皆さん、着陸の用意を…」

翠「ジュナイパー、『うちおとす』!」

泰葉「へ…? ひゃあっ!?」ヒュッ!

忍「わわっ、急に矢が飛んで来たぁ!?」

肇「…下です、泰葉さん!狙われています!」

眼鏡をかけた泰葉「あれは……ジュナイパー…?……って事はまさか……」タラー…

翠「ジュナイパー、もう一度……!」

泰葉「わっ、わーっ!待って下さい翠さん!私です!泰葉ですよーっ!!」

翠「え……あ、や、泰葉さん!?」

忍「知り合いなのかな…」

肇「リーグ協会の関係者…でしょうか?」

泰葉「うん、この街のジムのジムトレーナー…なんだけど……スワンナ、トゲキッス、すぐ降りられる?」

トゲキッス「キスー」

スワンナ「スワワン!」

~~~~~

879: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:37:46 ID:JVH
~シデロス近郊・地上~

泰葉「ふう……他のみんなはまだ追いついてないみたいね…」

忍「ぐんぐん引き離しちゃったもんね…流石ひこうポケモンの四天王…」

肇「でも、もう少し待てば追いついて来ると思います。ここまで、真っ直ぐ山を越えるだけでしたから」

泰葉「ひとまず、みんなが揃うまでここで待機ね……で」

翠「す、すみません…つい、敵襲かと……」

泰葉「まぁ、無理もないですね。最近はマジカ団絡みで色々物騒ですし……それにしても、命中精度が自慢のジュナイパーが的を外すなんて…」

ジュナイパー「ジュナ」

翠「きっと、私の焦りがジュナイパーにも伝わったのだと思います。……良くありませんね、一意専心していれば、飛行ポケモンの一匹や二匹、すぐにでも撃ち落とせたはずなのに……」

美由紀「撃ち落としちゃダメなんだってば、翠ちゃん…」ヒョコッ

泰葉「美由紀ちゃん」

美由紀「こんにちは、泰葉ちゃん。えと、5人来るって聞いたけど…」

忍「あはは、泰葉さんのポケモンが速くって、追い抜いて来ちゃった。…あ、アタシ忍って言うんだ、よろしくね!」

肇「私はヒュドールタウンの肇と言います。よろしくお願いします、お二人とも」ペコリ

美由紀「うん、よろしくね!……って事は、もうちょっと待たないとなのかー…うーん」

肇「どうかされましたか?」

美由紀「うん。こっちも2人いるし、そっちも2人……ちょうどいいかなーって。泰葉ちゃんもそう思うよね?」

泰葉「なるほど。実力を試すなら、何もジム戦のみにこだわる必要はありませんからね」

翠「…では、泰葉さんは審判を。ジムリーダーに挑戦する実力があるか否か……マルチバトルで見極めさせていただきます」

ジュナイパー「ジュナ!」

880: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:38:36 ID:JVH
忍「そういう事なら喜んで!正直もう戦いたくってウズウズしてたんだよね!」

美由紀「ふふっ、お手柔らかにお願いしまーす! いくよ、キングラー!」ボウン!

キングラー「ブクブブ」カサカサ

肇「カニ、ですね…立派なハサミ…」

美由紀「うん、かにだよ!」

忍「それなら、アタシはツガルで!」ボウン!

ツガル「マケンマケン!」

美由紀「わぁ、そっちもかにだーっ!えへへ、仲間仲間♪」

肇(相手は恐らくみずタイプと、くさタイプ…でしょうか。なら、私が出すべきポケモンは…)

肇「お願いします、先生!」ボウン

ヤド先生「やぁん」ノター

翠「くさタイプのジュナイパー相手にみずタイプ…ですか。いえ……敢えて出すからには何か策略が…?」

ヤド先生「やぁん」ボヘー

肇(他の手持ちがみず・じめんタイプのポケモンばかり……とは、言わないほうが良いですよね…心理的に追い詰められるなら御の字です)

泰葉「では、ヤドラン、マケンカニVSジュナイパー、キングラー。両チーム交代なしの一本勝負。審判は私、四天王の泰葉が務めます。…勝負、始めてください!」

~~~~~~

881: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:39:05 ID:JVH
~シデロス郊外上空~

