1: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:19:14 ID:???00
ルクボメルリはあるところで生まれ、あるところに行き、あるところで死んだ

2: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:23:27 ID:???00
栞子「なんなんですかこれ!?」

ランジュ「どうしたのよ栞子、そんなに怒って」

ミア「生理かい?」

栞子「フリマアプリで面白そうな本を買ったんです。『ルクボメルリ』というタイトルで」

ランジュ「きゃあっ、耳慣れないタイトルね! 興味をそそられるわ!」

栞子「しかし中身は最初の1ページだけで、あとは真っ白なんですよ」

ランジュ「あら、悪質なイタズラね」

栞子「許せませんよこんなの。わたしがルクボメルリを探してこの本を完成させます!」

そうして栞子、ランジュ、ミアはルクボメルリを探す旅に出ることにした。
3: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:27:05 ID:???00
学校を出て、街を歩き、三人は船に乗り込んだ。

ルクボメルリは日本の言葉ではない。海外に行けば何か分かるかと思ったのだ。

船に乗って2時間ほど経った頃、船員が叫んだ。

船員「ルクボメルリが生まれたぞ!」

栞子「ルクボメルリが?」

船員「あぁ、ルクボメルリだ。見ろ」

船員の指差す方向を見ると、赤ちゃんイカが母親と共に海を跳ねているのが見えた。

栞子「ルクボメルリとはイカなのですか?」

船員「いいや、イカはルクボメルリじゃないさ」
4: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:30:17 ID:???00
栞子「そうなのですか?」

船員「あぁ、海で生まれた者も山で生まれた者も。仮に空で生まれたってそうだ」

栞子「よく分かりませんね、ルクボメルリとはなんなのですか?」

栞子の言葉に船員は頷いて答えた。

船員「あるところで生まれる者さ」

栞子「なるほど」

栞子はメモ帳に、船員の言葉を書き留めた。

『ルクボメルリはあるところで生まれた』
5: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:33:53 ID:???00
船が陸に着き、三人は順番にタラップを降りた。

着いた場所は自然の多い、暑い島だった。黒い肌の人々が、三人を物珍しそうにジロジロと見ている。

ランジュ「ここにルクボメルリはあるのかしら」

ランジュの言葉を聞いた一人の老人が、黒い肌と対象的な白い歯を見せた。

老人「ルクボメルリは行ったよ」

ランジュ「ルクボメルリは何処に行ったの?」

老人「そうだなぁ。随分色々なところへ行った」

ランジュ「ルクボメルリは何処へでも行くの?」

老人「あぁ、何処へでも行くし、何処からでも来る。ルクボメルリだからね」
6: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:36:14 ID:???00
ランジュ「日本にも?」

老人「そうだね、ルクボメルリは日本にも行ったかもしれない。いいや、きっと行っただろうさ」

ランジュ「ますます分からなくなってきたわ。ルクボメルリはあるところで生まれて、何処へでも行くのね」

ランジュ「ねぇ、ルクボメルリってなんなの?」

老人はにこやかに笑って答えた。

老人「あるところに行くものさ」

ランジュ「そうなのね……」

ランジュはメモ帳に、老人の言葉を書き留めた。

『ルクボメルリはあるところに行く』
7: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:40:14 ID:???00
三人は島の中を回ったが、ルクボメルリに関する話はこれ以上は手に入らなかった。

なんだかガッカリした気持ちで、三人はまた船に乗り込み、日本へと戻った。

日本に戻って、学校へ着くと生徒たちがおいおいと泣いているのが聞こえた。

ミア「なんで泣いているんだい?」

生徒「ルクボメルリが死んだからだよ」

ミア「ルクボメルリが死んだって!?」

生徒「えぇ、ついさっきのことよ。ルクボメルリは死んでしまったの」
8: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:44:11 ID:???00
ミア「ボク達は遠い国へ行ってルクボメルリを探してたってのに、こんな近くで死んでいたなんて!」

ミアは驚いて目をまたたいた。

生徒「ルクボメルリはどこでも死ぬの。きっとあなたの近くでも死んでいるわ」

ミア「そうなのかい? ルクボメルリの死体はどこに?」

生徒「ルクボメルリに死体なんてないわ」

ミア「なんだって?」

ミアが周りを見回しても、生徒たちが泣いている近くには何の死体も見えはしなかった。

ミア「死体がないなら、死んだかどうかなんて分からないじゃないか!」

生徒たちは驚いたように顔を見合わせ、言った。

生徒「それがルクボメルリなのよ。ルクボメルリはあるところで死ぬの」

ミアは納得できない顔で、生徒たちの言葉をメモ帳に書き留めた。

『ルクボメルリはあるところで死ぬ』
9: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:47:39 ID:???00
栞子「いったいルクボメルリとはなんなのでしょうか?」

栞子「あるところで生まれるものとしか分かりませんでした」

ランジュ「そうしてあるところへ行って」

ミア「あるところで死ぬんだ。死体も無くね!」

ミア「あぁ、この際だからはっきり言ってやるさ! ボク達からかわれたんだ!」

栞子「本当にそうなのでしょうか?」

栞子「日本、海外、船の上。からかうにしても、どうやって連絡を取ったというんです?」

ランジュ「けれど、ルクボメルリが存在しているとは思えないわ」

栞子「そうなんですよね……」
10: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:53:40 ID:???00
三人は頭を抱えてうんうん唸ったが、結局何一つ答えは出てこなかった。

ルクボメルリは人なのか、物なのか、食べ物なのか、動物なのか、植物なのか、概念なのか。

それすら分からない。

ミア「それで、どうするんだい?」

栞子「もうこれ以上考えてもルクボメルリが何かはわからないと思うんです」

ランジュ「そうね。ランジュ達にはもうお手上げよ」

栞子「この本はまたフリマアプリで売ろうかと思います。手元に置いておいても気になるだけですから」

ミア「何か書いておくかい?」

栞子「文章を? そうですね……」

そうして栞子は、次の真っさらなページに一文書き加えて、その本を売った。

彼女が何と書いたって?
そんなの決まっているじゃないか。

11: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:54:15 ID:???00
ルクボメルリはあるところで生まれ、あるところに行き、あるところで死んだ

12: 名無しで叶える物語◆n8xFruKM★ 2024/07/27(土) 11:54:29 ID:???00