フワフワと、奇妙な感覚が体を支配している。あちこちから人の気配がするのが感じられて、何だか落ち着かない。
艦に戻ってすぐに半ば命令に近い形でシャワーを浴びさせられそれから自室にこもっていたあたしは、どうにも座りの悪いその感覚に身じろぎしていた。
引き出しにストックしておいたチョコレートのビスケットをかじりながらコーヒーを啜ってはいるけど、一向に収まる気配はない。
正直、神経か精神がおかしくなってしまったんじゃないか、って、そう感じていた。精神的な戦闘後遺症の話は、軍に居れば聞かない話ではない。
ヘタレなあたしが危機的過ぎる状況に投げ込まれたせいでそんな風になってしまったって、何の不思議もない。
でも…あたしは落ち着かないながらも、もう一つの別の感覚にも気付いていた。
それは得体の知れない安心感とそしてそれが与えてくれている胸に込上がる活力だった。
その原因は、なんとなく分かってはいるんだけど…でも、それこそ戦闘の精神的なショックのせいかも知れない、って思えてしまう。
冷静に考えれば考えるほど、そんな現実は有り得るはずがないんだ。
死んだはずのミラお姉ちゃんが、戦闘のさなかにあたしのジムCのコクピットに居た、だなんて…今も、何だか近くに居てくれている確信があるだなんて…。
いったいあたし、どうしちゃったんだろう…?
戦闘の終了直後、セシールからイルマが発進してきて、あたしと大尉を、ボロボロの機体ごと回収してくれた。それから、もう一人。
モビルアーマーに跳ね飛ばされて宇宙を漂っていたヒシキ中尉も、だ。
中尉は、奇跡的に生きていた。全身打撲と八箇所の骨折なんて言う重傷だったけれど、イルマがその機体に取り付いて泣きながら
「好きだったのに、どうして死んじゃうんですか…!」
なんて言ってたら、それが接触通信で聞こえていたらしい。その声で意識を取り戻した中尉から
「イルマか…?」
なんて返事が返って来たものだから、そのときのイルマの慌てようと言ったらなかった。
そんな中尉は、今はイルマに付き添われて医務室で治療している頃だろう。
中尉が無事だった事は嬉しい。
でも、良かったなんてこれっぽっちも言えない。
少佐とウォルト…キッド少尉が死んだ。
マゼラン級ケベックは爆発、轟沈こそ免れたものの、船体は大破。クルーも大勢犠牲になった。
デッキにいた第三中隊は、一人を残して、みんな発進前のデッキでモビルスーツごと爆破されてしまった。
そんな中で幸運にも、セシールのクルーには被害がなかった。
奇襲を受けたとき、デッキクルーや整備班の人達を巻き込んでいないか心配したけれど、
戦闘の後、スクラップ同然になったモビルスーツのジェネレーターを完全に停止させに来てくれたボウマン軍曹から、全員の無事を聞かされた。
モビルスーツを壊したことを皮肉混じりにからかわれたけれど…でも、良く生きて返って来たな、ってそう言ってくれた。
艦は今、宇宙空間に停止している。
大破したマゼラン級ケベックを曳航して、同じく被弾して見動き出来ないフジ級サガミと合流し、周囲を警戒しながらペガサス級サラブレッドの到着を待っているところだ。
サラブレッドが到着し次第、ケベックをサラブレッドが、サガミをあたし達の乗っているセシールが曳航して、
周回軌道で遠ざかってしまっているルナ・ツー基地より手近な月面のフォンブラウンへ向かう予定だ。
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