未央「広い空、高い山……空気も澄んでるし、ついにりゅーすけと空を飛んでるんだなぁ…私……」

りゅーすけ「バウリュ!」

加蓮「飛んでるんだなぁ、はいいけどさ。とっくに先に行っちゃったよ、私達以外」

ネネ「あはは…でも、あれは流石に追いつけないですよ…」

トロちゃん「ピスピウス」

未央「りゅーすけ、カイリューだから本気出せば16時間で地球一周できちゃうんだけどさ。流石に私が乗ってると…ねぇ」

ジラーチ【回りすぎてバターにでもなっちゃうかもね】

未央「ジラちんはだまってて」

ジラーチ【はいはい】

加蓮「だからって私達に合わせて飛ばなくても良くない? 向こうのスピードに合わせても良かったでしょ」

未央「ちっちっち、それじゃあかれんやネネちんが寂しいでしょ、ここはやっぱりムードメーカーの未央ちゃんが側にいないとだね」

ネネ「ふふっ、未央ちゃん、もしかして気を遣ってくれてます?」

未央「ほえ? 何の話かな?」

加蓮「向こうが3人、こっちも3人。こっちが手薄にならないようにわざと残ったでしょ、未央」

未央「…ありゃー……バレてた?」

ネネ「いえ、わかります」クスッ

加蓮「私達、付き合い長いんだから」フフッ

未央「そっかあ……わかっちゃうか」エヘヘ

加蓮「最初は、私達さ。未央と二人でジムに挑んだんだよね」

未央「そうそう!って言うか、1番最初に会った時はこんなに長い付き合いになるなんてさ、考えもしなかったよ」

882: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:39:35 ID:JVH
加蓮「ユニット制のルール、知らなかったもんね、未央は。私がいなかったらどうしてた事やら」

ネネ「そして、その試合を偶然観ていた私がユニットの仲間になる、なんて…ちょっと出来すぎてる感じがしますね、ふふ」

未央「いやぁ、あの時はもうなんて言うか……勢いだったよね、うん」

加蓮「けど、ネネが加わって、色んな場面で助けられたよね。ドリンクやご飯もそうだけど、マジカ団との戦いでもさ」

ネネ「あれは、なんて言うか、無我夢中で……でも、改めて言いますけど……メーヴェシティだけじゃ、ないんですよね…」

加蓮「…むしろ、もしかしたらまたメーヴェシティも危なくなるかもしれない。放っておいたらどうなるかなんて、誰もわからないんだもん」

未央「……でも、マジカ団の目的って結局何なんだろうね。前にさ、ほら、私が捕まった時なんだけど…色々資料が見つかってさ、ちょっと盗……拝借してきちゃったりなんかしたんだよね」

ネネ「未央ちゃん……転んでもただじゃ起きませんね」

加蓮「で、何かわかったの?」

未央「うん……わかったような、わからないような……」

加蓮・ネネ「?」

未央「色々書いてあったんだよ、伝説のポケモン…レックウザについて」

加蓮「レックウザ……それがアイツらの目的って事?」

未央「日照りの熱で水を干上がらせて大陸を作った伝説のポケモンと、大雨や津波で海を広げた伝説のポケモン…その争いをおさめて荒れ狂う天候を元通りにしたのが、レックウザって名前の伝説のポケモンだって…そう資料には書いてあるんだけどさ」

ネネ「……? まって、ちょっとおかしいです、それ」

未央「やっぱりそう思う?」

883: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:41:43 ID:JVH
加蓮「天候のエネルギー…だっけ。日照りに雨に砂嵐、霰……今まで、あちこちで異常気象になってるの見てきたけどさ」

加蓮「そのレックウザってポケモンの性質………『真逆』じゃない?」

ネネ「結局、マジカ団の目的って何なんでしょう…エネルギーを回収し終わったらお天気を元通りにするためにレックウザを呼び寄せる……とかって事ですか…?」

加蓮「けど、それじゃそもそも何のために天候のエネルギーなんか集めてるの、って話にならない? レックウザを呼び寄せるのが目的なら、エネルギーなんかほっといて天気をおかしくしちゃえばそれで済む話でしょ?」

未央「うーん………何かまだひとつ足りない気がする……」

「目標、確認。これより作戦の実行に入る」

未央「………ん?」ピクッ

ババババババ!!

未央「うわっと!!何!?種!?」

ジラーチ【今のはタネマシンガン……空中からこの技を使えるのは……】

884: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:43:03 ID:JVH
加蓮「未央、ネネ、前!」

ドデカバシ「カバッシ!」バサバサッ

ネネ「……あのドデカバシは……!」

加蓮「何、ネネ、あのポケモンの恨みでも買ってるの!?」

ネネ「えと、その…前に少し…メーヴェにいた頃に戦ったことが……」

未央「って言ってるそばから前、前!」

ドデカバシ「グアアアアア……」キュイイン……

ネネ「あれは……くちばしキャノン! 皆さん、避けて……」

加蓮「もう間に合わないって!まろ、りゅうのはどう!!」

未央「りゅーすけ、りゅうのいかり!!」

まろ「チルーッ!」ゴオオッ

りゅーすけ「バウリュー!」グバアアア

ドデカバシ「カバッシ…!」チッ

未央「かわされた……速い!」

885: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:43:29 ID:JVH
ネネ「確かにはずれましたけど…でも、向こうの攻撃も阻止できました!」

「成程……やはり一体で足止めするには分が悪いか」

ネネ「え…?……あれは…!」

青ローブ「…………」

ネネ「二人とも見てください、下に!」

未央「あれ、マジカ団……? でも、ローブの色が…」

加蓮「もっと色がぐっちゃぐちゃじゃなかった?マジカ団のローブって」

ネネ「あの感じ……前に私が戦った幹部の方と同じです…! 恐らく、幹部はローブの色が1色なのでは……?」

未央「じゃあもしかして、このドデカバシをけしかけたのって……」

ジラーチ【…可能性は高いね…メーヴェの街もそう遠くはないし、捕まえて戦力にしたのかもしれない】

加蓮「…あの幹部……見た感じ一人だけみたいだけど……どうする? 降りて戦う?」

未央「………逃げよう」

ネネ「未央ちゃん?」

未央「変だと思わない? 何で一人だけなのかなって…私達を倒したり捕まえるつもりなら、逃げやすい空中にポケモン一匹で襲いかかるかな…」

ジラーチ【理由は色々考えられるけど…もし未央の考える通りなら、確かにマズイかもね】

加蓮「変って……そうか、ここで私達が降りてあの幹部と戦ったら……」

886: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:43:46 ID:JVH
ネネ「時間を稼がれている間に、シデロスのジムやポケモン達が危なくなってしまいます、きっと……」

