2: 代行ありがとうございますー 2014/05/25(日) 10:28:50.18 ID:5P6Koj1w0.net


―――カーテンの隙間から差し込む日差しで目を覚ます。

 むく、と上半身を起こす私。
外から聞こえてくる小鳥のさえずりと車の往来する音が、寝起きではっきりとしない頭を目覚めさせようとする。

 ふわあ。ひとつ生あくび。

 目をこすりながら、私が寝ていたベッド、その脇の机に目をやる。
そこに立てかけた卓上カレンダーは、人から貰った大切なものだ。
カレンダーはある日付を――今日を、大きな花まるで強調していた。

 ……そっか。いよいよ、今日なんだ。

 カレンダー脇に置いた封筒に手を伸ばし、中の葉書を改めて確認する。
日時は今日。名前も……間違ってない。大丈夫。
「謹啓」とか「益々御清栄」とか堅苦しい言葉が積み重なった底で、光を放つように眩しく輝く一文を、指でなぞりながら再確認した。



―――『 赤土 晴絵 』 『 鷺森 灼 』。


3: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 10:30:06.85 ID:5P6Koj1w0.net
 間違いなく、あの二人の結婚式。その招待状だ。
そして、その一人は私が愛した人。かつては私の隣にいて、共に支えあった人。

……今はもう、私の隣にはいない人。


 結婚式まではまだ時間がある。
付き添いの恒子ちゃんが迎えに来るまでの短い間、彼女との想い出に浸るのも悪くはないだろう。
窓の外で飛び交う小鳥たちをぼうっと眺めながら、私の意識は3年前を回想し始めていた。

6: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 10:33:15.22 ID:5P6Koj1w0.net



恒子『決ィィィまっったァァァァ!! 今年インターハイの頂点に君臨したのは阿知賀女子学院!!』

恒子『王者白糸台やダークホース・清澄高校を退け、堂々トップを掴み取ったァァァァッ!!』

恒子『いやぁ、まさかの展開だったね! 阿知賀女子……そういえば、すこやんが気にしてた赤土さん? あの人も阿知賀だったっけ?』

恒子『どうなのどうなの? 何か思うところがあったりとか……って、ちょっ! すこやん!? まだ放送してるよ! どこ行くの!?』


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


健夜「し、失礼します……」

晴絵「どうぞ……って小鍛治プロ!?」

憧「えぇっ!? 小鍛治プロ!?」

灼「なんで小鍛治プロが……」

晴絵「……あ、あの。一体、何の用でしょうか……」

健夜「あ……え、えっと……」

健夜(用なんて何も考えて無かったよ!)アワワ

8: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 10:34:25.28 ID:5P6Koj1w0.net
晴絵「……あの」

健夜(……)

健夜「こ、この後っ! 私と打ちませんかっ!?」

晴絵「……はいっ?」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


[都内・某バー]


はやり「……それで急に「メンツ集めて!」なんてメール送ってきたんだー」

健夜「うん……ありがとうね、はやりちゃん」

はやり「いいよいいよー☆ ま、慕ちゃんが来れなかったのは残念だけどね。……ところで」

野依「あの人! 好きなの!?」プンスコ

健夜「!?」ボンッ

10: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 10:37:00.49 ID:5P6Koj1w0.net
はやり「あー、やっぱり理沙ちゃんもそう思った?」

健夜「な……な……」プシュー

戒能「分かりやすいですよね。あまり小鍛治プロのことを存じていない私でもリアライズできました」

健夜「いや……あの……」

はやり「で? どうなの?」

健夜「……」


健夜「……」コクンッ

はやり「おぉー☆」

野依「青春!」

戒能「ということは、勿論ここで告白するんですね」

健夜「こっ、告白っ!?」

戒能「Yes……おや、まさかそのつもりでは無かったとか?」

16: >>15 一応今年のものという設定です 2014/05/25(日) 10:41:18.37 ID:5P6Koj1w0.net
健夜「だ、だって……そんな、10年ぶりに会ったその日に、って……ちょっと急っていうか……」

はやり「急なんかじゃないよ!!」ズイッ

健夜「えぇっ!?」

はやり「だって10年だよ! 10年前から健夜ちゃんは恋心を抱いてたんでしょ? 急なんかじゃないよ、むしろ遅すぎるくらいだよ!」

健夜「あの、はやりちゃん?」

はやり「あぁっ、10年越しの愛☆ すてきだよ……☆」ポヤヤーン

野依「恋愛ぼけ!」プンスコ

戒能「……思い立ったが吉日、とも言います。はやりさんが言うのはともかく、早めに告白しておくのは私も賛成ですよ」

健夜「で、でも……急に告白なんて、何を言えば良いのかさっぱりで……」アワアワ

18: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 10:44:30.20 ID:5P6Koj1w0.net
戒能「何もディフィカルトなことじゃありません。自分の思っていることをありのまま伝えれば良いと思いますよ」

健夜「うぅ……」

野依「……!」ポンッ

健夜「……理沙ちゃん」

野依「がんばって!!」フンスフンス

戒能「……む。戻ってきますよ」



晴絵「お待たせしました。すいません、来て早々お手洗いなんて……」

はやり「大丈夫だよー☆ さ、さっそく打とっか!」

野依「10年ぶり!」

健夜「そ、それじゃ……よろしくね、赤土さん」

晴絵「ええ、お手柔らかに」ニッ

健夜「……! う、うんっ!」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

20: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 10:49:19.23 ID:5P6Koj1w0.net
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


晴絵「……ツモ。400・700でラストです」

はやり「はやー、晴絵ちゃんののトップかー。強いねっ☆」

野依「トッププロ相手でも戦えてる! すごい!」

戒能「これならすぐにでもプロの世界に飛び込めそうですね」

晴絵「あはは……ありがとうございます」

健夜「……」



健夜(うぅ……全然麻雀に集中できてないよ……)

22: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 10:53:16.09 ID:5P6Koj1w0.net
健夜(「告白しなきゃ」なんて変に意識しちゃって……ど、どうしよう……)

