1: 矢橋P 25/05/10(土) 23:53:00 ID:QEwo
このSSは 静香「逆襲のアイドル!」 静香「挑戦の時!」 の続編です

  -注意-
・前作から1年後の世界です 
  前作 静香「逆襲のアイドル!」 前編 静香「逆襲のアイドル!」 後編
 また過去作と同じ世界観です 
  過去作 【ミリマスSS】鶴と亀は月夜で踊る

・台詞形式です
・プロデューサーは登場し……ます!
・設定変更、原作改変もします
・パワポケのキャラもがっつり出ます 

完結出来るかわかりませんがよろしくお願いします

2: 矢橋P 25/05/10(土) 23:55:00 ID:QEwo

ハタ侵略から10年
魔人と呪いの少女を巡る事件から7年
開拓高校のims甲子園をかけた挑戦から1年 の月日が経過した
あれから世界は大きく変化し、とりわけアイドル業界の変化はめざましいものがあった

そしてここにまた一人、10年越しのアイドルになりたい気持ちを持った女性がいた……

3: 矢橋P 25/05/10(土) 23:58:37 ID:QEwo


プロローグ   『ツナミ』

 

4: 矢橋P 25/05/10(土) 23:59:58 ID:QEwo

夜の繁華街、華やかな表通りから外れ裏の路地
時刻は日を跨いだ深夜2時になる刻
そんな時間で街灯の光すら届かないところに現れる人影があった
 

5: 矢橋P 25/05/11(日) 00:01:43 ID:N4Mr

(幽霊や物の怪の類いならかわいいものなんだがな……)


とある男が車の中で身を潜める
この車、窓ガラスに特殊なフィルムが張ってありマジックミラーのように外から見てもガラスが光っているように見え
中の様子が見えないようになっている。監視をするには非常に都合がいい


やがて、お目当ての黒服を着た謎の集団が現れる
車の中で息を潜める男と違って警戒はしているものの、こそこそとはしていない
 

6: 矢橋P 25/05/11(日) 00:04:45 ID:N4Mr
(やっと来たか)


男はこいつらを張るために0時からずっと息を潜めていたのである

男の監視するターゲット。黒服の連中は"ツナミ”の工作員である
彼らはきびきびと手慣れた手つきで電柱や街灯にタバコの箱ぐらいな小さな箱を取り付けているようだ

一見、虫除けか何かのセンサーかに思えるその箱の中には"ウイルス”が仕込まれている
つまり彼らが仕掛けている装置はウイルス散布器なのである

 

7: 矢橋P 25/05/11(日) 00:06:12 ID:N4Mr
「くそったれ……」


世界最強企業グループのツナミの主産業の一つ医療分野、とりわけワクチン開発は世界トップを独走しており世界中のワクチンの80%はツナミが作っている
この日本でもツナミのワクチン工場はいくつかあり、毎年一定数のワクチンを政府がツナミから買い取り、国民に無料で配っている


『ツナミは脱税する必要はない。なぜなら全ての税金はツナミに使われるからだ』


こんな発言が”ツナミ側から”出てきた時にはちょっとした騒ぎになったが少しも誇張表現ではないだろう
 

8: 矢橋P 25/05/11(日) 00:10:43 ID:N4Mr

さて、ワクチンが配られること自体は国民にとっても悪いことではない………
が、政府が購入するワクチンの発注数はデータを元に政府が専門家と話し合い感染症を予測しながら決定する
(と言ってもデータはツナミからのものだし専門家とやらもツナミの息のかかった人間だが)

予想外の事態も考慮して多めに発注しているのだが予想を反して感染症が流行しなかった場合も当然あるのだ
その場合はワクチンは余り廃棄処分、予算は無駄になる。ツナミにとっても政府側にとってもいいことではない


そんな事態を防ぐためにツナミは工作員を使いワクチンを開発済みのウイルスを拡散させ、意図的に感染症を流行させているのだ

9: 矢橋P 25/05/11(日) 00:13:22 ID:N4Mr
「ふざけやがって。ふざけやがって!」



男は怒りを言葉に込めてを繰り返し叫ぶ

変なインフルエンザや他の感染症が流行るぐらいならあらかじめワクチンがあり対処が割れているウイルスを先に流行らせた方がいい?

ふざけるな!

それで万が一体力の弱った病人や老人が亡くなったらどうするんだ
結局ツナミが起こしている卑劣なマッチポンプだろうが

10: 矢橋P 25/05/11(日) 00:15:25 ID:N4Mr
その男の怒りの矛先は元凶のツナミやそれを容認している日本政府
そして今まさに目の前で起きていることを黙って観ているしか出来ない彼自身にも向けられている

わかっている。今怒りに身を任せ飛び出したところで自分ではツナミの最下層の工作員にも勝てやしない。袋叩きに合うだけだ
よしんば勝ったとしてもその先は無い
男は全てを知りながらも怒りを溜めることしか出来なかった…………






 

11: 矢橋P 25/05/11(日) 00:16:30 ID:N4Mr





「任務完了。確認出来た設置数は14個」


しばらくしてツナミの工作員は引き上げた
全員もれなく引き上げたことを確認すれば男の任務は終了だ

組織としての任務は…だが

12: 矢橋P 25/05/11(日) 00:19:28 ID:N4Mr

(ここからは俺の仕事だ)


男はポケットからある物を取り出す
それはツナミの工作員が仕掛けたウイルス散布装置に瓜二つである


「さすが杏奈だな。誰が見てもそっくりだ」


もちろん男が取り出した者はウイルス散布装置ではない。皮が似ているだけで中身は無い偽物である
なのだがこうして並べてみてもどっちが偽物だかわからないぐらいである
寸分たがわずそっくりに作った製作者を感嘆しつつ、男は手早く偽物と本物を入れ替えていく
 

13: 矢橋P 25/05/11(日) 00:25:06 ID:N4Mr

「10個しか用意出来てないから全部は交換できないが仕方ないな。それに全部偽物にすり替えるとさすがに気付かれるだろうしな」



まともに止めることが出来ないのならこうして気付かれないように本物と偽物を入れ替え本物は回収し密かにウイルス散布を防ぐ。これが男の考えた結論だった
無論ばれたなら男も組織もただでは済まない。だからこの行為は男の独断行為だった



「おっと、もたもたしてると夜が明けてしまう。今回も朝帰りになりそうだ」


さっきまで全てを覆い隠していた闇が晴れ、夜明けが一日の始まりを告げようとしていた







 

14: 矢橋P 25/05/11(日) 00:26:23 ID:N4Mr

パライソタウン 秘密機関





朝日が昇り終えた頃、男は自分の“自宅“に戻ってきた
パライソタウンの地下にある秘密施設。そこが今の彼の自宅だ
彼は25歳。両親と実家は8年前の大神とジャジメントの戦争があった時に抗争に巻き込まれ失った。彼がツナミを強く憎む理由はそれで十分だ
彼は日本政府が作った対ツナミ組織に身を置いている


夜勤明けですぐさま休みたい心境はあったがとある人物に一言礼が言いに開発棟に寄ることにする
 

15: 矢橋P 25/05/11(日) 00:27:14 ID:N4Mr

男「おはよう、杏奈」

杏奈「……ん。Pさんおはよう」



カチャカチャ道具をいじっていた手を止め、望月杏奈は男に目を向ける
彼女は10年前のハタ侵略の時の英雄の一人だ
大学を卒業後、このパライソタウンの研究員として配属された
配属されて日は浅いが既に頭角を現している

16: 矢橋P 25/05/11(日) 00:28:17 ID:N4Mr

男「例のダミー、寸分たがわずそっくりだったよ。杏奈が作ってくれて助かった」


杏奈「なら良かった。……でも中身作ったのは杏奈だけどデザインをしたのはロコだからロコにも感謝して……ね?」

男「ロコはうちの組織の人間じゃないだろ。こんなこと頼んだ俺が悪いけどさ」

杏奈「……そうだね。Pさんの頼みじゃなかったらこんなこと受けない……よ」
 

17: 矢橋P 25/05/11(日) 06:03:48 ID:N4Mr
そう言われると男は反論出来ず頭を掻く
本当はツナミはおろか組織にとっても裏切り行為になることを他の人間に巻き込みたくはなかった
Pというのは彼の組織の中でのコードネームである



杏奈「……足の調子はどう?」

P「何も支障きたしていないし問題はないけど」

杏奈「……最後にメンテナンスしたのは?」

P「1ヶ月前だな……」

杏奈「……足を診せて。ついでにメンテナンスするから」

P「何から何まですまないな」
 

18: 矢橋P 25/05/11(日) 06:04:50 ID:N4Mr
男はサイボーグであった
そもそも25歳の若造が政府の秘密組織に居ることが出来るのは数少ないツナミ由来ではないサイボーグだからである




百合子「杏奈ちゃんおはよ……ってPさんもいたんですね!」

P「七尾……声がでかい。夜勤明けの耳に響くぞ」

百合子「あ……すみません」

P「冗談だよ。久しぶりだな、研究は順調か」

19: 矢橋P 25/05/11(日) 06:05:41 ID:N4Mr

七尾百合子。彼女も杏奈と同じハタ侵略の英雄の一人
杏奈と同じ大学に通った彼女は杏奈の推薦もあって同じパライソタウンの政府の研究機関に所属している


百合子「それはもう!調べてみると色んな事実が判明してきて……」

P「俺にはまだ信じられないんだけどな、“具現化“ってのは」


杏奈も百合子も政府が同じく運営する研究機関に所属している
だが杏奈の部門は武器・サイボーグ及び生物学に対し、百合子の部門は“具現化“を研究する部門だという
 

20: 矢橋P 25/05/11(日) 06:07:07 ID:N4Mr

百合子「もうっ、具現化は間違いなく存在します」

百合子「日照りの際、雨を降らしてくれた神様。人の願いを叶える魔人。最も大事なものを代償として復讐を遂行する悪霊など現代にも残れているあらゆる言い伝えの元は具現化現象によるだったのではないかと思うんです」フンス


P「本当にか?超能力なら見たことあるし、ぎり許容出来るんだが」

百合子「超能力と具現化は別物ですよ!一緒にしちゃ駄目です。Pさんは相変わらず唯物論主義者ですね」

P「唯心論は肌に合わなくてね。七尾の感受性豊かなところがうらやましいよ」

杏奈「……百合子さん。Pさんにロマンを求めても無駄」


※唯物論とは科学の物質や原理、諸々現象など形あるものしか信じないということ
逆に心や魂など形のないものを信じるのが唯心論

21: 矢橋P 25/05/11(日) 06:07:52 ID:N4Mr

なんだかんだ言い合いながらPと呼ばれる男と杏奈と百合子は会話に花を咲かせてた

彼らが所属している政府の組織は本来一般人がそう易々と所属出来る組織ではない
杏奈と百合子が所属出来たのはハタ侵略の実績と杏奈の父親の推薦あってこそ
Pの場合は政府公認のサイボーグだからであり、そのサイボーグ化も大神とツナミの戦争に巻き込まれた際、片足を失いやむを得ずである

従って若い彼らがここに居るのは特例なのであり近しい同年代はほぼいない
色んな思想が渦巻くこの組織の中にあって上下関係もなく気安く話せる関係なのだ
 

22: 矢橋P 25/05/11(日) 06:10:54 ID:N4Mr

百合子「ジュリアさんは変わりないですか?」

P「ああ、やかましいくらいだよ。あいつはここにいるべきじゃないと思うんだが」

杏奈「Pさんが言っても説得力ない……よ」

P「俺はいいんだよ。政府公認のサイボーグなんて死ぬまで政府の監視下だ。なら政府に従順しながら利用もしてやるさ」

P「でも……あいつはただの一般人だ。今からでも間に合うんだけどな」

百合子(私達から見たら似たもの同士ですけどね)
 

23: 矢橋P 25/05/11(日) 06:13:07 ID:N4Mr

杏奈「……このみさんは?」

P「このみ姉は任務中みたいでここ最近会ってない。このみ姉なら大丈夫だろうけどな」



同じ組織に居るからといって毎日顔を合わせるわけではない
任務中となれば2~3ヶ月は合えないこともザラなのだ
だからこそ、こういう情報交換出来る時は貴重なのである
 

24: 矢橋P 25/05/11(日) 06:14:04 ID:N4Mr
それから会話は弾み、仲間たちの近況報告から組織のこと、政治や時事問題
そして……




百合子「そうだ。杏奈ちゃん、昨日のアイドルグランプリ見た」

杏奈「見たよ。……面子がイマイチだったけど」



アイドルの話題に移る
この二人が特別アイドルオタクというわけではない
今や第二次アイドルブーム真っ盛り
プロ野球の推しの球団の打順を語るがごとく、ワールドカップの試合結果を語るがごとく
アイドルの話題を振りまくのは今やトレンドであり当たり前なことなのだ

25: 矢橋P 25/05/11(日) 06:15:12 ID:N4Mr
いつからこうなってしまったのだろうとPは常々思っている
第二次アイドルブームの前はアイドルなんていち芸能界の配役みたいなものだったはずだ
有名なグループが1~2年に1回新曲出してたまにオタク向けにライブをやって細々とCDを売って……
そんな感じだったと記憶している

それが今は毎月新しいアイドルが誕生し、新曲も週一でも間に合わないほどのペースで生まれ、みんなそれをすかさずチェックし話題に出す
テレビを付ければバラエティー番組にはほぼ何かしらのアイドルがいてラジオ番組のパーソナリティも大体がアイドルだ
昔はバラエティー番組にアイドルが一人でもいれば色物扱いされたものだが……

Pはそのような現状を好ましく思っていなかった
別に世間に反発し逆張りをしているわけではない

26: 矢橋P 25/05/11(日) 06:16:56 ID:N4Mr



百合子「実は……亜利沙さんから貰っちゃいました!765プロ劇場のこけら落とし公演のチケット!」

杏奈「本当に!」

百合子「この前発表された765プロのシアタープロジェクトの初公演。センターは去年ims甲子園を優勝した”最上静香”ちゃんだよ!」

杏奈「すごい!杏奈、絶対行く!」
 

27: 矢橋P 25/05/11(日) 06:17:38 ID:N4Mr

百合子「あ、もし良かったらPさんも行きます……」

P「行かない。俺がアイドルを嫌いなことは知っているだろ」

P「アイドルなんて“ツナミの犬“じゃないか」

百合子「…っ」



Pがアイドルを毛嫌いしている理由
それはツナミとアイドルの癒着であった

28: 矢橋P 25/05/11(日) 06:19:42 ID:N4Mr


始まりは7年前
大神とジャジメントが合併し歴史に刻まれた日
突如、謎のPVと一緒に電撃発表されたツナミアイドル部門の誕生ととMaihamanのデビュー

だがその頃はまだ平和だった
始めは畑違いの大企業が突如参入してきたとあって、この異端児をアイドル業界の誰しもが煙たがった
参入当初、ツナミは特に口出しすることはなくただ黙ってアイドル業界に資金だけを提供した

コンサートホールが老朽化していると知ればただちに改修工事を行い
ステージのハコが足りないと知ればアリーナを増設する

そうなればしかめっ面だったアイドル業界も段々頬を緩めていく
気付けばツナミはアイドル業界にはなくてはならない存在へとなっていった
 

29: 矢橋P 25/05/11(日) 06:21:15 ID:N4Mr

転機は去年。第二回ims甲子園が終了した後である
ツナミ主催のims甲子園が大成功に終わり世間が沸いていた頃、アイドル業界の最大手961プロの黒井社長がツナミグループに宣戦布告をしたのだ
どうやら元々961プロはツナミを快く思っておらず敵視していたところをims甲子園をツナミだけで主催し、大成功させたのがとどめになったようだ

961プロ側に味方したのは961プロ同様の歴史を持つ765プロ、歴史は前の二つに及ばないまでも企業の規模は大きくアイドルの数も人脈もある346プロ、少数精鋭ながら独自路線をゆく876プロ等そうそうたる顔ぶれだった

もはやそれはツナミVSアイドル業界と言っても過言ではなかった

30: 矢橋P 25/05/11(日) 06:22:41 ID:N4Mr

突然の宣戦布告は世間のアイドル好き達にとっては寝耳に水であったが本気にしてはいなかった
あのツナミに本気で喧嘩を売るわけないだろうと思っていたし、またよしんば大闘争になってもこの対戦カードなら程ほどのよい勝負をして
程ほどのところでいい落とし所に落ちつくのではないだろうか。と思っていたのだ



結果は“ツナミの圧勝“で終わった

 

31: 矢橋P 25/05/11(日) 06:23:43 ID:N4Mr
世間が思っていたより961プロが掲げたアイドル業界からツナミの追放は本気だったらしい
始めは軽くあしらっていたツナミグループの上守甲斐日本代表だがジオット全会長が直々に日本に来ると事態が急変、ツナミも本気を出したのだ
それは決して踏んではいけない虎の尾だったのかもしれない


961プロを先頭にしたアイドル業界連合は最終的に敗北した
それは事実上アイドル業界がツナミの経済圧力に屈したということでもある

32: 矢橋P 25/05/11(日) 06:25:03 ID:N4Mr
それ以後アイドル業界はツナミグループの支配下に落ちた
逆らう者が誰も居なくなったからである

ステージを使用するにもテレビ番組に出演するにもCDを売るにもツナミグループの許可がなければまともに出来なくなった
といって第二次アイドルブームの真っ只中である。事業としては依然、魅力的な市場であることには変わりない
アイドル業界のほとんどは撤退は選ばず、手のひらを返すようにツナミになびいた
アイドル事務所から番組プロデューサー、ステージの運営者からCD販売店に至るまで
ある芸能事務所の男社長は媚びるためにツナミの役員の前で裸で踊ったという逸話もある

33: 矢橋P 25/05/11(日) 06:26:21 ID:N4Mr

一方敗れた事務所は悲惨である。ツナミはあえて潰すまではしなかったが
その方がより見せしめになるからだろうか


961プロは今アイドル事業を休止している

765プロは表舞台から消えた

346プロは頭を下げツナミの軍門に下った
数多くのアイドルを抱えている事務所なのだ。所属しているアイドル達を守るため仕方ない選択だろう

876プロは元々独自路線だったからかそこまで変わらないようだ

 

34: 矢橋P 25/05/11(日) 06:26:58 ID:N4Mr

とにかくツナミに逆らってはまともにアイドル事業が出来ないのだ
もはやアイドル達はツナミの思うがまま
どんな人気グループもツナミが解散しろと言われればたちまち解散するだろう。望めば枕営業だって……

ツナミを心から嫌悪しているPはそれが気にくわなかった
ツナミになびいているアイドル企業も
そんなことをつゆ知らず、むしろツナミが先導してくれるなら安泰じゃんとアイドルブームに乗っかっているミーハー達も


 

35: 矢橋P 25/05/11(日) 08:44:58 ID:3Ln3

百合子「Pさん!」



Pは百合子の言葉にはっとして、先ほどの発言を後悔した
自分がいかにツナミを嫌悪していようとも年相応に純粋にアイドルが好きな百合子や杏奈には関係ないことではないか
それに気付かぬほどPも子供ではなかった
だが百合子はそこまで気を悪くしている感じではない、むしろPの反応を予想していたようだった

36: 矢橋P 25/05/11(日) 09:12:56 ID:3Ln3

百合子「Pさんがツナミのこと嫌いなのは知ってます。その影響でアイドル業界のことも快く思ってないことも」

百合子「でもこのチケットは765プロのチケットなんですよ。ツナミに染まってない事務所の」


P「……どういうことだ?確かに765プロはツナミに反抗していた数少ない事務所だけどツナミの許可なくしてライブは出来ないだろ。会場が押さえられないんだから」

百合子「やっぱり知らないんですね」ハァ

杏奈「……百合子さん、ちゃんとPさんに説明してあげて」
 

37: 矢橋P 25/05/11(日) 10:38:39 ID:3Ln3

 百合子「765プロはツナミに対抗すべく、”シアタープロジェクト”というのを始めたんです。劇場を自分で作ってライブを一から十まで全て自分達で運営する。そうすればツナミに頼ることなくアイドル事業が出来ます」

杏奈「CDやグッズも販売店じゃなくて劇場で売ればいいしね……」


P(なるほど……。確かにそれならツナミに一切頼らず運営できる)

百合子「それならPさんも気を悪くしないですよね」
 

38: 矢橋P 25/05/11(日) 12:30:53 ID:N4Mr

Pがアイドルの話題になると気を悪くしていたのを二人はとっくに見通されていたようだ。気を使わせていたみたいで申し訳なくなる
それに765プロは独自の方針でツナミ反抗していると知り興味が出て来た
 

39: 矢橋P 25/05/11(日) 12:32:08 ID:N4Mr

百合子「その劇場が先月完成しこれが初公演なんです」

百合子「でも……やっぱり自前の小さな劇場じゃ限界もありますし……それで少しでも盛り上げてほしいということで亜利沙さんからこのチケットを貰ったんです。Pさんもぜひ行ってみてください」

P「ああ……わかったよ」


Pが一応了承すると百合子と杏奈は顔を合わせはにかんだ





 

40: 矢橋P 25/05/11(日) 12:34:10 ID:N4Mr
数日後






この日は任務もなくPはトレーニングをしていた
トレーニングがひと段落したタイミングで一人の女の子がPやってきた


ジュリア「P兄。ちょっといいか」

P「ジュリア。上への愚痴なら聞かないぞ」

ジュリア「愚痴じゃねー。意見だ意見!」

41: 矢橋P 25/05/11(日) 12:34:28 ID:N4Mr

この女の子はジュリア。Pの幼なじみ……ではないが知り合いというほど浅い関係でもない

ジュリア「一体いつになったらあたしに任務が与えられるんだ」


ジュリアもまたツナミ絡みで両親を失っていてPと同様ツナミを強く憎んでいる

42: 矢橋P 25/05/11(日) 12:36:44 ID:N4Mr

P「ごく普通の女の子のお前に出来ることなんてないだろ」

ジュリア「なっ。P兄こそ大して強くもねーだろ」

P「一般人よりは腕っぷしがあるほうだと思うが」

P(何で組織はジュリアを加入させたんだかな)



ジュリアもPも同じ時期に両親と家を無くしたとあって兄弟みたいな関係だった
ジュリアは16歳、Pとはだいぶ離れているがジュリアは気にせずPを慕っている
そしてツナミを嫌悪しているという点も共通していた

43: 矢橋P 25/05/11(日) 12:39:31 ID:N4Mr

P「なあ、今からでもこの組織を抜けろよ。俺と違ってお前はまだ戻れる」

ジュリア「嫌だね。ツナミを前にして逃げるのはあたしの信念に反する」

P「信念とかって問題じゃないだろ」



もう何回も繰り返したやり取りだ
何度もPはジュリアに忠告しているのだがジュリアは依然と聴き入れない

44: 矢橋P 25/05/11(日) 12:42:10 ID:N4Mr

ジュリア「P兄も認めてくれよ。そうしたら上だって……」

P「相手はあのツナミなんだぞ。遊びじゃないんだ、俺だっていつ命を落とすかわからない」

ジュリア「あたしにその覚悟がないとでもいうのか?」





<ブーーブーー

<ピロリン
 

45: 矢橋P 25/05/11(日) 12:44:25 ID:N4Mr

P「メールだ。上からの新しい指令だ」

ジュリア「あたしもだ……って、もしかしてアタシにも指令が!」

P「……至急、ジュリアと一緒に指令室に来いだって!?」

ジュリア「よっし!ついにあたしにも任務が降りたんだな」

P(そんな馬鹿な……)








 

46: 矢橋P 25/05/11(日) 12:45:09 ID:N4Mr
政府秘密機関 指令室

反ツナミ機関隊長 洗谷



洗谷「コードネームPにコードネームJ。揃ったか」

P「P、ここに居ます」

ジュリア「Jも同じく」
 

47: 矢橋P 25/05/11(日) 12:46:09 ID:N4Mr

洗谷「うむ。まずPはこないだのツナミ工作の監視、ご苦労だった」

P(いつもはねぎらいの言葉なんかかけないのに……まさか俺の独断行動がバレたか?)ドキッ


ジュリア「なあ、ようやくあたしに任務が降りるのか」

洗谷「そうだ。コードネームJにはとあるところに所属してもらう」

ジュリア「潜入捜査ってやつだな。いったいどこに……」

洗谷「アイドル事務所だ。Jは地球(アース)プロに行ってアイドルになってもらう」
 

48: 矢橋P 25/05/11(日) 12:47:53 ID:N4Mr

P「!!」

ジュリア「はぁ!?アイドル!!」ガタッ



洗谷「ツナミが牛耳るアイドル業界、その動向を我々も知っておく必要がある。一人くらい組織の息が掛かった人間をアイドル業界に潜ませておこうということだ」

ジュリア「ちょっと待てよ!それじゃあたしは……」

洗谷「しばらくはずっとアイドルでいてもらう。勝手に辞めるなよ」

ジュリア「なんだよそれ!」
 

49: 矢橋P 25/05/11(日) 12:48:50 ID:N4Mr
洗谷「コードネームJ」ギロリ

洗谷「サイボーグでもなければ超能力者でもない、そして何かの分野に秀でているわけでもないお前を組織が拾ったのはこのためだ」

洗谷「まさか孤児になったお前に我々が同情しているとでも思ったか?」

ジュリア「ぅ……」

洗谷「お前が出来るのはせいぜい末端の工作員ぐらいなものだ。せめてそれぐらいまっとうしろ」

洗谷「お前はギター弾きは上手かったな。顔も悪くない。アイドルはうってつけだろう」

ジュリア「ぐぐ……」


 

50: 矢橋P 25/05/11(日) 12:53:27 ID:N4Mr

Pは相変わらず洗谷隊長は強引だな。とも思いながらもこれで良かったとも思う
ジュリアはこの影の世界で生きていく必要はないとPは思っていた
 

51: 矢橋P 25/05/11(日) 12:55:05 ID:N4Mr
ジュリア「……だいたい地球プロってなんだよ。アタシ聞いたことないぜ」

洗谷「そうだろうな。最近出来たばっかりだ」


洗谷「”二階堂千鶴”と"徳川まつり”は知っているだろう」

ジュリア「ああ、今どきにしては珍しいツナミに媚び売らないでデュオを組んで頑張ってるアイドルだろ」

洗谷「そのプロデューサー"黒月光亀”が新しくアイドル事務所を立ち上げた。それで新しいアイドルを募集していてな、ちょうどいいだろう」

P「なるほど。あの黒月光亀ならツナミにへりくだることもないでしょう。潜入先としては悪くないですね」

洗谷「そういうことだ。既に先付けでコードネームBが事務員として潜入している。受ければ採用してもらえるように手回してもらえるだろう」

P「このみ姉が……」

52: 矢橋P 25/05/11(日) 12:56:49 ID:N4Mr


ジュリア「……確かにアタシは元々パンクロック志望だった。でもアイドルなんて……」

P「J、お前のツナミに対抗するならばなんで何でもやるってこの前俺に言ってたよな。その決意は偽物か?」

ジュリア「P……」


少し無理やりな理屈だったとPも思う
だがこれもジュリアをこの世界から遠ざけんとするためだ
一方、挑発とも取れるPの言葉をジュリアは息巻いて返す元気はない
頼みのPからも反対の意を得られなかったことに落胆しているようだった

53: 矢橋P 25/05/11(日) 12:59:00 ID:N4Mr

洗谷「他人に忠告している立場じゃないぞP」

P「え……」


洗谷「お前は来月からプロデューサーだ。アイドルのな」



P「はぁっ!?」

ジュリア「ははっ、アイドル嫌いのPがアイドルのプロデューサーか。こいつはけっさくだね」
 

54: 矢橋P 25/05/11(日) 13:00:11 ID:N4Mr

P「どういうことです洗谷隊長。ジュリアの補佐ってことですか」

洗谷「ジュリアとは別件だ。お前は地球プロじゃなく56プロに行ってもらいとあるミッションをしてもらう」


P「56プロ?765プロや地球プロと違ってツナミ側のアイドル事務所ですよ」

ジュリア「……最近不祥事を起こしてツナミ側からも見捨てられたところだな」

P「そうなのか?」
 

55: 矢橋P 25/05/11(日) 17:58:56 ID:N4Mr

洗谷「事業所としての先見性を見つけて56プロを選んだわけではない。我々に従ってくれるならどこでもよかった」

洗谷「Jの言う通り56プロは不祥事の件で相当追い詰められていてな、助かるためなら何でもやるそうだ。我々の駒としてちょうどいいだろう」

P「そんなところで俺は何をしろと」

洗谷「P、お前はそこで一人のアイドルをプロデュースするんだ。そして……」











 

56: 矢橋P 25/05/11(日) 18:01:14 ID:N4Mr
数週間後






P(俺は56プロの事務員の目の前に居る)

P(一応アイドルプロデュースに関しては七尾と杏奈に協力してもらって付け焼き刃ながらも勉強したつもりだ)

P(自分には到底縁のない世界だと思っていたんだがな)ハァ

P(本当に気が進まない。こんな光の当たる場所で"あんなこと”をしなきゃいけないとは)

P(事業所の目の前でため息吐いてもしょうがない……か)

 

57: 矢橋P 25/05/11(日) 18:02:55 ID:N4Mr

56プロ社長「やあ、君がPくんか話は聞いているよ」


P「少しの間ですがお世話になります」

P(寂しい事務所だな。この社長に事務員が数人居るだけじゃないか。追い詰められた弱小プロダクションって話は本当のようだ)
 

58: 矢橋P 25/05/11(日) 18:03:42 ID:N4Mr

56プロ社長「我々は君達の邪魔はしないし協力は惜しまないつもりだ」

P「そうですか。ではあのことも認証済みなんですね」

56プロ社長「ああ、私はアイドルを応援する立場だ。非常に心苦しいんだがねぇ」


P(何を言ってやがる。お前のしていることは一人の女の子の夢を売り飛ばしていることと同じなんだぞ)

P(……それに加担している俺も同罪か)

59: 矢橋P 25/05/11(日) 18:04:30 ID:N4Mr

56プロ社長「早速、彼女に会ってくれたまえ。君に会いたくてもう来てるんだよ」

P「それを早く言って下さい」

56プロ社長「君は思ったより真面目だね。2階の控室に彼女は居るよ」




 

60: 矢橋P 25/05/11(日) 18:05:22 ID:N4Mr
56プロ事務所 2階控室



P(ふー)


ガチャ


P「すまない。待たせていたみたいで……」

???「初めまして!」ガタッ

P(うおっ)


???「あなたが私のプロデューサーさんなんですね」

P「そうだよ」

星梨花「私、箱崎星梨花といいます。よろしくお願いします!」ペコリ

P(……ああ。知ってるよ)

61: 矢橋P 25/05/11(日) 18:06:06 ID:N4Mr

星梨花「私、ずっとアイドルに憧れてました。ずっと、ずっと!」

P「そうなんだ。アイドルになったの最近だったよね」

星梨花「お父さんからアイドルになる許可が出るまで時間かかっちゃいました。そうしてるうちに二十歳超えてしまいましたけど……」

P(……情報通りか)




資料にあった通り純粋無垢なのは本当らしい
……違ってほしかった、純粋無垢なのは演技で少し腹黒い方が俺ととしては助かったのに

62: 矢橋P 25/05/11(日) 18:06:50 ID:N4Mr
~回想~





洗谷「……そして箱崎星梨花を”アイドルから辞めさせる”。それがお前の任務だ」


ジュリア「なっ!?」

P「何ですかそのふざけた任務は」
 

63: 矢橋P 25/05/11(日) 18:10:06 ID:N4Mr

洗谷「背景を話そう」

洗谷「まず箱崎星梨花というのは箱崎財閥当主の大事な一人娘だ。ハタ侵略を学んだお前なら知っているだろう」

P「彼女の存在が救助活動や日本政府の動向にかなりの影響を与えたんでしたね」


洗谷「今こそツナミの台頭で衰えたとはいえ、箱崎財閥は政府に強い発言力があるからな」

洗谷「彼女のその後だが……その事件以後、二度とそのようなことが起こらないように彼女を家から出すことを避けさせたそうだ」


ジュリア「家から出さない?どんな風にだよ」

洗谷「学校にも通わせることもさせず、教育は通信教育と家庭教師で家の中で完結させた。たまにの外出も門限を設け護衛を付けた徹底ぶりだったらしい」

ジュリア「酷い話だな、聞いてて腹が立つ」

64: 矢橋P 25/05/11(日) 18:12:01 ID:N4Mr

洗谷「我々には関係ない話だ。当然、星梨花嬢も不満が出ないわけはない。そこで通信教育を終えたタイミング……23歳になったら何でも願いを一つ叶える約束をしたらしい」

洗谷「星梨花嬢は今年で23歳、そして胸の内を明かしたわけだがそれが"アイドルになりたい”だったそうだ」

ジュリア「女の子らしい、いい話じゃねーか」


洗谷「どうも当主はそう思わなかったみたいでな。約束した手前、反故するわけにもいかない。そこで我々に依頼が来たわけだ」

洗谷「約束通り、箱崎星梨花をアイドルにならせる。その後ことは約束の範囲外だ」


P「つまり……一度アイドルにさせた上で……引退させろと?」

洗谷「なるべく本人を傷つけないようにかつ、本人が納得出来るようにな」


 

65: 矢橋P 25/05/11(日) 18:12:49 ID:N4Mr
~回想終了~





P(本当にふざけた話だ。大人のエゴでこの子の未来を閉ざしてしまうなんてな)

星梨花「私、アイドルとしては遅咲きかもしれませんけど頑張りますから!」



ああ、彼女は哀れな道化だ

彼女に用意された舞台は偽りの舞台

彼女はそれを檜舞台だと思って懸命に踊る、その努力が報われることはないというのに

彼女に付き添うのは形だけのプロデューサー、この業界は畑違いのど素人の俺

ならばせめて俺も一緒に踊ろう。俺も哀れな道化を演じなくては



プロローグ  終わり

66: 矢橋P 25/05/11(日) 19:51:32 ID:N4Mr
まず始めに、こんなSSを見てくれた方がいましたらありがとうございます

この『アイドルリーグ編』がこのミリオン×パワポケシリーズの集大成として最後の作品にするつもりで書いてます
つまり今までのキャラがたくさん出てきます。申し訳ありません

