0001以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 00:36:21.73ID:JKvSaMmh0
魔物「あなた様の封印が解けるのを待って何百年……
我が一族が生きているうちに魔王様と会えるとか思っておりませんでした!」
魔王「…………」
魔物「さぁ! 早速旅の準備をしましょう!
勇者を倒して我らが魔族の覇道をお示しください!」
魔王「…………ここどこ?」
魔物「……は?」
0003以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 00:40:43.35ID:JKvSaMmh0
魔物「魔王様、ここは魔王城ですよ……? はるか昔に魔王様が住んでいた場所です!」
魔王「……こんなでかい城を建てる事ができるほど俺は金があったのか」
魔物「……多少の記憶の欠落など大丈夫ですよね! さぁ! 旅の準備はできております!」
魔王「まぁ待て」
魔物「はい?」
魔王「旅って、どこに行くんだ、もし仮に私が魔王というのならば、ここで勇者を待ち構えれば良いだろう」
0004以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 00:46:50.89ID:JKvSaMmh0
魔物「何を言っているのですか魔王様、それで敗北して封印されてしまったのではないですか!」
魔王「それ以外にも理由がある、口ぶりからすると、勇者と敵対していたのははるか昔なのだろう?
今も敵対する理由があるのか?」
魔物「……魔王様は覚えていらっしゃらないのですか! 勇者達のあの残虐な行為を!
全ての森という森は焼き尽くされ、獣人種やエルフは全て奴隷として連れて行かれたあの光景を!」
魔王「…………悪いが覚えていないな」
魔物「……ッ今の世界には魔王様が必要なのです!」
鳥娘「魔物ちゃん何騒いでるのー? おやつのプリンが固まったよー」
0006以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 00:50:15.87ID:JKvSaMmh0
魔王「……全て奴隷として連れて行かれた?」
魔物「……一部例外!」
鳥娘「あれー? もしかしてその人魔王さん?」
魔物「そうです! とうとう我らが真の自由を取り戻す時が来たのです!」
魔王「……だ、そうだがどうなんだ? そこの鳥娘よ」
鳥娘「やるだけやったらいいんじゃないですかー? けど、正直お勧めできませんねー」
0007以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 00:56:34.05ID:JKvSaMmh0
鳥娘「魔王さんは封印されてたから知らないと思うんですけど、勇者あれから、神に昇格しましてー」
魔王「……神?」
鳥娘「はいー、神です、正直な話、殺せるとしたらよっぽどの方じゃないと無理かとー」
魔王「……だ、そうだが」
魔物「大丈夫です! 伝説によれば、魔王様は二人組みの勇者にやられたそうです!
そして魔王様との戦いのさい、片方は倒したもののもう片方に殺されたとか」
魔王「……つまり、今度は正々堂々と一騎打ちなら負けるはずはないと?」
魔物「その通りです! さぁ! 早速勇者を倒しに行きましょう!」
魔王「待て、さっきの一部例外でお前の言ってる事が本当なのかがわからん」
0008以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 00:59:19.96ID:JKvSaMmh0
魔王「本当に、亜人などは奴隷として使われているのか?
そこでのんきにプリンを頬張ってる奴を見てるとそうとは思えないのだが」
鳥娘「んー、それは本当ともそうでもないとも言えますねー」
魔王「どういうことだ?」
鳥娘「だって、その当時連れて行かれた人たち、もうみんな死んじゃってますよ?」
0011以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 01:06:48.05ID:JKvSaMmh0
魔王「……結論! 勇者も強くなったようだし、奴隷達ももう死んでる、行く必要がない!」
魔物「ま、魔王様ーー!? 魔王としての誇りは! そして魔王様の復活を信じていた我が一族の立場は!?」
魔王「知らん! 今現在は平和なのだろう? ならそれでいいじゃないか」
魔物「……仕方がないですね、それでは一人で旅に出るとします」
魔王「……一人で勇者を倒しに行くのか?」
魔物「はい、それが私の一族が背負った運命です、できれば魔王様と一緒が良かったです」
魔王「…………」
0013以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 01:11:26.18ID:JKvSaMmh0
鳥娘「魔物ちゃん、最近旅行雑誌みてウキウキしてたもんねー」
魔王「…………」
魔物「…………やっぱり一人だと危ないかなーっと……旅賃なら出しますよ?」
魔王「断る、旅行なら行けばいいんじゃないか? 俺はここでゆっくりしとくよ」
鳥娘「あ、ちなみに魔王様も働いてくれないと食事は出しませんからね?」
魔王「さぁ、一緒に行こうか魔物よ」
0015以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 01:16:10.54ID:JKvSaMmh0
魔王「で、まずどこに行くんだ?」
魔物「そうですねー……勇者が未だに統治している国ありますから、そこ行きますか」
魔王「やっぱり、魔王たるものまっさきに働いて人々に示すべきだよな」
魔物「わー! 冗談です! まず行くところはエルフの街ですね」
魔王「……名所は?」
魔物「エルフは美女美男が多いです、名所の説明としてはそれで十分かと」
0017以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 01:20:37.72ID:JKvSaMmh0
魔物「さて、それじゃ行きますか」
魔王「おー」
―――――エルフの街
魔王「なっ!? "おー"とか行ってたら着いたぞ!?」
魔物「魔王城から近いですからねー、徒歩で10分ってところですかね」
魔王「旅行って感じがまったくしねぇ!」
魔物「けど、本当にここは珍しいんですよ? 大昔にエルフの女性は殆ど連れて行かれましたからね」
魔王「……ここは魔王城に比較的近かったからまだましだったって事か?」
魔物「はいそうです、その時には我が一族も相当踏ん張ったって話しですよ?」
0019以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 01:26:18.28ID:JKvSaMmh0
魔物「どうします? 正直な話、私はここ見慣れちゃってるから素通りしてもいいんですが」
魔王「いや、どうせだから見て行く、これから先エルフとか滅多に見れないんだろう?」
魔物「そですか、なら、私は先に宿取ってきますねー、宿の名前は"森林の休息"です」
魔王「いかにもエルフっぽい名前だな」
魔物「そりゃぁ、エルフの街ですから……」
0021以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 01:34:25.28ID:JKvSaMmh0
魔物「んーっ! 一息ついたー……」
魔物「旅の資金も十分だし、期限まではまだ余裕があるし……、魔王様も連れてこれたし」
魔物「明日の朝までゆっくりするかな……」
エルフ「魔物様ー!」
魔物「うお!? ど、どうしました!」
エルフ「街の広場に老若男女構わず舐めるように凝視するする男が現れまして、住民に不安が広がっております!
