1: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/12(月) 23:31:35 ID:???00
ー音ノ木坂ー



構成員「……それでさ、金保留来たんだからそりゃ~Rush行くでしょって思ったの」


構成員「流石に金保留は熱いもんね。って事は金ヤマトも?」


構成員「出たよ、勿論。でもレバブルが無くてさ」


構成員「あっ……それは、うん」


構成員「察したね。まあ、案の定でしたけどね」


<ザッザッ…


構成員「ちゃんとフルカスタムだったの?」


構成員「あたしどの台も基本フルカスだから。当たる訳ない演出で弄ばれるのダルいし」


<ザッ…


構成員「……!」


構成員「だって青保留で発展リーチされてもウザ……どしたの?」


構成員「いや…明らかに同業者が」


<?「……園田組の子?」


構成員「…どちら様でしょうか」


構成員「カチコミ?」


?「な訳ないでしょ……誰か目上の方を呼んで頂ける?」


構成員「目上ったって…」


構成員「津島のカシラは?」


構成員「……ちょっと待ってて。あ、お名前は?」


すみれ「……すみれ。神宮一家の平安名すみれ」

2: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/12(月) 23:34:22 ID:???00
────


善子「神宮一家の?何でまた……」


海未「……先の1件で追われたのでしょう。丁重にお迎えなさい」


善子「分かりました……というか、私でいいんですか?」


海未「私がわざわざ出迎えるのも違いますし、若い子達には対応しきれない。ですがあなたならその方に対応出来るのですよ」


善子「……?取り敢えず、迎えます」


海未「ええ、お願いしますね。後でここに」


構成員「どうぞ」


テクテク

3: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/12(月) 23:37:05 ID:???00
すみれ「……」


構成員「……玄関先で突っ立ってないで、入れば?ウチと敵対してるとかじゃないんでしょ?」


すみれ「それじゃ礼儀がなってないわ」


構成員「はーん……?」


<構成員「お名前は平安名さんと」


<善子「ん」


すみれ「……」


善子「……」


スッ…


すみれ「……ご当家、軒下の仁義。失礼ですが、お控え下さい」


構成員「……ぷっ」


構成員「……善子さん、分かんないけどこれ何か古くないですか?」


善子「……なるほどね。あたしが来た意味はこれか」ボソッ


構成員「え?」


スッ


善子「……ありがとうございます。軒下の仁義に失礼しますが、手前これにて控えさせて頂きます」


構成員(カシラまでやるんかい……笑)


すみれ「早速ながら、ご当家三尺三寸借り受けまして稼業、仁義を発します」


善子「手前当家の若輩者でございます。どうぞお控え下さい」


すみれ「手前、旅中の者でございます。是非ともお姉えさんからお控え下さい」


善子「ありがとうございます。再三のお言葉、逆意とは心得ますが手前、これにて控えさせて頂きます」


すみれ「早速のお控えありがとう存じます。不束者につき前後間違えましたる節は重ねて失礼にございますが、まっぴらご容赦願います」


ザッ

4: 名無しで叶える物語◆PbTHbqHe★ 2025/05/12(月) 23:37:06 ID:???00
世界線がよくわからんが期待

5: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/12(月) 23:40:21 ID:???00
すみれ「……手前、生国は東京渋谷神宮前、表参道を通りて隠田神社に発します」


すみれ「稼業、縁持ちまして身の片親と発しますは、原宿に元居を構えておりました神宮一家当代、東條希に付き従います若い者です」


善子「……」


すみれ「姓は平安名、名はすみれ。見ての通りしがない駆け出し者でございます。以後お見知り置きの上向後万端、ざっくばらんに宜しくお願い申します」


構成員(すげー……よくこんなスラスラ出るなぁ。マジ昔の映画みたい)


構成員(うん……でも今令和なんだけどね笑)


構成員(それはそう笑)


善子「……ありがとうございます。ご丁寧なお言葉に対し申し遅れまして失礼を致します」


すみれ「……」


善子「手前、園田組3代目、園田海未に従い預けられました若頭の末席を汚しております者」


善子「姓は津島、名は善子。稼業未だ未熟の駆け出し者です。以後万事万端宜しくお願い致します」


すみれ「斯様に丁寧な仁義、誠に恐れ入ります。どうぞお手をお上げ下さい」


善子「ありがとうございます。そちらからお上げなさって」


すみれ「それでは困ります」


善子「…では、ご一緒にお上げなさい」


スッ


すみれ「ありがとうございます」


善子「ありがとうございます」

6: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/12(月) 23:43:04 ID:???00
構成員「お~」パチパチ


構成員「姉貴、流石ですね!こういうののやり方も知ってるなんて」


善子「昔海未さんに教えられたの。アンタもいつの時代から来たのよ」


すみれ「ウチも親から教えられただけ。他の組に邪魔する時は、こうしなさいってね」


善子「希さんね……ま、追々聞くわ。上がって」


すみれ「失礼します」

7: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/12(月) 23:46:07 ID:???00
────


<コンコン


海未「はい」


ガチャッ


善子「当代、お連れしました」


すみれ「……」スッ


海未「ごきげんよう」


すみれ「園田組当代、園田海未さんとお見受けします。お初にお目にかかります」


海未「津島より聞き及んでいます。どうぞお入りなさい」


すみれ「恐れ入ります」


バタン…


善子「……いや、やっぱアンタ古くない?マジで昭和から来たの?」


すみれ「だってこうしろって希さんが……」


海未「ふふ、あの希の事です。面白がって仕込んだだけだと思いますけどね」


すみれ「え!?」


海未「そういう所があるのですよ希は。客人にお茶を」


構成員「はいっ」


善子「確か、ウチと神宮一家は特に繋がりがある訳じゃ……」


海未「ええ、ただの茶飲み友達ですよ」


すみれ「……」


海未「だから……お互い不可侵の約束だったんです。筋者同士の関わり合いは無しと。この時代、私達位はただの友達でいようと」


すみれ「……希さんは、私達下の者を守る為、単身【台場組】に乗り込みました。その後通達が来て、神宮一家は台場組の傘下となると言い渡してきて……」

8: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/12(月) 23:49:12 ID:???00
海未「……分かっています」


構成員「失礼します、お茶を」


すみれ「分かっておられたんなら、何か手を貸して下さるとか!」ガタッ


構成員「うわっとぉ!?」


善子「すみれ!」


海未「私の所にも来てましたから。台場の使者が」


すみれ「!」


構成員「お茶置いときまーす……」コトッ


善子「ありがとね」


構成員「ういっすー……」


海未「あなたのいた神宮一家も、園田組も小さい組織です。どこの派閥にも属さず街に根ざし、古き良きを重んじていた……そんな所だったでしょう」


すみれ「…はい」


海未「そこに奴等は目を付けてきました。ウチの様な小さい組をどんどんと吸収し、ゆくゆくこの関東一円をまとめ上げる。その一心で」


海未「しかし、時は令和です。街中でドンパチかますのも普通やりません。やりたいとも思えない。そんな牙は、今の我々には無い」


すみれ「……」


海未「希は血を流すのを何より嫌います。そうでしょう?だから、自分を人質にし、一先ずはあなた達の安全を引き換えにした……そんな所でしょうね」


すみれ「では、園田組に来た台場の者はどうされたので?」


海未「さて。季節外れの海水浴に行くとか何とか言ってましたけど」ゴクッ


すみれ「……!!」


海未「希の所は……あなたの一家は穏健派です、それは本当に良い事ですよ。ただ、ウチは違う。私たちの住む街と、その子達に危害が及ぶかもしれないのならば」


海未「我が園田組、修羅の道をどこまでも突き進む覚悟です」


善子「……」ゴクッ

9: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/12(月) 23:52:06 ID:???00
すみれ「……失礼致しました。親分さんのお気持ち汲み取れず、感情に任せてしまい……」


海未「構いません。良い子を持ちましたね、希は」


善子「……それで?すみれはここに何をしにきたの?」


すみれ「……みるみる台場組の奴等が街にのさばり出して……抵抗はしたんだけど、流石に数には勝てなくておめおめとここまで逃げて来たって訳」


善子「そう……仲間は?」


すみれ「散り散りよ。通達が来た時から、組はバラバラになって……皆、どっかに行ったわ」


善子「そう……」


すみれ「……組長、先だってお願いがあって参りました。お聞き頂けませんか」


海未「希とは縁あっての仲でした。力になれる事なら」


すみれ「ありがとうございます。人を探すのに、ご助力頂きたいんです」


海未「人を……」


すみれ「私の姉妹(きょうだい)分の、澁谷かのんという子を探して欲しいんです」


すみれ「一家再興の為、彼女の力は必要なんです……」


────

10: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/12(月) 23:55:39 ID:???00
ー客間ー


<ザーッ…


すみれ「……」


───『承りました。澁谷かのんを探す様組員に私から伝えておきます』


───『あなたも行く場所が無いんでしょう。暫くウチでゆっくりしていきなさい』


───『身の回りの事は私が面倒見るわ。何かあればいつでも言って』


<ザーッ……


すみれ「……情けないったら無いわ」


<コンコン


すみれ「はい」


<「失礼します」


ガラッ


構成員「えーと……時、の、しのぎ?です。どうぞ」


すみれ「無理してそんな言葉使わなくても良いのに」


構成員「姉さんがそう言えって言うから!」


善子「ふふっ、って事でメシよ。お腹空いたでしょ」


すみれ「……頂きます」


───

11: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/12(月) 23:58:08 ID:???00
善子「アンタらも食べなさい」


構成員「え、私らも一緒に良いんですか?」


善子「いつもコンビニでしょ。たまにはこんな一汁二菜を食っとくといいわ」


構成員「あ、はい……頂きます」


構成員(焼き魚にご飯、味噌汁……漬物は2切れて。少ないんだよなぁ)


構成員(ねぇ?戦時中じゃあるまいし)


構成員(戦時中ってこんなご飯食べれたの?)


構成員(いや知らんけど。適当言った)


善子「……」


すみれ「……」


善子「遠慮なく、お上がんなさい」


構成員「あ、じゃあ……」ペコッ


構成員「……もぐもぐ」


すみれ「……ご厚情に預かります」スッ


構成員(何あの紙……)


すみれ「……ずずーっ」


構成員「あでも、たまにはこういうのって良いな……」ズズッ


構成員「うん。すいませんおかわり下さい」パリッ


善子「ん。早いのね」


すみれ「もぐもぐ」


善子「……」


すみれ「……」スッ…


構成員(平安名さんも食べるの早……くない!?真ん中一口しか食べてないじゃん!)


善子「…作法にかなったおかわり、恐れ入ります」


構成員(合ってんだ……)


すみれ「……」ペコッ

12: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:02:15 ID:???00
もぐもぐ……


ずずーっ


構成員「……んぐっ!?ごほっごほっ」スッ


ドスッ


構成員「がっつくから……」


<テクテク…


海未「……」チラッ


構成員「んぐ……ごめんお茶取って」


構成員「はいはい」


海未「こら」


構成員「っ!?」


海未「ウチの飯は墓場行きですか?」


構成員「んぇ!?」


すみれ「……」チョイチョイ


構成員「え?あ、これ?」


善子「ご飯に箸ぶっ刺すとかマジヤバいから」


構成員「す、すいません……」


海未「……」


<テクテク


すみれ「ずず……」


構成員「あーびっくりした……」


構成員「言われてみれば、あんなの仏壇に供える時しか見ないもんね」


構成員「確かに縁起悪かった……」


善子「……」

13: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:05:10 ID:???00
すみれ「……ふぅ」


スッ


構成員(……は!?魚の骨持って帰んの!?)