はやり「……」



はやり「はややー……さすがに疲れてきたかもねー…☆」

晴絵「そうですね。これでちょうど10半荘目ですか」

野依「きゅうけい!」

戒能「少しブレイクタイムと行きましょうか」

はやり「じゃ、私は良子ちゃんと外の空気吸ってくるね☆」

戒能「オーケーです、はやりさん」

野依「私も!」

はやり「というわけで、すこーし席外すねっ☆」

晴絵「…? えぇ、分かりました……?」

23: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 10:55:59.78 ID:5P6Koj1w0.net
健夜(……あれ、まさか……)


はやり(…がんばれ健夜ちゃんっ☆)ウィンクバチーンバチーン

健夜(やっぱり!)ズゴーン


   カランカランッ


晴絵「……」

健夜(あんな不自然に二人っきりにしなくても……バレバレだよ、はやりちゃん! あぁでも気を遣わせちゃった!? それより何を話したら良いのか……)

晴絵「…何だか、不思議な感じですね」

健夜「ふぇっ!?」ビクンッ

晴絵「……『ふぇっ』?」

健夜「……」

晴絵「……」

24: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:00:28.40 ID:5P6Koj1w0.net
晴絵「……ふ」

健夜「…?」

晴絵「『ふぇっ』って……あの小鍛治プロが、『ふぇっ』って……」

晴絵「ふふ……はは、あーっはっは!」ケラケラ

健夜「……も、もーっ! 笑わないでくださいっ!」

晴絵「いや、ごめんなさ……くくっ、あははっ!」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


健夜「……もうっ。私だって緊張してたんですよ」

晴絵「意外です。てっきりびくびくしてるのは私だけかと思ってたんですが……」

26: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:05:38.66 ID:5P6Koj1w0.net
健夜「……あの」

晴絵「はい?」

健夜「もし良かったら……敬語、お互いやめませんか? なんだか余計緊張しちゃいそうで」

晴絵「あ、それいいですね。……あー、やっぱり年上には敬語が出ちゃうな」タハハ

健夜「む、無理そうだったら別に……」

晴絵「いえ、大丈夫です。きっとすぐに敬語じゃなくなってきますから」

健夜「そう…? …それじゃ……晴絵ちゃん、でいいかな」

晴絵「はい。……健夜さん」

健夜「……!」

28: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:10:08.75 ID:5P6Koj1w0.net
晴絵「……」ゴクッ ゴクッ

晴絵「…ぷはっ。このお店、カクテルも美味しいんですね。さすが瑞原プロの選んだお店ですね」

健夜「……ところで晴絵ちゃん。さっき言いかけてたよね。「不思議な感じ」って?」

晴絵「あぁ、いや。なんだか健夜さんと二人で話をしている、って今の状況が信じられなくって……」

健夜「…そうだね。そう言われると確かに不思議かも。……10年ぶり、だね」

晴絵「もう10年経ったんですね……」シミジミ

健夜「……あの時の跳満、覚えてる?」

晴絵「跳満……あぁ、健夜さんから直撃を取った」

健夜「うん。……私は猛烈に覚えてる。高校時代で一番……いや、今までの麻雀人生の中でも、一番印象深い振り込みだよ」

晴絵「そんなに……ですか」

30: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:14:55.50 ID:5P6Koj1w0.net
健夜「……晴絵ちゃん。あの頃の私って、実は結構テングになってたところがあってね? 「誰にだって勝てる!」と思い込んじゃってたんだ」

晴絵「……」

健夜「周りの雀士を見下してところも少しあってさ。あの頃、私にとっては麻雀は『自分ひとりで遊ぶゲーム』だったんだ」

健夜「でも。そんな中で……あなたが現れたの。晴絵ちゃん」

晴絵「私ですか?」

健夜「今まで自分の思い通りに打てていた麻雀に、初めて現れた自分の想定外の事象。……すごく衝撃的だった。頭を金づちでごつん、と殴られたみたいにね」

健夜「それからかな……麻雀が『4人で遊ぶゲーム』に変わったのは。……晴絵ちゃん」

晴絵「…何ですか?」

健夜「あなたのおかげで、私は『麻雀』を知ることが出来た。ずっと……ずっと、そのお礼を言いたかったの。……ありがとう」

32: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:20:11.95 ID:5P6Koj1w0.net
晴絵「そんな……私なんかが……」

健夜「間違いなく晴絵ちゃんのおかげだよ。本当に感謝してるの」

晴絵「……」



   ポロ


健夜「……晴絵ちゃん?」

晴絵「あ……あれ? おかしいな、なんで涙……」ゴシゴシ

晴絵「あは、はは。ごめんなさい、急にこんな……」グズッ

健夜「……」

晴絵「むだじゃ……むだじゃ、ぐすっ……なかったんだ……」グジュグジュ

健夜「……晴絵ちゃんも、あの対局から何かあったんだね。良かったら聞かせてもらってもいい?」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

35: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:24:14.89 ID:5P6Koj1w0.net
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


晴絵「――それで、しばらくは牌も握れなかったりして……麻雀を打つようになっても、ここぞという所で手が震えたり……」

健夜「…ごめんなさい。まさか、そんなことになってたなんて……」

晴絵「いえ……。今まであの準決勝はトラウマになってたんですが、その対局のおかげで健夜さんが麻雀の楽しさを知ってくれたのなら……」

晴絵「……あなたと同卓できて、本当に良かったです」

健夜「うん……私も、晴絵ちゃんと同じ卓で麻雀が打てて良かったよ。ありがとう」



健夜(……良かった。どうなるかと心配だったけども、なんとか自然に話すことが出来てるね)

(((良かないですよ)))

健夜(!?)

(((私です、戒能です)))

健夜(良子ちゃん!? えっ? どこから話しかけてるの!?)

37: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:32:11.04 ID:5P6Koj1w0.net
(((小鍛治プロの意識に念を飛ばしています。いわゆるイタコパワーってやつですね)))

健夜(えー……)

(((それより、一体いつ告白するつもりなんですか)))

健夜(いや、告白はハードルが高いってば!)

(((何を言ってるんですか。このムード、今こそ告白する絶好のタイミングじゃないですか)))

健夜(……そうかなぁ)

(((えぇ、はやりさんも「当たって砕けろだよ!」と。……健闘を祈ります)))

健夜(ちょっ、良子ちゃんっ!)