また、その男は異様な雰囲気を纏っておりまして……、魔物様の助力を願おうかと!」
魔物「……もしかして、その男って黒い鎧つけてません?」
エルフ「ハッ! その通りです!」
魔物「そのうえ、なんかマントつけてます?」
エルフ「その通りでございます!」
0022以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 01:38:36.37ID:JKvSaMmh0
魔王「120、130、110、……エルフと言っても全員が痩せているというわけではないんだな」
魔物「魔王様、さっきからなにやってるんですか……」
魔王「ん? いや、名所を観光しているんだが」
魔物「……美男美女ですか?」
魔王「その通りだ、いやぁ、本当に顔立ちが整った奴が多いな」
魔物「……警備隊が魔王様の事を変質者と勘違いしてますよ」
魔王「なに!?」
魔物「ちゃんと名所の説明をしなかった私も悪かったですけど……」
0024以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 01:47:44.23ID:JKvSaMmh0
魔物「仕方がないですね、私が案内しますよ」
魔王「ああ……そうしてくれると頼む、実は凝視しまくってたら不良に絡まれて必死に逃げたりもしたんだ」
魔物「不良程度で?!」
――――――万年樹
魔物「これは、何万年もこの大地に根を張っているといわれている樹です、魔王様も大昔に見てるかもしれませんね」
魔王「……その割にはそれほど大きくないな」
魔物「そうですね、けど、驚くほど丈夫なんですよ、ためしに殴ってみてください」
魔王「ふっ……仮にも俺は魔王だったらしい男だぞ、折れても知らんぞ?」
魔物「どうぞどうぞ」
魔王「ふん! …………おい、魔物、医者を呼んでくれないか」
魔物「本気で殴ったんですか!?」
0028以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 01:53:00.35ID:JKvSaMmh0
魔物「まったく、骨でも折れたのかと思ったじゃないですか」
魔王「まさかあそこまで硬いと思わなかった、今では反省している」
魔物「あの樹は色々な伝説があるほど丈夫で硬い樹ですからね、魔王様の剣もあの樹でできているはずですよ?」
魔王「ほう? しかし、この剣、見るからに金属でできているんだが……」
魔物「……あれ? 伝説では魔王様の剣は万年樹の枝から作られたとか聞いたんですけどね」
魔王「伝説は伝説って事なんだろうな」
魔物「実もふたもない……」
0031以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 02:00:06.50ID:JKvSaMmh0
魔物「では、宿に戻りますか」
魔王「まだ一箇所しか巡ってないぞ!?」
魔物「魔王様が、エルフの住民達をどれだけの間凝視してたと思います?」
魔王「……100人から先は覚えていない」
魔物「そういう事です、ここの食事は美味しいですから、それを期待しておいてください」
――――森林の休息
魔王「精進料理みたい」
魔物「食べて第一声がそれですか」
魔王「いや、たしかに美味しいんだ、美味しいんだが……」
魔物「きっと、昔は油っこいものばっかり食べてたんですね……」
魔王「油は素晴らしいぞ? 幸せになれるぞ?」
魔物「次の街は油っぽいものが食べれますから我慢してください」
0032以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 02:09:14.88ID:JKvSaMmh0
魔物「さて、それでは次の街へ行きますか」
魔王「おー」
――――道中
魔王「おかしい、まだついていない」
魔物「今度は大体二日間くらい歩きますからねぇ」
魔王「え、なにそれ、聞いてない」
魔物「エルフの街が近すぎただけですよ……ちゃんとテントも用意してるから大丈夫ですよ」
魔王「野宿するのは確定なんだな……、食料はどうするんだ?」
魔物「エルフの村で魔王様に渡したバッグの中に干し肉やら水やら入ってますよ」
魔王「なるほど……、いったいなにかと思ったら」
魔物「さーて、きりきり歩きますよー」
0035以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 02:17:52.60ID:JKvSaMmh0
――――ドワーフの街
魔王「つーいーたーぞー!」
魔物「着きましたねぇ、この前みたいに変質者扱いされたら困りますんで、一緒に宿取りにいきましょうか」
魔王「わかった」
――――宿屋「大地の狭間」
ドワーフ「いらっしゃー……おお! 魔物様! お泊りですか?」
魔物「ええ、そうです、二部屋お願いできますか?」
ドワーフ「かしこまりました」
魔物「じゃ、宿も確保できたことですし、お昼ご飯でも食べに行きますか?」
魔王「……お前って偉いのか?」
魔物「ここら辺だけですよ、人間が多い地域になると逆に疎まれたりします」
0036以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 02:22:46.74ID:JKvSaMmh0
魔王「胃がもたれる……」
魔物「……脂っこいものが好きとか言ってませんでしたっけ!?」
魔王「それはそれ、これはこれだ、うう……なにかあっさりしたものを……」
魔物「この街は豚料理が名物ですから、あっさりしたものってのは中々ないですよ……」
魔王「あっさりした料理は良い……出汁の豊かな味を堪能できる」
魔物「実際にそういうの食べたら今度はあっさりしすぎとか言いそうですね」
0039以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 02:36:25.44ID:JKvSaMmh0
魔物「さて、それではここの観光名所も巡りますか」
魔王「ここ、なんというか巡るまでもなく細かい造型の像とかがあったりするんだが」
魔物「ドワーフは手先が器用ですからね……けど、像よりも素晴らしいものがあるんですよ」
――――鍛冶場
魔王「……ここ?」
魔物「はい、ここは鍛冶場見学ができるって有名なんです、技術の流出を嫌う鍛冶師が多いですから貴重です」
魔王「上半身裸のドワーフ達が鉄を溶かしたり叩いたりしてるだけじゃないか」
魔物「むむむ、その魔王様の鎧だってここで作られたとの伝説があるんですよ!」
魔王「剣も鎧も近場で済ませてたのか……、案外地域密着型だったんだな俺、剣は違ったけど」
魔物「その鎧は伝説によれば、溶岩の熱にも耐え、ドラゴンの牙すら通さないほど頑丈との事です」
魔王「おお! 俺の鎧すげぇ!」
魔物「ちょっとやそっとじゃへこみすらしないはずです!」
魔王「おお! ちょっと叩いてみるか! ……………………あれ?」
魔物「………………ここが鍛冶場でよかったですね、それくらいのへこみすぐに直してもらえますよ」
魔王「うん……」
0042以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 02:44:23.19ID:JKvSaMmh0
魔物「さて、気にせず次なる観光名所へ!」
魔王「おう!」
魔物「ここは先ほども言ったように豚肉が名物です、そしてその牧場に行ってみたいかと思います!」
――――牧場
魔物「魔王様見てくださいよ、あの子可愛いですよ!」
魔王「俺はお前の美的感覚を疑いそうになった……」
魔物「あんなに可愛いのに……あ、あっちの豚も可愛らしいですね!」
――――大地の狭間
魔物「ふぅ……豚を堪能できましたね」
魔王「見事に豚だったな……体重3トンもある豚が出てきた時はびっくりした」
魔物「さて、晩御飯を食べますか!」
魔王「…………豚肉を?」
魔物「ええ、そうですよ? 名物ですから」
魔王「女って強い……」
0050以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 02:58:04.56ID:JKvSaMmh0
魔物「さて、次の街、水の都へ行きましょう!」
魔王「おー!」
――――馬車
魔王「今度は馬車なんだな」
魔物「流石に今度は徒歩ってわけには行きませんからねぇ……」
魔王「だいたいどれくらいで着くんだ?」
魔物「一週間は覚悟してください」
魔王「……どんどん必要日数が増えていくな」
魔物「私の想定してるルートでは、全部巡りきるのには3年かかる予定ですね」
魔王「3年!? 金は足りるのか?」
魔物「安心してください、案外お金もちですから」
0051以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 03:00:45.48ID:JKvSaMmh0
魔物「そうだ、言っておきますけど」
魔王「ん?」
魔物「次の街は人が多いですから、気をつけてくださいね?」
魔王「具体的には何を?」
魔物「魔王って事です、私はまだ勇者討伐を諦めたわけじゃないですので、ばれたら厄介です」
魔王「……勇者討伐ねぇ、大人しく旅行してたらいいんじゃないか?」
魔物「…………諦めきれないんですよ」
0054以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 03:08:13.74ID:JKvSaMmh0
――――水の都
魔物「…………すごいですね」
魔王「…………すごいな」
魔物「建物が全部水に浮かんでますよ」
魔王「道すら水に浮かんでるな」
魔物「それどころか、宙に水の玉が浮かんでますね……」
魔王「……浮かんじゃってるなぁ、あれ中身も本当に水なのか?」
魔物「さぁ……結構高いところにありますから触れませんしね……」
魔王「本当に……すごいな」
魔物「…………少し節約して滞在日数増やそっと」
