1: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:37:36 ID:+k3hWrt90.net
氷に覆われた険しい山の中腹
開きかけた地獄の門のような切り立った崖の底
一頭の龍が寂しげに鳴いた

龍「アォォ……」

それに木霊するように、誰かの声が響く

????「私はここにいるぞ!」

声の主は、その勇ましい響きには似合わない、可憐な妖精さんだった
氷精特有の真っ白な髪と瞳が、暗い洞窟を照らす

妖精さん「フフフ、私が来るのがよほど待ち遠しかったようだな?」

龍「グルル…」

妖精さん「わっぷ…!そう顔を近づけられると、鼻息がかかるだろう」

龍「ゥゥ…」

妖精さん「…私がおまえを置いて何処かへ行くものか」

妖精さんが龍の鼻を撫でる
龍は気持ちよさそうに目を細める

妖精さん「…もう何度も口にした言葉だがな。おまえが不安なら何度でも言おう。私は何処へも行かない」

3: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:38:44 ID:+k3hWrt90.net
龍の鼻が、甘えるように妖精さんのお腹を突く
妖精さんはくすぐったさに身をよじりながら、語りかけ続ける

妖精さん「…私を心配しているのか?それも問題はないさ。どうせこの世界は私たちには狭すぎる。だったらこの狭い山に引きこもって、おまえとこうして語らいながら過ごす方が、ずっと楽しいんだ」

妖精さん「たとえどんな姿になっても、私はおまえを愛してる」

妖精さん「…これからずっと二人きりなんて、夢のようじゃないか」

……妖精さんの耳がピクッと立つ
誰かがこの山に侵入した合図だ
大抵は金鉱や氷魔結晶を目当てに来る盗掘者だが、「龍の伝説」を聞きつけた命知らずの愚かな挑戦者もいる

妖精さん「…またどこぞのバカがこの山に足を踏み入れたらしい。追っ払ってくるから待っててくれ」

妖精さん「……ちゅっ」

妖精さん「心配するな。いつものように適当に脅して追い返す。命まではとらないさ」

龍が妖精さんの服の裾を甘噛みする
離れて欲しくない、と訴えているようだ

妖精さん「なんだ、いつにも増して甘えん坊だな?」

龍「グルゥゥ……」

妖精さん「おいおい、心配してるのは私の方だって?アハハ、おまえがそういう冗談を言うとは思わなかった」

龍「オォー…」

妖精さん「嫌な予感…か。そういえば、おまえの予感は昔からよく当たったな。…フフ、わかった。気をつけよう」

妖精さん「……ついてくるなよ?おまえが人間に見られないように、わざわざこんなところに隠れ住んでいるんだからな?」

5: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:39:16 ID:+k3hWrt90.net
密猟者A「……目撃情報があったのはこの辺か?」

密猟者B「なぁ、やっぱり帰ろうぜ…?ここいらにゃぁ凍え死んだ奴らが化けて出るって言うじゃねぇか……」

密猟者A「だったらテメェだけ帰ってろ!…ったく、なんでこのオレがこんなビビリ野郎と組まなきゃなんねぇんだ!」

密猟者B「おまえは報酬目当てかもしれねぇけどよぅ。俺は借金のカタに脅されて仕方なく来てんだよぅ」

密猟者A「死にたくなきゃとっとと帰りやがれ!クソが!」

密猟者B「……で、でも手ぶらで帰ったらそれこそ殺されちまうよなぁ!なぁ助けてくれよぉ!」

密猟者A「知るか!進むか帰るか、二つに一つだ!」

密猟者B「……く、くそぉ!進むしかねぇよな…」

密猟者A(…まぁいい。このお荷物野郎もいざとなりゃ盾くらいにはなるだろ)

密猟者A「だがこんな山にホントにいるのかねぇ」

6: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:40:31 ID:+k3hWrt90.net
密猟者B「お、おい、アレってよぅ…」