すみれ「手厚きおもてなし、恐れ入ります」


善子「何のお構いもなく」


すみれ「お先に、失礼」


構成員「んぐっ」ペコッ


構成員「……」ペコッ


<テクテク……


構成員「もぐもぐ……何か凄いなぁ」


善子「金筋の客人って奴よ。私がアンタらを同席させたのは、あんな作法を覚えて損が無いから」


構成員「は、はぁ」


善子「確かに古いし細かいし……でもアンタらに足りない"礼儀"の正しさってのが目に見えて分かったでしょ」


構成員「……」


構成員「……え、魚の骨持って帰るのも作法なんですか?」


善子「魚の骨もしっかり頂いたって事で持ち帰って、後々見えない所で捨てるってこと」


構成員「ほぇ~……」


善子「今日ピザの予定だったのにわざとこのメニューにしたんだから。あの子の礼儀作法をもっと見てみたかったし」


構成員(ピザ食べたかった……)


構成員「……善子さん、何でそんな詳しいんですか?」


善子「言ったでしょ。私は海未さんに教えてもらっただけ」


ーーーー


【風呂】


かぽーん


すみれ「はぁ……」


ザバーッ……


すみれ「……」


───『どこ行く気なの!?あんたまでウチからいなくなったら……!』


───『必ず一家の仇を討つ。それまで……お互い生き残ろう』


すみれ「……私だって、こんな命くらい」


<ザーッ……


────

14: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:08:03 ID:???00
【次の日】


<シトシト…


すみれ「……」


<善子「おはようさん」


すみれ「……ん」


善子「雨降る朝もはよから……健康ね」シュボッ


すみれ「取り柄はそれだけよ。もう10時だけど」


善子「ふー……朝には変わりないわ」


すみれ「……」


善子「見事な庭園でしょ」


すみれ「ええ……雨なのが、寧ろ」


善子「東京ど真ん中に今時珍しいわよね」


すみれ「……」


善子「それでも、ちゃんとした名家の家なんかとは比べ物にならないけどね。寧ろこじんまりしてて……」


すみれ「その方がいいわ……落ち着くもの」


善子「……分かるわ」


すみれ「……」


善子「……」


シトシト…

15: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:13:21 ID:???00
善子「……今時、って言うなら……アンタもなかなか時代錯誤甚だしいけどね」


すみれ「否定はしないわ」


善子「今日日、顔に傷作って草履にスーツで、他の組訪ね歩いてくるなんてさ……東映のを見てる気分よ」


すみれ「実録って奴ね。なまじ映画と違うのは、現実にゃ華も何も無いって事位」


善子「……」


すみれ「場所を追われ台場組に追われ、死にはしなくてもボロボロで……音ノ木坂まで」


すみれ「カッコよくもなけりゃ、美しくもない……私がこれからやろうとしてる事も、ただの仇討ちで"映え"なんか無いったら無いわ」


善子「やっぱ考えてんのね」


すみれ「渡世の義理よ。親に守られるヤクザの何て情けない事かって」


すみれ「一家の為なら、この身捨てる覚悟よ。あなただってそうでしょ」


善子「……まあね」


すみれ「……」


<シトシト…


すみれ「……ねぇ、何かやれる事は無い?」


善子「その言葉を待ってたわ。ウチも小さい所帯でね、人手はいつでも欲しいの」


すみれ「先に言わせてしまって、ごめんなさい」


善子「いいの。時代柄強制ってのもさ、何かヤだし」


すみれ「時代……ね」


善子「そうと決まれば行きましょう。説明は道すがらするわ」


────

16: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:16:15 ID:???00
ブーン…


構成員「~♪」


善子「次、右ね」


構成員「はーい」


すみれ「……それで?」


善子「時代だ何だ言ってるけど、案外昔ながらってのは残ってるもんで」


善子「ウチが運営してる賭場があってね。そこの用心棒をしてもらいたくて」


すみれ「へぇ……園田組は博徒なのね?」


善子「いや、最近はもうそんな細かく区別する事も無いのよ。少しでも金になる事なら、大体の事は噛んでるって思ってもらって」


すみれ「……」


善子「安心して、薬だきゃ厳禁だから。そればっかりはマジで、やってる奴はまとめてぶっ殺すわ」


構成員「こわ……」


善子「あんたは大丈夫でしょうねー?パチンコばっかやって金無いからって、そっち走ってないでしょうねー?」コンコン


構成員「あ、あたしも薬は大っ嫌いなんで!」


善子「ならいいけど」


すみれ「……用心棒ね。別にそんな腕っ節に自信ある訳じゃないわよ」


善子「そう?まあでも、威圧感は半端ないからそれだけでも良いけどね?」


すみれ「…え、そう?」


善子「ええ」


構成員「平安名さん、結構怖いですよ」


すみれ「……まあ、良いか」


───

17: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:19:20 ID:???00
【パチンコ屋】


構成員「……到着です」


善子「ん」


すみれ「ここ?ただのパチンコ屋じゃ……」


善子「まあまあ」


ガチャッ


バタンッ


<「……あ、お疲れ様ですー!津島のカシラ!」


善子「お疲れ、かすみ。調子は?」


かすみ「ぼちぼちですね。最近は規制規制で、本業の方も回転数落ちてますけどっ」


善子「そっちはどうしようも無いから……ちょっと"奥"に通して」


かすみ「了解!」


<ウィーン


ジャンジャンバリバリジャンジャンバリバリ…


<『SANYO!』


<『あたァッ、ほゥわッたぁッ!!』


<『超強欲ボーナス!』


すみれ「……うっさ」


善子「アンタは打たないの?」


すみれ「好きじゃないの」


善子「そ。良い事ね」


構成員「……おっ、これいいな」ポチポチ


かすみ「こちらです」ガチャッ


すみれ(……事務所?)

18: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:22:12 ID:???00
かすみ「そちらは新しく入られた方ですか?」


善子「客分の平安名すみれよ。暫く面倒見る事になってね」


すみれ「宜しく」


かすみ「そうでしたか。じゃ、ここに来るって事は……」


すみれ「用心棒させて貰うらしいわ。取り敢えず下見ってとこ?」


善子「そゆこと」


かすみ「なるほどです。ではこちらへ」


<ガコンッ


すみれ「書類棚の裏……」


かすみ「こっちは組員専用入口です。お客さんは地下の非常階段と店横の裏口から入ってきますよ」


カツカツ…


善子「……うわっぷ!ちょっとかすみ!蜘蛛の巣張ってんだけど!?」


かすみ「ごごご、ごめんなさい!暫くこの通路は使ってなかったので…」


すみれ「凄いわね……こんなのわざわざ作ったの?」


善子「いんや、元々ここいらはパチ屋が建つ大昔から賭場だったのよ。海未さんのひいひいお祖母様……先々代位前から、ウチの物って訳」


かすみ「ここも歴史が長いんです。ま、前時代の遺物ですけどね」


善子「言うじゃない、かすみ」


かすみ「い、良い意味でですよ!?」


すみれ「殆ど悪口よ」


<「……った張った!」


すみれ「……!」

19: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:25:28 ID:???00
<ワイワイガヤガヤ…


壷振「さあ半方、半方無いか!」


客「半だ半だ!!」


客「丁丁丁!」


親「よしっ、こいこい!」


客「クソッタレ、カスじゃねぇか!!」


客「シゴロだ!シゴロだぜおい!」


客「悪ぃな、ピンゾロだ」


すみれ「……凄」


善子「ちょっとしたカジノよ。古き良き日本のね」


かすみ「あ、忘れない内に提案なんですけど」


善子「うん……え今?」


かすみ「ちょっと前に、人気なかったおいちょかぶの一角を閉鎖したじゃないですか?あそこ、麻雀なんてどうです?」


善子「……ふむ」


かすみ「裏雀荘の摘発を受けて、やる場所が無くなって流れたお客とかが最近多くて。ここで麻雀出来る様になったら、お客も増えると思うんですよね」


善子「……分かった、組長に具申しとく。OKだとしても、そんなに卓は置けないけどね」


かすみ「お願いします!」


すみれ「……今は用心棒はいないの?」


善子「そこかしこにいるウチの組員が代わりなんだけど、心許ないのよ。あなたの仕事としては全体の見張り───木戸番ね」


すみれ「あーね……分かったわ」


善子「一応下っ端達のまとめ役がいるから紹介しとくわ。凛!」

20: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:28:44 ID:???00
凛「絶対半にゃあっ!!!」


壷振「勝負!」


凛「にゃにゃにゃにゃ……!!」


壷振「……ピンゾロの丁!」


凛「んにゃあぁッ!!!」


客「はははっ、凛ちゃんまた負けた!」


凛「もうすってんてんにゃあ……あ分かった、イカサマでしょぉっ!?」


壷振「んな訳無いだろ!!」


善子「こら」コツンッ


凛「あたっ。あっ、善子ちゃん!」


すみれ「ちゃん付け……」


善子「コイツは良いのよ、厳密にはウチの子じゃないし。また客に混ざってやってんの?」


凛「暇だったからさー」


善子「ばか、もう貸さないわよ?何なら次はウチの子会社からトゴで貸したげよっか?」


凛「それは勘弁……ん?あなたは?」


すみれ「私?平安名すm───」


善子「待った!」


すみれ「は?」


凛「にゃ?」


善子「ごにょごにょ」


凛「ふんふん……」


すみれ「……何これ?」


かすみ「さぁ……ただ、カシラがあの目の時は大抵何かしら企んでますよ」


善子「……」ポンッ


凛「……お控えなすって!」


すみれ「───!!」


かすみ「え急に?寅さんですか?」


善子「……」ニヤ

21: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:31:33 ID:???00
客「なんだなんだぁ?」


壷振「おっ、余興ですか?」


凛「賭場の盆中でお姉えさんには失礼さんにござんすが、どうぞお控えなすって!」


すみれ「……」チラッ


善子「……」クイッ


スッ


客「おっ、姉ちゃんもかい?」


かすみ「えぇっ?!」


すみれ「ありがとうございます。お言葉にございますから、控えさせて頂きます」


凛「早速お控えありがとうござんす!手前持って生まれた口不調法、もし前後間違えましたら御免を蒙ります!」


ザッ


凛「手前、生国と発しまするは東京秋葉原は音ノ木坂でござんす!親を持ちません風来坊で、寝床は今も昔も盆の上!」


凛「渡世の義理故、園田組に御免を蒙っております!姓は星空、名は凛と申します!」


すみれ「…」


凛「御覧の通りの粗忽者でござんす!発します仁義も後や先、後や先は右や左となり右や左は……」


かすみ「……凛、そんな饒舌だっけ?」


凛「……仁義半ばにして自慢となり法螺となり、打てば響かぬ太鼓となり!もし間違いましたら、あっ御免蒙ります!」


すみれ「……ふふっ」


善子(…やあっと笑った)


すみれ「ありがとうございます。丁寧なるお言葉に対し申し遅れまして失礼さんにございます」


すみれ「手前生国と発しますは渋谷神宮。姓名の儀、姓は平安名、名はすみれと申すしがない旅の者です。縁あって園田組親分さんに御免蒙ります」


壷振「うんうん、やっぱこんなのが1番カッコイイわ」


客「すげぇ、任侠物観てるみてぇだ」


すみれ「向かいます上さんとはお初にございます。お見掛け通りの不束者ですがお見知り置かせられまして、万端宜しくお頼もうします」


凛「ご丁寧なる仁義ありがとうございます!どうぞ、お楽になすって!」


すみれ「それではご仁義になりません、お先に楽になさって」


凛「へい!」


すみれ「あらっ」コテッ


客「はっはっは!」

22: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:34:12 ID:???00
壷振「凛、そういうのは大体一緒に楽にするもんだろ!」


凛「あれ?そうだっけ?間違えたにゃ!」


客達『はははは……!!』


かすみ「ふふっ、締まらないですね」


善子「……さあさ、まだまだお天道様は登る途中!ウチらは陰に隠れても、寂しい懐にゃ日の目を浴びさせていって!」パンパン


客「寂しいは余計だ!」


客「よっしゃ、もうひと勝負!」


壷振「そう来ねぇとな!さあ張った張った!」


<ワハハハ…!!