0056以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 03:15:25.95ID:JKvSaMmh0
魔物「それじゃ、宿を取りますか」
魔王「だな」
――――宿屋「流水の調べ」
主人「空き部屋はないね」
――――宿屋「水霊の壷」
主人「あー、つい5分前まで空いてたんだけどねー」
――――宿屋「水辺の砂」
受付「一般の部屋ですと、ご予算はこれほどに……これより安い部屋ですか? あいにくございません」
――――宿屋「青の思い出」
主人「一部屋だけなら空いてるよ?」
魔物「借ります!」
0059以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 03:24:06.01ID:JKvSaMmh0
魔物「まさか、宿を借りるだけでこんなにも苦労するとは思いませんでした……」
魔王「流石は観光名所ってところだな……」
魔物「まぁ、気を取り直して観光しますか!」
――――万物の滝
魔物「おー……」
魔王「……あれだけの量の水、どこから落ちてきてるんだ」
魔物「上が見えませんもんね……」
魔王「そしてもう一つ疑問なのが……ここら一帯の店の料金の高さだ」
魔物「上限が見えませんもんね……」
0060以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 03:29:31.91ID:JKvSaMmh0
魔物「はい、魔王様これ」
魔王「……なんだこれ」
魔物「船のチケットです、あそこにお城見えるじゃないですか」
魔王「……まさかあの城を観光できるっていうのか!」
魔物「ふふふ、そのまさかです! 船を使わなければたどり着くことができないお城です!」
魔王「で、往復券いくらだった?」
魔物「聞かないでください」
0062以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 03:39:25.19ID:JKvSaMmh0
――――水上の城
魔王「………………」
魔物「綺麗ですねぇ……」
魔王「ん? ああ、そうだな」
魔物「この城は、元々お姫様が住んでたらしいですよ?」
魔王「……きっと美しかったんだろうな」
魔物「けど、我が一族が襲い掛かって殺しちゃったらしいんです」
魔王「らしい?」
魔物「んー、人間達の伝承ではそうなってるんですけど、当時の状況を考えるとここまで来る余裕なかったと思うんですよね」
魔王「お前が言う伝説は見事にあてにならないからな……」
魔物「魔王様がヘタレすぎるのが悪いんですよ」
0063以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 03:51:00.16ID:JKvSaMmh0
魔物「さて、この城に来た一番の理由」
魔王「一番の理由?」
魔物「それがこの珠! 水樹の珠です!」
魔王「…………なんかみんな、ぺたぺた触りまくって手垢だらけなんだが」
魔物「ふふふ、この手垢だらけの珠、実はこれがこの街の状況を維持してるらしいですよ?」
魔王「……どうやって?」
魔物「観光パンフレットには、水が樹のように建物や道を支えてる……との事です」
魔王「ああ、それで水樹の珠、ってそんな大事なもん、ここにおいておいていいのか?」
魔物「なんでも、真の持ち主以外には取れないとかパンフレットには書いてますね
また、お姫様が死んだから持ち主は永遠に現れないだろうとも……」
魔王「…………」
魔物「チャレンジしてみます?」
魔王「樹の前例があるから遠慮しとく」
0065以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 03:59:02.17ID:JKvSaMmh0
――――青の思い出
魔王「…………純粋に不味い」
魔物「我慢してください、宿代が平均的に高いから食事はどうしても切り詰められます」
魔王「塩味が効いてない、肉がない、おかずが少ない」
魔物「魚肉があるからそれで我慢してください」
魔王「一番美味いのが水……」
0067以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 04:05:54.32ID:JKvSaMmh0
魔物「さて、次の街へ行きますか」
魔王「待て、滞在日数増やすとか言ってなかったか?」
魔物「……部屋によって追加料金があるとか、予め言っておかないのって詐欺だと思いません?」
魔王「わかった、次の街へ行こう」
――――馬車
魔王「で、次の街はどこなんだ?」
魔物「えーと、山岳の街ですね」
魔王「……山?」
魔物「山です、途中から徒歩になりますから覚悟してください」
0069以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 04:14:19.62ID:JKvSaMmh0
――――山道
魔王「死ぬ」
魔物「これくらいでへこたれないでください!? まだまだ先は長いんですよ?」
魔王「お前は普通の服だからいいさ、だが俺は見ての通り鎧だ、重い! 疲れた! 足が痛い!」
魔物「…………仕方がないですね、剣くらいなら持っておいてあげますよ」
魔王「うむ、苦しゅうない」
魔物「よいしょっと…………あれ? ふんっ! ……ふぅ、腐っても魔王だったんですね」
魔王「なんか酷いこと言われてるな、で、剣は……?」
魔物「自分で持ってください、持てません」
魔王「……そんなに重いか? これ」
魔物「多分、魔王様にしか使えないような魔法がかかってるんじゃないですか?」
魔王「おお、初めて魔王らしい事が発覚したぞ」
魔物「あんまり役に立ちそうにない事ですけどね……」
0070以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 04:25:23.04ID:JKvSaMmh0
――――山岳の街
魔物「はぁ…………やーっと着きましたね」
魔王「……疲れた、歩きたくない、足裏いたい、おなか減った、のど乾いた、眠い」
魔物「今日はもう、すぐに宿を取って、明日観光しますか……」
――――街の広場
魔物「…………宿がないですね、これは街っていうより……」
魔王「村だなこれは」
魔物「仕方がないですね、今日は野宿という事で……」
魔王「嫌だ! 野宿だったら俺は泣くぞ! 大の男が横ですすり泣いても良いのか!」
魔物「本当に泣きそうな顔で言わないでくださいよ!?」
村人「あのー、あんたら……」
魔物「はい?」
0072以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 04:34:50.30ID:JKvSaMmh0
――――村長の家「ゲート オブ ザ バビリオン」
魔物「なんですかこの名前」
村長「格好良いからつけました」
魔物「えっと、村の人からここで泊めてもらえると聞いたのですが……」
村長「ふむ、そうですか……いいでしょう、それにもうお連れの方はベッドで寝ておりますし……
ただし一つ頼みたい事があります」
魔物「はい?」
村長「あなたの”それ”見せてくれませんかな?」
魔物「……よくわかりましたね」
村長「少し”それ”に精通してるものなら一目でわかるよ、あんたのは特にすごいねぇ」
魔物「…………何百年と続いてる実績有りですよ」
0075以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 04:49:06.39ID:JKvSaMmh0
魔物「さて、観光しますか」
魔王「うむ、一晩中寝て気分爽快、今ならなんでもできるぞ!」
魔物「それじゃあ、また二時間ほど山登りしますか」
――――頂上
魔王「死ぬ、足千切れる、疲れた、村長の家帰りたい」
魔物「どうせ死ぬなら勇者と倒して死んでください、ほら、見えてきましたよ」
魔王「…………岩?」
魔物「岩です」
魔王「なんか、ここの辺り一帯だけ少し色が違うな、青がかってるというか……」
魔物「実はここ、勇者が使ったと言われる剣が刺さっていたそうです!」
魔王「おお! まさに伝説って感じだな!」
魔物「その剣はドラゴンの鱗を紙のように切り裂き、羽のように軽いと聞きます!」
魔王「今、俺の中で勇者と戦わないという気持ちがさらに固まった」
0077以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 05:00:13.41ID:JKvSaMmh0
魔物「ここにくれば、勇者を倒すヒントが手に入ると思ったのですが……」
魔王「ただ、良い景色が見れただけだったな」
魔物「……剣は勇者以外のものが取ろうとしても決して抜けず、勇者だけが引き抜けたと聞きます
つまり、勇者以外には剣と地面は同じくらいの堅さだったと思われます」
魔王「で?」
魔物「魔王様の剣でこの岩を切れるか試してみましょう」
魔王「嫌だ、この鎧の惨事を忘れたか! 試さん! 絶対に試さんぞー!」
魔物「大丈夫です! 魔王様の剣は天をも貫き、一振りで三千世界の鴉をなぎ払い、地面に刺せば石油が出て大もうけしたという伝説があります!」
魔王「おお!」
魔物「さぁ、今こそ魔王様の真価を見せる時です!」
魔王「うーむ……まぁ、ちょっとだけならいいか、えいっ!」
魔物「あ」
魔王「あ”」
――――村長の家「エターナルフォースブリザード」
魔物「ここら辺に鍛冶屋ってあります?」
0085以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 05:12:54.76ID:JKvSaMmh0
魔物「さぁ、次の街へ行きますか」
魔王「俺の剣……俺の……」
魔物「女々しいですよ魔王様! それに次の街は少し予定を変更して鍛冶の街に行きますから大丈夫ですよ!」
魔王「まさか、真ん中から真っ二つに折れるとは思わなかった……それに岩も少ししか欠けなかったし……」
