1: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 12:04:11 ID:???Sd
夜道を歩いていると、街頭から離れた薄暗がりの中で女性がうずくまっているのが見えました。
歩けなくなった酔っ払いかと心配し近付こうとすると、女性の足元からコンココンと軽い音が響きました。
かすみ「……」コンココン
目を凝らしてみると、女性は足元のマンホールを軽く握った手で叩いているようでした。
驚く私を見て、女性はギョッとしたように立ち上がり、恥ずかしいところを見られたとでも言いたげに微笑みました。
何をしているんですか、と問う私に彼女は「いや、別に」「大したことじゃないんです」と渋っていましたが、そのさまは別段狂人にも見えません。何か理由があるのだろうと気になった私は、 を見せると交換条件を出しました。
という魅力的な条件に折れたのか、彼女はゆっくりと話を始めました。マンホール・スラグモルとなった友人の話を。
歩けなくなった酔っ払いかと心配し近付こうとすると、女性の足元からコンココンと軽い音が響きました。
かすみ「……」コンココン
目を凝らしてみると、女性は足元のマンホールを軽く握った手で叩いているようでした。
驚く私を見て、女性はギョッとしたように立ち上がり、恥ずかしいところを見られたとでも言いたげに微笑みました。
何をしているんですか、と問う私に彼女は「いや、別に」「大したことじゃないんです」と渋っていましたが、そのさまは別段狂人にも見えません。何か理由があるのだろうと気になった私は、 を見せると交換条件を出しました。
という魅力的な条件に折れたのか、彼女はゆっくりと話を始めました。マンホール・スラグモルとなった友人の話を。
3: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 12:10:47 ID:???Sd
─────
かすみ「私には三船栞子という友人がいたんですよ」
彼女とは高校一年生からの付き合いで、当時流行っていたスクールアイドル活動をやる同好会で出会いました。
しお子……その栞子って子のあだ名なんですけど、しお子とは性格も趣味も違うのに何だかウマが合いまして。仲良くやっていたんですよ。
高校三年生の時でしたかね。
大学はどこにいくの、と聞いた私にしお子は妙なことを言い出したんです。
栞子「大学には行きません。マンホールの下に行きますから」
かすみ「マンホール? またしお子ったらそんな下ネタを……」
栞子「股とはなんです。卑猥な」
いきなりそんなこと言われても意味が分かりませんよね。
卒業したら下水道を扱う公務員にでもなるのか、と重ねて聞いたところ、返ってきたのはこんな言葉でした。
栞子「マンホールの中に住むんですよ」
かすみ「私には三船栞子という友人がいたんですよ」
彼女とは高校一年生からの付き合いで、当時流行っていたスクールアイドル活動をやる同好会で出会いました。
しお子……その栞子って子のあだ名なんですけど、しお子とは性格も趣味も違うのに何だかウマが合いまして。仲良くやっていたんですよ。
高校三年生の時でしたかね。
大学はどこにいくの、と聞いた私にしお子は妙なことを言い出したんです。
栞子「大学には行きません。マンホールの下に行きますから」
かすみ「マンホール? またしお子ったらそんな下ネタを……」
栞子「股とはなんです。卑猥な」
いきなりそんなこと言われても意味が分かりませんよね。
卒業したら下水道を扱う公務員にでもなるのか、と重ねて聞いたところ、返ってきたのはこんな言葉でした。
栞子「マンホールの中に住むんですよ」
5: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 12:14:47 ID:???Sd
ますます意味が分からない。
マンホールの下には下水道が流れてるから、そりゃ人は住めるんでしょうけど。
海外ではマンホールチルドレンでしたっけ、そんな人達もいるらしいですしね。
でも、しお子には家もあれば家族もいる。わざわざマンホールの下に住む必要なんてないんです。
栞子「金銭的な問題というわけではなくて。父方の跡継ぎなんですよ」
かすみ「跡継ぎ?」
栞子「三船の家は姉が継ぎますからね。次女である私には父方を継いでほしい、と父の親族から言われまして」
かすみ「それがマンホールの下にあるわけ?」
栞子「ええ。私の父は、マンホール・スラグモルですから」
マンホールの下には下水道が流れてるから、そりゃ人は住めるんでしょうけど。
海外ではマンホールチルドレンでしたっけ、そんな人達もいるらしいですしね。
でも、しお子には家もあれば家族もいる。わざわざマンホールの下に住む必要なんてないんです。
栞子「金銭的な問題というわけではなくて。父方の跡継ぎなんですよ」
かすみ「跡継ぎ?」
栞子「三船の家は姉が継ぎますからね。次女である私には父方を継いでほしい、と父の親族から言われまして」
かすみ「それがマンホールの下にあるわけ?」
栞子「ええ。私の父は、マンホール・スラグモルですから」
6: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 12:20:30 ID:???Sd
マンホール・スラグモル。
聞いたことあります?
