2: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/01(水) 16:14:10 ID:???Sd
~沼津駅前ヤバコーヒーにて~

季節は秋。
Aqours1年組と曜がケーキを食べながら談笑していた。

善子「ねぇ聞いた?」

花丸「何がずら」

善子「何でも東京の虹ヶ咲ってところから喧嘩自慢が4人沼津に乗り込んでくるらしいわよ。鞠莉が言ってた」

ルビィ「ウユユ!?怖いなぁ……」

曜「へぇ~随分遠くから来るんだね」

花丸「沼津は強い人が多いからね。世は格闘ブーム。強き者と出会いたいなら沼津が一番ずら」

ルビィ「ルビィは痛いの嫌だよ……」

曜「仲間と一緒に来るってことは対抗戦なのかな?」

善子「それが4人は互いに相談したわけではないようなの。偶然同じタイミングで来ることになったんだって!!」

ルビィ「そんな偶然あるかな?」

3: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/01(水) 16:14:36 ID:???Sd
花丸「シンクロニシティっていうやつずら」

善子「何にせよ女子高生が狙われる可能性がある。私たちも気をつけましょう」

花丸「ずら」

曜「…………」


4人は程なく解散し、それぞれの帰路に着く。
曜は今の話を心の中で反芻していた。

曜「強い子とやれるんだ……」

ニヤァと口角の上がる曜。

曜は沼津では有名な喧嘩自慢であった。
身を削るようなトレーニングの果てに人智を超える力を手にしたのだ。

「すいませーん」

不意に横から声をかけられる。
曜に気配を悟られず。

4: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/01(水) 16:15:13 ID:???Sd
曜「……どうしました?」

「淡島マリンパークってどこにあるか分かりますか?」

曜「6キロくらい南に行くと嫌でも見えてくると思うよ」

「Grazie!!」

曜「……外国人?」

エマ「うん、私はエマ・ヴェルデ!スイスから来たんだ!」

曜「私は渡辺曜。淡島マリンパークに何しに行くの?」

エマ「観光だよ~。たくさんの生き物を見に行くんだ~!」

曜「(殺気はゼロ。思い違いか……)」


曜「そっか。沼津は良いところだから楽しんでね!」

エマ「うん!per favore muori!!」


聞き慣れぬ外国語で満面の笑みを浮かべるエマ。
曜は何かの別れの言葉なのかなと思った瞬間。


曜「ッッッぶっ!!??」


エマが曜の顔面に頭突きを喰らわした。
警戒を解いた瞬間の攻撃に曜は全く反応できなかった。

よろめく曜の腹に続け様に右ストレートを放つエマ。

めりぃッと鈍い音が響き曜は住宅に突っ込んだ。

ドガァァッ!!!!


曜「がッッッ!!!??」


エマ「あははははははは!!!」

6: 名無しで叶える物語◆Uj5yuPaL★ 2025/01/01(水) 16:52:27 ID:???Sd
復活ktkr

7: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/01(水) 17:08:37 ID:???Sd
曜「(コイ、ツ………!!!)」

怒りでアドレナリンが分泌され、戦闘モードに入る曜。
しかし起き上がって目の前を見た時にはもうエマは居なかった。

曜「クソ!!!!」

曜はLINEのグループチャットでAqoursメンバーに周知する。


曜『虹ヶ咲の刺客の1人に襲われた!エマとか名乗っていたよ。赤色の三つ編みの女!』

千歌『大丈夫なの!?』

善子『早速!?勝ったのよね!?』

花丸『オラと善子ちゃんはまだ沼津駅前にいるずら!合流するずら!』

ダイヤ『ついに被害が出てしまいましたか。生徒会長としてなるべく早く私が4人の身柄を確保いたしますわ』

果南『楽しそうだね!私も海から上がったら混ぜてよ!』

鞠莉『果南今どこに居んのよ』

果南『駿河湾沖』


いつものAqoursのメンバーの会話に心が休まる曜。
一旦花丸達と駅前に集まることになった。

8: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/01(水) 17:08:56 ID:???Sd
~沼津駅前~

善子「まさか曜が襲われるとはね」

花丸「怖いずら……」

善子「女子高生を無差別に襲っているのかな」


曜が来るまでの間、沼津駅前の駐車場で待機するよしまる2人。

善子「まぁ花丸は戦えないから私が守ってあげるわよ。東京モンなんかに私が負けるわけないし」

花丸「善子ちゃん……惚れちゃいそうずら」

善子「何言ってんのよ!!///」


「あぁ、麗しき少女愛。演劇の主題にはピッタリですね」

9: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/01(水) 17:09:26 ID:???Sd
花丸「綺麗な人ずら!」

善子「誰よアンタ」


2人に目の前に仰々しく体をくねらせて芝居の様に喋る女子高生が現れた。
善子の質問ににっこりと花の様に微笑い、お辞儀をしながら自己紹介をし始めた。

しずく「申し遅れました、私は桜坂しずくと申します。演劇を何より愛し『行住坐臥』全て演劇のために行動しています」


善子「………」


善子は警戒する。
目の前の可憐な少女、しずくからは感じたことのない不気味なオーラが漂っていたからだ。

善子「ここらでは見ない制服ね」

しずく「えぇ。虹ヶ咲学園という所から来ました」

花丸「虹ヶ咲!?」

しずく「知っているのですか?」

善子「ハァ~…面倒な事に巻き込まれちゃったわね」

しずく「……」

しずくは目を少し細めて善子を見た。
善子が戦闘体制に入ったからだ。

10: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/01(水) 17:09:56 ID:???Sd
善子「花丸、離れてなさい」

花丸「う,うん……」

しずく「あぶなーーーい!!!!!」

善子「!?」

突然しずくが大声をあげて善子のスプレー缶を向けて発射した。

シュウウウウウウ………

善子「なっ!?」

善子は咄嗟に両手を前でクロスさせ防御の体制を取った。
防御が間に合わず目と鼻に謎の霧が入ってくる。
焦る善子。
だがこれはしずくの罠だった。

しずく「ただの水でしたーーー!!!」

善子の防御の隙間から彼女の顎を目掛けてアッパーを行うしずく。
バカァン!!と乾いた音が響いて善子の体が宙に浮く。

善子「がっ!!!」

咄嗟に善子は宙に浮きながらも右足を振りしずくに蹴りを仕掛ける。

しずく「おお!その状態から蹴れるなんてやりますねぇ!!」

善子「がっ………ぶふっ…………」

花丸「善子ちゃん!!」

舌を噛んでしまったのか口からは夥しい血を垂れ流していた。
喋る事もできない様だ。

11: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/02(木) 10:58:12 ID:???00
しかし善子の闘志は衰えていない。
しずくを前に「堕天使ポーズ」を取る。

しずく「何ですかそのポーズ!演劇好きなんですか!?」

善子「あぐはふぶぅ(アンタと一緒にしないで)」


舌を噛み切った善子は口の中に溜まった血を霧の様にしずくに吹きかけた。

しずく「甘いですよ!」

しずくは「こういう」勝負に慣れているのか霧を吹きかけられても高速で横に回転し、飛沫を吹き飛ばした。
その瞬間、善子は堕天使のポーズで上空8mほど飛び上がった。

回転し終わったしずくは善子を見失う。

しずく「(いない!?)」

善子「うぶぁお!!!(上よ!!!)」

しずく「っ!!!!」

空から善子の蹴りが降ってきたため、防御することもできずしずくの顔面にライダーキックが炸裂した。

しずく「うわぁ!!!!」

叫びながら幾つもの自転車を薙ぎ倒し倒れるしずく。

善子「(堕天使キックは8mから地上に勢いをつけて降りる技だから足への負担が大きすぎる。もう使えないわね)」

現に生まれたての子鹿の様に膝を振るわせる善子であった。

12: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/02(木) 10:58:51 ID:???00
善子「が、がぶぅ………」

花丸「よ、善子ちゃん!!」

口からは今だに血が止まらない善子。
花丸が救急車を呼ぼうとした瞬間、駐輪場から笑い声が聞こえてきた。

しずく「あはははははははははは!!!!!やっぱり沼津に来て良かったですよ!人間があんな高く飛び上がるなんて東京では見なかった!!」

しずく「けどねぇ………もう『覚え』ましたよ!!次は私の番です!!」


花丸「嘘………」

善子の蹴りを受けても立ち上がるしずくを見て絶望を隠せない花丸。
ダメージはあるのだろう。
しずくの鼻は遠目で見ても分かるように曲がっており、皮膚が一部抉れて出血していた。
だが善子の方が深手だ。


善子「ざがるなざう(下がりなさい)」

花丸「よ、善子ちゃん…………」

しずくを睨みながら花丸を手で制す善子。

13: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/02(木) 10:59:46 ID:???00
「そこからは私がやるよ」

花丸「あ!」

しずく「………」

曜「いいでしょう。虹ヶ咲からの刺客さん?」

しずく「渡辺曜さん………」

曜「…………え!?」


しずく「う、う、………ごめんなさい、ごめんなさい。ここまでやるつもりじゃ無かったんです…………」ポロポロ


突然しずくが両目から大粒の涙を流して謝りはじめた。
予想だにしない反応に曜もよしまる2人も唖然としていた。


しずく「う、う、う、………うおええええええええ!!!!!!」

花丸「ひ!!」

15: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/02(木) 11:00:15 ID:???00
嗚咽から嘔吐。
しずくは口からゴルフボールほどの大きさの、金属製の球体を吐き出した。
それを両者間の真ん中に投げた。

曜「2人とも伏せて!!!!」

善子「(嘘でしょう!?)」

花丸「ずらら!!」

曜が2人に覆い被さり守ろうとした。
しかし金属の球は転がるだけで3人が危惧した事態にはならない。


曜「………?」


恐る恐る振り返る曜。
目の前にはコンクリートブロックを曜に振りかぶるしずくの姿があった。


曜「なっ!!!」

しずく「これが戦争ですよ!!!!」


バゴン!!と本気のスイングで曜にコンクリートをぶつけたしずく。
脳が揺れて倒れる曜に追撃することなく、しずくは全力疾走で商店街の方に逃げていった。

しずく「また会いましょう~!!!!!」

18: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 09:39:21 ID:???00
曜「………当て逃げされちゃったなぁ」

花丸「2人とも病院に行くずら!!救急車を呼んだから!」

曜「私はいい。善子ちゃんは舌縫ってもらいなよ」

善子「(曜………)」

曜「またね」

花丸「あっ!」

花丸の制止虚しく曜はゆっくりと歩いて帰った。

曜は落ち込んでいたのだ。
もしあの場で殴ってきたのがコンクリートではなくナイフだったら?
刺されて曜は負けていたかもしれない。

曜「ふふっ……!」

曜は笑う。

曜「エマちゃんとしずくちゃんだけじゃない。他の2人も喰わないともう許せないよ……!」

19: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 09:40:14 ID:???00
~次の日浦の星体育館~

全校生徒を前に鞠莉が虹ヶ咲の襲撃について周知していた。

鞠莉「知っての通り虹ヶ咲のメンバー4人が沼津市に上陸したわ。すでに曜と善子は交戦、善子にいたっては舌を縫うほどの怪我をした。上陸メンバーを今からモニターに映すわ」

ざわ…ざわ……


鞠莉「まずエマ•ヴェルデ。スイスの元軍人で敗北を知るために沼津へ来たそうよ」

鞠莉「次に桜坂しずく。演劇部で他人の技をすぐに真似する癖があるみたい。強敵が苦痛に顔を歪ませる姿が好きらしいわ」

鞠莉「3番目は鐘嵐珠、中国拳法の達人よ。フィジカルが凄まじくヘビー級の格闘家が何人もお釈迦にされてるわ」

鞠莉「最後は宮下愛……戦闘狂よ。かなりサイコが入ってる女で何しでかすか分からない怖さがあるわ」

善子「ちょっと待って」

鞠莉「何?」

善子は昨日ちぎられた舌を病院で縫ってもらいなんとか会話ができるようになった。

善子「詳しすぎない?エマやしずくはともかくその他の2名の情報はどこから…」

鞠莉「昨日4人揃って私の家に来たからよ」


花丸「ずら!?」

ルビィ「鞠莉ちゃん無事だったの!?」

20: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 09:40:57 ID:???00
鞠莉「私は一応沼津で権力のある1人だからね。浦の星の理事も務めているし彼女らなりの敬意かな?『沼津で遊ぶ』って言ってどっか行ったわ」

ダイヤ「舐められたものですわね」

鞠莉「登下校は十分注意して。できるだけ1人にならないように。では解散」

不安そうな顔をしながら生徒たちが帰っていく。
最後に体育館に残ったのはAqoursのメンバーだった。

鞠莉「はぁ~面倒な事になったわね」

善子「浦の星の喧嘩自慢で対抗するしかないわよ」

ダイヤ「私、善子さん、曜さん、ルビィ、梨子さんですか」

ルビィ「ピギィ!?私も!?」

ダイヤ「沼津を守るためです。たまには血を流しなさい」

ルビィ「うゆゆーーー!!!」

花丸「あはは…」

21: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 09:41:30 ID:???00
曜「私忙しいから帰るね」

千歌「曜ちゃん!?1人で帰ったら危ないよ!」

曜「私なら大丈夫。……もう不覚を取らない」

千歌「曜ちゃん……?」

善子「ったく…」

花丸「昨日エマっていう人としずくっていう人と戦ってから元気ないずら」

善子「まぁ当て逃げされたもんだしね。あれが奴らの戦い方。しずくとかいうやつ、『これが戦争ですよ』とか言ってたじゃん。虹が咲のメンバーは『何をやっても勝つ』を徹底してるのかも」

千歌「やっかいな人達だね…」

22: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 09:41:55 ID:???00
梨子「じゃあ千歌ちゃんは私と帰ろっか」

千歌「うん、1人じゃ危ないもんね!」

梨子「うひひ……」

花丸「邪な気配を感じるずら。祓うずら?」

梨子「大丈夫よ!……全く。というか果南ちゃんは?」

鞠莉「あのバカ…まだ駿河湾でワカメ採取しているらしいわ。位置情報を送ってきたんだけど駿河湾の中心にピンが立っていたわ」

ルビィ「何日も海上で人が生きれるの?」

花丸「オラの持つ知識ではありえない事ずら」

ダイヤ「それではまぁ……」

鞠莉「お開きね」

23: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 09:42:32 ID:???00
とはいえバス停までは7人一緒だ。
停留所までの道中で鞠莉がスマホを見て驚きの声を上げた。

鞠莉「はぁ!?沼津駅前のコンビニで殺人事件があったそうよ!」

ダイヤ「何ですって!?」

善子「刺客に殺人事件って…どんどん沼津の治安が悪くなっていくわね」

花丸「犯人は捕まったずらか?」

鞠莉「逃走したらしいわね。防犯カメラの情報では金髪の若い少女が店員を襲ったらしいわね」

千歌「それって…」

ルビィ「刺客の1人の宮下愛さん!?」

鞠莉「コイツは他の3人とは別物よ。早く捕まえないと一般市民がどんどん犠牲になるかも」

ダイヤ「黒澤家の人脈を使い居場所の特定を急がせましょう」

24: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 09:43:58 ID:???00
~その頃の沼津駅~

愛「純愛だね~」

DQN「」

女「ひ、ひ…………」ガタガタ

心臓に大きな穴を開けて絶命するDQNの横で女が震えていた。
女の目の前には金髪の美少女が手についた血を舐めながらニヤついている。

愛「彼氏なら彼女くらい守れないとダメだよね~!まさかワンパンでお釈迦になるとは思わなかったけど!」

女「い、命だけは助けて…」

愛「あ゛?」

女「ひぃっ!!」

愛はヘラヘラした態度から一転して目を見開き女を睨む。

愛「ここは『よくも私の彼氏を!』って激昂する所でしょう。自分の命しか考えていないとか……はぁ~…終わってるね~」

愛「決めた。命『だけは』助けてあげない♩」

女「いや……」

愛「背骨をへし折るぞ~~!」

愛はガッツポーズをとりながら女に近づく。
怯えすぎて立ち上がることもできない女に、愛の殺意がこもった手が近づく。


ガシッ!!

愛「!!??」

曜「やめなよ」

愛「………誰?」

ミシミシミシ………

愛の腕を折るつもりで握力を込める曜。
しかしその骨は普通の人間のものとは訳が違うのかビクともしない。

25: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:43:10 ID:???Sd
曜「浦の星女学院2年渡辺曜」

愛「はっ!!」

愛は嬉しそうな表情をした後、左手で曜の頬を打ち抜くためフックを行う。

曜「ふっ!!」

しゃがんでフックを回避する曜。
同時に愛の鳩尾に前蹴りを放った。

愛「がは!!!」

苦悶の表情を浮かべながら1mほど後退する愛。

愛「良いなぁアンタ………」

鳩尾を抑えながら笑みを浮かべる愛。

曜「何が」

曜はファイティングポーズをとりながらステップする。
愛は何も構えていない。

愛「浦の星の噂は虹ヶ咲にも入ってきてたんだ。3度の飯より格闘好きな連中が揃っているってね!」バッ

猿のような身のこなしでハイキックを繰り出す愛。
曜は両腕でガードする。

曜「(重ッッッ!!!!)」

可憐な容姿から想像もできぬ蹴りの威力に驚きながらも何とかガードに成功した。
お返しとばかりに今度は曜がハイキックを叩き込む。

26: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:43:45 ID:???Sd
愛「あーい!!」

愛はそれを左手一本でガードし空いてる右手で脚を掴む。

曜「うわっ!!」

愛「メリーゴーラン!!!」

曜の脚を持ったまま愛は回転し、そのまま砲丸投げのように彼女を投げ飛ばした。
浮遊する曜。
そのままビルの壁に叩きつけられる。

曜「がは!!!」

衝撃で血を吐きながら壁にめり込む曜。

曜「あ……が…………」

地上を見ると愛が笑顔でこちらに向かってきていた。
壁を蹴って着地しようとするもそれより早く愛の拳が腹に食い込んだ。

メゴォ!!と鈍い音が響き再び血を吐く曜。
追撃は終わらない。

愛「あいあいあいあいあいあいあいあいあいあいあい!!!!!!」

まさにラッシュだ。
壁に埋まる曜に何発も高速でパンチを放つ愛。

壁は愛の力に耐えられず崩壊し、曜が室内へ吹っ飛ばされた。

曜「げばああああああああ!!!!!!」


「うわ!!」

「な,何だこいつ!?」


室内は会社だったようで従業員が飛び込んできた曜を見て驚愕していた。

27: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:47:18 ID:???Sd
曜「あぐ……がは………」


ヨロヨロになりながらも何とか立ち上がる曜。
拍手をしながら愛が満面の笑みで入室してきた。

愛「すごいね君。本気で殴ったのにまだ立ち上がれるんだ!!」


曜「はぁ……はぁ……(コイツ…)」


曜はいくつも内臓が損傷し、肋が折れていた。
だが闘志は衰えていない。


「君たちは誰だ!壁を破壊して入ってるなど言語道断、万死に値するぞ!」


愛「んー??」

年老いたサラリーマンが壁を破壊して入ってきた2人を交互に見ながら声を上げる。

腕に自信があるのか見たこともない構えをしながら愛に襲いかかった。

「ひゃはぁっ!!!」

28: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:48:46 ID:???Sd
愛「わ、何々!?」

愛は驚きつつも冷静に手刀でサラリーマンの首を落とし秒殺する。

「きゃあああああ!!!」

会社内に悲鳴がこだます。
曜は悲鳴に愉悦を感じる愛の隙をついて飛び膝蹴りをかました。

ブゴォ!!!

愛「ぶぅあ!!やるじゃん!」

曜「ハイィィィィィィィ!!!!!」

愛「がっ!!!!」


膝蹴りを愛の鼻にめり込ませた後、すかさずワンツーを顔面に叩き込んだ。
もろに喰らった愛はよろけるが倒れない。
鼻は醜く曲がっていた。

曜「まだまだぁ!!!!」

愛「あいあいさーー!!!」


愛はバク転で今し方開けた壁の穴から脱出する。


曜「待てい!!!!」

愛「強いね君!けど私は他に戦い子がいるんだーー!今日はここまでにしよっか」

曜「逃がすかぁ!!!!」

激昂する曜。
会社に置いてあった金庫を逃げる愛に投げるも華麗に避けられる。
愛はあっという間にその場から居なくなってしまった。


曜「クソォォォォォォォォ!!!!!!」


バキバキバキバキ!

「ひぃ!!」

刺客に3度目の逃亡を許してしまった曜。
あまりの不甲斐なさに何度も地面を踏みつけ怒りを表現した。

周りにいた会社員たちは恐怖のあまり警察に電話することも忘れてしまっていた。

29: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:49:27 ID:???Sd
~善子の家~

善子「はぁ!?曜また刺客と戦ったの!?」

善子は自分の家のソファでスマホを見ながら仰天した。
AqoursグループLINEで曜が宮下愛と戦闘したと報告してきたからだ。

善子「運がいいやら悪いやら」

Aqoursは一応アイドルグループである。
しかし沼津という立地上肉体的な「強さ」が求められることは必然だ。

善子や曜、果南などはアイドルよりも格闘家として有名になってしまっていた。


善子母「善子ー、いるの?」

善子「あ、お母さん。何?」

善子母「今日のお夕飯何がいいかなって」

善子「鳥のささみとかでいいわよ」

善子母「そう…ねぇ善子」

善子「うわ!な、なによ……」

善子母が善子の座っているソファの真横に座り、まるで恋人のようにベタついてきた。
実の母が今までしたことがない行動に善子の情緒がバグる。

30: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:50:07 ID:???Sd
善子母「たくましい腕ね…鍛えてるんだ?」

善子「知ってるでしょうそんな事…近いって!なんなのマジで!」

善子母「首はどうかしら?」

ぎゅるん!!