未央「だよね……ここは、街へ急いだ方が良さそう……!考え事はまた今度ってことで!」

青ローブ「どうした、降りて来ないのか?」

加蓮「悪いけど、わざわざ挑発に乗ってアンタの相手するほど……私達、素直じゃないの!」

未央「そういう事! いくよ皆!」

ネネ「はい! トロちゃん、スピードアップ!」

トロちゃん「ピスピース!」

>>3人は幹部を無視して街へと向かっていった……。

887: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:44:06 ID:JVH
青色の幹部「………そう、それでいい」

青色の幹部「貴様らが止めようとしているものが、それで止まるのであれば……そうするといい」

青色の幹部「逃したことを悔やむわけではないが………こうせざるを得ない無力な自分が………憎い…!」ギリッ

フワライド「ぷわわん…」

青色の幹部「心配してくれるのか、フワライド……いや、自分は大丈夫だ…むしろ……」

フワライド「ぷわ…?」

青色の幹部「どこかで、迷っている自分がいる……非情に徹しきれない自分が…他人任せにしかできない自分が………弱いな、全く……」

フワライド「ぷわー…」

青色の幹部「…総帥に、どう報告したものか……事によっては、厳罰も覚悟しておかねばな……」

~~~~~~

888: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:45:13 ID:JVH
~シデロス近郊~

美由紀「キングラー、ハサミギロチン!」

忍「危ないっ!ツガル、避けて!」

ツガル「ケンカッ!」スカッ

キングラー「ブククッ!」ガシャアアア!!

美由紀「あー……失敗かぁ……」

忍「今のは……当たったらやられてた……!」

肇「一撃一撃が強力ですね……気をつけましょう、先生」

ヤド先生「やぁん」コクン

翠「などと、のんびり話していると狙われますよ! ジュナイパー、かげぬい!」

ジュナイパー「ジュナナ!」バシュシュ

ヤド先生「やぁん…?」スカッ……

肇「外した……? …いえ、動きが緩慢な先生に敢えて矢を外す意図……今の技は……」

ヤド先生「やぁん……」ググッ……

※ヤド先生はその場から動けない様だ…。

肇「……『影縫い』……まさか」ハッ

889: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:45:32 ID:JVH
翠「気付いたようですが……これで詰みです! 美由紀ちゃん!」

美由紀「うん!キングラー、ハサミギロチン!」

キングラー「ブブクク」ブォッ……

忍「ツガル、『まもる』!!」

ツガル「マケーン!!」パキィン!

キングラー「ブブク!?」カキィン!

忍「アタシがいるって事、忘れてもらっちゃ困るんだなぁ…これが」フフッ

肇「助かりました……ありがとうございます、忍さん」

忍「いいって!お互い助け合うのがマルチバトルの醍醐味、でしょ?」

翠「まさかあの連撃を見切られるとは……油断しましたね…」

890: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:46:04 ID:JVH
翠「かげぬいの技がどんな攻撃かわからなければ、矢を外した時点で相手の隙を突けるはず……動きが元々緩慢なヤドランであれば尚気付かれないと思っていたのですが」


肇「……いいえ、むしろ動きが緩慢なヤド先生だからこそ気付けたんです。遠距離でも相当な命中精度を見せたあのジュナイパーが、ヤド先生相手に矢を外すだろうか……と」

ヤド先生「やぁん……」ギシ……

肇「相手の影に矢を当てて身動きを封じる技……なるほど、命中率の低い大技との連携にはうってつけです」

肇「ですが………誤算でしたね」

忍「そう、こっちにだって、アタシ達がいるって事!ツガル、キングラーにかみなりパンチ!」

ツガル「ケンカーニー」バチチチチ……

美由紀「キングラー、『てっぺき』!!」

キングラー「グブク!」シャキーン!

ツガル「マケーン!」ブォッ……

ドシャアアアアア………

キングラー「グブク……」シュウウウ……

忍「仕留めそこなった!?」

ツガル「カニィ!?」

美由紀「えへっ、鋼タイプの技の威力はどう? びくともしないんだから!」

891: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:46:31 ID:JVH
翠「続けてお見せしましょうか…!ジュナイパー、『はがねの……』」

未央「ちょっとストーップ!!」

りゅーすけ「バウリュー!」ズシーン!

美由紀「うひゃあっ!?」

弓を構える翠「な、敵襲!?」バッ

泰葉「落ち着いてください、忍さんと肇さんの仲間ですから」

翠「あ……そう、なのですね……てっきり……」

加蓮「未央、強引に飛び込み過ぎ……」

ネネ「勝負の最中にど真ん中に降りたら危ないですよ…流石に……」

ジラーチ【言われてるよ未央】

未央「う……でもこれが一番早いと思ってさ…つい…」

りゅーすけ「バリュー」

ジラーチ【時々キミはバカなのか賢いのかサッパリわからないよね】

未央「いいの、体が考えるより先に動くんだから。ジラちんはだまってて」

ジラーチ【はいはい】

忍「にしてもどうしたの、そんなに大慌てで飛び込んできたりして…」

肇「何か、あったのですか?」

未央「うん……それが……」