健夜「……砕けちゃだめだよ……」ボソ

晴絵「?」

健夜「あ、ごめん。こっちの話」

晴絵「はぁ……」

健夜(……よし。覚悟を決めようか…!)

38: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:39:56.10 ID:5P6Koj1w0.net
健夜「……晴絵ちゃん」

晴絵「はい?」

健夜「あのね……さっき、「晴絵ちゃんからの跳直が今までの麻雀人生で一番印象深い」って言ったよね」

晴絵「えぇ。とても嬉しいことに」

健夜「あんな経験をもう一度したくって、プロの世界に入ったんだけど……実のところ、あの振り込みを超えるような経験はまだ無いの」

健夜「ずっと、麻雀を通して晴絵ちゃんの影を追ってた。……それでね。追ってるうちに、麻雀を楽しみたいって思いと一緒に別の思いがあることに気づいちゃったんだ」

晴絵「別の思い……?」

健夜「うん。……私ね。きっと……」

晴絵「……」



健夜「……きっと、好きなんだと思う。晴絵ちゃんのことが」

晴絵「……!」

39: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:43:58.92 ID:5P6Koj1w0.net
健夜「晴絵ちゃん。……私と、お付き合いしていただけませんか?」

晴絵「……」

健夜(……)


健夜(……わー!! い、言っちゃったよ!!)

晴絵「……」

健夜(ほら! 晴絵ちゃんもビミョーな表情してるし!)

晴絵「……」

健夜(……やっぱり、私なんかが……)



晴絵「……私なんかで」

健夜「……へ?」

晴絵「私なんかで、いいんですか?」ポツリ

健夜「…! う、うんっ!! もちろんだよ!!」

41: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:46:58.19 ID:5P6Koj1w0.net
晴絵「……」

健夜「……」

晴絵「……よ」



晴絵「よろしくお願いします……っ!」

健夜「こっ、こちらこそっ!!」



  バンッ


はやり「おめでとー☆」ハヤヤー

戒能「コングラチュレーション。おめでとうございます」パチパチ

野依「めでたい!」プンスコ

晴絵「!?」

43: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:49:50.15 ID:5P6Koj1w0.net
健夜「は、はやりちゃん!? 良子ちゃんに理沙ちゃんも…!」

はやり「いやー、熱い告白だったねー。良子ちゃんっ☆」

戒能「イエス。まるで思春期の中学生のような初々しい告白でしたね」

はやり「『晴絵ちゃん、私とお付き合いしていただけませんか?』」キリッ

健夜「なんで知ってるの!」

戒能「そこの観葉植物の影のカメラから……」

晴絵「うわっ、隠し撮り!?」

はやり「いやー! おめでとう、健夜ちゃんっ☆」

健夜「んもー!」


    ハハハ       ニギニギワイワイ
         ガヤガヤ          プンスコ

46: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 11:57:15.32 ID:5P6Koj1w0.net


 窓の外から響く車の走行音が、私の意識を現在に引き戻す。
キキィッ、とタイヤがコンクリートを擦る音。駐車場にパールホワイトのワンボックスが入ってくるのが見えた。
……激しくドリフトさせながら駐車場に車を突っ込ませる、恒子ちゃんの荒い運転だ。
「ゴールド免許なんだよ!」と自慢げに語るけど、あんな運転を見せられてはそれも疑わしい。

―――迎えに来るのが早いなぁ。
まだ時間はあるというのに。だいぶ張り切っているみたいだ。
そういえば、この招待状も元々は恒子ちゃんが持ってきてくれたんだっけ。

……

……

……

……



…灼ちゃんといっしょに。

47: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 12:02:15.33 ID:5P6Koj1w0.net


 灼ちゃんと話すようになったのは、赤土さんと付き合い始めて1か月ほど経った頃だ。
赤土さんとのデートで、しばしば足を運んだ鷺森レーン。そのオーナーとして働いていたのが灼ちゃんだったのだ。
学生の身だけども、元々のオーナーだったおばあちゃんが病に伏せってしまい、それで灼ちゃんが代わりにオーナーとして働くようになったのだとか。

 ……たぶん、赤土さんはそれが心配でデート場所に鷺森レーンを選んでいたのだろう。
実際のところ経営状況も芳しくはなかったらしい。
赤土さんと二人でボウリングをしている時も、鷺森レーンには私たちがピンを倒す音以外が響くことは殆ど無かった。
まぁ、客が少なかったからこそ学生の灼ちゃん一人でも営業を続けることが出来たとも言えるのだけれど。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

[奈良・鷺森レーン]


灼「鷺森レーンの経営状況?」

健夜「うん。首を突っ込むようで気が引けるんだけど、やっぱり心配で」

48: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 12:11:09.86 ID:5P6Koj1w0.net
灼「……確かに、あまり良いとは言えな……」

健夜「お客さんもあんまり入ってないしね……」

灼「田舎のボウリング場ですから。正直、ハルちゃんと小鍛治さんが来てくれるのはかなり助かってます」

健夜「……大変じゃない? 一人で経営、なんて……」

灼「そりゃ大変ですけど……でも、時々麻雀部のみんなも手伝ってくれてます。それにハルちゃんも」

健夜「そっか……」


灼「……あの」

健夜「? なに?」

灼「ハルちゃんとは……その、どうですか?」

健夜「どうって……」

灼「どういう風にお付き合いしてるのかな、とか……」

49: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 12:16:30.18 ID:5P6Koj1w0.net
健夜「あぁ。そうだね……大体、今は週一でデートしたりしてるかな」

灼「デート……」

健夜「うん。この前は二人で長野まで旅行に行ったんだ」

灼「……小鍛治さん」

健夜「なにかな」

灼「……ハルちゃんのこと。よろしくお願いしますね」

健夜「……うん」


晴絵「お待たせー。……ん、どしたの二人とも。そんな真顔で」

健夜「あ、おかえり。」

灼「別になんでもな……」

晴絵「なんでもないってことはないだろー。おらおら、二人でなに話してたんだー?」ウリウリ

灼「ちょ、やめ……頭くしゃくしゃしないで……」

50: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 12:23:59.59 ID:5P6Koj1w0.net
[都内・福与宅]


