0001以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 00:41:30.64ID:ZMjcGUpz0
幼「……そういえば学校に行かなくていいの? 大学、テスト近いんでしょ?」
男「……雨の日はお前のそばにいるって約束しただろ」
幼「そうだったね……ねぇ、男」
男「ん?」
幼「……神様って、ひどいよね」
男「あぁ、神様なんて本当にいたら……ぶん殴ってやる」
幼「……」
0005以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 00:44:02.73ID:ZMjcGUpz0
幼(今日は晴か……男、来てくれないんだろうな……)
男「お、珍しく朝から起きてるな」
幼「あ……」
男「髪ぼさぼさだぞ。すぐにとかしてやる」
幼「……ありがと」
幼「……何か、あった?」
男「……神様に会った……って言ったら信じるか?」
幼「信じるよ。男は嘘つかないもん……」
男「……そっか」
幼「それで、神様になんていわれたの?」
男「……さぁな」
0009以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 00:46:21.63ID:ZMjcGUpz0
幼「……神様って、どんな人だった?」
男「背が低くて男っぽい女」
幼「……浮気?」
男「お前一筋だから安心しろ」
幼「……えへへ」
男「……気に入らないことを言われて殴ってきただけ」
幼「……女の子を殴っちゃったんだ」
男「……神様は女にカウントされるのかな?」
幼「……それで、気に入らないことって何?」
男「……内緒だ」
0010以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 00:48:59.10ID:ZMjcGUpz0
幼「……ねぇ、何か悩んでる?」
男「なにも」
幼「言葉のやり取りの間に間が開いてたよ」
男「……ただ声を出したくないだけだよ」
幼「ほら、また……」
男「……」
幼「悩まなくていいんだよ。僕がどんな悩みでも聞いてあげる」
男「聞かなくていい。だからお前は……どこにも行かないでくれ」
幼「……わかってる」
0011以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 00:50:19.75ID:ZMjcGUpz0
幼(もう帰っちゃった……大学あるし仕方ないよね……)
幼(男、すごく落ち込んでた……まるであの時みたいに……)
幼(……やっぱり、僕、男に嫌われてるのかな……)
0013以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 00:53:21.98ID:ZMjcGUpz0
男(……幼馴染……)
男(どうしてだよ……なんで、あいつが……)
男(神がいたら……本当に殴ってやりたい……)
0015以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 00:57:41.84ID:ZMjcGUpz0
幼「……なんだか最近毎日来るね」
男「雨のせいだ」
幼「雨なんて降ってないよ?」
男「泣ける漫画を読んじゃったからな」
幼「……そっか。じゃあ、僕が慰めてあげる」
男「……お前の胸じゃ顔を埋められないよ」
幼「……そんなに貧 かなぁ……」
男「あれ、気にしてた?」
幼「……一応女だし……」
男「なら一人称と髪の長さと胸の大きさを直せ」
幼「一番後者は直しようがないよ」
0017以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 01:00:07.38ID:ZMjcGUpz0
幼「……あ、雨だ」
幼(今日は、男、来てくれるんだろうなぁ)
幼(あれ、でも最近毎日来て……)
幼「あ……れ……」
幼(どうしたんだろう……体が、動かない……)
幼(……そっか、神様って……そういうことだったんだ……)
0018以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 01:03:06.84ID:ZMjcGUpz0
男「……起きたか?」
幼「まだ生きてたんだ」
男「何言ってるんだよ、貧血で倒れたくらいで」
幼「……わかってるよ、長くないんでしょ?」
男「そんなわけ!」
幼「……あるんだよね」
男「……」
幼「……ごめんね、男だけ、残しちゃって」
男「……大丈夫だ、絶対に助かる。だから……」
幼「疲れちゃったんだ……すこしだけ、寝たいな」
男「……わかった、絶対に起きろよ」
幼「うん」
0021以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 01:10:28.86ID:ZMjcGUpz0
幼(あれから、もう2年になるんだ)
幼(僕と男の両親はすごく仲がいい4人組だった)
幼(僕と男を連れて、いろいろな場所に遊びに行ってた……)
幼(そんな関係だったこともあり、僕も男も、すごく仲がよかった)
幼(でも、あの雨の日に、僕らの人生のなかで最悪の事件が起こった)
幼(……僕らを含む2家族、合計6人を乗せた車が、トラックにあおられた挙句、崖から転落するという事故)
幼(トラックの運転手は僕らが転落したのを見て、即逃げ出し、未だにつかまっていない)
幼(生き残ったのは僕と男だけで、僕に関しては内臓を数個、失ってしまった)
幼(最初は警察もトラックの行方を捜してくれたが、世間から事故の記憶が薄れていくと同じように、警察は事件から手を引いていった)
幼(男は、未だにトラックの行方を一人で捜し続けている。多分、僕には内緒にしているつもりなんだろうけど……正直バレバレだ)
0022以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 01:12:15.96ID:ZMjcGUpz0
幼(……そして、最近男は神様に会ったと言っていた)
幼(今の僕にとっての神様……おそらく、病院の先生だろう)
幼(僕の命も、もうすぐ尽きるに違いない。だから……)
幼(結局、男には……迷惑ばかりかけたなぁ……)
0025以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 01:15:15.61ID:ZMjcGUpz0
男「……」
幼「……男」
男「ん、何だ、もう起きたのか?」
幼「……ありがとう、もう、無理しなくていいんだよ」
男「え、何言って……」
幼(ごめんね……もっと言いたいことはいっぱいあるんだ)
幼(でも、全部伝えたら、男はきっと全部抱えたまま生きて行っちゃうから)
幼(だから……)
幼「……僕の分も、幸せになってね。約束、して」
男「……おまえ、まさか……」
幼「……ありがと」
幼(大好きだよ、男)
0027以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2011/11/29(火) 01:22:58.48ID:ZMjcGUpz0
男「……雨だ」
男(雨は嫌いだ。雨の日には冷たい思い出しかないから)
男(そいつは、女の癖に男っぽいしゃべり方をする奴だった)
男(そいつは、自分よりも他人のことばかりを考える奴だった)
男(そいつは、俺のことをよく知っていて俺の揚げ足を取るのが得意な奴だった)
男(そして、そいつは……俺にとって、最愛の相手だった)
男「……なぁ、最後の約束、お前がいなきゃ果たせないよ……」
男「だって、お前のそばにいられた時間以上に、幸せな時間なんて……この先絶対ありえないから……」
空を見上げると、いつかと同じ色をしていた
神様なんていないと実感したあの日と同じ空の色
もう死ぬんだと思ったあの日と同じ空の色
それでも、守りたいものを見つけたあの日と同じ空の色
ただ、あの日と違うのは……男の右手に、小さなぬくもりが宿っていないという事だけだった
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