前回 執事「なーんだ??」

0001HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 19:12:51.85ID:Xpzh6C/80
ジャジャーン

男「ladies and gentleman, boys and girls」

男「30 minutes instant radioの時間だぜ!!」

男「みんないい子にしてたかな??」

男「楽しみで楽しみで眠れなかった君も、今日初めて聞いた君も、楽しんでいってくれよ!!」

~♪~

男「今日のオープニングナンバーはこちら!!」

男「ゲリラライブで強烈なデビューを飾った『サンライト・ダガー』のアルバムから一曲」

男「【メンズ・ガンズ・テリオス】だ!!脳髄まで痺れちまえ!!」

0002以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします


~♪~

男「くはー」

男「ノリノリですねえ、マジで、いーですねえ」

男「こう、体にビリビリッとくるっていうか」

男「神経に稲妻が走る感じがたまらないですね」

男「さ、ではアウトロをBGMに、おれの話でもしましょうか」

~♪~

男「昨日、おれがよく行くスーパーの店員にお勧めを聞いたんですよ」

男「するとなんて答えたと思います??」

男「『テメーが先週買ってったものと同じだよ!!』だって!!」

男「お得意様だからって、ちょっと調子乗りすぎてると思いませんか!?」

男「はっはっは!!」

0003HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 19:21:26.02ID:Xpzh6C/80
男「ん、じゃあ次の曲いきましょう」

男「えーと…」

男「じゃあ、これ」

男「ロック界の大御所『テレビジョン・ポップス』の名曲」

男「映画の主題歌にもなった【ルージュ・ライフ】だ!!」

~♪~

男「あーこの曲マジで懐かしい…」

男「ここ!!ここね!!このサビの盛り上がり!!」

男「ヒロインが別れを惜しみながら瞬間移動するシーンね」

男「泣いたなあ…」

0004HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 19:26:11.73ID:Xpzh6C/80
男「この曲がヒットしたのって、おれがまだ高校生とかの頃だから…」

男「もう12年くらい昔なんですねえ」

男「12年って、おいおい…」

男「あー…」

男「歳とったなあ…」

男「…」

男「っと、感傷に浸ってしまった」

男「さて、次の曲は…」

0005HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 19:30:09.26ID:Xpzh6C/80
~♪~

男「そろそろお別れの時間が近付いてきました」

男「明日もこの時間に、チャンネルは555.00でよろしく!!」

男「さ、では今日のラストナンバー」

男「ポップスの代表格『ケイト & ルーカス』から一曲」

男「【ホイットニー・ミュータント】」

~♪~

男「あー癒されますねえ」

男「癒されながらお別れです」

男「また明日!!」

0006HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 19:34:36.78ID:Xpzh6C/80
ガチャリ

男「ふう」

男「ああ疲れた」ゴキゴキ

男「明日はなにをかけようかなあ」ガチャガチャ

男「この辺にしとくかあ」ガチャガチャ

男「そうそう、今日もあれ、聴いとくか」

~♪~

男「んー」

男「生き返るなあ…」

男「早くこれ、誰かに聴かせてえなあ…」

0007HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 19:38:43.34ID:Xpzh6C/80
~♪~

男「っと、そういえば洗濯もんが溜まってたな」

男「いい天気だし、久しぶりに洗濯でもするか」


男「うっぷ!!臭!!」

男「なにこれ!!おれの臭いなのかこれ!!」

男「新しい生命体でも誕生してんじゃねーだろうな!!」

男「お前はもう捨てる!!これも捨てる!!てい!!」ポイポイ

男「…服でも見に行くか」

0008HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 19:43:14.03ID:Xpzh6C/80

カランカラン

男「いよーっす、いい服入った??」

店員「…」

男「んだよ、しけた顔しちゃってえ」

男「あ、今日は服も見に来たんだけどメインはパンツね、パンツ」

店員「…」

男「いやあ、洗濯さぼってたらすげー臭いしやがってさあ」

男「またこれ大量にもらってくからねえ」

店員「…」

男「はっはっは!!」

男「んだよ、見せる相手くらいいるっつーの!!」

男「毎日が勝負パンツだっつーの!!」

0009HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 19:49:12.56ID:Xpzh6C/80
男「そろそろ涼しくなってくるから長袖もほしいところなんだけどねえ」

