1: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:14:52 ID:???00
「今どこにいる?」

電話越しに馴染み深い声が聞こえてきます。

待ち合わせの場所に来るも相手が見つからなかった時に掛ける電話のような気軽さで。

厳密には電話ではないのでしょうが、音声通話はすべて電話です、私にとっては。

声が聴けますから。

2: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:15:43 ID:???00
たとえば駅前のファミマで待ち合わせ、としたとします。

西口にも東口にもファミマがある場合、どちらか確定できません。

相手がコンビニとしか認識していない場合、ローソンにいるかもしれません。

出入口が2つある店舗の場合、すれ違ってしまうかもしれません。

それだけ点を交わらせることは難しい、ということですね。

ですので最後は電話に頼ります。

「今どこにいますか」と訊いて2つの点を1つにします。

………
……

3: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:16:33 ID:???00
「ソルトレークシティです」

しお?

どこだっけカナダ?……違うなアメリカだ。

そうだそうだユタ州。

湖って言ってすぐ五大湖に引っ張られるのよくないね。

カリフォルニアにいてもユタはなかなか行かないしなぁ。

ましてやいろいろ飛び回ってる今となっては余計にね。

でも今回はだいぶ近いね。

距離はあるけどおんなじ国だ。なんだか言ってイミグレって面倒だし。

4: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:17:27 ID:???00
だいぶ近いって言ったけど、そりゃ地球の裏っかわに比べたらって話で、そんなじゃあふらっと会いに行けるかって言ったらそうではないね。

直線距離でも日本の端から端までより長いんじゃないかな。

日本の端っこってどこだ?

まあいっか。

「慈さんは今どちらですか?」

栞子ちゃんにも教えてあげなくちゃね、この近さを。

………
……

5: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:18:16 ID:???00
「セントルイス」

どこでしたっけ……。アメリカだとは思いますが。

ひとまず検索をして場所を把握します。アメリカは合っていたので上出来でしょう。

なかなか縁のない土地の名前は覚えていませんからね。

東京と大阪・京都・神戸、あとは金沢とカリフォルニア周りはそれなりに知っているんですが。

今いる場所までどのように歩んできたか、土地の知識というのはそこが出るところです。

6: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:19:04 ID:???00
2つの点が比較的近いところに打たれていますね。

"地図作り"を始めてから、同じ国に点が打たれるのは初めてです。

まあ大きい国ですからね、ここは。

こうして地図を描いていくと、同じ時間に同じ国にいることすらほとんどないことがわかります。

でしたら国単位でヒットにしてもよかったように思います。

……これはわがままでしょうかね。

………
……

7: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:19:54 ID:???00
「地図を描こう!」

ほんとうに唐突に言われたのを思い出します。

逆回転する大きな地球儀の前で、賑やかさとともに佇んでいた時でした。

慈さんが変なことを言い出すのには慣れていますので、今日も明日もまたいつもどおり過ぎていくのだと思っていました。

あの時、ライトアップされた、文字ばかりが目立つ地球儀の前で、いくつかの決めごとをしました。

私たちはそれに従い、今日も私たちの世界の地図を作っています。

………
……

8: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:20:43 ID:???00
くるくる回ってるおっきな地球儀を眺めてたんだ。

これ、ほんとの回転方向とは逆向きに回ってるって栞子ちゃんが教えてくれた。

変なこと知ってるね。

地球がどっち向きに回ってるかって、気にしたこともなかったよ。

紫色にライトアップされてるから、向こうの夜の闇に溶け込んでいってるみたい。

世界に溶け込む世界の模型を前に、自分の世界はこんなに広くないなって思った。

それでもふたり合わせれば、まだある程度の世界を描ける気がした。

だからかな、やりたいと思って言ったんだ。

「地図を描こう!」

………
……

9: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:21:35 ID:???00
[アナウンス]

1. 相手に電話をして、つながった時点を起点とする。

2. お互いの今いる場所を地図に描き入れる。

3. 2点が同一行政区分内にある場合、中心都市で落ち合い、当該都市を地図に描き入れる。

4. 2点が地球上の対極に位置する場合(直線距離18,000 km以上を目安とする)、中間地点で落ち合い、当該都市を地図に描き入れる。

5. 以上は必ず実施する!