密猟者A「あ?なんか見つけたか?」

密猟者A「へへ…マジでいやがった」

妖精さん「……おまえたち、何しに来た。ここは人間が立ち入っていい場所ではない」

密猟者B「ひ、ひぇええええ!!!出たぁ!!!!」

密猟者B「あ、あんた強ぇんだろ!?あとは任せたぜ!俺はここで隠れてるからよぅ!」

密猟者A「…チッ!盾にすらなれねぇのかよ!」

妖精さん「…今すぐ立ち去れば見逃してやる」

密猟者A「……そりゃ無理な相談だね。俺の目的はアンタだ」

妖精さん「……何?」

密猟者A「妖精ってのは高く売れるんだぜ?今回は特別魔力の高そうな妖精がいるってんで、金に糸目をつけねぇ貴族様が俺らみたいな連中を雇って来たってワケ」

妖精さん「……クク、とんだ愚か者だな」

妖精さん「おまえたち如きが、私に勝てるとでも?」

密猟者A「さぁな?やってみなきゃわかんねぇだろ?」

7: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:41:36 ID:+k3hWrt90.net
密猟者A「オラァ!」

妖精さん「フッ、動きが遅すぎる」

密猟者A「テメェちょこまかと…」

妖精さん「どうした?私を捕まえるんじゃなかったのか?」

密猟者A「…へへ、今だ!コイツを喰らえ!!」

妖精さん「うっぷ…なんだこの粉は…?」

密猟者A「そいつは魔封じの粉だ!テメェみたいな魔法生物をたちまち無効化する代物よ!」

妖精さん「……ククク、アハハハハハハハ!!何をするかと思えば、それがおまえの奥の手か?」

密猟者A「…は?な、なんで効かねぇんだ!」

妖精さん「雨をしのぐための土壁で洪水が防げるか?私の魔力をそこらの魔物と同等に扱うな」

妖精さん「おまえに勝ち目はない。残念だったな」

8: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:42:50 ID:+k3hWrt90.net
妖精さん「…今度はこちらの番だ」

密猟者A「な、なんだ!?足が凍って……う、動けねぇ!」

密猟者A「ひっ!氷が腰まで……」

妖精さん「このまま氷漬けにしてやってもよいが…私も鬼ではない。このまま大人しく帰り、二度と私に顔を見せないと約束するなら命だけは助けてやろう」

密猟者A「そ、そんな…ク、ククク……なーんてな!」

妖精さん「!?……なぜ動ける?」

密猟者A「氷無効化のペンダントだ。妖精ってのは一つの属性しか魔法を使えねぇんだろ?…貴族様の依頼だぜ?この程度の対策は当たり前だろうが」

妖精さん「チッ……面倒だな。もういい。おまえたちに付き合ってやる義理もない」

密猟者A「てめぇ待ちやがれっ!」

妖精さん「……っ!?」

妖精さん「…私の身体に何をした!?」

密猟者A「逃走防止の結界を貼ったのさ。お互い、敵に背を向けると身体の自由が効かなくなる呪いだ」

密猟者A「もしもてめぇがオレを本気で殺しにかかってたら、俺は負けてただろうな。お優しい妖精さんで助かったぜ…」

妖精さん「くっ……!」

密猟者A「さ、大人しくこの籠に……」

妖精さん「クソ…っ、私に触るな……!クソオオオオオオオオ!!!!」

9: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:43:48 ID:+k3hWrt90.net
密猟者A「……あ?」

密猟者Aの身体を、何本もの土の槍が貫いていた

密猟者A「な、なんで…土属性の……?は、話が違うじゃねぇか……」

密猟者Aが血を吐いて崩れ落ちる

妖精さん「クソ…っ、おまえが大人しく帰っていれば……!命までは奪わなかった……!」

妖精さん「……それで、この呪いはいつになったら解けるんだ…?」

10: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:44:58 ID:+k3hWrt90.net
密猟者A「グオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

妖精さん「!?な、なんでまだ動け……っ!?」

妖精さん「クソっ!」

土の槍が再び密猟者Aを襲う

妖精さん「…いや、こいつは既に死んでいる。…………おまえ、死霊使いか!?」

密猟者B「…へぇ、流石に勘が鋭いなぁ」

11: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:45:37 ID:+k3hWrt90.net
妖精さん(呪いは解けていないが…まだ戦えるか……?)

密猟者B「クク…そいつは氷属性無効の装備付きのアンデッドってわけだ。まさか土属性魔法まで使えるとは予想外だったが、アンデッドは元々土属性に耐性を持つ。そう簡単にはやられねぇぜ?」

妖精さん(まだやれる…!)