男「なんかお勧めある??」

店員「…」

男「あ、これ??」

男「え、お前の趣味これ??」

男「…」

男「ないわーwww」

店員「…」

男「んでもまあ、お前のお勧めだったら、着てみようかな」

男「はっはっは!!」

0010HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 19:56:20.84ID:Xpzh6C/80
―――

ジャジャーン

男「ladies and gentleman, boys and girls」

男「30 minutes instant radioの時間だぜ!!」

~♪~

男「今日のオープニングナンバーはこちら!!」

男「『ブリーズ・ウィズ・ザ・ドーナツ』からデビュー曲のこちら!!」

男「【100%ドーナツ】だ!!寒い歌詞が癖になるぜ!!」

男「って、おれ、言いすぎ??」

男「でもその寒さが持ち味!!堪能してくださいな!!」

0011HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:01:16.80ID:Xpzh6C/80
~♪~

男「そういや昨日のことなんだけど、聞いてくれますか」

男「久しぶりに洗濯でもしようと洗濯ものをあさってみたらすげえ臭い!!もうほんとひどい!!」

男「こりゃダメだって新しいのを買いに行ったんだが、店員に『見せる相手いねーだろ』って笑われたよ」

男「まあ確かにね??ここにはおれしかいねーし見せる相手も当然いないんだけども」

男「でも男としての意地がね??あるわけじゃない??」

男「やっぱお父さんみたいなブリーフで過ごすには抵抗があるわけじゃない??」

男「男は黙ってボクサーでしょう」

男「似あう??どう??」

男「って見えねーか」

男「はっはっは!!」

0012HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:06:32.02ID:Xpzh6C/80
男「あ、もうそろそろ涼しくなってくる季節だしね、長袖も新調しました」

男「これも店員のお勧め…」プププ

男「いやあこれちょっと、どうよ」プププ

男「センスあるのかないのか…」

男「ありすぎて逆にヒく、みたいなね」

男「まあ見せる相手いませんけどねー!!」

男「おれのイカしたシャツが見たい人は××放送局まで!!」

男「ってか」

0013HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:10:58.14ID:Xpzh6C/80
~♪~

男「では今日もここでお別れ」

男「明日もこの時間に、チャンネルは555.00でよろしく!!」

男「ラストナンバーはパンクバンド『ファイナル・ライン』で」

男「【メイクアップ・ラミネート】です」

~♪~

男「あーやべ」

男「アツイ、これはアツイね」

男「こういう激しい曲でお別れってのもアリだね」

男「んじゃあまた明日!!」

0014HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:19:13.18ID:Xpzh6C/80
ガチャリ

男「ふぅ」

男「30分なんて、あっという間だなあ」

男「もっと長くしときゃあよかった」

男「…」

男「それもアリだなあ」

男「あ、でもあんまり長くは電力が持たないか」

ジジジ…

男「あん??」

ジジジ…

男「あれ、放送は止めたはず…」


0016HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:24:43.78ID:Xpzh6C/80
?「ガガ…ガガ…」

男「お、おいおい、まさか…」

?「…聞…え…すか…」

男「!!」

男「人だ!!」

?「あ…あ…聞こえますか…」

男「聞こえる!!おい!!ははは!!マジでか!!」

?「もし…聞こえていたら…応答してください…」

男「ははは!!どうやって!!はっはっは!!」

男「おれのチャンネルは君が使ってるじゃないか!!」

0017HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:28:16.35ID:Xpzh6C/80
?「あ、でも無理ですねえ」

男「お」

?「えっと、私は555.05チャンネルに切り替えますので、あなたはこのまま喋ってください」

男「ほほう」

?「で、私は555.00を聴きながら555.05で喋ります」

男「賢いな」

?「では、えっと、少々お待ちを」

0018HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:32:13.51ID:Xpzh6C/80
男「えーと聞く方を555.05に…と」