ないですよね。私もその時初めて聞きましたもん。
マンホール・スラグモルってなんなの? と聞く私に、しお子はカバンの中からルーズリーフを1枚取り出して、さらさらと絵を描いてくれました。
渡されたルーズリーフには、ナメクジとモグラを足して2で割ったような妙な生き物が描かれてたんですよぉ。
かすみ「これがマンホール・スラグモル?」
栞子「ええ。私にも共にマンホール・スラグモルになってほしいというのが父の願いでして」
かすみ「えー、しお子人間じゃなくなっちゃうの!?」
栞子「そうなりますかね? ま、仕方ないですよ」
栞子「何度か親族と一緒にマンホールの中に入りましたけど、中々快適でしたよ。私にはマンホール暮らしの適性がありそうです」
私としては嫌だったんですけどね。しお子と一緒に大学に行きたかったですから。
けれど本人が決めたんですからどうこう言っても仕方ありません。
四度目の留年をキメたモデルの元先輩に見送られ高校を卒業した翌日、しお子は私の目の前でマンホールの中に入っていきました。
聞いたことあります?
ないですよね。私もその時初めて聞きましたもん。
マンホール・スラグモルってなんなの? と聞く私に、しお子はカバンの中からルーズリーフを1枚取り出して、さらさらと絵を描いてくれました。
渡されたルーズリーフには、ナメクジとモグラを足して2で割ったような妙な生き物が描かれてたんですよぉ。
かすみ「これがマンホール・スラグモル?」
栞子「ええ。私にも共にマンホール・スラグモルになってほしいというのが父の願いでして」
かすみ「えー、しお子人間じゃなくなっちゃうの!?」
栞子「そうなりますかね? ま、仕方ないですよ」
栞子「何度か親族と一緒にマンホールの中に入りましたけど、中々快適でしたよ。私にはマンホール暮らしの適性がありそうです」
私としては嫌だったんですけどね。しお子と一緒に大学に行きたかったですから。
けれど本人が決めたんですからどうこう言っても仕方ありません。
四度目の留年をキメたモデルの元先輩に見送られ高校を卒業した翌日、しお子は私の目の前でマンホールの中に入っていきました。
9: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 12:26:07 ID:???Sd
大学生になってからも、しお子とはよく会っていましたよ。
彼女の滞在するマンホールはあらかじめ教えてもらってましたからね、そこに行って『コンココン、コンココン』とマンホールを叩くと下からしお子が出てきてくれるんです。
週に二回は会ってましたかねぇ。
地上の情報はマンホールの下までは届いてこないみたいで、最近あったニュースや身の回りのことをよく話してました。
かすみ「それでりな子が作った機械が暴走してね。しず子と一緒に走り回って止めたんだよ」
栞子「ふふっ、璃奈さんらしいです。愛さんは?」
かすみ「懲役2年だって」
栞子「惜しい人をなくしました……」グスッ
かすみ「高校出ても『やばっ!』するからこんなことに……」シクシク
会うたびに、しお子の見た目は少しずつ少しずつ変わっていきました。
最初は身体がぬるぬると滑ってきて、服がボロボロに汚れて大きなシミと擦り切れた穴が増えていったんです。
マンホールの中にはシャワーも洗濯機もないですから、着たきりスズメなのは仕方ありませんけど。
彼女の滞在するマンホールはあらかじめ教えてもらってましたからね、そこに行って『コンココン、コンココン』とマンホールを叩くと下からしお子が出てきてくれるんです。
週に二回は会ってましたかねぇ。
地上の情報はマンホールの下までは届いてこないみたいで、最近あったニュースや身の回りのことをよく話してました。
かすみ「それでりな子が作った機械が暴走してね。しず子と一緒に走り回って止めたんだよ」
