1: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 00:31:16.232 ID:hXDwehbY0.net
<火葬場>
職員「火葬が終了いたしました」
職員「これより納骨に移らせて頂きます」
遺族「よろしくお願いします」
職員「まず、これが喉仏です」
遺族「ほぉ~」
職員「これも喉仏です」
遺族「へ……?」
職員「こちらも喉仏です」
職員「火葬が終了いたしました」
職員「これより納骨に移らせて頂きます」
遺族「よろしくお願いします」
職員「まず、これが喉仏です」
遺族「ほぉ~」
職員「これも喉仏です」
遺族「へ……?」
職員「こちらも喉仏です」
9: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 00:35:11.259 ID:hXDwehbY0.net
職員「これも喉仏ですね」
職員「これも……喉仏です」
職員「こちらも……喉仏です」
遺族「ずいぶん多いですね」
職員「まだまだありますよ。これも……」
…………
……
職員「これも……喉仏です」
職員「こちらも……喉仏です」
遺族「ずいぶん多いですね」
職員「まだまだありますよ。これも……」
…………
……
15: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 00:38:19.423 ID:hXDwehbY0.net
妹「おじいちゃん……死んじゃった」グスッ
兄「とても無口だったけど、いいおじいちゃんだったな」
妹「だけどお兄ちゃん。どうしておじいちゃんの喉仏、あんなに多かったの?」
兄「うーん、なんでだろうな」
兄「そういえばおじいちゃんって、過去はほとんど話さなかったし、時折遠出したり」
兄「結構謎が多いんだよな」
妹「あたし知りたい! おじいちゃんの秘密!」
兄「たしかに気になるな……」
兄「とても無口だったけど、いいおじいちゃんだったな」
妹「だけどお兄ちゃん。どうしておじいちゃんの喉仏、あんなに多かったの?」
兄「うーん、なんでだろうな」
兄「そういえばおじいちゃんって、過去はほとんど話さなかったし、時折遠出したり」
兄「結構謎が多いんだよな」
妹「あたし知りたい! おじいちゃんの秘密!」
兄「たしかに気になるな……」
19: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 00:41:39.670 ID:hXDwehbY0.net
兄「だったら……葬儀に参列してる人の中から事情を知ってそうな人を探して話を聞いてみるか!」
妹「そうしよう!」
……
兄(探した結果、なにやら怪しい参列者はあの三人だった)
老婆「いい人を亡くしたわ……」
軍服「立派な方であった!」
謎の生物「悲しいデス……」
兄「ひとりひとり話を聞いてみよう!」
妹「うん!」
妹「そうしよう!」
……
兄(探した結果、なにやら怪しい参列者はあの三人だった)
老婆「いい人を亡くしたわ……」
軍服「立派な方であった!」
謎の生物「悲しいデス……」
兄「ひとりひとり話を聞いてみよう!」
妹「うん!」
22: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 00:44:03.194 ID:hXDwehbY0.net
兄(まず、このお婆さんから……)
兄「こんにちは」
老婆「あら、こんにちは」
兄「失礼ですが、あなたは祖父の……?」
老婆「幼馴染よ」
妹「幼馴染ってことは、おじいちゃんの小さい頃を知ってるんだ!」
老婆「ええ、よく一緒に遊んだものよ」
兄「こんにちは」
老婆「あら、こんにちは」
兄「失礼ですが、あなたは祖父の……?」
老婆「幼馴染よ」
妹「幼馴染ってことは、おじいちゃんの小さい頃を知ってるんだ!」
老婆「ええ、よく一緒に遊んだものよ」
26: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 00:47:10.529 ID:hXDwehbY0.net
兄「祖父はどんな少年だったんですか?」
老婆「とても優しくて、頭もよくて……なにより歌が上手かったわ」
兄「歌が……?」
妹「意外!」