すみれ「……いい所ね」


善子「暖かいとこでしょ」


凛「す・み・れ・ちゃん!これからここで働くの?」


すみれ「ええ、暫くご厄介になるわね」


凛「そっか、一緒にがんばろーね!ま、楽に行こーにゃ!」


すみれ「はいはい……ふふっ」


善子「……」ニコッ


かすみ「まだこんな時間なのにこの賑わい。眠気覚ましにピッタリの余興でしたね」


善子「気合い入れだけじゃないけどね」


かすみ「?」


善子(ずっとしかめっ面じゃ、疲れるでしょ)


すみれ「……何よ?」


善子「いーえ何でも。さ、今日のところは帰るわよ」


すみれ「え、帰るの?」


善子「今日は紹介だけ。バイトも面接の日から働いたりしないでしょ」


凛「今の面接だったの?」


善子「ものの例えよ。これからすみれを宜しくね、凛」


凛「はーいにゃ!」


善子「ん。じゃ行くわよ」


すみれ「了解」


────

23: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:37:54 ID:???00
<ペカッ


構成員「おっと、100ゲーム以内。こりゃ良いの掴んだかな?」


善子「くらっ!なーにペカらせてんのよ!」ベシッ


構成員「あだっ!す、すいません!」


善子「下にいないと思ったら……まあいいわ。折角の当たりは手放したくないでしょ」


構成員「ま、まあ……」


善子「今日はここで賭場の見張りしてなさい。デコからのタレコミは無いけど、万が一を考えてね。はいお駄賃」ピラッ


構成員「え?!あ、ありがとうございます!」


すみれ「……」


善子「何かあったらすぐ連絡よ。報連相ね」


構成員「おす!お疲れ様です!」


<ウィーン


シトシト…


善子「ちっ、止まないわね。取り敢えず飯でも行きましょ」


すみれ「……ええ、運転するわよ」


善子「ありがとう。頼むわね」


バタンッ


ブーン…


────

24: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:42:52 ID:???00
【小料理屋】


善子「……えーと、瓶ビールで」


すみれ「え?」


善子「あごめん、飲めない?」


すみれ「いや、車……」


善子「あー……まあ若いの呼んで持ってかせるわよ。飲める?」


すみれ「……頂くわ」


善子「ん。それと焼き鳥盛り合わせと、チャンジャと、きゅうりのたたきを」


店員「かしこまりました」


すみれ「……」


善子「……アンタ、煙草は?」


すみれ「吸うけど…」


善子「持ってる?持ってないならあげるけど」


すみれ「あるから大丈夫。ありがとう」スッ


善子「ん」シュボッ


店員「失礼します、瓶ビールです。おあときゅうりのたたきです」


善子「どうも」


すみれ「…」ペコッ


善子「……ほい」


すみれ「……頂きます」


トクトクトク…


シュワー……


すみれ「じゃあ」


善子「ああ良いわよ良いわよ、自分で入れるから」シュワー…


すみれ「させてよ…」


善子「……乾杯」スッ


すみれ「……」


キン…

25: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:45:26 ID:???00
善子「んぐ……ぷはっ、真昼間から飲むビールが1番美味いっ!」


すみれ「ぷっ……ごくっ」


善子「……」


すみれ「…何?」


善子「ホント……事情は分かってるけどさ」


すみれ「?」


善子「もっと笑っても損は無いわよ」


すみれ「……さっきの……凛か。善子の差し金ね」


善子「あの子のくるくる回る口上は面白かったでしょ?フーテンって奴よ。元はどっかの組の流れもんらしいけど」


すみれ「それは良いけど、笑うとか何とかってのは何」


善子「暗いってのよ。そりゃ事情が事情だから、自分だけが楽しくやるなんてのはアンタの性質上、受け入れられないんでしょうけどね?」


すみれ「……」


善子「ずっと閉じこもるだけ閉じこもっても、崩れるのは自分の心だけよ」


すみれ「親がとっ捕まって、姉妹分が駆けずり回ってるかもしれないってのに───」


善子「アンタはアンタ、姉妹は姉妹!そして親分は親分!子としての本分遂げたいのは分かるけど、それじゃアンタが持たないって言ってんの!」


善子「台場の奴等に喧嘩売ってきたから、そんな生傷作ってウチに来たんでしょ。みっともなくとも、何がなんでも生きる為に」


すみれ「それは……」


善子「今の時代はね、相手を殺りさえすれば勝てるって時代じゃないの。これだけは分かっときなさい」


すみれ「……」


善子「アンタが死んじゃ、元も子も無いって事。あのままのアンタじゃ、死に向かってる様にしか見えなかった」


善子「園田組の客分として、若頭として。アンタにそんな事はさせないわよ。覚悟しときなさい」


すみれ「…ごめん」

26: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:48:05 ID:???00
善子「あーやーまーるー事じゃなーいの!」ペシッ


すみれ「あうっ」


善子「今は耐え忍ぶ時よ。どうせ生きるなら、生きたもん勝ち」


すみれ「……そうね」


店員「失礼します、チャンジャと焼き鳥盛り合わせです」


善子「ありがとう。さ、食べなさい」


すみれ「……もうひとつ聞かせて」


善子「ん?」


すみれ「何でそんな、その……優しくしてくれるの?」


善子「そりゃ客分だからよ」


すみれ「それだけで?」


善子「頭の古いアンタなら分かるでしょ。客分ってのはそれ相応に扱わないと」


善子「……ま、それ抜きにしても。同年代のアンタを……何かほっとけないのよ」


すみれ「……!」


───『ほっとけないんだよ。すみれちゃんは』


───『だから、私がついていてあげないとね!』


善子「……すみれ?」


すみれ「……いえ、ありがとう。善子」


善子「いーの」ゴクッ


すみれ「食べていい?」


善子「勿論」


───

27: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:51:17 ID:???00
【原宿、元神宮一家事務所】

【現 台場組直参 朝香興行事務所】


果林「もうちょっと右……そうそう、看板はちゃんと掲げないとね」


希「あーあ……ウチの事務所が」


果林「居抜きさせてもらうわ。ま、看板変えただけよ?」


希「でもこれで事実上、完全に元の神宮一家は……無くなったわ」


果林「誰だって死にたくなんか無いでしょう。生きる為、生き残る為、アナタがしたのは英断だったのよ」


希「……」


果林「さて、私はちょっとビッグサイトでベンチャー企業の展示会があるから行ってくるわ。来年出展の下見にね」


希「ウチは?お台場からさんざ連れ回しといてほっとくん?」


果林「朝香興行傘下としての神宮一家よ?普通に事務所にいればいいじゃない」


希「ゆっるいなぁ。他組織の元ボスを野放しにしとくん?」


果林「あからさまに敵対してたり戦争してたとかなら話は別だけど、希のとことは別に何も無かったじゃない」


果林「だから監禁したり、監視とかもしないわよ。そんな事大っぴらに出来る時代じゃないもの」

28: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:54:20 ID:???00
希「大っぴらやなくても隠れてすればええやん」


果林「……何、されたいの?拘束」ズイッ


希「…イヤや。痛いの嫌いだもん」


果林(誘い受けね)


果林「じゃあ大人しく私の帰りを待ってなさいな」


希「……」


果林「行くわよ。車出して」


構成員「はい、少々お待ちを────」


パァン…!!


構成員「───あ?」ドロッ


ドサッ


果林「……───!!!?」


希「あかん、ハジキや!!」


希(外したな、取り敢えず逃げて……!)


構成員「果林さんを守れ!!」


構成員「鉄砲玉がいるぞ!!」


<?「……クソッ!!」タタッ


果林「逃がさないで!!」


構成員「待てコラァッ!!!」タタッ


構成員「果林さん頭下げて!!」


構成員「アンタもだよ!」


希「……っ!」


───

29: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 00:57:17 ID:???00
善子「……どぅあぁからぁ!!ひっく、あたしはヨハネだって言ってんでしょ!!?」


すみれ「アンタがヨハネなら、私は何かしらねぇ!?時代遅れのグソクムシ!?」


善子「どっからグソクムシ出てくんのよ!」


すみれ「わっかんない!」


すみよし『あっははは……!!』


?「……うるせぇな」


善子「……あ?」


?「うるせぇって言ってんの」


すみれ「……」


善子「何?……半グレさん」


半グレ「あ?」


すみれ「待った。騒がしくしてごめん。気をつける様言っておく」


半グレ「……」


すみれ「行くわよ、善子」


善子「んにゃー……」


<テクテク


半グレ「……」クイッ


半グレ「やる?」


半グレ「そこそこ持ってそうじゃんね」


ゾロゾロ…


すみれ「……」


善子「……すみれ」


すみれ「ええ。どうする気?」


善子「騒がしかったのは私だもんね……かと言って、素直にボコられる気は無いわ」


すみれ「やるの?向こうは……4、5人かしら」


善子「やる分には大した事は無いけどね。いきなり襲われない様、この大通りを歩き続けて上手く裏に行って」


すみれ「分かったわ」


テクテク…


────

30: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:00:15 ID:???00
【裏路地】


善子「……ここらでいっか」


すみれ「……ん」


善子「向こうからどうせ話しかけてくるしね」


すみれ「向こう待ちなの?」


<半グレ「ねーねーおねーさん達!」


善子「ほらね」


すみれ「……」


半グレ「さっきの迷惑料としてさ、金払ってくんない?」


半グレ「2人併せて10万で良いよ。そんくらい持ってそうだしさ」


半グレ「そっち系の人でしょー?あるよね、そんくらい」


善子「うるさくしたのは悪かったわ。ただ10万か……持ってないわよ。にしても高過ぎるしね」


半グレ「そんくらいも持ってないの?」


半グレ「ヤクザもたかが知れてんね」


すみれ「ッ……」


善子「まだ待って、すみれ」ボソッ


半グレ「どーする?」


半グレ「……ヤクザでしょ?じゃあいいじゃん」


チャキッ


すみれ「光り物抜いて来たけど、まだ?」


善子「……殴りかかってきたら、あとはご自由に。私もそうする」

31: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:03:29 ID:???00
半グレ「……」スッ…


すみれ「……」


半グレ「じゃあ、あるだけ出して。顔に傷が付く前に」


半グレ「まあもう傷だらけだけどね。また増えるよー」


半グレ「何なら絆創膏の上から刺しちゃえ!」


善子「……」


すみれ「……」


半グレ「何とか言えよ!」ヒュッ


ザクッ


すみれ「……っ」タラーッ


半グレ「あーあ、折角キレイな顔に傷が────」


ドゴッ!!


半グレ「がッッ……!?!!」


ドサッ


すみれ「……開戦の合図よね」


半グレ「て、てめぇっ!!」


ズドォッ!!


半グレ「ごぼォっゥぇッ!!?」


<ガッシャァン!!


善子「イエス。仲間傷付けられちゃあ黙ってらんないわ」


半グレ「ッざけんなぁァッ!!!」ブンッ


ゴンッ!!


善子「……い゛ッづぅ……!!」


すみれ「善子!!」

32: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:06:15 ID:???00
善子「大丈夫、効いちゃいないわあッ!!」ガシッ


半グレ「ぐえっ!?」


善子「おらァッ!!」


ボゴォッ!!


半グレ「ごっふァッ!!?」


すみれ「なら良いけど……ッ!!」ヒュッ


バキィッ!!


半グレ「あだぁっ!!?」


すみれ「こんな光り物、ダサいからやめなさい」ポイッ


<カラーン


半グレ「知るかよ!」


すみれ「喧嘩は素手の方が良いわよッッ!!」ヒュッ


ベキィッ!!


半グレ「あぎゃァッ!!?」


ドサァッ…!