346プロや876プロの名前も出しましたがキャラまでは出しません
私はミリオン以外はエアプですしこれ以上他の事務所のキャラを増やしても扱いきれないですしね

67: 矢橋P 25/05/11(日) 19:59:29 ID:N4Mr
今までこのシリーズではプロデューサーを頑なに出しませんでしたが今回とうとうプロデューサーを主人公にしました
最後の作品の主人公こそPがふさわしいかなと

今までアイドルを主人公だったのと勝手がだいぶ違うのを書いていて感じますがその分好き勝手やってます
アイドル嫌いなんて性格、アイドル達にさせたくないですし

68: 矢橋P 25/05/11(日) 20:18:45 ID:N4Mr
今回もプロフィールを更新していこうと思います
プロフィールのページには●を付けて、●でスレ内検索をすればプロフィールだけ見れるようにしようと思います

どうかよろしくお願いします

69: 矢橋P 25/05/11(日) 23:17:29 ID:N4Mr

P   男主人公  

日本政府が作った反ツナミ機関に所属している男
Pとはコードネームで本名はとっくに捨てた
25歳でまだ若く情を捨てきれず甘いところも
サイボーグでもあるが多少腕っぷしが強い程度、そもそも大怪我を負いその過程でサイボーグになったため戦闘力強化が目的ででサイボーグ化したわけではない
ツナミに対する憎悪は相当なものでツナミに対する憎しみが彼の原動力と言ってよいほど ●

70: 矢橋P 25/05/11(日) 23:18:48 ID:N4Mr

望月杏奈   見習い技術者

パライソタウンの研究所で技術者見習いの女性
彼女の父親はパライソタウン研究機関の総括役であり未だ健在
昴達と高校を卒業した後、百合子と一緒にパライソタウンの大学を卒業し勉強を重ね
大学卒業と同時にこの研究機関に配属となった
見習いながら彼女は聡明で筋が良く桧垣無きパライソタウンサイボーグ開発の後継者たり得る人材である ●

71: 矢橋P 25/05/11(日) 23:21:52 ID:N4Mr

七尾百合子   妄想好きな見習い研究員

パライソタウンにある研究所で働いている女性
彼女もパライソタウンの大学卒業後、杏奈の願いもあって地元のパライソタウン研究機関に入所した
彼女の研究対象は”具現化”。別名オカルトテクノロジー
ツナミの前身ジャジメントが研究していたということでついに日本政府も研究することになった。設立してから日が浅い部門である
具現化現象は空想的な発想と現象が交差するところがあり、彼女と相性がいい

杏奈もそうだがかつての仲間達を今でも大切に思っている
最近、アイドルを引退してから音信不通だった永吉昴から連絡が取れるようになったことを大変喜んでいた ●

72: 矢橋P 25/05/11(日) 23:23:08 ID:N4Mr

ジュリア   復讐のパンクロッカー

ギターを愛し音楽を愛する女の子……だった
ツナミに両親を奪われてからツナミに対して強い反抗心を燃やしている
そんなさなか組織に拾われた
拾われた理由は作中にある通りであるが……
ギターに対する情熱は捨ててはおらず、毎日練習は欠かさない

そして思いがけずアイドルの道を歩むことになる ●

73: 矢橋P 25/05/11(日) 23:26:08 ID:N4Mr

洗谷   反ツナミ機関の隊長

パライソタウンに拠点を構える反ツナミ機関の隊長を務める壮年

反ツナミ機関とはPやジュリアも所属する日本政府公認の組織である(杏奈や百合子が務めるところは別)
2年前、開拓高校(当時は分校だったが)での反ツナミ連合の騒動で反ツナミ連合は壊滅
密かに手を貸していた日本政府はツナミから手痛いペナルティを受けるはめになった
それに懲りて今度は日本政府がしっかり監修する反ツナミの組織を結成することにしたのである
表立って反抗してもツナミに敵うわけはないのでツナミの動向を見張る程度に収まっているわけだが

彼はその中でも中々の強硬派で任務のためならば強引なところも辞さないところが目立つ ●

74: 矢橋P 25/05/11(日) 23:30:17 ID:N4Mr

箱崎星梨花   もう一人の主人公

箱崎財閥の箱入りお嬢様。……言葉遊びではない
ハタ侵略ではあの地獄のパライソタウンでの一ヶ月間をみんなで乗り切り、無事生還することが出来た
だがその後、大切な一人娘がパライソタウンで一ヶ月も間安否不明になった不安は父親にとって相当な精神ダメージだったようで
過保護が度を超え半ば監禁ともいえる生活を送らされていた
それもあるのか、あれから10年経ち23歳になった彼女だが精神的にはあの時の箱入りお嬢様からあまり変化していなく
13歳当時のあどけなさと純粋さはまだ残している

10年の歳月があっても彼女の中のアイドルになりたいという気持ちが消えることはなく
長い沈黙をへて彼女の物語は動き出した ●

75: 矢橋P 25/05/12(月) 07:43:06 ID:wmd4


第一章   『56プロ』

 

76: 矢橋P 25/05/12(月) 07:44:13 ID:wmd4

-電話による通話中-





洗谷「感触はどうだP」

P「問題ないと思います。箱崎さんも慕ってくれてますし」

洗谷「そうか。慣れない環境だろうが遂行するように」

77: 矢橋P 25/05/12(月) 07:46:13 ID:wmd4

P「……本当に俺からは何もしなくていいんですか」

洗谷「ああ。"お前からは何もするな”」

洗谷「この任務、星梨花嬢にアイドルを諦めてもらうのが目的だが大事な事は星梨花嬢が傷つかないようにすることだ」

洗谷「不自然にならないように注意を払うが万が一勘ぐられた場合、付き添っていたお前まで加担していたと気付かれたら星梨花嬢のショックは甚大だろう」

洗谷「だからお前は”何も知らなかった”。ただ言われた通りにしただけ、という体にしろ。お前もその方が罪悪感が減るだろ」
 

78: 矢橋P 25/05/12(月) 07:47:52 ID:wmd4
P(よく言う。こんな打ち合わせしている時点で加担しているようなものなのに)

洗谷「どうせプロデューサーとしてど素人のお前が出来ることは何も無いだろう」

P「そうですがね」

洗谷「黙ってこちらの指示に従えばいい。お前は星梨花嬢のメンタルのカバーに努めろ」


ピッ


P「プロデューサーとしてはど素人か。間違っていないな」






 

79: 矢橋P 25/05/12(月) 07:49:58 ID:wmd4

56プロ レッスンルーム




星梨花「プロデューサーさん!今日は何しますか?」

P「箱崎さんの現状が知りたい。歌とダンスを見せてもらおうかな」

星梨花「いいですよ。私の歌える曲でいいですか?」

P「もちろん。一番得意な曲でいいんだよ」

星梨花「任せて下さい。歌は家庭教師の人に習っていたんです!」




 

80: 矢橋P 25/05/12(月) 07:52:58 ID:wmd4


~~~♪



星梨花「やっぱ私が一番!今輝いているみたい~」



P(歌は上手いじゃないか。このまま育てれば……)

P(いや、何考えているんだ俺は!)





 

81: 矢橋P 25/05/12(月) 07:58:46 ID:wmd4