?「あーあー、聞こえますか??」

男「おーし、バッチリだ」

男「おれの声が聞こえるかい??」

?「聞こえます!!やった!!うまくいったわ!!」

男「その声、君、まだ子ども??」

?「子どもじゃないわ、もう14歳よ」

男「はっはっは、十分子どもだ」

少女「そんなことない!!」

0019HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:37:09.46ID:Xpzh6C/80
男「まあ、そんなことはいい!!おれは今最高に嬉しいんだ!!」

少女「私もです!!まさか他に人がいるなんて!!」

少女「しかもその人と話ができるなんて!!」

男「ああ、10年ぶりだ、人の声を聞いたのは」

少女「私は…一緒に暮らしていた人がいたのだけれど、ついこの間亡くなってしまったから…」

男「そうか」

男「でもずっと一人ぼっちじゃなかったんだから」

少女「ええ、そうね」

少女「彼にはとても救われたわ」

男「羨ましいよ」

0020HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:41:28.66ID:Xpzh6C/80
少女「あれ、でもあなた、ラジオじゃ店員さんとの会話を嬉しそうにお話していたじゃない」

男「ああ、あれは…」

少女「??」

男「マネキンの店員さ、喋らない」

少女「…」

男「会話はおれの妄想さ、ははは」

男「そうでもしなきゃ孤独で頭がおかしくなっちまうところだ」

男「いや、もうすでにおかしくなってんのかもな」

少女「いえ、その気持ちわかります」

男「そうかい」

0021HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:46:09.27ID:Xpzh6C/80
男「寂しくなって、それで、ラジオを始めたんだ」

少女「どうやって??」

男「いや、ラジオ局を勝手に使ってんの」

少女「ラジオ局があったの??」

男「ちょうどいいところにな」

男「で、ラジオで好きな曲を流しては、どこかにいるかもしれない誰かを探してた」

少女「あなたがラジオを流してくれたおかげで、私もあなたに出会えたわ」

男「そうさ!!こういう出会いを待ってた!!」

少女「うふふ」

0022HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:51:17.47ID:Xpzh6C/80
少女「彼が亡くなる前から、ずっとあなたの流す音楽が私の活力だったの」

男「そいつは嬉しいね」

男「リスナー第一号だ」

少女「あなたのラジオを初めて聴いたときは胸が震えたわ」

男「最高のコメントありがとう」

少女「どうにかして、あなたにコンタクトを取りたいと願って…それで…」

男「それで??」

少女「ラジオを作ったの」

男「…」

男「そりゃあすげえ」

少女「手先は器用なのよ♪」


0024HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 20:55:21.43ID:Xpzh6C/80
男「で、君はどうして暮らしてるの」

少女「私は…小さな島に一人で暮らしているわ」

男「食べ物は??」

少女「牧場と畑があるの」

男「!!」

少女「でもまあ、お世話はだいたいロボット任せなんだけれど」

男「ちょ、なにそれ!!羨ましい!!」

男「おれなんてこの10年スーパーやら倉庫やらの物資で食いつないでんのに!!」

少女「言ってましたねえ」

男「週に一回のビーフジャーキーが御馳走なのに!!」

少女「言ってましたねえ」

0025HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:03:02.40ID:Xpzh6C/80
少女「私の今日の夕食は本物の牛肉ですよ♪」

男「うわああああああああああああ」

少女「パンも窯で焼けるのよ♪」

男「うわああああああああああああ」

少女「ふっふっふ、牛さんからは牛乳も出るのよ♪」

男「ずるい!!ずるい!!くそおおおおおおおおおおおお」

少女「えっと、DJさん私の倍くらいの歳ですよね」

男「歳なんて関係ねえ!!悔しいときは叫ばせろ!!」

少女「ロックですねえ」

0026HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:07:08.88ID:Xpzh6C/80
男「まあ、一人で生きていける環境があるわけか」