魔物「逆に考えるんですよ、勇者と真っ向勝負したら剣で打ち合ったら死ぬというのがわかって良かったなって考えるんです」
魔王「俺の中で勇者と戦わないという意思が完全に根を張った」
――――馬車
魔王「そういえば、予定を変更してって言ってたがそんなに綿密に予定立ててたのか?」
魔物「元々魔王様がいなくても旅行はするつもりでしたからね」
魔王「……一人で3年間も旅行する予定だったのか?」
魔物「はい、親が死んだ時から決めてました」
0086以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 05:19:15.01ID:JKvSaMmh0
――――鍛冶の街
魔物「と、そんなこんなで到着しました」
魔王「当然だが、鍛冶屋だらけだな」
魔物「ここはドワーフの街の鍛冶とは次元が違いますよ、なんていったって、ここには神がいますから」
魔王「……神?」
魔物「ええ、鍛冶の神です、とは言ってもまず会える事はないですけどね……
さて、とりあえずは宿を取って、剣を直してもらえる鍛冶屋を探しますか」
魔王「おう!」
0088以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 05:30:19.87ID:JKvSaMmh0
――――鍛冶屋「鉄の心臓」
主人「無理だなこりゃ」
魔王「…………」
魔物「…………えっと、どういう事ですか?」
主人「こいつぁ、金属っていうより魔法の塊だ、たしかにベースは金属だが、魔法が幾重にも重なってやがる」
魔王「直してもらおうと思ったら?」
主人「こいつを作った奴に持っていくしかないんじゃねぇのか?」
――――宿屋「鉄の溜まり場」
魔物「魔王様、この剣、誰に作ってもらったか覚えてません?」
魔王「もちろん覚えてない!」
魔物「…………勇者と戦おうと思ったら、あの剣でないと厳しいですよね」
魔王「ああ……勇者と戦う気は毛頭ないが、あの剣は干し肉とか切り分けるのにかなり便利だったんだよな……」
魔物「とりあえず、明日また考えますか」
0089以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 05:41:20.90ID:JKvSaMmh0
――――酒場「鉄と溶ける日」
魔物「と、いうわけで情報収集のために酒場に来ました」
魔王「やっぱり情報を手に入れるための王道といえば酒場だよな」
魔物「と、いうわけで私はちょっとヤボ用があるので魔王様はここで情報を集めててください
そう、用事があるのです、決して逃げるわけではありませんよ?」
魔王「へ? って早!」
魔王「…………嫌な予感がする」
蛇女「へぇ、どんな?」
魔王「何故か頭に鈍痛が走る予感がする」
蛇女「あら、よくわかってるじゃない
……あれほど剣は大事にしろっつったでしょうがこの糞ガキがぁああああ!」
0090以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 05:47:40.18ID:JKvSaMmh0
――――病院「火の咆哮」
魔王「うう……頭いたい……ハンマー怖い……」
魔物「魔王様、神様と知り合いだったんですね」
魔王「怖い……蛇怖い……」
魔物「神様、頭を血だらけかつ、全身火傷した魔王様を担ぎながら笑ってましたよ”勇者に殺されたと思ってたよ”って、嬉しそうに」
魔王「ふいご怖い……鉄怖い……」
魔物「後、神様に山で取ったかけらと折れた剣渡したら、もっと強くして直してくれるって言ってましたよ!」
魔王「火怖い……水怖い……交互につけないで……」
0093以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 06:03:09.23ID:JKvSaMmh0
魔王「……何故だろう、ここ一週間の記憶がないんだ」
魔物「魔王様、ここ一週間怖いとしか言ってませんでしたからね」
蛇女「二人ともー、元気ー?」
魔王「ヒィ!?」
魔物「あ、おかげさまで元気です、宿も取り計らってもらって本当に助かりました」
蛇女「それは良かった、これ、直しといたよ
糞ガキ、さっさと受け取りな」
魔王「ヒィィィ!」
魔物「あの……魔王様記憶なくしてるんですよ、良かったら昔のこと教えてくれませんか?」
蛇女「…………こいつ、記憶なくしてるのかい? てっきり勇者を殺すために剣を直しに来たんだと思ったんだけど……」
魔物「やっぱり、魔王様って勇者を憎んでたんですか?」
蛇女「んー……昔は憎んではなかったよ? むしろ仲は良かったんじゃないのかねぇ」
0095以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 06:12:11.76ID:JKvSaMmh0
魔王「さぁ出発しよう、やれ出発しよう、とっとと出発しよう」
魔物「んー……できれば蛇女様にもっとお話しを聞きたかったんだけど、あれ以来会えなかったしなぁ……」
魔王「ダメだ! あいつは恐怖だ! 魔人だ! 全ての悪だ!」
魔物「……仕方がないですね、次の街へ行きますか」
――――馬車
魔王「ふぅ……さようなら鍛冶の街、そしてもう二度と来るか鍛冶の街」
魔物「どれだけ蛇女さんが嫌いなんですか、結構いい人だったじゃないですか」
魔王「お前はあいつの怖さを知らないからそんな事が言えるんだ
よし、あいつの部分だけだが少し記憶を思い出したから教えてやろう……
あいつの恐ろしさを……な」
0099以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 06:25:54.56ID:JKvSaMmh0
――――魔王様の回想
魔王「鍛冶の神! 鍛冶の神はいるか!」
蛇女「鍛冶の神にいったい何用でしょうか?」
魔王「ええい! お前のように胸に無駄な脂肪を蓄えている奴に用はない! 俺は剣を作ってもらいに来たのだ!」
蛇女「剣ならいますぐやるよ、ただし鞘はお前の口だ」
――――魔王様の回想2
魔王「勇者よりも強い剣を手に入れたく、高名なあなた様にご協力願えないかと参りました」
蛇女「剣を作ろうにも、材料が足りん、取ってきたら作ってやってもいいぞ」
魔王「その材料とはどこで手に入るのですか?」
蛇女「なんでも強い魔力を持つものの体内には魔力の結晶ができるらしい
それが欲しいのだが……お前、魔力強そうだなぁ」
――――回想3
魔王「ヒィィィ! ヒィィ!!」
蛇女「ははは、そんなに怯えるな、ただ作った剣を渡しに来ただけだ」
魔王「もう裂傷はイヤァアァアアア!!」
蛇女「おっと、手が滑った」
魔王「ギャァアアアアア」
0100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 06:30:22.27ID:JKvSaMmh0
魔王「その後も剣がほころびたりするたびに”愛が足りねぇんだよぉ!”とハンマーで頭を叩かれていた……」
魔物「……なんというかよく生きてましたね」
魔王「ああ……できれば思い出したくなかったよ……
もう奴のせいで俺の心と肉体はボロボロだ……」
魔物「それはちょうど良かったですね」
魔王「へ?」
魔物「次の街は温泉の街です」
0104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 06:43:20.15ID:JKvSaMmh0
――――温泉の街
魔王「…………どこもかしこも湯気だらけだな」
魔物「はい、温泉の街ですから、……素晴らしい街です」
魔王「…………宿は!」
魔物「蛇女様に感謝です……取り計らってくれました」
魔王「あの蛇女が……悪い予感しかしないな」
――――宿屋「針のむしろ」
魔王「俺は野宿する」
魔物「どうしたんですか? 魔王様」
魔王「俺は店名で全てを悟ってしまったんだ!」
魔物「きっと大丈夫ですよ、部屋を見てみましょう」
魔王「……案外普通だな」
魔物「だから言ったじゃないですか、きっと蛇女様もやりすぎたと思ったんですよ」
魔王「そういうことか……それじゃ俺はちょっと寝るかな……ぎゃぁあああ?!」
魔物「どうしました?」
魔王「ふ、布団の中に大量の針が……」
0105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 06:49:43.16ID:JKvSaMmh0
魔物「さて、温泉めぐりしますか」
魔王「ああ、そうだな、できれば外傷に効く温泉がいいなぁ」
魔物「さて……これを」
魔王「これは……温泉フリーパスだと!? 蛇女からもらったんじゃないだろうな!」
魔物「これはちゃんと買った奴ですよ」
魔王「それなら安心だ……さて、どの温泉から行くんだ?」
魔物「……今回は別行動ですよ、というか着いてきたら蛇女さんにあることないこと言いますよ?」
魔王「ヒィ!?」
0106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 06:55:20.66ID:JKvSaMmh0
魔王「…………とりあえず、近いところから温泉めぐりしていくか」
――――塩温泉
魔王「…………ふぅ」
――――泡温泉
魔王「ぬぉぉおお!? 下から泡が吹き出てくる!」
――――魚温泉
魔王「小さい魚がオゥ! いっぱい! アウゥ! 癖になるぅ!」
――――血の池温泉
魔王「…………ただ赤いだけだなこれ」
0111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 07:06:16.18ID:JKvSaMmh0
――――露店風呂
魔王「うむ、中々絶景だな……」
青年「よう、魔王、久しぶりだな」
魔王「……誰だ?」
青年「……覚えてないのか?」
魔王「あいにくと記憶喪失でな……」
青年「記憶喪失でも、温泉に入ってるくらいだから今の世界くらいある程度把握してるんだろう?
