大学の学食

ｻﾞﾜｻﾞﾜ……

友人A「ねえ、恋ちゃんって彼氏いるの？」

恋「わ、わたくしに……？　もちろん……い、います！」

恋（うっ、つい勢いで言ってしまいました……！）

友人B「えー！?　本当！？　写真見せて見せて！」

恋「え、ええと……少しお待ちください」

恋（どうしましょう……どうしましょう……）ｱｾｱｾ

ｽﾏﾎｽｯｽｯ

恋（何か写真は……これは、かのんさんとのツーショット写真！）ﾋﾟﾀｯ

恋（髪をまとめ、キャップを被ったボーイッシュな私服姿……この時のかのんさん、わたくしも内心かなりかっこいいと思っていました//）

恋（時間をかけても怪しまれますし、もうこれしかありません……！）ｷﾘｯ

恋「こ、こちらです……！」ｽｯ

友人A「わ、すごい美形！　めっちゃかっこいい！」

友人B「それに優しそう！　いいなー！　一緒に写ってる恋ちゃん、めっちゃ幸せそうで可愛い！」

恋「あ、えっと///」ｶｧｧ

友人A「ねえ恋ちゃん、彼氏くんも入れて今度みんなで遊ぼうよ！　連れてきて！」

恋「連れてくる！？」ｷﾞｸｯ

友人B「いいね！　実物もかっこいいんだろうなあ」

恋「すみません……か、彼は今オーストリアに留学しておりまして…しばらくはお会いできないのです」

恋（留学しているのは本当ですから……嘘はついてません）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

友人B「えー、留学中かぁ。残念！ いつ帰ってくるの？」

恋「え、ええとその……いつかは……かなり先になるとは思いますが……日本に来たときは、絶対に紹介しますね！」

恋（うっ、また勢いでつい！）

友人A「ほんと！？　絶対だからね、約束！」

恋「は、はい。もちろんです」ﾆｺｯ

恋（ど、どうしてこんな約束を……！　でも引き伸ばしておけばそのうち飽きて忘れてくれますよね……）

友人A「じゃあせめてこの写真もう一回見せて！」

友人B「ほんと恋ちゃんの彼氏、めっちゃかっこいいよねー」

恋「え、ええ。写真だけならどうぞ」

ﾋﾟﾛﾝ♪

恋（スマホの画面にメッセージのポップアップが！？）

ﾋﾟｺﾝｯ

かのん『来週日本に帰ることになったから、会わない？』

友人A「え、ちょっと！　かのんさんからメッセージ！？」

友人B「うそ、来週帰ってくるって！」

恋「ち、違います！　これはグループチャットで……！　スマホ返してください！//」ﾊﾞｯ

友人A「ふふーん。恋ちゃん、絶対紹介してくれるって約束したよね？」ﾆﾔﾘ

友人B「うん、会いたい！　来週、連れてきてね！　楽しみにしてるから！」

恋「あ、あ……///」

恋（こんなタイミングでかのんさんからメッセージが来るなんて……来週どうすれば……）

友人A・B「じゃあよろしく～」

恋の家


恋（うぅうぅぅ///）ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

恋（わたくし、なんてことを……ですが今は恥ずかしがってベッドでジタバタしている場合ではありません）

恋「こうなったら……かのんさんに正直に話して、助けていただくしかありません……！」ｷﾘｯ

ﾋﾟｯﾋﾟ　ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙ……

ﾋﾟｯ

かのん『もしもし？』

恋「かのんさん！　急に電話して申し訳ありません！」

かのん「大丈夫だよ！　恋ちゃん、なんかすごく声が上ずってない？　どうしたの？」

恋「実は……大変なことになってしまいまして……！///」

恋「わたくし、ついカクカクシカジカで……！」

かのん『え、えぇぇぇ！？//』

かのん『 私の写真を見て彼氏と勘違いさせた！？　恋ちゃんなんで！？』ｱﾀﾌﾀ

恋「初めてできた大学の友人で……その、見栄を張ってしまいまして……」ﾓｼﾞﾓｼﾞ

かのん『あはは……恋ちゃんもそういうことあるんだね』

恋「それでお願いです！」

恋「かのんさん！　男装して彼氏のフリしてください！」

かのん『へっ！？』

恋「お願いします！」

かのん『いやいやいやいや！　無理！　無理だって！　ていうか男の子って思われたのちょっとショックだし！』

恋「すみません……！　でも、それは決して悪い意味ではなく……」

恋「むしろ友人たちはかのんさんのことを『かっこいい！』『美形！』と大絶賛で……！　わたくしも、実際にそう思いますし……！///」

かのん「う……そんなこと、ないと思うんだけど……//」ﾃﾚｯ

恋（もう一押し……！）

ちゃんと扱い慣れてるʃt(c◜･ ᴗ ･)かわいい

これはたまらん

恋「かのんさん！　どうか 来週、友人たちに会うときだけで良いので……かのんさんなら絶対できます！」

恋「かのんさんは昔から本当にかっこいいですし、男装してなくても本当に顔が良いなと感じる瞬間が何度もあって……」

かのん『え///　で、でも彼氏のフリなんて急すぎるって！　 私、そんなキャラじゃないし……ハードル高すぎっていうかぁ……』ﾓｼﾞﾓｼﾞ

恋（ちょっと興味を持ち始めてます！　このまま押し切れば……！）

恋「そんなことありません！」

恋「かのんさんの美しい髪をサラッとかき上げる仕草だったり、ステージで歌うときのキラキラしたオーラは絶対イケメン彼氏にピッタリです！　友人たちも、かのんさんを見たら絶対メロメロになります！」

