1: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:07:18 ID:???00
梢「久しぶりね……いえ、二月ほど前に来たばかりだったわ。うふふ」
梢「近くまで来たらつい寄ってしまうの。気付けば十年も経ってたわね」
梢「……」
梢「前来た時も同じ話をしたかしら?」
梢「駄目ね。何度も来て同じ話ばかりするなんて」
梢「……金沢なのだからお出かけするたびに寄ってしまうわね」
梢「花帆は本当に蓮ノ空が大好きだったのね。ここからならいつでも見られるわ」
梢「近くまで来たらつい寄ってしまうの。気付けば十年も経ってたわね」
梢「……」
梢「前来た時も同じ話をしたかしら?」
梢「駄目ね。何度も来て同じ話ばかりするなんて」
梢「……金沢なのだからお出かけするたびに寄ってしまうわね」
梢「花帆は本当に蓮ノ空が大好きだったのね。ここからならいつでも見られるわ」
2: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:12:10 ID:???00
パチャパチャ
梢「来るたびにお墓の掃除をしてるから、砂埃くらいしかついてないわね」ゴシゴシ
梢「そうよ聞いて花帆! 吟子ったら酷いのよ」
ジャー
梢「梢先輩の馬鹿力で磨き続けたらそろそろ花帆先輩が丸い石になっちゃいます、って」
梢「いくら何でもそんな……あら? 心なしか字が見辛くなったような……?」
梢「ってそれだけじゃないの。吟子が、近所の人から墓を磨き続ける妖怪だって噂されるんじゃないかって」
梢「そんなしょっちゅう磨いてません、もう……」
梢「来るたびにお墓の掃除をしてるから、砂埃くらいしかついてないわね」ゴシゴシ
梢「そうよ聞いて花帆! 吟子ったら酷いのよ」
ジャー
梢「梢先輩の馬鹿力で磨き続けたらそろそろ花帆先輩が丸い石になっちゃいます、って」
梢「いくら何でもそんな……あら? 心なしか字が見辛くなったような……?」
梢「ってそれだけじゃないの。吟子が、近所の人から墓を磨き続ける妖怪だって噂されるんじゃないかって」
梢「そんなしょっちゅう磨いてません、もう……」
5: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:18:11 ID:???00
梢「年々吟子の当たりが強くなってるのよ……花帆からも何か言って頂戴」
梢「そういえば、吟子は花帆には当たりが強かったわね」
梢「そういう甘え方、なのよね……」
梢「……ふふっ、それなら花帆の分まで私が後輩を甘やかさないといけないわね」
梢「あ、そうだわ。聞いて花帆。みのりさんがくれた球根、咲いたのよ」
梢「ほら見て、この……あら、画面が動かないわ」スッスッ
梢「えーっと……」スッスッ スッスッ
~三十分後~
梢「あ、見て花帆。これはこの前娘と公園に行ったときの……あら?」
梢「何か見せたい写真があったはずなのだけれど……」
梢「そういえば、吟子は花帆には当たりが強かったわね」
梢「そういう甘え方、なのよね……」
梢「……ふふっ、それなら花帆の分まで私が後輩を甘やかさないといけないわね」
梢「あ、そうだわ。聞いて花帆。みのりさんがくれた球根、咲いたのよ」
梢「ほら見て、この……あら、画面が動かないわ」スッスッ
梢「えーっと……」スッスッ スッスッ
~三十分後~
梢「あ、見て花帆。これはこの前娘と公園に行ったときの……あら?」
梢「何か見せたい写真があったはずなのだけれど……」
6: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:22:26 ID:???00
梢「長居しちゃったわね。そろそろ行くわ」
梢「……またね、花帆」
テクテク
梢「あら?」
吟子「うわっまた来とる」
梢「来てたのね、久しぶりだわ」
吟子「いや先々週先ここで会うたやろ!」
梢「そうだったかしら?」
吟子「はぁ」
梢「行きましょう」
吟子「え、梢先輩はもう帰るところでしたがね?」
梢「せっかく会えたのだし、それに」
吟子「あ、いえじゃまない。ここまで一人で来たし」
梢「そう言わずに、ね? 私に押させて頂戴」
吟子「……あんやと」
梢「……またね、花帆」
テクテク
梢「あら?」
吟子「うわっまた来とる」
梢「来てたのね、久しぶりだわ」
吟子「いや先々週先ここで会うたやろ!」
梢「そうだったかしら?」
吟子「はぁ」
梢「行きましょう」
吟子「え、梢先輩はもう帰るところでしたがね?」
梢「せっかく会えたのだし、それに」