なら、推測ででも俺を当てれないか?」
魔王「んー……男で俺を知ってる奴かぁ……俺が思い浮かぶのは勇者くらいだな」
勇者「正解」
0115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 07:13:19.24ID:JKvSaMmh0
魔王「……あー、倒しに来たの?」
勇者「いや、様子見だよ、魔王と魔物がうろついてるって噂を聞いてね」
魔王「あー……街中でも姿かくしてなかったし、思いっきり魔王魔王言ってたしな……」
勇者「それに、お前よりもどちらかといえば、魔物の方を様子見しにきたって感じだな」
魔王「……なんでまた?」
勇者「んー……蛹が蝶になる瞬間って見てみたいだろ? それと同じようなものだな」
0116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 07:19:32.94ID:JKvSaMmh0
魔王「いまいちわからんことを言うな……
とりあえず、魔物は思いっきりお前の事敵視してるから気をつけろよ」
勇者「大丈夫だよ、もう慣れてる」
魔王「…………まぁ、とりあえず俺は他の風呂も巡りたいから上がるぞ」
勇者「魔王」
魔王「なんだ?」
勇者「…………水の都には行ったか?」
魔王「……料理が糞不味かった」
勇者「それだけか?」
魔王「それだけ」
勇者「…………張り合いがないなぁ」
0118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 07:28:41.76ID:JKvSaMmh0
――――宿屋「針のむしろ」
魔王「ただいまーっと」
魔物「おかえり、外傷に効く温泉はありました?」
魔王「むしろしみたり、体中をまさぐってくる魚がいる温泉がありました
あーそれと…………」
魔物「?」
0151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 14:01:35.68ID:JKvSaMmh0
魔王「……やっぱいいや」
魔物「気になりますね……それよりも、明日ですが」
魔王「出発するのか?」
魔物「いえ、近くの山に登ろうかと思っていますが、魔王様も来ますか?」
魔王「……俺が山登り程度でへばるとでも思っているのか?
前は鎧をつけていたからあのざまだったが、鎧を外せば山などいくらでも登れる」
魔物「それはよかったです」
0153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 14:10:54.27ID:JKvSaMmh0
――――灼熱山
魔王「暑い、熱い、のど乾いた、もうダメ、死ぬ」
魔物「へばってるじゃないですか!?」
魔王「こんなに暑い山とは聞いていないぞ! そこら辺にマグマが流れてるとか予想できるか!」
魔物「ここら辺は温泉が多いって事から火山地帯という事も予想してください」
魔王「おまけに、お前自分だけ涼しそうな格好をしよって……」
魔物「流石に魔王様の着替えとか準備してませんでしたからね、しかしこの格好でも汗だくですよ……」
魔王「…………魔王アイ!」
魔物「……とうとう気がお触れになりましたか」
魔王「ふっ、魔王アイの恐ろしさに気づかないならばそれでよし……ブラは青か」
0155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 14:18:21.26ID:JKvSaMmh0
――――山頂
ドラゴン「何用だ?」
魔物「お知恵を借りたくやってまいりました、我々に勇者を殺す術はありますか?」
ドラゴン「……30世代前にも言ったが、何も思いつかんよ」
魔物「……今はこちらには魔王がおります、それでも、ですか?」
ドラゴン「ほう? 魔王がようやく目覚めたのか、今はどこに?」
魔物「途中で崖から蹴り飛ばしたものでわかりません」
0158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 14:29:45.84ID:JKvSaMmh0
――――蜥蜴村
魔王「うーん……暑いよ痛いよ……ひぃ! 真っ赤な剣をこっちに向けないで!」
蜥蜴男「ん? 目が覚めたかい」
魔王「……ここは?」
蜥蜴男「蜥蜴村さ、あんたは崖の下で青い青いとうめいてたから拾ってきた
おおかた、ドラゴン様に会いに来たところで足を滑らせたってところだろ?」
魔王「ドラゴン?」
蜥蜴男「ここの山頂におわす、我々の主さ、たまーに知恵を借りにくる奴が来る」
魔王「……今誰か会ってるか?」
蜥蜴男「とびっきり珍しいのが一人、もう魔物なんてどこにもいないと思ってたよ」
魔王「ふむ……そいつが話し終わるまでここでゆっくりしていてもいいか?」
蜥蜴男「元々暇だから拾ってきたようなもんだ、歓迎するよ」
0159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 14:40:30.83ID:JKvSaMmh0
魔王「そこで俺は言ってやったんだよ”俺がこの樹をぶち壊してもいいのかい?”ってな」
蜥蜴男「ふんふん」
魔王「そしたら”ええ、壊せるものならw”とか言ってきやがったから全力の20%で殴ったんだよ
そしたらかの万年樹もぐわんぐわんと揺れて、あの時の魔物の顔っていったらなかったぜ、HAHAHAHAHA」
蜥蜴男「あの万年樹がか! はー! あんた強いねぇ」
魔物「…………魔王様、今でも”手首痛い、あの時誰かがちゃんと止めてくれなかったから……”とか言ってませんでしたっけ」
魔王「ひゃぁ!? い、いたのか、ドラゴンとはどうだった?」
魔物「収穫は殆どありませんでしたねぇ、強いて言えば、旅行の予定を練り直さないといけないってのがわかったくらいです」
魔王「……流石ドラゴン、各地の名産物や旅行の仕方も知っているのか」
魔物「予定を繰り上げして、次の街は港街です」
0161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 14:51:39.62ID:JKvSaMmh0
――――馬車
魔王「しかし、なんでまた港街に?」
魔物「目的地には徒歩でもいけるんですが、船の方が早く着くんですよ」
魔王「旅行しながらゆっくりじゃダメなのか?」
魔物「本当はそうしたかったんですが……陸路で迂回しながら行くと一年はかかります」
魔王「……船なら?」
魔物「2週間ってところですね」
魔王「なら、3年の旅は2年の旅になったのか?」
魔物「……残念ながら」
魔王「しかし……そんなに繰り上げてまで急ぐって、目的地はどこなんだ」
魔物「勇者が出生した国です」
0163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 15:04:04.97ID:JKvSaMmh0
――――港町
魔王「……海!」
魔物「……初めて見ましたが、やはりすごいですね」
魔王「ああ、そこら辺中、人だらけ、物だらけ、商人だらけだ、流石港町」
魔物「とりあえず、宿を取っておきますから、次の船の乗船券でも買っておいてくれませんか?
えっと、待ち合わせ場所は……あの無駄にでかい勇者の像でいいでしょう」
魔王「本当に無駄にでかいな」
魔物「魔王様が討伐されて、ここは相当潤ったんでしょうね……、奴隷、強奪した金品、亜人達から搾取した物資……」
魔王「……まぁ、昔の話だろ? 今はそうじゃないならそれでいいじゃないか」
魔物「その昔のせいで未だに苦しんでいる一族もありますけどね……」
0167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 15:12:00.38ID:JKvSaMmh0
――――乗船券売り場
魔王「次の船はいつですかね」
店員「次の船ですかー、次の船なら出る予定はないですよ?」
魔王「はい?」
店員「そろそろ戦争を始めるらしくて、怖がって乗客は来ないし、貨物船の需要が上がったからみんな貨物船の状態ですね」
魔王「……貨物船に乗せてもらうには?」
店員「船長との交渉しだいじゃないですか?」
0168以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 15:21:41.75ID:JKvSaMmh0
――――宿屋「海の水平線」
魔王「かくかくしかじか」
魔物「ちゃんと言ってください」
魔王「戦争が始まるらしくて船が出ない、貨物船ならいっぱい出るけど船長と交渉しないと乗れない」
魔物「なるほど……戦争って勇者の母国と他国の戦争ですよね?」
魔王「そりゃあ、そうじゃないのか?」
魔物「……これはチャンスかもしれませんね」
魔王「へ?」
魔物「いいですか、勇者は基本的にそこら辺をぶらぶらしています、つまり殺そうと思ってもどこにいるのかがわからないわけです」
魔王「……まぁ、そうだろうなぁ」
魔物「そこで私は勇者の情報を得るべく、勇者の母国へ行こうとしていたのですが、戦争となればあいつは絶対に来ます」
魔王「なんでまた」
魔物「あいつはそういう奴なんですよ、横から入ってきて全てを無茶苦茶にかき乱す、そういう男なんです」
0169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 15:28:51.98ID:JKvSaMmh0
魔物「こうしてはいられません、早速貨物船の船長達と交渉しに行きましょう!」
魔王「……行きたくねぇなぁ」
――――波止場
魔物「今日にも出る貨物船と話はつけました、さぁ、乗りますよ」
魔王「早!? 宿はどうするんだ!? 新鮮な海の幸は!」
魔物「宿は前金を払っておいたから大丈夫です、船の上で釣りでもしたら海の幸も食べれるでしょう
さぁ、さっさと行きますよ!」
魔王「…………戦争、ねぇ」
0171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 15:37:54.06ID:JKvSaMmh0