少女「ええ、まあ、そうですね」

少女「あなたはどんな暮らしを??」

男「ラジオで言ってたような平凡な暮らしさ」

男「毎日町へ出かけていって、まだ使える物資をあさってはその日暮らしさ」

少女「孤独ですか??」

男「孤独だね」

男「マネキンに毎日のように話しかけては、架空の日常をラジオで垂れ流してた」

少女「でもリスナーはいますからね!!」

男「ああ、それが何よりだ」

0027HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:11:44.48ID:Xpzh6C/80
少女「10年間、他に誰にも会わなかったんですか??」

男「ああ」

男「人間には一切関わりがなかった」

少女「動物は??」

男「それはまあ…鳥とか野良犬とかは普通にいるよ」

少女「こちらと同じですね…」

少女「ある日、突然いなくなった…らしいですね」

男「らしい??」

少女「ええ、私その頃はまだ4歳だったの」

男「ああ、そりゃあ仕方ないか」

少女「どうして人が居なくなったんでしょう」

男「わかんねえ」

男「そもそも、おれがなぜ生き残ってるのかだってわかんねえよ」

0028HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:17:10.62ID:Xpzh6C/80
少女「私と一緒に暮らしていた人は…」

少女「ウイルスとか、核実験を疑っていましたけれど」

男「ああ」

少女「結局原因はよくわからないままです」

男「うーん」

男「ウイルスはともかく、核実験はないだろうな」

少女「どうして??」

男「だって動物はみなピンピンしているし」

少女「ええ」

男「おれたちに抗体がある理由もないだろ」

少女「私たち、普通の人間ですもんねえ」

0029HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:21:49.37ID:Xpzh6C/80
男「放射線に抗体がある人間もまれにいるらしいが」

少女「それが私たち??」

男「うーんよくわからん」

男「医者も科学者も、いないからな」

少女「ですよねえ」

男「一緒に住んでいた人は、どうして亡くなったの??」

少女「病気です」

男「なんの??」

少女「ううん、全然わからないの」

男「そうか」

少女「毎日看病したけれど、治す手立てもなくて」

男「…そうか」


0031HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:28:07.43ID:Xpzh6C/80
少女「ウイルスは??可能性がありますか??」

男「なくはない…かな」

少女「そう」

男「それなら、そのウイルスを作ったやつらはきっと生きてるんだろうな」

少女「あ、そうか」

男「それにウイルスってのは、ワクチンとセットでないと作られないし…」

少女「どういうこと??」

男「治すことができなければ、自分たちも死んでしまうだろう」

少女「そっか、じゃあ失敗したのかしら」

男「かもしれないな」

少女「でも、じゃあ、なんで私たちは生きているの??」

男「偶然抗体があったのか…」

少女「ラッキーね、私たち」

男「はっはっは!!最高にアンラッキーとも言えるがな」

0032HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:32:15.73ID:Xpzh6C/80
少女「死体を見たことはある??」

男「ない」

少女「私もないの」

少女「お父様やお母様、お兄様がいたはずなのに、どこにもいないの」

男「…いや、ちょっと待て」

少女「え??」

男「赤ん坊の死体なら…見たことがある」

少女「!!」

男「それも何人も…」

男「怖くなって逃げ出したし、忘れようとしていたけど…思い出した」


0034HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:37:39.64ID:Xpzh6C/80
少女「でもそれっておかしくない??」

男「人体を溶かすウイルスかもな」

少女「…怖い」

男「ま、今更原因を探ってみたところで、答えが見つかるわけもなし」

少女「そうね」

男「もっと楽しい話をしようぜ」

男「せっかくの記念日なんだから」

少女「記念日??」

男「人間との再会記念日だ、おれのな」

少女「うふふ、そうね」

0035HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:42:28.87ID:Xpzh6C/80
男「あ、でも待ってくれ」

少女「え」

男「あんまり長い間はお喋りできないんだ」

少女「どうして??」

男「発電装置は一応あるんだが、一日に使える量は多くないんだ」

少女「ああ…そうか」

男「君のところのラジオはどうなってるの」

少女「えっと…わからないの」

少女「発電装置は昔からあるものだし…」

男「そうか」


0037HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:47:00.97ID:Xpzh6C/80
少女「じゃあ、また明日、同じ時間にお喋りしましょう??」