栞子「ふふっ、璃奈さんらしいです。愛さんは?」
かすみ「懲役2年だって」
栞子「惜しい人をなくしました……」グスッ
かすみ「高校出ても『やばっ!』するからこんなことに……」シクシク
会うたびに、しお子の見た目は少しずつ少しずつ変わっていきました。
最初は身体がぬるぬると滑ってきて、服がボロボロに汚れて大きなシミと擦り切れた穴が増えていったんです。
マンホールの中にはシャワーも洗濯機もないですから、着たきりスズメなのは仕方ありませんけど。
10: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 12:30:48 ID:???Sd
かすみ「しお子は戻りたいと思ったことない?」
大学3年生の頃ですかねぇ、そんなことを聞いたことがあります。
栞子「地上ですか?」
かすみ「うん」
栞子「うーん、どうですかね。戻りたくない……というかもう戻れませんよ」
栞子「ほら、もう手もほとんど無いですし。顔も」
小さくなった手をぴょこぴょこ回して、尖り始めた鼻を撫でながら歯のない口でしお子は笑ってました。
自慢の だけは相変わらずビッグでしたけどね。
かすみ「マンホール・スラグモルかぁ。なんかちょっといいなぁ」
栞子「そうですか?」
かすみ「就職活動がすっごい大変でさぁ。人間やってるのやんなるよ」
栞子「ふふっ、地上は大変そうですね」
怖くなかったか、って?
見た目が変わってもしお子はしお子ですし。大好きな友人ですから。
怖いと思ったことなんか一度もありませんでしたよ。
大学3年生の頃ですかねぇ、そんなことを聞いたことがあります。
栞子「地上ですか?」
かすみ「うん」
栞子「うーん、どうですかね。戻りたくない……というかもう戻れませんよ」
栞子「ほら、もう手もほとんど無いですし。顔も」
小さくなった手をぴょこぴょこ回して、尖り始めた鼻を撫でながら歯のない口でしお子は笑ってました。
自慢の だけは相変わらずビッグでしたけどね。
かすみ「マンホール・スラグモルかぁ。なんかちょっといいなぁ」
栞子「そうですか?」
かすみ「就職活動がすっごい大変でさぁ。人間やってるのやんなるよ」
栞子「ふふっ、地上は大変そうですね」
怖くなかったか、って?
見た目が変わってもしお子はしお子ですし。大好きな友人ですから。
怖いと思ったことなんか一度もありませんでしたよ。
11: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 12:36:49 ID:???Sd
一度、マンホールの下を見せてくれって言ったこともありましたねぇ。
しお子もしお子のお父さんも快諾してくれて、マンホールの中に降りてみたんですけど……。
まぁ、びっくりしましたよぉ。
マンホール・スラグモルがいっぱいいるんです。下水道の汚水の中とか、壁とかをぬめぬめ這いまわってて。
私が降りていくと皆大歓迎。下水道の中を案内してくれたり、食事を出してくれたり……まぁ、食事はしお子に食べるなって言われましたけど。
腐ったドブネズミとかでしたから。マンホール・スラグモルじゃないとお腹壊しちゃいますよ、ってしお子が言うとそりゃそうだって皆たぷたぷしたお腹をゆらして笑ってました。
いい人……いいモンスター? なんですよね。皆。
かすみ「しお子が楽しく暮らしてるみたいでよかったよ」
栞子「毎日楽しいですよ。私、マンホールの中に入ってよかったです」
ただ、お母さん達は会いに来てくれませんけど。
そう言ったしお子の顔が少し寂しそうだったのが、今でも印象に残ってますねぇ。
しお子もしお子のお父さんも快諾してくれて、マンホールの中に降りてみたんですけど……。
まぁ、びっくりしましたよぉ。