めぐみ

10: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:22:24 ID:???00
………
……


今思うとこれって、おんなじ国くらいにしておいたほうがよかったかな。

時折見返すルールを見て思う。

せっかく会う機会を増やせるようにルールを作ったのに、一度も使われたことないんだもん。

私は別にいくらでも時間作るからいいんだけど、相手にもそれをお願いすることになるから、なにもないとちょっと遠慮しちゃうなって思って、だからゲームっぽくしてみたんだけどね。

まあ電話するきっかけとしてはばっちり機能してるけど。

11: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:23:21 ID:???00
それに最初はただの言い訳だった地図だって、最近は結構充実してきた。

まだまだ世界を描き出すには遠く及ばないけど。

東京と金沢とカリフォルニア——それとなぜか神戸、の周りばっかり描き込まれててね。

でもそれがきっと今の私たちの見ている世界なんだろう、それが客観的に見える形になってるんだろうと思う。

地図って線が集まってできてるととれるじゃない。

だから点で地図は描けるのかなって最初はちょっと疑問に思ってた。

でもね、できるんだよね、これが。

………
……

12: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:24:09 ID:???00
直行便での移動は楽ですね。

目的地にそのまま連れて行ってもらえます。

そうしてまた新たな点を描き加えるんです。

新しく降り立った場所の空気を吸って、少し歩き回ってみて雰囲気をつかんでおきます。

電話をつなげることで点を描き加えられるという決まりですから、目的があって電話をすることができます。

わけもなく声が聴きたい時にぴったりです。

無目的に対して目的を作り出すことで対抗するこのある種言い訳に、私はいたく感心していました。

「慈さんは今どちらですか?私はバンクーバーです」

………
……

13: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:24:58 ID:???00
「ヘルシンキにいるよ」

今会いに行くなら、北極海を飛び越えていかないといけないね。

たいていはこういう大洋に隔たれることになる。

空を飛んで、都市と都市が結ばれて、世界は狭くなったって言うけど、実際まだまだ大きいよ。

それなりに地図を描いてきたけど、ニアミスすらほとんどないんだもん。

14: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:25:46 ID:???00
場合によっては季節もひっくり返る。

「シドニーにいるよ。オペラハウスある、思ってたよりもおっきい。」

「こちらは長野です」

「日本だ……!じゃあそっちは冬で寒いんだね。こっちはあったかいよ」

よく知らないところに行ってることもあったね。

「アントワープにいるけど……、あんま詳しくないんだよね」

「ではこれを機にたくさん学べますね。私はリレハンメルにいますよ」

「どこ?」

一つひとつの都市すべてが点なんだ。

「中国は長春にいます。慈さんはどちらですか」

「チェンナイ」

………
……

15: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:26:35 ID:???00
作り出される理由をありがたく受け取り、ほんとうになんでもない話をしています。

「ジャカルタに来ました。大都会ですね」

「今週のめぐちゃんは~、パナマ!おっきい船いっぱいいるよ」

慈さんはいつもその都市の様子を教えてくれますが、挙げられるのは大きいものばかりです。

とにかく目立つ大きいものをすぐに教えてくれているのかと思うと、なんだかちょっと単純でかわいらしいなと思います。

こちらも、一番大きいものでもお伝えしましょうか。

16: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:27:29 ID:???00
2点を描き込んだあとは、直線距離を割り出してみます。

地図を作り始めた最初からし続けていることなので、ルーチンですね。

一応十分に距離が離れている場合、"ルール"が適用されますからね。

ですがちょうど地球の真裏に先ほどまで話していた相手がいるなんて、そんな偶然はめったに起こりません。

事実今まで一度もなかったんですから。

今回も距離を確認して終わるだけです。

19,000 km。

終わりませんでした。

………
……

17: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:28:16 ID:???00
さっき通話を終えたばかりだけどまた着信がある。

そんなにめぐちゃんが恋しくなっちゃったのかな。

「はいはい、どうしたの。めぐちゃんはいつでもここにいるぞ☆」

「19,000 kmです!」

「なにが?」

なんだなんだ?数字が大きすぎて具体的なイメージも湧かない。

「今の私たち2点の距離ですよ」

「え、嘘。そんなことある?」

「あるんですよ、現に、今」

18: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:29:03 ID:???00
地図作成ルールその4

『2点が地球上の対極に位置する場合(直線距離18,000 km以上を目安とする)、中間地点で落ち合い、当該都市を地図に描き入れる。』

トークルームの上のメガホンをタップして、書き起こされたルールを確認する。

確かに条件を満たしてる。

これ、従うべきアディショナルルールが1つじゃ物足りないからその場のノリで適当に付け足したやつだ。

ピンポイントで対極に位置するなんてありえないだろうからって軽率に。

そらだってこのルール、「近くにいるんだったら会おうよ」をシステマティックに執行できるようにするためのものだし。

例外が先に発動するなんて。

こんなんあり?

