2 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2013/10/12(土) 00:08:02 yqNpmHfU
乾いた風がひとひらの紅葉を運んできた。
この前まで刺すような陽射しを浴びせていた太陽は、今はいくらかやわらかな光を届けてくれる。
すこしだけ物悲しいような、けれども穏やかさを与えてくれる季節。私は秋は嫌いではない。
あの日から、もう1年が過ぎようとしていた。
私は、彼が通う大学の中庭にいた。
ちょうど午後の講義が終わった頃の時間。
講義を終えた学生が行き交う中、私は少し古びた校舎の壁際によりかかり、彼が来るのをひとりで待つ。
ここは教室から校門への通り道になっているので、彼は必ずこの前を通ることを、私は知っていた。
目の前を一組のカップルが通りすぎる。腕を組んで仲睦まじい。今日の予定を話し合っているようだ。
女の子の弾んだ声が、二人が幸せであることを教えてくれる。
私はその見知らぬカップルを見送った後、持参した薄緑色の本を開いた。
その本は、私の心をとても切なく、苦しく、しかし暖かくもしてくれる、魔法の本。
私はこの本を開くたび、この一年間のことを思い出さずにはいられない。
私の心は記憶の波をさかのぼり、去年の冬の時期にたどり着いた。
そう、
たった一人で泣いていたあの冬の日に……
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