妖精さん「一丁前に身支度しただけの雑魚一匹であまり調子にのるなよ…?」

密猟者B「おいおい、誰が一匹って?」

密猟者B「ここらには遭難者の死体が新鮮な状態でいくらでも転がってるからなぁ」

密猟者B「雑魚でも数で押し切れば勝てるんじゃねぇかな?」

妖精さん「な……?しかし、そんな魔力が…」

密猟者B「マジックポーションならいくらでもあるさ。貴族様の依頼だっつったろ?」

妖精さん「クソ…っ!」

12: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:46:18 ID:+k3hWrt90.net
密猟者B「へへ、息が上がってきてるぜ?」

アンデッド「グオオオオオオオオ!!!!」

妖精さん「くっ…!舐めるな……!」

密猟者B「いい加減諦めろよ。殺しても死なない連中を相手にいつまでも戦えるわけねぇだろ」

妖精さん「まだだ…!まだ……っ!」

妖精さん「私がここを離れるわけには……!」

密猟者B「持ってきたマジックポーション、10分の1も使ってねぇぜ?俺のアンデッドは一回蘇らせたら戦闘不能になるまで動き続けるし、こりゃ荷物が多すぎたかな?」

妖精さん「クソ…っ、クソ……っ!」

妖精さん「一旦距離をとって……」

密猟者B「おいおい、呪いの方を忘れちゃダメじゃん?」

妖精さん「!?」

妖精さん「か、身体が……!」

妖精さん「うわああああああああああああああ!!!!」

13: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:46:59 ID:+k3hWrt90.net
妖精さん「……ここは?」

妖精さん「……夢の中だ」

妖精さん「……懐かしい声が聞こえる」


女神様『勇者よ。あなたに龍の力を授けます。身の危険を感じた時に開放しなさい』

女神様『ただし、それは本当に最後の最後まで取っておくのです。それを使ったら最後……』


妖精さん『勇者!魔王も弱ってきてる!あと少しできっと勝てるから……』

妖精さん『きゃあっ!』

妖精さん『……っ、勇者……!私はもうだめかも…!でも勇者なら一人でもきっと勝てるから…!私のことより魔王を……』

妖精さん『勇者!?その力は………………』

妖精さん『ダメーーーーーーーっっ!!!!!!!』

14: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/04/19(日) 15:48:17 ID:+k3hWrt90.net
妖精さん「……うぁ」

貴族「おお、気がついたか!死んでしまったのかと心配したぞ!」

妖精さん「……あなたは?」

貴族「フフ、私が君を買った貴族だ。手荒な真似をしてすまないね」

妖精さん「…………フン」

貴族「初対面なのに随分と嫌われてしまっているみたいだね…まあ仕方ないか」

妖精さん「ここはどこだ?私を元いた場所に帰してくれ」

貴族「そんなことより私はもう我慢ができない!早く食事にしよう。…おーい、シェフを呼んでくれ!」

妖精さん「……っ」

妖精さん「こんなことしてる場合じゃないのに…!」

妖精さん「勇者…どうしてるだろう……」

15: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:51:21 ID:79JHxxMTa.net
~数時間前~

密猟者B「……こいつが例の品です」

貴族「おお!素晴らしい!これでようやく念願の……」

密猟者B「それで……こういうことを聞くのはご法度とわかっちゃいるんですが、何分苦労の大きい案件だったもんで。記念ってことで、そいつをこれからどうするのか聞かせてもらえませんかねぇ?」

貴族「フフフ、まぁいいだろう。君が一番の功労者だしな。こいつは私が食べるんだよ。……ただし、生きたまま調理してな」

密猟者B「はぁ……」

貴族「妖精が美味であることはおまえも知っているだろう?しかし普通の妖精では簡単に死んでしまってつまらんのだ。神秘の存在たる妖精を食べるというのに、生命の神秘を感じずにただ口に入れるというのは何とも味気ないとは思わないかね?」

密猟者B「うーん、なるほど。そりゃいいっすね」

貴族「だろう?残念ながら食材は一人分しかないから君の分まで用意することはできないが、よかったら調理過程の見学くらいは許してやってもいいぞ?」

密猟者B「いやぁ、せっかくなんですが、次の仕事が入ってましてね。非常に残念ですがぁ…」

貴族「なんだ、それは残念。またいい機会があればお誘いしよう」

密猟者B「そん時にゃ是非。それでは今後ともご贔屓に」


密猟者B「うへぇー。すげぇ趣味。オレが言えたことじゃないが」

16: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:53:06 ID:79JHxxMTa.net
シェフ「……こちらが例の?」