~~~♪


星梨花「ハートをロックオン!するのー」


~~~♪




星梨花「どうでしたか」ハァハァ

P「すごい良かったよ。これなら……」

P「!」ハッ


星梨花「どうしました?」

P「いや……何でも」
 

82: 矢橋P 25/05/12(月) 07:59:36 ID:wmd4
P「次はダンスだね」

星梨花「ダンスですか……。歌は習っていたんですがダンスは習ってなくて……」

P「とりあえず事務所に置いてあったダンスの教科書通りにやってみるか」




 

83: 矢橋P 25/05/12(月) 08:00:40 ID:wmd4

キュツ キュツ


星梨花「あ」


バタン



星梨花「すみません……また転んでしまいました」ハアハア

P「いいよ。一回休もう」

P(箱入り娘だったからかダンス云々以前に体力が無いな)

P(歌は問題ないんだし、しばらく体力を付けないと……)ハツ

P(また俺は……)
 

84: 矢橋P 25/05/12(月) 08:02:41 ID:wmd4




そして


星梨花「すごいです!Pさんって色々なトレーニング方法知っているんですね」

P「あはは……まあね」

P(自分で鍛えるために学んだことが役に立つなんてな)

85: 矢橋P 25/05/12(月) 08:03:28 ID:wmd4

P「ダンスが踊れないんじゃステージに立てない。でも今の箱崎さんじゃダンスを踊る体力が無い。今はそれを作ってからだね」

P「ウチの事務所はダンストレーナーも居ないから自分が付き合うことにするよ」

星梨花「はい!」

P(……これでいいのか)





 

86: 矢橋P 25/05/12(月) 08:04:39 ID:wmd4
数日後

56プロ事務所 社長室





56プロ社長「Pくん星梨花さんの調子はどうだい」

P「順調です。ですがまだ基礎の段階で……」

56プロ社長「それじゃ困るんだよ。あまりのんびり構えられてもさぁ。来週にはデビューさせるから」
 

87: 矢橋P 25/05/12(月) 08:05:58 ID:wmd4
P「まだ早すぎます。もう少し慎重に……」

56プロ社長「これは君の上司の指示でもあるんだがねぇ」

P(ウチの組織から?)

56プロ社長「まあステージデビューは無理だろうね。でも歌は歌えるのだろう」

P「それはまあ……」

56プロ社長「だからCDデビューを先にやらせる。これならいいだろう」

P「……わかりました」

56プロ社長「曲ももう制作中なんだ。君のところの計らいだけどね」

P「……」


 

88: 矢橋P 25/05/12(月) 08:07:43 ID:wmd4








星梨花「ええっ!?私の曲ですか!」パァァ

P「ああ、箱崎さんの持ち曲が来月には出来るんだ。それまで体力作りとボイスレッスン頑張ろうな」

星梨花「私の曲……。嬉しい、私とっても嬉しいです!」

P「……」

89: 矢橋P 25/05/12(月) 08:09:12 ID:wmd4

P「箱崎さんは何でアイドルになろうと思ったんですか」

星梨花「私にとってアイドルは憧れなんです」

星梨花「ずっと家に居て憂鬱な時もアイドルを見ていれば元気になれました」

星梨花「それに昴さんに恵美さん。あの時の……憧れの人達がアイドルになって羽ばたいていくのを見て私もなれるんだって……」

P「……」






 

90: 矢橋P 25/05/12(月) 08:14:38 ID:wmd4
数週間後





P(これが星梨花のデビュー曲、『トキメキの音符になって』か)

P(ウチの組織が指定したところから発注したって聞いた時は訝しんだが……良い曲じゃないか)

P(てっきり適当な曲でも当てがって嫌がらせをしてくると思っていたんだが)

P(早々にデビュー曲を作らせたのも組織の指示らしい。何が狙いなんだ?)
 

91: 矢橋P 25/05/12(月) 08:15:20 ID:wmd4


この時Pは組織の意図に何も気付いていなかった
……惨たらしいまでに残酷な現実にも

92: 矢橋P 25/05/12(月) 14:16:40 ID:wmd4







P(そして初めてのCD収録が始まった)

P(収録スタジオは外部のところだ。曲の製作から収録スタジオに至るまで全部組織が用意したもの)

P(俺にそういうツテがあるわけじゃないから助かるんだが……この事務所何もやってないじゃないか)

93: 矢橋P 25/05/12(月) 14:18:13 ID:wmd4


星梨花「いよいよですね!」

P「喉の調子はいい?」

星梨花「万全です。家で何十回も聴いて音程やリズムも覚えました!」

P「よし、まず最初の一歩だよ。全力を出してこい」



 

94: 矢橋P 25/05/12(月) 14:19:07 ID:wmd4

P(いくら星梨花が多少歌が上手いといっても"並よりは”という話で本物のCD収録にはだいぶ苦戦していたがそれでも星梨花は楽しんでいた)

P(やはりデビュー曲はアイドルにとって特別なものなのだろう)
 

95: 矢橋P 25/05/12(月) 14:22:08 ID:wmd4

数週間後





56プロ社長「Pくん、これがこないだ収録した音源から作ったCDだよ。200枚ある」

P「……なぜここにあるのですか」

56プロ社長「そりゃまともに売れないからだよ」
 

96: 矢橋P 25/05/12(月) 14:22:33 ID:wmd4

56プロ社長「多くの販売店がツナミが認めているアイドルのCDしか取り扱わないからねぇ」

P「……なら突然のCDデビューは無計画過ぎたのでは?」

56プロ社長「それを何とかするのが君だろう。これ全部今月中までに売ってくれ」






 

97: 矢橋P 25/05/12(月) 14:24:18 ID:wmd4

P(全部売れだって?200枚あるんだぞ!どうやって……)

P(……洗谷隊長からメールでの指令が来ているな)

P(!!)

98: 矢橋P 25/05/12(月) 14:27:59 ID:wmd4










某都内 街頭




星梨花「Pさん。今日は街中で私のCDを直接アピールするんですね」

P「そうだ。昔はアイドルの手売りも珍しくなかったみたいだしな」

99: 矢橋P 25/05/12(月) 14:32:09 ID:wmd4

星梨花「でも街頭でこういうことするのは許可がいるんですよね」

P「ちゃんと許可は取ってあるから心配しなくてもいいよ」

星梨花「こんな人が多い街中の許可を取れるなんてすごいです!」

P(政府直属のウチの組織の力がやったことで俺の力じゃないけどな)


 

100: 矢橋P 25/05/12(月) 14:35:04 ID:wmd4

P(販売店で売れないなら手売りでアピールか。古い手だけど悪いことじゃないな)

P(財閥の令嬢だからと優遇して最初から順風満帆ってのも本人のためにならないだろうしな。最初は苦労しないとか)


この時Pは微かに希望を持ってしまった
もしかしたらこの苦労も組織からの計らいなのではないか
星梨花のアイドル活動を僅かにでも応援する気になったのではないかと


……そんな甘い願望は直ぐに打ち砕かれることとなる

101: 矢橋P 25/05/12(月) 14:36:05 ID:wmd4

星梨花「みなさーん!最近アイドルデビューしました箱崎星梨花です!」




「アイドル?」

「本当にアイドルだ!」

「ねえ、箱崎星梨花だって。知っている?」

「知らない。新しいアイドルかも」


P(さすが第二次アイドルブームだ。アイドルってだけで興味持ってもらえる)

102: 矢橋P 25/05/12(月) 14:37:28 ID:wmd4



一般人「あの……新しくデビューしたアイドルですか?」

星梨花「はい、どうかよろしくお願いします!」

一般人「かわいいですね。ぜひ曲も聴いてみたいなぁ」

P(さっそく反応がいいぞ)

103: 矢橋P 25/05/12(月) 19:04:58 ID:bRwk

一般人「アイドルコードは何番ですか?」

星梨花「アイドルコード?」クビカシゲ


一般人「え……。どっとっぷNet(ネット)に入ってないんですか?」

P「そうですが……」

一般人「ならいいです」フイッ

P(え……)

104: 矢橋P 25/05/12(月) 19:12:57 ID:bRwk

「アイドルランクはどれぐらいですか」


「アイドルコード無いの?」


「それじゃ、はぐれアイドルってことかぁ」


「それじゃ興味なーい」


「今どきアイドルコード持ってないとか。どうしてアイドルやれてんの」



 

105: 矢橋P 25/05/12(月) 19:15:31 ID:bRwk

Pは後で知ることになるのだが今のアイドル業界にはどっとっぷNetというものが存在していた
これは巨大なアイドル業界のサブスクである
一般人がこれに加入していればどっとっぷNetに加入したアイドルの曲をアルバムだろうがシングルだろうがカバー曲だろうが聴き放題なのだ
そしてそのサブスクはツナミが主体として運営しておりツナミネット(元は大神ネット)に加入していれば自動で付いてくる。もちろん加入代金や月々の料金はかからない
そして今やツナミネットの普及率は国内だけでも90%を超えた
つまり今の時代アイドルの曲を聴くのにはこと困らないのである

106: 矢橋P 25/05/12(月) 19:16:06 ID:bRwk

またどっとっぷNetに加入したアイドルにはアイドルコードが与えられる
その番号を入力すればアイドルのプロフィールから最新リリース情報までアイドルの最新情報をすぐ知ることが出来る
第二次アイドルブームの興隆の背景にはこういったツナミの資金力にものを言わせたシステムがあった

107: 矢橋P 25/05/12(月) 19:21:12 ID:bRwk
気になるアイドルが出たならば、

まずアイドルコードを調べ

どっとっぷNetでアイドルコードを入力して情報をチェック

そして曲を試聴して気に入ればCDを買う

それが当たり前であり、世間のルーティンとなっているのだ

どっとっぷNetwに入るにはアイドルコードを習得する必要がある
アイドルコードを習得するには……ツナミの許可が必要

つまりツナミの傘下に入らないアイドルはその土俵に入ることすら出来ない

108: 矢橋P 25/05/12(月) 19:21:42 ID:bRwk

その日CDは一枚も売れなかった

109: 矢橋P 25/05/12(月) 19:22:35 ID:bRwk



星梨花「……今日雨降らなくて良かったですね」

P「……はい」



星梨花「……最初から上手くいくわけないですよね」

P「ああ。明日もこの場所を使わせてもらう許可は取ってある明日また頑張ろう」

P(もっとアピールするためには旗とか必要かもしれない。星梨花を帰してから作ってみるか)





 

110: 矢橋P 25/05/12(月) 19:23:59 ID:bRwk
次の日






P(結局一晩徹夜して制作したが……)

P(56プロの事務所に埋もれていた旗に簡易的に布を貼り付けただけのものを一つ用意しただけになってしまったな)

111: 矢橋P 25/05/12(月) 19:25:14 ID:bRwk

星梨花「Pさん、その旗、昨日のうちに作ったんですか?」

P「そうだよ。不格好だけど無いよりましかな」

星梨花「それなら……私もこれ作ってきました!」



P(それは段ボールに多数のマーカーでカラフルに可愛らしく 箱崎星梨花 と書かれたもの)

P(考えていることは同じか……)

112: 矢橋P 25/05/12(月) 19:25:37 ID:bRwk

P「素晴らしいです箱崎さん」

星梨花「えへへ~」

P「まず一枚売ることを目標にしましょう」

星梨花「はい!」







 

113: 矢橋P 25/05/12(月) 19:27:02 ID:bRwk


「どうか、どうか一枚だけでも手に取ってくれませんかーー」


「期待の新人箱崎星梨花ですーー」









そして……

114: 矢橋P 25/05/12(月) 19:27:20 ID:bRwk

二日間総計

CDが売れた数   0枚

在庫    残り 200枚

115: 矢橋P 25/05/12(月) 19:28:19 ID:bRwk


星梨花「…………」

P「…………」

星梨花「……一枚1500円のCDを売るのってこんなに大変なんですね」

P「箱崎さん……」

P「ひとまず片付けて撤収しましょう」

星梨花「でも……売ってくれって言われたCDを一つも売ってないんですよ」

P「CDの件は自分で何とかします。箱崎さんは休んで下さい」





 

116: 矢橋P 25/05/12(月) 20:25:12 ID:bRwk
次の日

56プロ事務所 社長室






P「二日間手を尽くしましたがCDは一枚も売れませんでした」

56プロ社長「そうだろうね」

P(この無責任な)

117: 矢橋P 25/05/12(月) 20:26:07 ID:bRwk

P「市場はあるんです。ですがどんなに曲が良くても認知されないことには売れません」

P「何とか箱崎星梨花を外に売り込めることは出来ませんか?」

56プロ社長「君は何をしにここに来たんだね?聞いていた話しと違うじゃないか」

P「……」



確かに自分は箱崎星梨花をアイドルから引退させるためにここに来た
だがPはもう箱崎星梨花をただ辞めさせるつもりはなくなっていた
せめて辞めるにしてもまともなアイドル活動を少しでもさせてからだと考えている
これで終わりならあまりにも惨めだ

118: 矢橋P 25/05/12(月) 20:27:03 ID:bRwk

56プロ社長「売り込むとかさぁ、そんなことしても無理だよ。うちはツナミに睨まれているんだから」




ぐっと唇を噛んでついに意を決して口を開いた

P「箱崎さんだけでもどっとっぷNetに加入出来ませんか」

119: 矢橋P 25/05/12(月) 20:30:03 ID:bRwk

それはPにとっては苦肉の策であった
提案した今も地べたを這い踵で踏まれているような感覚を必死に抑えている
あれほど嫌いなツナミに媚びを売らなければならないとは……

それにツナミの傘下に入った箱崎星梨花がその後どういう扱いをされるかは分からない
それが問題化する頃には自分はプロデューサーを辞めているだろう、あまりにも無責任でもある
しかし強がって星梨花が傷付くこの現状を維持するよりはマシだ
何も売れぬままアイドル活動を終えるよりは……

120: 矢橋P 25/05/12(月) 20:30:53 ID:bRwk

56プロ社長「何を考えているんだね?箱崎星梨花はアイドルを辞めるのは決定事項だ。意味あるのかい?」

P「辞めるにしてもせめて……」


56プロ社長「あのさぁ、はっきり言うけど私としては箱崎星梨花には早く辞めてほしいわけ」

P「!!」


56プロ社長「私はアイドル事業から手を退くの。ツナミに睨まれてまともに商売出来ないなら続ける必要はないよね」

56プロ社長「次の事業の準備も進んでいてさ、君の上司の提案を呑んだのは新しい事業の支度金を受け取るためさ。箱崎星梨花が辞めれば即この事務所は畳むの」

P(通りで……この事務所には他のアイドルもトレーナーも居ないのか!)

121: 矢橋P 25/05/12(月) 20:32:29 ID:bRwk

56プロ社長「後は箱崎星梨花が辞めたいと一言言えばいいだけなんだよ。君の上司の要望で本人から言わせろってことになっているからさ」



ここでようやくPは理解した。なるほど、なかなか綺麗な筋書きだ

箱崎星梨花は自分が売れない現実を知り

プロデューサーの自分はCDを売れなかった責任で退職

そして56プロはその後、廃業という形で消滅し証拠は何も残らない

全て星梨花の父親と組織と56プロの手のひらの上だったのか

122: 矢橋P 25/05/12(月) 20:33:02 ID:bRwk

56プロ社長「だから早く本人の口からアイドル辞めたいって言わせなさいよ。それが君の最後の仕事なんだから」


P「……失礼します」


バタン







 

123: 矢橋P 25/05/12(月) 20:33:55 ID:bRwk
次の日

56プロ事務所 レッスンルーム





星梨花「Pさん。今日は何をしますか?」

一日休ませて迎えた次の日、星梨花はいつも通りに来た
だがさすがにこないだのショックは隠せないと見え表情に陰りがある

124: 矢橋P 25/05/12(月) 20:35:05 ID:bRwk
P「…………」

星梨花「いつも通りレッスン……始めますか?」



レッスン?ステージに立つことはあり得ないのに?
拙いながらもCDを出しても誰も聴いてくれない
ああ、今思えば急なCDデビューは餞別のためだったのだろう


もういいじゃないか
こんな事務所でもアイドルとしてデビュー出来てCDまで出したんだ
それにすらたどり着けないアイドルもいるんだ、もういいだろう? と

125: 矢橋P 25/05/12(月) 20:37:08 ID:bRwk

星梨花「Pさん?」


徐々にPは彼女を直視出来なくなり顔を逸らし始める

彼女にとって世界はとても残酷だ
本人の実力がアイドルとして至らないのならこれから努力して補えばよい
体が弱いだとか親が反対だとかお金が無いだとか、そういう障害は厄介なものだがまだ本人の問題の範疇である

だが彼女の場合は周りの全てが敵なのだ
ツナミが支配するアイドル業界も、実の父親も、やる気の無い事務所も!
全てが彼女がアイドルでいることを拒んでいるのだ

……そして寄り添うプロデューサーである自分も

126: 矢橋P 25/05/12(月) 20:38:47 ID:bRwk

P「箱崎さん……」

星梨花「何ですか?」



せめて彼女に特別な……アイドルとして特出した才能があるのであれば、それ一本でアイドル業界を渡っていく選択肢もあった
だが……Pはその選択肢も厳しいと思った
八方塞がり。彼女にアイドルとしての未来は……無い

127: 矢橋P 25/05/12(月) 20:39:36 ID:bRwk


P「アイドルは……もういいんじゃないか」


128: 矢橋P 25/05/12(月) 20:40:50 ID:bRwk



それは意図して出した言葉ではなかった
Pが昨日までのことを散々考え星梨花のこの後を想像しぬいた上で
ため息のようにポロッと出た言葉だった
 

129: 矢橋P 25/05/12(月) 20:42:03 ID:bRwk

星梨花「…………」

P(!!)ビクッ




この時の星梨花の表情をPは一生忘れないだろう
いつもの23歳を感じさせない幼さがまだ残るあどけない顔から想像出来ないような


『困惑と絶望にまみれた顔を』

 

130: 矢橋P 25/05/12(月) 20:43:30 ID:bRwk
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ーー

-

131: 矢橋P 25/05/12(月) 22:01:36 ID:bRwk






その後ことはよく覚えていない
"あの”星梨花の顔を見てPは直ぐ後悔した。いくら自分が精神的に疲弊していたとはいえ言ってよい言葉ではなかったのだ
慌てて色んな言葉を並べて弁解した記憶はあるがどれも星梨花には響かなかった
結局、その場はお開きになってしまった

132: 矢橋P 25/05/12(月) 22:02:05 ID:bRwk
その後……





Pは都心の某販売店に居た。ここはアイドルグッズをメインに取り扱うことでアイドルファンにも有名な所である
元々今日はここにCDの売り込み営業をする予定だったのである
Pにとっては余ったCD200枚を何とかする問題もあったが、もはやそれはどうでもよいことに思えた

133: 矢橋P 25/05/12(月) 22:02:50 ID:bRwk

結局、売り込み営業も失敗した
それよりこの後どうするか……。都心の大きな公園のベンチでPは頭を抱えた



明日どの顔で星梨花に会えばよいのだろうか
いや、もう星梨花は事務所に来ないかもしれないし自分に会いたくないのかもしれない
しょせん自分は裏の組織の工作員、プロデュース業をするのが間違いだったのか……





 

134: 矢橋P 25/05/12(月) 22:03:38 ID:bRwk

「ティンときた!」

P(……ん?)




「そこの君。そう、君だよ」


P(何だこの人?恰幅はよさそうだが……)

135: 矢橋P 25/05/12(月) 22:04:40 ID:bRwk

「君はプロデューサーではないのかね。私がティンときた以上間違いないよ」

P「……まあそうですが」




高木社長「おっと、すまない。私は765プロ社長、高木順二朗だ」

P「……え、あの765プロの。これは失礼しました」
 

136: 矢橋P 25/05/12(月) 22:05:58 ID:bRwk

高木社長「いいよいいよ。君はどこの所属何だね?」

P「……56プロです」

高木社長「ふむ、あそこか……」

P(うちの事務所はあまり良い印象ではないからな……。まああの社長なら当然か)



高木社長「君のところもどっとっぷNetに入れなくて大変だろう?」

P「いえ……。765プロさんの方が大変なのでは?」

高木社長「私のところには劇場(シアター)があるからね。だが、シアタープロジェクトは元々ツナミとは関係なく前から構想していたことだったんだよ」




 

137: 矢橋P 25/05/12(月) 22:07:31 ID:bRwk

P(それから高木社長は56プロの末端でしかない俺に劇場の構想、765プロの理念、アイドル論に至るまで優しく満足げに語ってくれた)

P(弱小プロダクションの末端の俺に同じプロデュースを志す仲間として扱ってくれたんだ……)
 

138: 矢橋P 25/05/12(月) 22:08:24 ID:bRwk

P「一つ、質問してもいいですか。ずっと気になっていたことなんです」

高木社長「ん?何かね」

P「去年のアイドル業界の抗争のことです」

高木社長「あれか……。我々の軽はずみの行動で君達にも迷惑かけてしまったね」


P「……あれは黒井社長が発端でしたね」

P「ですが961プロはアイドル業以外の事業も手掛ける巨大な事務所。黒井社長の経営の手腕は折り紙付きだったはずです」

P「だからこそわからない。黒井社長が何故あんなことをしたのか」

139: 矢橋P 25/05/12(月) 22:10:47 ID:bRwk

ツナミグループとは日本中……いや世界中の企業が団結してようやく経済面だけでも対抗出来るかどうかなのだ
もはや企業という枠を超えている。それくらいの差がある世界最強の経済グループ
客観的に見てもアイドル業界のプロダクションが束になったところで勝てるわけがない
その事実を若い跳ね返りや経済に疎い人間ならまだしも黒井社長が分かってないはずはない
なのになぜツナミに無謀な戦いを挑んだのか。それがPには理解出来なかった

140: 矢橋P 25/05/12(月) 22:12:13 ID:bRwk

高木社長「私も彼らしくないとは思ったさ。だが……彼は言動こそ過激なこともあるがアイドルに対する思いは本物なのだよ」

P「アイドルに対する思い……」


高木社長「それを表現する方法は下手だがね」

高木社長「……彼も私も信じてしまったのさ。“アイドルの力ならツナミにも勝てるだろう“とね」

141: 矢橋P 25/05/12(月) 22:14:08 ID:bRwk

P「……ですが、結果は負け。ですよね」

高木社長「おっと!私は完全に敗北したとは思ってないよ。第一ラウンド負けただけさ。黒井のやつもそう思っているだろう」

高木社長「我々が負けた理由ははっきりしている。アイドルを争いに巻き込みたくないと思うばかりに我々大人が矢面に立ってしまったんだ」

高木社長「アイドルの力を信じる。そう思っておきながらアイドルの力ではなく経済力で勝負しようとしたんだ。それじゃあ負けるのも道理だよ」

高木社長「アイドルを信じるならばアイドルで決着を付けなければいけなかった。アイドルのステージという舞台でなら私はあのツナミにも勝てると思っているよ」
 

142: 矢橋P 25/05/12(月) 22:16:10 ID:bRwk
高木社長「まあツナミにはMihamanがいるから簡単ではないとは思うがね。……彼女は手強いぞ」

P「……そうですか」



Pは知らなかった
かつて、あの大神とジャジメントの野望を"アイドル”で打ち破った一人の女性とそれをサポートした仲間たちがいたことを


星梨花は知らない
弱小分校の出来たばかりでろくに設備もないアイドル部から出て、数々の強豪を打ち破りims甲子園を優勝した二人の女子高生
彼女らには道が違っても一緒に甲子園を目指した幼なじみ、幼なじみを叱咤激励するためにあえて敵に回った本校のアイドル、自分の夢を捨ててマネージャーに回った大親友がいたことを

143: 矢橋P 25/05/12(月) 22:17:16 ID:bRwk

高木社長「そろそろ自分の担当アイドルに会いに行った方がいいんじゃないかね?」

P「……そうします」


高木社長「最後にアドバイスだ。プロデューサーならばどんな時も担当のアイドルの味方になりたまえ」

P「!!」

P「ありがとうございます!」

高木社長「今度、劇場に来てみたまえ。おや、これではただの宣伝になってしまったかな?」

P「ぜひ、そうします!」



 

144: 矢橋P 25/05/12(月) 22:18:59 ID:bRwk

パライソタウン 研究棟





P「百合子!」

百合子「うひゃっ!どうしたんですかPさん」

百合子「任務中はしばらく会えないはずじゃ……」

P「765プロシアターのチケット……まだ余っているか?」

百合子「急ですね。こないだ誘ったこけら落とし公演も任務中だとかなんとか言って、いかなかったじゃないですか」

145: 矢橋P 25/05/12(月) 22:19:42 ID:bRwk

P「いや……ごめんな」

百合子「任務中なら仕方ないですよ。……こけら落とし公演でもない普通の公演なら当日券で買えると思います」

P「そうか、ありがとうな」



ダダダッ





杏奈「今の……Pさん?」ヒョッコリ

百合子「そうだよ。……ちょっと変わったね」

 

146: 矢橋P 25/05/12(月) 22:20:18 ID:bRwk





プルル……

P(後は星梨花が電話に出てくれるかどうか……)


ピッ


P(!!)

147: 矢橋P 25/05/12(月) 22:21:40 ID:bRwk

星梨花「Pさん……」

P「箱崎さん……」

星梨花「あの……私……」


P「今、お互い言いたいことはあると思います」

P「お願いです。お互いそれは抑えてまず私と一緒にやって欲しいことがあるんです」

P「結論を出すのはその後にしたいので」

星梨花「それって……」


P「明日見に行きましょう。『アイドル』を」

148: 矢橋P 25/05/13(火) 06:30:26 ID:yjiN
翌日

765プロ劇場








翼「みんなー、今日は私の公演に来てくれてありがとー!」




星梨花「……」

P(伊吹翼か。シアタープロジェクトの一人で去年青田買いされた大型新人)

P(ims甲子園には出場していないらしいが、765プロシアタープロジェクトセンター最上静香のライバルを名乗っているとか……)

149: 矢橋P 25/05/13(火) 06:31:05 ID:yjiN

星梨花「……」

P(星梨花……)

翼「それじゃー、私のソロで締めようかな!」

翼「ロケットスター☆いっくよー!」









 


150: 矢橋P 25/05/13(火) 06:31:58 ID:yjiN
開演終了






P「……」

星梨花「……もう喋っていいですか?」

P(昨日俺の言った言葉をそこまで真に受けて……)

P「別に普段の会話なら喋ってよかったんですよ?」

星梨花「そうだったんですか!?」

151: 矢橋P 25/05/13(火) 06:33:08 ID:yjiN

星梨花「実は……直にアイドルを見たの初めてで……。テレビで見るのと全然違いますね」

P「実は私も同じです」

星梨花「ならPさんと一緒ですね!」
 

152: 矢橋P 25/05/13(火) 06:36:18 ID:yjiN

P「アイドルのステージを見てどう思いましたか?」



星梨花「私……アイドルを諦めたくないです!」

星梨花「あのキラキラしたステージに私も立ちたいです!」



そう叫んだ星梨花の顔にアイドルの力をPは見た気がした
これが、これこそが彼女の強さ。アイドルとしての才能
十年間も抱き続けてきた彼女の気持ちなんだ

そうか、アイドルになるのに特別な環境も特別な才能も必要なかった
ただその胸の中にある思いさえあればよかったんだ

153: 矢橋P 25/05/13(火) 06:37:09 ID:yjiN

P「……ありがとう」

星梨花「え……」

P「叶えましょう、その決意を必ず。それを形にするのが私の仕事です」

星梨花「Pさん、そんな頭下げて謝らなくてもいいんですよ」アセアセ

P(間違っていたのは俺の方だ。アイドルに寄り添わないプロデューサーがどこにいるのか!)









 

154: 矢橋P 25/05/13(火) 06:38:03 ID:yjiN
765プロ劇場 アイドル控え室





翼「ねー、静香ちゃん」

静香「翼、どうしたの?」

翼「真ん中ぐらいの席にさ。二十歳ぐらいの可愛い女の人いたでしょ?」

静香「それがどうかしたの?」

翼「彼女さ……、多分アイドルだよ」

静香「……翼が言うんだったらそうでしょうね」

155: 矢橋P 25/05/13(火) 06:39:20 ID:yjiN

可奈「私達765プロの偵察にでも来たのかな?」

美奈子「勉強のために来てくれたなら嬉しいけどね~」

奈緒「翼もよう気付くなぁ。そんな客席を見る余裕はまだないわ」


翼「私だってずっと見てるわけじゃないよ~。一瞬見ただけで印象に残っちゃった。彼女、私達のいいライバルになりそう」

156: 矢橋P 25/05/13(火) 06:40:13 ID:yjiN
志保「……そうなの。私達もまだまだなんだから負けないようにしないと」

静香「そうね。シアタープロジェクトは始まったばかり。私達でもっともっと盛り上げないと」

翼「それとね。未来のことなんだけどー…………」








 

157: 矢橋P 25/05/13(火) 06:40:59 ID:yjiN
次の日

56プロ事務所 社長室







56プロ社長「それでCDは売れたかい」

P「そのことですが……CD200枚全部俺が買い取ります」

158: 矢橋P 25/05/13(火) 06:42:10 ID:yjiN

56プロ社長「はぁ?」

P「1500×200で30万ですよね。今この場で支払います」バサッ

56プロ社長「自分の責任は自分で清算するってわけかい。それはいいんだが……」

56プロ社長「箱崎星梨花はどうしたんだい箱崎星梨花は!」


P「そのことですが……箱崎星梨花はこの事務所を退所します」

56プロ社長「どういうことだ!」

159: 矢橋P 25/05/13(火) 06:46:44 ID:yjiN

P「調べてみたらそもそもこの事務所は箱崎星梨花所属の手続きもまともにやってなかったんですね」

P「なので問題無いはずです」

56プロ社長「ぐっ……」

P(この社長おそらく手続きをめんどくさがって細かいところをきちっとせず、いい加減にほったらかしていた。組織は把握していなかったみたいだが)

P(どうせすぐ辞めるだろうと高をくくっていたんだろうが助かったな)

160: 矢橋P 25/05/13(火) 06:47:28 ID:yjiN

P「CD製作も外部だしレッスン等を引き受けていたのは俺だ。この事務所が箱崎星梨花に関わったことはほとんどない」

P「どうせこの事務所は畳むんだろう。関係ないじゃないか」

56プロ社長「それは……いや、君の上司からは辞めさせるまでが条件だと……」

P「その上司には俺が話しておくよ。それじゃ……お世話になりました」ペコリ

56プロ社長「ま、待て……」





バタン

161: 矢橋P 25/05/13(火) 06:48:50 ID:yjiN
そして



-電話による通話中-



洗谷「聞いたぞP、どういうことだ!」

P「俺は箱崎星梨花を引退させるつもりはなくなったってだけです」

P「箱崎さんの父親にはうまくいっておいてください」

洗谷「お前がやっていることは裏切り行為だぞ。分かっているのか」

P「……命令違反なのは承知しています。でも組織が嫌になったわけではないです」

P「ツナミを倒せるのはアイドルだけ……。俺はアイドルの力でツナミに対抗したくなった。それだけです」

洗谷「お前……」

洗谷「……いいだろう、せいぜいやってみろ。我々は一切協力しないがな」


ブツッ



P「しばらく帰れないな……」



第一章 終わり

162: 矢橋P 25/05/13(火) 17:48:24 ID:yjiN


第二章   『地球プロ』

 

163: 矢橋P 25/05/13(火) 17:49:12 ID:yjiN



P(56プロからは円満でもないが退所出来た)

P(……が。これからどうすっかな)


P(56プロから早々に退所したのは間違ってないはずだ。星梨花のためには一欠片もためにならない所だったし、長く居れば居るほど”56プロ所属の箱崎星梨花”になってしまう)

P(だけど見切り発車はよくなかったか)

P(……深く考えないで行き当たりばったり。あの頃から変わらないな俺は)

164: 矢橋P 25/05/13(火) 17:50:01 ID:yjiN
ピリリ……



P(電話か。星梨花……じゃないジュリアから?)


ピッ




ジュリア「よう、P兄。聞いたぜ、独断行動に命令違反なんてロックじゃないか」

165: 矢橋P 25/05/13(火) 17:51:16 ID:yjiN

P「あのな……俺はお前と違ってパンクロッカーなんか目指したことはないんだよ」

P「……洗谷隊長はどんな様子だ?」


ジュリア「頭抱えていたけど組織に害を出さないうちは大目に見るとかって言ってたぜ。まだ様子見の段階じゃないか?」

P「様子見ね……」

ジュリア「今まで指令に従順だったPが突然違反に走ったってんで洗谷隊長も計りかねてるんだろ」

P(なら、まだ猶予はありそうだな)

166: 矢橋P 25/05/13(火) 17:52:25 ID:yjiN

ジュリア「あたしとしてはP兄がバレない範囲でこそこそ命令違反していたの知ってたから 遂にやったか! って感じだけどな」

P「……お前の方こそどうなんだよ。そろそろいつも通り愚痴ってくる頃だと思っていたんだが」



ジュリア「あたしかい」

ジュリア「散々鍛えられてるよ。ギター演奏や歌ならそれなりに出来る自信はあったんだけど今はアイドルだろ?覚えること多くてさ」

ジュリア「でもマツも千鶴もしっかり教えてくれてる。ちょっぴり厳しいけどな」

ジュリア「でもあのフリフリした衣装は未だになれないな。あたしにはぜってー似合わないのにマツが着せてくるんだよ」

167: 矢橋P 25/05/13(火) 17:53:27 ID:yjiN

なんだかんだジュリアの話し声は弾んでいる
ここまで話すジュリアの声や態度はかつてのジュリアとは電話越しでも全く違うことに
Pは気付いた
 

168: 矢橋P 25/05/13(火) 17:54:32 ID:yjiN

P「楽しいのか、アイドルが」

ジュリア「……そうだな。正直舐めてたけど奥も深いしさ。しばらく続けるつもりだよ」

P「俺もだ。……まず所属する事務所を探さないとだが」



ジュリア「そうだ!それならPもウチの事務所に来いよ」

P「地球(アース)プロにか?」

ジュリア「ああ。このみ姉も居るしウチはツナミに染まってない。Pにはぴったりだと思うけどな」

169: 矢橋P 25/05/13(火) 17:56:34 ID:yjiN

P(確かにそうかもな)

P「もう一度考えてから連絡するよ」

ジュリア「考えるって何をだよ」

P「箱崎さんと相談するんだよ、一番大事なのはアイドル本人の意見だろ?」

P(プロデューサーたるのもアイドルの意志が最優先だ。もう間違えない)


ジュリア「なるほど確かに。いい返事待ってるぜ」




ピッ

170: 矢橋P 25/05/13(火) 17:57:38 ID:yjiN







その頃……

ツナミ日本総支部

-テレビ通話中-




ジオット「やあ、甲斐くん。日本は変わりないかい?」

甲斐「あれからは静かなものですよ」

171: 矢橋P 25/05/13(火) 17:58:55 ID:yjiN

ジオット「つまらないなぁ。961プロのその後動きはないんだろう?」

甲斐「あれはやり過ぎでしたね」

ジオット「そうだね。君が止めてくれなかったら全部ぐちゃぐちゃにして更地にしてしまうところだった」

ジオット「喧嘩を売られたことが久しくなかったからさ。嬉しくてね、つい"本気”出してしまったよ」

甲斐「……」

172: 矢橋P 25/05/13(火) 18:00:09 ID:yjiN

ジオット「喧嘩に勝った報酬としてアイドル業界を牛耳れたのはいいんだけど、一気につまらなくなったものだね。ネンマリだ」

ジオット「ここいらでピリッとさせようか」



甲斐「何をなさるのですか?」

ジオット「傘下のアイドル事務所に上納金でも徴収してみるかい?ギリギリ潰れない程度の金額で」


甲斐「……彼らならそれでも尻尾を振りながら献上するでしょうね」

173: 矢橋P 25/05/13(火) 18:00:51 ID:yjiN

ジオット「なんだ、それじゃ駄目だ。別に金が欲しいわけじゃないし」



ジオット「そうだ。各アイドル事務所のトップアイドルをうちに献上させようか。そして茶組みでもやらせよう」

ジオット「信じて送り出したアイドルがウチで茶組みをやらされてるって知ったら……彼らどんな反応するかねぇ?」

174: 矢橋P 25/05/13(火) 18:02:20 ID:yjiN


甲斐「……本当にそんなことをなさるのですか」

ジオット「ハハハ、ジョークだよ。でも僕達はアイドル業界をそれなりに支援してきたけど、それは慈善事業じゃないって忠告はしなきゃね。甘えてもらっても困るんだよ」

甲斐「……やり過ぎない方向でこちらで検討します」



ジオット「僕の計画にはアイドルが必要だ、それも大勢のね。彼らがせいぜい僕達の金でアイドルを増やしてくれればいいんだけどねぇ」

ジオット(”その時”が来たら全てのアイドルは人柱になってもらう。遅かれ早かれ全てのアイドルはツナミの手のひらに収まることになるんだけど)

甲斐「…………」









 

175: 矢橋P 25/05/13(火) 18:06:31 ID:yjiN

P「ということです箱崎さん」

星梨花「地球プロですか……」

P「出来たばかりの事務所ですが私はここがいいと思います」



星梨花「あの……どんなアイドルの方が所属している事務所なのでしょうか」

P「確か二階堂千鶴に徳川まつり……」

星梨花「千鶴さんにまつり姫ですか!」パアッ

P「ま、まつり姫?」

星梨花「むーっ、Pさん知らないんですね」


 

176: 矢橋P 25/05/13(火) 18:08:27 ID:yjiN

それから星梨花から二階堂千鶴と徳川まつり、もといまつり姫について教えてもらった


何でも二階堂千鶴とまつり姫は第二次アイドルブーム前から活躍していたアイドルで、事務所に所属せずソロで活躍していたアイドルだったとのこと
ただこの二人で一緒にお仕事していることが多くてその時は双月(ツインムーン)と呼ばれ半ば公認ユニットみたいな扱いだったらしい


二階堂千鶴のプロデューサーは黒月光亀で徳川まつりのプロデューサーは藤堂貴志だったか