~~~~~

892: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:46:58 ID:JVH
翠『であれば尚の事、ジムリーダーの元へお急ぎを。ここは私達で固めます』

美由紀『シデロスのジムリーダーは強いよー。って事で、さっきの勝負の回復!…これで大丈夫だよね?』

※美由紀は忍と肇のポケモンを回復してくれた…。

泰葉『私は街の反対側を固めます。念の為、増援要請もしておくので、皆さんはジムでの修練へお急ぎください。この街に来た本来の目的を見失っては、本末転倒ですから』

未央「って事で、ジムがあるっていう街の中心部まで来てみたけど……」

※大通りの先に巨大な鋼鉄の門がそびえ立っている……。

ネネ「あの先に、ジムがあるんでしょうか…大きな門……」

忍「流石にインターホンとか付いてたり……しないよね、うん」

加蓮「関係者の人とかいないのかな。開けてくださーいってお願いしてみるとか…」

トリデプス「デプス」ノソッ

加蓮「わっ、何か出てきた」

893: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:47:25 ID:JVH
肇「鉄扉に向かって歩いて行きますね…」

忍「何する気だろ」

トリデプス「デープス!」ゴチーン!ゴチーン!ゴチーン!

未央「うわぁっ!」

加蓮「凄い音……!街中に響くんじゃないの、アレ……!」

忍「それもだけど……あの勢いで鉄の門に頭突きなんかして、平気なの…?」

トリデプス「デプス」ノッシノッシ

未央「あ…どいてる…何だったんだろ…」

「三点鐘……合図ね。衛兵、開門を!」

「はっ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………ガコン!

未央「ひ、開いた……」

忍「…まさかとは思うけど、今のがインターホンの代わりだったり……?」

ネネ「ま、まさか、いくらなんでも…」

千秋「ええ、そのまさかよ。驚いた?」スタスタ……

※門の向こう側から、悠然と気品を漂わせる女性が現れた…。

894: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:47:57 ID:JVH
未央「あなたは……えーっと…どちら様で…?」

ジラーチ【大体予想はつくけどね】

千秋「そうね、名乗るのが遅れたわ。私はこのシデロスシティのジムリーダー、千秋。得意とするポケモンのタイプは……」

トリデプス「デプス!」フンス

千秋「はがねタイプ。どう、この頑丈さ。あの鋼鉄の扉にぶつかってもピンピンしてるでしょ?」

肇「確かに……恐るべき防御力ですね……」

ネネ「か、勝てるんでしょうか、私達……」

加蓮「……ふうん、なるほどね。心から折りに来た、ってワケだ」

千秋「あら。今のトリデプスの合図を見て、怖気づかずにそこまで思い至るなんて……話に聞いていた通り、その心力、なかなかのものね」

未央「私達のこと、聞いて……? あ、そっか、やすやすが…」

千秋「確かに四天王の彼女からも連絡は受けていたわ。けど、ここに来るまでに打ち破ってきた数多のジムリーダーからも、あなた達の噂は聞いていた。私、ずっと楽しみにしていたのよ、あなた達とぶつかるのを」

895: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:48:15 ID:JVH
忍(…これが、ジムリーダー……芳乃ちゃんや拓海師匠とはタイプが違うけど……感じる……ビリビリって……何だろ、この感覚……)