善子母が一瞬のうちに善子の背後に周りチョークスリーパーを決めた。

善子「がっ!?」

善子母「こんなのも剥がせないとか……我が娘ながら悲しいわ」

善子「(な、なにが……!?)」

母の思わぬ行動にパニックになりながら目に前の鏡を見るとそこに母の姿はなく、桜坂しずくの姿があった。

しずく「こんにちは~♩」

善子「がっ!ア゛んだ………!!??」


しずく「私の特技は変装ですよ。演劇が好きとあんなに言っていたのに…簡単に騙されてくれて少し残念です」

善子「あ!!……がっ………!!!」

しずく「おやすみなさい」

ギュウウウウウウ……………

善子「ぁ………」

善子「」

善子は酸素を取り込めず意識を失った。
倒れた善子を真上から無表情に見つめるしずく。

しずく「勝利とは生殺与奪の権利がある方にあります。つまり勝者は私です。さようなら」

意識の失った善子を放置して津島宅を去ったしずくであった。

31: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:50:43 ID:???Sd
しずく「あっけなかったな……」

しずくは善子に不完全燃焼感を抱いていた。
彼女もファイターだ。
正々堂々ではなく「何でも使い」勝利することを心情にしている。

勝つためならば命乞いも色仕掛けもお手のものであった。
戦闘中、野生の嗅覚などで善子がしずくの正体を破ることに期待していたのだ。

エレベーターを降りて夕食を取りにイーラへ行こうかな。
そう思っていたがマンションを出た先で思わぬ人物と遭遇した。


ルビィ「うゆっ!!」

しずく「…………?」


しずくはルビィを知らない。
こちらを見て驚くルビィに怪訝な顔をしつつも脇を通り過ぎようとしたが……。

ルビィ「ひぃ!桜坂しずくさんだぁ!」

しずく「……私を知っているのですか?」

32: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:51:16 ID:???Sd
ルビィ「うゆ!?な、なんでもありましぇん………」

しずくはあからさまに目を背けて自分の脇を通り過ぎようとしたルビィをみて少し嗜虐心が湧いた。

しずく「可愛い子ですね~。私と遊びに行きませんか?」

ルビィ「し、知らない人に着いて行ったらダメってルビィ言われているし……」

しずく「美味しいもの奢ってあげますよ」

ルビィ「あ、あの!」

しずく「はい?」

ルビィ「何で善子ちゃんの家から出てきたんですか?」

しずく「あぁ……善子さんを痛ぶりに来たんですよ」

ルビィ「ピギィ!?」
しずく「まぁあっけなかったですけどね。じゃあ私と……」

ルビィ「…………」

しずく「っ!!」

ルビィの雰囲気が弱々しいものから一点、重圧を感じさせるものに変わりしずくが身構える。

33: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:51:48 ID:???Sd
ルビィ「善子ちゃんはウユの友達やど」

しずく「それはお気の毒です。それで……どうするんですか??」

ルビィ「あの世へ行くビィ」

しずく「はい?」

か弱い少女から発せられた言葉とは思えず脳が理解を拒んだ。
瞬間、まるで大型トラックに撥ねられたかのような衝撃がしずくの腹に突き刺さる。

爆弾が投下されたかのような音があたりに響く。
しずくが吹っ飛ばされ、マンションのエレベーターの分厚いドアをひしゃげさせ彼女は一瞬気を失う。

しずく「ごぼぉぉ!!!!」

意識が回復する。
しかしルビィの高速腹パンに胃が破れ、吐血していた。

34: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:52:13 ID:???Sd
しずく「(バカな……パワーならエマさんより上だ。こんな子が……)」

ルビィ「一緒に謝りに行こっか」

しずく「が………いやどいっだら……?」

ルビィ「殺す」

狭いエレベーター内に突風が起こる。
ルビィがパンチの構えをとったからだ。

しずく「ぷっ!!!」

しずくは口内に仕込んでいた針をルビィの目に飛ばす。
ルビィは構えを解き、針をしゃがんで躱した。

その隙にロビーへジャンプして飛び出し、外へ逃げるしずく。

しずく「(距離を置かないと!!)」

ボゴォ!!!!

しずく「がはっ!!」

35: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:52:46 ID:???Sd
後ろからエレベーターのドアが飛んできてしずくの背中にめり込んだ。
投げたのはもちろんルビィだ。


しずく「化け物め………」


背骨にヒビが入り立ち上がるのにも苦労するしずく。
数メートル先からルビィが無表情でこちらに走ってきていた。

しずく「動くなぁ!!!」

「きゃあ!!」

しずくはひとまず人質を取ることにした。
道を歩くOLを捕まえて喉元にナイフを当てたのだ。

ルビィは困惑した様子でこちらを見ていた。

しずく「(よし……少し休憩させてもらいましょう)」

ルビィ「ルビィその人知らないよ?」

しずく「え………」

ルビィ「…………」テクテク

無表情で近づいてくるルビィに人質は通じないと思ったのかOLをルビィの方へ突き飛ばすとまた距離を空けようとする。

36: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:53:21 ID:???Sd
ルビィ「踏ん張るビィ!!」


「きゃあああああ!!」

しずく「嘘でしょう!??

ルビィはOLを片手で掴むとしずくに投げ飛ばした。
間一髪で避けるしずく。


ルビィ「懺悔するビィ!!!」

ルビィの爪先がしずくの脛にめり込む。

しずく「ぐあああああ!!!?」


ルビィ「さぁ謝りに行こう!」

しずく「(強い……強すぎる。こんな……私が負けるのですか!?)」

倒れたしずくの襟を掴むと善子の家まで引きずっていくルビィ。

しずく「いや、私は2度も敗北しない。将来は大女優なのだから!!!」

ルビィ「るんるん♩」

ルビィは鼻歌を歌いながらしずくを引きずっていた。

しずくのことなど見てすらいない。
戦闘経験の浅いルビィならではのミスだ。
それが命取りになるとも知らずに。

37: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:53:48 ID:???Sd
しずく「確か…あの世へ行くビィ…でしたっけ?」

ルビィ「うゆ?」

自分の技名を声に出すしずくに不思議に思ったのか、チラッと振り向くルビィ。

そこには先ほどとは違う覇王のオーラを纏ったしずくがいた。

まるで自分と同じような……


しずく「あの世へ行くビィ!!!!」


ルビィ「ピギッ!?」

先ほどルビィが放った技を今度はしずくが放つ。

しずくを倒した気でいたルビィは反応ができずにパンチを腹に受けてしまった。


ルビィ「ピギィエエエエエエ!!!!!」

ルビィは自らの技を喰らい10mほど殴り飛ばされた。
受け身すら取れずに木を真っ二つにへし折り道路に投げ出された。

38: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:54:52 ID:???Sd
車は突然道路に現れたルビィを避けきれずぶつかってしまう。

ルビィ「ピギェッ!!!」

今度はトラックに轢かれてしまった。
再び歩道に吹っ飛ばされるルビィ。

ルビィ「あ、あ……」ガクガク

しずく「大丈夫ですか?ずいぶん苦しそうですが」

ルビィは曜やダイヤと違い普段鍛えていない。
黒澤家の血のみでここまで戦い抜いていた。
それ故痛みに弱い。

何とか立ち上がるルビィだが全身の骨が折れ、しずくと同様胃に穴が空いていた。
ぶらりと力なく彼女の右腕が垂れ下がっている。

しずく「なるほど、ルビィちゃんはその身に余る力を振るえるのですね」

ルビィ「……」

しずく「つまり…あなたの肉体はあなたの余りある力に耐えきれない!!殴る、蹴るたびにルビィちゃん自身にダメージを与えるまさに諸刃の剣!!」

39: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:55:31 ID:???Sd
しずく「今度は私の番ですよ……」

ルビィ「それは…!?」

しずくはルビィの大親友、津島善子の堕天使のポーズを取り始めた。

ルビィの頬に嫌な汗が流れ落ちる。

ルビィ「……善子ちゃんのファンかな?そのポーズはダサいからやめた方がいいよ」

しずく「分かっているんでしょう?私が『何をできるか』……その言葉はやめてくれという懇願にしか聞こえませんねぇ!!」

ルビィ「っ!!」

しずく「たぁっ!!!!」

しずくは上空に飛び上がる。
先ほどルビィに膝を殴られた影響で6mしかジャンプできなかったがそれでも十分だ。

そのままルビィにめがけて一気に降下する。


しずく「堕天使キック!!!!!」


ルビィ「善子ちゃんの技っ!!??」

「受け」を知らぬルビィは再び蹴りを鳩尾に喰らった。


ルビィ「ピギェェェェェェェェ!!!ピ、ピギョアアアアア!!!!」ビチャビチャ

40: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:55:59 ID:???Sd
しずく「はぁ…はぁ……!」

ルビィは苦しみでバケツ一杯分のゲロを道路に撒き散らしている。

形勢逆転と言いたいところだがしずくも余裕がない。
堕天使キックは足に過度な負担がかかる。

もはや立っているのもやっとなのだ。

ルビィ「痛いよーー!!おねぇちゃぁ!!!助けて!!」

しずく「ふふ……いい顔じゃないですか。私の勝ち…と言いたいところですが止めを刺しておきましょう」

しずくが泣きながら転がるルビィにゆっくりと歩を進める。

ルビィ「ピギョアアアアア!!!」

しずく「善子さんに続きルビィさんもしーとめた♩」

ルビィ「ッッッ!!!」

しずくの手刀をルビィは涙目になりながら左手で受け止めた。

しずく「(この子まだっ……!!)」

ルビィ「(そうだ……私は善子ちゃんがやられたのが許せなくて。それで怒ってたんだ)」

ルビィ「(このまま負けたら善子ちゃんに、申し訳ないよ)」
グググ……

41: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:56:25 ID:???Sd
ルビィが泣き止み立ち上がった。
そして真っ直ぐにしずくを見据える。

ルビィ「浦の星一年黒澤ルビィです」

しずく「……虹ヶ咲学園一年桜坂しずくです。ずいぶんと勇ましい顔になりましたね」

ルビィ「何のために戦っているか思い知らされたからね。善子ちゃんのため、沼津の皆んなのために!」

しずく「(沼津の皆んなって…さっき人質のOLを投げ飛ばしてたような……)」

ルビィ「決着つけよっか」

しずく「えぇ……!」

2人が手を伸ばせば届く距離で構える。

ルビィ「ピギィオラァ!!!」ブゥン

しずく「はぁ!!!!」ブゥン

「正面から殴りあう」

しずくが普段はやらない方法だ。
しかしルビィのような化け物に小細工は通じないと感じたのだ。

42: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:57:02 ID:???Sd
しずくは他の人間の技を真似ることができる。
相応の負荷がかかるがルビィ相手には「ルビィ」を真似て拳を振るう。

ルビィ「ゲパ!!!!!」クラッ

しずく「くっ……」

お互いの顔面に拳が叩き込まれる。
もはや根性比べ。
ガード無しの殴り合いだ。

ルビィも最初ほどの力は出ていない。

ルビィ「ピギャラッ!!!」

しずく「あの世へ行くビィ!!!!」


「おいおい……」

「なんちゅー戦いだ」

ダイヤ「………」

野次馬とともに戦いをルビィの姉ダイヤが見ていた。
元々沼津駅に用事があり姉妹で来ていたのだが善子に挨拶しときたいとルビィが単独行動を取っていたのだ。

戻りが遅いと思いダイヤも善子の家に行ったところ、マンション付近の電柱やら地面やらが台風が通ったようにめちゃくちゃ。

何事かと思い顔を上げるとルビィが戦っていたのだ。

43: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:57:38 ID:???Sd
しずくはルビィの技をコピーしすぎた影響で手首がグニャグニャに曲がっていた。
拳もすでに全ての骨が複雑骨折していた。

それでも振るう。

「2度も」負けないために。

しずく「ああああああああ!!!!!!」

ルビィ「ピギェェェェェェェェ!!!!!」

そんなしずくにもとうとう限界が来た。
しずくが仕掛けたタックルをルビィが「手刀」でカウンターを合わせたからだ。
それも心臓に。
手刀は空手の技で素人が使えるものではないが、黒澤家の血が自然とその技を選択させた。

しずく「(なんだ……!?体が沈んでいく!!)」

しずく「(動け動け動け!!拳を振るうのよ!ルビィさんを倒して、沼津に勝ち、『あの人』に挑むんでしょう!?」

ルビィ「頑張るびぃ!!!!」
しずく「あぁ……」

勇ましい声とともに最後の拳がしずくに飛んでくる。
それを避けることもガードもせず、顔面で受けた。

ドサッ……

しずくは10m程後方に吹っ飛ばされ意識を失った。

44: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:58:13 ID:???Sd
しずく「う……」

狩野川の階段でしずくは目を覚ました。
目を開けるとダイヤ、ルビィが談笑していた。

ルビィ「起きたよ!」

ダイヤ「しずくさん。初めまして、私は黒澤ダイヤです。ルビィの姉ですわ」

しずく「………拷問でもする気ですか?」

ダイヤ「まさか。確かに他の3名の情報も頂きたいところではありますがそれでは公平性に欠けますからね。純粋な治療ですわ」

しずく「あ…」

しずくは自分が治療を開けていることに気づく。

しずく「なぜこんな事を?」

ルビィ「しずくちゃんのお陰でルビィは本当の意味での『覚悟』を知れたからね。そのお礼だよ!!」

しずく「ふっ……沼津というところは鬼しか住んでいないと思って来たのですが…とんだ拍子抜けですね」

ダイヤ「とはいえ身柄は拘束させていただきます。残りの3人もとらえた後に虹ヶ咲へ送還させていただきます。よろしいですね?」

しずく「……ランジュさんには気をつけなさい」

ダイヤ「刺客の1人のメンバーですわね」

しずく「香港では敵なしと言われた方です。フィジカルモンスター。私が東京で敗北した相手です。小細工が全く通用しなかった」

ダイヤ「ご心配なく…柔をもって剛を制す、それが私の流儀です。すぐ捕まえますので2人仲良く私の家でトランプでもしていなさい」

しずく「ふふ、楽しみにしています」

45: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:58:43 ID:???Sd
その様子を遠くで眺める女が1人。

愛「あららしずく負けちゃったか。だらしが無いなぁ…」

気に入らないという様子で石を川に蹴り飛ばす愛。

「あなた、肌が綺麗ね」

愛「うん?」

不意に後ろからかけられる声。
振り向くと目の前には誰もいなかった。

気のせいかと思い2人しずくの方に向き直った時、目の前に見知らぬ女がいた。

なんと愛の首筋の匂いを嗅いでいる。

愛「うわっ!!誰!?」

梨子「私は桜内梨子。アイドル活動しながら同人も描いているの。良かったら見る?」

有無を言わさず愛に同人誌を渡す梨子。

愛は怪訝な顔をしつつもページを捲る。

46: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 11:59:08 ID:???Sd
愛「………」

愛「うわ……」


それは少女が後輩の女子に力で屈服し、何度も犯されている姿だった。

愛は非道な行いを幾度となくして来たが性を貪る真似はした事がない。

愛は同人誌を梨子に返した。

愛「愛さんの趣味ではないなー。ちょっと気持ち悪い」

梨子「それは預言書よ?」

愛「うん?」

梨子「今から辿るあなたの運命よ?」

愛「………」


愛「冗談じゃ済まないよ?」

47: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:00:24 ID:???Sd
梨子「誰が冗談ですってぇ!?」


愛「ッ!!!」ビクッ

突然鬼の形相で怒鳴りつける梨子に一瞬怯んでしまった愛。

梨子「百合同人は高尚なる文学なのよ!?分かったわ、百合の歴史を戦後の文学かr」

梨子がご高説を最後まで垂れることはなかった。
愛が回し蹴りを梨子の顔面に叩き込んだからだ。

川沿いにあるフェンスを突き抜けガレージまで吹っ飛ばされる梨子。

愛「死んでてね」

倒れる梨子に吐き捨てる愛。
そのまま立ち去ろうと思ったところで…

梨子「甘美」

愛「へぇ……」

梨子がイナバウアーの状態でゆっくりと起き上がって来たのだ。

48: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:01:00 ID:???Sd
梨子「いい蹴りよ。本当に……心の   が  そうになったわ」

愛「いちいちキモいね…」

梨子「ねぇあなた…何でそんな肌綺麗なの?色白で」

愛「キモいって言ってんの!そんなの戦いに関係ないでしょうが!!!!」

激昂しながら愛が梨子に走り出す。
トドメを刺す気だ。

お手本のような正拳突きを梨子の顔面に放つ。

グシャ

確かな手応え。
しかし殴ったのは梨子の描いた同人誌だった。

梨子「秘技、同人身代わりの術」
愛「嘘っ!?」

梨子はその隙に愛の後ろに回り込む。
そしてそのまま彼女の「スカート」を捲りあげ、裏太ももをベロベロ舐め始めた。

梨子「じゅるべろぉ…ベロベロ」

愛「きゃぁぁぁ!?」

49: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:01:32 ID:???Sd
嫌悪から慌てて前転で梨子から離れる愛。
しかし梨子は赤ちゃんのハイハイのように這いずり逃すまいと白い太ももにしがみついた。

そして次に前太ももに舌を添わせ始めた。

梨子「た、たまらないわね」

愛「くそっ!!そんなに太ももが好きならもっと味合わせてあげるよ!」

梨子「ん?」

愛は股の間まで無防備に舐める愛の髪の毛を掴み自らの腹まで引っ張る。

そのまま太ももを梨子の首に絡み付けた。

50: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:02:04 ID:???Sd
梨子「ごおっ!?」

愛「三角絞めだよ。苦しい?」

梨子「が…が……」

梨子は白目をむいて痙攣し始めた。
愛の白い太ももが梨子の呼吸を遮る。

梨子「ギ、ギモ゛ヂイイ……」プルプル

愛「ちっ!!!」

この期に及んでご褒美だと思っている梨子に舌打ちを隠せずそのまま力を入れ続ける。

バキッ!!!

梨子「」プランプラン

梨子の首は愛の脚力によってへし折られてしまった。
愛が脚を離した後も首が座ってない浮かん坊のようにフニャフニャになっていた。

愛「梨子ちゃんが悪いんだからね!」

言い残して愛は去ってしまった。


梨子「」

梨子「」

梨子「……」ピク

51: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:03:55 ID:???Sd
深夜12時

愛は深夜になれば強い奴が出るかと沼津駅前に来ていたが強そうな奴が1人も見当たらず肩を落としていた。

いたとしても群れることでしか力を誇示できなさそうな若い少年だけだ。

愛「ホテルに戻るか~」

愛は数日間リバーサイドホテルに連泊していた。

自室に戻り服を脱ぐ。
今日1日で様々な相手と戦ったため汗を流したかったのだ。

愛「よいしょ」

全裸でシャワー室のドアを開ける。

梨子「ベロベロばぁーー!!!」

愛「きゃぁあああああああああ!!!!!!」

52: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:04:34 ID:???Sd
シャワー室のドアを開けると何故かそこに殺したはずの梨子が全裸で佇んでいた。

オイルを塗っているのか体中がテカテカ光っている。

愛はといえば驚きのあまり腰が抜けてしまった。

梨子「オイルレスリング開始」

梨子はニヤニヤしながら愛に抱きつく。
梨子の体に塗られたオイルが愛にもへばりつく。

ここでようやく愛は反撃に出た。

愛「おらぁ!!!」

梨子「うひゃぁ!!」

梨子の体に抱きつき、思い切り窓に投げた。
しかしそれを愛の力で行うとどうなるか。
パリィン!!!

梨子がホテルの五階から下に落ちる。

愛「もう上がってくんな!!」

53: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:05:12 ID:???Sd
ガシッ

愛が叫んだ瞬間、窓の手すりに白い両手が現れる。
1秒後再び梨子が室内に着地した。

梨子「呼んだ?」

愛「く、そ…!何で!?あの時首を折ったはずでしょう!?」

梨子「あぁ…そういえばそうだったわね」

梨子はわざとらしく言うと折られたはずの首をさわさわと撫でる。 

梨子「昔からそうなんだけど打撲とか致命傷級の傷でも何かすぐに治っちゃうのよ」

愛「……嘘でしょ」

梨子「本当だって!現にさっき折ってくれた骨も元通りになってるし。多分回復力なら果南ちゃんより私の方が上よ?」

愛「っ!!」

果南の名前を出した瞬間愛の目が見開かれる。

愛「果南って松浦果南の事?」

梨子「知ってるの?」

愛「笑止!松浦果南といえば『オーガ』の異名を持つ地球史上最強生物!私は沼津に彼女を倒すために来たんだ!!」

梨子「やめときなさい」

愛「……なんでさ」


先ほどまでとは違う真剣な顔で話す梨子に、思わずまともな疑問で返してしまう愛。

54: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:06:46 ID:???Sd
梨子は続ける。

梨子「あなた、雷は知ってるわね?」

愛「は?」

梨子「地震、台風、…後静岡なら火山の噴火とかは?」

愛「知ってるよ!バカにしてんの?」

梨子「果南ちゃんはそれらと同列の化け物よ。人智など及ぶはずもない。私ですら彼女の前には立てない。悪いことは言わないからやめておきなさい」

真剣な眼差しで愛を制止する梨子。
愛は自分が心配されていることを梨子の目から痛いほど感じた。

愛「だからさ……」

梨子「……」

愛「だから良いんじゃん!!タイマンで殺されるならファイターの本望だよォォォ!!!!」

愛は飛び膝蹴りで梨子を再び部屋から突き落とした。

愛「あなたはここで倒す!!オーガの前菜にしてあげる!!!」

今度は愛も自ら五階から飛び降りた。

梨子「仕方ないわねぇ……」

 
全裸の女2人。
沼津の夜の街でタイマンが始まった。

55: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:07:15 ID:???Sd
愛「ジョバァ!!!」

愛の後ろ回し蹴りが梨子の頬にめり込む。
歯が三本吹き飛び梨子の体も沼津駅方面へ蹴り飛ばされた。

梨子「あいたたた……」

愛「起きなよ」

梨子の髪を引っ張り上げ無理やり立ち上がらせる愛。

今度は顔面に渾身の力でパンチを放った。
コンクリートすら砕く一撃が梨子の顔に襲いかかった。

バカァん!!!!

その音を聞き工事現場の重機でも使っているのかと周りの人間は思っただろう。

だが正真正銘人間の腕力から生み出された音である。

梨子「ギャバァッ!!!!」

遮るものがないパンチは梨子の体をソフトボールのように浮遊させた。

その距離約200メートル。

56: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:07:40 ID:???Sd
夜中12時台は沼津駅とはいえ人はまばらだ。
他人の目を気にせず思い切り戦えた。

ドシャっ!!と梨子の体がコンクリートに叩きつけられる。

今の顔面パンチはかなり効いたのか鼻から滝のように血を流して涙目になっていた。

しかし立ち上がる。

ペタペタペタ…

全裸の愛が裸足で梨子に近づいて来た。

愛「思ったより強くないね。回復だけが取り柄なの?」

梨子「はぁ……綺麗なものはあまり傷つけたくないんだけど」

愛「……」

梨子「沼津をめちゃくちゃにする気ならしょうがないわね」

愛「(来るッッッ!!!!)」

ズバァン!!!!!!!