あの大國チルドレン”だった”二人なら横繋がりがあってもおかしくはないな

177: 矢橋P 25/05/13(火) 18:09:58 ID:yjiN

星梨花「今でこそアイドルブームでアイドルというだけでもチヤホヤされる時代になりました」

星梨花「でも当時はそうじゃなかったんですよ。その頃から応援しているんです!」



P「詳しいですね箱崎さん」

星梨花「昔のアイドルグランプリは毎週観てたんです。……あれからアイドルグランプリもだいぶ変わっちゃいましたけど」

星梨花「それに亜利沙さんって友人がいるんですけどアイドルのことなら何でも教えてくれました」

P(どうやらアイドルのことは星梨花の方が詳しいな。俺も勉強しないと……)

178: 矢橋P 25/05/13(火) 20:15:13 ID:yjiN



星梨花「それで二階堂千鶴さんはセレブアイドルなんです!仕草も歌声もとても気品に満ちているんですよ」

星梨花「まつり姫はふわふわきゅーとなお姫様アイドルなんですよ。見ているだけで不思議なぱわーがもらえるんです」


P(なるほど、それほど長い期間アイドル活動してきたなら根強いファンもいそうだ。そのおかげでツナミの手を借りなくてもやっていけるわけか)

179: 矢橋P 25/05/13(火) 20:15:43 ID:yjiN

P「相手方に話しを通してはいないですが。箱崎さんは所属することには賛成なんですね」

星梨花「もちろんです!そのお二人方と一緒の事務所に入れるなんて……とても嬉しいです」


P(星梨花が地球プロに入所するのを賛成してくれてよかった……)

P(後は相手方次第だが……)









 

180: 矢橋P 25/05/13(火) 20:16:21 ID:yjiN
数日後


地球プロ 事務所




P(ここが地球プロの事務所か。そんなに大きくはないが……)

P(整然とされている感じがある。大國チルドレンの二人は元経営者だ、そこら辺はしっかりしてそうだな)

星梨花「うう……緊張します……」

P「大丈夫です、いきましょうか」




 

181: 矢橋P 25/05/13(火) 20:16:49 ID:yjiN
地球プロ 応接室






P「初めまして」

黒月「初めまして。俺が地球プロダクションの代表 黒月光亀だ」

P「本日はよろしくお願いします」

星梨花「よろしくお願いします」

182: 矢橋P 25/05/13(火) 20:17:20 ID:yjiN

P「面接ということでしたが……」

黒月「ああ、自己紹介は要らない。事前の資料でだいたい確認しているしな」

黒月「うちもアイドルを募集していたところだ。どっとっぷNetに加入してない新参事務所に入りたがるアイドルは中々いなくてな」

黒月「君達の入所は渡りに船だと考えている」

183: 矢橋P 25/05/13(火) 20:18:07 ID:yjiN

P「そうですか。では……」

黒月「だが安易に判断したくないもんでな、一つこちらも問いかけをする。入所出来るかどうかはそれの返答次第だ」

P「何でしょうか?」

黒月「君と箱崎星梨花が入所した場合、そのまま君にプロデュースしてもらうが……そのままでは前の事務所と同じだろう?」

P「そうですね」

黒月「うちはどっとっぷNetに加入していない。こちらも事務所を立ち上げたばかりだ、過度な売り込みも期待してもらっては困る」

184: 矢橋P 25/05/13(火) 20:19:10 ID:yjiN

黒月「聞けば前の事務所では箱崎星梨花は……全く売れなかったようだな?」

星梨花「……」ドキッ



黒月「まさか『事務所が変わった途端、それまでのことが嘘のように売れ始めた』そんな夢みたいなことを思っているわけじゃないよな?」

P「……」

185: 矢橋P 25/05/13(火) 20:20:12 ID:yjiN

黒月「56プロがいい加減な事務所だったことはこちらも把握はしているが、売れなかった原因はそれだけではないはずだ。事務所という表面だけ変えても結果は何も変わらるわけがないだろう」

P「……」



黒月「そこで問わせてもらう。あなたはうちの事務所に来て箱崎星梨花をどうプロデュースする気なんだ?」

P(さすが元大國チルドレン。下手な自己アピールより省察を求めるか……)

星梨花「Pさん……」

 

186: 矢橋P 25/05/13(火) 20:21:23 ID:yjiN

P「申し上げさせてもらいます」グッ

P「箱崎星梨花はまだ経験がありません。はっきり言ってこのままソロでデビューさせても売れないでしょう」


黒月「……実力を付けるまで待てと?」

P「違います。新しくアイドルユニットを組んでその中でプロデュースしていきたいと提案します」

星梨花「Pさん!?」


P「箱崎さんには長所も短所もあります。アイドル同士で高め合い、長所は引き出して短所は補う。それがベストだと思います」

P(まだ星梨花には話していなかったがこれは前から考えていたことだ)

P(一人じゃ無理でもユニットを組んでお互いに足りないところを補えばアイドルは輝くことは出来る!)

187: 矢橋P 25/05/13(火) 20:22:00 ID:yjiN


黒月「……そうか」

黒月「妥当だろうな。俺でもそうする」

黒月「どうやらうちの事務所にあやかりたいだけではないようだ。しっかりアイドルのことを考えている」

黒月「今は第二アイドルブームと言われている激動の時代だ。その気持ちを忘れないように精進しないと取り残されるぞ」

黒月「地球プロへ入所を認めよう」

P「ありがとうございます」

星梨花「ありがとうございます」
 

188: 矢橋P 25/05/13(火) 20:23:38 ID:yjiN


「全く、よく偉そうに言えたものですわね」



黒月「ち、千鶴……」

千鶴「最近やっとまともになった、お金の計算だけは早い金融上がりのペーペープロデューサーが新人いびりですの?」


黒月「千鶴、聞いてたのか」

千鶴「ええ。金融上がり感たっぷりなあなたの独説。廊下越しでもよく聞こえましてよ」

黒月「俺だっていちプロダクションの主になったんだ。面接一つでも甘く出来るか!」

千鶴「実力もないくせにその威圧的な態度がみっともないと言っているのですわ!」

千鶴「あなたと"初めて”二人三脚になった直後なんて、あまりにも頼りなくて……ああ、今でも思い出すと涙が……」ウウッ

黒月「いつの話しだ!それと涙を流されるほど酷かった覚えはないぞ!」
 

189: 矢橋P 25/05/13(火) 20:24:40 ID:yjiN

\ギャー/  \ギャー/





星梨花「……」ポカーン

P「これは……」
 

190: 矢橋P 25/05/13(火) 20:25:32 ID:yjiN


藤堂「あれは痴話喧嘩みたいなものだから気にしなくていいよ」

まつり「黒月さんも毎度懲りないのです。何回やっても最後には千鶴ちゃんが勝つのがお決まりなのです」



藤堂「ようこそ地球プロへ。僕は藤堂貴志、そして……」

星梨花「まつり姫ですよね!私、千鶴さんとまつり姫のユニット、双月の大ファンです」
 

191: 矢橋P 25/05/13(火) 20:27:14 ID:yjiN

まつり「ほ?かわいい後輩がまつりのファンだなんてとっても嬉しいのです」

まつり「お名前はなんというのです?」

星梨花「箱崎星梨花です!」


まつり「星梨花ちゃん。ここはアイドルがきらきら輝く場所なのです」

まつり「星梨花ちゃんはまつりを眺める側からまつりの隣に並んで立つ側になって欲しいのです」

まつり「アイドルになった以上応援するだけじゃ駄目になったのです。むじょーなのです」

まつり「その代わり……とーっても素敵な世界が待っていることをまつりが確信を持って保障するのです!」

星梨花「はい!」
 

192: 矢橋P 25/05/13(火) 20:27:25 ID:yjiN

P(流石、8年以上もアイドルを続けている大ベテランアイドルだ。アイドル業界に浅い俺でも二階堂さんと徳川さんにすごい貫禄を感じる)

P(この事務所を選んで良かったな)

193: 矢橋P 25/05/13(火) 20:28:05 ID:yjiN

バタバタ




このみ「それじゃPくんの働く場所も案内しなきゃいけないかしら?」

P(こ、このみ姉)



藤堂「そうだね。ちょうどデスクが一つ空いていたし彼のデスクにしよう。このみさん案内してあげて」

このみ「了解よ」

194: 矢橋P 25/05/13(火) 20:29:06 ID:yjiN


このみ「あーら。あの荒くれ不良のPくんがスーツをビシッと着ちゃって。成長を感じられてお姉さん嬉しいわ」ヒソヒソ

P「いつまでも子供扱いするなよ。あと他の人には俺とこのみ姉は初対面ってことになっているんだぞ」ヒソヒソ

このみ「久しぶりにPくんとじっくり話したいし、今夜二人で居酒屋でもどう?」ヒソヒソ

P「勘弁してくれ……」



P(このみ姉……。洗谷隊長からここに居るって聞かされてはいたけど……)

P(俺やジュリアは組織に入った初期の頃このみ姉にだいぶお世話になっている)

P(だから頭が上がらないんだよな。感謝はしているんだけど未だに子供扱いされることだけは納得いってない)







 

195: 矢橋P 25/05/13(火) 23:49:58 ID:yjiN
その夜  居酒屋






このみ「なるほどね。星梨花ちゃんの任務のことは私はタッチしていなかったわ」

P「酷いもんだろ。俺だって妥協出来ることと出来ないことがある」

このみ「でも納得いかないってだけなら適当なこと言って引き伸ばせばよかったのに、どうして違反してまで星梨花ちゃんの味方したのかしら?」

196: 矢橋P 25/05/13(火) 23:50:30 ID:yjiN
P「それは……」


このみ「あら、このみ姉さんにも話せないことなの?」

P「アイドルの可能性を追ってみたくなった……かな」

P「どうせあのまま組織に戻ってもツナミ相手に出来ることなんてたかが知れてる。もしかしたらアイドルなら……ツナミになんか出来るんじゃないか、って思っただけだよ」

P「だから組織を裏切ったつもりはないんだ。俺はアイドルでツナミに対抗しようと思ってるだけだよ」

197: 矢橋P 25/05/13(火) 23:53:59 ID:yjiN

このみ「へぇー?星梨花ちゃんには何の感情も抱いてないわけ?」ニヤニヤ

P「当然、彼女の夢も応援しているさ。さっきは組織の一員としての意見を述べただけで……」

このみ「そうじゃなくて、Pくん星梨花ちゃんとそんなに歳離れてないじゃない」ニヤニヤ

P「何期待しているんだよ!やましい気持ちは全くない」
 

198: 矢橋P 25/05/13(火) 23:54:20 ID:yjiN
このみ「はいはい。そういえばPくんは百合子ちゃんや杏奈ちゃんやジュリアちゃんの前でもそんな態度のドライな男だったわね」

このみ「少しでもときめいた私が悪うございました」

P「いつ危ない目にあうかわからない身だ。色沙汰にうつつを抜かしていられないんでね」


このみ(全く……。昔からツナミに復讐出来たなら死んでもいいってぐらい張り詰めていたものね)

このみ(星梨花ちゃんと出会って少しでも変わって欲しいのだけど)

199: 矢橋P 25/05/13(火) 23:55:01 ID:yjiN

このみ「でも、あまりのんびりしていられないわよ?洗谷隊長もあまりPくんを放っておかないと思うわ」

P「そうだよな……。早く結果出さないとなぁ」

このみ「いよいよとなったら星梨花ちゃんと二人で逃げちゃったら?」

P「そんなこと誰がするか!」

このみ(真面目なんだか不器用なんだか)









 

200: 矢橋P 25/05/13(火) 23:56:19 ID:yjiN
次の日




P(今日が地球プロの社員としての初日なのだが……)


黒月「何のんびりデスクに座っているんだ?」

P「やっぱり……箱崎さんのユニットメンバーは……」

黒月「お前がスカウトしてくるしかないだろ」

P「そうですよね……」

黒月「箱崎星梨花の今後の調整はユニットメンバーの如何次第だ。早くスカウトしないといつまでたってもデビュー出来ないぞ」







 

201: 矢橋P 25/05/13(火) 23:56:56 ID:yjiN
社外



P(星梨花は千鶴さん達に任せて俺はアイドルをスカウトするために外に出た)

P(自分から言い出したこととはいえスカウトなんて俺に出来るのか)

P(いや、ユニットメンバーが揃わないと星梨花はデビュー出来ないんだ。なんとしてでもやらないと)

P(……営業スマイルの練習もやらないとな)








 

202: 矢橋P 25/05/13(火) 23:57:48 ID:yjiN
数日後



P「まるでスカウトが成功する気がしない……」ズーン

このみ「あら、早速轟沈かしら」

P「そもそもどこに行けばアイドル候補に出会えるかもわからん」

このみ「そうねぇ……先輩たちにアドバイス受けてみたら?」








 

203: 矢橋P 25/05/13(火) 23:58:42 ID:yjiN
とあるレッスンスタジオ





P(ここは狼狽えている俺を見かねた俺に藤堂さんが教えてくれたところだ)

P(このレッスンスタジオは古いけど割安価格で借りることが出来る)

P(そのこともあってデビュー前のアイドル達が主に利用するところらしい)

P(かつては千鶴さんやまつりさんも本格的にデビューするまではここを利用していたそうだ)

P(ここならデビュー前のアイドルに会えるかもしれない)

204: 矢橋P 25/05/13(火) 23:59:27 ID:yjiN

P(今日利用しているのは一組か……。スタジオ内には入れないから帰り際に声をかけてみるかな)








「まだまだ頑張ってーーー!」


P(ん?)

205: 矢橋P 25/05/14(水) 00:00:31 ID:tmKl

「腹筋!背筋!胸筋ーーーん!」





P(およそアイドルに似つかわしくない単語が聞こえるが……)

P(考えてみればなにも利用者はアイドルって決まってるわけじゃないか)

P(今日は無駄骨に終わりそうだ)





 

206: 矢橋P 25/05/14(水) 00:01:17 ID:tmKl


海美「もっと!もっと!もっと!」

昴「海美、ちょっとタンマ。もう限界だって~」

海美「そう?じゃ、今日はここまでにしよっか。デビュー前に怪我しても困るしね」



海美「でも言ってたほどはなまってないよ。さすがすばるん!」

昴「監督業務の時に生徒達と一緒にランニングしていたからなー」

昴「でも野球とアイドルじゃ使う筋肉違うしな。海美がトレーニングに付き合ってくれて助かったぜ」

207: 矢橋P 25/05/14(水) 00:02:19 ID:tmKl

海美「本業だからね、お安い御用だよ」

海美「ね、ね。それでいつアイドル復帰するの?」

昴「それがなー。何とか監督業務を紗代子に引き継いでもらって、退職出来たのはいいんだけど時間かかっちまってさ」

昴「前いた事務所が潰れてたし。オレも歳は25歳だし入れる事務所があるかどうか……」






P「どうか私の事務所に来てもらえませんか」ドケザ-

海美「あれ?」



 

208: 矢橋P 25/05/14(水) 00:02:58 ID:tmKl

カクカクシカジカココロエクササイズ




昴「なるほどアイドルユニットのスカウトか」

海美「ナイスタイミングじゃない?すばるん」

209: 矢橋P 25/05/14(水) 00:03:56 ID:tmKl

昴「……ユニットメンバーか。オレは前みたいにソロでいこうと思っていたんだけどな」

P「ですがユニットの方が良い場合もあります」

昴「……ま、確かに前と同じやり方が通用しないのは投手の配球もアイドルも同じか」


昴「なあ、その地球プロだっけ。ツナミとはどうなんだ」

P「……ツナミグループですか」ギクッ

210: 矢橋P 25/05/14(水) 00:04:43 ID:tmKl
P

P「ツナミグループとは事務所と縁が無い状態です。だからどっとっぷNetにも……」

昴「おっ、いいじゃん。そっか、ツナミに媚びてたりしてねーのか」

海美「今のアイドル業界じゃ珍しいよね」

P「え?」


昴「それならいいぜ。地球プロに入らせてもらう、どうかよろしくな」

P(珍しいというのはこっちもだ。ツナミのサポートがあって当たり前の環境で無い方が嬉しいっていうアイドルがいるなんて)

211: 矢橋P 25/05/14(水) 00:05:34 ID:tmKl

昴「ただし一つ言わなきゃいけないことがあるんだ」

昴「オレは一度アイドルになっている。5年前に無期限活動停止したけどな」

P「前の所属していた事務所は……」

昴「残念ながら潰れちまって真っさらな状態だよ。一からやり直しかな」

P「構わないです。むしろ箱崎さんに一番必要な”アイドルの経験”を持っているのならこれ以上頼もしいことはないです」

昴「5年間もブランクあるし、その間にアイドル業界もだいぶ様変わりしてしまったみたいだから過度な期待はしないでくれよ」
 

212: 矢橋P 25/05/14(水) 00:05:58 ID:tmKl

P「改めて契約の確認のこともありますから後日事務所に来てください」

P「住所は……あ、名刺作ってなかったな」

昴「ったく。頼むぜプロデューサー」

海美「良かったね。デビューしたら教えてよ!」










 

213: 矢橋P 25/05/14(水) 11:04:33 ID:t8DM
次の日





昴「うぃーす。来たぜー」

P「永吉さんありがとうございます」

昴「確かに新しい事務所だなー」

214: 矢橋P 25/05/14(水) 11:05:19 ID:t8DM

千鶴「おや、昴じゃないことですこと」

昴「千鶴!そっか、千鶴の居る事務所だったのか」

P「お二人は面識あったんですね」

昴「7年前に同じ時期にデビューしたんだよな。アイドルグランプリに共演したこともあるぜ」
 

215: 矢橋P 25/05/14(水) 11:06:26 ID:t8DM

千鶴「そうですわね。……あの時のあなたはそこそこ人気も出始めた頃でしたのに。突然辞めるものですから驚いたものですわ」

千鶴「しばらく名前を聞かなかったと思ったら、甲子園優勝校の監督の名前にあなたの名前がありました。あなたがやりたかったのは野球監督だったのですの?」
 

216: 矢橋P 25/05/14(水) 11:19:53 ID:t8DM

昴(インタビューとかはなるべく受けないようにしたりして目立たないようにしてはいたんだけど、千鶴にはバレるか)


昴「別に甲子園を目指すためにアイドル辞めたんじゃねーし」

昴「野球監督をやったのは成り行きだよ。優勝まで行ったのは生徒達の頑張りだしな」

昴「それがひと段落したからアイドル復帰しにきたんだよ」

千鶴「……何やら事情がありそうですわね。深くは聞かないでおきましょう」

昴「助かるよ、千鶴」
 

217: 矢橋P 25/05/14(水) 13:07:13 ID:t8DM

千鶴「それで、あなたがここに来たということは新しいユニットのメンバーに加わってくれますの?」

昴「そうさ。一からやり直す気持ちでやらせてもらうぜ」

千鶴「一度アイドルをやってたあなたなら星梨花を支えることが出来るでしょう。よろしく頼みますわ」

昴(星梨花?まさか星梨花って…………)







 

218: 矢橋P 25/05/14(水) 13:08:23 ID:t8DM
地球プロ レッスンルーム






星梨花「昴さん、お久しぶりです!」

昴「おう。やっぱり星梨花じゃん」

P「箱崎さんとも知り合いで?」

昴「10年前にちょっとな」

星梨花「みんなで星を見に行った以来ですね!」

昴「あの頃はみんな学生だったよなー」


P(よくわからないが面識があるのなら打ち解けるのも早そうだ)

219: 矢橋P 25/05/14(水) 13:09:02 ID:t8DM

そして






昴「ここはこう、足は真っ直ぐ。背筋は……」

星梨花「はい!」


P(すごいな。本人はブランクがあるといっているが手慣れているじゃないか)

220: 矢橋P 25/05/14(水) 13:09:45 ID:t8DM

昴「確かにPの言う通り星梨花はダンスレッスンをもうちょっと頑張んなきゃいけないな」

星梨花「そうですよね……」ショボーン

昴「始めはみんなそうだって。静香も最初はぎこちなくて……」

星梨花「静香さんって……あの最上静香さんですか!」

昴「あ……。うんそうだな」

星梨花「?」
 

221: 矢橋P 25/05/14(水) 13:10:41 ID:t8DM


P「デビューまでまだ時間があります。それまでじっくり行きましょう」

昴「ユニットメンバーが揃わないとデビュー出来ないわけだけどオレと星梨花の他にあと一人加える予定なんだろ?」

P「ええ、最低でもあと一人加えてトリオにしようと思ってます」

P(デュオだとソロとはまた違った技術が求められる。これも経験が少ない星梨花にはまだ早いだろうと黒月さんから言われた)

P(だからあと一人スカウトしてこないといけないな)








 

222: 矢橋P 25/05/14(水) 13:12:48 ID:t8DM


ツナミグループ日本総支部 会長室




黒服「56プロダクションが閉業したようです」

甲斐「やっとですか。虫のような連中ほどしぶとい」

223: 矢橋P 25/05/14(水) 13:13:24 ID:t8DM

甲斐「あのプロダクションはアイドルブームに乗じてアイドルを自分の他の事業に利用して色々なことをしていた」

甲斐「あんなものを放っておくとアイドル業界の堕落に繋がります。排除出来て良かったですね」

黒服「政府と接触していたという噂もありましたが杞憂だったかと」
 

224: 矢橋P 25/05/14(水) 13:14:40 ID:t8DM

黒服「それと……永吉昴ですが。アイドル復帰するという情報は本当のようです」

黒服「彼女はサイボーグでありツナミの裏を知る人間の一人。放っておくのは……」


甲斐「彼女の知るツナミの側面などほんの一部ですよ。そこまで気に止める必要はないでしょう」

甲斐「アイドルが増えるのなら喜ばしいことです。動向は引き続き探りなさい。ですが余計なことはしないように」

黒服「はっ」








 

225: 矢橋P 25/05/14(水) 13:16:35 ID:t8DM
次の日







黒月「ほら、これがお前の部屋の鍵だ。無くすなよ」

P「ありがとうございます」



P(あー良かった。これでカプセルホテル暮らしとはおさらばだ)

226: 矢橋P 25/05/14(水) 13:18:00 ID:t8DM

P(元の任務を放棄した俺は組織の住居があるパライソタウンに戻れなくなっていた)

P(別に出禁になったわけじゃないけど何の成果を出さないまま、のこのこ戻ってくるのもなんか違うしな)

P(それでこのみ姉に相談したらこのみ姉もジュリアも任務中は事務所が抑えてある宿舎に住んでいたとのこと。それで俺も利用させてもらえることになった)

P(準備を終えたら昴も移ってくるらしい)

227: 矢橋P 25/05/14(水) 13:18:33 ID:t8DM

黒月「大丈夫だとは思うが変なことはするなよ」


P「するわけありません!」

黒月「真面目だな。このみとうまくやれよ」







 

228: 矢橋P 25/05/14(水) 13:19:13 ID:t8DM
そして

とある街中





P(今日もスカウト作業だけど……前のようにうまくいくわけないよなぁ)






???「ちょっと、ちょっと」

229: 矢橋P 25/05/14(水) 13:20:00 ID:t8DM

P(アイドルを目指している女の子は……っと)




???「ヘイ、ヘイ!そこのカレシー!」




P「…………ん?」

???「ようやく気付いてもらえたよ。"あの子”と違って相性がよくないのかにゃー」

230: 矢橋P 25/05/14(水) 13:20:56 ID:t8DM

P「誰だ?」

P(なんか話していると不思議な感覚がする女の子だな)




???「お兄さんお困りでしょー?それもズバリ、アイドルのことで!」

P(何でわかった!?)


P「まさか君もアイドルになりたいのか」

231: 矢橋P 25/05/14(水) 13:21:31 ID:t8DM

???「それは違うにゃー。アイドルになる方じゃなくて応援する方だからね」

P「そうか……」ガックリ



???「そう落ち込むことはないよっ。こんなスーパー美少女と出会えたんだから」

P「……」シラー

232: 矢橋P 25/05/14(水) 13:22:26 ID:t8DM

???「反応悪いなー。仕方ない、お兄さんの願いを叶えてあげよう」

???「本日の18時半、今からだいたい4時間後だね。駅前の噴水の近くにある時計台で待ってれば願いが叶うかもね」



P「なんだそりゃ」

???「それじゃバイバイ。スカウト頑張ってね~」

233: 矢橋P 25/05/14(水) 13:23:09 ID:t8DM

P「待って、君は……」

???「全てのアイドルの味方……かな」スゥゥゥ






P「あれ……?消えた」

P(幻か幽霊……いや何考えているんだ。俺はそういうの信じないはずだろ)

P(だが夢か幻覚にしてはリアルだったな)








 

234: 矢橋P 25/05/14(水) 15:34:38 ID:tmKl

某駅前広場 噴水前








P(俺もそうとう焦っているんだな。あんな言葉を信じるなんて)

P(そろそろ時間だが別に何かイベントが起きているわけじゃないようだが……)

235: 矢橋P 25/05/14(水) 15:35:10 ID:tmKl

ザッ ザッ ザッ


桃子「……」


ガヤ ガヤ ガヤ ガヤ




P「時間になったが何も起きないぞ。もう少し待つか」

236: 矢橋P 25/05/14(水) 15:37:13 ID:tmKl
30分経過


P(結局何も起きなかったな)






桃子「……」

P(強いて気になると言えばあの女性か。学生……というほど幼くもないけど、まだ大人って感じでもない)

237: 矢橋P 25/05/14(水) 15:37:58 ID:tmKl

桃子「……」


P(大きな旅行鞄を抱えてウロウロしているしなぁ。とてもアイドル志望じゃなさそうだけど……一応声をかけてみるか)




P「あの……」

桃子「何?」

P「もしかしてアイドルに興味あったり……」

桃子「お兄ちゃんもしかして不審者?」

238: 矢橋P 25/05/14(水) 15:38:47 ID:tmKl

P「そういうわけでは……」

桃子「最近アイドル勧誘をネタにして犯罪する人が増えたってニュースでやってたね。お兄ちゃんもその仲間かな」


P「違う!決してそんなことは……」

P(そうだ、昨日作った名刺!)ゴソゴソ


P「自分はこういう者で……」

P(でもこれも怪しい人間のムーブなのでは……)

239: 矢橋P 25/05/14(水) 15:39:59 ID:tmKl

桃子「ふーん、地球プロダクションね……」シゲシゲ

桃子(よし、決めた)



桃子「お兄ちゃんますます怪しいな~。これは社会のために通報しないといけないかな」

P「それは勘弁下さい」

P(入社3日目で警察に同行されるのはマズいだろ!)

桃子「そう、それじゃお兄ちゃんにお願いがあるんだけど……」ニヤリ








 

240: 矢橋P 25/05/14(水) 15:40:46 ID:tmKl

地球プロ 宿舎

Pの部屋







桃子「うわ~。本当に何も無いんだね」

P「どうしてこうなった……」

241: 矢橋P 25/05/14(水) 15:41:55 ID:tmKl

P(この周防桃子という女の子は家出してきたばかりらしい)

P(そして今日泊まる場所を探していたところに俺が声をかけて来た)

P(つまり体よくたかられたというわけだ)
 

242: 矢橋P 25/05/14(水) 15:43:16 ID:tmKl

P「本当にいいのか、こんな見知らぬ男の部屋で」

桃子「背に腹はかえられないってやつだよ。お兄ちゃん、世間体を気にしなきゃいけない役職みたいだし滅多なこと出来ないでしょ」

P「それもキミを油断させる嘘かもしれないだろ」

桃子「それ自分で言っちゃう?お兄ちゃんのお人好しでしょ、桃子鋭いからわかるよ」

桃子「それにいざってなったら電話一本で駆けつけてくれるヒーローが桃子にはいるからね。お兄ちゃんなんかコテンパンにしちゃうんだから」


P「ヒーローねぇ……」

P(子供っぽいところもあるんだな)

243: 矢橋P 25/05/14(水) 15:44:02 ID:tmKl

桃子「荷物を置いたし買い物に行こうか」

P「買い物?お腹でも空いたのか」


桃子「家具だよ家具!せめてベッドでもないと寝られないでしょ!」

P「俺は床でも平気だが」

P(任務中は車の中で寝ることとかしょっちゅうだしな)

244: 矢橋P 25/05/14(水) 15:44:57 ID:tmKl

桃子「うわー……。お兄ちゃん絶対モテないでしょ。そんなことでアイドルの心掴めるの?」

P「うぐっ」

桃子「あ、でもお兄ちゃんの言う通りお腹も空いたかも。先に食事にしよっか、もちろんお兄ちゃんの驕りで♪」

P「はあ~」


P(何が願いを叶えてあげよう……だ。とんだ貧乏くじじゃないか)









第二章       終わり

245: 矢橋P 25/05/14(水) 16:09:57 ID:tmKl

黒月光亀   地球プロダクション代表

地球プロダクションの代表
かつて大國チルドレンだったが、担当していた大帝国ファイナンスの不祥事で大國チルドレンの椅子からは退いた
が、かえって彼がプロデューサーに転向する決意を固めることとなったようだ
しばらくは二階堂千鶴の専属プロデューサーで二人ともどもフリーであったがこのアイドルブームの動乱を乗り込るためについにプロダクションを立ち上げることにした
立場としてはプロダクションの代表だが千鶴のプロデューサーは辞めるつもりはない
金融上がりと千鶴から称されているようにプロデューサーにしては金回りの立ち回りが上手い ●

246: 矢橋P 25/05/14(水) 16:10:46 ID:tmKl

藤堂貴志   地球プロダクション副代表

黒月と同じく大國チルドレンだったが黒月がプロデューサーに転向して程なく
彼は自分の担当していた事業を他者にあっさり譲り渡して追っかけるように徳川まつりの専属プロデューサーとなった
本人曰く事業主よりも大切なものを見つけたとか
徳川まつりに対しては何よりも大事に思っており、彼女を影で支えることに徹している
地球プロは黒月のやや強引なところと彼の物腰柔らかなところでバランスを取っているようである ●

247: 矢橋P 25/05/14(水) 16:11:43 ID:tmKl

馬場このみ   組織のお姉さん

地球プロダクションの事務員……は仮の姿で本当の姿は政府の組織のお姉さん
かなりのベテランで昔はとある国際スパイと組んで仕事をしていたという噂も
今は第一線から少し退き工作などのサポートが主な仕事で、何でもそつなくこなせるスーパーレディである
Pやジュリアそして部門は違うが百合子や杏奈にも慕われている
洗谷隊長からの信頼も厚い ●

248: 矢橋P 25/05/14(水) 16:12:56 ID:tmKl

二階堂千鶴   セレブアイドル

セレブアイドルとして長い間アイドルを続けている女性
デビューした時からセレブアイドルとして売り出していて
彼女をプロデュースしていた黒月が大國チルドレンから脱落してからもその態度が変わることはなく現在まで貫き通している
第二次アイドルブーム前から今に至るまで活動を続けているおかげで根強いファンが多く、ツナミグループにあやからずにアイドル活動を続けている
黒月とは程々の良い関係を貫いている ●

249: 矢橋P 25/05/14(水) 16:13:40 ID:tmKl

徳川まつり わんだほーなお姫様アイドル

千鶴と同じ時期にデビューしたお姫様アイドル
デビューしてからはソロで活動していたが時折千鶴と組むように活動したりもしていた
その場合は双月(ツインムーン)と呼ばれる

彼女も根強いファンがおり二人は若い現役アイドルに全く引けを取らない人気を誇る
藤堂とはお姫様アイドルとして一歩退いた付き合い方だが固い信頼関係がある ●

250: 矢橋P 25/05/14(水) 16:16:13 ID:tmKl

永吉昴   元スポーティーなアイドル

ハタ侵略の英雄の一人、その中でもリーダー的存在だった
ハタ侵略が終わってしばらく経ち、高校卒業後にアイドルデビューし1年間アイドルを続けたがとあるトラブルで活動を停止
そして反ツナミ組織の策略で無理やり開拓分校の教職員をさせられていた
だがトラブルの元が消え、監督業務を紗代子に引き継いでもらい歩への借りを返しにアイドル業界に戻ってきた
ブランクは長いが静香や志保のレッスンを見ていたことや野球トレーニングは一通りやってたこともあり体の衰えは全くない ●

251: 矢橋P 25/05/14(水) 16:24:11 ID:t8DM

高坂海美   スポーツインストラクター

昴やロコ達の親友でハタ侵略の英雄の一人
彼女は大学卒業後スポーツインストラクターとなっており既に大人気のようである
時には昴だけではなくロコや百合子を引っ張って運動不足の彼女らを運動させているようだ
今は紗代子と連携し出張で混黒高校や開拓高校を中心とした学校に出向くことが多い ●

252: 矢橋P 25/05/14(水) 16:25:18 ID:t8DM

周防桃子   家出少女

家出して思わず飛び出してきたばかりらしい
先立つものも無く寝床にも困っていたところをPに話しかけられてPの部屋に転がり込んだ
どうやら家出の理由が大親友と大げんかしたからだそうだが……? ●

253: 矢橋P 25/05/15(木) 05:53:46 ID:mcjF


第三章  『真珠星』

 

254: 矢橋P 25/05/15(木) 05:54:06 ID:mcjF
早朝  宿舎





ジュリア「気持ちいい朝だな」

ジュリア「今日はオフだしまずギターのメンテナンスして……」

ジュリア「と、そうだ。まずPに声かけてみるか」

255: 矢橋P 25/05/15(木) 05:54:51 ID:mcjF








ジュリア「このみ姉の話しだとこの部屋だよな?」

ジュリア「昨日の夜もノックしたけど留守だったんだよな~」

ジュリア「おーい、P兄。居るんだろ」コンコン

256: 矢橋P 25/05/15(木) 05:55:35 ID:mcjF
ガチャ

桃子「はい、どなたー?」マダネボケテル



ジュリア「あっ、すいません!」

ジュリア(部屋を間違えた?でも確かにこの番号……)



P「勝手に出るなよー」マダネムイ
 

257: 矢橋P 25/05/15(木) 05:56:21 ID:mcjF

ジュリア「あ、あ……」


P「……………………やば」


ジュリア「つ、ついにやったなバカP!!!」

P「待てジュリア、誤解だ!」














 



258: 矢橋P 25/05/15(木) 05:57:09 ID:mcjF





ジュリア「まあ冷静になりゃバカPにそんな甲斐性ないよな」フフン

P(誤解があっさり解けるのはいいことだが、ジュリアに鼻で笑われるのはムカつくな)

桃子「へー、ジュリアさんはお兄ちゃんの幼なじみって感じなんだ?」

P「幼なじみとはちょっと違うけどな」

ジュリア「同じ志を持つ同志ってところさ」

桃子(その割には兄って呼んでいるんだね。まあ桃子も人のこと言えないけど)

259: 矢橋P 25/05/15(木) 05:57:56 ID:mcjF

ジュリア「で、何でPはモモを泊めることになったんだ?」

P「まあ色々あってな……」


ジュリア「もしかして……ツナミ絡みか?」

桃子「!」

P「おい」
 

260: 矢橋P 25/05/15(木) 05:59:15 ID:mcjF

ジュリア「モモはサイボーグの被験体か希少な超能力者か何だろ?」

桃子「……」

ジュリア「そしてツナミから逃げてきたところをPが保護したってところかな」

桃子「……」イライラ

P「そんなわけないだろ。桃子はただの一般人だよ」

桃子「……」ギリッ

ジュリア「さすがに冗談さ。だか……」


桃子「そうだよ!桃子が何も無い一般人で悪かったね!!!」
 

261: 矢橋P 25/05/15(木) 06:00:16 ID:mcjF

ジュリア「わ、悪い。ちょっと悪ノリしたな……」

桃子「朱里さんみたいにサイボーグでもないし、ひなたさんみたいに超能力者じゃないし、環みたいに変身出来ないし!」

桃子「育みたいに……何か特別な力も無くて……」グスッ

桃子「歩お姉ちゃんも……典子さんも……いつの間にか手が届かないところに行っちゃって」グスグス

桃子「何で桃子だけ何も無いの……」グスグス

262: 矢橋P 25/05/15(木) 06:01:29 ID:mcjF



ジュリア「うう……」タジタジ

ジュリア「P兄。P兄がサイボーグだって話したのかよ」ヒソヒソ

P「いや、そんな深いことは一切喋ってない」ヒソヒソ

P(ただの家出少女だと思ってたけど……相当訳ありみたいだな)


P「ジュリア、いったん席を外せ。桃子と二人で話しがしたい」

ジュリア「うん、あたしじゃ無理だ。任せた」





 

263: 矢橋P 25/05/15(木) 06:02:23 ID:mcjF




桃子「……」ウズクマリ

P「桃子」

桃子「……放っておいて」

P「力が無いとくやしいよな」

桃子「桃子のこと何も知らないくせに……」

P「そうだ。だから桃子こと教えてくれないか」

桃子「……やだ」

264: 矢橋P 25/05/15(木) 06:03:01 ID:mcjF

P「そうか。なら俺のことを先に話そう」

P「俺はサイボーグだ」

桃子「……それ桃子に喋っていいやつ?」

P「駄目なんだけどな。でも桃子はサイボーグのこと知ってそうだし」
 

265: 矢橋P 25/05/15(木) 06:04:03 ID:mcjF

P「俺はツナミが嫌いだ」

桃子「……桃子も」

P「……それでサイボーグに改造してもらう時に、不安もあったんだけどちょっとわくわくもしていた」

P「これで自分の世界が変わるんじゃないかって。もしかしたらヒーローになれるんじゃないかって」

P「でも現実は違った。サイボーグになっても出来ることは大して何も無いんだよ。むしろ制約の方が多いくらいだ」

桃子「……だから桃子もそんなの望んじゃいけないって言いたいの?」

266: 矢橋P 25/05/15(木) 06:05:29 ID:mcjF

P「……ツナミはちょっと強いサイボーグ……いや日本で一番強いサイボーグだとしてもどうにか出来るものじゃない」

P「知ってるか?ツナミグループ全会長で俺にとってはラスボスのジオット・セヴェルスは超能力者でもサイボーグでもない。でも全世界に大してあれほどの影響力を持っている。ジオットに比べたら俺なんか蟻以下だよ」

桃子「……それで。お兄ちゃんの自虐はまだ続くの?」



P「それがさ。俺が担当している箱崎星梨花さん」

P「彼女は今は何もない。まだデビューすらしていないけど……彼女なら、アイドルならツナミを倒せるかもしれないと思っているんだ」

桃子「正気なの?あのツナミを……」

P「俺がサイボーグの力で暴れても何も変わらない。だから俺はプロデューサーになったんだ」

267: 矢橋P 25/05/15(木) 06:06:41 ID:mcjF

桃子「バカみたい。そんなの歩お姉ちゃんみたいな……」ハッ

桃子(そうだ。歩お姉ちゃんも昔アイドルでイーエスに勝負したんだよね)