忍(ぶつかるのがちょっと怖いのに……ワクワクする……!)グッ

千秋「………いい眼をしているわね」フフ…

忍「へっ、あ、アタシです…か?」ビクッ

千秋「そう。いい緊張感だと思うわ。でも、常に張り詰める必要はないのよ。その覇気は勝負の時までとっておくことね。…行くわよ、トリデプス」スタスタ

トリデプス「デプス」ペコリ

※トリデプスはこちらに頭を下げると千秋に付いて歩いていった……。


~~~~~~

896: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:48:39 ID:JVH
未央「…何ていうか、この門といい、あの人の堂々とした立ち居振る舞いといい……」

肇「圧倒…されますね…確かに」

ネネ「今までに出逢ったジムリーダーや四天王さんともまた違う……千秋さん……強敵の予感がします…」

加蓮「でも、はがねタイプのジムリーダーだって先にわかったのはラッキーだったかもね。対策うてるしさ」

忍「なら、ここははがねに有利なかくとうタイプのトレーナーであるアタシが!」ハイッ!

加蓮「うん。そう言ってくれるって思ってたよ、忍」フフッ

肇「となると……タイプ相性の有利で挑むなら、加蓮さんと忍さん、それに私……でしょうか」

未央「ドラゴンもくさも、相性的には分が悪いからねぇ。一応戦法もなくはないけどさ」

ネネ「ほのおのキバやしぜんのめぐみ…ですね。ここはどう戦うべきか……慎重に選ばなくっちゃ…」

加蓮「毎度の事だけど、ジムリーダーも相性不利の相手に対策はしてるだろうし……敢えて読まれにくいポケモンを出すのも、アリ……だよね」

5人「「「「「うーん……」」」」」

897: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:49:03 ID:JVH
忍「って、悩むのはいいけど時間に余裕もないんだよね、アタシ達…」

肇「結局、相手のポケモンはトリデプスしかわかっていませんし……そのトリデプスも、ジム戦に出てくるかはまだわかりませんからね」

未央「こうなったらさ、もういっそジャンケンで決めない? もともと私達、鍛えて貰いに来てるんだしさ」

ジラーチ【随分投げやりだなぁ…言ってる事もわかるけど】

加蓮「ま、でも仕方ないか……今回は近くに幹部の姿も確認してるしね」

忍「うう~……今回は是非とも仲間に加えてもらいたい……絶対勝たなきゃ……!」

※忍は手を組んでジャンケンのおまじないを始めた…。

肇「では……勝っても負けても、どんな組み合わせでも、恨みっこなし、ですよ」

ネネ「お互い、ベストをつくしましょうね!」

未央「じゃ、いくよ!せーのっ!」

「「「「「じゃーんけーん!!」」」」」

~~~~~~

898: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:49:23 ID:JVH
~そして・シデロスジム~

紗南『さぁ!破竹の勢いで駒を進めてきた挑戦者!シデロスジムという難攻不落の城砦を果たしてどう攻略してくれるのか!』

千秋「さぁ、まずはお手並み拝見ね……行って、トリデプス!」ボウン!

トリデプス「デープス!!!」ズシイイイン!

紗南『先鋒もまさに鉄壁の砦!対する挑戦者のポケモンはー!?』

ワアアアアア…

ネネ「全力で……行きます!アマちゃん!」ボウン!

アマちゃん「アマージョ!」スタッ…

紗南『軽やかに戦場へ舞い降りた一輪の華!アマージョの登場だーっ!』

ワアアアアア…!

紗南『ではではさっそくいっちゃうよーっ!試合、開始!!』

899: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:49:50 ID:JVH
ネネ「ここは先手必勝……アマちゃん、『トロピカルキック』!」

アマちゃん「マージョッ!」シュッ……

トリデプス「デプッス?」

アマちゃん「マージョマッ!!」ヒュウウウウ……ドガッ!

トリデプス「デプス!」ガキィン!

紗南『空中に飛び上がってからの華麗な一撃が決まったーっ!しかしトリデプス、攻撃は当たったもののこれをものともしていないーっ!』

ネネ「堅い……!」

アマちゃん「マジョマ……」クルクル……シュタッ

千秋「確かに鋭い一撃だったわ。けれど、トリデプスの防御力を甘く見ないで貰いたいわね」

トリデプス「デプゥス……」キュイイイン……

ネネ「あれは……!?」

千秋「その蹴りの衝撃、倍にして返してあげなさい!『メタルバースト』!!」

トリデプス「デープス!」ズオッ……ドゴシャアア!!

アマちゃん「マジョーッ!」ドゴオオオ……

ネネ「アマちゃん!!」

900: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:50:18 ID:JVH
未央「今の技……受けた衝撃をそのまま跳ね返したの……?」

肇「いえ……恐らくは、その衝撃にトリデプスの力が上乗せされています……威力は…数段上になるかと…」

ジラーチ【1.5倍】

未央「へっ?」

ジラーチ【同じはがねタイプだからね。わかるんだよ。今の技は受けたダメージをはがねタイプのエネルギーに変換して1.5倍で跳ね返す技さ】

未央「って、ジラちんはがねタイプだったの!?」

加蓮「ふうん……はがねタイプなんだ、ジラーチって。何かわかったの?」

未央「かくかくしかじかで……」

肇「成程……」

忍「って事は……攻略法は1つだね。カウンターを恐れて様子見で小技を出すより、一撃一撃強烈な技を叩き込んで、跳ね返される前に打ち破る」

加蓮「それ、言うのは簡単だけど、あの防御力じゃ……」

ネネ「大丈夫です!」

加蓮「ネネ」

ネネ「私達だって、ここまでの戦いを乗り越えて強くなってるんですから……これくらいの壁、どうってこと……ないです!」

アマちゃん「マジョマ!」コクン

901: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:50:52 ID:JVH
千秋「いいわね。その折れない強さ。……来なさい、真正面から受けて立つわ!」

トリデプス「デプゥス!」

ネネ「いきます!アマちゃん、今度は連続で『トロピカルキック』!!」

アマちゃん「マージョマッ!」タンッ! ヒュウウウウ……

ドガガガッ!ガガガガガガガッ!!

トリデプス「デプス……!」ガキキキキキン……!

千秋「無駄よ!跳ね飛ばしなさい!」

トリデプス「デープス!」ドッ!

アマちゃん「ジョマアアア!」ズザアアア……!