半グレ達『』


善子「若い癖に、もう終わり?」


すみれ「こんなもんでしょ」


善子「コイツらこそ気を付けるべき奴等よ。ウチらと違って、まともな統制が無いし」


すみれ「その代わり瓦解しやすいじゃない」


善子「まあね……」


<「抑えろ」


善子「……は?」


すみれ「───っ!?」


ガシッ

33: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:09:54 ID:???00
善子「ちょっ、のびてたんじゃないの!?」


半グレ「うるせぇっ!!」


すみれ「離せ……ッ!!」


半グレ「メイさん!!コイツらっす!!」


メイ「お前?喧嘩売ってきたの」スッ…


ヒョイッ


すみれ「吹っかけてきたのは、コイツらよ」


善子「メイ、だっけ?そのナイフどうする気?」


メイ「お前に関係ねぇ。これをどうしようと私の勝手」


半グレ「こいつが最初に殴ってきたんです!!」


メイ「へー」


すみれ「だから、最初は───」


ザクッ


すみれ「───っ、あ」


ポタッ、ポタポタッ


メイ「じゃあお前からな」


善子「……す、すみれぇッ!!!」


すみれ「っ゛、い゛……」


メイ「痛ぇか、腹?ウチの奴等の方が痛いと思うけどな。ヤーさんに喧嘩売られたって言や、サツも動いてくれっかな」グッ


すみれ「……ッ゛!!」


メイ「……ンだ、その目」


すみれ「……」


メイ「何とか言えよコラァッ!!!」


すみれ「……どうぞ」


ポツポツ…


メイ「……は?」


すみれ「半グレ気取るってんなら……1人くらい殺してみろってんのよ」


ザーッ…

34: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:14:09 ID:???00
メイ「……」


ゴツッ


半グレ「テメッ───」


メイ「頭突きになってねぇぞ」


すみれ「頭突きするつもりなんか無いわよ」


メイ「何お前、死にてぇの?」


すみれ「……」


善子「すみれ、アンタ……」


メイ「死にてぇのか、いいよ。しょうがねぇから手助けしてやる」


すみれ「あんた、親は?」


メイ「あ?関係ねぇだろ」


すみれ「親は?」


メイ「……いねぇよ、だから何だよ」


すみれ「私もいない。厳密に言えば、知らない」


すみれ「神社に捨てられてたから」


メイ「……」


すみれ「拾って育ててくれた親がいる。その人が……死ぬかもしれない」


すみれ「私と同じ様な子もいる。その子はきっと今頃、仇討ちの為に駆け回ってる」


メイ「グダグダグダグダ何を……」


すみれ「私はもう……どうせ何も出来ない」


善子「……!」

35: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:17:51 ID:???00
すみれ「親1人助けられなくて、逃げて、何も出来なくて」


すみれ「……死んだっていいわ。こんな人間」


メイ「……」


善子「すみれぇッ!アンタ私の言った事忘れたの!?死んだって何も───」


半グレ「メイさん!殺っちゃって下さいそんな死にたがり!!」


メイ「……」


すみれ「半グレに命握られてさ。何が渡世の義理よ、情けないったら情けないわ」


すみれ「……いいわ、もう」


善子「すみれェッ!!!」


メイ「……やなこった」


ズシャッ…


すみれ「いッ……!」


メイ「死にたがりは殺らねぇ、殺ってやらねぇ。ウチの奴等にした落とし前として、生きやがれ」


すみれ「……」


メイ「そいつら離せ。行くぞ」


半グレ「で、でも」


メイ「あ?」


半グレ「……はい」スッ…


善子「っ……!」バッ


メイ「じゃあな。雑魚が」


<スタスタ…


善子「……すみれ」


すみれ「……」フラッ


ドサッ…


善子「この、バカ……!!」


ザーッ…


────

36: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:20:12 ID:???00
【朝香興行 事務所内】


希「……」


果林「あなたの差し金?」


かのん「……ッ、離せ!!」


構成員「動くんじゃない!」チャキッ


希「アンタの所で軟禁されててどうやって連絡すんの?」


果林「……」


希「監視下じゃなくても管理下だったのに、外の奴らに連絡なんか出来へんよ」


希「やっとお台場から出て来れて今日、ここに来れたのに。それをどうやってこの子に伝えるん?」


果林「じゃあ、この子のやった事に関係ないのね?糸引いてないのね?」


希「何も知らんよ。ウチは」


かのん「……」


果林「……そう。ならいいわ」


希(……今はこう言うしか無い。ごめん、ありがとうかのんちゃん)


かのん(……それで良いです、希さん……!)


果林「えーと、澁谷かのんちゃん?」


かのん「……」ギロッ


果林「ふふ、そんな睨まないでよ」


かのん「殺すならとっとと殺して」


果林「そんな事しないわよ。今日び死体隠せるとこも少ないの。海も海保がうるさいし、山も警察が常駐してるしね。正義感のお強い田舎モンも多いし」


かのん「……」


果林「でもね、さっきのおイタの事は謝ってもらわないと。ウチの子が死んでないにしろ入院しちゃったから」


かのん「そのまま死んでりゃ良かったんだ」


果林「ふふっ、血気盛んね」


希「……っ」

37: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:23:06 ID:???00
果林「さて、落とし前としてあなたにやって欲しい事があるんだけど」


かのん「は?」


果林「鉄砲玉として来たのなら、鉄砲玉として任務を果たして欲しいの」スッ


かのん「……」


果林「この子を始末して」


かのん「……!」


希「海未、ちゃんを……」


果林「この子、顔に似合わず意外と強硬派っぽくてね。ウチの組の使者を死者にしたみたいで……やだ、愛のが伝染った?」


果林「大人しくウチに下る気が無いみたいだし、かと言ってほっとけば歯向かうだろうし。なら親が死ねばバラバラになって組は霧散するでしょう、小さいとこだし」


果林「希がウチに来たあとの、この事務所みたいにね?もぬけの殻だったものね」


希「やかましいわ。皆生きてくれてるんなら万々歳よ」


かのん「希さん……」


果林「あ、希のお友達なんだっけ?説得出来るならしてもいいけど、頑固そうだし無理じゃない?」


希「……まあ、無理やろね」


果林「でしょ?という事で、あなたに行ってきてもらうわね」


かのん「イヤ。台場の奴らの言う事なんか聞けない」


果林「あら?状況が分かってなかったのね」クイッ


構成員「……」チャキッ


希「……っ!!」


かのん「希さん!!」


果林「あなたの大好きな希はこっちの手の中よ?あなたが職務を遂行出来ないのなら、こっちにも考えがある」


かのん「こンの……ッ!!!」


果林「そうね……1週間あげる。来週までに園田海未を殺れなかったら、あなた共々希も殺す。神宮一家は、終わり。これは譲歩よ」


かのん「……!」


果林「武器は貸したげるわ。準備出来たら、いつでも実行して。それまで希はウチで預かっておくから。良い?」


かのん「……」


果林「……分かったわね?澁谷かのん」


構成員「……」チャキッ


希(…かのんちゃん……!)


かのん「……はい……ッ」


────

38: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:26:09 ID:???00
【園田組 邸内】


<ザーッ…


すみれ「……ん」


善子「……おはよう、ねぼすけ」


すみれ「……あれ、私……半グレに絡まれて」


善子「覚えてないの?」


すみれ「喧嘩したのは覚えてるんだけど……何があったっけ」


善子「……」


<ガラッ


すみれ「!」


海未「……おはようございます、すみれ」


すみれ「海未さん……」


スッ…


海未「体調は如何ですか?」


すみれ「私……刺されたんですか」


海未「その内に思い出せると思いますけど、その通り。あなたは半グレに腹を刺されてます」


海未「割と深かったので……3日間寝っぱなしでしたよ。余っ程死んだのかと」


すみれ「……」


─── 『死にたがりは殺らねぇ、殺ってやらねぇ』


───『ウチの奴等にした落とし前として、生きやがれ』


───『じゃあな、雑魚が』


すみれ「……っ」パシッ


善子「思い出したみたいね」


海未「あなたがウチに来てすぐ気付きましたけど、かなり直情的な子ですね」


すみれ「……」


海未「……古いやり方に固執し、親を守るという題目のもと、自分を正当化しようとしている節がある。未熟な、駆け出しにありがちな事です」


善子「海未、さん……?」


すみれ「────っ!!!」


ドスッ


すみれ「い゛ッッ!!?」


善子「うわ、傷口……」

39: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:29:26 ID:???00
海未「怒ってるんですよ、すみれ」


グググ…


すみれ「あ゛ッ、いッ゛……!!?」


海未「親が囚われ姉妹分も所在不明、痛めつけられここまで逃げてきたあなたの心中……察するに余りあります」


海未「ですがそれはそれ。半グレ共に襲われる中、ウチの若頭を放っておいて自分だけ死のうなんざ……随分義理に欠いてませんか?ん?」


すみれ「……っ!!」


海未「あなたは我が園田組の大事な客分です。だからこそ善子はあなたを守り、仁義によってあなたも善子を守って欲しい」


海未「でもね、例えどうなっても私は、死んで欲しくなど無いんです。あなた達のような良い子は」


すみれ「…」ポロッ


善子「……」


すみれ「私なんか……生きてちゃダメなんです。かのんも希さんもきっと、死ぬ気で頑張ってるのに」


すみれ「私1人だけ逃げて海未さんに世話になって、善子に面倒見てもらって……こんな、こんな情けないヤクザがいますか!?」


海未「だからって死を選ぶのは愚か者のする事でしょうが!!!」


すみれ「…!」


海未「かのんや希が何故頑張っているか、あなたや他の者に生きていて欲しいからでしょう!!?そうやって受けた恩があると自覚してるなら」


海未「あなたは生きる事が恩返しになるんでしょう!!死んだって、なンっの得にもなりゃしないんだから!!!」


善子「……」


すみれ「海未さん……」


海未「死ぬな、平安名すみれ。情けなくても、みっともなくても生きていきなさい」


海未「あなたはもう、私の子ですよ」


すみれ「……っ、ぐすっ……」


善子「……お腹は?」


すみれ「ひっく……穴空いてる」


善子「知っとるわ。空いてるかって」


すみれ「……空いてる」


海未「ご飯にしましょう。善子」


善子「はい。ピザにしましょっか」


すみれ「米が良い……」


善子「いや炊くのダルい……」


────

40: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:32:09 ID:???00
────


【雀荘】


オーナー「園田組について?」


かのん「……」


オーナー「うーん……その園田組の賭場に誘われてっけどね。そこで組の存在知ったくらいだし、あんま他に知らないんだよなぁ。小さいとこっぽいしさ」


かのん「賭場?」


オーナー「そ。ちょっと行ったとこにパチ屋があるんだけど、そこの地下にそこそこ大きい賭場があるんだよ」


かのん「そこに園田組の奴は来るの?」


オーナー「常駐してんのは下っ端とかだけだよ。たまーに若頭が来るくらいで。私も見た事ないよ」


かのん「……」


オーナー「そういや、私を誘ってきた園田組の奴が今日来るよ。私も釈放されたばっかで話すのは久しぶりなんだ」


オーナー「あなたも同業なんでしょ?」


かのん「……うん、雀荘じゃないけどね。カードとかそっち」


オーナー「レトロな賭場だから西洋系のギャンブルが入れる余地あるかなぁ」


<ガチャッ


かすみ「お邪魔しまーす!ムショでも元気だった?」


オーナー「何とかね。また活動出来そうなら頼むよ」


かすみ「丁度持て余してるスペースがあるからさ、そこに食い込める様頼んでみるよ。あれ?あなたは?」


かのん「同業です。オーナーさんとは知り合いで」


オーナー「ちょっとかすみに話があるらしいんだ。あ、ちょっとコンビニ行ってくる。タバコ買ってくるわ。なんかいる?」


かすみ「うーん…あ、じゃあG's買ってきて欲しいです!」


オーナー「はいはい、自分で買っておけばいいのに」


<ガチャッ

41: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:35:06 ID:???00
かすみ「賭場には来ないよ」


かのん「知ってる。でも若頭は来るんでしょ」


かすみ「あなたの狙いは園田海未でしょ。鉄砲玉なら鉄砲玉らしく屋敷に突っ込めば?」カチッ シュボッ


かのん「無駄死にさせる気なら意味無いよ。こんな事で死んでやらない」


かすみ「ははっ、どんな屋敷想像してんの?ただの小さい弱小組織の、その辺の普通の家だよ?」フー


かすみ「まあちょっと大きいくらい。場所も調べりゃ出るよ。組員も全然いない。ウチらに比べればね」


かのん「だからってたった1人で屋敷突っ込んで勝てる程無敵じゃないんで」


かすみ「行けると思うけどなぁ。別に」


かのん「あなたは何なの?台場組なんでしょ?朝香に言われて来たけど」


かすみ「うん、潜入。園田と津島って凄い甘ちゃんで、それっぽい事言って同情誘ったら普通に入れたんだよね」


かのん「……」


かすみ「でもかすみん結構頑張って、賭場の会計任せられる位にはなったんですよ~?んで、時期が来るまでずっと賭場にいたって訳」


かのん「時期って何?」


かすみ「園田組壊滅の時期だよ。あなたが急先鋒ってこと」


かのん「っ…」

42: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:38:53 ID:???00
かすみ「まあでもあなたの仕事は組長の襲撃だけ。賭場とかの方はかすみんが請け負うから」


