1: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:44:56.82 ID:0qUHrr2Xa.net
俺「はい。そうですか・・・130人待ち・・・」

老人ホーム相談員「今はどこも満室ですわ」

俺「空きが出るのは、いつ頃になりますか?」

老人ホーム相談員「実質的に入所不可能ですわ。単身の生活保護者や、路上生活者が優先的に入所になりますんで」

俺「そうですか。失礼します」

ガチャ

俺「糞が。普通の納税者が後回しってどういうことだよ。死ねカス」

J( 'ー`)し「あー、あああーああー」

俺「あ、また独語始まった。母ちゃん。マジで静かにしろって。夜だぞ」

隣「うるせえんだよ!」ドン

俺「ほら、また隣が・・・母ちゃん、黙ってろって」

J( 'ー`)し「もごもご」


2: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:45:07.92 ID:0qUHrr2Xa.net
プルプルプル

俺「誰だよ。こんな時間に。はい。もしもし」

ケアマネ「あー、夜分遅くすみません。デイサービスの件ですけど」

俺「あ、はい。見つかりました?」

ケアマネ「それが、デイサービスもどこも一杯みたいで。最近も一件閉鎖したばかりで、その受入すらもまだの状態なんですよ」

俺「・・・」

ケアマネ「在宅の方を増やす、という形でいかがですか? ただ、在宅も現状どこもいっぱいで、限度額まで使うのは難しいようなんです」

俺「あの、じゃあ、それでいいです」

ケアマネ「はい。じゃあプランこちらまとめなおして送付しますね」

俺「よろしくお願いします」ガチャ



J( 'ー`)し「うううーあーうー」

俺「・・・」


3: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:45:22.71 ID:0qUHrr2Xa.net
俺「もしもし。求人見たんですけど、平日の午後だけというのは可能でしょうか?」

俺「はい。はい。いえ、親の介護がありまして、フルタイムは・・・・・・そうですか・・・。失礼しました」ガチャ

J( 'ー`)し「あーあーーあああ」

俺「・・・飯作るから。母ちゃんおとなしくしとけよ」

J( 'ー`)し「ああーあーあーー」

俺「母ちゃんが好きな親子丼作るからな」


6: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:45:39.18 ID:0qUHrr2Xa.net
俺「鶏肉、こんなもんでいいか・・・大きいか? もっと刻むか」

トントントン

俺「母ちゃん出来たぞ。はい口開けて」

J( 'ー`)し「うーうーもぐもぐもぐ」

俺「・・・」

J( 'ー`)し「くちゃくちゃくちゃくちゃ」

俺「・・・最近、噛むだけで飲み込まなくなってきたな」

J( 'ー`)し「くちゃくちゃくちゃ」

俺「・・・そろそろ飲み込めよ」





俺「結局食事だけで一時間かかった。俺も食べるか」

俺「・・・冷めて固くなってるし」


8: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:45:57.29 ID:0qUHrr2Xa.net
俺「・・・なんか臭うな」

J( 'ー`)し「あうあうあー」

俺「・・・母ちゃん、じっとしてろよ。オムツ変えるからな」

J( 'ー`)し「うーうー」

俺「おい、動くなって。おい。あ、やっぱり出てる。うわ、凄い量」

J( 'ー`)し「うーうー」

俺「緩下剤入れすぎたか? でも二週間出てなかったしな。医者の指示通りだし」

J( 'ー`)し「うーうー」

俺「・・・オムツから溢れてズボンまでいってるし・・・」

J( 'ー`)し「うー!」

俺「あ、動くなって!あ!!!ベッドに落ちたじゃないか!!」

J( 'ー`)し「うーうー」

俺「ちょ、本当に止めろって。おい!!!」

ドン

J( 'ー`)し「うっ」

俺「あ、ごめん・・・母ちゃん・・・」


11: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:46:24.04 ID:0qUHrr2Xa.net
俺「母ちゃん、暫く座っててくれ。ベッド片付けるから・・・」

