1: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:30:41 ID:???00
『ハンモックークー ご自由にお使いクダサイ』

かのん「あれ、いつの間に部室にハンモックなんて…可可ちゃんが作ったのかな?」

かのん「…誰もいないよね? ちょうど休憩したいと思ってたんだよね~♪」ギシッ

かのん「は~、憧れのハンモックだ~…意外に安定してるなぁ~……」ユラユラ

かのん「…寝転んでみちゃったりして」ゴロン

3: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:32:57 ID:???00
かのん「なんだか布から甘い匂いが…ココアみたいな匂いだなぁ…それに不思議、そこまで厚い布じゃないのにすごく温かい…」

かのん「『ハンモックークー』なんて言うくらいだし、もしかしたら可可ちゃんの熱い気持ちが宿ってるのかな? なんて…」

かのん「…よし、可可ちゃんのこと考えてたらなんかいい感じの歌詞浮かんだかも! あきらめないキモチ、だよね!」トッ

 ガラッ

5: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:34:45 ID:???00
 ~~~

千砂都「おや、部室にハンモックが…誰が持ってきたんだろう? こういうの、部長としては一言欲しいところだけど…」

ハンモックークー『……』ユウワク~

千砂都「…まいっか! 誰もいないし、使わせてもらおーっと」ギシッ

千砂都「しっかし、最後の決めポーズの部分どうしよっかなぁ…なんかどれもピンとこないんだよねぇ」ユラユラ

千砂都「う~ん……」ゴロン

6: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:35:52 ID:???00
千砂都「…ほっ!」キメポ~ズ

千砂都「そんでもって~…こう!」キメッキメノポ~ズ

千砂都「…このハンモックすごいなぁ、結構無茶な動きしてるのに全然振り落とされない。そう、まるでどんな厳しい練習メニューにも食らいついてくる可可ちゃんのような…」

千砂都「『ハンモックークー』、まさか可可ちゃんがハンモックになった姿だったり? ってまさか、そんなわけないよねぇ」アハハ

千砂都「……ちょ、ちょっとだけ探しに行こうかな?」トッ

 ガラッ

7: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:38:05 ID:???00
 ~~~

すみれ「珍しいわね、部室に誰もいないなんて。それでこのハンモックは…また変なものが増えたのね」

すみれ「まぁいいわ、あるなら使わせてもらおうかしら」ギシッ

ハンモックークー『グルンッ』

すみれ「あだっ!」ズベッ

すみれ「そ、そういえばハンモックってちょっとコツがいるのよね…誰もいなくて助かったわ、気を取り直してもう一度…」ギシッ

8: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:39:14 ID:???00
ハンモックークー『グルルンッ』