男「ああ、それがいい」

少女「時間はたっぷりあるんだもの、ね」

男「はっはっは、そりゃそうだ」

少女「私もお買い物、したくなっちゃったなあ」

男「おれは農作業がしたくなったよ」

少女「ないものねだりですね、お互い」

男「そうだな」

少女「ふふ、じゃあまた明日」

男「ああ」

0038HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:52:18.89ID:Xpzh6C/80

カランカラン

男「今日は、あんたに報告があるんだ」

店員「…」

男「今日さ、初めておれ以外の人間に会ったんだ」

男「あ、会ったって言っても、声を聞いただけなんだけど」

店員「…」

男「おれ、おれ、嬉しくてさあ」

店員「…」

男「今までありがとうな、おれの相手してくれて」

店員「…」

男「はは、もう喋ってくれないか…」


0040HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 21:56:57.10ID:Xpzh6C/80
店員「…」

男「倉庫の方に移動させるよ」

店員「…」

男「よっと…」グイ

ゴロゴロ

男「服は、このままでいいかな」

男「今までありがとうって言っても、また服はもらいに来るけど」

男「じゃあ、な。ゆっくり休んでくれよな」

店員「…」

0041HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 22:01:30.63ID:Xpzh6C/80
―――

ジャジャーン

男「ladies and gentleman, boys and girls」

男「ていうかgirl!!聞いてっか!!」

少女「はいはーい!!」

男「30 minutes instant radioの時間だぜ!!」

~♪~

少女「待ってました!!」

男「みんな聞いてくれ!!」

男「ついにおれのリスナーとコンタクトをとることに成功したぜ!!」

少女「いえー!!」

男「ラジオが二台ある人は、555.05チャンネルにも合わせて聞いてくれ!!」

少女「いえー!!」パチパチ

0042HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 22:06:50.64ID:Xpzh6C/80
男「いや、マジでね、この10年間で初めて他の人とコンタクトが取れました!!」

男「もうおれのテンションずっとマックスです!!」

少女「ひゅーひゅー!!」

男「『ひゅーひゅー』はちょっと変じゃない??」

少女「そうかしら」

少女「でも私も他の人とお話するの、慣れてないの」

男「そりゃそうか」

少女「盛り上げ方も教わらなかったの」

男「まあいいや、好きに喋っててくれたらいいよ」

少女「はあい」


0044HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 22:13:51.43ID:Xpzh6C/80
少女「ね、ね、リクエストしていい??」

男「うっひょう!!ラジオ始まって初めての『リクエスト』きました!!」

男「ここには山ほどの音源がある、なんでも言ってくれ!!」

少女「じゃあね、じゃあね…」

男「うん」

少女「…私の知ってる音楽って、あなたのラジオで聴いたものだけだったわ…」

男「はっはっは!!」

少女「えーと、私が初めてあなたのラジオを聞いたときの曲がいいなあ」

男「それはいつ??」

少女「えっと…1ヶ月以上は前ね。それは確実」

男「アバウトすぎ!!」

少女「DJさんテンション高すぎ!!」

男「はっはっは!!」


0046HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 22:19:33.71ID:Xpzh6C/80
少女「えっとね、えっと」

少女「なんとかナンバーワンっていう曲名だったと思うのだけど…」

男「よっし、それなら分かる」

少女「ほんと!!」

男「えーと、じゃあリクエストいただきました…この曲!!」

少女「わくわく」

男「『スクール・トライアル』で、【ルカNO.1】だ!!」

~♪~

少女「ああああ!!これこれ!!」


0048HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 22:26:17.23ID:Xpzh6C/80
~♪~

男「うーん脱力系というか、なんだか体の力がスーッと抜ける感じですね」

少女「ねー」

男「硬派なバンドなんですが、この曲だけちょっと異色系なんですねえ」

少女「他の曲は知らないなあ」

男「まあおれもよく知らないんだけど」

少女「なんだそれー」

男「無理に合いの手入れなくていいからね」

少女「はあい」

0049HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 22:31:48.69ID:Xpzh6C/80
男「さあ、他に聞きたい曲は??」