――――船
魔王「死ぬ、辛い、気持ち悪い、下ろして」
魔物「予想はしてましたけど凄まじい勢いで酔ってますね……」
魔王「……二週間もこのままなのか?」
魔物「はい、二週間もこのままです」
魔王「…………ウップ!」
魔物「私に吐いたら船から落としますよ!」
――――勇者の母国
魔王「…………魔物、なぁ、俺はちゃんと立てているか……? 俺は……生きているのか……?」
魔物「さっさと宿取りに行きますよ、今までと違ってここは大きいですから、この国を巡るだけでも相当長くなりますよ」
魔王「……どれくらい?」
魔物「ざっと名所を巡るだけでも5日間、それに勇者の情報が手に入るまでしばらくはこの国にいようかと」
0174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 15:59:10.94ID:JKvSaMmh0
――――勇者の家
魔王「いきなり勇者の所在地をあててしまったじゃないか」
魔物「これは大昔の勇者の家を再現した観光スポットですよ、ほら、ここに勇者について書いてる看板とかありますよ」
魔王「ふむふむ……大昔に魔王を封印した英雄、魔王を封印した後は水の姫と暮らしていたが、水の姫が魔物達に殺される
それ以来、世界の平和と守るべく世界中を放浪している……」
魔物「人間達からすれば平和を守ってるかもしれませんが、亜人達からするとただの虐殺者ですけどね」
魔王「この水の姫って……?」
魔物「あの水の都にいたっていうお姫さまですよ」
魔王「……あー、あのお城ね、ならあそこもある意味、勇者に関係ある所だったわけか」
魔物「勇者について情報を得るどころか、色々と失いましたけどね……お金とかお金とか……」
0175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 16:00:38.49ID:JKvSaMmh0
――――内部
魔王「普通だな」
魔物「普通ですね……」
魔王「ん? この机…………?」
魔物「なんでも、大昔からずっと残ってる机らしいですね
数少ない実際に勇者が使っていたもの、と書いてあります」
魔王「勇者が使っていたものって……勇者今でもそこら辺ぶらぶらしてるのにな」
魔物「まぁ、大昔からある! っていうとたいしたものじゃなくても凄そうに見えますからね……魔王様と一緒で」
魔王「あれ、今すごく酷いこと言われた気がする」
0176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 16:13:46.51ID:JKvSaMmh0
――――騎士団
魔王「ここも観光名所なのか?」
魔物「ええ、実際に訓練してるところを見れますし、なんでもここは実際に勇者が所属していたらしいですよ
……つまり騎士団の剣の技をそのまま勇者が使ってるかもしれないって事です、ちゃんと見ておいてくださいよ」
魔王「ふむ…………なんか、一突きで木の葉を4枚突き刺してるんだが」
魔物「騎士団の得意技だそうです、なんでも勇者は落ちてくる木の葉全て突き刺していたらしいですよ」
魔王「……あっちでは剣に重りをつけて振ってるな」
魔物「勇者は常に重りを全てつけていたそうです、それでも木の棒の如く振り回したとか」
魔王「とりあえず、勇者と戦いそうになったら即座に逃げようという俺の覚悟が決まったな」
0178以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 16:24:45.33ID:JKvSaMmh0
――――料亭「黄金の麦」
魔王「……ここは」
魔物「大昔から続いているといわれている料亭、黄金の麦
長い間引き継がれているその味は代を重ねるごとに深みを増している
かの勇者もここでの料理に舌鼓を打ったとか……」
魔王「…………」
魔物「ここでのお勧め料理は……」
魔王「鴨肉のソテー……」
魔物「……知ってたんですか?」
魔王「いや、思い出した、大昔から変わってないんだな」
――――食後
魔王「味は変わってた……」
魔物「……別に、って味でしたね、不味いわけでもないですが期待したほど美味しくもない」
魔王「なにもかも、変わらずにはいられないということなのかっ……!」
魔物「もう老舗ってだけで興味本位で観光客が食べに来ますから、味の追求は忘れちゃったんでしょうねぇ」
0181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 16:37:35.81ID:JKvSaMmh0
――――宿屋「王国の品位」
魔王「さて、明日はどうするかねぇ」
魔物「明日は戦場ですよ」
魔王「……へ? 観光しないのか」
魔物「ええ、明日は勇者と一緒にいたという魔法使いの家などを見ようと思ったのですが……
なんでも、明日、戦場に勇者が来るという噂を聞きました」
魔王「……俺は絶対に戦わんぞ!」
魔物「今回は様子見ですよ、……魔王様が勇者に勝てるかの」
魔王「……そんなの放っておいて旅行楽しめばいいのに」
0193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 17:53:52.53ID:JKvSaMmh0
――――戦場
魔物「ここが良さそうですね、戦場を一望できます」
魔王「おー、凄まじい人数だな……人がゴミのようだ!」
魔物「目、潰しますよ、お、動き始めましたね」
魔王「……あっちの青い旗が勇者の国の方か?」
魔物「ええ、あっちの青いのが王国の方です、それであっちのカラフルな旗は連合軍ですね」
魔王「連合軍?」
魔物「ええ、それほど大きくない街が、少しずつ兵を出し合ってできてます」
魔王「……おお、カラフルな方が押してる」
魔物「戦場で活躍すれば活躍するほど自分の街の発言力が上がるわけですから、士気も高いんでしょう」
0194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 18:01:08.56ID:JKvSaMmh0
魔王「…………あ」
魔物「どうしました?」
魔王「あそこにいるのが勇者じゃないのか?」
魔物「……あー、見えますね……この戦場で死にませんかね」
魔王「見た感じ、無理そうだな」
魔物「ですねぇ……相変わらず曲芸みたいな戦い方してますね」
魔王「あれ、全部剣だけ切り落としてるのか?」
魔物「そうですよ、大昔もそうでしたから」
魔王「おお、カラフルなのがどんどん崩れていく……」
0198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 18:09:05.62ID:JKvSaMmh0
――――終戦
魔王「……すごい量の捕虜だな」
魔物「それだけ勇者が活躍したって事でしょうね」
魔王「あれだけの捕虜、どうするんだ」
魔物「全部開放されますよ」
魔王「……そんなことしてたら戦争いつまでも終わらない気がするんだが」
魔物「見てたら理由がわかりますよ」
0202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 18:25:16.24ID:JKvSaMmh0
――――戦場跡
将軍らしき男が声を張り上げる
「捕虜諸君! 我々は非常に寛大である! 貴殿らを奴隷にすることなく解放しよう!
ただし、今回の戦で我々も犠牲を出した! 何の罰も与えなければ国民が黙っておいてはくれん!
そこで我々は諸君らの処罰は国民の象徴たる勇者に任せようと思う!」
そこまで言うと将軍らしき男は口は閉ざし、続いて勇者が声を張り上げた
「捕虜諸君! 私は君たちに罰を与えなければならない! そこで私は君達には呪いをかける!
呪いと言ってもすぐ死ぬようなものではない! 少し寿命が短くなるだけのものだ!」
言い終わると、勇者は魔法を唱え始めた
先ほど宣言した呪いというものをかけるためであろう
勇者の手をかざすと、白い雪のようなものが捕虜達に降り注いだ
0203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 18:31:20.73ID:JKvSaMmh0
魔王「なんだあれ」
魔物「呪いですよ、人によって効果は違いますが、一般人なら2年か3年で死にます」
魔王「……えげつないな」
魔物「魔力が高いものなら10年、20年と生き続けますが、25年以上生きたものは聞いた事がないですね」
魔王「しっかし……わざわざ殺さずに剣だけを切り落としておいてなんで呪いとかかけるのかねぇ」
魔物「…………呪いを解くにはどうすればいいと思います?」
魔王「……聖職者に解いてもらえばいいんじゃないか?」
魔物「術者を殺す事ですよ」
0205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 18:39:39.50ID:JKvSaMmh0
――――宿屋「王国の品位」
魔王「ようするに……勇者は常に誰かに狙われるのを好むって事か?」
魔物「多分、あの中の誰かが強くなって、命を狙ってくるのを期待してるんでしょう」
魔王「……それって、それだけ自分の強さに自信があるって事じゃないか?」
魔物「でしょうね」
魔王「もしかして……放っておいても勝手に誰かが勇者を殺してくれるんじゃ……」
魔物「大昔から、あの呪い使ってましたけどね……」
魔王「……もしかして、お前が勇者に執着するのって」
魔物「……ちょっとタイプは違いますけど似たようなものです」
0207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 18:48:54.55ID:JKvSaMmh0
魔王「タイプは違う?」
魔物「強化版と言いますか……大昔の話ですけど、魔王様が封印されて暫く後
人間達が略奪しに亜人達の村や街に攻め入りました」
魔王「ふむふむ」
魔物「しかし! そんなのを黙って見過ごす我が一族ではありません!