貴族「ああ!よろしく頼む!」

妖精さん「……何だ?」

シェフ「……かしこまりました」

貴族「メニューは打ち合わせ通り、『妖精の琥珀(https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1587220137/?v=pc)』を頼む」

シェフ「…最高の食材をご用意いただきましたので、最高の料理をご覧に入れましょう」

貴族「頼もしいな!」

妖精さん「食事なんていい、私を早く帰してくれ」

貴族「何を言う!主役は君じゃないか!」

妖精さん「……はぁ」

17: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:53:38 ID:79JHxxMTa.net
妖精さん「おい!そこはオーブンだろ!?私を入れてどうするつもりだ!?」

シェフ「…下準備ですよ。君をその魔封じの籠から出す前に十分弱ってもらわないと」

妖精さん「…っ!……私が食材ってわけか………?」

貴族「あれっ、言ってなかったっけ?」

妖精さん「……クソっ!」

妖精さん「……ぁ…暑………」

妖精さん「う……ぐぅ…ハァ、ハァ……」

妖精さん「身体…溶ける……!」

妖精さん「…ぅあああああああああ暑い暑い熱い!!!!!!!」

妖精さん「出せえええええええええ!!!!!ここから出せええええええええええ!!!!!!!」

19: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:54:54.467 ID:79JHxxMTa.net
シェフ「妖精をオーブンで蒸している間に、こちらの準備も終わりました」

シェフ「……そろそろよろしいですかね」

妖精さん「……ぁ…ぅ………」

シェフ「ふむ、既にいい香りだ。これは腕がなる」

貴族「いよいよだね…!」

妖精さん「…お願…っ、帰して…くれ……」

シェフ「……さて、次はこちらです」

妖精さん「……ハァ…っ、それ、何……?」

貴族「それはねぇ、ゼラチンを溶かしたお湯だよ。冷やすとゼリーになるの」

貴族「氷精の君に冷やしてもらうんだ」

妖精さん「……は?どういう…?」

妖精さん「う、嘘だ……なぁ、もう全身熱いんだ…!これ以上熱いの…っ、ダメ…!ホントに溶けちゃう……!」

貴族「…って言ってるけど大丈夫?溶けちゃったら台無しだなぁ」

シェフ「そこでギリギリの温度調整をするのが私の仕事ですから」

貴族「さっすがぁ!期待してるね!」

20: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:55:27.223 ID:79JHxxMTa.net
妖精さん「や、やめて…くれ……!お願い…!お願い、します……!ホントに限界なんです…!」

妖精さん「や…っ、やめ……っ、あ、熱い!熱い熱い熱いのぉ!!」

妖精さん「やだああああああああ熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!!!!」

シェフ「このように逃げようとするので、スプーンで押し込みます」

妖精さん「いやだああああああ出してえええええええええええ!!!!!」

シェフ「液を頭からかけ、馴染ませます」

妖精さん「ぎやああああ熱ううううううう!!!!!!」

妖精さん「ご…げぼっ……!!ごぽ…っ!!!」

シェフ「頭まで液に浸かったら蓋を閉めます」

妖精さん「ご………こぽ…お゛…………!!」

21: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:55:43.969 ID:79JHxxMTa.net
貴族「おお…これでお終い?」

シェフ「普通はこれでお終いなのですが、今回はもう少し続きます」

シェフ「今回の食材は非常に魔力の高い氷精ですから、このまま放っておくと液の温度が下がりすぎて凍ってしまいます。そのため、断続的に熱を加えるためにこのまま再びオーブンに入れます」

貴族「なるほどなぁ」

シェフ「私が温度管理をしますので、あとはゆっくりお待ちください」

妖精さん「…………こぽ……」

22: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:56:00.046 ID:79JHxxMTa.net
貴族「そろそろ完成って聞いたけど!?」