すみれ「ギャラッ!? な、なんか今ありえない動きで振り落とされなかった!? ええい、もう一回!」ギシッ

ハンモックークー『グルングルンッ』

すみれ「きーッ! なによこのハンモック!! もうこうなったら意地でも寝転がってやるったら寝転がってやるんだからーっ!」

9: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:41:17 ID:???00
 ~~~

恋「…なんでしょう、このハンモック。お市の方が送った小豆袋のようになっていますが…」

ハンモックークー『~~~っ!』ワチャワチャ

恋「えっ!? あ、小豆袋が暴れだしました!」

ハンモックークー『誰が小豆袋よっ! 助けて~っ!』モチャモチャ

恋「も、もしや中にいるのはすみれさんですか!? 大変です、すぐに助け出します!」

11: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:42:48 ID:???00
すみれ「はぁ…えらい目に遭った…」

恋「災難でしたね…外から見たら納豆のようでした」

すみれ「それなら小豆袋のがいいわね…それより気をつけなさい恋、無理やり寝転がろうとするとさっきの私みたいになるわよ」

恋「偶然だけでは到底ああはならないような気がしますが…ともあれわかりました、みなさんにも注意をしておきましょう」

すみれ「頼むわね。まったく、なんであんな極端なのよ…」

 ガラッ

12: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:44:29 ID:???00
恋「…このハンモック、書置きからして可可さんの置いたものでしょうか。す、少しだけ私も…」ギシッ

恋「っ? なんだか…ハンモックにしてはやけに硬いような…さっきすみれさんを救出したときは普通の布でしたが…」ゴロン

恋「寝転がってもやはり硬いですね、まるで反発の強いマットレス……反発?」

恋「ま、まさか…私がスクールアイドル活動を規制しようとしたときの反発を表して…!? うぅ…やはり恨みというのはそう簡単に消えるものではありませんね…」ヨヨヨ

13: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:45:52 ID:???00
恋「…ですが、これはこれで寝心地がいいです。不思議な揺れ方も相まって…」ユ・ラ~

恋「……すぅ」ハートユラユラ~

恋「…はっ! い、いけませんいけません! 私は部室に荷物を取りに来たのです、残っている仕事を片付けなければ!」タッ

 ガラッ

15: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:48:24 ID:???00
 ~~~

きな子「ひ~っ、オーバーペースで走りすぎてしまったっす~…ぐるぢぃ~っ…!」ゼーハー

きな子「はぁっ、はぁっ…ちょっとハンモックで休憩させてもらうっす…」ゴロン

ハンモックークー『ユラ  ユラ』

きな子「ぜぇっ、はぁっ…」

ハンモックークー『ユラ  ユラ』

きな子「ぜーっ、はーっ…」

きな子(…なんだか、不思議な揺れ方…もしかしてこのテンポで呼吸すれば…)

16: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:50:24 ID:???00
ハンモックークー『ユラ  ユラ』

きな子「すーッ……はぁーッ……すーっ……はぁーっ……」

きな子(やっぱり、ちょっとずつ楽になってきたっす…!)

きな子(可可先輩が一年生の頃は全然体力がなかったって言ってたっすから、このリズムも経験で得たものを教えてくれてるのかもしれないっすね…)

きな子「…よしっ、元気になってきたっす! もう一周走るっすよー!」タッ

 ガラッ

17: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:52:44 ID:???00
 ~~~

メイ「お、これが先輩たちの言ってたハンモックか。なんか人によって寝心地が違うとかって盛り上がってたけど…」

メイ「…可可先輩が作って、先輩たちがみんな使ったハンモック……つ、つまりこれはLiella!のアレソレが詰まった特別な…へ、へへ…」

メイ「って、そうじゃねぇだろ! これは可可先輩からの純粋なプレゼントだ、決してやましい気持ちで使っちゃダメなんだよ! な!?」

アルパカのぬいぐるみ『……』

メイ「フーッ…よし、使うか…」ギシッ

18: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:54:36 ID:???00
メイ「…なんか生地がふわふわしてるな。見た目じゃそんな感じ一切しないのに、マジで人によって違うのか?」

メイ「寝転がってみてもやっぱりふわふわ…これは、猫ちゃんたちに包まれてるみたいでなかなか…」ゴロン

メイ「…ん? なんだ、甘い匂い…もしかして可可先輩の匂いじゃないか!? いやそれだけじゃない、この感じはかのん先輩、千砂都先輩も……はわわっ、しゅみれ先輩に恋しぇんぱいのにおいまでぇ~っ…♡」

メイ「や、やべぇ…これずっと使ってたらマジで死ぬかもしれない…! 理性があるうちに早くここから離れないと……!」ダッ

 ガラッ

19: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:56:43 ID:???00
 ~~~

四季(『ハンモックークー』、人によって感触や与えられる癒やし効果が違うらしいけど…どういうカラクリなんだろう)

四季(見た目は普通のハンモック、感触は…これも見た目通り。少なくともメイや恋先輩が言っていた異様な感触はない)