………
……

19: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:29:52 ID:???00
「これどうして中間地点なんですか?違う大陸を結んでその中間ではほぼ確実に海の上ではないですか」

「えーとね、正直に言うとね、そこまで考えてなかった」

そんなことだろうとは思いました。

海の上では落ち合えませんよ。

このケースだと中間地点は太平洋の真ん中になりますよね。

20: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:30:38 ID:???00
「ええと、舌の根も乾いていないんですが、陸、ありますね」

「あるの!?」

ちゃんと調べてみたところ、正確に真ん中からは少しズレますがありますね、陸地。

「ハワイです」

「そっかー、ハワイかー。いいね、あったかそ」

「それでは慈さん、ハワイで会いましょう。いつにしますか?行きたいところ考えておいてくださいね」

………
……

21: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:31:26 ID:???00
え……?決まり?

そりゃ栞子ちゃんとハワイ行くのは楽しそうだよね。でも急すぎない?どう調整するの。

「ほんとに行くの?」

「ルールその5、『以上は必ず実施する!』」

「そもそもこれを制定したのは慈さんです」

いや、それはそうなんだけど……。

ああ……、こうして押し切られるのか。

22: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:32:14 ID:???00
「わかった。ハワイで会おう」

「でもさすがに今日明日とはならないからそこはちょっと待ってね」

「今月中にはなんとかする」

通話を切ってのち、自身のおおかたの予想に反して、なんかワクワクしてきた。

なにがなんでもこのみょーちきりんなルールに従ってやろうと思う。

ついに1回の電話で3点目を描き入れる時だ。

——厳密には2回電話してるけどね。

………
……

23: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:33:00 ID:???00
経由し、乗り継ぎ、たどり着きましたところのハワイです。

日々の慌ただしさの中、力技で時間を捻出しやってきました。

着いてみるとなんだかここは少しゆっくり時間が流れているように感じます。

もちろん忙しなく働いている人もいるのでしょうが。

今はゆったりとコーヒをいただきたいと思います。

本場のコナコーヒー、楽しみにしていました。

24: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:33:47 ID:???00
慈さんはもう少しあとの飛行機で着くようです。

のんびりコーヒーを飲んでいてもまだまだ時間はありますので、少しお迎えの準備でもしましょうか。

すごくイメージどおりのレイがあります。

売っているんですね、これ。

私は花冠としておこうかと思います。

慈さんには、首から掛けるものがいいですかね。

………
……

25: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:34:36 ID:???00
「アロハ~」

飛行機から降りたら係員のあいさつがハワイになってた。

さすがは観光地。これがおもてなしってやつか。

そんなこんな、ちょっと感心してたら明らかに見知った人が寄ってきてお花を掛けてくれた。

……なにしてんのさキミ。

26: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:35:22 ID:???00
「アロハですよ慈さん」

こいつ頭にお花乗っけちゃって浮かれてるな……と思ったけど、私も首から下げてるしおんなじようなもんだと思われてるんだろう。

「えーと、アロハ?」

どういうあいさつなんだっけ?これ。

「やっと会えましたね」

まったく、ニコニコしちゃって。

うん、私もその気持ちはいっしょ。

27: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:36:10 ID:???00
「火口のリクエストでしたので、ハイキングしたいと思います」

どこ行きたいか訊かれてたから、一応言っておいた。火口って。

そしたらハイキングしましょうって。

この標高の山じゃハイキングというか、登山になると思う。

高山病に気をつけないといけないレベルだろうに。

まあ歩くの楽しいからいいんだけど。

………
……

29: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:36:57 ID:???00
山の麓からゆっくりと火口を目指して歩き始めます。

一口にハワイと言っても、島もいくつかありますし、ひとつの島だってこれほど大きいものです。

地図上では点でしか示されませんが。

大きさを持った点です。

それは私たちも。

ですからかろうじて、私たちはつながりを持てるのでしょう。

30: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:37:43 ID:???00
動き始めが少し遅いのもあり、山頂に着くか着かないかくらいで陽は沈んでしまうと思います。