J( 'ー`)し「あうあうー」

俺「漂白しても取れるかな・・・新しいシーツ出すか。下のパットも買い換えないと」

J( 'ー`)し「あーあーあー」

俺「そろそろ訪問介護来るな。やっと休める・・・」

俺「寝よう・・・昨日、母ちゃんの独語きつすぎて寝れなかった・・・」

俺「zzz」


13: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:46:41.26 ID:0qUHrr2Xa.net
俺「もしもし。そちらの施設に空きありませんか?」

グループホーム相談員「あー、うちはないんですけどね、新しい施設ができるところですわ。住民説明会とかもありますんで、そっちで話してください」

俺「本当ですか! ありがとうございます!」

ガチャ

俺「ようやく仕事に戻れる・・・貯金もやばいし、何とかしないと・・・」

J( 'ー`)し「あーあーあー」



TV「介護保険料、引き上げ・・・介護求人倍率2.5倍を突破し、更に上昇・・・」

俺「まじかよ。俺と母ちゃんの分、介護保険料も馬鹿にならねえ・・・」

俺「そもそも40歳から強制徴収とか意味不明なんだよ・・・40手前なるまで聞いたこともなかったわ」

俺「早く再就職しないと・・・」

J( 'ー`)し「・・・あーあー」

「俺「・・・ごめん、母ちゃん。俺が面倒看てると生活できないから・・・」


17: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:47:08.63 ID:0qUHrr2Xa.net
6ヶ月後



俺「え?キャンセル?」

施設長「誠に申し訳ありません。オープンに合わせてうちの系列から人を集めてたんですが、急遽、別のところで一斉に退職願いがありまして」

俺「じゃあ、どうなるんですか?」

施設長「すみません。延期、という形になります。うちも3つの事業所閉鎖したところで、オープンのめどもついてないんです」

俺「そんな無茶苦茶な!」

施設長「すみません、すみません」

俺「・・・」ガチャ



ピッピ

俺「もしもし。デイサービスの件ですけど、まだ空きはないんですか?」

デイ相談員「すみません。こちらも順番待ちがありまして・・・。今はどこも似たようなもんです」

俺「・・・」ガチャ



俺「糞が。介護保険料なんて払うだけで、使えねーじゃねーか!」


20: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:47:37.76 ID:0qUHrr2Xa.net
俺「貯金が・・・安いとこに引っ越すか? でも、母ちゃんの独語で夜もうるさいし、狭いところは確実に追い出されるだろ・・・」

俺「もう手段選んでいられねえ。生活保護の申請いくか・・・」

J( 'ー`)し「あーあー」

俺「最近、表情もなくなってきたな。言葉にも反応しないし、確実に落ちてる・・・」

俺「母ちゃん。待ってろよ。ずっと一緒にいるからな。市役所行ってくる」



福祉課職員「それで、生活保護を受けたいと?」

俺「はい。施設も空いてなくて、仕事ができない状態なんです」

福祉課職員「はあ。別に、どこもそんなもんでしょ。頼れる人に預けたらいいじゃないですか」

俺「え、でも、俺、一人っ子で、兄弟がいないし、親切づきあいもほとんどなくて・・・」

福祉課職員「友達とかいるでしょ?それに、付きっきりじゃないと死ぬわけじゃあるまいし。在宅サービスは受けてるんでしょ?」

俺「え、はい」

福祉課職員「ほら!じゃあ働けるじゃないですか。そんなことでいちいち生活保護なんて無理ですよ。辛いのは貴方だけじゃないんです」

俺「・・・」


22: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:47:56.26 ID:0qUHrr2Xa.net
俺「徹底的に切り詰めないと」