魔力が強いのもあって、人間達を一掃してやりました! ……が」
魔王「勇者に捕まって呪いをかけられたと?」
魔物「はい、おまけに子孫にすらかかるように……」
魔王「……お前の一族って後どれくらいいるんだ?」
魔物「一人です」
0209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 18:59:09.89ID:JKvSaMmh0
魔王「悪いが俺では勇者は倒せないと思う」
魔物「…………でしょうねぇ、ことごとく期待外れでしたから」
魔王「だが、一緒に旅をするくらいならできる」
魔物「……役立たずですね」
魔王「…………」
魔物「けど、まぁ何もないよりはましですか……
私が死ぬまで一緒に遊んでくれますか?」
魔王「ああ」
0210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 19:11:33.31ID:JKvSaMmh0
――――魔法使いの家
魔物「と、いうわけで早速観光です!」
魔王「おういえ! ……けど、ここも地味だな」
魔物「ですね……」
魔王「観光客向けの看板によると……、勇者と旅をした魔法使い
数々の魔法と神より授かった武具で勇者を助けたが魔王との戦いで犠牲となった」
魔物「……因みに魔法使い関連の観光施設はここだけのようですね」
魔王「どうせならもっと有名なら、こいつを倒した俺の鼻も高かったのに……」
――――内部
魔王「…………ここは廃屋か!?」
魔物「どうやら、観光客もあまりこないから掃除や補修がちゃんとなされてないようですね……」
魔王「けど……何故か落ち着くな、ここは」
魔物「きっと、同じように人々から存在自体が忘れ去られようとしているからじゃないですか?」
0213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 19:18:34.95ID:JKvSaMmh0
魔物「さて、次なる街へ行きたいと思います」
魔王「おう」
魔物「と、その前に……簡単にこれからのルートを説明したいと思います
今度は船を使わずに陸地をわたっていって、来た道とは被らないように魔王城に戻りたいと思います」
魔王「最後は魔王城に帰るのか?」
魔物「はい、やっぱりみんなと一緒の場所で眠りたいですから」
0214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 19:26:24.68ID:JKvSaMmh0
――――魔法都市
魔物「さて、魔法都市に着きました!」
魔王「……魔法都市というか、本の街だなこりゃ」
魔物「あらゆるところに図書館がありますからねぇ」
魔王「と、いうか街事態が図書館だな」
魔物「もっと、住民が全員杖持ってたり、白い髭を蓄えたおじいさんだらけだと思ってました」
魔王「俺はドラゴンが住んでたり、いたるところで魔法合戦があると思ってた」
0215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 19:36:05.83ID:JKvSaMmh0
――――図書館
魔王「……本が多すぎてどれがどこにあるのかがわからない」
魔物「一応、ちゃんとジャンル分けされてるみたいですよ?
ここは……初級実体連金学、土と木の要素の使い方、判別の仕方、だそうです」
魔王「ここ辺りの本棚一帯?」
魔物「はい、ここ辺りの本棚一帯」
魔王「……そうだ! これだけ本があるなら勇者を殺す以外にも呪いを解く方法がわかるんじゃないか?」
魔物「ないですよ」
魔王「ぬお!? 何故そう言いきれるんだ」
魔物「伊達に先祖代々平均寿命19歳をやってません、……みんな足掻いて足掻いて死んでいきましたからね、ここも調べつくされてますよ」
魔王「……そうか」
0219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 19:56:22.15ID:JKvSaMmh0
――――宿屋「植物の死骸」
魔王「んー……ついつい読み込んでしまったな!」
魔物「ですね……続きものだと止まらなくなってしまいますからね」
魔王「すまないが、先に寝させてもらうぞ……」
魔物「はいー、私も眠いから寝ますね」
魔王「…………」
――――深夜の図書館
魔王「案外調べ忘れとかあるかもしれんしな……」
魔王「…………やべぇ、理解できねぇ」
樹女「……こんな夜中に誰ですか?」
魔王「あ、ただの観光客です」
樹女「…………そうですか、ただの観光客ですか
そうですね、悪いですけど少し話に付き合ってもらえませんか?」
魔王「嫌です」
樹女「……それが師匠に言う言葉ですか、ケツの穴から枝突っ込んで奥歯ガタガタいわしますよ?」
魔王「すいません、そういうのはもう蛇女さんだけで間に合ってますんで……」
0221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 20:05:53.55ID:JKvSaMmh0
樹女「最近、王国とここら辺一帯の街が険悪なのは知っていますね?」
魔王「あ……はい、戦争やってるのも見ました……すいません、座ってたらケツ痛いから立ちながら話してもいいですか?」
樹女「……いいですよ、で、これは本来ならば対話で済ませるのが一番良いのですが
王国側には勇者という神がついています、そのせいで王国側はまったく譲歩する意思を見せません」
魔王「はぁ……あいつ強いですからねぇ」
樹女「あなた、勇者をなんとかしなさい」
魔王「無理です」
樹女「…………ケツの穴が広がってもいいのですか?」
魔王「いや、正直な話、記憶もないし、力もないし、どうやって勇者に勝てと!?」
樹女「記憶がない……? なら私も覚えてない?」
魔王「正直言って、ただの口うるさいオバサンとしか……」
0226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 20:19:16.03ID:JKvSaMmh0
樹女「別に、勇者を倒せ、というわけではないのです、勇者を戦争に参加させないだけで良いのです」
魔王「とりあえず蔓の締め付け緩めてもらえません?」
樹女「それに、私もちゃんと策は考えてあります、……ただ実行できる人材がいなかっただけで」
魔王「あの、そろそろ帰っていいですか? あっ! やめて! 締め付け強めないで!」
樹女「……どうですか、やるんですか? やらないんですか?」
魔王「……それ、どれくらい時間かかります?」
樹女「んー……二年くらいですかねぇ」
0236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 21:03:53.85ID:JKvSaMmh0
魔王「……やります、けど条件があります」
樹女「弟子のくせに……」
魔王「とある人の呪いを解いて欲しいんです」
樹女「術法のエキスパートの私にとっては簡単すぎる条件ね
で、どんな呪い?」
魔王「勇者が使う、短命の呪いです」
樹女「諦めなさい」
魔王「簡単じゃなかったのか!?」
0237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 21:09:05.01ID:JKvSaMmh0
樹女「まぁ、聞きなさい、同じような相談をいくつも受けてきました
そして、色々と調べた結果……」
魔王「結果……?」
樹女「これは今までになかった術法で、召還と呪いを掛け合わせているという事がわかりました」
魔王「……ようするに?」
樹女「普通の呪いなら呪いを中和したり、強い魔力で吹き飛ばせばいいのですが
これは呪いというよりも……寄生虫なのですよ」
魔王「……あー」
樹女「術方ならエキスパートですが、生物学はまったくの専門外ッ!」
魔王「役たたねぇ!」
0243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 21:21:27.88ID:JKvSaMmh0
魔王「じゃあ、結局助けれないんじゃないか」
樹女「いえ……一つだけ方法があります」
魔王「勇者を殺すのは難しすぎるからなしでお願いします」
樹女「この術方を考え出した魔術師に解除させればいいのです」
魔王「……それって勇者じゃないのか?」
樹女「いえ、勇者が得意なのはあくまでも剣術です、魔法は少し仕える程度
そして、こんな術方を思いつく人物は、一人しか思い浮かびません」
魔王「……もしかして、勇者と一緒に俺に挑んだっていう魔法使いか」
樹女「…………? ……嗚呼、そうですね」
魔王「けど、そいつはもう死んだんじゃないのか?」
樹女「不可能を可能にするのが私です」
0245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 21:34:29.12ID:JKvSaMmh0
――――臨時宿屋「飛龍の背中」
魔物「…………んあ? ……あ、魔王様おはようございます」
魔王「おはよう……そしてすまん、旅は続けられなくなった」
魔物「……え? どういうことですか?」
魔王「いや、本当にすまん、本当にごめん、勇者の件でちょっとな」
魔物「……寿命ならもう諦めたからいいですよ、それよりも私は魔王様と旅してる方が楽しいですから」
魔王「いや……ちょっと樹のオバサンが脅迫してきて……魔王城の急遽帰る事になった」
魔物「へ……? ん……? なんか地面が堅い……?」
飛龍「グァー」
魔物「…………なにごとですかこれは!」
0248以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 21:48:21.15ID:JKvSaMmh0
――――魔王様の回想
樹女「いいですか、まず私の予測では魔法使いは死んでません、というかあれは死にません」
魔王「……けど、伝説では死んだと聞いたぞ」
樹女「それを実際に見たものは? 後からの状況でただ仮説を立てただけでしょう?