桃子(桃子だってその仲間だったはずなのに……。いつから桃子はこうなってしまったんだろ)

桃子(あの後、リハビリを終えた育がヒーロー連合に入りたいって言い出して……。桃子も一緒に付いていった)

桃子(でも何も無く力も弱い桃子はせいぜいサポートするぐらいしか出来なかった)

桃子(それでいつからか引け目感じて……勝手にみんなから遠ざかって……)



 

268: 矢橋P 25/05/15(木) 06:08:20 ID:mcjF

P「まあそんなところだな。つまらない自分語りだったろ」

桃子「……桃子も手伝う」

P「……」

桃子「桃子も手伝うよ。そのアイドルでツナミに倒すってこと」

P「手伝うって言ってもな」

桃子「アイドル足りないんでしょ?桃子もアイドルになるから!」

P「桃子がアイドルに!?」


P「確かにアイドルが足りてないけど、そんな無理にアイドルにならなくてもいいんだぞ」

桃子「無理やりじゃないよ。桃子がやりたいことがお兄ちゃんのやりたいことと同じだっただけ」

桃子(育、環、朱里さん、ひなたさん、瑞希さん、莉緒さん。ちょっとみんなから離れるけど……桃子は桃子のやり方で進むから!)








 

269: 矢橋P 25/05/15(木) 10:20:45 ID:nEhK
地球プロ 事務所






黒月「それで、遅刻した理由はアイドルスカウトが原因と」

P「はい、すみません」ガックリ

270: 矢橋P 25/05/15(木) 10:23:11 ID:nEhK

黒月「別に責めてないぞ。それでアイドルが三人揃ったんだからな」

P「今日三人で顔合わせします。アイドル達の納得も必要でしょうから」

黒月「アイドルの気持ち優先か。面識ないメンバーをただ集めて無理やりユニットを組ませることも珍しくないことだがな」

P「俺はプロデューサーとしてまだまだです。だから……出来ればアイドルの意思を尊重したいです」

P(もう……星梨花にあんな顔は絶対させてはならない)






 

271: 矢橋P 25/05/15(木) 10:28:12 ID:nEhK
待合室




桃子「周防桃子です。どうかよろしくお願いします」


星梨花「桃子ちゃんですね。こちらこそよろしくお願いします」

昴「桃子は若いなー。羨ましいぜ」

桃子「昴さんも別に老けてるわけじゃないでしょ」

昴「当たり前さ。でも俺も星梨花も二十代だしさ。十代の桃子が入ってくれると映えて嬉しいぜ」

272: 矢橋P 25/05/15(木) 10:28:47 ID:nEhK

P「それではユニット結成ということでよろしいですか。箱崎さん永吉さん」


星梨花「はい!」

昴「文句なーし」

桃子「……」

273: 矢橋P 25/05/15(木) 10:29:29 ID:nEhK

P「次にユニット名を決めてもらうんだけど……」

桃子「……」シラー

P「どうしました周防さん」

桃子「ねえ、お兄ちゃん。なんか喋り方おかしくない?」

274: 矢橋P 25/05/15(木) 10:30:15 ID:nEhK

P「いや……これは営業用で……」

桃子「星梨花さんのことも星梨花さんって言ってたよね。何で箱崎さんなの?」


P「いや……」

P(意識はしていなかったが……どうも依頼主という先入観があるんだよ)

275: 矢橋P 25/05/15(木) 10:30:52 ID:nEhK

桃子「星梨花さんはどう思う?」

星梨花「……私も箱崎さんより星梨花さんの方がいいです」

P「んなっ」

昴「それじゃオレも永吉さんじゃなくて昴さんな。昴ってタメ口でもいいぜ」

星梨花「わ、私もそのタメ口でもいいです!」

P「えー……」



P(結局、みんな呼び捨てで統一ということになった……)
 

276: 矢橋P 25/05/15(木) 10:31:35 ID:nEhK

昴「ユニット名ね……」

星梨花「いきなり言われても難しいです……」



桃子「……そういえばこの事務所。何で地球プロって名前になったの?」

星梨花「桃子ちゃんは気になるんですか?」

桃子「ユニット名を事務所に合わせたところもあるからね。何か参考になるかなって」

277: 矢橋P 25/05/15(木) 10:32:38 ID:nEhK

P「ああ、それはアイドルという星を見守る地球のようになりたいって願いが込められてるらしい」

P(このみ姉が言ってたな)

昴「そういえば千鶴とまつりのユニット名も双月だったなー」

桃子「桃子達も宇宙に関係したものがいいかもね」
 

278: 矢橋P 25/05/15(木) 10:33:21 ID:nEhK

星梨花「真珠星(スピカ)はどうでしょう」

星梨花「乙女座の一等星の名前なんです」

昴「おっ、いいじゃん。名前の響きがなんかすっきりして好きだぜ」

桃子「桃子もそれでいいって思うよ」

星梨花「いいんですか!えへへ~」

P(真珠星か。奇しくも星梨花って名前にも星の文字がある。星梨花が自分の手で掴み取った輝きなんだな)




そうして星梨花を含めた三人のユニット『真珠星』が誕生した

279: 矢橋P 25/05/15(木) 19:23:08 ID:mcjF



P「真珠星のリーダーは昴にやってもらうけどいいか?」

昴「……まあ焼却法でオレになるよな。オレはリーダーって柄じゃないけど」

桃子「桃子も文句ないよ。今の桃子はまだまだだから」

星梨花「私も一度経験がある昴が適任だと思います」

280: 矢橋P 25/05/15(木) 19:23:46 ID:mcjF

昴「そっか。二人が納得してくれるならオレがリーダーでいかせてもらう」

昴「それじゃ、さっそくリーダー命令だ。リーダーはオレだけどセンターは星梨花か桃
子のどっちかにやってもらうぜ」




星梨花・桃子「ええっ!?」

281: 矢橋P 25/05/15(木) 19:25:30 ID:mcjF

P(4人(カルテット)ならともかく、3人(トリオ)や5人(クインテット)においてセンターのポジションの影響は大きい。一番目立つ所を譲るのか)

星梨花「それはリーダーの昴さんが……」


昴「もちろん理由はあるさ」

昴「オレは一度アイドル活動を停止していて今度で復帰するわけだけど……オレがセンターだったら真珠星は永吉昴の焼き直しでしか無いだろ?」

282: 矢橋P 25/05/15(木) 19:25:43 ID:mcjF

桃子「確かに。昴さんが復帰するのにただ復帰するのじゃ物足りないから桃子と星梨花さんの二人を引き連れて来た……って受け取る人は多いだろうね」

昴「オレが二人のサポートに回ることで、逆に真珠星はあの永吉昴をひっさげて来た……って解釈してくれる人もいると思うんだ」

昴「焼き直し感が全く出ないわけじゃないけど大分マシだろうぜ」

星梨花「そうなんですか…」

283: 矢橋P 25/05/15(木) 19:26:19 ID:mcjF

桃子「…それなら、桃子もサポートに回りたいから星梨花さんがセンターやってよ」

星梨花「私ですか!?私、そんな二人のセンターなんて……」



P「俺もそう思う」

星梨花「Pさん」

P「真珠星は星梨花から始まったユニットだ。そこはずらしてはいけない気がするんだ」

星梨花「でも…………不安です」

284: 矢橋P 25/05/15(木) 19:26:51 ID:mcjF

桃子「大丈夫だよ、そのために桃子達がいるの!」

昴「そうだな。押し付けたいわけじゃないんだ、星梨花が慣れないうちはオレもちゃんと補佐する。」

昴「星梨花、オレも合同をやった時一度だけセンターになったことあるけどセンターってすっげーんだぜ!なれるんだったら絶対なった方がいいって!」

桃子「桃子も目立つことを諦めたわけじゃないよ。ただユニットとして軸を決めなきゃいけないの。それが星梨花さんなの」

P「せっかくアイドルになったんだ。挑戦してみよう」

285: 矢橋P 25/05/15(木) 19:27:16 ID:mcjF




星梨花「……」

星梨花「わかりました。私、センターに挑戦してみます」

星梨花「たくさん昴さんと桃子さんも手を借りるかもしれませんがお願いします」ペコリ

 

286: 矢橋P 25/05/15(木) 19:27:57 ID:mcjF

ユニット名は決まった
リーダーもセンターも決まった
だが最後にもう一つ重要なことがある




P「デビューをどうするか……だな」

星梨花「デビューですか……」

287: 矢橋P 25/05/15(木) 19:29:10 ID:mcjF

桃子「物事は最初が肝心」

桃子「今のアイドル業界は動乱期、多種多様のたくさんのアイドルが居る。普通にデビューしても桃子達は埋もれちゃうってことだね」

昴「桃子はそういう情勢に詳しいなー。頼りになるぜ」

星梨花「ありがたいです!」

桃子「ま、まあね。桃子そういうの詳しいから」

桃子(亜利沙さんに何度も付き合わされたからね。後でお礼言わないと)

 

288: 矢橋P 25/05/15(木) 19:30:49 ID:mcjF


P「一応、藤堂さんから同じ事務所に所属している双月のライブに前座として出て紹介してもらうことは検討しているんだけど……」

桃子「それは昴さんのさっきの話しの理屈で考えるとあまり良くないね」

星梨花「どうしてですか?」


昴「新生ユニット真珠星としてじゃなく双月の妹分ユニットとしてでしか見られなくなるってことだな」

桃子「うん、まして双月のライブで発表するならなおさらね」

289: 矢橋P 25/05/15(木) 19:33:20 ID:mcjF
桃子「千鶴さんとまつりさんのユニット、双月はツナミが出来る前からずーっとアイドル活動していて根強いファンがいるの」

桃子「だからライブに来る人は歴戦の千鶴さんかまつりさんのファン。その人に突然私達を紹介しても『別にお前達を見にきたわけじゃない!』ってなるでしょ」


星梨花「そうですね……」

桃子「少なくともデビューはちゃんと自分達でした後で事務所の仲間として紹介されるならともかく、デビューまで手取り足取り面倒見てもらったら印象は良くないよね」

P「なるほどな……」

桃子「でもそうなると……どうしよう……別案があるわけじゃないし」

 

290: 矢橋P 25/05/15(木) 19:36:24 ID:mcjF

特に尖った経歴や強みが真珠星には無い分、今度の明暗を分けるデビュー発表はとても大事だ

だがツナミの恩恵を受けれない自分達は大きなハコを抑えることは出来ないし大々的に宣伝することも出来ない
ただデビューするだけならデビューしたという格好だけの細々としたことは出来るがそれでは認知すらしてもらえない
ツナミからバンバンアイドル情報が飛び交うこの世界にあって
『今は知名度が無いけど活動していくうちに認知してもらえるだろう』ではあまりにも情勢に対して鈍感だと言わざるを得ない
56プロの時はそれで相手にもされなかったのだから
 

291: 矢橋P 25/05/15(木) 19:37:55 ID:mcjF


昴「……よし!」

昴「なあ、みんな。オレ、アイドルに復帰したらやりたかったことあるんだ」


桃子「それってデビューに何か関係あるの?」

昴「大ありさ。でっけー舞台にオレ達が立てる手が一つだけあるんだ」


P「昴、それは本当か」

昴「ああ。一度しか使えない、オレが持ってるカードで一番のカードを切ればな」

星梨花「昴さんのカード?」

昴「ズバッと言えば……ツナミに殴り込みに行くんだよ」

P「はい?」




 

292: 矢橋P 25/05/15(木) 19:38:41 ID:mcjF
~説明中~




P「……」

桃子「……」

星梨花「そ、そんなことして大丈夫なんでしょうか……」

昴「わかんない。賭けだけどな」

P「とてもリスクがある手だな」

P(プロデューサーとしては止めるべきなんだろう。けど……)

P(だが俺としては……是非やってみたい!)

293: 矢橋P 25/05/15(木) 19:39:37 ID:mcjF

桃子「……桃子は大丈夫だと思う」

昴「いいのか?正直、桃子が一番反対するって思ってた」

桃子「カードを持ってるのは昴さんだけじゃないんだよ」

桃子(歩お姉ちゃん……)

294: 矢橋P 25/05/15(木) 19:40:25 ID:mcjF

P「やろう。なんかあったら俺が責任取る」

昴「プロデューサー、それは言いだしっぺのオレの台詞だぜ?」

桃子「桃子も顔が利くってこと忘れないでね」

星梨花「みんながその気ならやりましょう。何かあってもみんな同じです!」

昴「それじゃ決まりだな。”あれ”の日程だが……次の日時は約3週間後だな」

桃子「何とかなりそうな日時だね。それまでに桃子達もダンスと歌を仕上げる必要があるよ!」

P「よし、3週間後を目指して今日からダンスと歌のレッスンだ。デビューのことは黒月さんにも伝えておく」






 

295: 矢橋P 25/05/15(木) 21:10:49 ID:mcjF
数日後

レッスンルーム




ジュリア「よう、期待の新生ユニットさん」

星梨花「ジュリアさん!」

桃子「何ジュリアさん。桃子達レッスンで忙しいんだけど」


※昴と桃子もジュリアを含め地球プロの人達との自己紹介等は終えています

296: 矢橋P 25/05/15(木) 21:14:05 ID:mcjF

ジュリア「邪魔して悪いな。ちょっと伝えたいことがあってさ」

ジュリア「あたしのデビューが決まったんだ」


P「おお、本当にか」

P(あのジュリアがアイドルとして第一歩を……)ジーン

P(幼なじみを見送るような感慨を感じるな)


昴「そっか、よかったじゃん」

桃子「デビュー発表はどうするの?」

297: 矢橋P 25/05/15(木) 21:15:28 ID:mcjF

ジュリア「来週の双月のライブで紹介してもらうことになってる。元々アイドルの見習い兼二人をサポートするギタリストとして二人のステージに何度も参加していたからな」

星梨花「それなら双月のファンのみなさんも受け入れてくれそうですね」




ジュリア「あたしは時間があるし地道に行くつもりさ。でも真珠星はそうもいかないんだろ?」

P「ああ。あまりのんびり出来ない」

ジュリア「頑張れよP兄。ギタリストのエキストラが必要になったら言ってくれ、いつでも駆けつけるからさ」









 

298: 矢橋P 25/05/15(木) 21:16:04 ID:mcjF
更に数日後

パライソタウン 指令室







洗谷「コードネームB。コードネームPはどうなった」

このみ「箱崎星梨花のプロデュースに全力で取り組んでいます。辞める気は全く無いかと」

299: 矢橋P 25/05/15(木) 21:17:01 ID:mcjF

洗谷「こちらに戻って来るつもりは無いと?」

このみ「Pくんは組織を抜けたつもりも裏切ったつもりも無いという意思は確認済みですが」

洗谷「そんな意思は重要ではない。コードネームPはサイボーグ。危険度は低いとはいえ本来表舞台でうろうろしてよい人間ではない。失うのも惜しいしな」

洗谷「プロデュース業など他の人間にでもやらせておけばいいだろうに」

洗谷「やつは両親を失ってからツナミに復讐することしか生きる意味を見いだせない男だったはずだ。……いったい何があったのか」

このみ「……」

300: 矢橋P 25/05/15(木) 21:18:32 ID:mcjF

洗谷「少し放っておけば頭も冷えると思っていたが、駄目ならそろそろ手を打つか」



このみ「お言葉ですが洗谷隊長、彼がプロデュースしているユニットのデビューは半月後を予定しています。それまで待ってみてはいかがでしょうか」

洗谷「何故だ?コードネームB」


このみ「デビューに奔走しているPくんが突然消えたら大騒ぎになります。もみ消すのも厳しいでしょう」

このみ「彼女達がデビュー出来ればPくんの仕事もひと段落するでしょう?」

301: 矢橋P 25/05/15(木) 21:19:53 ID:mcjF

洗谷「何も成せぬまま無理やり辞めさせるより、最後にひと仕事させてから辞めさせた方が踏ん切りもつくというわけか」

洗谷「他ならぬお前の意見だコードネームB。そうするとしよう」

このみ「承諾していただき感謝します洗谷隊長」

このみ(何とかデビューまでは引き延ばしてあげたわよPくん。後はあなた次第よ)












 



302: 矢橋P 25/05/15(木) 22:51:44 ID:mcjF
半月後





首都圏 某歩行者天国


ここは都心の中でも大きな歩行者天国
その中で最も開けたところをなんと貸切にしている人物がいる

現状ツナミグループアイドル部門で唯一の所属アイドルMaihamanである

303: 矢橋P 25/05/15(木) 22:52:57 ID:mcjF

アイドルの主戦場であるアリーナやホールといった会場はもはやツナミの独占下であったが彼女はそういう会場を好まなかった
彼女曰く『小綺麗な場所はアタシには似合わなくてね。そういう会場はアタシ以外のアイドルに譲るよ』とのことらしい

そして彼女が定期的にライブをする場所はこういった路上を貸切って路上ライブをするのが常になった
第二次アイドルブームにあっても一握りしかいない"Aランク”のアイドルMaihaman
彼女の影響力は街の一角をライブ会場に変えてしまっていた
 

304: 矢橋P 25/05/15(木) 22:55:45 ID:mcjF
Maihaman臨時ライブ運営デスク




典子「観客はざっと一万人以上は居ますか、今回も大盛況ですね」


典子「歩さんはもうスタンバっています。阪奈の方は準備いいですか?」っ無線

典子「それでは始めます」っ無線



 

305: 矢橋P 25/05/15(木) 22:56:26 ID:mcjF

パン、パン、パーーン




\ワーーーーッ/




歩『みんなーーーっ!今日もアタシのワンマンライブに集まってくれてありがとう!今日も楽しんでくれると嬉しいな』




\ワーーーーッ/




歩『まず最初は……』




<ちょっと、君たち!


歩「ん?」

306: 矢橋P 25/05/15(木) 22:57:20 ID:mcjF


典子「あれは……特設ステージに誰かが上がってきた?」

※典子は少し離れたところで音響な全体の進行などを指示しています

典子「聞こえますか阪奈。直ちに不振人物を降ろしてください」っ無線

 

307: 矢橋P 25/05/15(木) 22:58:28 ID:mcjF



昴「よう、Maihaman!会いにきたぜ」



ザワザワ ザワザワ ザワザワ



歩「おや、昴じゃないか」



「Maihamanの知り合い?」 「あの格好、あの人もアイドルか?」 「前座のアイドルかな?」

308: 矢橋P 25/05/15(木) 22:59:16 ID:mcjF

???「おうおう!何だよお前は、ここは歩のステージだ。勝手に入ってきちゃダメだろ」


昴「君は?」

阪奈「オレか?オレは上守阪奈(かみもりはんな)。歩のボディガードだよ」

昴「そうか。専属のボディガードが居るなんて頼もしいな」

阪奈「へへーっ、そうだろ!………ってあれ?」

 

309: 矢橋P 25/05/15(木) 23:01:09 ID:mcjF

P(見た目は小学生の女の子にしか見えないがボディガードか)

P(おそらくツナミが手配したボディガードだろう。外見で騙されてはいけないな)

P(……苗字が上守?……まさか)
 

310: 矢橋P 25/05/15(木) 23:02:14 ID:mcjF

歩「阪奈、下がっていいよ。アタシも少し話しがしたい」

阪奈「えー?まあ歩がそう言うんならいいけどよ」スゴスゴ




歩「また会えて嬉しいけどアポは取ってないよね?」

昴「突然で悪かった。でもこうでもしないと会えないだろ?」

311: 矢橋P 25/05/15(木) 23:03:41 ID:mcjF

歩「アタシは堅苦しいことは嫌いだし気にはしないけどね。それで何の用かな」

歩「今アタシのオンステージの真っ最中だ。用があるなら手短にしてほしいんだけど」


昴「歩の願いを叶えにきたのさ」

歩「アタシの願い?」

昴「あんたから言ったんだぜ。『ステージの上でまた会いたい』ってな!」

312: 矢橋P 25/05/15(木) 23:04:35 ID:mcjF

歩「!!」

歩「あははは!確かにそうだね!これは一本取られたよ」っマイク




歩『ごめんみんな!彼女はアタシが呼んだアイドルなんだ!存分に歓迎してあげてほしい』




\ワァーーーーーーッ/

313: 矢橋P 25/05/15(木) 23:05:26 ID:mcjF



典子「歩さん!?これじゃ打ち合わせと全然違うじゃないですか」

典子「彼女達を引きずり降ろさないと……」

典子「!!」

314: 矢橋P 25/05/15(木) 23:06:06 ID:mcjF


昴「盛り上がっているところ悪いけどオレは一人じゃないんだ」

昴「星梨花、桃子、出てこいよ」




星梨花「あわわ……すごい人の数です……」

桃子「……久しぶりだね」
 

315: 矢橋P 25/05/15(木) 23:07:04 ID:mcjF

歩(桃子!)

歩「彼女達で全員かい?」


昴「そうだよ。今日はこの三人であんたに喧嘩売りに来たんだ」

歩「チャレンジャーってわけだね。いいよ、面白い」っマイク



歩『みんなーー!どうやら彼女達はアタシに挑戦状を叩き付けたチャレンジャーみたいだ。彼女達の勇気を讃えてねーーーっ』





\ワーーーーーーーーーーッ/

316: 矢橋P 25/05/15(木) 23:07:39 ID:mcjF





黒服「あいつら好き勝手にやってますね……。無理やり引きずり降ろしますか」

典子「……いえ。黙って歩さんと阪奈に任せましょう」

黒服「いいのですか?」

典子(……桃子さん)

317: 矢橋P 25/05/15(木) 23:09:45 ID:mcjF



歩「それじゃ今から15分の時間を与えるよ」

歩「その時間は好きに使っていい。歌ってもいいしダンスを披露してもいい。トークのみでも構わない」

歩「だけど忘れないでね、ここはアタシのステージだ。あくまでアタシの前座にふさわしい立ち回りをしてもらないと……ステージから出ていってもらうことになるよ」

昴「わかってるさ。このステージの主役はあんただ」

318: 矢橋P 25/05/15(木) 23:10:41 ID:mcjF

昴「みんな、準備しようぜ」

桃子「うん!」



星梨花「……」カタカタ

桃子「どうしたの星梨花さん」

星梨花「緊張して震えが止まらないんです……」

桃子「!」


桃子「お兄ちゃん、星梨花さんに付いてあげて」

桃子「準備は桃子達でやるから」

P「わかった」

319: 矢橋P 25/05/16(金) 00:04:11 ID:QtTz


星梨花「すみませんPさん」カタカタ

P(星梨花にとって初ステージ、それに圧倒的なアウェイだ。緊張するなという方が無理だろう)

P「星梨花、目を瞑って」

星梨花「こうですか?」パチン

P「そのままな」

320: 矢橋P 25/05/16(金) 00:04:33 ID:QtTz
ギュッ



星梨花(!!)

星梨花(Pさんが手を握ってくれて……)

P「大丈夫。大丈夫。大丈夫」

P(俺が組織の命がけの任務で震えてた時にこのみ姉がしてくれたおまじないだ)

P(俺が出来ることなんてこれくらいだから)

321: 矢橋P 25/05/16(金) 00:05:04 ID:QtTz
P「どうだ、少しはましになったろ」

星梨花「はい!ありがとうございますプロデューサーさん!」








桃子「これでよし……と」

歩(音源はラジカセか。昔を思い出すよ)

歩(そうか。あの時も桃子がいたんだったね)

322: 矢橋P 25/05/16(金) 00:05:45 ID:QtTz

昴「それじゃ始めるぜ」

桃子「星梨花さんお願い」

星梨花「はい。真珠星、始まります!」







ジャ、ジャーーーン



「この音楽は……」

「知ってる。確か……」

「思い出した!7年前のあの時の!」

323: 矢橋P 25/05/16(金) 00:09:47 ID:QtTz

歩(この曲は7年前の配信でデウエスとの勝負で歌って踊った曲!)

歩(なるほど、アタシのファンであのPVを見てない人はいない)

歩(それにあの曲とダンスは亜利沙と桃子に監修してもらったんだ。桃子ならこの曲を隅から隅まで知ってるだろうね)

歩(今ここに集まってる観客は全部アタシのファン。ファンも困惑するような場違いな曲を歌われた場合はどうしょうかと思ったけど余計な心配だったか)
 

324: 矢橋P 25/05/16(金) 00:10:48 ID:QtTz
星梨花・昴・桃子「~~~♪」





「俺、今のところ好きなんだよな」

「この曲を三人で表現するとこうなるのかー!」



歩(これならアタシの前座として文句付けようないね。ただ何も考えず乗り込んで来たわけじゃない……か)

325: 矢橋P 25/05/16(金) 00:11:19 ID:QtTz
\ドン!/





星梨花「ありがとうございました!」





\ワーーーーッ/  \ワーーーーッ/ \ワーーーーッ/





「よかったぞお前らーー」

「どこに所属しているアイドルなんだ?教えてくれーー」

326: 矢橋P 25/05/16(金) 00:11:49 ID:QtTz

歩「見事だったね」パチパチ

昴「Aランクのアイドルに褒められるなんてな」

歩「ふふ。特にセンターの君」

星梨花「私ですか?」


歩「君は人に愛される素質がある。アイドルとして大事な素質だよ」

星梨花「私に……そんな素質があるのでしょうか」

327: 矢橋P 25/05/16(金) 00:12:39 ID:QtTz

\ワーーーッ/





歩「……おっと。ファンがアタシを呼んでいる。次はアタシの番だ」








そして歩さんは自分のパフォーマンスを披露していきました
歩さんはさすがで……ソロなのに私達よりも数段上のパフォーマンスで観客を盛り上げてます
やっぱり現役のアイドルは凄いんですね……

328: 矢橋P 25/05/16(金) 00:13:12 ID:QtTz

歩『みんなーーーっ。アタシのダンス、どうだったーーーっ!』




\最高ーー!/





歩『ありがとう。でも今日はいつもより良いパフォーマンスが出来たと思う』

歩『それはアタシの前にパフォーマンスをしてくれた彼女達のおかげだよ』

329: 矢橋P 25/05/16(金) 00:13:58 ID:QtTz

ザワザワ ザワザワ ザワザワ




歩『みんなも知ってるとは思うけどあの曲はアタシの始まりの曲だ。それを後輩に踊ってもらって……身が引き締まる思いだったよ』

歩『ねえ君の名前、教えてくれないかな』




阪奈「ほら、予備のマイクだぜ」っマイク

星梨花「は、はい」っマイク

330: 矢橋P 25/05/16(金) 00:14:45 ID:QtTz

星梨花『みなさん、お騒がせしてしまってすみません』




「別にいいよー」  「かわいいー」




星梨花『私は地球プロ所属のユニット、真珠星の箱崎星梨花です』






「地球プロ?」 「箱崎星梨花ちゃんね」 「あれ?調べても出てこない……」

331: 矢橋P 25/05/16(金) 00:15:10 ID:QtTz

星梨花『メンバーは私の他に永吉昴さんに周防桃子さんの三人です』


星梨花『私達は今日デビューしました。どうかよろしくお願いします!』









\いいぞー!/  \アイドルコードを教えてくれーー!/

332: 矢橋P 25/05/16(金) 00:15:56 ID:QtTz

歩「昴、君たちアイドルコードは無いんだろ?」

昴「そうだよ。ツナミ様の恩恵なんてまっぴらごめんだからな」

歩「はは、君らしいね」っマイク






歩『おやー。どうも彼女らはアイドルコードは持ってないみたいなんだ』




「えーっ。アイドルコード無いの?」

「変なのー」

333: 矢橋P 25/05/16(金) 00:17:15 ID:QtTz

歩『まあまあ。そこでここにいるみんなだけでも”真珠星”の名前を覚えて帰ってもらおうかな』

歩『アタシに挑戦状を叩き付けるアイドルユニットだ。覚えて損は無いってアタシが保障するよ!』






「Maihamanがそこまで言うなら……」

「パフォーマンス良かったしなぁ」

「よーし。今日あったことはネットで拡散するぞ」










 

334: 矢橋P 25/05/16(金) 00:18:18 ID:QtTz
そして

ライブ終了







昴「宣伝までしてもらってありがとな」

歩「いいって。昴はアイドルとしてはアタシより先輩だし」


歩「それに桃子。しばらくぶりだったね」

桃子「歩お姉ちゃんもね。有名になりすぎてもう会えないと思っていたけど」

335: 矢橋P 25/05/16(金) 00:18:51 ID:QtTz

桃子「大分……差、付いちゃったね」

歩「何言ってるのさ。あの時、ダンスを踊ることしか出来ないアタシにアイドルを教えてくれたのは桃子だよ」

桃子「え……」

歩「桃子はアタシのアイドルの師匠だ、今でもそう思ってる。だから今日のパフォーマンス、いつもより力入っちゃったよ」


桃子「……そう」

桃子「歩お姉ちゃんも有名になったからって天狗になっちゃ駄目だよ」

桃子「そんなことしてたら桃子達が追い抜いちゃうんだから!」


歩「それくらいが桃子らしいよ」

336: 矢橋P 25/05/16(金) 05:34:03 ID:QtTz

P「Maihamanさん。本日は申し訳ございませんでした」

歩「おや、君が彼女達のプロデューサーかな」

典子「全くです。二度は無いですからね」

P「はい」ペコリ
 

337: 矢橋P 25/05/16(金) 05:34:42 ID:QtTz

歩「アタシは構わないけど……ツナミとしての体裁もあるからね」

歩「次アタシのステージに上がる時はアタシと同じランクに上がってから。それが分かればこれ以上言及はしないよ」

P「わかりました」

歩「それと忠告だ。ツナミを快く思わない気持ちは分からないでもないけど、早いうちにアイドルランクを習得しておいた方がいいよ」

歩「アイドルランクを得るためにはアイドルコードを得なきゃいけないけど」

P「どうしてですか?」

歩「まだアタシの口からは言えない。けどいずれ公表されるさ」







 

338: 矢橋P 25/05/16(金) 05:35:49 ID:QtTz


昴「何事も無く無事に終われたな」

P「本当だな」ゲッソリ


P「星梨花と桃子は初のステージどうだった」

星梨花「たくさんの人が見てくれて良かったんですけど……」

桃子「桃子達のステージではないから満足は出来ないよね」

桃子「でもこれが桃子達の現状。誰かの力を借りないとステージの上に立てないってこと」

昴「だけどよ……いつかオレ達の手でステージに立とうぜ!」

星梨花「そうですね!」
 

339: 矢橋P 25/05/16(金) 05:36:22 ID:QtTz

P(初ステージは結果としてはMaihamanの前座になってしまったかもしれない)

P(でもその悔しさをバネに変えていけるはずだ)













典子「歩さん、今回は反省ですよ」

歩「ごめん典子ちゃん。でもよく典子ちゃんも止めなかったね」

340: 矢橋P 25/05/16(金) 05:37:33 ID:QtTz

典子「あのユニットメンバーに桃子さんがいましたから」


典子「最近育さんからメールが来てました。桃子ちゃんと喧嘩したー?帰ってこないー?って」

歩「本当に!?桃子のこと朱里にも伝えた方がいいのかな」

典子「いえ、そっとしておいた方がよさそうですよ。あれは彼女達の問題ですから」
 

341: 矢橋P 25/05/16(金) 05:39:53 ID:QtTz




阪奈「あっ、やった!」

阪奈「歩ー、典子ー。今日は"母さん”が帰ってくるんだって!」

歩「阪奈良かったね。最近、忙しそうだからなぁ」


典子(『今日帰って来れない』が普通なのに)

典子(帰って来る日の方が珍しいなんて…………甲斐さん)

342: 矢橋P 25/05/16(金) 05:40:53 ID:QtTz
その日の夜

とある高級マンション







甲斐(最近ジオット会長は一週間に一回は日本支部に状況確認の電話をかけてくるようになりましたね)

甲斐(前は一ヶ月に一回でしたが……何かを察しているのでしょうか)

甲斐(アイドル業界の変化に敏感になっている?しかしツナミが支配した業界にこれ以上何が……)

343: 矢橋P 25/05/16(金) 05:41:41 ID:QtTz

阪奈「なーなー、母さん。ごはん何にする?」

甲斐「あ……」ハッ

甲斐「阪奈の好きなものでいいですよ」



阪奈「お仕事……そんなに忙しいの?」

甲斐(いけない。この子を不安がらせてしまいましたね)

344: 矢橋P 25/05/16(金) 05:43:01 ID:QtTz

甲斐「私は大丈夫です。阪奈は歩のボディガードうまくやれてますか?」


阪奈「おう!あ、でも今日とんだハプニングがあって」

甲斐「そういえば今日は路上ライブの日でしたね」

阪奈「デビューしたばかりのユニットが歩にけんか売ってきたんだぜ?めずしいよな」

345: 矢橋P 25/05/16(金) 05:43:47 ID:QtTz

甲斐「まさかツナミグループに喧嘩を売るようなことをする者が……」

甲斐「!」ハッ


阪奈「だろ。だから歩もうれしかったみたいでさ……」

甲斐「阪奈、そのことを詳しく話しなさい」

阪奈「え?う、うん」









第三章    終わり

346: 矢橋P 25/05/16(金) 05:47:58 ID:QtTz
本家パワポケでは阪奈と甲斐が一緒に居るシーンは一度もありませんでした(阪奈が登場した時には甲斐は退場していた)
このSSでは甲斐が生存している世界観なのでこの絡みを書けただけで感無量です

願わくば母親をしている甲斐が本編でも見たかった

347: 矢橋P 25/05/16(金) 05:52:41 ID:QtTz

周防桃子   真珠星のブレイン

家出をした理由となった大けんかの原因は大親友の中谷育に危ないからヒーロー活動に参加するのはもう辞めた方がいいと言われ反発したからであった
育も桃子の身を案じてのことで、桃子としても自分がヒーロー活動として出来ることに薄々は限界を感じていたが意地もあり
それゆえに素直に受け止めることが出来ず後に引けなくなったようである

元々アイドルが好きだったのと亜利沙に仕込まれたのでアイドルについての知識は真珠星の中でも一番である
本人はそれをうまく生かしながら秘密を共有したPをアイドル活動でサポートしようと考えている ●

348: 矢橋P 25/05/16(金) 05:54:18 ID:QtTz

舞浜歩   ツナミのトップアイドル

ツナミグループ所属のアイドル。芸名はMaihaman
ツナミグループがアイドル業界を牛耳ったということは彼女は限りなくトップアイドルに近い存在でもあるが
本人はそんな気は全くなく今まで通り振る舞っている
ダンスメインは相変わらずで歌メインのライブよりアドリブ上等の突発的なライブを好む
自分の地位を利用してツナミのアイドル業界への干渉を食い止めていたが一年前のツナミの暴走は彼女ですらも止めることは出来なかった ●

349: 矢橋P 25/05/16(金) 05:55:32 ID:QtTz

田村典子   歩のマネージャー

Maihamanのマネージャー。彼女との付き合いもそろそろ長い
形式ばったことを嫌う歩に大分手を焼いている様子
定期的に行われる路上ライブもあの規模を事故なく運営するのにはかなりの難易度で
そこはツナミの力を惜しみなく使っている
そういうこともあってか歩は彼女に頭が上がらない

上守甲斐が忙しく家に帰らない時は阪奈を自宅に呼んで世話をしている
阪奈も彼女の料理が大好き ●

350: 矢橋P 25/05/16(金) 05:57:06 ID:QtTz

上守阪奈   歩のボディガード

歩のボディガードを務める女の子。今後のことを考え甲斐が要請させた
腕っぷしはまあまあらしい。見た目も精神年齢も小学生に見えるが本当は…………


甲斐の実の子ではなく養子である(そもそも甲斐は結婚していない)
母さんはもちろんのこと歩や典子のことも大好き
一人称がオレなのはボディガードが女の子だと舐められると思っているからで
甲斐と二人きりの時は私になる ●

351: 矢橋P 25/05/16(金) 06:00:04 ID:QtTz

上守甲斐   ツナミ日本支部代表

日本におけるツナミグループのトップ
経済人の括りでいえば日本で一番凄い人ということになる
ツナミグループがアイドル業界を牛耳ってからはアイドル業界総括代表という地位も得てアイドル業界の動きを制御する役割も増えた
最近はツナミグループ最高幹部という地位に居ながらアイドル業界総括者という仕事に全力を尽くしているようだが……


とある理由で生まれた阪奈を放っておけず養子にしたが多忙を極め、あまり構えてあげれてないようである

352: 矢橋P 25/05/16(金) 06:01:11 ID:QtTz
●付け忘れたのであげ直し


上守甲斐   ツナミ日本支部代表

日本におけるツナミグループのトップ
経済人の括りでいえば日本で一番凄い人ということになる
ツナミグループがアイドル業界を牛耳ってからはアイドル業界総括代表という地位も得てアイドル業界の動きを制御する役割も増えた
最近はツナミグループ最高幹部という地位に居ながらアイドル業界総括者という仕事に全力を尽くしているようだが……

とある理由で生まれた阪奈を放っておけず、養子にしたが多忙を極め、あまり構えてあげれないようである ●

356: 矢橋P 25/05/16(金) 15:44:14 ID:QtTz

洗谷「コードネームB。事務員の立場を使いPを速やかに退職させ……」





局長「そのことなんだがね洗谷くん」

洗谷「局長?突然どうしたのですか」

局長「Pにはこのままアイドルのプロデュースを続けさせたまえ」


このみ「!」

このみ(どういうことかしら?)

357: 矢橋P 25/05/16(金) 15:44:51 ID:QtTz

洗谷「その理由は何故ですか、局長」

局長「日本政府の直々の命令だ。我々の意思など関係ない」

洗谷「政府が?」

局長「どうもツナミはそう遠くないうちに巨大なアイドルの大会を開くらしい。そしてその大会の裏で何か邪なことを企んでいるとのことだ」

358: 矢橋P 25/05/16(金) 15:45:30 ID:QtTz

洗谷「確かな情報なのですか?」

局長「日本政府に何者かが匿名でその情報を流したそうだ。政府専門のネットワークをわざわざハッキングまでしてな」

このみ「!!!」

洗谷「なっ!!」



局長「政府専門のネットワークをハッキング出来たのなら国家機密を覗き放題。それをしないで情報だけ流した。単なるいたずらではないだろうな」

洗谷「政府の機密にハッキング出来る力を持ち、かつツナミの裏の情報も知っている。……一体何者だ?」

局長「余計な詮索はするな!奴らがその気になったら我々どころか政府までもが簡単に消し飛ぶ」
 

359: 矢橋P 25/05/16(金) 15:46:44 ID:QtTz

洗谷「……それでPにはその大会に潜入してもらうと」

局長「そうだ。ツナミの息がかかったアイドルを送り込んでも意味ないからな」

局長「元々コードネームJを送り込んでいたが……そんな軽い事態ではないようだ」


洗谷「……わかりました。Pには大会に出場出来るようプロデュースを続けさせます」
 

360: 矢橋P 25/05/16(金) 15:47:06 ID:QtTz

このみ(……)

このみ(Pくん。あなたのやっていること、あなたが考えているより大きなことになるかもしれないわよ)









 