少女「んーとねえ」

男「…」

少女「…」

男「思いつかないなら、適当に流してるけど」

少女「あ、うん、お願いします」

男「はいはい」

~♪~

少女「あ、これも素敵ね」

男「だろ」

0050HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 22:37:03.40ID:Xpzh6C/80
少女「ねえ」

男「あん??」

少女「きっと、他にも、聞いてくれている人はいるよね」

男「ああ、まあ、そう願うよ」

少女「10年生きのびてる人、きっと、いるよね」

男「…そう、願うよ」

少女「その人がまたコンタクトをとってくれるまで、一緒に待とうね」

男「何年かかるか、わからないぜ??」

少女「いいじゃない、時間は」

男「…たっぷりあるし、な」

少女「そういうこと」

0051HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 22:41:39.86ID:Xpzh6C/80
男「じゃあおれからのリクエスト、聞いてもらえるかな」

少女「なあに??」

男「今から流す曲は、おれが一番好きな歌なんだ」

少女「あら、じゃあ私も聴いたことがあるかしら」

男「いいや、ラジオじゃ一回も流してないんだ」

男「いつもラジオが終わった後に聴いていただけだから」

少女「そうなの、じゃあ知らないかもしれないわね」

少女「で、その曲がどうしたの??」

男「覚えて、おれのために、歌ってくれないか」

少女「…」

少女「無茶言うわねえ」


0053HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 22:48:22.47ID:Xpzh6C/80
男「いやいや、今日歌えって言ってんじゃないぜ」

少女「??」

男「毎日流すからさ、ゆっくり覚えてくれたらいいんだ」

男「で、いつか君の生の声でこの歌を聞きたいな、と思って」

少女「私でいいの??」

男「君しかいないだろ」

少女「…そっか」

男「どうかな」

少女「…いいわ、別に」

男「本当に!!」

少女「ええ」


0055HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 22:52:37.46ID:Xpzh6C/80
少女「どんな歌なの??」

男「救いの歌さ」

少女「救い??」

男「そう、死んでいた者が生き返るような」

男「恵まれない者が幸せになるような」

少女「そう」

男「こんな世界の終わりに聴くために作った歌だ」

少女「え…」

男「じゃあ、流すよ」

少女「ええ」

0056HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 22:57:16.31ID:Xpzh6C/80
男「遂に解禁!!このおれの心の一曲!!」

男「売れないロックバンド『アレルギー・イズム』」

少女「…」

男「ボーカル、ギター、ベース、ドラム、全部おれ!!」

少女「あはは」

男「聴いてください、【ザ・オリジナル・リクエスト】!!」

少女「…」

~♪~

少女「素敵な曲…」

男「…」

少女「すぐに覚えられるわ、きっと」

男「そりゃあよかった」


0058HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 23:02:20.94ID:Xpzh6C/80
少女「いなくなった人たちも報われたらいいね」

男「そうだな」

少女「死んでいった人たちも幸せになれたらいいね」

男「そうだな」

少女「私たちも、幸せになれるかしら」

男「なれるさ」

男「現に今おれは、話し相手ができてこの上なく幸せだぜ」

少女「…」

男「違う??」

少女「そう、そうね、その通りだわ」

0059HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 23:06:58.95ID:Xpzh6C/80
男「そろそろ30分だ」

少女「そう…」

少女「明日も、話せるわよね」

男「もちろん」

少女「いなくなったり、しないわよね」

男「そんなこと、あるわけないだろ」

少女「明日も、ラジオつけて、楽しみに待ってるからね」

男「ああ」

少女「じゃあ、また明日ね」

男「んん、ゴホン」

少女「??」

0060HAM ◆HAM/FeZ/c2
2011/09/22(木) 23:12:05.09ID:Xpzh6C/80
男「明日もこの時間に、チャンネルは555.00でよろしく!!」

男「ラストナンバーはもう一回この曲!!」

男「『アレルギー・イズム』で【ザ・オリジナル・リクエスト】!!」

少女「あはは」

男「しっかり覚えろよ!!」

少女「はあい」

~♪~



★おしまい★