で、私の予測ではその魔法使いは魔王と一緒に封印されたのだと思います」
魔王「勇者が魔法使いと一緒に封印したってのか?」
樹女「そうです、封印が完全に解けていないから、あなたは不完全な形で復活したのでしょう」
魔王「そうか……俺が骨折りかけたり、山に登るだけで疲れたり、船に酔ったのは不完全なせいだったのか」
樹女「いや、それは関係ないですよ」
0251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 21:59:07.06ID:JKvSaMmh0
魔王「ふむ……呪いを解く方法はわかった
それじゃあ、約束どおり協力しよう、何をすればいい?」
樹女「そうですね、とっとと呪いを解きに行ってください」
魔王「……良いのか?」
樹女「良いも悪いも、私の作戦ってのは魔法使いと魔王と協力させて勇者をなんとかするって事ですから」
魔王「なるほど、しかし、二年かかるというのは?」
樹女「封印を解く時間です、しかし……あなたがこの場にいるという事はある程度封印が弱まっているように思えます
誰かがこつこつと封印を解こうとしていたのでしょうね、恐らく半年もかからないでしょう」
魔王「しかし……魔王城まで行くのには往復だけでも結構な時間がかかるぞ」
樹女「安心してください、私のペットを貸してあげます」
0255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 22:10:29.86ID:JKvSaMmh0
――――魔王城
魔王「――と、いうわけだ」
魔物「なるほど……役立たずの魔王様と思ってましたけど、大逆転ですね!」
鳥娘「本当ですねー、私とかもう”ああ! 魔物ちゃんの希望がこんなのだったなんて可愛そう!”って思ってましたもん」
魔王「……まぁ、とりあえず封印を解くための準備をするか!
樹のおばちゃんがくれた説明書どおりにやれば大丈夫だろ」
魔物「ふむふむ、これは…………今、我が一族のプライドがぶっ壊れました」
魔王「そんなに凄いのか?」
魔物「……我が一族が長い年月を費やしてようやく魔王様を復活させることができたと思ってたのに」
魔王「……あのおばあさん、すごい人だったんだなぁ」
魔物「私は魔王様の人脈がすごいと思いますよ」
0256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 22:14:28.22ID:JKvSaMmh0
――――三ヵ月後
魔王「時は世紀末、世界には核の雨が降り注いだ」
魔物「魔王様もう一度封印されます?」
魔王「気をとりなおして、そろそろ封印が完璧に解けそうだな」
魔物「ですねぇ、これで私の呪いも……」
魔王「……魔法使いが協力的だといいな」
魔物「あまり期待はできませんけどね……なんといっても勇者の味方だった人ですから」
0258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 22:17:49.11ID:JKvSaMmh0
――――封印の間
魔物「魔王様! 封印が解けましたよ!」
魔王「…………」
魔物「なんか魔王様ぶっ倒れてる!?」
魔物「それに……なんか封印が解けて出てきたのが……」
魔物「明らかに人じゃない!」
0260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 22:30:39.44ID:JKvSaMmh0
――――魔王城 食卓
魔王「あ、鬼さん、そこのポット取ってくれない?」
鬼「わかった、しかし、久しぶりに食べるご飯はいいものだ」
魔王「いや、もう俺も記憶戻って本当に気分爽快だわー」
鬼「で、今何がどうなってるんだ?」
魔王「勇者が昔のあんたみたいに暴れてる、止めないと色々と不味い」
鬼「……俺としては亞人達のためを思ってやったんだがな」
魔物「鬼さん、話してるところ悪いんですが、私の呪いを解いてくれませんか!」
鬼「…………? 魔法なぞ一つもわからん!!」
魔物「……へ!?」
0264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 22:34:35.70ID:JKvSaMmh0
魔物「え、どういうことなんですかこれは!」
魔王「よし、魔物、頭を出せ」
魔物「あ、はい」
魔王「なーでなでなで」
魔物「……って、なに撫でてるんですか!」
魔王「後、これ飲んで」
魔物「…………苦!」
魔王「はい、これで大丈夫」
魔物「はい?」
0267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 22:41:13.95ID:JKvSaMmh0
魔王「簡単な話しだ、虫と呪いが合体したなら
虫下し飲ませて魔力で呪いを吹き飛ばすのを両方やれば良い……術方知らないとできないけど」
魔物「なんか魔王様が始めて理知的にな事を言った気がします」
魔王「で、鬼さん、いっちょ勇者に喧嘩売りに行きますか?」
鬼「……私が勇者と戦っている最中に、二人同時に封印しないなら売りに行ってもいいぞ?」
0271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 22:49:10.72ID:JKvSaMmh0
――――魔法都市
樹女「おかえりなさい、我が弟子」
魔王「ただいま、お師匠様」
蛇女「おかえり、糞ガキ、魔王って名乗ってたのは趣味かと思ってたよ」
魔王「ヒィ!」
蛇女「今回はあんたに用があるんじゃないよ……鬼はどこだ?」
魔物「鬼さんなら、蛇女様を見たとたん、さびた鎧を持って全速力で逃げてましたけど」
蛇女「そうか……ドラゴンの牙すら通らない私手製の鎧を錆びさせたか……」
0276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 22:58:59.45ID:JKvSaMmh0
――――図書館
樹女「では、簡単に現状を説明します、街の連合軍は非常に厳しい状況です
捕虜はことごとく呪いにされ、死の恐怖に怯えています、またそれを見て兵達の士気も下がっています」
樹女「この状況を打破するために、呪いをばら撒いている勇者を自制させ
また呪いを解くためのノウハウを広める必要があります」
魔王「呪いは俺がやるよ」
鬼「ヒューヒュゴッヒューヒュー(と、くれば勇者を止めるのは俺だな)」
魔物「鬼さん可愛そう……愛用してた木刀も燃やされそうになってたし……」
樹女「……ふぅ、これで王国と対話する余地が生まれればよいのですが」
0281以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 23:08:20.26ID:JKvSaMmh0
――――協会
兵士A「呪いを解いてくれるってほんとですかい!」
兵士B「俺はぁもう、子供が成長するのが見れないのかって! 見れなくなっちまうのかって!」
兵士C「ううっ……牛乳一気飲みしたら腹が……っ!」
魔物「魔王様ー! 噂を聞きつけた兵士さん達が大量にやってきましたー!」
魔王「ええい! 全員に薬飲ませとけー!」
魔物「はいー! って、魔王様なんで剣抜いてるんですか?」
魔王「そいつら並ばせとけ! せいっ!」
魔物「って、魔王様! 何で患者切ってるんですかー!」
兵士A「肩こりが治った!」
兵士B「あれ、切られたけど何とも……」
兵士C「腹痛は治ったけど、切られたショックではみ出てしまった」
魔物「その剣ってそういう用途だったんですか!?」
0288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 23:17:44.81ID:JKvSaMmh0
――――戦場
勇者「……久しぶりだね、鬼」
鬼「ああ、ずいぶんと久しぶりだ」
勇者「今、感動に震えているよ、一度倒したものとまた戦えるなんて……」
鬼「あの時のは横から不意打ちしてきただけだろうが」
勇者「君たちが無視したのが悪いんじゃないか
今では無視できないくらい強くなったよ……?」
鬼「……雑魚をいくら相手にしても強くなるとは思えないがな」
――――協会
魔王「アタタタタター!」
魔物「はっ!? 今何故か我が一族が雑魚扱いされた気がします!」
0292以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 23:30:59.95ID:JKvSaMmh0
――――一ヵ月後
樹女「……思ったよりもうまく行きましたねぇ」
鬼「思ったよりもつまらなかったな」
勇者「がふっ……勝負……」
鬼「ふん!」
勇者「げふぅ!」
魔王「……勇者ってこんなに弱かったっけ」
鬼「そりゃ、魔法の使い方を忘れた魔法使いからしたら脅威だっただろうな」
魔物「我が一族からしても普通に脅威でしたよ!?」
樹女「さて……とりあえず二人ともお疲れ様でした、後は対話でどうにかなるでしょう」
0294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 23:34:36.04ID:JKvSaMmh0
魔物「…………魔王様」
魔王「どうした?」
魔物「これからどうしましょうか?」
魔王「……前に話してなかったか? 陸路で歩きながら魔王城へ帰るって」
魔物「っ……ですね、それじゃあ……」
0295以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2009/04/09(木) 23:35:49.08ID:JKvSaMmh0
魔物「次の街へ行きますか!」
魔王「おう!」


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