恒子「すこやーん……」

健夜「な、なに?」

恒子「……なんでそんな大切なこと、もっと早く言ってくれないかなー!?」

健夜「えぇっ!?」

恒子「どう考えても! その……何だったっけ。しゃくちゃん?」

健夜「あらたちゃん、ね」

恒子「灼ちゃん! 絶対好きだよ、赤土さんのこと!」

健夜「うぅん……そうかな……?」

恒子「そうに決まってるって! すこやん世代の言葉で言えば「ホの字」だよ!」

健夜「わざわざそんな古い言葉に言い直さなくていいよ!」

52: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 12:33:16.01 ID:5P6Koj1w0.net
恒子「話聞くだけでもそんなに好き好きオーラ出てるのに……どうして気づかないかなー、すこやんは」

健夜「で……でも分からないでしょ! もしかしたら違うかもしれないし……」

恒子「……」スック

健夜「……」

恒子「……」


   ガチャンッ


恒子「……」

健夜「…なんで無言で冷蔵庫から酒瓶取ってくるのかな……」

53: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 12:33:44.79 ID:5P6Koj1w0.net
恒子「……」


   トクトクトクッ


恒子「……」グビグビッ

健夜「……」


   ガンッ




恒子「甘すぎるよすこやんっっっ!!!」

健夜「!?」ビクンッ

恒子「この歳で初めて出来た恋人なんだよ! それなのにすこやんがそんなんじゃダメだよ!」

健夜「ダメ、って……」

56: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 12:43:33.58 ID:5P6Koj1w0.net
恒子「もっとしっかり確保しておかないと! 赤土さんのこと! ……じゃないと持ってかれちゃうよ?」

健夜「持ってかれる、って……そんなのじゃないよ、灼ちゃんは!」

恒子「そんなのじゃない、って……」

健夜「……『ハルちゃんをよろしく』って言ってくれたんだよ」

恒子「……」

健夜「……」



恒子「……そっか」

健夜「……」

恒子「ごめんね? ガラにもなく声荒げちゃったりして……」

健夜「いや……こっちこそゴメン」

恒子「アハハ、飲も飲も! ほら、すこやんも」トトトッ

健夜「うん……って、わわっ! 入れすぎ、入れすぎだよこーこちゃん!」

恒子「ほらほらー、まだまだ入れるよー!」

健夜「溢れる! 溢れるって!!」

58: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 12:50:30.13 ID:5P6Koj1w0.net


「あの時はほんとにすこやんのことが心配だったんだからね!」

 車を無事に駐車場に停め、部屋まで昇ってきた恒子ちゃんが口をとがらせて言う。

「うん……ありがとうね、こーこちゃん」

「でも……それがすこやんだもんね。誰よりも優しくって……自分を犠牲にしてまで、人の幸せを望んで……」

「……」

 場を沈黙が包み込む。恒子ちゃんの目はサイドテーブルのカレンダーに向いていた。
赤土さんの結婚式、その日付である今日に花丸が打ってある。

「……ごめんね。そんなに心配してもらったのに」

「ほんとだよ。『きっとこの人とならすこやんも幸せになってくれる』って、そう思ってたのにさ……」

「……うん」

「……ねぇ、すこやん」

 まっすぐ、私の顔を。私の目を見据える恒子ちゃん。

60: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 12:58:32.89 ID:5P6Koj1w0.net
「……なに?」

「後悔、してない? ほんとにこれで良かったの?」

 その目は真剣だった。
普段はちゃらんぽらんな恒子ちゃんが、時折マジメな話をするときに見せる眼差し。
本気で、私のことを心配してくれているんだ。

「……うん。これで良かったんだよ」

「そう……。」

 恒子ちゃんは軽く息を吐いた。
そして、顔つきが普段通りの軽い恒子ちゃんに戻る。

「はーあぁっ。これですこやんも独身アラフォーに逆戻りかー!」

「アラフォーじゃないよ!!」

「アラフォーでしょ。あれから何年経ってると思ってるの」

「うぐっ。……そっか、そうだね」

62: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 13:04:54.78 ID:5P6Koj1w0.net
「ま、ここまで独身で来ちゃったらさ。もうずっと独身貫き通しちゃいなよ! 私も支えてあげるからさ」ケラケラ

「やだなぁ……でもまぁ、こーこちゃんがいるならそれでもいいかもね」

「……」ピタッ

「…えっ、何…?」

「すこやんがデレた……」

「私だってたまにはこれくらい言うことあるよ! ……本当に、こーこちゃんがいてくれて良かったと思ってるんだから」

「ほほー。嬉しいこと言ってくれますなー」

「私の大切な……大切な、友達だよ」

「友達……かぁ」

「うん。ありがとうね、こーこちゃん。いつも支えてくれて」

「……ま、私ほどすこやんを理解してる人なんてそういないしね! 仕方ないからこれからも付き合ってあげるよ!」

「もー。何その言いぐさ!」

64: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 13:13:46.79 ID:5P6Koj1w0.net
「……それじゃ。そろそろ行こうか。もうこんな時間だし」

「そうだね。エスコートしますよ、お姫様」

 おどけて手を差し出してくる恒子ちゃん。

「お姫様、って……もう、そんな歳じゃないよ」

「ほら、いいからいいから」

「もう……」

 苦笑いしながら、私は恒子ちゃんの手を支えにゆっくりとベッドから身を起こした。
お互いの目が合い、二人で軽く笑い合う。
ずいぶん高くまで昇った太陽が、部屋に朗らかな光を差し込ませていた。

66: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 13:24:17.07 ID:5P6Koj1w0.net



 私と、赤土さんと、そして灼ちゃん。
愛情と友情が入り混じった三角関係ではあったけれど、昼ドラのような泥沼展開になることはなかった。
私と灼ちゃんもすっかり打ち解けていて、すぐに「仲の良い3人組」というような関係になっていた。

 恒子ちゃんが心配していたようなことにもならなかった。
灼ちゃん自身そのようなことは望んでいなかったらしく、むしろ赤土さんと些細なケンカをしたりした時に愚痴を聞いてもらったりしたくらいだ。
……本当に、赤土さんのことを想っていたのだろう。
だからこそ、赤土さんと私との関係を応援してくれたのだと思う。