マンホール・スラグモルがいっぱいいるんです。下水道の汚水の中とか、壁とかをぬめぬめ這いまわってて。
私が降りていくと皆大歓迎。下水道の中を案内してくれたり、食事を出してくれたり……まぁ、食事はしお子に食べるなって言われましたけど。
腐ったドブネズミとかでしたから。マンホール・スラグモルじゃないとお腹壊しちゃいますよ、ってしお子が言うとそりゃそうだって皆たぷたぷしたお腹をゆらして笑ってました。
いい人……いいモンスター? なんですよね。皆。
かすみ「しお子が楽しく暮らしてるみたいでよかったよ」
栞子「毎日楽しいですよ。私、マンホールの中に入ってよかったです」
ただ、お母さん達は会いに来てくれませんけど。
そう言ったしお子の顔が少し寂しそうだったのが、今でも印象に残ってますねぇ。
12: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 12:40:56 ID:???Sd
……そんなしお子との別れの日が来たのは、大学を卒業する直前でした。
栞子「引っ越すことになりまして」
かすみ「えぇっ?」
栞子「再開発でこの地区の下水道の水量が上がるようなんです。その環境では生きられないから、と別の下水道に移動するようで」
かすみ「どこのマンホール? 遠くても会いに行くよ」
栞子「それが……まだ決まってないんです。皆で移動して、住みやすいところを探すようなので」
かすみ「そんなぁ……じゃあ手紙書いてよ、場所決まったら手紙で教えて。会いに行くから」
栞子「うーん、手紙は……」
かすみ「あー……無理か……」
その頃にはしお子も完全にマンホール・スラグモルになってましたからね。手も足もありません。ぬめぬめとした体液を出しながら、ナメクジのように這いまわって歩いてましたし。
栞子「引っ越すことになりまして」
かすみ「えぇっ?」
栞子「再開発でこの地区の下水道の水量が上がるようなんです。その環境では生きられないから、と別の下水道に移動するようで」
かすみ「どこのマンホール? 遠くても会いに行くよ」
栞子「それが……まだ決まってないんです。皆で移動して、住みやすいところを探すようなので」
かすみ「そんなぁ……じゃあ手紙書いてよ、場所決まったら手紙で教えて。会いに行くから」
栞子「うーん、手紙は……」
かすみ「あー……無理か……」
その頃にはしお子も完全にマンホール・スラグモルになってましたからね。手も足もありません。ぬめぬめとした体液を出しながら、ナメクジのように這いまわって歩いてましたし。
13: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 12:45:33 ID:???Sd
栞子「もう引っ越しの準備は済んでるんです。かすみさんと会うのは今日が最後かもしれません」
かすみ「しお子……」
寂しかったですよ。
だって、しお子は大好きな友達なんですよ?
それなのにもう二度と会えないなんて。そんなの絶対に、絶対に嫌でした。
だから、言ったんです。
かすみ「かすみんも連れて行ってくれない?」
栞子「マンホールの下に、ですか?」
かすみ「うん。かすみんもマンホール・スラグモルになって……しお子の側にいたい」
しお子はしばし言葉を失っているようでした。
それから氷が溶けたように、地上に戻れなくなるかもしれない、家族はいいのか、友達はいいのか、せっかく仕事が決まったのにいいのか、と矢継ぎ早に聞いてきました。
両親のことは好きです。
友達だって好きです。
仕事だって、確かに前から入りたかった会社でした。
でも、しお子と一緒にいられるなら。
そっちの方が幸せな気がしたんです。
かすみ「しお子……」
寂しかったですよ。
だって、しお子は大好きな友達なんですよ?