四季(座ってみても、すみれ先輩のように振り落とされもしなければきな子ちゃんのように不思議なリズムで揺れることもない)ギシッ

四季(寝転んでも…材質以上の温かさや吸い付くような異常な保持能力もない、匂いは少し甘い? でもそれは普通と言える範囲)ゴロン

20: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 22:58:19 ID:???00
四季(寝心地はいいけど…私には特別なにかがあるようには感じられない。触れた人間の欲求になんらかの形で応えている? 少なくとも私はなにも考えずに触れたから…)

四季「…? なんだか、甘い匂いが強くなった気がする…ココアの香り? かのん先輩の証言と一致するけど…口ぶりからしてこんなにもはっきりとは現れないはず…」

四季(ココア…そういえばもう随分飲んでない。最近はコーヒーばかりだったから…)

四季「…帰りにミルクココア、買って帰ろうかな」トッ

 ガラッ

21: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:00:43 ID:???00
 ~~~

夏美「オ~ニナッツ~! 日々のあれこれ以下省略、今日は結女七不思議の記念すべき一つ目候補である『ハンモックークー』の秘密に迫りますの~!」

夏美「『ハンモックークー』はスクールアイドル部の部室にある不思議なハンモックの名前ですの。噂によると寝転んだ人全員がそれぞれまったく違う感想を述べるとか…エルチューバーとして突撃取材するしかありませんの!」

夏美「というわけで、これが実物ですが…見た目は全然普通のハンモックですの。では早速…」ギシッ

夏美「…なっつぅ~? 人によっては座っただけで効果が出るらしいけど…なんともありませんの。まさか夏美を釣るためのガセ…」ゴロン

22: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:02:50 ID:???00
夏美「おっ、おおっ!? ね、寝転んだら急に背中が押される感触が! 下には誰もいませんの、ああっ、しかもその場所はぁ~っ…!」

夏美「ば、パソコン作業で凝り固まった肩がゴリゴリほぐされてっ…腰もキワキワの筋肉がちょうどいい力で…首のマッサージで眼精疲労が抜けていくぅ……」

夏美「き、ききますの~……」フニャ~~

夏美「……気づけば身体がオニ軽ですの…こ、これは凄い、これを世に公表すればオニナッツチャンネルは一躍…! マニーですの~っ!」ダッ

 ガラッ

(この後撮影データごと没収された)

24: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:05:42 ID:???00
 ~~~

マルガレーテ「このハンモック、みんな話題にしてるけど…ただのハンモックでしょ? 相変わらず大げさなんだから」ギシッ

ハンモックークー『モゾモゾ』

マルガレーテ「…なんか、座ったそばから変な感触が……って、きゃあっ!?」ゴロン

マルガレーテ「なっ、なに!? なにもしてないのに勝手にハンモックに転がされ…し、下に誰もいないわよね!?」バッ

マルガレーテ「いない…もしや、おばけの仕業とかだったり…!?」ゾゾ

25: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:07:17 ID:???00
マルガレーテ「い、いやいや! そんなのありえないんだから! でもなんでこんな不気味なものがずっと部室に置いてあるわけ…?」ユラユラ