 ……そんな素敵な関係が2年ほど続いた頃。
3人の関係、その崩壊の兆候が見え始めたのはこの頃だった。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

[奈良・鷺森レーン]


健夜「えぇっ!? あの工事、ボウリング場の建設してるの!?」

69: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 13:30:14.72 ID:5P6Koj1w0.net
灼「そうみたい……しかもあの大型ボウリングチェーン。『リューモンワン』だって」

晴絵「おいおい……それってマズくないか?」

健夜「そうだよ! ただでさえお客さんが少ないのに、その上そんなライバル店が出来たら……」

灼「……それでも、頑張っていくつもり。おばあちゃんも退院してくれたし、二人で」

晴絵「……灼」

灼「……」

晴絵「無理はするなよ」

灼「うん……」

晴絵「お前、何か問題があったら一人で抱え込みがちな性分だろ。だけど……今回のはお前一人で処理できるような問題じゃない」

灼「……」

健夜「そうだね……何かあったら、すぐに私たちに相談してほしいかな」

灼「……分かった。その時はすぐに連絡する」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

70: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 13:33:44.59 ID:5P6Koj1w0.net
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 思えば、この時にもっと念を押しておくべきだったのだ。
日が経つにつれ、灼ちゃんの顔に段々と疲れの色が見え始めていることを、もっと気にするべきだったのだ。
たとえ、赤土さんが実力派プロとして名を馳せるようになって試合で忙しくなっていたとしても。
たとえ、私が麻雀から解説に仕事をシフトさせつつあり、その営業廻りで大変だったとしても。

 ―――鷺森さんのおばあさん。公子さんがまたしても病に倒れてしまったという連絡を受けたのは、ちょうどそんな時期だった。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

72: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 13:39:49.68 ID:5P6Koj1w0.net
[奈良・阿知賀救急救命センター]


健夜「晴絵ちゃん!」

晴絵「健夜……! ゴメン、遅くなった!」

健夜「仕方ないよ、今までタイトル戦だったんでしょ?」

晴絵「あぁ……って、そんなことはどうでもいいんだ! 灼は!?」

健夜「病室。お医者さんと二人で話してる」

晴絵「そうか……。……クソッ!」

健夜「晴絵ちゃん……」


   ガチャ


晴絵「! ……灼!」

灼「……ハルちゃん。健夜さんも」

74: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 13:50:41.74 ID:5P6Koj1w0.net
健夜「公子さんは?」

灼「何とか一命は取りとめたみたい。……ただ」

晴絵「ただ?」

灼「……これからは、寝たきりの生活だって」

晴絵「……!」

健夜「そんな……」

灼「そ、そんな深刻な顔しないで……。命は助かってるんだから。それだけでも嬉しいよ」

晴絵「……何とかならないのか? 手術とかで……」

灼「……一応。ひとつだけ方法はあるみたい」

健夜「方法って…?」

灼「日本の医療技術じゃ延命が精いっぱいって話だけど……アメリカはもっと、医療技術が進んでるって。そこでなら、あるいは……って」

晴絵「なら今すぐアメリカへ!」

灼「無理だよ……ただでさえ鷺森レーンの維持のためにお金を借りてる身なのに……」

健夜「……『お金を借りてる』?」

灼「……!」

77: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 13:58:51.44 ID:5P6Koj1w0.net
晴絵「おい……何の話だ? お金を借りてるって……そんな話、初めて聞いたぞ……?」

灼「……」



灼「…金融会社からお金を借りてるの。鷺森レーンの赤字を補填するために」

健夜「……そんな」

晴絵「灼……」

灼「……」

晴絵「……なんで。どうして相談してくれなかったんだ」

灼「……」

健夜「そうだよ。灼ちゃん、言ってくれたじゃない……何かあったら連絡してくれる、って」

晴絵「今からでも遅くない。まずはその借金を返そう! 私だってプロ雀士だ、少しくらいの借金なら……」


  ドンッ


灼「やめて!!!」

晴絵「!?」

78: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 13:59:23.12 ID:5P6Koj1w0.net
灼「……ゴメン、ハルちゃん。でも……そんなの、ただの施しだよ。私はそこまで落ちぶれてな……」

晴絵「施し、って……私はそんなつもりじゃ」

灼「肉親でも姉妹でも……「恋人」でもない相手に、お金を恵むなんて……施し以外の何物でもないよ」

晴絵「違う! 私はお前のためを想って!!」

灼「……」



灼「……その言葉は私に向けられるべき言葉じゃないよ」ポツリ

健夜「…!」

灼「……もう私に関わらないでほしい」

晴絵「灼!」

83: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 14:09:50.68 ID:5P6Koj1w0.net
灼「ハルちゃんはちゃんと健夜さんだけを見てあげるべきだよ。……私にまで目を向けるべきじゃない」

健夜「灼ちゃん……」

灼「……今晩は、おばあちゃんの病室で泊っていくから。二人はもう帰ってほし……」


  スタスタ


晴絵「おい、灼! 待ってくれ!」

灼「…じゃあね。ハルちゃん」


  ガチャンッ


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

[都内・福与宅]


恒子「……しばらく話を聞かない間に、そんなにヘビーなことになってたんだねー……」

健夜「うん……」

85: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 14:15:11.97 ID:5P6Koj1w0.net
恒子「…赤土さんは?」

健夜「奈良。灼ちゃんを説得してるんだけれど……難しいみたい」

恒子「そっか……ちなみに、その借金ってどれくらいなの?」

健夜「うん、ツテを頼って調べてみたんだけどね……大体、私の全盛期の契約金くらい」

恒子「!? お……億単位ってこと!? おかしくない!? そんな金額……!」

健夜「借りた金額はそこまでじゃなかったみたいなんだけど……借りた場所がマズかったみたいなの」

恒子「いわゆる……闇金融、ってやつ?」

健夜「そうみたい。暴力団にずぶずぶの、ね」

恒子「……それは、それは……」

健夜「……私、どうすべきなのかな。こーこちゃん」

恒子「……」



恒子「私が思ってることをそのまま言うなら……灼ちゃんのことは忘れるべきだよ」

88: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 14:20:58.47 ID:5P6Koj1w0.net
健夜「……」