愛「はっ!!??」

正面から三つの弾丸のようなものが愛の肩にめり込んだ。

梨子「先ほど折られた歯よ」

57: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:08:16 ID:???Sd
梨子は口の中で折れた歯を勢いよく吐き出して愛に飛ばしたのだ。
普段なら避けるなり防ぐなりできてかもしれないが周りは暗く分からなかったのだ。

肩にめり込んだ歯を取り出した愛は梨子にそれを投げ返そうとするも目の前に彼女の姿はなかった。

「私は愛するものと50分間息継ぎなしのキスができるように肺を鍛えたの。そんな肺活量から繰り出される射撃は銃弾に匹敵するわ」

愛「っ!!どこにいる!?」

梨子の声だけが沼津に響いた。

次の瞬間背中に2発小石が着弾した。
ブニっと愛の白い背中が赤く染まる。

愛「スナイパーを相手にしてるみたいだね!!」

止まっていたら撃たれる。
愛はフィジカルを利用して道路を縦横無尽に走り、沼津駅を目指した。

58: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:08:41 ID:???Sd
この時間とはいえ沼津駅前なら店や駅の光で梨子の位置も分かりやすいと思ったからだ。

ブスっ!!!

愛「がっ!!!」

再び小石が今度は3発被弾した。
左腕上腕、太もも、ふくらはぎだ。

これにより本来のスピードが活かせなくなる。
しかし視界が良好かつ隠れるところも多い駅前に到着した。

愛は振り返ることもせず改札を飛び越えて駅内に入った。


「うわっ!!」

「裸の女の人だ!」


駅内にはまだ人がいた。
全裸で飛び込んできた愛に顔を赤らめて驚いていた。

愛はそれら全てを無視して梨子の居場所を特定することにした。

59: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:09:00 ID:???Sd
沼津駅南口に入り左の通路をまっすぐ進むと目の前に階段がある。
階段を登ると商業施設アントレに続く道があるが夜間のためシャッターが閉められていた。

愛はそれをワンパンで破壊してアントレ内に入る。
中はもう誰もいない。

愛「お邪魔しまーす!」

入ってすぐ側にあるドラッグストアで水分補給をする。
ここなら梨子の追撃を交わせると思ったが……。

パリィン!!!

外から小石銃撃が襲いかかってきた。
愛は避けきれず腰に1弾被弾する。

愛「っ!!!けど今ので居場所が分かったよ!!!!」

梨子が沼津駅高架前の木の影で笑顔でこちらを見ていた。
愛はタックルでガラスを破壊して外へ飛び出した。

梨子「おかえり!!ぷっ!!!」

もう2発愛に向けて小石を吹き出すが、今度は当たらない。
反復横跳びで回避した。
この近辺は照明がしっかりしているため銃弾程度のスピードなら愛は見切れるのだ。

60: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:09:21 ID:???Sd
スピードを維持したまま梨子の横へ近づくと一瞬で50発を超えるパンチを浴びせた。
曜をコンクリートごと破壊したパンチだ。

愛「あいあいあいあいあいあいあいあいあい!!!!!」


梨子「あびょおおおおおああああああああ!!!!!」


悲鳴を上げながら駅前のローソン内にガラスを破壊しながら入店する梨子。

店員「きゃああああああ!!!!」

梨子「女の子の悲鳴…興奮するわね。……ーぶぼぉ!!!」

店内は客がおらず店員だけがいた。
血だらけでダイブしてきた梨子に恐怖で顔を歪ませて悲鳴を上げていた。

梨子は顔面が歪むほど殴られていたが先ほどまでの傷は全て完治していた。

61: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:09:39 ID:???Sd
愛「はぁ……はぁ…………」

梨子「追い詰めている方が息が上がっているわね。大丈夫?」

愛「(スタミナもすぐに回復するのかな?何にせよこのまま戦えば私が体力切れで負ける。なら………)」
愛「失血すればどうかな!?」

愛は梨子を無視してコンビニの文房具コーナーに駆け出した。
そこで素早くある商品を取り出す。

店員「あわわ……」

梨子「…………」

愛「これで……血を減らす」

愛は包丁を握った。
刃渡15cm。十分武器になるサイズだ。

62: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:09:58 ID:???Sd
時速100キロで梨子に突っ込む愛。
光に照らされる刃は柔らかい梨子の腹にブスリと刺さった。

梨子「げぼぉうわあああ!!!!」

ドクドクドク…………

梨子の腹から夥しい量の血が溢れ出した。


梨子「い、だい……!!ああっ!!!」

腹を抑えてのたうち回る梨子。
血が止まることはなくローソンの中を血の海にした。
店員は失神してしまったようだ。

梨子は何とか起き上がるも愛の2撃目が迫ってきていた。
絶対に避けられない距離。
しかし愛は梨子の血で滑って転けてしまった。

愛「あだっ!!」

梨子「どぉして………げぽ!!!」

肌色より血の方が目立つほど2人とも赤くなっていた。
梨子は転けた愛に覆い被さり訴えかける。

梨子「どぉしてこんな酷いことするのよぉ!!!!」

63: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:10:14 ID:???Sd
愛「ひっ……」

沼津へ来てから初めて味わう感情。

「恐怖」

赤く血走った目でホラー映画の幽霊のように悍ましい顔で愛に叫ぶ梨子。
話すたびに口からは血を飛び散らせていた。

そして天を仰ぐように両手を合わせて吠えた。

梨子「がみざまぁ!!!おゆるじを、今からか弱き少女をごろじまずぅ!!」

愛「な……な………」

全身に血を浴びて豹変した梨子。天を仰いでデスボイスで叫び狂う姿はまるで悪魔のようであった。
隙だらけだというのに愛は3撃目を繰り出せない。


梨子は生命の危機に達した場合普段の人格が消え内部から「悪魔」が飛び出すのだ。

64: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:10:39 ID:???Sd
愛「く、……」

梨子「びゅおおお!!!!」

梨子は口に含んだ血をレーザーのように愛に飛ばした。
間一髪で避けるが、血レーザーはローソン壁を最も容易く破壊しながら狩野川の方まで飛んでいった。

愛「嘘でしょう!?」
梨子「りごは本当のごどしか言わ゛なイ」

愛の「首」を掴むと力任せに沼津駅方面までぶん投げた。
ここに来て初めての梨子の肉体的攻撃。
その破壊力は凄まじく…………。

ゴパァァァァァン!!!!!!

駅前のコンビニに愛は突っ込む。
店内の商品は3分の2が散乱してしまった。

愛「………が」


掴まれた首は皮がちぎれ、血管が見えていた。

65: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:10:59 ID:???Sd
愛「おおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」


痛みと恐怖で硬直しそうな体を叫んで鼓舞する愛。
暗闇の中、ローソンからヒタヒタと赤い足跡をつけながら近づいてくる梨子に走りだした。

愛「せいやぁ!!!!!」

体重を乗せた胴回し回転蹴り。
愛の踵が梨子の首に当たったが………。

梨子「いだい」

愛「え?」

梨子「いだいのよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
スパァン!!!と愛の右頬にビンタをかます梨子。
鼓膜が破れ、首が嫌な方向まで曲がった。

66: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:11:36 ID:???Sd
梨子「左もざじだじなざぁい!!!!」

愛「っぱぁ!!!???」

続けて左手頬にビンタ。
皮肉なことにこれにより首の位置が元に戻った。


愛「あ……が…………」

脳が揺れその場でふらついてしまう愛。
その状態の彼女の腹に駅前に響くほどの轟音でパンチが放たれた。

ドゴォン!!!

愛「ばっ!!!!」

2m後退し、腹を抑えてうずくまる愛。

愛「(動けない……)」

梨子「…………」ペタペタ

愛「これが……沼津……」

梨子は止めを刺す気だ。
愛はもう抵抗しない。いや、できない。
梨子「…………」ドサッ

愛「え……?」

梨子が愛の目の前で倒れてしまった。
腹の傷は塞がったが失った血が多過ぎたため気を失ったのだ。

愛「…………勝ったの?」

今にも倒れそうなほどダメージを負った愛。
目の前に倒れる梨子を見ても「勝った」という感覚が湧いてこなかった。

愛「はは………」


愛は動けるようになっても梨子に止めは刺さなかった。
その足で夜の沼津に消えていった。

67: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 12:12:23 ID:???Sd
~ダイヤの家~

鞠莉「何ですって!?」

ダイヤ「どうしたんですの?」

鞠莉「駅前で血だらけの梨子が救急車で運ばれたって!」

次の日、ダイヤの家でAqoursメンバーが集まっていた。
梨子が来ないと思っていたら小原家お抱えの諜報部隊から鞠莉に連絡が入ったのだ。

善子「梨子は負けたの……?」

鞠莉「宮下愛に負けたそうよ。駅前は大量殺人でもあったかのようにめちゃくちゃよ…」

スマホの写真をメンバーたちに見せる鞠莉。

花丸「ずら!?地面が血だらけずら!!」

ルビィ「うゆゆ…台風でも通った後なの?」

コンビニや駅構内が破壊され尽くした状態を見て皆震撼した。

68: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 14:02:25 ID:???Sd
千歌「梨子ちゃんは無事なの!?」

鞠莉「えぇ…『無傷』だそうよ。けど失血が酷いから輸血している最中よ」

曜「梨子ちゃんの特性か。くそ……私があの時倒していれば」

しずく「愛さんに負けたことは恥じなくていいと思いますよ。あのクラスのフィジカルエリートはあまり見ないですから」

ルビィに負けたしずくは現在黒澤家で軟禁されている。
本人も逃げる気はないようで黒澤家のお菓子を貪る有様である。

ダイヤ「愛さんは今どこへ?」

しずく「さぁ……?私が彼女なら傷が治るまで沼津内で潜伏しますけどね」

鞠莉「監視カメラの映像から宮下愛は『オーガ』と戦いに来たと言っているわ」

善子「果南の事?てか!アイツ今どこにいんのよ!!!」

鞠莉「果南はお金を稼ぐために駿河湾の底で珍しい生き物やワカメを集めてるわよ。深海水族館で展示されている二割の生き物は果南が集めたとされているわ」

善子「初耳なんだけど」

花丸「果南ちゃんらしいずら」

69: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 14:03:00 ID:???Sd
千歌「愛さんは果南ちゃんと戦いたいんでしょう?じゃあ早く果南ちゃんをぶつけて東京に帰ってもらおうよ」

善子「本当ね~。宮下愛にはそれまで大人しくしてもらいたいものね」

しずく「……その言い方だと果南さんが勝つのは必然と言っているように聞こえますね」

善子「必然よ」

しずく「ほう?」

善子「なぜアイツがオーガと言われているか…挑んだら嫌でも知るでしょうね」
.
.
.

果南「よいしょ」

職員「いつもありがとうございます。こんなにたくさん生き物を捕まえてきてくださって」

果南「良いってことですよ。半分趣味ですからね」

果南は久しぶりに海から上がり、深海魚数匹を水族館に運んでいた。
だがこれからすぐにまた海に潜らなければならない。

果南「こんなもんかな」

エマ「こんにちはー!アナタが果南さん?」

果南「いかにも。あなたは?」

エマ「エマ•ヴェルデだよ~!スイスから留学で沼津に来たんだ!」

果南「ふーん?」

70: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 14:03:30 ID:???Sd
エマ「あ!アナタ服に虫がついてるよ!」

果南「ありゃりゃ、そう??」

エマ「取ってあげるね」

エマが果南に一瞬で距離をつける。
慣れた手つきで腰からサバイバルナイフを出し、果南の腎臓に突き刺す。

エマ「ッッッ!!!??」

突き刺した……と思っていたが果南の筋肉に遮られ刃が奥にいかない。
こんなことは初めてだと言わんばかりにエマは目を見開く。

果南「無駄のない動きだね」

果南は笑顔でナイフの刃を素手で握りそのまま握力を込める。

エマ「ちょっ………」

ミシミシミシ………

普通なら刃を握る手は血だらけだ。
しかし彼女は普通ではない。

バキン!!

ナイフの刃が木っ端微塵に砕け散った。

71: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 14:04:50 ID:???Sd
エマはすぐに果南から距離を離した。

果南「刺客…でいいんだよね?私今からまた海に潜りたいんだけどなぁ」

エマ「すぐに潜れるよ。永遠にね」

エマは今度はグロッグという銃を取り出して躊躇いなく引き金を引いた。

ズドンズドンズドン!!

心臓に2発。
頭に1発命中した。

果南「痛いな………」

果南は少しイラつきを見せた。
しかし弾丸は果南の鋼鉄の体に当たった衝撃でペシャンコに変形していた。

エマ「直撃でも命には届かないか!!!」

エマは銃をしまうと足踏みをする。
すると靴底から窒素が噴出し、一瞬で20mも後方へジャンプした。

果南「武器人間みたいだね」

72: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 14:05:17 ID:???Sd
エマは逃げたわけではない。
単純に距離を取ったのだ。

果南は追うか迷った。

果南「どうしよっか」

腕を組んでいると上空からボールが5つ降ってきた。
よく見ると………。

果南「手榴弾じゃん!」

ドガガガガァァァァァァンンン!!!!!!

手榴弾の爆破をその身に受ける果南。

エマ「死んだでしょう……?」

砂埃が晴れる姿を遠くから注意深く眺めるエマ。
しかし。

果南「………」

果南は服こそ破けていたものの軽傷で済んでいた。
エマの方向を先ほどのフワフワした様子ではなく野獣のように睨んでいた。

エマ「クソ!!!!!」

再び数十メートル果南から距離を取ろうとするエマ。

果南「もう許してあげない」

果南はエマを「屠る」事に決めたようだ。
クラウチングスタートでエマに向かってダッシュし始めた。

エマ「わっ!!嘘!!速い速い速い!!!?」

新幹線並みのスピードに焦るエマ。
小型のSMGを構えると果南に向かって連射し始めた。

エマ「来ないで!!!」

73: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 14:05:44 ID:???Sd
果南「はーははははははは!!!!!」

大声で笑いながら銃弾を浴びる果南。
威力の低いSMGでは擦り傷すら付いていないようだ。

エマ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

ばばばばばばばばばば!!!!

それでも撃ち続けるエマ。
もう思考停止状態に陥っていた。

果南は怯えるエマの顔面を右手で掴むと勢いのままコンクリートの地面に叩きつけた。

果南「オラァ!!!!!!」


ゴガシャァァァァァァァァァンンンン!!!!!


エマ「」


果南「汗ぐらいかかせてよ」

高速で迫る果南に何も出来ず気を失ったエマ。
果南は倒れるエマを無視して再び海へ潜って行った。

74: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 14:06:14 ID:???Sd
~黒澤家道場~

ルビィ「ピギェエエエエエエエエ!!!!!」

黒澤家の道場でルビィが上空に投げ飛ばされていた。
受け身を取らないルビィをしずくがキャッチした。

ルビィ「ピギギ……ありがとうしずくちゃん」

しずく「いえ…それにしても凄まじい技ですね」

ダイヤ「これが合気道です。受けた力をそのまま返す。ルビィのように直上的に突っ込んでくる相手にはやりやすい」

しずく「……」

ダイヤ「そろそろ私も出なければなりませんね。浦の星のメンバーは私以外血を流している。生徒会長として他の3人は私がとらえます」

曜「ダイヤさーん!」

ダイヤ「曜さん?」

梨子「お邪魔しまーす」

ルビィ「梨子ちゃん!?もう歩いて平気なの?」

梨子「そもそも病院に運ばれた時点では無傷だったからね。輸血だけして完治って感じよ」

ルビィ「しゅごい!!」

75: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 14:06:40 ID:???Sd
曜「聞いてよ!深海水族館前でエマ・ヴェルデが気絶してたんだって!!」

ダイヤ「何ですって!?」

しずく「あのエマさんをいったい誰が……」

梨子「目撃者によればポニーテールの女子高生に一撃で倒されたそうよ。ポニー少女はその後すぐに海に潜っていったと…」

ダイヤ「なるほど…果南さんですか」

ルビィ「深海の生き物を水族館に運んでる時にたまたま鉢合わせたのかな?こちらとしては運が良かったね!」

曜「くぅー…私だけ何もできてない!!ちょっと宮下愛を探してくる!!」ダダダダダ

梨子「曜ちゃん!!……全く。それで…あなたが桜坂しずくちゃんね?」

しずく「はい。(何だろうこの人…すごく嫌なオーラを纏っている)」

梨子「あとでちょっと話があるの。2人きりでね」

しずく「わ、わかりました」

76: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 14:07:02 ID:???Sd
その後、しずくは梨子にダイヤの部屋に呼び出されていた。

しずく「失礼します」

梨子「待っていたわ、まぁそこにかけなさい」

しずく「は、はい……(ダイヤさんの部屋なのに)」

梨子「あなた、演劇が得意なのよね?善子ちゃんのお母さんに変装して実の娘も騙せたとか」

しずく「はい。私は背丈、声、顔、匂いまで完璧に模倣できます」

梨子「グッド!!!そこでお願いがあるの。宮下愛ちゃんいるじゃない?あの子本当に美人よね…変装できる?」

愛(しずく)「まぁ…それくらいなら。どうですか?」

梨子「ウッヒョォォォォォ!!!!すごい!そのまんまじゃない!!!」

愛(しずく)「ど、どうも」

77: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/03(金) 14:07:21 ID:???Sd
梨子「じゃあその姿のまま私と     しましょう」

愛(しずく)「はい!?」

梨子「ここにボンデージと鞭があるから私を痛ぶりなさい」

愛(しずく)「いやですよ!何で私がそんな事…」

梨子「強者が苦痛に顔を歪ませるのが好きなんでしょう!?私相手ならいくらやっても良いわよ!!!」

愛(しずく)「ひえ……」

梨子「早く!!!!」

ダイヤ「何してるんですの」

梨子「うひゃあ!!!」

78: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:01:01 ID:???Sd
ダイヤ「全く私の部屋で何してるんですの……」

梨子「愛のあるプレイを……」

しずく「違います」

ダイヤ「しかし……しずくさんの演技力は素晴らしいですわね。愛さんの姿で愛さんを誘き出せないでしょうか?」

しずく「……私は確かに負けましたが、そこまでする義理があるとは思えません」

ダイヤ「あなたは行住坐臥演劇を考えていると仰ったそうですね。この地で新しい試み行えば演劇の向上につながると思いますが」

しずく「…………」

梨子「私に教育をさせてください」

ダイヤ「作戦は私とルビィで組みます。梨子さんは家に帰りなさい」

梨子「」

79: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:01:28 ID:???Sd
~ららぽーと沼津~

愛「ふぅ~……ごくごく」

愛はららぽーと内の手洗い場の水道で喉を潤していた。

梨子との戦闘から5日が経過した。
戦いの傷はほぼ癒えて制服姿でららぽーと内をふらつく日々を送っていた。

愛「そろそろ行こうかな。次は……オーガを狙う」

エマの敗北は愛の耳にも入っていた。
エマは仲間だが果南を倒すのは自分しかないと思っていたため敗北の知らせを聞いて少しほっとしていた。

「あ、演劇に出るお姉ちゃんだー!」

愛「うん?」

愛に話しかける小学生くらいの少女がいた。
愛の所業を知らないのか無邪気に愛の周りを飛び跳ねる。

愛「演劇って?」

「そこのポスターに貼ってあったよ?メイド服で踊るって!」

愛「………?」

少女に案内されるがままポスターとやらを見に行く愛。
そこには間違いなくメイド服を着た愛が  開脚をしているポスターが貼ってあった。

愛「」

「お姉ちゃん   だね」

愛「なんじゃこりゃああああ!!!??」

80: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:02:35 ID:???Sd

「今日の夕方5時に広場で踊るんだよね?楽しみにしてるねー!」

少女は愛に手を振ってどこかへ行ってしまった。
愛はポスターの前で硬直している。

すぐさま身に覚えの無い痴態を晒す自分のポスターを破り捨てる。
だが2m離れた壁にも同じ物が貼ってあった。

愛「まだ他にもあるの!?」

そう、これはダイヤたちが仕組んだ罠であった。
しずくに愛の変装をさせ誘き寄せようとしたのだ。

ららぽーと内だけでも30枚のポスターが。
沼津市内で合計1500枚ものポスターを貼っている。

嫌でも愛の目につくように。

そんな時愛のスマホに着信が鳴る。

愛「もしもし?」

ランジュ『愛!今日ライブやるの!?ポスター見たわよ!喧嘩だけじゃなくてアイドル活動も忘れないなんてさすがね!』

愛「誰かに嵌められたんだよ!絶対やんないから!」

ランジュ『なーんだ。じゃあ敵の手に落ちたしずくの仕業かしらね』

愛「……なるほど」

ランジュ『何にせよあなたは今日戦う事になりそうね。それが終われば…私よ。沼津の名産は食べ尽くしたし次はファイターを食べ尽くさないと』

愛「そっか」

電話を切る愛。
ポスターはもう放っておく事にした。

愛「私の相手は誰になるのかな?ふざけたことを考えた子にはお仕置きが必要だよね!!」

81: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:03:01 ID:???Sd

PM4時

ダイヤ「さて…そろそろ行きましょうか」

善子「1人で行く気?」

ダイヤ「えぇ、あくまで対象は宮下愛1人。まぁ来ない可能性もありますが…仮に相手が一人であった場合、こちらが複数人いたら私の流儀に反します」

善子「………そ。なら私はダイヤの家で引き続きゲームでもしておくわ」

ダイヤ「お願いします」

「ちょっと待ったぁ!!!!!」

善子「うわ!」

突然2人の後ろから大声で制止を叫ぶ声があった。

ダイヤ「あなたは……」

曜「その勝負、私に任せてくれない?」

ダイヤ「曜さん……」

曜「私は今まで不覚を取り続けてきた。みーんな私以外の誰かと戦いたいって勝負の途中で逃げちゃったんだ」

曜「いい加減ッッッ!!どちらかが倒れるまでの真剣勝負を私もしたいの!!!」

善子「すごい気迫ね……」

ダイヤ「はぁ……仕方ありませんわね。負けたら承知しませんわよ?」

曜「ありがとうダイヤさん!!」

82: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:03:19 ID:???Sd

PM5時

ザワザワ……

ららぽーとの広場には沢山の観客が押し寄せていた。
名目上アイドルのライブのため沢山のオタクが駆けつけていたのだ。

「おおおお!!可愛い!!!」

「こんな可愛いメイド、欲しいでござる!!!」

シャッターを撮る手が止まらないオタクたち。
愛は嫌がっていたメイド服を着てステージの上の椅子に座っていた。
少女の懇願に負けてしまったのだ。

愛「はぁ………誰も来ないんだけど。人もいるしライブ1曲して駅方面に戻ろっかな」

曜「その必要はないよ」

愛「あなたは……!」

ステージ上に飛び乗る曜。

曜「メイド服似合ってるじゃん。そのまま鞠莉ちゃんの家に就職すれば?」

愛「あなたが首謀者?」

曜「そうだよ」

83: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:03:37 ID:???Sd
愛「タダでは済まさないよ」