ネネ「く……!アマちゃん…!」

紗南『おっと、アマージョ、弾き飛ばされて体勢を崩したー!これはマズいのではー!?』

千秋「好機到来ね……決めるわよ!『ヘビーボンバー』!!」

トリデプス「デプゥス!」ピョイイン!!

未央「ウソ、飛ぶの!?」

ネネ「いけない……避けてアマちゃん!!」

アマちゃん「マジョマ……」ググッ……

千秋「空中からの強撃は、何もそちらの専売特許じゃないのよ……押しつぶしてしまいなさい!!」

トリデプス「デープス!!」ヒュウウウウ……!

……ドッシャアアアアアアン!!

902: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:51:26 ID:JVH
ネネ「きゃっ……!」ブオッ……

モクモクモク……

加蓮「けほっ…えほっ……すごい土煙………!」

紗南『煙が晴れるまで視界不良、果たしてどうなってしまったのかーっ!』

千秋「………この一撃、マトモに受ければ立ち上がることはできないはず…」

ネネ「……アマちゃん…!」

アマちゃん「マージョマッ……」

紗南『ああっと! かろうじて持ちこたえたか!? ですが最早満身創痍といった風体です!』

オオオ……

千秋「違う……ぶつかる直前、体勢を崩したまま、横に転がって回避していたのが見えた……」

千秋「相手との体重に差があるほど威力が増大する『ヘビーボンバー』だけど……相手の機動力までは考えられていなかったわね…」

トリデプス「デプゥス……デプス?」クイクイ

紗南『あーっと!トリデプスの足がフィールドの地面にめりこんでいる!これでは身動きが取れません!』

千秋「…判断を違えた…これは私のミスね……!」ギリッ

ネネ「…はぁ……はぁ……アマちゃん」ドクン……ドクン……

未央「ネネちん!」

加蓮「……待って」スッ

903: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:52:01 ID:JVH
未央「でもかれん、ネネちんの体が……」

加蓮「…貫き通したい意地があるの。どんなに体が弱くても……そうでしょ? ネネ…!」

アマちゃん「マジョマ……」

ネネ「いって……アマちゃん……私達は勝つのよ……!」

アマちゃん「……ジョマッ!」ダッ…

千秋「いいわ…その誇り、意地……見せてみなさい! …どれだけ無様であろうとも……膝を折るような真似だけは絶対にできないの!」

首を振るトリデプス「デプス!」ブルブル!

紗南『あの状態でなお勝つことを諦めないジムリーダー千秋!まさに鉄壁の精神力だーっ!』

ワアアアアア…!

ネネ「これで……最後!! 『飛び膝蹴り』よ!」

千秋「耐え抜いて跳ね返しなさい!『メタルバースト』!!」

アマちゃん「マージョマーーーッ!!」ズッ………

トリデプス「プスッ……」ゴッ………!

ドシャアアアアア!!

トリデプス「プスオオオオ!」ヒュウウウウ……

紗南『と、飛んだーっ!? 足が地面にめり込んでいたトリデプスを上空に蹴り飛ばしましたーっ!』

千秋「いけない、あの体勢は……!!」

ドシャアアアアア……!

904: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:52:26 ID:JVH
トリデプス「デプォ」キュウ……

紗南『地面に激突ーー!自身の重量をそのまま背中で受ける形になってしまったー!トリデプス、戦闘不能です!!』

ワアアアアア…!