かのん「メロメロって///」

恋「わたくし、かのんさんしか頼れる人いないんです……！」

恋「わたくしの彼氏役はカッコイイかのんさんしかできません！！」ﾄﾞﾝｯ

かのん『うっ……もう、恋ちゃんにそこまで言うんなら、しょうがないなぁ///』ﾃﾚﾃﾚ

恋「！」

かのん『よーし、わかった！　やるよ！　 男装して彼氏のフリ！』ｷﾘｯ

恋「かのんさんっ！　 ありがとうございます！　この恩は一生忘れませんっ！」ｳﾙｳﾙ

1週間後


恋「……」ｿﾜｿﾜ

恋（もうすぐかのんさんが来るはずです……！）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

恋（友人と合流する前にかのんさんと待ち合わせることになりましたが……楽しみなような緊張するような……ああ、心臓がバクバクします//）



かのん「あ、恋ちゃん！　お待たせ！」ﾀﾀｯ

恋「かのんさ……」ｸﾙｯ
　
恋「～～～っっ！！///」

恋（白いシャツに黒のジャケット、スリムなダークグレーのパンツ、そして髪を結んでキャップを少し斜めに被ったかのんさん……！//）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

恋（高校時代のかのんさんのボーイッシュさはそのままに、洗練された大人っぽい色気がプラスされています……！//）ﾄﾞｷﾄﾞｷ


かのん「恋ちゃん久しぶり！　男の子っぽい格好して来てって言われたから、こんな感じにしたんだけど…………変じゃないかな？」ﾓｼﾞﾓｼﾞ

恋「変だなんてことありません！　とってもかっこよくて完璧なコーディネートです///」

かのん「そ、そうかなぁ？//」ﾃﾚﾃﾚ

恋「はい、本当にイケメンです！！//」

かのん「恋ちゃんにそう言われるとなんか自信出てきたかも！　ありがとう！」

恋「そんな、こちらこそ無理なお願いを聞いて頂いて感謝してもしきれません。ありがとうございます！」

かのん「ふふ、恋ちゃんのピンチならいつでも駆けつけるよ！」ﾆｺｯ

恋「っ！//」ｽﾞｷｭｰﾝ

恋（その笑顔とウインクは反則です……かっこよすぎます//）

恋「え、ええ。どこからどう見ても立派なか、彼氏です//」

かのん「あはは、なんか恋ちゃんから彼氏って言葉聞くと新鮮」

恋「も、もう//　子供じゃないんですから//」ﾌﾟﾝﾌﾟﾝ

恋（でも……こんなにかっこよかったら、友人たちは本気でかのんさんに惚れてしまうのでは……？）

恋（それ、なんか……嫌です……）ｽﾞｷｯ

かのん「恋ちゃん？」ｼﾞｯ

恋「いっいえ何でもありません！　そろそろ待ち合わせ場所に移動しましょう//」ｿｿｸｻ

かのん「うう、恋ちゃんは褒めてくれたけどやっぱり緊張するぅ～！」ﾋﾞｸﾋﾞｸ

数分後　


恋「ここが待ち合わせ場所です」

かのん「やばい、また不安になってきた……大丈夫かな」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

恋「 絶対大丈夫です！　こんなにかっこいいんですから……！」

ｽﾀｽﾀ

友人A「あ、いたいた、恋ちゃーん！」ﾌﾘﾌﾘ　

友人A「やっと会えた！ って、うわっ！ この人がかのんさん！？」ｷﾗｷﾗ

かのん「こ、こんにちは（低音ボイス）」

友人B「わぁ、かっこいい……！　こんにちは……！//」ﾎﾟｯ
　
友人A「よろしく！　っていうか写真で見るより何倍も顔が良い！！　恋ちゃんの彼氏、めっちゃイケメンじゃん！」ﾎﾟﾝﾎﾟﾝ