361: 矢橋P 25/05/16(金) 15:47:50 ID:QtTz

ツナミグループ日本総支部本社前






P(あれから数日経った)

P(真珠星のデビューとなったMaihamanの路上ライブ。SNS上の反応を確認したが少し話題になっていてほっとした)

P(強引なデビューだとは思うがどっとっぷNetに加入してない以上、こうでもしないと話題にすらならないからな)

P(そして俺は今、ツナミグループの日本総支部本社の前にいる)

362: 矢橋P 25/05/16(金) 15:48:47 ID:QtTz



~回想~



黒月「確かにデビューの件はお前に任せると言ったが……あんなことするとはな」

黒月「ったく。大物か怖いもの知らずか、計りかねる新入社員だ」


P「やっては駄目なことでしたか」

黒月「あの後、行く先々からの反響が声がすごくてな。主に否定寄りだが」

黒月「『なんてことしてくれた』『ツナミを怒らせてどうする』とかそんなのだ」

363: 矢橋P 25/05/16(金) 15:49:32 ID:QtTz

P「申し訳ございません」

黒月「まあ上の人間の反応なんてそんなものだ」

黒月「これは俺個人の感想だが……奴らに1杯食わせたみたいで気分がいい。良くやった」

P「代表!」



黒月「だが、やりたいこと好きにやって後は知らんぷり……ってのはガキがすることだ。お前も社会人なら分かるな?」

P「はい!」

黒月「即刻先方に謝りに行け。相手が誰であろうとも業界のマナーは守れよ」





 

364: 矢橋P 25/05/16(金) 15:50:11 ID:QtTz


~回想終了~



P「失礼なことをしたら謝りに行く。当たり前のことだ、たとえ相手が憎きツナミでも」

P「分かってはいるんだけど……気に入らない」

365: 矢橋P 25/05/16(金) 15:50:51 ID:QtTz


P(しかしその旨をツナミに伝えたら本社に来るようにと返信がきた)

P(てっきり軽くあしらわれると思ったんだが)


P(……今から行くところはツナミグループの懐。俺は無事に出られるのだろうか)

P(一応、このみ姉にはもし、俺が戻ってこなかったら……という話しはしておいた)

P(しかし敵の本丸に潜り込めるまたとないチャンスでもある。行くか!)




 

366: 矢橋P 25/05/16(金) 15:51:32 ID:QtTz

ツナミグループ本社 1階受付





P「私、このメールでこちらの方に来るように言われた者ですが……」

受付嬢「地球プロダクションのP様ですね。お待ちしておりました」

受付嬢「貴方が来たらこちらに案内するよう言われております。そこの案内人に従ってください」







 

367: 矢橋P 25/05/16(金) 15:52:48 ID:QtTz

ツナミグループ本社 廊下




黒服「……」スタスタ

P(案内人に連れられて俺はツナミの本社の中を移動しているが……)スタスタ

P(随分建物の奥に移動するんだな)スタスタ






そして



黒服「この部屋でお待ちください」

P「はい」

P(やっとか。こんな奥まで通されたが……)


ガチャ

368: 矢橋P 25/05/16(金) 15:54:21 ID:QtTz

P(通された部屋は8畳ぐらいの簡素で小さな部屋だ)

P(中にはテーブルが一つ、パイプ椅子が四つと簡素なもの。ゴミ箱とメモ用紙くらいは置かれているが)

P(随分歩かされて連れられた部屋はこんなところなのか)


P(部屋の扉は二つ、おそらく自分の入って来た扉とは別の扉から相手方が来るのだろうが)


P(一番気になるのは部屋の壁の材質だ。……普通じゃないな)コンコン







ガチャ

369: 矢橋P 25/05/16(金) 15:55:29 ID:QtTz

P「あ、失礼……」


そこまで言ってPの動きと思考は完全に止まる
向こうの扉から出て来たのは





甲斐「どうも、ツナミグループアイドル部門最高責任者及びアイドル業界総括会長を務めます上守甲斐です」


P(上守甲斐……だと!?)

370: 矢橋P 25/05/16(金) 17:56:22 ID:QtTz

この時Pは心の底からドス黒い感情が湧き上がるのを抑えることが出来ないでいた

上守甲斐。日本におけるツナミグループのトップ
Pが嫌いな人間のTOP5入りは間違いないだろう
そんな雲の上の人物と狭い部屋で二人きり?こんな機会は今後あり得るのか?
自分は所詮組織の末端だ、自分一人が暴れたところであのツナミグループに与えれる影響なんてたかが知れている
だがここでもし、万が一でも上守甲斐と刺し違えれば大金星どころではない
たとえ殺すことが出来なくてもいい。重症を負わすだけでも充分
そのためにここで自分が死ぬことになるとしてもだ
そこまでの思考が一瞬で浮かび上がった

371: 矢橋P 25/05/16(金) 17:56:56 ID:QtTz
……ものの実行には移れなかった


怖じ気ついたわけではない。一カ月前のPなら直ぐ実行しただろう
何かが胸に突っかかるのだ
そんな自分にP自身、動揺していた

372: 矢橋P 25/05/16(金) 17:58:07 ID:QtTz

甲斐「おや、この部屋の壁が気になるのですか?」



そんな様子のPを彼女はどう思っているのか
甲斐はこんな質問を投げかけてきた




P「い、いえ……」

甲斐「この部屋は特別ですよ。この部屋の中では電波は遮断されますし超能力の影響も受けません。もちろん防音機能も最高峰です」

甲斐「二人きりで話しをするには最高の部屋でしょう?」

P「!!」

373: 矢橋P 25/05/16(金) 17:59:08 ID:QtTz

甲斐(この者がコードネームPですか、若いですね。考えていることが表情でまるわかりのようでは諜報員失格ですよ)


P(落ち着け。上守甲斐には俺が今どんな気持ちを抱いているかなんて筒抜けだ)

P(…………)

P(俺は……なんのためにここに来たんだ。今の俺は構成員じゃない。プロデューサーだろうが)



P「機密保持のための部屋でしたか。対面する相手が他ならぬ貴方ではそのくらいのセキュリティは当然です」

P「ツナミグループ最高幹部の貴方に本日はわざわざ時間を取っていただきありがとうございます」

374: 矢橋P 25/05/16(金) 17:59:47 ID:QtTz

甲斐(冷静になりましたか。若いが愚かなわけではないようです)

甲斐(ひとまず話しは出来そうですね)




甲斐「恐縮する必要は無いですよ。今の私はツナミグループ日本代表ではなくアイドル業界の総括者としてここにいるつもりです」

P「……そうですか」
 

375: 矢橋P 25/05/16(金) 18:00:24 ID:QtTz

P「この前の路上ライブで事前連絡もなしに乱入したこと。その非礼をお詫びに来ました」

甲斐「そうですね。このようなことは二度と起こさないように」

P「申し訳ございません」




甲斐「勘違いしては困ります。実は貴方のやり方自体は好意的に捉えているのですよ?」

P「そうなのですか」

376: 矢橋P 25/05/16(金) 18:01:33 ID:QtTz

甲斐「正直、私は今のアイドル業界を憂いています」

甲斐「アイドルブームという土壌と我々ツナミが会場設備を整えているおかげでツナミにさえ媚びを売れば安泰な商売だと思っている事務所が多い」

甲斐「そうでない者も居るには居ますが」

P「……」


甲斐「これではアイドル業界は堕落する一方、ですので貴方方みたいな他のアイドルに喧嘩を売ってまで盛り上げようとする姿勢はとても結構」

甲斐「他のアイドルグループも油断してはいけないと引き締まりますしね」

377: 矢橋P 25/05/16(金) 18:02:05 ID:QtTz

P「……認めて下さりありがとうございます」

甲斐「ですが、貴方方のアイドルランクを設定すればFランク相当。FランクがAランクに喧嘩を売るのは道理に反しているのだと申しているのです」


P「Fランク……」

378: 矢橋P 25/05/16(金) 18:02:47 ID:QtTz

甲斐「ですからこちらで貴方方に相応しい相手を見繕って来ました」

甲斐「ヤスベニプロ所属、『黒羽九羽』。貴方方の相手はEランクの彼女が適任でしょう」


P「そのアイドルと対決しろということですか」

甲斐「今度は私の方から貴方方への挑戦状というわけです。貴方のプロデュースする真珠星とヤスベニプロの黒羽九羽。さて勝つのはどちらでしょうか」

甲斐「ヤスベニプロ側からは既に承諾をもらっています。まさか自分からは仕掛けるくせに仕掛けられる側にはなりたくないとは言わないでしょう?」

379: 矢橋P 25/05/16(金) 18:03:15 ID:QtTz


P「……」

P「受けて立ちましょう。甲斐代表の言う通り私たち真珠星は勝負から逃げるようなことはしません」

甲斐「よろしい。会場はこちらでセッティングします」

甲斐「日時は未定ですが来月のいずれかにはやる頭でいてください。ただでステージを使え、勝てば宣伝にもなる。貴方方にもメリットはちゃんとあるはずです」

P「了解いたしました」

380: 矢橋P 25/05/16(金) 18:04:08 ID:QtTz

甲斐「詳しい内容は後ほど……そうだ」

甲斐「私の連絡先を貴方にお伝えしましょう」

P「甲斐代表の連絡先……ですか!?」


甲斐「そこまで驚くことはないですよ。私が保有している複数ある仕事用の端末の一つの連絡先ですから」

P「はぁ……」

甲斐「それにあなたからの返信を除く連絡は一切受けません。あくまで私からの連絡を直に受け取るためだけの連絡先だと思ってください」

381: 矢橋P 25/05/16(金) 18:04:44 ID:QtTz

P「それなら……」

P(良いわけないだろ!ツナミグループ最高幹部と直接やり取りだって!?)

P(だが、サブ端末だとしても知っておくことは悪くない。いずれ何かの役に立つかもしれないからな)

P「是非お願いいたします」













382: 矢橋P 25/05/16(金) 18:05:44 ID:QtTz








そして




甲斐「……」

黒服「代表、どうでしたか」

383: 矢橋P 25/05/16(金) 18:06:30 ID:QtTz

甲斐「心配は無用だと申していたでしょう」

黒服「しかしあのような、どこの輩か分からない者と二人きりというのは……」


甲斐「彼が少しでも非礼のある行動をしていたならば……私の手でその場で始末してますよ」

黒服「……甲斐様の実力は存じてはいます」

384: 矢橋P 25/05/16(金) 18:07:15 ID:QtTz

甲斐「直に会ってみましたが予想以上の収穫はありました」

甲斐「彼は話しが出来る人間です。後は実力が如何ばかりなのか」

甲斐「この試練を乗り越えれるようなら……認めてあげましょう」

黒服(認める?あの何の変哲もないプロデューサーくずれを?)

黒服(甲斐様はいったい何を考えているのか)



甲斐(さて、これで布石を一つを打ちました)

甲斐(好き勝手に動くのはあなただけではありませんよ……ジオット)









 

385: 矢橋P 25/05/16(金) 18:08:41 ID:QtTz


地球プロ 事務所




P「ということになったんだが……」


星梨花「……」ポカーン

昴「……」シラー

桃子「……」ジトー


P(みんなの反応が痛い)

386: 矢橋P 25/05/16(金) 18:09:55 ID:QtTz

星梨花「あの上守甲斐さんからそのような話しが出たんですか」

桃子「でもそれって、要するに桃子達はEランクアイドルのいい当て馬にされたってことだよね」


昴「いや、これ以上面倒ごと起こされても困るから餌を与えておこうってやつかもな」

昴「ほらよく言うじゃん。凶暴な野犬は下手に抑えつけるより餌を与えてコントロールした方がいいってな」

星梨花「私達が野犬ですか?」

昴「あ、例えだよ例え。まあオレはあのツナミから好戦的な野犬と思われてるならそれはそれで面白いって思うけどな」
 

387: 矢橋P 25/05/16(金) 21:12:15 ID:QtTz

P(桃子のヤスベニプロのアイドルを引き立てる当て馬にされてる、って意見も分かるし昴の餌を与えてコントロールしようって意見も分かる)

P(だけど直接会って話しをした俺には分かる。甲斐がこんな提案をしたのはもっと別な目的があるように感じた)

P(それが具体的になんなのかは分からないが)
 

388: 矢橋P 25/05/16(金) 21:15:04 ID:QtTz

P「俺も何か裏があるとは思ったけど断れる状況ではなかったんだ」



桃子「……あの上守甲斐さんから直々に言われたら断れないだろうね」

昴「先に仕掛けたのはこっちってのも正論だしな」

星梨花「Pさんは悪くないと思います」
 

389: 矢橋P 25/05/16(金) 21:16:31 ID:QtTz


桃子「黒羽九羽(くろばここは)さんね……」

P「知っているのか桃子」

桃子「Eランクの中で一番勢いがあってDランクに上がるのも時間の問題って言われてるアイドルだね」

桃子「歌やダンスよりビジュアルを売りにしているアイドルで特徴としては非常に好戦的なところかな」

桃子「挑発的な言動で他の事務所のアイドルに勝負を挑んでは何度も勝利してるって聞くよ」
 

390: 矢橋P 25/05/16(金) 21:17:07 ID:QtTz

昴「すっげー。桃子はアイドルのこと詳しいよな」

P「相手側は既に了承してると聞いて、よく相手も受けたな って思っていたが……」

P「なるほどそれくらい好戦的なら俺達の勝負を即決で決めたのも頷けるな」

桃子「それと黒羽九羽さんは……」


星梨花「あのー」オズオズ

P「何か気になることがあるのか星梨花」

星梨花「アイドルランクってなんでしょう?」

391: 矢橋P 25/05/16(金) 21:19:07 ID:QtTz

桃子「お兄ちゃん分かる?」

P「実はアイドル業界のことは勉強中で……」

昴「アイドルランクの制度はオレが活動停止した後から出来たから詳しくないんだよな」


桃子「もー、しょうがないんだから。桃子が説明してあげる」
 

392: 矢橋P 25/05/16(金) 21:22:55 ID:QtTz



桃子「アイドルランクはツナミグループがアイドル業界に参入して数年経った後だから......5~6年ぐらい前に出来た仕組みだよ」

桃子「ツナミグループが提言したシステムで出来たばかりの時は定着しなかったんだけど、ツナミの影響力が増えるうちにだんだん浸透していって」

桃子「ツナミがアイドル業界を支配してからはもう義務みたいになったね」

桃子「はっきり言えばアイドルをその力量に応じてランクを与えようってシステム。今はアイドルコードと紐付けになっているよ」

桃子「特徴的なのはランクに必要な条件みたいなものは特に明記されてないこと。ライブの動員数だとかCDの売り上げだとかね」

桃子「アイドル業界運営委員会の査定によって勝手に決められるみたい」

393: 矢橋P 25/05/16(金) 21:24:28 ID:QtTz

昴「アイドル業界運営委員会って言っても中身はツナミだろ?ツナミが勝手に作って勝手に決めてんじゃねーか」

桃子「まあそうなるけど……一般のファンにも好評だね。アイドルの力量がひと目で分かるから」

P「俺達としては勝手に決めやがって……って感じだけどファンからしたら良いことなんだな」




桃子「次にランクの振り分けの説明をするよ」

桃子「一番下がFランク。アイドルになったばかりの新人はまずFランクになるの」

星梨花「だから私達はFランク相当なんですね」

394: 矢橋P 25/05/16(金) 21:30:32 ID:QtTz

桃子「そう。そして順当に活動していればEランクになる。ビギナーからひと皮剥けたアイドルってところかな」

桃子「アイドル活動を続けれさえすればEランクに上がるのは難しくないみたい」

桃子「そして次がDランク。EからDに上がるには何かしら実績が必要でアイドル活動の最初の壁がこのDランクの壁だと言われているね」

昴「……なるほど。そりゃ黒羽九羽もオレ達と対決したいよな。EからDに上がる実績が欲しくて欲しくてたまらないわけだ」

395: 矢橋P 25/05/16(金) 21:31:38 ID:QtTz


桃子「Dランクになればいっぱしのアイドルって感じ」

桃子「次がCランク。ここまで来れば普通の人にも名前を覚えてもらえるかな。最近有名なCランクアイドルだと去年デビューしたユニット”花咲夜”あたりは有名だね」

桃子「次がBランク。ここまで来たら売れっ子アイドルを名乗ってもいいし、アイドルとして大成出来たと思ってもいいね。まつりさんや千鶴さんはこのBランクだね」

星梨花「千鶴さんとまつりさんの二人はBランクなんですね」パァァ

396: 矢橋P 25/05/16(金) 21:32:35 ID:QtTz

昴「あれ?千鶴とまつりはツナミの傘下に入ってないからアイドルコード持って無いんだろ。何でアイドルランクを持っているんだ?」

桃子「アイドルランクを実装した当時から既に活動していたアイドルには暫定的にアイドルランクを付けたの」

桃子「同じ理由でツナミの傘下じゃないのにアイドルランクを持っているグループにTSV(トライスタービジョン)があるよ。彼女達もBランク」


P「そうか……双月もTSVも未だにツナミの手を借りずアイドルを続けてて凄いよな」

桃子「ツナミグループがアイドル業界を支配するようになってから昔のアイドル達はだいぶ引退したからね……」

397: 矢橋P 25/05/16(金) 21:33:48 ID:QtTz

桃子「そして最後にAランク。Bランクはアイドルを語れば絶対名前が出てくるアイドルってところだけど、Aランクはまさに"アイドルを知らない人でも知ってるアイドル”だよ」

昴「プロ野球で例えるならDランクは二軍選手、Cランクは一軍選手、Bランクで主力選手ならAランクは超有名メジャーリーガーってところか」

桃子「Aランクはほんの一握り。こないだ共演した歩お姉ちゃんがAランクだよ」



P「そうだったのか……」

P(甲斐が言ったFランクがAランクに挑むのはおかしいってのは間違いでもなんでもないわけか)

398: 矢橋P 25/05/16(金) 21:36:10 ID:QtTz

星梨花「私達も頑張ってアイドルランク上げないとですね」フンス

昴「あー……。オレ達はアイドルコードが無いからツナミ認定のアイドルじゃない。だからアイドルランクも与えてもらえないんだ」

※アイドルコードとは簡単にいえばツナミから与えられるアイドルの番号です


星梨花「そうなんですか」ションボリ

桃子「あ、でも千鶴さんやまつりさんみたいに桃子達が人気になったらもらえる可能性もなくはないよ」

昴「そうだな。アイドルランクなんか関係ないぐらい有名になってやろうぜ」










 
 

399: 矢橋P 25/05/16(金) 21:37:36 ID:QtTz
その日の夜

地球プロ 宿舎






P「なあ、桃子」

桃子「なにお兄ちゃん。桃子今日もたっぷりレッスンやって疲れているんだけど」

400: 矢橋P 25/05/16(金) 21:38:17 ID:QtTz

P「桃子は地球プロ所属のアイドルになったんだよな」

桃子「当たり前でしょ、今さらなんなの」

P「だったら黒月代表に言えば正式に宿舎の部屋に住めるよな。他の部屋に移れるはずだ」

P「なのにどうして未だに俺の部屋に住んでいるんだ?」


桃子「別にいいでしょ。理由がなきゃ駄目なの?」

P「理由って……」

401: 矢橋P 25/05/16(金) 21:38:59 ID:QtTz


???「くふふ~。ももこは一人じゃ寂しいからだぞ~」






P「誰!?」

桃子「環!」

402: 矢橋P 25/05/16(金) 21:39:49 ID:QtTz

環「ももこ~。久しぶり」ヒョッコリ




P(何だ、窓から中学生くらいの女の子が覗いてる!?)


桃子「何で環がここに居るの」

環「様子を見に来たんだ~」クフフ-

桃子「桃子の居場所はどうやって調べたの」

環「いーえすに教えてもらったんだぞ」

桃子「あーー、もう!」ジタバタ

P(イーエス?)

403: 矢橋P 25/05/16(金) 21:41:55 ID:QtTz

環「いくには教えてないから心配しなくてもいいよ」

桃子「……その、育は?」

環「あかりがね。『しばらく距離を置きなさい』っていくに言ってたからももこに会うのをがまんしてる」

桃子「……そう」




環「お兄ちゃん。ももこはずっといくと一緒にいたのに今は離れちゃって一人だとさびしいみたいだからなるべくそばにいてあげてほしいぞ」


桃子「!!」カァァァ

404: 矢橋P 25/05/16(金) 21:42:56 ID:QtTz

桃子「このっ!今すぐ帰って!」ブンブン

環「それじゃまた会いにくるね~」


シュタッ!







桃子「もーーっ!」ハァハァ

P「かわいい女の子だったな。桃子の後輩か?」

桃子「……お兄ちゃん勘違いしてるみたいだけど環は桃子より4つも年上だよ」

※ 桃子18歳 環22歳

405: 矢橋P 25/05/16(金) 21:44:37 ID:QtTz

P「4つって……二十歳越えてるのか!?全然そうには見えなかったぞ」

P(彼女の外見、せいぜい上に見ても高校生ぐらいにしか見えない)


桃子「……環はね、7年前から歳を取ってないの」

P「そんな馬鹿な……」

桃子(……朱里さんが言うには"具現化”の影響だって言ってるけど)









 

406: 矢橋P 25/05/16(金) 23:06:22 ID:QtTz
次の日

地球プロ レッスンルーム






昴「色々準備が終わってオレも明日から宿舎に住むことになるかな」

桃子「昴さん今まで都外から通勤してたもんね」

P(それはいいんだが……、昴が越してくるなら今のうちに桃子のことを言わないとな)

407: 矢橋P 25/05/16(金) 23:07:17 ID:QtTz

ジュリア「しばらくあたしとこのみ姉の二人しか住んでいなかったからな。賑やかになりそうだな」

P(どう伝えるかだが……そうだ)ウーム



P(おい、ジュリア)アイコンタクト

ジュリア(ん?ああ、そういうことか)アイコンタクト
 

408: 矢橋P 25/05/16(金) 23:08:32 ID:QtTz

ジュリア「そうだ。今は宿舎でP兄とモモも住んで居るんだけどこいつら同棲しているんだぜ?」

桃子「ちょっと、ジュリアさん!」

P(フォローしてくれ。と合図したんだ。はっきり喋ろとは言ってない!)

昴「マジかよ!」
 

409: 矢橋P 25/05/16(金) 23:09:10 ID:QtTz

<やいのやいの

<マテー、ゴカイダー

<オニイチャンハソレバッカダネ



星梨花「…………」






 

410: 矢橋P 25/05/16(金) 23:09:52 ID:QtTz
その日の夜 宿舎






P「大変な目にあった。ジュリアのやつめ……」

桃子「お兄ちゃんのみんなの評価、絶対下がったよね」ニヤニヤ

P「元凶が何をヌケヌケと……」

411: 矢橋P 25/05/16(金) 23:10:33 ID:QtTz

ピンポーン





桃子「お兄ちゃん、お客さんだよ」

P「桃子は絶対出るなよ!」

桃子「はいはい」
 

412: 矢橋P 25/05/16(金) 23:11:12 ID:QtTz

P(このみ姉かな)

ガチャ



星梨花「……」


P「星梨花!?」

桃子「え……」


星梨花「Pさん。私……家出してきました!」






 

413: 矢橋P 25/05/16(金) 23:11:49 ID:QtTz

そして





桃子「なるほど、お父さんから猛烈な反対を受けたんだ」

星梨花「前から受けていたんです。お母さんがその都度たしなめてくれていたんですけど……もう我慢の限界です!」

星梨花「しばらく家には帰らないです。それでうんと困ればいいんです」

桃子「桃子も家出してきた身だから星梨花さんに味方するけど……」チラ

414: 矢橋P 25/05/16(金) 23:12:22 ID:QtTz

P「ヤバイ、ドウショウ。コレ組織ニモ連絡イッテルダロ。トイウカモウ犯罪ノ領域ナノデハ……」ブツブツ

P「誘拐容疑デ捕マル捕マル捕マル……」アワアワ


桃子「お兄ちゃんは頼りにならなそうだね」

P「ソウダ。このみ姉ナラ何トカシテクレル……」フラフラ







 

415: 矢橋P 25/05/16(金) 23:13:05 ID:QtTz
そして





このみ「そうなの……」

P「このみ姉ナントカシテクレ。ツイデニ桃子モ引キ取ッテクレ」

桃子「さらっと桃子までこのみさんにお願いしないで」

416: 矢橋P 25/05/16(金) 23:14:18 ID:QtTz


このみ「……」ウーン

このみ「星梨花ちゃんはどう思うの?」

星梨花「私はずっと、Pさんがジュリアさんや桃子さんに接する態度が私と違うって思っていました」

星梨花「私もみなさんみたいになりたいです!」


P「ググッ」

このみ(付き合いが長いジュリアちゃんは当たり前として、Pくんにとっては星梨花ちゃんは依頼主の娘って認識が抜けてないみたいだもの。他の二人とは接し方が違うのも当然)

このみ(だけどそれがずっと星梨花ちゃんの頭の中では引っ掛かってたみたいね)

417: 矢橋P 25/05/16(金) 23:14:53 ID:QtTz

このみ「これはお姉さんが無粋に手を出していいことじゃないみたいね」

P「ソンナ……」パクパク

このみ「お姉さんPくんとお話しがあるの二人ともちょっと待って」

このみ「Pくんちょっといい」グイッ

P「ハイ……」




 

418: 矢橋P 25/05/16(金) 23:16:35 ID:QtTz

カクカクシカジカディアー  
 
※このみと洗谷隊長とのやり取りを説明しました





このみ「……ということよ」

P「組織の中でそんな話しが……」

419: 矢橋P 25/05/16(金) 23:17:30 ID:QtTz

このみ「Pくんの真珠星のプロデュース、ひいては星梨花ちゃんのアイドル活動は組織の中でも優先すべき事項になったのよ。少しは安心したかしら」

P「……かなり」

このみ「私が洗谷隊長に話しをしておくわ。それで星梨花ちゃんのお父さんを抑えておくことが出来ると思う」

P「頼む、このみ姉」



このみ「それとこの鍵を渡すわ」チャラ

P「何の鍵?」

このみ「この宿舎で一番大きな部屋の鍵よ。今の部屋、三人じゃ狭いでしょ?」

P「」
 

420: 矢橋P 25/05/16(金) 23:18:36 ID:QtTz






しばらくして……



星梨花「今日からお世話になります」ペコリ

P「ドウシテコウナッタ、ドウシテコウナッタ……」

桃子「お兄ちゃんもいい加減腹を決めたら?あ、あっちの広い部屋は桃子の部屋ね」

桃子「それと引っ越してお腹すいたね。ご飯食べに行こ?」

星梨花「いいんですか」パァァ

桃子「いいのいいの。三人で蕎麦でも食べよっか」

P「マタ、コノパターンカ」









 

421: 矢橋P 25/05/17(土) 10:16:54 ID:5Gvu
次の日

事務所






黒月「目の隈が酷いぞ、寝不足か?今日はヤスベニプロに打ち合わせに行く予定だろ」

P「エエ、ダイジョウブデス」

黒月「昨日ヤスベニプロの方から急に連絡があった。一つ条件を出されてな」








 




422: 矢橋P 25/05/17(土) 10:17:53 ID:5Gvu


昴「それでPと星梨花は居ないんだな」

桃子「なんでも星梨花さんだけ同伴を許されたんだって」

昴「こっちはトリオユニットだけど相手はソロだからな。三対一じゃなくて一対一で会いたいって理屈は分かるけど……」

桃子「星梨花さんを名指しした理由、何かあるね」

桃子(もしかして噂通り…………)







 

423: 矢橋P 25/05/17(土) 10:18:36 ID:5Gvu
ヤスベニプロ 事務所前


P「星梨花行こうか」

星梨花「はい!」

P(何だろう。昨日から星梨花が嬉しそうだな)


星梨花「私は何をすればいいんですか?」

P「今日は打ち合わせ。相手のアイドルの顔合わせだから星梨花は特にやることはないよ」

星梨花「むーっ。そうですか。でも失礼にならないようしっかり挨拶しますね」




 

424: 矢橋P 25/05/17(土) 10:22:21 ID:5Gvu

P「地球プロのPと申します」

星梨花「真珠星の箱崎星梨花です」ペコリ



ヤスベニプロマネージャー「あっ、はい」オドオド

九羽「へーぇ」ニヤニヤ

九羽「ちゃんと一人で来たみたいだな」

425: 矢橋P 25/05/17(土) 10:22:52 ID:5Gvu

P「そちらの要望通り箱崎星梨花一人で伺いに来ました」

P(相手のマネージャー、妙にオドオドしてるな)

P(エッジが効いたようなシャープな黒髪に鋭い目付き。見せつけるような派手な青紫色のマニキュアを付けている。これが黒羽九羽か)



九羽「それじゃマネージャー。後は私がやるから下がってなよ」

マネージャー「はい!」

426: 矢橋P 25/05/17(土) 10:23:53 ID:5Gvu

九羽「あれは形だけのマネージャーさ。私のプロデュースは私の意思通りにやるのがウチの方針でねぇ」



P(噂通りか)

P(黒羽九羽、”ヤスベニカンパニー社長の一人娘”。ヤスベニプロはそもそも黒羽九羽一人をプロデュースするためだけにあるという)




九羽「今回の話、すっごい嬉しいんだよ」

九羽「出来たばかりのクソ底辺ユニットには興味ないけどな。箱崎星梨花、あんたに興味があるのさ」

星梨花「私ですか?」

427: 矢橋P 25/05/17(土) 10:24:32 ID:5Gvu

九羽「あんた……箱崎財閥のご令嬢だろ?」

P「!!」

P(そういうことか)



九羽「さぞかし父親に『アイドルになってチヤホヤされた~い』って泣きついたんだろ?」

星梨花「そんなことしてません!」

428: 矢橋P 25/05/17(土) 10:26:17 ID:5Gvu

九羽「口だけじゃ何とでも言えるけどな」

九羽「あんた、アイドルの養成所とか出たのか?調べてみたらCDだけは出したみたいだけど、どうやって?」



星梨花「そ、それは……」

P(確かに星梨花のCDデビューは組織の力があってのことだった。だがそんな言い方はないだろ)


九羽「素直に言いなよ、親の力を使ったってな」
 

429: 矢橋P 25/05/17(土) 10:27:46 ID:5Gvu

P(星梨花、無視しろ。こんな奴に息を荒げて張り合う必要はない)ヒソヒソ

星梨花(はい)コクン



P「そういう貴方もヤスベニカンパニーの力でアイドルになったのでは?」

九羽「ああそうだね。アイドルなんて言ってもみんな平等じゃない。生まれた環境がものをいうのさ」

九羽「会社のバックアップを受けて他の弱小アイドルを蹴落とすのは最高に気持ちいい~」ゾクゾク

P(こいつ……分かってて煽っているのか)

430: 矢橋P 25/05/17(土) 10:32:27 ID:5Gvu

P「今の発言。世間に拡散されるとは思わないのですか」

九羽「拡散?してみなよ。私は既にあんたらと違ってファンがそこそこ居るんだ」

九羽「ポッとでのアイドルユニットとツナミ公認アイドルでDランク間近の私、世間はどっちを信じる?」


P(確かに黒羽九羽と対決することが決まった以上。九羽のネガキャンしたところで勝負前に対戦相手を陥れる工作だと思われて逆にこっちの評価が下がるのがオチ)

P(この下品な挑発も計算通り。こいつ……ペラペラ喋る馬鹿のふりして結構考えてやがる)




九羽「まあどうであれ……だ。箱崎財閥の令嬢を倒したなら私の名も上がる。ツナミからは勝負に勝てばDランクに上げてくれると約束してくれた」

P(何だって!)

431: 矢橋P 25/05/17(土) 10:33:12 ID:5Gvu

星梨花「……」キッ


九羽「澄ましやがって」

九羽「言っておくが私はあんたが大嫌いだ。令嬢アイドルは私一人で十分なんだよ」
 

432: 矢橋P 25/05/17(土) 10:34:03 ID:5Gvu


星梨花「証明して見せます」

九羽「何?」

星梨花「アイドルに家柄なんて関係ありません。それを九羽さんに証明して見せます!」




九羽「あっそ、好きにしな」

九羽「勝負の内容は後日ツナミの方から連絡が来るみたいだ。それまでお互い準備しようぜ」

九羽(色々と……な)








 

433: 矢橋P 25/05/17(土) 10:34:49 ID:5Gvu






そして


P「星梨花、よく我慢したな」

星梨花「……Pさん」

434: 矢橋P 25/05/17(土) 10:35:56 ID:5Gvu

星梨花「私……九羽さんが言うみたいにお父さんから応援されてないんですよ」

星梨花「なのに……なのに……」

P「うん、分かってる。俺が一番分かってる」



星梨花「私は九羽さんの言う令嬢の娘なのかもしれません。それだけで……あんな風に思われなきゃいけないんですか」

435: 矢橋P 25/05/17(土) 10:39:51 ID:5Gvu

P「……星梨花、それは彼女も思ってることだよ」

星梨花「九羽さんも?」

P「彼女はそれを敢えて肯定して自分の武器にしてる。……でも星梨花はそれを真似する必要はこれっぽっちも無い」

P「今の星梨花が彼女に勝てば家柄が無いアイドルが家柄ありきのアイドルに勝った。ってことになる」

P「星梨花の言った通り示してやろうじゃないか、アイドルに家柄なんて関係ないってことを!」

星梨花「そうですね!」


P(みてろ、うちの星梨花を乏したお礼はたっぷりしてやるからな)








第四章   終わり

436: 矢橋P 25/05/17(土) 10:47:05 ID:5Gvu
黒羽九羽さんはパワポケ14の黒羽九朗くんが元ネタですが原型はほぼ無いです
黒羽九朗くんは子供で男の子ですもんね

パワポケ14は主要人物が子供達なので前作の開拓高校のクラスメート達や
前々作の朱里や典子達みたいに大人の世界がメインのこのSSでそのまま登場させてあげられないのが悲しいところです

437: 矢橋P 25/05/17(土) 10:49:40 ID:5Gvu

大神環   変身ヒーロー

七年前、歩と朱里や桃子を始めとする仲間たちと共に大神とジャジメントの野望を打ち砕いた女の子
ハタ侵略の時はただの元気な小学生だったが美也が環の理想のヒーロー像を具現化したことで現れたブレスレットでヒーローに変身出来るようになった
環の理想の体現しているため”変身ヒロイン”ではなくあくまで”変身ヒーロー”である
ゆえに変身時は身体能力の向上だけではなく雰囲気や口調も変わる

今はコードネーム『レッドウルフ』としてヒーロー連合のエースとして大活躍している。隊員No.2
具現化の影響が普段の体にも現れているというが…… ●

438: 矢橋P 25/05/17(土) 18:33:01 ID:5Gvu


第五章    『Eランク』

 

439: 矢橋P 25/05/17(土) 18:34:08 ID:5Gvu

九羽宅






九羽「親父、会って来たぜ。今度勝負する地球プロの真珠星にな」

九羽「そいつらに勝てば私のアイドルランクはDランク上がる。ようやくEランクから抜け出せる」

440: 矢橋P 25/05/17(土) 18:38:11 ID:5Gvu

九羽父「流石だな。それでこそ私の娘だ」



九羽(ハッ、仕事にかまけて私はおろか母さんさえろくに構わなかった男が今更何を言ってやがる。私がアイドルを始めるって聞いたとたん手のひら返しやがって)

九羽(私のアイドル活動はあんたにとって、自分の会社に都合の良い広告塔なんだろ!)

九羽(まぁ、せいぜいこちらもあんたの会社の力を利用させてもらうさ)

441: 矢橋P 25/05/17(土) 18:41:03 ID:5Gvu

九羽父「アイドルランクもそうだがあの“箱崎星梨花に勝つ“。というところが一番大事な点だ。この勝負だけは必ず勝て」

九羽「負けねえよ。あんな箱入りお嬢様なんかにな」









 

442: 矢橋P 25/05/17(土) 18:41:39 ID:5Gvu

地球プロ





P「以上がヤスベニプロで言われてきたことだ」

昴「聞いてたより好戦的なんだな」

桃子「……噂には聞いていたけど、いや噂以上に過激な性格みたいだね、九羽さん」

星梨花「…………」

443: 矢橋P 25/05/17(土) 18:42:42 ID:5Gvu

P「それを踏まえてまず最初に決めておきたいことがある」

P「今回の勝負、負けても大きなペナルティがあるわけじゃない」

桃子「負けてもいいってこと?」

P「後ろ向きに考えればね」

昴「大幅なイメージダウンは避けられないけどなー」

P「それは挽回可能な範囲だ。それより真珠星はデビューしてまだ間もない、アイドル勝負ばかりにかまけるわけにもいかないだろ。他にもやらなきゃいけないことがあるしな」

P「その上でみんなに聞きたい。この勝負、勝ちに行くかどうか」
 

444: 矢橋P 25/05/17(土) 18:43:56 ID:5Gvu

昴「……今回はオレ達が仕掛けたわけじゃないよな」

桃子「……勝つためには色々準備しなきゃだしね」



星梨花「……あ、あの」

桃子「どうしたの?星梨花さん」

星梨花「私、何だかこの勝負は勝たなきゃいけない気がするんです」

星梨花「理由をうまく説明できないんですけど、この勝負は必ず勝たなきゃ!って……」

445: 矢橋P 25/05/17(土) 18:44:42 ID:5Gvu

昴「星梨花のアイドルとしての勘ってやつか。いいぜ乗った!」

桃子「それじゃ、絶対勝たないとね」

P「よし、それで決まりだな。勝負まで時間が無い、全力で勝ちにいくぞ!」

 

446: 矢橋P 25/05/17(土) 18:45:58 ID:5Gvu

P「あの後ツナミから連絡があって勝負内容はパフォーマンス勝負に決まった」

P「会場はサンピアザホールで大々的に行うそうだ」


昴「なら、まず勝負臨むための曲を決めないとな」

星梨花「曲……ですか」

昴「曲が決まらないとダンスもフォーメーションも決められないからな」

桃子「昴さん詳しいね。経験済みなの?」

昴「アイドル勝負のことならちょっとかじってるぜ。アイドル部の顧問だったからな」


P(アイドル自体の知識が豊富な桃子にアイドル勝負は経験ありの昴か。本当にこの二人とユニットを組めて良かったな)

447: 矢橋P 25/05/17(土) 18:46:50 ID:5Gvu

昴「ただ学生のアイドル部と違うと違うのは曲は自前で用意しなきゃいけないところだな」

桃子「借り物の曲で対決するわけにはいかないもんね」



P(昴の言う通り、アイドル勝負では持ち曲で戦うのが当たり前)

P(この前の乱入の時はMaihamanを立てる手前、こちらの持ち曲を使わなかっただけ」

P「流石に他所のライブに乱入して自分達の持ち曲を披露するなんて無礼な真似は出来なかったからな)

448: 矢橋P 25/05/17(土) 18:47:56 ID:5Gvu

星梨花「私達の持ち曲というと『アイドルステアウェイ』ですね!」



P(実は真珠星のデビュー曲はもう既にある。それが『アイドルステアウェイ』だ)

P(まだ世間にお披露目していないが路上ライブへの準備と並行して収録及びダンスの練習を路上ライブまでの三週間の間で行っていた)

P(あわよくばデビューと同時に披露したかったがそれはかなわなかった)




昴「……アイドルステアウェイか」