かのん「……じゃあとっとと終わらせてやるから、園田の行動予定とか教えてくんない?」


かすみ「基本ずっと屋敷から出ないよ。どこもそんな感じじゃん」


かのん「あなたのとこの朝香はベンチャー企業運営してるくらいだけど」


かすみ「我ら台場組は時代の最先端を行ってますから!」


かのん「……ふん」


かすみ「……あ、でもあった。外出てくる時」


かのん「いつ?」


かすみ「明後日。先代の墓参り。連れていくのも構成員1人か2人と若頭だけ」


かのん「随分少ないんだね」


かすみ「時代柄、筋者が大っぴらに動いたらうるさいもん」


かのん「……場所は?」


かすみ「音ノ木坂共同墓地の1番奥。時間は知らない。ずっと張ってりゃ良いんじゃない?」


かのん「……了解」


かすみ「あ、1人で動いてね。協力者なんかいないと思うけど、今ゾロゾロ動かれても困るだけだから」


かのん「……」


───

43: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:41:25 ID:???00
【賭場】


壷振「さあ丁方無いか丁方無いか!?」


客「半だ!」


すみれ「……」


凛「丁にゃあ!」


壷振「勝負……ゴゾロの丁!!」


客「あぁ……」


凛「やったぁ!!」


すみれ「やっと勝ったのね、凛」


凛「危うくすっからかんにゃ、ギリギリだよぉ」


すみれ「そんなになるまでやるから……」


凛「……すみれちゃんて、いつも傷だらけだね」


すみれ「……何、急に」


凛「ううん……さあもうひと勝負にゃ!!」


すみれ「……」


───

44: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:44:03 ID:???00
客「じゃあまたな、凛」


凛「ばいばい!また来てにゃ!」


すみれ「さて……かすみは?」


凛「奥で計算中にゃ。半年の決算だから時間かかると思うよ」


<「あら、そういえばそうだったわね」


すみれ「善子、今来たの?」


善子「うん。明日の準備もあってね」


凛「明日?何かあるの?」


善子「先代の墓参りがあるのよ。あ、すみれも来てね?」


すみれ「良いの?部外者なのに」


善子「あんたはもう殆ど園田組よ」


すみれ「……そう」


凛「じゃあ、すみれちゃんもゆくゆく盃交わすのかにゃ?」


すみれ「いや、それは……」


善子「考えといて。別に代紋違いの盃交わしても大丈夫でしょ?姉妹分、ならない?」


すみれ「まあ……私は良いけどさ」


善子「……あなたの一件が、片付いたらね」


すみれ「……うん」


構成員「善子さん、すみれさん。今いいですか?」


善子「ん?」


構成員「この写真を見て下さい」ピラッ


すみれ「写真?」


構成員「最近、屋敷周辺にいた女なんです」


すみれ「……!!」


善子「すみれ?」


すみれ「かのん、だわ」


善子「!!」


構成員「すみれさんから聞いていた特徴と一致してます。近くにいるかもしれませんよ」


すみれ「何で、ここに……」


善子「すみれがここにいる事を、どこかで知ったのかしら」


すみれ「探してきていい?」


善子「ええ、勿論よ。ただもう夜遅いし、まだ近くにいるとは……」


すみれ「……」

45: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:47:19 ID:???00
<かすみ「うーん……」ガチャッ


善子「あら、かすみ」


かすみ「……合わないんですよね。幾らか」


善子「……は?」


かすみ「今月までの合算と最終的な帳簿にズレが出てます。これ、幾らかかすめ取られてると思うんです」


凛「り、凛そんな事しないよ!?」


構成員「自分もですよ!?」


すみれ「……」


善子「全員動くな!!」


構成員「!」


善子「すみれ、一応アンタもよ」


すみれ「勿論。しっかり調べて」


善子「いくらくらい?」


かすみ「そこまで高い額ではないですけど。30万程」


善子「現金としてパクられてる訳?」


かすみ「恐らく。考えられる容疑者は私、凛、すみれさん、現金洗浄員のあなたです」


構成員「…」


善子「あんた、パチンコ負けてるからって」


構成員「しないですよ!!調べてください、現金なんて持ってないですから!!」


すみれ「……」


善子「……家も調べるわよ」


構成員「どうぞ」


善子「すみれ、凛、かすみ、あんた達もね」


かすみ「勿論です」


凛「凛じゃないにゃあ……」


すみれ「疑いかけられちゃ仕方ないわ。大人しく受け入れなさい」


善子「はぁ……今日は寝れないかもね」


───

46: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:50:40 ID:???00
【構成員自宅前】


善子「ふー……」


すみれ「……」


プルル


構成員「……!」ピッ


凛「来た!」


かすみ「……」


構成員「うん、うん……分かった」


ピッ


構成員「かすみさんの自宅からは何も。凛さんはそもそも賭場で寝泊まりしてるんで、潔白はかすみさんが証明済みです」


善子「すみれも今は園田組に住んでるから調べるのは簡単だったわ。そもそも、荷物も殆ど何も無い状態で来てるしね」


かすみ「……では、残るはあなただけですね」


構成員「分かってます……どうぞ」


すみれ「お邪魔するわ」


ガチャッ


善子「……案外綺麗じゃない」


構成員「これでも綺麗好きなんですよ」


かすみ「ふーん……」


凛「あ、ゆいがおーだ!可愛いにゃ」


すみれ「何これ?」


凛「すみれちゃんゆいがおー知らないの?見てこれ、ちょー可愛くない?」


すみれ「……まあ、うん」


善子「タンスとかもひっくり返すけど、いい?」


構成員「勿論です。潔白ですから」


すみれ「……」


───

47: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:53:23 ID:???00
善子「ふう……あんたオシャレに興味無いのね。お陰で戻すのに時間かかんなかったわ」


構成員「まあ……」


凛「うん、でも何も無かったね」


善子「ええ。ごめんね、疑って」


構成員「いや当然の事ですし!でも、どうしましょうかね」


かすみ「……」ガサゴソ


善子「かすみ?」


凛「ゴミ箱にはカップ麺の空き箱と、割り箸しか入ってなかったよ?」


構成員(…何してんの、かすみさん……!?)


かすみ「……割り箸ね、こんな黒くなるっけ?」スッ…


構成員「!!」


善子「そういう素材なんじゃないの?」


かすみ「いえ、割り箸の原料的に黒はまず無いんです。基本白か、黄色っぽい白。高級店の箸とかなら別ですけど」


構成員(な、何言う気!?)


かすみ「よく見て下さい。全体的に黒色と言うより、黒ずんでる。まるで"焦げた"みたいに。目眩しのために全部を炙ったんだ」


凛「あ、炙る?何でそんな」


かすみ「……白粉のパケの封を閉じる時に炙るんですよ。割り箸で挟んで固定してね」


構成員「────ッッッ!!!?」


善子「……おい」


構成員「ち、ちが、薬なんかないっすよ!?第一今は、金の在り処が何処なのかって───」

48: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:56:25 ID:???00
すみれ「ねぇ、写真もう一度見せてくれない?」


凛「え、今!?」


構成員「……!?」


構成員(な、何考えてんの、こいつ……!?)


善子「……すみれ?」


すみれ「ね、ホントにかのんだったか確認したいの。見せて?」


構成員「……は、はあ」スッ…


ガシッ!!


構成員「い゛……っ!!?」


グググ…!!


すみれ「……この指の間の穴は、何?まるで何か"針みたいな物"を刺した穴だけど」


構成員「────っあ」


すみれ「そりゃ、賭場の金は持ってないわね……全部シャブに変えたんだから」


構成員「……!!!」


善子「───ッッッ!!」ガシッ!!


構成員「か゛、は……ッ!!?」


善子「どこ?その粉は」


構成員「あ……あが……っ!!」


善子「言え」


チャキッ


凛「ひっ……!」


すみれ「善子」


善子「殺しゃしないわよ。今はね」

49: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 01:59:59 ID:???00
かすみ「……」


善子「その粉はどこ?……とっとと吐けぇッ!!!!」


構成員「ぜ……全部…売りました……ッ!!」


善子「……じゃあ、その金は?」


構成員「ぐっ……!!」


かすみ「……」


構成員(か、かすみ、さん……!!何で私売ったの……!?)


プルル


かすみ「……はい」ピッ


すみれ「……」


かすみ「……はあ、そうですか」


ピッ


善子「何?」


かすみ「賭場の組員からです。全額戻ってきたと」


善子「……は?」


かすみ「金を盗ってシャブに替え、それを売った金を今戻した……そんなとこ?」


構成員「……っ!……っ!!」コクコク


善子「……誰が?こいつが?じゃないわよね?協力者がいるわね。誰?」


かすみ「……」


凛「ね、ねぇ、言おう?善子ちゃんも、正直に言ったら許してくれるよ……」


善子「あんまその気無いけど。金を盗み、シャブを売り、あまつさえ自分でも喰ってる」


すみれ「……同情出来ないわ」


善子「ごめん。あんた結構好きだったんだけど……甘やかし過ぎた」


チャキッ


構成員「がぁ…ッ!!?」


善子「組に背くなら、殺すわ」


凛「にゃあ……っ」フルフル

50: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:02:41 ID:???00
かすみ「善子さん」


善子「何?」


かすみ「気持ちは分かります。ただ、時間も時間ですよ。海未さん、墓参り行くんじゃないんですか?」


善子「……」


かすみ「私が賭場の責任者って訳じゃないですが、私の管轄から出た不始末でもあります。その子の後始末は、私に任せてくれませんか」


すみれ「……善子、取り敢えず…金は戻った。一旦、それで手を打たない?」


善子「……ッ!」


すみれ「確かにその子の処罰はするべきだけど、何より海未さんの墓参りよ。お1人で行かせる訳にはいかないでしょ」


善子「…ちッ!……かすみ、任せるわよ」パッ


ドサァッ!


構成員「ごほっ、ごほっ……!!」


善子「4時か……今から帰れば3時間は寝れるか」


善子「行くわよすみれ。凛、付き合わせてごめんね。帰っていいわ」


凛「う、うん……またね、善子ちゃん」


すみれ「……」


構成員「はぁッ……はぁ……」


すみれ「……かすみ、この子を頼むわね」


かすみ「お任せあれです」


<ガチャッ


<テクテク…


凛「……」


構成員「……なんですか」


凛「……ううん。また会おうね」


構成員「……っ」


凛「かすみちゃん、また」


かすみ「はいっ」


<バタンッ

51: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:05:13 ID:???00
構成員「……何で引っ掻き回したんですか?」


かすみ「ああいう手合いってね、外からの攻撃には強いけど……中からの攻撃には滅法弱いんだよ」


かすみ「ただでさえ少ない構成員がご法度の薬やってて、金まで盗んで……気付けば金は戻ってるしね。あはは、疲れたろうなぁ」


構成員「本当に戻したんですか?わざわざ」


かすみ「いや全然?もう台場組に送ったし。シャブ諸共。あとの捌きは、りな子がインターネットでするしね」


構成員「…そうすか」


かすみ「あ、ゆいがおー貸して。残りの薬入ってるでしょ」


構成員「あ、はい」


ーーーー


凛「……台場、組!?」


<ガチャッ


凛「!!」


チャキッ


かすみ「……かすみん、結構凛の事気に入ってたんだけどな」


凛「……っか、かす、みちゃん……!!?」


かすみ「悪いけど、付いてきてくれる?」


────

52: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:08:57 ID:???00
【次の日、園田組邸内】


すみれ「すぅ……」


善子「……」スヤー


<ガラッ


海未「……」スッ…


カンカンカンカンカン!!!!