かのん「ふふ、ありがとう」ﾆｺｯ

友人A・B「キャー！//」

恋（やっぱり友人たちから見てもかっこいいですよね、かのんさん。その低音ボイスも、すごく素敵です……！　こんなの、誰だってドキッとしちゃいます）ｽﾞｷｽﾞｷ

恋（あれ？ かのんさんが評価されるのは良いことなのに……なんでこんな嫌な気持ちに……？ ま、まさか、わたくし、かのんさんのこと……//）

恋（い、いえ！ そんなはずありません！　ただ、友人たちに誤解させて申し訳ないという罪悪感で胸が苦しいだけです……！）

友人A「ねえ、かのんさんってカッコイイだけじゃなくてめっちゃ優しそうな雰囲気だよね！」ｷｬｯｷｬ

友人B「 恋ちゃんとどうやって出会ったの？　どっちから告ったのか聞きたい！」ｷｬｯｷｬ

恋「え、えっと、高校時代に……」

かのん「あ」

友人B「え？ 恋ちゃんの高校、女子校じゃなかったっけ？」ｷｮﾄﾝ

恋「うっ！」

恋（そうでした、つい本当のことを！）

かのん「そうそう、恋ちゃんの高校の文化祭に遊びに行って一目惚れしちゃってさ、わた……俺からナンパしたんだよね！」ﾆｺｯ

友人A「うわー！ 文化祭でナンパ！？　 めっちゃ大胆！」ｷｬｰ

恋「は、はい……//」

恋（まあ文化祭でかのんさんから誘われたのは本当ですし……//）

友人B「ほんと美男美女でお似合いのカップルだね！」ﾆﾔﾆﾔ

恋「か、カップルって……！///」ｶｧｧ

友人A「ねえねえ、かのんさんは恋ちゃんのどんなところが好きなの？」ﾆｺﾆｺ

恋「ちょ、ちょっと待ってください//」

かのん「そうだなあ、可愛いのはもちろんだけど」

恋「はぅ///」ﾎﾞｯ

友人B「うんうん」ﾆﾔﾆﾔ

かのん「恋ちゃんと一緒にいると楽しいし、頑張ろうって前向きな気持になれるんだよね！」ｸﾞｲｯ

恋（か、肩に手が//）ﾄﾞｷｯ

かのん「それに、なんだか守りたくなるし」ｸｽｯ

友人A「あらあら」

友人B「恋ちゃん本当に幸せものだねえ」

恋「ううぅ、かのんさん、人前でこんな……恥ずかしいです//」

友人A「ふふっ、なんか私たちお腹いっぱいかも」ﾁﾗｯ

友人B「うんうん！　恋ちゃん、かのんさんとラブラブデート楽しんでよ！　私たち、ちょっと用事思い出したから！」ﾁﾗｯ

恋「え！？ い、一緒に遊ぶんじゃ……！」ｱｾｯ

友人A「いいよいいよ！　ふたりでゆっくりして！　かのんさん、また今度ね！」

かのん「うん、ありがと！ またね！」

友人B「ばいばーい」

ｽﾀｽﾀ

恋「……」

恋（ふ、ふたりきりになってしまいました……）

かのん「恋ちゃんの友達、いい子たちだったね」

恋「え、ええ」

恋（ふたりっきりなんて、高校時代いくらでもあったのに……この状況だと……なんだか妙に意識してしまいます//）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

かのん「じゃあ、せっかくだしこのままどっか行く？」

恋「え、ええ。そうですね」

かのん「ふふ、デートだね！」ﾆｺｯ

恋「も、もう！　彼氏の演技は大丈夫ですから！//」

恋「ですが、本当にありがとうございました。無理なお願いを聞いて頂いて」ﾍﾟｺﾚ

かのん「もう。いいっていいって。私もちょっと男装って楽しかったし！」

かのん「恋ちゃんとお似合いって言われるのも照れたけどなんか嬉しかったし……」ﾎﾞｿｯ

恋「お礼に今日は何か奢らせてください！」

かのん「いいの？　ありがとう！」

数日後


恋「はあ……」ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

恋（あれからかのんさんとスイーツを食べ歩きながら代々木公園や神宮外苑のイチョウ並木をお散歩して、高校時代を思い出しながら楽しく過ごしました）

恋（気のせいかもしれませんが、通行人の方たちの視線がいつもより刺さったような気がします。男装したままだったかのんさんがかっこいいからでしょうか///)

恋（そして、一緒に過ごして確信しました。わたくしは、かのんさんのことが……///)

恋（この気持ち、ちゃんと整理してから、いつか伝えることができたら……）

恋（友人たちに、”役”ではなく、本当に恋人になったかのんさんを紹介することができたら……）

恋「～～～っ//」ｶｧ

恋「いけません！　かのんさんもわたくしも今はそんなことしている暇はないのですからっ！」

恋「で、でも……」ﾓｼﾞﾓｼﾞ

ﾌﾞｰﾌﾞｰ

恋「！！」ﾋﾞｸｯ

恋（かのんさんから電話！？　このタイミングで！？）

ﾌﾞｰﾌﾞｰ

恋（心の準備ができていません……！　ですが早く出ないと切れてしまいますっ）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

ﾋﾟｯ

恋「も、もしもしかのんさん？　どうしたんですか？//」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

かのん『恋ちゃん！ 助けてー！ 大変なことになっちゃった！』

恋「な、なんですか！？　大丈夫ですか！？」

かのん『実はさ……ウィーンの留学先で新しくできた友達に『彼氏いるの？』って聞かれて、つい勢いで『いる！』って嘘ついちゃって……！』

恋「え、かのんさんも！？」

かのん『お願い！　 今度は恋ちゃんが男装して、私の彼氏役やって！　今からウィーンに来て！！！』

恋「ええええ！？///」


おわり