マルガレーテ「寝心地がいいのが余計に不気味なんだけど…まさかこの心地よさに釣られた人間の生気を…」ユラユラ~

マルガレーテ「…なんか、落ち着いてきちゃったわ。いい感じに揺れてるし、甘い香りもするし…」

マルガレーテ「……」グ~

マルガレーテ「…ちょ、ちょっとお腹空いただけよ、怖気づいて席を外すわけじゃないから! 覚えときなさい!」ダッ

 ガラッ

26: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:10:32 ID:???00
 ~~~

冬毬「マルガレーテに言われて気がつきましたが…そういえばこのハンモック、使っていませんでしたね。といっても、エビデンスのない噂は信じていませんが」

冬毬「…しかし、なぜマルガレーテはこのハンモックを怖がっているのでしょう? ちょうどいい機会です、それも含めて検証しましょう」ギシッ

冬毬「…? なんでしょうこの感触、明らかに布のそれではないような…プニプニとしています…」

冬毬「…ありえない。ですが…事実としてそのように私へ伝わっているのですから…確かにこれは少々不気味ですね…」

27: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:11:50 ID:???00
冬毬「寝転んだらまた感触が変わった…というより、感触が消えた…? 包まれているような、なにもなくただ浮かんでいるような…」ゴロン

冬毬(…あ、もしかして)

冬毬「…ふふっ、なるほど。私の部屋の“姉者”や“マルガレーテ”もいつもこのような感覚なのでしょうか」

冬毬「思わぬ収穫でした。可可先輩には感謝しなければなりませんね」トッ

 ガラッ

28: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:14:28 ID:???00
 ~~~

可可「く~…く~……」ユラ ユラ

恋「どうやら、可可さんは眠ってしまったようですね」

千砂都「ありゃ、ぐっすりだねぇ」

かのん「しかたないよ、最近は衣装作るのに遅くまで頑張ってくれてたみたいだし」

すみれ「寝かせときましょ、残ってるのはみんなでできる作業だけなんだから」

29: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:16:33 ID:???00
マルガレーテ「それで、結局あのハンモックの秘密はわかったの?」

四季「わからない。可可先輩が作ったこと、人によってまったく違う挙動を見せること、その理由は可可先輩もわからないということ、わかってるのはこの事実だけ」

夏美「むっふっふ~…可可先輩が作ったとわかっているなら十分ですの。可可先輩に同じハンモックをたくさん作ってもらえれば、巨大なビジネスチャ~ンスが…!」

きな子「ダメっすよ~…! 可可先輩にもやりたいことがあるんすし…」

メイ「そうそう。それに、こういう不思議なもんで金稼ぎしようとする奴は破滅するって相場が決まってんだよ」

冬毬「それはエビデンスのない意見ですが…可可先輩の夢を邪魔するわけにはいきませんね」

30: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:19:06 ID:???00
千砂都「そういえば、可可ちゃんがこれに寝転んだらどんな感じがするんだろ?」

かのん「確かに、それって聞いたことなかったかも」

恋「起きたら聞いてみましょうか。今のお顔を見るに、誰よりも心地よく眠れていそうではありますが」

可可「く~…く~…」ニヘ

すみれ「ほーんと、気持ちよさそうに寝るわよねぇ」ツン

31: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:21:13 ID:???00
かのん「…可可ちゃんは今、どんな夢見てるかな?」

千砂都「一日限定、サニパさん復活ライブ! とか?」

すみれ「案外自分がステージに立ってる側かもしれないわよ?」

恋「とても安心している表情ですし、ご家族と過ごしている夢かもしれません」

かのん「そうだね…でも、こんなに幸せそうなんだもん。私たちが出てる夢を見てくれてたら…なんて、思っちゃうな」

32: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:23:04 ID:???00
かのん「…さて、可可ちゃんが起きる前に小物作りとか終わらせちゃおっか!」

千砂都「そうだね。みんな、あとちょっと頑張るよ!」

恋「ふふっ、仮眠から覚めて完成していたら驚かせてしまうでしょうか?」

すみれ「みんなとやりたかったって寂しがるかもね。でもまぁ、たまには衣装の逆サプライズもいいんじゃない?」

可可「むにゃ…」

かのん「…もうちょっとだけ、恩返しさせてね。可可ちゃん」

33: 名無しで叶える物語◆GsVzf6DT★ 2025/05/29(木) 23:24:43 ID:???00
「おやすみ、可可ちゃん」
「おやすみなさい、可可さん」
「おやすみ、可可」

可可「く~…」ユラ ユラ

おわり。

引用元: 『ハンモックークー ご自由にお使いクダサイ』【SS】