すみれ「のわぁッ!!?」すってーん


善子「何ぃ!?カチコミィ!!?」がっしゃーん


海未「遅くに帰って来たと思ったら、寝坊ですか!」


すみれ「す、すいません……」


善子「実は昨日色々ありまして……」


海未「詳しくは道中聞きましょう。朝ごはんですよ。食べたらすぐに行きますからね」


すみよし『はーい……』


────

53: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:13:15 ID:???00
ブーン…


善子「……という訳です。あの子は禁を破った……それは厳罰に処さなければと」


海未「……はぁ。若い身空でどうして薬など」


すみれ「……」


海未「その件は善子にお任せします。ただ、出来れば温情をかけてあげてください。あの子ならきっと改心してくれる」


善子「…善処します」


すみれ「……お言葉ですが」


海未「……」


すみれ「組の決まり事というのはカタギのそれと比べ物にならない程、固い物だと思っています」


善子「……」


すみれ「私は組にお世話になっているだけの厄介者です、出過ぎた事を言っている自覚はあります。ですが、あの子に……かける温情は無いのではないかと」


海未「では、どうしますか?殺すのですか?」


すみれ「……そう思われる位の責め苦を与えた方が良いかと」


海未「賛成出来ませんね」


すみれ「……」


海未「我々がされるのなら分かります。もう全身稼業に身をやつしていますから、私達に先も後も無い」


海未「でもね、彼女はまだ若い。1度付いた汚点ではありますが、彼女次第でまだまだ人生どうとでもなる。違いますか?」


すみれ「……極道も、一度の過ち位は許す様になってるんですね」


海未「頭の古ーいすみれには理解し難いかもしれませんが、良いじゃないですか。結局、全て人それぞれが決める事ですから」


善子「……まだまだ青いのよ、私達は皆」


すみれ「……青い菫か」


構成員「そろそろ、到着します」


────

54: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:17:15 ID:???00
【音ノ木坂霊園】


キキッ


ガチャッ


善子「どうぞ、海未さん」


海未「ありがとうございます」


構成員「こちらへ。すみれさんも」


すみれ「ありがとう」


バタンッ


シトシト…


善子「傘をお願い」


構成員「はい、海未さん」


バサッ


海未「ありがとう。では行きましょうか」


<ガサッ


善子「!!」


すみれ「……誰?」


海未「そんな大袈裟な。風の音では?」


構成員「いや……います」


善子「いるのは分かってるわ。出てきなさい!」


<……ガサガサッ


すみれ「……!」


<スッ…

55: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:21:29 ID:???00
かのん「っ……」


すみれ「っか、かのん……ッ!!?」


かのん「何で……?何で、すみれちゃんがここにいるの……!?」チャキッ


善子「は、はァ!?かのんって、アンタ───」


構成員「銃を下ろして!!組長、後ろに!!」


かのん「何でいるの!!?すみれちゃんがいたら、その人を撃てないじゃんか!!!」


すみれ「こっちのセリフよッ!!何でアンタが海未さんを狙うの!!?」


かのん「だ、だって……!!」


海未「台場の差し金ですか?」


すみれ「!!」


海未「……やらされてるんでしょう。本当にただ私を殺す気なら、茂みから撃てば良かった。動揺が私たちに伝わり、敢えて身をさらけだしたのは……すみれがここにいたからですか?」


かのん「ッ……!」


海未「教えて下さい、あなたの今の立ち位置を」


かのん「……希さんが……事務所で監禁されてます」


すみれ「っ、希さんは生きてるの!?」


かのん「うん。助ける為に事務所に戻って来た朝香を撃とうとしたんだけど、下っ端に当たって……落とし前に、園田組の親分さんを弾いてこいって」


かのん「失敗すれば、私も希さんも殺す……そう言われた」


すみれ「アイツら……ッ!!」


善子「すみれに感謝ね。あなたがいなかったら今頃海未さんは撃たれてた」


海未「とにかく、あなたはこのままウチに来なさい。共に希の救出作戦について考えましょう。猶予はあまり無いようですが」


かのん「期限は1週間以内と言われました。一応、まだ3日ほど時間はあります」


善子「しかし……何でこんな失敗前提みたいな作戦を?そりゃすみれがいたから良いものの」


かのん「ハナから成功する訳ないって思ってたんじゃないかな。体のいい汚れ仕事を押し付けて、希さんを孤立させたかっただけじゃ……」


すみれ「奴等にとって私らはただのコマ。消えてくれれば万々歳って事よ。ついでに掃除もしてくれりゃ……それでよし」


善子「……ていうかちょっと待って」


構成員「善子さん、傘を貰います」


善子「ええ」


構成員「よっと……」


ブンブン

56: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:24:50 ID:???00
かのん「…」


善子「何でここに来るって……分かったの?一体全体、誰から聞いた?」


かのん「それは、あなたの組の────」


パァン…!!


海未「……───っあ」


ドサッ…


善子「…っ、うみ、さん……ッ!!!?」


かのん「そ、そんな……っ!!?」


すみれ「伏せて!!!」


構成員「……ッ!!」バッ


ーーーー


?「……ヒット、ナイスです彼方さん」


彼方「ん。どう、あの子達動きそう?しずくちゃん」


しずく「たった3人で来た彼女達に出来る行動は無いですよ。園田の誘導も、合図もあの子が送ってくれましたし」


彼方「後始末は?」


しずく「高飛びの道すがら、後は嵐珠さんがやってくれます。あの子も上手くあの場を離れると思いますし、拾って私達も離脱しましょう」


彼方「ちゃんと高飛びさせるのかい?」


しずく「いいえ。させません」


ーーーー

57: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:28:17 ID:???00
海未「……ッ、ごほッ……!!」


ビシャッ


善子「海未さん、海未さんっ!!!」


かのん「やっぱり撃てないって思われてたのか……!クソッ!!」


すみれ「不味い、これじゃ……!!」


海未「ッう゛……!皆、さん…!!」


善子「喋らないで!!」


海未「かのんさんが、私を撃たず……でも撃たれたという事は……見切りを付けられたということ……ごほっ!!」


かのん「!!」


海未「1週間の猶予など、もうありません……希が、危ない……ッ!!」


すみれ「でも、このままじゃあなたが……!!」


善子「音ノ木坂の霊園よ!!良いからとっとと救急寄越せって言ってんの!!!アンタは車持ってきて!!」


構成員「は、はい……!」タタッ


海未「善子……」


善子「……っ」


海未「私はここに置いて、あなたは希を助けに行って下さい……」


善子「で、でも海未さんが!!」


海未「救急車は、呼んでくれたのでしょう?車を持ってきてくれるあの子もいます……私の事は、一先ず良いから」


海未「私の友人を……助けてあげて…ッ!!」


善子「……!」


かのん「でも……」


すみれ「…親の言う事は絶対でしょ。私達お互いの親が狙われて、黙ってられないなら……腹括るしか無い」


善子「分かってるわよッ!!」


プルル


すみれ「……何?」ピッ


壷振『すみれさん!と、賭場が……グアッ!?』<パァンパァン!!


プツッ


すみれ「……ッ!!」


かのん「何!?どうしたの、すみれちゃん!!」


すみれ「園田組の賭場が、襲われてる……!!」

58: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:31:58 ID:???00
善子「……そん、な」


海未「…善子ぉッ!!!」


善子「!!」


海未「……若頭として……やるべき事を、やりなさい」


かのん「…私は事務所に戻って時間を稼ぐ。死ぬ気で暴れて、希さんを助ける。力づくで」


善子「アンタ……」


かのん「あなたは自分達の場所を守って!!」


すみれ「かのん、アンタ1人で行く気!?」


かのん「元は私が独断で動いたせいでしょ。落とし前は自分で付ける。すみれちゃんは、お世話になった園田さんの場所を一緒に護ってあげて」


すみれ「……ッ」


善子「……車まで戻るわよ。賭場までぶっ飛ばす。途中まで送るから、来なさい」


かのん「ありがとう、お願い」


海未「……ふふ」


善子「海未さん……後は、任せてください」


海未「青いというのは……いい物ですね」


すみれ「傘、置いておきます」


海未「ありがとう。さあ、行って」


善子「……っ、行くわよ!!」


ダダダッ


ザーッ……


すみれ「……待って、何でまだ車がある訳!?」


かのん「さっき園田組の子に取りに行かせたよね……!?」


善子「……っあぁもう!!どいつもこいつも寝返りやがってッ!!!もういいから、乗って!!」ガチャッ


すみれ「海未さん……!」


善子「仮にも渡世の親を、野ざらしにして……見つけ次第、問答無用でぶっ殺してやる……ッ!!」


ブォン!!


────

59: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:35:35 ID:???00
【朝香興行】


プルル


果林「私が出るわ」


構成員「はっ。どうぞ」


果林「……もしもし」ガチャッ


希「……」


構成員「お茶は?お菓子もあるけど」


希「何や急に、気色悪いな……」


構成員「あ、ウイスキーの方が良かった?」


希「元々ウチのやそれ。何なん急に」


<ガチャッ…


果林「……最後の晩餐って奴よ。気の利く子達でしょ?」


希「…失敗したんか。かのんちゃんは」


果林「うーん、失敗というか……元々撃てると思ってないしね。でも多分園田さんは死んだわよ。ウチの子が弾いたわ」


希「なら、そもそもこうするつもりやったんやろ?殺るなら殺って」


果林「でもねぇ……ずっと一本独鈷でやってきたその辣腕をむざむざ失うのも……って思うのよ」


希「……何や、生かしてくれるん?ほんならかのんちゃんもすみれちゃんも、ウチの子皆生かしておいて欲しいんやけど」


果林「うん……そうよね、別に殺す必要なんかないし。総代とか下の子は、反抗分子は全員根絶やしにすべきって言ってるけど」


希「噂に聞く台場の当代、高咲……なんやらか」


果林「そ。いやでもねぇ……どうしましょう?」


希「ウチに聞かれても困るわ。ほんまやったら死んでも嫌なんよ?海未ちゃんを弾いてウチらも園田組の子らも、バラバラに引き裂いたアンタらの傘下に成り下がるなんてさ」


果林「そりゃ誰だってイヤよ。でも人の世って世知辛いものよね」


希「でもな……生きてれば何とかなるんよ。ウチらと違って、彼女らは若い。これから先はあの子らが作ってくんや」


希「それをウチら老兵が引っ掻き回すなんて……やっちゃあかんよ」


果林「ええ……全く、その通りだわ」チャキッ


パァン……!!


────

60: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:40:11 ID:???00
善子「ここでいいの?」


かのん「うん、同じ轍を踏む気は無いよ。ただただ無駄死にするつもりは無いからね。協力を頼むよ」


すみれ「そんな奴がいる訳?」


かのん「後輩がここらにいるハズなんだ。協力させる」


かのん「何人か再起不能にしてでも、ついてこさせるよ」


善子「……無理すんじゃないわよ」


かのん「分かってる。そっちが片付いたら、こっちに手を貸して。襲撃しといて虫が良い話だとは思うけど」


すみれ「それが海未さんの意思なんだから、断る理由は無いでしょ?」


善子「ええ。あなたも無茶しないで」


かのん「分かった……2人もね」


<ブーン…!!


かのん「……」


<ゾロゾロ…


半グレ達「……」


かのん「……わざわざ雨の中見回り?」


メイ「ヤーさんがシマでコソコソしてたら見に来るだろ。で、誰お前?」


かのん「…久しぶり」


メイ「……かのん、先輩」


半グレ「え、メイさんの先輩っすか?」


メイ「ああ……1番怖ぇって言葉が付くけどな」


かのん「……メイちゃんもさ、私に似て真面目な真っ直ぐばかだよね」


半グレ「テメッ、誰に向かって───」


メイ「テメェこそ誰に口聞いてんだ」


半グレ「……すんません」

61: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:45:28 ID:???00
メイ「……まあそっすね。だから何すか?」


かのん「……」


チャキッ


メイ「…!」


半グレ「ばっ、こんな街中でハジキ出すなよ!!」


メイ「何のつもりですか、先輩?」


かのん「……メイちゃん」


メイ「……」


かのん「お願い……助けて」


メイ「……はっ、銃突き付けながら言う事かよ」


半グレ「脅しは通じねぇよ!!ハジキであたしらがビビると思ってんのか、アァ!?」


パァン…!!