シェフ「いよいよです。オーブンから取り出すところもご覧に入れましょう」

妖精さん「……ぷ……く…っ……………」

貴族「…おお!オーブンから出したばかりなのにひんやりとしてる!これが氷精の力かぁ……」

シェフ「ゼリーもしっかりと固まっています」

シェフ「あとは盛り付けだけですので、席についてお待ちください」

23: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:56:33.124 ID:79JHxxMTa.net
シェフ「お待たせいたしました。こちらが『伝説の氷精の琥珀ゼリー』となります」

貴族「お…おお!!これが、遂に…!」

シェフ「…蓋をお開けしましょうか?」

貴族「…いや、いい!自分で開ける!」

貴族「…おお。まだ生きてる。生きてるぞ!」

妖精さん「…………か………けぷ……………………」

妖精さん(あ…………あぇ…?どうしたんだっけ……?よく覚えてな…けど……逃げ…なきゃ…)

妖精さん「んがぁ……あー、あああ!」

妖精さん(あ、あぇ…?あぇ?ぬるぬる…して……っ、動けな……?)

貴族「…なるほど!これが溶けていく間際の氷精だな!」

妖精さん「んぎぃっ!……おー、んぃーっ!!」

貴族「お?お?自ら動いた衝撃で腕が千切れて…凄いっ!これぞ生命の神秘だっ!

シェフ「……おや、これは…………」

貴族「どうした?何か問題があるのか?」

シェフ「いえ……」

24: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:56:55.645 ID:79JHxxMTa.net
シェフ(……どうやらこの妖精、既に肉体は死んでいるようです)

シェフ(死霊術は魔力によって魂を肉体に縛り付け、自体を強制的に動かす魔術。…ですが今回、妖精の魔力が非常に高く、また魂の執着が非常に強かったため、無意識のうちに自らを死霊術で縛っているようですね)

シェフ(アンデッドを食べたと聞いたらいい気分はしないでしょうから、これは私の胸のうちに秘めておきましょう)

シェフ(そういえば、こんな話を聞いたことがあります。ある土地には『生き踊り』なる奇祭があり、そこでは丸焼きにした豚や鶏をアンデッドとして蘇らせ、人々は動き回る肉を捕まえて食べるのだとか)

シェフ(死霊術の料理への応用……これはインスピレーションを刺激されますね)

25: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:57:13.608 ID:79JHxxMTa.net
妖精さん「あー、んあーっ!おー、おっ」

貴族「それではそろそろいただこうか…まずは溶け落ちた腕を」

妖精さん「あーぇ…?んーっ!ぐぉーーっっ!」

妖精さん(や、やめて…!私の身体、食べないで……!)

貴族「ほろほろに柔らかく溶けているのに、ひんやりと冷たく、それでいて果実のような香りと瑞々しさが口に広がる…」

妖精さん「がぁー!……ぅ?っぽぉ…」

妖精さん(嫌、嫌……!私の身体なくなっちゃう…!)

貴族「次は…目玉をいただこうかな?」

妖精さん「んーごぉー!うぅーっ!ぷぃーっ!」

妖精さん(お願い…!それだけは…!)

貴族「…んー!やはり妖精は捨てるところがないなぁ!」

妖精さん「……あーは?あぇー?んぼー!ば!」

妖精さん(そんな…嘘…….っ?見えない…っ!何も見えない……っ!いやぁ!)

26: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:57:30 ID:79JHxxMTa.net
妖精さん「…………けぽ………こ…………」

妖精さん(………………あ……)

貴族「おおう…これだけ身体を失ってもまだ辛うじて息がある……!素晴らしいっ!」

妖精さん「…………ぱ…………………………」

妖精さん(………………あはは………)

貴族「さて…名残惜しいが、最後の一口をいただこうか」

妖精さん「……………………………ぷ…………」

妖精(や………と……………お……わ………………)


妖精さん(……………………あ……………)

27: >>1(連投回避) 2020/04/19(日) 15:57:49 ID:79JHxxMTa.net
魂はあるべきところへ還る
妖精さんの魂は天へと昇る
その途中で、妖精さんはちょっと寄り道をする
そこには一頭の龍がいる
これからはずっと一人ぼっちの龍がいる
きっと聞こえるはずのない、最後の別れの挨拶をする
龍は何も聞こえないのに、何かが側を離れて行った気がして、寂しくなって、哀しくなって、泣いた
彼を慰める人は、もういない


GAME OVER

引用元: 妖精さん「密猟者なんかに絶対負けない!」