吟子「あ、いえじゃまない。ここまで一人で来たし」
梢「そう言わずに、ね? 私に押させて頂戴」
吟子「……あんやと」
7: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:25:30 ID:???00
吟子「相変わらず元気そうですね」
梢「そうね、吟子さんも元気そうでよかったわ」
吟子「脚以外は元気やし、それに今の車椅子は押してもらわんでもええんですよ」
梢「そうなの」
吟子「というか梢先輩に触らせたら壊れそうやわ」
梢「そしたら私が抱えて運ぶわ」
吟子「無茶言わんといて」
梢「そうね、吟子さんも元気そうでよかったわ」
吟子「脚以外は元気やし、それに今の車椅子は押してもらわんでもええんですよ」
梢「そうなの」
吟子「というか梢先輩に触らせたら壊れそうやわ」
梢「そしたら私が抱えて運ぶわ」
吟子「無茶言わんといて」
8: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:28:10 ID:???00
梢「着いたわ」
吟子「花帆先輩、こんにちは。……また梢先輩に綺麗にされて」
梢「さっきぶりね、花帆」
吟子「もう十年、早いですね……」
梢「私にはまだつい昨日のことのようだわ」
吟子「……」
梢「……いけないわ、一人のときは平気だったのに」グスッ
吟子「梢先輩……?」
梢「ぐすっ……どうして私を置いて行ってしまうのかしら?」ポロポロ
吟子「……」
吟子「花帆先輩、こんにちは。……また梢先輩に綺麗にされて」
梢「さっきぶりね、花帆」
吟子「もう十年、早いですね……」
梢「私にはまだつい昨日のことのようだわ」
吟子「……」
梢「……いけないわ、一人のときは平気だったのに」グスッ
吟子「梢先輩……?」
梢「ぐすっ……どうして私を置いて行ってしまうのかしら?」ポロポロ
吟子「……」
10: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:31:25 ID:???00
梢「吟子はもういいの?」
吟子「またすぐに来ますから。梢先輩ほどやないけど」
梢「そう、それじゃあ」
吟子「一人で帰れますので」
梢「お茶していかない?」
吟子「帰りが遅いと心配されますよ」
梢「それは吟子も同じでしょう?」
吟子「まあまだ昼過ぎやし、いいですよ」
吟子「またすぐに来ますから。梢先輩ほどやないけど」
梢「そう、それじゃあ」
吟子「一人で帰れますので」
梢「お茶していかない?」
吟子「帰りが遅いと心配されますよ」
梢「それは吟子も同じでしょう?」
吟子「まあまだ昼過ぎやし、いいですよ」
11: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:36:29 ID:???00
梢「えーっと、あっやっぱりあっちのお店はどうかしら?」
吟子「……また可愛い子に目ぇ付けて」
梢「ち、違うのよ。ただあのお店のどら焼きが美味しそうだったから」
吟子「今から花帆先輩のところ戻りますか?」
梢「それだけはやめて!」
吟子「多分見られてますよ」
梢「それでもっ!」
吟子「本っ当に変わりませんね先輩は」
吟子「……また可愛い子に目ぇ付けて」
梢「ち、違うのよ。ただあのお店のどら焼きが美味しそうだったから」
吟子「今から花帆先輩のところ戻りますか?」
梢「それだけはやめて!」
吟子「多分見られてますよ」
梢「それでもっ!」
吟子「本っ当に変わりませんね先輩は」
12: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:36:57 ID:???00
梢「……」
吟子「……変わりませんね、十年前から」
梢「そうね、私の時間はあの日から止まってしまったかのようだわ」
吟子「まあ、私も……少しは」
梢「あの日、花帆の訃報を聞いたときから……可笑しいわね。ちゃんとお別れは済ませたというのに」
吟子「……」
梢「あんなに早く逝ってしまうだなんて……」
吟子「……変わりませんね、十年前から」
梢「そうね、私の時間はあの日から止まってしまったかのようだわ」
吟子「まあ、私も……少しは」
梢「あの日、花帆の訃報を聞いたときから……可笑しいわね。ちゃんとお別れは済ませたというのに」
吟子「……」
梢「あんなに早く逝ってしまうだなんて……」
13: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:40:13 ID:???00