俺「控除見なおすか。病院へのタクシー代も上乗せできるんだな」

俺「タクシー使った方が安くなるか?」

俺「オムツ代の請求も・・・」



J( 'ー`)し「あうああー」



俺「・・・臭うな。オムツ変えるか」

俺「・・・げ。最近、薬変えたせいか、粘土みたいなウンコになってきたな」

俺「出てる途中だし・・・今変えてもすぐ変えるはめになる」

俺「掘るか。手袋してっと。母ちゃん、痛いけど我慢しろよ」ヌポ

J( 'ー`)し「うーうーうー!」

俺「かき出してっと・・・」

俺「よし。大体取れた」

俺「ズボン洗うか・・・」

俺「全くとれねえ・・・」バシャバシャ

俺「このまま洗濯機回すとやべえよな・・・」

俺「漬け置きしてもとれねえし、捨てるか?」

俺「いや、うちにそんな金の余裕ねえ」

俺「・・・」バシャバシャ


28: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:48:44.44 ID:0qUHrr2Xa.net
俺「金が・・・」

俺「魔法のカード・・・」

俺「使うしかねえ・・・選んでいられねえ・・・」

J( 'ー`)し「・・・」

俺「なあ、母ちゃん。久しぶりにうまいもん食うか。高い肉にしよう」

ウィーン

俺「せっかく良い肉でも、ミキサーで砕くともうなんか分かんねえな。ははは」

J( 'ー`)し「・・・」

俺「わかるか?焼肉だよ。ほら、口開けて」

J( 'ー`)し「・・・」

俺「最近、口も開かねえな」グイ。ネポッ

J( 'ー`)し「むしゃむしゃむしゃ」

俺「美味しいか? 焼肉、久しぶりだもんな」グイ

J( 'ー`)し「むしゃむしゃむしゃむしゃ」

俺「美味しすぎて呑み込むのもったいないか?」

J( 'ー`)し「むしゃむしゃむしゃ」


32: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:49:08.16 ID:0qUHrr2Xa.net
在宅サービス提供責任者「あのー、すいません」

俺「はい?」

在宅サービス提供責任者「非常に申し訳ありません。うちの事業所、欠員により、法令の定める人数を維持できなくなり、閉鎖することになりまして・・・」

俺「あ、そうですか。ありがとうございました」

在宅サービス提供責任者「え、あ、はい」

俺「お疲れ様です。じゃあ」

バタン



俺「ははは。母ちゃん。俺だけになっちゃったよ」

J( 'ー`)し「・・・」

俺「そうだよな。俺と母ちゃんの問題だもんな」

J( 'ー`)し「・・・」


35: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:49:37.49 ID:0qUHrr2Xa.net
J( 'ー`)し「あーあーあー!」

俺「・・・今日は久しぶりに独語激しいな。眠れねえ・・・」

J( 'ー`)し「あーあー・・・・・・・・・・・」

俺「ん」

J( ゚O゚)し「うっ、あーぎゃあああああぐいfgりえgはぱがgっh」

俺「!!!」

俺「母ちゃん!? 痙攣? なんで! 癲癇なんて持ってないはずなのに」

J( ゚O゚)し「dsふぃうぇhgwhghrshgりghv」

俺「やべえ。救急車」

ピッピッピ

俺「・・・」

俺「いや・・・」

J( ゚O゚)し「dsふぃうぇhgwhghrshgりghv」

俺「・・・」

俺「この人は、なんなんだろう。これ、本当に俺の母ちゃんなのかな

J( ゚O゚)し「dsふぃうぇhgwhghrshgりghv」」

俺「・・・」


42: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:50:16.10 ID:0qUHrr2Xa.net
J( ゚O゚)し「dsふぃうぇhgwhghrshgりghv」

J( ゚O゚)し「dsふぃ・・・・・・・・・・・・・」

J( -_-)し「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

俺「・・・・・・・・・・・・」

俺「・・・・・・・・・・・・」

俺「・・・・・・・・・・・・」

ピッピッピ

俺「・・・もしもし。救急です。母が痙攣を起こしまして。いえ、既往歴は特に」

俺「はい。住所は・・・。はい。お願いします」

J( -_-)し「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

俺「・・・・・・・・・・・・」

俺「ああ、こうやって見ると、寝顔は変わらねえな」


101: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:57:42.21 ID:0qUHrr2Xa.net
医者「残念ですが・・・」