恒子「なんで灼ちゃんがすこやんや赤土さんの助けを断って、独りでいることを選んだのか。……二人に幸せになってほしいから、でしょ?」

健夜「……うん。あの灼ちゃんだから……きっとそうなんだと思う」

恒子「灼ちゃんの想いを尊重するなら、すこやんはちゃんと赤土さんと二人で幸せになるべきだよ」

健夜「……」

恒子「……そろそろ、考えてるんでしょ? 結婚」

健夜「…うん」

恒子「瑞原プロも、野依プロも結婚しちゃったしね。あとはすこやんだけだよ」ニコ

健夜「……」

恒子「この前、瑞原プロたちとお酒飲む機会があってね? みんな、言葉には出さないけど楽しみにしてるみたいだったよ。二人の結婚」

健夜「……そう」

89: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 14:25:31.73 ID:5P6Koj1w0.net
恒子「ね? もういいんだよ。すこやんも自分の幸せを掴もうよ。今までずっと我慢して来たんでしょ? 今度はすこやんが幸せになる番だよ」

恒子「みんなも……私も、すこやんに幸せになってほしいの」

健夜「……少しだけ、考える時間がほしいな」

恒子「……そうだね。うん、ゆっくり考えるといいよ。大切なことだと思うから」

健夜「ありがとうね、こーこちゃん」

恒子「……いいよ。私とすこやんの仲だもん」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

[小鍛治家・健夜自室]


健夜(……)


   パサッ


健夜「……結婚、か」

91: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 14:32:27.01 ID:5P6Koj1w0.net
健夜(婚姻届け……お互いの判も捺したし、後は提出するだけなんだよね……)

健夜(……晴絵ちゃんと結婚……)

健夜(二人で幸せに……か……)

健夜「……」




健夜「……よし。行」

   「すこやー? スーパーにお使い行ってきてくれない―?」


   ズコー


健夜「おかーさん! 空気読んでよ!」ンモー

92: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 14:32:58.58 ID:5P6Koj1w0.net


晴絵「灼! おい、灼!」

灼「いい加減諦めてほし……何度言われても施しを受ける気なんて……」

晴絵「そうじゃないんだ! 健夜が……健夜が!」

灼「……?」

 ――――――――――――――――――――

恒子「……」

恒子「…なーんで、私に渡していくのかな……」


   ペラ


恒子「婚姻届け、か……赤土さんと、すこやんの」

恒子「……自分で処分しろ、っての。もう……」

 ――――――――――――――――――――

健夜「……」


[奈良・闇金融『インパチローン』]

95: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 14:38:53.19 ID:5P6Koj1w0.net
健夜「……」クキッ コキッ

健夜「……それじゃ、行こうかな」

   「…? おう、なんやネーチャン。ウチになんか用でもあ」


   ゴッ


   「んのか……ぁ……?」


   バタンッ


   「……」ブクブク

健夜「……うん。久しぶりだったけど、まだまだ雀力は衰えてないね」

 ――――――――――――――――――――

晴絵「今朝、健夜からメールが来てて! アイツ、闇金融へ!」

灼「殴り込み……!?」

98: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 14:42:54.10 ID:5P6Koj1w0.net
晴絵「違法行為には違法行為だって! それで一人で!」

灼「そんな……」

晴絵「一線から退いたとはいえ、アイツはトッププロだ。並の相手に不覚を取ることはない筈だが……」

灼「……急ごう、ハルちゃん!」

 ――――――――――――――――――――

   「おう、ワレェ……女一人で突っ込んでくるたァ、どこの鉄砲玉や…?」

   「舐めとんちゃうぞコラァ!!」

   「冗談じゃ済まねえぞゴラァ!!」

   「何が目的やワレァ!?」


健夜「……」

健夜「この組を潰しに来たの」ゴォッ

   「「「「!?」」」」

 ――――――――――――――――――――

はやり「はや~……おはよー、よしこちゃーん……☆」ムニャムニャ

戒能「グッモーニンです、はやりさん」

99: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 14:45:28.37 ID:5P6Koj1w0.net
はやり「…? …うわ、懐かしいもの観てるね。何年前の麻雀映画だっけ……」

戒能「先日借りてきたんです。…しかし、すごいですね。銃火器を持った相手に麻雀牌で戦う……なんて」

はやり「そうだねー。昔ならともかく、今の時代じゃ見ないよね」

戒能「……? まるで、昔はあったかのような物言いですね」

はやり「あれ、知らない? 実際あったみたいだよ、こんな抗争」

戒能「……インクレディブル」

はやり「それこそ、大沼さんとかそのあたりの世代の頃だけどね。圧倒的な雀力を持つ雀士なら、これくらいの戦いは出来たみたいだよ」

戒能「万点棒で弾丸を斬ったり、麻雀牌で敵を貫いたり……ですか」

はやり「威圧するだけで相手を失禁させたり、ね」

100: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 14:51:50.80 ID:5P6Koj1w0.net
戒能「……現代にも、こんな芸当が出来る雀士がいるのでしょうか……?」

はやり「そうだねー。……一番近いところで、やっぱりあの子じゃないかな」

戒能「『あの子』というと……」


―――国内最強のプロ雀士。“Grand Master”なら或いは……ね。

 ――――――――――――――――――――

   「クッソがァー!!」ダダッ

健夜(……右手に長ドス。突き刺しにくる……その手を点棒で叩き落とす)


   ビシッ


健夜(背後のヤクザが懐から拳銃。これを投牌で潰して……)ヒュンッ

   「うぐっ…! は、牌…?!」

健夜(両側のヤクザたちを雀力で気絶させる!)ゴッッッ

   「「「「「……ッッ!?」」」」」


   バタタッ

101: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 14:56:08.80 ID:5P6Koj1w0.net
健夜「はぁーっ……はぁーっ……!」ゼェゼェ

   「舐めたマネしくさりよって……じゃが、もう息切れしてきとるようじゃのう? エェ!?」

   「こちとらまだまだ構成員がおるんじゃボゲッ!」

   「ウチの組にケンカ売った落とし前ェきっちりつけさせたらァ!」

健夜「……上等、だよ……!」

健夜「こっちだって……生半可な覚悟で来てるわけじゃないんだよ…!!」ゴゴゴゴ

 ――――――――――――――――――――

灼「もう少し! あそこの角を曲がったところ!」

晴絵「分かったっ!」

晴絵(無事でいてくれ……健夜!!)