曜「へぇ~じゃあお菓子でもくれるの?」

愛「らぁ!!!!」

曜の挑発に拳で答える愛。
しっかり腰に入ったパンチが曜に襲いかかる。

曜「ふっ!!!」

それを体を傾け回避し、ローキックを返す曜。
愛は左腕でガードした。

互いに間合いを取る。

周りの観客はダンスではなく喧嘩が始まった事に混乱していたが、メイドとJKが喧嘩する姿に「それはそれで楽しい」と言わんばかりに盛り上がっていた。


「愛ちゃん!!」

「頑張れ愛ちゃーーん!!!」


愛「何で私が応援されてんだろうね」

曜「可愛いから…かなっ!!!」

曜のワンツーを腕でガードする愛。
愛は距離を一瞬で詰めて曜の胸ぐらを掴んだ。

曜「うわ!」

愛「おらぁ!!!」


愛は勢いに任せ曜を投げ飛ばした。
壁に叩きつけられた曜は身を起こし愛に振り向く。

曜「(やっぱ強いな……。梨子ちゃんも『悪魔モード』になるまでは一方的にやられてたらしいし)」

84: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:03:52 ID:???Sd
愛「シュッ!!!」

愛は体の重心を後ろに下げて曜のふくらはぎに蹴りを入れた。

曜「っ!!!」

鋭い痛み。
すかさずパンチで返すも愛の蹴りは頭を腕でガードしながら放たれたため、腕に阻まれ大したダメージを与えられない。

曜「YO!!!」

曜はハイキックを叩き込むが愛の両腕でガードされる。
そしてすかさず蹴りを返された。
先程と同じ曜のふくらはぎに。

曜「痛っ!!!」

愛「カーフキックってやつだよ」

3発目が曜に襲いかかった。

曜「あうっ!!」ガクッ

同じところに3発愛の蹴りをくらい、左脚が震え始める。
ふくらはぎは太ももや腹筋と違い衝撃を吸収しないためダメージがモロに入るのだ。

85: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:04:24 ID:???Sd
曜「虎ォォォォォォォォ!!!!!!」

愛「応ッッッ!!!!」

曜は右足のみでジャンプし愛に飛びかかった。
右手で手刀作り、愛の首に目掛けて振った。

愛はしゃがんで回避し、その状態からバネのように跳ね上がった。
愛の石頭が曜の顎に直撃する。

曜「ばがッッッ!!!!!」

口の中で歯が割れる感覚が曜を襲う。
だが予定通りだったのか痛みに耐えながらも両脚を愛の体に挟みつける。

曜「うらあああああああ!!!!!」

愛「何!?」

一時的に両腕が使えなくなった愛の顔面に今度は曜が頭突きを喰らわした。

メゴォ!!

愛「ぐああああ!!!!」

鼻血を吹き出しながら痛がる愛。
2人とも地面に倒れ、今し方ダメージを受けた箇所を手で押さえていた。

愛「やってくれたね!!」

曜「まだまだこれからだよ」

86: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:04:39 ID:???Sd
ダイヤ「……やっていますわね」

ダイヤは抹茶ラテを手に、遠くから2人の戦いを見学していた。
しかし己の流儀に基づき手は絶対出さないようにしていた。


ダイヤ「曜さんと愛さん。2人ともフィジカルに自信がありファイトスタイルが似ています。しかし愛さんの方が現段階では上ですわね」

ランジュ「本当ね~モグモグ」

ダイヤ「なっ……!?」

ダイヤの独り言に答える少女の声。
そちらに顔を向けると刺客の1人、鐘嵐珠がクレープを頬張っていた。

ランジュ「あなたが黒澤ダイヤね?噂は聞いているわ。Aqoursでも果南の次に強いとか」

ダイヤ「………」

ランジュ「怖い顔しないでよ、私は今は戦う気はないわ。愛の勇姿を見にきただけだもの」

ダイヤ「刺客のトップはあなたですか?」

ランジュ「虹ヶ咲はトップとかそういうのにこだわらないの。けどまぁ……ここに来ている4人の中じゃ一番かしらね」

ダイヤ「曜さんの戦いが終わったら覚悟していなさい」

ランジュ「やれやれね……」

87: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:05:08 ID:???Sd
曜「げボォォォォ!!!!!」

曜がゲロを吐きながら宙を舞っていた。
着地の瞬間愛が正拳突きで曜の腹に拳をめり込ませ壁際まで吹っ飛ばした。

曜「がばぁ!!!!」

曜は前歯が4本折れ、カーフキックを何度も左ふくらはぎに受け腫れ上がっていた。
骨も数カ所折れている。

壁に叩きつけられた曜はなんとか起き上がるも視界がぐらついているようだ。

愛「ハァ………ハァ………」

愛も鼻が折れ、顔面にいくつもあざを作っていた。
現時点では曜の方がダメージが大きい。

愛「楽しいねぇ……沼津に来て初めてストレートな喧嘩をしているよ!!」

曜「(打撃は向こうの方が上か……)」

曜はレスリングの技術で愛にテイクダウンを仕掛けた。

愛「あはっ!!そう来るんだ!!!」

曜の首を脇の下で絞める愛。
そのまま一緒に倒れ、曜の首を捻ろうとする。
ギロチンチョークだ。

曜「がっ………!!!!」

88: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:05:39 ID:???Sd
ダイヤ「曜さん!」

ランジュ「安易に攻めすぎね~。曜が強いのは認めるけど、愛はそれ以上に技術もフィジカルもあるからね。もっと慎重にいかないと!」

ダイヤ「……」

ランジュ「その愛を一方的に追い詰めた梨子とやらに興味があるわ!後で案内してよ!」

ダイヤ「ここで負けるあなたにそれほどの体力がありますかね?」

ランジュ「きゃは!面白いわね!」


曜「(ぐ、ぐるじい………!!)」

曜は意識を失う手前であった。
愛の腕力は相当のもので全く動かすことができない。

意識が飛びそうになりながら顔をなんとか上げ、愛を押し除け自らのおでこを地面につける。
ギロチンは首を捻られたら決まるからだ。

愛「(鬱陶しいなぁ!!)」

89: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:05:54 ID:???Sd
曜はおでこを地面に着けつつ左足を起点にブリッジする。
そのまま愛の体を周りサイドポジションを取り返した。

曜はそのまま愛の腕を取りアームロックを仕掛けようとするも、「エビ」で距離を取られてしまった。

愛「惜しいな」

曜「はぁ……はぁ………」

曜「(寝技に付き合わなかった。やっぱり打撃の方が愛ちゃんは得意なんだ)」

曜「ならっ!!」ダッ

曜はジャブで愛を牽制する。
そして右ストレートを振るうふりをした瞬間再びタックルを仕掛けた。

愛「っ!!」

今度は防げなかった。
愛が押し倒される。

90: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:06:16 ID:???Sd
「愛ちゃん!」

幼女の悲鳴が愛の耳に届く。

曜は聞こえていない。
愛の片膝に体重をかけつつマウントポジションを狙っていたからだ。

曜「(いける……!!このままパウンドで…!!)」

愛「おおおおおお!!!!!」

曜「ぐっ!!」

愛はなんと押し倒されたまま曜の顔面をめちゃくちゃに殴り始めた。
型も何もない往復パンチ。
だが絶対に負けられないという気迫が痛いほど伝わるパンチだ。
曜も不完全な体勢のまま殴ろうとしたが遅かった。
愛のパンチを顎に数発まともに喰らったからだ。

嵐のような猛攻に曜の意識が薄れる。

曜「(や、ば……!)」

曜はたまらずに後退した。
愛も倒立して起き上がる。

91: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:06:38 ID:???Sd
愛「ビビっちゃった?」

曜「」ピキィ

ある意味図星。
愛の猛攻に身が引けたからだ。

曜「(とはいえどう攻めたものか…)」

愛「来ないならこっちからいくよ!!」

愛は細かいステップを踏みながら曜にジャブを放ってくる。
曜はスウェーで避ける。

愛「あいあいさー!」

急に距離を詰めてくる愛。
曜の胸ぐらを掴むと背負い投げで硬い地面に叩きつけた。

曜「がっはっ!!!」

ダイヤ「曜さん!!!」

愛は倒れる曜にパウンドを食らわす。
曜は体を捻り避けようとするも打撃の雨に晒される。

92: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:07:22 ID:???Sd
曜「おおおおおお!!!!!」

叫びをあげながら愛がパウンドを支える左腕を掴み腕十字に引き摺り込む。

愛「っ!!」

まだ動けるのかと驚く愛。
曜の足が愛の左腕を起点に挟み込まれた。
そのまま背中を「反り」腕を折りにいく曜。

愛「(いっ………!やばい……!!)」

曜「(さっさと折れろ……!!)」

愛「おらぁ!!」

愛は力技に出た。
掴まれている方の手で曜の制服を掴むとそのまま彼女の体を持ち上げた。

曜「嘘でしょ!?」

愛「おおおおおおお!!!!!」

そのまま曜を餅つきの杵の様に地面に叩きつける。
曜は顔面から硬い地面に衝突した。


ベキィッッッ!!!!!


曜「ば………あ………………」


地面が割れる。
衝撃はかなりのもので白目を剥いて痙攣する曜。
愛も無傷ではなく掴まれていた方の腕にかなりの激痛が走っていた。

愛「痛っ……!!」

曜「ま……だ……」

曜はなんとか立ちあがろうとするも顔面ダイブはかなりの衝撃だったらしくそのまま地面に吸い込まれる様にして倒れた。

勝者が決定した。

93: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:07:43 ID:???Sd
ワーーーー!!!

「愛さーーん!!」


ランジュ「さすが愛ね!!」

割れんばかりの観客の拍手の中ランジュが親友を讃える。

ダイヤ「………曜さんを回収します」

ランジュ「あら、私を倒さなくていいの?」

ダイヤ「あなたは逃げないでしょうから。また後日捕獲しに行きます」

ランジュ「楽しみに待ってるわね!私は愛とご飯にでも行きましょう。あーい!!」

愛「ランジュ!?来てたんだ」

ランジュ「駅前の海鮮屋で祝勝をあげるわよ!手当してから行きましょう!!」

愛「うん……いたた」



~その夜~

曜は黒澤家で目覚めた。

曜「………」

千歌「曜ちゃん!!」

ダイヤ「起きましたか。まずは…お疲れ様です。良いファイトでした」

曜「ダイヤさんごめん…負けちゃったよ」

ダイヤ「………えぇ」

曜「悔しいけど完敗だった。まさかあんな体勢からkoされるなんて」

ダイヤ「まるで野生児同士の喧嘩を見ているようでした。曜さんには悪いですが……中々楽しめましたよ」

曜「ふふ。負けたけど…楽しかったな。私はまだまだ未受だ。しばらく修行する事にするね…何かあったらまた呼んで」

ダイヤ「分かりました。今はゆっくり休んでください」

千歌「じゃあ久しぶりにショッピングでも行こうよ!最近遊んでなかったし」

曜「そうだね!」

94: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:08:22 ID:???Sd
曜「そういえばルビィちゃんは?」

ダイヤ「こんな時だと言うのに善子さんと花丸さん、梨子さんでご飯に行きましたよ。まぁ皆一緒の方が安全かもしれませんが」

千歌「そっか」

ダイヤ「では今日は我々3人で出前でも頼みましょうか」

千歌「出前!!やったーー!!ハンバーグでも頼もうか」

ダイヤ「私はハンバーグはちょっと……」

千歌「むきーー!!」

曜「あはは…」

~沼津駅前寿司屋~

愛「美味しいねやっぱり」モグモグ

ランジュ「でしょ!?もっと食べて失った肉を取り戻しなさい!」

愛「うん!モグモグ」

ランジュ「で、渡辺曜はどうだった?」

95: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:08:35 ID:???Sd
愛「この街に来て一番ワクワクした戦いだったよ。オールラウンダーの格闘家って感じ」

ランジュ「それ故に弱点が無い。他のメンバーは梨子みたいに死ぬ寸前まで傷を負わせられないと覚醒しなかったり、ルビィみたいに力はあるけどそれを支える肉体に問題があったりするからね。曜みたいなタイプはどんな相手にも有効ね」

愛「これで私は二連勝……あとはオーガを狙いたいな」

ランジュ「私は普通に観光していたからまだ1戦もしていないの!ダイヤが戦いそうにしていたから早く会いたいわ~!」


ピギャアアアアアアアアアア!!!!


ランジュ「きゃあ!!すごい悲鳴ね……何事かしら?」

愛「隣の部屋の人だね」

部屋は個室ごとに分かれているわけではなく簡単な柵がある程度だ。
ランジュは一瞬柵から頭を出して隣の客を見た。

ランジュ「あーーー!!!!」


そこにはAqours1年組と梨子が寿司を食べていた。
どうやらルビィがわさびに当たったようだった。

96: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:08:49 ID:???Sd
善子「ん……あぁ!?」

花丸「ぎゃああああああ!!!刺客のランジュずら!!!」

ランジュ「あなた達も来てたのね!一緒に食べない?」

善子「誰があんたらと食べますか!」

梨子「良いじゃない。ランジュちゃんがまさかこんなに美人だとはね。愛ちゃんもいるんでしょう?匂いでわかってたけど」

愛「何で分かるの!?キモイキモイ!」

梨子「私がそっちに行きましょうか?」

愛「来ないで!!!!」

ランジュ「なんか色々あったみたいね……」

97: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:09:04 ID:???Sd
なんだかんだで一緒に寿司を囲むことになった一行。
愛は梨子からかなり離れた席に座っている。
愛の左にはルビィが、右には善子が座っている。

善子「アンタら沼津をよくもめちゃくちゃにしてくれたわね。駅前の店はグチャグチャ、死人も大勢出ているわよ」

ランジュ「私はまだ何もしていないわ」

愛「ほとんどの被害は私が出したよ」

善子「どうしてくれんの?」

ルビィ「よ、善子ちゃん……」

愛「何も」

善子「は?」

愛「何もしないよ。私は暴れに来たんだから。私に何かを強制したいなら力づくで言うことを聞かせてみな」

98: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:09:17 ID:???Sd
善子「可愛い顔して覚悟は決まってるんだ。はは……」

花丸「やめるずらっ!!!!」

善子「!」

愛「!」

一触即発の2人を止めたのは意外にも花丸だった。

花丸「寿司屋で喧嘩は厳禁ずら。やりたいなら食べてからにして」

善子「ふん……」

ルビィ「うゆゆ……喧嘩はやめてよ…」

ランジュ「きゃあ!ルビィは璃奈に似て可愛いわね!」

愛「……」

愛はチラリとルビィを見る。
口には出さないがランジュと同じ気持ちなのだろう。

善子「よっし!じゃあ食べ終わったら狩野川で遊ぼっか」

ランジュ「今日はやめといたら?愛も疲れているでしょう」

愛「私は良いけど?善子は曜に比べて弱いしちょうど良いハンデだよ」

善子「へぇ……」ピキピキ

99: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:09:31 ID:???Sd
梨子「若いっていいわね」

花丸「梨子ちゃんいくつずらか……」

ランジュ「じゃあ私が2人のジャッジしてあげる!」

ルビィ「あ、あの!」

ランジュ「なぁに?ルビィ」

ルビィ「い、言いにくいんだけど……」

花丸「どうしたずらか?」

ルビィ「ピギィ!ランジュさんは今日生きてお家に帰ることはできないんだ!だっておねえちゃあを狙ってるって言ってたからね…ごめんなさい」

愛「ッ!?」ゾクッ

可愛らしい様子を崩すことなく恐ろしいことを言うルビィに愛は鳥肌が立ってしまった。

ランジュを見ると彼女も驚いていたがすぐに不敵な笑みを浮かべた。

ランジュ「やっぱり沼津に来てよかったわ。ごめん善子、愛。これからは私たちの時間みたい」

善子「ルビィ……」

愛「そうみたいだね」

100: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:09:49 ID:???Sd
寿司屋での会計はランジュがすべて支払った。

花丸「敵だけどありがとうずらランジュさん」

ランジュ「きゃあ!花丸も可愛いわね!虹ヶ咲に来ない?」

善子「なっ!ダメよずら丸!」

花丸「行かないから大丈夫ずらよ…」

側から見たら仲のいい女子高生同士にしか見えないだろう。
しかし彼女らは、いや厳密には内2名がこれから死合を行う。

~狩野川広場~

ランジュ「いい場所じゃない」

ルビィ「うゆ!」

愛「………」

愛はサイコだが小さい子には弱い。
璃奈を思わせる幼い子が戦うことに複雑な気持ちでいた。

善子「アンタ、ルビィが戦えるのか不安なの?敵なのに」

愛「っ!!…別にそんなんじゃないし!」

善子「心配いらないわよ。曜や私より強いから」

愛「へぇ……」

善子「梨子とは…どっちが強いかな分かんないけど」

梨子「愛ちゃん、一緒に観戦しましょうよ」

愛「やだよ」

101: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:10:04 ID:???Sd
善子「とりあえず…ルールはいらないわよね?目つき金的なんでもあり!噛みつきももちろんOK!」

ランジュ「望むところね」

ルビィ「うゆゆ!」

善子「では…スタート!!!」


ルビィ「ウ゛ユ゛ッッッ!!!!」


花丸「おお!」

ルビィの勇ましい掛け声に感嘆する花丸。
小さな右拳を握りしめてしずくを沈めたパンチをランジュに向けて放つ。

ランジュ「さすがね…けど」

ルビィ「うゆっ!?」

ランジュはギリギリのスペースを残して軽く右へ避けた。
避けただけではない、彼女も中国拳法の「寸勁」でルビィの鳩尾にカウンターを合わせた。


メゴォッッッ!!!!


ルビィ「かっ……!!??」

花丸「ルビィちゃん!!!」

ランジュ「はぁっ!!!」

ランジュはルビィにめり込ませた拳をさらに前へと押し出した。
ルビィの体はサッカーボールのように対岸まで吹っ飛ばされた。

ルビィ「ピギャァッ!!!」

善子「なっ!?」

102: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:10:19 ID:???Sd
ガァァァァァァァンンンンン!!!!

対岸の階段に激突したルビィ。
階段は砲丸でも撃ち込まれたように破壊されていた。

ルビィ「あ…あ……」

ヨロヨロと立ち上がるルビィ。
一歩目を踏み出そうとした所で前のめりに倒れてしまった。

善子「し、勝者ランジュ!!!」

ランジュ「やったわ!」

花丸「ルビィちゃん!!」

花丸は対岸まで吹っ飛ばされた親友の元へ駆け出した。

梨子「凄いわね。けど…『紙一重』の戦いだったのかしら?」

愛「え?」

梨子の言葉に愛はどういう事かとランジュを見た。
よく見るとランジュの首筋に15cmほどの深い切り傷が刻まれていた。
傷からは血がドクドク流れていた。

ランジュは傷をハンカチで抑えながら笑う。

ランジュ「ルビィがパンチをもう少し左に撃っていたらこの傷が致命傷になっていたかも。ルビィを超えると言われているダイヤ…ますます喰らうのが楽しみよ」

103: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:10:32 ID:???Sd
~2日後~

ダイヤ「……」

この日朝8時に千本松原でランジュと決闘することになっていたダイヤ。
自室で正座しながら精神統一をしていた。
絶対負けられない戦いの前のルーティーンだ。

ダイヤ「では行きますか」

「どこに?」

ダイヤ「っっ!?」

全く気配もなく背後を取られるダイヤ。
次の瞬間


~千本松原~

ランジュ「ダイヤおそーい!」プンプン

ルビィ「おかしいなぁ。お姉ちゃんは待ち合わせには遅れた事ないんですけど」

梨子「連絡はつかないの?」

ルビィ「うん……」

千本松原にはランジュ、ルビィ、梨子、しずくが集合していた。
待ち合わせ時間に来ないダイヤにランジュは珍しく不機嫌であった。

104: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:10:44 ID:???Sd
しずく「他の刺客にやられたんじゃないですか?」

ランジュ「しずくとエマは敗北した。なら愛が?考えにくいと思うけど。あの子今はオーガにしか御執心じゃないし」

梨子「ダイヤさんが簡単に負けると思わないけどねぇ」

ルビィ「うゆ!」

ランジュ「でも現にダイヤはここに来ていない。何かあったのは確かよ」

梨子「もうこの4人でイチャイチャする?」

ルビィ「こんな時にふざけないで!!」

梨子「ごめんなさい」

105: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:11:42 ID:???Sd
ルビィ「私やっぱり心配だよ!家見てくる!」タッ

しずく「私も行きましょうかね。ここ数日世話になってるので」

ランジュ「私も行くわ」

梨子「やれやれね」

~黒澤家~


梨子「これは……」


黒澤家の玄関に着いた4人。
いつもと違う様子にルビィだけでなく敵であるしずくやランジュまで息を呑んでいた。

それもそのはず、木製の門は正面から殴り壊されたのかバキバキに破壊されていた。
庭の置物や壁の破片までもが嵐が通った後のように散乱していた。

特筆すべきは「血痕」だ。

家の入り口から玄関まで明らかに人を引きずった後のような血の跡がベッタリと付いていたのだ。

まるで殺人事件の現場だった。

106: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:12:14 ID:???Sd
人を引きずった血痕は2階まで続いていた。
後を追っていくとダイヤの部屋の前でピタリと止まっていた。