老婆「将来は絶対歌手になるんだーってみんなに話してたもの」
兄「歌手……!?」
妹「さらに意外!」
老婆「とても優しくて、頭もよくて……なにより歌が上手かったわ」
兄「歌が……?」
妹「意外!」
老婆「将来は絶対歌手になるんだーってみんなに話してたもの」
兄「歌手……!?」
妹「さらに意外!」
29: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 00:50:18.800 ID:hXDwehbY0.net
兄「そんなに上手かったんですか?」
老婆「ええ、歌自体が上手かったのもあるんだけど、声がとってもステキでね」
老婆「あちこちのノド自慢の大会で優勝してたわ」
妹「へぇ~」
兄「だけどどうして、祖父は歌手にならなかったんでしょう?」
老婆「さあねえ……。やっぱりプロの世界は厳しかったのかしら」
妹「残念……」
兄(このおばあさんが知ってるのはどうやらこのぐらいか)
老婆「ええ、歌自体が上手かったのもあるんだけど、声がとってもステキでね」
老婆「あちこちのノド自慢の大会で優勝してたわ」
妹「へぇ~」
兄「だけどどうして、祖父は歌手にならなかったんでしょう?」
老婆「さあねえ……。やっぱりプロの世界は厳しかったのかしら」
妹「残念……」
兄(このおばあさんが知ってるのはどうやらこのぐらいか)
30: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 00:53:25.718 ID:hXDwehbY0.net
兄「次はあの人に話を聞こう」
妹「軍服の立派な人だね!」
兄「あのー、すみません」
軍服「なにかね?」
兄「先ほど遺骨拾いをしたら、祖父はとても喉仏が多かったんですが……」
軍服「!」
兄「なにか事情をご存じじゃありませんか?」
軍服「……」
軍服「どうやら……話すべき時が来たようだ」
兄「え……」
妹「軍服の立派な人だね!」
兄「あのー、すみません」
軍服「なにかね?」
兄「先ほど遺骨拾いをしたら、祖父はとても喉仏が多かったんですが……」
軍服「!」
兄「なにか事情をご存じじゃありませんか?」
軍服「……」
軍服「どうやら……話すべき時が来たようだ」
兄「え……」
32: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 00:56:23.559 ID:hXDwehbY0.net
兄「失礼ですが、あなたは?」
軍服「私は地球防衛軍の総司令官だ」
兄「地球防衛軍!?」
妹「これまたすごいのが来ちゃったね……」
軍服「むろん、一般には知られていない組織だ。君たちもこのことは内密にしてくれたまえ」
妹「もちろん!」
兄「えーと、ってことはつまり……」
軍服「うむ、君たちのご祖父は我が軍の一員だったんだ」
兄「えええええ!?」
軍服「私は地球防衛軍の総司令官だ」
兄「地球防衛軍!?」
妹「これまたすごいのが来ちゃったね……」
軍服「むろん、一般には知られていない組織だ。君たちもこのことは内密にしてくれたまえ」
妹「もちろん!」
兄「えーと、ってことはつまり……」
軍服「うむ、君たちのご祖父は我が軍の一員だったんだ」
兄「えええええ!?」
33: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 00:59:26.535 ID:hXDwehbY0.net
妹「おじいちゃんが戦ってたの?」
軍服「いや元々彼はオペレーターとして働いてくれていた」
軍服「指示は的確で、とてもよく通る声をしていたから、皆が彼には助けられた」
兄「祖父が……軍のオペレーター……」
妹「信じられない!」
軍服「退役したら歌手になる……よくそう笑っていたよ」
兄(この時はまだ歌手になる夢を持っていたのか……)
軍服「ところが……」
軍服「いや元々彼はオペレーターとして働いてくれていた」
軍服「指示は的確で、とてもよく通る声をしていたから、皆が彼には助けられた」
兄「祖父が……軍のオペレーター……」
妹「信じられない!」
軍服「退役したら歌手になる……よくそう笑っていたよ」
兄(この時はまだ歌手になる夢を持っていたのか……)
軍服「ところが……」