103: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 15:05:00.00 ID:5P6Koj1w0.net
 ――――――――――――――――――――

   「「オラーッ!!」」

健夜(後方から日本刀ヤクザ! 万点棒で捌く!)ギンッ チィンッ

   「ザッケンナコラー!!」

健夜(サイドの拳銃ヤクザに投牌っ!)ヒュンッ

   「グワーッ!」

   「テメッコラーッ!!」

健夜(長ドスで刺しにくるヤクザを雀力で……!)ゴゴォッ


   プシュウ......


健夜(嘘……不発…!?)

   「ぶっ殺したらァァァ!!」

健夜(あ……)


   
    
   ドスッ

105: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 15:07:01.38 ID:5P6Koj1w0.net
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

   ファンファンファンファン  ピーポー ピーポー


晴絵「…これ……は……」

灼「パトカーと救急車だらけ……!」

晴絵「……! あっ、あのっ! すいません!」

警官「あー、ゴメンねぇ。ここから先で暴力団の抗争があったんだよ……今は捜査中で通行禁止なんだ」

晴絵「中に! 女性がいませんでしたか!? 30代の!」

警官「女性……? いや、いなかったよ」

晴絵「いなかった……?」

警官「あぁ。中で倒れてたのはみんな男性。幸い、死人は出なかったようだよ」

晴絵「……」

灼「……健夜さん……」

108: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 15:11:37.49 ID:5P6Koj1w0.net
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

   ブロロロロロ......


健夜「……いたたたた……」

恒子「心配になって見に来たけども、正解だったよ。……脚。やられたの?」

健夜「一度だけ雀力が不発しちゃったみたい。でもマズったのはその時だけだよ」

恒子「……脚。動く?」

健夜「ちょっと待ってね……んっ! えいっ!」


   ……


健夜「……あはは。ダメかも」

恒子「……病院。行かなきゃだね」

健夜「うん…」

110: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 15:15:28.01 ID:5P6Koj1w0.net
   ブロロロロロ...... カッチ カッチ カッチ


恒子「ねぇ、すこやん」

健夜「?」

恒子「良かったの? これで」

健夜「……私は一人でも生きていけるけど……。…灼ちゃんは、そうじゃないから」

恒子「……」

健夜「晴絵ちゃん……うぅん。『赤土さん』が必要だから。彼女の人生には」

恒子「……やっぱり優しいね。すこやん」

健夜「…ありがと」

恒子「あ、言っておくけど褒めてるわけじゃないからね。……優しすぎるよ、すこやんは」

健夜「……ゴメン」

恒子「ま、そんなところがすこやんらしいんだけどさ。私は嫌いじゃないよ、そういうところ」



健夜(……赤土さん。灼ちゃん)

健夜(どうか―――幸せに)

111: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 15:18:10.29 ID:5P6Koj1w0.net


「着いたよー、すこやん」

「……ん。…んんーっ……」


 恒子ちゃんの声で目を覚ます。
どうやら車中で寝てしまっていたようだ。ぐっ、と腕を宙に突き上げて伸びをする。


「……寝てた?」

「うん。こーこちゃん、安全運転もしようと思えば出来るんだね。すごく快適だったよ」

「そりゃ、すこやんみたいな人を乗せるんだもん。ちゃんとした運転しなきゃって気にもなるよ」

「それもそっか」

「ちょっと待っててね。荷台から車イス降ろすから」

113: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 15:21:37.89 ID:5P6Koj1w0.net
 そう言うと、恒子ちゃんは運転席を降りてバックドアへ向かった。
恒子ちゃんを待つ間、自然と視線は窓の外の式場に移る。
入口には大きく『赤土家』『鷺森家』の名前が書かれていた。


 ―――ぽつり、ぽつりと、頭に今までの想い出が浮かび上がる。

 赤土さんとのこと。告白したときのこと。

 初めてのデートのこと。赤土さんがドライブでエンストさせてしまったこと。

 赤土さんの眼差し。赤土さんの声。

 灼ちゃんとのこと。鷺森レーンで3人でボウリングをしたこと。


 ……3人で過ごした時間のこと。


「お待たせー。…あれ、どったのすこやん」

「……今までのことを思い返してたの」

「うわっ、ばばくさい。ばばくさいよすこやん」

115: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 15:26:23.16 ID:5P6Koj1w0.net
「ばばくさくなんてないよ! …確かにもうアラフォーだけど……」

「……じゃ、行こうか。もうみんな待ってるよ」

「……そうだね」


 恒子ちゃんの手で、車イスに乗せてもらう。
そのまま恒子ちゃんに押してもらいながら、式場の自動ドアをくぐった。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 エントランスにはたくさんの人、人、人。
来場している人の殆どが楽しそうに笑顔でいるのを見ると、この結婚が本当に祝福されていることがよく分かる。
中には麻雀界で顔を目にするような、若い新鋭プロたちの姿もちらほらと見えた。
恐らく灼ちゃんの友達だろう。彼女らも他の招待者の例に漏れず、目を輝かせていた。


「すごい人だねー、すこやん」

119: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 15:39:02.68 ID:5P6Koj1w0.net
「うん……あ、あそこが受付かな」

「あ、そうみたいだねー。それじゃ私、ぱぱっと書いてくるよ!」

「え? あ、ちょっと!」


 言うが早いか、恒子ちゃんは人ごみの中をすいすいとかき分けながら受付へと向かっていく。
私一人置いていくのはどうだろうかとも思ったが、受付周りの混雑の中に車イスで入っていくのも迷惑だろうということにすぐに思い至った。
ロクに外出もしていないと、こういうところに気が回らなくなってしまうものだ。
長い病院生活が私に与えた影響の大きさを改めて実感する。