ルビィ「ーお姉ちゃん!!!!」

姉の部屋を勢いよく開けるルビィ。


ダイヤ「」ポタポタ…


ルビィ「そ、そんな……」

ランジュ「ダイヤ……」

中に姉はいた。
だがいつも冷静で優しいダイヤはそこにはいなかった。
酷い暴行を受けたのか全身が打撲まみれで血の海に沈んでいたからだ。
生きているのか死んでいるのかも分からず目を半分開けて横たわっていた。
誰かに負けたのだ。

4人の中で梨子がいち早くダイヤに近づき触診する。

梨子「まずいわね。しずくちゃん、救急車呼んでくれる?」

しずく「は、はい!!」

梨子「私は応急処置を取る。ルビィちゃん、ダイヤさんはまだ生きているわ」

ルビィ「ほ、本当?」

梨子「だから私が言う医薬品の場所を落ち着いて教えて」

ルビィ「分かった……!」

しずくが呼んだ救急車はすぐに到着した。

ピーポーピーポー

ルビィ「お姉ちゃん!死なないで!!」

同伴としてルビィが車内に乗り込み他3人は見送ることとなった。

107: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:13:06 ID:???Sd
しずく「ダイヤさんは助かりますか?」

梨子「大丈夫よ、生半な鍛え方ではないからね」

ランジュ「………」

しずく「ランジュ先輩?」

先ほどから口を開かぬランジュを不審に思い声をかけるしずく。

ランジュ「……ルビィには見せなかったけどこんな紙がダイヤのそばに置いてあったのよ」

しずく「なんですかその紙」

ランジュが血に濡れた紙を広げる。
そこには可愛らしい字で、しかし血でこう書いてあった。


『ほむら』


梨子「……?なにこれ」

しずく「人名……いや、何かの暗号?ランジュ先輩分かりますか?」

ランジュ「……」

しずく「ランジュ先輩?」

ランジュ「ママに聞いたことあるの。ほむら…非人道的格闘家のグループ。彼女らは強い人間のいる地域に出没しては強い人間をランキング化して徹底的に痛ぶると。そして屍の横に自らのグループの名前を手書きで残していくの」

梨子「グループなのね」

ランジュ「沖縄と北海道、島根県はほむらに制圧されたらしいわ」

しずく「ダイヤさんを倒せるほどの人間が何人もいると?」

ランジュ「いえ、超精鋭のファイターで構成されていて全部で4人いるらしいわ。名前までは分からないけど……」

しずく「迷惑なことをするものですね」

ランジュ「一応私たちも人のこと言えないわよ?」

108: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:13:23 ID:???Sd
ランジュ「とにかく、私はダイヤを横取りされてムカついてるの!しかもあんなに彼女の尊厳を捻り潰すような真似して!独自でやったやつを見つけ出してぶん殴ってやるわ!」

しずく「私も内心お世話になったダイヤさんをあんな目に遭わされて穏やかではありません。敵討…と言えばダイヤさんは嫌がるかもしれませんがランジュさんと同じく参戦します」

梨子「そ、まぁ好きにしたら?」

ランジュ「梨子は仲間をあんな目に遭わされて怒ってないの!?」

梨子「もちろんダイヤさんは大事な仲間よ。けどここは沼津なの。『弱い奴が悪い』が信条とされる場所に長くいすぎたせいで感覚がおかしくなってるのかも」

しずく「……」ゾク

梨子「けど個人的にダイヤさんを倒した子がどんな顔をしているか興味があるわ。見つけたら洗体マットプレイで腰砕にしてあげる」

ランジュ「不穏なワードだけどそれは敵討ってやつよ!よっしゃーー!!3人で誰が一番早く倒せるか勝負よ!」

しずく「負けません!!」

梨子「(ま、とはいえ一旦鞠莉ちゃんに報告しなきゃね……)」

109: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:13:40 ID:???Sd
~鞠莉の部屋~

鞠莉「だ、ダイヤが入院……!?」

梨子「えぇ、けど今連絡があって命に別状は無いそうよ」

鞠莉の部屋に果南、曜、ルビィ以外のAqoursメンバーが揃っていた。

善子「ちっ…どんどん治安が悪くなるわね沼津は。ほむらだっけ?沼津を舐めた罰をしっかり味合わせてあげましょう」

花丸「もう怖くて外も歩けないずら……」

鞠莉「ダイヤを倒せるほどのファイターが4人もいるなんて…考えたくもないわね」

千歌「それに加えて虹ヶ咲も相手にしなきゃいけないなんて」

梨子「千歌ちゃん、その心配はないわ」

千歌「へ?」

梨子「虹ヶ咲がほむらを探してくれてるの」

善子「はぁ!?何でよ」

梨子「ダイヤさんを倒されたことで内心ランジュちゃんとしずくちゃんも怒ってるのよ」

善子「なに、今更善人ぶるつもり?」

鞠莉「……けど正直かなりありがたいわね。虹ヶ咲は一旦泳がせておきましょう」

110: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:14:21 ID:???Sd
梨子「とにかく報告はしたから私も個人的に動くことにするわ」

鞠莉「何かあったらすぐに連絡して。こっちも小原家の諜報部隊に探らせるから」

千歌「き、気をつけてね!」

梨子「b」

~聖隷沼津病院~

ルビィ「お姉ちゃん……」

ダイヤ「」

ダイヤが搬送されてから一日が経った。
この日ルビィは姉の見舞いに来ていた。
まだ起きることはない姉。
全身包帯でぐるぐる巻きにされており非常に痛ましい姿である。

「包帯を変えにきました」

ルビィ「あ、はい!」

ナースがノックをして部屋に入ってきた。
非常に若い、オレンジ色の短髪のナースだ。
ルビィは邪魔にならないように脇に退いた。


「ん~死んだと思ったのにまだ生きていたんですね~」


ルビィ「は?」

ナースにあるまじき発言。
聞き間違いかと思いルビィは目を丸くする。
するとナースは懐から果物ナイフを取り出した。

ルビィ「な、なにやってんの!?」

ルビィは混乱と怒りでナースに走り出した。

「そうくると思ったよ」

111: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 09:16:10 ID:???Sd
躊躇いなくナースは刃をルビィに向け直しナイフを振るう。
ルビィは体を半身にし左拳で採算度外視のパンチをナイフに叩きつけた。
ナイフは粉々に砕けナースの体も壁まで吹っ飛ばされた。

「ぐっ…!!」

ルビィ「もう一度聞くよ。何やってるの?」

ルビィは左手に深い傷を負い血がぼたぼた床に落ちていた。
だが痛みなど感じさせないような鬼の形相でナースを睨んでいる。

「案外鈍いにゃあ。ルビィちゃん」

ルビィ「…どうしてルビィの名前を」

凛「私はほむら構成員星空凛。ダイヤさんをそんな目に合わせた張本人……で伝わるかな?」


ザワァッッッ!!!!!


室内の空気がピリつく。
ルビィは髪を逆立たせながら口を開く。


ルビィ「殺すビィ」

112: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:02:03 ID:???Sd
ゴゴコゴゴゴ

殺気が室内を覆う中、星空凛が口を開いた。

凛「にしてもものすごいパンチだね。凛もかなりフィジカルあるけど吹っ飛ばされたのは久しぶりにゃあ」

ルビィは返事を待たない。
袋小路になった凛に走りだす。

ダンッッッ!!!!

床を踏み抜く音と共に一瞬で凛が消えた。

ルビィ「なっ!?どこ!!」

狭い室内を見渡してもどこにも凛はいない。
どんなトリックかとベッドの下まで調べるルビィ。

凛「おーい!こっちこっち!」

声がする方へ行くと凛が院外の駐車場でこちらに手を振っていた。

ルビィは1階へすぐさま飛び降りる。

ルビィ「どうやったの?」

凛「走っただけ」

ルビィ「ふざけ、」

凛「ふざけて無いよ」

再び走り出しすルビィ。
だがいつのまにか凛がルビィの隣でしゃがんでいた。

ルビィ「嘘……!?」

凛「嘘みたいな速さだよね。けどこれが私星空凛。ほむらのメンバーで一番速いのも私だよ」

113: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:02:26 ID:???Sd
ルビィは大きく足を上げて凛を踏み潰そうとする。
バキッッッと硬いコンクリートが半径2m程ひび割れる。
凛には当たらなかった。

凛「はっはーーー!!!!!!」

楽しさを抑えられない様子で再びルビィの目の前に現れた凛は彼女の顎をアッパーで打ち抜いた。
浮遊するルビィ。

凛「大砲持ってても当たらなきゃ意味ないよ!!!」

ルビィ「うるさい!!!」

114: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:02:55 ID:???Sd
地面に倒れたルビィ。
見て拳を振うのでは遅すぎる。
ルビィは地面のコンクリートに目掛けて何度もパンチを繰り出し始めた。

ガンガンガン!!

剛腕から放たれるパンチはコンクリートの破片を360°に渡って散弾銃のように飛散させた。

凛「目眩しのつもりかにゃ?」

そのままルビィは踊る様に虚空に拳を振るう。
拳圧が暴風を巻き起こし、ルビィの動きに合わせてコンクリートの破片が凛に襲いかかる。

凛「すごいね!!」

ルビィ「ズタズタに引き裂かれて!!」

コンクリートの範囲は中々に広く、避けようとする凛の素肌に数発着弾する。
しかしジャブにもならない一撃だ。

凛「こんな技で凛が倒せると思ってるの!?」

叫ぶ凛だが先ほどいた場所にルビィがいない。

凛「!?」

飛び交うコンクリートの破片に紛れて凛の真横まで近づいていたからだ。

ルビィ「あの世へ行くビィ」

凛「っっ!!!」

ルビィのパンチが凛に襲いかかる。

115: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:03:28 ID:???Sd
凛「ちっ!!」

ここにきて初めて焦る凛。
ルビィのパンチを咄嗟に右肩でガードする。

メリメリ………!!

凛「がはっ!!!」

衝撃を殺しきれず凛の体が吹っ飛ばされた。

ルビィ「(手応えあり!!)」

凛「やるねぇルビィちゃん。(肩の骨にヒビが入ったか……)」

ルビィは再び地面をパンチし先ほどの技を披露しようとするが拳を振り上げたタイミングで凛に腕を掴まれてしまった。

ルビィ「ピギッ!!」

凛「させないよ。さすがにそのパンチを何回も喰らうわけにはかないからね!!!」

そのまま凛はルビィの腹にボディブローを放つ。

ルビィ「がっ!!!」

目を見開き胃液を吐くルビィ。
凛の猛攻は止まらない。
アッパーでルビィの顎を打ち上げる凛。
空中で身動きができないルビィの腹を助走をつけて右ストレートを放った。

凛「にゃははは!!!!」

ルビィ「ピギャオエァアアアアアアア!!!!!!!!」

ルビィがさまざまな方向に回転しながら病院を囲う壁にめり込んだ。
地面に倒れ、フラフラと起き上がるルビィ。
口からは胃液と血を滝のように流している。

116: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:03:47 ID:???Sd
ルビィ「はぁ……はぁ………!!」

凛「お疲れにゃあ!!!」

ルビィ「ピギャア!?」

凛の追撃が飛んできた。
右アッパーを腹に喰らい今度こそ倒れる。
ルビィは地面にうずくまり荒い呼吸を繰り返している。

凛「ルビィちゃんは鍛えてないんだね。型も何も素人。生まれ持ったパワーだけで勝ち抜けるほどファイターは甘くないよ」

ルビィ「な、で………」

凛「うん?」

ルビィ「どうしてお姉ちゃんをあんな風にしたの」

凛「強い者と戦いたくなるのは必然にゃあ」

ルビィ「あんなになるまでやらなくてもいいじゃん!!」

凛「敗者には何してもいいのが勝者の特権にゃあ」

ルビィ「っ!!………殺す!!!」

凛「残念でしたっ!!!!」

怒りのあまり無策で飛び出すルビィに楽々カウンターを合わせる凛。
ルビィは肋が折れ肺に刺さり危険な状態となった。

117: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:04:04 ID:???Sd
ルビィ「ひゅう……ひゅう…………」

凛「苦しそうだね。……うーん、どうしようか」

ルビィ「お、ね………ちゃ…………」

凛「決めた!楽にしてあげよう」

凛は手刀を作るとルビィに振りかぶる。

凛「ばいにゃ」

振り下ろそうとしてところで凛の手が後ろから誰かに掴まれた。

凛「にゃっ!?」


愛「何してんの?」

118: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:04:23 ID:???Sd
凛「えーと…誰?」

愛「虹ヶ咲学園2年宮下愛」

凛「あなたが愛ちゃんか!。真姫ちゃんが言ってたんだ。宮下愛は小さな子が好きだから気をつけろって」

愛「は?」

凛「小さい子に興奮するんだよね?なら凛を殴ることもできn」

愛「オラァッ!!!!!!!」

愛の腰を入れた左アッパーが凛の顎に突き刺さる。

凛「ぶにゃっ!!」

そのまま胸ぐらを掴んでルビィから距離を取るため数メートルぶん投げた。


愛「ふぅ…やるか」

119: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:05:01 ID:???Sd
凛「いたたた……」

愛「……」ザッザッ

凛「本音を言われてむかついちゃったの?いいパンチだったよ」

愛「ほむらが沼津を狙ってるという情報はランジュから聞いた。今までのほむらの性格からダイヤが生きて病院に運ばれたと聞いてトドメを刺しにくると思ったよ」

凛「……?それでなんで貴方がダイヤを助けにくるの。関係ないよね」

愛「………」

凛「あ、ルビィちゃんがお見舞いに来るからか!やっぱりロリコンなの!?」

愛「その口、永遠に開かないようにしてあげる」

凛「凛に勝てると思ってるのかにゃ?」

愛「その言葉そのまま返してあげる!」

愛は左ジャブから後ろ回し蹴りを放つも、凛は余裕綽々といった様子でバク転して距離をとった。

愛「(っ!?速っ!!)」

凛は着地の瞬間まるで動画の早送りのようなスピードで愛まで距離を詰める。

凛「にゃはっ!!」

120: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:05:18 ID:???Sd
愛「あいあいあいあいあいあいあい!!!!!」

愛は梨子や曜との戦闘の際発したコンクリートすら粉々に砕く連続パンチで凛に応戦した。

凛「いいパンチだにゃ。けどパンチなら凛の方が上かな?」

愛「!?」

凛「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!!!!!!!!」

何と凛もパンチのラッシュで応戦してきた。
愛を超えるパンチの速度で。

愛「ぶっ!!がっ!!!」

愛は正面からの殴り合いで一瞬のうちに12発被弾した。
対して凛は………。

凛「やるねぇ愛ちゃん!他人の手で流血させられたのは久しぶりだよ!」

凛も無傷ではなかった。
鼻血を垂れ流して手で拭っていたが彼女の被弾は「1発」だけ。

愛「(愛さんの必殺技だったんだけどな。……この子速すぎる)」

121: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:05:41 ID:???Sd
凛「では2回目スタート!!」

愛「っ!!」

凛が再び距離を詰めラッシュを放ってくる。

愛「くっ!!」

愛は凛の拳を両腕でガードする。
拳が着弾するたびに腕に嫌な音が響く。

愛「(重ッッッ!!!)」

凛「ふっ、にゃはっ!!!」

止めとばかりに右ストレートを愛の腹に打つ凛。
愛が駐車場のフェンスを突き破り道路に投げ出された。

122: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:06:07 ID:???Sd
愛「ぐっ……」

ヨロヨロと立ち上がる愛。
凛が先ほどまでいた場所を見るとそこには彼女はいなかった。

凛「遅い」

愛「っ!!」

気づけば凛が愛の真横でしゃがんで不満を口にしていた。
バックステップで距離を取る愛。

凛「誰も凛には追いつけない」

凛「車も海未ちゃんも松浦果南も」

再び凛が愛に迫る。
右アッパーをかろうじて両腕で防ぐ。

凛「毎日あくびが出るにゃあ!退屈すぎてさ!!愛ちゃん、凛をもっと楽しませてよぉ!!」

一瞬で愛の背後に回り込み、彼女の腰を両腕で掴む。
そしてそのまま硬いコンクリートにバックドロップを決める。

バキィ!!!!と生身が出してはいけない音が響く。

123: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:06:56 ID:???Sd
愛「が、は…………」

凛「終わり……?」

愛「隙見せてんじゃないよ……!」

凛「!?」

愛は寝た状態から凛の片足を掬い、右足で彼女の太ももを蹴る。
柔術でいう草刈りスイープという技だ。
凛はバランスを崩して地面に倒れた。

凛「にゃあ!!」

愛は凛の足力を落とすため彼女の左足首を脇に抱えた。
そして片足を凛の足に絡めて、もう片方の足で腰を蹴る。
そのまま体を捻る。
足関節技だ。

凛「にゃおら!!」

凛のベースはボクシングだ。
寝技の知識はほぼ無い。
先ほどのバックドロップも見様見真似で行っただけだ。
逃げ方を知らぬ凛は、腕力を頼りに愛の太ももを何度も殴りつけた。

愛「うっ……!!くっ………!!」

凛の足首を捻りながらも自らの太ももにヒビが入った感触を悟った。
それでも凛の足力は危険だ。
自分の足を犠牲にしてでも凛の足を折る気でいた。

124: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:07:19 ID:???Sd
愛が体を半身に捩る。

凛「う……く………」

このタイミングで凛にもダメージが入り始めたのか苦痛に顔を歪ませていた。
愛はそのまま足首をへし折る。

ベキッッッ!!

凛「ぐあああああ!!!!」

凛の叫び声。
しかし愛は攻撃の手を緩めない。
凛の足を抱えたまま何度も体に踵落としを振り翳した。

凛「なめるな!!」

足を折られたというのに闘志は微塵も衰えていない凛。
愛の攻撃に対し右手で踵に対しカウンターを合わせた。
今度は愛の足にヒビが入る。

愛「ッ!!!」

咄嗟にバク転し凛から距離を取る愛。

凛「やってくれたね!」

愛「私の方がダメージが多いんだから。まだ借りを返せていないよ」

125: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:07:39 ID:???Sd
凛「(あーいったいなぁ。よりにもよって右足首を折ってくれて…)」

凛「ドンっっっ!!!!」

凛は高速で愛に接近する。
足が折られたとはいえ時速200キロは出ている。
しかし愛なら見切れないスピードではない。


愛「ふぅ……あいあいあいあいあいあいあいあいあいあいあい!!!!!!」

凛「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!!!!!」


再びラッシュの掛け合い。
今度は互いに同じ数だけ被弾した。

凛「にゃぶぅああ!!!!」グラッ

体重が重い分愛の打撃の方が効いたのか体勢を崩す凛。

126: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:07:58 ID:???Sd
その隙に凛の右肩にハイキックを食らわす愛。

ベキィ!!

凛「痛っ!!!!!」

愛は凛の肩を折った感触を確かに感じた。

凛「(ルビィちゃんにやられたところ……!!)」

愛「……?随分柔らかい骨だね」

凛「黙ってて」

愛「余裕なくなってきたじゃん!いい調子だねぇ!!!」

127: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:08:11 ID:???Sd
グゥオン!!
残像が見えるほどの速さで愛に突っ込む凛。

愛「(足を折ってもこの速度か!)」

凛「………っ!!」

凛は今度は左ストレートで愛を打つ。
モロにダメージを負う愛。
しかし殴られたと同時に両腕で凛のナース服を掴んで離さない。

凛「おおおおおおおお!!!!!!!」

ダダダダダダダ!!!!

愛の投げ技を予感した凛は技をかけられる前に左手で愛の服を掴んで走り出した。
勢いのまま飲食店の壁を破壊して愛を店内に投げ飛ばす。

愛「ぐああ!!!」

「きゃああああああ!!!!!」

店内にいきなり女子校生が壁を突き破って入ってきたことで悲鳴が上がる。
後から修羅の顔をしたナースが入店したことで店員と客はこの2人の因縁が分からず呆然としていた。

128: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:08:28 ID:???Sd
凛「楽しいねぇ愛ちゃん」

愛「はっ……そうだね」

愛は重心を低く構えた。
もう凛は打撃主体のファイターであることを確信したからだ。
寝技で骨を折りトドメをさすことにした。

凛「ヨーイドン」

ダダダダダダダ

凛が狭い店内を縦横無尽に走り回る。
壁を蹴り遠心力を利用した裏拳が愛に飛んでくる。
両腕でガードする愛。
掴もうとするも凛のパワーの方が上で愛の体勢が崩れる。

凛「にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!!!!!!」

隙あればラッシュを叩き込んでくる凛。
避けようとするも6発顔面に叩き込まれた。

愛「ぶあっ!!」グラァ

凛「トドメにゃあ!!!」

愛「ふっ!!」

愛は机に置いてあったナイフを掴んで凛に振った。
運良く凛の首が切り裂かれる。

ブシャャアアアアアア!!

凛「ぐっ!!!」

129: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:09:07 ID:???Sd
思った以上の出血に後退する凛。
今度は愛の番だ。
体も限界に近いが死ぬ気でタックルを繰り出した。

愛「らぁああああああ!!!!!」

凛「ちっ………!!!」

愛に押し倒される凛。
凛はバネを生かしめちゃくちゃに拳を振り回して暴れる。

凛の拳が愛の顎にクリーンヒットした。

愛「がぁ!!(ここでマウントをキープできなきゃキツイ!!)」

愛はマウント状態から腕十字を狙っていたが凛の猛攻が激しいため作戦を変えた。

愛「(先ほど切り裂いた凛の首の切り傷。そこに手刀を捻り込みトドメをさす!!!)」

手刀を作り凛の首へ放つ愛。
しかし喉に刺さる前に凛は両手で腕を握り防いだ。

凛「させるか……!!」

130: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:09:37 ID:???Sd
愛「いいね、けど私の左腕が空いてるんだなぁ!!」

左手で凛の顔面をパウンドする愛。
凛は嫌がって握った愛の右腕でガードしようとする。
全てがガードできるはずもなく凛の顔面に傷が増えていく。

凛「う…ぐぅっ………!!!」

ボゴォ!!

ボゴォ!!