それなのにもう二度と会えないなんて。そんなの絶対に、絶対に嫌でした。
だから、言ったんです。
かすみ「かすみんも連れて行ってくれない?」
栞子「マンホールの下に、ですか?」
かすみ「うん。かすみんもマンホール・スラグモルになって……しお子の側にいたい」
しお子はしばし言葉を失っているようでした。
それから氷が溶けたように、地上に戻れなくなるかもしれない、家族はいいのか、友達はいいのか、せっかく仕事が決まったのにいいのか、と矢継ぎ早に聞いてきました。
両親のことは好きです。
友達だって好きです。
仕事だって、確かに前から入りたかった会社でした。
でも、しお子と一緒にいられるなら。
そっちの方が幸せな気がしたんです。
14: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 12:50:54 ID:???Sd
栞子「ちょっと……長老に聞いてきます」
言って、しお子はマンホールの蓋を開けると下に潜っていきました。
1時間くらい、そこにいました。しお子が戻ってきたらすぐに送れるように、家族や友達にメッセージを下書きしたりしていましたよ。
ガショ、とマンホールの蓋が開いて、再度出てきたしお子は何とも悲しそうに首を振りました。
栞子「駄目みたいです。引っ越しは危険もあるし、何よりマンホール・スラグモルしか通れないような狭い通路を通るから人間では着いてこられないと」
かすみ「そんなぁ……」
栞子「……きっとまた会えますよ」
日本から出るわけではないんですから。
どこかのマンホールの下に、私はいますから。コンココン、コンココンと叩いてくれたら絶対に会いに行きますから。
……マンホールを見かけたら、叩いてみてください。
日本にマンホールがいくつあるのかなんて知りません。でも、きっと絶望的な確率なんだろうなぁと思いましたよぉ。
言って、しお子はマンホールの蓋を開けると下に潜っていきました。
1時間くらい、そこにいました。しお子が戻ってきたらすぐに送れるように、家族や友達にメッセージを下書きしたりしていましたよ。
ガショ、とマンホールの蓋が開いて、再度出てきたしお子は何とも悲しそうに首を振りました。
栞子「駄目みたいです。引っ越しは危険もあるし、何よりマンホール・スラグモルしか通れないような狭い通路を通るから人間では着いてこられないと」
かすみ「そんなぁ……」
栞子「……きっとまた会えますよ」
日本から出るわけではないんですから。
どこかのマンホールの下に、私はいますから。コンココン、コンココンと叩いてくれたら絶対に会いに行きますから。
……マンホールを見かけたら、叩いてみてください。
日本にマンホールがいくつあるのかなんて知りません。でも、きっと絶望的な確率なんだろうなぁと思いましたよぉ。
15: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 12:59:34 ID:???Sd
それでも。
もう会えないと言われるよりは、希望がありました。
かすみ「もしかすみんがしお子を見つけたら、次はかすみんも連れて行ってくれる?」
栞子「喜んで。一緒にマンホールの下で暮らしましょう」
言って、しお子は触覚で私の頬を撫でました。私はそれがくすぐったくって笑いました。
それから、時間の許す限り私達は思い出話に花を咲かせました。初めて出会った時のこと、スクールアイドルとして活動したこと、エマ先輩の が大きすぎて炎上したこと、侑先輩がせつ菜先輩と結婚した直後に謎の通り魔に嫌ぁっ!されたこと、ミアこが大統領になったこと。
本当に、たくさんたくさん。話したんです。
日が暮れて来た頃、しお子はマンホールの蓋を開けました。
栞子「かすみさん、姿の変わった私と変わらず仲良くしてくれてありがとうございました。楽しかったです」
かすみ「かすみんこそありがとう。しお子と一緒にいられて、幸せだったよ」
言って、照れくさくてくすくす笑って。
かすみ「しお子、好きだよ」
栞子「私もかすみさんのこと、好きです」
マンホールの蓋が閉じる音が聞こえて、もうしお子に会うことはありませんでした。
もう会えないと言われるよりは、希望がありました。
かすみ「もしかすみんがしお子を見つけたら、次はかすみんも連れて行ってくれる?」
栞子「喜んで。一緒にマンホールの下で暮らしましょう」
言って、しお子は触覚で私の頬を撫でました。私はそれがくすぐったくって笑いました。
それから、時間の許す限り私達は思い出話に花を咲かせました。初めて出会った時のこと、スクールアイドルとして活動したこと、エマ先輩の が大きすぎて炎上したこと、侑先輩がせつ菜先輩と結婚した直後に謎の通り魔に嫌ぁっ!されたこと、ミアこが大統領になったこと。
本当に、たくさんたくさん。話したんです。
日が暮れて来た頃、しお子はマンホールの蓋を開けました。
栞子「かすみさん、姿の変わった私と変わらず仲良くしてくれてありがとうございました。楽しかったです」
かすみ「かすみんこそありがとう。しお子と一緒にいられて、幸せだったよ」
言って、照れくさくてくすくす笑って。
かすみ「しお子、好きだよ」
栞子「私もかすみさんのこと、好きです」
マンホールの蓋が閉じる音が聞こえて、もうしお子に会うことはありませんでした。
16: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 13:03:31 ID:???Sd
─────
なるほど、だからマンホールの蓋を叩いてたんですね。
私が言うと、目の前の女性は照れたように笑いました。
かすみ「えぇ、とはいえあれからもう五年も経っちゃいましたけど」
かすみ「幸い出張の多い仕事ですから、遠出するたびに見かけたマンホールを叩いてるんですが……反応はありませんね」
そう話を締めくくった彼女に、私はお礼に を見せました。
ほれほれ、どうです。
かすみ「おぉ……」
これが見たかったんでしょう 豚がッ!