ネネ「く……っ……はぁ……はぁ…」

紗南『………医療班!トリデプスの手当てとネネちゃんの介抱を!』

加蓮「ネネ……」

ネネ「…ちょっと無茶しすぎちゃいました……あと、頼みます……加蓮さん……」フラッ……

亜季「おっと!」ダキッ

清良「脈拍は……これは過呼吸症候群ね……大丈夫、適切な処置をして安静にすればすぐに良くなるわ」

アマちゃん「マジョマ…」

ネネ「アマちゃん……ごめんね……アマちゃんに……もしものことがあったらって……想像したら……はぁ……はぁ……」

亜季「ご無理なさらず、アマちゃん殿もきっとわかっているはずですよ、ネネ殿」

アマちゃん「ママー…」

ネネ「そんな……顔……しないで……ちょっとびっくりした、だけだから……ね?」

アマちゃん「ママー」ギューッ

~~~~~

905: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:52:57 ID:JVH
紗南『ネネ選手、容態は快方に向かいつつあるとの事です! やー、良かった良かった…』

加蓮「………私……」

千秋「何を迷っているの? 次は貴女の番でしょ」

未央「ちょ……そんな言い方……」

加蓮「…未央、大丈夫だから」スッ

未央「でも!」

加蓮「そう、さっきのは……私の勝手な独善。もしかしたら期待を押し付けてしまったかもしれない……そう、思ったよ。今の今までは…」

千秋「……そう。今は違うと言うのね」

加蓮「うん。…今は託された思いに……全力で応えるだけ」

加蓮「勝手かもしれないけど……それが私の覚悟!」ボウン!

ぽて「バッフウウウン!!」ボオオッ!

紗南『背中の炎が燃え上がるーっ!ここで、はがねタイプに有利なバクフーンを繰り出してきたーっ!』

ワアアアアア…!

906: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:53:25 ID:JVH
千秋「いい覚悟。……それでこそこちらも全身全霊でぶつかれる!」ボウン

ドータクン「ゴワーン!」フヨフヨ……

紗南『ここでドータクンの登場だー!動きは緩慢ながらエスパータイプを併せ持つ変幻自在の耐久ポケモンだよー!』

ワアアアアア…!

加蓮「相手のまもりを上回る、火力! 今ならこの技が……私達の全力っ!!」

ぽて「バッフウウウン!!」ドゴオオオ!!!

未央「ひゃっ……!? 背中の炎が……!」

肇「まるで……霊峰が火を噴くよう……あの技は……」

加蓮「燃え上がれっ!!『噴火』!!」

ドゴオオオ………ドパァン!ドパァン!ドパァン!

千秋「噴火……体力が最大に近ければ近いほど威力を増す、炎タイプ最強クラスの大技……けれど」

ドータクン「ゴワワーン!」

紗南『これは…弱点の炎攻撃を耐えているーっ!』

忍「あれだけの威力を…耐えた!? 嘘でしょ、相性では効果は抜群なのに……」

千秋「ドータクンの特性は『耐熱』。ある程度なら炎攻撃を軽減できる。そして……この技で貴女は何もできなくなる!」

ドータクン「ゴワーン ゴワーン ゴワーン!」

ポツ……ポツ……

加蓮「……これは…!」

ザアアアアアア……!

907: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:53:55 ID:JVH
千秋「貴女達、例のマジカ団と戦っているのよね。なら、悪天候下での戦いがどういうものかくらいは…知っているわよね」

紗南『これはドータクンの『雨乞い』です!しばらくの間炎攻撃の威力は下がり、水攻撃の威力が上昇します!……っていうか傘、傘どこーっ!!』アタフタ

加蓮「それでも……まだこっちはダメージを負ってない……やるんだったら、最後まで……! ぽて、もう一度『噴火』攻撃!」

ぽて「バッフウウウン!」ゴバアアアア……

ドパァン……ジューッ! ジューッ……モクモクモク……

紗南『土煙の次は水蒸気!それも超高熱広範囲の攻撃に昇華しましたーっ!』

千秋「成程。雨下でも炎ポケモンを活かす策……見事なものね」

ドータクン「ゴワーン……」ゴト……バターン!

紗南『ドータクンここで戦闘不能!流石に2度は耐えられませんでしたー!!』

千秋「よくやったわ、戻って」シュウウウウ……

忍「加蓮ちゃん、凄いよ!完全に逆風だった状況を……あんなふうに逆手にとっちゃうなんて…!」

加蓮「……けど……まだ気は抜けないよ」

忍「……そっか、雨……」ハッ

加蓮「ただ降らせただけで終わりってわけ、ないもんね…そうでしょ、千秋さん」

千秋「勿論、そのつもりよ。さあ、この子を越えられるかしら!」ボウン!

908: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:54:21 ID:JVH
エンペルト「ペルルルー!!」

肇「水タイプ!」

紗南『みず、はがねタイプの皇帝ポケモンエンペルト、満を持して降臨です!!』

加蓮「せめて、後続に繋げるくらいはしなくちゃね……! ぽて、もう一度『噴火』!」

ぽて「バッフウウウン!!!」ゴバアアアア!!

千秋「……諦めが悪いのね、随分と」

加蓮「よく言われる!」ニヤリ

紗南『不敵に笑う加蓮選手、ですが噴火攻撃の威力は大幅に削がれています!』

エンペルト「ペルー!」ブバーッ! ジューッ…

千秋「低威力の水技でも相殺できる程に、ね……蒸気でそれなりのダメージは免れないでしょうけど、それでも」

加蓮「まだまだ……!ぽて、『ワイルド……』」

千秋「遅いわ。『ハイドロポンプ』!」

エンペルト「ペルルルー!」ブバーッ!!!

ぽて「バフウウウ!」ドシャアアアアア!

909: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:56:06 ID:JVH
紗南『高圧水流で壁に叩きつけられたー!ただでさえ雨が降る中のタイプ一致ハイドロポンプ、これは耐えられないーっ!』

ぽて「バフウ……」キュウ……

紗南『戦闘不能ー!!これで両者とも残り1体です!』

加蓮「……ありがとう、ぽて…ゆっくり休んで」シュウウウウ……

加蓮「忍!」スッ

忍「……ふふ。実はこのハイタッチ……やるの楽しみにしてたんだよね!」

加蓮「道は拓いたから……後は、任せたよ」

パァン!

忍「……っ……よーっし!! 遂にアタシ達の出番っ!! 絶対に、勝つ!!」ボウン!

ムツ「シュシャッ!」パンチパンチ!

910: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:56:31 ID:JVH
紗南『初陣を華々しく勝利で飾ることができるのか、それとも一敗地に塗れる事になってしまうのか!最後の勝負にエビワラー、今、ゴングです!!』

ワアアアアア…!

千秋「……マズイわね。エビワラーの使える技は……雷パンチをはじめとして各種属性技や格闘技……それに、拳を使う技は威力が増大するはず……特性にもよるけれど」

忍「ここまで道を拓いてくれたみんなのため………」

千秋「速攻をかけたほうが良さそうね……これで決めるわよ!『アクアジェット』!」

エンペルト「ペルルルル! ペルーッ!」シュゴオオ!

紗南『全身に水流を纏っての超高速突進技、アクアジェット!勝負はこの技を見切れるかにかかっています!』

未央「しのむー!」

加蓮「忍…!」

肇「お願いします……!!忍さん!」

忍「………みんな……」

911: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:56:53 ID:JVH
拓海『さぁ、行って来い』ポンッ

有香『ここまで来たら……後は突撃あるのみ、ですよ』ポンッ

芳乃『さぁ、いざ参らん、なのでしてー。ぶおおー。』

忍「……ありがとう、師匠、有香ちゃん、芳乃ちゃん…」

ムツ「シャッシャッ」シュシュシュッ

エンペルト「ペルルルル!」シュウウウウ…!

忍「どんなに相手が早くても…今のアタシ達には…止まってさえ見えるよ」

ムツ「シャッ」コクン

忍「いくよ……カウンターのタイミングで……『インファイト』!!!」

ムツ「シャアアアラアアアアッ!!!」ドッ………

エンペルト「ペル」ゴッ………

912: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:57:14 ID:JVH
ムツ「シャラララララララララララララララララララララララララララララララララァ!!!」ドッバキッドカッゴゴッメキッドスッゴシャッ!

エンペルト「ペルルァアアアア!!!!」ドスッドカッドゴッ……

拳を突きだす忍「っっけええええええええ!!!」バッ!

ムツ「シャアアアアアアアラァアイッ!!!!」メリッ……

エンペルト「ペルァ」ゴハッ……

千秋「エンペルト!!」

エンペルト「ペルァ……」ヨタヨタ……

エンペルト「ペル……」ヨロッ……グググ……

バターン!!

913: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:57:36 ID:JVH
千秋「……何て攻撃………こちらの攻撃の勢いさえも利用して……私の自信が裏目に……出るなんて……」

紗南『エンペルト、戦闘不能!シデロスジムでの戦いを制したのは、挑戦者達だーっ!!』

ワアアアアア………!

忍「やった……? やったよね………?」

ムツ「シャイ」コクン

忍「やったよムツーっ!!あはは、バンザーイ!!」

ムツ「シャイ?」

拳を突きだす忍「ほら、ムツも」スッ

ムツ「……シャイ!」スッ

※互いの拳が優しく交わった……。

ネネ「……みんな……良かった……」

加蓮「ネネ…!」ダッ

914: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:57:54 ID:JVH
ネネ「すみません、こんな不甲斐ない私で…」

加蓮「何言ってんの……私こそ、勝手に押し付けたりして……」

ネネ「いいんです。むしろ……それが嬉しかったから……信じてくれて、ありがとうございました」ニコッ

加蓮「本当……いい子すぎ」ヨシヨシ

忍「ふたりともー!バッジバッジー!」

ムツ「シャイ!」

加蓮「あ、そっか……行こ、ネネ」

ネネ「はい。あの、ゆっくりで、いいですか?」

加蓮「ん。ほら、手握ってあげるから」

ネネ「わぁっ……ふふ、ありがとうございます…!」