半グレ「……───ッ、だァ!!?」


かのん「次は本気で殺す。足じゃ済まさない」


メイ「……アンタ、堕ちたな」


かのん「何と言われようと構わない。私の親を助ける為なら、殺されたっていい」


メイ「親……?」


かのん「実の親なんかより固い絆って奴だよ。その為なら、君達全員殺してみせる事だって出来る」


半グレ「ぐっ……助け求めときながら殺すのかよ……頭おかしいのかてめぇ!!?」


かのん「時間が無い。来てくれるのか来ないのか、決めてくれる?」


かのん「タダでとは言わないよ。片がついたら、相応のお礼はする。それだけは約束するよ」


かのん「だから……力を貸して、お願い」


メイ「……何か最近こんなんばっかだな」ボソッ


かのん「……」


メイ「はぁ……何する気だよ」


───

62: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:48:15 ID:???00
【賭場】


すみれ「……善子、銃はある?」


善子「ほら。行くわよ、台場組の奴等なら全員弾いて構わない。ここを取り返すのよ」


すみれ「……勿論」


ダダッ


ガコンッ…


善子「……ッ」コツコツ


すみれ「……静かね」コツコツ


バッ


善子「……クソっ、クソ……ッ!!」


すみれ「……遅かったのね……」


構成員「」


構成員「」


構成員「」


壷振「」


すみれ「……凛、凛は!?」


<コツコツ…


善子「……!すみれ、下がって!!」


<コツコツ


すみれ「……っ」チャキッ


<?「……あれ、もう着いたんですか?早かったですね」


すみれ「……かす、み」


善子「……あんた」


かすみ「お疲れ様です。もう暫くここは使えないですね。まだ雀卓入れる前で良かったです。牌が全部赤ドラになっちゃいますし。ぷくく」


善子「あんたまで……台場の手の者だったのね」


かすみ「はい。あ、この子もね」


構成員「……」


すみれ「……シャブで前後不覚だからって訳でも無さそうね」


構成員「まあ、結構な量貰っ((パァン!!」


ドサッ


構成員「」


かすみ「あらら……」


善子「……ウチではご法度だっつってんのよ」チャキッ

63: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:51:20 ID:???00
すみれ「…容赦する気はなかったのね」


かすみ「でもこれで分かりましたよね?もう園田組に、あなた達の味方はいなくなりましたよ」


すみれ「……凛はどうしたの?」


かすみ「呼ばれてますよー」


<スッ…


凛「……」フルフル


かすみ「逃げられても困るんで、ガムテで口と両手を失礼してます」


善子「じゃあ、凛は裏切ってないのね」


かすみ「たまたまこの前の案件で皆さんが帰った後、私らの話を盗み聞きされてまして。ただ私が結構凛の事気に入ってたんで、まだ生かしてます」


すみれ「凛、大丈夫?」


凛「……」コクコク


かすみ「さて、長いお仕事の仕上げです」チャキッ


グイッ


凛「っ!!」


かすみ「私の仕事は、園田組と賭場を内部から崩壊させ吸収しやすくする事。園田海未が死にかけの今、組はもう崩壊寸前」


かすみ「あとは若頭の善子さんが死ねば、実質園田組は解散です」


善子「そうしたけりゃすりゃ良いけど、死んだら組は手に入らないわよ」


かすみ「馬鹿なんですか?組自体に興味なんか無いんですよ。この賭場と、園田組のシマ、これだけが欲しいんです」


かすみ「あなた達がいなくなった後は、僭越ながら私がこの辺りを治めます。台場組の代紋の下ね。末永く繁栄させていくつもりなのでご安心を」


すみれ「……何もかも台場の計算通りって事ね」


かすみ「概ね。あなたが園田組に来た上、賭場にまで来るのは予想外でしたが」


かすみ「ま、後はあなた達お2人を始末して終わりです。今までお世話になりました」


善子「……」


すみれ「……善子」


善子「……何かもう……疲れたな」スッ…

64: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:54:07 ID:???00
凛「んーっ!!?」


すみれ「……アンタが、前の私みたいになってどうするつもり」


善子「帰る場所が全部無くなったのよ。今ここで暴れて、こいつを殺したって…もう…」


すみれ「親の意思を蔑ろにする気!!?アンタの使命はここを守るだけじゃない、私の親を助ける事も含まれてんのよ!!」


善子「……」


すみれ「海未さんは生きろと言ってくれた、でも親に報いる為には……生きる為には、ここで死ぬしか無いのよ!!!」


善子「……!!」


すみれ「……行けるとこまで、行きましょう。もうどうせ、後戻りは出来ないんだから」


善子「…」


チャキッ


かすみ「ちょいちょい、何奮起してるんですか。四面楚歌って知ってます?言っときますけど、1人で来た訳じゃ無いんですよ。ここの出入口も、ウチの組員達で塞いでるんです」


かすみ「私を撃てば、絶対に引鉄を引いて誰かしら殺します。そうなれば銃声を聞いた組員達が、あんた達を必ず殺す」


すみれ「……」


かすみ「……もう詰んでんだよアンタらはァッ!!!大人しくここで、死んどけば良いんだよォッ!!」チャキッ


凛「っ……!!」


すみれ「この……!!」


善子「すみれ」


すみれ「!」


善子「……分かったわ」チャキッ


パァン…!!

65: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 02:57:08 ID:???00
かすみ「────う゛、あ゛っ……!?」ガクッ


凛「んーっ!!?」


すみれ「……凛ッ!!」グイッ


かすみ「お、前…えェッ───」


ダッ


善子「……───うぅあああああぁぁぁっ!!!」


かすみ「こン、のォおぉ…………ッッッ!!!」チャキッ


ドンッ


凛「ん゛んっ!!?」


パァン…!!


ドサァッ!


すみれ「……っ、善子、アンタ……」


善子「はぁッ、はぁッ……案外何とかなるのよ、こんなの。ナイスよすみれ、阿吽の呼吸って奴?」スッ


ビリッ


凛「ぷはっ、善子ちゃんごめん、凛を庇って……」


善子「アンタに当たらなくて良かった、私の捨て身の意味が無くなるわ……くっ」ポタッ


すみれ「……!!」


善子「ごめん、さっき迄の私は私らしく無かったわ。ただ、この使命は私だけじゃキツ過ぎる」


善子「神宮一家の行く末は、アンタに託す。園田組は、私が守り切るわ」


すみれ「善、子……」


善子「……そこの丁半の盆の下、幹部と旦那衆専用の抜け口がある。そこを通ればパチンコ屋の裏に出れるから」


善子「何とか神宮一家の事務所まで行きなさい。私も、きっと後から追いつくから……!」


すみれ「……ッ」


善子「……早く行け!!この園田組の窮地は、若頭の私が請け負うってんのよ!!」

66: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:00:13 ID:???00
凛「んっ、しょっ!!凄っ、盆の下にこんな空間あったんだ……!」バコンッ


すみれ「……死なないで、善子、凛」


善子「アンタもね」


凛「分かってるにゃ!すみれちゃん、早く!」


すみれ「……ッ」ダダッ


<「行け行け!銃声が聞こえてんだぞ!!」


善子「……オラかかって来なさいよ、台場ァッ!!」パァンパァン!!


<「うおっ、身を隠せ!!」パァンパァン!!


善子「凛、これ使って!!」ポイッ


凛「にゃあッ!?凛、銃なんて使った事無いんだけどぉっ!!」


善子「今慣れて!死にたくなけりゃ!!」


凛「……んもうっ!!」ジャキンッ


<「……裏口に回って!!ごほっ……!!」


凛「んなっ、生きてたの!?」


台場組組員「かすみさん、こっちに!!」グイッ


かすみ「何人か、裏口に回して下さい!絶対逃がさないで!!」


善子「かすみィッ……!!この、死に損ないがァッ!」パァンパァン!!


かすみ「はははッ、そう簡単に死ぬ訳にゃ行かねぇんですよォッ!!」パァンパァン!!


───

67: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:03:14 ID:???00
タタタッ


すみれ「はっ、はっ、はっ……!!」


<「……おい、アイツ!!」


<「いたぞ、追え!」


<パァン!!パァンパァン!!


すみれ「時代柄、街中でドンパチなんて……しないんじゃなかったの……ッ!!?」


<キキーッ


すみれ「あっぶ……ッ!!?」


一般人「あ、危ないよッ!?急に飛び出したら」


すみれ「この先に向かう方がもっと危ないわよ!!出来る事ならここからとっとと逃げ───」


<……パァン!!


ビシッ!!


一般人「ひぃっ!!?ふ、フロントガラスが!!?」


すみれ「ちっ……!乗せて!!」ガチャッ


バタンッ


一般人「ちょっ、はぁ!?何してんの!?」


すみれ「後で弁償するから!サツにも脅されたって言えばいい!!ここに向かって!!」ピッ


一般人「朝香、興行……?」


<ビシッ!!


一般人「ひいいぃぃぃっ!!?」


すみれ「早く!!」


一般人「何なのもおおおおっ!!?」ブオォンッ!!


ブーン……!!


ーーーー

68: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:06:30 ID:???00
カチッ


ブォン!!ブロロロ…!


かのん「ありがとう、メイちゃん」


メイ「死にたがりの為にアイツらの命は張らせられねぇ。私一人と、このダンプカーで我慢してもらいますよ」


かのん「それでも良い。今はたった1人でも一緒に戦ってくれる人が欲しかったから」


メイ「……台場組でしたっけ?要は外様ですよね。急に来て我が物顔とか一番ムカつくんすよ」


メイ「ここらの一帯は……ずっと私らがシメてんだ、勝手な真似は許さねぇ」


かのん「……行こう!!」


ブゥオオォン!!


<……カタッ


───

69: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:10:47 ID:???00
希「……っ、はぁっ、はぁ……ッ!!」


果林「…決めた。あなたは殺さない。私の傍で働いてもらうわ」


希「普通に口で言ってや!!撃つ必要無いやろ!!?」


果林「議決って感じで、つい」


希「ついちゃうわ!令和なんよ!!?今時そんな、ばかすかハジキ撃つアホおらんて!!」


果林「それ程力があるのがウチなのよ。逆らわない方が得じゃない?」


希「ほんま……力のある奴がこうやから渡世は良くならんねん」


果林「悪かったわね。殺してくれてもいいわよ」


希「そういうのが嫌なんやて……傍におくんなら、ウチの言う事も聞いてや」


果林「なぁに?」


希「変わらへんよ。神宮一家の皆を殺さんといて」


果林「うーん……でもかのんは私の舎弟を弾いてるのよ?それには相応のケジメを付けて貰わなきゃじゃない。極道ならね」


希「……分かった。ウチが指詰めたる」


果林「あっはっは!!今時指なんて貰っても何にもなりゃしないわよ!いくらになるの、希の指は?!ふふふ……!」


希「ケジメはケジメや。神宮一家総代、原宿一帯を締める東條の指よ。これを詰めたら、台場と言えど黙認はさせへん」


果林「……」


希「……どうや」


果林「………道具持って来て」


構成員「はい」


果林「…惚れたわ。その心意気」


希「……」


────

70: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:13:25 ID:???00
ブォーン……!!


かのん「……メイちゃん」


メイ「はい、何すか」


かのん「…もう1つ、お願い聞いてくれる?」


メイ「いくつ聞きゃ良いんですか?既に命張ってんすよ」


かのん「ついでだよ……このまま事務所に突っ込んで」


メイ「……」


かのん「…だめ?」


メイ「……先輩」


かのん「?」


メイ「………ハナっから、そのつもりですよッ!!!」ブォン!!


かのん「……っ!!」ニヤッ


ブオォ……ンッ!!


構成員「それでさ、あの新しい海物語のJAPANさ、火鈴が結構可愛くて」


構成員「でもあのモード全然リーチかからないじゃん」


<……ブォン!!


構成員「フルカスタムだからじゃないの?しない方が良いよ。まあ私も魚群は100%にするけ、ど……」


構成員「……?どしたの」


構成員「…あ、あれ……ッ!!」


構成員「え?……ッあ」


<ブオオォォォン!!!


構成員「つ、突っ込むぞおおぉぉぉっ!!!!」


ガッシャアアアァァァ……ン!!!


シュー…


構成員「げほっ、ごほっ……か、カチコミだァッ!!!」


構成員「」

71: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:17:00 ID:???00
構成員「ど、どこのどいつだコラァ!!」


ガチャッ


構成員「……あ」


かのん「ただいま」スチャッ


パァン!!


構成員「」ドサッ


<バンッ!!


メイ「久しぶりの大喧嘩だ、遊ばせてもらうからなぁッ!!!」ブンッ


ゴキャッ


構成員「あがッ!!?」


かのん「このまま進むよ!!」


メイ「さあどんだけの量来るかな!?」


<「…ウチらも混ぜてもらっていいすか!!?」


かのん「……っえ!?」


メイ「お、お前ら……何で!?」


半グレ「ダンプの後ろに、隠れさせてもらってました。自分だけ命張るとかやめてくれます?ウチらのリーダーが」


半グレ「メイさんの為なら、あたしら全員死ぬ気ですからね!!」

72: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:20:33 ID:???00
メイ「……!!」


かのん「……いい子を持ったじゃん。メイちゃん」


メイ「……ふん、馬鹿が。だから死にたがりは嫌いなんだよ」


<「カチコミだァ!!」


<「入口にいるぞ!!!」


かのん「……っ!!」パァンパァン!!


メイ「止まんな、行け!!」


かのん「っ、分かった!ありがとう!!」


メイ「テメェらァ!!道拓けぇッ!!!」


半グレ達『うおおぉぉぉぉっ!!!』


ドドドド…!!


構成員「ガキ共に遅れをとるな!!押し返せ!!」


構成員「出来れば殺すなよ!?」


構成員「向こうは殺しに来てんだ、正当防衛だろ!!」


かのん「メイちゃん達は殺さないで!私が……全部引き受けるから!!!」パァンパァン!!


