<prologue>
とあるマンションの一室。
ここはかつてある少女が使用していた部屋だ。
中央に置かれたベッド、その傍らには椅子、壁際には机、クローゼット、部屋の隅には鏡。
部屋の中にはほのかに漂う生活のにおい。
そこに、丁度机に向かうようにして一人の少女が立っていた。
黒い髪を背中まで伸ばし、その目はどこか物憂げで、しかし力強い目をした少女。
彼女の左手には一つの黄色い髪留めピンと一本の黒いリボン、右手には一枚の写真が握られていた。
コトッ
黒髪の少女はリボンとピンを重ねるように机の上に置いた。
そして右手で持った写真をゆっくり眺めた。
その写真には2人の少女が互いに寄り添うようにして笑顔で写っていた。
写真の左には長い髪を後ろで束ねてポニーテールにした赤い髪の少女。
目尻が少しつり上がっており、笑顔のこぼれた口元からは八重歯が覗いている。
その隣には髪を肩の少し上ぐらいまで伸ばしたショートボブの青髪の少女。
満面の笑みを浮かべながら赤髪の少女と腕を組んで写っている。
これはその2人の少女を中心とした、小さなひとつの物語。
引用元: ・杏子「あぁ、生きてやるさ。私はさやかにそう誓ったんだ!」