~~~~~~

915: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:58:14 ID:JVH
※ジムバッジを手に入れた加蓮達が街を去ってしばらく後。
夕方・シデロスジムの城壁屋上。

1人、夕焼けを見ながら黄昏れる千秋の姿があった…。

千秋「………フォルテバッジ、渡してしまう結果になってしまったわね…」

千秋「…私が慢心しなければ、負けなかったかもしれない……もっと大きく、高い壁になれていたかもしれないのに………悔しい……」

「その悔しさ、よく分かりますよ」

千秋「え……?」

916: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:58:34 ID:JVH
マジカ団総帥「どうです……その地に堕ちた誇りとやら……我々と共に戦って、雪いでみては……」

千秋「…聞き捨てならないわね………誰の誇りが地に堕ちた、ですって?」

マジカ団総帥「堕ちているではありませんか、正に、今にも沈み行く斜陽の如く……だからこそ、その夕陽に慰めを、安らぎを求めたのでは?」

千秋「……そうね。確かに私は敗けた事に悔いていた。それは紛れもない事実よ。…けれど」

千秋「それもこの胸に矜持あればこそ。それを侮辱すると言うのなら…貴方が何者であれ…容赦はできない」ボウン!

トリデプス「デプゥス!」ズシイン!

マジカ団総帥「やれやれ……どうにも面倒な事になりましたね…。弱っている心の隙を突くつもりが……」スッ

917: ◆6RLd267PvQ 19/09/21(土)17:58:49 ID:JVH
マジカ団総帥「尚も痛め付けなければ理解して貰えないとは……全く、心苦しい話です」ボウン!

マフォクシー「クォォォォン!」

マジカ団総帥「ならば直接地に堕として差し上げましょう。この私自らの手で…ね」


※遂に手持ちポケモンをあらわにしたマジカ団総帥。

果たして勝負の行方は…。

続く…。

引用元: シンデレラガールズ×ポケモンクロス クロノスライトストーリー