「……あなた、もしかして健夜さん?」


 とりとめもないことを考えていたところに、後ろから声をかけられた。
肯定しながら、車イスをくるりと回転させる。
そこにいたのは―――


「……公子さん、ですか?」

「えぇ。……お久しぶりですね」

120: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 15:44:36.95 ID:5P6Koj1w0.net
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「ばっちり受付済ませてきたよ! …誰かと話してた?」

「うん。ほら、灼ちゃんのおばあちゃんの」

「あぁ! ……あれ? おばあちゃんって確か……」

「渡米して手術を受けたんだって。それで無事成功したって」

「そっかー。いやー、良かったね!」

「鷺森レーンの方も、今は安定してるそうだよ。赤土さんの広報がうまくいってるみたい」

「それは何よりだねー。いや、これでもし『鷺森レーンは潰れました』なんて言われたらどうしようかと」

「こーこちゃん! 演技悪いこと言わないの! おめでたい場なんだから…!」

「はーい。……あ、そろそろ開場するみたいだよ」

121: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 15:49:22.16 ID:5P6Koj1w0.net
 そう言って恒子ちゃんが指さす方を見ると、ホールへの扉が開かれて人並みが流れていくのが見えた。
扉の向こう側には華々しく彩られた式場。
あの場で、赤土さんと灼ちゃんが結ばれるのだ。


「……行こ! こーこちゃん!」

「あ、すこやん! 一人で進んじゃ危ないよ!」


 目頭が熱くなるのを誤魔化しながら、私は車イスのタイヤを力強く回した。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


『えー、大変長らくお待たせいたしました』

『ただいまより、新郎新婦の入場です!』


「すこやん! いよいよだよ、いよいよ!」ヒソヒソ

「言われなくても分かってるよ…!」ヒソヒソ

125: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 15:59:04.42 ID:5P6Koj1w0.net
 タキシードを着た司会のアナウンスを皮切りに、高らかに結婚行進曲が鳴り響く。
音楽に合わせ、私の胸も高鳴り始める。

―――そして、ホールの扉が開け放たれ―――


   ワァァァッ    パチパチパチパチ
        オメデトー!!      ワァァ


 招待客たちの祝福の声に包まれながら、ふたりがゆっくりと姿を現した。
燕尾服を来た赤土さん。ウェディングドレスに身を包んだ灼ちゃん。
二人は幸福感に満ちた微笑みを浮かべながら、一歩一歩踏みしめるようにバージンロードを歩く。
そんな二人の姿に、思わず拍手をすることすら忘れて見とれてしまう。

 ―――一瞬、赤土さんと視線が合う。
赤土さんの目は、確固とした決意……隣で腕を組んで共に歩く灼ちゃんを一生支えていくという決意に満ちた、そんな力強さを秘めているように見えた。


「……」

「おめでとうー! ……すこやん?」

「…! ……ご、ごめん。ぼーっとしてた……」

127: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 16:01:20.21 ID:5P6Koj1w0.net
 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「しあわせになってくださいねー!!! 灼さーん!!!!」


   キィィィンッ


「シズ! マイクハウリングしてるってば!」

「……! ……てへへ……」

「おめでとう、灼ちゃんっ!」

「あったかい家庭を築いてね……!」


『ありがとうございました。新郎の教え子であり、新婦の高校時代のご学友の皆様からの暖かい言葉でした』

 
 式は和やかなムードの中で進行していた。
プログラムも順調に進み、最後のプログラムである来場者からのメッセージが終わったところだ。
……来てよかった。二人の幸せそうな姿を見れてよかった。
心からそう思いながら、私はワイングラスをそっと傾けた。

128: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 16:04:20.37 ID:5P6Koj1w0.net
『それでは、最後になりますが……新郎・新婦が大きくお世話になったという人物』






『―――小鍛治健夜様より、お言葉をいただきたいと思います!』

「!??!?!」ブーッ

「すこやんっ! そんなギャグみたいな噴き出し方しちゃダメでしょ、きたない!」

 
 全く聞いていない。てっきり、このまま式が終わるものだと思っていたのに。
恒子ちゃんも「ちょっと出てちょっと顔見に行くくらいだよ!」と言っていたのだけれど。
完全に想定していなかった展開に、私の頭は一気に混乱してしまった。

「ちょ、こーこちゃん!? 聞いてないよ!?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「一言も言ってないよ!! 何も考えてきてないのに!」

129: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 16:08:24.23 ID:5P6Koj1w0.net
「まま、いーじゃない! ほら、みんなすこやんを待ってるよ!」


 そう言われてあたりを見渡せば、確かに周りの来場者たちの視線がこちらに集まっている。
「ほら、早く」とこーこちゃんはすいすいと車イスに私を乗せ、檀上まで運んだ。




 檀上に上がり、赤土さんと灼ちゃんと相対する。
赤土さんも、灼ちゃんも、まっすぐに私を見つめていた。心なしか、灼ちゃんの目がじわりと潤んでいるように見えないこともない。

 そっと、赤土さんが灼ちゃんにハンカチを渡す。そのハンカチで灼ちゃんはすっと目を拭った。
そんな二人の姿を見て―――私は、改めて確信を持てた。
私がしたことは間違ってはいなかったのだと。

この二人なら、今後どんな事件が起ころうと、力を合わせて乗り越えていけるだろう。

二人で、幸せな人生を送ることが出来るだろう。


 脚の上に置いた拳に自然と力がこもる。
感覚が無くなったはずの脚から、不思議とあたたかみを感じたような気がした。

132: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/05/25(日) 16:10:12.61 ID:5P6Koj1w0.net
『……あの、小鍛治様? 何かお言葉は……』

「すこやん!」


 司会と恒子ちゃんに急かされ、改めてマイクに向き直る。
何を話すべきなのか。何を話せば良いのか。




 ―――考える必要なんてない。
私が思うことを、そのまま話せばいいんだ。
あの時、赤土さんに告白したときのように。あの時、良子ちゃんが言っていたように。
『思うことを、ありのまま』。


 目から溢れ出す涙にも構わず、私は今、一番伝えたい言葉を口にした。





「赤土さん。鷺森さん。―――御結婚、おめでとうございます……!!」





   カン

引用元: 健夜「赤土さんと鷺森さんの結婚式に呼ばれた」