俺「そうですか」

医者「今後の手続きなどは済ませていますか?」

俺「いえ、何も」

医者「ではこちらの遺体安置所で預かる事になります。葬儀屋などが関わる場合でも、家族様のご同行が必要になります」

俺「はい。お手数おかけします」





俺「もしもし。一番安いのでお願いします。はい。いえ、親戚以外は誰も呼ばないです」

俺「はい。お願いします


108: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:57:58.98 ID:0qUHrr2Xa.net
叔父「大変だったな」

俺「・・・・」

叔母「悲しいでしょうけど、頑張ってね」

俺「・・・・」



俺「・・・就職活動・・・しないと・・・」







面接官「この四年半の空白は?」

俺「親の介護をしていまして・・・」

面接官「なるほど。大変でしたね。しかし、四年半の空白は、この業界では痛手です。技術的な・・・」

俺「・・・」



俺「だめだ・・・コンビニのバイト・・・これにしよう・・・」



年下店長「へえ。親の介護。大変だったね。んー、でも、もっと若くないとなー」

俺「・・・」


115: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 21:58:26.74 ID:0qUHrr2Xa.net
俺「魔法のカード・・・もう限度額だ・・・」

俺「生活保護・・・」フラッ



福祉課職員「あなた、親の介護が理由って以前に言ってませんでしたっけ?」

俺「・・・・・・・・・・」

福祉課職員「本当は働く気ないんじゃないんですか? 親の介護をもっともらしい理由にしてただけで」

俺「・・・・・・・・・・・」

福祉課職員「介護する前は働いていたんでしょう? じゃあ何で介護が終わった後も同じように働けないんですか?」

俺「・・・・・・・・・失礼します」





俺「あ」

俺「・・・マンションの、家賃、今月払ってなかったっけ」

俺「・・・・・・」

俺「この堤防・・・母ちゃんと子供の頃、よく来たな」フラ

俺「・・・」

俺「この川で、亀捕まえたりしたっけ」

俺「母ちゃん、ごめんな」ズズズ

俺「何やってたんだろうな」

俺「最後、本当ごめん、どうかしてた」

俺「俺も、後行くから・・・」ズズズ

俺「向こうで許してくれよ」ズズズ


219: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 22:07:44.97 ID:0qUHrr2Xa.net
家族の責任



認知症の行動による責任は、家族が負う

徘徊老人が踏切で死亡した事件では、遺族に多額の賠償判決が出た

家族にネグレクトという逃げ場はない


235: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 22:08:46.77 ID:0qUHrr2Xa.net
要介護の確率

80~84歳で28.4%

85歳以上では58.4%


241: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 22:09:14.68 ID:0qUHrr2Xa.net
独語



ひとりごと。現実に語りかける対象がないのに一人でしゃべっている行為。

幼児から成人まで普遍的にみられるもので,必ずしも病的とは限らない

認知症の代表的な症例でもある


263: 風吹けば名無し 2019/10/01(火) 22:10:23.84 ID:0qUHrr2Xa.net
以下解説





特別養護老人ホームに入れていない待機高齢者が多くいる点だ。特別養護老人ホームは、全国約6000カ所にあり、約41万人(2008年現在)が入居している。



しかし、厚生労働省の平成21年調査によれば、特別養護老人ホームの入所待機者数は、全国で約41.2 万人もいる。しかも在宅の入所待機者(約19.9万人)の34%が重度(要介護4~5)で、こうした人たちが自宅での家族介護などを受けている状態である。



また、介護老人保険施設(32%)や医療施設(24%)など、実質的に長期滞在できない施設を利用している入所待機者(約22.3 万人)もいる。



また、在宅の入所待機者で軽度要介護者(要介護1~2、39%)であっても、単身世帯などを中心に、常時職員のいる施設への入所を希望するケースも増えてきている。


引用元: 俺「あの、そちらの老人ホームに空きありませんか?」