愛「(このまま失神するまで殴り続ける!!!)」


凛「ニャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!」


愛「っ!?」

ビリビリビリ!と店内に凛の雄叫びが上がる。
断末魔か?そう思った愛だが違った。
気づいた時には愛の体は空中に浮いていたからだ。

愛「は?」

マウントとってたはずでしょ?と疑問に思う愛。
チラリと下を見ると凛が仰向けで腰を突き上げているのが見えた。

愛「(ブリッジだけで愛さんを吹っ飛ばしたの!?)」

素早く立ち上がる凛。
愛は着地まで0.1秒。
下に凛がいて受け身は取れない……なら。

愛「あいあいあいあいあいあいあいあいあいあいあい!!!!!!」

空中で凛に拳を振るう愛。
凛は下からただ1発、裏拳を放っただけだった。

メコォ!!と地面に落ちる寸前で愛の腹に凛の拳が刺さる。

愛「がっ…………!!!!!」

入り口のガラスを突き破って外に放り出された愛。
フラフラになりながらも立ちあがろうとするが足にもう力が入らなかった。

131: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:09:58 ID:???Sd
愛「や、ば………」

凛「これがほむらだよ」

気づけば凛が目の前にいた。
愛は呆けた様子で凛を眺めていた。

愛「………」

凛「この底力がほむら。貴方では私に勝てない」

愛「はは………」

凛「何を笑ってるの?」

愛「凛…後ろ」

凛「は?」

愛に言われ怪訝そうに振り向く凛。
そこには………。


ルビィ「………」

凛「なっ……!?」


自らが倒したはずのルビィが患者の服を着て死んだような顔で立っていた。
あれから院内で処置をして貰ったのだろう。
押せば倒れそうなほどか弱そうな様子だ。
だが凛の心を動揺させるには十分であった。

132: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:10:54 ID:???Sd
ルビィ「ビ……」

凛「え?」

ルビィ「あの世へ行くビィ」

凛「っ!!」

凛は避けようとするが愛が両足にしがみついて身動きが取れなかった。

凛「なっ!?」

愛「やったれルビィ」


ゴアァッッ!!!!!!!

ルビィの必殺の一撃が凛の顔面に突き刺さる。
モロにあたった拳は凛の軽い体重を吹っ飛ばし、向かいのマンションまで殴り飛ばした。

ゴガシャァァアァァアァァァァァアァァァン!!!!

愛「やった……!」

愛は吹き飛ばされた凛の方を見る。
マンションは一部が爆破でも起きたかのように破壊されて砂埃が舞っていた。
徐々に砂埃が晴れていく。
そこにいたのは………。


凛「………」


愛「嘘……でしょう……?」

凛が立っていた。
ゾンビのように身を屈めていたがまだ立っていた。

一歩、二歩こちらに近づいてくる。

愛「やばい、愛さんもう立てないんだけど」

ルビィ「はっ…はっ……はっ……」

愛「(ルビィも呼吸が荒い。当たり前だけど安静にしてなきゃダメなんだ。どうすれば……)」

だが愛の不安は杞憂に終わった。
凛が三歩目を踏み出そうとしたと同時に前のめりに倒れたからだ。

ドサッ…………。

凛「」


愛「勝ったんだ。愛さん達………。」

133: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:11:13 ID:???Sd
~聖隷沼津病院~

ランジュ「愛!大丈夫なの!?」

愛「大丈夫とは言い難いね」

凛との戦闘の後、愛とルビィは入院を余儀なくされた。
ルビィとは同室で彼女は隣のベットで寝ていた。

ランジュ「けど勝ったんでしょう?」

愛「いや、愛さんだけなら負けていたよ。ルビィが与えた傷とトドメのパンチがなければ今頃遺体安置所で寝ていたと思う」

ランジュ「ゾッとするわね…」

善子「ルビィィィィィィィィ!!!!大丈夫なの!?」ダダダダ

ランジュ「あら善子、あなたもお見舞い?」

善子「げっ、何であんた達も……」

鞠莉「やめなさい善子。宮下愛はルビィの命の恩人よ」

善子「へ?」

花丸「お邪魔するずらぁ。聞いてないの善子ちゃん。星空凛に殺されそうになった所を愛さんは助けてくれたんずらよ」

善子「ぬぁんでよ!?」

愛「別に、助けたつもりはないよ」

ランジュ「あら!ツンデレってやつ?可愛い~」

愛「ランジュ!」

「騒がしいね」

134: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:18:32 ID:???Sd
ヌッ、と室内に入る1人の少女。
声からして並々ならぬ戦闘力を感じさせる少女だ。

グニャアア~~~~~…………!!!

その少女が入ってきた瞬間室内の空間が歪んだ気がした。
実際にその少女が重力を操作しているわけではない。
だがあまりの存在感に森羅万象が跪かざるを得ないような、そんな怪物が入室してきたのだ。

果南「ルビィちゃんまだ寝てるんだ」

愛「お………」

果南「ん?」

愛「オーガァァァァァ!!!!!」

果南「は?」

いきなりベッドから飛び降り戦闘体制に入る愛。
凛と対峙した時よりアドレナリンが湧き出る。
沼津に来た目的が目の前に現れて正気ではいられなくなったのだ。

ランジュ「ちょっと落ち着きなさい愛!!」

ランジュが愛を後ろから抑える。
果南はポカンとした様子で愛を見ていた。

果南「私何か貴方にしたっけ……?」

愛「私は貴方を倒しにこの街へ来たんだよ!!私と勝負して!!」

果南「それはそれは………」ユラァ

笑顔で脱力する果南。
戦闘開始の合図だ。

善子「ちょっとちょっと!!ここでやる気!?」

パァン!!

室内に乾いた音が響く。
鞠莉が果南をビンタしたからだ。

果南「………」ヒリヒリ

愛「なっ……!?」

鞠莉「落ち着きなさい2人とも。ここは病院よ?周りの人の迷惑になるでしょう」

135: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:18:58 ID:???Sd
果南「それもそっか、愛ちゃん、私とやりたいならまず退院してからにしな」

果南はそれだけ伝えると踵を返して部屋を出ていった。

愛「あっ……」

ランジュ「愛、そんな状態でオーガに勝てると思ってるの?ちょっとは頭を冷やしなさい」

珍しいランジュからの叱責に愛は落ち込みベッドに戻った。

愛「ごめん、愛さん少し熱くなっていたよ」

ランジュ「分かればいいラ」

善子「全く……どいつもこいつも果南果南。沼津には津島善子もいるのよ?」

鞠莉「……しずくに負けてるじゃない」

善子「あ、あれは変装を見抜けなくて……!殴り合いなら勝てるって!」

ランジュ「しずくの変装はCIAすら完全に騙せるからね。負けたことは恥じなくてもいいわよ!」

善子「なんの慰めにもなってない!」

愛「しずくは今何してるの?」

鞠莉「ダイヤを襲った星空凛は小原家の施設に拘束してるけど、それ以外のほむらメンバーも倒すって言ってくれたから現段階で分かっている情報を伝えてるわ」

136: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:19:20 ID:???Sd
善子「どんな情報よ?」

鞠莉「諜報部からほむら構成員の巫女の居場所が届いたからそれを」

善子「巫女……?」

鞠莉「東條希…というらしいわ。けどこの情報……受け取った後に諜報員が消息を絶ったのよ」

ランジュ「ラ!?それって口封じされたんじゃない?」

鞠莉「それもしずくには伝えているわ。了承した上で行ってくれるそうよ」

善子「仕方ないわね」

ランジュ「善子?」

善子「鞠莉、その場所を教えてくれる?」

137: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:19:44 ID:???Sd
~沼津駅付近~

しずく「(何をやっているのでしょう私は)」

元々沼津へはほむらのような目的で乗り込んできたはずだ。
ファイターを根こそぎ喰らい、ランジュにリベンジする。
だがルビィに負けてから黒澤家に軟禁されている間に自分でも知らぬうちに彼女らに対して情が湧いてしまっていた。
世話になったダイヤがあのような無惨な姿にされて耐え難い怒りを覚えてしまったのだ。

しずく「思った以上に私は人間だったのかもしれませんね」

言いながら鞠莉が送ってきた東條希の居場所を確認する。
目的地に近づくにつれ本当に居場所は合っているのかと不安になる。
何故なら………。

しずく「ここイーラじゃないですか」

イーラは2004年に完成した沼津駅前にある複合施設である。
施設内にはカルチャースクール、飲食店、雑貨屋などがあり、沼津市の経済活性化にも一役買っている。
地下には大きなしずてつストアというスーパーがありお土産もたくさん売っている。

買い物でもしているのかと思いつつ慎重にイーラ内に足を踏み込むしずく。
施設内は賑わっており人が溢れていた。

138: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:20:15 ID:???Sd
しかし1階、2階、3階……どこを見て回っても希はいない。
休憩がてら1階でマックシェイクを飲んでいると意外な人物に出くわした。

花丸「あれ、しずくちゃんずらか」

しずく「貴方は…花丸さん」

花丸「何しているずらかこんなところで」

しずく「ほむらの東條希がここに潜伏しているそうで討伐しに来ました」

花丸「ずらぁ!本当ずらか!?」

しずく「鞠莉さんからの情報です。花丸さんは?」

花丸「オラはルビィちゃんのお見舞いに花を買いに来たずら!」

しずく「なるほど、お優しいですね」

花丸「ルビィちゃんとは長い付き合いだし。このくらい普通ずら」

しずく「では花を買ったら早く帰ることをお勧めします。東條希を見つけ次第戦闘に入るので」

花丸「分かったずら。気をつけてね」


ガガガガガガガガガガガ

花丸「……ん?」

139: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:20:53 ID:???Sd
ガガガガガガガガガガガ

しずく「な、なんです!?」

花丸「ずらぁ!?イーラのシャッターが閉まっていくずら!!」

閉店にはまだ程遠いというのに突然自動扉に設置してあるシャッターが閉じてしまった。
館内にいる客たちは当然閉じ込められる。


ザワザワ

「なんだ!?」

「シャッターの故障?管理人早く直せよ」


しずく「何が起こっているのですか」

困惑するしずく達。
直後館内放送が発信される。

『ご機嫌ようイーラのお客様諸君。ウチは東條希。ほむらの一員や!』

しずく「東條希!!」

希『と言っても知っている人はほとんどおらんやろうけどな。一部のウチを知っている子に告ぐ!今すぐ14階の部屋までき来ぃや!!』

しずく「………」

花丸「これってしずくちゃんが呼ばれているずらか!?」

しずく「で、しょうね。けどこれはチャンスです。ほむらのメンバーを1人確実に葬れる」

花丸「ずら……」

しずく「東條希……どれほどの実力か品定めといきましょうか」

140: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:21:36 ID:???Sd
しずくは花丸と別れた後、エレベーターを使い14階までいこうとしたが13階でアクシデントが起きた。
途中でエレベーターが止まったのだ。

いくら待てどもエレベーターが動く気配はない。

しずく「仕方ありませんね」

しずくはエレベーターのドアの隙間に手をねじ込み力ずくで開いた。
スクールアイドルであるしずくならではの力技だ。

ブチィ!!

外壁に飛びうつった瞬間、エレベーターを支えるロープが千切れた。

しずく「なっ!?」

そのままガゴン!!と鉄の塊は重力に負け1階まで降り注ぐ。
数秒後、ゴォォォン!!!と轟音が響き下の方でエレベーターがひしゃげていた。

しずく「たちの悪い仕掛けですね……」

しずくはそのまま14階に入館した。
イーラの上はマークスザ・タワー沼津という名のマンションになっている。
そのため階数ごとに部屋が割り振られていたはずだが……。

しずく「なんですかこの部屋……」

14階にたどり着いたしずくが見たのはマンションと言い難い部屋であった。
なんと1フロアを丸ごと1部屋として使っている。
床一面大理石で至る所に煌びやかな装飾品が置かれていた。
部屋の隅には噴水まで設置されている始末だ。
趣味の悪い部屋だ……としずくは思う。

141: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:22:13 ID:???Sd
最奥に「2人」の少女がいた。
1人は高価そうなソファに腰掛けてタロットカードを見ている。
もう1人は黒髪ロングの少女でしずくに気を止める事もなく窓の外を見ていた。
しずくに気づくとソファに座っていた少女が声をかけてきた。

希「ご機嫌よう」

しずく「あなたが東條希ですか?なんですかこのふざけた部屋は」

希「沼津に攻める随分と前から改装してたんや。いい部屋やろ?」

しずく「全くそうは思いませんね。…ーそれでもう1人の貴方は?」

しずくは最大限警戒しながらその少女を見る。
東條希も相当な戦闘力を秘めていることは遠目でも分かった。
しかし窓際にいる少女はそれを遥かに超える実力を感じさせた。
自分でも知らぬうちに手に汗を握っていた。

海未「園田海未です」

海未と名乗った少女はここでようやくしずくに向き直る。

しずく「っ!!」バッ

咄嗟にファイティングポーズをとるしずく。
その姿が滑稽に映ったのか希が笑う。

希「あはははは!!しずくちゃんビビりすぎやん。大丈夫や、海未ちゃんは凛ちゃんの件を報告しに来てくれただけ」

しずく「………」バクバク

心臓が鼓動を早める。
敵を相手にしているというのに「どうかそうであって欲しい」と内心懇願してしまっていた。

142: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:22:48 ID:???Sd
それを悟られぬようにあえて相手を「煽る」

しずく「残念ですが凛さんはルビィちゃんと愛さんに負けましたよ!」

海未「えぇ。未熟極まりない……彼女にはキツイ修行が必要なようです」

しずく「もう修行なんてできませんよ。ここで2人とも倒れるんですからねぇ!!」

海未「静かに」

しずく「っ!?」

海未「虚勢は本来の実力を縮めますよ。貴方の声色から今の状況に恐怖していることは伝わってきます」

しずく「う……」

図星であった。
ほむらメンバー希と一対一での戦闘ですら不利だというのに得体の知れない強さの海未まで加わったら敗北は必須だ。
それでもしずくは顔を下げない。

スッ………

希「へぇ、この状況でもやる気なんや」

143: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:23:15 ID:???Sd
しずく「ルビィちゃんをコピー」

希「ん?」

ダンッッッ!!!と床を踏み抜きながら希ではなく海未にダッシュするしずく。
脅威度の高い方から屠る事にしたのだ。

しかし。

バリィィィィン!!!!!

海未にたどり着かんとする距離で外張りのガラスが勢いよく割れ、新たな少女が室内に入ってきた。



善子「堕天使キック!!!!」

しずく「なっ……善子さん!?」

まさかの善子の乱入にブレーキをかけるしずく。
善子はほむらメンバーが2人いる事に一瞬驚いたがしずくと同じく海未に狙いを定めた。

善子「食らえ!!!」

144: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:23:42 ID:???Sd
海未は相変わらず無表情で善子を一瞥した後「堕天使キック」を半歩で交わす。
そして善子の服を掴んでしずくの方へ投げつけた。

善子「ぶわっ!!」

しずく「なんで善子さんが!?」

善子「沼津の脅威を敵であるあんた達ばかりに取られるのは面白くないからよ!!」

しずく「………ぷっ」

善子「……何笑ってんのよ」

しずく「足引っ張らないでくださいね!」

善子「こっちのセリフ!!!」

145: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:24:14 ID:???Sd
希「ふふ……2対2か。面白いやん」

海未「いいえ」

希「ん?」

海未「私は用事があるので帰ります。希、後は頼みました」

希「え~!!」

善子「何、逃げる気?」

海未「ですが……」

しずく「え?」


バゴォン!!!!


善子の体が「その場」でダンプカーに撥ねられたように高速回転する。
血をスプリンクラーのように撒き散らしながら。
かろうじて海未が高速で善子に近づき何かをしたという事だけ分かる。

呆然とするしずくの真横で海未が口を開く。

海未「この一撃のみ、置いていきましょう」

しずく「な、な………!!」


善子「げぼぉ!!がっ……あっ…………!!!」

善子はグネグネと体を捻り床に倒れていた。

146: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:24:49 ID:???Sd
しずくは海未に仕掛ける気も起こらなかった。
ただ恐怖で海未を見ているだけ。

ダンッッッ!!!!

床を踏み抜く足音が響く。
視線を逸らしていないというのに海未は視界から完全に消失した。
どの方向に動いたかすら分からなかった。

希「あー…しゃーないな。やりますか」

しずく「っ!!」

しずくは思う。
この状況は不味い。
度重なる「想定外」に精神的に劣勢になっている。

希は気怠そうにしずくに向かって歩いてくる。

何とかファイティングポーズを取るしずくの肩をポンと叩く少女がいた。


善子「…げぼ!!…なに、び、びってんのよ…!」

しずく「善子さん……」

目の焦点が合っていない。
おそらくまだ苦しみ踠いていたいくらいであろう。
だがそれ以上に自分を負かした女が狼狽している様を見ていたくなかったのだ。

147: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:25:16 ID:???Sd
善子「最初この街へ来た事を思い出しなさい。自信いっぱいで卑怯な手を使いまくってきた桜坂しずくを」

しずく「……」

善子「アンタはルビィに負けて黒澤家に拘束されていた。けど、そこで思いがけずたくさんの優しさに触れた。ダイヤがやられた時かなり怒っていたらしいじゃない」

善子「けどそのせいで牙まで抜かれてしまったの?」

しずく「!?」

善子「『エゴイストにのみ勝利の女神は微笑む』…沼津の格言よ。初めにこの街へ来た時のアナタを思い出しなさい!生意気で、自分勝手なエゴイストのファイターを!!」

しずく「……」

それだけ言うと善子はグッタリと横たわった。


希「何ごちゃごちゃ喋っとるんや?今すぐ2人とも小原家の諜報機関のように肉引き機にかけてあげる!!!」

148: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:25:41 ID:???Sd
希の歩くスピードが速くなる。
しずくは再び構えた。
しかし先ほどの怯えからくる防御ではない。
攻撃のために構えるのだ。

希との距離が1メートルになった時しずくが動いた。

しずく「希さん!プレゼントです」

希「!?」

しずくはポケットから球体を取り出して希に投げつけた。
手榴弾かと弾き距離を取る希。

だか弾いた球体に何も変化はない。

しずく「バーカ!!ただのスーパーボールですよ!」

しずくは希に近づくと置いてあった壺で彼女の顔面を殴り倒した。

しずく「あははは!!今のやりとり演劇に加えましょう!」

殴り飛ばされた希はゆっくり起き上がりながらしずくを睨んだ。

希「もう…楽には死ねへんな」

149: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:26:39 ID:???Sd
再び対峙する両雄。

しずくは希のファイトスタイルを寝技メインであると認識した。
重心が低く相手を掴むため手のひらをこちらに向けているからだ。

しずくは寝技メインの敵とやり合ったことがない。
それ故この戦いは慎重にならざるを得なかった。

しずく「希さん!プレゼントfor you!!」

再びしずくが球体を投げた。
希は反応しない。
すると球体が白く光り部屋中に閃光を放った。

希「ちっ!!(これは本物か!!)」

しずく「ルビィちゃんをコピー」

怯む希の腹にルビィの力をコピーし、渾身の力で殴る。

メリィ…!!

部屋に鈍い音が響く。

希「がっ!!??」

しずく「オラァァァァァァァァァ!!!!!!」

そのまま拳を振り抜くしずく。
希の体が部屋の隅のガラスに突っ込む。
部屋の外にまで投げ飛ばすことはできなかったが、かなりのダメージを与えられたのか腹を抑えて苦悶の表情を浮かべる希。

しずく「……っ!!」ズキッ

対してしずくも右腕に激痛が走る。
ルビィのパワーは身の丈に合わない力だ。
コピーを乱用すればしずく自身に多大なダメージを負ってしまう。

150: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:27:25 ID:???Sd
希「(パワーは一級品やな。これは小原家の諜報機関を拷問して聞いたコピー能力ってやつか)」

希は冷静であった。
痛みは引かないが戦えないほどではない。

希「……ええ打撃やん」

しずく「はぁっ!!」バッ

しずくは希の言葉を無視して4mも跳躍する。

しずく「14階から落としてあげます!堕天使キック!!!」

善子の必殺が希に襲いかかる。
天井の高さが5mなので跳躍は4mが限界であった。

ゴォッッッ!!!!と音速の壁を発して下降するしずく。

ガシッッッ

希は真正面から蹴りを受けた。
ズザザ!!と善子が割って入ってきた窓ガラスの寸前で止まる。

しずく「くっ……!」

しずくは振り解こうとするが希の握力は700キロを超えるのだ。
そう簡単に引き剥がせはしない。

ミシミシ……!!