桃子「昴さんは不満?」

昴「不満っていうか今回の勝負には合わない気がするんだよな」

449: 矢橋P 25/05/17(土) 18:48:43 ID:5Gvu

P(アイドルステアウェイは真珠星のデビューソングとしては一番だと思っている)

P(星梨花、昴、桃子。紆余曲折あったけどアイドルへの階段をようやく登ることが出来るという輝きと喜びの気持ちが表れた良い歌だ)

P(だが今回みたいに勝負するための曲じゃない)
 

450: 矢橋P 25/05/17(土) 18:49:18 ID:5Gvu

桃子「それなら桃子に一つ考えがあるんだけど」

P「桃子もなんか案があるのか?」

桃子「ふふっ、まあね。ただ……」

桃子「お兄ちゃんにはだーいぶ頑張ってもらわないといけないけどね」

P「えっ」







 

451: 矢橋P 25/05/17(土) 20:16:10 ID:5Gvu
帰宅途中

※地球プロの宿舎は事務所のすぐそばです
また昴も引っ越して来て真珠星の三人にP、ジュリアに事務員のこのみさんが住んでいます





P「さて帰りにコンビニ弁当でも買って帰るか」

桃子「お兄ちゃん。そろそろ外食生活やめない?」

P「どうしてだ?この方が時間もかからないし効率的だろ」ポカーン

桃子(うわ……。この反応、お兄ちゃんはプロデューサーになる前からずっとこんな生活してきたって感じだね)

452: 矢橋P 25/05/17(土) 20:17:01 ID:5Gvu

桃子「お兄ちゃんだけならそれでいいかもしれないけど、今は星梨花さんも居るんだよ!」

星梨花「わ、私は弁当でもいいですよ。今まで弁当なんてあまり食べたことなかったですし……」

桃子「星梨花さんも。コンビニ弁当の味なんて慣れない方ががいいと思うよ」
 

453: 矢橋P 25/05/17(土) 20:17:52 ID:5Gvu


昴「なあ、昨日作ったカレー余っているんだけど食べるか?」

P「ありがとうございます。ぜひいただきます」

桃子「お兄ちゃん、食いつくの早いよ!」

P「だって昴の作った料理、絶対美味しいだろ」

桃子(昴さんが宿舎に来たのはここ数日なのにもう餌付けされてる!)



昴「子供の頃は兄ちゃん達の食事を作ってたし、高校卒業してからはロコや海美の分も作ってたこともあったからな。ついたくさん作っちゃうんだよ」

昴(開拓高校でも部活の練習で帰りが遅くなりそうな時は生徒の夜ご飯作ったり、恵理に頼まれて千羽矢のご飯も作ったりしたよな)

454: 矢橋P 25/05/17(土) 20:18:44 ID:5Gvu






深夜



P「このみ姉、深夜にごめん」

このみ「別にいいわよ、Pくん。あの子達に聞かれたくないことでしょ?」

455: 矢橋P 25/05/17(土) 20:19:14 ID:5Gvu

P「頼みがあるんだ。ヤスベニカンパニーの情報が欲しい。ヤスベニ”プロ”じゃなく"カンパニー”の方だ」

P「このみ姉の方で何とか調べてくれないか。この通り」ペコリ

このみ「そんなことだろうと思ってもう用意しておいたわよ」パサッ

P「さすがこのみ姉!」

このみ「でしょう。出来る大人のレディは仕事が早いものよ」フフ-ン
 

456: 矢橋P 25/05/17(土) 20:20:34 ID:5Gvu



P「ヤスベニカンパニー。ネットビジネスがメインの会社か」ペラ

このみ「今はツナミネットになったけど大神ネット発足の頃から大神の傘下として大神ネットの普及に携わっていたの。ツナミの恩恵を受けてここまで大きくなったようね」

このみ「"ツナミに取り入れられること”。ビジネスの世界で確実に成功する方法として常識ですもの」
 

457: 矢橋P 25/05/17(土) 20:20:48 ID:5Gvu

P「ツナミと一緒にね……きな臭くなってきたな」

このみ「朱に交われば赤くなる。ツナミネットが普及した今は独自に色々やっているみたいだけど……あまり良い噂は聞かないわね」

P「ツナミが事業に関わらなくなった後もツナミ見よう見まねをしているってところか」

このみ「Pくん、気をつけなさいよ。こういう手合いは何してくるか分からないから」

P「わかっているよこのみ姉」











 





 

458: 矢橋P 25/05/17(土) 20:21:42 ID:5Gvu
数日後




地球プロ 代表室





黒月「これが昨日とある週刊誌に出てた記事だ」

P(早速仕掛けてきたな……)

459: 矢橋P 25/05/17(土) 20:21:57 ID:5Gvu

黒月「内容は真珠星に関する記事だが……悪評寄りの記事だ。最後の方にはヤスベニプロのアイドル勝負のことにも触れている」

P「勝負前に評判を下げて勝負を有利にしようということでしょう」

黒月「俺も散々言われてきたから悪評には慣れている。地球プロとしては気に留めることでもないが、気に掛かるのはアイドルの方だ」

P「わかっています。彼女達のケアは自分の仕事です」





 

460: 矢橋P 25/05/17(土) 20:22:56 ID:5Gvu
休憩室




昴「これがその雑誌か」

桃子「アイドル週刊誌じゃないマイナーな週刊誌なところがいかにもって感じだね」

昴「記事の内容も『Maihamanに喧嘩を売った野蛮なアイドルグループ!?』『アイドルコードも無い!?出所不明の怪しいアイドルの実態』だとさ」

桃子「丸っきり嘘じゃないってところが巧みだね。事実を見た人の印象が悪くなるように書き変えてる」

昴「ここまで露骨だと逆に面白いくらいだけどな」

桃子「もーっ、昴さん!」

P(桃子の言う通り、記事の内容はやらせやでまかせではなく事実を悪い風に述べている感じだ)

461: 矢橋P 25/05/17(土) 20:23:50 ID:5Gvu

星梨花「Pさん。その記事を私にも見せてください」

P「いや……星梨花は見ない方が……」

星梨花「私なら大丈夫です」


桃子「お兄ちゃん」ジロー

昴「星梨花も子供じゃないんだ。信じてあげようぜ」

P「……分かった」スッ

462: 矢橋P 25/05/17(土) 20:24:35 ID:5Gvu

星梨花「……」フンフン

星梨花「……!」

星梨花「私のことが載ってます……お父さんのことも……」

P「それも奴らの思惑の一つだろうな。今度のアイドル勝負を”箱崎財閥の箱崎星梨花”対"ヤスベニカンパニーの黒羽九羽”って構図にどうしても持ち込みたいようだ」

星梨花「……」

463: 矢橋P 25/05/17(土) 20:25:18 ID:5Gvu

昴「それを見てどう思う、星梨花」


星梨花「……」

星梨花「私は……」










 



464: 矢橋P 25/05/17(土) 20:26:40 ID:5Gvu

それから数日後、真珠星のデビューソング『アイドルステアウェイ』がダウンロード販売された

CD発売も予定しているがダウンロード販売が先だという
どっとっぷNetに加入しておらずひっそりとした販売にしては……購入者がそこそこいた
それほど路上ライブとMaihamanから宣伝してもらった効果は高いのだろう

とはいえダウンロード販売の購入者は一部の物好きが買うどまりに落ちついた
そしてその物好きの中に黒羽九羽がいた…………


 

465: 矢橋P 25/05/17(土) 20:27:29 ID:5Gvu

九羽「これが奴らの曲か」

マネージャー「お聞きになったのですか」


九羽「アイドルのステアウェイ(階段)ね。奴らがいかにも歌いそうな歌だな」

九羽「そのキラキラとした階段とやらも父親から与えられたものだろうに」

九羽「あー、うぜー。早く倒して私の前にひれ伏せてやりてぇ」

マネージャー「九羽様の敵ではないかと」

466: 矢橋P 25/05/17(土) 20:28:17 ID:5Gvu

九羽「例の週刊誌の記事、親父の手回しだろ?」

マネージャー「……そうです」

九羽「あまり効果なかったみたいじゃねーか。そんなことしなくても箱崎星梨花に負けることなんかあり得ねえ。余計なことすんなって親父に伝えとけ」

マネージャー「はい」








 

467: 矢橋P 25/05/17(土) 22:02:12 ID:5Gvu

数日後

レッスン終了後






桃子「お兄ちゃん。いい加減に桃子達も自炊するよ」

P「う……。あれから昴が気にかけて毎日何かしら作ってくれているからな……」

P「俺はナイフなら握ったことあるけど包丁はからっきしなんだよな」

桃子「お兄ちゃんは出来ることが偏りすぎ。普通そんな人いないよ」

468: 矢橋P 25/05/17(土) 22:02:52 ID:5Gvu

P「あれ、星梨花は?」

桃子「昴さんと一緒にご飯作っているよ。23歳になるまでずっと家にいたからお母さんの手伝いで料理を覚えたんだって」

P「……ますます申し訳ないな」ズーン

桃子「じゃさっそく桃子達は調理器具買いに行こうか。まな板や包丁も無いのは流石に駄目でしょ」

P「そうするか……」ハァ



 

469: 矢橋P 25/05/17(土) 22:04:14 ID:5Gvu
そして

帰り道 道路







桃子「なんかいっぱい買ったね」ウキウキ

P「まな板包丁フライパンはいいとして……ミキサーとか泡立て器とか本当にいるのか?」

桃子「別にいいでしょ。今度の休みにホットケーキでも作ろうかな~」ウキウキ
 

470: 矢橋P 25/05/17(土) 22:04:56 ID:5Gvu
ブォォン






P「ん?」

P(この感じ……)



桃子「お兄ちゃん。早く渡らないと信号変わっちゃうよ」

P「ああ……」

471: 矢橋P 25/05/17(土) 22:05:25 ID:5Gvu
<ブォン!







<キキーーッ



桃子「えっ」





\ドン!/

472: 矢橋P 25/05/17(土) 22:07:14 ID:5Gvu



桃子「……っ」

P「桃子、怪我は無いか?」


桃子(一瞬だった。一時停止していたはずの車が急にアクセルふかして桃子に目がけて突撃してきたの)

桃子(思わず目をつむってしまって、目を開いたらお兄ちゃんが桃子を抱えて車の上に飛び乗っていた)

473: 矢橋P 25/05/17(土) 22:08:49 ID:5Gvu

桃子「ち、ちょっと、お兄ちゃん」

P「緊急事態だ。我慢しろ」



三舟「な、なんだお前は……」

P「お前の顔、覚えがある。当たり屋の三舟だな」グイッ

三舟「なっ!」

P「未遂で終わってよかったな。過失傷害罪が増えるところだったぞ」

P「どっちにせよ束縛させてもらうが。"表”の世界が許しても"裏”の世界ではお前はお尋ね者だ。組織に連絡してやろうか」

三舟「ひぃっ。お助けを……」

P「……面倒ごとは起こしたくないんだ。二度と目の前に表れるな!」

三舟「はいっ!」ダダダッ

 

474: 矢橋P 25/05/17(土) 22:09:30 ID:5Gvu

P「大丈夫か桃子、降ろすぞ」

桃子「うん。お兄ちゃん……すごいね」

P「前に俺はサイボーグだと言ったろ?これくらいどうってことでもない」
 

475: 矢橋P 25/05/17(土) 22:10:14 ID:5Gvu

桃子「あの人桃子を……轢こうとしたの?」

P「いや、あいつは当たり屋の三舟って言ってな。ヒットマンじゃない」

P「おそらく桃子が怪我する程度にうまく調整していただろうな。死傷事故までいったらことが大きくなりすぎる」

P「勝負が中止にでもなったら奴らも困るだろう。あいつは車を使った工作がメインの仕事だったはず」


P(何かしら仕掛けてくると思ったが……ここまでするか、ヤスベニカンパニー!)

P(このみ姉に報告しなきゃいけないが今はそれより桃子の方が心配だ)

476: 矢橋P 25/05/17(土) 22:11:10 ID:5Gvu

桃子「そう、人騒がせな人だね」パンパン

P「桃子……大丈夫か」

桃子「その言葉二回目だよお兄ちゃん。ちょっとびっくりしたけど桃子だって命を狙われたこと一回や二回じゃないんだから平気だよ」


P(強がり……じゃないな。あんなことがあったのに目が座っている)

桃子(大神のサイボーグやジャジメントの超能力者に追われたあの時に比べたらちっとも怖くないもん)



桃子「それより荷物拾わないと。放り投げたミキサーが壊れてないといいんだけど」

P(自分の体の心配より落ちた物の心配をしているうちは大丈夫だな)







 

477: 矢橋P 25/05/17(土) 22:13:19 ID:5Gvu

昴「そんなことがあったのかよ!」

P「ああ。おそらくだが星梨花が傍に居ない時を狙ってきたんだろうな」

昴「そうか。星梨花を確実に倒すためにオレと桃子は邪魔でしかないから退場させようとしてるんだな」



桃子「昴さん、エプロン姿で怒らない。あとこのハンバーグ美味しいね」モグモグ

昴「だろー。それこねたのは星梨花なんだぜー」

星梨花「うまく出来たでしょうか」

桃子「ばっちりだよ」モグモグ

昴「サラダのレタスをちぎったのも星梨花でさー」

 

478: 矢橋P 25/05/17(土) 22:15:34 ID:5Gvu


P(あんなことがあった後でもこの様子。本当に色んな意味で頼もしいメンバーだな)

P(桃子や昴も星梨花と一緒に居れば襲われる可能性が減るとは思うけど、今後何をしてくるか分からない)

P(成り行き上桃子と星梨花と同棲生活になってしまったがそれが都合良いことになるなんてな。そのおかげで起床から就寝までずっと桃子と星梨花を護ることが出来る)

P(対ツナミ工作員としての訓練も俺がサイボーグなこともアイドル業界では無用の長物だと思っていたが……どうなるか分からないもんだな)






 

479: 矢橋P 25/05/17(土) 22:16:04 ID:5Gvu
数日後

ヤスベニカンパニー 社長室





九羽父「失敗しただと!?」

秘書「どうやら地球プロには優秀な護衛が居るようです」

九羽父「調べた時にはそのような情報はなかったが……大國チルドレンの黒月の計らいか」

九羽父「三舟が駄目なら他の者を雇えばいいだろう」

秘書「それが裏の者のどの方もこの件からは手を退かせてもらうと……」

九羽父「何っ。奴らにそこまでの圧力をかけれる力があるとは……」ギリッ
 

480: 矢橋P 25/05/17(土) 22:17:06 ID:5Gvu


マネージャー「あの……。お嬢様はそのようなことは望んでおられないようですが……」

九羽父「あいつの意思など関係ない。この勝負での勝利でまた一段とツナミに認めてもらえる。絶対勝たねばならん」

マネージャー「……」










このみ「洗谷隊長に言って組織の方からだいたいの裏世界の人間には睨みを利かせてもらっているわ」

P「ありがとうこのみ姉」

481: 矢橋P 25/05/17(土) 22:17:37 ID:5Gvu
このみ「気にしないで。Pくんのアイドルプロデュースにウチの組織が出来ることなんてそんなことぐらいよ。安心してプロデュースなさい」


このみ「百合子ちゃんや杏奈ちゃんも心配しているんだから。今度会ってあげなさいな」

P「そうか……。でもひと段落するまではまだ組織に顔を出せないよ」

このみ「難しいわねえ」








 

482: 矢橋P 25/05/18(日) 06:22:18 ID:vacw

そして数週間が経過し……

遂に本番の日がやってきた
 

483: 矢橋P 25/05/18(日) 06:23:02 ID:vacw
都内 サンピアザホール

控え室






P「いよいよ本番だ。分かっているとは思うが……」


昴「勝手に他のところに行ったりしない」

星梨花「他の人に話しかけられても断ります」

桃子「水や差し入れを口にしないでしょ?」

484: 矢橋P 25/05/18(日) 06:24:21 ID:vacw
P「そうだ。当日だといっても何があるか分からないからな」

P「今日までこの勝負のためだけにずっとレッスンしてきた。特に星梨花は頑張ったな」


星梨花「そんな……」

昴「本当、すごく頑張ったよな」

桃子「胸張ってこのステージに立とうね!」



桃子「それじゃ衣装を着よっか。着替えてくるね」チラッ

昴「あー、そうだなー」チラッ



タタタッ

バタン

485: 矢橋P 25/05/18(日) 06:31:19 ID:vacw


P「星梨花も行かないと……」

星梨花「Pさん。またあれをやってください」

P「あれって……おまじないか?」


星梨花「そうです」ズイッ

P「そうか……」

P(だいぶこのみ姉にしてもらったけど……自分がやるとなると恥ずかしいな)

486: 矢橋P 25/05/18(日) 06:32:04 ID:vacw


ギュッ

P「大丈夫。大丈夫。大丈夫」

星梨花「……」

星梨花「ありがとうございます。勇気が出ました!」

P「今日は星梨花が主役だ。頑張ってこい!」





 

487: 矢橋P 25/05/18(日) 06:32:43 ID:vacw
九羽「いよいよだな」



マネージャー「お父上が宣伝したお陰か客入りも上々のようです」

九羽「いいじゃねえか。Dランクに上がるにふさわしい舞台だぜ」






黒服「……」

黒服「……」



九羽(あれはウチの会社の人間じゃねえな。会場スタッフか?)

九羽(にしても数が多くないか。まあいいけどさ)






 

488: 矢橋P 25/05/18(日) 06:33:16 ID:vacw


VIP席


九羽父「まさか貴方様直々にお見えになられるとは。言って下さればお迎えしましたのに」

甲斐「あまり騒がないでください。一応、お忍びのつもりですから」

甲斐「この勝負をセッティングしたのは私です。見届けに来ただけですよ」

九羽父(まさか甲斐様がこられるとは。これでは迂闊に妨害など出来ないではないか)

489: 矢橋P 25/05/18(日) 06:34:22 ID:vacw


<ブーーーーッ







甲斐「始まるようですね。ひとまず観戦しようではありませんか」

九羽父「は、はあ……」








 

490: 矢橋P 25/05/18(日) 06:35:32 ID:vacw

MC「さあ、みなさんお待ちかね!本日のメインイベントだ!」

MC「もう知っているとは思うが白熱のアイドル勝負!気になる対戦カードは……」






\バン!/



MC「アイドルランクはEランク!みんな私の姿に酔いしれろ!大胆不敵のビジュアルアイドル、 『黒羽九羽』ーーッ!!!」

491: 矢橋P 25/05/18(日) 06:36:09 ID:vacw
九羽「今日も私の姿を目に焼き付けるまで帰さねーからな!」




\ワーーーーーーーッ/







MC「相変わらず煽ってくれるねー」

MC「対するアイドルは……こちらは三人ユニットだ!」

MC「アイドルランクは未定、つまり未知数だ!先月には驚きの飛び込み乱入で世間を沸かせた喧嘩上等ユニット、『真珠星』ーーッ!!!」

492: 矢橋P 25/05/18(日) 06:37:06 ID:vacw



昴「おーーーーっ!」

星梨花「よろしくお願いしまーーす」

桃子「桃子達そんなイメージ付けられたんだね。まあいいけど」



 

493: 矢橋P 25/05/18(日) 06:37:54 ID:vacw

MC「評判とは裏腹に中々可愛いビジュアルだがどう裏切ってくれるのか」

MC「ちなみに今回のアイドル勝負。審査員は会場のみんなだ!お互いのパフォーマンスが終わったら事前に配信されたアプリで投票してくれーーっ」








\ワーーーーーーーッ/



MC「それでは、まずヤスベニプロからパフォーマンスお願いします!」
 

494: 矢橋P 25/05/18(日) 06:38:38 ID:vacw


九羽「私と言えばこの曲しかねーだろ。行くぜお前ら!」


     『ブラック・クロウ!』         ※オリ曲です



      \ドッドッドッ!/








 

495: 矢橋P 25/05/18(日) 06:39:02 ID:vacw






VIP席



甲斐「…………」ジーッ

九羽父「すみませんねぇ。うちの娘の曲、今流行り系で下品でしょう?甲斐様の口には合わないかもしれません」

496: 矢橋P 25/05/18(日) 06:39:56 ID:vacw

甲斐「歌詞は安直、捻りも特にない」

九羽父「そうですか、すみません不甲斐ない娘で……」


甲斐「ですが娘さんはそんな歌に並みならぬ感情を込めて歌ってます。それで歌詞以上の歌になっている」

九羽父「はぁ」

甲斐「その反応。あなた、自分の娘が歌うところあまり聞いてないようですね」

九羽父「はぁ。そういうのは部下に任せておりますので……」

甲斐(やはり彼女は……)






 

497: 矢橋P 25/05/18(日) 06:40:51 ID:vacw

P(彼女の曲を初めて直に聴いたが普通に上手い。CD以上だ)

P(星梨花にあれだけのことを言うだけのことはあるわけか)








\ドン!/



九羽「お前ら最高だぜーーっ!」
 

498: 矢橋P 25/05/18(日) 06:41:38 ID:vacw

MC「さすが黒羽九羽!会場を痺れさせるぜ!」

MC「次は対する真珠星のパフォーマンスだ!」






九羽(私のパフォーマンスは終わり。さあ、あんたらの番だぜ)

九羽(箱崎星梨花、同じ令嬢アイドルでも今まで私はプロデュースも活動も一人で全部やって来たんだ)

九羽(それを一人じゃデビュー出来ないからって従者のように二人連れてデビューした甘ちゃんには絶対負けねえよ!)

499: 矢橋P 25/05/18(日) 09:43:52 ID:vacw


星梨花「それではいきます。『Upper Dog』」




  …No to be Under Dog
     … to be Upper Dog





 


500: 矢橋P 25/05/18(日) 09:44:45 ID:vacw

ザワザワ ザワザワ ザワザワ



<何の曲だ!?


<こんな曲知らないぞ!





九羽(どういうことだ?奴らの曲はアイドルステアウェイじゃないのか!)

501: 矢橋P 25/05/18(日) 09:45:51 ID:vacw





甲斐「これは……新曲ですね」

九羽父「新曲ですか?」

甲斐「私が把握している限りでは彼らにUpper Dogという曲はない」

九羽父「甲斐様が言うのでしたら間違いないでしょうな」

甲斐「むしろあなたが対戦相手の持ち曲ぐらい把握してない方が驚きです」

九羽父「いや、その……」



 

502: 矢橋P 25/05/18(日) 09:46:38 ID:vacw


生まれた意味探して
         (求めて)




昴「……」スッ

桃子「……」スッ






「あれは!」ザワザワ

「横の二人が無言で後ろに下がったぞ」ザワザワ

503: 矢橋P 25/05/18(日) 09:48:49 ID:vacw


星梨花「生まれた意味を探して」

昴(求めて)



星梨花「鋼を打て心に」

桃子(何度も)






「おいおいこれって……」

「歌ってるのあのツインテールでセンターの娘だけだぜ。後ろの二人はコーラスのみだ」

504: 矢橋P 25/05/18(日) 09:50:03 ID:vacw




九羽(こいつは……)ギリッ

九羽(間違いない。二人は脇役に徹して星梨花がメインのステージのつもりだ)

九羽(トリオユニットのパフォーマンスでこんなやり方があるとはな)

九羽(そうかい。箱崎星梨花、あんたにとって同じユニットメンバーはあんたの引き立て役ってわけか!)

 

505: 矢橋P 25/05/18(日) 09:51:22 ID:vacw
星梨花「自分にだけは決して」ユビサシ

星梨花「絶対に屈するな」ユビクイ







九羽(いや……違う。この曲と振り付けは私に対する挑発!)

九羽(私一人のパフォーマンスに対して三人でじゃなくあくまで箱崎星梨花一人で迎え討つという意思表示か!)




星梨花「そんな生き様」

星梨花「晒せるものか」

星梨花「生き残るために」

星梨花「戦うために」


 
 

506: 矢橋P 25/05/18(日) 09:52:52 ID:vacw




甲斐「なるほど。『黒羽九羽vs真珠星』の構図から『黒羽九羽vs箱崎星梨花』の構図に無理やりもっていった、”自らの意思で”」

甲斐(こちらでセッティングしたとはいえこのステージは黒羽九羽のファンの方が多い)

甲斐(あの九羽のパフォーマンスのあとでただ漠然とアイドルステアウェイを歌っただけでは真珠星に到底勝ち目はなかったでしょう)

甲斐(だから曲調もパフォーマンスも彼女に近づけて同じ土俵に立ち、純粋に力勝負に持っていったわけですね)
 

507: 矢橋P 25/05/18(日) 09:54:18 ID:vacw

星梨花「かざせ、この魂ハイと尽きるまで」

星梨花「強く!熱く!燃やして」









九羽(くそっ、見誤った!箱崎星梨花、親の力を借りた甘ちゃんかと思ってたがこいつとんでもない狂犬だ)

九羽(あのMaihamanに喧嘩を売った事実を知った時点で想定するべきだったんだ)

508: 矢橋P 25/05/18(日) 09:54:46 ID:vacw

星梨花「たとえ一人の道だって、戦い続けるんだ」






「何だかすげぇな」ザワザワ

「ああ……。あの黒羽九羽ちゃんに真っ正面からぶつかったアイドルなんていなかっただろ」ザワザワ

509: 矢橋P 25/05/18(日) 09:55:14 ID:vacw


No to be Under Dog
 … It’s a loser
   …No to be Under Dog
       …to be Upper Dog





\ワーーーーーーーーーッ/

510: 矢橋P 25/05/18(日) 09:56:25 ID:vacw

MC「すごい、すごいぞーーーっ!かわいい顔したアイドルユニット真珠星は猛獣だったのかーーっ!」





星梨花「……みなさん」っマイク

星梨花「こんな意表を突くようなことをしてすみません」

星梨花「でもどうしてもやってみたかったんです。九羽とユニットも立場も先入観もなくぶつかってみたかった」

星梨花「……黒羽九羽さんと同じ気持ちになってみたかったんです」
 

511: 矢橋P 25/05/18(日) 09:56:51 ID:vacw


九羽(はぁ!?)

九羽(ふざけるな!ふざけるな!ふざけるな!)

九羽(私は……あんたとは違う。違うんだ!)
 

512: 矢橋P 25/05/18(日) 09:57:29 ID:vacw

MC「おーーっと、そろそろ審査結果が出て来たぞ」

MC「得票率は……黒羽九羽が42% 真珠星が58%だ」






九羽「あ……」


MC「これはすごい!新生ユニット真珠星があの黒羽九羽に勝ってしまったぞ!」



\パチパチ/  \パチパチ/  \パチパチ/

513: 矢橋P 25/05/18(日) 09:57:59 ID:vacw

九羽「……」スッ


星梨花「九羽さん……」








 

514: 矢橋P 25/05/18(日) 13:02:05 ID:vacw

VIPルーム






甲斐「いい試合でした。真珠星に黒羽九羽、やはりこの二つを合わせて正解でしたね」

九羽父「そうでしたか。勝負には負けてしまいましたが甲斐様が満足していただけたのなら幸いです」

515: 矢橋P 25/05/18(日) 13:02:53 ID:vacw

九羽父(九羽め、負けるとはなんたるザマだ。しかもよりによって甲斐様が観てる時に負けるとは)

九羽父(何でもいい。もう早く帰ってくれ)


甲斐「さて、勝負も終わったところで言わなければならないことがあります」

九羽父「なんでしょう」ギクッ

甲斐「ヤスベニプロは表舞台のアイドル活動を半年間停止。もう決定事項です」
 

516: 矢橋P 25/05/18(日) 13:03:57 ID:vacw
九羽父「何ぃ!」


九羽父「あ、いや。甲斐様、どうしてこのような処置を?」

甲斐「私の決定に不満があるのですか?」

九羽父「めっそうもございません!」ガバァ


甲斐「あなたはアイドル業に関しては無能ですね。今回でよくわかりました」

甲斐「理由は自分の胸に聞きなさい、以上」


スタスタスタ





九羽父「……終わりだ」

517: 矢橋P 25/05/18(日) 13:05:11 ID:vacw







P「お疲れさま。一人で最後まで歌い上げて見事だったよ」

星梨花「えへへ……そうでしたか」


桃子「星梨花さんが九羽さんと真っ向勝負したいと言った時はびっくりしちゃったけど」

昴「結果的に真っ直ぐぶつかったから勝てたと思うぜ」

桃子「お兄ちゃんも急いで新曲作ってもらうように動きかけてくれてありがと。おかげで助かったよ」

P「黒月代表に贅沢な奴だと睨まれたけどな」ハハ…
 

518: 矢橋P 25/05/18(日) 13:06:21 ID:vacw

P「九羽とぶつかってどうだった?」

星梨花「九羽さん、言葉は汚いかもしれないですけどパフォーマンスは真面目でした」

桃子「そうだね。意表を突いて勝ったようなものだけどパフォーマンスとしては全く差は無かったよ」

星梨花「本当は九羽さんとわかり合いたかったんです。九羽さんの真似をしたら少しは……と思っていたんですけど……」

P(わかり合う……か。正直自分はヤスベニカンパニーのしたことに今でも不満があるんだけどな。星梨花の方が懐が上だな)
 

519: 矢橋P 25/05/18(日) 13:07:14 ID:vacw


P「今回が駄目でもまた何度も会うだろうなステージの上で。星梨花がそう望むならいつかはわかり合えるよ」

昴「あいつ執念深そうだしな~」

昴「一回負けたぐらいでへこむ奴じゃないだろ。また突っかかって来そうだな」







 

520: 矢橋P 25/05/18(日) 13:08:20 ID:vacw





九羽「悪い。負けちまった」

九羽「でも次は勝ってDランクに……」



九羽父「終わりだ」

九羽「はぁ?何日和ってるんだよ。たかが一回負けただけだろ」

九羽父「ヤスベニカンパニーはアイドル事業から撤退する。ヤスベニプロは解散だ」

九羽「なっ、ふざけんなよ!」

521: 矢橋P 25/05/18(日) 13:09:42 ID:vacw

九羽父「甲斐様から……ツナミから活動停止の要請が出た」

九羽「活動停止なだけだろ、何で事務所まで解散すんだよ!」

九羽父「お前は知らないのだ!ビジネスで一番恐ろしいことは告発されることでも不正を受けることでもない。"ツナミから見限られること”だ」

九羽「……っ」



九羽父「ツナミから見限られたアイドル事業など続ける必要などない。むしろ痕跡も残さないぐらいすっきりさせなければ」

九羽「そんなの親父の会社の都合だろうが!私のアイドル活動はどうなるんだよ」

522: 矢橋P 25/05/18(日) 13:10:14 ID:vacw

九羽父「お前……常々"アイドルは家柄で決まる”と吹聴していたらしいな」

九羽「そ、そうだよ。それが……」

九羽父「ならば……家柄が辞めろと言えば辞めろ。それが道理だ」

九羽父「まさか利用するだけ利用して都合の悪いことは受け付けないと言うつもりなのか?」

523: 矢橋P 25/05/18(日) 13:11:00 ID:vacw

九羽「……ぐ」

九羽「ああ辞めてやるよ!こんな会社も、事務所も!」

九羽「私がただの黒羽九羽になればいいんだろ!」ダダダッ

九羽父「おい!」











 


524: 矢橋P 25/05/18(日) 13:12:16 ID:vacw

九羽「ちくしょう……」





《 アイドルに家柄は関係ありません 》






九羽「なんであいつの言葉が……」




甲斐「酷い顔ですね」

525: 矢橋P 25/05/18(日) 13:13:00 ID:vacw

九羽「!!」

九羽「そうか、そういうことかい」

九羽「あんたがセッティングしたんだもんな。すべてあんたの手のひらの上かよ」

九羽「私はあいつらにとって丁度いい当て馬だったわけだ」

九羽「ついでに私も排除出来て……万々歳かよぉ……」グスッ
 

526: 矢橋P 25/05/18(日) 13:13:55 ID:vacw

甲斐「勝負は時の運です」

甲斐「どちらが勝つか最後までわかりませんでしたよ」

九羽「慰めなんて……いらねぇ」グスッ



甲斐「私はあなたのパフォーマンスも好きですよ。少なくともあなたの父親よりはそう思っています」

九羽「……」

甲斐「ヤスベニプロを辞めなさい。あそこで続けていてもせいぜいDランク止まりですよ」





スタスタスタ

527: 矢橋P 25/05/18(日) 13:15:33 ID:vacw


九羽「勝手なこと言いやがってぇ……」グスッ



マネージャー「お嬢様」

九羽「お嬢様はよせって何回も言ってるだろぉ……」グス

マネージャー「甲斐様からこれを頂きました」

九羽「これ……名刺か?……573プロ?」







第五章   終わり

528: 矢橋P 25/05/18(日) 13:18:36 ID:vacw

黒羽九羽   ビジュアル系好戦的アイドル

ヤスベニカンパニーの社長の一人娘でヤスベニプロ唯一の所属アイドル。十九歳
幼い頃から父親にろくに構って貰えず父親もヤスベニカンパニーも実は大嫌い
ゆえに散々使いつくして無くなってしまえばいいとすら思っていた
挑発的な態度もそれに基づく自暴自棄なところが現れている

だが彼女のアイドル活動の始まりは反抗心によるものではなくあくまで彼女の心の中の憧れから生まれたものであり
レッスン等は疎かにしたことはなく歌にはちゃんと現れていた ●

529: 矢橋P 25/05/18(日) 15:28:43 ID:vacw


第六章    『Dランク』

 

530: 矢橋P 25/05/18(日) 15:30:03 ID:vacw

数日後



アイドル勝負の慌ただしさから真珠星はようやく開放された
あれからSNSでの真珠星の評判はまた上がり曲のダウンロード販売数も増えている

思えば真珠星としてユニットを組んでから路上ライブからデビュー曲アイドルステアウエイ収録
そして黒羽九羽へのアイドル勝負とずっと気が抜けないレッスン漬けの日々を真珠星には送らせてしまった

アイドルだとしてもひと皮剥けばただの女の子である
三人とも成人していて子供じゃないとはいえ無理させてしまったのではないかと思った

531: 矢橋P 25/05/18(日) 15:30:42 ID:vacw

だけど星梨花はそんな心配はつゆ知らず、その忙しさすらも喜んでいるようだった
それほど星梨花の何も出来ない十年間は辛いものだったのかもしれない
でも桃子は不満で頬を膨らませることが増えたので真珠星には思い切って数日オフにした

で、自分はそのさなか、あの上守甲斐に例のツナミ本社の部屋に呼び出されて緊急出勤だ









 

532: 矢橋P 25/05/18(日) 15:31:35 ID:vacw

ツナミグループ日本総支部本社 密談室







甲斐「先日のアイドル勝負の勝利、おめでとうございます」

P「こちらこそ、どうもありがとうございます」

P(何で俺は呼び出されたあげく、上守甲斐に頭下げなきゃいけないんだ!)

533: 矢橋P 25/05/18(日) 15:32:04 ID:vacw

P「本日はどのようなご用件で」

P(メールや電話じゃ駄目だったのかよ!)



甲斐「おや、不満ですかわざわざ呼び出されたのが」

P「いえ、そのようなことは無いです」

P(何で勘付いているんだよ。こいつエスパーか!)

534: 矢橋P 25/05/18(日) 15:32:54 ID:vacw

甲斐「重要な話です。電話越しで話す内容ではありません」

P(何っ)

P「それはいったい……」



甲斐「2週間後にアイドルショーウィンドウを開きます」

甲斐「それに貴女方真珠星が出演してほしいのです」

P(アイドルショーウィンドウだって!?)

535: 矢橋P 25/05/18(日) 15:33:17 ID:vacw

アイドルショーウィンドウとはツナミグループが主体となって定期的に開催しているイベントだ
ツナミの会場で"旬”のアイドルを招いたり新たらしくデビューしたばかりのアイドルを紹介したり
まさしく様々なアイドルの展示会という感じでアイドル側にしてみれば嬉しいことしかないイベント
一般人も抽選だがチケットを買えば観客として参加出来るし無料配信もある
駆け出しのアイドルには願ってもないことだろう


だが自分達はツナミの傘下じゃない
こんなイベントとは無縁だと思っていた

536: 矢橋P 25/05/18(日) 15:33:52 ID:vacw

P「失礼とは存じますが、なぜ真珠星が参加出来るのでしょうか」

甲斐「その前に説明することがありましたね」



スッ


P「この資料は……」

甲斐「この数字が箱崎星梨花、永吉昴、周防桃子のアイドルコード。そしてそれに関する資料です」

P「アイドルコード!?」

537: 矢橋P 25/05/18(日) 15:35:19 ID:vacw

甲斐「こないだの勝利を受けて勝手ではありますが真珠星の三人を"Dランク”に認定いたします」

甲斐「それに伴いアイドルコードもこちらで新規作成いたしました」

甲斐「今度のアイドルショーウィンドウ当日に発表と共に施行となります」

甲斐「デビューしてから三ヶ月も満たないうちにDランクに上がるのは珍しいのですよ?」



P「話が進むのが早いですね。まるで私にアイドル勝負を持ちかけた頃から予定していたみたいだ」

甲斐「その通りです。あれは試練でもありました」

P(こいつ……)

538: 矢橋P 25/05/18(日) 15:35:44 ID:vacw

甲斐「今度のアイドルショーウィンドウは重要です」

P「重要とは」

甲斐「今度のアイドルショーウィンドウはいつもと違い重大発表が”三つ”あります。その一つが新たなDランクアイドルの発表。もちろん貴女方だけではありません」

P「他にもDランクに上がるアイドルがいるんですね」

甲斐「そのアイドルと共演しておくのも大事ではないですか?」

539: 矢橋P 25/05/18(日) 15:36:56 ID:vacw

P「……ですが勝手にアイドルコードを作られたのには納得いきません」

甲斐「おや、今までアイドルコード無しでやって来たのに突然覆されたのが不満ですか」



P「…………」ググッ

甲斐(否定せずか。本当にそういうところが青臭いんですよ)

540: 矢橋P 25/05/18(日) 15:37:33 ID:vacw

甲斐「意地張っても何もならないですよ。貴女方のこれからのアイドル活動に必ず必要になってきます」

甲斐「今ここで詳しく述べることは出来ませんが」

P(Maihamanもそんなこと言ってたな。おそらく何かあるんだろうが……)ギリッ




 

541: 矢橋P 25/05/18(日) 15:38:03 ID:vacw

バンッ!



P「……っ」ビクッ

甲斐「素直に受け取りなさい!これは正当に評価した上で貴方方を認めた証です」

甲斐「他の職種ならともかく、アイドル業というのは認められてなんぼなんですよ!自分の思惑通りじゃないからといって他が快く評価したことを気に入らないというのはあなたの驕りです!」

542: 矢橋P 25/05/18(日) 15:39:00 ID:vacw

P「はい……」

甲斐「失礼、少し取り乱しましたね」コホン

P(この人も……こんな一面があるんだな)




甲斐「それに我々だけの判断ではありません」

甲斐「あれから真珠星はどっとっぷNetに加入していないのかとか真珠星にもアイドルコードという意見がツナミにも寄せられています。それに対応するためでもあります」