36: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 01:03:21.713 ID:hXDwehbY0.net
軍服「ある時、恐ろしい強さの宇宙怪獣が襲来することが分かった」
軍服「それこそ、単独で地球を滅ぼしかねないような……」
兄「う、宇宙怪獣!?」
妹「全然知らない!」
軍服「それはそうだ。パニックを避けるため、情報は秘匿されていたからね」
軍服「コンピュータの計算では、地球防衛軍の全兵力を投入しても……いや」
軍服「地球上の全軍を集めても、勝率は極めて低かった」
軍服「そんな時だ」
軍服「それこそ、単独で地球を滅ぼしかねないような……」
兄「う、宇宙怪獣!?」
妹「全然知らない!」
軍服「それはそうだ。パニックを避けるため、情報は秘匿されていたからね」
軍服「コンピュータの計算では、地球防衛軍の全兵力を投入しても……いや」
軍服「地球上の全軍を集めても、勝率は極めて低かった」
軍服「そんな時だ」
37: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 01:06:21.012 ID:hXDwehbY0.net
軍服「防衛軍で、画期的な新技術が開発されたのだ」
兄「一体どんな……?」
軍服「人体を改造し、声帯を兵器と化すことで、強い怪獣をも打ち倒すという技術だ」
軍服「分かりやすくいうなら“人を改造して怪獣を倒せる声を出せるようにする”というものだ」
兄「!」
軍服「しかし、この手術には大きな問題があった」
軍服「天性の強靭な喉の持ち主でなければ、とても耐えることができないのだ」
兄「一体どんな……?」
軍服「人体を改造し、声帯を兵器と化すことで、強い怪獣をも打ち倒すという技術だ」
軍服「分かりやすくいうなら“人を改造して怪獣を倒せる声を出せるようにする”というものだ」
兄「!」
軍服「しかし、この手術には大きな問題があった」
軍服「天性の強靭な喉の持ち主でなければ、とても耐えることができないのだ」
38: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 01:09:21.124 ID:hXDwehbY0.net
軍服「我々は志願者を求めた。すると――」
『私を手術して下さい』
『君ならば申し分なかろう。しかし、この手術をしたら迂闊に声を出すことはできなくなる』
『歌手になる夢も諦めてもらわねばならんぞ』
『かまいません。我が子のため、いつか生まれるかもしれない孫のため、この喉を捧げます』
軍服「彼に一切の迷いはなかったよ」
兄「……」
妹「……」
『私を手術して下さい』
『君ならば申し分なかろう。しかし、この手術をしたら迂闊に声を出すことはできなくなる』
『歌手になる夢も諦めてもらわねばならんぞ』
『かまいません。我が子のため、いつか生まれるかもしれない孫のため、この喉を捧げます』
軍服「彼に一切の迷いはなかったよ」
兄「……」
妹「……」
40: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 01:13:23.930 ID:hXDwehbY0.net
軍服「手術の代償として、彼の喉仏はものすごい数になってしまった」
軍服「そして――」
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――――――ッ!!!!!』
『ギャアアアアアア……!』
軍服「怪獣は見事、彼に打ち倒されたのだ……」
軍服「地球は彼によって守られた」
軍服「その後しばらくして、彼は退役し、今に至る……というわけだ」
軍服「そして――」
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――――――ッ!!!!!』
『ギャアアアアアア……!』
軍服「怪獣は見事、彼に打ち倒されたのだ……」
軍服「地球は彼によって守られた」
軍服「その後しばらくして、彼は退役し、今に至る……というわけだ」
41: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 01:17:19.681 ID:hXDwehbY0.net
兄「これで事情はだいたい分かったな」
妹「うん、だけど……」