構成員「ぐおっ!!」


構成員「ぎゃっ!!?」


かのん「朝香あぁぁぁぁァァッ!!!」


────

73: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:23:07 ID:???00
果林「……ちょっとおイタが過ぎるんじゃない?希の指で済む話じゃないわよ、これ」


希「……タイミング悪いな、かのんちゃん」


希(でも……ありがとな。ほんま、ええ子達を持ったわ)


果林「なるべく殺さないで。無駄に罪状が増える」


構成員「徹底させます」


希「……」


果林「……希、来なさい」


希「…どこへでも」


────

74: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:26:21 ID:???00
<パァン!!パァンパァン!!


メイ「オラァッ!!」ドゴッ


構成員「ごあぁっ!!?」


かのん「ここだ、組長室!!」


バァン!!


構成員「なっ、もうここまで───」


かのん「っ!!」スチャッ


パァン!!


構成員「」


ドサッ


かのん「希さん!!どこなの!?」


メイ「他の部屋はもう誰もいねぇぞ!!ここ以外に部屋があんのか!?」


かのん「まさか、もう逃げた…!?」


メイ「入口はアイツらが塞いでんだ、誰も逃がさねぇよ!!」


かのん「でもこれ以上の部屋は……っあ」


メイ「あ!?」


かのん「…屋上だ!!」


───

75: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:30:12 ID:???00
ブーン……!!


一般人「あなた何なの!?ヤクザさん!?そうなんでしょ!?」


すみれ「だったら何、叩き出す!?やる気なら、あなたを降ろしてからで良いのよ!!?」スチャッ


一般人「ぴゃあああっ!!?殺さないで下さいいぃっ!!?」


すみれ「……そんな事しないわよ、死んでも。でも悪いけど、全速力で向かって」


一般人「…分かったよ……!もう着くよ!!」


すみれ「……っ!」


<ワーワー…!!


一般人「……な、何あの大惨事……!!?」


すみれ「……かのん、派手にやったわね」


一般人「え、何て!?何か言った!?」


すみれ「ありがとう、ここでいいわ。危ないから離れてて」


一般人「う、うん……」


すみれ「落ち着いたら車の請求出して。平安名すみれ宛に。死んでも直すから」


一般人「……!」


すみれ「……助かったわ!ありがとう!」ガチャッ


バタンッ


一般人「……良い人なのかどうかも、分からない人なのだ……」


ーーーー

76: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:33:05 ID:???00
<「うぅ……」


<「げほっ……ぐっ……」


すみれ「……酷い有様。私たちの事務所なのに」


タタタッ


すみれ「組長室……開いてる?」


<キィ…


すみれ(誰もいない……)


<「クソっ、超いてぇ……」


すみれ「……!」


半グレ「……あ?まだ動ける奴がいたのかよ……!?」


すみれ「あんた、どっかで見た顔ね」


半グレ「……?……っあ!!?」


すみれ「思い出した。あんた私のお腹にヤッパ刺した奴じゃない」


半グレ「ンだよ……生きてたんだな」


すみれ「……皆は?」


半グレ「上だ……屋上だよ」


すみれ「分かった……死ぬんじゃないわよ」


半グレ「テメェに言われたかねぇよ……ぐっ」


────

77: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:36:15 ID:???00
【朝香興行、屋上】


バンッ!!


かのん「すみれちゃん!!」


メイ「あ、お前!!」


すみれ「かのん、希さん……!!」


果林「……あなたも希の子ね?」スチャッ


希「…っ」


すみれ「アンタは!?」


果林「台場組直参 朝香興行の朝香果林よ。お初ね」


かのん「希さんを離せ、朝香ァッ!!」


果林「あなた達勘違いしてるわよ。私自身あなた達をどうこうするつもりは無い。希だって生かしておくつもりだった」


すみれ「……は?」


果林「園田組は歯向かってきたから相応の代償を払ってもらっただけ。神宮一家は希のお陰で残しておく予定なのよ?」


かのん「台場の傘下ででしょ。アンタらの勝手に、私達を巻き込まないでくれる!?」


果林「弱肉強食を知らないの!?弱い組織は強い組織に組み込まれる形でもないと、存続のしようが無い事くらい分からない!?」

78: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:39:50 ID:???00
メイ「何が弱肉強食だよ…」


果林「さっきから言ってるでしょ、私自身はあなた達をどうするつもりも無い!生かしといてあげるってんのよ!!」


果林「イヤイヤで通じる程甘い業界じゃない事くらいは分かるでしょ!?大人しく降りなさい!!今なら……」


チャキッ


かのん「!!」


果林「……澁谷かのん、あなたの死だけで許してあげる」


すみれ「言ってる事が違うじゃない、神宮一家は生かしておくんじゃないの!?」


果林「この惨事を見なさい!これだけの事をしでかしておいて、何のお咎めも無くのうのうと生きられると思ってる!?」


希「……!」


果林「…希は承諾してたのよ。神宮一家が台場の傘下に入る事を引き換えに、あなた達の命を保証する契約にね」


すみれ「…希さん」


希「分かってくれとは言わん、嫌なのも分かるよ。ただ…それでもかのんちゃん達は生きてかなきゃダメだよ。海未ちゃんもきっと、そんな事言うてたんじゃないん?」


かのん「…っ!」


希「嫌なのは分かる、分かるよ!でも…反抗して殺されるのがええとは思えんよ!私達の神宮一家が消えるより、生きて残してった方がええやろ!?」


かのん「…私が死ねば、皆生きられるの?」


果林「ええ。約束する」


希「あかんわ!ウチの命でもって終わりにして!若いのが死ぬ理由なんか無いんや!」

79: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:42:23 ID:???00
果林「まあ、こっちとしてはどっちが死んでも構わないわ。主犯か責任者か、どちらでも」


すみれ「…」


かのん「極道として、親にそんな事させられるわけない。私が死ぬ」


すみれ「……」


希「子が親より先に死ぬのを黙って見てられる訳無いやろ!!」


すみれ「………」


果林「決めなさい!神宮一家は、ここが岐路よ!!」


メイ「…おい、死にたがり。どうすんだ、この状況」


すみれ「………─────っ!!!!」


チャキッ


パァン……!!


果林「……────何、を」


ドサァッ…!


希「───っ、すみ、れちゃん」


かのん「…何で」


メイ「……はは」

80: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:44:24 ID:???00
すみれ「…私には耐えられない。姉妹分が死ぬのか親が死ぬのか、選べる訳無いじゃない」


すみれ「……分からない、何が最善だったのかも、何も」


希「…」


すみれ「海未さんも弾かれ、善子も凛も、今頃……下手したらここにいる皆も死んで終わり」


すみれ「…そんなの、イヤだから」


テクテク


果林「ぐっ…うぅ……」


すみれ「…」


チャキッ


果林「…覚悟は、出来た?」


すみれ「……かかってくればいい」


パァン…!!


────

81: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:46:41 ID:???00
【パチンコ屋前】


ザワザワ…


警察「立ち止まらないで下さーい!」


警察「ほら、動くな!」


構成員「ちっ…!」


?「…ここら一帯は人払いしてたから、ドンパチしていいって?」


かすみ「はい、死んだのは筋者だけ。じゃあ世間は喜ぶでしょ?桜内警部」


梨子「ナメてんじゃないわよ。これだけの事しでかして、簡単に出て来れると思わないで」


かすみ「ンな事よりとっとと救急搬送してもらっていいですか?肩ぶち抜かれてんですよ、ここで死んでやってもいいんですけど?」


梨子「こンの……ッ!」


警察「桜内さん!出て来ました!!」


梨子「…」


かすみ「……しぶと。何で生きてんですか」


善子「生きてて悪かったわね。所でこれをどうぞ」スッ


かすみ「…携帯?」


善子「下で撃ち合って勝手に死んだ、あんたんとこの構成員の携帯よ。メールを見てみなさい」


かすみ「……ッ!!」バッ


善子「ごゆっくりどうぞ」


かすみ「…クソッ……!!」


善子「……っ」フラッ


凛「善子ちゃん!」


善子「…流石に、ちょっと疲れたわ」


凛「そりゃそうだよ…」


梨子「お疲れの所申し訳ないけど、治療が終わったら覚悟しててね?洗いざらい全部吐いてもらうわ。今回の事件の全てを」


善子「はいはい…」


かすみ「…これで終わらせませんからね、善子さん」


善子「受けて立つわ。いつでもかかって来なさい」


───

82: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:48:38 ID:???00
ピッ、ピッ、ピッ…


海未「…」


希「…海未ちゃん、一旦終わったで。ウチの……すみれちゃんが、終わらせた。全部引き受けおった」


海未「…」


希「……ウチら親の言う事なんか、聞くわけないもんな。若い子がさ」


希「…青いよなぁ……ほんま」


海未「…」


希「…ウチら、協力しよう。大人の悪知恵を働かせるのがウチらの出来る事や」


希「そうでもせんと、これから増していく台場の圧力に耐えられん。若さだけじゃどうしようも出来ん力に踏み躙られるのは」


海未「…」


希「…もう見てられないよ」


海未「…」パチッ


希「……組の名前、どうする?」


海未「……未熟組で」


希「…ふっ、ダサいわ」


海未「……では、【蕾會】は?」


希「……まあ、まだええか」


https://youtu.be/ptiK8U4WlSc?si=3pbOR6CM59_wFzoX



────

83: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:50:23 ID:???00
ーCASTー


平安名すみれ


澁谷かのん


津島善子


中須かすみ


米女メイ


星空凛


桜坂しずく


近江彼方


朝香果林


桜内梨子


東條希


園田海未


高海千歌(特別出演)


高咲侑


上原歩夢


各構成員、警察、通行人エキストラの皆様


ーMUSICー


https://youtu.be/ptiK8U4WlSc?si=3pbOR6CM59_wFzoX

(藤井風 - 満ちてゆく)


ーBased on a Story byー


ラブライブ!


ラブライブ!サンシャイン!!


ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会


ラブライブ!スーパースター!!


───

84: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:52:09 ID:???00
すみれ「…」


かのん「すみれちゃん」


すみれ「…ん?」


かのん「…ごめん」


すみれ「何が…?」


かのん「全部…引き受けてくれて」


すみれ「…そんなつもりないわよ」


かのん「…」


すみれ「私達で、皆で、これからもやっていかないと」


すみれ「ヤクザ気取るんならね」


かのん「…うん」


すみれ「……いつまでも蕾じゃいられないんだから」


<ガチャッ


善子「…よ」


凛「にゃ」


すみれ「早かったわね。2人とも」


善子「民間人に危害加わってないのが良かったのね。ちょっとした保釈金で何とかなったわ」


凛「遂に寝床が牢屋になるとこだったにゃ…」


かのん「はは…これで、勢揃いだね」


すみれ「…行きましょう。やる事は死ぬ程ある」


善子「…ええ」


<「おい、車用意したぞ。パシリやがって」


かのん「…いいの?メイちゃん」


メイ「これからアンタらはただのケツ持ちだろ。でも私らは私らでやらせてもらう」


メイ「…裏は私らのもんだ」


すみれ「…ええ、奴等に負ける訳にはいかないわ」


────

85: 名無しで叶える物語◆nNTwFclD★ 2025/05/13(火) 03:53:47 ID:???00
?「…酷い結果だね。主目的が達成出来てない。幾ら金や薬を手に入れても、肝心のシマと賭場はまだ向こうの手の中」


かすみ「ごめんなさい…」


?「侑ちゃんが保釈金出してくれたから一旦何とかなったものの、果林ちゃんを失ったのは痛いよ」


侑「……歩夢、嵐珠ちゃんを呼んで」


歩夢「もう呼んでるよ。後始末が終わったらすぐ来るって」


侑「了解。かすみちゃん」


かすみ「は、はい…」


侑「汚名を濯ぐチャンスをあげる。嵐珠ちゃんと協力して、渋谷を丸ごと貰ってきて」


侑「果林ちゃんの弔い合戦だよ。もし同じ様な事になれば…分かるよね?」


かすみ「勿論です!!」


侑「でもまだ動いちゃダメだからね。かすみちゃんの傷もあるし、警察も今はうるさい。ほとぼりが冷めたら───」


歩夢「…」


かすみ「……っ!」


侑「……全部、奪ってやる」


────

引用元: すみれ「令和任侠伝 青い菫」