希はしずくの右足を両腕で握ると力任せに「雑巾絞り」を行う。
小学生が使いそうな技。
しかし希が振るうと立派な殺人技になる。

しずく「あああああ!!!!!」

肉がブチブチと引きちぎられ血が滲み出てきた。

しずく「(このままじゃまずい!!)」

しずくは咄嗟に再度ルビィのパワーをコピーし希の腕をガンガンと殴りつけた。
少し怯む希。
その隙にしずくは左足を全力で踏ん張り後方へ下がった。

しずく「はぁ……はぁ………」

希に絞られた右足を見る。
肉が爛れて痙攣が始まっていた。

しずく「めちゃくちゃな戦い方ですね」

希「けど効いたやろ?一度相手を掴んだらどっかを潰すのがウチの信条でな。小原家の諜報部隊も散々悲鳴あげとったわ」

しずく「……」

151: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:28:00 ID:???Sd
希「疑ってる?さっきセブンで現像してきたんや。見てみ」

しずく「……?」

希はポケットから写真を一枚こちらに手裏剣のように投げてきた。
しずくは受け取り何が映っているのか確認する。

しずく「……!?」ゾク

写真にはおよそ人間の関節とは思えないほどグニャグニャに手足の曲がった諜報部員がいた。
生気を感じさせない目で虚空を眺めている写真だ。

希「ええやろ?」

しずく「悪趣味にも程がありますね……!あなた一応巫女でしょう?」

希「表向きはな。実際には『極楽教』という宗教を作っててそこから収入を得とる」

しずく「罰当たりにも程がありますよ!この部屋の趣味の悪い置き物は信者から巻き上げた金で購入しているんですね」

希「この街もウチの加護を与えなあかん。これからは市じゃなくてウチに納税してもらうんや!!」

希のご高説を無視してしずくはチラリと部屋を見渡す。
側に高そうな杖が飾ってあったのでそれを手に走り出した。

ブゥン!!と希の頭に目掛けて振るもしゃがんで躱された。
そして間合いに一瞬で入られ、両腕で抱きしめられる。

ミシッ……

しずく「がっ……!!(や…やばい……)」

152: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:28:35 ID:???Sd
希「なんや、しずくちゃん自身の力は非力なんか」

しずく「おっ!!ぐ……あぁ……!!」

ベアハグだ。
しずくは唾液を垂らしながら苦悶の顔で喘ぐ。

しずく「お、お、お………!!」グググ

しずくは自らの体の負担を度外視し、ルビィの力で希の腕を引き剥がそうとする。
先ほどよりは希の腕が押し戻された。
だが逃れられるほどの隙間はできなかった。

しずく「(そ、んな……!?)」

希「多分報告にあったルビィちゃんの力をさっきからコピーしてるんやろ?たいそうな力自慢らしいけどウチも中々の腕力があるんや。この体勢からなら引き剥がせへんで」

しずく「あぁぁあああああああああ!!!!!!」ギリギリ

口から泡を吹きながら絶叫するしずく。
苦痛のあまり体中が痙攣し始める。
希はそんなしずくをニヤニヤしながら眺めていた。

153: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:28:53 ID:???Sd
希「ウチの肉体で他人が苦しみも抱いている姿が好きなんよ」

しずく「ごっっ!!がっっ!?……あぁ………!!!」

体中の空気が全て抜けるのではないかという程抱きしめられるしずく。
肋骨も数本折れ、危険な状態だ。
鼻血がドバドバ流れており、命のカウントダウンが始まった。

希「あ~ええなぁ~~。ずぞぞぞぞ」

しずくが口から吹いている泡に、自らの口を近づけて音を立てながら吸い始める希。
まさに異常性壁である。

希「美味しい~♩このまま締め続けたらどうなるんやろな~」


善子「オラァ!!!」

希「っ!?善子ちゃん……!!」

海未の打撃からなんとか動けるまで回復した善子がナイフを振りかぶっていた。
希が信者達から搾り取った金で購入した骨董品のナイフだ。
咄嗟にしずくを離し腕で防ぐ希。
ナイフを弾くことは叶わず左腕前腕に深々と突き刺さった。

希「痛っ!!」

善子はしずくを担ぐと希から距離を取る。

善子「しずく!大丈夫!?」

しずく「あが……よし、こさん………」カタカタ

希のベアハグから逃れることのできたしずく。
しかしダメージはかなりのもので涙目で口から血を垂らしながら痙攣していた。
もう戦うどころではないと思ったのか善子はしずくを抱えたまま階段に急ぐ。

希「あれ……?どこ行くん」

善子「逃げんのよ!!戦略的撤退!!!」

希「……」

希「………」

希「逃すかぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

154: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:30:01 ID:???Sd
血走った目で善子を追う希。
善子は死に物狂いで階段を駆け降りる。
後ろから希の足音が恐るべきスピードで迫ってくる。

ただでさえしずくを抱えている善子は不利だというのに、海未からもらったダメージが抜け切っていない。

追いつかれるのは時間の問題だ。

しずく「よ、じこさん。……ー私を置いていって……くだざい」

善子「黙っていなさい!!」

今の階数は10階。
通常の入居者がいるエリアである。
善子は致し方ないと思ったのか10階フロアの一番近いドアノブを力づくで開ける。

「わぁ!?誰だお前!!」

当然中には入居者がいる。
善子は「お邪魔します!!」とふざけ倒した返答をすると窓ガラスを破壊して外へ出る。
ベランダを伝いながら猿のように階を降りていく善子。


善子「はぁ……はぁ…………よし」

しずく「……なにが、よしなんです……?」

善子「無理して喋んなくていいわよ。あんたはもう戦えないでしょ。けど私はギリギリだけど戦えるまで回復できたわ」

しずく「………でも」

善子「でもじゃない。沼津の膿は沼津市民が排除すべきなのよ。アンタを安全な場所まで運んだら私が東條希を単独で撃破するわ」

155: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:30:22 ID:???Sd
しずく「……!?よじござんっ!!上!!!!」

善子「へ?」

しずくに促されるまま上を向くと善子の視線の前にスカートの中がドアップで映った。
直後足裏が善子の顔面に突き刺さる。

善子「ぶはっ!!!!」

希「逃がさんどワレェ!!!!!」

希が10階から飛び降りて来たのだ。
善子はしずくの服をなんとか掴み地面に着地する際自分が下になりしずくを守った。


善子「がっっっ!!!!」

しずく「よ、しこさん!!!!」

希「泣かせるやん。ヒーロー気取りかいな」

善子「(やば、息ができない……!)」

通常の人間なら即死。
スクールアイドルで鍛えた善子といえども即動くことは叶わないでいた。

しずくが立ちあがろうとするも内臓に急激な負担がかかっており血を吐いて膝を着いてしまう。

156: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:31:25 ID:???Sd
絶対絶命。

周りには市民が3人の喧嘩を観戦するために集まってきていた。
そんな中イーラの非常事態に駆けつけたのか3人の警官が希を取り囲む。

「東條希だな!」

希「なんや」

「殺人及び器物破損罪で逮h」

警察は最後まで逮捕の口上を言えなかった。
希に喉を「握りつぶされた」からである。

「なっ!?」

「貴様!!」

同僚が突然殺され拳銃を引き抜く警官2人。
だが引き金に手をかけた時には2人とも脳を握りつぶされて即死した。

シュゥゥゥゥゥ……

希「!?」

突如周辺に白い煙が舞う。
しずくが残り一つのスモークグレネードを起爆させたのだ。
目眩しだが警官の殉職のおかげで時間を稼げた。

善子はといえばしずくを抱えたまま木負行き(淡島マリンパーク行き)のバスに乗り込んでいた。

希「どこ行ったぁぁぁ!!!こら善子ォォォォ!!!!」


善子「デカい声ね…けどこのまま逃げ切ればいったん体制を整えられるわ」

しずく「あの、…ありがとうございます…」

善子「何もお礼を言われることしてないわよ。アンタがいなかったら私も死んでた場面があるしお互い様よ!」

しずく「……///…あ、あの……」


しずくが何か言おうとした時、善子は目を疑う光景を見させられる。

157: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:31:46 ID:???Sd
希「出てこんならロータリーの人間を1人ずつへし折っていくよォォォォ!!!!」バキィ!!!


「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!」

善子「嘘でしょ!?」

バスの後部座席から善子が見たものは怒り狂った希が無関係の市民を片っ端から「折り曲げて」いる光景だった。
まるで子供がおもちゃを真っ二つにするかのような動作に善子は言葉を失う。
もうすでに5人も折られて殺されていた。

善子は覚悟を決めた。


善子「……仕方ないわね」

ガシッ

善子「……?」

制止するように服を掴まれてので振り向くとしずくが震えながら懇願するような目で善子を見ていた。

しずく「行っちゃ、ダメです」

158: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:32:06 ID:???Sd
善子「私が行かなきゃ皆死ぬわよ」

しずく「それでも、嫌です……!善子さんが殺されます…!」

善子「死なないわよ、さっきよりも回復したし。しずくの時間稼ぎのおかげでね」

嘘だった。
マンション10階近くから落下して善子の骨は主要な部分にヒビが入り、内臓も深く損傷していた。
本来ならまだ歩くのもしんどいはずだ。

善子「しずくはこのまま淡島に行きなさい。私のスマホを貸すから果南か梨子を呼ぶのよ」

しずく「い、や。このまま善子さんと…!」

善子「しずく!!」

しずく「っ!!」ビクッ

善子が真剣な眼差しでしずくの両肩を掴み目を合わせた。

善子「アンタは最初嫌なやつだったけど今は最高なパートナーって感じがするわ。後は頼んだわよ」

善子はそれだけ言うと踵を返し、バスの扉を叩き壊して車外に出た。

しずく「善子、さん……!ゲホゲホ!!」

159: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:32:30 ID:???Sd
.
.
.

「誰か!!殺人鬼がいるわ!!」

希「次はアンタか?」

善子「やめなさい!!!!!」

希「やっと来たか……」

沼津駅前ロータリーは酷い有様であった。
至る所に真っ二つにへし折れた人体が転がっていた。
沼津とだけあり腕に自信のあるファイターも何人か散見されたが皆希の前に敗れてしまった。

善子「めちゃくちゃするわね。アンタ、もう生きては帰さないわよ」

希「一度逃げた雑魚アイドルがイキっても何も怖くないな~」

善子「ま、それは否定できないか」スッ

善子は構える。
もう堕天使キックを放てる力は残っていない。

それでも戦う。

160: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:32:57 ID:???Sd
善子「(何のために?)」

『エゴイストにこそ勝利の女神は微笑む』

善子「(私がしずくに言ったことじゃない。本当にエゴイストならしずくも街の皆も投げ出して逃げるべきなんだろうけど)」

希が笑顔で迫ってくる。

善子「(私もファイターとしては3流だったわけか)」

善子と希の距離がゼロにならんとする時。


「東條希ッッッ!!!!!!」


善子「っ!?」
希「!?」

あまりの迫力のある凛々しい声に希ですらが動きを止めて声の主を見た。

しずく「こっちを向きなさい…!東條希!!!」

善子「しず、く……!?」

161: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:33:22 ID:???Sd
希「なんや…しずくちゃんも逃げてなかったんやぁ…」ニヤァ

内心、善子より散々バカにされてきたしずくの方に恨みを持っていたのだろう。
しずくを見る目は怒りと嗜虐心に満ちていた。

しずくはといえば話すたびに口から血を吐く状態であった。
血の気も引いておりまともに戦える状態のはずがない。

善子「何やってんのよしずく!!!逃げろって言ったでしょう!!!」

希「もう遅いわアホ!!まずはしずくちゃんで知恵の輪作ったる!!!」

希が走り出す。
善子は手を伸ばすが届くはずもない。
そんな時、しずくの表情がチラリと見えた。

笑ってた。
清々しい笑顔。それは善子にまるで感謝するようであった。
しずくは息を吸い、希にとって脅威の一言を声に出す。


しずく「園田海未をコピー」

162: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:33:42 ID:???Sd
しずくの「コピー」は真似る対象が自分の力量と比べ格上であればあるほど肉体を損耗する。

ルビィをコピーした時のように。

なので普段はあまりコピーは使わずに自分の力量と小細工だけで戦ってきた。

だが沼津のファイターは格上ばかりでコピーを多用する頻度も上がり肉体へのダメージは日に日に増えていった。

そして今日、ルビィを遥かに上回る実力者、園田海未のコピーを行った。

万全の状態でもコピーを危ぶまれる程のパワー、速さ。

その力を惜しみなく実行した、

そして……。



希「ゲボォォォォォォ!!!!!!!!」ビチャビチャ

希が床に這いつくばり血を吐いている。
彼女ですらが自分が何をされたのか分からず腹と喉を押さえて痙攣していた。


しずく「がふっ……」ドサッ

そしてそれは技を放ったしずくも同じだった。
元々限界まで痛めつけられた上での、はるか格上のファイターのコピーは命を削るものであった。

しずくの右腕はグネグネに曲がり半目で意識混濁状態であった。
善子はすぐさましずくに駆け寄る。

163: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:34:06 ID:???Sd
善子「しずく!!」

しずく「ヒューヒューー……」

善子「(こ、これはやばい……!!)」

適切な処置をしないとしずくが死んでしまうことは医療知識の無い善子でも分かった。
希が暴れ回ったおかげで警察と救急車の増援が来たため、救急隊員に助けを呼ぼうとしたが…。

希「……やってくれたなコラ」グググ

善子「う、そ……」


希が血を吐きながら立ち上がってきた。
そもそも今回の戦いでは希の「底」を引き出せていなかった。
常に希優位で2人は抗っていただけ。

しずくの決死のコピーは希に多大なダメージを与えたことは確かだ。
しかしそれは命にまでは届かなかった。

164: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:36:10 ID:???Sd
善子「クソ!!!」

善子は立ち上がり、構える。
見たところ希はまだまだ戦えそうだ。
自分の命は捨てられたが、善子が負けた場合しずくも死ぬという状況が彼女の心をめちゃくちゃに乱していた。

希「仲がいいお二人さんは一生離れられん様に『繋げ』たるわ」

善子「堕天使奥義……」

しずくは命を投げ打つ覚悟で海未をコピーした。
善子も体への限界など度外視して「堕天使キック」を放とうとしたが……。


「沼津~みなと新鮮館~♩」


希「……?」

善子「な、なに……?」

沼津観光名所である「沼津みなと新鮮館」のテーマソングを口ずさむ少女がいた。
その少女はコンビニの袋を片手にクルクルと回しながら善子の前に立った。
飄々としている様で彼女の身のこなしの一つ一つが只者ではない事を感じさせる。


ボオッッ!!!!!


少女の登場で大気が震え、まわりの温度が上がった気がした。
肉体に押さえ切れないほどのパワーが外部に滲み出ていたのだ。
その少女は善子に振り向くと屈託ない笑みを浮かべて声をかけた。


果南「やっほー、善子ちゃん」

善子「か、果南ンンンン!!!!!!」

165: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:36:36 ID:???Sd
善子「アンタ…もう来てくれたの!?」

果南「いや、私は鞠莉にビンタされた後アントレで遊んでたら楽しそうな事が起きていたから来ただけ」

善子「楽しそうって……こっちは必死だったのよ!?」

果南「ごめんごめん。ここまで大事になってたら小原家の医療チームもくるでしょう。2人は診てもらいな」

希「ちゃうなぁ。あんたらが行くんは病院やのうて遺体安置所や」


果南「あのさぁ……」

希「あ?」

果南「あなた誰?」

希「はぁ!?」

166: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:37:07 ID:???Sd
果南「別にアナタに用があって来たんじゃないんだけど」

善子「あ、アンタ私たちを助けるために来たんじゃないの?」

果南「沼津市民らしくないセリフだね。私はただ強い雌の残り香が気になってここに来ただけだよ」

希「大物ぶんな!ならウチのことやろが!!」

果南「違うよ」

希「あぁ!?」

果南「もう1人、ここにいなかった?いや、厳密にはそこのイーラの上からだけど」

善子「っ!?」

希「なんや、海未ちゃんの事か」

果南「海未ちゃんっていうんだ。どこ行ったか分かる?」

希「穂乃果ちゃんの所へ……ってそんなんどうでもいいんじゃ!オーガもろともここでお釈迦にしたる!!!」

希は果南にタックルを仕掛けた。
ダンプカーの破壊力を遥かに超えた希のタックルはビルを何棟も倒壊させながら進めるという。
現に果南もズザザザザ!!!と5m程後ろに下がってしまった。

167: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 15:37:51 ID:???Sd
善子「果南!!!」

果南「やるね。ほむらとやらは皆このくらいは戦えるんだ」

希「大物ぶんな言うたやろ。しかしオーガも所詮か弱い少女やな。こんなに簡単に下がらせられるとは思わんかったわ」

果南「ふーん。なら押し比べしようか」

希「!?」

果南は希の顔面を掴むと足に力を入れる。
その場で踏ん張っているだけだというのに地面がひび割れ始めた。

果南「出発するよ~~!!!」

果南が1歩踏みだす。
希は掴まれている手を退けようとするも果南の握力に抗えない。

希「(コイツ……なんちゅう力しとんねん!!)」

果南「はっはははははははははは!!!!!!!!」

希「(ちっ……!!)」


ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!

果南が車を超える速度で希を掴んだまま突進する。
コンクリートは踏み荒らされクッキーのように散乱していた。
果南が走り出したのは沼津駅前ロータリー。
しかしあっという間に大手町バス停付近まで到達し、そこから果南は希を中央公園に投げ飛ばした。


果南「あはぁ!!!!!」

希「ッッッ!!!!」


ブゥオン!!!とプロ野球選手が投げる球のように希の体が中央公園のトイレに突っ込んだ。


ドゴォォォォォン!!!!!!

轟音が沼津市に響き渡る。

168: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 19:05:38 ID:???Sd
ドバドバ……!
水道管が破裂し水浸しになりながら倒れる希。

希「かはっ……!!あのアマが………」

瓦礫をどかしながら起き上がる希。
衝撃は大したものだったが主要な骨は無事なようだ。
ストレッチをして果南を待つ希。
数十秒後に果南が公園の入り口をゆっくりとくぐって来た。


果南「やるねぇ~!普通ならミンチになっているよ」

希「ウチらはほむら。人智を超えたファイターの集まりや。アンタに瞬殺されるような雑魚はほむらに1人もおらんわ」

果南「あはは、威勢が良くてワクワクするね。確かにデカい口叩くだけの力はありそうだ」

希「………」スッ

希は構える。
善子やしずくには見せなかった真剣な眼差しで。
重心を低くしダンッ!!と地面を蹴る。
1秒以下の時間で果南の懐に潜り込む希。

果南「シュッ!!!!」

全く無駄のない希の動きに果南は反応した。
カウンターの右フックを彼女の頰に合わせた。

べゴォ!!!!
希の頰が凹む。
歯も数本折れて意識が飛びそうになる希だがかろうじて果南の腕を掴んだ。

希「折るで」

169: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/04(土) 19:06:35 ID:???Sd
希は下から飛びつき果南に飛びつき、十字固めを繰り出す。
ガクン!と立っている果南が希の力で膝をつく。

果南「ほう……」

希が腰を反り果南の腕を折ろうとする。
しかし果南は親指を下にし、希の鼠蹊部に腕を押し込む。
これで腕が決まることを回避した。

希「ビビッとんのかオーガ!!!」

希は技が上手く決まらず怒りを露わにする。


果南「おいィィィィィ!!!!」


果南は空いている左腕で希の脇腹を殴った。
「普通のパンチ」のはずだった。
しかし果南から放たれる災害レベルのパンチは、ルビィの威力をを超える。

希「げばぁぁぁぁ!!!!!」

希の体が5m程宙を浮いた。
だがすぐに体勢を立て直すと脇腹を触りながら果南を睨む。


希「(なんちゅう馬鹿げたパンチ打ちよるんや。けどオーガはウチに技を掛けられ時『技に逃げた』……。ウチを余裕で倒せるんならオーガの性格上力ずくで抜けてもおかしくなかった)」

希「(ウチの技は効くっちゅうことや)」

果南「………」

170: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/05(日) 18:17:49 ID:???00
ザワッッッ…………

希が自信つけた瞬間、公園に異変が起こり始めた。
ベンチや木に止まる鳥たちが一斉に公園から飛び立ったのだ。

希「なんや……?」


鳥たちの様子はまさに命の危機から逃げるかのような動きであった。
どの鳥も必死な様子だ。
希が不思議そうに鳥達を見ていると、今度は自分の体に変化が訪れた。

希「………!?」ゾワァ

急速に体を寒気が襲った。
希が自らの腕を見ると鳥肌ができていた。
ほむらである自分が風邪に………?
そう思ったが目の前のオーガを見て違うと確信した。

果南「久しぶりに屠るか。鞠莉には怒られるけどしょうがないよね」

果南が先ほどの飄々とした様子から「鬼」と紛う程の凄惨なオーラを纏っていたのだ。
体中に血管が浮かび上がり筋肉が膨張し始めた。
歯に関してはビキビキ……と犬歯のように尖り始めたのだ。

人体が変貌する瞬間を初めて見た希は言葉を失った。

「チュン!!」

鬼へと変化した希の前に逃げ遅れたであろう雀が地面に落ちて来た。
果南はそのスズメを優しく手で持ち上げる。

安全なところにでも移すのか……そう希は思ったが違った。

果南「がちゅ!!ブチィガブガブ!!!!!」

希「なっ!?」

果南はスズメを何と生で食し始めた。
5秒とかからずスズメを胃の中に沈めた果南は口から血を垂れ流しながら笑顔で希を見る。

果南「このモードは血に飢えまして………」

てへぺろ、と笑ったつもりなのか舌をだして行う笑みはまさに「オーガ」を感じさせる様相になっていた。

171: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/05(日) 18:18:31 ID:???00
希「おおおおおおおお!!!!!!」

希が叫ぶ。
彼女も百戦錬磨のほむらメンバーだ。
命の危機に遭遇したことも1度や2度ではない。
目の前の果南を屠るため気合いを入れる。

希「オーガァァァァァ!!!!!!!!!」

希が絶叫しながら果南に突っ込む。
得意の片足タックルを仕掛けるために果南の足をクラッチするが………。

グググ………

希「(嘘やろ……)」

グググ……

果南「………」

希「(うご、かん………!!)」

果南は希の頭を掴むと自分と向かい合うように目線を合わせた。
歯を剥き出してニヤニヤ笑う果南。

希「ク、ソ………オラァ!!!!!!」

希は果南の顎をアッパーで撃ち抜いた。
果南体がわずかに浮く。

果南「あ~れぇ~♩」

172: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/05(日) 18:19:17 ID:???00
希はルビィに近いパワーを有している。
当然そんな力で本気で殴ればただでは済まない。

希「だおっっ!!!!!!」

力任せに果南の顔面を右ストレートでぶち抜く希。
果南はグラァ……と体が逸れるも倒れない。
希は追撃をしようとするも、着弾寸前で果南に腕を掴まれた。

ミシミシミシ………!!!!

希の腕が折られんほどに強く握りしめられる。
果南は鼻血を出しながら口を開く。

果南「い~いパンチだ。けど今度はこっちの番だよ」

果南は希の腕を掴んだまま右ストレートで「腹をぶち抜いた」
ドチャッッ!!!!!
希の腹に空洞ができ、中からトマトジュースのように血が吹き出す。


希「がっっっ!!!???」

2発目。

ドチュッッ!!!!!