吟子「いや、あのですね梢先輩」
梢「なにかしら?」
吟子「何度も言うとっけど、享年91歳は大往生ですよ」
梢「わかってるわ、わかっているのだけれど……」グスッ
吟子「いや90超えで死んだ人の十回忌でようほんな泣けますね!?」
梢「歳なんて関係ないわ!」
吟子「あんた今いくつや!」
梢(102)「102歳よ」
吟子(100)「梢先輩が入学したときの蓮ノ空と同い年ですよ!?」
梢「なにかしら?」
吟子「何度も言うとっけど、享年91歳は大往生ですよ」
梢「わかってるわ、わかっているのだけれど……」グスッ
吟子「いや90超えで死んだ人の十回忌でようほんな泣けますね!?」
梢「歳なんて関係ないわ!」
吟子「あんた今いくつや!」
梢(102)「102歳よ」
吟子(100)「梢先輩が入学したときの蓮ノ空と同い年ですよ!?」
18: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:44:04 ID:???00
吟子(100)「大した病気もせず最期まで元気だったじゃないですか」
梢(102)「花帆に会いたい……」
吟子(100)「会えるがは当分先やて思います」
梢(102)「吟子は先に逝かないわよね!?」
吟子(100)「まあまだ死ぬ気はないですけど、脚も悪いし」
梢(102)「そんな……でも天国でずっと一人で寂しいだろうし」
吟子(100)「うちに死ねて言うとっけ?」
梢(102)「大丈夫よ。吟子のお墓もピカピカにしてあげるから」
吟子(100)「また近所で墓磨き婆が出るって噂になるからやめて」
梢(102)「花帆に会いたい……」
吟子(100)「会えるがは当分先やて思います」
梢(102)「吟子は先に逝かないわよね!?」
吟子(100)「まあまだ死ぬ気はないですけど、脚も悪いし」
梢(102)「そんな……でも天国でずっと一人で寂しいだろうし」
吟子(100)「うちに死ねて言うとっけ?」
梢(102)「大丈夫よ。吟子のお墓もピカピカにしてあげるから」
吟子(100)「また近所で墓磨き婆が出るって噂になるからやめて」
20: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:46:24 ID:???00
給仕係「お待たせいたしました。抹茶どら焼きの方」
梢(102)「はい💚」
給仕係「きんつばでございます」
吟子(100)「あんやと」
給仕係「ごゆっくり」
スタスタ
梢(102)「……💚」
吟子(100)「……色ボケババア」ボソッ
梢(102)「ぎ、吟子?」
吟子(100)「あーもう嫌や! この本性に気付けなかった高校時代のうちが嫌やわ!」
梢(102)「待って吟子、私はそんなに見境なくはないわ」
吟子(100)「どうせ私のこともそういう目で見とったんやろ……」
梢(102)「失礼ね! 吟子のことは今もそういう目で見てるわ」
吟子(100)「ええ……」
梢(102)「はい💚」
給仕係「きんつばでございます」
吟子(100)「あんやと」
給仕係「ごゆっくり」
スタスタ
梢(102)「……💚」
吟子(100)「……色ボケババア」ボソッ
梢(102)「ぎ、吟子?」
吟子(100)「あーもう嫌や! この本性に気付けなかった高校時代のうちが嫌やわ!」
梢(102)「待って吟子、私はそんなに見境なくはないわ」
吟子(100)「どうせ私のこともそういう目で見とったんやろ……」
梢(102)「失礼ね! 吟子のことは今もそういう目で見てるわ」
吟子(100)「ええ……」
21: 名無しで叶える物語◆f3Mal4qz★ 2025/07/13(日) 20:48:12 ID:???00
梢(102)「冗談は置いておいて」
吟子(100)「ほんまに……?」
梢(102)「花帆の話をしていたら花帆に会いたくなったわね」
吟子(100)「今そんなに花帆先輩出てきてなかったような」
梢(102)「そうだわ、これから花帆のお墓参りに行かない?」
吟子(100)「行かんわ!」
おわり
吟子(100)「ほんまに……?」
梢(102)「花帆の話をしていたら花帆に会いたくなったわね」
吟子(100)「今そんなに花帆先輩出てきてなかったような」
梢(102)「そうだわ、これから花帆のお墓参りに行かない?」
吟子(100)「行かんわ!」
おわり
引用元: ・【SS】梢「もう十年になるのね、花帆」


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