543: 矢橋P 25/05/18(日) 15:39:44 ID:vacw

P「そうだったのですね」

P「わかりました、アイドルランク授与及びアイドルショーウィンドウの参加承諾します」



甲斐「よろしい」

甲斐「アイドルショーウィンドウではDランクに格上げの紹介をしたのち1曲歌ってもらうことになってます」

甲斐「デビュー曲であるアイドルステアウェイ。まだライブで披露していなかったでしょう」


P「!」

P「ありがとうございます」

544: 矢橋P 25/05/18(日) 15:40:41 ID:vacw

甲斐「貴女方以外にもDランクに上がるユニットは三グループあります。貴女方含めた四ユニットで会場を盛り上げてくれることを期待しています」

P「了承いたしました」




甲斐「"アレ”まで時間がありませんよ」ボソ

P「え?」

甲斐「私の話しは以上です」












 




545: 矢橋P 25/05/18(日) 17:10:49 ID:vacw
その頃……

アメリカ ツナミグループ秘密基地







ジオット「やあホンフーくん。こないだは先生ごっこお疲れさま。楽しかったかい?」

ホンフー「ええ、とっても。それでこれが……」

546: 矢橋P 25/05/18(日) 17:11:33 ID:vacw

ゴゴゴ……



ジオット「そう。ドリームマシーンだよ。もう稼働しているんだ」

ホンフー「ほう!そうですか。いよいよですね」

ジオット「まあ大きな変化が現れるのはまだまださ。それでもう既に二号機も製作中なんだけど問題が一つあってね、電源の確保なんだよ」

ホンフー「確かにこれほど大きな機械があと一台となると大変でしょうね」

547: 矢橋P 25/05/18(日) 17:12:14 ID:vacw


ジオット「ところでこのニュースなんだけど……」ピロン

ホンフー「何々……カナダで地球温暖化によって溶けかかった氷河が突然30年前の元の姿に戻った。近いうちに被害が出そうだった村の住民が大喜び。尚、原因は不明と」

ジオット「うちの者に検証に行かせたんだけどね。あのピース・メーカーの仕業で間違いないらしい」

ホンフー「これはこれは、これだけの規模の氷河を再生させるとは。反エントロピー、完璧に使いこなせているようですね」

ジオット「さすが世界最強の超能力者だよね。だからさ、そろそろ”返してもらおう”って思うんだ」
 

548: 矢橋P 25/05/18(日) 17:13:43 ID:vacw

ホンフー「……ヒーロー連合と全面戦争になりますよ?あとサイボーグ同盟もピース・メーカーを狙っているらしいですしそちらとも交戦は避けられないかと」

ジオット「怖じ気づいたのかい?」

ホンフー「まさか。喜びを隠しきれないですよ」ウキウキ
 

549: 矢橋P 25/05/18(日) 17:14:02 ID:vacw

ジオット「今まで面白そうだから放っておいたけどどうせ世界は”メチャクチャ”になるんだ。最後にパーーッと遊ぼうじゃないか」

ジオット「まずさしあたって『デイライト』くんに行かせよう。あの子七年前の争いに参加出来なかったことに未だに文句言ってくるんだよ」

ホンフー「彼も暴れるのが好きですからねぇ。ヒーロー連合の拠点は日本にありますが甲斐さんにはそのことを伝えるのですか?」

ジオット「いや伝えないでおこう、この計画もピース・メーカーの件も。その方が楽しそうだ」
 

550: 矢橋P 25/05/18(日) 17:14:51 ID:vacw



ホンフー「しかしここまで七年かかりましたねぇ」

ジオット「大したことないよ、七年なんて。僕は個人的な復讐に十五年かけたんだ、世界をメチャクチャにする大業を考えればあっという間さ」

ジオット「さあ始めようじゃないか。カ タ ス ト ロ フ を!」








 

551: 矢橋P 25/05/18(日) 17:15:38 ID:vacw






翌日

地球プロ




昴「オレ達にアイドルランクが付くのかよ!?」

P「そういうことだ。ほぼ決定事項らしい」

552: 矢橋P 25/05/18(日) 17:16:20 ID:vacw

桃子「桃子達、今までアイドルコード無しで頑張って来たつもりだけど……」

桃子「結局アイドルランク付くことになるんだね。まあその方がファンのみんなは嬉しいと思うけど」

昴「なんだか釈然としないよな」

桃子「今までの苦労は何だったの。って感じだし、結局ツナミに上からに与えられたってのも気に入らないよね」



星梨花「私は嬉しいです。アイドルランクが付くの」アタフタ

桃子(星梨花さんは純粋だよね。本当は桃子達も変な意地張らず喜ぶべきなんだけど)

昴(星梨花はツナミとの確執がないからな……)

553: 矢橋P 25/05/18(日) 17:17:01 ID:vacw

P「みんな、色々不満もあるかもしれない」

P「でもこのアイドルランクはただ与えられたんじゃない。自分達の手で掴み取ったアイドルランクだ。そこは誇っていいと思う」




昴「……ま、あのツナミがオレ達にアイドルランクを与えざるを得なくなったって考えればそんなに悪くないかもな」

桃子「それも一気にDランクだしね」フフーン

星梨花(Dランク。……私、Dランクになったんだ)グッ

554: 矢橋P 25/05/18(日) 17:18:15 ID:vacw

昴「それで2週間後に簡易的なライブか。次から次だけど途切れないことはいいことだよな」

桃子「桃子、アイドルショーウィンドウに出場するの憧れてたしね」

P「披露するのはアイドルステアウェイだ。アイドルショーウィンドウまでの期間は遠くないがアイドル勝負じゃないし今までより楽なはずだ」

星梨花「それも嬉しいですね。あの曲は私達のデビュー曲、ファンのみなさんに届けたいと思っていました」
 

555: 矢橋P 25/05/18(日) 17:18:52 ID:vacw


桃子「……他にDランクに上がるアイドルがあと三グループあるんだよねお兄ちゃん?」

P「そう甲斐は言ってたな」

桃子「桃子がチェックしている限りじゃ間近でEランクからDランクに上がれそうな勢いがあるアイドルはいなかったような気がするけどなぁ」ウーン

星梨花「……Eランクで一番だった黒羽九羽さんが事務所ごと消えてしまいましたからね」
 

556: 矢橋P 25/05/18(日) 17:19:25 ID:vacw


P(あれからヤスベニプロは突如解散した。理由は不明だ)

P(所属していたのは黒羽九羽ただ一人だということと黒羽九羽自体他のアイドルから疎まれていたところもあって騒がれはしたけどもあまり影響がないらしい)

P(……俺が知る限りそのことを悲しんでいるのは星梨花だけだ)

星梨花(九羽さん……)










 

557: 矢橋P 25/05/18(日) 17:20:15 ID:vacw
次の日


地球プロ宿舎





ロコ「今日から昴のルームにムーブして来ましたロコと……」

海美「高坂海美だよーーーっ!」ウミミーン



P「……」ポカーン

ジュリア「……」ポカーン

桃子「……昴さん、誰なの」

昴「あ、うん……幼馴染みというか……」アタマオサエ

558: 矢橋P 25/05/18(日) 17:20:52 ID:vacw


海美「せりりんも久しぶりだねー」

星梨花「そうですね、海美さんロコさん」

海美「せりりんとまた会えて嬉しいよ。また一緒にお茶会しようねっ!」


桃子「海美さんもロコさんも星梨花さんとも知り合いなんだ」

海美「そうだよ!君がすばるんとユニットを組んでいる子だね。名前は?」

桃子「周防桃子です」

海美「じゃ、ももちんだね!」

桃子「ももちん!?」

559: 矢橋P 25/05/18(日) 17:21:30 ID:vacw
昴「だから住所教えたくなかったんだよな……」アア…

海美「昔みたいに一緒だねっ」ガシッ

ロコ「前はロコ達にトークしないでディサピアーして、もう逃がさないですよスバル!」ガシッ

昴「わかってるって」ハァー




ジュリア「この宿舎ももっと賑やかになりそうだな、P兄」

P「ああ……。このみ姉が簡単に同棲を容認するからだけどな」

560: 矢橋P 25/05/18(日) 17:22:03 ID:vacw
P「悪いなジュリア、後から活動したのに先にこっちがアイドルランク付いちゃって」


ジュリア「別に気にしてないぜ。あたしはちやほやされるのは得意じゃないしな」

ジュリア「少数でもいい。あたしを知ってくれる人にあたしだけの音を届ければいいって思うんだ」

ジュリア「それにツナミグループからのアイドルランクなんてまっぴらごめんさ」

P「はは、ジュリアらしいな」


ジュリア「それにあまり有名になりすぎると小回りが利かなくなって面白くないんだ」

ジュリア「あたしはちょくちょくマツや千鶴、その他のアイドルの裏ギター演奏として出させてもらっているけど有名になったらそんなこと出来ないだろ?」

P「まあ、そうだな」

P(それがジュリアのアイドル像か)

561: 矢橋P 25/05/18(日) 17:22:42 ID:vacw


そうして宿舎に新たな住人が増えた。昴と同棲するらしい
まあ昴の友人なら問題は起こさないだろう
特に高坂海美さんはスポーツのインストラクターだしお世話になることもあると思う

……なんか謎のオブジェが宿舎に増えた気がするが気にしないでおこう










 

565: 矢橋P 25/05/18(日) 20:42:16 ID:vacw







「やったーーー!憧れのims甲子園アリーナだー!」

「もう翼ったら。はしゃぎすぎよ」

「いいよね~静香ちゃんは既に経験済みで」

「野球の甲子園には来たけど、アイドルの甲子園には来たこと無かったから楽しみ~」

「やった、未来も私の仲間~。静香ちゃんだけ仲間外れだね」

「全くもう……」










 

566: 矢橋P 25/05/18(日) 20:43:06 ID:vacw
そして本番






パッ!



MC「レディースアンドジェントルメン!」

MC「アイドル好きのみんな高まっているかい!」




\ワーーーーーーッ/

567: 矢橋P 25/05/18(日) 20:44:07 ID:vacw

MC「アイドルの最先端、アイドルショーウィンドウを今回も発信させてもらうよ!」






\ワーーーーーーッ/




MC「だが今回のアイドルショーウィンドウはひと味違う。何と重大発表があるんだ!告知済みだからみんな知っていると思うけど楽しみにしていてくれ!」






\オオーーッ?/

568: 矢橋P 25/05/18(日) 20:44:45 ID:vacw

MC「さていつもならアイドルのライブを噛まして場を盛り上げてから発表するのが恒例だけど今回は発表が先らしい」

MC「重大発表を今回のアイドルショーウィンドウ主催者であるアイドル業界総括者代表、上守甲斐代表から発表してもらうよ」





ザワザワ ザワザワ ザワザワ




「甲斐代表自ら!?」

「これはただ事ではないな」

569: 矢橋P 25/05/18(日) 20:45:39 ID:vacw

甲斐「会場のみなさん。お集まりいただきありがとうございます」

甲斐「また配信をごらんのみなさんもよろしくお願いいたします」


甲斐「まず最初に、本日付けでDランクに上がるユニットが存在します」




パッ!




甲斐「まずは765プロから。今人気のシアタープロジェクト。それは765プロの劇場内での活動でした」

甲斐「ですがこのたびアイドルランクとコードを得て外部にも打って出てくれるようです」



\オーーーーッ!!/

570: 矢橋P 25/05/18(日) 20:46:45 ID:vacw

甲斐「では劇場から抜け出し、アイドル業界で活動する時の彼女達の姿を紹介しましょう」


甲斐「Dランク、シアタープロジェクトのセンター『最上静香』とライバルを自称する『伊吹翼』。それに期待のニューホープ『春日未来』を加えた『ストロベリーポップムーン』!」






\ウォーーーーッ/





未来「よろしくお願いしまーす」ペコリ

翼「みんなー。私達のセンターは未来だよー!」

静香「皆さんどうか見守ってください」

571: 矢橋P 25/05/18(日) 20:47:14 ID:vacw

パッ!



甲斐「同じく765プロから。Dランク、最上静香と一緒にims甲子園を優勝した『北沢志保』その才能は伊吹翼に勝るとも劣らない『矢吹可奈』ims甲子園では絶妙のコンビを披露し劇場でもそれは健在『横山奈緒』と『佐竹美奈子』。以上四名で構成した『Clover』!」





\ウォーーーーッ!!/




奈緒「よろしく頼むでー!」

美奈子「劇場外でも私達の応援よろしくお願いしまーす!」

可奈「これからだね志保ちゃん」

志保「ええ。そうね」

572: 矢橋P 25/05/18(日) 20:47:41 ID:vacw

甲斐「一応誤解がないようにお伝えしますがシアター公演が無くなるわけではありません。あくまでシアター外で活動する時の姿だと申しておきます」





P「まさか765プロから出すとは……」

P(ということは今回Dランクに上がるアイドルユニットは全部アイドルランクが元々無かったユニットなのか)





 

573: 矢橋P 25/05/18(日) 20:48:12 ID:vacw

甲斐「次は地球プロ、最近話題でこの場で知らない人は少ないでしょう。あの黒羽九羽との勝負を受け勝って見せた『箱崎星梨花』。そしてアイドル復帰した『永吉昴』。二人を支える『周防桃子』。その三人のユニット『真珠星』!」



\ワーーーーーーッ!!/




星梨花「みなさんありがとうございます!」

桃子「ありがと……って昴さんどうしたの」

昴「……いや、何でもない」

昴(静香に志保。それに未来が来てたのか。……なんか複雑な気分だな)





 

574: 矢橋P 25/05/18(日) 20:48:40 ID:vacw

甲斐「そして最後に573プロ。Dランク。ユニット名は『ブラスジョーカーズ』、箱崎星梨花に敗れたものの実力には問題無し『黒羽九羽』。永吉昴同様、一度引退したが戻ってきた元新幹少女の『日笠山ひかり』そして未知数だが二人をまとめ上げる実力は本物、『小望月ケイ』!」

※日笠山ひかり(ひがさやひかり) 小望月ケイ(こもちづきけい)





\ワーーーーーーッ!!/





黒羽「ったく、負けたことを散々いじってくれるなぁ」

ひかり「黒羽、その威圧的な態度直しなよ。あなた一人じゃない、私達ユニットでしょ?」

黒羽「わかってるって」

ケイ「……」

575: 矢橋P 25/05/18(日) 20:49:07 ID:vacw


昴「げっ、あいつ……」

星梨花「九羽さん!」

桃子「573プロに移っていたんだね」







 

576: 矢橋P 25/05/18(日) 20:49:34 ID:vacw

甲斐「以上四ユニットが本日からDランクです」

甲斐「それを踏まえもう一つ重大発表をさせていただきます」




ザワザワ ザワザワ ザワザワ





黒羽「私達を集めておいて何だっていうんだ?」

ひかり「どうかしらね……」



奈緒「ここまで上げといて冗談とかではないやろ」

美奈子「いったい何だろうね」

 

577: 矢橋P 25/05/18(日) 20:50:31 ID:vacw

甲斐「我々ツナミグループは世界規模のアイドルの大会を開くことに決定しました」

甲斐「名前はWorld・Destiny(ワールド・ディスティニー)。ただの大会ではありません。トップアイドルを決める大会です」




ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ



甲斐「トップアイドルと言われてもピンと来ないでしょう。世界一のアイドルだけでは漠然とし過ぎていますから」

甲斐「World・Destinyはアイドル史上初の”Sランク”アイドルを決める大会です」





\グワッ!/

578: 矢橋P 25/05/18(日) 20:51:37 ID:vacw

甲斐「存在はあっても今まで誰も受けることが無かったSランク。それに到達出来ればまさしく名実ともにトップアイドルと名乗ってもいいでしょう」




\ウォーーーーッ!!/





甲斐「開催時期や内容はまだ未定です。ですがこれだけは伝えておきます」

甲斐「参加資格は”Bランク以上”であることです」




九羽「!!」

静香「!!」

志保「!!」

可奈「!!」

P(そのためのアイドルランク授与か!)

579: 矢橋P 25/05/18(日) 22:37:19 ID:vacw

甲斐「出場したいアイドルは開催までにアイドルランクをBランクまで上げてください。以上、私からの発表とさせていただきます」



ダン




\ウォーーーーーーーッ!!/

580: 矢橋P 25/05/18(日) 22:38:23 ID:vacw
志保「……なるほどね」

可奈「とんでもないことだね。……ふふっ、楽しくなりそうかな」

未来「よくわからないけど大変なことなんだね」

翼「いいじゃん、燃えてきたよ」

静香「私達も出場出来るように頑張るわよ」







P(これが……このみ姉が言っていたツナミが開催する大きな大会)

P(だとすれば……出場しないわけにはいかない)

P(ツナミめ。大会の裏で何を企んでいる?)

581: 矢橋P 25/05/18(日) 22:39:02 ID:vacw

MC「それでは本日Dランクに上がったアイドル達の実力を披露してもらいましょう」

MC「各ユニットで一曲ずつ披露してもらいます!」






\ワーーーーーーッ!!/

582: 矢橋P 25/05/18(日) 22:39:26 ID:vacw
そして




「「「ストロベリーポップムーンでABSOLUTE_RUN!!!でした!!!」」」








\ワーーーーーーーーーーーーッ!!!!/

583: 矢橋P 25/05/18(日) 22:40:03 ID:vacw

MC「素晴らしい!四ユニット全てが素晴らしいパフォーマンスだったぞーーっ!」

MC「さて最後に最後の重大発表だ」



ザワザワ ザワザワ ザワザワ ザワザワ




MC「何と!ツナミグループから新たなアイドルが誕生する」





\お~~~っ?/

584: 矢橋P 25/05/18(日) 22:41:03 ID:vacw

MC「御存知の通りツナミグループにはMaihamanしか所属していなかった」

MC「今回新たに3年振りにツナミグループからデビューするニューアイドル!」


MC「『ジナイダ』!!!」






パーーーン

585: 矢橋P 25/05/18(日) 22:41:39 ID:vacw


ジナイダ「全く、騒がしいなオマエら。あまりうるさいとヴァルハラに送るぞ!」グイッ



シーーーン



MC「な、なかなか個性的なアイドルのようだね。彼女はFランクからのスタートだ。ユニットを組まずソロで活動するようだからよろしく!」




そうしてアイドルショーウィンドウは過去最大の盛り上がりを持って終了した

586: 矢橋P 25/05/19(月) 10:06:16 ID:GI1m









地球プロ控え室




桃子「ツナミグループのニューアイドルね。もうSNSで拡散されて大きく話題になっているみたい」

星梨花「ジナイダさん、なんだか不思議なアイドルでしたね」

昴「というかあまりアイドルらしくないよな」

P(確かに。あれがツナミグループが満を持して繰り出すアイドルなのか?)

587: 矢橋P 25/05/19(月) 10:07:00 ID:GI1m

ガチャ





九羽「よぉ」

星梨花「九羽さん!」

P(黒羽九羽!)

588: 矢橋P 25/05/19(月) 10:07:50 ID:GI1m

桃子「何の用?」

九羽「あ……警戒すんなって。箱崎星梨花とちょっと話しがしたいだけだよ。喧嘩売りに来たわけじゃない」




星梨花「573プロに移ったんですね」

九羽「ああ、親父とは絶縁した」

星梨花「えっ」

589: 矢橋P 25/05/19(月) 13:58:08 ID:Jw7V

九羽「勘違いすんなよ、元々私は親父が大嫌いだったんだ」

九羽「……『アイドルに家柄は関係ない』憎たらしいけどあんたのいう通りだ。あんたの言葉通りに再出発させてもらう。憎たらしいけどな」

桃子(二回言った!)


星梨花「すごいです」

九羽「あぁ?」

星梨花「私はいくらアイドルになるのを反対されても絶縁なんて出来ませんでした。それが出来た九羽さんはすごいです」

九羽「そこは私を哀れむ場面だろ。ったくお前の顔を見てると調子狂うな」
 
星梨花「ふふっ」
 

590: 矢橋P 25/05/19(月) 14:00:19 ID:Jw7V

九羽「前回は負けたけど今度は負けねぇ。私だって二人の仲間が出来て三人のユニットだ。これで人数も五分だぜ」




ひかり「こら、あなた結局喧嘩売ってるんじゃない」ガシッ

九羽「喧嘩売ってるわけじゃねぇよ、ひかり姉」




ひかり「昴も久しぶり」

昴「ああ、久しぶりだな。5年振りぐらいか」

桃子「……そういえばひかりさんは昴さんが前にアイドルしていた時に新幹少女として共演していたね。テレビで何度も見たよ」

591: 矢橋P 25/05/19(月) 14:00:52 ID:Jw7V

昴「あの頃は同時期にデビューしたスポーティーアイドルとして何かと比較されたよな」

ひかり「そう、あなたは私の最大のライバルだった」

ひかり「何で突然アイドル辞めたの」

昴「ごめん……色々あったんだよ」
 

592: 矢橋P 25/05/19(月) 14:01:24 ID:Jw7V


桃子「ひかりさんも昴さんが辞めてからしばらくして辞めたよね」

ひかり「あなたが辞めたら急につまらなくなって……ね。あの頃はツナミが躍進していた頃だったし」

昴「……まさかオレが復帰したからアイドル復帰したのか」

ひかり「そうよ。またあなたとステージで勝負したくてね」フフッ

九羽「ひかり姉も人のこと言えねぇじゃねーか」ズーン

 

593: 矢橋P 25/05/19(月) 14:02:02 ID:Jw7V

桃子「九羽さんは星梨花さんに、ひかりさんは昴さんに確執がある感じなんだね」

昴「ブラスジョーカーズは対真珠星ユニットってことなのかよ」

ひかり「そんな、偶然じゃないかしら」フフッ

P(まあアイドル達はその気じゃなくてもプロデュースしている側は真珠星を意識はしているだろうな。ただデビューするよりは話題に上がれるし)

P(もちろん、あの上守甲斐がDランクと認めたメンバーだ。ただそれだけの一発狙いなユニットではないだろう)

594: 矢橋P 25/05/19(月) 14:02:33 ID:Jw7V

星梨花「それならブラスジョーカーズの最後の方は桃子さんの知り合いですか?」

P「そんな漫画みたいな……」

桃子「期待されても小望月ケイさんは桃子とは何も接点ないと思うよ」



九羽「へっ、リーダーは無名だけどすげぇんだぜ」

ひかり「九羽、あなたが言うと小悪党みたいになるからやめて」

P(リーダー?九羽やひかりより上なのかその小望月ケイってアイドルは)

595: 矢橋P 25/05/19(月) 14:03:04 ID:Jw7V

九羽「そういえばリーダーはどこ行ったんだよ」

ひかり「リーダーなら765プロの控え室に行ったわ」








 

596: 矢橋P 25/05/19(月) 14:04:09 ID:Jw7V

765プロ 控え室







ケイ「ごきげんよう最上静香」



志保「……」

翼「お姉さん誰~?」

未来「静香ちゃんのお友達?」

597: 矢橋P 25/05/19(月) 14:04:42 ID:Jw7V


静香「……」

静香「今の名前は”十四番”じゃないんですね」


美奈子「!!」

奈緒「ってことはims甲子園決勝戦の人か」

598: 矢橋P 25/05/19(月) 14:05:43 ID:Jw7V

ケイ「今度は気付いてもらえたわね」フッ

静香「あの決勝戦の激闘は忘れたくても忘れないわよ」

静香「あなたがここにいるのなら十三番高校の人は……」

ケイ「私以外は未だにベット上よ、野球部も含めてね。何故か私だけ復帰出来たの」

静香「……っ」

未来「そうなんだ……」

599: 矢橋P 25/05/19(月) 14:06:23 ID:Jw7V

ケイ「彼らと彼女らは望んでああなったの。あなた達は気にしなくて結構よ」

ケイ「それに彼女達の分まで私は立つから。今度はあなたを倒してね」



静香「今度も負けませんよ」

ケイ「そう、今度こそ勝つわ」





 

600: 矢橋P 25/05/19(月) 14:07:15 ID:Jw7V
ガチャ





九羽「あーっ、リーダーここにいたのかよ」

星梨花「765プロのみなさんよろしくお願いします」



奈緒「なんや、ブラスジョーカーズに真珠星のメンバーまで来たんか」

美奈子「これで今日のDランクアイドル全員揃ったね」

601: 矢橋P 25/05/19(月) 14:08:25 ID:Jw7V


昴「……」

静香「……」



静香(言いたいことは色々ありますけどみんながいるこの場はお互い抑えましょう)アイコンタクト

昴(さすが静香はわかってるな)アイコンタクト




未来「あーっ、昴監督だ~!」ダキッ

昴「げっ!」ギュー

静香「ちょっと未来!?」

602: 矢橋P 25/05/19(月) 14:10:11 ID:Jw7V

九羽「へっ、どうせ揃ったんなら宣言するぜ。この中で一番先にCランクに上がるのは私達ブラスジョーカーズだ!」

ひかり「九羽、あなた!」



可奈「何言ってるの、私達が一番だよ」

志保「同意見よ、好戦的アイドルさん?」



翼「みんな私と静香ちゃんに勝てると思ってるの~?未来はまだまだ修行中だけど」

未来「翼ひど~い。私だって頑張ってるもん」ギュー

昴「未来、抱きつくなよー」

603: 矢橋P 25/05/19(月) 14:11:28 ID:Jw7V

九羽「真珠星はどうなんだ。センターの星梨花さんよ」



桃子「みんなずいぶん好戦的だね」

星梨花「……」

星梨花「私達、真珠星も負けません!」グッ



ひかり「やる気だね」

九羽「さすが。私に喧嘩売って勝ったんだ。そうこなくちゃな!」
 

604: 矢橋P 25/05/19(月) 16:41:03 ID:Jw7V
パチパチ


高木社長「いやー、いいじゃないか。アイドル同士の触発、何事にも代えがたいものだ」





静香「社長さん!」

志保「社長さん!」


昴「社長ってことは……」

九羽「げ、高木順二郎かよ」

605: 矢橋P 25/05/19(月) 16:42:25 ID:Jw7V


静香「社長さんが何故ここに?」

高木社長「甲斐くんに招待されていたんだよ。彼女とは最上くん達のアイドルランク授与のことでやり取りしていたからね」


ケイ「765プロダクションの社長さん、このたびは……」

高木社長「急にかしこまるのはやめたまえ。この場の主役はアイドル諸君なのだからね」

高木社長「だから各事務所のプロデューサーにも下がってもらっているんだよ」

桃子(あ、そういえばさっきからお兄ちゃんがいないと思ったら……)

606: 矢橋P 25/05/19(月) 16:43:36 ID:Jw7V

九羽「……だったら何で出てきたんだよ、おっさん」

ひかり「九羽、そんな口の利き方はないでしょ」



高木社長「いいんだ、九羽の言うこともごもっともだからね」

高木社長「本来、私がこの場に現れてはいけないのだろうが……我慢出来なくてつい顔を出してしまったのさ」

志保「そこまでして感じたいことがあったんですか」

高木社長「この場の空気を吸いたかったんだ。もう堪能させてもらったから十分だよ」


高木社長「……最後に一言いいかね」

607: 矢橋P 25/05/19(月) 16:44:11 ID:Jw7V

高木社長「今この場には十三人のアイドルがいる」

高木社長「所属事務所も歳も経歴もみんなバラバラだ」

高木社長「しかし、そんなものはアイドルの本当の輝きには関係ないものだ」

高木社長「今、君たちは全員Dランク。つまり皆等しくアイドルとして同じスタートラインに立っているのだよ」

高木社長「やる気に満ちた同期がこんなにいて切磋琢磨し合える。こんな幸せなことはないんだよ。これはアイドルに限らず全てにおいてもそうだ」

高木社長「これから色々なことがあるだろうがこの同期の縁は大事にしたまえ。一生の宝になるぞ」

608: 矢橋P 25/05/19(月) 16:45:06 ID:Jw7V
奈緒「……」

美奈子「……」

ひかり「……」

桃子「……」



高木社長「実はアイドルランク授与に関しては甲斐くんの方から我が事務所に打診が来たんだ。私は即座に承諾したがね」

高木社長「最上くん達にこれほどのライバルを作れる。むしろ私が甲斐くんに頭下げたい思いだよ」

静香「社長……」

609: 矢橋P 25/05/19(月) 16:45:37 ID:Jw7V

高木社長「World・Destinyだったね。Sランクのアイドルひいてはトップアイドルを誕生させるか」

高木社長「ツナミグループも思いきったことをするもんだ。私や黒井が何十年も出来なかったことだからね」



志保「……」

可奈「……」

昴「……」

翼「……」

610: 矢橋P 25/05/19(月) 16:46:36 ID:Jw7V

高木社長「……だがその発表と同時期に君たちにDランクの授与をした。甲斐くんは何らかの意図があって、そうしたのだと思っているのだよ」

高木社長「もしかしたら、優勝するのはこの中のユニットのどれか……かもしれないね」


星梨花「!!」

静香「!!」

ケイ「!!」

611: 矢橋P 25/05/19(月) 16:47:23 ID:Jw7V

高木社長「まずはもっと昇進しアイドルランクが上がるように頑張りたまえ。それじゃ失礼するよ」


スタスタスタ






ガチャ

612: 矢橋P 25/05/19(月) 16:48:00 ID:Jw7V
廊下




スタスタ


高木社長「……」



スタスタ



ピタッ


高木社長「全ては……君の想い描いた通りかな?」

613: 矢橋P 25/05/19(月) 16:48:55 ID:Jw7V
スッ



甲斐「そんなことはないですよ。私がしたことは彼女達を舞台に上げただけ」

甲斐「後は上がるも落ちるも彼女達次第です」

甲斐「私に出来ることなど……これくらいのもの」


高木社長「ツナミグループの上部に立ち、日本の経済を掌握している君が随分謙遜することを言うじゃないか」

高木社長「…おっと失礼。君もアイドルを、Maihamanをプロデュースしている時があったのだったね」

614: 矢橋P 25/05/19(月) 16:49:37 ID:Jw7V

甲斐「アイドルとは不思議なものです。私もジオット会長がツナミのアイドル部門を作ると聞いた時は懐疑的でした」

甲斐「アイドル部門が立ち上がったばかりの時、軌道に乗るまでの間だけ関わるつもりでしたが……いつの間にか心に残ってしまった」


高木社長「出来れば君とは別の形で会いたかったよ。君がプロデューサーとしてね」

甲斐「それは無理な話しです。私にそんな光の当たる仕事は……出来ない」

高木社長「……そうか。残念だよ」








 

615: 矢橋P 25/05/19(月) 16:50:11 ID:Jw7V
とある場所









ジナイダ「やれやれ」


シュタッ!


ホンフー「どうですかジナイダ。アイドルになった気分は」

616: 矢橋P 25/05/19(月) 16:51:08 ID:Jw7V

ジナイダ「ジナイダには理解出来ない」

ジナイダ「ジオット様は何故ジナイダにアイドルなんてやらせようとしたのか」


ホンフー「あなたをアイドルとして大成させたいわけじゃないのですよ。全てはWorld・Destinyのためです」

ホンフー「これからアイドルやプロデューサーとして大会に潜り込んでくる反ツナミの輩がいるかもしれませんからね」

ホンフー「いざという時に備えて誰かを潜り込ませておいた方がいいのですよ」

617: 矢橋P 25/05/19(月) 16:52:22 ID:Jw7V

ジナイダ「理由は理解出来たが……ジナイダである必要があったのか?」

ジナイダ「アイドルならホンフーがやればよかったではないか」

ホンフー「こんな顔ですが私は男なんですよ」

ホンフー「私も補佐しますよ。しばらくは日本で活動することにしましたのでね」










第六章   終わり

618: 矢橋P 25/05/19(月) 23:34:43 ID:Jw7V

ここで明言しておかなきゃいけないですが
このSSのタイトルは『燃えろ!アイドルリーグ編』です

アイドルリーグって何? スレのタイトルと違うんだけど? って話ですが
(スレタイの P「……地球プロ?」 は作者の第一作品目の 昴「……怪奇ハタ人間?」 の原点回帰でありオマージュ)

元々このSSのあらすじは『星梨花達がアイドルランクを上げていって最終的にツナミが主催する大会に参加する』というもの

つまり……ここからが本番なんです!
前話で真珠星が黒羽九羽を倒すまでは序章というかチュートリアルというかそんな感じ

619: 矢橋P 25/05/19(月) 23:36:51 ID:Jw7V

でもだからといって完結まで今までの話数の何倍も話しが続くということではないです
物語の軌道に乗ったというだけで完結までそこまで長くなる予定はないです

Dランクになってから新たな要素、新たなライバルと新要素を沢山出しましたがパワポケ14を知ってる人ならすぐに分かる”あの要素”がまだ登場していません
次の次の話ぐらいで登場予定です

620: 矢橋P 25/05/19(月) 23:42:42 ID:Jw7V

というわけで新章といった感じで次の話に入る時は新スレを立てます
この時点で600レス超えているのに1000レスまでに完結出来るわけないですから
中途半端なタイミングになる前に切りの良い今のうちに次スレに行きます

ですがストックも尽きたのでしばらくは更新しないかも。副業もありますし
まあ、待っている人もいないと思うのでのんびり書き上げます
ここまでのご視聴ありがとうございました
 

621: 矢橋P 25/05/19(月) 23:46:39 ID:Jw7V

黒羽九羽   星梨花のライバル

元ヤスベニプロアイドルで今は573プロ所属アイドル
サンピアザホールでの真珠星とアイドル勝負の後ヤスベニプロを退所して573プロに移籍した
同時期に父親とは絶縁している

その後組まされたブラスジョーカーズでは末っ子扱いだが本人もまんざらでもないようだ ●


622: 矢橋P 25/05/19(月) 23:49:35 ID:Jw7V

日笠山ひかり   スポーティアイドル

昴のライバルを強烈にライバル視するスポーティ-アイドル 
昴に対抗心を燃やしてはいるが昴のことは嫌いではない、むしろ好意的
千鶴やまつり同様、ツナミショックが始まる前からアイドルをしていたが第二次アイドルブームのさなかにアイドルを辞めている

彼女以外にも第二次アイドルブームの煽りを受けて辞めた既存のアイドルは大勢いる
だが昴が復帰したことを受け、全てをはね除けて彼女はアイドルに復帰した ●

623: 矢橋P 25/05/19(月) 23:51:28 ID:Jw7V

小望月ケイ   ブラスジョーカーズのリーダー

かつて十三番高校アイドル部エースで元アイドル
アイドルを始めた時期はひかりが辞めた後なのでひかりは彼女のアイドル活動を知らない
一年前のims甲子園の決勝戦で最上静香率いる開拓高校と対決し敗れた
その後ホンフーの実験の手によって相当に酷使された体は限界を越え入院
他の部員共々、日常生活への復帰は絶望的というほどの状態に陥るも彼女だけ奇跡的に容体が回復した
医者も不思議がるのを尻目に彼女は直ぐさまアイドルを復帰することを決意した
他の部員達の想いと最上静香へのリベンジの心を持って ●

624: 矢橋P 25/05/19(月) 23:57:29 ID:Jw7V

最上静香   シアタープロジェクトのセンター

ims甲子園の優勝者。その実績で親を認めさせ無事アイドルに
だがims甲子園を優勝してから卒業するまで(その時には765プロ入りが決まっていた)の間にツナミVSアイドル事務所連合の対決が起こり
その後765プロ含めたアイドル事務所連合はツナミに敗北
敗北後制裁を受け彼女が加入前から765プロは崖っぷちの状態であった
最悪の時に入所したと言えるが開拓高校で様々なことを乗り越えていた彼女は全く動揺もせず
その力強い歌声と”アイドルは希望”という強い意志でシアターでのリーダー的な存在となり
多数の人が765プロを見限るなか事務所の命運をかけたシアタープロジェクトを牽引し、見事765プロ復活を成し遂げた ●

625: 矢橋P 25/05/19(月) 23:59:38 ID:Jw7V

伊吹翼   天才シアターアイドル

シアタープロジェクトのアイドルの一人でシアタープロジェクトのエース
相手の機微を察する観察眼も健在で彼女の強い武器
最上静香のライバルを公言してはばからず、シアター公演でも結構煽ったりもする
ただストロベリーポップムーンの時は未来を案じて控えているようだ ●

626: 矢橋P 25/05/20(火) 00:00:52 ID:zkoB

春日未来   シアタープロジェクトのニューホープ

最上静香と伊吹翼の幼なじみ。最近765プロに入所した
開拓高校卒業後、苦難の道に向かった幼なじみを激励しながら見送るも
一年間悩みに悩み彼女も幼なじみ達を追いかけることに決めた
歌やダンスを踊るのも小学生以来で、まだ拙いが開拓高校野球部のキャプテンであったため体力は静香達よりもある
そんな彼女がストロベリーポップムーンにおいてはセンターだが静香と翼のサポートもあり765プロの顔となれるユニットとなっっている ●

627: 矢橋P 25/05/20(火) 00:02:54 ID:zkoB

北沢志保   シアタープロジェクトの参謀

静香が立ち直りの立役者。静香と一緒にims甲子園を優勝、その後静香と共に765プロに入所した
アイドルの実力こそ他には劣るものの一歩退いて冷静に判断することが得意
意外に熱くなりやすい静香や自由奔放の翼を上手く誘導しコントロールすることも

可奈と奈緒と美奈子のユニットCloverは特にセンターを設けてないが彼女が実質リーダーである
可奈とはだいぶ仲を取り戻した ●

628: 矢橋P 25/05/20(火) 00:04:02 ID:zkoB

矢吹可奈   闘争的なシアターアイドル

翼と一緒に765プロに加わったシアターアイドル。志保の幼なじみ
混黒高校での苛烈な性格はだいぶ柔らかくなり志保とも向き合えた
Cloverではエースを務め、最近は特に歌に力を入れているらしい ●

629: 矢橋P 25/05/20(火) 00:05:14 ID:zkoB

横山奈緒   活発!なシアターアイドル

シアターアイドルの切り込み隊長。盛り上げ上手でシアター公演でも一番手を任されることが多い
大阪からこちらに引っ越してきて戸惑いも多いが美奈子のフォローで何とかなっている
彼女の元気さはシアタープロジェクト始動時の猛烈な時にも周りも元気づけた


関西の星は未だに諦めていない ●

630: 矢橋P 25/05/20(火) 00:06:26 ID:zkoB

佐竹美奈子   シアタープロジェクトのお姉さん

765プロにスカウトされ奈緒と一緒に入所したシアターアイドル
静香達と歳は一緒だが気遣いが上手く、シアターアイドルのお姉さんのようなポジションである
彼女もまた包容力でシアタープロジェクトを支え続けた


ただ、最近になって奈緒の他に可奈の体型の調整も狙っていることが発覚した ●

引用元: P「……地球プロ?」