希の右肺が貫通する。
果南が手刀で希の肋骨ごと突き刺したからだ。

希「が、ぼぉ…………」

果南「アナタは人を殺しすぎた。今世はもう仕舞いにしな」

果南の3発目の拳が希の心臓を貫く。
掴んでいた希の左腕は引きちぎれ、彼女の体があゆみ橋を超え香貫公園まで殴り飛ばされた。
300m先で轟音が響く。

果南「いい汗かいた~」


希の左腕を放り投げ、犬歯を剥き出し笑う果南であった。

173: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/05(日) 18:20:03 ID:???00
~事件から3日後~

希が暴れ回った事件は「沼津新興宗教事件」という名で沼津の民に語り継がれることになった。

花丸「善子ちゃん、プロテインずら」

善子「ありがとうずら丸。…ゴクゴク、うぇ…不味いわね」

花丸「失礼ずらね」

善子としずくは沼津聖隷病院に搬送され、小原家のドクターの治療を受けた。

善子は動けるまでにはなったがしずくはいまだ目覚めていない。

鞠莉「善子、本当に今回の希討伐作戦はよくやってくれたわ。この町を代表する者の一人として礼を言います」

善子「なに改ってんのよ。こちとら自分の好き勝手動いただけよ。それにしずくと……最後は果南のおかげね」

花丸「本当に心配したんだからね」

善子「心配かけて悪かったわよ。…それでしずくの容体は?」

鞠莉「命に別状はないけど当分起きる見込みは無いわね」

善子「……しずく。あの子がいなかったら私は死んでいたからね。お礼を言っておきたいわ」

174: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/05(日) 18:20:31 ID:???00
鞠莉「それは彼女が起きてからね。東條希は果南に殴り殺された。星空凛は特別収容所に隔離中。…あとは」

善子「二人ね!私を瞬殺してくれた園田海未と……」

鞠莉「穂乃果という少女ね。どうやらその子がリーダーみたいよ」

善子「……園田海未じゃないんだ。まさかあれより強いとでも言うの?」

鞠莉「想像もしたくないわね」

「たたた大変よーー!!!」

善子「わっ!!」

ランジュ「大変なのよ!!!」

鞠莉「落ち着いてランジュ。どうしたのよ」

ランジュ「ダイヤが病室から姿を消したって!!」

鞠莉「なっ………!?」

175: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/05(日) 18:20:56 ID:???00
鞠莉はランジュと共にダイヤの病室に行く。
ダイヤの病室に行くと彼女はベッドから姿を消していた。

鞠莉「……ありえない」

ランジュ「えぇ、ありえないわ。まだ動ける傷ではないもの」

鞠莉「てことはまさか拉致されたの?」

ランジュ「可能性はあるわね」

鞠莉「ほむら……」

鞠莉は憎しみを込めて歯を食いしばる。


Prrrrrr!!!!


その時鞠莉の携帯に着信が入る。
電話の主が誰か確認すると……。

鞠莉「ダイヤ……?」

なんと消えた本人、ダイヤから連絡が来ていた。
ランジュにも聞こえるようにスピーカーモードにし、鞠莉は恐る恐る電話を取る。

176: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/05(日) 18:21:37 ID:???00
『はぁーい、鞠莉。ダイヤよ』

鞠莉「……誰よアナタ」

真姫『ツレナイワネ。こんにちは、私は西木野真姫』

鞠莉「ほむらのメンバーかしら?」

真姫『いいえ、私はただの研究者よ。ねぇ何で私がアナタに電話したか分かる?』

鞠莉「……いいえ」

楽しさが抑えきれないといった真姫の様子に鞠莉は苛立ちと焦燥を隠すのに必死であった。

真姫『このダイヤとかいう子……素晴らしい素材よ』

鞠莉「素材…?何を言っているのアナタは」

真姫『私は最強のファイターを『人工的に』生み出すことを至上の目的にしているの。黒澤ダイヤを私が施術すればきっと彼女は人類最強にもなれる』

鞠莉「ッッッ!!!何言ってるか分かっているのアナタ!?」

真姫『最強のファイターを作るという崇高な理念の前には倫理や道徳など無意味なの!ほむら2人倒した程度でいい気になっているところ悪いけど沼津はこれからもっと地獄になるわ!ダイヤが暴れ回るわよ……!』

ランジュ「ふざけないで」

真姫『あら……誰かしら』

ランジュ「虹ヶ咲のランジュよ。怪我人を弄ぶような真似は私が許さないわ」

真姫『イミワカンナイ。じゃあどうするの?』

ランジュ「私がアナタを止める!ダイヤも助け出す。シンプルな問題ラ!!」

真姫『やってみなさい!!私の最高傑作で捻り潰してあげるわ』

177: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/05(日) 18:24:54 ID:???00
ブチっっと乱暴に真姫が通話を切った。

鞠莉「ダイヤ……」

ランジュ「ダイヤをサイボーグにでも仕立て上げるのかしら?何にせよ黙って見過ごせないわね」

鞠莉「アナタがダイヤを止めてくれるの?」

ランジュ「えぇ、これからはこの鐘嵐珠が動くわ!散々焦らされてもう体が震えていたからね!」

鞠莉「……ありがとう」

~沼津市民文化センター~

ゴポゴポ………

ダイヤ「……」

ダイヤ「(私は……何をしていたんでしたっけ……?)」

様々な薬液が投与されたカプセルの中でダイヤは薄く目を開ける。
数日ぶりの意識の復活であった。
制服は脱がされており黒く薄いボディスーツを着ている。

ダイヤ「(そうだ……ランジュさんと戦うために我が家で精神統一をして……)」

ダイヤ「(オレンジの髪の少女と…あと『もう1人』に負けた)」

ダイヤ「(早く動かなければ。あの少女は危険すぎる。あの茶髪の少女は)」

真姫「それはダメよ~?」

ダイヤ「!?」

178: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/05(日) 18:25:38 ID:???00
真姫「そのカプセルの中だとアナタの考えは筒抜けになるの。傷は完治したみたいね……ならあとは追加でこれよ!」

真姫が装置を作動させるとカプセル内の水の色が赤く染まった。
ダイヤはパニックになるが拘束具が付けられており抵抗ができない。
1分後、ダイヤの意識が闇に落ちる。




ダイヤ「がぼっ!!!」

1時間後、ダイヤの意識が目覚める。
先ほどとは違い目の前には真姫だけでなくもう1人少女がいた。

ゴボボボボボ………とカプセル内の水が抜けて容器が自動で開いた。
ダイヤは数日ぶりに自らの足で歩いた。

ダイヤ「………」

ダイヤの目はうつろに真姫を眺めていた。

「真姫ちゃん!拘束具も取って大丈夫なの?」

真姫「えぇ、必要な処置は完了したわ。もう彼女は私の支配下にある」

穂乃果「おー!」

真姫「てことでダイヤ、手始めに鐘嵐珠を暗殺して来なさい。今にアナタなら簡単にできるはずよ」

ダイヤ「分かりました…真姫様」

真姫「穂乃果もダイヤをサポートしてあげて。沼津で散々遊んだんだから地理は分かるでしょう?」

穂乃果「合点承知だよ!よろしくねダイヤさん!」



最悪のコンビがここに誕生した。

179: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/05(日) 18:26:05 ID:???00
~浦の星女学院~

ランジュ「といってもどこにいるか分からないのよね~」

ランジュは鞠莉と別れてから浦の星女学院に来ていた。

ランジュ「虹ヶ咲とは真逆の素朴な学校ね。こういうのも悪くないわね!」

今日は休日のようで生徒はまばらだ。
個々で部活動に勤しむ生徒たちを微笑ましい目で見るランジュ。

「おらぁ!!」

「やるね、はぁ!!」

そんな時体育館から肉を打つ音が聞こえて来た。
ランジュは気になり館内を覗き見る。


千歌「負けないよ!!」

むつ「はいィィィィィ!!!!!」

そこでは千歌と彼女の友人むつが殴り合っていた。
かなり激しくやっており両者ともに顔面にアザができている。
喧嘩かと思いランジュは止めに入った。

ランジュ「ちょっとちょっと!2人とも何してるのよ!!」

180: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/05(日) 18:26:29 ID:???00
千歌「ランジュちゃん!」

むつ「なにって……修業だよ。今沼津は戦争状態だからね。いつでも戦えるように体温めてんの!!」

ランジュ「ならせめてヘッドギアをつけなさいよ」

むつ「内浦じゃ臆病者のレッテルを貼られるよ」

ランジュ「頭を守るためだから!!……にしても千歌は非戦闘員じゃなかったの?」

千歌「曜ちゃんや梨子ちゃんが頑張っているのに私だけ傍観者なんてできないよ!」

むつ「てか元々アンタらが攻めて来たからこんなことになってんだけどね」

ランジュ「ま、それは否定できないわね。お詫びに修業してあげましょうか?」

千歌「本当に!?」

ランジュ「えぇ、技の出し惜しみなんかしないわ。なんでも聞いてちょうだい!」

181: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 11:14:14 ID:???Sd
むつ「驚いた……一応敵なのにそんな事していいの?」

ランジュ「顔見知りの千歌たちが強くなる方が嬉しくなるわ。全体的な格闘家のレベル向上につながって欲しいもの!」

むつ「ふーん、なら断る理由はないかな」

千歌「よろしくお願いします!」

ランジュ「じゃあ体育館を盛大に使いましょう。まずは私の必殺技よ!」

千歌「いきなり!?」

ランジュ「2人は下がってて!見といてね~」


フワァ……。
ランジュは脱力し右手と左足を上げてカンフーのポーズを取る。
荒々しい雰囲気の彼女とは対比的に「静」を思わせる動作だ。
瞬間、ランジュの左足が空に向かって放たれる。


ランジュ「ラァ!!!!!!」


ブュォォォォォォォ!!!!!!と体育館内に突風……いや、剛風が巻き起こり空気の大砲が発射された。

ズドォォォォン!!!!!


ランジュの蹴りの余波はステージ台にまで到達し、壁に大きな穴を開けてしまった。
風圧で館内が台風でも起きたように風が舞っている。


むつ「」

千歌「」


千歌たちは何が起きたか分からずに呆然と変わり果てた体育館を眺めていた。


ランジュ「はぁ……はぁ…………。『ラ嵐撃(ららんげき)』という技よ」

182: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 11:14:34 ID:???Sd
むつ「できる気がしないのですが」

千歌「見た感じ普通の蹴りじゃん!私にそんな脚力ないよ~!!」

ランジュ「いえ、ただの蹴りじゃないわ。ねぇ、打撃で一番力が出る瞬間って知ってる?」

千歌「力みじゃないの?果南ちゃん言ってたよ」

ランジュ「スポーツ学的には違うわ。……まぁオーガならそれでも良いのかもしれないけど」

むつ「教えて」

ランジュ「えぇ、それはね……『脱力』よ」

千歌「力を抜くって事?」

ランジュ「そう、力というのは脱力して無駄な力を削ぎ落としてから放つ。これが高威力の秘訣よ」

喋るランジュは汗だくだ。
脱力の度合いも並大抵のものではないのだろう。
しかし脱力次第でここまで凄まじい一撃を放てるのかと千歌とむつは驚愕していた。

183: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 11:15:02 ID:???Sd
ランジュ「ここまでの完成度で私は10年かかったわ」

むつ「だろうね。人生賭けなきゃ、いや賭けてもできない人間の方が大多数だと思うよ」

千歌「私は使えるようになりたい!」

むつ「私もだよ。浦の星の一人として敵を葬り去る力が欲しい。教えてランジュ!」

ランジュ「任せてラ!!」




ランジュ、むつ、千歌の3人はそれから毎日修業に明け暮れた。
「ほむら」メンバーに動きが無い事もありランジュも予想しないほど色々な技を2人に伝授できた。

ランジュ「(沼津はファイターの集まりと聞いたけど……そのせいか2人とも才能の塊ね)」

むつ「はっ!!!」バッ

千歌「ふぅ……………」


ランジュ「(特に千歌。この子本当に最近まで格闘技未経験者って本当?成長速度が恐ろしいわね)」


千歌「ハァッッッ!!!!!!」

バビュオッッッ!!!!!

千歌が脱力から、かつてランジュがルビィに放った「寸景」を空に繰り出す。
突風が巻き起こり校舎内の幾つもの窓ガラスを触れずに粉砕した。

184: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 11:15:26 ID:???Sd
千歌「はぁ……はぁ…………」

ランジュ「素晴らしい成長よ、2人とも」

千歌「ありがとう、けどまだまだだよ」

むつ「ランジュのおかげで私たちの戦闘力が飛躍的に上がったよ」

ランジュ「ラ!礼には及ばないわ。今日は皆んなでビュッフェに行きましょう!奢るわよ」

千歌「わーい!お肉だぁ~!!」

むつ「至れり尽せりだね~」

体育館を出て店へと向かおうとする3人。
そんな時3人の耳に歌声が聞こえて来た。
校庭の方からだ。


「だって~可能性感じたんだ~そうだ、進め~♩」


ランジュ「綺麗な声……」

むつ「本当だね。ランジュが乙女の顔するくらい綺麗」

ランジュ「もー、むつ!!」

むつ「あはは」

185: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 11:15:42 ID:???Sd
千歌「誰が歌っているか見に行こうよ」

ランジュ「そうね!」



「後悔したくない目の前に僕らの道がある~♩」



三人が声の主のところへ小走りで見に行く。
校庭には1人の少女がいた。
階段に優雅に立ち、両手を広げて気持ちよさそうに歌っていた。
サイドテールの茶髪の少女だ。
快活そうでランジュは一目見て気が合いそうだと思った。
彼女の制服を見るまでは。


ランジュ「………ほむらの制服」

穂乃果「あ、ランジュちゃんだ!」

186: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 14:19:41 ID:???Sd
ランジュ「いい声ね。もっと聴かせて貰おうと思ったのに残念よ」

穂乃果「好きなだけ聴いていっていいよ。私は希ちゃんや凛ちゃんと違って喧嘩っ早くないから」

ランジュ「お断りするわ。アナタを殴りづらくなるもの」

穂乃果「優しいんだねランジュちゃんは」

ランジュ「……」

千歌「ら、ランジュちゃん……」

ランジュ「二人は下がってて」


ランジュは警戒して穂乃果を見ている。
自分の中で必死に闘争心を沸き起こそうとしているが先ほどから戦闘モードに移れず困惑していた。
目の前の少女がまるで映画のヒロインのように…魅力的。
初対面だというのに「親友」かのような錯覚に陥っていたからだ。

ランジュ「(何なのこの感覚……)」

187: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 14:20:06 ID:???Sd
穂乃果「私なんかに構ってていいのかな?」

ランジュ「……?ほむらのリーダーでしょうあなたは。ここで倒す価値はあると思うけど」

穂乃果「私、今日ダイヤさんと観光しにきたんだよ」

ランジュ「!?」

千歌「ダイヤさんとって…どういう事!?」

穂乃果「ダイヤさんがランジュさんと戦いたいって言ってたから連れてきてるの。けど途中で逸れちゃってどこ行ったか分かんなくなっちゃった」

ランジュ「無責任ね。ならあなたを倒した後にダイヤを探し出すわ」


穂乃果「……あーあ、しょうがないなぁ」ユラァ



穂乃果が気だるそうに頭を掻きながら三人に歩み出す。

むつ「千歌、下がるよ」

千歌「むっちゃん!けど……」

むつ「もちろんただ傍観するだけじゃ無い。加われそうなら加わる。……万全のほむらのリーダー相手に私たちじゃ分が悪い」

千歌「……」

ランジュ「その通りよ。私がヤバくなったら助けてラ。ま、杞憂だろうけどね!」

千歌「……うん、分かった!」

188: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 14:20:30 ID:???Sd
ランジュは構える。
ここまでの緊張感のある戦いは香港にいたときも、日本にいた時もなかった。

ドクンドクン……

ランジュ「(これよこれ……)」

ランジュの脳にアドレナリンがシャワーの様に分泌される。

ランジュ「(こういうヒリヒリする戦いを私は日本にしにきたのよ!ほむらのリーダーが相手なんてファイター冥利に尽きるわね!)」


ライバルであるダイヤを拉致された事への怒り。
無関係の市民を大勢巻き込むほむらの所業。
ランジュはどれも許せなかったがその一切を彼女は今「忘れていた」
強者を目の前に闘争心が義憤や倫理を上回ったのだ。
そういう意味でもランジュは純粋なファイターであった。

189: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 17:58:15 ID:???Sd
穂乃果は構えない。
手を後ろに組み微笑を浮かべている。

ランジュ「なに、余裕のつもり?」

穂乃果「違うよ。最初は相手の人に好きにさせてあげるんだ。どんな実力か知りたいからね」

ランジュ「はっ…それが余裕のつもりだって言ってんのよ」

直後、穂乃果の体が宙を舞う。
ランジュが一瞬のうちに穂乃果に詰め寄り顎を蹴り上げたからだ。

ランジュは追撃を行う。
校舎を足場に空中の穂乃果の腹に回し蹴りを叩き込んだ。

ランジュ「ラァ!!!!」


ボゴォォ!!!


穂乃果「ーーーー!!」

穂乃果の体が校庭まで吹っ飛ばされる。

190: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 17:58:39 ID:???Sd
むつ「す、すごい……!!」

砂埃が校庭を覆う。


「ホノッッッ!!!!!!!!!」
バビュオォォォォォォ!!!!!


穂乃果が短く喝を入れると砂埃が霧払いのように晴れる。
校庭の中央で穂乃果は感心したように拍手していた。

穂乃果「ランジュちゃん凄いね!凛ちゃんほどじゃないけどそんなに速く動けるんだ!」

ランジュ「(結構気合い入れて放った打撃だけどピンピンしているわね……)」

穂乃果「ほら!もっと来て良いよ。ランジュちゃんの事もっと知りたくなってきちゃった」

ランジュ「言われなくても……よッッッ!!!!!」

ダッッ!!!!とランジュが校庭を走り回る。
穂乃果に対する目眩しのためだ。
風を切りながら高速で走るランジュ。

ランジュ「嵐嵐拳(らんらんけん)!!!!!」

ドドドドドドドド!!!!!と左右の手で目にも止まらぬ速さで突きを行った。
コンクリートを豆腐のように破壊する攻撃だ。

191: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 17:59:07 ID:???Sd
穂乃果「わぁ!うっ!!!あっっ!!!」

穂乃果は突かれるたびに声を上げながら後退している。
ランジュはトドメとばかりに右足で穂乃果の鳩尾を突き飛ばした。

ランジュ「ハイィィィィ!!!!!」

ドォォォォン!!!!

校舎の2階の教室に突っ込む穂乃果。
コンクリートがバラバラと1階に落ちてくる。


千歌「これがランジュちゃんの本気……!」

ザッザッザッ……

破片を踏む音と共に穂乃果が2階から顔を出した。
壁には大穴が開いており教室の中は爆弾でも投下されたかのように散乱していた。
穂乃果は真顔でこちらを見下ろしている。

穂乃果「今のは少し痛かったよ。嵐嵐拳だっけ?可愛い名前だね」

ランジュ「の割には全然いつも通りって感じだけど?」

穂乃果「んぼぉえぇ!!!」

ランジュ「!?」

穂乃果が急に頰を膨らますと「吐血」し始めた。
無表情からスッキリした顔に戻る穂乃果。
気分が良さそうに口を開く。

穂乃果「このくらいは効いてたよ」

192: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 17:59:33 ID:???Sd
ランジュ「良い調子ね。降参する?」

穂乃果「うーん、まだ戦えそうかな」

ランジュ「ならもう少し痛めつけてあげる!!!」

ランジュが駆け出そうとする前に穂乃果が2階の教室の床を踏み抜いた。
薄い板でも割るかのように。

バゴォォォォ!!!!!と穂乃果の体ごと床が一階に落ちる。
1階は壁が健在のため穂乃果の姿を見失うランジュ。
壁を破壊して穂乃果を追うか迷ったが………。

ランジュ「っっ!!」ゾクゥ

穂乃果のいる教室から急に嫌なオーラが噴出し始める。

ランジュ「2人とも!!今すぐ校門まで走って逃げて!!!!」

千歌「へ?」

むつ「!!?」

ランジュは観戦していた千歌とむつに大声で避難を促す。
直後、数キロ先まで聞こえるような轟音が響く。

ゴバァァァァァァァ!!!!!!

穂乃果が教室内から外壁を殴った音であった。
とてつもないパワーから放たれたパンチは外壁などクッキーのように破壊して1階のみならず2階、3階の壁すら木っ端微塵に破壊した。
破片は散弾のように周囲に降り注いで死の雨を降らせた。

ランジュが自らに降り注ぐ破片を防ぎ切った後に、ボロボロになった校舎の中から穂乃果がゆっくり歩いて来た。

193: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 17:59:55 ID:???Sd
穂乃果「ほむらにはそれぞれ特性があるの」

穂乃果「凛ちゃんは速さ、希ちゃんは寝技、私は……何か分かる?」

ランジュ「さぁ…パワーとかかしら」

穂乃果「正解!逆に言えばそれ以外はてんでダメなんだけどね。海未ちゃんにもよく叱られてるし」

ランジュ「………」

穂乃果「……ランジュちゃん、ほむらに入らない?」

ランジュ「ラ!?」

予想外の提案にランジュは素っ頓狂な声を出して驚く。
しかし穂乃果の目は真剣だった。

穂乃果「それほどの力があれば十分にやっていけると思うよ。ちょうど欠員が1人出たからね」

ランジュ「お断りよ。倫理も仁義もない集団なんかに売る魂は無いわ」

穂乃果「あはは、それもそうか。『強いやつに好き勝手喧嘩を売る』がほむらのポリシーだからね。そんな個人主義の連中が集まってたから離散とか色々あって4人になったんだ。……今は3人だけど」

ランジュ「どうでもいい。確かなのはあなたはここで倒れるということだけ」

194: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 18:00:12 ID:???Sd
穂乃果「そっかそっか」

カッカッカと階段を後ろに手を組みながら降りる穂乃果。
ランジュは階段を下り切った瞬間に跳び蹴りを仕掛ける。

ランジュ「ラァ!!!!」

穂乃果「甘いよ」

今度は穂乃果も食らわなかった。
なんとランジュの蹴りに対し頭突きでカウンターを合わせた。

ランジュ「きゃあっ!?」

ブゥオン!!とランジュの体が数メートル浮く。
穂乃果は空中のランジュに向けて近くにあった2mはあるコンクリートの破片を投げた。

ランジュ「嵐嵐拳!!!!」

足場が無い空中でコンクリートを粉砕するランジュ。
地面に降り立つと穂乃果から距離を取る。

穂乃果「私のパワーが怖い?」

ランジュ「雑な挑発しないで。戦術の一環よ」

195: 名無しで叶える物語◆Ar2UvHKC★ 2025/01/06(月) 18:00:31 ID:???Sd
むつ「ラ、ランジュ!!!」

穂乃果とランジュが向き合っているとむつがスマホを持って青ざめた顔で駆け寄って来た。

ランジュ「危ないから下がってって言ってるでしょ!!」

むつ「違うんだよ!ダイヤが……街で暴れているって!!」

ランジュ「はぁ!?」

穂乃果「あー、始まったか。真姫ちゃんのせいだね」

ランジュ「………暴れ回るって言葉通りだったのね」

穂乃果「行ってあげたら?私はスイーツでも食べてるから」

ランジュ「あなたは必ず私が倒すわ」

穂乃果「無理だと思うけどね~。行ってらっしゃい!」


ランジュは最後に穂乃果を睨むとむつに案内されてダイヤが暴れているという場所に急いだ。