ですがわかりやすく山頂での日没でなくとも、夕陽に照らされる山腹、夜に漏れ出す火口の赤光、空を飾り立てる星々の賑わいもきっと素晴らしいものでしょう。

今、なんの変哲もない斜面を登っているだけで楽しいですし。

いやにカラフルな野鳥が視界を横切り、半歩前の慈さんの首元に見えるレイの白との対比が目に痛いほどです。

……なんだか無性に、彼女に花冠をしていてほしくなりました。

ちょうど私の頭の上におあつらえ向きに乗っかっているので、こちらを使わせていただこうと思います。

………
……

31: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:38:30 ID:???00
急に頭になにかが触れる。

「こちらも慈さんがつけていてください」

そう言って栞子ちゃんが自分の花冠を外して私によこしてきた。

いや、別に構いはしないけど、なんで……?

訊こうかとも思ったけど、満足そうに小さく頷いてる彼女を見てると、それも野暮かなと思えた。

飾られていれば単なる点も、もう少し交わりやすくなるのかな。

そんな意図を当てはめようとするのは、私がこれから言おうと思ってることに私自身が引っ張られてるだけなんだろう。

………
……

32: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:39:19 ID:???00
ほんの一瞬、燃えるような色でこの世を照らし尽くした陽はすでに沈んで、あたりもだいぶ暗くなってきました。

山頂はそんな夜でも眺めのよさを感じさせてくれます。

昼の残照が地平線に残っていても、天高くはすでに星々の世界です。

私たちと違って大地に縁のない空の点、私たちと同じであまりに小さな宇宙の点。

地平の手前、私たちの前には地底からはるばるやってきた溶岩が地を覆っています。

地球の熱をまだその身に残し、薄ぼんやりと光りながら。

33: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:40:09 ID:???00
「まずは、今回の3点目を地図に加えましょうか」

あの日からずっと描き続けてきた地図、今どきアナログな紙の地図をお互いに取り出します。

「ここだよね、ハワイ。栞子ちゃんよろしく」

私の地図に位置を指し示すと、慈さんは自身の地図をなにやら折りたたんでいました。

「慈さんは描き入れないんですか」

………
……

34: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:40:55 ID:???00
「今日を区切りにしたい」

紙飛行機に折り上げた地図を火口に向けて放つ。

「それって……」

赤い薄明かりの中でも明確にわかるくらい、今まで見たことないほど不安そうな顔して私の手を両手で包みこんでくる。

去りゆく人をつなぎ止めようとするように。

35: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:41:42 ID:???00
「ごめん、そうじゃないよ」

先を急ぎすぎた。

落ち着くかなと思って頭を撫でる。ちょっと抱き寄せたみたいな感じにもなる。花冠もお返ししておく。

「地図はこれからも作っていこうよ。ずっと。いっしょに」

「栞子ちゃんに持っててほしい。それにこれからは、1枚あれば十分だから」

36: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:42:29 ID:???00
即興で折ったにしては長いこと滑空していた紙飛行機も、ついに溶岩の上に着陸——ほとんど墜落だね、してた。

薄暗い赤でもかなりの熱が残ってるみたいで、地は自らに触れるものを発火させる。

火は私の描き留めた点を、灰ひとつ残さず天へと送り届けていく。

このあたりで最も明るい点になって。

37: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:43:17 ID:???00
「ルールなんて関係なく、可能な限り会いに行きたかった」

「だからこれからはできる限り、道理が引っ込む寸前まで無理を通して、キミとおんなじところに行くよ」

「これからはひとつの点。1点ずつ加えていこう」

「だから1枚で十分、地図作成係、よろしくね」

ちょっとばかし強く手を握られる。

少し不満そうな、でも安堵に満ちた目で見つめられる。

「もうちょっと最初からわかりやすくしてください……」

「うん、ごもっとも。ごめん」

38: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:44:04 ID:???00
「ここは私たちが巡ってきた中でいちばん空に近い場所だから」

まばゆい夜空を仰いで言う。

「集めた点が、星座にでもなってくれたらいいなって」

そういう祈りを。

39: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:44:52 ID:???00
すでに天へと昇りきり、跡形もなくなった地図のほうをふたり見てた。

「星座も、世界を描くのと同じくらい大変なのではないですか、作ろうとしたら」

「そうだね、きっと私たちまだまだなんだ」

でもこれからは、少し大きなひとつの点。

「ではこれからも、点で地図を描きましょう」

40: 名無しで叶える物語◆k5FGXhSk★ 2026/01/30(金) 19:45:34 ID:???00
おわり〇
ありがとうございました

引用元: 【SS】点描地図