1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/19(月) 20:28:56.82 ID:M3qsp1fO0
「キョンくんおきてー」
妹の体が俺の背中にどすどすとのしかかる。ええい、俺はトランポリンじゃないぞ。
仕方なく布団から顔を出し、眠い目をこすりつつ目覚ましを見る。思わず血の気が引いた。短針は九を指している。
集合時刻は九時半だ。あと三十分しかない。
妹をなんとか振り切って大急ぎで身支度を整えて家を出た。
今日は合宿の日である。
なにが目的とか意義とかそういうことは置いといて、とにかく合宿なのだ。
いつもの公園に着くと、そこにはじれったそうに腕を組んで足をぱたぱたさせているハルヒがいた。
朝比奈さんは世界を救うような天使の、古泉は達観しきったような微笑みで俺を見ている。
言うまでもなく、長門は当然無表情。
谷口はナンパがどうだとか相変わらずなことを国木田に吹き込んでいて、鶴屋さんは状況を全く無視した天真爛漫な笑顔だった。
実は今回の合宿、SOS団+αなのである。
「遅いわよ! キョン!」
襟首を思い切り掴まれる。時刻はちょうど九時三十分、ハルヒに怒鳴られる筋合いはないはずだ。
「馬鹿ね、あたしより遅く来た人間はみんな遅刻なのよ!」
「へいへい。で、俺は何をおごればいいんだ?」
この八か月で染みついた奴隷根性である。
「あら、分かってるじゃない。そうねえ、考えとくわ。お茶代どころじゃ済まないわよ!」
俺は今のうちに破産申告をしておくべきだろうかと悩んでいると、
「んじゃ、全員揃ったし早く行こっ!」
と鶴屋さんがハルヒに促した。この合宿の立案者は彼女だ。なんでも山に大きな別荘を持っているらしい。
人は多ければ多いほどいいと言うことなので、それなりに面識のある谷口と国木田を誘ったというわけだ。
「あっ、待ってよハルにゃん! 一番乗りはこの私だよーっ!」
鶴屋さんとハルヒが猪のごとく駅まで駈け出して行った。朝っぱらから元気なことだ。
駅で切符を買って改札を通る時、前を歩く長門がこちらを少し振り向いた。が、そのまま何も言わずに進んでいってしまった。
長門も長門なりに楽しんでいるのだろうか。きっとそうだったら良いと思う。
今考えればここがターニングポイントだったのだ。
日常と非日常を分かつラインがこんなただの自動改札だったなんて、思わないだろ普通?
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