かすみ「これはまた中々めぎゃあとした乙な逸物ですねぇ……」
彼女は時に頷き、時に涙ぐみ、メモを取りながら私の を観察していました。誇らしいです。
なるほど、だからマンホールの蓋を叩いてたんですね。
私が言うと、目の前の女性は照れたように笑いました。
かすみ「えぇ、とはいえあれからもう五年も経っちゃいましたけど」
かすみ「幸い出張の多い仕事ですから、遠出するたびに見かけたマンホールを叩いてるんですが……反応はありませんね」
そう話を締めくくった彼女に、私はお礼に を見せました。
ほれほれ、どうです。
かすみ「おぉ……」
これが見たかったんでしょう 豚がッ!
かすみ「これはまた中々めぎゃあとした乙な逸物ですねぇ……」
彼女は時に頷き、時に涙ぐみ、メモを取りながら私の を観察していました。誇らしいです。
17: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 13:05:36 ID:???Sd
かすみ「じゃあ、私はそろそろ行きますね」
えぇ、面白い話を聞かせていただいてありがとうございました。
頭を下げて、私はまた夜道を歩き出す。
あれはきっと作り話か妄想だろう。けれど、なかなかに興味深い話でした。
ふと後ろから、コンココン、コンココンと軽い音が聞こえました。
あぁ、またマンホールを叩いているんだ。そう思った瞬間。
かすみ「あっ!」
そんな、嬉しそうな声が響きました。
えぇ、面白い話を聞かせていただいてありがとうございました。
頭を下げて、私はまた夜道を歩き出す。
あれはきっと作り話か妄想だろう。けれど、なかなかに興味深い話でした。
ふと後ろから、コンココン、コンココンと軽い音が聞こえました。
あぁ、またマンホールを叩いているんだ。そう思った瞬間。
かすみ「あっ!」
そんな、嬉しそうな声が響きました。
18: 名無しで叶える物語◆z7skLWv6★ 2026/02/21(土) 13:10:38 ID:???Sd
振り向いた私の視線の先に、かすみさんは居ませんでした。
ただ、マンホールの蓋がガタン、と動くのだけが見えました。まるで開いたそれが閉じられたかのように。
蓋の周りは街頭に照らされて、ナメクジでも這ったかのようにぬめぬめと光り輝いていました。
思わずそのマンホールをコンココン、コンココンと叩いてみましたが、もう何の反応も返ってくることはありませんでした。
私は立ち上がって、歩き出す。
暗く湿ったマンホールの下で、ナメクジとモグラの間の子のようになった少女に抱かれて、幸せそうな笑顔を浮かべるかすみさんを思い浮かべながら。
終わり
ただ、マンホールの蓋がガタン、と動くのだけが見えました。まるで開いたそれが閉じられたかのように。
蓋の周りは街頭に照らされて、ナメクジでも這ったかのようにぬめぬめと光り輝いていました。
思わずそのマンホールをコンココン、コンココンと叩いてみましたが、もう何の反応も返ってくることはありませんでした。
私は立ち上がって、歩き出す。
暗く湿ったマンホールの下で、ナメクジとモグラの間の子のようになった少女に抱かれて、幸せそうな笑顔を浮かべるかすみさんを思い浮かべながら。
終わり
引用元: ・かすみ「マンホール・スラグモル」


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