兄「あの謎の生物、やっぱり気になるよな?」
妹「うん!」
兄「話を聞いてみよう!」
兄「すみません」
謎の生物「ハイ」
兄「あなたは何者ですか?」
謎の生物「私は宇宙人デス」
兄「!」
妹「地球防衛軍の次は宇宙だ!」
妹「うん、だけど……」
兄「あの謎の生物、やっぱり気になるよな?」
妹「うん!」
兄「話を聞いてみよう!」
兄「すみません」
謎の生物「ハイ」
兄「あなたは何者ですか?」
謎の生物「私は宇宙人デス」
兄「!」
妹「地球防衛軍の次は宇宙だ!」
44: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 01:20:44.712 ID:hXDwehbY0.net
兄「祖父とはどのようなご関係で?」
宇宙人「あの方は我々の星を助けてくれたんデス」
兄「というと?」
宇宙人「私たちの星、地球より文明は進んでますが娯楽に飢えてマシタ」
宇宙人「特に“歌”に飢えていたんデス。歌の文化はすっかり衰退してたノデ……」
兄「歌……!」
宇宙人「そこで我々は最新コンピュータであの人を見つけ出し、コンタクトしたのデス」
『私たち、上手で、なおかつ破壊的音声の歌でないと満足できまセン』
『ぜひ、私たちの星に来て、歌を歌ってくれないでショウカ?』
『そういうことならば喜んで』
宇宙人「あの方は我々の星を助けてくれたんデス」
兄「というと?」
宇宙人「私たちの星、地球より文明は進んでますが娯楽に飢えてマシタ」
宇宙人「特に“歌”に飢えていたんデス。歌の文化はすっかり衰退してたノデ……」
兄「歌……!」
宇宙人「そこで我々は最新コンピュータであの人を見つけ出し、コンタクトしたのデス」
『私たち、上手で、なおかつ破壊的音声の歌でないと満足できまセン』
『ぜひ、私たちの星に来て、歌を歌ってくれないでショウカ?』
『そういうことならば喜んで』
45: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 01:22:39.100 ID:hXDwehbY0.net
宇宙人「それからというもの、我々はあの方を幾度となく歌手として星に招きマシタ」
宇宙人「あの方の歌は、大いに我々を満足させてくれマシタ」
宇宙人「たっぷり録音もしたので、もう我々が娯楽に飢えることはないデショウ」
宇宙人「本当に感謝していマス」
兄「おじいちゃんが時折遠出してたのは……」
妹「宇宙に行ってたんだ!」
宇宙人「あの方の歌は、大いに我々を満足させてくれマシタ」
宇宙人「たっぷり録音もしたので、もう我々が娯楽に飢えることはないデショウ」
宇宙人「本当に感謝していマス」
兄「おじいちゃんが時折遠出してたのは……」
妹「宇宙に行ってたんだ!」
47: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 01:26:00.203 ID:hXDwehbY0.net
老婆「天国で会いましょうね……」
軍服「英雄に敬礼!」ビシッ
宇宙人「あなたへの恩は、いずれ地球の皆さまへお返ししマス」
……
妹「あたしたちにとっては無口なおじいちゃんだったけど……」
兄「夢を諦めて、地球を救って、宇宙人も救って、夢を叶えて……」
妹「すごい人生を歩んでたんだね!」
軍服「英雄に敬礼!」ビシッ
宇宙人「あなたへの恩は、いずれ地球の皆さまへお返ししマス」
……
妹「あたしたちにとっては無口なおじいちゃんだったけど……」
兄「夢を諦めて、地球を救って、宇宙人も救って、夢を叶えて……」
妹「すごい人生を歩んでたんだね!」
49: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/10/01(火) 01:28:36.026 ID:hXDwehbY0.net
兄「おじいちゃんが守ってくれた地球で、俺たちもしっかり生きような!」
妹「うん!」
兄「それじゃ歌が大好きだったおじいちゃんを供養をするため、カラオケでも行くか?」
妹「さんせー!」
―終―
妹「うん!」
兄「それじゃ歌が大好きだったおじいちゃんを供養をするため、カラオケでも行くか?」
妹「さんせー!」
―終―
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